【参考資料1】人口減少時代の新しい地域づくりに向けた学習・活動の振興方策について

人口減少時代の新しい地域づくりに向けた学習・活動の振興方策について


1.課題意識 
(1)地域の力の結集による課題解決に向けた学習・活動の必要性
○現在、我が国は人口減少の局面に入るとともに、高齢化が急速な勢いで進み、人口移動の面では東京一極集中が継続している。地方では、既に人口、特に若者人口が大幅に減少するような深刻な事態を迎えており、「地方はこのまま推移すると、多くの地域は将来消滅するおそれがある」との指摘もある。

※現状のまま、地域間の人口移動が将来も収束しないと仮定した時に、若年女性人口が2040年に5割以上減少する市町村は896(全体の49.8%)に達するとの推計もある。
(平成26年5月日本創成会議・人口減少問題検討分科会)

○同時に、地域経済の縮小や商店街の衰退、高齢化による医療・介護の需給逼迫、非正規労働者や一人親世帯の増加等を背景とした貧困問題、地域の伝統行事等の担い手の減少、財政の悪化など、地方は様々な課題に直面している。その中には、人と人とのつながりの希薄化や、それに伴う高齢者や若者の社会的孤立という課題もある。今後の地域社会の存続を図る上でも、人生100年時代における個人の充実した人生を実現する上でも、こうした課題の解決を図ることが急務である。

○地域の中には、自らの課題を認識し、厳しい現状の克服に向け、自治公民館が拠点となった極力行政に頼らない独自の集落づくりや、住民の学びをきっかけとした新たな地域産品の開発、住民のサロン活動を中心とした健康づくりや地域活動、観光拠点としての博物館の魅力向上など、創意工夫を生かした取組を行っているところがある。こうした多様な取組を地域の活性化や人々の生きがいづくりにつなげている事例も少なくないが、こうした取組が全国に広がっているとは言い難い。

○こうした状況の中、「学びを通じた地域づくりに関する調査研究協力者会議」が平成29年3月にまとめた論点の整理では、人々の暮らしと社会の発展に貢献する持続可能な社会教育システムの構築に向けて、「地域課題解決学習」を社会教育の概念に明確に位置付ける必要性を指摘したところである。あわせて、同報告書においては、新しい「学びの場」づくりや社会環境の変化に対応した社会教育施設の運営・整備等についても提言されている。

○また、今後、人工知能(AI)やIoTの進展等の急速な技術革新によって、「Society5.0」が到来し、国民生活や社会の在り方が大きく変化していくことが予想される中で、こうした変化に対応する力を一人一人が身に付けることや、新しい技術を使いこなし、地域の学習活動に生かすことも課題となっている。

○一方、いかに技術革新が進展しようとも、個々人の生活や人生は、人々が構成する社会の中で営まれるものであり、住民相互の対話や相互扶助による地域づくりや共生社会の形成に社会教育がどのように貢献していくのか、ということが課題となっている。

○これらも踏まえ、関係者の連携と住民の主体的な参画のもと、地域の力を結集し、地域社会の課題解決に取り組み、新しい地域づくりを進めるための学習・活動の在り方について先進的な取組事例も参考にしながら、持続可能な形で具体的な実践活動を進めるため、どのような実証研究等を行っていくことが求められるのか検討する必要がある。

(2)地域課題の解決に向けた、公民館・図書館・博物館等の機能強化の必要性
○地域課題の解決に向けた学習・活動の振興を図るに当たっては、地域住民の学習を支える最も身近な学習・活動拠点たるべき公民館、図書館、博物館等について、その現状を改めて評価するとともに、今後求められる在り方や振興方策について具体的に検討する必要がある。

○その際、近年、公民館、図書館、博物館等には、地域活性化・まちづくりの拠点、地域の防災拠点などとしてのより幅広い役割も期待されるようになっていることに留意する必要がある。特に、観光振興が地域経済の活性化に大きな影響を与えている中、博物館については観光資源としての観点からも期待が高まっており、地方公共団体からは、博物館の運営について、まちづくり行政や観光行政等の他の分野との一体的な取組を総合的に行いたいという要望が高まっている。

※博物館については『平成29年の地方からの提案等に関する対応方針』(平成29年12月26日閣議決定)において、「まちづくり行政、観光行政等の他の行政分野との一体的な取組をより一層推進するため、地方公共団体の判断で条例により地方公共団体の長が所管することを可能とすることについて検討し、平成30年中に結論を得る。」とされている。

○また、特に過疎化や高齢化が進行する地域においては、社会教育施設の利用者に占める高齢者の割合が高くなる一方、医療ニーズの増加等に対応した高齢者福祉施設の整備も求められることから、財政状況が厳しい中で、今後これらの施設の複合化が進むことなども予想される。

○このように、公民館、図書館、博物館等において様々な地域課題により的確に対応した取組を行うためには、これらの施設を含む社会教育行政部局とまちづくり関係部局、福祉・健康関係部局、産業振興関係部局、学校、大学、企業、NPO法人等の多様な主体との連携を強化することが欠かせない状況となっていることにも留意しつつ、これからの時代に求められる公民館、図書館、博物館等の役割と、それを実現するために必要な方策について、その施設としての所管の在り方も含め、検討する必要がある。


2.検討の視点(例)

(1)人口減少の中、地域が直面する課題を解決し、新しい地域づくりにつなげるための学習・活動としてどのようなことが求められるか。

(2)地域の課題を地域住民が共有し、解決に向けて主体的に学び活動する取組を立ち上げ、持続させていくために、学校、大学、行政、企業、NPO法人等の多様な主体との連携などの方策をどのように進めるべきか。

(3)高校生や大学生等の若者はこれからの地域の担い手として重要な存在であり、こうした若者を地域の課題解決に巻き込んでいくには、どのような方策があるか。

(4)社会教育主事が「学びのオーガナイザー※」として、地域課題解決に向けた学習のコーディネートを行っていく上で、その活動を組織的に持続できるようにしていくためには、どのような仕組みが考えられるか。

※「学びのオーガナイザー」…住民やNPO、大学、企業等の様々な主体を結び付け、地域の資源や各主体が有する強みを活かしながら、地域課題に応じて「学び」や「実践」の場をアレンジすることにより地域課題を「学び」に練り上げ、課題解決につなげていく(学習活動を組立て形にしていく)人材

(5)地域の最も身近な学習拠点であるべき、公民館、図書館、博物館等の社会教育施設が抱える課題や今後の役割についてどう考えるか。

(6)公立博物館等の所管の在り方について、地域の実情に照らしてどのように考えるべきか。

(7)クラウドファンディング等の多様な手法による資金調達の活用促進等、民間の力を活用した社会教育施設の運営として、どのようなことが考えられるか。

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