学習成果活用部会(第10回) 議事録

1.日時

平成28年2月19日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 有識者からの意見発表
  2. その他

4.議事録

【菊川部会長】
 ただいまから第10回中央教育審議会生涯学習分科会学習成果活用部会を開催させていただきます。本日は,検定試験の第三者評価及び検定試験の活用について審議したいと思います。
 最初に,本日発表いただく有識者の方を御紹介させていただきます。全国検定振興機構の吉田理事長でいらっしゃいます。

【吉田理事長】
 おはようございます。

【菊川部会長】
 それから,帝京平成大学の横田学科長でいらっしゃいます。

【横田学科長】
 よろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 最後に,日本工学院専門学校の谷口科長です。
 それでは,次に,事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 議事次第,座席表及び資料1から3,及び参考資料を配付させていただいております。前回,1月25日に開催いたしました生涯学習分科会と本部会の合同会議で御審議いただいたことを踏まえまして,部会長とも御相談させていただいた上,審議経過報告骨子案を取りまとめて,参考資料として本日お配りしていただいているものを2月10日の中央教育審議会総会にお諮りしております。
 総会において委員から頂きました資料につきましては,本日資料1で配付してございますので,その際の御議論については,そちらを参考にしていただければと思います。また,本部会において,今後,答申における御審議をお願いしたいと考えておりますので,その際にも本資料を御参考いただければと考えています。
 そのほか,資料2‐1から2‐3までは,本日御発表いただく有識者の方々の発表資料,資料3については,今後の審議スケジュールとなっています。

【菊川部会長】
 それでは,早速議事に入ります。まずは検定試験の第三者評価について,吉田全国検定振興機構理事長から御発表いただき,意見交換を行いたいと思います。

【吉田理事長】
 現在,全国検定振興機構の理事長を務めております,吉田と申します。よろしくお願いいたします。
 昨年4月の段階で,検定試験が大学入試にも活用されるということになり,そのために全国検定振興機構をしっかり機能させたいという会員の声を受けて,私も運営したいということで,昨年4月から理事長を務めております。
 お手元に資料として,私の意見をまとめておきましたので,これに従いまして,意見を述べさせていただきます。本日,ここには柴山委員はじめ,テストの専門家の方がいらっしゃる中で,かなりテスト理論の原理的なこともお話ししますが,是非こういう考え方の下で検定試験の第三者評価をやるべきではないか,という意見としてお聞きいただければと思います。
 御承知のとおり,我々の国ではテストというものについてはなかなか難しい歴史があります。工業製品などに関してはかなり厳しい品質評価をされているわけですが,日本の教育の世界では,例えばテストの品質,教育の品質ということについての評価ということになると,なかなか難しい歴史があります。
 その理由として,私は教育する側の権威の問題が大きく影響していていると考えています。教育の質を評価する,テストの内容の信頼性を審査するということは,教育する側の人間からすると,教育は神聖にして侵すべからずだから受け入れられないというイメージがかなり強い。そういうことではなくて,我々の社会にとって,より良いテスト,より良い教育を実現するためにはきちんとした評価が必要だということです。そのことを前提にして考えた場合に,日本には1,000を超える検定試験があると言われますが,実際に多くの検定試験が実施されているにもかかわらず,そのペーパーテストの品質について,社会で問題にすることはありません。
 私も自分の息子が小・中学生だった頃,学校でテストを受けてくるたびに気になっていたわけですが,親はテストの点数を見ると,それでしかったり,褒めたりするわけですが,そのテスト自身が本当に適切なテストなのかどうかはなかなか分からない。また,それを誰も評価していない。特に学校の中間期末テストになると,ひどいテストが結構ありまして,それでも当たり前のようにその点数の結果を受け入れるということをやってきた社会があるわけです。
 そういう中で,今回の第三者評価の問題というのは極めて大きな問題だと考えております。同時に,特にこれからのアクティブラーニングの中では,従来の知識ベースの評価ではなくて,パフォーマンスの評価がかなり必要になってきます。このパフォーマンスをどう評価するのかという問題についてもきちんとした研究がされて,その研究成果が教育の現場に生かされていき,アクティブラーニングの内容的な質の向上を図っていかないと,その成果が現れてこない。そういう可能性もあると思いますので,これから先はこういったパフォーマンス評価の方法についても,我々,全国検定振興機構としてもしっかりとやっていかなければいけないと考えています。
 以上の前提のもとで,これまで生涯学習分科会,学習成果活用部会の中で議論されておりました内容を見せていただいて,私の方から教育の評価の意味,若しくは第三者評価の在り方について意見を述べさせていただきます。
 教育の評価は,学習者の知識や学力の変化を教育の目的に照らして判定するので,最終的にその目的は何かというと,教授計画の改善,若しくは学習者の動機付けを前提にして,教育の効果を測るというのが評価の基本的な目的です。
 しかしながら,学習者の育成のための評価であるべきなのが,日本のテストの文化,若しくは歴史は,選別のための評価という意識が極めて強い。そのために,選別のための評価を行う側の権威が侵されてはいけないという意識があります。また,どちらかというと,評価されることを嫌うという傾向が極めて強い気がいたします。ですから,今回議論が行われているこの自己評価・第三者評価は,より良い学習を実現するために,どういう評価が必要なのかということを理解することがまず必要だと思います。
 そして,検定試験について言いますと,評価は検定試験の改善,質的向上が目的になりますから,当然のごとく,その中心になりますのは,自己評価でなければいけません。自分で運営等を改善していくために,自己評価を補完する機能として第三者評価があるべきであって,第三者評価が,その内容の合否を決定するような考え方で行われれば,テスト若しくは検定試験の質的な向上は見込めず,最終的には管理するための評価となってしまう。そうすると,これは身もふたもないというか,検定試験の発展,若しくは質的な向上を阻害する要因にもなりかねないと考えます。大切なことは自己評価をベースにしながらも,それを補完するためにどのような第三者評価が必要なのか,と考えることだと思います。
 その上で,自己評価の在り方ですが,基本的に自己評価は,テストを行うたびにやるべきテストの中身の問題と,そのテストを運営している,若しくは検定を運営している検定試験実施団体の評価の問題と,両方あると思います。ここではその回数の問題等が一度議論されているとお聞きしましたので,私の意見を述べさせていただきます。
 本来はテストが行われる,検定が行われるたびにその審査を行うべきだと思います。しかし,それを行いますと,どうしても検定実施団体の基本的な負担が大きくなります。負担が大きくなると,それを当然,民間の検定試験の場合には受検者が費用を負担しますので,その負担の方に跳ね返っていく。結果,検定試験の受検者が減るということがあってはいけませんので,年間,最低1回くらいが妥当と考えております。
 第三者評価の在り方について,まず第三者評価を行う範囲についてですが,自己評価としての検定試験実施団体の財務運営,組織運営,試験運営等のいわゆる定型的な運営業務に関しての評価,我々は定型的評価と言っていますが,それはまず必要だ,ということはどなたにも御理解いただけると思います。これまでも民間の検定試験実施団体の中で,運営面の問題で社会的な問題になったこともありますので,そういったことがないようにするためにも,この部分は自己評価と同時に,第三者評価は必要だと考えます。
 第三者評価で議論となりますのは,多くの検定試験実施団体が多様な分野,内容の検定試験を実施しているために,その試験問題や検定の内容,テスト試験の結果,検定の結果についての評価に踏み込んでいいのかどうか,という点です。しかし,組織の運営のことだけ評価していて,テストの中身について評価をしないで,果たしてそれが民間の検定試験の信頼性,妥当性を評価したことになるのかということになりますと,そこのところが問題になると思いますので,私は,第三者評価は問題内容等もしっかりとその評価の対象にすべきだと考えます。
 ただ,それを文部科学省が行うという話になりますと,民間教育事業に対する国家管理だという議論も出てくると思いますので,基本的にテストの品質に関しては,第三者の評価機関がその内容を評価するという形にした方が良いと思います。
 テストの中身について考える場合に,料理検定などパフォーマンスを測る検定試験が様々ありますが,そこにはその専門家の方が入られていますので,テストの内容に関しては問題がないと考えられます。第三者評価すべき点は,それがテストとしての品質が確保されているか,という点です。
 例えば,すごく速い球を投げるのがいいピッチャーかというと,問題は野球というルールの中でやった場合には,果たしてそれが妥当な投球なのかどうかということであり,決してボールが速いか遅いかの議論ではなくて,ストライクゾーンに入っているかどうかということが必要です。検定試験を実施する団体の中には,テストの品質ということに対する理解がなくて,良い問題とは,専門性としていい問題だという話だけになってしまう可能性があります。これは早いボールを投げるピッチャーがいいということと同じ感覚です。
 自己評価の中では,テストの品質が保証されない可能性が極めて高いこともありますので,第三者評価では,試験内容,試験の問題,その検定結果・試験結果の評価の仕方,そうしたことについて,テストの専門家による妥当性,信頼性についての評価を行い,その情報を検定試験実施団体に提供して,検定試験の質的向上を図ることが必要だと考えます。
 問題は,この信頼性,妥当性というテストの考え方でありますが,このことについては,余り一般には使われませんので,資料の方に妥当性,信頼性,識別性と,今から使います言葉について用語を説明しておきましたので,参考にしていただければと思います。
 第三者評価は何をどう評価するのかという,信頼性と妥当性の問題についてです。評価,それから,測定に関する信頼性には二つありまして,一つは,それを評価する評価者に対する信頼性が持てるかどうかということと,評価方法が妥当であるか,信頼性があるものなのかということの二つがあると思います。
 評価者に対する信頼性とは,評価者が評価を行うだけの十分な技術を持っているかどうか,また,評価方法に関する信頼性とは,評価する内容に対して,適切かつ十分な方法で評価を行っているかということです。この辺りは,柴山委員も関わっておられるテスト学会の側で一つの方向性や,テスト理論についてのこれまでの研究がありますので,それをベースにして判定することが十分可能かと思います。
 一般に日本では,テストと言えば学力テストが一番多いので,皆さんもこれまで学生時代から学力テストを受けられていると思いますが,学力テストには必ず誤差があります。これは当然のごとく理解されるべきことなのですが,このテストに誤差があるというだけで,日本では極めて後ろ向きの議論のように聞こえることがあります。そうではなくて,その誤差をきちんと測定して,その誤差をできる限り小さくしていくということがテスト若しくはこういう評価の質的な改善ということになります。質的な改善というときに,この誤差を少なくしていくという前提として,誤差があるということをまず認識し,誤差がどのような状態にあるかを測る技術があるということについて了解されなければいけないと思います。
 この誤差を徐々に改善するためにどのような方法がとられているか。この点が第三者評価の視点として極めて大きいと考えます。誤差の測り方にもいろいろな方法がありますので,その方法が妥当かどうか,自己評価として行われているものがその評価の中身との関係で適切かつ十分であるかどうかということは,第三者評価の大きな視点になると思います。
 次に,評価の妥当性とは,評価の内容面の問題ですが,例えば学力テストを使ってある領域の学力を測定するときに,そのテストの内容がいかに妥当な内容,問題群で構成されているかというのが妥当性の問題です。ここのところになりますと,先ほどの専門性の問題に若干触れ始めます。どのような形で評価をするのかという点はいったん置いて確認いたしますと,妥当性の第1は,そのテストが何を目的にしたものであるかということがまず前提にあります。これは受検者に対しても検定試験実施団体がしっかり示していると思いますが,それは例えば2級や3級という場合に,どのものをもって3級といい,どのものを2級というのかということを示しているはずです。しかし,例えば経験的に作問してしまうとか,運営する上でどうしても時間の制限がありますので,その時間内で終わらせるということの方が優先されてしまうとか,100点満点という形の形態をとることの方が優先されてしまうために,妥当性が薄れてしまうということがあります。
 この部分について,しっかりと評価の目的と評価の基準が妥当な関係で構成されているか,つまり,先ほど申しました専門的な知識の問題ではなくて,テストの構成として妥当性があるかどうかということを評価するというのが第三者評価の視点として大切なのではないか考えます。
 問題はその第三者評価を行う評価者についてですが,第三者評価を行うには,定型的な評価とテストの品質の評価という内容的評価があると先ほど述べました。この二つについては別々のチームがこの評価に当たるべきだと考えます。特に財務,組織,試験運営等に関しましては,会計士や弁護士などの財務,法令の専門家,これと検定試験の実施を経験している関係者が集まって,自己評価されたものをベースにそれを検証する。自己評価なしに,それを全部調査するとなると,相当の時間がかかりますので,そうした評価は大きな団体だけにして,規模の小さい検定試験を実施している団体に対しては,先ほど申しました自己評価されたものを評価するという形になるだろうと思います。
 また,もう一つの問題としてのテストの品質の評価に関しては,テスト学会のテスト理論の専門家がいらっしゃいますので,そういう方が中心となりますが,内容的評価のメンバーの中に第三者評価の対象となっている,その団体の方も入った方がいいだろうと思います。そうすることによって,例えばそのテストがどのように作られているかという経緯なども,そのスタッフからの説明がある方が評価の中身がしっかりするでしょうし,また,そうした作問の現状,過程が説明されることで,テストの品質の評価の助けになると同時に,そのスタッフがその団体の中心的なメンバーでいらっしゃるはずですから,その方が自己評価をやっていく手助け,若しくはその団体の検定試験を質的に向上させていくためのリーダーとして育成していくということも必要だと思っております。
 以上のような形で,第三者評価を進めていく中で,第三者評価を行う実施機関が必要となるわけですが,この第三者評価機関の質的な問題を担保するためには,私はこの評価機関が二つ以上ある方がいいだろうと思います。
 先ほど申しましたように,一番初めの段階で,自己評価がベースになるわけですから,自己評価する側がどの第三者評価機関に評価してもらうかということを選ぶことができることが必要です。一方的に決められた評価機関に評価をされるというのはいかがなものかと思いますし,現在進んでいる大学評価の場合でもそうですが,大学評価・学位授与機構と民間の組織,幾つかのところが第三者評価を行っておりますし,私はそういう形で第三者評価の機関を選べるという状態が好ましいと思っております。
 もう一つは,その第三者評価機関の公益性の観点から,法人格の問題が出てきているようですが,公益法人とか非営利団体であるかどうかということと,良質な評価サービスを提供するかどうかということは余り関係がないと思います。良質な評価のサービスを提供するのであれば,株式会社であろうが,民間の公益法人や非営利団体でも何の問題もないと思います。問題は第三者評価機関がビジネスとして成立するのかという点で,私はこの全国検定振興機構を引き受けた段階で,財務内容から何から見ていて一番困っておりますのは,そういう検定試験の第三者評価を各検定団体から費用を頂いて行おうとしたときに,その組織を運営できるのかというと,ほとんど無理だということです。各所に寄附金を仰いだり,協賛金を仰いだりしない限り,運営できません。私もいろんなNPOを運営しておりますが,実際に事業を運営して,自分たちの自主運営で運営することが十分NPOは可能です。しかし,こういう検定の第三者評価を,検定試験実施団体からの審査費用だけで賄うというのは極めて難しいと思いますので,ここのところに果たして株式会社が参入するかどうかというのは疑問だと思います。
 第三者評価への国の関わりですが,国がこの第三者評価を行うことにどれだけ関与するのかというときに,やはりどうしてもそこに権威として,国というのを使った方が,テスト,若しくは教育の世界では有り難いみたいなことがあるわけですけれども,これをやりますと,2005年度の段階で廃止しました民間の検定試験の認定を復活させることと同じことになりますので,これはやめた方がいいだろうと思います。
 第三者評価がスタートする段階で,その方向性をしっかり示し,どういうことが検定試験の評価として妥当性があるのか,内容的にはどの方向にすべきなのかということを示すという役割は国がすべきだと思います。本部会で行われているような議論がしっかりと社会に発信されていくことが必要だと思います。
 第三者評価機関を文部科学省が認定し,その認定された第三者評価機関の審査料を国が負担するという方策,良質の第三者評価を育成するために機関助成を行う方策等,様々なことが考えられますが,こういった国の関与はこれまでもうまくいった試しがありません。そのために,本気で第三者評価を受けたいと願う検定団体が自己評価をまずしっかり行い,その補完として第三者評価を受けるときに,そうした検定団体に補助をしていく,その審査を受けるときの費用を一部負担してあげるという方が費用の使い方としては妥当性があるのではないかと考えます。
 いずれにしましても,良い第三者評価機関が育成されるためには,事業環境を整備するということがないと,なかなか二つ以上の第三者評価を行う実施機関が育っていかないのではないかと考えています。
 最後になりますが,第三者評価の試行のために,当機構が文部科学省から委託を受けて,調査研究の事業を進めております。文部科学省が平成22年にまとめた検定試験の評価ガイドラインを基本に検討を行いまして,今後のコンピュータを活用した試験の普及の可能性,及び検定試験の大学試験等での活用という中で,どういう形の第三者評価が必要なのかということについて,現在検討を進めておりまして,その内容に関しましては,6ページ以降にまとめておきました。ここで1個1個について御説明する必要がないと思いますが,大切なところだけ2点だけ申し上げておきます。
 コンピュータを使って行う試験を含めて,現状,検定試験の受検者に対して本人確認がしっかりなされているかということになると,なかなか難しい局面があります。これはそれをしっかり行おうとすると,相当の費用が掛かるからです。この場合にコンピュータ等を活用して行うことによって,本人確認等がされやすくなる。何かコンピュータを使ってテストをやると,テストの中身の問題に目が向くかもしれませんが,実はテストのマネジメントには相当有効な方法であることは事実であります。今年,大学入試の中で,スマートフォンを使ってのカンニングが見つかったというのが1件ありましたが,韓国,中国をはじめ,様々なところでは,カンニングがかなりの数摘発されているわけですから,一般の検定試験以外のところでも,果たして正当な形で試験がされているかどうかということになると,こういった技術の進展の中でなかなか難しい局面を迎えてきていています。従来のペーパーテストの分野の中で19世紀に成立したテストの形が今後続いていくということ自身もかなり疑わしい部分がありますので,その辺も含めたテストの在り方の調査を私ども全国検定振興機構でも進めているところです。
 また,第三者評価の方法に関しては,例えば大学入試に活用される場合でもそうですが,学習指導要領にのっとっていない学科系のテストであってもよいという話になりますと,これは日本の学校教育の現場に与える影響が相当大きくなりますので,学習指導要領との関連がしっかりなされていない,しかしながらテストとしては良質だという場合には,単に合格ではなくて,条件付の合格にするということが第三者評価者の仕方として必要ではないかと思いますので,こういうことについても基本的な考え方を整理しているところであります。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,御質問,御意見,どなたからでも結構でございます。いかがでございましょうか。

【高見委員】
 株式会社イトクロで取締役をしております高見と申します。
 おっしゃっていることは非常に私も同意見でございまして,第三者評価というのは,企業でいえばJ‐SOXのように,何を評価するかを本人が決めて,その何の評価をするかを決めた方向性が合っているかどうかというところだけを審査するというところは非常に良いと思っております。
 1点お伺いをしたいのが,この第三者評価をする費用について,各検定団体に任せた方が良いというような御意見だったかと思いますが,第三者評価を受けるモチベーションであるとか必要性をどう置いていくのか,今どのようにお考えなのかをお聞かせいただいてよろしいですか。

【吉田理事長】
 私は,国の関与であるとか補助は余り必要がないと基本的には考えていますが,先ほど申しましたように,検定試験の自己評価を行い,第三者評価を行うということを希望する検定試験実施団体が今の段階であるのかというと,正直言って,ないと思います。そこまでの費用を掛けてやる必要性を余り感じていない。実は,そのために検定試験実施団体の方々が集まる研修会等を今開いておりまして,こういう問題があるんですよということについてはかなり自覚も出てきて,この間,研修会が終わった後では,第三者評価が必要だと考える検定団体は半分を超えました。しかし,費用を払ってという話になったときに,そこまでの形で踏み込めるかということになってくると,そこが難しいものですから,それを促進するということであれば,最初の段階ではそういう費用を一部持つという考え方はあっても良いと考えます。しかし飽くまでも,民間の検定試験は民間にきちんと任せるべきで,その中で自己完結する方が一番いいだろうと思います。
 これは高見委員も御存じと思いますが,日本の場合には工業製品等々は,JISマークのような形で,民間でやっているわけです。それに国が関与して,いいことは一つもないわけですから,私は基本的にはこういったものは民間ベースでしっかりやるべきだと思います。しかし,先ほど申しましたように,日本では,テストの文化が,ほかの工業製品とは違う文化を持っているものですから,それを推進していく前提の中でという限定付きで,国の関与であるとか補助が必要と考えているというところであります。

【菊川部会長】
 ほか,いかがでございましょうか。加藤委員,お願いします。

【加藤委員】
 1点お伺いしたいのは,第三者評価機関が民間で複数,仮にできたとしたときに,そのときに今度はその第三者評価機関の質を何とか保たないと,安くて,審査が甘いところに集中するというような結果になってしまうのではないだろうかと危惧されるのですが,そこについては何かアイデアありますでしょうか。

【吉田理事長】
 おっしゃるとおりで,大学でも単位が取りやすい先生の講座を取るという形の歴史,文化が日本の中にはございます。審査が甘いところに行った方がいいという考えがあると思いますが,私はこういう問題の解決の仕方として,ガバメントによるソリューションとマーケットによるソリューションがあり,マーケットの場合にはより良いものが生き残っていくという質が担保されている世界が作られない限り,どのような検定試験の第三者評価をやっても無理だと思います。
 ですから,良質な検定試験が生き残っていく,これがいい検定試験であるということが分かるようにしていく。それは恐らくマーケットの中の機能に任せた方が良くて,それを誰かがまた評価するみたいなことが出てくること自体が余り良いことではない。例えば大学でもそうですが,甘い評価をしてくれる先生の講座を受講した学生が,余り社会で活躍できなかった場合にはだんだんとう汰されていきます。最初の段階では甘いものでもいいかもしれないということはあるかもしれませんが,検定団体もきちんとビジネスでやっていますので,その中身について評価をされていく中で,あの機関は評価が甘いとか良くないという話が出てくると,恐らくその機関についてはかなりの問題点が出てくるでしょうし,特に今回,大学入試等に検定試験が使われていった場合には,大学側もその中身の評価の仕方もしっかり見るでしょう。私はここのところの危惧は当然あると思いますけれども,甘い自己評価をやっているところ,甘い第三者評価をやっている第三者機関がとう汰される土壌は,日本の教育の世界の中で十分存在するということを前提にしない限り,ほとんどこういう第三者評価をどうするのかという議論自身に意味がないということになってきますので,私は基本的にはそれは市場の原理に任せるべきだと思います。

【菊川部会長】
 柴山委員,お願いします。

【柴山委員】
 私も吉田理事長の御発言にすごく納得する部分が多いです。評価は基本的に民間に任せる,マーケットに委ねるというふうな形にしておいた方がいいかと思います。いわゆる学力テストのイメージですと,受検者が1万名くらいでないと,企業として,経営が成り立たないという指標もあります。それを考えますと,趣味等に入っていくような検定ですと,そんなに受検者数は多くないと思いますし,ましてやパフォーマンスアセスメント等でテスト理論にもとづいて統計的にきちんとデータを集めてとやり出すと,費用がかかって企業として経営が成り立たないというのは目に見えていると思います。基本は,民間に任せる。それをこの参考資料の中にもございましたが,弁護士や会計士等が入っていらっしゃるような,いわゆる定型の評価のところで担保していただき,あとは大学入試に使われるような検定に限っては,その信頼性,妥当性というのを担保した上で,評価していくべきだと思います。
 それから第三者評価機関ですが,私自身,幾つもの団体の品質保証のアドバイザーのようなことをやっていて思いますが,幾ら理論が分かっていても中身分かっていないと,的確な質保証というのはできません。評価のための人材養成が追い付いていないということもございますので,ダブルスタンダードであってもいいし,トリプルスタンダードであってもいいし,検定の特徴や役割特性によって,評価スタンダードをそれぞれにふさわしいものに変えていく仕組みにした方が良いかと思います。

【吉田理事長】
 私もテスト関係の人材不足が一番大きい問題だと思っております。日本ではこれまでテストを評価するという歴史がございませんし,教員の養成課程でも,テスト,評価,測定ということは全然取り扱っていないため,学校現場がかなりいいかげんなテストで動かされているというのが一番大きな問題であると思います。子供たちは真面目に勉強したにもかかわらず,測られているテストがいいかげんだというような文化は,何とかして早くなくす必要があると思うのですが,大学でこういう人材養成をしてこなかったということがありますので,この人材養成の問題に関しては,今,柴山先生がおっしゃるとおり,これからしっかりやらなければいけない。ここ3年ぐらいの間にやっと文部科学省を中心として,テストの議論が始まってきて,いよいよここまで来たと考えています。是非このテストに関する議論が成果を上げていく,その一端としてこの部会の議論,若しくは民間の検定試験の活用,こういうところに関わっていく若いテストの専門家の養成がされていくことが一番重要な点です。当機構としても,このことに関しては積極的に関わっていく必要があると思い,私はこのNPOの理事長を引き受けたわけです。そういう流れの中でも,柴山先生がおっしゃったように,例えば大学の入学試験にこれを使うということになれば,かなりしっかりとした第三者評価を行わない限り,大学入試そのものに対する疑義が出てくる危険があると思います。
 ただ,御承知のとおり,センター試験もかなり誤差があるテストでありまして,いわゆる誤差の範囲で評価の仕方が幾つかあるわけですが,0.8を超えていれば良いというのは,世界的な基準からするとかなり甘い。今行われている大学入試も問題を抱えているということを前提にした上で,こういういい加減なテストでも生き残れるという文化をなくしていくために,まずその検定試験の在り方のようなことから議論され,第三者評価の在り方が中央教育審議会から出てきて,それがしっかり行われる必要があります。
 生涯学習は,人は自ら学び,自ら社会を構成していこうという存在であるということを前提にしており,その上で,この検定試験の在り方を考えているわけですから,当然のごとく,マーケットによってしっかりとそういった機能が果たされていくためには,国がどのような形でそれを推進するための立ち上がり段階での支援とか補助を行うべきかという議論が必要なのではないかと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。
 委員の皆様,御意見いかがでしょう。益川委員,どうぞ。

【益川委員】
 静岡大学の益川です。今回のお話は,全てとても大事だと思っております。その上で,更にかぶせる形で,アイデアを伺いたいと思います。民間の検定試験は,選別のためではなく,学習の質の向上を目的にしていることというのはすごく大事な視点だと思います。ただ,現状として,その受検者もその検定結果を使う側も,選別のためだけに使ってしまうというような,そういう風潮もまだ根強いと思います。
 例えば今回のこういう自己評価,第三者評価を通じて,こういう考え方をきちんとその学習の質の向上のために使っているんだということを広げていくための認識とか,そのための仕組みみたいなところも評価できる可能性というのはどこかであるのかどうか。何かそういうアイデアがあったらよろしくお願いします。

【吉田理事長】
 検定試験というのは多様でございまして,例えば「ご当地検定」のようなものもございます。この中には,ノリと遊びで作っている試験があったりします。私は,このことを否定するわけではありません。問題はその結果を社会的に活用するとか,その結果を尊重していくという場合には,やはりきちんとした自己評価であるとか,テストの品質を担保すべきではないかということを,運営する団体の側が社会的責任として自覚していくようにするにはどうしたらいいかということです。
 これから地方創生の問題が大きくなってきたときには,この「ご当地検定」は極めて大きな価値を持ってくるだろうと思います。私も,京都の京都検定等に関わりましたが,興味,関心を持つ方が集まってきて,自分の故郷,自分のまちに対する意識を向上させるには,この検定試験というのは極めて大事だと思っています。
 最初の段階がノリと遊びで始まることを否定してはいけなくて,ノリと遊びで始まったものがより良くなっていく。これは正に,生涯学習の基本的な考え方です。何か決められたことを学ぶのではなく,自分でやりたいことを学び始めてみたら,それが面白くなってきて,それが社会的効果を生んでいくというためには,どのような評価の過程を踏んでいくのかとか,そういう方々に対する研修であるとか考え方を説明していくという機会を作っていく中で,一人一人が社会的な自覚を持っていくような仕組みをどう作るかというところが一番大事だと思います。私はここのところに関しては,多くの検定団体に呼び掛けをして,機構として研修会,勉強会等を続けていく中で,テストとはこういうことなのかということを分かっていただくような文化を広げていくことが一番大事だと思っております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,山本委員,お願いいたします。

【山本委員】
 形成途上の作業の中でお考えのこと,あるいは吉田先生なりの経験も付加された,非常に興味深い,かつ,非常に原理的な発表で,大変私のストレスが解消されそうです。
 私も認証評価や大学入試等に関わる中で,テストが非常に完成的な形態であればいい,あるいは認証評価も精密になればいいという認識を前提にして,今,作業が進められています。本当にその前提一つ一つがそれでいいのか,ということを議論していたら,いろいろなことができませんので,それ抜きで作業が進んでいるような感じで,どうなのかと思っています。今おっしゃったように,コストの問題から,あるいは本当にそういう評価できる前提の準備があるのかどうかという問題から,それをどう乗り越えていくかという点で言うと,こういう制度そのものは必要だと思いますので,経験をどのように積み上げていくかという点が重要だと思います。その点では対話的な評価,評価対象と評価するものが一緒になって作業するという,そういうようなことを一つの経験的なお知恵として発表されていましたが,私も大学の認証にコミットしていて,評価する者と評価される者という関係で,それが幾ら蓄積しても,双方にとって非常に過度な労力が掛かっています。そういう対話的評価とか共同的評価になることによって,実際にはいろんな実施主体がエンパワーメントされていくということを本当に経験的にも思っているので,そういうことをもっともっと強調されてもいいのではないかと感じました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,加藤委員,いかがでしょうか。

【加藤委員】
 先ほどの山本委員の意見にも関係していると思いますが,第三者評価の在り方としてこういうアイデアについてはどう思われますか。第三者評価は,自己評価が厳正に行われているかどうかということを審査する役割で,かつ,その自己評価のプロセスに入っていて,自己評価が適切に行われないならば,アドバイスをして,きちんと自己評価が行われたということを保証するという,そういうような第三者評価の在り方というのは,どうお考えでしょうか。

【吉田理事長】
 私も,最低限それは必要だろうと思います。問題は評価もいろんな段階といろいろな方向性がありまして,例えば,「英検」,「漢検」,日本語検定等の大きな検定試験の場合には評価がきちんと行われていることが前提になっていますので,そのために今言ったチェックみたいなことをベースにするという形でいいと思います。しかし,検定試験の内容や,テストとはこういう構成をするものだとかいう意識がないところに関しては,やはりきちんと評価して,育成していくということが必要になってくるだろうと思います。
 もう一つは,先ほど申し上げましたパフォーマンス評価的なものです。従来のペーパーベースで評価するというもの以外の評価はこれからかなり広がっていくだろうと思います。もっと言うと,それをしていかなければいけないわけですが,どこも経験がないわけですから,第三者評価を推進する側が主導していかないと,自己評価だけでというのはなかなか難しい。山本委員がおっしゃったような,いわゆるエンパワーメントするためには,自己評価と第三者評価とを分けるのではなく,一体として評価活動を行っていき,その中に第三者機関が関わるとことが必要になってくる部分は,このパフォーマンス評価に相当あると思います。ポートフォリオをはじめ,いろいろなことが研究されてきていますが,その研究成果がなかなかまだ教育の現場に根付いておりません。それを根付かせていくという中で,例えば国の側の全国学力調査の場合にも,A問題,B問題という形で,やっとPISA型のB問題が定着し始めたぐらいのところで,私はよくC問題と言っていますが,その次のステップとして友達同士で議論している,その議論の過程を評価する。そういったこともこれから先,必要でしょうし,特に大学のこれからの入試改革の中で,英語系の中ではそういった議論や討論を評価するということが始まっていくときに,それをどうするのか。それに対する検定の能力をどう付けていくのかということが,今,先生がおっしゃったような形で,ただチェックするだけという第三者評価ではない,次のステップが当然視野に入っていかなければいけないのだろうと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,今野委員。

【今野副部会長】
 今のお話でも第三者評価の中で,相互でいろいろ刺激し合いながら新しい評価を作っていくというのは,それはとてもいいことですし,現に大学にいる身からすると,そういう評価は大学でもやっていかなければいけないと思ったりしております。
 それで,第三者評価と国の関わりのところで,国が直接関わるのは良くない,一定の基準を国が提示するという間接的な関わりが良いということで,正にそういうことだろうなと思いながら,そういう意味では,先行的に大学では認証評価ということがやられております。第三者評価をする機関を国が認証する。全体の枠組み,基準を定めるということだと思いますが,この資格検定などの場合の国の関わりもそういう認証評価的なものがイメージとしてあるのか,あるいは別の形なのか。あるいは認証評価をする場合だと,大学とはどういうところが違ってくるのかと辺りでお話を伺えればと思います。

【菊川部会長】
 お願いいたします。

【吉田理事長】
 今,実はどの形で評価を行うのが一番いいのかを調査研究している最中であります。大学評価と一番違いますのは,大学というのはかなりの組織体を持っておりまして,やろうと思えばいろいろな対応をできる部分があるわけです。ところが,民間の検定試験団体は多様な形でありますので,中には3人か4人ぐらいの事務所でやっていて,結構な受検者がいるところがあるわけです。そこに対してどこまでのことができるのかということがございますので,今野委員からの御質問に関しては,今後の研究課題という形にさせていただけますでしょうか。まず我々からすると,かなり大きな組織としてやっている検定団体の検定試験の評価ということから,先ほど加藤委員の言われているような,チェックだけしていくという第1段階のものと,次の第2段階として,こういう形の第三者評価の形が必要だという,育成的な第三者評価の在り方と,正に今言われた,認証を含めたところをどうしていくのかというところをこれから考えていくというところにございます。そこに関しては,今,私の方でまとまった意見として申し上げられることはできません。
 ただ,大切なのは,きょうはマスコミの方は来られていないかもしれませんが,日本のマスコミもこの問題に関しては相当にいいかげんで,例えばこの間,大学入試改革に関して,複数回実施断念と大きく出て,記述式はやることになったが,という報道がありました。これは逆だろうと。今回の大学入試の改革の中で一番大きい論点は,アクティブラーニングをベースとした,知識だけではない能力をどう判定するかというために,記述式を導入することの方が大事なのですが,複数回やるかやらないかというどうでもいい話の方が,断念することでマイナスイメージが出てくるみたいな報道がされているように,教育の評価の問題に関しては,報道のされ方も相当いいかげんな部分があります。今言われた認証評価のところも余り変な形で出しますと,そのことでもう検定の第三者評価は受けたくないというようなイメージを与えかねないと思いますので,かなり慎重にそこのところはやっていきたいと思いますので,御容赦いただければと思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。
 ほか,いかがでございましょうか。実際,検定の担当しております萩原委員,宮井委員,いかがでしょうか。どうぞ。

【宮井委員】
 本日,吉田理事長のお話を伺いまして,大変安心いたしました。いろいろな立場の方のお話を伺ってきましたが,実際どのようにやっていくようになるのか心配でしたが,この資料を拝見させていただきまして,私はこういう考えに基づいて実行していくのが良いと思いました。しかし,これを実際に実行する段階では,微調整をしていくことも必要と思います。また,先ほどおっしゃっていたように,その検定が持つ目的に応じて,例えば「英検」のように多くの受験者がいて大学入試に使われるところや,それほどの人数ではない検定,あるいは趣味的なものは区別して行っていくのが現実的だと思います。

【菊川部会長】
 いかがでございましょうか。

【萩原委員】
 吉田理事長の御発表は,全体に検定を育てていくというコンセプトがあり,とても賛同できます。例えば第三者評価の中で,その第三者評価を受ける団体のスタッフも一緒に入って実施していくという点は非常にいいアイデアだと思います。やはり,第三者評価を受けてから,その先,評価を継続してやっていける人材を育てていくことは,なかなか難しいところがありますから,すばらしいアイデアだと思います。
 自己評価は最低年1回ということをおっしゃっていましたけど,第三者評価はどのぐらいの割合でやっていけばいいと考えていらっしゃるか,お聞かせいただければと思います。

【吉田理事長】
 定型的評価に関しては,2年に1回ぐらいでいいだろうと思っています。自己評価が行われていく過程が大体表に出てきましたし,今ネット上に自己評価の結果を公表することが当たり前になってきましたので,それをチェックするということであれば,2年に1回で良いと思います。ただし,テストに関しては,年度内で行われたテストはかなりの回数がいろんな形でありますので,その品質をチェックしていく,若しくは第三者評価をちゃんと行っていくということが必要ではないかと思いますので,年に1回はやる。年間1回だけ試験をやっているところはほとんどなくて,やはりビジネスでやられているわけですから,年間で10から20回ぐらいのテスト,若しくは級別に分けていくと,かなりのテストが行われていますので,それに対しての評価は年度を超さない方がいいだろうと思いますので,その1年1年で,次の年のテストを作られるためにもきちんとした評価が必要と考えております。

【菊川部会長】
 吉田理事長,どうもありがとうございました。では,検定試験を活用している具体的な取組についてということで,帝京平成大学の横田学科長,日本工学院の谷口科長に続けて御発言を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

【横田学科長】
 御紹介いただきました横田でございます。
 私どもの大学の児童学科は,教員を養成していますが,教員になりたいという希望を持ってくる学生と,そうではなく,大学に入ってから教員になろうと思うような学生がおります。また,開放制の教員養成課程の大学で,教員になることもできるというのが前提ですので,決して教員にするために学生たちを養成しているという,そういう押さえ方をしないでいるところでございます。
 1学年の学生数は,定員100人でございますが,実際は110人くらいの学生がおります。その110人のうち免許を取っていく学生が90人から95人です。小学校の免許は基本的に全員取りますので,免許を取っていくのが90人強です。それを基礎免許としまして,特別支援学校の免許を取っていくのが35人から40人くらいです。毎年これは人数が変わってきます。教員採用試験を受けるのが55人から65人ぐらいです。一次試験に合格したのは,今年度に関していいますと32人,そして,二次試験に14人が受かって,期限付の採用が8人ですから,22人くらいが受かっていくというような大学でございます。
 私どもが学生に期待していることは様々なものがあるわけですが,一般常識が分からない学生がいます。本当は中学校を卒業したときには,全部覚えていてくれているはずのものを覚えていない。あるいは高校を卒業したときにはできるようになっているはずのものが,全然できないまま大学に入ってきてしまっているという学生がいる。
 学生というのは,入学試験を受けて大学に入って4年間毎日毎日,講義を受けて,前期の試験,後期の試験があり,試験の間にレポートを提出し,そして,それを評価され,最終的に4年生の7月頃になると採用試験を受けて,その後,卒業論文を書いて卒業していく。学校の先生になった者は,今度は自分が授業をして,毎日毎日,子供にテストを出していく。
 どういう人間を育てていきたいのか,ということを考えていかなければならないところに引っ掛かってくるのは,やはり学生たち一人一人がこの社会に生きてきて,生涯,本当にいい人生だったという思いで自分が生きていき,そして,自分が子供たちを育てるのであれば,その子供たちに何を残していく,伝えていくかという文化の伝承ができるような教員を育てていかなければ,我々の本当の使命にはならないのではないか,そのようなことをずっと考えてきました。
 それは全部授業の中でやればいいじゃないかと我々は思いましたが,しかし,やはりそれを具体的にするにはどうしたらいいだろうということで,検定を取り入れることにいたしました。実際には,数学検定は今年度から,2年ほど前から日本語検定を入れることにいたしました。高いところを望むことではなく,最低限のところを望むようにしようということで,3級ないしは準3級を教育実習に行く大前提になる教育実習1という科目を履修する際の一つの基準として設けていこうと考えたところでございます。
 日本語検定については,準3級という基準を設けています。実は非常に残念なことでございますが,ついこの間も,合格まで1点足りないので,来年度何とか取りますので,履修させていただけませんかということを平気で言ってくる学生がいました。私は,「そうか,君,1点足りなかったのか。残念だったね。車の免許を取るときに合格点は90点だ。じゃ,89点だったらどうなる」と言うと,「絶対落ちます」と学生は答えました。「同じなんだ。だから,君は,今回はアウトだね。」「1点を何とかなりませんか。」「検定試験の合否は私どもが基準を決めているわけではない。この検定に合格しなければ,教育実習に行く大前提になる教育実習1という科目を履修することができないので,教育実習に行けないとあらかじめ言ってある。それを君は合格できなかったから,そして,年間何回かやっている試験のうち,1回クリアすればいいものができなかったから,こうなったんだ」というお話をしましたら,学生も初めて厳しいものに出会ったというような,そういう形で諦めていっておりました。
 日本語検定を取り入れさせていただいたことの良いところは,確かに教員になるための勉強の中には,国語という時間,教科もありますし,教科教育法国語というものもありますし,日本語に関連するものや,学びと言葉といったものなどそういう科目が幾つもありますが,この検定をやることによって,敬語の使い方,漢字,文法,表記,それから,語彙が増えたり,言葉の意味をもう一回考えたりというような,もう一度別な角度から学ぶというチャンスが増えたということを,我々教員たちも認識しているところでございます。
 もう一つ,今年度から数学を入れました。実用数学技能検定でございますが,これは3級以上を取るようにしております。大学に入ってくる段階で,一定の人数が検定を取ってきていますが,この大学に入ってからこの検定に出会うという学生も結構おります。
 こちらの検定の場合には,一次試験だけを受ける,あるいは二次試験だけを受けるというやり方もあるということで,学生たちが今回は二次だけを受けよう,今回は一次だけ受けようというように,何回かのチャンスを生かしながら,2年生が終わるまでの間にこれを生かしているという実態でございます。
 日本語検定受検の状況ですが,昨年度は118人の者が1年生と2年生で受けて,3級に受かったのが62人,準3級に受かったのが41人ですが,不合格と未受検者が合計15人おりました。これを受けないことには,教員になる道が閉ざされるということで真剣でございます。
 今年度に入りましたら,112人が受けまして,3級が取れたのが50人,準3級が41人で,未受検が9人,不合格が12人です。恐らく,今年度の途中で必ず取っていくだろうと考えております。
 実用数学検定でございますが,今年度から始めたばかりでございますので,今年度入学の者たちが受けるという形になります。合格者が34人,一次のみの合格が10人,二次のみの合格が3人ですが,実は不合格28人もさることながら,37人の者が受けていない。どうして受けていないのかと,学生に聞きましたら,来年受ければいいと考えている者が多い。来年受ければ通るという自信があればいいんですが,うっかりすると大変なことになるということで,おどかしながらやっているというのが実際でございます。
 私どもは,日本語検定は準3級以上,実用数学技能検定は3級以上取得を3年次に行われます教育実習1の履修要件にしております。学生の実態に合わせた難易度の調整は全く行うことのない外部の評価でございますので,これをさっき申し上げた,1点足りなくても駄目ということがきちんと通っていくということで,いいということ。それから,入学直後のガイダンスのときにこのことについてきちんとお話ししていますので,学生たちは,この検定を取らなければ,せっかく大学に来ても駄目だという意識になりまして,意欲向上につながるということがはっきり見えてきています。
 日本語検定の意義というのは何だろうと考えていきますと,一つは,教員としての基礎的な知識,教養力がしっかりと高まる。それから将来,小学校の教員として国語教育に携わるための必須事項が身につく。読む,聞く,話す,書く力の基礎的な能力をバランス良く学び直すことができる。もちろん,語彙力や思考力が身に付いていくと,最終的には採用試験の面接にも使われることになるだろう。このようなことを感じていました。
 しかし,表面に表れないものとして,日常生活に必要な日本語,いわゆる文化の伝承ができる最低限の学びをしましたという保証になるのではないか,ということが挙げられます。そして,最低でも2級以上でないと履歴書に書けないと学生には言っておりますので,3級を取った学生で,今,2級に挑戦しようという者がかなり増えてきているというのは確かです。
 次に,数学検定はというと,数学,算数教育の中に使われる,本当であれば高等学校の学習で身に付けておかなければならない知識がすごくばらばらになっていて,学生の中でも知識の量がアンバランスですので,もう一回この検定をやることによって,補完教育ができるだろうということ。それから,外部団体の基準であるので,学生の能力や大学での学習成果を評価するということには,ちょうどいいものとして考えています。
 日常生活の中でも,数学的思考は活用されますが,実は自信を付ける,自信につながるということが本当に良い,大切なことではないかと考えているところです。
 これは私が写した写真ですが,私たちはこういうツバメのひなにえさをやるために,勉強をさせているのではありません。えさをやって,このツバメが元気になって,このように自分でえさを取りにいくことができるようにしないうちは,やはり本物にはならない。うっかりすると,私たちはえさを与え続けたら,それで子供に教育をしたと思い込んでしまう。しかし,飛ぶ練習をさせなかったら,本物にはならないだろうということに我々は立ち返らなければならないと思いながら,取り組んでいる最中でございます。
 実際には,検定とは何だろうということを考えていきますと,やはり社会全体でこの検定を取ったということで,評価されるようなものでないと,我々は本当の意味では使えないと思います。その評価とは何か,検定とは何かというと,実はこれは自信がない人が自分もこれが取れたという自信になるというものが検定の結果であると思います。例えば掃除の検定というのがあります。私のところに知り合いが来て,「この検定は本当に良いですよ。ただ安い会社に掃除を頼んだら,きれいにやらないけれども,自分が自信を持って掃除の検定を取っているというところに任せると,本当にいい仕事をします」ということを言っていて,そのような効果もあるのだなと思ったところです。
 それから,検定を取ると,独り善がりではなく,自分の能力がきちんと証明される。それから,就職活動のときに自己分析ということをさせられることが多いですが,自分の良さは特にありませんということを堂々と言う学生がおります。その段階から,私はこれができますとか,私はこれが得意ですということが言えるものを見つけさせるということが大学教育の中で,残念ですけれども必要だということも今現在は認めているところです。
 企業に期待することとしてはどんなことがあるのかというと,この検定を取得するために努力してきたということを認める。努力を認めてくれる,ということがもしあったならば,大変いいだろうと思っております。私が,キャリア支援の担当の人たちのところで,検定試験を活用促進することについて,この検定を取っている人を採用しますというように募集要件に入れたらいいのではないかという話をしましたら,学生たちが応募できなくなりますといわれました。それを4年前に伝えておいたらできるようになるんじゃないかということを,今,議論している最中でございます。
 先ほど吉田理事長が1,000以上は検定があると言われましたが,私たちがその検定を受けたら何ができるのかということ,それから,その検定を受けることによって,どんなところに就職ができるのかということがもっと明確になっていれば,私たちはもっと検定を使うことができるのではないか。そのようにも思っているところでございます。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 続きまして,谷口科長,よろしくお願いいたします。

【谷口科長】
 日本工学院専門学校,ゲームクリエイター科・CG映像科,谷口直也でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日はこのような場で発表させていただく機会を頂きまして誠にありがとうございます。
 それでは,私どもが検定試験をどのように活用しているかに関しまして,せんえつながら御説明させていただきます。
 まず大前提として,我が校に関しまして御紹介させていただきます。我が校,日本工学院は,日本工学院専門学校と日本工学院八王子専門学校という2校から構成されております。クリエイティブな分野からスポーツの分野まで,7学部,40学科から成り立っております。
 創設,1947年。来年で70年を迎える歴史ある学校でございます。その中,私が担当しておりますCGとゲーム,それぞれの学科で資格取得に関しましてどのようなカリキュラムを提供し,取り組んでいるかということを御紹介させていただきます。
 まずゲーム科から御紹介させていただきます。下の方にありますビジネス検定,あと,ビジネス著作権検定,こちらを1年生のうちに取得することを目指し,再試験も用意しながら,7割,8割の学生が取得できるように取り組んでおります。
 具体的には,ビジネス検定は御存じのとおり,文科省後援のビジネスマナー,ビジネススキルを社会人として学ぶという,能力として身に付けるという検定でして,就職を目指す専門学校の学生においては大変重要な試験になります。ですから,これを1年生のうちになるべく早く取得することを目指しております。
 次に,ビジネス著作権検定ですが,こちらはゲーム科のクリエイターとして,権利を尊重する人材を育成するという観点で,全員取っていくということを目指しております。
 その上にありますコンピュータ利用技術認定資格,情報処理技術者試験などは,2年生以上になって,放課後の授業も希望者制で行っております。160名の規模,学生がいますが,卒業するまでに数名が取るといった感じになっております。取得率に関しましてはこちらで御紹介させていただきます。
 先ほど必須で取っていくという検定に関しましては,ビジネス能力検定,ビジネス著作権検定がございますが,160名の規模で,約110名であったり,130名であったり,取得しております。片や,マイクロソフトオフィススペシャリストとか,ITパスポート,基本情報技術者などは,少し取得率が減ってきております。
 続きまして,CG科に関しましては,ゲーム科同様,ビジネス能力検定とビジネス著作権検定を1年生のうちになるべく取るということで同じように進めております。CG科の特徴としましては,CG‐ARTSさんが提供しておりますCG検定を取ることを目指しております。
 次のページで取得率を書いておりますけど,左のビジネス検定,ビジネス著作権検定に関しましては,全学生が56名おりますが,7割程度が取得するという状況でございます。あと,CG科の特色として,CG検定を推奨しておりますが,そちらについては全56名の2年生のうち,半数弱が取っているという状況でございます。
 そのほか,資格の活用という観点でいいますと,昨今,留学生の入学が増えております。留学生に関しましては,留学生向けに行っている日本語能力検定のN2を取得することを規定としまして,受け入れております。
 そんな中,本題に移りますが,検定試験の活用の具体的なところを御説明させていただきます。この2‐1から2‐4の項目に沿って御説明させていただきます。
 まずは2‐1,本学における検定試験の活用状況。また,検定試験を活用することの意義に関しましては,三つの観点で活用しております。1,成熟度のチェック,2,授業の標準化,3,就活のアピールポイントの三つでございます。特に就活のアピールポイントに関しましては,専門学校は就活するために2年間なり4年間,頑張っております。そのような中,就活の際にアピールできる道具として,ツールとして資格を一番活用しております。
 続きまして,2‐2,検定事業者に対して,本学で活用するに当たり,どのようなことを期待するかに関しましては,就活において,企業が求める能力を検定していただきたいと思っております。また,その後も,学んだことが生かせるものであってほしいと願っております。これは2‐1にも関係しておりますが,せっかく取る資格でございますので,企業に入る就活の際にも必要とされるものであってほしいし,その後,企業で活躍する場合も活用できる検定試験であってほしいと,能力であってほしいと願っております。
 続きまして,2‐3,企業に学生を送り出す立場から,検定試験を活用している企業にどのようなことを期待するか。こちらに関しましては,企業も積極的に資格制定・改訂に加わり,人材募集要件に資格取得を条件として明記してほしいと願っております。一つのエピソードを御紹介させていただきますと,ゲームクリエイター科でUnityというゲーム開発エンジンが最近普及しておりまして,それを作っている会社が,今度Unityの検定を作るというお話がありました。お話を聞いたところ,ゲームメーカーがその検定にとても期待していまして,どういうことをその検定を通して学んでほしいかということを議論した上で,その検定を作ってらっしゃるそうです。そんな中,我がゲームクリエイター科もその理念にとても共感するところもありまして,積極的に取り入れていきたいと思っております。
 何が言いたいかというと,企業もその検定を通して学んでほしいことというのはあるはずです。それを是非企業も積極的に加わっていただいて,検定を形作っていただければと思っております。
 続きまして,2‐4,検定試験の意義や活用の促進について,国や地方公共団体による周知・啓発が考えられるが,どのような手法が効果的か。こちらに関しましては,教員としての一意見として申し上げさせていただきますと,検定試験の公的な認識機関を設置し,その人が何の資格を持っているか,一目で分かるようにしてほしい。また,企業もその人が本当に資格を保有しているかを確認できるようにしてほしいと思っております。こちらは,就活指導をしている中で,学生と向き合っている中で,例えば履歴書等を書かないといけない。エントリーシートとか。何の資格を取っているかを書けない学生がいます。資格はもうしっかり取っているはずなのに,何を取っているか,1級なのか2級なのか,というのが明確に分かっていない。そういったものが,例えばフェイスブックや,ヤフーのマイページでもいいですが,第三者の機関が公的にそのマークを出せるような認証を行った上で,マークを出して,自分のページに行けば,何の資格を今持っているかということが一覧できるようになると,忘れることもありませんし,資格を取ったということが証明されます。それを企業に見せられるようにできれば,詐称もなく,就活なども行えるというメリットもあるのではないかと思いまして,ジャストアイデアで御紹介させていただきました。
 最後に,情報公開についてお話しさせていただきます。
 こちらは一つですが,検定を利用する立場から,検定試験についてどのような情報が公開されているべきと考えるかにつきましては,本当に一般論ではございますが,その検定を提供する組織の内容であったり,設問の作成プロセスだったり,受検者数,合格率などは,公平性を保つために公開してほしいと考えておりますし,また,検定の有用性をしっかりアピールしてほしいと考えております。
 たくさんある検定試験の中で,これは何のために取るのかというのが分かりやすくなっていることが重要だと思います。私ども専門学校としては,2年間の中で,たくさん学ぶことがあります。そんな中,どの学び,どの授業をすることが重要か,就活に最も有益かと考えて,日々,毎年,試行錯誤しております。そんな中,資格を取るという選択をする場合は,なるべく就活する学生にとって有益であってほしいと願っております。ですから,先ほど来申し上げましたが,企業,検定実施団体,あと,我々学校などが協力して有益な検定試験を作り上げていくことが重要だと思っておりますし,日本工学院としても微力ながら貢献させていただきたいと思っております。
 最後に,ゲームクリエイター科,CG科の科長として,日本工学院の代表として発言させていただきましたが,40学科ある,多岐にわたる分野もございまして,分野によっては,全く検定に対する取組が全く違います。例えばIT分野であれば,資格そのものが就活に直結しますし,片や,我々のゲームやCGの分野のような,エンターテインメントとか芸術の分野に関しましては,資格よりも,芸術性だろうという考えがあり,クリエイティブの世界は,もうそういうのは置いておいてというところが多少あります。ただ,基礎は重要だという認証の下,資格はしっかり取らせておりますが,分野によってまちまちであることを御承知おきいただければと思っております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。大学と専門学校で検定試験を活用している優れた事例を御発表いただきました。
 どなたからでも結構でございます。御質問,御意見,よろしくお願いいたします。
 では,栗山委員,お願いいたします。

【栗山委員】
 貴重な事例の御紹介ありがとうございました。質問を一つさせていただきたいのですが,検定を受けるための支援というのは,学校として何かされているのかということですが,不合格だった学生に対するケアであるというのもあるでしょうし,そうではなく,更に上のグレードを目指している学生に対してのケアというのがあるのかもしれないと思いまして,何か支援をされているのかというところを質問させていただければと思います。

【横田学科長】
 日本語検定につきましては,学生に学習の仕方というような形で,1か月に1回か2回,希望者を対象に最初はやっていましたが,やっぱり希望者だけでは駄目でした。一定の時間に少しやってみるというようなことで,そういう支援の仕方をさせていただきました。
 それから,数学検定に関しましては,数学検定協会が講座を開いてくれるのですが,その講座をうちの先生が見ていて,私がこれからやりますと言って,希望者だけを集めて支援をしております。1週間に1時間,全くその先生のボランティアでやっております。学生が分からないところが出てきたときに先生のところへ行くというような形で支援をしています。

【菊川部会長】
 谷口科長,いかがでしょうか。

【谷口科長】
 我々日本工学院のCG,ゲーム科としましては,先ほど申し上げましたビジネス能力検定とビジネス著作権検定は,進級の条件にはしていませんが,1年生のうちに基本的には取りましょうということでうたっております。なるべく学内で試験を行えるようにしております。1回落ちた学生に関しては補講を行って,大体毎年,どちらの試験もまず半分が合格し,残り半分の学生が再トライし,残りの半分がまた合格するというような感じです。その精度を上げていくべく,毎年取り組んでいますが,それをセットで取り組んでいるというのが現状です。
 あと,高度な資格に関しましては,放課後に学年問わず,提供しておりまして,ほぼボランティアに近い形で教員が提供しております。悲しいことながら,人数はそんなに,教室の全部が埋まるということありませんが,そんな中,授業を提供し,高度な資格も取るように支援しております。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。
 柴山委員,お願いします。

【柴山委員】
 今,検定を使われる側のサイドに立って,非常にすばらしいグッドプラクティスをお聞かせいただいたような気がします。それで,横田学科長も谷口科長も共通しておっしゃっているのが,検定を受けるメリットということです。これは,その検定を受ければ実際にどんなことができるのかというのがその前提条件にあると思いますが,例えばいろいろ使われている検定を受けた学生が良い小学校の先生になっていったとか,あるいは良いクリエイターになっていったとかという御経験があるのかどうかということと,もう一つは,これは先ほどの吉田理事長からのお話にもありましたが,第三者評価でやるときに,この検定が,本当にその検定に通ったら,その検定が目的としているようなスキルなり,能力なりが身に付いているのかというのをチェックしておく。そのチェックしておくのも,実際にその第三者機構の方がチェックするのではなくて,自己評価の方でそういうデータを出されておいて,その手続がきちんとなっているというのを押さえておけば,例えば先ほどお二方からお話しいただいたような,その検定を本当に使って,教育を進めていこうというときに,安心材料になるのではということも含めて,お聞かせいただければと思います。

【横田学科長】
 非常に難しい内容の御質問だと思います。小学校の先生にしても,特別支援学校の先生にしても,知識がたくさんあるということが,イコール良い先生とは言い切れないわけです。知識だけがたくさんあるから良い先生ということであれば,もっと簡単に先生を評価することができます。知識をどんどん詰め込めばいいと思います。
 ところが,子供と一緒に考えるとか,あるいは子供の心を思いやるとか,そういうことまで考えようとするときには,私はそれほど多くの知識よりも子供に寄り添うことができるということの方も一緒に育てなければならないだろうと思っております。したがって,この検定は,飽くまでも検定ですから,知識のところが優先になる。心を測る検定があったらいいですが,そういうわけにいかないので,私は検定を取ったから良い小学校の先生になれていますかと言われると,それはイコールとは完全に言えません。ただ,知識がない先生は良い先生にはなれないだろうと思っております。

【柴山委員】
 よろしいでしょうか。

【菊川部会長】
 はい,どうぞ。

【柴山委員】
 今の御発言,私もすごく納得するところです。資格とか試験といって,ある結果が数値化されたり,視覚化されたりすると,その結果が独り歩きして,試合ルールが試合内容を決めるようになって,豊かさがなくなると思います。それで,検定のその質保証といったときに注意しないといけないのは,飽くまでもツールの一つであって,こういうツールがあるから,このツールで測る限り,こういうことまでは言える,ただ,その言えるというところが分かった上で,そのユーザーサイドでは,そのツールを幾つか組み合わせながら,かつ,プラスアルファのところでカリキュラムを作っていくという発想にならないと,何でもかんでもそのツールに全部責任をおわせるようになり検定制度としてはかなりゆがみが生じると思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,藤田委員,加藤委員,大畑委員というその順番でお願いいたします。

【藤田委員】
 私も国立大学の教員ですから,学生教育に携わる者としましてお尋ねします。この検定を履修要件の中に入れた場合,それをクリアした学生が,卒業時までに次のレベルを目指すというのは意識的にどれぐらいの方がいらっしゃるのかということと,もう一つ,検定導入時の学内の状況,教員間の状況,賛否のところの部分はどうだったのかというところをお聞かせ願えればと思います。

【谷口科長】
 まず私どもの専門学校は検定を履修要件には特にしていないところがございまして,ただ,先ほど申し上げた二つのビジネス検定とビジネス著作権検定に関しては,1年生のうちに基本的には取るということでやっております。そんな中,本来もっと学ぶことがあるのではないかという議論もあります。ただ,やはり学びというのは,教員が学ばせたいことを学ばせることが正しいかというと,そうでもないと思っています。公になり,客観的に制定されたものを取ることというのはとても重要だと思っていまして,長年,先ほどの二つは取ってもらうように取り組んでおります。
 次のレベルに関して目指す学生がいるかという御質問に関しましては,そこはすごく悩みのところでございます。次を目指す学生はかなり減ります。2年生以降になれば,良い作品を作って,それが認められて,企業に就職できればいいだろうという本質論に向かいがちな学生を引き止めて,高度な資格も取ろう,それが役に立つからと言いたいところではありますけど,本当にそうなのかという疑問を感じながら,日々やっているという状況でございます。

【横田学科長】
 本学は,日本語検定は始めて2年しかたっておりませんので,まだ明確ではないですが,2年生の終わりまでに3級を取ってしまった者については,数名が1級,2級までやると言っているのがおります。あとはそれよりも教育実習の方に向かっていく,力を入れているのが多いと考えております。
 それから,先生方の賛否ですが,私どもの会議の中で提案をしまして,一応全員の賛成を得て取り組んでいます。内心,反対の者もいるだろうと思いますし,みんなの負担にならないかという議論もありましたが,負担よりも,学生たちが自信を持つ方が大事だろうという意見が強くなって,それに取り組むことになった,そんないきさつでございます。

【藤田委員】
 1点だけお尋ねしたいのですが,今後に向けまして,ほかの検定を導入ということについては視野に入れていらっしゃいますか。

【横田学科長】
 実は英語の先生方が「英検」を入れたいと言って,今ばたばたしていますが,そこまでやると本当に先生方の負担にならないかということを吟味しております。来年度中にその吟味が終わると,再来年から英検が入るかもしれません。そこは分かりません。

【菊川部会長】
 聞き漏らしたのかもしれませんが,費用負担はどのようになっていますか。

【横田学科長】
 費用は最初の日本語検定のときは,過去問の本を40冊ぐらい学科の費用で買って,学生に1回見せました。そうしたら学生が,これ,持って帰るわけにいかないからというので,みんな自分で買うような形になっていきました。次の年からは,学生が全部自分の費用でやっていく。受検も自分の費用という形で,受益者負担そのものでございます。

【谷口科長】
 新たに導入しようと検討している資格に関しては,先ほど御紹介させていただいたUnityの試験を積極的に導入したいと思っています。世の中はUnityが使える人という形で人材を募集しています。それはもう私どもとして願っているもので,このぐらいの検定を取っているので,このレベルがありますというのを証明するものとして,積極的に活用していきたいと思っております。
 あと,費用に関しましては,教材と同様の扱いにしていまして,4月,入学時に頂くか,若しくはその都度学生に払っていただくという状況でございます。

【菊川部会長】
 加藤委員,お願いします。

【加藤委員】
 聞きたいことの答えが先ほどの谷口科長の御発言の中にありましたが,改めて聞かせていただきます。検定試験を導入することで,学生の学習のモチベーションにしようという意図は納得できますが,ただ,それが今度は自己目的化してしまって,その学生が資格を取るまでは一生懸命勉強するけれど,資格取ってしまえばもうおしまい,継続的な学習の態度がなくなってしまうというようなことがないだろうか。取り越し苦労であればいいと思いますが,そういうことはありませんでしょうか。

【谷口科長】
 おっしゃるとおり,資格で就職を目指す学科に関してはそういったところがあると思います。資格を取って満足して,それで履歴書を書いて就活しようとするところがあります。片や,エンターテインメントとかクリエイティブな世界でいうと,資格よりも作品であったり,本質的な能力を見られがちだったりします。ですので,資格を取って満足ということはもう本当に極力避けるように指導している状況です。一方で,4年間もいて,若しくは2年間もいて,資格を一つも持っていないのかと就活の場で言われないようにするためにも,基礎的なものに関してはしっかり取るように指導している状況です。

【横田学科長】
 3級というのは,数学検定も日本語検定も中学3年生程度のレベルです。ですから,それを取ってその後に,2級に,1級にという学生は何人かいますけれども。それ以外の学生でもモチベーションが下がるというような者は見ておりません。

【菊川部会長】
 では,大畑委員,お願いします。

【大畑委員】
 こんなにメモを書いた回はないぐらいいろいろなことを教えていただいていますが,少し御質問させていただきたいのは,そもそも採用した検定というのは,1,000も2,000もある検定の中からどのように選定されてきたのか。選んで,採用されているわけですが,それはどのように探してきたのですか。

【横田学科長】
 どうやったら学生の力が付くだろうかということが前提の話としてずっとありました。その中で,先生方がいろいろな検定を持ってきて,吟味しました。その吟味した中から日本語検定が,今の学生に一番合うのではないかということでした。私のところには25人ほど教員がいますが,みんながそれを見て,これぐらいのことができていれば採用試験に十分間に合っていくのではないかという話の下に選ばせていただきました。もしかすると,もっと良いものがあったら,途中で変わるかもしれません。ただ,1年生に入ったときに見せるもので,そして,2年生の終わりまでに取るものですから,今年度入った学生にはこれですという形しかできませんので,そのような形での採用の中で選ばせていただいた2種類でございます。

【谷口科長】
 文部科学省後援の,定番の資格としてビジネス能力検定は脈々とやっておりまして,一方ビジネス著作権検定は,資格は本当に賛否両論で,それよりももっとやることがあるのではないかという中で,オリンピックのロゴの問題等もありましたので,やはりクリエイターとして権利を敬わないといけないというのは感じており,その中で探したところ,そのような検定があったという状況です。
 それ以外に学生にとって,就活において有益な資格があればどんどん取り入れたいと思っております。それは御提案いただいたりとか,積極的に探したりとか,そういった状況でございます。

【今野副部会長】
 横田学科長にお伺いしたいのですが,大学の学科の教育の中で,日本語検定とか数学の検定を活用して,こういう成果を感じてらっしゃるということで,それはよく分かりました。しかし,もともとは教員の資格を取るための課程認定を受けた大学で実際に免許を取ってという形になっていると思いますが,実態からすると,その必要な単位を取って免許を取るだけではなかなか十分でないという認識が多分あるのだろうと思います。それゆえ,正規の課程の補完的な役割を資格取得に求めているのだろうと思うのですが,お話の中では,正規の課程との関連では,教育実習の履修要件にしているということも出ていましたけれど,その正規の課程との関係で,教育課程編制上,どんな位置付けをされているのか。その辺りはいかがでしょうか。

【横田学科長】
 全く教育課程上のものとしては,別個のものとして考えておりますので,それは履修要件にしておりますけれども,教育課程の中で,このための時間を取るというようなことも全くございません。ただ,試験を大学の中で実施,まとめてやるというような便宜を図っていただいていることがありますので,それも時間外,土曜日の午前中にするとか,そういった形でさせていただいているというようなことだけしかございません。

【今野副部会長】
 もう一つ,谷口科長に質問です。私ども政策研究大学院大学の教員で,海外の留学生もたくさんいますが,アニメやコンピュータグラフィックスについて要望があって,実際,先生のところに数年前に何人も,何回か学生を連れて,お邪魔して,いろいろ説明を聞いて,大学の中,専門学校の中を見せていただきました。その節はありがとうございました。
 それで,きょうのお話でも資格との関係で,ITの場合と,それから,クリエイティブな世界の場合だと,かなり温度差はあるということで,そうだろうと思いました。基本的には専修学校の場合にはいろいろな分野がありますが,資格取得を目的として,そのカリキュラムを組んで,教育活動をするというのが基本だろうと思います。お話の中では,それだけでは足りないので,取った後の更にアート感覚を磨くような作品を作らせるようなことも重要だということで,そうだろうと思いました。
 特に見せていただいたときに,コンピュータグラフィックスだったでしょうか。企業からの作品募集を委託されて,それで,そのクラスの中で作品を作って,一番に選ばれたものが商品にもなっているということを聞きましたので,資格取得を超えたようなレベルの高いことも専修学校ならできるのだろうと思いました。
 非常に幅広く様々なことをやられているわけですが,資格取得と専門学校教育の関連性について,大きくこのように考えればいいということがあれば,教えていただければと思います。

【谷口科長】
 今野委員がおっしゃるとおり,資格を取る以外に,企業からいろいろテーマを与えていただいて,企業案件と呼んでいますが,企業をクライアントとして,そのクライアントの要望を満たすような作品を作るということはとても重要で,能力を養う上で重要なカリキュラムだと考えています。
 あともう一つは,ゲーム科でいうと,日本ゲーム大賞とか,全国専門学校ゲームコンペなどのコンテストがございます。日本ゲーム大賞は,アマチュア部門でいうと,大学も含めて競い合って,その中で切磋琢磨(せっさたくま)してやるというのが,今はもう,資格よりも一生懸命取り組んでいます。そんな中,資格,クライアント・企業案件・企業課題,コンテストなど,様々なものを織り交ぜながら専門学校を有意義に2年間なり,4年間を過ごしていただくというのを日々,試行錯誤しながらやっているという状況でございます。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 私も1点,横田学科長に質問です。先ほどの教職課程の中に資格取得を入れるという位置付けです。先ほど,検定試験をどういう観点で選ぶのかという御質問がありましたけれども,そもそも教職課程と関連して,検定試験を入れようと思った理由はありますか。ほかに,本当に力を付けるのに必要な取組,例えば学生ボランティア等あると思いますが,検定試験を入れようと思った理由というのはどういうことでしょうか。

【横田学科長】
 一つには,例えば「必ず」という字がありますよね。「必要」の「必」です。あの筆順といったら,本当をいうと,ばらばらです。こういうようなことを大学で教えるということ自体が,これは違うのではないかということが一番初めの話にありました。本当に必要なものというのは,大学に来る前に本当は知っていてほしいけれども,その知識がばらばら過ぎるという感じがありまして,そこでそういうものを一定程度の底上げをする必要があることから,この話になっていったと私は理解しております。
 自分の専門分野のことで,ある看護大学で講義をすることがありました。看護系の大学ですから,皆さん看護師を目指しています。全員立たせて,心臓はどこにありますかと言ったら,肩のすぐ下に心臓があるという学生が何人かいたんですよ。この人が看護師になっていいのかと思いまして。それは看護師になる前,小学校,中学校の理科で教えられたことですが,そういう知識がばらばらになっているということも確かにあります。そういう状態で学校の先生になられたら困るというのが私どもの本音のところです。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。
 では,3人の発表者の方,どうもありがとうございました。本日頂きました様々な御発表,御意見を踏まえまして,今後また審議経過を精査してまいりたいというふうに思っております。
 最後に今後のスケジュールについて,事務局の方からよろしくお願いいたします。

【竹下生涯学習推進課課長補佐】
 資料3を御確認ください。本日,会議でございましたが,次回につきましては,2月24日に会議を予定してございます。その後につきましても,資料のとおりとなってございます。
 なお,既に報道等もございましたが,2月15日に内閣府より教育生涯学習に関する世論調査の結果が出されております。次回の会議につきまして,本来であれば,本調査の結果について,本日御審議いただければと思いましたが,時間が取れませんでしたので,次回の部会において,この内容について御報告させていただくとともに,御審議いただきたいと考えてございますので,どうぞよろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 最後に,岩本総括官,よろしくお願いいたします。

【岩本生涯学習総括官】
 本日は非常に有益な御議論があった中で,第三者評価というものの位置付け,それから,定義ということに関して,御議論の中で聞いておりますと,評価という文化を根付かせる,そういう質の向上を図るために専門的な識見の高い第三者機関が各検定事業の支援をするという観点からやるのであれば非常に意義があるというような御議論もあり,そういう御意見も強かったと思います。
 そうした場合に,この第三者評価という,今,平成22年6月に文部科学省が,ガイドラインの飽くまで試案ということで定義させていただいている言い方がかえってミスリーディングをしないかどうかという点を,今後少し御検討を賜れればというふうに思います
 というのは,その第三者評価の定義については,希望する検定事業者に対して専門家,専門機関が行う評価というような定義になっているかと思いますが,このニュアンスだけで言うと,どうしても検定事業者の質を全て判定してしまう,あるいは社会に対して,もうこの検定事業は非常に信頼に足るべきものだが,これは信頼に足るべきものでないというように判定して,責任を負う,担保する,そういう非常に重い意味がどうしても想起されるというのが通常のことかと思います。
 現状によってそういう形のものがまた社会のコンセンサスがあって,現実にそういうことがうまくいくのであればいいのですが,本日御議論いただいている中で,本当に具体的な定義の仕方として,第三者評価と言って,こういう定義でいいのかどうか。その第三者機関による評価に対する支援なりというので,コンセンサスがあると思うのですが,そこについても,第三者評価ありきということではなくて,最終的には御判断いただければと思っております。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。細かい定義付け等につきましては,例えば検定試験につきましても定義を前のガイドラインのときから比べて,少し精査していかないといけないという課題もございまして,今の御意見も踏まえまして,次回以降,また議論を深めさせていただきたいと思っております。

―了―

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