学習成果活用部会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年6月18日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 13F 2・3会議室

3.議題

  1. 有識者からの意見発表
  2. 自由討論
  3. その他

4.議事録

【菊川部会長】
 おはようございます。第2回中央教育審議会生涯学習分科会学習成果活用部会を開会いたします。
 大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日も全員出席という御連絡を頂いております。
 今回は、学習成果活用を地域課題解決活動等に結び付ける方策について、有識者や委員の先生に御意見発表いただき、意見交換を行うこととなっております。
 最初に、意見発表を頂く有識者の方を御紹介いたします。東京学芸大学学長補佐の松田教授でいらっしゃいます。

【松田教授】
 よろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 よろしくお願いいたします。また、部会の委員でもいらっしゃいます左京委員からも2番目に御意見発表いただくことになっております。

【左京委員】
 よろしくお願いします。

【菊川部会長】
 では、議事に入ります前に、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【楠目民間教育事業振興室長】
 本日、座席表、議事次第のほか、議事次第に記載の資料1から4までの資料を配付しております。また、委員の皆様の席上配付のみとなりますが、松田教授からの本日の御発表の関係のリーフレット等の資料と、生涯学習の基礎資料がとじられました桃色の紙ファイルを配付しております。過不足がありましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 なお、委員の皆様方の机上には前回の議事録を配付しております。こちらは公表前に修正点等を確認いただくための事務連絡用の資料でして、会議資料ではありませんが、併せて御報告いたします。説明は以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。前回の会議録の案も出ているようでございます。
 それでは、松田教授にまずお願いしたいと思います。

【松田教授】
 それでは、どうぞよろしくお願いいたします。報告の方は、お手元の五つの資料がございます。それとスライドは、打ち出したものは皆様方のお手元にもあると思いますので、そちらを御覧いただきたいと思います。
 私からは、大学が深く関わりまして、教育支援人材を育成して活用していく事業を一般社団法人という形で、大学間の連携組織を作って取り組んでいる事業がございまして、こちらを御紹介させていただくことで、人材の育成と地域課題のマッチングということに関して幾つかの観点を御報告させていただければと思っています。
 まず、お手元のJACTESと書かれましたリーフレットを開きながら御覧いただきたいのですが、教育支援人材認証協会という協会を現在、東京学芸大学が中心になりまして、全国の21大学と1法人で構成をしております。これは、平成20年から3年間、GPで開発を行いまして、その成果をその後、一般社団法人として展開している事業になります。今年でGP期からしますと8年目の事業になります。
 趣旨は、一方では地域での学習意欲や、あるいはボランティア意欲が非常に高いという現状があり、他方では学校等を含めました教育現場での支援ニーズが非常に高いという現状があるにもかかわらず、その需要と供給があるにもかかわらず、うまくマッチングが行われていないということを、大学がプラットフォームになることで進めることができないかという趣旨で始まったものです。
 具体的には、スライドにもございますが、社団法人を組織として構成いたしまして、そこには大学が会員として加盟しております。その各加盟した大学が、地元の自治体と連携をしまして、講座内容を大学と自治体の協働により準備をし、その講座を学生あるいは市民の皆さんが受講されることで、協会がこどもパートナー、こどもサポーター、こども支援士と呼ばれる認証を付与します。その認証を活用する形で、講座修了者が各地の支援地域本部や子供教室や、あるいはその他子供事業に関わる教育現場に出向いていっていただくという仕組みを担保しようとしているところです。
 現在、その認証者数といたしまして、累積しますと7,000名に近い方々が既に認証を得てくださっていますが、基本的には情報を得たらすぐに現場に出られるというアクティブな更新を続けている認証者が、実数でいきますと2,500名程度ということになっています。
 この内容につきまして、詳しくお話ししていきたいと思います。
 まず、この認証制度の特徴というのは、大学が連携して組織を作ることで、ある種の持続性と、大学の先生が講師として共に学びを支えていくという、講師人材からの質の担保が特徴になっています。
 また一方では、様々な専門学校を含めました教育機関の参加を促しておりまして、中間支援組織的にネットワーク化を図る一つの核になろうとしているというところもあります。
 また企業等の参加。例えば、子供に関わられる企業が、社員研修もそうですけれども、社員の方が地域に出向いて教育ボランティアをされる際の橋渡し等にもなっているというところがあります。
 仕組みといたしましては、講座内容を、大学の公開講座を行うように大学が主体になって設定するというのではなく、地域の行政や市民団体の方と協働して、地域課題からその大学との接点を見いだして、講座内容を設定するというところが一つの特徴かと思います。
 ベースとしましては、共通性をカリキュラムとしては担保していて、非常に幅の広いカリキュラム構成になっていまして、ある種カスタマイズが非常に柔軟にできるというような仕組みになっています。
 また、学生教育においても地域の方とともに学び地域へ出ていくという意味で大変メリットも大きいですし、また地域の方も学生とともに学ぶことで、地域活動に学生を引き込む場にもなっているというところがあります。
 お手元の資料の1枚物の白い紙で、ボランティアとして地域に貢献しませんかというチラシがありますが、これは今年度6月、7月に、本学がございます小金井市と連携いたしまして、中央公民館あるいは北公民館で行われる、この講座の一つの例でございます。
 主催は小金井市になっていますけれども、学生はそちらに参加をすることができることになっていまして、共に学んで、地域活動にもその場で誘われていくということが起こっているような例であります。
 この認証のカリキュラムですけれども、こどもパートナー、こどもサポーター、こども支援士という、初級、中級、上級というイメージを持っていただければと思うのですが、そういう段階を持っていまして、まず初級段階に当たるこどもパートナーというのは、子供と関わり合う力をベースにして、教育支援者とは何か、子供を理解しよう、子供を取り巻く環境を理解しよう、子供とどう接するかということ。これはワークショップ、実技を含めて行うというような基本形になっています。
 カリキュラムの手引という1冊の冊子ができておりまして、各大学や行政が、それを見ながら課題を探っていくような仕組みになっています。
 一方で、中級のこどもサポーターという講座は、そのこどもパートナーの講座を基盤にしまして、より課題に焦点化させた講座を行います。そういう意味で、学位記の表記のように、博士(教育学)とかと、そういうイメージで、こどもサポーター括弧何々という括弧書きをする講座を地域で共に開発をしていくような仕組みになっています。例えば特別支援教育、あるいは伝統芸能、あるいは放課後子供教室等々になっています。
 また、この括弧書きのところに、従前に行われております地域でのNPOや様々な活動と連携をしまして、例えば青少年の体験奨励を促す制度というのが別にありまして、そこと連携いたしまして、こどもサポーター(青少年体験奨励)とか、そういうような積極的にネットワーク化を図る一つのハブにもしようとしているところです。このカリキュラムは、先ほどの初級のこどもパートナーの4時間にプラス8時間、活動内容に焦点化付けた内容を履修していくというような仕組みになっています。
 市民の皆様の側から見た、この認証講座の流れというものを再度資料の方で確認しますと、まず認証協会に入っている各大学が、地域の行政や市民団体と協働しまして講座を提供します。その講座が、大枠としてのカリキュラムがありますけれども、それは幅が広いとり方ができるものになっていますので、かなりカスタマイズした形で作られます。それを受けられた方が認証申請されて、認証を付与されるわけです。そうされますと、パスポートクラブという、そういう認証を受けられた方を活用するもう一つのプラットフォームのようなものがありまして、そちらとの情報交換の中で活動場所を探され、あるいはその活動を履歴として。実際に認証を受けますとパスポートを発行し、そのパスポートにスタンプを押すような形で履歴を積み重ねていくということになります。
 それで、お手元の資料に折り込んでいます「あそびのタネ通信」というこちらを見ていただきたいのですが、この裏側に、全国に広がるパスポートクラブに参加してみませんかというところがございます。これは、このパスポートクラブに参画してくださっている教育活動、地域での活動をなさっている諸団体の一例ですけれども、こういう組織を作った上で、次ページの真ん中に、こちらは上位のこども支援士の活動紹介ということになっていますが、このパスポートクラブの団体とのマッチングを行われた受講者が様々に活動している様子が、こちらに少し事例として挙げられています。
 また、各会員大学の近く、地域でのある公民館や多目的スペースをお借りすることで、こどもパートナー’sカフェという場を構成することを行っております。これは、今見ていただきました、このカラー刷りの資料の裏ページに、インフォメーションというコーナーが下にありまして、その右側にこどもパートナー’sカフェ開催とありますが、これは先月の5月9日に学芸大で開催されたカフェの一例です。
 このような出会いの場と言いますか、ニーズとボランティアの意欲のある方のマッチングの場を各大学が地域的に設置しているということを行っております。そういうマッチングを行った上で教育現場に様々に活用していっていただくということを促しているものです。
 今のお話を図にまとめますと、このようなスライドになるのですけれども、今年からの取組として、実際にパスポートを発行して履歴を活用していくというこのシステムを、本年の10月以降、ウェブ上で行おうとしております。このウェブで活動履歴や、この活用を図ろうとするに至った理由が、先ほど御紹介しました青少年体験活動奨励制度というのを併せてこの協会で開発していこうとした、そこでの経緯が一つのきっかけになっています。
 その青少年体験活動奨励制度につきましては後ほど御説明しますがの、そういう形で広がる活動が大学においても様々に取り組まれておりまして、現在それぞれの大学がそれぞれの動きをかなり活発に進めているというところです。
 こういう形で事業を展開しておりまして、この事業の特徴をまとめますと、まず講座内容の設定に関わって、地域と協働で開発するというプロセスをとっていることです。次に、活用のためのプラットフォームのようなものをパスポートクラブという形で組織している。さらには、サロンと言いますか、集う場所を意図的に構成しているというところが、まず一つあります。
 この間の動きの中で、当初はこういう認証を活発に活用していただけるのではないかということで、それとなく動き出したのですが、実は2年ほど前に、マッチングが思っている以上に進まないというような課題に直面しました。というのは、一般的には認証を取れば、それが何かに資格として活用できる形ならば非常に積極的に使われるのですけれども、一方で、地域活動や課題を解決するボランタリーな活動は住民の側の主体性が核になっていますので、これがないとこれができないという関係は、少しおかしな関係になります。
 それで、形態としてはマッチングのシステムはできましたが、その原動力がなかなか保てないという自体に陥りました。これはまだ課題解決の途上で、完全に成功したと言えるところまでは行っていません。むしろこどもパートナーやこどもサポーターという認証を取ることが、ある活動を計画するための参加資格のような位置付けになって、その後、例えば6か月とか3か月活動を継続したということ、そのことを評価していく、あるいは、ある種表彰していくような顕彰制度を伴えていくという形で、受講したことが次への参加のステップになる、そういう仕組みに近年、認証の仕組みを変えようとしております。
 そのきっかけになったのが青少年の体験奨励制度への取組だったのですけれども、お手元に、このような小さな冊子と1枚の大きなチラシがあると思います。いまこれも文部科学省との関わりの中で、15歳から25歳までの青少年に四つの種類の体験活動を継続していくことを促す仕組みづくりです。併せまして、この種の制度がイギリス等ではかなり先行して組織化されていますので、インターナショナル・アワードと申しますけれども、そちらとも連携をとり合って、この体験奨励において奨励されました若者たちは、同時に国際的なアワードも取得できるということで、これが現在3年目の開発過程になっていまして、次年度からは本格的に動き出すような仕組みになっています。これを日本版という形で、小学生や中学生にまで広げて、現在試行をしようとしています。
 このプロセスの中で、インターナショナル・アワードの方が主体的な活動、現在よく言われますキー・コンピテンシーとか、21世紀型スキルということを見越した中で、主体的な学びという、その力を非常に重視するところがありますので、計画を自ら立てて、その計画が要するに評価に値するかどうかということで表彰していくような仕組みになっています。このアイデアを、先ほど申しましたようなこどもサポーター、こどもパートナーに転用していこうとしたというのが一つのきっかけになっています。
 更に申し上げますと、この体験活動を小学生に促そうとしています。そうしますと、この小学生をリードしていくアドバイザーのようなものを、このこどもパートナーとかこどもサポーターと、いわば資格としては連続化、共通化させていくことで、もし何か活用の場がなければ、青少年の体験活動にそのまま参加していく、ということが具体的に進み出しているところです。
 最後に、学校との連携というものの拡大化を図っていまして、現在、兵庫県の尼崎市や東京の中央区、足立区等で、この認証を生かした学校支援地域本部の活性化、あるいは学校の教員と連携しまして、学校の授業を協働して地域の方や学生がサポートして作り出していくと、そういうような取組も行っています。
 そこでは主にICTを使いますけれども、これは一般的な話だと思うのですが、学校関係者はICTが非常に苦手でして、昨年、タブレットを180台ほど学校の先生方に持っていただいて、この活動に巻き込む形で五つほどの事例を限定しまして行いました。調査の結果、半年間、配付したけれども1回も触らなかったという先生が42%ほどいまして、実態としてはそういうところだと思います。もちろんこれは先生方が怠慢であるということではなくて、本当に学校現場が大変忙しくて、現状を超えて新しいものに取り組む余裕が現場にはないということや、あるいは世代間格差が非常によく見受けられたということです。
 そういうことで、教育ニーズを明確に捉えることを地域とプロセスを伴えて行っていくということや、あるいは学びや活用のサイクルが、資格を取りました、それではどこかで活用しますというリニアな発想じゃなくて、具体的な課題意識がまずあって、少し学んで少し活用してみて、そうすると、また新たな課題が意識として起こり、そしてまた学びを進められるようなスパイラルな動きを制度設計で考えなければ実用化しないのではないか。
 さらには、質の保証という意味では、内容もそうですが、講師、これは市民間の講師も含めてですが、そのようなところが少しポイントになるのかなと、実践を行っていて思っています。
 以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。御質問等いかがでしょうか。どうぞ、清原委員。

【清原委員】
 貴重な御報告ありがとうございます。三鷹市長の清原です。
 東京学芸大学が地域とこのように連携していただくことは、御縁のある自治体の方は大変心強く思っていらっしゃると思います。実際、三鷹市でもNPO法人三鷹ネットワーク大学推進機構では東京学芸大学の学長に理事にもなっていただいて、こういう取組をしていますが、今回、最後のスライドの2番目のところに、「生涯学習の活用はスパイラル型発想で」と提案してくださいました。ちょっとお時間の都合で詳しく伺えなかったのですが、私たちも常にそのように思っています。学びを活用していく中で、また新たな課題に直面して、さらには学習をと。
 そうすると、今回は貴重な実践の中で進めてこられたのは、まだまだこどもパートナー、こどもサポーター、という段階だと思うのですが、実践された方が、また戻って、具体的な課題について学び合うというのはサロンの場でしょうか。それとも、また何か新たな一段実践を踏まえた講座などもお考えでしょうか。スパイラル型発想に向けてのヒントを頂ければと思います。よろしくお願いします。

【松田教授】
 仕組みとして計画したのは、それが初級、中級、上級ではありませんが、そういう学習の広がりということで、上位の学習場面で、これまでの御経験を交流していただくということを計画しています。うまくいっている面と、まだ拙い部分がございます。
 一方で、この認証者をネットワーク化していく、その交流をするために、子供支援学会というものの設立を現在構想しておりまして、これはいわゆる学会ではなくて、市民の皆さんが集まり、いろいろと報告し合うという、そんなことを少し考えているところです。

【清原委員】
 ありがとうございました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。もうお一方ぐらい、いかがでしょうか。どうぞ、山本委員。

【山本委員】
 ありがとうございました。いろいろな意見は別にして質問をします。この社団法人の財政は、どのようにして構成されているのでしょうか。

【松田教授】
 本当に一番いつも腐心するところですが、現在は認証を出すときに申請料として2,000円を頂いています。実質的には、パスポートを渡したり、郵便代として、一千二、三百円掛かったりするので、事務局には手数料として1人につき700円ぐらいの経費の積み重ねができるのと、会員大学が年間30万円の会費を払っています。その二つの収入源で回しています。年間の予算規模が一千二、三百万円ぐらいで運営しています。

【山本委員】
 東京学芸大学が事務的な負担も背負って運営しておられると考えてよろしいですか。

【松田教授】
 大学からは一切援助を頂いておらず、自立して運営しております。ただ、場所と人材という意味で、事務のお手伝いは頂いています。

【山本委員】
 ありがとうございます。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。どうしてもという方おられましたら、もうお一方ぐらい、いかがでしょうか。どうぞ、栗山委員。

【栗山委員】
 学研の栗山です。ありがとうございます。
 講座を受講された皆さんはパスポートを申請するに当たりまして、何か試験を受けるということはあるのでしょうか。

【松田教授】
 こども支援士の受講においては、レポートを書いていただくような試験に類する課題がございます。こどもパートナーとこどもサポーターについては、全くそういうものはございません。

【栗山委員】
 ありがとうございます。

【菊川部会長】
 とても豊富な実践で、まだお聞きしたいところですが、これで松田委員の御発表は終了とします。どうもありがとうございました。

【松田教授】
 どうもありがとうございました。

【菊川部会長】
 では引き続きまして、左京委員からシブヤ大学の御発表をお願いいたします。

【左京委員】
 おはようございます。シブヤ大学の左京と申します。本来であればシブヤ大学の活動の内容なども織り交ぜながらお話ししたいところですが、限られた時間ということもあり、シブヤ大学の活動の概要に関しては、お手元にお配りした資料を、また後日にでも、お時間があるときに御覧いただければと思います。
 今日は、今回の議論のテーマに即したところだけ簡単に私見を述べさせていただきたいと思います。
 今回の議題は、学習機会の充実や学習成果の評価、活用という二つの施策を進めることによって、地域課題解決への参画の流れを作っていこうということだと思います。その前提に対し、前回、生涯学習プラットフォームがテーマの際にも、それ自体を必ずしも必要としない学習者の方もいるのではないかという前提に対する意見を述べましたが、今回も問題提起を含む視点の提案だと思っています。
 具体的には、今回の地域課題への解決の参画というテーマも前回同様で、学習者の目的意識や動機を考えるとき、必ずしも学習の動機、目的が地域課題解決へのアクションに向く方ばかりではないのではないかということを、日々の実践を通して思っています。
 少し前回の復習をしますと、生涯学習プラットフォームの場合も、ノンフォーマルはもちろん、インフォーマルの学習の場合であっても、その目的が自己実現、あるいはそれに類するものにとどまる場合も少なくないわけです。今回のように学習の結果自体、地域の課題とは何かを考え、それを解決していくことに参画していこうという方ばかりではないということだと思います。
 そうすると、そういったアプローチ以外にも、例えば、地域課題そのものの解決に対して目的意識や動機を持っている方々に直接的に参画を呼び掛ける方法といったアプローチもあるのではないかと思っています。
 シブヤ大学の活動の場合も学習者が学習した結果、地域課題解決に参加していくことがゴールとは思っておりません。あくまで自己実現。その方の人生が豊かになれば、それが一つのゴールだと感じています。
 ただ一方で、地域への課題解決に参画すること自体が、その方の自己実現に近付くという。言葉にすると、ちょっと分かりにくいのですが、そういうケースも確かにあると思います。その場合は地域課題解決に参画するというテーマで講座を行い、それ自体を結果とする場合も当然あります。
 では、地域課題ということです。この地域課題ということも非常に言葉としては使いやすいのですが、内実それは地域によって多様で、またそれが課題設定の仕方によっては解決することが難しい場合もあり、非常に難しいテーマだと思っています。
 課題解決の前に課題設定が重要という例をお話しします。2年前から渋谷区の職員研修を担当しています。一昨年のテーマとして、セクシャル・マイノリティの方々を取り巻く環境の改善をテーマに、その課題抽出と解決策の提案をワークショップ形式で実施しました。そのとき、ある班から出てきた課題とその解決策は、課題はセクシャル・マイノリティの方々について社会の多くの人がまだ理解、認知していない、これが課題であるとのことでした。解決策としては、その存在についての啓発活動を行っていくというものでした。でも、この課題設定と解決策では、なかなか解決に至るのは難しいと思いました。もちろんプラスなのは間違いないですが、より課題設定を具体的にしていく、解決可能なサイズにしていくことで解決策がより具体的に見えていくと感じました。
 例えば、誰に、そのLGBTということの情報を正しく伝えていくのかということ。それが例えば当事者なのか、その家族や友人、あるいは学校関係者の方々なのかと考えたときにも、また生じている課題や解決策は異なってきます。例えば、その当事者である場合、年齢で考えると、幾つぐらいの子供たちにLGBTという概念を伝えていくのかというとき調べると、自分のセクシャリティに対して意識が芽生えてくるのは、およそ小学校の低学年の時期だそうです。では小学校低学年の時期の保健体育等の授業の中でどのように伝えていくのか。そして子供たちがその情報を得て相談に来るかもしれない保健室の先生はあらかじめどういう情報を持っておくべきなのか。あるいは、その情報をキャッチした学校側が保護者にそれをどのように伝え、その保護者に対してはどのように、誰がサポートしていくのかというふうに、問題を具体的に設定していくことによって、その解決策とその結果は変わってくるということがあると思います。
 地域の課題、そして解決策も、実はそれほど、誰しもが学んですぐに出てくるものばかりでもなく、適切な課題設定、あるいは解決策を講じていくために、一定の知識が必要だったり、専門的な活動をされている経験者が必要だということも多いと思っています。
 そこで今回の地域課題の解決、或いは市民の参画というテーマへのアプローチとして、例えば既にその地域の中で活動している団体を活用していくという方法も有効ではないかと思います。
 渋谷区の中で、ある地域の課題、それから、その解決策を幾つか御紹介したいと思います。まずシブヤ大学として取り組んでいる課題の御紹介をしたいと思います。
 前方のスライド、これは恵比寿という地域の盆踊り大会の風景です。この何が課題かというと、渋谷区だけではなく多くの都市部において同じ状況だと思いますが、古くからの町会や商店会といった地域コミュニティの活動が、高齢化や、少数化で、衰退している現状があります。結果、地域の祭事の運営に人手が足りないという状況があります。
 しかし、人手が足りないからといって、古くからの地域コミュニティは、誰しも活動に参加をするように間口を開いているわけではありません。もちろん恵比寿という地域には毎年たくさんの新規移住者がおり、多くの人が暮らすわけですが、その地域活動に関わるきっかけや間口は誰にも開かれているわけではないのです。
 そういった課題の中で、我々としては、シブヤ大学の講座をきっかけに、その運営に携わる市民ボランティアを募集し、5年間ほど、この恵比寿駅前盆踊り大会の運営ボランティアを行っています。
 次は「SHIBUYA CAMP」という取組で、課題としては、首都直下型地震などが想定される中、いわゆる自助、共助、公助の中の、自助に関し課題視しています。つまり地震が起きた際、どのように自分が行動すれば良いか、正しい知識を持っているか、あるいはその備えが十分にできているかと問われた場合、どれぐらいの方々が自信を持って「はい」と答えることができるのだろうかということです。
 実際、地域で行われている防災訓練なども見ましても、例えば消火器を使った消防訓練だったり、AEDだったりはあると思うのですが、それが実際どれぐらい自信を持って備えができている状態にまで練られたプログラムであるかということについて、まだ工夫の余地があるのかなと思います。
 そのような中で、私たちは、これは代々木公園を管理運営している東京都公園協会と協働で実際に被災したというシミュレーションをしながら、自助の知識、スキルを身に付けていく被災シミュレーショントレーニングというプログラムを毎年行っています。
 次は「冒険遊び場」という取組です。渋谷区では「渋谷はるのおがわプレーパーク」という名称ですが、都市生活環境において、子供たちがなかなか自由に外遊びする環境がないということで、渋谷区と民間の団体が連携し、プレーパークという仕組みを使って運営している都市公園です。或いは、渋谷区の原宿というエリアにカラフルステーションという、海外の都市にあるLGBTセンターにあたる民間の取組みがあります。セクシャル・マイノリティの方々が孤立しがちで相談できる方がいないというときに、誰でも自由にそこに集えて、相談することができる。あるいは、ジェンダーロールモデル、自分と同じような環境にある方がどのような社会生活を送っているのかという想いに対し、そこで集うことによって出会うことができるという取組みです。
 以上のような、渋谷区において地域課題とその解決に取り組んでいる団体があります。よって先ほどのアプローチ、学びの機会を作ることをきっかけに地域課題を発見し、解決策に参画していくという方法ではなく、既に地域の課題解決、適切な課題を把握し、その解決策を講じている団体と連携することによって、直接そちらに参画を促す。そしてその結果、地域課題を解決していくというアプローチが有効ではないかということです。
 それが良いのではと思う理由として、適切な地域の課題の把握とその解決策の提案ができているということに加えて、それらの団体が、実はその課題解決の取組には専念できているが、その活動を知らせるという、いわゆる広報や、新しいボランティアを募集するところまで手が回っていないという状況も少なくないと感じます。
 よって、そういった団体と連携し、課題そのもの、あるいはその解決策について扱う講座を企画していくことによって、それを一つの方法、手段として市民が新しくそのような課題に解決に参画していくきっかけにしていくというアプローチは有効ではないかと思います。
 しかし、まだ地域にそういった活動をしている団体がいない場合、未解決の課題に関しては、市民とともに地域の課題を適切に発見する、あるいはその解決策をデザインしていく人や機関というものは、まだ必ずしも存在していないのではないかと思っています。この役割を持つ人や機関の設置というのは、それが行政になるのか、NPOになるのかということは今後の議論だと思います。
 最後に、学びという面から考えると、地域課題解決に参画した後に、どういうふうにその課題を解決していくのか、よりよくその活動が広がっていくのかという問いやそのプロセスの中で、手段として学習機会が必要になってくるということもあると思います。
 例えば課題に対する専門的な知識だったり、様々な先進的な事例の情報なのかもしれませんし、あるいはそういった地域課題解決を運営する団体をいかに運営していくのかという組織運営についての学習なのかもしれません。あるいはそれを持続可能な活動にしていくためにどのように資金を調達していくのかというファンドレイジングの授業が必要なのかもしれません。そのように学びから地域課題解決へというアプローチではなく、地域課題解決そのものから逆に必要な学びの機会が出てくるという場合もあるかと思います。
 以上のように今日お話ししたかったのは、地域課題解決ということを目的にするならば、学習機会の提供、拡充とはまた別の直接的なアプローチもあるのではないかという話をしたいと思った次第です。以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。今の御意見、あるいは実践についてまず御質問等を受けたいと思いますが、どなたからでも、どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】
 富山大学の藤田でございます。私たちも地域連携の方で、いろいろな形で地域課題解決に取組んでおりますので、その関わりで教えていただきたいことがあります。実際のところ、アプローチのことについては両輪があると私は把握していますが、最後の部分をもう少し詳しく聞きたいところです。
 地域課題を解決していく上で必要なスキルを学ぶ学習機会ですね。それをどちらでコーディネートするのかということです。その学習機会を作っていくとなったときに、自分たちに力があれば作っていけると思いますが、そのときにアドバイスする、コーディネートするというのは、それは行政やNPOの協働でという仕組みは作られているのでしょうか。

【左京委員】
 現状は未だそういった仕組みはありません。

【藤田委員】
 将来的な展望という点で、お考えがもしもありましたらお聞かせいただきたいのです。

【左京委員】
 どこまで先の将来かということもありますが、今はまだ我々の取り組むべき段階としては、様々な地域の課題の発見と解決策を講じる実践を積み重ねていく方が先決だと考えています。それらの実践から普遍的に必要な知識や技術を抜き出し、それを市民の方に提供していくプログラムを作っていくということは、ひょっとすると我々だけではなく、また別の地域で同様の活動をされているNPOなどと連携し行うといった方法等もあるかと思います。いずれにせよその様な展開はもう少し先だと考えています。

【藤田委員】
 ありがとうございます。実際のところ、そのアプローチをどちらでコーディネートしていくのかということが今後の活動の発展や、今後の学びの発展、学習機会をどう作っていくのかということととても関連性があるだろうと思いまして、質問いたしました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。高見委員、お願いします。

【高見委員】
 お話ありがとうございました。株式会社イトクロの高見と申します。よろしくお願いします。
 具体的なことになりますが、今、藤田委員が聞かれたことともとても近いことかもしれません。こういうプログラムをしますという提案が出てきて、その後、施策立案段階でそれを、例えばセクシャルマイノリティのプログラムであれば、対象年齢はどうするのか、また、誰を対象にするのか、どういうアプローチをするのかというようにディスカッションが深まっていくという、そのファシリテーターというのがいらっしゃるのか。そもそもコミュニケーション設計やプログラム設計の段階で、この手順を踏まないと進んでいけないというような、そういうマニュアルではありませんが、そういうものがあるのか。
 また、それをどう運営され、その一つ一つのプログラムの質を高めておられるかということと、施策立案段階があり、施策があり、施策の振り返りをして次につなげていくというようなPDCAのサイクルを回しておられるのではないかと思いますが、それがフレームになっていて、可視化されていて、誰でもが利用できるようにするために、どのような工夫をされておられるのかということをお教えいただければと思います。

【左京委員】
 ありがとうございます。今まさに御意見、御質問として頂いたような流れで、是非今後、渋谷区として取組を推進してほしいと思っています。現状は、入社5年から10年目ぐらいの若手職員に向けて、課題解決のスキル、あるいは新規事業の立案スキルを高めていく研修として行っています。半年間ぐらいかけ課題発見から解決策の考案まで行い、最終的に区長や管理職の方などにプレゼンテーションするという流れです。その中で実際に事業として実現していくものは、まだ少ないです。
 しかし、今まさに御意見頂いたように、現在は私がファシリテーションも含め担当していますが、これを数年積み重ねていき、それを元にマニュアルを作成し、同時にファシリテーターも育成していきながら、それが役所内の当たり前の仕組みになっていくということが理想だろうと思っています。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。一旦、意見発表につきましては、ここで閉じさせていただきたいと思います。
 議題2の自由討議に入りたいと思います。今までのお二人の御説明等も踏まえつつ御発言いただきたいと思いますが、議論の参考に事務局で資料3‐1と3‐2を準備していただいていますで、まず事務局から御説明をお願いいたします。

【楠目民間教育事業振興室長】
 資料3‐1をお願いいたします。
 前回の会議の際にも配付いたしました「学校成果活用部会における検討の進め方について」の資料でございます。前回は諮問文と併せて説明する形でのペーパーになっておりまして、諮問文に記載されている事項などは、こちらの資料には盛り込まれていませんでしたが諮問文の趣旨等も盛り込んだ方が良いという旨の御意見も前回会合で頂いたことも踏まえまして、今回修正をしております。
 まず基本的視点の部分です。諮問文の趣旨を踏まえまして、生涯学習活動を通じて、「全員参加による課題解決社会」を実現していくためには、学習機会の充実と学習成果の評価・活用という二つの施策を両輪で進めていくことが引き続き重要であって、次の丸になりますが、このため、各種の地域課題の解決に資する多種多様な学習機会が適切に提供される環境を整備して、人々の「学び直し」や新たな学びへの挑戦を支援するとともに、これらをより高度な学習や様々な地域での活動等につなげられるような学習成果活用の仕組みを目指す、ということを冒頭で盛り込んでおります。
 また、これまで必ずしも十分でなかった学習成果の評価や社会的通用性の確立の部分に関しては、近年の情報通信技術の進展も踏まえまして、学習成果を適切に記録・管理・活用する仕組みを新たに構築することによって、様々な学習成果の評価の互換性や通用性を確保して、個々人の地域課題解決活動につなげていくことが有効ではないかという今回の基本的な視点について、このアンダーラインの部分について修正しております。
 また前回の部会の際に頂いた主な御意見については、この枠囲いのところに、それぞれ入れておりますので、御参照いただければと思います。
 頂いた御意見につきましては、資料の分量の関係もありまして、かなり圧縮した形で事務局でまとめておりますので、もし十分に御発言の趣旨を踏まえられていないような箇所などがありましたら、また議論の中で御指摘を頂ければと思います。
 続きまして資料3‐2をお願いいたします。資料3‐2につきましては、多様な生涯学習機会の分類につきまして、前回の部会の際に加藤委員から頂いた御意見を踏まえて事務局で整理したものでございます。学習の種類についてはフォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育という分け方、分類の仕方があり、それらを意識して議論を進めれば有効なのではないかという御意見を踏まえまして、それぞれの概要や、主な学習機会の例、成果の証明方法、活用の場面について、表の形で整理しております。
 まずフォーマル教育のところを御覧いただければと思います。これが一番イメージがしやすい学校教育の部分になります。概要の欄にありますように、こちらの概要は、日本生涯教育学会の『生涯学習研究e事典』から引用したものです。
 フォーマル教育につきましては、アンダーラインを引いていますが、学校における教育を指しておりまして、学習機会の例としては、小中高等学校、大学等の学校教育があります。成果の証明方法としては、通常は卒業証書や学位などで証明することが想定されまして、成果の活用の場面としては、進学や就職などがあるということが一般的に共通の御理解かと思われます。
 続きまして、ノンフォーマル教育とインフォーマル教育の部分が学校外教育のところで、前回主に御意見を頂いたところかと思います。まずノンフォーマル教育につきましては、アンダーラインを引いておりますように、学校外の教育の中でも組織化され体系化された教育活動ということが特徴になりまして、主な例といたしましては、例えば大学の公開講座や、放送大学の科目を履修する場合や、一定の認定社会通信教育等が挙げられるかと思います。学習成果の証明方法としては、修了証書や履修証明等が発行される場合が多いのですが、このほかに関連する検定試験の受験や、最近ではSNSなどによる相互保証などの証明方法もあるということでございます。学習成果の活用の場面としましては、進学、就職、それからスキルアップや転職、また地域課題解決に向けた活動等がイメージされるだろうということを記載しています。
 続きましてインフォーマル教育ですが、こちらは、学校外の学習活動のうち、組織的、体系的な教育ではなくて、習俗的、無意図的な教育機能を有するような学習活動ということで、主な例として、例えば1回ごとにそれぞれ単発で開催されるような講演会や研修会、学習者同士の相互学習や、図書館等での自発的な学習などといったものまで広く含まれるかと思います。証明方法としては通常、修了証書等はないことが多いので、関連する検定試験の受験、あるいは相互保証など、といったことが想定をされるのではないかということで整理をしております。成果活用の場面としては、スキルアップや自己啓発等の自己実現が中心になって、そのほかボランティア活動や生きがいづくりなどが想定されるのではないかということで整理をしております。
 なお、こちらの資料ですが、委員の皆様が、これからプラットフォームの対象や機能を御議論いただく際のイメージを共有していただくための参考として御準備をさせていただいたものでして、必ずしも全ての教育機会を網羅的に整理するということを意図したものではありません。例えばノンフォーマル、インフォーマル両方の場合があり得るような民間事業者が行っている教育プログラムなどは表中に整理しておりませんで、あくまで典型的なイメージを持っていただくために整理したものと御理解をいただければと存じます。
 御説明は以上です。よろしくお願いいたします。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。前回の加藤委員の御発言を基に作られたということで、加藤委員から補足、御意見等ありましたらお願いいたします。

【加藤委員】
 非常に簡潔にうまくまとめられて、良い資料だと思います。少し補足したいのが、ノンフォーマル教育の中の学習成果の証明方法の中に、近年MOOCなどでよく使われている方法に、修了証書の一種ですが、オープンバッジというものがあります。見た目はバッジの形のアイコンで、それを受け取ると自分のホームページやSNSのページに貼って人に見せることができたり、あるいはそのバッジをクリックすると、どこが実施した教育で、どういう内容のものかがもう少し詳しく分かったりするというような比較的最近の技術がありますので、それも証明方法の一つの新しい形だろうと思います。
 こういった生涯学習プラットフォームの中で、こういう学習成果を集めることはもちろん必要ですが、先ほどからも出てきております地域の人材活用ということを考えますと、これ以外に、教育を受けた履歴だけではなくて、例えば教育を実施する側に回ったような記録。何らかの講師をやったこと、どこかで教育をやったなど、あるいは自分が発表した文献、論文、記事などを併せて収集していくと、地域での人材マッチングには非常に有効になるのではないかと思いました。以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。お二人の意見発表、それから今の資料等で少し広がったところから、自由に御発言をお願いできたらと思います。どうぞどなたからでもアットランダムで結構ですので、よろしくお願いします。では、柴山委員、どうぞ。

【柴山委員】
 東北大学の柴山です。私、教育設計評価論とか、教育測定学というものを専門にしております。人のパーソナリティ、適性、動機、あるいは知的能力といったものを心理学的なモデルを通して数値化、定量化することが専門です。そのような人間から見ますと、今まで聞いてきたお話がとても大きく、幅広くて、本当に大変な問題だなと感じております。
 それで、資料3‐1の4ページ目です。3番の「学習成果の証明に資する検定試験の質保証の仕組みについて」というのは、これ、やはり目立たないところですが非常に重要なところでして、検定等利用者へのサービスという側面に、クールジャパンのような仕組みがうまく組めれば、国際的に通用するような資格認証システムのようなものが作れて、よろしいのではないかと思います。
 要するに、我々、今までは言挙げせぬ文化の中で、お互いの信頼関係の中でいろいろな認証システムを動かしてきましたが、それをきちっと形にして見せるというのが、とても大切なところだろうと思いました。では、それを具体的にどうするかというのは、私自身の専門に近い語学検定などのイメージでは分かるのですが、さらに大きく地域の人材活用などのところまでになると、ちょっとまだ見えてこないものがあります。以上、意見として申し上げさせていただきました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、三瓶委員、それから萩原委員の順番でお願いいたします。

【三瓶委員】
 ありがとうございます。私も余り復興、復興というふうに、放射能や復興など、とても重い話は得意ではありませんが、福島から来ている者から一つ事例をお話しさせていただきます。私どもの桜の聖母生涯学習センターでは、3.11直後から傾聴ボランティア養成講座というものをやっていて、それは臨床心理士などの、いわゆるお医者さん、精神科医の方では間に合わないところです。
 福島県は全域が被災地ではありますが、どうしても目に見えるところのボランティアに行くことが礼賛されているようなマスコミがとても多くかったです。心のケアをどうするかというときに、そちらに行けない主婦の方々や、高齢者の方々のような、ボランティアをやりたいけれど体力もない、時間もない、やり方も分からないという方々それから地域で活動したい方々に、ニードがきっとあるだろうと思い、マッチングをしてコーディネートして、今は、もう4年目になります。
 そのフレームワークというものができ、今年は会津若松でオファーがあって、そのままそれをそっくりセットでやっているという形になっています。4年ぐらい、地域の方々のニードをもって、地域課題解決の一つのものを作っていくと、比較的それは共有できるところがあるのではないかと思います。
 先ほど藤田委員がおっしゃったように、では誰がそれをコーディネートするのか。今回は、私がコーディネートをさせていただいているのですが、このコーディネートできる人を増やしていかないと難しい。となると、学習成果の評価の互換性とか通用性を確保することも大事です。そこに意味付けをして、いろいろなところに広げていける人も、どういうふうに作っていくかという課題があるだろうということを、自分自身が一つ苦労しているところもありますので、課題提供というか、問題提供として言わせていただきました。

【菊川部会長】
 ありがとうございます。それぞれ御意見を言っていただいた中で、お互いに聞きたいことや、意見等があれば、それも、併せてということになりますが、よろしくお願いします。
 では萩原委員で、それから右手の方から清原委員、加藤委員、大畑委員、その順番でお願いいたします。

【萩原委員】
 日本語検定の萩原でございます。加藤委員がまとめてくださった表は、とても分かりやすく、整理されていると思います。表の見方として、生涯学習という観点から考えますと、表の左のフォーマル教育から右に考えていくのではなくて、右のインフォーマルのところから考えるべきだと思います。ここが非常に重要だろうと思います。生涯学習自体が、非常に多様性のあり、このインフォーマル教育のところをどれぐらい取り入れられるのかということが非常に大切かと思います。
 私どもは、日本語検定をやっていますが、検定、あとコンクール、例えば作文、絵画などの、様々なコンクールやスポーツ大会も良いです。そのようなコンクール、講習会、研修会、市民講座、また習い事なども、入れられるかもしれないと思っています。
 日本語検定をやっていますと、もちろん学力の向上が入試、就職などに役立つといった実利的な面で、受検していただいている方もいますが、実はそういう方だけではなくて様々な動機を持っている方がいらっしゃいます。毎回親子で受検をして、受検後に家庭で話し合う方、日本語ボランティアで教えている方、あと非常に多いのが、シニア層の方々で、日本語を勉強するのが生きがいですという方、楽しみとしてグループで勉強していますという方、また、学校や会社になかなか行けなくなってしまったが、日本語が好きなので勉強して、受検日だけは一般会場に行けるという方もいらっしゃいます。
 また、日本語検定は、1級が最高レベルですが、1級に一度、合格すれば、普通それで終わりなのですが、その1級を何度も受検している方がたくさんいらっしゃいます。こちらでも奨励してはないのですが、気が付くとそういう方がいらっしゃいました。どうして何度も受検するのかを伺うと、100点をとるまでやめたくない、親御さんの介護があるので自宅でできる自分の好きな勉強をするのに最適である、自分自身の日本語力を定期的チェックしたいなど、いろいろな理由があります。また、いろいろな障害を持っている方々も受検してくださっています。私どもも、そういう方々の励みになるようにという思いで表彰しております。
 今回のプラットフォームで、今申し上げた方々も、そこに載るようになれば、さらに、皆さんの励みになるだろうと思っています。その際に、例えば検定でいえば○○検定何級ということだけではなく、その検定で賞を受けた受賞履歴も載せるようにしたら良いと思います。
 あとは大事なのは、検定、コンクール、研修などを載せるのであれば、その主催者が、自身の正しい客観的な情報を、そのプラットフォームの上に載せなければいけないと思います。
 先ほど加藤委員がおっしゃっていたことに私も賛成で、技術的には分かりませんが、活動履歴を載せないと、深みのない面白くないものになってしまうと思います。学習した成果だけでなくて、どういう活動をしたのかということ、例えば、ボランティア活動をしたこと、講師をしたこと、土曜学習応援団で出前授業をしたことなどの活動履歴もきちんと載せることによって、更に励みになるだろうと思います。
 さらに、いろいろな活動履歴や学習履歴を基に、頑張っている方にはその努力に対して表彰するなどの制度も考えていくことも大事だと思います。以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、清原委員、お願いいたします。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。お二人の方の御報告と皆様の御意見を聞いていて、今回、資料3‐2をまとめていただいたことを一つの重要な分類として、これを補強しながら、どのように生涯学習の学習履歴を、その先につなげていくかということに生かせればと改めて感じました。
  今回、諮問いただいた背景に、『教育再生実行会議第六次提言』があり、その中には、「社会に出た後も誰もが『学び続け』、夢と志のために挑戦できる社会へ」、2番目に「多様な人材が担い手となる『全員参加型社会』へ」、そして3点目に「教育がエンジンとなって『地方創生』を」とありますが、その「多様な人材が担い手となる全員参加型社会」ということを考えますと、例えば三鷹市の事例を申し上げて恐縮ですが、必ずしも包括的な生涯学習が活動に結び付くということではなくて、例えば目的を定めてに学びをしていただき、それが社会の参加につながっている例が、以下のような分野にあります。
 例えば「傾聴ボランティア」という、人の話をよく聴いていただくもの、あるいは「認知症サポーター」、あるいは「地域福祉ファシリテーター」です。これらは必ずしも生涯学習の施設や、あるいは社会教育の分野で学んでいただいているのではなくて、福祉の分野でこうした講座を開かせていただいて、そうした皆さんに、例えばコミュニティ住区の七つに整備された地域ケアネットワークの運営に関わっていただくなどといった関わりですね。あるいは子ども・子育て支援であれば、「ファミリーサポート養成講座」に参加をしていただき、そして実際に支援会員として活躍していただくこと、あるいは障害者の支援であれば「手話通訳養成講座」に参加していただくこと、障害児(者)の水泳教室の講師としての学びをしていただいて実際に指導していただくことなどがあります。そのほかにも、もちろん生涯学習や、社会教育活動などと銘打っていなくても、実際にスポーツ推進委員になっていただいたり、あるいは体育協会や芸術文化協会に関わっていただいたりしている方は、御自身も芸術文化を楽しんでいただいていますが、併せて児童生徒にも公開の講習会をしていただいています。
 すなわち、生涯学習といったときに、この特に「ノンフォーマル教育」といった場合、ここに例示されているもの以外に、つまり教育委員会や生涯学習部門以外が地域の皆様に開いているものについてもどのぐらいフォーカスできるかということだと思います。広げ過ぎてもいけないのでしょうが、そうした、いわゆる自治体レベルでいうと、市長部局や首長部局と教育委員会が連携して行っているものもありますし、別々にやっている機会の中で学んでいただいて、それが地域課題解決や、あるいは地域の共助の取組に関わっているようなものを、どう考えるかということです。
 例えば「防災出前講座」の講師については、長らく職員がやっておりましたが、今は講座を受けていただいた市民の皆様にしていただいています。観光ガイドも、そうです。すなわち、広げ過ぎてはいけないかもしれませんが、そうした幅の広い生涯学習の実践と地域課題解決の行ったり来たりがあることへの目配りをどうしたら良いかというのが1点目です。
 2点目は、実は子供たちも学校教育以外の場で学んでいますし、地域貢献もしてくれています。ですから、生涯学習といったときの主体は、必ずしも成人だけではなくて、児童生徒が含まれると思います。そうした学校教育以外のノンフォーマル教育になるのでしょうか。あるいはインフォーマル教育の中で児童生徒あるいは、余り幼児は入り切らないかもしれませんが、幼児でも高齢者施設を訪問するボランティアをしてくれていることもありますので、この辺の年齢層をどのように仕分けていくか、あるいは対象に含むのかという、子供の学びと実践を生涯にわたって記録していくとなると、先ほどのお話だと子供もいろいろ活動していますので、それをどう履歴に加えていくのかということも気になりました。
 3点目に申し上げたいのは、やはり多様な生涯学習機会を分類する中に、必ずしも、もちろん社会貢献や地域課題解決に向けて、当初は参加されていないものも含まれます。自己実現のために、知的好奇心のために受けていただいたものも記録として残していただいて、こういう学びをした方ならこういう仕組みに活躍していただけるというように、人材を求めている人がそれを、(プライバシーや、個人情報までアクセスできなくても、)何か知り得ることによって学びと地域活動、社会貢献活動との循環の支援をすることが、やはり生涯学習プラットフォームにおいては重要なことになるのではないかなと思います。
 いずれにしても、社会が多様性を認め合って、これまでの考え方にとらわれない仕組みを作っていく上で、この生涯学習の成果の活用を検討するのは極めて重要であるということを、今日のお話でも再確認させていただきました。ありがとうございます。

【菊川部会長】
 では、加藤委員、お願いします。

【加藤委員】
 先ほど柴山委員が問題提起された質保証のことについてです。もちろん客観的に、ある基準でもって質保証するということは理想的ではありますが、やはり、そういうことを、これだけ多岐にわたる生涯学習の分野で全てそれをカバーすることは、ほぼ難しいだろう。やはり、そういう客観的な質保証というものは、ある種、非常に構造化された一分野に限られるだろうと思います。
 そのときに、私が良い仕組みだなと思うのは、Linkedinというシステムの中で、自薦、他薦で、このようなスキルを私は持っているよということを宣言すると、それをほかの人がエンドース(endorse)すると言いますか。確かにあの人はそういうスキルを持っているということを、お互いに保証し合うという仕組みがある。そういうことを活用していけば、ほとんどどの能力についても、私はこれができる。そうすると、その人を知っている方が、確かにこの人はそれができるということを保証していく形は可能なので、そういったものを取り入れていけば幅広くカバーできて良いのではないかと思っております。
 あと、先ほど直前に清原委員のお話を聞きながら思ったことですが、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育の、それにあと活動履歴も含めて、基本的に仕組みとしては、自分がある種学んだと思ったことなら、何でもFacebookのエントリーのように自分で登録していただくような形で履歴を残していけば、またこれを全てカバーできて、それに対してお互いに評価し合うということができると思います。それも間接的ながら質保証になりますし、そういう形が良いのかなと、話を聞きながら思いました。単なるアイデアですが、以上です。

【菊川部会長】
 大畑委員、どうぞ。

【大畑委員】
 ありがとうございます。僕自体の自己紹介をさせていただければと思います。僕自身は今、会社をやらせてもらっています。どんな会社をやっているかというと、基本的にはいろいろなことがクラウドサービスにどんどんなっていく中で、自動化され、さらには、そのデータを基に、今度は知能化されていき、より便利になっていくということをやっていてそういう観点でいろいろとお話を聞かせていただいています。やはり今日のお話でもありましたが、根本的には、学びというからには、人と人のつながりだったり、地域社会との自分との関わり合いだったりというところがとても大事だと思います。ほかのところでいろいろと教育のお話を聞いたりする中で、情報科学にできることはたくさんあるのに、それをうまく活用し切れていないということを強く感じています。
 既にあるツールを、いろいろな制約で使えなかったり、あと様々なツールやアプリケーションがありますが、かなりサイロ化されていて、横につなげば、もっと面白いことが分かったりと、いろいろとできます。きっと、このインフォーマル教育、フォーマル教育、ノンフォーマル教育などにサイロ化されていくのではなくて、もっと横にどんどんつながっていって、その人を軸にデータが流通していくようなことができれば、もっと分かることもあるし、できることもあるし、評価というものの在り方も変わっていくのではないかということを少し感じています。
 例えば健康記録などに関しては、いわゆるライフログです。ウェアラブルデバイスであったり、健康、ヘルスケアレコードというようなもののジャンルは、そういうことの活用が少し先行していて、ある機器でとったものを別の機器や、別の第三者が活用したり、データにアクセスして、ちゃんと活用する枠組みができています。ここに買ってきたバンドのようなものを付けておいて、そこに対して、ほかのアプリケーションが連動できる。いろいろな人が参加できるので、様々な多様性を持って、いろいろなシステムが有機的に連合していくということが実現されつつあると思います。
 そういうことが教育のジャンルなどでも、学校にもあるでしょうし、地域の教育にもあるでしょうけれども、社会インフラとして敷衍的なサービスになっていければ、とても世の中が楽しくなっていくし、便利になっていって、より地域の先ほどの活用をしていくというサイクルがとても多く回っていくのではないかということを少し感じています。
 ただ、実際やってみないと分からないところもあるので、いろいろと、みんなでやってみて、どういう課題があってというところの具体的なところまで行けたら面白いなと少し感じています。
 しかも、そういう枠組みは国を超えて、人材なども海外から入ってきたり、海外に日本人が外に出ていったりもしていくと思いますが、そういったときの履歴書代わりになったり、そういった国を超えたマッチングなどにも、そのようなプラットフォーム自体が共通性を持っていけば、広がっていくのではないかと思います。個人と個人のつながりというものが学びの上でとても大事なのであれば、それはきっと国の枠などを超えていけるものであろうし、そういったところの基盤整備というのは、これからあるのでしょうけれども、やってみないと分からないところがあるので、そういったところの必要性を少し感じました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、益川委員、宮井委員、西辻委員、それから山本委員の順番でお願いいたします。

【益川委員】
 たくさんのいろいろな観点が今回も出てきていると思いますが、やはり一番、今回の学習成果の活用で大事なのが、いかにして全員参加を支えていくのかというところだと思っております。
 例えば私は小中高の学校の授業の中で、クラスの子供全員が学べる授業づくりの支援のようなことをやっているのですが、そうすると、やはりクラスの中を見ていきますと、ある教科の授業で、得意な子から苦手な子まで、多様なんですね。そこの中で一人一人全体的に上げていくために、例えばICTのようなものを使って支援していき、お互いの考えを知りながら、自分はここまでしか分からなかったところが、ここまで分かるようになっていくということに、そういう支援をやっていったりしています。
 そういう観点からも、少し考えていきますと、やっぱり全員参加を前提に考えるとき、一人一人の参加具合や、興味の場所などは、本当に多様だという認識が大事だと思います。
 先ほど左京委員からもお話があったかと思いますが、自己実現から地域の課題解決に繋げていくのか、もう地域にある程度ある課題解決をベースに参加を促して取り組んでいくのか、どちらから支援をしていくかというのは、やはり両輪だと僕は思っていまして。ある程度提起された課題解決に対して、やりたいという層は一定層いるので、その層は、もちろんそこから入っていくというパスがあっても良いと思います。
 ただ、そうではない、でも潜在的にいろいろな生涯学習の機会が増えていく、自己実現を進めていくうちに、その課題に興味を持ってもらえるというパスもあると思うので、そういう課題を認識していくための生涯学習の広がりのための学習成果の活用というものも一方であるのではないかと思います。
 そう思っていったときに、先ほど萩原委員からも話があったかと思いますが、やっぱりインフォーマルのところからノンフォーマルの接続ということも、とても重要な視点になってくるだろうと思います。そこで、いろいろな資格の、いわゆるこれを持っていますという学習成果だけではなくて、加藤委員も言われていたような、自分はどういうことができますということを表明する情報であることや、あとは、いろいろな資格を取っているが、どういう思いでその資格を取ってきたのかという、その人の考えのようなものも記録に残して一緒に共有していくと良いと思います。
 これ自身は、例えばスタンプのようにたくさん押していればすぐ分かるようなものではなくて、そのスタンプの背景にどんなものが隠されているかというところまで共有していく必要があるので、そこの部分は、やっぱりICTの支援がないと欠かせないと思います。さらには、いろいろな分析技術が向上しているので、べったり全部見ていくのはとても大変なことなので、そこをある程度自動処理して、もうちょっと見える化したものがお互いに見えていくと、それを使って徐々に一人一人なりに全員が参加していって、それぞれなりの課題解決に踏み出していく。総体として、全体が課題解決を進めていく社会になっていく。そういう仕組みになっていけると良いのではないかと思っております。
 またフォーマルの世界に話を少し戻しますが、例えばICTを活用して、多様な評価を考えていくという話も進んでいたりします。これまでは、どうしてもペーパーテストのようなものを中心にした、いわゆる総括的評価と言われている点数化や、何かABCで評価するなど、いわゆる最終的に何か中身が見えない形で数値化されたものが多かったかと思いますが、ICTでいろいろな学習活動の記録がとれることで、どんなふうにその人が成長していったかという形成的な部分や、どういうふうに変容していったのかという部分も、学習成果とか評価の一部として記録できるようになっていますので、何かそういうものを使いながら、いわゆる客観的に保証する部分と、まさにその変化や、お互いに認め合う部分の評価というところを、何かうまく組み合わせて見えるようにしていくことができると良いのではないかと思いました。以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。

【宮井委員】
 画像情報教育振興協会の宮井です。いろいろな意見を伺いながら、一つ私からお伝えしておきたいなと思ったのが、産業面ですね。仕事をするという視点で、仕事の専門的な知識やスキルを得たものを評価していくことも大変重要だと思っています。
 当協会がやっております検定試験や、教育のためのカリキュラムと教科書作りの、目指すところは、産業界で活躍する人材を育成するためというところがあります。先ほど萩原委員から御指摘がありましたように、活動自体も段階を追って実現してきておりました。
 まずここで、資料3‐2で言いますところのインフォーマル教育から始まったと見れば良いと思いますが、30年ほど前に始めた活動で、当時は画像処理やコンピューターグラフィックスというものは、まだまだ産業界でも使われていない初めの頃で、大学でも研究者の方が取組んでいたものでした。それが将来必要になるだろうということで、当時、大学の先生や企業のボランティアの方たちと一緒に作り始めたのです。カリキュラムを作って、目標となるものを何か作ろうとして、教科書を作る方法もありましたし、検定のような目指すものを作るという方法がありましたので、まず検定を作ろうとして始めました。そういう時代を、ここで言うとインフォーマルな教育の時代ということになるんだと思いますので、そういったものを、何か先見性を持ったインフォーマルな活動をきちんと評価して、情報として載せていくことが必要ではないかと思います。
 それから、特に職業に根差した教育というのは、大学でも専門学校でもやられているのですが、どうしても学校ごと、あるいは先生ごとに、範囲も、レベルも違ってきます。そのように見たときに、国内で見れば全国共通の尺度で測っていくということも大変重要になりますので、そうしたときに検定試験、認定試験といった試験制度の価値が出てくると思います。そのときに、その検定試験が本当にきちんとした能力を測れるものになっているかという第三者の評価も大変重要になってくるのでそういったものを連動して、評価する仕組みを通ったものが今回検討しているものの中に取り入れられると良いのではないかと思いました。
 そして、もう一点。大学でも、コンピュータグラフィックスや、画像処理の教育をやっていますが、それは大学の修了、卒業証書をもらっても、学部やコースの中に埋もれておりますので、勉強したかどうかは分かりません。大体、修士や博士を取れば明らかになってくるのですが。そのように考えると、領域によっては、フォーマル教育の中でやられていても、それが本当にきちんとした能力を身に付けているのかどうか分からないということでもあります。だから、別の方法も必要ではないかと思いました。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、西辻委員どうぞ。

【西辻委員】
 今日、資料3‐2でフォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育と三つの区分が出てきましたが、今回の議論は生涯学習の場面での推進方策に重点化するということですので、ノンフォーマル、インフォーマルの議論が多いかと思います。
 そこでいろいろプラットフォームを作って、履歴を蓄積していくということになるかと思いますが、余りにも複雑になると、使い勝手が悪くなるということがあるのだろうと今、御意見を伺いながら感じました。
 それで、それぞれができるだけシンプルな形でできれば良いのではないかということと、お互いに乗り入れができるというか、ある部分は重なっていて、乗換えが可能になるといいなと思いました。先ほど左京委員から、地域課題にいろいろな面で参画したときに、さらに、もっといろいろなことを学ばないといけないという状況になったときに、今までの活動の履歴なりがフォーマルなところでも活用できないだろうかという趣旨の御発言がありましたが、そういう、お互いの乗り入れを柔軟な形でできないかと感じました。
 もう少し言い換えると、自分の履歴を使いたいと思ったときに、例えば大学入試なども含めたフォーマル教育につながるところでもプラットフォームができていれば、活用の可能性が広がります。使い勝手の良いシステムが出来上がっていけば良いのではないかという感じがいたしました。
 あまりこれまでの考え方にとらわれないで、いろいろな面で使い勝手が良い形のものが作ることができれば良いと思いました。
 それから、そういう場合でも、どういうふうに評価をしていくか、どういうふうに質を保証していくかということが課題になってくると思います。御承知かと思いますが、現在、小・中・高等学校の学習評価というものは、過度に数値的な客観性に偏るのではなく、評価をする人、評価される人、その評価の結果を使う人、それぞれがおおむね妥当で信頼できるような評価を作っていこうではないかという方向で動いています。
 なので、こちらの生涯学習の場でも、より一層、評価をする人、される人、それを使う人が、おおむねこれが妥当だ、信頼できると、このような気持ちが持てるような、そういうシステムができれば良いなと感じました。

【菊川部会長】
 山本委員、お願いいたします。

【山本委員】
 今日は松田教授のお話、東京学芸大学を中心とした取組などを聞かせていただきまして、触発されて申し上げたいと思います。
 生涯学習政策の中に高等教育機関をどう位置付けるかということは、ある意味で言うと、長く問題でしたが議論としてはありながら、実際的にどうするかということに、いろいろな面で足が出なかったと思いますが、今日のお話を聞いて一つのモデルが提示されたと思います。
 前回に申し上げましたが、国立大学協会では、15日、16日と学長が集まりました。ニュースでは「日の丸・君が代」などが、話題になっておりますが、それ以外に国立大学や日本の高等教育政策のビジョンをどうするかというミーティングをやりました。全体議論ではなくて10人ずつぐらいの学長でグループワークをやるという初めての議論をやりました。そこで、今後二、三十年、子供の数も少なくなるけれど、しかし大学の役割は非常に重要だ。今後は国公私を超えた連携をどうするのか、分野別の協働をどうするかということが、国立大学の経営に当たっている学長の切実な関心事として認識されてきています。具体的には、地域研究コンソーシアムもありますし、いろいろなことをやられているのです。今日の松田先生の報告は、一般社団法人を作って事業別連携を、国公私を超えて、自治体も組み込んでやるという一つのモデルが出たと思います。
 私が、質問しましたが、この事業に東京学芸大学が、場所と事務を提供しているということは、国立大学の役割として重要なところだと思います。こういうことがいろいろな分野で行われていけば、非常に広がりのある、生涯学習という多様性のある事業に高等教育機関がコミットしていける一つの足掛かりになるのではないかと思いますし、かつ、一定の質の保証のできる生涯学習の事業が展開できるのではないかと思いました。
 それから、シブヤ大学の例も非常に興味深く伺いました。大都市部でのいろいろな集積の中で行われていますが、しかしそこには、これまで社会教育の原理で追求してきた学習と実践の往還や関係が貫かれていて、本当に人が動くということはそういうことだろうと思いました。
 そこで、履歴を集積するということ、本部会の作業テーマに関していえば、東京というマスのヒトやモノの動きの中で考えると、そうなるかということを思うのですが、私のように地域を定点に仕事をしてきた者からすれば、本当に膨大な履歴を集積して、その活用が、人の出会いになり、多様な関係が生まれるということに非常に懐疑的です。なぜかというと、例えば和歌山や、私が住んでいる大阪の町で考えれば、そんな履歴集積をしていなくても、人が出会い、その関係の継続の中で相互にお互いの役割を承認し、さらにあらたな関係に展開していくということがあるのです。
 本部会のテーマの作業方向としている、活用のために様々なシステムを、資金や人を集中して、開発していくことはどれだけ意味があるのかということについては、少し疑念に思いながら聞いておりましたので、その点も考えていくことができればと思っています。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、高見委員、藤田委員、栗山委員、栗山委員、柴山委員、そして最後に今野副部会長、お願いいたします。

【高見委員】
 では、加藤委員が作成をされていたフレームを確認して、これだけの人数がいますので、今後の議論の進め方としては、全員が何か眼鏡のようなものを持つと良いのではと思って、先ほどから少し考えておりました。
 ここの横軸に何を置くかというところと縦軸に何を置くかというところを考えたときに、今、加藤委員がおっしゃっているものは、学びの体系別を横軸に置かれているのかなと思いました。それ以外に置き方としては、例えば産業分野別、ICT分野、製造業分野、金融分野のような置き方になると思います。 あとは目的別のような軸の置き方があるのではないかと思います。これは、目的別になると非常に多岐にわたってしまうので、その後どう整理をしていくかというものはありますが、一旦横軸に何を置くかということをある程度決めて、その上でやる、やらないということを決めていくと良いのではないかと思いました。
 あとは縦軸で言いますと、プラス付け加えると良いのではと思ったことが、いかに学ぶ機会を情報収集し、それを自らがジャッジできる。その学ぶ機会が、どういう力が付くのか、何に役に立つのかということが学ぶ前にある程度評価ができるような、それがプラットフォームなのか、評価できる仕組みが必要なのかと思うことと、あと証明のところで、自ら学びたいという方のための証明と、持っているスキルを使いたいと思う人にとっての証明を分けて考えた方が良いと思っております。
 例えば加藤委員がおっしゃっているLinkedinは、私が採用も担当しているので、使いたいと思う側の視点で、例えばプログラミングスキル何級ですという人が全て、会社によって同じ実績を残してくれるかというと、そうではありません。その人の本当に書いている行動を見る、あるいはその人が作った成果物を見ないとジャッジができないということがあるので、持っているということと使えますかということは別なのでという切り口は分けて考える方が良いのではないかと思っております。
 という横軸と縦軸を議論して、ある程度固めて、次に進めていけると良いのではないかと思いました。以上です。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。

【藤田委員】
 山本委員ととても似たようなところがありますが、やはり地方国立大学としていろいろな仕事をしておりますと、高等教育機関で何ができるのかということを考えます。そうしますと、フォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育を結ぶ仕事を地方国立大学が結局担わなければならないという考えになります。
 そのように考えていきますと、いろいろ学習機会の提供をするということもありますが、前回お話しさせていただいたように、出会いの場、協議の場の設定し結んでいく仕事を日頃しておりますので、それゆえにできる可能性も多々あります。
 それともう1点は、先ほどの、御発表がありました松田の最後の方にスパイラル型発想でというところですが、この部分で、やはり学んだことを活用する、活用しながら次の課題を見つけて、また学ぶという、次のスキルを、また次のステップをという形でステップアップしていきます。そういう生涯発達を兼ね備えている生涯学習という観点から申しますと、そのプログラム開発ということもセットにして考えていかなければならない、ということがあります。
 富山は、インターネット市民塾でICTを活用しながら、学習履歴をストックしていく、見える化していくということもしております。そういういろいろな取組がある富山だから見えることですが、やはり今、生涯学習歴何年という学習者たちが何を求めているかということが問題になると、次の学び、どの学びを自分が選択すれば良いのかということ。また、今まで活動してきたが、次の活動を、どれが自分はできるのかを考える際にマッチングを求めているところもあります。
 その上のこともありまして、先ほどコーディネーターというお話をしましたが、そのコーディネートをどこがしていくのか、どこが窓口になるのか、またプラットフォームはどこなのかということを見える化するというところを、やはり学習者に明確に表すことがとても大切だろうと思います。
 それに加えて、やはり自分の学習履歴の見える化、それから自分がどの程度のことができるのか、またどの程度のことを学んだのか、自己実現しているのか、そういう部分も見える化ということで、やはり、いろいろな形で、ただ何々を学びました、何々をしましたというだけではなくて、次のステップへ行けるということもプログラミングされているようなシステムが開発される必要があると思います。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、栗山委員、お願いいたします。

【栗山委員】
 学習成果が整理されると、こんなことが良いだろうと改めて思ったのは、やはり自分自身を知るためであるということ、過去を知ること、あるいは未来を考える上でとても役に立つのだろうということ。その一方で、ほかの人に見てもらうことで社会に役立ちたいというところに役に立つのだろうと思っております。
 例えば地域課題に関わることを学んだとして、その地域に役立ちたいというものはもちろんのことですが、それだけではなくて、ほかの地域に役立ちたいという人もいるのだろうと思います。
 例えば地域が、ほかの地域にどのような人がいるのかということが分かる、その手段としてICTというものはうまく利用できるだろうと思います。ひょっとしたら、その方は国外にいらっしゃるかもしれないですし、学んだけれども、今、国外にいらっしゃるかもしれないということもあるのだと思います。
 例えばボランティアのようなことを考えると、そこに行かなければいけないボランティアもありますし、ひょっとしたら、うまくICTを利用することによって、そこに行かなくてもできるボランティアもあるのかもしれません。うまくICTを利用して人の出会いというものに役立てたら良いと考えております。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、柴山委員、お願いします。
【柴山委員】
 インフォーマル、ノンフォーマル、それから様々な資格ということで、実に多様性、ダイバーシティですね、それが含まれている、そういう仕組みだと思います。
 それで、質保証の仕組みについて、最後に申し上げたいのですが、自主的な活動を引き出さなければならないこのシステムは、地域社会やNPO法人、企業、それから自治体、そういったところの実質的な活動を縛るような、そのような質保証であってはいけないと思います。それを一言申し上げたくて発言させていただきました。ありがとうございます。

【菊川部会長】
 ありがとうございました。では、今野副部会長、お願いします。

【今野副部会長】
 今日、松田教授の教育支援人材認証協会の取組は、非常に参考になったように思います。いろいろな問題意識を先行的に取り組まれていて、様々な経験もありますし、チャレンジングな試みで、随分知見もたくさんあるような気がしました。恐らく、ここだけではなくて、このような仕組みを持っているような試みも、ほかにもあると思います。
 前回も委員の中からも出ていましたが、既存の先行の事例もよく研究しながら取り込んで検討していきましょうという話がありました。私も改めてそう思いましたし、将来的に大きなシステムを考えましょうということになっていますが、既に行われているこれらのものも取り込めるような、少しスケールの大きなシステムづくりということを考えなければいけないのではと、大きなところでは思いました。
 それから印象的だったのは、認証だけではなかなか次の活動に結び付かないということで、カフェや、交流会など、もう一つのプラットフォームも作っているということでした。それから活用を進めるために、ほかの団体の青少年の奨励制度ですか、これとタイアップして活動の場を広げているということで、他との連携で活用の場面を求めていく。これもプラットフォームならではのことだったのかなと思いました。
 実はもう少しお聞きしたかったのは、そういう需要と供給のマッチングをするときに、カフェなどの交流会だけで良いのか、あるいは制度的なことを団体で考えるだけで良いのか。具体的なマッチングのためのコーディネーターというのが何か必要になるのではないかなと思います。この協会では、そこがどうされているのかということを少しお聞きしたかったのですが、これからの議論の課題となるのではないかと思いました。
 それで、皆さん方の議論もいろいろお聞きしながらまとめてみたいのですが、生涯学習プラットフォームの持つべき機能は、いろいろとあると思いますが、大きく三つかと思いました。
 一つは多様な学習の機会の提供に資するということ。特に人材認証協会の場合には大学が中心になって、地域の団体などと一緒になり、課題を設定して、講座を設定するというプロセスが大事だということがありましたし、そういう学習機会のこと。
 それから2点目は、客観的な学習履歴の記録、管理、証明ということについて学習者を支援する機能、これも大事なものとしてあるのだと思いました。
 それから三つ目は、学習者同士のつながりを深め、それから実際に人材を求める自治体とNPOなどとのマッチングに資すること。トータルにネットワークを進めるという役割も大きいのではないかと思いました。
 その三つが、これからの議論のポイントになるのではないかと思いました。
 それからまた、学習でも生涯学習、非常に範囲が広くて、今日もフォーマル、ノンフォーマル、インフォーマルでという分類の整理ができて、非常に議論が活発だったと思います。学習提供の機能の関係ですと、できるだけ多様な学習機会、かつ多様な価値を認めるということで考える必要があります。逆に学習履歴の記録、証明ということになりますと、質保証のお話も出ていましたが、ある程度まとまった学習ということが主にターゲットになってくるのかなと思いますので、客観性が担保されるという部分が少し議論の中心になろうかとも思います。
 もっともここについては、それぞれの多様な学習自体、なかなか客観的な評価にはできないが、今は例えばネットの関係で相互に認証し合うという新しいアイデアも出されています。もともと生涯学習パスポートのときには、きっちりとした記録、証明ということも大事だが、併せて自己評価で、この学習をして何が自分にプラスになったのか、どこが成長したのかというのを自分なりに客観的に書いておき、それを読んだ人がどう評価するかということにつながる側面もあると思います。ですので、学歴で学部・学科の卒業ということでも中身は随分違うので、そういうことについてもいろいろ書いてあれば随分違うのかなとも思ったりします。
 いずれにしても、そういう機能と対象となる学習の範囲、ケースごとに少し整理をしながら深めていけば良いのではないかと思いますので、是非次回、事務局の方で整理したメモなどを出していただいて議論させていただければと思いました。以上でございます。

【菊川部会長】
 多様で貴重な御意見をありがとうございました。最後に副部会長にまとめていただきましたが、私からも1点だけ発言させていただきます。やはり、これだけICTが進んで、民間の方が、先行しているところがあります。その中で、ここでは、国としてどういうプラットフォームを提案していくかということ、公平性、信頼性、客観性ということだと思いますが、その辺に留意しながら議論するとよいのではないかと思います。そして、民間でできることは民間でしていただきながら、本当に多くの人に使われるプラットフォームやパスポートになることを目指したいと思いました。今日の感想です。
 
 では、事務局からお願いします。

【楠目民間教育事業振興室長】
 今後の審議スケジュールですが、資料4を御覧いただければと思います。
 次回の会合は、7月3日の開催を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 連絡事項は以上です。

【菊川部会長】
 では、本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。

―了―

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