学校地域協働部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年7月2日(木曜日) 13時30分~16時

2.場所

文部科学省 15F特別会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表(これからの学校支援地域本部の在り方等)
  2. 自由討議
  3. その他

4.議事録

【明石部会長】
  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会「学校地域協働部会」の第3回を開催いたします。
  本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。前回の初等中等教育分科会の「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」との合同会議では、今後の学校と地域の在り方や協働の方向性について幅広く意見を頂きました。その中でも、学校支援地域本部の重要性などについて様々な意見を頂きました。
  本日は、これからの学校支援地域本部の在り方を考えるに当たり、これからの学校支援地域本部の役割や機能について、委員の方々から意見発表を頂き、その後、意見交換を行いたいと思います。
  なお、本日は生涯学習分科会委員の横尾委員に御出席いただいております。
  それでは、本日の議事に入る前に、配布資料の確認と委員の出欠について、事務局よりお願いいたします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  本日も、よろしくお願いいたします。横尾委員も、よろしくお願いいたします。
  本日の資料ですが、資料1、2、3、4が4人の委員の皆様の発表資料、資料5が松田副部会長の報告資料、資料6が今後のスケジュール(案)でございます。
  参考資料1が、本部会における検討事項(例)で、本日は、今後の学校支援地域本部の役割や機能について御議論を頂きたいと思います。
  参考資料2が、前回の合同会議における主な意見、参考資料3が、学校支援地域本部の学校や地域との関わりのイメージ図です。各学校区の学校支援地域本部によって取組の内容や取組の頻度、また、地域の団体との関わり具合も様々ですが、少しずつこの部分の充実を図っていければと考えております。
  また、全公立小中学校の約3割、全国約9,000校に学校支援地域本部が設置されております。全ての学校区でこのような取組が進んでいくことを一つの目標にしたいと思います。これは現在の図であり、コミュニティ・スクールとの連携の在り方なども含めて、今後議論を進めていく上で御意見を頂きたいと思います。

【明石部会長】
  それでは、本日の議題に入ります。これからの学校支援地域本部の役割や機能について、永山委員、井出委員、山野委員、平岩委員から、御自身の取組も交えながら、それぞれ15分を目安に意見発表をお願いしたいと思います。永山委員におかれましては、所要で途中退席されるため、意見発表の後にすぐ質疑応答の場を設けたいと思います。その後、井出委員、山野委員、平岩委員から意見発表を頂き、まとめて3人の方への質疑応答の時間を取りたいと思います。それでは、永山委員、よろしくお願いいたします。

【永山委員】
  それでは、よろしくお願いいたします。塚戸小学校の校長の永山と申します。今日の私の発表は、世田谷区の一つの学校の事例と捉えていただければと思います。
  そもそも「学校支援地域本部」という名称が世田谷区では余りなじみがありません。と言いますのは、世田谷区では十数年前に、「学校協議会」という名称の組織が全校にでき、「学校支援地域本部」はその後に出てきた言葉です。そして学校協議会には学校コーディネーターという人材がいますので、学校協議会と学校コーディネーターを併せたものが、世田谷区では学校支援地域本部に当たるのではないかと思います。
  世田谷区は、全小中学校約100校がコミュニティ・スクールです。ですから、どの学校もコミュニティ・スクールという立場で、それぞれに学校協議会があります。ですから、ニュアンスが少し違うかもしれませんが、発表させていただきます。
  資料の1ページですが、なぜ安全教育が必要かということを書いてあります。例えば本校は、児童数が1,080人を超えています。なおかつ、私は併設の幼稚園の園長もしており、約1,200名以上の子供たちを毎日、見ております。毎日のように起こるけがや病気の対応に追われているのが現実です。
  安全教育の範囲は、生活安全・交通安全・災害安全等とても広く、事故を完全に防ぐことは難しいですが、減らすことはできます。そのためには、地域の力がどうしても必要になってきます。世田谷区の学校は学区域制であり、選択制ではありませんので、地域との密着はどの学校も強くなっています。どの学校も、防災や児童の安全が中心で、地域とつながっていることが多いです。ですから、私の学校でも、学校だけで子供の安全を守るのは難しいので、地域と協力するほかに、子供自身が自分で自分の命を守るということを常日頃から指導をしております。
  防災の観点から、地域が子供たちの安全とつながっていくと、地域がすごく活性化されるということを実感しております。地域の方たちは、子供たちと接することによって癒やされるんでしょうか。子供たちと顔見知りになり、それが学校に応援という形で返ってきます。ですから、学校協議会やコミュニティ・スクールを通していろいろな取組をやっていますけれども、やはり地域防災、子供たちの安全を守るということがかなり大きな部分を占めています。
  2ページ目ですが、これは東京都が出している「学校安全教育プログラム」という冊子から抜き出したものです。学校における安全教育の範囲はものすごく広いんですね。大きく分けて生活安全、交通安全、災害安全ということで、今、脚光を浴びているのが3番目の災害安全です。阪神・淡路大震災、そして大阪の池田小事件をきっかけに安全教育に対する認識がとても高まっていて、私が所属している学校安全教育研究会の全国大会は600名前後参加します。
  今日の中心、3ページ目を御覧ください。本校の安全教育と地域との関わりということで、2例と書いてありますが間違いで、(1)避難所運営訓練、(2)サバイバルキャンプ、(3)PTAの校外担当による活動、(4)TAP(塚戸安全パトロール)の活動の4例書いてあります。(1)、(2)、(3)はどの学校でもやっていることです。1番、避難所運営訓練。これは地域との関わりがかなり密接にある行事です。
  2番目のサバイバルキャンプについては、避難所運営訓練を子供バージョンにしたもので、1泊2日、学校に泊まり、学校が避難所になったときの訓練をします。これも地域がかなり関わり、行政も関わります。
  校内では、3番目、PTAの郊外担当による活動。これもどこの学校でもありますが、大事な部分を占めています。
  4番目のTAP(塚戸安全パトロール)の活動が、本校独自の活動で、地域の活性化にとても有効であり、紹介したいと思います。配布した資料の中に、小さい資料でTAP1,000日、と大きい資料でTAP2,000というものがあります。現在、TAP3,000というのを作っていますが、この1,000、2,000、3,000というのはTAPが発足してからの日数を表していまして、もうすぐ3,000日を迎えます。
  TAPというのは、そもそも地域の子供たちの見守り隊です。本校の生活指導主任が地域に声を掛けて、子供たちの登下校を見守ってくださいというところからスタートしました。こういう組織を作ろうとする学校は結構あるんですけれども、大体途中で消えてしまうんです。最初は頑張ってやるんですけれども、なかなか長続きしない。その原因は、がっちりした組織があって、会長がいて、次期会長は誰かとか、そういう部分がかなり地域にとって負担になってしまい、一抜けた、二抜けたになってしまうんです。
  本校では、一切組織はないんです。入りたいと言った方はその場で入れる。ですから、構成員は地域の方とか保護者とか卒業生とか、あとは自発的な地域ボランティアの方々で、私も入っています。現在、約90名で、誰でも入れます。会長等の役職は一切ありません。会費は一切なしで、運営費は世田谷区の「地域のきずな助成金」というものに申請して、青いジャンパーを購入し、新しく入った方に配っています。それから、お手元にあるパンフレットもその助成金で作っております。
  活動内容はごく簡単で、青いジャンパーを着て登下校時などに子供たちを見守るということです。本校では、見守るの「見」は、「見る」ではなくて、自分の身を守るということで「身」という漢字をあえて使っています。学区域内に住んでいるこの方たちは、特に指定した場所で活動するわけでなく、自宅の前に出て、家の前を通る子供に声を掛けるという、ただそれだけのことなんです。そこからスタートしたんですが、やがて学校行事、運動会などで「私たちにできることはありませんか」ということで、いろいろな面で学校を支えてくださっています。
  モットーは、「できるときに」「できることを」「できる範囲で」ということですから、自分の好きなときに、時間があるときに、例えば買物に行くときに青いジャンパーを着ていくということですから、無理がないんです。2007年からやっていますけれども、成果としては、子供たちと挨拶を交わすことでメンバーの方々がまず元気になる。それから、青いジャンパーを着ることで地域の方々とも挨拶が交わされる。子供たちにとって安心できる存在であり、心の支えとなっている。それから、学校の様々な活動に対しての応援団ともなっています。元々コミュニティ・スクールですから、コミュニティ・スクールという言い方も余りせず、地域運営学校という言い方をしています。学校運営委員会と学校関係者評価委員会、それから、先ほど言った学校協議会、そこが一体となって地域とともに学校運営をしています。TAPのメンバーは若い方からおじいちゃん、おばあちゃんまでいますので、TAPのメンバーが地域のいろいろなところに所属しているんです。例えば青少年委員をやっていたり、民生・児童委員をやっていたりということもありますので、自然にいろいろな行政が一つに固まっているわけです。
  世田谷区で、校長会で学校支援地域本部の説明があり、世田谷区で以前からやってきたことがそのままなんだなということで、前の言葉を使って活動しています。
  4ページ目ですけれども、組織が複雑だと、地域の方がわかりづらいということです。最初、地域運営学校という名前が入ってきたときに、地域の方たちが学校協議会と区別が付かないんです。間違って会合に出席したりしちゃうんですね。「きょうは学校運営委員会なんですよ。」、「ああ、そうなんですか。」とか言って帰っていったりすることもある。私が思ったのは、できるだけ組織はシンプルで分かりやすい方が地域の方々にとってはいいんだろうなというふうに思っています。
  世田谷区は、全校がコミュニティ・スクールなので、地域は複数の学校にまたがっていますから、とても連携がしやすくなる。ですから、新しく組織を作るというよりも、学校支援地域本部という言葉が入ってきたときに、今まである組織をこれに整理し直すというように私の学校ではしております。ですから、関係としては、コミュニティ・スクール、学校ですね。そして、学校協議会というのがその実働部隊なんです。学校運営委員会が、防災や、例えば子供の体力が不足だということであれば、走り方教室をやろうとか、漢字検定をやろうとか、いろいろ取組を企画します。それの実働部隊とも言えるのが学校協議会。ここで言えば学校支援地域本部に当たるんでしょうか。
  2番目ですが、コミュニティ・スクール、学校協議会は学校が抱える課題解決や支援のための応援団的存在なんです。学校現場は本当に忙しいんです。よく新聞などでも言われますけれども、例えば本校では6時前から出勤している教員がいるんです。そして、プリントの準備をしたりして、帰りは夜10時に警備員が帰るまで残っている教員もいます。そうすると、電気がついているのがもったいないという苦情の電話が来たりするので、教室では仕事をしないで、職員室の上の電気だけつけて仕事をしているんですね。それぐらいどこの学校も、現場は忙しいわけです。
  そういう教員を少しでも助けてもらえる、そういう組織に、学校支援地域本部、本校で言えば学校協議会とかコミュニティ・スクールの学校運営委員会が担ってもらえるのが現場としては一番有り難いんです。
  学校は、職員が一人倒れてしまうと、学校全体ががたがたになってしまうんです。例えば今のこの時期に職員が病休で休んだとすると、代わりがいないんです。そうすると、誰が担任になるかというと副校長なんです。副校長は地域との窓口になっていますから、もうそれがいなくなって大変な思いをするんですね。だから、私、校長としては、職員に病気にならないようにいつも配慮しております。
  あと、うちで言えば学校運営委員会。コミュニティ・スクールの会議の中心になるメンバーを選ぶ。これがうまくいくかどうかのポイントなんです。これは人選を誤るとコミュニティ・スクールが学校批判の立場になってしまうんです。世田谷区では学校の応援団としての存在なんですけれども、これも人選を学校長がどのようにしていくかということがポイントになります。本校では、TAP(塚戸安全パトロール)という母体がありますので、人選はうまくいっていると思っております。
  4番目ですけれども、かつて人材バンクという名前で、地域の方々の協力者リストを作り学校への協力を求め、うまくいった面もありましたが、課題もありました。協力者リストを作ったのはいいんですけれども、声を掛けるのに差が出てしまい、いつまでたっても声が掛からない、一体どうなっているんだと逆に苦情が来てしまう。そこの調整を全部、副校長がやっているわけです。それをコーディネーターとか、それから、学校運営委員会とかがうまく調整してくれています。どうしても副校長は関わらざるを得ないんです。コーディネーターが入ったとしても、副校長は関わります。ですから、副校長が出張になったときは大変なんです。現場はどこでもそうなんですね。
  結局、どういう形にしろ、地域との連携を保つためには、やはり人情の世界ですから、人間関係がうまくいかないといけない。だから、いい人選をして、その人たちと協力しながらやっていくというのが一番だと感じております。同じ世田谷区内でも学校によって全然違いますから、元々ある地域性を生かして、上からこうしなさいということではなく、元々ある組織をうまく生かして、それを体制と合わせていくということは、私はとても大事だと思っております。
  私の仕事の8割は特別支援の子供たちとの対応であり、副校長もそうなんですね。今、学校が抱えているのは、行事もそうなんですけれども、特別支援の子供たちをいかにうまく学校の中に入れていくかということです。
  学校支援地域本部が学校にうまく機能してくれれば、私たち教員は本当に助かります。だから、是非皆様の御意見を学校現場で実現できればと思っています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。非常に貴重なケーススタディーだと思います。では、今の永山委員の御発表に対して御質問、御意見ありましたら、お願いいたします。生重委員。

【生重委員】
  世田谷区は学校数が多いと言いますが、どの学校にも副校長は2人いらっしゃるんですか。

【永山委員】
  本校だけです。学級数が29学級以上から副校長2人です。うちの学校は、今、31学級なので2人います。

【生重委員】
  副校長が2人いるとバランスをとって、うまくいきますね。

【永山委員】
  それはよく聞かれる質問ですけれど、うまくいかない学校の方が多いと言われています。2人目の副校長を採るときに、昇任副校長をお願いしますと言いました。要するに先輩、後輩の形にするのが一番いいんです。これがベテラン2人だと多分難しいと思います。

【生重委員】
  ありがとうございます。

【明石部会長】
  少し言葉の説明をしていただきたいのですが、学校運営委員会と学校協議会はどう違うんでしょうか。

【永山委員】
  学校運営委員会というのは、コミュニティ・スクールの中心メンバーで、構成員には地域の方々と私が入っています。準公務員です。ですから、区から委託を受け、謝礼金が出ます。いろいろな企画運営をしたり、学校経営方針を承認してもらったり、人事にも意見を言うことができます。守秘義務がありまして、どちらかというと、私たちの教員側です。
  学校協議会というのは、例えば行政とか、いろいろな地域の団体のトップの方たちが集まる校友会で、学校運営委員会で話したことをこういうふうにするんですけど、皆さん、よろしく御協力お願いしますとかと。だから、企画運営が学校運営委員会、コミュニティ・スクールで、学校協議会は地域の実働部隊と考えるのが一番分かりやすいですかね。

【明石部会長】
  そうしますと、TAPの方々は90名いらっしゃいますけれども、このTAPの活動の世話役というか、リーダーはいないということですけれども、どういう方が事務を担当されているのですか。

【永山委員】
  リーダーはいませんが、声掛け役がいて、学校運営委員会、コミュニティ・スクールのメンバーの中にいます。だから、コミュニティ・スクールのメンバーは全員TAPに入っています。

【明石部会長】
  学校運営委員会の方々はみんなTAPに入っているんですね。

【永山委員】
  入らなくてもいいんですけど、皆さん自主的に入っています。ふだんは決まった人が学校に関係することが多いんですけれども、それをあえて地域に広げるために、ふだん、なかなか学校に関係しない方にも声を掛けています。中には、私、TAPに入ってみようかしらという声があったら、どうぞということで、そして学校の方にも協力してもらえます。

【明石部会長】
  私の方からもう1点だけ。このBOPと新BOPは、日本で世田谷区が最初に作ったんですね。このBOPと新BOPは、放課後子供教室の一つなのか、それとも別なものなのか。この新BOPはどこが所管をしているんですか。

【永山委員】
  新BOPは、世田谷区で言えば子ども部というところが管轄しています。児童館です。児童館とか、学童クラブ、それが新BOPと考えてください。何で「新」という字が付いているかというと、元々BOPという放課後遊びがありました。また、BOPとは別に学童保育がありました。でも、どうせ遊ぶのであれば一緒にしようということで、BOPと学童を合わせて新BOPという名前で、施設は学校の中にあります。ですから、学校、子供たちはさようならをして、ランドセルを背負って校舎内を移動してBOPの部屋に行くんです。つまり、放課後遊びです。でも、BOPに行ったら、もう学校の管轄とは変わりますので、BOPの方で責任を持ちます。放課後遊びが学校の中にあるというふうに捉えていただければいいと思います。

【明石部会長】
  では、若江委員。

【若江委員】
  コミュニティ・スクールをつかさどるのが学校運営委員会で、学校地域支援本部のいわば運営団体みたいなことが学校協議会ですか。

【永山委員】
  私は今までの部会を聞いていて、そういうように捉えています。

【若江委員】
  二つ質問がありまして、1点目は、世田谷区全校でコミュニティ・スクールになっているということは、校長先生がコミュニティ・スクールの意義、意味をきちんと理解されて、かつ、区内の全教職員がコミュニティ・スクールのことについて正しい知識と理解をどのように研修されて持っておられるのかということです。
  学校支援地域本部に当たる学校協議会の中身についてもそうですし、それと、2点目は、コーディネーターの応募、要するに公募をどのようにされていて、育成は区として計画的にされているのかどうかその2点を、お聞きしたいんです。

【永山委員】
  1点目ですけれども、ずっと世田谷区にいる教職員は分かっています。しかし、人事異動がとても多いので、他の地区から入ってきた人には分かりにくいので、学校長の経営方針の中で職員会議で説明をします。しかし、1回説明しただけではわかりづらいので、教職員も地域行事に参加し、いろいろなところに参加してもらうことによって理解してもらうことが一番いいと思います。学級担任は自分のクラスのことで精いっぱいですので、なかなか地域に目が向かないんですけれども、そこに目を向かせるのが私たち管理職の仕事です。
  2点目。本校にコーディネーターはいません。コーディネーターを活用するか、しないかは学校に任されています。うちの副校長にこの前、うちでも学校コーディネーターが必要かと聞いたら、今はうまく回っているので、そこにコーディネーターが入ると、副校長と組織の間にコーディネーターが入るので、かえって複雑になってしまうねという話になりました。私が以前いた学校ではコーディネーターを活用していたんですけれども、それはとてもうまくいっていました。ところが、コーディネーターにも本当にいろいろな人がいて、かえってトラブルになってしまうことがあります。子供たちに何か教えてくれるという団体と交渉するんですけれども、そこがうまくいかないこともありますので、コーディネーターの育成はとても大事で、教育委員会の方でも研修はしていると思います。コーディネーターを見つけるのは学校の仕事だと、私は思います。地域の人にやってくれませんかと言って推薦するんです。前に私がいた学校ではそうでした。

【若江委員】
  永山委員の学校の場合には、既に副校長先生がコーディネーターのような役割を担ってこられたので、新たにコーディネーターを置く必要性がないので、コーディネーターを置いていないということですね。

【永山委員】
  そうです。当校はコーディネーターを置く必要がないというか、コーディネーター制度ができる前から、副校長が地域とのつなぎ役を担っていたので、あえてコーディネーターを置く必要がなかったと言った方が正しいかもしれません。実際に学校運営委員の人たちがコーディネーターの役割をしています。

【若江委員】
  運営協議会の人たちがそれぞれコーディネーターとして役割を果たし、複数のコーディネーターがいるという環境が定着しているということですね。

【生重委員】
  地域運営学校委員と学校関係者評価委員とが重複していないのは、放課後は所管が違うからかもしれませんが、地域運営学校の委員というのは、学校全体、地域全体のトータルで総体的に子供たちの健やかな育成環境ということを考えていくのかと思っていたんですが、何か理由があるんですか。

【永山委員】
  配布いたしました学校要覧を1枚めくったところにメンバーが記載しておりますが、地域運営学校(コミュニティ・スクール)の委員と学校関係者評価委員は重複してはいけないと言われているんです。学校の両輪、一つは企画する、一つはそれを評価するという立場になっています。

【生重委員】
  1年に何回、会議を開いていらっしゃいますか。

【永山委員】
  基本的に、学校運営委員会は月に1回です。学校関係者評価委員会は、実質的には2学期からですが、月1回ぐらいです。学校によっても違いますけれども、何回か話し合って評価をまとめ、来年度の経営方針を出します。

【生重委員】
  学校関係者評価委員は、どのような方たちなんですか。

【永山委員】
  PTAから1名、学識経験者から1名、卒業生から1名といった枠があり、そういう方たちを選んでいます。

【生重委員】
  人選が重要だとプリントにお書きになっていますが、永山委員なりの人選のポイントをお聞かせいただけますか。

【永山委員】
  学校のことをよく知っている方。偏った考えのない方。地域の方に信頼されている方。このような方々をバランスよく選ぶということが大事だと思います。

【明石部会長】
  永山委員、ありがとうございました。次に井出委員お願いします。

【井出委員】
  杉並区の学校支援地域本部の取組に絡めてコミュニティ・スクールの状況であるとか、あるいは今後の学校の在り方等を含めてお話をしたいと思います。
  話の中で、「学校支援本部」と「学校支援地域本部」という言葉と混同することがあるかもしれませんが、杉並区では「学校支援本部」というのが正式な名前ですので、それは「学校支援地域本部」のことであると御理解ください。
  また、関連の資料として、「学校支援本部ってなんだろう新聞」、地域運営学校のパンフレット、学校支援本部のパンフレット。これらを、私の話と重ねながら御覧いただければ具体的にお分かりいただけるかと思います。
  それから、「地域とともにある学校」、これは昨年、地域運営学校の成果検証を1年間掛けてまとめた概要です。ここからも幾つか引用してお話をしたいと思いますので、御参照ください。
  それと、お配りしていませんが、杉並区は教育ビジョンを2012年に作りました。「杉並区教育ビジョン2012」と言っているんですけれども、私の話の中に出てくる教育ビジョンというのはそのことです。それから、部数が足りなくて間に合わなかったんですが、2部、回しますので、発表を聞きながら、なるほどねと思うところがあったら御参考にしてください。これは担任の一覧表のほかに、裏担任の一覧表が載っている資料です。これは杉並第一小学校の例で、後ほど説明をします。
  それでは、杉並区の学校支援本部の取組について、お話しさせていただきます。私は平成18年の4月に、杉並区の教育長に着任しました。それまでは東京都にいたんですけれども、そのときに、私の教育行政の基本的な考え方はどういうことなのかという議会の質問に対して、私は「いいまちはいい学校を育てる」、そして、裏返せば「学校づくりはまちづくり」に通ずると答弁しました。ですから、この10年間、あらゆる施策を説明するときは、いつも「いいまちはいい学校を育てる」、「学校づくりはまちづくり」と言っておりまして、区の基本計画、総合計画、実施計画の中にも、この「まちが学校を支え、学校づくりがまちづくりにつながる」という基本理念が織り込まれております。新しい教育ビジョンも、この基本的な考えに基づいて様々な構成がされているところです。
  特に、学校支援本部のような地域との協働という観点から焦点を当てて、幾つか教育ビジョンの中から引っ張り出してきますと、取組の視点として三つ挙げているんですが、一つ目は学びと循環、二つ目が連続性ときめ細やかさ、三つ目が関わりとつながり、これがそこには書いていないんですけれども、教育ビジョンを進めていく上で視点として用意したものです。この学びの循環というのは、学校教育、あるいは生涯学習で学んだものを地域作りに、あるいは地域の教育に再び還元させていく、そういう還流を作りたい。ですから、学びの循環、学びと循環。その受皿として、関わりとつながりを重視した学校作り、まち作りをしていく。ですから、そのような方法とその受皿という関係になっているわけですが、それを受けて様々な施策を展開しております。
  地域運営学校の指定と学校支援本部の設置について簡単に触れておきます。杉並区では、平成17年度に制度化された地域運営学校(コミュニティ・スクール)を4校、小学校2校、中学校2校、指定いたしました。昨年で10年目を迎えたわけです。平成27年4月現在は29校、小学校、41校中の19校、中学校、23校中10校が指定をされて、今年度末までに32校に増える予定です。そして、平成33年度に全校指定の予定をしております。なぜそんなに間延びした計画なのかということはこの後の話の中で出てきます。一気にやらないところにみそがありますので、そこで触れていきます。
  それから、学校支援本部の設置は平成18年に5校、設置いたしました。日本で最初の学校支援本部です。この5校を平成22年度までに全校設置を終えて、現在は10年目を迎えたということになります。
  この地域運営学校の運営に関する予算は約3,000万、学校単位で言いますと24万弱ということですが、これはほとんど大きな物も買えませんし、ちょっとした消耗品であるとか、あるいは人件費です。そういった形で使用しております。
  学校評議員制度もまだ残っておりまして、来週の7日に学校評議員の代表者会議というのがありまして、その席で今後のコミュニティ・スクール化の方向性と国の動向について話せと言われていますので、今日の会議の内容を持って帰り話そうかと思います。学校支援本部は、平成18年に設置をしたんですが、最初の5校は小学校3校、中学校2校でした。平成22年度に全校設置をしたんですが、基本的には初度調弁としてコンピューターの端末等の備品、それから学校支援本部のための部屋を用意するということで、各学校に部屋を、すごい部屋を持っているところもあれば、階段の下のかわいそうなぐらい狭いところもあれば、PTA室の半分をもらっているところもあれば、いろいろですけれども、デスクを用意してコンピューターを置いて、教育委員会との情報の送受信はコンピューターを通して行い、様々な決裁もそれで行うという、いわば行政の出先の機能を持つようにしています。
  関連予算は1校当たり40万。これは学校地域コーディネーターに単価900円の402時間分で36万1,800円。それから、会計事務の担当者に3万7,800円、これは900円の42時間分ということで予算を付けております。全部使い切る学校もあれば、余って、返さなくてもいいのに返してくれる学校もありますけれども、40万でこれだけの成果を上げてくれたら、費用対効果から言えば、教育行政、私どもが展開している教育施策の中で一番費用対効果が高い、いい成果だと思っているんですが、この部分をもう少し手厚くしたいと思っています。学校の特色ある教育活動を展開するに当たって査定予算を付けるようにしています。例えばA校が地域人材を活用してこんな事業を展開したいといったようなときに、校長と学校支援本部が協働して、プロモーションといいますか、その辺は校長がやるにしても、そこから先のコーディネーターのようなことをもし地域本部がやるとしたら、そこに例えば上限はないんですけど、200万から300万余分に付けたり、あるいは30万ぐらいでいいと言うんだったら、30万ぐらいにしたり、5万円でいいと言えば5万円にしたりしながら、学校支援本部に渡すお金だけではなくて、特色ある教育活動を展開する上で必要な予算についてはできる限り面倒を見ていきたいというふうに、この間、してきております。
  なかなか面白い活動をしておりまして、ある小学校はプロ顔負けの影絵劇団を持っていまして、7月の十幾日に第3回の公演をやるんですが、これはもう生ですから、歌も音楽も、せりふも、バックの絵も、もちろん影絵も全部自分たちで作って、その学校の児童生徒に見せていただけるんですが、それぐらいの力を持った事業を展開しているところもあります。
  次に、地域運営学校の成果と、学校支援本部の取組について、幾つか触れておきます。まず、地域運営学校の成果ですが、これは資料を用意しました。昨年行った10年目の検証作業の中からピックアップをしてきました。3ページを御覧ください。大きく分けて子供、それから、大人。大人は先生と地域・保護者。そして、学校。学校は校長も含みます。
  そういう部分にどんな影響やどんな成果をもたらしたか。簡単に言うと、地域運営学校を進めることによって、児童生徒の自己効力感、自分への信頼感といいますか、自信が高まった。これは、ここに出てくる五つの項目はおおむね有意差を認められるものを取り上げておりますので、そんなにうがった見方じゃないと思うんですが、お断りしておきますけど、地域運営学校にすると、学校は驚異的にドラスチックに変わるということはありません。学力が高まるかと聞かれますけれども、高まることもあれば、下がることもあるし、別になったからといって、地域運営学校になることは、学力が上がるということとは決して同じではない。上がっていく学校はもちろんありますけれども。
  一つは、児童生徒の自己効力感が高まったということ。もう一つは、その学校の教職員が自分の学校の子供を見る目が温かくなった。肯定的になった。これはよく分かります。なぜかというと、学校に自分以外の大人がいるわけです。つまり、学校の人間関係が先生と子供だけではなくなって、そこにまちのおじさんやおばさんや、よく分からない人や、よく分かっている人や、いろいろな人が入ってきて小さな社会が作られ始めると、そこで自分たちはどう見られているのかということは、もちろん子供は感じますし、教師は、自分たちが一方的に、あるいは一元的に見ていた子供たちが、違うまなざしや違う視線で見ている大人が周りにいると子供を見る目が変わってくる。つまり、いい影響を受けるということが見え始めています。
  それから、教員は、校長のガバナンスといいますか、リーダーシップが高まってきていると感じているということ。それから、関わる住民や保護者は、学校の運営支援に参加をするようになった。
  最後です。小学校は、保護者や住民との関係が良好だと教員のストレスが少なくなる。後で2030年に学校は生き残れるかという話をしたいんですが、小学校というところはストレスの塊です。ストレスが一番ないのは大学、その次は高校、その次が中学、一番あるのが小学校。なぜかと言うと、小学校は何でもかんでもやらなければならない。御飯を食べる面倒から、お尻の面倒まで。挙げ句に勉強も教えて。本当はその反対ですよね。勉強を教えて、挙げ句に飲み食いの面倒までというんだったら順序は分かりますけど、最近は事のついでに勉強を教えるぐらいにならざるを得ないような状況もないわけではありません。なぜそうなるかというと、小学校の先生は何でもやらされるし、やりたいと思うからなんです。
  明治5年の学制発布以来、小学校というのは、一人の優秀な先生が朝来たら、子供たちに対して何でも教えていたわけですね。飯、食ってきたか、うちの仕事を手伝ってきたか、ちょっと先生の肩をもみなさいという話から始まって、うちに帰って勉強する中身まで教えて。言ってみれば、「教え子」という言葉はそこから出てきたわけです。親子の関係に等しいような、そういう関係が小学校は一番強い。そうすると、チーム学校構想というような話が進んでいますが、チームというイメージが小学校はラグビーのラックやモールみたいな感じなんです。高校や大学はアメリカンフットボール。私はよく例えて言うんです。野球でもいい。守っている最中に突然バッターに代わるやつはいない。挙げ句に指名打者は絶対守らなくていい。だけど、ラグビーやサッカーは、サッカーは別にしても、モールになったらみんなが飛び込んでいく。そのときに、スタンドオフ。スクラムハーフがモールの中に入ってしまうとノーハーフの状態になって、訳が分からなくなる。ちょっと下がって見ているのがいなければいけないんだけど、下手するとみんながそこに入って、訳が分からない状態になる。
  ところが、アメリカンフットボールは、パンターなんていうのは1試合に何回出てくるんですか。何回も出てこないですよ。ゴールが決まった後、タッチダウンが決まった後、出てきて、ぽかんと蹴るだけ。それでもちゃんと役割が了解されているわけですね、自分が何をすればいいかということを。それは相互に了解が成立していますから、ああいう分業が完璧に行われる。作戦もそれに従って行われる。
  そうすると、小学校という組織をチームで考えたときに、どういうチームを構想したらいいのかということを先に考えておかないと、ただチーム学校、チーム学校と言って、チームでやりましょうと言ったところで、チームのイメージがそれこそ千差万別だったら、とんでもないチームが出来上がって、いわば泥んこチームになりかねないということもあろうかと思います。そういうときに、一つ言えることは、少なくとも、学校に自分たちを支えてくれる、いわば同志のような、同志とまでは行かなくても、理解者であったり、助言者であったりすることができるような人がいてくれると、教員のストレスは大幅に減ってくる。これは苦情が少なくなるということももちろんなんですが、苦情が解決しないまでも、それを一緒に考えてくれるという関係が出来上がっただけでも、ストレスがかなり減るのではないか。実際に減ってきているということもあります。
  4ページに、学校支援本部の取組について、幾つか特徴的なものを挙げておきます。この4校は文部科学省の地域による学校支援活動の表彰を受けた学校で、初回からずっと4年連続で受賞しているんですが、来年も再来年も候補を上げていきますので、是非継続的に表彰をお願いしたいんですけれども、まず、井草中学、これは面白いんです。この中学の学校支援本部は「円」というんです。1円、2円の円。「円」の周りに様々な社会関係資本といいますか、人間、地域の教育資源が乗っていて、それが連携、協力してやっていこうというイメージで「円」と付いているんです。そこにはコミ担というのがありまして、コミュニティから参加した担任、裏担任ですね。1年A組に井出という数学科の教員が担任でいるとしたら、その裏側に地域のおじさんがコミ担という形で張り付いているんです。
  それから、次の2番目の杉並第一小学校は、杉一プランというのが学校支援本部の名称なんですが、ここには「朝先生」というのがいまして、最初のページに1年1組から学級担任があって、次のページに朝先生が同じような顔をして、ちょっとめくったら、どっちが先生だろうと思うぐらい、ごく自然な顔をして写っていますけど、これは朝来て、職員朝礼であるとか、教科の打合せとか、学年の打合せをやっているときに、15分間、クラスに入って漢字の面倒を見たり、授業、行事を教えたり、剣玉を教えたり、短歌を教えたりやっているんです。そういう学校支援本部というのは、かなり力を持ってきていますので、これがコミュニティ・スクールに変わっていく段階で大きな威力を発揮したということは言えると思います。
  あと、桃井第四小学校と三谷小学校がありますけれども、もし後で質問の時間がありましたら、お答えいたします。三谷小学校の学校支援本部の名前は学校支援地域共生本部というんです。これはなかなかユニークですね。学校を支援するだけではない。地域と共生していくんだということを名前に挙げているんです。
  さて、5ページに、学校・地域コーディネーターの期待について、三つ、書いてあります。一つは、学校と地域の調整役。汽水域、学校でもなければ、地域でもない。あるいは学校でもあり、地域でもある。真水と塩水の交じり合う部分の、先生でもなければ保護者でもない、第3の大人としての役割を果たしてほしい。
  それから、教育活動のプロデュース。これはかなり進んできています。恐らく全国の学校地域コーディネーターの仕事の中で今後大いに期待したいのはこの部分なんですね。教育活動のプロデュース、それは新しい授業、生活科であるとか、総合的な学習であるとか、キャリア教育であるとか、今まで学校が担ってきて一番不得手であった部分を是非担っていっていただきたい。これが大きな役割になるはずですし、なっております。
  それから、三つ目、開かれた学校づくり。開かれた学校づくりの、言ってみれば船頭になってほしいということです。学校のハイブリッド化というのは、これは私がずっと提唱しているんですが、2030年に学校は生き残る手段は1個しかない。学校をハイブリッド化すること。つまり、免許を持った先生だけしかいない学校から、免許を持っている人と持っていない人、つまり、免許がなければできない仕事は免許を持っている人がやって、免許がなくてもできる仕事は持ってない人にやってもらえばいい。このハイブリッド化を進めるための大きなてこになっていくはずだと。これが今、チーム学校構想で話し合われているスクールカウンセラーであるとか、スクールソーシャルワーカーであるとか、あるいは弁護士であるとか、そういったものを含めてどこまで制度化し、どこまでこれらを条文化していくことができるか。この一番危険なところは、1回、制度化すると、その瞬間から形骸化するという歴史がありますので、これは大いに気を付けなければいけないと思いますけれども、ここは大きな課題で、期待をするところです。
  次に、学校・地域コーディネーターの発掘と育成についてですが、キーワードは再現性と持続性と多様性。再現性とは何か。いつでも、どこでも、誰でも、誰か属人的な能力を持った人ではなくて、標準化、モデル化することによって、いつでも、どこでも、誰でもできるようにしていくことがまず第一。
  二つ目は、持続性。コーディネーターを育成しながら更に次の発掘をしていくという、上に書いた発信、体験、参画、評価、これらをうまく循環していけば、持続性はかなり確保することができる。今、杉並区では、スクール・アドバイス・ネットワークに頼んでコーディネーターの研修を行ってもらっています。中身は教育課程の編成から始まって、高度なことまでやっていますので、授業をプロモートしていく、あるいは授業をコーディネートしていく力が付いていく、その源になっています。
  もう一つ、最後は多様性の重視。教育委員会のスタンスは、お好きにどうぞ、勝手にやったら。お金は40万しかありませんから、その中で好きにやってくれて構いませんというのが我々の基本的なスタンスです。余計なことは言いません。それが発掘と育成。
  最後、これからの学校支援本部に求められることということで、「杉並区教育ビジョン2012」にまとめた取組の方向をあえてそこに書きました。これはまさに学校支援本部に求められることと同じだったからです。一つ目は学校支援、二つ目は協働の推進、三つ目は新しい学校作り、そして、生涯学習の場であるということ。この四つ目が意外と忘れられがちなんですが、非常に重要な受皿になっています。2030年に学校が生き残るためには、この学校支援本部がどこまで成熟しているか。学校のハイブリッド化はどこまで進んでいるか。ここに掛かっているのではないかと思っています。
  最後に、こういった学校支援本部の活動をどうやったらうまくいくか。私たちの基本的な戦略は、杉並区という都市の自治体、つまり、都市であるということの優位性を最大限に生かそうというのが我々のスタンスです。人・物・金・情報、それから、時間、これが全部集約されていますので、これを最大限活用して進めていますが、これは農山村とか漁村とか地方で同じようにできるかといったら、とても無理です。ですから、学校支援地域本部を進めていく上で一番大事なことは、地域の特性に合った方法を採用して、その地域の人材を活用していくのが基本的な戦略になろうかと思います。「学校づくりはまちづくり」という対の言葉でまとめて、私のお話に代えさせていただきます。

【明石部会長】
  井出委員、ありがとうございました。続いて、山野委員、お願いします。

【山野委員】
  山野です。パワーポイントの資料と「エビデンス・ベースト・スクール・ソーシャルワーク」という冊子とチラシの3種類入れさせていただきました。パワーポイントを中心にお話をさせていただきたいと思います。
  私は、福祉の分野の人間で、スクールソーシャルワーク、学校の中に福祉を入れていくということをずっと研究し活動しています。子供の貧困対策の委員もさせていただいていて、そこで学校プラットフォームという案が出ましたので、そのあたりをいろいろ、文部科学省の方や厚生労働省の方、現場の方とも議論しながら、いろんなことを考えているところです。
  今、子供が抱える課題に対して構造化した仕組み作り、今の課題を踏まえて仕組み作りの福祉と教育の協働した立場でお話させていただきます。パワーポイントの2ページに、ポイントを挙げていますが、初めに、今の親子の抱える課題のところを簡単に触れて、それから仕組み作りの話にいきたいと思います。
  初めに子供の課題の背景について、今日もここへ来る前に厚生労働省の方と話をしていたんですけど、厚生労働省では一部、児童虐待であるとか、いろんな問題、課題があったケースに対応するという、一部のイメージを皆さん持たれていると思うんですね、特別な。パワーポイントの7ページを見ていただければ、三角の頂点の一部、実は児童相談所に送致しているのは、全ての子供からから見たら何%かというと1%なんです。なので、全ての子供たちを見ている方から見たら一部だと思うんです。対応できているのも1%ほどです。しかも、児童相談所はある都道府県だけではなく全国どこでもですが、この1%の子供たちを見ているんですけれども、そこから施設入所ができるのは全相談件数の10%だけなんですね。これ、皆さん、余り御存じない。児童相談所は施設入所させるのが仕事だと思っておられると思うんですけど、90%は在宅指導なんです。ここに非常に限界もあり、ミスマッチがあると思うんですね。
  私が初めにお伝えしたいのは、福祉というのは、特別な子供への一部のことなんだということではなく、社会福祉の理念は本日の資料には書いてありませんが、先生方のお話を聞きながら、まずそこにちゃんと伝えておかないと、話がかみ合わないのではないかと思ったんですが、クオリティー・オブ・ライフ、子供たちの最善の利益であるとか幸せであるとか生活の質の向上が社会福祉の理念です。なので、この氷山の一角が福祉の仕事だということではなく、ベースになる人間が生き生きと暮らしていくためにどうしていったらいいのかということが実は福祉の理念なんです。その上に子供たちをどう教育していくのかという、構造でいったら、そんな形になりますが、実態はこの三角図のようになっていることをまずお伝えしたいと思います。
  元に戻っていただいて、1%しか対応できていないから、それでは子供たちの課題は1%しかないのかといったら、もう皆さん御存じのように、就学援助率、パワーポイント3ページ目を見ていただいたら、例えば、二つ目、少年事件が増えているとか居所不明の問題とかも書いていますが、お母さんの孤立であるとか不安というのが、厚生労働省の委託を受けて、1万2,000件ぐらいの調査をして、保健所の健診で九十何%の受診率の中で、誰ともしゃべらずに子育てをしているという方が3分の1いらっしゃるという実態です。これがどんどん増えてきています。このことと、就学援助が15%、大阪は30%ですから貧困は非常に課題ですが、貧困や孤立が一般の人にはなかなか見えない。だけど、児童相談所や福祉事務所が対応できる数よりはるかに超えて、かなりの人たちが孤立し、先ほど、クレームのお話もありましたが、非常に孤立して追い詰められてクレームになっているという方もたくさんいらっしゃいます。困っている人ほど、助けてという声が届いてこない、相談につながらない。相談というのは、なかなかハードルが高いですから、つながらないというところがあります。なので、学校というところに着目し、スクールソーシャルワークという、掘り起こしていくという意味で、スクールソーシャルワークを始めてきた経緯があります。
  4ページに行っていただいて、内閣府の貧困の会議で、耳塚先生がプレゼンされたデータですが、左一番端の図が、社会階層によるかたまりなんです。棒グラフが子供の勉強時間です。縦軸が学力です。内閣府の子供の貧困のホームページに張ってありますので、後ほど、御覧いただければと思いますが、要するに、社会階層の一番高いところの勉強時間0時間の子供、一番右端の棒グラフと一番左端、社会階層の一番低いグループの最も勉強している子供の棒グラフを比較したら、社会階層の高い勉強時間0時間の子供の方が学力が高いんだという結果です。貧困、そして再生産されることを何とかくい止めないと、頑張れば勉強ができるんだということではないことを表しています。地域の力を借りながら、全ての子供たちが勉強できる環境、ここを社会の問題として保障できないのかという図だったかと思います。
  今の図の右側は、学力向上に保護者の意識や読書活動、生活習慣、親子のコミュニケーション等が影響を与えていることがわかる図です。このあたりを、実は阿部彩さんも本に出されていますし、私もある校区の全戸調査をして、家に本がないという家庭が1.7%から2%ぐらいあります。子供部屋がないという家庭が20から25%ぐらいあります。なので、そういったところもどういうふうに保障するのかという、地域の力を借りていかないと、福祉の機関である、児童相談所が対応できる数、福祉事務所が対応できる数ではないということです。
  5ページですが、読み聞かせが読書とか宿題とかに関連していくという生活保護世帯の貧困世帯での調査です。御飯を一緒に食べるとか本を読み聞かせることが非常に重要だということが分かります。この棒グラフは、貧困世帯の課題が見える棒グラフなんですけれども、左側は、高校生なのに親と子供がぴったり答えが一緒になっている。これ、20項目あって、ほとんどぴったり答えが一緒になっている。例えば、学校行事に参加している、先生とどれぐらいしゃべっているというのが、高校生なのにぴったりだというのは、いいと思われる人もいるかもしれませんけど、自立して自分という世界ができていく中で、生活空間が狭かったり、親の影響を非常に受けていく環境にあることも、再生産が言われているところの見える部分でもあったかと思います。
  6ページが、貧困と虐待が関係していますよという東京都のデータと、下は、学年別不登校児童生徒数のデータです。小学校6年と中学1年で3倍になるんですね。これは教育の世界の人は、皆さん、当たり前のように、よく御存じなところなんですけど、私は福祉の人間なので、とても驚きました。3倍になるというのはどういうことなのかいろいろ調べてみたら、真ん中にありますが、私だけでなく、安倍先生という先生も出されていますが、ネグレクトの子供たちが不登校になっている。中学校で半分ぐらい、小学校では30%ぐらいが不登校になっていく。つまり、後押しができない。貧困で2か所、3か所で働いている保護者がおり、朝起きられないとか、送り出してもらえないとかという子供たちが中学校でドロップしていきやすい。小学校までは、愛着の持ちにくい愛着経験が薄い子供でも担任が1人で1対1関係だったら何とか登校できていたという子供が、中学で教科担任制になって、後押しがないとドロップしていくということも見えている図です。
  それと、もう一つは、進学より中退の方が、一般世帯と生活保護家庭や施設入所の子供たちの差が大きいのをお見せしているところです。そういった実態から、先ほど言いました、30%、15%という数字ですから、どの人がそうなのかが、なかなか見えなくて、支援するにもピックアップされていないことが大きな課題の一つです。
  二つ目が、8ページへ行っていただいて、福祉の人間から考えると、乳幼児期は保健所の健診システムから非常に丁寧にフォローされています。保健所の健診で、大体、家庭環境がしんどいかなとなると、この方は大丈夫かなという、発達だけではなくて、家庭の養育とかいろんな環境が大丈夫かなという人をキャッチしフォローされていくような仕組みになっているんです。それが、他機関と一緒に、保育園だとか幼児教室とか福祉関係とかと、この赤で囲ってあるのは、月1回とか2か月に1回、検討会などもされている自治体が結構多いんです。
  ところが、小学校に入った途端、他機関とまたがった、もちろん学校、教育部門で特別支援に関する、入学に関する場面で検討会とか、いろんな委員会をされていると思うんですけど、いろいろな機関がまたがって検討会を月1回とか2か月に1回、定例で開催するというのがなくなります。学校年齢で、他機関が全国どこでも共通してある、定例でやっておられるというのは、学警連といって、非行少年の警察少年補導員連絡会という、そういう警察管轄になっていきます。なので、学齢時になったときに、ボーダーなところの子供が福祉行政とか市長部局と学校から見えにくくなってくる。もちろん先ほどの三角の頂点の1%のところは連携されていますし一緒に動いていかれているんですけれども。そのあたりが、川崎事件のように、クラブに来なくなったとか、1月8日から1か月休んでいるとかという事例が、なかなかピックアップされにくいですよね。貧困である、母子家庭でいらっしゃるとか、いろんな要素でアウトリーチ的に拾い上げてくる仕組みが就学後はないのです。
  問題3が9ページのところです。福祉の視点ですが、原因背景を考えていく。学校では不登校、非行という現象部分への対応にすぐいきやすいんですけど、福祉というのは、なぜそうなっているのか、これは経済的課題じゃないかということを考えて手立てを打っていくのが福祉の考えです。
  10ページから、スクールソーシャルワークのことを紹介していますが、2013年度で1,008名で、その次の年が、正確にはまだ出てないですけど、千四十何名の数です。
  12ページですが、これはアメリカのイリノイ州なんですけど、子供たち全てを予防含めて支援メニューの対象にしています。児童相談所とか福祉は氷山の一角だけです。緑の、ティア1という一番緑の、全ての子供たちにいろんなプログラムが、アンガーマネジメントであるとか、SST(Social Skills Training)だとかコミュニケーション力が低下しているとかもありますので、学校の勉強以外に、そういったことが子供たちに保障される。あるいは、ここに書いています、赤ちゃんと触れ合える。この間、竹原委員のところを見に行かせていただいたんですけど、赤ちゃんと触れ合いをするようなプログラムを学校で全員の子供たちが受けていくというような、そんなことができていくことに近い。先ほども出ていましたが、コミュニティ・スクールとか学校が地域に開いているほど問題が減っていくのは、前回、浅原委員もお話しくださっていましたけど、そういったことをリンクさせながら、これは教育だけの話、氷山の一角の児童虐待の真っ赤なところは福祉なんだと切り離さず、連動していくような仕組みができないのかなと思っています。
  その次が、スクールソーシャルワーカーのプログラムを、先ほど、コーディネーターのプログラムというのも、マニュアルですね、どんなふうに動いていったらいいのかとか、どんな資質が要るのかとか御紹介がありましたけど、一定、形ができてくると、標準化するようなマニュアルみたいなものも、いずれ必要になってくるんじゃないかなと思います。スクールソーシャルワークも自治体によっても全く動き方が違う。それを今、文部科学省児童生徒課とマニュアルをどう作っていこうという話はさせていただいているんですけども、こういったことが必要になってくるのではないかと思います。
  16ページを見ていただいて、このマニュアルに基づいて動いていくことで、プリ・ポストで効果測定もしてきているんですが、ここに数字が入っているのが、虐待事例、好転しているとか、いじめ問題が好転しているとかというふうに、エビデンス・ベースト・プラクティスと言いますが、効果が実証されている動き方なんだと提示していくことも必要ではないかと思います。
  17ページ、今日の一番のポイントであります、子供の貧困の委員の立場で、「学校のプラットフォーム化」という書き方になっていますけれども、この議論と同じだと思うんですが、学校という中で、学校支援地域本部であるとか地域活動の拠点、学習支援、学校の中にいろんなメニュー、アウトリーチで家庭教育も支援していくというメニューを今、文部科学省で出してくださっていて、いろんなプログラムが始まろうとしています。今までもやってくださっているということがあります。家庭訪問までしてつないでいくという中間的な、児童相談所とか福祉機関ではなく、という準専門的な感じで、地域人材なのかというところの議論、まだまだありますけれども、そういった地域人材を中心にしながら、学校にあるメニューが見える化して共有されていくことが必要ではないかと思います。
  例えば、学習支援なんていうのは、生活困窮者支援、相談機関、今度、生活困窮者支援法でできた福祉の方の相談機関を御覧ください。貧困家庭とボーダーラインの家庭に対する学習支援プログラムなど含む相談支援が今年度から機関設置の法定化がなされて始まっていますが、そことオーバーラップしながらやっていくとか、先生方が、先ほどもお話にあったように、本当に多忙で、大阪とか堺では、夜12時に電話しても、教育委員会はまだ残っておられて対応されている状況で、そんな実態ですから、こんな支援メニューがあって、地域人材の活動があって、学校が助けられるというふうに見える化していくことが重要と思います。大阪ではコミュニティ・スクールは全然なので、地域人材が学校に対して助けになるというふうには、なかなか先生方には見えてない。見える化していくことが非常に重要ではないか。それが市長部局とどこでどうつながり、どう流れてリンクしていくのかという仕組みが作れたらなと思っています。
  19ページが、私は福祉の視点なので、全数把握という考え方をします。保健所がなぜすばらしいかといったら、全数把握で1人もこぼさずフォローしていく体制がある。学校というのも義務教育で全員が来る所なので、全数把握している学校がキャッチできて、必要な情報を見える化して助けていける。そういったSOSを出していいんだよという、先生方にも認識を持ってほしい。先生方1人で頑張っておられる方がたくさんいらっしゃるので、まず教師の認識を変えていくようなこともプログラムとしては重要じゃないかと思います。そのためには、真ん中にある法的な根拠がどうしても要るんじゃないかなと思います。共有していくためには、個人情報の問題とか、全ての事例を共有した方がいいと思っているわけではないですけど、一定共有するためのものが要るのではないかということと、その次は、コミュニティ・スクールのところでも大分議論になっていたんですけど、福祉で言ったら、まさにコミュニティ・スクールとか、皆さんの活動の御報告を聞いていて、それは本当にコミュニティワークの理論なんですね。コミュニティワークの理論で、主体性を育成しながら巻き込んでやっていくという、理論的根拠を科目として教職課程で置かれることが教師の認識を変える最も近道と思います。
  20ページを見ていただいて、ここに書いている学校というのは、課題のところだけ書いています。課題じゃないところは皆さんがおっしゃっていると思ったので、学校は発見する機能があるんだという意識の明確化。先生が全てやるという意味ではなく、地域人材が入ることで、より有効に発見できるのではないか。先ほどのお話も、違うまなざし、大人が入ることで先生が変われるとおっしゃっていました。私も、学級崩壊とか学校崩壊になっているところにスーパーバイザーとして入っていて、地域人材が入っていただくことで解決していくこと、たくさんありますので、学校に対して発見できるという役割を明確化していき、ルールをはっきりさせていく。先生方が1人で抱えないでということを思います。
  21ページ、地域人材とつながっているスクールソーシャルワーカーの例を挙げています。山口県や横浜市を見学に行かせていただき、いろいろ見せていただいたんですけれども、例えば、22ページ、三つ目の丸、連絡会みたいな、地域担当の方と、教頭先生や管理職の先生とコミュニティ・スクール運営協議会の皆さんとがつながっておられて、一人一人の担当の先生が、例えば、分掌の中で連絡会を定例化していく。学校の中で、もっともっと浸透できるような、機能していくための仕組みとして定例連絡会みたいなものができないのかなと思いました。
  そうすると、学校支援地域本部で気になっている子供、横浜の例で言ったら、コミュニティハウスで子供が見せている顔と学校で見せている顔が違うというお話も聞かせていただき、子供にとって、選択肢がたくさんあることが重要。昔と違って、先ほど、孤立の指標もお見せしましたけれども、選択肢が少ないのが現状。それをどう補完するのか。例えば、学校でいろんな部署ができ、つながり、地域の人たちとの関わりで違う顔が見せられるのは子供たちにとって選択肢が増えるし、学びや育ちが豊かになるんだろうなと思います。なので、地域とオーバーラップする部署が、コミュニティ・スクールのこの運営協議会の皆さんであり、市長部局とオーバーラップするところがスクールソーシャルワークであり、そういう人たちがチームで主体性を育成するような取組で地域を巻き込みながら学校を支援していくという、そんな図が作れないのかなと思ったのが先ほどのプラットフォームの図でした。
  形骸化するというのも課題なので、法律というか、バックアップできるような、仕組みがきちんと流れていくような形ができたらそこにエッセンスを入れながら、でも、形を作らないと、余りにもできているところとできてないところの差が激しいなと思いました。

【明石部会長】
  ありがとうございました。では、平岩委員、お願いします。

【平岩委員】
  私から、資料4で御説明をさせていただきます。私は放課後の活動をやっておりますので、割と現場寄りの話ですとか地域の巻き込み方とか、そういうコツも含めてお話をしたいと思っております。
  1枚めくってください。最初に、私どもはこんなことをしていますという紹介です。我々がやっているアフタースクールというのは、放課後、学校を使って作る仕組みになっております。
  3ページに行っていただきまして、活動のきっかけとなった事件の記事です。もう皆さん御存じのとおりかと思いますけれども、いろんな事件が放課後、小学生に起きているということで、2004年は140件以上連れ去り事件が起きた、近年では多かった年です。それで始めたということになりました。
  4ページですがこれは、千葉県警の資料ですけれども、子供の事件が何時ぐらいに起きますかという資料です。これを見ると、15時から18時に圧倒的に子供の事件は集中していて、実際にアメリカでは、放課後は非常にリスクの高い時間帯で、そのリスクにどういう対策を親として打っていますかという話が話題になるほど、放課後イコール・リスクみたいなのがアメリカはあるわけですけれども、日本も同じようなことが起きております。
  次のページに行っていただきまして、5ページです。解決すべき社会課題ということで、我々が取り組んできた中で、やはり親子、地域、全てに課題がありまして、親は「小1の壁」という言葉は、もう皆様、大体耳にしているかと思いますけれども、小学生に入ると、親御さんが仕事を諦めたり減らしたりする現象ですね。あと、「小4の壁」というのは、学童が終わった小3以降にどうしたらいいですかと、こういうことまで課題になっている。
  子供たちは、やはり体験不足や教育格差、若江委員もずっとおっしゃってこられた、放課後の三つの間がなくなってきて、子供たちの自己肯定感とか孤独感とかというところのデータを取ると、非常に厳しい数字が出ており、地域の方も、「無縁社会」なんて呼ばれますけれども、地域で子供を育てる文化がなくなってきて、公園に子供がいなくなり、公園で遊ぶと、たまに騒音だなんて訴える方が出てきてしまう。公園で遊べないというのが全ての根幹で、公園で遊べないから親が安心して働けないし、子供たちはみんなで遊べないし、地域の人たちが見守ることもなくなったということで、よく地方なんかにお話に行くと、「皆さんのエリアでは公園で子供が遊べていますか」というような質問をいたします。遊べていると言えば、「まずまず大丈夫ですね」と。逆に、我々がいる東京は、どんどん遊べなくなっていて、私の子供も、小学生が2人いるんですが、子供だけで公園に遊びに行くというのは、高学年になったらいいかなぐらいの感じで、1年生の息子はちょっとまだ、そう言われると、「危ない」なんて、つい親としても言ってしまうのが、今の親としての感覚です。
  6ページに行ってください。そんな中でやっている我々のアフタースクールは、三つ特徴が書いてありますけれども、学校で開催しまして、全員を受け入れさせていただきたいということを考えていて、そして、市民先生という、いろんな市民がとにかく放課後にやってくるというようなことになっております。この写真は料理をしているお母さんの写真が出ています。
  7ページに行っていただいて、これは活動テーマですけれども、ゲームと塾が今の放課後の中心であるなんていうことを言われますが、ゲームも塾も面白いし、悪いものではないと思っていますが、この強力なライバルに負けないようにと思って、日々活動しています。実際、この前、「アフタースクールに行き始めたら、幼稚園のときにゲームが欲しい、ゲームが欲しいと言っていた子が、ついに言わなくなって、アフタースクールが楽しくてしようがないみたいです」と言われて、そんなものを目指しています。
  8ページには市民先生の写真が幾つか出ています。子供たちが家を建てたいと言えば、大工の棟りょうですね。左の上にいる大工の棟りょうは、80代ぐらいの大工の棟りょうで、引退しているかいないかの半々ぐらいの、後進の指導をしているような方に来ていただいたり、編み物のできるおばあちゃんがいたり、お茶を教えてくれたり、日本語のことを教えてくれるおじいさんは、この人は特に何にも専門性はなかったんですけど、「僕はどうしても日本語のことを子供たちに教えたいんだ」と言って、僕らと一緒に活動を考えて実現しました。料理を教えてくれるお母さん、外国人がいると外国のこと、お医者さんからは命の大事さを伝えるみたいなこともします。
  9ページに行っていただいて、我々、企業や地域全体もということで、企業であったり、あるいは親子で大学生になって大学に行ってみましょうとか、商店街で何かやってみましょうとか、児童館と一緒にやりましょう、地元のお店でパンを教えてもらいましょうとか、音楽ホールがあれば音楽のこととか、何しろ地域にあるもの全てが資源に見えていまして、子供たちの世界に届けている、そんなことをしております。
  10ページに行っていただきまして、ふだん、どのように心掛けて放課後を作っているかというところですが、三つのキーワードが書いてありますけれども、子供たちがなるべく主役でやってもらうということを心掛けているつもりです。この前も、段ボールで巨大な迷路を作りたいなんていう子供たちの声がありまして、あっ、いいね、やろうねとなったんですが、では、その段ボールをどうやって調達するかというところが実は一番の学びだったのではないかと思いました。いろいろ工夫した結果、ある子は、「引っ越し屋さんに行けばいいんじゃない」という秀逸なアイデアを出しまして、引っ越し屋さんが段ボールをくれて見事に実現いたしました。プログラムの中で、当日はそうですが、やはり前後にも非常に学びがあるなと思いました。
  それから、なるべく本物に近いことということで、お店作りをすればお店ですし、弁護士さんがいて裁判のことをやってみようとなると模擬裁判をするというようなことをしています。それから、継続をして、最後に発表の場を作ることをいつも意識しています。例えば、料理をするのであれば、最後の日に、子供だけでレストランを1日開いてみないかみたいなゴールを作ってやるということになっております。11ページが活動の効果ということで、アンケートを採ってみますと、子供にとって、学校が楽しみになった、放課後が楽しいことによって学校全体が楽しくなったと言ってくれます。というのは、多分、この丸2の要因なんですけれども、とにかく放課後、学校で過ごせる場がないと、友達と遊ぶのが難しい世の中なんですね。昔は、「学童の子って、学童だけだと学童の子としか遊べないからかわいそうだ」みたいに言われていたんですが、最近、「学童の子はいいよね」と言われていて、それでも数十人いる子供で過ごせると。そうではない専業主婦の家庭は、真っすぐ家に帰って、そこから一人で習い事に行くか、一人で家にいるみたいなことが主流になっていますので、友達と遊べるということが、学校が楽しみになる要因かなと思います。
  右下ですが、共働きの方にとっては、心から安心して仕事ができると。学童は、場所によっては、親が「ごめんね」なんて言いながら行かせている場合もありまして、子供たちがとにかく、「アフタースクール、放課後は楽しい。お母さん、思う存分働いてきて」みたいに言われるのが本当の安心になっていると。あと、仕事を始めたとか、学校への理解が深まったという声もありました。地域の方からは、やはり子供から元気をもらったという声ですね。
  あと、先ほど山野委員の発表の中でありました発見機能なんですけど、放課後にも発見機能はありまして、子供たちがリラックスした中で、今、おうちでこんなことが起きているという話がよく出てくると言われています。我々も幾つかキャッチしたことがありますし、やっぱり子供が荒れ出すと、大体、背景には家庭に何かあるので、何かあったときには、必ずその子にヒアリングをしていますので、発見機能もあるかなと思います。
  12ページに行っていただきます。ここまでは割と紹介だったんですが、今回のテーマで頂いた点、3ポイント頂きましたので、私が考えてきた点を、この後、御説明したいと思います。
  13ページですが、6月に「学校と地域が連携した放課後の取組を進める上での課題」というタイトルでセミナーを行いました。本日のメンバーでいうと鍋島室長にも来ていただいたり、文部科学省の皆様にも何人かお越しいただいて、自治体と民間企業等と合わせて50人ぐらいが来てくれました。当日は、「子供たちのための放課後を実現する上でどんな課題がありますか」というテーマで、たくさん意見を出してもらったんですが、最終的に整理すると、やはり人、場所、金というところに集約されるという話になりました。資料の中で、上が行政側の意見で下が民間側の意見です。
  一番左の「人」を見ますと、放課後を担う人材がいないんですと。特に、1回だけならいるかもしれないけど、継続してずっとやってくれる人がなかなかいないとか、地域の理解が得られないとか、魅力的な人材が発掘できない、そのようなことを行政の担当者の方は言ってらっしゃいました。
  一方、民間の方は逆に、学校から声が掛からないんだよねと言っていたり、保護者がちょっとうるさいから参加できないかなとか、調整してくれる人がいないんだよねみたいなことを言っておりました。
  真ん中の「場所」にいきますと、これは割と両者とも同じような意見なんですが、やはり学校がなかなか使えないと。主に校長先生が反対される。体育館や図書館も使えない。あるいは、支援級の子の場所がなかなか得られないという意見もありました。
  民間の方も、やはり広い場所が欲しいんだけど、学校が拒否感のようなものを感じるというような意見があって、なかなか得られない。ここは両者ともほぼ同じような意見でした。
  「金」のところも、ほぼ一緒で、予算の確保が難しく、行政内でもなかなかこの放課後の取組は優先度が低いんですみたいな話がありました。
  この中で、私が特に注目したのは「人」でして、「場所」や「金」の問題ももちろんありますが、「人」についてはミスマッチが発生しているんです。行政側は、足りない、足りない、いない、いないと言っていて、民間側は、声が掛からないと言っている。やはりこれは調整役が不足していてミスマッチが発生しているんです。ずっと話題になっているコーディネーターの必要性が、その日も明らかになりました。
  14ページに行っていただきまして、コーディネーターには一体どのような人材が適しているのかという話ですけれども、よく社会で子供を育てるとか、地域で子供を育てるといったことを私たちもテーマに掲げるところですが、これはよく民間の学童保育の会社がPRに使っている数字なんですけど、小学校の低学年では授業が1,200時間で、放課後や夏休みを全部合わせると1,600時間になるんです。ですので、やはり放課後や夏休みの重要性とか社会が教育に関わる重要性は、この数字を見ても明らかですが、一方、私どもの活動してきた中で、この逆で、子供が社会を育てていくというのはすごくよく感じます。
  というのは、私どものNPOには、最近、デベロッパーからよく声を掛けていただきます。デベロッパーがタワーマンションを造りました、新しいまちを作りました。ついては、「コミュニティを作りたいが何をやったらいいか分からないけれども、どうも地域で子供を育てることはコミュニティ作りにいいらしいと聞いています」ということで依頼があります。ですので、みんなで子供を育てましょうという旗印は地域を作るという点で非常によいので、子供自身が社会を作っていく、社会をつなげていくというようなことは確かに効果としてあるんだと考えています。
  15ページに行っていただきまして、コーディネーターに求める役割と人材ですが、F、B、I、フットワーク、バランス、そして、ある程度のITスキルが必要だと。それに、根本的なコミュニケーション能力。これが我々なりによいコーディネーターだと考えていて、今回はあえて言い切ってみたんですが、最有力の候補は、やはり家庭にいる優秀な女性だと思っております。家庭にいるというのは、主婦という意味だけではないんですけれども、ある程度お子様が大きくなった方とか、現役の子育てママでもいいんですけれども、あるいは、お子さんがいない奥様でも構わないんですが、やはりいろいろ見てきた結果、年代的には40代、50代ぐらいの、もちろん30代でも構わないんですけど、シニアの方のバランスも取れるし、若い方の意見も分かる。そして、女性ならではのコミュニケーション能力、これが最有力で、かつ、今、眠っていて、いい資源かなと思って見ています。
  少し余談になりますが、最近、労働市場でのワーキングマザーの活用みたいな話をされていて、我々NPOの業界も、最近、すごくこのワーキングマザーの活用というのは語られます。というのは、そういう方々の悩みは、とにかく時間の融通を利かせてほしいというのが一番の願いです。例えば、ある日は15時半に帰りたい、ある日は16時半に帰りたい、あるいは、子供が病気になったから、今日は家で作業したい、このようなことは大体の会社は、駄目なんですよね。ところが、我々の業界では、そこら辺の柔軟性がありますので、そうすると、今まで絶対採れなかったようなレベルの女性が採用できると言われています。ですから、圧倒的に柔軟にして、圧倒的に働く女性の資源を生かそうみたいなことをNPO業界では言っています。このコーディネーターの世界でも全く同じことがあるかな、そんなふうに思いながら、これを書きました。
  16ページに行っていただきまして、では、チームを巻き込むためには一体どうしたらいいですかという声を聞きます。そのときに、私なりに一つの答えとして、子供たちの声をかなえる活動を行いましょうと言います。つまり、大人があれをしましょう、これをしましょうと言うのではなくて、我々のアフタースクールにリクエストボックスというのを置くんですけれども、子供たちが、あんなことをやりたい、こんなことをやりたいというリクエストを入れてくるんですけど、例えば、2年生の女の子が、「お母さんになりたい」というリクエストを書いてくれました。そうすると、隣の保育園に行って、「ちょっと、1日だけ、この子を」と言うと、大概、「大丈夫ですよ」なんて言ってくれて、女の子は本当に大満足で帰ってきます。ほくほくして帰ってきて、その後、「おうちでも機嫌がいいんですけど、今日は何かあったんですか」みたいな電話をお母さんから頂いたりするんですけど、そんなことがあったり、あるいは、宝探しがしたい、お化け屋敷が作りたい、お店を出したいなどなど、いろいろリクエストが送られてきます。
  17ページに行っていただきまして、何でこれがいいのかという点なんですけれども、子供たちが前向きに取り組みます。それから、計画から実行まで話し合うところに学びがあります。先ほどの例のように、どうやったら段ボールがゲットできるかみたいなところに学びがあります。あと、リクエストを採用された子が本当にうれしそうですね。私のリクエストで、みんながこんな喜んでと。そして、この4点目がポイントなんですけれども、大人が巻き込みやすくなる。つまり、「子供がやりたいと言っているので何とかお願いします」と言うと、「あっ、じゃあ」と言って、やってくれるわけです。ですから、子供にとっても大人にとってもよくて、地域を作る上で、何をしたら一番いいのか迷ったら、うちの子たちがこんなことをやりたいと言っていますというのを、地域の人と一緒にかなえていくということがあるとよいと思います。
  米印で書いてありますが、子供の声をまとめた記事が、来週の月曜日に日経新聞の教育欄に出していただけることになったので、是非皆様、見ていただきたいと思います。
  最後に18ページ。「これからの学校支援地域本部に求められること」ということで、放課後からの視点になるんですが、放課後子供教室の課題は、この三つかなと思います。一つが、活動がマンネリ化しています、あるいはメンバーがマンネリ化していますという場合です。あるいは、校庭開放ぐらいにとどまってしまっていますという話もよく聞きます。
  二つ目が、卒業問題と呼んでいるんですけれども、熱心に働いていたキーパーソンが子供とともに、もうその活動をやめてしまったり、あるいは、その方が何かしらの事情で地域からいなくなってしまい、団体自体にノウハウが残ってなく、活動が縮小していくという課題。
  三つ目が、ミスマッチですけれども、せっかく地域はやる気満々な人がいっぱいいるのに、巻き込み切れてない状態もあります。
  文京区の事例で、私どもがやっている放課後子供教室ですけれども、ここの悩みはPTAの皆さんが、放課後やりたいけれど、ノウハウがありませんと、あるいは毎日動くこともできませんということで、我々と一緒に運営委員会というのを作りまして、そこが管轄をして地元住民の方を中心に活動をすることになりました。我々は、そこをずっとやってきた専門家ですので、ノウハウがありますし、人を集めてきて、育てて、毎日の運営を軌道に乗せていくということをお手伝いできる団体ですので、このモデルが一つうまくいきそうだと思いながら、現在、活動しております。ここの学校は一緒にやっているのはPTAなんです。ところが、これが多分、学校支援地域本部でいいのではないかと思いました。ですので、学校支援地域本部が放課後のことをやるのは大変ですので、そういう団体をうまく組んで、一緒になって運営委員会を作って監視をしながら、そして実際の運営は運営委員会のスタッフにお願いをしてやってもらう、あるいは我々のようなNPOが直接やるでも構わないですけど、この形がよいかなと思いました。
  この小学校で、この形で動いてみたら、次々と学校から各種支援依頼が発生していまして、例えば地域の人材を紹介してくれませんかとか、この間は、移動教室に行くので宿泊スタッフが足りないので誰かいませんかとか。何が言いたいかというと、動き出すと形が見えてきて、先生がお願いしやすくなるんです。それで様々な依頼が増えましたので、学校支援地域本部で作って会議だけをしているというよりは、いろいろ動き出すといい連携が生まれてくるのかなということで、学校支援地域本部というのは、ある意味、学校と地域をまとめるプロデューサーのような存在で、そのプロデューサーの傘下に放課後部隊がいたり、授業を支援する部隊がいたり、行事を支援する部隊がいたりと。その部隊の中には、放課後には例えば我々のような部隊が入り、学校の授業の支援にはキャリア教育の専門家の方が入りと、そのような形の総合プロデューサー的な役割が、この学校支援地域本部なのかなというふうに思いました。
  お話をお聞きして、PTAの皆様とはどういう関係性なのかとか、コミュニティ・スクールの皆様とはどういう関係性なのかとか、そのあたりはまだ分かっておりません。この間、三鷹市の職員といろいろ話をしてきたら、コミュニティ・スクールの部隊と放課後の部隊に同じメンバーがいるにも関わらず別組織になっているがゆえに話がどうもかみ合っていないことがあり、二つの組織ができてしまい、どうしようかと思っているんですよみたいなことを市の方がおっしゃっていて、そのあたりも一つにした方がいいんじゃないかという議論もあるでしょうし、いやいやという議論もあるでしょうし、そのあたりは、もう少し自分なりにお話を聞いて考えをまとめていきたいなと思いました。
  最後に、「地域で子どもを育てる」と書きましたけど、繰り返しになりますが、子供たちが幸せになります、子供たちの笑顔が見たいですというのは、間違いなくみんなの共通する願いですので、これを旗印に地域がつながっていき、みんなで力を合わせてということをやっていきたいというふうに思っております。

【明石部会長】
  ありがとうございました。非常に簡潔にまとめていただきました。以上、3名の委員の方々に貴重な提案を頂きました。時間がありませんもので、私の方から。井出委員、この資料の7ページにあるんですけれども、個人的には大事かなと。大事というのは、この部会を見据えたときに、どういう形で答申といいましょうか、意見をまとめるかという、四つのステップを出していただきました。そうすると、最後は生涯学習にいくんですけども、井出委員の頭の中には、ここまでいくのに何年間かかるんだろうと。10年かかるのか、それとも東京オリンピック・パラリンピックの5年後までに持っていくのか。井出委員の場合、15年ぐらいだと思うんですけども、1番目は、学校支援というのは杉並区はもうやっているなと。2番目も、そろそろ井出委員が手を入れているかなと。3番は、かなり難しいかなと。新たな発想でやらなきゃいけないかなと。4番目が、ある意味ではトータル的な水準だと思うんです。大ざっぱでよろしいですけど、大体時間スケジュールというのはどのくらい考えていらっしゃるのでしょうか。

【井出委員】
  3年、3年でローリングをしていくということで10年計画、2012年から10年間の計画ですので、2022年を最終ゴールにはしているんですけれども、今のスピードですと、学校支援本部についてはもう全部できていますので、足腰の弱いところ、強いところ、差はあるんですが、私は実は学校支援本部の濃淡というか、強弱というのは余り気にはしていないんです。つまり、勝手にやってくれればいいと思っています。むしろコミュニティ・スクールに移行していくプログラムを無理やり作っていくよりは、学校支援本部が成熟していくということが、結局、生涯学習のフレームが広がって、バックヤードが充実してくるだろうと踏んでいます。時間的に言えば、10年後までに完成させたいとは思っていますが、どういうふうにしていくかはいろいろ考えなければいけないんですが、今言えることは、学校支援は具体的に動いています。協働推進についても、区と民間との協働推進のフレームはできていますので、ここに学校支援本部を入れていけばいいので、例えば今年から放課後子供教室を進めており、放課後、子供の居場所を学校支援本部に委託をし、4校で試行を始めました。ですから、具体的な区の行政施策とタイアップしてやっていくという動きが既に出てきています。
  それから、新しい学校づくりというのは、実は、例の内閣府が発表した新しい公共の中のフレームがここに関わってきているんですが、実はもう少し私たちはかみ砕いて、学校づくりやまちづくりという、ここのところにどう関わっていくかということなんですね。この間、学校の統廃合を進めてくる中で一番ネックになったのは、学校がなくなると地域の核になるコミュニティが壊れるという強い主張があって、それは間違ってはいないんですが、例えば山奥県田舎市の何とか小学校1校しかないところがなくなったら地域は崩壊してしまいますけど、杉並区は歩いて5分のところにもう1校ありますから、地域が崩壊するということはないんですよ。だけども、目に見えない人間の関係やコミュニティがなくなっていくということもないわけではない。そうしたら学校統廃合を進めるという考え方を、新しい学校をつくる、そして新しい学校をつくるということは新しいコミュニティを作っていこうという、こういう発想で進めてきていますので、新しい学校づくりを具体的に展開していくときに、どれだけ成熟したものができるかということも問われてくると思います。
  この間、例えば最初にやったのが、荻窪の北側にある小学校を二つくっつけて一つの学校にし、それから杉並の南部の方にある学校を一つにし、つい最近、4月に小学校2校、中学校1校をまとめて校舎一体型の小中一貫教育校を作って、次の予定としては、高円寺地区と杉並の南西部に3年計画ぐらいで予定をしているんですが、そこの学校を作る話合いには必ず地域コミュニティの代表にたくさん入ってもらって、学校づくりを話し合うと同時に、コミュニティづくりについても検討してもらうという流れでやっていますので、2022年までにどんな姿になるかは何とも言えませんけど、胸算用としてはそんなことを考えています。

【明石部会長】
  ありがとうございました。ほかに何かございますか。竹原委員。

【竹原委員】
  私が今関心を持っていますのは、学校支援地域本部といっていますが、実は学校を支援するだけではなく、今日の部会も協働部会ということで、共に作るという視点に今移行している。約10年、私たちは全国で学校支援地域本部をやってきましたけれども、支援から協働に、子供と町のために私たちは協働するんだということがはっきりしてきたと思います。そのときに、各地方で学校ニーズや地域ニーズ、課題はいろいろですが、共通の社会課題として貧困のことなど山野委員のお話もありました。更にまちづくり、地域創生ということだと思います。学校支援をしているうちに気付いたことは子供たちが幼稚園からだんだん大きくなって、中学生が大学生になっています。先ほど山野委員がおっしゃった、1%の子供だけでなく、地域の子供たちの課題を長い時間で学校支援地域本部の人たちはキャッチしています。それを法的根拠とおっしゃいましたけれども、どう仕組みにできるかということが学校支援地域本部で大事なことではないかと思っています。
  そこでお尋ねしたいのですが、日常的に関わるコーディネーターたち、それから地域の人たちがどのようにパートナーになっていけるだろうか、どういう案があるだろうか、いかにしたら仕組みにできるかということを教えていただきたいと思います。

【明石部会長】
  では、まず平岩委員からお願いします。

【平岩委員】
  法的根拠のところまでは、まだなのですが、昨日放課後子供教室で子供がけがをしてしまいまして、学校の先生と、そこは学童は区がやっていますのが、大変有り難かったのは、すぐ三者が協力をしてくれました。なぜそういうのが起きているかというと、その学校は日頃からよく話し合っているんです。定期的に三者が集まるのは月1回ぐらいなんですけど、例えば学童の人たちと私たちは一緒に研修をしてスキルアップを一緒にやりましょうとか、あともう少し細かいところだと、学童の人たちが誕生会をやるときは、僕らはそこにみんなが優先的に行けるようにしましょうねとか、お知らせはもったいないから1個にしちゃいましょうとか、そういうことを日頃から話し合っていて、そういうことが三者の連携としてぱっと生まれたのかなと見受けました。今日も三者で、そういうことが二度と起きないように研修をやっています。ですので、仕組み化というのは、枠組みや法律を整えるというところもある一方で、日頃からみんなで一緒に、子供たちのことだからということでつながり合って、日頃の小さな取組を一緒にやっているというのが、重要だなと思っています。

【明石部会長】 山野委員、あと井出委員。

【山野委員】
  私は、法というか、要綱とか、何か必要なのではないかと思ったのは、例えば今のお話も、先生が変われば、またそうなるとは限らない。たくさんそんな例があって、それが一定基準、例えば先ほどの生活困窮者支援法ができて、自立支援相談機関というのは必須事業になって、必ず置かなければいけないというふうになったんですね。例えばそれを運用するとしたら、学校の中で必ず運営委員会と連絡協議会みたいな、先生も入ったメンバーで定例的に、月1回とするのか2か月に1回にするのか、そこの自由度はあったとしても、定例的に情報交換したり、顔の見える場を無理やり作っておかないと、この校長のときはできたけど、違う校長になったらできませんみたいになることが多いのではないか。
  先ほどクレームのお話も出たように、学校によっては地域とつながりたくないと言ったら言葉は悪いですけど、しんどい仕事が増えると思っておられる学校もあるようですから、何かそれをバックアップする、やりやすいような土俵を作っておかないと、ずっと差ができるままなのではないかと思いました。それが一つ、先ほどの連絡会みたいなことを書かせてもらったのは、ルール化する、要綱にする、それをもっと大きく言えば法的な根拠を作っていくみたいな、御質問いただいたように、それがパートナーに、メンバーにしていくというのが。もう一つ、大阪でスクールソーシャルワーカーが、教育委員会との協働ということで、ルール化しているんですね。教育委員会とスクールソーシャルワーカーと必ず作戦会議を練るみたいな。他府県と比べて、学校だけでスクールソーシャルワーカーを動かしているところもたくさんあるんですけど、必ず教育委員会が入って協働の提案書を書く、府に対してそれを一緒に協働で作って出すみたいなルールにしていると。大阪は2005年から始めたので、教育委員会がどんどん独自予算化されています。国からの補助金をとらずに市独自で全校配置している市町村がどんどんできていっているんです。39市町村のうち、30市町村が独自採用している。そのポイントは、定例連絡会とか、共通の場を無理やり作るということでした。初めはよく分からないなということだったんですけど、だんだんお互いに理解していけるようになったという経緯がありました。

【井出委員】
  先ほどの平岩委員から、資料13ページで、「人」「場所」「金」に関する課題について御指摘があったんですけど、「場所」の問題で、校長が反対とか、学校が使えないとかという問題を考えていく上でどうしても避けて通れないものは、学校教育法の改正と自治体の管理規則の改正なんです。つまり学校教育法で誰が学校を管理しているかというと、校長が管理するということになっていて、そこには時間が入ってないんです。つまり24時間、365日、校長の管理下と校長の責任において管理することになっていますから、そこに時間を入れる必要がある。つまり、校長が学校の施設・設備を管理する時間は何時から何時までで、そこから先は校長の管理下にはないということを法律的に明文化してやらないと、幾ら努力しても、校長の善意と努力と熱意だけではもう無理です。校長に熱意と善意と努力がない人は全部副校長にそれをやらせますから、副校長はセブンイレブンになって、みんなくたばっちゃうんです。だから、まずは学校教育法を改正すること、次は、我々自治体は管理規則を改正すること、そして、この時間帯の施設・設備は誰が管理するのかということを明らかにすることが一つ。それから、教育課程の管理も時間が入っていないんです。つまり、学習指導要領で授業時数等は全部事細かに入っていますが、教育課程を管理するということは、内容を管理することだけではなくて、教育課程を実施する上でどういうことが起きているのかという時間が切れてないんです。例えば夏休みは何日からとか決めてあるけど、1日の始まりはいつで、1日の終わりはいつかということが決まってないから、24時間の授業をやっているみたいな形でしょう。そうすると、学校は開いていませんということになるんです。思い付きで、5時から体育で教員が集まってバレーボールでもやりましょうかといったら、今学校が使っていますからということになっちゃうんですね。ですから、施設の管理をきちっと法体系を明らかにすることと、教育課程を管理するということはどういうことで、そこには時間の概念がない、つまり授業時数の概念ではなくて管理という経営的な側面から、どこからどこまでが教育課程の管理の対象になるのかということとか、こういうことも学校教育法とか管理規則の中で整理をしていかないと、やろうとしていることのほとんどができなくなる。やるためには、それをやるしかないと私は思っていますけど、もし学校教育法が変わらないんだったら、管理規則を変えて自治体で独自にやるという方法もないわけではない。
  実は、今後、杉並区では、放課後の子供の居場所を進めていく上で、学校にその場所を求めて、そしてその運営主体を学校支援本部に求めていくことにしていますので、そのときの学校施設の管理を誰がするのかという管理規則についても、当然、今年の間に触れなければならないというふうに思っているところです。

【明石部会長】
  非常に大事な御指摘ありがとうございました。
  では、質問はこのぐらいで、あともう一つ、松田副部会長から資料に基づいた御紹介がございます。お願いします。

【松田副部会長】
  私の方からは、発表ではなくて資料の御紹介です。私が所属しております大学を含めた全国の四つの教員養成大学が教員養成の指導書ということを取組として行っておりまして、その過程で、現在御審議いただいていたような学校のネットワーク化といいますか、チームアプローチ化といいますか、そういうときに一方で教員の方がそういう力を持たねばならないということと、もう一つは、今日のソーシャルワーカーもそうだと思うんですけれども、専門的教育支援者の育成ということをどう考えるのかというあたりをテーマにしたプロジェクトがございまして、そちらの方で基礎的な調査を行った資料の御紹介です。
  資料5という1枚ものの紙を御覧いただきながら、ページをさらさらとめくる形で、簡単に特徴的な数字を拾うということで御紹介させていただきたいと思います。
  うぐいす色の「教育支援人材に関する実態調査」の4ページをお開きください。全国の自治体しっ皆調査を行いました。半数以上の自治体が答えてくださったというような調査です。基本的に教育支援員と学校支援ボランティアという、今回そういう区分を使っていますけれども、これは雇用関係があるかないかという区別になっています。これ以外に専門的支援職というものと学校教員という三つのメンバーを考えた上での調査となっております。配置割合というのは、図にあるような状態なんですけれども、5ページの方で、それを人口規模との比較を行ったものがございまして、基本的に人口規模の大きな都市はボランティアの割合が多くて、人口規模が小さくなるにつれ、いわゆる雇用関係のある教育支援員の方が割合が高いというような結果が出ております。
  次、15ページを御覧ください。募集と採用の在り方についてということで、募集媒体について聞いているんですけれども、雇用関係を前提とする教育支援員に比べまして学校支援ボランティアの募集というのは、広告媒体もそれほど利用されているということはなく、独自に学校単位に交付するというようなところが多くなっているということです。
  17ページを御覧ください。こういう学校支援ボランティアの選考方法なんですけれども、35%程度は何ら専攻というようなことはないという。これは当たり前といえば当たり前なんですけれども、このあたり、人材ということの動きを考えるときに、考えさせられる数字かなと思っております。
  続きまして、25ページの方で、まず教育支援員というような雇用関係にある方々の平均的な報酬というのが月額で16万円程度、時給で、これは定められているということもあるんですけれども、1,100円程度ということになってまして、次に26ページの方では、学校ボランティアですけれども、交通費等の一切支給がないという形のボランティアが70%程度になっているというところです。
  30ページを御覧ください。次は、今回は教育委員会からの調査になっていますので、教育支援人材というような言い方をしてますけれども、こういう人員の配置につきましての方針や計画を策定している行政体というのは、全体の30%程度しかないというところです。このあたりは考えなければいけないところなのかと思うところです。
  同じページの下、先ほどから議論に出ていますコーディネーターの内容ですけれども、約3割がボランティア、2割弱が社会教育関係者、そしてあとは学校教員ということになっています。
  31ページには、コーディネーターの必要性ですけれども、40%程度は必要がないという答えが出ています。これをどう考えるかというところです。
  最後に、55ページを御覧ください。これまでのところは、いわゆる粗集計なんですけれども、幾つか統計的な処理をしてみたときに何か傾向が出るかということでまとめたものですが、真ん中あたりに、教育支援員や学校ボランティアの数に対しましては、例えば小学校では図書室の指導や業務、あるいは方針を策定しているか否か、さらには教科授業で指導場面があるかというような、指導内容や教育委員会の体制に応じて支援員の数は増減している、そういうような要因というものが幾つかここに書いてありますような形で、はっきりと見えてきているかなというところです。
  併せまして、もう1冊の方の、ちょっと分厚い方ですね、「小学校における社会科・理科・体育科の学習指導に関する調査研究報告書」という方を御覧ください。
  こちらは、逆に学校教員の方に、それも全国4地区で20名程度にかなりインテンシブな、ディープな聞き取り調査を行いまして、実態として外部と関わるということを学校の教員はどういうふうに捉えているのかということを分析したものです。
  時間がありませんので1ページだけ、86ページを御覧ください。86ページに、小学校教員から見た連携・協力の相手というのがあります。これは、ここまでのインタビュー調査を図示したものです。これは軸の真ん中、原点のところに小学校の先生がいらっしゃると仮定してください。そして、その方向性と距離が、現状で教員の方が連携、あるいは協力の相手とみなされていたり、あるいは経験が実際にあるという方です。途中の円の部分が学校内スタッフということになっているところですが、山野委員から御紹介いただいたスクールソーシャルワーカーなどは、教員から見ますと非常に遠い存在になっている。また、幾つかここに書いてございますような、ある種のヒエラルキーのようなものが実際には教員の意識としては存在しているというところです。
  最後に、87ページに、こういう教員がチームアプローチをとっていくためには、他者につながる力と他者をつなげる力というのを養成課程でも育てていかないといけないのではないか、あるいは免許更新講習等の科目として設定していかないといけないのではないかということで、27年度からカリキュラム改定も大学では行っているというところです。

【明石部会長】
  先ほど小学校の教員の視点が縦と横しかないというのは、正直で非常によく出ているなと。こういうエビデンスを踏まえて、今回は議論していきたいと思います。では、牧野委員、お願いします。

【牧野委員】
  今日の御発表、とても興味深くて大変勉強になりました。私は生涯学習、社会教育を専門にしておりますけれども、例えば平岩委員のコーディネーターには子育て経験のある女性がいいというお話、私たちは、実践の現場で、こういう方々を百戦錬磨のおばさんと呼んでいるのですが、皆さん、とても活躍してくださっていて、よくわかる話ですし、山野委員のスクールソーシャルワーク、福祉を教育の中にという議論も、今、社会教育でも社会教育福祉という表現を用いて、福祉を取り入れようという動きが出てきています。井出委員のおっしゃる学校をハイブリッド化していくという議論も、とてもよく分かります。それから、松田副部会長の、学校の先生方の意識という議論もとてもよく分かる感じがします。その上で、お話を伺っていまして、少し抽象的な議論になるかもしれませんけれども、教育政策や行政において、子供観とか人間観みたいなものを切り替えるべき時代に入ってきたのかなという感じがしています。
  例えば従来ですと、日本の近代化過程において、人々が農村的な結合から切れて都市に出てくる、又は産業社会に人々を分配していく仕組みとして学校が出来上がってきて、そして人間を個体主義的にとらえて、人間は皆、均質だとみなしておきながら、個人を基本として一斉授業を行い、個人間の出世競争を組織しながら、我々「国民」という意識をも植え付けていく、この意味では、我々の中の私というものを作り上げる仕組みとして学校がありました。しかし、今や、新しい社会に入る過程で、我々が壊れてきてしまっていて、私だけが屹立(きつりつ)するといいますか、孤立するような時代に入ってしまっている。このことは、人間に対する見方を、個体主義的な見方から、もうちょっと関係論的なといいますか、そうしたものに組み換えていくことが必要になってきたのではないかと思うのです。このとき、自分一人だけがよければいい、自分一人が競争に勝てばよい、個人が競争し合うことで社会が発展するという議論ではなくて、例えば学習といったことを媒介にしながら、むしろ自分が、みんなとの関係の中でこそ、新しい自分になり続けていくのだというような感じの、私つまり個人を作り上げていくような在り方といいますか、そうしたものが問われてくるのではないかとも思うのです。
  その意味で、学校という施設が既に日本中にこれだけあって、ある種、教育のプラットフォームになっているわけですから、学校を地域のプラットフォームにしていきながら、地域の人々も含めて私たち自身が個人としてありながら、実は関係的な存在としてもあるのだというような存在の作り方、つまり地域社会を担う住民の在り方というものはないだろうかと、ずっと考えています。一面では、私個人の幸福を追求していくのだけれども、私の幸福を追求することが実は地域社会の人々の幸福を追求することにもなっていくのだというような存在の在り方といいますか、そうした個人を関係論的な存在としてとらえる見方をどう作っていくのか、こういうことが問われる必要があるように思えます。うまく言えませんけれども、今のところ。これを、私たちの言葉で言い換えますと、地域社会の学習化ということであったりですとか、さらには、教育行政も一般行政も含めて、行政そのものが学習化していく、こういうことだろうと思います。こういう社会や行政の学習化の中で、今までのような対症療法的な行政的な対応の仕方ではなくて、どちらかというと人々が主体的に社会を作り上げて、経営していくという形での対応の仕方に切り替えていくことが、今後必要になってくるのではないかと思うのです。その意味では、人間観を個体主義から関係論へと切り替える、そしてそれをまずは制度化することを視野に入れた地域社会の在り方が考えられていいのではないかと思うのです。漠然としていて申し訳ないのですが、こうしたある種の社会的な構造とそれを支える子供観や人間観の組替えを視野に入れながら学校の在り方、また、学校と地域社会の在り方というものを考えられないかと思います。いかがなものでしょうか。

【松田副部会長】
  私も牧野委員の御意見に非常に共感するところがございまして、そういう意味では、例えば学校支援地域本部というのは、基本的には生涯学習を活用する場という形での方向付けが割となされてきたように思うんです。もちろん、そうではないんですけれども。そういう意味で、貢献型のモデルで活用を考えるというよりは、むしろ学ぶということがそういう集いをもたらして、その結果のエネルギーが町や学校を変えていくというような、そういう意味でいいますと、井出委員の7枚目の、先ほど明石部会長も取り上げられた、一つのステップといいますか、地域というのは、生涯学習というのが実は真ん中にあって、学校支援と協働推進と新しい学校づくりというのが周りに円を描いて、そういう意味でリニアからスパイラルへというような、そういうようなイメージも今のお話を伺って持ち得るのかなと思いました。

【井出委員】
  発想は全く同じで、実はこの教育ビジョンを作るときに、先ほど少し触れました指針、方向性、基盤づくりから質の向上へという発想を持ったんですね。教育行政のやることは教育基盤を作るということなんですが、一通りのことは終わったと、そこに今度はどういうふうに関わって質を向上させていくかというときに三つ挙げたんです。一つは、学びの循環を重視しようと。これは教育の成果や学びの成果を私物化しない地域を作りたい、社会を作りたい。格好(かっこ)いいことを言えば、地域貢献とか、社会貢献とか、社会に役に立つということになるんだけども、そこまで断定的に言わなくても、少なくとも社会の中で育てられ社会で学んだとしたら、当然その学習なり教育の成果は社会に還元していく、そういう合意を形成していく必要がある。ただ、そうは言っても、受皿を作らなかったら、なかなかそれが可能にならない。だから、その三つ目の関わりとつながりを重視することによって、常に学んだことを、その成果を、成長した自分を地域に戻していく、そういう主体側の条件整備と主体を受け止める客体側の環境整備を並行し、ちょっとタイムラグはありますけども、それをやっていきたいということで、三つの方向性を決めたんです。
学びの循環といっても、個の中での循環もありますし、社会的に関わっていくという社会的な循環もあるわけなので、具体的に何を言うかというと、そんなに簡単にできることではなくて、例えば学習の場面でいえば、地域の行事に参加して何を考えるかとか、あるいは地域清掃活動に参加するとか、お祭りとか、目の前で事業を組み立てやすいものに関わっていくことによって、社会の当事者としての意識を育てていく。ですから、小さい子供は当事者なんていう言葉は分かりませんから、一緒にやってみようとかという、発達段階に応じて意識形成を図っていくというのが、今、杉並区ではかなり力を入れてやっていることです。だから、その地域に関わって学ぶということの媒体として、地域の人たちが学校に入ってきてもらう、あるいは学校から地域に出掛けていって学ぶという、そういう機会を多くしていかないと地域で学ぶことも不可能ですから、それを通して地域の当事者、社会の当事者として学んだことを地域に戻していく、そういう仕組みを成熟させていきたい、そういう合意を杉並区全体といいますか、地域全体、社会全体で形成していきたいと思っています。御指摘のとおりだと思います。

【明石部会長】
  ほかに御意見ございませんか。なければ、私の方で一言。山野委員のパワーポイントの19ページ、非常に個人的には気に入っていまして、なぜかと申しますと、全数把握可能な学校というのは、これまでの教師とか校長は、こういうことができてきたと思っているんですね。非常に日本の学校は面倒見がいいし、すぐ電話してあげて、いろいろ面倒を見て、大体35人の学級の子供をほとんど知っていると思ってきたはず。校長先生もそう思ってきたはず。だけども、見えない落とし穴があったのではないでしょうか。山野委員の提案にありますように、発見機能、センサーをもっと磨かなければいけませんよ、その仕組みづくりをしましょうという、牧野委員がおっしゃるように、そのためには子供観とか地域観を変えないと、従来の学校観だけではなかなかここまでいきませんよ、網の中から全部落ち兼ねない、教師も疲れているし、時代は変わってきているんですよという、今回の会合はそういう意味で非常に刺激的といいましょうか、もう少し大胆な発想でこの部会を議論していかなければいけないということを思いました。例えば平岩委員の、ボランティアの場合は、シニアを下に置くけども、それも大事だけども、もう少し30代、40代、50代のいろんなタレントを持った方がいろいろなところにいらっしゃるんですよという、特に女性の方に発見もしなければいけないという、こういうことももう少し見直していきたい。非常にフリーな時間で社会貢献できる方が結構いるのではないか、こういう発見機能、センサーをどうやって磨くか、そのシステムづくりと法的な問題を絡めてこれから議論をしていければと感じました。

【井出委員】
  学校の複眼化ですね。私、さっきハイブリッド化と言いましたけど。

【明石部会長】
  そうですね。昆虫の複眼化というか、単眼でなくて複眼的な視点で。だから、これまでに見えなかったことが見えてくるという、それはいい起用ですね。学校の複眼化というのは。

【平岩委員】
  今の牧野委員の話を聞いていて思い付いた言葉が、「サードプレイス」です。要は一つ、二つ目の場所と、三つ目の場所があると非常に人生とか生活が充実してくるというような考え方で、スターバックスがよくサードプレイスの場所として成功したという話がよく出ます。子供にとっては学校と家庭と、もう一つ、サードプレイスは地域だったり放課後だったりでしょうし、大人にとっては仕事と家庭と、地域だったりすると思うんです。地域というのは、子供にとっても大人にとってもサードプレイスになり得ます。子供とサードプレイスを共通して結ぶ軸があるとすると、それは「学び」なのではないかと思うんです。学びというのは子供にも大人にも共通する、本当に幾つになっても楽しいものであって、それが生涯学習という概念なのかなと思ってやっています。それは大人も子供も学び合うというところでサードプレイスが機能してくると、ものすごく人生は充実してくるんだろうなと思います。今日皆さんのお話を聞いていて、ずっとこのサードプレイスという言葉が頭に浮かんでいましたので、御紹介しておきます。

【明石部会長】
  ありがとうございました。社会教育と市長部局の経験を踏まえて、関委員。

【関委員】
  今日はいろいろお話を聞かせていただいて、我々も、自分が実際に地域の中で体験してきたこと、それをもう一回かみしめさせていただいたんですが、子供とつながることによって自分たちが子供の見えない部分が、見えてきた部分が本当に多かったと思うんです。10年、20年、これから先、恐らく地域の中で子供と関わっていくと思うんですけれども、その子供たちが大人になったときに、小さいときの体験が何か花開くような、そういう関係性を作っていきたいなと改めて思いました。

【明石部会長】
  浦崎委員。

【浦崎委員】
  今日は福祉の話を聞かせていただけたことがとても衝撃的でした。福祉と教育をセットで捉えていくことで、かなりいろいろものが解決できるなという見通しを持てたことが、今日一番大きな収穫でした。

【明石部会長】
  熊谷委員。

【熊谷委員】
  今まで学校と家庭と地域の組織づくりということの中で、学校の中の閉じられた中での組織づくりということに検討してきたわけですけど、これからは、今日の説明にありましたように、プラットフォーム化という中で、学校はそのプラットフォームの中の一員としての学校の役割というふうな視点、こちらの視点の方ということが学校地域、この部会、検討していくということも大切になってくるのではないかと思っております。

【明石部会長】
  では、飯塚委員。

【飯塚委員】
  青年会議所として、今日はいろいろことを学ばせていただきました。どういったところで地域の代表として関わりが持てるかというところをしっかり組織として再認識、そしてこれからもまた学んでいかなければならないなと実感をさせていただきました。

【明石部会長】
  では、松浦委員。

【松浦委員】
  地域に帰ったときに、山野委員がおっしゃったように、うちの方も滋賀県ですので、まだまだ成功例というのは少ないかなと思っております。校長先生や管理職の先生が大きな核なのかなと思い聞いていましたけれども、これをまた地域に根付かせるためには、成功例とまだまだこれからのところの差をどうやって詰めていくのかなというところを、また勉強させていただきたいなと思っておりました。

【明石部会長】
  竹原委員。

【竹原委員】
  最後おっしゃったサードプレイスというのは、大人にとってもサードプレイスではないかと思って、それが生涯学習の場だと思ってお聞きしていました。

【生重委員】
  気になっているのが、私も、先ほど竹原委員も言っていたんですが、本当の子供の個人的ないろんなものが見えてくるときに、学校と意思疎通ができない限り、我々が外から見知ったことが生かされないんですね。それってやっぱり相当、本当に学校側が困ったと言い出さない限り、スクールソーシャルワーカーを入れたネットワークというような形の画期的なところに行き切れないところに、まだ現状の課題があるんだなと思っています。日々抱えている子供たちの課題を早く地域全体で何とかしていける状況を作れればなと思います。

【明石部会長】
  ありがとうございました。予定された時間となりましたので、最後に事務局から今後のスケジュールについて御説明をお願いいたします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
  資料6を御覧いただければと思います。次回は、7月24日金曜日、15時から17時30分、文部科学省内の会議室で行いたいと思います。次回は、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会と合同会議で、学校支援地域本部の役割や効果を踏まえたコミュニティ・スクールとの一体的推進の在り方をメインテーマとして行いたいと思います。

【明石部会長】
  それでは、本日予定した議事は全て終了いたしました。これで閉会にいたします。どうも御苦労さまでした。

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