学校地域協働部会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年5月18日(月曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 部会における主な検討事項について
  2. 委員からの意見発表(学校と地域の連携・協働の在り方に関して)
  3. 自由討議
  4. その他

4.議事録

(1)事務局より、挨拶が行われた。

(2)事務局より、各委員及び文部科学省出席者の紹介が行われた。

(3)委員の互選により、学校地域協働部会長に明石委員が選任された。副部会長については、明石部会長から松田委員の指名があった。

(4)生涯学習分科会学校地域協働部会運営規則について了承された。

【明石部会長】
 それでは、議事に入る前に、事務局より配布資料の確認をお願いいたします。鍋島室長、お願いします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
 それでは、配布資料の確認をさせていただきたいと思います。
 議事次第がございまして、資料1が部会の設置について、資料2が本部会の委員名簿、資料3が本部会の運営規則(案)、資料4が諮問の関係、資料5が中央教育審議会総会、分科会等における主な意見、資料6が本部会の検討事項(例)、資料7が本部会の審議のスケジュール(案)、資料8が学校と地域の連携・協働に関する資料、資料9が地域とともにある学校の在り方に関する作業部会における検討事項(例)、資料10がコミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議での報告書で、委員の方々には、ピンクの冊子がお手元にございます。資料11が、後ほど御発表いただきます熊谷委員の発表レジュメになります。参考資料としまして、参考資料1が学校と地域の連携・協働に関する基礎資料、参考資料2が、3月まで行っていましたチーム学校の実現及び地方創生に向けた学校と地域の連携・協働に関する論点整理、参考資料3が地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の設置要綱、参考資料4が中央教育審議会令、参考資料5が生涯学習分科会運営規則となっております。

【明石部会長】
 それでは、議事に入らせていただきます。まず、事務局から部会の設置に至る経緯、部会における今後の論点についての御説明を頂きます。なお、御質問につきましては後ほど時間をとりますので、よろしくお願いいたします。
 では、まず谷合課長の方からお願いします。

【谷合社会教育課長】
 私は本部会を担当しております社会教育課長の谷合俊一と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、私から部会の設置の経緯、今後の検討事項等について御説明を申し上げます。
 資料4を御用意ください。冒頭の局長挨拶の中でも申し上げましたが、本年4月14日、文部科学大臣から中央教育審議会に対し、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方について」と題する諮問が行われました。左上にございますが、今回の諮問に至る背景として、本年3月4日に公表されました教育再生実行会議第6次提言というものがございます。この提言におきましては、地方創生を実現するための教育の在り方について議論が行われましたが、その中でコミュニティ・スクールの拡充、その必置についての検討、また学校と地域をつなぐコーディネーターの配置、さらには学校を核とした地域づくり(スクール・コミュニティ)への発展などが提言されたところでございます。
 そして、もう一つの動きといたしまして、資料4の右上でございますけれども、文部科学省に設置されましたコミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究協力者会議が本年3月20日に最終報告を行っております。なお、この協力者会議の報告内容は、本日の資料10として配布をしておりますので、後ほど御確認をお願いいたします。
 こうした提言を受ける形で、また更に深掘りした議論を行う必要があるということで、資料4の下半分でございますが、先ほど申しました4月14日の諮問がなされたということでございます。
 この諮問に対する審議体制でございますけれども、資料1の2枚目を御覧いただけますでしょうか。先ほど御説明がありましたけれども、今回の諮問内容は学校教育と社会教育それぞれにまたがる内容でございますので、初等中等教育分科会と生涯学習分科会それぞれの下に部会を設置して、審議を進めていくということになりました。右下の学校地域協働部会が、本日この会議ということになります。そして、その左側にあります地域とともにある学校の在り方に関する作業部会が初等中等教育分科会の下に設置されて、特に今後のコミュニティ・スクールの在り方等について審議が行われていく予定になっております。先ほど部会長からもございましたけれども、これらの両部会というのは相互に関連する内容を含みますので、適宜合同部会という形での審議を予定しております。また、先ほど事務局から御紹介しましたが、本部会の委員のうち5名の委員の方にはこの二つの両方の部会に参画をしていただいておりますので、そういった形でも両部会は相互に連携をとりながら検討を進めていきたいと考えているところでございます。
 それでは、再び資料4の、検討事項について御説明をいたします。資料4の下半分でございます。今回の検討事項は大きく二つございます。
 一つが新しい時代の教育や地方創生を実現するために求められる今後のコミュニティ・スクールの在り方や、それを踏まえた総合的な推進方策についてでございます。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、主として初等中等教育分科会の下に設置された作業部会で審議がなされていくことになります。
 そして、二つ目の検討事項が、学校と地域がパートナーとなり、連携・協働体制を築くための地域人材の養成と環境整備についてであります。これが本部会で主として御審議を頂きたい部分でございます。
 論点として三つ掲げられております。一つ目は、いわば組織の問題でございます。すなわち新たな学校支援の役割、地域の教育資源を効果的に結びつける学校支援地域本部等の仕組みの在り方ということでございます。後ほど検討事項についてはもう少し紹介いたしますが、先に三つだけ申し上げます。
 二つ目が人材ということで、すなわち学校と地域をつなぐコーディネーター等の人材の配置の在り方、あるいは養成・研修・確保方策等についてでございます。
 三つ目はもう少し広い話になりまして、一つ目、二つ目はどちらかというと学校支援という観点が強かったわけですが、三つ目の論点は学校を核とした地域創生という観点から、学校と地域の連携・協働による教育活動を通じた人的ネットワークの構築や、地域住民の学びの機会の充実方策、それらを主体とした地域の振興・再生方策など、子供だけではなくて、大人も含めた地域の拠点として学校を捉えていけないかという論点でございます。
 この諮問を受けまして、資料6を御用意いただきたいのですが、資料6は事務局として本部会における検討事項を整理したものでございます。飽くまで検討事項の例でございますので、今後の審議の状況によりまして適宜追加をしていただくことはもちろん可能でございます。
 資料6を御説明いたします。1は基本的方向性ということで、いわば総論的な事項でございます。そして、2、学校と地域の連携・協働の構築のための具体的方策でございますが、これにつきましては先ほど資料4で御説明いたしました中央教育審議会への諮問事項の項目に沿って、もう少しブレイクダウンする形で整理をしております。
 2の(1)これからの学校支援地域本部の在り方でございます。今後の学校支援地域本部の役割や機能として論点を掲げております。全部を紹介することは省略いたしますけれども、中には、三つ目の丸にございますけれども、学校安全や学校の課題解決のために学校支援地域本部が果たす役割というのも掲げております。これは先般の川崎市における中学1年生殺人事件も踏まえた学校安全、あるいは学校の課題解決に果たす役割というのも一つ論点になるのではないかということでございます。そして、四つ目の丸にありますように、子供たちの抱える課題への対応、家庭教育支援の充実といったことも論点として掲げているところでございます。
 そして、その次の丸は、こうした学校支援地域本部の役割や効果を踏まえたコミュニティ・スクールとの一体的推進の在り方を掲げております。このテーマにつきましては、初等中等教育分科会の下の作業部会と、本部会との合同部会の場などを通じて審議を進めていく予定でございます。
 次に、(2)学校と地域をつなぐ人材の在り方でございます。これについては、地域コーディネーターの果たす役割が極めて重要であるということは以前からも指摘されているところでございますが、では、このコーディネーターを効果的に、また全ての学校区に配置をしていくためにはどうすればよいか、またその前提として養成・研修・確保方策はどうすればよいか、さらには資格や称号の付与、こういったことも含めて御審議をお願いしたいと考えております。また、地域コーディネーターが学校支援を有効に進めていくためには学校との連携が当然重要でありますから、学校において地域連携を担当する教職員との連携の在り方も論点として挙げております。
 そして最後、(3)でございます。学校と地域の連携・協働による教育活動を通じた地域振興・再生の在り方です。学校支援地域本部は、その名前からしましても学校を支援していく組織というイメージが強いわけでございます。もちろんそれは重要な機能でございます。それに加えまして、学校を核とした地域創生という観点も念頭に、学校という場を大人も含めた地域の学びの場として広く捉えられないかという論点でございます。例えばきっかけは、学校支援という立場で入っていった地域住民が自らも学び成長していって、地域参加による地域の課題解決、あるいは地域づくりへと発展していくことも、地域創生の観点から極めて効果的ではないかということも考えているところでございます。
 続きまして、資料7を御覧ください。今後の審議スケジュールでございます。本日の第1回から第4回までは、主として学校支援地域本部の在り方等を中心に御審議をお願いしていくことになります。
 なお、このうち米印のつきました第2回及び第4回会合については、初等中等教育分科会の下の地域とともにある学校の在り方に関する作業部会との合同開催を予定しております。この合同開催の日におきましては、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の連携、あるいは一体的推進を中心に議論を予定しております。第5回会合は人材ということで地域コーディネーターについて、それから2枚目の第6回会合では地域振興・再生についての審議を予定しております。そして、それぞれの回におきましては、順次各委員の先生方からプレゼンをお願いするということも予定しております。こうした形でおおよそ月1回程度、あるいは2回のペースで開催をして、最終的には10月から11月頃にかけて審議の整理を行い、12月頃答申を行うということを想定しております。
 私からは以上でございます。引き続いて、参考データ等につきまして、室長の鍋島から御説明を申し上げます。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
 配布資料8、学校と地域の連携・協働に関する資料を御覧ください。
 資料8をめくっていただきますと、1ページ目に学校支援地域本部の資料があります。これは地域の方々が学校の教育活動、学校の教育課程外の活動も含めまして、みんなで支えようという仕組みづくりでありまして、このような学校支援地域本部という名称で呼ばない地域もありますけれども、現在、かなり多くのところで進んできております。現在では3,746本部、学校数で言いますと9,058校、小学校が約6,000校、中学校が約3,000校で、公立小学校・中学校の約3割で何らかの形でこういった学校支援地域本部の仕組みができつつあります。中核となりますのが左側にあります地域のコーディネーターでありまして、活動全体の企画や、学校と地域の連絡調整役という形で、非常に重要な役割を担っております。
 また、支援の内容としましては、学校支援活動という形がありますけれども、様々です。何をしないといけないという規定はありません。学習支援のようなものもありますし、授業の補助、部活動の支援、環境の整備、図書室のボランティアによる読み聞かせを行っている本部もあります。また、学校の行事、運動会や文化祭など、様々な学校の行事自体への支援や登下校の安全確保を担っているという形もあります。
 学校側には教頭先生、副校長先生、主幹教諭や窓口の先生方がおり、学校側の窓口の先生方とコーディネーターとの連携が何よりも核となってまいります。また有償・無償は問わず、学校支援ボランティアのような形で、実際には担ってくださる方々がポイントになってくるのではないかと思います。こちらの具体的な活動の内容は、まずは設置するところから始まるのではないかと思いますが、どのように進めていくのかということにつきまして、様々な御意見を頂ければと思います。実際に子供たちもこれにより、よかったなと思うこともあったり、またいろんな出会いができたりすることもありますし、先生方も支援本部の方々がいらっしゃったおかげで少し業務が軽減されたとか、子供たちに向き合う時間が増えたとか、様々な御意見を頂いております。
 今年度からは、2ページ目にありますように、学習が遅れがちな中学生、小学生などを対象とした学習支援にも力を入れてまいりたいと思います。現在は中学校の7%、約700中学校区で学校支援地域本部の関係で何らかの学習支援の取組が行われているわけですが、今年度は2,000中学校区、5年後には5,000中学校区という形で、少しずつできるところから始めてまいりたいと思います。学習支援ということになりますと、子供たちの学習の進度や、興味・関心事項は違いますので、そのような場面で学習支援講師や、非常勤講師の役目も非常に大事であり、さらに、放課後や、夏休み、土曜日に地域の方々が中心の取組なども付加されると、全体として活動が活発になってくるのではないかと考えております。現在、各自治体にもこういったことをやりませんかということを呼びかけております。
 3ページ目は文部科学省の予算という形になりますけれども、この学校支援地域本部だけでなく、放課後子供教室や、家庭教育の支援など、自治体がやりたい事業が選べるようなメニュー化の事業でございます。国と都道府県と市町村で3分の1ずつ持ち合うような形の事業を進めているところでございます。今年度は特に先ほどの地域未来塾、そして放課後子供教室に力を入れているところでございます。
 4ページ目、学校支援地域本部の実施状況ですが、実施本部数は3,746本部。これは学校支援地域本部という枠組みの補助金を使っているところだけという形になります。1本部当たり平均2.4校で、これは中学校区の中で一つの中学校と複数の小学校、場合によっては幼稚園が一つの合同本部をつくっているところもございます。そういった意味で一つの本部で一つの学校というところもありますが、複数の学校で一つの本部という、特に学校が隣接している場合など、そういった形で工夫されているところも増えてきております。また、高等学校30校、特別支援学校54校とありますが、このあたりを少しずつ増やしていきたいと思います。通学区域が少し広くなってくるということで、学校支援地域本部の取り組みにはなじみにくいのではないかという意見などもありますが、こういったところにも力を入れていきたいと思います。コーディネーターの状況ですが、約1万4,600人ということで、1学校当たり平均1.6人という形になります。内容によりまして、複数のダブルコーディネーターを配置しているところもあります。また、地域、学校に詳しい方々、そして企業や様々な団体に詳しい方々のダブルコーディネーターを置いてみようということなども昨年6月に、特に放課後、土曜日の関係で同じ中央教育審議会のワーキンググループで報告書をまとめていただきました。
 5ページ目は学校支援地域本部の実施状況でございます。色が濃いほど、飽くまでこの支援事業をやっているかどうかという観点になりますけれども、白いところも幾つかありますが、これも例えば謝金などはかけずにボランティアでやろうという鹿児島県の取組もありますし、今、具体的に調査をしているところでもありますけれども、大体この補助金を使わないような取組、各市町村独自の取組も含めまして、倍ぐらいはこれに近いような取組があるのではないかと思われます。
 また、6ページは実際の活動の割合で、学習支援活動では放課後学習支援が少しずつ増えてきており、このあたりが進められないかなとも思います。その下には、学習支援以外の活動の割合を載せてあります。
 7ページはこれからの学校支援地域本部の機能のイメージです。参考資料2の報告書にもありますが、この部会につなげられないかということで御議論いただき、3月に取りまとめを行い、その中でもアドバイスを頂いたところですけれども、課題1、2、3、4とありますが、まずは基本機能から始まり、地域や企業等の参画を得た新たな教育課題への対応、そして子供たちが抱えるような様々な複雑な困難な状況も出てきていますので、補充学習や、放課後等の学習支援にもつなげていけるとか、また社会全体が変わってきていて、学校を核としたチーム学校という議論も行われてきていますので、地域創生のようなところまで、まちづくりまでつなげていけるような、新居浜市の取組もそうだと思うんですが、こういった発展的な機能まで進めていければなとも思います。
 8ページの一番下にもありますように、現在、学校支援地域本部の活動は学校の外へ、登下校の見守りなど、様々な取組をやっているところもありますが、校外の活動から校内の活動へ、校内から校舎内へ、また教育課程の外から教育課程内のところまで、先生方とよく相談しながら取り組みが少しずつ進んでいくことを是非期待したいと思います。そのためにどのようなことが必要なのかということにつきまして、是非御議論いただきたいと思います。
 9ページ以降は、事例になりますが、学校支援地域本部の基本機能ということで、愛媛県伊方町の事例、10ページにはキャリア教育を特に熱心にやっている東山田中学校の事例、11ページには放課後の学習支援ということで葛飾区の事例、12ページには市内の全ての中学校区で取り組んでいる奈良市の事例を入れております。
 最後に、参考資料1として、これを更に補足する資料を入れております。5ページに学校規模の現状という資料があります。今、小学校では12学級以下の学校が全体の約半分、そして9学級以下の学校が全体の約4割ということで、学校の規模もかなり変わってきております。6ページには学校現場が抱える様々な課題がございます。このような状況で、地域の方々と一緒にどのような取組ができるのかということを是非御議論いただければと思います。
 9ページにありますように、学校支援地域本部は法令上の明確な規定まではなくて、各地域の方々の自由な意思に基づいて進めていただいているところでもありますけれども、そのあたりをどうしたらいいのかということもありますし、また平成29年度までに全国の小中学校にこういった取組を是非つくっていこうということを、教育振興基本計画でも定めております。
 10ページにありますように、これまでの主な取組としましては平成16年度から放課後子供教室、そして20年度から学校支援地域本部の取組を、最初はモデル事業のような形で、その後にはそれぞれ自治体の方々にも御負担を頂く形で進めてまいりました。
 少し飛びますけれども、28ページを御覧いただければと思います。ただいま申しましたように、少しずつ取り組みが進んでまいりまして、平成21年度には約2,400の本部数でしたが、現在、約3,700に徐々に進んできているという状況でございます。
 また、30ページ、31ページのあたりには、特に31ページですけれども、宮城県の中学校では大震災の後、学校支援地域本部設置校では、地域の方から「避難所の運営については私たちに任せ、先生方は是非子供たちの方を担当してほしい」という形で非常にスムーズに進んだという状況もございます。
 35ページには放課後子供教室、37ページには放課後子供教室の実施状況がございます。
 また、42ページですけれども、土曜日の教育活動につきましても、現在では約4割の学校、地域で取組を進めている状況であり、また44ページ、45ページですけれども、文部科学省では土曜学習応援団という形で、企業・団体・大学等の皆様にもいろいろ学校の取組、教育課程以外の取組に力を入れていただけないかということで、現在、約400の団体から賛同を頂いているところでございます。
 そのほかの資料につきましては、後ほど御覧いただければと思います。以上でございます。

【廣田参事官補佐】
 続きまして、初等中等教育局参事官の補佐をしております廣田から資料の説明をさせていただきます。先ほど河村局長の冒頭の御挨拶、あるいは谷合課長の御説明の中にも、初等中等教育局と生涯学習政策局と連携をしながらという話がございましたけれども、我が局の方で設けました地域とともにある学校の在り方に関する作業部会、こちらにおける検討事項、そしてコミュニティ・スクールのことについてお話をさせていただきたいと思います。
 資料9、資料10、そしてピンク色の冊子がお手元にあると思いますので、こちらを活用して御説明をさせていただきます。
 資料9は初等中等教育分科会の下の地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の検討事項の例でございますけれども、こちらについては後ほど御説明させていただきます。
 まず、資料10を御用意いただければと思います。横長のカラー刷りのものでございますけれども、コミュニティ・スクールを核とした地域とともにある学校づくりの一層の推進に向けてということで、この3月にまとめられた協力者会議の報告の概要でございます。教育再生実行会議におきまして、これからの学校と地域の在り方についての御提言があったわけですけれども、それと同じ形で並行して、この協力者会議でこれからの学校と地域の在り方について先行して御議論させていただいておりました。
 その中で今後の目指すべき方向性といたしまして、社会総がかりでの教育を実現していかなければならないという方向性の中、地域とともに学校づくりを一層推進していこうと。それに当たっては、その中核にコミュニティ・スクールを据えながら設置促進を図っていくべきであるという方向性、そして先ほど来地方創生という言葉が出てきておりますけれども、学校を核とした協働の取り組みを通じて地域づくり、あるいは地域課題の解決についてもその視点を持って取り組みを進めていくことが重要である。このような方向性を示されたところでございます。
 その下からコミュニティ・スクールの拡大・充実のための方策ということで御提言を頂いているわけですが、コミュニティ・スクールという横文字の仕組みについて、既に御承知の方々ばかりだとは思いますけれども、いま一度確認をさせていただければと思います。
 その次のピンク色の冊子で、前半が本文、後半が参考資料集でございますけれども、ピンク色の冊子の参考資料集の11ページを御覧いただければと思います。コミュニティ・スクールについて、その制度の概要が示されているものがございますけれども、右側に地図が載っている資料でございます。
 左はコミュニティ・スクールの仕組みについて記載しております。制度上の言葉といたしましては、学校運営協議会という言葉でございます。先ほど鍋島室長の方から御説明いたしました学校支援地域本部、あるいは放課後、土曜日等々の活動というのは学校を支援する取組である、社会教育の領域の方から支援していく、そんな取組でございますけれども、コミュニティ・スクールについては学校運営に参画をするというところがこの制度のポイントでございます。制度の概要にありますように、保護者や地域住民がこれに参画する学校運営協議会制度、これを有する学校をコミュニティ・スクールと呼んでおります。
 では、学校運営に参画するといったときに、どのような形で参画を担保するかということでございますが、中ほどに学校教育の主な役割ということが書いてありますけれども、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、いわゆる地教行法第47条の5に基づきまして、教育委員会が学校運営協議会を置く学校を指定いたします。
 この学校運営協議会に対してどのような役割が設けられているかというのが、その下、三つでございますけれども、まず校長は学校運営の基本方針を作成して、それを学校運営協議会の承認を得なければならないという必須の規定がございます。そして、学校運営について、学校運営協議会は教育委員会又は校長に対して意見を述べることができるという任意の規定がございます。そして、教職員の任用に関して、教育委員会に対して意見を述べることができる。こちらも法律上明記された権限でございます。このような形に、校長が定める基本方針を承認するという権限、そして学校に対して、あるいは任用に対して意見を言うことができる。このような権限を持って学校運営に参画するということを確保しているものでございます。
 このコミュニティ・スクールについては全国1,919校というのが数でございますが、12ページを御覧いただければわかるとおり、全国で、かなり開きがあるという状況でございます。グレーになっているところは未設置のところでございますが、一方で赤い色になっているところが20%以上、特に会議の委員になっております浅原教育長のところの山口県につきましては、およそ9割がコミュニティ・スクールになっているという状況でございます。このように地域差が非常にあるというのを覚えていただければと思います。
 参考資料集の15ページを御覧いただければと思いますが、学校運営に参画するということをもって、どのような効果を期待しているかということでございます。15ページ、三鷹市の事例でございますけれども、左上にコミュニティ・スクールの体制がございます。このコミュニティ・スクールの委員会の下に学園評価部、あるいは学園支援部、コーディネート部という形で支援をする組織がありますけれども、校長の作成する基本方針を承認する。そのような声を通して、例えば下のようにワークショップというのがございますが、三鷹中央学園が目指す教育目標、進んで学ぶ人をつくりたい、あるいは感謝と思いやりの心を持つ人をつくりたい、このような学校が目指すべき教育像、あるいはどのような子供を育てたいかという目標、方針を、学校運営協議会の委員と共有する。そこから必要な支援、あるいは必要な活動を展開されていくということ、これをイメージしていただければと思います。ですので、学校の求めに応じて支援をするということにとどまらず、まずは共通の目標、そして共通の課題を共有した上で、その目指すべき目標に対して歩みを進めていく、それがコミュニティ・スクールの仕掛けになってございます。
 このようなコミュニティ・スクールには先ほど三つの権限があると申し上げましたけれども、同じ参考資料集の18ページを御覧いただければと思いますが、様々各教育委員会の工夫におきましていろいろなコミュニティ・スクールの形が広がっております。18ページ、小中学校の方では、アンダーラインが引いてありますけれども、この学校運営協議会において法定外の活動としてどのような活動が行われているかというデータでございますが、学校評価を実施しているのがおよそ8割、学校支援活動を実施しているのが小学校でおよそ7割ということで、この7割で学校支援地域本部等々とも連携を図りながら、子供たちの支援をしているということが実態としてございます。
 このような実態を踏まえながらということで、先ほどの資料10の概要に戻っていただければと思うんですけれども、コミュニティ・スクールの持っている学校運営への参画という機能と、学校支援地域本部のような支援の活用の機能、このようなものを一体的に推進していくべきではないかということを協力者会議の中で御提言を頂きました。
 資料10の1枚目の下ほどにありますように、学校運営協議会の機能と支援や関係者評価の機能を一体的に推進し、学校運営の改善を果たすPDCAサイクルを確立していく。絵の方にございますけれども、学校運営協議会がプランをつくって、それを実行していくに当たって学校支援地域本部が活躍していく。そして、学校関係者評価においてその活動を評価していく。このPDCAを回していくことによって、より学校、地域とともにある学校運営の改善・充実が図られていく。そのようなイメージも御提言を頂いたわけでございます。
 そのほか2枚目に学校の組織としてのマネジメント力の強化ですとか、地域の人々、保護者等多様な主体の参画の促進等、様々御提言を頂いているわけですけれども、この御提言の中で書かれていることもこれからの地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の土台となる御審議だと思っておりますので、こちらも参考にしながら進めていくことができればと思っております。
 資料9をお手元に御用意いただければと思います。このコミュニティ・スクールの調査研究協力者会議で御議論いただいたことをベースにしながら、これからどのようなことを中央教育審議会において御議論いただきたいかということをまとめた検討事項の例でございます。
 時代の変化に伴う学校と地域の在り方ということでございますが、特に二つ目の丸、これからの教育改革や地方創生の実現のために学校と地域の連携・協働の在り方、地域とともにある学校の在り方についてどのように考えるか示させていただいております。現在、中央教育審議会の教育課程部会の方でアクティブ・ラーニングを始め教育課程の見直しということが審議されております。また、高大接続ということで、高校教育改革あるいは大学入試改革ということが打ち出されておりますし、小中一貫教育の制度化あるいはチームとしての学校の在り方、様々な教育改革の方向性が今示されようとしている状況の中でどのようにして学校と地域が手を携えて進んでいくかということを、この場でも御議論いただければと考えております。
 二つ目の柱ですが、これからのコミュニティ・スクールの在り方ということですが、今申し上げたような教育改革の方向性、あるいは地方創生を実現するために、コミュニティ・スクールに求められる役割・機能はどうあるべきか、あるいは校長のリーダーシップの発揮、学校支援地域本部等の仕組みとの一体的推進の観点、学校評議員などの類似の仕組みとの整理の観点、小中一貫教育の学校間連携の推進の観点、このような観点も含めながら、その在り方をどのように考えるかということを御議論いただきたいと思っております。
 三つ目の柱ですけれども、コミュニティ・スクールの総合的な推進な推進方策ということで、地域とともにある学校として、学校がコミュニティ・スクール化に取り組み、地域と相互に連携・協働した活動を展開するための方策ということでございますが、協力者会議の中でも特に学校の組織運営体制、マネジメントということですとか、教職員の育成の在り方ということが御議論されましたけれども、このような学校の組織、あるいは教職員の在り方ということも、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の検討事項として考えております。教職員の養成ですとか研修の在り方も含めて、推進方策を示していくことができればと考えております。
 また、未導入の地域へのコミュニティ・スクールの促進のための方策ですとか、都道府県、市町村の役割と推進方策など、その検討を頂きたいと考えております。
 最後の丸ですけれども、教育再生実行会議の提言におきましても、全ての学校においてコミュニティ・スクール化を目指すという方向性の中で、その仕組みの必置の検討ということが示されたわけですけれども、その観点につきまして学校や地域の状況、市町村や学校の規模との関係、幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方、小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い、このような様々な観点も踏まえながら、しっかりと慎重に御議論いただきたいと思っております。検討事項によっては、この学校地域協働部会と合同審議を進めながら議論を深めていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。説明は以上です。

【明石部会長】
 ありがとうございました。情報量がたくさん出てまいりました。次は、学校と地域の連携・協働の在り方について、熊谷委員から御意見を頂きたいんですけれども、その前に井出委員が所用で途中退席となりますので、まず井出委員の方から、今の事務局の話をお聞きして何か御意見ありましたらお願いします。

【井出委員】
 井出でございます。今日は、所用のため11時に失礼させていただきます。
 今、様々な報告がされたわけですけれども、私はこの全体について特段疑義を持っているわけではなくて、ちょうど私、今年で杉並区の教育長になって10年目になったんですが、この9年間ずっと言い続けてきたことはこのことなんです。つまり、いいまちはいい学校を育てる、そして学校づくりはまちづくりである。学校を育てていく、子供を育てていくという人々の取り組みが豊かであれば、当然子供たちは豊かに育つ、学校も教育力を高めていくことができる。そして、その取り組みを通してつくり上げられた、いわばソーシャル・キャピタルといいますか、社会関係資本がまちづくりにも返ってくる。この互恵関係といいますか、相互関係をつくり上げていきたいというのが杉並区の教育の骨幹で、教育ビジョンにも、それから教育の振興計画にも全て、このいいまちはいい学校を育てる、そして学校づくりはまちづくりという文言で整理をして進めてまいりました。
 昨年、ちょうどCS(コミュニティ・スクール)を始めて10年という節目だったものですから、その評価を行いました。その中の特徴的なものの一つに、学校に第三者が入ってくるようになるわけですから、当然、学校の閉鎖性というのは破られていくわけですけれども、それによって何がもたらされたか。
 一つは、児童生徒の自己肯定感が高まっていったということです。つまり、いろんな人から見られて評価をされて、そして自分たちの活動が支持されていけば、自信のなさであるとか、自己肯定感の低さというものを高めていくことができるというデータを得ました。
 それからもう一つは、教職員の児童生徒に対する肯定的な評価が高まったということです。これは両者が相関しているわけですけれども、データ的には別にとっておりまして、そういう関係をこれから更に充実させていけば、学校はもっと変わっていくだろうし、地域もそれによって変わっていくことができるだろうという手掛かりを得たところです。
 二つ目は、社会関係資本の蓄積の濃淡と学校の教育力は大いに関係があるということが明らかになりました。データを整理していきますと、学校の教育活動や子供の成長を支える力というのは地域的にかなり違いがあります。
 その違いはどこにあるかというと、単に経済的な格差だけではないんです。つまり地域社会の人間関係の濃淡が社会資本の大きな要素になっていますから、これが薄いところはたとえ経済的、あるいはほかの要因に恵まれていると思われているところであっても、決してそこの地域にある学校の教育力は高いとは言えない。逆に経済的な基盤が脆弱であったとしても、地域社会の人間の凝集性といいますか、あるいは共通の目的に従って何かをやろうという意識が高い場合には、かなりの力を発揮することができる。
 私どもの教育行政の重点施策の中にこの点をどのように取り込んでいくかというのが今年の課題で、今までの経験的な流れを整理していけば当然方向は見えてくると思っているんですが、その中の一つに学校支援本部のさらなる充実と学校運営協議会、つまりCS化の推進というのが入ってくるんです。
 杉並区の場合には、学校支援本部は設立以来、全小中学校に設置されておりますので、そこの成熟度に従ってCSに移行しているという方向をとっています。現在、小中66校中29校まで来ました。学校運営協議会、つまりCSとして独立していくための体力をつけていくためにはそれなりの時間がかかるわけで、その体力をつける時間を杉並区では学校支援本部の期間と捉えています。この学校支援本部が成長していけば、そこで蓄積されたノウハウあるいは人間関係、いわばソーシャル・キャピタルに相当するような部分が肥沃になっていけば、自動的にCSに移行していくことも可能だろうと考えております。
 昨年から、2030年に今の学校は存在するかというテーマで、検討会などで画策をしております。これは何かといいますと、明治5年の学制発布以来、学校というのは先生が教えるものだと、形を変えずに来たわけですが、この仕組みはいずれ変えざるを得ないし、変わっていくだろうと。
 その方向性として、一つは教えるという事柄と学校を運営・経営していく事柄はずっと以前から指摘されていながら混在したまま、整理がされてきませんでした。これも法制度的に整理をしていくべきときが来ただろうと。つまり免許職種である教員の専門性を生かす部分と、免許がなくてもできる仕事は切り分け、切り分けた上で混在化させていくことをしないと、いつまでたっても学校は変わらない。免許がなくてもできる学校の教育活動については、免許がない人に任せていく。このぐらいまで踏み込んでいって制度改革をしていかないと、2030年には学校は消えてしまうのではないかと思っています。
 そういう意味で今回のこの会議は、学校の方向性を明らかにしていくということと同時に、そのために何をしていったらいいのかということを、初等中等教育局と生涯学習政策局との間で合同で検討を進めていくことができるということは大変すばらしいことであり、かなり大胆な踏み込んだ議論ができればいいと考えております。

【明石部会長】
 井出委員、非常に貴重な意見を頂きましてありがとうございます。学校支援地域本部をつくると、学校が開かれると子供の自尊感情が高まるというのはもっと広く宣伝していきたい、と思います。
 千葉県の木更津市が14年間、学校支援ボランティアをやっております。学校支援ボランティアをやっているところほど小学生、中学生の自己肯定感は高まってきています。ですから、杉並区と木更津市でも同じような結果が出ているのが興味深いです。学校が開かれるということは、外部から人材が入ると子供たちは違う視点を持ち自信がつくというのは非常に貴重な観点だと思います。
 2点目は、経済的なことも大きいんですが、人的なネットワークをつくれば更に良いということです。以前、警察庁が地域の人間のきずなを高めれば非行は減るのか。江戸川区や葛飾区では、30年ほど前ですか、非行が少なかった。よく見るとお祭りとか地域のネットワークがあって、きずながあると非行の発生が減ってくる、らしいのです。将来的にはそのような人的なネットワークづくりをしていかないと、学校だけでは困りますよと言われたことは非常に示唆に富みました。
 個人的に一番興味を持ったことは、井出委員が2030年問題をもう考えていらっしゃる、ことです。確かに、これからタブレットが出るなど、学習スタイルが変わってくる中で、学校というのは、地域というのは、家庭というのはどうあるのか。要するに新しい学び方を模索していきたいという形で興味深かったのは、杉並区の場合に地域支援本部が基盤となって、将来的にはCS(コミュニティ・スクール)へいくんだということです。この部会で合同をやる場合に、CSが原点で地域本部が出てくるのか、地域本部が先にくるのか、鶏と卵の発想ですけれども、この関係を合同の中でやっていきたい。そういう意味では地域の実情に応じていろんな方向があると思うんですけれども、そういう意味では杉並区のパターンがあってもいいし、CSから地域本部へいくパターンがあってもいいとか、そういうことを含めて2030年の問題について議論できればと思っております。

【井出委員】
 ありがとうございました。今日はこれで失礼させていただきます。

【明石部会長】
 それでは、熊谷委員、お願いします。

【熊谷委員】
 熊谷でございます。発表の資料は資料11の発表レジュメを御覧いただきたいと思います。これまでの研究や学校・家庭・地域の連携の取組を様々な都道府県を拝見させていただいたことで、全体的なところからお話しさせていただきたいと思います。
 まず、学校・家庭・地域の連携・協働ということは非常に進んできておりますが、連携、連携ということで、連携することが目的になっているのではないか。学校支援地域本部を導入したとか、放課後子供教室を導入した、あるいはCSを導入したという連携するということが目的になっている傾向があるのではないかということです。連携は飽くまで手段であって、目的は社会全体の教育力の向上、この社会全体の教育力の向上には学校教育だけでなく、家庭教育も社会教育も入ってくるということは言うまでもありません。
 そのためには先ほど井出委員がおっしゃっておりましたように取組を通して、大人と子供や大人同士の人間関係のつながり、言うなればソーシャル・キャピタルを高めていくということにねらいがあるのではないかと思っております。先ほども井出委員がおっしゃいましたように、子供にとっての連携・協働の意味については、割愛させていただきます。アメリカの研究でも、地域のソーシャル・キャピタルが高い場合は子供の学力、あるいは不登校等に関しても効果があるということの研究が進んでおります。
 この連携の効果というのは子供だけでなく、学校に関わる大人、地域や保護者や教師にもあるということをしっかり認識すべきではないかと思っております。学校づくりと地域づくりはリンクしているわけですから、単なる学校支援の施策ではなく、この取組というのは生涯学習の施策なんだという意義をしっかり持つ必要があるのではないかと思っております。
 2ページの大人の方、保護者や地域住民にとっての連携の意味というところですけど、いろいろな取組を拝見し、どの取組も大人たちが子供のためにやっていると、自分の地域だし、あるいは自分の母校だから、今、学校は困っているから手伝ってやらないかんのだというふうな大人の意見がよく聞かれます。
 しかし、本当に子供のためだろうかと。どこの地域に行っても、逆にボランティアをしている人の方が元気になっているということはよく耳にします。私はこれはエリクソンが言うところの、世代性の課題に取り組んでいると理解しております。我々は次の世代と関わることによって、成人としての自己が活性化されるんだというエリクソンの指摘からみれば、大人たちも子供をケアすることで学んで成熟していると。エリクソンの言葉の中で、大人の人間は必要とされることを必要とするという言葉があります。このように見ていくと学校・家庭・地域の連携の取組を通して、学校に関わる大人たち自身の学びや成長につながるという点は、見落としてはいけないのではないかと思っております。
 今度は教師にとっての連携の意味ですが、もちろん教師も保護者や地域の人たちとの関わりの中で成長、成熟していくと捉える必要があると思います。
 まず、その成長ということに関しましては、教師は学校の中で同僚の教師と関わりを強めていく、これを同僚性と言う。これは学校改善のキーワードですけど、同僚性、これは授業研究を中心とした校内研修によって学校の中で同僚性を高めていくということがまず第一だと思うんですけど、その同僚ということは今やこの学校・家庭・地域の連携が進む中で、地域の大人たちも教師は新しい同僚だというふうに理解するということが大切になってくるのではないかと思っています。同僚は学校の中だけでなく、学校外の人たちも含めて同僚だと、まさにチーム学校という概念でしょうか。
 これは私の調査研究の結果なんですけど、同僚性の高い教師は同時に学校・家庭・地域の連携・協力にも積極的に取り組んでいるという傾向が見られました。これは相関関係なので逆の解釈も可能です。つまり学校・家庭・地域の連携に取り組む教師というのは、学校の中でも同僚性を高めて、頑張っているんだというふうなことが言えるわけです。また、そういう教師は世代性の得点(スコア)も高いと。つまり大人としての成熟度合いも強いということが分かってきました。
 こういうことから、教師にとって同僚教師や学校外の新しい同僚との間に同僚性を育むということが彼らの世代性の成熟を支えて、ひいては教師としての発達ということも促されるのではないかという意味では、学校の教師にとってもこうした取組ということは意味があるんだというふうに理解していただきたいと思います。このように見ますと、大人と子供というのは互いに成長のために必要な存在同士だと、私はこれを大人と子供の歯車モデルと捉えています。
 3ページですが、大人と子供はかみ合う歯車なんだと。子供にとっても大人は必要ですし、大人も大人として成熟するためには子供が必要なんだということで、大人と子供の歯車をかみ合わせていくのが、学校・家庭・地域の連携の取組なんだと捉えています。
 3ページの2段落目ですが、大人と子供の育ち合いのためにも、学校・家庭・地域の連携を進めることが重要ですが、こうした取組は私は漢方薬だと捉えています。すぐに成果が出るとは限りません。先ほどのソーシャル・キャピタルと学力の研究でも、地域連携すると学力にもすぐに効果があるのかと言われますが、取組をじっくり進めていかなければどうしても効果が出にくいということです。漢方薬だからこそこの取組を積極的に、意図的に歯車をかみ合わせていかなければならないと思っています。そのためには、私は大人同士の歯車の中に、連携・推進を進めていく連携推進母体、チームの必要性というものがクローズアップされてくるのではないかと思います。なぜこういうことを言うかというと地域連携を取り組んで、頑張っている学校に、たまたま三、四年ぶりにこの学校頑張っているんで、今どうなっているかなというふうに行ってみると、どうも雰囲気が違うと。聞いてみると、地域連携に熱心な校長先生が変わったとか、あるいは社会教育主事の人やコーディネーターの人が変わったというふうな形で、取組が継続しないということが社会教育の学校・家庭・地域の連携の課題として上がってくるんじゃないかと思います。
 つまり漢方薬ですので、チームで連携を進めていくための母体が必要なんだというふうなことが一番大きい課題なんじゃないかなというふうに思います。そうした大きな大人と子供の歯車を回すためには、学校に関わる大人同士が連携の意味を共有して、協議を通して大人同士の歯車をかみ合わせていくということが大切なんだというふうに捉えています。
 このようなモデルに基づいて、連携・協力をめぐる課題を四つほど指摘して終わりたいと思います。まずはさっきの連携推進母体ということにありましたように、組織づくりということが大切だという点です。例えば今日は山口県教育長の浅原委員が御出席されておりますが、山口県での地域協育ネットという取組は、連携組織母体を「A:学校運営協議会」、「B:公民館」、「C:学校支援地域本部」、「D:その他の組織」の四つに分類して、そうした連携推進母体を核にした組織づくりを行っています。ここの興味深いのは、連携推進母体というのは同じである必要はないということです。それは地域の特性や学校の特性によって既存の組織をうまく組み合わせて、大人同士が協議できる場の確保ということが大切になってくるのではないかと思います。その際、学校運営協議会と学校支援地域本部、山口県のタイプでいえばAとCのこの組合せというものが、最も有効な連携推進母体ではないかと、今、研究しております。この学校運営協議会と支援本部の連携については、また改めてお話しさせていただきたいと思います。
 それから、もう一つ、岡山県のおかやま子ども応援事業というのは、学校支援地域本部と放課後子供教室と家庭教育支援をばらばらにやっていても、これはしようがないということで、県はこの三つの合同の会議を持っております。こうした組織づくりということがまず一つ大きい課題じゃないかなというふうに思っております。
 2番目の課題としまして、チーム学習の必要性を4ページ目に載せてあります。そうした連携推進母体の中で、大人同士の学び合いが必要なんだ、協議が必要なんだということですが、これにつきましては私も参加している岡山県の社会教育委員の会議で「研究のまとめ」を2年に1回ほど提言しております。それによりますと充実期、この研究では学校地域支援本部にも段階があるんだと、その段階に合わせた支援が必要なんじゃないかと、詳しくはその後に資料を載せておきましたので、御覧いただけたらと思います。その中で充実期、軌道に乗って取組も安定してくるというところですが、この充実期が意外とくせ者であり、取組のマンネリ化や形骸化を迎える時期でもあることに警鐘を鳴らしています。取組をして安定してくるとどうしてもそこに危機があると。もううちは一生懸命やっているんだからこれ以上やる必要はないんだという形で、どうも充実期こそ一番危ないんだというふうなこと、充実期だからこそ、活動の質を高めていかなきゃいけないということが課題であるということもまとめで指摘させていただきました。
 それから3番目としまして、教師の意識変容ということですが、先ほど新しい同僚という話をしましたけど、新しい同僚とは言うんですけど、多くの学校の先生方は、やはり地域のボランティアの人を教師の補助者、サポーターと考えているというのが現状なんじゃないか。パートナーというよりも支援してくれるサポーターなんだという意識がまだまだ根強いんじゃないかなと思っています。
 このように見てみると学校に関わる、これは私も今は岡山大学で教員養成に携わっていますが、教員養成の段階で地域の人たちをサポーターじゃなくて、パートナーだという理解もこれからの教師にとって大切な点なんじゃないかと思っています。
 それから4番目、双方向性のある取組が学校・地域づくりを促すということですけど、学校・家庭・地域の連携といいますと、どうしても地域から学校へ、大人から子供への支援というものに偏ってしまうという傾向にあります。今、学校が困っているから助けてあげなきゃいけないんだ。しかし、私はその反対のベクトルというのも大切なんじゃないかと思います。地域の中で子供たちに出番や役割を積極的に設けて、そうした活動を子供たちがやったことをしっかり褒めてあげる、活動を承認していくという学校から地域へのベクトルも含んだ取組を展開していくということも大切なんじゃないかと思います。これは先ほど部会長の明石先生がおっしゃっていましたけど、こうした中高生が地域で取り組むことによって、しっかりそれを我々が場を設けて褒めるということによって、中高生にとっての自己肯定感や自己有用感にもつながっていくんじゃないかと思います。双方向性のある取組が大切だと。
 ただ、学校・家庭・地域のリンクからいうと支援本部のねらいとしてあげられているのは、1として学校教育活動の充実が上げられているんですが、どうも2や3のねらいが後回しにされているんじゃないかなと。どうも1に偏った展開がされているんじゃないか。学校が今、困っているからという1のねらいについては随分成果を上げているんじゃないかと思うわけですけど、こうした2や3のねらいを高めていくことも学校づくりと地域づくりという点からは必要なんじゃないかなと思っています。
 駆け足で説明しましたけど、以上で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

【明石部会長】
 熊谷委員、御丁寧な説明ありがとうございました。それでは、本日は第1回の会議です。皆さんの自己紹介も併せまして、各委員から御意見を頂きたいと思います。時間の都合上、大体3分以内で、先ほどの事務方の説明と熊谷委員の説明に関する質問も同時にお願いできればと思っております。

【平岩委員】
 私は放課後NPOアフタースクールという特定非営利活動法人で活動しておりまして、小学校の放課後に放課後子供教室だけをやることもありますし、一体型と呼ばれるものをやることもあります。その中で、市民先生と呼んでおりますけれども、いろいろな市民が放課後に先生としてきてくれるという仕組みがあります。私どものコーディネーターが、いろいろな市民の方を集めてきております。
 子供の活動の中でどういうのがいいのかなといろいろ考えていると、子供たちのやりたいことを形にしていくというのが非常にうまくいくように感じています。アフタースクールにはリクエストボックスという箱がありまして、そこにいろいろなリクエストが日々入ります。例えば、小学校2年生の女の子が「お母さんになりたい」というリクエストを書いてくれました。近くの保育園に行き、事情を話したところ、喜んで受け入れてくれました。その子が保育園で赤ちゃんの世話をしてきて、大満足で帰ってきました。
 あるいは男の子たちから「家を建てたい」というリクエストが来て、建築屋や大工に頼みに行くわけです。その中で学んだのは、「子供たちのやりたいことを一緒にかなえましょう」ということほど、地域を巻き込むことはないんだなということです。いろいろな市民先生にお願いするときにも、「子供たちがこういうことをやりたいと言っているんです」という口説き文句以上にきくのはないんだなと思います。
 良いコーディネーターは子供たちの声を拾って、それをかなえていく人だといつも意識してやっていますので、是非この部会でも良いコーディネーターはどういうコーディネーターかなと皆さんと御一緒に考えていければいいと思っております。

【明石部会長】
 ありがとうございました。平岩委員、市民先生というのはどういう形で募集をするんでしょうか。それは地域本部の機能なのか、コミュニティ・スクールの機能なのか、放課後の場合は市民先生をお願いしますよね。どういう仕組みで募集を募っているんでしょうか。

【平岩委員】
 我々は学校支援地域本部のような機能であると思うんですが、我々NPOとしてお願いしに行ってやってもらいます。どうやって探すんですかとよく聞かれるんですが、これは完全に人づてでして、人づてにかなうものはないんです。人材バンクのようなものをネットで作ってと考えたこともあったんですけど、いま一つだなという印象があります。
 ですから、新しい地域で活動するときには民生委員の方や、JCの方や、あとPTAの方など、いろいろな方に御挨拶に行き、いかにこれを広げていけるかというのが我々の役割です。自分たちはこの活動しかしないなどとやりたいことを特化しないように気を付けていて、コーディネーターはいろいろな市民先生を幅広く集める係ということを日頃は意識して活動しています。

【明石部会長】
 ありがとうございました。そうしますと、コーディネーターの役割をNPOが担う場合もできるし、学校支援地域本部ができる場合もあるというのですね。学校支援地域本部は意外と公的なもので、NPOは民間じゃないですか。どちらの方向に行けばいいんでしょうか。

【平岩委員】
 今の御質問には、私がアメリカでアフタースクールを初めて見に行ったときですが、同じような質問を現地でした経験を思い出しました。「何でアフタースクールをNPOがやるんですか?」と聞いたら、「日本ではNPOがやらなかったら誰がやるんだ?」と聞かれまして、「行政や株式会社がやることになると思う」と答えました。そうしたら「行政や株式会社がやったらどうなるんだ?」と。「行政の方がやるとどうしても日本人の場合は急にやってくれみたいな感じになり、株式会社がやると地域を巻き込むのがうまくいかなくなりそうだ」と。結局「だから、NPOがやるんだ」という話になりました。NPOは人を巻き込む、ボランタリーな気持ちを呼び起こして巻き込むというのが本分なんです。
 ですから、学校支援地域本部がやってもかまわないとは思うんですが、いかに人の協力を喚起できる組織であるかというのが非常に重要だと思っていて、公的な色彩が濃くなればなるほど、日本の場合はどうしても「じゃあやってくださいよ」となるので、そうならない性格付けをしていくのが重要かなと思います。

【明石部会長】
 ありがとうございました。ほかに何かいろいろな観点がありましたら、お願いします。今日は最初ですから自由な御発言をいただければと思います。

【松田副部会長】
 副部会長なので何か切り出しにくかったんですけれども、お話を伺っていまして非常に方向性としての本当に確からしさというものがいろいろなところから伺えるなと思って伺ったんですけれども、一方で、まず基本的な方向性、理念の整理というのはもう少し必要なんだなというのを少し感じました。といいますのは、一つは例えば協働というものが地域を形作っていくという、そこまで範域を広げて考えていきたいといったときに、ややもしますとイメージでお話しいたしますと、要するに学校を支援するということがあって、それは子供たちの育ちを支援しているということになると思うんですけれども、その活動に地域の方が携われることによって、いわばネットワークが構成されて、それがその地域につながっていくというようなイメージというのがまず大きいように思うんです。
 ところが、地域の方々がその学校につながっていくということは、学びの共有とかラーニングエクスチェンジとかラーニングコネクションと言うんでしょうか、学校の子供たちの学びと地域の生涯学習という学びがいろいろな形で結合し、交換され合っていくということで、全体的には学びを通じた各人それぞれのフェーズでの育ち、あるいは発展というものが生まれてくるという話になると思うんです。
 ですので、一体この協働というものが誰にとってのあるいはどのようなつながりにおいての何を目指すものなのかというものは、一旦もう少し整理が必要なのかなとちょっと思いました。
 それとそこで恐らく具体的な活動として出てくるのは、ほとんどの場合は協働ですからチームアプローチという書かれ方になっていくと思うんですけれども、例えば先ほど熊谷委員のお話からも学校教員の意識ということがよく話題になるわけですけれども、意識の部分もそうなんですが、具体的にチームでアプローチをしていくにはそれ特有の資質や能力のようなものがあって、このチームアプローチ力は例えば教員ですとつながる力という面とつなげる力という面があるだとか、様々に具体的な力を必要とするような関わり合い方でもあると思うんです。
 後段で養成研修確保というような人材の議論も出てきますし、今のコーディネーターの話もそうなんですけれども、そういう人が人とつながり合っていくときの具体的な力の育成とか、その場作りというものを具体的にどんなふうに考えていくかということも一つあるんだなとちょっと思ったというところです。

【明石部会長】
 ありがとうございました。生重委員。

【生重委員】
 先ほど途中退席した井出委員とともに杉並区でずっと活動してまいりまして、おまけに私は学校支援地域本部でPTA会長を10年やっていたので地域の人間だったはずなんですけど、地域の限界を非常に感じておりまして、NPOにいたしました。
 先ほど井出委員が言っていた地域の教育力の濃淡、優秀な人材が集中して住んでいるようなエリアほど個人主義の最たるところがありまして、自分の子供が所属しているときだけ参加され、御自身のお子さんが地域から離れて高校、大学に行かれると参加されなくなってしまうということが井出委員から与えられているテーマで、その濃淡をどうするのか。下町系の阿波(あわ)踊りをやっているところとか七夕をやっているところの方が全然地域のまちと一緒なんです。祭りがあり、寺があり、神社があり、病院があり、みんながつながり一つの地域が形成されていて、子供のためにやるよと。ちょっとだけ黙っていてもらえませんかと言ったら、ぶつぶつ言いながらも黙っていてくれるんです。
 先ほど熊谷委員が言っていた、子供を育てるためには失敗しようが自分たちで企画して一生懸命やるんだというところをいかに地域の大人が認めるか。例えば、祭りなど伝統的なものがずっとあり、それを継承して大人から受け取るものがあるかという、その両方ができているところの方が、「うちの子は関係ないんだけどね」と言いながらも、地域で参画し、文化度の高いものから草むしりまでやってくれる状況が生まれている事例もあります。
 杉並区のまちの特色はそういう線路が走っている沿線エリアで全く地域住民の特色が違うところがありますので、恐らくこのような状況は横浜にもあり、小平にもあり、東京中の課題であります。その課題は他県でもたくさん聞きますし、それぞれが持っている悩みというのと共通している部分があるなと感じています。
 学校支援地域本部に15年以上携わり、文部科学省の研究などにも携わってきましたので、コーディネーターとしてのノウハウも蓄積でき、今まで育成のマニュアルなどをたくさん作らせていただいてきました。そこでさっきやっぱり発表のときにおっしゃっていた形骸化と満足で終わってしまわない次なるものなんです。ここまででできたなんて学校に関わったり、子供に関わったり、我々が社会教育側から学び続けるときに完成したという形はあり得ないんです。それを完成したと思えるずうずうしいところを何とかしなきゃいけないし、それと新しい校長先生によって変わっていくというのは私も何遍も見てきていますが、それはもう話すいとまがないぐらい拒絶をする学校経営者がいらした不幸なパターンも見ていますが、そうじゃない校長先生の方が圧倒的に多くて、一番失敗するパターンは今までうちはずっとこうしてきました、だから、新しい校長先生もそれを理解して続けてくれというんです。そうじゃないです。まずその校長先生がどんな学校教育を実践、実現していきたいのか。こういう経営ビジョンを持っていらして、それに対してどんなアプローチをかけたいと思われるのかということを共有化していくことをしていないんです。そうだと先生と整合性を合わせながら、これはこういう思いで地域が続けてまいりましたとか、校長先生が今度こういうところに力を強めていきたい、子供たちにこういうことを提供していきたいと思われるんだったら、こういう結び付き方がありますよねと一緒になってやっていく。だって、初めてその地にいらした校長にしてみたら、人的ネットワークがあるわけでもないし、ということはいかに校長先生も含めてやりたいことをみんなチームとして教育実践していける場を作るか何だから、コミュニケーションが安心した途端に日本人はあうんの呼吸とか目を見たら分かるとかついたくさんしゃべらないことが美徳と考えがちなんですが、そこは面倒くさがらずにきちんと一からもう一度コミュニケーションすることってすごく重要で、学校経営者としていらした方のいかにやりたいことを実践、実現できる場になって、だって、子供たちに与えたいものにそんなに大きく変わるものはないんですよ。付けさせていきたい力の手法が違うだけで、そこをうまく話し合っていける場を作る。だから、年に一回先生全員と職員もPTAも学校支援もコミュニティ・スクールもみんな腹を割って全員で話すワールドカフェをやろうよとか、そういうことをしていくことで意外と近くにいるのに知らなかった一面が見えてきたりするんですね。
 労を惜しまないというのが私は一番大事なことで、平岩委員もおっしゃっていましたが、人材バンクなども私も無駄だと思っていまして、人と人とのつながり、きずな、そして、成功して失敗したときにも、いや、ここをこうすればよかったねと忌憚(きたん)なく話し合える、そういう年長者。そういう方たちをいかに私たちの周りにそれを作るかということが重要なんだと、それをみんなが分け合える場になっているか、学校ごとにうちの講師だから誰にもあげないというんではなく、すごく良かったから隣にも行ってと言ってあげられるような状況を作るかというのが大事なんじゃないかなと。
 この話合いの場を通じて、私は両方の立場から委員に参加させていただくことになりますので、杉並区だけではなく全国のコミュニティ・スクールの熱い思いを抱えてやっていらっしゃる方や、学校支援の地域の方たちの思いをうまくつなげてより良いものになるようにしたいと思っています。

【明石部会長】
 ありがとうございました。永山委員、今の発言を受けて校長が変われば学校も変わるとかという。

【永山委員】
 全くそのとおりだと私も思います。今までの皆さんの話を自分の学校、今まで私が経験した学校又は地域を想像しながら聞いていまして、本当にそうだなと思いました。
 私たち教員も中にいるものですからなかなかそういう声を外から聞くことがとても大事で、私も反省する日々です。私は副校長を6年やって校長10年目です。管理職を16年やっている中で本当に感じていることがあって、それは地域の方々といろいろお付き合いをさせていただいているんですけれども、やはり人情の世界だなというのがあるんですね。
 いろいろな制度はもちろんありますし、その制度に沿ってやっていくんですけれども、最終的なところでは人と人との人間関係が大きくものを言ったりします。本校でもいろいろな行事、子供たちを巻き込んだ行事をやっていますけれども、実はどうしてその行事が決まったかというと、何かの行事の後に反省会をやります。その反省会の中で話題が出て、それをやろうといって実は今度の運営委員会にかけようという人と人とのちょっとしたことからいろいろなことが決まってくるのが現状です。
 本校は1,080人子供がいます。31学級あり、しかも幼稚園も併設していますので、1,200人の子供たちを抱えています。地域の皆さんも学校に対する期待がとても大きくて、私は学校安全を専門にやっていますので、防災をモデルにした地域との関わりで本校はやっています。
 地域の防災意識もとても高いので防災又は安全教育を突き詰めていくと、一番初めは挨拶に行き着くんです。ですから、地域の方たちと挨拶しようというところから全てが本校ではスタートしているんです。地域に90人ぐらいのボランティアの方々が青いジャンパーを着て、登下校のときに通学路に立ってもらって、そして、子供たちに挨拶をする。子供たちもおじさん、おばさんの顔を覚えて、そのおじさん、おばさんの人たちが実は地域運営学校の協議会のメンバーだったり、学校評価委員会のメンバーだったり、そういう挨拶運動から始まって、いろいろなところで子供たちが地域でつながっている。
 先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、地域の方たちも子供から元気をもらえるというのは本当によく言っています。中には全盲の方、全く目の見えない方が青いジャンパーを着て、正門の前につえを突いて立っているんです。そういうところから始まっています。ただ、課題もたくさんあり、例えば、世田谷区の場合は組織がたくさんあって、地域の方自身が全然分かっていなくて地域運営学校協議会があります。学校関係者評価委員会があります。学校評議員がいます。そのほかに学校協議会があります。そのほかにおやじの会、PTA、コーディネーターの方がいて、会合をやっていくと自分はどの会合に出ているんだか本人が分からないようなのが実態なんです。同一人物が複数の会議に所属していたり、中には俺たちはもともと昔からこういうことをやっているんだと、何とか協議会とか知らないけれども、俺たちは俺たちでやるんだという方もいらっしゃいます。
 ですから、複雑になっているものをどう調整していくかというのが本校の場合は課題で、これが先ほどから話があります地域本部というんですか、そういうのが今日話題になっているのでとても私も勉強になっています。これからもいろいろとこの会を通して学校現場をまた見つめ直していければと思います。ありがとうございました。

【明石部会長】
 ありがとうございました。今、永山委員からたくさんの組織の問題点がでました。当然この中で検討していかなければと思っているんです。特に人口が3万を切ったところはみんな同じ顔ぶれで全然話が進んでいかないということもあり得るのです。今度この部会と合同部会で地域本部とCSをやる場合の組織のありようをどこかで検討していきたいと思っております。
 それでは松浦委員。多分ここの中で一番悩んでいるのがPTAだと思いますよね、昭和24年から頑張ってきたんだけども、なぜPTAは頑張っているのに地域本部が必要ですかという意見は出ませんかね。

【松浦委員】
 そうですね、保護者と地域は意外とつながっているようで壁があります。それは地域は地域で動いているというところが年代の壁もあるんですけれども、そこの考え方、コーディネーターという言葉も知らなければ、学校支援とかそういうコミュニティ・スクールという言葉も御存じない。地域が動いているから学校は地域が守っていく。保護者と地域が一体で守るところはまだ周りに分離されているところが多くて、そこが問題でもあるかなと思っていたんですけれども、先ほど発表してくださった中で大人の人間は必要とされることを必要とするというのは保護者であり、地域のおじさん、おばあちゃん。でも、本当に同じことが言えるなと思って伺っておりました。
 大人同士の歯車を合わせることが本当に必要なのではないかと思っております。PTAは学校に入っていくのになかなか敷居が高かったりするので、校長先生が変わればというところのお話も本当にうなずきながら聞かせていただいていたんですけれども、やっぱり保護者も地域も大人たちが育つ場がなければいけない。大人たちが育つことが子供たちにつながっていくのかなと思ってお話を伺っておりましたので、とても勉強になるばかりで、うなずきながら、済みません、聞いてばかりでメモばかりとっておりましたので、ちょっと考えがまとまっていないですけれども、とてもどのお話も共感、とてもうなずいておりました。

【明石部会長】
 ありがとうございました。熊谷委員が提案した大人同士の歯車というのは非常に大事なキー概念かと思っております。組織がたくさんあり歯車をうまくかみ合わせないと、せっかくいい人材がいる中で分散したらもったいと思います。大人の歯車のコーディネートがうまい青年会議所の飯塚委員、何か御意見ありましたら。

【飯塚委員】
 ありがとうございます。皆様御存じだと思うんですけれども、JCと言われる青年会議所の団体でございます。我々は全国に3万5,000名、北は北海道、南は沖縄まで697、各地会員会議所で構成されている組織でございまして、私はこのように697の上層部、日本青年会議所というところで、私は土曜授業推進支援という形でいろいろ活動をさせていただいているところでございます。
 いろいろお話を聞かせていただいて、地域コーディネーターとかそういったところが、我々が担える役割というのはまさにそこの部分なのかなというところは意見を聞かせていただいて感じておりました。
 日本青年会議所は様々なプログラムを、各地会員会議所は青少年の育成事業や様々な分野で5年先、10年先の子供たちのために一生懸命頑張っている組織でございますので、そういったところで何かお役に立てるのではないのかなという思いで今、聞かせていただいておりました。以上でございます。

【明石部会長】
 ありがとうございました。学校支援地域本部とかCSは教育委員会関係ですが首長部局はこういう動きをどう見ているか。関委員、民生委員とか児童民生委員とかを所管する首長部局では子育てに関する組織はたくさんある中で、この二つの組織をどう見ていらっしゃるかを含めて御意見あればお願いします。

【関委員】
 具体的に教育に対しての首長部局側の関わりというところまでは、正直まだ余り広がっていないのが実際かなと思うんですが、特に最近思いますのは防災教育であったり、あるいは我々も今、町を挙げてユネスコスクールなんかに取り組ませていただいておるんですけれども、環境教育であったりあるいは国際間の問題であったり、そういう側面では学校と行政の様々なセクションがつながっていく機会は非常に増えてきているんではないかなと思います。
 私も市民部長で3年目ですが、一番初めの頃は例えば防災の担当課と話をしておりましても、学校とか公民館とか社会教育とのつながりはほとんどなかったんですけれども、実際この2年ぐらいの中でそれがかなりつながらなければ、子供に対しても大人に対しても成果が生まれないということを今、理解してきたような気もいたします。
 この辺はそれ以上に切り口は何もないんですが、ちょっと一、二点だけ先に熊谷委員の方でお話しさせていただいたらと思うんですが、一つは双方向性のある取組が学校、地域作りを促すという話をされたんですけれども、我々も学校支援地域本部に関わった初めの頃は学校を何とか支援していく、学校のために少しでも力がかせたらという感覚があったような気がします。先般子供たちが非常にうれしいことを言ってくれたんですけれども、地域で我々は環境美化活動、地域の花いっぱい運動なんかをしているんですけれども、今までずっと子供教室とか学校支援地域本部で関わってきた子供たち、今も中学生になって生徒会の役員なんかもしている。
 その中で、地域で花いっぱい運動をやっているんだから、私たちも協力をしようじゃないかと、子供が子供に呼びかけてくれたわけなんです。本当に50人ほど、子供たちが自主的に花の苗を立てる作業に加わってくれたんですけれども、その中で子供らは非常に楽しそうな顔で関わってくれておったのは印象に残っています。今まではやらされて、地域のために関わっておったという子供が、本当にみんなが自己肯定感を持って、自らがそこに関わっていることに喜びを感じてくれているような子供の姿を見て、大分学校支援地域本部とかこの事業の成果が上がってきたのかなというのをつい先日感じました。
 これからもいろいろ皆さんの御意見を聞いて、勉強させていただけたらと思っています。

【明石部会長】
 ありがとうございました。浦崎委員、一般的には地域から遊離するのが高校生。先ほどの生重委員のように保護者も小中学校までは熱心だけど、高校に行くともういいでしょうとなりがちなんですけれども、高校の立場からこの学校支援地域本部とかCSの問題について何か御意見ありましたら。

【浦崎委員】
 高校ほど地域とつながらなければいけない年代はないと思っています。なぜならば社会に一番近い年代だからです。
 進学校は今、時代に一番逆噴射しているような面もございますけれども、従来は社会とつながっているような余裕はない。それよりも目先の課題をやらせた方が点数につながるという路線で今まで動いてきました。ところが、それで本当に成り立つのか疑問を持ちまして、今、全く逆のアプローチを行っております。むしろ高校生を社会とつなげてやる。具体的に申しますとまちには自分のまちをよくしようと思って頑張っていらっしゃる大人がいっぱいおられます。そういった地域の課題を解決している現場に高校生を放り込むと高校生はすごく元気になるんですね。魅力的なロールモデルが見つかるので、ああ、そうか、大人になるというのはとても楽しみなことなんだと思うわけです。
 一方、大人も元気になるんです。最近の若い者はと嘆く大人は多いですが、課題解決の場に来る高校生はすごく素直で、こういう子たちだったら将来を託せるよね、一緒にやっていきたいよねとなっていくわけです。このように、双方が出会うことによってお互いがすごく元気になれるという経験をさせていただいております。それで役所、首長部局が地域の情報をいっぱい持っていますから、高校生の年代ですと首長部局との関わりがすごく重要になってきます。
 また、可児市では今、民間の方で、30代の方が一生懸命動いておられます。それは、一つは小さい子供を抱えていて、将来の教育環境に非常に不安がある。だけど、こういう活動をすれば、高校生はとてもいい方向に伸びていくことが分かり、今自分たちがやっていることは子供たちの将来の教育環境作りなんだと実感できる点が非常に大きいのです。
 それから、生徒たちのためにありがとうございますと申し上げると、違うんですね。いや、ここにいるのは今は高校生かもしれないけれども、将来まちをよくしていく仲間なんだ、だから、今、一緒になって頑張っているんだと答えていただけるのです。高校生を社会とつなげることによって、本当に高校生の将来も見えてくるし、地域の将来も見えてくる。ですから、高校生こそ地域とのつながりというのは本当に大切であるという問題提起をさせていただきたいと思っております。ありがとうございます。

【明石部会長】
 非常に貴重な意見をありがとうございました。浅原委員、山口県、非常に頑張っていただいているんですけれども、頑張っているが故に何が課題かというのがもし見えていらしたらお願いいたします。

【浅原委員】
 その前に山口県の状況を少しお話しさせていただきます。いろいろと本県の取組について御紹介いただきましたけれども、まず、コミュニティ・スクールの話です。山口県の県民性、地域性に関係していると思うのですが、以前、中学校が荒れている時期に地域の方々の中には「何か学校に協力をしたいけれども、どうやって協力をしたらいいか分からない。」というような思いを持っておられる方がたくさんおられました。そういう中で学校運営協議会、いわゆるコミュニティ・スクールという制度が導入されたわけです。山口県では今年の4月1日現在で、コミュニティ・スクールの設置率は小中学校で90%を超えました。しかし、質の高いコミュニティ・スクールもあるし、まだ設置したばかりという学校もあります。今から質を高めていきたいと思っています。今の設置率になるまでには、いろいろな苦労やいろいろ困難がありましたが、それらを話し出すと大変長いので省略します。
山口県のコミュニティ・スクールは三つの柱を用意して考えています。
 一つは「学校支援」です。要するに地域の方々からまさに学校支援地域本部事業のように、どのように地域の方が学校を支援してくれるかということ。例えば、ゲストティーチャーであるとか学習補助であるとかいろいろな取組がまず一つの柱。
 それからもう一つの柱は「学校運営」です。例えば学校評価にコミュニティ・スクールの運営協議会の委員が関わってくれるとか、あるいはある中学校では月に1回は学校運営協議会の人が授業を見て、そして授業後にその授業をした教員と一緒に話合いをして、次の改善に生かしていくとかいう取組も進めています。要するに学校運営をどのように進めていくかということに対して学校運営協議会が関わってくるのです。
 そして、先ほど、双方向という話がありましたけども、3番目の柱として、学校が地域に支援のお願いをするだけではなくて、学校が地域に対してどのような貢献ができるかという「地域貢献」を大きな特徴の一つとして、山口県のコミュニティ・スクールは進めていきたいと考えており、いろいろな取組を行っています。
 取組が進んでいるところ、進んでいないところがあるのですけれども、例えば取組が進んでいるある中学校では、学校に入ると廊下の壁に生徒会が自主的に作ったキャッチフレーズが掲げてあります。そのキャッチフレーズは「15歳は地域の担い手」というようなもので、要するにボランティアであるとか、あるいは高齢者への弁当配達であるとか、いろいろなことに学校から出ていく、学校が地域のために何ができるかという取組を進めているのです。
 そういう形で、今、コミュニティ・スクールは進んでいますけれども、これを充実させていきたいということが一つ。それから、学校・家庭・地域の連携ということでお話しすれば、平成22年度までは山口県は学校支援地域本部と放課後子供プラン、学校教育基盤形成事業という三つの事業をそれぞればらばらに行っていました。例えば子供の放課後の活動支援であれば学び場を作るとか、あるいは自然体験をさせるとか、あるいは学校支援であれば部活動の支援であるとか、登下校の見守りであるとか、あるいは家庭教育支援であれば子育て講座あるいは相談、いろいろな訪問活動を行うとか、それぞればらばらにやっていました。しかし、先ほどから話があるように、小学校までの家庭教育とか、あるいは放課後子供教室等も併せて考えると、地域も重なっていますし、それぞれの取組のキーマンとなる人間というのは重なっています。どの取組にも同じ方が出てこられている状況がありました。そういうことから、もう少し整理ができないか、もう少し子供たちの教育を地域ぐるみで考えていけるような組織ができないかと考え、教育委員会の中でプロジェクトチームを立ち上げて、検討を行い、「地域協育ネット」という組織を作ろうということになりました。これはおおむね中学校区を一まとまりとして、先ほど申した三つの事業を総合的に進めていくという組織です。
 熊谷委員からお話がありましたけれども、三つの事業を合わせてやっていますので、いろいろな活動のパターン、組織のパターンがあります。例えば地域に昔からあった青少年健全育成協議会がその活動の中心になるようなパターンがあるし、コミュニティ・スクールの学校運営協議会が中心になるようなパターンもあるし、それから、地域の公民館が拠点となってやっていくようなパターンもあります。どういうパターンでもいいのですが、その地域に合った形で進めていけばよいと思っています。
 本県の実態としてはコミュニティ・スクールが進んできていますので、学校運営協議会を中心とした学校拠点型のパターンが増えています。山口県では、今年度から「コミュニティ・スクール」と「地域協育ネット」を一体化して進める「やまぐち型地域連携教育」を推進することとしています。今年からの取組ですから、今からそれを充実させていくことで、「地域教育力日本一」を目指していこうと考えております。知事もこの取組に大変興味を持っておられ、協力してくださっております。少し話が長くなりました。済みません。

【明石部会長】
 ありがとうございました。ちょっと時間が押していますけれども、あと牧野委員と竹原委員で申し訳ありませんけど、一人2分ずつでまず、竹原委員どうぞ。

【竹原委員】
 私はコミュニティ・スクールとして開校した新設校に併設されたコミュニティハウスという小さな公民館のような施設の館長を11年しています。また学校運営協議会の委員と平成20年度から始まった学校支援地域本部の事務局も兼ねています。
 大切にしているのは、パートナーになれるかどうかということです。下請や支援だけではなく、共に学校と地域を担い、子供の育ちを支援する大人としてパートナーになれるかということがとても大事であるということを考えて、今までも会議の持ち方ですとかコミュニケーションの仕方を工夫してきました。
 それから、双方向性ということでは、まずハードとして「場」があることが大きな強みなんですね。地域の核として、そこに地域の人が日常的に出入りすることがいざとなったときに強みになるし、地域をつなぐ力になる。そこでのコーディネートが大事だと思っています。中学生の存在そのものが地域に力を与えるという場面は皆さん御存じだと思います。先日コミュニティハウスで高齢者のみなさんがお茶を飲んでいて、横に中学生がいたときに、高齢者の方が「中学生と同じ空気を吸わせてくれてありがとう」と言われ驚きましたが、子供の存在は地域にとって宝であると改めて知りました。
 そのためにも、子供の育ちに関わるとき、大人も学ばなければいけないと思っています。地域の人も、情熱だけでは駄目ではないだろうかと思います。そこに学びがなければ、熱過ぎて学校にとっては迷惑な存在になってしまうのではないかと思っています。
 そして教員の養成とか、教員の資質向上にも関わりますが、教員は今まで管理職になるまで地域と学校ということをそんなに深く勉強してきていないと思うんですね。管理職になってからでは遅いので、教員養成段階から学び、そして、教員になってからも学び続けることが大切ですね。学校を開くというのは単に授業参観をすることではなくて、そういうことを含めて、学校と地域がよくコミュニケーションを取り、共にパートナーになることだと思います。大人が変われば学校とまちの関係も変わる、というのは当然の話だと考えています。

【明石部会長】
 ありがとうございました。では、最後、牧野委員、お願いいたします。

【牧野委員】
 私、今、大学で生涯学習を担当しております。今日は、どんなお話を伺えるかとても楽しみにして参りました。皆さんのお話を伺っていまして、基本的にはほとんど賛成で異論ないわけですけれども、私たちの過去のいろいろな経験や研究からも、例えばソーシャル・キャピタルを高めることによって、その地域の教育力が高まっていく、しかも学校もより教育力を高めていくといったこと、つまり先ほど熊谷委員のおっしゃったようなことも理解しているつもりでおりましたし、更に生涯学習や社会教育という観点からも、地域の人々が学んでいくことによって生活満足度を高めていくといったことが分かっています。
 しかし、地域の強い教育力や住民の高い生活満足度が学びによって直接得られるということではなくて、学ぶことによって住民の間で相互承認関係が作られたり、ソーシャル・キャピタルの形成が進んだりすることによって、生活満足度が高まっていく、地域が安定していくといったことが分かっているわけです。学びが直接、人々の生活満足度を高めるわけではなく、また地域の教育力を高めるわけでもなくて、ある種の媒介的な役割を担っているということなのです。
 今日の議論では、コミュニティ・スクールを基本にした地域作りということがとてもよく分かるわけですけれども、そのもう一面で、実は私は高齢社会の問題ですとか地方創生の問題ともちょっと関わって動いているのですけれども、いろいろな地域に関わっていますと、先ほど高校生の話もありましたが、やはり子供たちを大人がケアしつつ、関わりを持つということだけではなくて、むしろ少子化の時代にあって、地域のフルメンバーとして子供を迎え入れていく必要がある地域はたくさんあると受けとめています。しかも今の小学生の約65パーセントは、将来、現在存在しない仕事に就くようになるだろうと言われている時代ですから、その意味では従来のような学校を中心にした教育の在り方だけではなくて、地域で子供たちを受け入れて、地域全体で子供の教育に関わっていく、子供をある意味でフルメンバーとして受け入れながら、子供の教育に関わるといったことも必要になってくると思います。その意味では、こうしたことをどう学校支援地域本部ですとか、コミュニティ・スクールを核にしながら考えていくのかということが、これから課題になってくるものと思っています。
 更にもう一つ、もう少しマクロな話をさせていただきますと、今回の諮問の一つに入っております「学校を核にした地方創生」という議論なのですが、それをどう考えるかといったことも、今後問われてくるだろうと思います。例えば今、国の方が地方創生、地域創生と盛んに言っていますが、その一方で例えば増田レポートのような報告書が出てきて、「農村たたみ」のようなものの組織化を促すような、ある意味では、地域のあきらめを引き起こす議論も出てきている。その場合の論理である「選択と集中」という問題は当然考えなければならないでしょうし、逆にどういう形で自律分散型の社会を作っていくのかといったことも考えなければいけない。こういう事態の中で、学校は一体どういう役割を果たせるのだろうかといったことを議論し直す必要もあるのではないかと思います。
 例えば、いま、2060年には、ということを政府が言い始めているわけですけれども、そのときに人口が8,700万人ぐらいになると予測されている。政府はそれを1億人に保ちたいといいます。そうであれば、当然、人口基盤をどうするかという議論になってきて、子供を産んでほしいという議論になります。そのとき、小さい学校で、地域がしっかりしているところの方が、子供を産み育てやすいのかどうかという議論もしなければいけないと思います。その意味では、単に子供と教育をどうするかという議論だけではなくて、社会の構造をどう考えていくのかということの中に、学校をどう位置付けながら、どういう社会を作っていくのかという議論を展開していく必要があると思っています。そうしたことについても議論できるといいと考えています。
 その一つの施策として、コミュニティ・スクールですとか学校支援地域本部というものが位置付いてきて、それらが地域を作り直していくのだという議論ができると、とても有意義なものになるのではないかと感じています。

【明石部会長】
 ありがとうございました。今、言われましたように地域が変わるんですよ、学び方が変わるんですよ。そういう時代背景の中でこれからの学校と地域、地域と家庭の問題を議論していきたいと思います。今日は最初ですから各委員からいろいろな意見を頂きました。
 これで本日の用意したスケジュールを終わりたいと思います。では、事務局の方から今後の予定をお願いします。

【鍋島地域・学校支援推進室長】
 冒頭、谷合課長からも御紹介しましたが、資料7に審議スケジュールがございます。
 次回は6月5日、金曜日、13時30分から16時、地域とともにある学校の在り方に関する作業部会と合同部会という形で行ってまいりたいと思います。これからの学校支援地域本部の在り方という話もありますし、コミュニティ・スクールや地域支援地域本部をどのように一緒にやっていくのかなど、様々御意見を頂きながら進めてまいりたいと思います。以上です。

【明石部会長】
 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。本当にありがとうございました。

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