資料1 第3回今後の放課後等の教育支援の在り方に関するワーキンググループにおける主な意見(案)

日時

平成26年1月17日(金曜日)14時00分~16時00分

場所

文部科学省 3F2特別会議室

主な意見

◆論点:実社会で役立つ力の育成に向けた土曜日の教育支援の在り方について

(1)学校や土曜日の教育活動への企業・団体の参画・連携の在り方
1【学校や教育活動に地域・企業が参画する仕組み】
○ 東京都では、平成17年度より、企業と学校の連携を進める仕組みづくりの一つとして、「学校と企業、NPO等との連携に取り組む地域教育推進ネットワーク東京都協議会」を設けている。

○ 大阪府大東市では、「学力」に着目した取組として、市と公益社団法人全国学習塾協会と連携している事例がある。特定の学習塾事業者と連携する話もあったが、自主基準を設けて講師の指導技術検定等を行いながら、客観的な物差しをつくっている全国学習塾協会に打診があり、講師は多数の学習塾の中から協会で選定して派遣し、教材も協会の指導用の教科書を利用している。

○ パナソニックでは、次世代育成支援の取組として、1.直接学校へ出向いての出前授業、2.校外での学習体験、3.施設・ショールーム・工場等への子供たちの受入れを実施しており、自社のリソースを生かした形で従業員が参画しながら、社会総がかりの教育のうち、企業の役割として貢献したい考えをもっている。また、学校への直接的な教育支援の中でも、教材提供型のものもあれば、講師による出前授業もある。

○ 講師となる社員は多様な職種、事業所から登録されており、半日程度の研修を受けてもらい、自社で独自開発した教材を学習し、それを使って学校へ出向いている。

○ 経団連の教育と企業の連携ワーキングの座長をしたが、企業は教育支援を一生懸命やっているが、個々の活動にとどまっており、なかなか点が線や面で見えてこない課題がある。このため、経団連として、2年前に企業の教育支援プログラムのポータルサイトを開設したが、このポータルサイト自体が認知されないという課題もある。

○ 諸外国の動きでは、学校だけでなく、放課後等も組み合わせて教育の生産性をどう高めるかという議論がある。また、格差の縮小という視点も強く、経済的に恵まれた子供だけが塾に通えることをなくしていこうという視点は強調されている。

○ イギリスでは、拡大学校という形で、学校を放課後も活用し多様な団体と連携して様々な学習機会を提供する仕組みや、親が学校理事会の理事として意見を言う仕組みがあるが、日本ではそのような仕組みが十分でない。

○ 拡大学校では、学校の施設を最大限活用することで財政負担なく教育の質を高めたいという考えがある。学校の授業だけでなく、放課後や休暇も含めて、地域住民が利用でき、コミュニケーションが取れることによって、地域住民がもっと学校に協力的になり、多機能化していき、地域社会全体も高まっていく。

○ 日本でも、コミュニティ・スクールや学校支援地域本部が全国的に広がりを見せてきており、学校運営について地域やPTAが関わって話し合い、学校の教育活動に関わる仕組みが広がりつつある。

○ 拡大学校の考え方を受け入れるようなニーズを地域のエリアにもっと起こすことができたら、コミュニティ・スクールや学校支援の発展版として、子供たちの本来の多様なニーズを捉えた活動ができるのではないか。

 

2【土曜日の教育活動の位置づけと範囲】
○ 経団連等の取組と学校をつなぐことも重要だが、授業では難しくても、放課後の子供たちの居場所ではできる体験などもあり、例えば学童保育や児童館とつなぐということもあるのではないか。

○ パナソニックの事例では、学校への参画が主体になっており、児童館からの問合せもあるが、恐らくマッチングできていない。企業としては、今は従業員が平日の就業時間を使って出前授業を実施しているが、自分たちのスキルを社会貢献に生かすため、土曜日、日曜日に活動したい社員も増えており、多様な教育の場に参画する機会提供は増えていくように思う。

○ 土曜日を教員による授業とするのか、教育課程外の教育活動とするのかは、設置者の判断か。子供の育ちは学校の授業以外のところに多くあるともよく言われ、考え方を引き出すことや、遊びを通じた学びは非常に重要なので、設置者ごとの汎用性の高さを担保してほしい。

○ 土曜授業というと、従前のように土曜日授業を復活させるというイメージだけで捉えてしまう可能性があるので、多様な土曜日の教育活動のパターンをもう少し全国的にきちんと発信してほしい。

○ NPO法人コヂカラ・ニッポンの事例では、小学校6年生の総合的な学習の時間の授業を学校とNPOで連携して実施し、本来は中学校の授業に継続してほしかったが、中学校では引き継いでもらえず、卒業後も活動を希望する生徒をNPO単独で支援する形となった。

○ 学校を中心とした地域のぶつ切りをよく感じる。学校区という地域だけで閉じてしまうので、中学校になると全然つながらないことがある。前回、小中一貫校の話をしたが、市全体で取り組むという一方、各校区で個性を出すようにという話があり、結局何をやっているのか分からないということもあり、基本スタンスをしっかりすることが大事。

○ 企業側も学校の授業の時間だけとなると受入れも限られたスタンスとなってしまうので、広く地域教育にも関わっていくスタンスになってくれば、もっと踏み込んだ連携ができるのではないか。

○ PTAの持っている情報網も重要であり、学校を中心に見つつも、同時に地域をどう見ていくかが重要だと感じる。

 

3【コーディネート機能・中間支援機能の重要性】
○ 東京都では、平成22年度で約9割の小中学校が外部団体との連携を実践しているが、学校側の課題として「外部団体がどのような教育プログラムを持っているのか詳しい情報が分からない」、「事前打合せの時間の確保が難しい」という回答が50%以上あがっている。

○ そのため、東京都の協議会では、橋渡し機能への支援に注力しており、1.教育支援コーディネーターと教育支援プログラムを提供する企業、大学、NPO等が一堂に会する機会を設ける、2.教育支援コーディネーターの相互研さん(都内コーディネーターの情報共有、事例紹介の機会を年4回、区市町村コーディネーター研修会を年8回)、3.教育支援活動(学校やコーディネーターへの情報提供、都立高校での教育課程の一つに位置付けた職業的自立支援教育プログラム。平成25年度は69プログラムを33の会社・団体から提供)の体系的・計画的な導入を始めた。

○ イギリスには、エデュケーション・ビジネス・パートナーシップという組織が各地にあり、組織間のネットワークもある。また、組織の基準や助成金を国が出しており、コーディネートの質が高い組織には資金が入る仕組みがあり、日本でも参考になる。

○ 千葉県の行徳小学校の総合学習で実施したヒロタとの連携によるシューアイスの商品開発では、コーディネートしたNPOコヂカラ・ニッポンの役割は、子供の発想を企業の実利にもメリットがあるように運ぶこと。子供の発想をそのままビジネスに転換するのは難しいが、光っている原石をNPOが見つけ、ビジネスに転換できるよう通訳し、また逆に、難しいビジネス用語を子供に通訳する両者の橋渡しが重要。

○ コーディネーター同士の切磋琢磨(せっさたくま)した学び合いや事例を通じた学びなど、多様な学びをしながらコーディネーターの養成をしていくことが重要。

○ 学校と地域をつなげるコーディネーターの育成は多く実施されているが、東京都の事例のように地域だけでなく、民間企業やNPOのリソースの活用の仕方まで踏み込んだ育成がされているのはすばらしい。

 

(2)土曜日ならではの特有なプログラムの在り方
1【子供の主体性を引き出すプログラム】
○ 社会にはいろいろな体験事業があるが、多くが与えられたプログラムを子供がこなしているだけという印象があり、子供をお客さんとして迎えているプログラムが多い。

○ NPOコヂカラ・ニッポンでは、教育の目的を「子供が社会人として自立する」すなわち、「職業へのオーナーシップを持つ」ことに焦点を絞って活動しており、そのためには、1.持続力、2.向上心、3.貢献心が重要で、1.を養うには、「好きなことを続けられる環境」、2.を養うには「得意分野を優先してもいいということが許される環境」、3.を養うには「役に立つという経験をたくさんさせること」と考えている。

○ 日本では、学校や放課後はどういう場であるべきか、という考え方をしがちだが、諸外国では、むしろ自分が子供だったらどんな放課後を過ごしたいか、という視点から、子供に優しい町、子供がどこにでも行けるようなまちづくりなどが検討されている。

○ ドイツなどは、多世代の交流、自然にふれあう青少年農場、職業体験のための少年鉄道員、キッチン付きの小屋のある公園には公園おばさんが配置されている。また、図書館も子供の居場所として活用されているなど、多世代の様々なアイディアが活用されている。

○ 与えられたものをこなすのではなく、子供の主体性に重点を置いた考えは、諸外国でもなされており、例えばノルウェーでは、保育所の計画づくりに子供の意見を聞いて保育計画を立てると聞いている。

○ 児童クラブは指導員という呼び方をするが、子供は指導される、という受け身ではなく、子供が放課後等をつくる主体としての取組、体験を多くすることが、ひいては将来の市民社会をつくることにつながるのではないか。

○ 「子供の主体性」が重要なキーワードだと感じた。また、土曜日は子供たちがやりたいと思うことが少しずつ違うので、そうした個性や多様性があるものであってほしい。

○ 職業につながる学習としては、継続性が大事。子供が「何かになりたい」と思ったときに、そのためには継続して土曜日に毎週努力していけばかなうかもしれない、というモチベーションは大切。子供たちの個性や継続性を大事にし、「子供たちのやりたいことをできるのが土曜日」ということになってくると良い。

○ プログラムの計画、展開、評価のすべての段階に、子供たちを主体として位置付けていく考え方を、日本は今後大切にしていくべきだ。

○ イギリスでは、教員の人事や採用まで子供が意見を言って、どのような人を採るかに参画しているというのを聞いて驚いた。日本でも、教育支援やコーディネーターにどんな人が来てほしい、ということも子供に参画してもらう段階に来ているのではないか。

○ 教育は、空っぽのコップに水を注ぐように知識を加えていく側面と、子供が持っているものを引き出し、子供の心に火をつけていく側面の両面があると思う。学校教育でも両方やっているが、地域は後者の方に得意な部分があり、地域や企業の大人が、子供の心に火をつけていける仕組みを作っていけると良い。

○ 横浜市で9年間コミュニティ・ハウスの中で「土曜クラブ」をやっており、初めはプログラムを提供していたが、今は、子供が何をしたいか1年の計画を立ててもらい、三つの小学校から1年間、異年齢の子供が通ってきて皆で運営していく。地域の大人を講師として招いたり、中学生がサポートに入ったり、重層的な動きが加わりながら、自分たちで受付や設営、声かけをしつつ運営していくことにより、「土曜日は自分たちがつくっている」という感じになってくる。

○ 子供たちの姿をイメージしながら常にやっていかないと、ともすると大人の満足になってしまう活動なので、社会総がかりでやれる具体的なものが必要。

○ 実社会で役立つ力の育成という表現があるが、必ずしもすぐにこれを目標として設定するかという議論もある。重要なのはプログラムの多様性や幅広い体験であり、長い目で見て、子供たちの楽しみ、遊び、関心、試行錯誤を引き出しながら児童の参画を図っていく、そんな仕組みが必要ではないか。

 

2【学校の教育課程と連動した学習プログラム】
○ 東京都教育委員会として企業・NPO等にお願いしたいことは、1.学校内、教員だけでは難しい実社会の知識・経験に裏付けられたプログラムの提供、2.学校、教員の要望を踏まえ、単元の目標やねらいと合致したプログラムの充実であり、それが児童生徒の教育内容の豊かさにつながると思う。

○ 要望を橋渡しするコーディネーターと連携して、プログラムのパッケージがローカライズ、カスタマイズされることが、学校側にとっても効果が高く、企業側にも意義深いものとなる。

○ 土曜日の使い方として、学校教育でなければ社会教育で、という丸投げや縦割りは問題と感じる。例えば、学校週5日制の中で教科をこなす時間がなくなってきている現状が現場感覚としてあり、仮に総合学習の時間を減らさざるを得なくなる場合、土曜日に総合学習をまわす、というだけでなく、だからこそ土曜日に総合学習や平日の教育課程と社会教育とのリンクした内容を取り扱えれば、総合学習にとって非常に効果が大きくなるのではないか。

○ 民間側がもっているコンテンツや教材をどの単元とリンクできるか、それをうまく整理していけるかが大きなポイントではないか。

○ 学校支援地域本部などでは、地域が学校の教員のニーズを捉えて、小学校なら1年生から6年生まで、中学校1年生から3年生まで体系立てて、学校の教育課程も外の資源も両方意識した形で連携させていくということが可能になってきている。

○ 学校教育と社会教育の融合は非常に重要。例えば、教員時代に家庭科の授業で全高校生が市内の保育所に保育体験にいくものがあった。虐待とは何かなど小論文では大変立派なことを書く生徒も、実際、乳幼児のクラスに入ったときに、言うことを聞いてもらえない赤ちゃんと向き合って、泣いてしまう高校生がたくさんいる。

○ 生の体験、本物の体験を社会の中で経験していくこと、とりわけどうやっても思うようにならないことを発達段階ごとに積み上げていくことで、子供の育ちが体系化されていくのではないか。

 

3【企業のリソースを生かしたプログラム】
○ CSR目的の多様なプログラムもあるが、企業の本気度が100%にならないと子供自体も本気になりきれないのではないか。また、企業がCSR目的だけでなく、本業にプラスになっているプログラムが非常に重要。

○ パナソニックでは、企業のリソースを生かした形で、環境教育、キャリア教育、理科教育の3本柱で取り組んでいる。

○ 環境教育では、企業がどうやって環境配慮に取り組んでいるか、社員がどういう環境配慮をしながら仕事をしているか、という観点から独自開発した教材を使用し、出前授業と教材提供を併せて展開し、キャリア教育では、創業者の経営理念なども取り入れた教材を開発し、理科教育は、LEDを使った照明器具を手作りでつくっていく「あかりのエコ教室」プログラムを、LEDを製造している事業場が主体的に実施している。

○ こうした活動は国内だけでなく、グローバルにも展開しており、エコラーニングプログラムということで、ベトナム、マレーシア、中国などで国の教育庁と連携しながら展開している。

○ 企業財団によるフォーラムや○○全国大賞などの表彰、研究助成をしている先端技術研究者を講師に招き、小中学生にわかりやすく説明する「やさしい科学技術セミナー」なども良い。

○ 土曜日の場合、ショールームでの実験教室に、若手の講師・研究者にも来ていただき実験ラボなどもしているため、子供の来館も多く、実際に見て楽しむ、体験して楽しむ形で、楽しく理科が体験できるように工夫して展開している。

 

4【長期休暇等の考え方】
○ 諸外国では、長期休暇の在り方は、平日の在り方とは別建てで議論されることが多い。

○ 長期休暇のプログラムの在り方を別枠で考えるのは、とても重要な視点。

○ 放課後のアフタースクールだけで良いのかという点では、諸外国では、教育と福祉の合体ということで、朝の時間に着目した、ブレックファーストプログラムもやっている。

○ 「早寝早起き朝ごはん」運動は、小中高校生だけでなく、大学も取り組んでいる。

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