社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成25年5月8日(水曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省9階 生涯学習政策局会議室

3.議題

  1. 社会教育推進体制の在り方を検討する背景について
  2. 社会教育に関する人材の在り方について
  3. その他

4.議事録

【浅井座長】  定刻でございますので,これから第1回中央教育審議会生涯学習分科会社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループを始めさせていただきたいと思います。本日は,お忙しい中,お集まりいただきましてありがとうございます。
 私は,明石生涯学習分科会長の御指名がありまして,このワーキンググループの座長を務めさせていただきます浅井でございます。よろしくお願いいたします。
 昨夜,たまたまなんですけれども,御覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが,BSで,下村大臣が2時間にわたる番組に出られて,教育改革についてお話がありました。中身は大学教育のことですから,社会教育には全く関係ないといえば関係ないことなのかもしれませんけれども,現在の教育改革には,グローバリズムの中で,日本の国力がどんどん低下していくということへの危機感が背後にかなりあるということを感じました。
 社会教育自体は,グローバリズムから関係ないのかもしれませんけれども,やはり一人一人の人間,あるいは地域住民というのは,国力のもとになっているのだろうと思います。一方で,地域も恐らく今,一方ならぬ状況にありますし,また社会教育も,明日どうなるか分からない状況にございますので,これからの在り方をこのワーキンググループで検討していかなければならないんですけれども,そのときには,一人一人がお互いに協力し助け合うとともに,一人一人が力をつけて地域を作っていく,そのことを通して国を支えていくということが,それは昔のようなことで申し上げているのではなくて,常にチャレンジ精神をもって地域に参画する,意欲的な人間をどうやって作っていくのかということが問われているのかなと,昨日,テレビを見ていまして感じましたので,力強い地域を作る,それから,一人一人が,そのためには一生懸命何かに向かって努力していくということが大事なのかもしれないと思っております。
 幸い,このワーキンググループはそうそうたる方にお集まりいただいておりますので,恐らくいろいろな御提案をしていただけるかと思います。それを楽しみにしております。私の方は拙(つたな)い司会になり,御迷惑をおかけするかもしれませんけれども,皆様方に助けていただきながら進めさせていただきたいと思っております。どういう形になるか分かりませんけれども,新しい社会教育というものの姿が見えてくると大変うれしいなと思っております。皆さんとともに努力していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本ワーキンググループの発足に当たりまして,今日,明石生涯学習分科会長がいらっしゃっておりますので,一言御挨拶を頂ければと思います。

【明石分科会長】  では,一言御挨拶をさせていただきます。
 先ほど浅井座長が言われましたように,教育再生実行会議は,学校教育に限定されがちで,道徳の教科化とか,例えば教育委員会のものでも,学校教育のいじめとか体罰の問題で,ややもするとそちらの方にシフトしがちだけれども,生涯学習分科会は,地域と家庭とをコアにしながら,学校を巻き込んでいくような仕組み作りが大事かなと。簡単に言いましたら,学校外の体験を豊かにしなければいけないんですよというのも,仕組み作りが出てくればなと思っております。キーワードは,ふるさとを育てる社会教育といいましょうか,又は地域を育てる社会教育という。
 よく申し上げるんですけれども,昭和33年頃に兵庫県の田舎の方で東井義雄先生という方が,『村を育てる学力』という有名な,要するに,当時は高校受験が盛んになりまして,学校組織に入っていくと,村を捨てたんだ,それでなかなか帰ってこないと。それは昭和33年頃,そういう有名な本を書いたんですね。それでは駄目だ,村を育てる学力を育成しなければいけないんだと,非常にインパクトのある本が出ておりました。それは昭和33年,4年頃なんです。
 今,私たちが考える場合に,もう一度,ふるさとを育てる教育の在り方というのは何だろうな。その仕組みを担うのは,今回のテーマに上がっています,社会教育主事とか,図書館司書とか,学芸員とか,地域の地域財といいましょうか,文化財を担う人,だから,そういう意味では,地域リーダーをどうやって育てていくのか。学校教育の中では,リーダー育成としているのは乏しかったと思いますね。やっぱり社会教育は,その地域の文化財なり人材をうまく育成する,リーダー育成が大事かなと。
 かつては,今は少ないですけれども,青年団というのは,ある意味では,そういうものが昭和30年頃まであったんですね。それを社会教育主事の方が担ってくれて,また,いろいろな事情から,そういう担い手が今,非常に少なくなってきている。再生ができるのか,それとも,新たな切り口で,NPOの方々のお力もお借りしながら,地域を担う人材育成の在り方を検討していただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 それでは,文部科学省の方から,このワーキンググループの趣旨について,御説明いただきたいと思います。

【坪田社会教育課長】  本日はありがとうございます。社会教育課長を4月2日付けで拝命しております,坪田でございます。
 資料1を参照いただければと思います。社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループ,本ワーキンググループの設置の紙でございます。ここに趣旨と主な検討事項が書いてありますけれども,まさに生涯学習分科会などでおまとめいただきました審議のまとめに,社会教育についての現状と課題,方向性が述べられております。
 それを受けて,いろいろ検討に入るわけでございまして,本日もお願いするわけですけれども,人材や,そもそもの社会教育推進体制をどうするかという話まで及んでいくと思っております。議論に余り終止符を打つつもりはありません。議論の限りを尽くしていただければというふうに,この夏をめどにして,思っております。
 私もかつて社会教育課の係長をやっておりましたが,その状況を見ますと,それほど推進体制自体が前進しているとは言い難い。かつてからの課題がまだ持ち越されているという状況がありますので,もうそろそろ,課題を検討するだけじゃなくて前へ踏み出さなければいけないのではないかと,我々文部科学省としても覚悟を持って,このワーキンググループをお願いしたところでございますし,来年には法改正も辞さないというような抜本的な改革も我々は覚悟した上で,この検討を,皆様に非常に期待をし,お願いをしているところでございますので,こんなこと無理なんじゃないかということも含めて,いろいろ言っていただければと思っておりますし,ある意味,かつてのものをちょっとマイナーチェンジするだけではなくて,ゼロベースで,こうしたら,変えたらいいんじゃないかというようなことも言っていただければと思います。
 我々まだまだ勉強不足でございますので,最新の現状も,皆様の立場で,ふだん関わられていることを是非お伝えいただきたいと思っておりますし,それをこう変えたらいいんだとか,短期的にはこうだ,中期的にはこうだ,長期的にはこうなんだということを,是非我々に諭していただければと思っております。
 そういう意味で,非常にお忙しい時期に御負担をかけますけれども,この夏過ぎまで,御審議のほどよろしくお願いいたします。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 それでは,本日の議事の確認を行いたいと思います。お手元の議事次第にございますように,本日は,社会教育に関わる人材の在り方についてを御討議いただくことになります。
 議事に入ります前に,事務局より資料の確認と,本日御参集いただきました委員と事務局の方々の御紹介をお願いしたいと思います。

【新木企画官】  社会教育課の新木でございます。よろしくお願いします。
 それでは,お手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。本日はお手元に資料1から6までお配りしております。
 資料1が,ただいま課長から説明がございましたように,ワーキンググループの設置についての紙になっています。資料2が,ワーキンググループの委員名簿でございます。資料3が,ワーキンググループの公開について(案)でございます。資料4ですけれども,「社会教育推進体制の在り方を検討する背景について」という一枚紙になっております。資料5ですけれども,社会教育に関わる人材の在り方に関する資料でございます。資料6が,ワーキンググループのスケジュールについて(案)でございます。
 そのほか参考資料といたしまして,参考資料1が,第6期の生涯学習分科会の議論の整理の報告書でございます。参考資料2ですけれども,先般,4月15日に出されました教育再生実行会議の「教育委員会制度等の在り方について(第二次提言)」というものでございます。参考資料3-1ですけれども,中央教育審議会の「今後の地方教育行政の在り方について」(諮問)でございます。参考資料3-2が,(諮問)に関する参考資料となっております。
 資料の不足,その他お気付きの点等ございましたら,事務局までお知らせいただければと思います。よろしいでしょうか。
 続きまして,委員の皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。五十音順に御紹介をさせていただきます。
 まず,八洲学園大学の浅井座長でございます。

【浅井座長】  よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  特定非営利活動法人スクール・アドバイス・ネットワーク理事長の生重委員でございます。

【生重委員】  生重でございます。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  慶應義塾大学文学部教授の糸賀委員でございます。

【糸賀委員】  糸賀です。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  栃木県教育委員会生涯学習課副主幹の井上委員でございます。

【井上委員】  井上でございます。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  九州大学理事の菊川委員でございます。

【菊川委員】  菊川でございます。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  香川大学教育・学生支援機構生涯学習教育研究センター長の清國委員でございます。

【清國委員】  清國でございます。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  政策研究大学院大学教授・学長特任補佐の今野委員でございます。

【今野委員】  今野でございます。よろしくお願いします。

【新木企画官】  新居浜市市民部長の関委員でございます。

【関委員】  関でございます。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  横浜市立東山田中学校コミュニティハウス館長の竹原委員でございます。

【竹原委員】  よろしくお願いいたします。竹原でございます。

【新木企画官】  東京学芸大学教育学部教授の松田委員でございます。

【松田委員】  松田です。よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  なお,本日は御欠席でございますけれども,杉並区教育委員会教育長の井出委員,和歌山大学長の山本委員,佐賀県多久市長の横尾委員,文教大学長の野島委員がそれぞれ就任されております。
 続きまして,事務局の御紹介をさせていただきたいと思います。
 文部科学省生涯学習政策局社会教育課長の坪田でございます。

【坪田社会教育課長】  どうぞよろしくお願いいたします。

【新木企画官】  同じく社会教育課の地域・学校支援推進室長の高木でございます。

【高木地域・学校支援推進室長】  よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  生涯学習推進課課長補佐の髙井でございます。

【髙井課長補佐】  よろしくお願いいたします。

【新木企画官】  以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 続きまして,私が会議にやむを得ず欠席ということも,生身の人間ですから,あるかと思いますので,座長代理を選任させていただきたいと思います。
 私としましては,菊川委員にお願いできればと思っておりますけれども,いかがいたしましょうか。
(「異議なし」の声あり)

【浅井座長】  それでは,菊川委員にお願いしたいと思います。
 一言,済みませんが,御挨拶いただければ有り難いと思います。

【菊川委員】  先ほどの坪田課長さんの御挨拶をとても心強く聞かせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 次は,会議の公開についてということで,お諮りしなければならないことがあるんですが,ワーキンググループの公開方法についてですが,資料3に(案)が配付されております。事務局から御説明いただけますでしょうか。

【新木企画官】  資料3を御覧いただきたいと思います。社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループの会議の公開に関する規則というものになっておりますけれども,第1条で,会議の公開について定めてございます。基本的には,特別の事情によりワーキンググループが必要と認める場合を除き,公開して行うということになっております。
 第2条については,会議の傍聴ということで,事前に登録を受けなければならないという旨を規定しております。
 第3条でございますけれども,議事要旨の公表ということで,座長は,ワーキンググループの会議の議事の概要を記載した書類を作成し,これを公表しなければならないということで定めております。
 以上でございます。

【浅井座長】  それでは,こういうことなんですけれども,御意見ございますでしょうか。これでよろしいでしょうか。異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)

【浅井座長】  それでは,公開の方法はこのようにさせていただきたいと思います。
 それでは,ワーキンググループの立ち上げに必要な事項はこれで終了いたしましたので,議事に入らせていただきたいと思います。
 議事の「社会教育に関わる人材の在り方について」ということでございますけれども,先ほど事務局から御説明がありましたように,社会教育推進体制の在り方に関する当面の検討事項につきまして,専門的に調査を行うこととされておりますけれども,これらを議論するに当たりまして,事務局から御説明を頂きたいと思います。

【新木企画官】  それでは,資料4,5になりますけれども,まず,資料4を御覧いただきたいと思います。
 本ワーキンググループにおきまして,社会教育推進体制の在り方を検討する背景ということでございますけれども,まず,義務付け・枠付けの見直しということで,全国市長会から昨年7月に,教育委員会設置の選択制・社会教育関連業務の首長部局への権限委譲ということで要望が来ております。基本的には,文化,スポーツに関しては,もう既に権限を条例等によって委任できるという形になっているんですけれども,それとともに,図書館,博物館等社会教育に関する業務について,地域の実情に応じ,首長の下での一元的な事務の実施を可能とすべきという要望が来ております。
 これにつきましては,義務付けの廃止や条例委任ではないということで,何らかの見直しを行うということで回答しておりますけれども,これと併せて社会教育主事の必置義務の廃止についても,同じように全国市長会から要望が来ております。
 これについても,必置規制を撤廃しろという要望が来ているんですけれども,これも義務付けの廃止や条例委任ではないということで,この時点では,何らかの見直しを行うということで三角の回答をしているところでございます。
 それから,第6期前期の生涯学習分科会におきましては,ネットワーク型行政の推進を通じて社会教育行政の再構築を行うということが一つの主題になっておりましたけれども,そういった社会教育行政の再構築を行うに当たっての人材の在り方ということで,社会教育主事,それから,社会教育に関わる人材の在り方について検討していくということになっております。これを受けて,このワーキンググループが設置されたということになっております。
 もう一つ,平成25年4月15日の教育再生実行会議で,教育委員会制度の在り方についての第二次提言が出されております。この中で,地方教育行政の権限と責任を明確にし,全国どこでも責任ある体制を築くというようなことが言われております。社会教育については,特に言及はされていないところでございますけれども,教育委員会制度全般の見直しをする中で,社会教育行政についてもどうするかということを考えていかなければいけないということが,今回検討する背景ということになります。
 続きまして,資料5を御覧いただきたいと思います。社会教育に関わる人材の在り方についての資料ということで,前提となる資料を御用意させていただいております。
 ページをおめくりいただきまして,3ページ以降でございますけれども,社会教育主事制度の概要と現状ということになります。
 社会教育主事制度の位置付けの変遷ということでございますけれども,4ページの真ん中以降に,社会教育法制定以前ということを書いております。社会教育主事につきましては,社会教育法制定以前の大正9年の文部省から各地方長官宛てに出された通牒(つうちょう)の中で,初めてその名前が出てきまして,その後,大正14年の地方社会教育職員制の中で,道府県に社会教育主事専任60人以内,社会教育主事補110人以内を置くということが規定されております。ただ,この当時の社会教育主事というのは,今の社会教育主事とはかなり性格が違うものだったということになっています。
 その後,昭和22年の地方自治法の中で位置付けられまして,同じく翌年の昭和23年の教育委員会法が制定された際にも,社会教育主事を置くということが位置付けられたわけでございますけれども,当時の職務というのが,「上司の命を受け,社会教育に関する視察指導その他の事務を掌る」ということで,非常に官製的な色彩の強い職務を行うということになっておりました。
 その後,社会教育法が昭和24年に制定されたんですけれども,当時はCIEの方針もありまして,できるだけ,行政職員の関わりが好ましくないということで,社会教育法制定当時は法律に制定されなかったということになります。
 初めて制定されたのが,5ページになりますけれども,昭和26年の改正で,社会教育主事の規定が新設されました。この当時,改正時におきましては,都道府県において社会教育主事が必置,市町村においては任意設置,置くことができるという規定となっております。
 それが,昭和34年の改正におきまして,都道府県と市町村の教育委員会の事務局に必置規制となりました。ただし,町村の教育委員会の事務局には,主事補を置かないことができるという形になっています。
 更に昭和57年の改正におきまして,都道府県,市町村の教育委員会の事務局に,社会教育主事を置くということと,都道府県,市町村の教育委員会の事務局に,社会教育主事補を置くことができるという形になっています。
 これをまとめたものが,6ページの(参考)になっておりますけれども,改正時における社会教育主事と社会教育主事補の必置,任意設置がこのような状況になっております。
 7ページを御覧いただきたいと思います。社会教育主事制度が位置付けられまして,昭和34年に,都道府県,市町村必置になったわけでございますけれども,当時,地方の財政というのは非常に貧しい状況でございまして,余り進まなかったということもありまして,昭和49年に派遣社会教育主事制度が始まりました。それを機に,社会教育主事の数がかなり増えるわけでございますけれども,平成8年におきましては6,796人ということで,全国の配置率も91.3%となっております。
 ただ,派遣社会教育主事制度が平成9年度限りで廃止されまして,平成10年度から一般財源化されることに伴って,社会教育主事の数も年々減少傾向にあるということで,平成23年におきましては2,518人ということで,平成8年に比べると60%減となっています。また,配置率につきましても60%となっておりまして,実際,人口規模別に見ますと,人口規模が小さいほど社会教育主事の配置率は低いという状況にございます。
 9ページは,派遣社会教育主事の現状でございますけれども,平成10年度に一般財源化して,地方交付税にて措置されて以降も,地方交付税等々を活用して,派遣社会教育主事の制度を維持している都道府県が15,なくしてしまったところは32となっております。
 10ページが,社会教育主事を配置していない理由ということでございますけれども,一般的に,地方の財源が非常に厳しい中で,社会教育主事が発令されていないということを聞くわけでございますけれども,平成18年に文部科学省で調べたところでは,都道府県については,その当時,配置していないと回答したのは2県,これは長野県と兵庫県でございますけれども,兵庫県については今年から,長野県につきましては,前社会教育課長が教育長に行っておりますけれども,来年から置く予定ということになっています。
 市町村の方は,286市町村が配置していないと回答してきておりますけれども,このうちの70市町村が,有資格者は存在している,ただし発令はしていないという現状でございます。これは,少なくともこの状況では法律違反ということになりますけれども,発令すれば法律上はオーケーということで,設置率も上がるのではないかと思います。他方で,有資格者が存在しない,あるいは,予算や人員削減のために配置が困難というところも少なくないという状況にございます。
 11ページを御覧いただきたいと思いますけれども,こちら以降が,役割と専門性ということで,いろいろ調査報告書で出てきた社会教育主事に関する能力,専門性ということについての調査でございます。
 一般的には,社会教育主事に求められる能力というのは,企画立案能力とかコーディネーター能力を求めているということが,このグラフから分かると思います。
 他方で,13ページを御覧いただきたいと思いますけれども,社会教育に対する教育委員会,それから主事の意識といたしましては,教育委員会側が社会教育主事に求める役割としては,計画立案とか,地域学習課題あるいはニーズの把握というところが非常に多いわけでございますけれども,社会教育主事自身は,社会教育計画を立案するというところには一番重きを置いているわけではなくて,ニーズ把握とか,学校教育と社会教育の連携推進というところに非常に重きを置いているということが,このグラフから読み取れると思います。
 他方で,首長部局との連携というものが下から三つ目にございますけれども,教育委員会の方でこれを求めるのは0%,主事の方も5.7%ということで,非常に低い。この辺りが,首長部局の方から連携をしたいという意向があっても,なかなか連携が進まない背景としてあるのではないかと思います。
 15ページ以下を御覧いただきたいと思いますけれども,こちらは社会教育主事の養成とキャリアパスをまとめたものでございます。
 16ページが,文科省が実施している資質向上研修事業の概要でございます。研修事業がいろいろあります。
 その受講者数につきましては17ページに書いてございますけれども,講習の受講者数につきましては,平成21年度までは若干減少傾向だったわけでございますけれども,21年度以降はやや増加傾向となっております。逆に,専門講座の受講者数については,40から50程度で横ばいとなっております。
 それから,社会教育主事の前職ということでございます。都道府県と市町村で顕著な違いが見られるわけでございますけれども,基本的に,都道府県の社会教育主事の前職につきましては,8割が学校(教員),一方の市町村につきましては,学校(教員)というのは全くおりませんで,ほとんどが教育委員会本局,あるいは市町村,学校,公民館等々,ばらばらなところから社会教育主事になっているということが,このグラフから読み取れると思います。
 19ページでございますけれども,社会教育専門職員の勤続年数を比較したものでございます。社会教育主事,公民館主事,非常に似た傾向がございますけれども,これと比べて,司書,学芸員については勤務年数が非常に長い。逆に,社会教育主事,公民館主事につきましては,6割から7割ぐらいが5年以下という勤続年数となっております。
 20ページの社会教育主事のキャリアパスでございます。これは一応,例ということで出させていただいておりますけれども,これ以外にもいろいろなパターンがあろうかと思います。
 左上は専門職型ということで,社会教育主事を専門職として採用する。東京都とか大阪市さん,今ちょっと凍結しておりますけれども,社会教育主事として採用して,社会教育主事として辞められるというようなパターン。
 教員型というのは,都道府県の社会教育主事に多いわけでございますけれども,教員のキャリアの一環として任用する場合。
 左下が,首長と人事交流で,町作り,あるいは福祉部局から交流をする場合。
 右下の行政職B型というのは,教育委員会内でずっと人事異動する場合。
 いろいろなパターンがあろうかと思いますけれども,こういったキャリアパスの例があるという御紹介でございます。
 21ページが,社会教育主事の資格取得でございます。市町村,都道府県で若干割合は違うんですけれども,文科大臣が委嘱した大学で講習を受けて資格を取るというパターンが非常に多い。特に都道府県の場合は,どうしても教員がなっているということもありまして,地元の国立大学等で資格取得をするという場合が多く見られるということになります。
 逆に,大学において社会教育主事資格を取得した人が社会教育主事になれるのかということを表したグラフが22ページになりますけれども,教育委員会事務局に採用される人は0.4%ということで,仮に大学で資格取得をしても,社会教育主事になれる人はごく僅かということでございます。
 23ページが社会教育主事資格の活用状況ということでございます。都道府県,市町村で若干割合の違いはありますけれども,活用している自治体は非常に少ないというのがこの表から分かるかと思います。都道府県については,活用しているというところが19.1%,市町村については7.8%。逆に,現在も過去も活用していないというところが,都道府県は7割弱,市区町村は8割強ということで,ほとんどの自治体で有資格者の活用が進んでいないというのが現状でございます。
 25ページ以降が,社会教育主事に関する資料ということで,現場の社会教育主事の声を聴いたものをまとめたものでございます。
 26ページに,社会教育主事の職務等への認知・理解が不足しているということをおっしゃっている社会教育主事の方が多いんですけれども,社会教育主事の配置を促進していくためには,周囲に対して,どういうふうに社会教育主事というのは意義があるものなのかを理解してもらうかということを考えていかなければいけない。
 また,その下,社会教育主事の職務等を遂行するための環境が不備ということでございますけれども,これは社会教育主事としての業務ではなくて,通常業務で忙しくて,本来,社会教育主事が果たす役割が果たせていないといったような声が上がっているものです。
 27ページは,主事の専門性の向上や位置付けの改善が必要とするものということで,ここで幾つか,先ほど配置の話で,社会教育主事資格を持っている人はいるけれども,発令されていないという話をしましたけれども,二つ目の丸,何らかの義務付けをしない限り,発令数が減る傾向は変わらない。これは全くの誤解ですけれども,要は,法律でしっかり義務付けをしているのにこういう認識にいるということが,発令がされないという背景にあるのではないかと思います。いずれにしても,専門性の向上とか位置付けの改善が図られないと,なかなか社会教育主事としての意義が見いだせないのではないかという声が上がっております。
 28ページでございますけれども,社会教育行政の充実や強化が必要ということで,どうしても社会教育を担う,あるいは,社会教育主事の役割,意義が外から見えにくいので,予算が削減されやすいとか,なかなか連携が進まないといったような声が上がっております。
 29ページは,社会教育主事の方から社会教育主事に対する批判ということでございますけれども,全く意味はないとか,ちょっと自虐的な意見も上がっております。一番下などは,社会教育主事は時代の波に逆らった制度と言わざるを得ないとか,非常に自虐的なところがありますけれども,いろいろな社会教育主事の方からも,社会教育主事としての意義は何ですかと聞いてもなかなか上がってこないというところで,こういった意見が出てきているのではないかと思います。
 一方で,社会教育主事についての自己認識ということで,30ページを御覧いただきたいと思います。思いや考えとして一番高いのは,教育職としてやりがいがある,そういう認識があるという回答があります。そのほかに,仕事が楽しいとか,行政職としてもやりがいがあるというのがありますけれども,評価という観点から言えば,首長からは評価されていないとか学校から評価されていないと感じる社会教育主事が非常に多いというのが現状でございます。逆に,教育委員会内部でも評価されていないと感じている人もかなりいますし,あるいは,家族からも評価されていないという人も3割程度はいらっしゃいます。
 最後に,5でございますけれども,社会教育主事のような専門自体を考えるときに,どうしても地域人材との役割分担を考えなければいけない。実際,地域人材というのはどういう人材がいるのかということで,参考となるデータを出させていただいております。
 32ページは,ボランティア活動に参加している活動の分野ということで,一番多いのは,「学術,スポーツ,文化」といったところの活動とか,「まちづくり」というのが非常に多いという状況がございます。
 実際にどういう人たちがボランティアに参加しているのかというのが,33ページになりますけれども,最近,特に団塊の世代がどんどん高齢化をしていく中で,高齢者,特に男性については,65歳以上の参加率が高い状況にございます。逆に,女性の場合は,65歳から69歳を機に減少する。これは多分,健康の問題とか体力の問題といったところもあろうかと思います。
 ほかに,他省庁の取組で,地域作りという観点からやっている制度として,総務省でやっている地域力の創造・地方の再生ということで,地域おこし協力隊とか集落支援員,復興支援員といった制度もございます。
 もう一つ,最後のページでございますけれども,社会教育主事制度に類似の制度ということで,厚労省さんで持っております社会福祉主事制度というものがございます。これも,いわゆる任用資格でございまして,社会福祉施設職員等の資格に準用されているわけでございますけれども,法律上も,社会福祉法の中で,福祉事務所に必置義務になっております。
 ただ,資格要件は,大学で3科目取っていればいいとか,あるいは講習を修了した者でいいとか,非常に簡易なものになっておりまして,どちらかといえばステップアップ的な資格として,ここからケアマネジャーとか,上級の査察指導員とか老人福祉指導主事といった職になるための職として使われているということになっております。
 問題としては,社会福祉主事制度も社会教育主事と同様な課題を抱えているわけでございますけれども,若干,キャリアパスとしては逃げ道があるということで,社会教育主事ほどは問題になっていない。ただ,同じように,この資格は必要なのかというところは問題としては抱えている。そもそも専門性があるのかというところでは,資格要件が全然専門性を担保したものとなっていないということで,同じような問題を抱えているということでございます。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日は最初ですので,今,御説明いただきましたお話に関連付けて,全く違う観点からでも結構でございますけれども,社会教育主事が中心ではあるんですが,先ほどお話もございましたように,社会教育主事と地域人材,いろいろな人材が地域にはいらっしゃいますので,その関係というものも,どうしても問わざるを得ないと思いますので,社会教育主事に限定しなくても結構でございますので,委員の皆様から,自己紹介を兼ねまして,お一人ずつ,まず一言,お話しいただければと思っております。
 こういうときは,あいうえお順というのは,私は本当は嫌なんですけれども,大変申し訳ないんですけれども,生重さんの方から,済みません。

【生重委員】  ちょうど今日,若干早く参りまして,おいでになっていた先生方と雑談をしていたんですが,今週,香川・丸亀に参ります。結構,私は全国の小さな町々に呼んでいただくことが多うございまして,そこで,本当に普通の主婦だった方たちが学校支援という形で活動を始めて,最初の不安を払拭しながら,どんどん育っていきながら,先ほども例に挙げたんですが,よそから嫁に来た女がこの伝統ある土地で,何だか分からない横文字の何たらコーディネーターみたいな名前をもらって,何ができるんだと言われている。
 ところが,3年後にお目にかかったときには,その方にクレームをつけていた地域のお年寄りが,すっかりその方を頼りにし,そして,その方に頼まれたものなら何でもやってやろうという空気感に変わっていくというのを何事例も,たくさん見てきて,その一方で,地域が小さなエリアだけに留(とど)まらないためには,町,県という広さの中で,私が伺っている限りは,社会教育主事の役割というのはもっと明確になっていかなくてはいけないのではないかと感じている。
 それはなぜかというと,町村合併でエリアが広くなって,派遣であろうが,専任であろうが,一人の人間が見るには守備範囲を超えているというときに,エリアごとのネットワークで学校支援地域本部があり,そこで迷いながら,みんなで相談し合って,元気に活動していく中から何人かのリーダーが生まれていって,それでも抱える不安というものにきちんと対応できるというのが,私はこれからの社会教育主事の専門性というところになるのではないかなと思っていまして。
 そうすると,巡回しながらいろいろなエリアの方たちとお目にかかっていくための必要な人数というのがあったり,あと,地域で活動している方たちに絶対必要なのが,半年に1回でもいい,3か月に1回でもいい,若干の予算で済むから,もうちょっと広いエリアでの情報交換会とか,自分たちを励まし合ったり,それから,たたえ合ったり,認め合ったりできたり,そこからまた新しいネットワークが生まれていくみたいな,地域の方たちの意欲が落ちない仕組みだと思うんです。それを主宰して,きちんとネットワークを結んでいく要が,やはり社会教育主事の役割になるのではないかなと思っているんです。
 もう1点,感じていることが,派遣社会教育主事制度が残っている県で,お邪魔して思うことなんですが,社会教育主事をやっていらっしゃるときには,とても元気良く頑張って活動するのに,学校に行ったら,社会教育の中で培われたネットワークが大して生かされていない。それは学校という場が,使い古された言葉ですが,閉じているというか,自分たちのところで,先生たちの力で何とかしていけるものだというところにまた舞い戻る。
 もちろん教科を教えるのは先生のお力ですが,子供たちの生きる力を身に付けさせるのは,地域の多様な人材がどう関わるかということは,今,明らかになってきていて,そこを生かしたいといいながら,学校文化の中に入るとまた埋没していく。
 ですから,社会教育で培った地域のネットワーク,地域を生かしていく。それで,学校外教育というのは地域に委ねて,先生たちも一緒になって楽しめるみたいなことをもう少し明確にしていくためにも,社会教育主事の役割とか社会教育主事の専門性プラス,文化財を生かした図書館とか,博物館とか,地方にたくさんあるんですが,そういうものが土日,放課後活用の学びの場につながっていくような形になっていくと,よりそれぞれの専門性が生きてくる。
 社会教育主事の方たちを見ていて,出世ができないのはお気の毒といつも思うんですね。これは変な言葉ではないんですよ。言葉を選ばずに言ってしまってごめんなさい。専門職であるが故に,行政職の中では,皆さんそれなりにキャリアを積んでいく形でポストが上がっていかれる中で,社会教育主事は社会教育主事止まりというか,社会教育主事から,せいぜい教育委員会内部で課長で終わりなんですね。いいのかな,こんなことばっかり言っちゃって。
 そういうことも含めて,本人の望みによって,もっと町作りに行けるとか多様に,私は行政のことをよく分かっていないから,自由気ままなことを言っているとお笑いになってもいいんですが,本人の望みみたいなところで,培ってきたスキルがほかのところでも絶対生きると思うんですね,福祉のところでも,町作りに行っても。
 そういう柔軟性が出ると,若いうちに培っていくスキルみたいなものの中に,社会教育こそが,地域住民とフェース・ツー・フェースで付き合いができて,自分の町を好きになり,自分の町の輝きみたいなものをどう出していくかということに対して,すごく向き合える業務だと思うので,そこを大事にしてあげることが大事ということと,一人の社会教育主事のアイデアは必ず枯渇するんですね。どうしても日常のルーチンの中で,やらねばならぬことの中できゅうきゅうとなっていく姿を拝見していると,いかに町にそういうリーダーを,ボランタリーに活動してくれたり,NPOであったり,NGOであったり,そういう方たちといかにコアネットワークを結びながら,今からの21世紀型というものも考えていけるか。
 人とともに作っていけるというベースができたときには,学校に戻られても,一人の学級王国にならない,子供たちの向き合いみたいなところにつながっていくのではないかなと思って,日頃,全国の皆様方とお付き合いする際に感じております。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 お一人3分ぐらいも危ないかもしれないので,私の方から申し上げるのを忘れてしまいまして,生々しいお話,ありがとうございました。
 それでは,糸賀委員,どうぞお願いいたします。

【糸賀委員】  では,私から3分ということで,分かりました。
 先ほど坪田課長が言われたように,一から制度設計をやり直すみたいな意気込みでこれをやるのは,本当に,そうした方がいいと思うんです。言ってみれば,今までの社会教育行政の仕組みをリセットして考え直す,それは私も必要だと思うんです。
 総論的なことで,さっきの説明で幾つか,逆に質問があるんです。よく分からないところがあって,一つは,教育委員会の枠だけではなくて,これからの日本で地域はどういう姿が望ましいのかという,望ましい地域の姿を描いておいて,それに到達するには,どういう人材,どういう仕掛け,どういう制度,どういうシステムが必要かなんですね。それから,その人材にとって,今の話だと,基本的には社会教育主事との関係で議論した方が,議論は収れんするので,余り拡散しないと思うんですけれども,そういう人材にどういう任用資格が必要かなんです。どういう任用資格が必要で,その人材を国としてどう育てていくのか。
 だから,そういう順番でこれを議論していかないと,今の社会教育主事をどうするかといったら,やっぱりそれは矛盾とか問題を抱えているんです。でも,ゴールが見えない中で,そんな議論をしていてもしようがないから,ある程度,こういう地域の姿というのを描いておいて,それを実現するには,どういう制度,どういう仕組み,どういう人材で,その人材では,どうやったら任用資格がそういう人材にちゃんと付与できて,育っていくのかという論理だと,私は比較的理解しやすいと思います。
 時間もないので,この前の第6期の議論の整理で,私,この議論にも多少参加したので,この中で,ネットワーク型行政というんですね。ネットワーク型行政は,教育委員会の方は言っていても,相手の方は本当にどう思っているのかなんですよ。つまり,首長部局の方はこれをどう見ているのかが分からないと,社会教育主事,あるいは社会教育行政の独り相撲なんですよ。
 自分たちはネットワーク型行政だ。つまり,首長部局で福祉とも連携する,あるいは高齢者とも連携する,あるいは都市計画,町作りというところもやるんだと言っていても,相手の方はそのときに,社会教育主事がその中心的な役割で,コーディネーター役を務めるということがきちんと認識されていないと,ネットワーク型行政はきちんと回っていかないということになると思います。そこは,やっぱり相手方,つまり首長部局,町作り全体と関わるところがきちんと評価されるようなものにしていかなくてはいけないと思うんです。
 そう考えたときに,さっきの説明の中で,ちょっと細かい話になるんですが,発令数が人口規模別に出ていますね。私は,生重委員と同じなんだけれども,全国を回っていて,これはやっぱり地域差というか,都市部と,特に農村部では大分状況は違うと思うんです。例えば都道府県別とか地方別に,社会教育主事の任用率を見たらどういうことになるのか。まず,地方差,地域差というのがあるんじゃないかということで,人口段階別だけではなくて,それをまず知りたいということ。
 それから,社会教育主事に関して,私は例の教育公務員特例法で,これは教育公務員に位置付けられていますね。つまり研修なども義務付けられているわけですよ,教員と同じように。いつからそうなっていて,そのことの評価というのはどうなんだろうかと。教育公務員として社会教育主事が位置付けられて,実は司書とか学芸員はそうなっていないんですよ。だから,社会教育主事が教育公務員特例法で教育的公務員と位置付けられていることの評価というのはどうなっているんだろうかということが2番目なんです。
 それから,さっきの調査結果は,いずれも教育委員会がどう見ているかですね。では,教育委員会の外側は社会教育主事をどう見ているかという調査はないんですか。そもそも余り認識されていないということなんですか。その辺の評価がちゃんと見えてこないと,これから社会教育主事をどういうふうに直していくのか,それが,町作りとか地域作り,地域興しにどう関わっていくかの道筋も描きにくいように思うんです。
 だから,その辺,後で補足していただければと思います。
 最後に,政権交代して,新しい公共とかソーシャルキャピタルという概念はどういうふうになっていくのか。民主党政権ができたときに,新しい公共というのを随分打ち出して,結局は私,地域の中にそういう人材を育てていくのは,ソーシャルキャピタルの形成ということだと思うんですよ。それを国として支援するのであれば,私は,変な話で,その時流に乗らない手はないだろうと。
 だから,一気にそういうものに乗っていって,社会教育主事,あるいは生涯学習全体を,地域作りというところにつながっていくように持っていくというのも一つの選択肢だろうと思います。今までの枠の中で,社会教育主事をどう,言わば改良していくかというやり方と,全部リセットして,本当に地域の中に必要な人材を育てていく。それがたまたま社会教育主事なのかもしれない。場合によっては,いや,社会教育主事じゃなくて,もっと違う,地域作り主事とかというふうに変わっていくのかもしれない。
 その辺の道筋を見るためには,地域全体がどう変わっていき,その中で,新しい公共という視点がこれからも継続していくのかどうかで,時流の乗り方も変わっていくんだろうと思います。政権の動き,そして,さっきの教育再生実行会議,その辺の動きも視野に入れながら議論していった方がいいだろうと思います。
 以上です。

【浅井座長】  ありがとうございました。それでは,井上委員,お願いいたします。

【井上委員】  私の方は,行政の立場ということでお話しさせていただければと思います。私も13年目になるのですけれども,いろいろ県内の市町を回ってみると,市町行政の雰囲気が,随分変わってきたなと思います。
 特に何が変わってきたかというと,社会教育主事が十分に置かれない状況もあるのですが,社教行政の役割についての捉え方もまちまちになっています。つまり,社会教育主事が社会教育主事の役割を果たしていないところが見られるようになってきたのですね。社会教育主事としての役割を果たしていないから,結局,要らないだろう,あるいは,首長部局の方と同じような仕事をしているのだから,一緒にやればいいだろう,必要性を感じない。現状調査をかけると,こんな回答が返ってくるところが出てきている。
 糸賀先生がおっしゃったように,いろいろ突き詰めて考えると,どういう地域像,地域を作っていくのか,国として,県として,市町として,どういう地域を目指していくのかというのをまずコアとして考えてから,そこに社教行政の役割はどういうミッションがあるのだろうという順番で検討していかないといけないのかなと思っております。
 特に日頃感じているのは,教育行政と首長部局の行政は,同じまちづくりという施策目標の中で,いろいろ関わっている中で,どう違うのかというのを社会教育主事と議論をしているのですけれども,突き詰めていくと,首長部局の事業は,この指とまれで興味がある人が,環境問題であったり,まちづくりであったり,どんどん取り組んでいくのを支援するのが役割ですけれども,社教行政は,そういうところに興味がない人を,いかに講座や公民館活動などを通して興味を持たせていくか。そして,サークル化,グループ化したり,うまく首長部局の活動などのネットワークの中にいかに入れていくかというところが,役割として違うところだと思います。
 それが,中教審の議論のまとめにあった,社教行政の新たな括(くく)りの視点が事業担当者にあるかないかで,社教行政の取組が全然違った展開になっていくのではないかと思います。ただ部局の仕事を手伝っているだけであれば,社教行政は消えてなくなってしまうと思うのですけれども,地域につながっている公民館等を拠点とした,人づくりとしての社教行政ということを,行政担当者がきちんと確認していく必要があるのではないかなと感じています。
 それと,制度面のことについては,有資格者がなかなか活用されていないというお話があったのですけれども,栃木県は,1,067人の有資格教員がおります。これは毎年養成しておりまして,栃木県の宝であり,学校に配置されております。おっしゃるとおり,十分に活用されていないという状況も見受けられます。
 有資格者の活動事例とか,有資格者はこういうことができますということを周知するために,管理職にこのようなパンフレットを作りながら,資格を生かすことができる校務分掌に有資格者を付けてくださいということをお願いしているのですけれども,有資格者が生徒指導で秀でた先生であったりして,必ずしも資格を生かせる仕事をしているとは限らない状況になっています。有資格者は,そのような中でも,身に付けたスキルを自主的にいろいろなところで活用されているのですけれども,そのような活動を制度面でバックアップできないかということを栃木では考えています。どのような仕組みが良いかは分からないのですが,例えば地域連携教諭とか,何らかの形で発令若しくは任命をして,うまく有資格者がそのような仕事ができるようにできないかと模索しているところなのですけれども,有資格者の数は,社会教育主事発令者よりも何倍もいるという状況を考えると,社会教育行政として非常に強い味方ですので,何らかの形でその活動を支援する制度というものがあると有効なのかなと考えております。
 以上でございます。

【浅井座長】  ありがとうございます。菊川委員,お願いいたします。

【菊川委員】  私は今,大学におりますけれども,実は地方の教育行政の仕事を,ずっと担当してまいりまして,昭和50年代前半から,社会教育の仕事に出たり入ったりしながら実務を担ってきたという経験を持っております。
 そういった立場で今の状況を見ますと,社会教育の不易の部分をどのように残すのか,先ほど,新しくというお話がありましたが,一方で,失ってはいけない不易なものは何なのかということも大事かなと思っております。
 平成18年に教育基本法が改正されて,それを基に,社会教育法の改正が検討されたときに,このようにワーキングができて,生涯学習分科会で議論をされ,社会教育法の改正につながったのですけれども,その折に残った一番大きな課題が,社会教育主事の課題だったと思っております。そのときのワーキングの議論も非常に熱心なものでございました。
 今回も,こういうデータとか,あるいは,お集まりの先生方の知恵を出せば,きっと次のステップに進むと期待をしているところでございます。
 ところで,先ほどのデータの中で,県ごとの社会教育主事の数が出ていません。恐らく県ごとに,あるいは地域ごとに,格差を伴っているのではないかということがあります。そのことが,最初,生重先生が言われたように,大きな地域のネットワークの格差につながっているのではないかと思います。
 今後,制度設計をどんなふうにしていくかという議論になるかと思いますが,一つは,社会教育主事の職務の問題と発令行為の問題と,二通りあるように思います。
 職務の問題については,例えば県と市町村の社会教育主事の職務というのは違うのかどうか,あるいは,社会教育主事の職務の養成内容は現行でよいのか等があると思います。私は個人的には,もう少し技能的なプログラムを入れたらいいのではないかと思っております。
 発令行為につきましては,昔から教特法の指導主事と並ぶ専門職という位置付けですけれども,そこに余りこだわっていると,逆に広がらないんじゃないかという気もしておりまして,その辺りのところも議論をして,できれば学芸員とか司書の資格のように,認知度の高いものになっていくと生き残れるのではと思っております。

【浅井座長】  清國委員,お願いいたします。

【清國委員】  どこから話せばよいのかという感じなのですが,教特法については,お二方の先生が既に触れておられます。指導主事と並び専門的教育職員と位置づけられる社会教育主事と考えたときに,社会教育主事には指導する対象がぼやけてしまいます。実際は公民館主事や社会教育施設職員なのでしょうが,指導する具体的な内容が定まっていないので見えづらくなってしまうのです。指導主事の場合は,明らかに教員を対象としたもので,教育課程や学習指導要領がありますので見えやすいわけです。視点を変えて,社会教育主事は汎用性の高い能力として,これまでもずっと認知されてまいりましたが,逆にそれが弱みにつながっていると思うのです。つかみどころのなさは,汎用性と表裏一体の関係ではないかと思うのです。
 そういう中で,勝負をするのであれば,どういう能力が一番競争に値するのか。それこそ地域づくり,コミュニティーづくり,あるいは地域のきずなづくり,そのような言葉に代表されるような,結び付ける力,地域や住民の力を引き出す力,あるいはそれらを組織化できる力,そこだと考えられます。言い尽くされた表現になりますが,コミュニケーション能力ということになります。しかしながら,コミュニケーション能力といっても,具体的に,何をどのようにできればコミュニケーション能力が高いという認識がなされるのか,明確な解答はありません。その能力があったとして,社会教育主事すべてが地域の方々の良さを引き出し,巻き込んでいけるのかと考えると,実証することはできません。さらに,社会教育主事講習の中で今言ったような能力を身につけさせられる内容が組み込めるのかというと,残念ながら,これまで大学などの養成機関はそこに手を着けられているとは言えないのではないかと思います。
 そう考えると,養成プログラムの中で,まずはファシリテーション能力をいかに身に付けていくか,高めていくか,ということを徹底的にやるべきではないかなと考えております。求める内容からすると,社会教育主事講習の時間で十分であるとは考えてはいないんですが,そんなことを強く考えております。その辺りの具体的な細かな話は時間的にできませんが,一つの課題として考えております。
 また,実際には,私のいる香川大学も主事講習の担当校ですが,今,二極化といいますか,非常に若い職員も社会教育主事講習に派遣されてきます。理由は定かではありませんが,想像するに,講習に1か月いなくも業務に支障が最小限であるということなんでしょうか。大学を卒業して数年ほどの職員ですから,有資格者となっても任用しづらいということになってしまいます。
 そういう状況がある中で,実務経験も社会経験も,行政内や地域とのネットワークもないところで,社会教育主事の力を発揮できるかというと,厳しいところがあると思うのです。社会教育主事が形式的な配置になってしまうと,制度的な意味を失ってしまいます。これは鶏と卵の話になってしまうのですが,教育行政や一般行政の人事計画の一環として,この人を社会教育主事講習に派遣して,相応の職務を担わせ,この職員を育てたい,この職員に行政の核になってもらいたい,という意識が見られない。逆に,講習にこそ目に見える力をつけさせるべきだと反論が返ってきそうですが。いずれにしても,市町村の社会教育主事に対する意識の低さが感じられることと,職能形成における社会教育主事の活用の視点をもってもらいたいことの指摘をしておきます。
 ネットワーク型行政の話も出ましたが,ネットワークというのは今,当たり前のことですから,別にネットワーク型行政そのものが,魅力を感じない言葉になってしまっているような気がします。何か意図を持って集まるためには,ネットワークの基盤の上にあるプラットホーム型になるでしょうし,本当に仕掛けていかなければいけないとするならばプロジェクトにしないと進みません。社会教育の視点からプロジェクトを首長部局に対して仕掛けていくことが必要で,その企画立案を社会教育主事が担うということになるでしょうか。社会教育には施設つまりブランチがあるわけですから,その強みを生かしてプロジェクトを実現することが求められると思うのです。ひとまず,そのあたりから。

【浅井座長】  ありがとうございます。それでは,今野委員,お願いします。

【今野委員】  既にいろいろな先生から言われたことと同感なんですけれども,主に三つ,言いたいと思います。
 一つは,社会教育主事そのものについてですけれども,前回の議論のまとめで,きずな作りとか地域作りということで,社会教育のそういう側面を強調して,これから進めていこうということを強調されたわけですけれども,社会教育行政の中核の一人が社会教育主事であるとすれば,社会教育主事も,明らかにそれを実現できる役割を持たせることが必要になると思います。
 そうすると,今までは,教育委員会自体はどうしても独立行政委員会だということもありますし,自分たちは教育の専門家だということがあります。特に社会教育主事の場合には,教特法にも位置付けられているし,社会教育法も指導的な側面が強く書かれていることもあって,皆さんそういうつもりでいらっしゃって,どうしても実際に要求される町作りとか人作りということからすると,実体と役割が狭いところに強調されがちになっているんじゃないかなと。
 そういう意味では,現在の社会教育主事の求められる要件としての資格をもっと,いわゆる教育指導というところから大きく広げて,例えば首長と対等に話ができるぐらいの幅を広げる。町作りとか,市民協働とか,そういうことも含めた幅の広さを,抜本的に位置付けを変えていく必要があるんじゃないかと思います。
 それから,社会教育主事の人たちは,それだけの能力,資格があっても,職を離れると全く言えないんですね。ですから,埼玉県でも,関係者が集まっていろいろな活動をしているんですけれども,会の名前がお気の毒で,元社会教育主事の会とか,さえないんですね。あるいは有資格者のという,それはやっぱり変なので,能力,資格,経験がある人は,それなりにきちっとした名前がある方がいい。
 あるいはそういう意味では,現在は,社会教育主事はその職に充てるための資格ということになっていますけれども,独立した資格をして,こういう能力があって,なおかつこういう要件がある人は社会教育主事に任用できるというふうなことで,資格自体を独立化させられないかなと。
 もしそういうことができれば,今でさえ町作りとかいろいろなところで,社会教育主事みたいな能力は要るはずですし,そういう活動をしている人はいるわけで,そういう人をきちんと認めてあげるという意味でも使えますし,あるいは,それぞれレベルとか内容は違うと思いますけれども,民間サイドでもいろいろな仕事の面で,あるいは活動の面で,能力が認定できるようなものがあれば非常にいいと思うんですね。
 上野の研修のときにも,よく民間の方が資格を取りたいというので来られていて,多分,今は認めてもらえているんだと思いますけれども,いろいろなところにニーズがあると思うので,その基になるような社会教育コーディネーターか,生涯学習コーディネーターか分かりませんけれども,コアになるような資格というのを作ると,あるいは市民,一般の人たちのリーダー的な人を処遇するということでも,様々に使い得るんじゃないかと思います。
 三つ目ですけれども,今,市町村などでは,すごくアグレッシブで,町作りをやりたいという強い意思を持った首長が多いわけですけれども,そういう方の話を聴くと,社会教育行政というのは物すごく魅力があるし,町作りには欠かせない領域だという意識が非常に強くて,市町村の部局に社会教育行政を持ってきて,やっているところは随分増えました。この間,聞いたら,県レベルでも,多分,初めてかなと思うので,佐賀県も移しました。前,社会教育主事をやっていた人が一人,PTAの関係があるので,私だけ教育委員会に残っていますという話をしていましたけれども,県でもそういう動きが出てくるような時代になったかなと思います。
 いずれにしても,自治体の位置付けによって,やっぱり教育委員会がやるのが最適だという市町村もあるでしょうし,だけど,首長の中で,やりたい,あるいはやるべきだというふうに考えるところもあるんじゃないかと思うんです。多分,今は地方自治法の委任とか補助執行の関係のことでやっているんでしょうけれども,本格的にやるとすれば,この間の文化,スポーツの改正のようにきちっとした方が,やる方もやりやすいんじゃないかなと思います。
 いずれにしても,前の議論では,社会教育も教育だから教育委員会が適当だということになっていたと思いますけれども,場合によって,文科省はどう思われているか分かりませんけれども,そういう議論もあってもいいのかなという感じがいたします。
 以上です。

【浅井座長】  ありがとうございました。
 それでは,関委員,お願いいたします。

【関委員】  私の場合,行政で,実際に自分が携わっておりますので,あえてその経験の中からの話をさせていただこうかと思うんですが,私が社会教育主事に初めてなりましたのは,役所に入って4年目だったんです。その頃から10か年,社会教育主事,教育委員会で勤務し,その後,今度は7年ほど,役所のほかの業務を経て,また教育委員会に戻りまして,7年おりました。
 一番初めにいたときに自分が社会教育主事として動いたことと,実際,管理職になって社会教育主事として動いたときの自分の立ち位置は,全然違っていたような気がいたします。やはりある程度の年齢を経た上で,社会教育主事の資格を取っただけではなくて,その後,行政の中でもいろいろな部局を回らせていただいて,例えば児童福祉の視点を交えた上で教育委員会に戻ったときに,違う自分がその中で発揮できたような気がいたします。教育委員会の中だけにいなかったことが,逆に良かったんじゃないかなと思います。
 もう一つ,社会教育主事を私が取った頃は,毎年一人ずつ派遣して,資格を取らせていました。しかし,同じ事務局の中に複数の社会教育主事を抱えることができずに,せっかく資格を取った人間がすぐまた異動に掛かる。そういう形を今まで続けてまいりました。その頃は,それが非常にマイナスであるという認識を持っていたんですが,今になってみると,社会教育主事の資格を取ったメンバーが役所のいろいろなセクションにいるということは,ネットワークをつなぐ上では非常にプラスになったと感じております。
 実際,私は今,市民部におりますけれども,その中で,例えば今度の文科省の公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラムをやるにして,例えば防災であったり,男女共同参画であったり,あるいは,ほかにもNPOであったり,そういったものとのつながりを付ける上で,社会教育主事で培われたノウハウというものが反映できるということを改めて感じております。役所の中にいる人間がお互いつながっていけるような仕組み,さっき言われたような,社会教育主事OBという感覚ではなくて,飽くまでも現職としてのつながりの中で,お互いがつながっていけるような仕組みを作っていただいたら非常に有り難いんじゃないかと思います。
 ですから,今は教育委員会にはいませんけれども,教育委員会の社会教育主事ではなくて,新居浜市の社会教育主事の物の考え方の下に仕事をする,それが非常に大事なことではないかと思います。
 もう1点ですが,私どもの市で現在,国社研の後期の社会教育主事講習をインターネットで受講させていただいております。その中で,公民館の主事に資格を付与するために研修を受けさせているんですけれども,そのことによって,公民館の主事は非常に意識が変わってまいりました。正規職員ではありません。非常勤職員でございます。地域の人材の中で,公民館の職員を選任していますけれども,その中でネットワークができて,更にそれが市民の中にも広がっていくことによって,社会教育主事のマインドを地域の中に定着させていくことができたら,非常に有為な人材が生まれてくるんじゃないかということを感じております。
 以上です。

【浅井座長】  ありがとうございました。それでは,竹原委員,お願いいたします。

【竹原委員】自己紹介させていただきます。私は大学のとき,初等教育専攻でしたが,4年間のクラブ活動で,岩手県と福島県の分校で子供会活動や中学生と郷土資料の収集などの活動をしました。そのことから学校の外で学んだという実感を強く持ちまして,社会教育主事の任用資格を取りました。卒業したのは昭和48年ですが,今日の資料から40年たっても状況は変わっていないんだということに驚きました。
その後,民間企業に勤めて,夫の転勤に伴い海外で子育てをし,PTA活動やボランティア活動などから地域と学校がどうつながっているか,市民がどう参画しているかということを実際に見聞きしました。
帰国後,横浜市都筑区で社会教育指導員公募があり採用されたのが46歳のときです。
その後,浅井先生に随分お世話になりましたが,370万都市である横浜市教育委員会で社会教育関係職員の研修などを担当していました。そして9年前に,横浜市で初のコミュニティースクールとして開校した中学校の中にある公民館のような施設・コミュニティハウスの館長となりました。
すべて社会教育のフィールドだと思いますが,社会教育主事という任用は一度もされていません。教育委員会へ行ってみて,市長部局と教育委員会の社会教育や生涯学習をつなぐというのがどんなに大変か,組織的にはそういう土壌が余りないんだというのを実感しました。
今,関さんがおっしゃったように,社会教育にかかわったとか,教育委員会で仕事をしたという方がいらっしゃると,話が伝わりやすくて,一緒に今度こういうことをしたらどうですか,研修のときよろしくというのができるということがよく分かりました。
社会教育は社会の課題やニーズに対応できるような学びを提供するということだと考えています。様々な課題解決のために必要な,行政と市民が協働する方法を学ぶこと,異なった価値観と出会ったときにどうやって行動できるかということが最大の学びではないでしょうか。
それから行政職員の方が社会教育行政の役割を語ることができれば,優秀な人材の確保も予算獲得もでき社会教育行政の位置付けがきちんとできるように思います。
また市民の中には,元PTAの方や地域のコーディネーターの方,NPOの方が主事講習を受け,社会教育主事任用資格を取っている方がいます。そういう方たちと行政が良いパートナーになれるための仲介役は,社会教育主事ができるはずで,社会教育主事が果たす役割は市民社会で大きいと思います。
先ほど子育ての話が出ましたが,子育てという冠が付いただけで,すぐ福祉保健系に全て事業が移っていくことあります。子育てをテーマに学ぶというときは,社会教育のフィールドでもあると思うこともあり,ここで改めて考えていきたいと思っています。

【浅井座長】  ありがとうございました。それでは,松田委員,お願いいたします。

【松田委員】  五十音が最後の方ですと,いつも,話す内容にかぶりがないのをいかに見付け出すかという難しさが。冗談はさておきまして,ちょっと感じることをお話ししたいと思います。
 まず,今日,社会教育主事が中心の話題になっていますけれども,家族に評価されずになど,自虐的なお声も多いんですけれども,でも,なさっている御自身は,実は私がいるからうまくいっているんだというお気持ちがお強いというのは,確かに現場を回っていて感じることが多くて,また,周りの方も,社会教育主事の方がいらっしゃるからということで,実は非常に評価されている部分はあるんですけれども,なかなかそれが厳密な意味で評価につながらないというか,そういう感じはむしろ非常に強く思っています。ですから,そういうことを言葉にできないもどかしさといいますか,そちらの方がまず一つあります。
 もう一つは,今,大学におりまして,大学は人材育成の機関なんですけれども,とりわけ社会教育に関わって,教育支援人材認証協会というものを大学間で立ち上げて,ボランティア等を含めた地域全般の人材を養成しようとしているんですが,勤めが学芸大学で,教員養成の大学でもありますので,教育に関わる人材ということを考えるときに,育成の場面と活用の場面と,もう一つ,育成と活用をどう一体化して捉えていったらいいのかというような,いつも三つぐらいのことが,本当に難しいなと思うんです。
 現在,社会教育に関わっては,恐らくいろいろな先生方がおっしゃるように,地域の変化も大きいですし,学び自体が非常に変化,多様化していて,学ぶことでつながれるというのは,ある種,幻想になっているところもあって,本当に拡散していくんですね。それでもつないでいくということを今,社会教育主事の人などはなさるので,非常に皆さんが評価されているというところはあると思うんですけれども,そういう中で,どこに何をする人として人材を,特に行政的に,制度的に置いていけばいいのかというのは,確かに,最初の御挨拶にもあったように,発想を新しくしていかないと駄目なんだろうなというのは,実感として思います。
 時間の因果関係のようなものを共有できると,信頼とかつながりというのは割と出てきやすいと思うんですけれども,例えば,種を植えて実ができるまでお互いに共同作業をすると,人との信頼関係とかつながりができる。人を育てるとか子供を育てるということが現在残された数少ないそのような共同作業としてあると思うんですが,現在の地域で,それでさえも因果関係を共有するというような場面は本当に難しくて,幾ら人材が活動されても,前と後ろがつながらない状態で,みんながばらばらに成果だけを受け止めるので,いつまでたっても,お米を一生懸命お握りにしているようなもどかしさというのも現場では感じられると思います。
 そういう中で,そこをつないでいくための,つまり活用のポイントというのはどこにあるのかといつも思うんですけれども,そのときに,一つは専門性の在り方というのは確かに変化しているように思っていて,知識とか,あるものをたくさん持っているということでの専門性ではなくて,先ほどから皆さん方のお声が出ていますけれども,つなぐことに対する専門性というのが確かにあって,それは言われはするんですけれども,実態としてまだ見えにくいというのがあるんだなと思います。
 恐らくヤフーみたいなものだと思うんですけれども,検索用語を入れて,これはどういうことと言えば,ある程度羅列してくれて,それでうまくいくというような,必要な情報をあふれるような数の中から取り出して配信してくれるようなことがコーディネートするということの中身で,そういうことが非常にたけているということで,その人に専門性を感じるというような関係に,社会教育主事なり社会教育の人材がなっていくというような感じなのかなと思ったりしています。
 あと,育成ということに関しても,確かに育成するには目的と方法が必要なんですけれども,理想像というのは確かに描きにくくて,今,大学でもいろいろな講習もされますし,私も担う場合もあるんですけれども,これで本当に現場に出ていって,ただ,常に育成の場面で,実践性が強ければいいとも思わないんです。その辺り,学校教員の養成にもインターンシップという議論が出ていますけれども,社会教育主事の養成においても,現場と座学との往還みたいなものが中身として具体化していくというようなことも,既に必要な状況になっているのかなと思ったりしています。
 いずれにいたしましても,本当に最後ですので,どの先生方ともかぶる部分ばかりですので,あとは1番に回していただいたときに。冗談です。

【浅井座長】  今度は逆にいたします。ありがとうございました。
 まず,糸賀委員から質問があったのかもしれないんですけれども,お答えいただくことが望ましいのかどうか,私の判断を超えていますので,どういたしましょうか。

【新木企画官】  糸賀委員と菊川委員からありました,都道府県別の主事については,一応,データとしてはございます。これは次回,御用意させていただきたいと思いますけれども,ぱっと見る限り,それほど地域差があるようには見えないんですが,他方で,北海道はかなり社会教育主事の数が多いです。
 というのは,専任が,ちょっと古い平成20年なんですけれども,この当時で,全体としては3,000人いるんですけれども,うち北海道だけで270人ぐらいいますから,約10分の1が北海道です。あとは仙台,宮城県,それから千葉県が,多いところとしてはありますね。
 全くいないところというのはないんですけれども,あとは,人口別に少ないところは鳥取とか四国,北陸はかなり少ないですね,専任が20人弱ぐらいしかいないので。
 いずれにしても,これはデータとしては出させていただきます。

【糸賀委員】  それは単に数だけではなくて,配置率でしょう。だから,地方自治体なり教育委員会の数に対して,どれだけ……。

【新木企画官】  配置率で言うと,これは都道府県別までしか出ていないので,市町村でどれぐらい出せるかというのは,また検討いたしますけれども。
 もう一つ,教育公務員の教育的専門職員に位置付けられたのはという話なんですけれども,これは26年,要は教育法ができたときに……。

【糸賀委員】  当初からですか。

【新木企画官】  当初からです。これをもって,教特法に専門的職員と位置付けられたことで,社教法でも法律上に位置付けられた。そこは同時になっています。

【糸賀委員】  ありがとうございました。

【浅井座長】  よろしいですか。
 それから,もう一つ,私の方から申し上げていいのかどうか,分からないですけれども,昨日のテレビで見ていまして,間違っているかもしれません,私が聞いた限りですから,聞き方も間違っているかもしれませんので,聞き逃していただきたいと思うんですけれども,成熟社会から,はっきりと新産業を育成する社会に変えると言っていらっしゃいました。ということは,先ほどのソーシャルキャピタルのレベルで収まらないだろうなと,ちょっと私は感じましたけどね。新しい……。

【生重委員】  公共の。

【糸賀委員】  新産業戦略。

【浅井座長】  いや,もちろん,成熟社会を超えるという話は言っていました。一言ですけれども。

【糸賀委員】  そうですか。

【浅井座長】  ということです。それだけちょっと,聞き方は間違っているかもしれませんから,これは聞き逃していただきたいと思います。
 今,お話がありまして,大変いろいろな,自由にということだったものですから,逆に,教育を超える専門職にしていくのか,それとも教育専門職なのかという問題も出てきましたし,それから,新しいスキル,技術というものを身に付けなければ生き残れないです。私もそう思っているんですけれども,精神論でやっていこうなんて,とてもそんな時代じゃないだろうと思っているんですが,そこに踏み込めるのかどうかということがございます。
 それから,社会教育主事はどういう能力を身に付けたらということに関わるんですけれども,社会に,社会教育主事は存在する必要があるんだということを説得できるような社会教育主事を作らなければならないんですよ。そこに踏み込むかどうか。
 でも,余り大きなことを考えて,できないということもありますから,時代によって,10年かけるとまた変わってくるんですよ。社会教育主事が必要だと,どこかから出てくるかもしれないので,これは何とも言えないんですけれども,余り大きなことを変えると,養成ができないという問題がありますので,養成をどうするのかという問題もあります。そういうことも含めて御検討いただきたいと思います。
 それから,ネットワーク行政ということからくれば,首長部局を巻き込める力というのは一体何なのかということですね。これは私も前に申し上げたんですけれども,ネットワークというのは,お互いに資源を交換する能力がなければネットワークを作れないんですけれども,社会教育から何が出せるのかというところなんだろうと思います。社会教育主事だけにその能力を負わせるということができるんだろうかということがありますので,そういうことも含めてお考えいただければと思っております。
 それから,皆様方から出てきた中で,今のことにも関連があるんですけれども,社会教育主事の現在の資質・能力の中に,組織化という能力があります。ネットワーク作りとか,いろいろな言葉で出てまいりましたけれども,組織化する能力とは一体,コーディネート能力と同じなのかどうかを含めて,よく訳が分からないところがあるんですけれども,その辺りが一つ課題になっていくのかなと,お話を伺っていて思いました。
 社会教育主事の話がやっぱり多かったんですけれども,どちらかといいますと,社会教育主事だけでやっていきましても,いろいろ難しい問題もありますから,ほかの地域人材との関係で,役割分担等を含めて,どういう関係にあるのかということもお話しいただきたいんですが,その辺り,いかがでしょうか。

【菊川委員】  先ほど,今野先生が社会教育主事制度の独立化という話をされましたが,司書とか学芸員の資格は,年間4,000人とか5,000人,大学で出していると思うのですが,結構根付いている。公的なところに対する専門的な就職がないのは社会教育主事と似ているんですけれども,でも,資格として一定の存在感がある。
 例えば図書館で就職する場合に,非常勤が多いですけれども,必ず司書資格を要求される。司書として発令するということは少ないですが,必ず司書資格を要求される。あるいは,民間の本屋等に就職するときも司書資格は有利であるという制度になっていると思います。
 だから,社会教育主事も,これだけ先ほどから出ているように,いろいろなところで,社会教育主事的な能力というものが社会づくりに要求されているわけですから,一つの検討の方向として,社会教育主事というものを,独立した一定の知識・技能の固まりとして検討してみるという方向はあるのではなかろうかと思います。
 それで,やっぱり駄目ですとか,あるいは,発令としては難しいですということはあるにしても,一つの固まりとして,徹底してそこを一度やってみる必要があるのではないかと,私は個人的には考えております。

【浅井座長】  いかがでしょうか。

【糸賀委員】  今,菊川委員が言われるのも分かるんですけれども,結局それは,司書の場合には図書館という拠点があるんですよ。それから,学芸員の場合には博物館という拠点があって,それぞれ博物館資料と図書館資料を持っています。その資料の扱い方についてのスキルが当然,司書や学芸員にはなくてはいけない。
 ところが,社会教育主事は拠点となるような所がなくて,そこに,いわゆる社会教育資料に当たるような物,図書館とか博物館で言うコレクションとかコンテンツがないんですよ。だから,それを扱うためのスキルが育たないから,外から見ると,専門性があるようには見えないんです。単にコーディネート力で,ほかの部局とほかの部門,あるいは人とを結び付ける能力というのは,ある程度そこで育っていって,まともな公務員であれば,おのずと作られてきたと思うんです。
 だから,ボトムアップでいくか,トップダウンでいくかなんですね。つまり社会教育主事に求められる,さっき言われた知識・技能がどうあるべきかというのは,私から言うと,ボトムアップなんですよ。そうやって社会教育主事を固めていくのか,私は逆に,地域の中で何が求められているのか,どういう人材が求められているのか,これはトップダウンなんですよ。トップダウンとボトムアップという言い方がいいかどうか,分かりませんけどね。
 そうすると,地域の中でこういう人材は必要だ。だから,地域の中で首長部局と教育委員会の部局,さっき言われた福祉と子育て,あるいは防災,安心・安全な町作りみたいなところを連携させて,地域にそういう人材を育てていかなくてはいけないというのは誰もが納得するんですよ。これは教育委員会だけじゃなくて首長部局の人たちも,それは必要だと。行政だけではとてもそんなことはできない。町内会をうまく束ね,ちゃんと地域の中でのリーダー格,それも,年代を超えた人たちをちゃんと束ねていく人が必要なんですよ。
 それは,教育委員会にいる社会教育主事ができるのか,そうじゃなくて,地域の中に,もっと別な人材として育てていくべきなのか,それでもって地域全体がうまく回るようにすれば,結果的にその人の名称が,やっぱり社会教育主事でいいんじゃないか,いや,もっと違う名称でやった方がいい,教育委員会にその人を置いておいた方がいいのか,いや,もっと首長部局に置いておいた方がいいというようなことになっていくんだろうと思うんです。
 私は,別にトップダウンでいくのも必要だし,ボトムアップでいくのも必要で,両方の議論をしていって,真ん中にどういう人がいればいいのかということが見えてくればいいなと思いますけれども。

【菊川委員】  正にそういうことだと思うのですけれども,さっきおっしゃった,司書と学芸員は一定の資料を扱うというスキルがあるということですね。それに対して社会教育主事は,例えばコミュニケーション能力とかファシリテーション能力,あるいはプレゼン能力とか,それはひょっとしたら全ての公務員に要求される能力であると。だから,社会教育主事のことをジェネラリストとしてのスペシャリストといった人がありますけれども,正にそういうことだと思うのです。
 ただ,そこをぎりぎり突き詰めて考えないと,社会教育主事制度というのは生き残れないのではないかと思っています。例えば,ファシリテーション能力でも,プレゼン能力でも,あるいは,体験活動で子供たちを指導する知識・技能というものも求められています。そういうものを,一定の知識・技能のパックにして検討してみることを一度しないと,社会教育主事の資格,専門性の内実化というところには行かないのではないかと思います。

【今野委員】  是非議論をしていただきたいなと思いますし,糸賀先生が言われるように,以前から社会教育主事,法律にどう書くんだと言われて,事務局の人はなかなかこれというところまで行かなかったので,やりたいけどできなかったという説明を聞いているんですけれども,社会的な状況も変わってきているし,今,基礎的な技能というのは昔と違って,非常に複雑で,多分,高度化もしているんでしょう。
 そういうことで,拠点施設はないし,資料もないかもしれませんけれども,いろいろな知恵を集めて形作ることができれば,是非そういう議論をしていただければと思います。難しいでしょうけれども。

【清國委員】  私もパッケージ化のところは重要だと思っています。要するに社会教育主事の見え方とか,見せ方とか,資質や能力をどう可視化できるかというところをシンプルに提示することが求められると思うのです。認知の仕方については,養成や講習のプログラムが訴えやすいのではないでしょうか。養成や研修を修了した人に,現場で役立つこんな力がつきました,ということです。日本の行政職員はジェネラリストを目指していますから,汎用性は高いけれども,その人の技能はわかりづらいのです。別に社会教育主事じゃなくてもいいのでは,という疑問が払拭されないのはひとえにここと関係していると思えます。ずっと停滞し続ける議論に風穴を開けるためにも,正に菊川委員がおっしゃったようなことが,一つの手法として吟味されるべき時期に来ているのではないかと私も実感しています。

【浅井座長】  ほか,いかがでしょうか。本当にそう思います。

【菊川委員】  そのことと,現実の教育委員会の中の社会教育主事制度をどう位置付けるのかというのは,またちょっと違うかもしれないと思います。
 例えば,県立図書館に司書の資格を持った人がたくさんいますけれども,資格としては主査だったり,係長だったり,課長だったりするわけです。では行政の中に,社会教育主事というような専門職としての任用資格が,指導主事の場合は,学校教員を指導する者としてきたときに発令をもらう。それは学校の先生がたくさんいるから,そういう人たちに対する指導として指導主事ですけれども,社会教育主事の場合は,たくさんの民間の方も含めた活動に対して指導する,そういう社会教育主事という任用資格が要るのかどうかという議論は,もう一つ違う議論のように思います。

【糸賀委員】  今のはよく分からない。私も任用資格は絶対必要だと思うんですよ。任用資格がなければいけないと思うんですよ。
 ただ問題は,今,菊川委員が言われる,どうしてそれが教育委員会にいなければいけないんですか。そこなんです。

【菊川委員】  その辺を今回考えたらどうかなと思います。

【糸賀委員】  だから,これの最初のところにありましたね。地方六団体というか,市長会とか議長会から出ているように,うちの自治体では,それは首長のところに置きたいというんだったら,それでいいだろう。
 学校教育の方は,これはやっぱり学習指導要領があって,文科省が定めた検定済みの教科書がある。これが,首長が替わるたびに教育に対してあれこれ口出しするのは,私も良くないと思うから,学校教育に関しては,首長部局から一定の距離を置いておいた方がいいと思うんですよ。
 でも,今や社会教育主事は,地域作りとか町作りと関わるんだから,ちゃんと選挙の洗礼を受けた首長が,私はこういう町作りをやりたいといったビジョンとかマニフェストで当選したのであれば,それを実現するために行政が動くのは,ある意味では当然だと思うんですよ。

【浅井座長】  では,社会教育主事といわなくてもいいじゃないですか。

【糸賀委員】  そのとおりですよ。だから,それは私も社会教育主事といわなくてもいいだろうと。
 ただし,任用資格として,そういうことができる資格,そのための教育,養成というのは,私は必要だと思います。でも,それは必ずしも教育委員会でなくてもいいんじゃないかという気はするんですよ。

【浅井座長】  それから,もう一つ伺いたいのは,学校との連携が,首長部局にぽんと専門職を作っていったときに,やっぱりできなくなるんですよ,難しくなるんですよ。それはそれでいいと。

【糸賀委員】  いや,それは教育委員会にあったら,もちろん学校教育との連携はしなさい。つまり学社連携はやりやすいと思います。その代わり,今度は首長部局で,今言った福祉だとか町作り,防災,その辺は遠かった。

【浅井座長】  今度はそっちができますでしょう。

【糸賀委員】  だったら,そっちと近づけた方がいい。その代わり,学校との連携は,それが首長部局だから一切できないということは,私はないと思いますね。
 一方で,教育委員会制度は残り,ちゃんと教育委員の方で首長部局と必要な連携を図っていくべきだということをやり,学校長が必要に応じて,この前の社会教育法改正で,いわゆる社会教育主事に相当するところ等の助言を求めることができるわけですから,もしも社会教育主事を教育委員会から出すのであれば,その部分は同じように,首長の方はそれと相談ができるというようなことはちゃんと書くべきだと思いますよ。
 それでもって,名称はともかく,学校との連携がちゃんと図られるような仕組みは作っていくべきだと思います。

【浅井座長】  どうですか。

【生重委員】  教育委員会にいても,指導主事と社会教育主事は全然つながっていないんですよ,どこの県も。同じフロアにいても,全くお互いにやっていることが分かっていない。そうであるならば,ダイナミックに町作り観点からいくというのも,一つ,私は有りなんだと思います。
 そのためには市民が育っていかなくてはいけなくて,町の中心に学校というところで,子供たちが元気に育っていく町こそが元気な町なんだということを市民側が納得して,何か私たちも一つアクションを起こしていけるよみたいなことを一緒に考えていく学校応援仕組みの中に,防災や防犯,町作り,それから,様々な人と人とのつながり,子育てのしやすい環境というものがもうちょっと入ってくるように,学校経営者の方が変わっていかなければ駄目なんだと思うんです。
 もちろん教育委員会も柔軟に受け取っていかなくてはいけないんですよ。同じ教育というところにいるから,こんなにつながらないのかなと思うぐらい,教育指導主事と社会教育主事はつながっていません。それを感じる。同じ先生で,戻っていって,また同じ学校で一緒に仕事をしたりするはずの人たちが,駄目なんだよなと言い合いながらやっているのを何度も見ています。
 そうであるならば,糸賀先生が言っているように,教育に置いておくといっても,ある島では,この小さな島の中でこれだけ置くのというぐらいの教育委員会の人員を置いて,それで島外からの人を呼び込むという,人作りから町作りを成功させているところもあるし,片一方で,首長部局にそういうものを置いて,産業ともかませながら人作りというところで連携していくという,新しいビジネスを起こしていくみたいな感性も育てていこうよというところに行っているところもある。だから,それぞれの県が,そこら辺は,自分たちの町に合わせて,ニーズに合わせて選べる方がいい。
 ただ,専門性としての知識というのは絶対に必要だと。そこについては,きちんと研修機能も必要だし,専門性の高い学びの場が必要なんだと。私は,今後,指導主事はどうしても,きちんとした指導要領とかそういうものの下で先生たちを指導する立場で,社会教育主事に指導という言葉がどうもなじまない。指導ではなく,専門的知識を持ちながら,つなぎ,広げ,そういうことをやっていける人たちのことをいうんだというふうに,もしそこに主事という言葉がふさわしくないんだったら,ネーミングを変えたらいいんじゃないかと思います。

【浅井座長】  いかがですか。現場の方で。

【関委員】  行政の中で,いろいろ話は出ているんですけれども,社会教育主事が,教育のレベル,学びの部分で終わるようなところがほとんどのような気がするんです。恐らく行政の中では,学んだことを実際に事業の展開に生かしていく。先ほど糸賀先生が言われたような,まちづくりの方に循環させていけるような能力がなかったら,教育だけしても,行政側としたら,そこから先に発展性がないんですよ。
 そこのところのノウハウを求めるのであれば,今の行政の中には連絡調整機能を持つセクションがありますので,そういったところに社会教育主事的なマインドを持った人間が位置付けられる方が,地域にとってはプラスに働くような気がいたします。我々もその任務を果たしたいという思いで,今までの経験を発揮したいなという思いが強いです。

【浅井座長】  どうぞ。

【松田委員】  今のお話を伺っていて,本当にそうだなと思うところと,市民みたいなことが,言葉としてよく出るんですけれども,そうしたら,サービスの受け手の側から見たときに,例えば司書さんだと,本について聞けますね。学芸員さんだと,そういうことについて聞ける。指導主事は,要するに学校の先生が,教え方について聞ける。
 社会教育主事には,誰が何を聞くための役割になっているのかというのが見えないんですね。そこがベースにはっきりしてこないと,組織面とか制度面での合理性というのは分かるんですけれども,その一歩前に,そういう意味で,本当にそういう役割が必要なのかどうなのかという議論が,もうちょっと先行されないといけないのかなと思ったりしました。

【菊川委員】  皆様の御意見に対してなのですけれども,ワーキングですから,いろいろな議論があっていいと思うのですけれども,私は,成人教育や高齢者教育に対して,例えば政治的中立性とか,あるいは継続性とか安定性がなくていいのかなというところの議論は,一方でチェックが必要だと思います。
 それで,社会教育主事をどう考えるか,あるいは社会教育をどう考えるかということは,教育委員会制度をどう考えるかということにつながっていくと思います。そういう意味では,一方で,今,出たような議論と,もう一方で,例えば会議としてまとめていくためには,必ずその辺のチェックというか,例えば,首長のリーダーシップでどんどん町づくりが進む良さもあれば,首長が替わった途端に,今までやっていた大人の教育に資する施策が変わっていくことへの危惧とか,そういうところを確認する必要があるという意見を持っております。

【井上委員】  今日は私のことを言われているような感じで,否定されたり,家族からの信用がないとか能力が足りないとか言われているようで,針のむしろなんですけれども,今,皆さんおっしゃるように,まちづくりというようなミッションで考えると,確かにそのような形になろうかと思うのですけれども,忘れてはいけないところは,生涯学習体系の中で考えるということも必要だと思います。
 学力が余りにも学校教育における教育課程の学習だけで捉えられている傾向が見られるのですが,学びには体験活動があったり,地域での活動があったり,そういう学習により得られる知識や技術もも含めて学力なんだということを,改めて私たちが言わないと社会教育行政は消えてしまうと思いますし,その視点で施策を捉えれば,部局と一緒に効率的,効果的にやることだけを考えていいのか,やはり教育行政として,これからの子供たちとか,これからの未来への資産としてどのような子供たちを育てていくのかということをきちんと捉えていく必要性を考えると,まちづくりという視点だけじゃなくて,生涯学習体系として,子供たちには,こういう学習機会を与えて,高齢者にはこういう学習機会と活動の機会を提供していく,というような教育的な視点を併せて考えてく必要があって,ただ,活動をどうしていくかの考えだけだと将来的にまずい面もあるかなと感じております。
 その中で,部局との協働というものは必要ですけれども,役割分担がある思っております。教育行政としての役割,ミッションがあって,それと部局の活動とのミッション,それをうまく協働していくということで,社会教育の行政の役割,社会教育主事の役割というものは自(おの)ずと見えてくると思っております。
 以上です。

【浅井座長】  ありがとうございます。
 時間が迫ってまいりまして,まだまだお話しされたい方もいそうなんですけれども,お話を伺っていますと,それでは市民活動主事を作れということなのかなということも出てくるので,そういうことも含めて,そうすると,最後に出てきました,事務局からお出しいただいた総務省の方々にとてもかなわないですよというのもあります,本当のことを言うと。おっしゃっているのはこちらですよ。
 そういうことを含めて,私,余り狭く捉えようと,好きじゃないので,せせこましいことは嫌ですから,余り限定されないような新しいものを作られれば作りたいと思っているんですが,その辺,どういうふうに新しいものを,余り広げたときに,とても太刀打ちできないというものなので。

【竹原委員】  多分,少し関係あると思います。短く言う努力をします。
 皆さんがおっしゃっている中で,つなぐということに対しての異論は余りないんですけれども,指導,助言というよりは,コーディネートをする職員であるというのはいいと思うんです。それが町作りにもつながると思います。
 ただ,町作りをするときに,つなぐパートナー同士,様々なセクターがありますが,そこの市民の学びとか大人の学び,成人の学びというかもしれない。そこをきちんと押さえておかないと,様々なでこぼこした人をつなげて,やっぱり市民性を高めた上で町作りに関わる人を増やすというところには,社会教育の役目がまだあると思うんですね。
 だから,それがどこの部局に行くかとか,どういう名前になるかという議論の前の段階で,その機能があることを覚えておかないと,つなぐだけではなくて,そのつなぎ手になれるような市民セクターなり,NPOなり,市民一人一人を,作っていくというのはおかしいですけれども,そういうチャンスや,体験や学びの場を作っていかないといけない。
 それは仕掛けていく行政の公的な義務だと思うんです。そこに社会教育関係職員の立場というのは必ずあるはずなので,そこは忘れられないなと思って聞いていました。

【浅井座長】  ありがとうございます。今日で終わりじゃないので,次,いろいろ蓄えてきてください。
 これからスケジュールの話に行きますが,最後に,分科会長の方から一言,感想でも何でも結構ですので,方向付けでも結構ですので。

【明石分科会長】  正直申しまして,非常に刺激を受けました。やっぱりこういうスモールなサイズで考えた方がいいかなと思いました。
 一番心に残っているのは,関委員がおっしゃった,学びから行政にどう持っていくか,学びというのは大事ですけれども,目に見えない,見にくい。それを行政的な施策に持っていく能力というのは,果たして今の社会教育主事でできるんでしょうかということが1点。
 あと,松田委員がおっしゃったように,普通の成人,町の人からいくと,社会教育主事に何をお願いすればレスポンスがあるんですかというのは,これはずっと座長が言われていた,スキルというか,総合的な力を何で表現していくかなという方が,非常に分かりやすいというか,議論を深めていくといいなというのが1点ありました。
 2点目は,菊川委員がおっしゃった,社会教育行政の在り方。今,教育再生実行会議で教育委員会制度を変えていきますよね。それを,教育委員会制度の中に社会教育行政があるんです。社会教育委員会もあるし,生涯学習委員会もあるんだから,そういう地域全体における社会教育システムの検討もどこかで押さえておかないと,社会教育主事の資格任用とか,育成とか研修だけでいくと,その大きなことがぐらついてくるので,その辺のことも視野に入れてくれるといいかなということを感じました。
 以上です。

【浅井座長】  教育行政の方はまだ分からないですよね。

【坪田社会教育課長】  今日の感想めいたあれですけれども,非常に自由かっ達な議論ができ,分科会長が言われたように,スモールサイズの議論,でも,少し公開も意識して,言葉を皆さん和らげられていたのか,余り気にせず話されたのか,それはそれで,あれですけれども,非常にかっ達で良かったなと思いますし,様々な方向性があっていいと思っていますし,様々なアイデアがあっていいと思っているので,最初はどんと膨らませておいて,どこかで収れんしていくのか,あるいは選択肢型で出していただくのかということ,それも含めて,本当に自由な発想で今後も続けていただけたらいいなと思っています。
 初回は,事務局からはまだはっきりと言うあれではないんですけれども,もう既に中教審総会には諮問されたという動きは報道されているとおりでございますので,ああいうことが近々こちらの方にも影響してくるということですので,教育委員会で,現行制度を前提に考えるのではなくて,首長部局に全部行ってしまったらということも含めて,先ほど言われた政治的中立性とかその辺を担保する必要があるのか,あるとしたらどういう仕組みを作るのか,そこまで踏み込んで,先へ先へ考えていかないと,学校教育の後についていくような議論では駄目なのではないかと我々も思っていますので,我々もどんどん情報提供していきたいと思いますので,是非とも将来を見据えた,未来の社会教育を創造する議論を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【浅井座長】  それでは,もう一つ,今後のスケジュールがございますので,それにつきましては,事務局の方からお願いいたします。

【新木企画官】  資料6を御覧いただきたいと思います。スケジュールですけれども,本日は自由討議ということで,様々な御議論を頂きましたけれども,今後,5月から6月にかけまして3回程度,ヒアリング・討議等々を行いまして,7月には審議のまとめを提示させていただきたいと思います。その後,8月に審議のまとめということで,9月には分科会の方に報告という形になろうかと思います。
 最終的には,教育委員会制度の中で社会教育行政をどう位置付けるか,社会教育主事も含めて,次期通常国会に法案提出ということもありますので,非常にタイトなスケジュールでございますけれども,御協力いただければと思います。

【浅井座長】  スケジュールにつきまして,何か御意見等ございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは,時間をちょっと過ぎてしまいましたけれども,これで閉会させていただきます。
 課長さんがおっしゃったように,何でも言っていいそうですので,あとは事務局の方がまとめてくださると思いますので,次回もよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

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生涯学習政策局社会教育課