学習成果の評価の在り方に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成18年10月31日(火曜日) 15時15分~17時15分

2.場所

丸の内仲通ビルB1 K2会議室(文部科学省向いのビル地下1階)

3.議題

  1. 大学関係者ヒアリング
  2. 学習成果の評価の在り方に関する検討事項について
  3. 自由討議
  4. その他

4.出席者

委員

山本座長、小杉委員、山極委員

文部科学省

中田大臣官房審議官(生涯学習政策担当)、高橋生涯学習推進課長、平林社会教育課長、後藤参事官、岩佐企画官、鈴木高等教育政策室企画官・室長、濱口民間教育事業振興室長、中西生涯学習推進課課長補佐、山本家庭教育支援室長、その他関係官

オブザーバー

今野生涯学習調査官

5.議事録

(1)事務局より、前回欠席の委員の紹介が行われた。

(2)事務局より、配付資料について説明が行われた。

(3)渋谷東京学芸大学教授からプレゼンテーションが行われた。

 以下、プレゼンテーションの内容。

○ 渋谷氏 (資料1に基づき説明。)
 今回は、東京学芸大学の現状と登録生涯学習制度との関連性について説明した後、大学と生涯学習制度との関係について考察したい。

  • 東京学芸大学の現状について
     東京学芸大学は改革に対して保守的な傾向がある大学である。教員養成を目的とした大学であるが、その目的を粛々と遂行していればいい、という感がある。ただ、昭和63年から本学のカリキュラムに教養系を設置した。現在、教養系に所属する学生数は本学の45パーセントほどである。この教養系の基本方針は、教員養成ではなく、生涯学習社会の中での「教育者」の育成を目的としている。
     この教養系が、現在困難な状況である。具体的には、教員免許資格への方向性がはっきりしている教員系に比べ、教養系は方向性が明確でなく、それゆえ教育系よりも教養系の学生は就職率が低い。また、教育資格に比べて資格の取得が難しく、特に、教養系で独自に取得できるような資格がない。このままでは教養系の存在意義に関わるため何とかしなくてはならない、という危機意識はあるが、実際、教養系独自の資格を打ち出さないと困難である。
  • 大学における公開講座の取り組みについて
    東京学芸大学では、平成16年度から平成18年度にかけて、公開講座の受講者数と開講講座数は減少している。一方で一講座あたりの受講者数は増加している。これは国立大学法人化以降、公開講座に最少催行人数を設定したり、希望制の公開講座を開講するなどの取組を行い、費用対効果を大学でチェックしたためである。
     しかし、このように大学側の利益を追求していけば、いずれは受講者総数が極端に減少してしまい、大学の生涯学習に対する貢献が弱くなってしまう。対策には様々なものが考えうるが、方向性としては受講生を確保しうるような公開講座を開講する必要がある。
  • 大学と登録生涯学習制度の関連性
     大学が登録生涯学習制度を活用する方向性としては、二方向を考えうる。一つの方向性は、大学が資格の認定者もしくは試験の実施者として関わる方向であり、科目等履修生のシステムを活用すれば、正規生以外にも大学を開かれたものとしうる。また、公開講座等についても対応した資格があれば、講座への参加を促すことになる。一方、効果が明らかでなく汎用性に欠けるような資格については、大学としても提供することは難しいので、検討を重ねる必要がある。もう一つの方向性は、資格認定を活用する側として、特定の資格取得者に単位を付与したり、入学要件を緩和するというものである。ただし、資格の認定者もしくは試験の実施者として関わる場合と同様、大学としては当該資格について、「この資格はこのような資格である」という何らかの位置づけがほしいところである。
  • 海外の事例
     参考資料3については5年前のデータになるが、「全国資格フレームワーク」についてはイギリスの制度であり、学校教育における学歴と職業教育における諸資格を連動させた制度である。一方、CEU(継続教育単位システム)はアメリカの制度であり、民間団体である国際継続教育訓練協会(IACET)に学習プログラム提供者が参入することによって、そのプログラムによって取得したCEUの質と標準を保障するというシステムを果たしている。

(4)自由討議が行われた。

 以下、審議の内容。

【山極委員】
 登録要件はどのようなものになるのか。また、登録対象をどのように考えるか。本制度に民間の企業研修も入るのか。企業内部で行っているものも、外部から評価を受けることで質の向上につながると考えており、このような競争原理が必要であると考えている。

【山本座長】
 登録要件については、内容審査はしない方向である。外形的基準をしっかりさせることで内容面での充実も図りたい。登録対象については、企業研修も含めるかどうか、ご意見を伺いたい。

【小杉委員】
 本制度の対象は誰か。また、登録するメリットは何かの検討が必要である。

【山本座長】
 まず、外形基準の具体的な登録要件についてご意見を伺いたい。

【小杉委員】
 それでは、評価制度の必要性についてはどう考えているのか。

【山本座長】
 本制度は教育基本法案第3条に書かれている「学習成果の活用」の理念を実現するための仕組みである。

【今野生涯学習調査官】
 その意味で、今回は良い、悪いの評価を行うものではなく、評価されたものが活用されるべく、通用性を認証していくシステムであるといえる。

【小杉委員】
 最初から内容面の審査を行わないという前提とのことだが、内容を審査しない制度というのはありえないのではないか。

【事務局】
 参考資料2にあるように、行政改革の流れとして、国のいわゆるお墨付きは好まれない状況がある。技能審査制度の廃止もその一環である。国民の自主的な判断を尊重する制度が求められており、今回、このような登録制度を検討していただいているところである。

【小杉委員】
 評価はマーケットが行うのか。このような機能は民間で行ってもらえばいいという考え方もある。今回の議論はマーケットメカニズムを活用することが前提であるのだから、評価機能も民間での取組から考えるべきではないか。

【事務局】
 現状では民間で評価メカニズムが出来るほどには、市場が成熟していない。民間の取組を促すためには、まず、資格市場を国が整備することで、その次のステップとして民間での様々な取組が発生すると思われる。民間を否定するものではなく、民間の取組を促す方向を考えている。

【山極委員】
 確かに、今の市場ではこのような認証システムが存在しないことを考えると、民間にこのような制度構築を委ねるのは現時点では困難であろう。例えば、認証については、第三者機関が行うこともありうるのか。

【山本座長】
 その場合、採算等も考える必要がある。どれだけの団体が賛同してくれるかが大きな問題と考えている。

【事務局】
 内容審査を行わないこの制度のスキームは、平成12年のNPO制度に類似したものである。行政改革の関係から、内容を審査するような制度については、平成14年度以降はあまりなく、主として生命身体に関わるような行政需要が真剣に求められているものに限って認められているようである。

【山本座長】
 例えば、直接的に生命の危険に関わるものは内容を検討しなくてはならないものとして考えられる。その意味で、今回の登録生涯学習制度では、内容面を審査するのは厳しいのではないか。

【小杉委員】
 だから本制度はマーケットメカニズムから始めるということか。どうやってその市場の安定性を保障するのか。また、どこまで対象とするのか。企業の内部で行っている学習活動については、それを外部に出すことの意味をどう考えるか。企業内で行われているものでも、企業活動を通じて社会全体の生涯学習活動を活性化させているようなものは、対象とするべきではないか。

【山極委員】
 市場の安定性については、情報公開により、厳しく自分たちでレベルを上げていくのではないか。

【山本座長】
 例えば、自動車産業では、1企業ではなく、業界として研修等を行っているものもあり、そのようなものも考えられるか。

【小杉委員】
 本制度が対象とする学習分野について、教養的な分野と技術的な分野を区別すべきではないか。

【山本座長】
 その区別については、生涯学習の学習内容が多岐にわたることから、一律に区別するというのも難しいのではないか。外形基準を用いる際に何を基準とするかを判断するのは困難である。ところで、外形基準については、合格率は基準としていいのかどうか、ご意見を伺いたい。

【小杉委員】
 合格率は一定「以下」でなくてはならないのか。

【事務局】
 その点に関して、試験型だけでなく点数試験もあるが、例えば受験者全員が合格するような試験では価値が見出されない。その意味で合格率は擬似指標になるのではないかと考えている。その扱いをどうするかについてもご意見を伺いたい。また、点数型の試験についても、どのような形で情報提供していけばいいかを考えていただきたい。

【小杉委員】
 事実を出せばいいのではないか。合格率は基準としなくても、その情報を公開することは事実として必要ではないか。

【山極委員】
 試験の合格率で、その資格のレベルが分かるものではないか。

【小杉委員】
 経費についても、しっかり公開するべきではないか。例えば、講座が開設されているのであればいくらかかるのか、付随的に係るお金を含め、お金の流れを明確にすることで信頼性を高めるべきではないか。

【山本座長】
 他にも、資料2-2の2ページ目に列挙された情報は、信頼性を高めるための鍵になるだろう。質と信頼性の確保の関係については、更なる検討が必要であるが、公表情報として大学での単位認定についてはどうか。

【事務局】
 大学外活動に対する単位認定については従来弾力的に行うという方向できた。しかし、実際には、大学によっては、「こういう資格まで単位として認定していいのか」という例もあり、単純に推進するわけにはいかない。情報提供を行うとしても、登録団体のウェブにアクセスできるようにすれば足りるのではないか。

【事務局】
 大学・団体双方の見識が問われる中で、緊張関係が保たれて不適切な資格が排除されるような仕組みになればいいと考えている。

【山本座長】
 問題ある団体がこの登録に入らないようにできるのか、検討が必要である。

【小杉委員】
 情報は基本的に全て公開すべきではないか。受講生は財産と時間を掛けているのであり、それに対して市場の安全性の確保が重要であると考える。

【今野生涯学習調査官】
 どこまで登録するのかは難しいところがある。本制度の責任問題については、自己責任の原則をしっかり伝える必要があるのではないか。

【山本座長】
 少なくとも、情報については事実かどうかの担保が必要だと考える。

【事務局】
 その点については事後規制を考えている。例えば、NPOの制度では罰則規定がある。刑事罰の検討も必要かもしれない。また、風評等から怪しいと判断された事業者に対しては、調査権の行使も考えられる。

【山本座長】
 調査権は是非必要と考える。情報公開は原則とすべきである。利用者、社会の目が厳しいので、そこである程度担保されるのではないか。

【渋谷氏】
 苦情窓口や相談窓口など、事務局の体制整備が必要ではないか。

【小杉委員】
 いろいろなものを詰めこむと、ウェブサイトの運営には結構お金がかかる。

【事務局】
 掲載事項の信憑性について、将来的には文部科学省のウェブサイトで公開するとしても、例えば、いきなり全ての情報を公開するのではなく、段階的なアプローチが必要ではないか。特に、大学の単位認定制度との関係については、もう少し議論を詰める必要があるように思う。企業や地方自治体とことなり、大学は文部科学省が監督官庁である。提供団体の情報をそのまま掲載することの適否についても同じ扱いはできないのではないか。

【事務局】
 あくまで生涯学習提供主体が把握しているレベルでの掲載を行うことを考えている。そのため、虚偽情報については掲載主体である文部科学省が全てを調査して掲載するのは困難であろう。その意味でも詳細な情報公開が重要であると考えている。

【小杉委員】
 このホームページの情報にどこまで文部科学省が責任を持つのか、明らかにする必要があるのではないか。

【事務局】
 基本的には、実施団体からの提出物の情報に基づき掲載するものであるが、例えば、抜き打ち調査の実施や通報を受けての調査、違反についての警告・登録抹消の措置等も必要と考えている。

【小杉委員】
 掲載情報が虚偽のものであったことについて文部科学省が訴えられるような場合も想定できるが、どのような制度であり、責任の所在がどうなっているか等について明記することが必要ではないか。

【山本座長】
 虚偽情報に対する調査には様々な方法があるが、例えば、アメリカでは現在5、6種類の方法が存在している。

【今野生涯学習調査官】
 登録の内容についてどこかに情報が出ないと、規制は難しい。実施団体のホームページには公開が必要な情報について示しておき、閲覧者が簡易に閲覧できるような仕組み、とすることも考えられる。

【山本座長】
 公開の仕方については、実際の運用に向けた検討で整理していくことになると思うが、基本的な方向性として情報は可能な限り出す、という方向でよろしいか。

(一同了解)

【小杉委員】
 情報の正確性についてはどうか。品質確保が重要と考える。

【山極委員】
 会社であれば、監査役がいる。本制度においても会計・業務監査を任務とする機関が必要かと考える。

【事務局】
 事後規制だけでは限界がある。罰則規定とセットとして考えるべきではないか。

【小杉委員】
 市場として、事後規制で担保できない部分を事前規制で担保することが必要と考える。

【事務局】
 登録基準について、ご意見を伺いたい。

【小杉委員】
 基準として実効性・明確性のあるものを考えると、過去3年の実績以外に数的に出せるものが何かあるのか。

【山本座長】
 級に分かれている試験などについては、全てを掲載するべきではないか。

【小杉委員】
 外形基準の趣旨は、受講者がその資格について事前にチェックできることである。その意味では、合格率は登録要件には馴染まないと思われるが、情報としては公開すべきと考える。

【山本座長】
 試験の継続性については要件として重要ではないか。

【事務局】
 継続性に関連して、過去問題や正答例の公開について、ご意見を伺いたい。団体によっては、過去問題等を販売して収入源にしているところもあるため、そうした団体をどのように扱うべきか。

【小杉委員】
 過去問は公開するものとした方がいい。できるだけウェブ上での公開とすべきではないか。過去問題を出せるくらいの規模の団体を登録する、と想定してもいいのではないか。

【事務局】
 今後制度を創る上では、団体の意見も聞いていく必要がある。

【山本座長】
 生涯学習の活性化については、基本的には小口の投資家、つまり個人の学習者を大事にし、学習活動を活性かさせなくてはならない。それが教育基本法案第3条の趣旨にかなうと考える。ところで、本制度を利用する団体としてはどのようなものを想定しているのか。

【事務局】
 まず考えられるのは、旧文部科学省認定技能審査制度の対象になっていたところであるが、適宜民間団体に情報提供させいていただき、他の団体についても広く利用していただきたいと考えている。

【小杉委員】
 実施団体自体の評価はいらないのか。

【事務局】
 本制度の基本的な発想は「簡易な制度」である。事業主体に過重な負担をかけさせるわけには行かないと考えている。そこで一つには、財務諸表を要件とすることも考えている。

(5)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

─ 了 ─

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

(生涯学習政策局生涯学習推進課)