学習成果の評価の在り方に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成18年11月7日(火曜日) 16時~18時

2.場所

三菱ビルB1 M1会議室(三菱ビル地下1階)

3.議題

  1. 「学習成果の評価の在り方に関する作業部会」報告(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

山本座長、小杉委員、山極委員

文部科学省

中田大臣官房審議官(生涯学習政策担当)、高橋生涯学習推進課長、平林社会教育課長、清水男女共同参画課長、安間青少年課長、岩佐企画官、濱口民間教育事業振興室長、中西生涯学習推進課課長補佐、その他関係官

オブザーバー

今野生涯学習調査官

5.議事録

(1)事務局より、配付資料の説明が行われた。

(2)自由討議が行われた。

以下、審議の内容。

【山本座長】
 評価制度の趣旨についてどのように説明するか。

【今野生涯学習調査官】
 今回は資格として社会に流通しているものについて、より流通を促進するための土台作りをするものである。個々の生涯学習への評価活動は、今後の課題になるだろう。

【事務局】
 個々の生涯学習活動にまで現段階で評価をするのは、幅広になりすぎて難しい。

【山本座長】
 基本的な考え方や制度概要についてはどうか。

【今野生涯学習調査官】
 本報告書案では登録主体について特に制限がないが、例えばIT分野では民間で独自にやっている資格の方が、流通性が高い。このような民間資格も登録対象になるのか。登録主体の「法人」とはどのようなものか。

【事務局】
 登録主体の「法人」は公益法人のみではなく、株式会社等の営利企業も射程に入っている。ただ、特定企業内で行っているもので、その企業の社員しか受験できないようなものは含めない方向が良いのではないか。

【山極委員】
 特定企業内に全く限定されるものは原則認めないが、一般人も受験できるような、一般的公共性があれば認める、ということか。

【事務局】
 そのように考えている。

【小杉委員】
 報告書案4頁に、登録要件として「専門的知見を有する者が運営に参画」することを挙げているが、これはどういった趣旨によるものか。

【事務局】
 客観的外形基準といっても、試験実施主体や試験の内容について国が全く無責任である、ということではない。試験の内容が一定以上の水準にあることを、そのものを国が審査するというお墨付きのようなことをするものではないが、試験の内容の一定水準以上の担保を外形的に審査しうる基準として、専門的知見を有する者の参画を要件とすれば、一定のチェックになるものではないかと考えた。

【小杉委員】
 「専門的知見を有する者」とはどういったものか。解釈次第でどうにでもなる曖昧な要件なのではないか。具体的基準が必要であるようにも思う。

【山本座長】
 確かに基準としては曖昧である。ただ、試験の内容面について一定の外形的基準を設けることも可能ではないか。通常でも「この人が入っていれば大丈夫」という考え方をするものであるから、「専門的知見を有する者」という要件も一考すべきではないか。

【事務局】
 客観的外形基準は試験の内容評価をしないということだが、客観的外形基準も試験以外の内容、例えば生涯学習提供者の質を評価できないというわけではない。一般の方からすれば、客観的外形基準であっても、文部科学省が一定の水準を認めた、という期待を持つのが自然の流れであろう。それに応え、専門的知見の要件は、試験の内容に対する評価を盛り込むものではないが、その内容が一定水準を有するものと推察しうるような基準として加えたものである。

【小杉委員】
 登録要件として加えることが、果たして妥当であろうか疑問である。このような曖昧な要件としては削除すべきであると考える。例えばAとBという同種の資格があり、A資格の取得者とB資格の取得者について、「専門的知見を有する者」をどのように認定するのか。同種の資格であっても「専門的知見を有する者」として認められる要件に差がある場合、その区別をどのようにつけるのか。結局、自称に過ぎず、せっかく客観的外形基準という要件が並んでいる中に、試験の内容面の価値を国が判断するという恣意的な基準を不当に混入させたということではないか。

【事務局】
 国がお墨付きを与えることは不当であることはご指摘のとおりであり、結局、「専門的知見を有する者」の判断については社会が判断することであると思われる。登録要件として直に書くのではなく、情報公開の中に位置付けるというのではいかがであろうか。例えば、試験問題の作成に関与した者の全部又は一部のプロフィールを掲載するなどして、受験者を含めた社会全体に判断していただくというのがどうか。

【山本座長】
 登録制度への試験実施主体の参加について、教育業界は概して評価に対して否定的なのが伝統であり、その壁を打ち破るのが課題である。この点については、文部科学省の登録生涯学習制度に登録するべきだ、というインセンティブが与えられればいいように思う。試験実施主体の意見を聞ければいい。

【事務局】
 旧技能審査制度に関係していた諸団体に意見を伺って、ニーズを把握することを考えている。

【山本座長】
 制度設計における留意点について、例えば試験実施前に問題が漏洩したというような問題に対して、文部科学省は登録生涯学習制度の下でどのような立場をとるつもりなのか。

【事務局】
 要件のうちの、一般に公正妥当と認められる方法で行われる試験であること(例:試験監督が付される、事前に試験問題が漏洩しない)に該当することになり、登録が取り消されることになる。なお、登録生涯学習制度の下では、登録要件を充足しなくなった時点で登録を取り消すことを考えている。

【山本座長】
 例えば、ハッカーが侵入して試験情報や個人情報が流出したような場合など、試験実施主体に過失責任を負わせがたい場合はどうか。

【事務局】
 本制度は、一般法理に従い、基本的には過失責任の原則を考えている。ただ、このような場合は、情報管理責任を通常の場合よりも重く要求されることになるであろうから、実質的には不可抗力の場合以外は、試験実施主体の責任を幅広に問うこともありうる。

【山本座長】
 通常想定されないようなアクシデントも想定した上で管理しなくてはならないということか。ところで、ウェブサイト上での情報公開について、どういったものを想定しているのか。

【事務局】
 一覧性を担保するため、可能な限りウェブサイト上で情報を公開するつもりである。検索機能や並び替え機能を加えることで利便性を高めることも考えている。ただ、試験実施主体が掲載する内容について、一般的な広告にあたるような主観的な宣伝部分については当省による情報公開の対象として不適当であるため、ウェブサイトによる適切な情報公開の範囲を検討しているところである。

【小杉委員】
 広告部分について、試験の活用状況のうち、どの部分を掲載の対象とするかは微妙な問題をはらむところである。一定の制限をしないと無制限・無責任な情報が流れてしまう。

【山本座長】
 活用状況は市場のニーズを呼び込むものであるから、特に配慮が必要である。自由にさせすぎると単なる広告市場になってしまうし、規制が過ぎると情報統制になってしまう。バランスの取れた規制ラインが引ければいい。

【小杉委員】
 活用状況については、最近1年以内など、古い情報を排除する限定をかける必要がある。このための基準ができればいい。

【山本座長】
 個人的には、大学は登録生涯学習制度に意欲的に参入してくると思われるが、複数都道府県開催要件が大学の参入を阻害するものにはならないか。

【事務局】
 そのような場合では、複数大学が連合体を組んでコンソーシアムのような形で参入するような形を考えている。

【事務局】
 本制度は、今ある資格制度の流通性を高めるということについて、いきなり登録制度を構築するということを考えるものであるが、これは飛躍しすぎであるように思う。何らかの説明付けが必要ではないか。

【小杉委員】
 個人の選択が今までは困難であったから、今後に向けてマーケット整備は必要である、という意味での情報提供が必要であり、その意味で本登録制度の必要性は認められるように思う。

【山本座長】
 従来、生涯学習支援は団体や集団を対象としてきたが、今回は情報提供という意味で、個人を対象としている。個人が主体となるような社会環境となってきた、ということである。

【事務局】
 資料1の「これまで制度ができなかったのは、現段階ではまだ民間がそこまで発達していないからではないか」という部分と、登録生涯学習制度構築の関係についてご意見を伺いたい。

【山本座長】
 今まで制度が作られなかったことを考えると、日本では個人の学習活動については教養を高めるもので、評価に適さないものと考えられていたように思う。また、職業にかかる部分は、社内で足りるとされていた。

【小杉委員】
 今までは存在しなかった社会のニーズが、今は出てきたということか。

【事務局】
 一つの考え方としては、現在社会のニーズが高まっているが、民間に市場構築を完全に委ねられるほど市場が成熟していない、ということが考えられる。いつまでも国が本制度を丸抱えするのではなく、いずれは第三者機関に委譲できればと考えている。

【小杉委員】
 結局、なぜこの制度を国が作っていかなくてはならないかというと、国家戦略として行わなくてはならないからである。

【山極委員】
 グローバル化の中で日本が勝ち抜いていくためには、国家戦略として安定的な市場を構築することが必要であろう。ところで、登録生涯学習制度の運営に必要な資金はどれくらいか。

【事務局】
 本制度についてはいずれ予算の要求事項とすることも検討しているが、それまでにどれくらいの費用が必要なのか、ニーズについて予備調査を行うことを考えている。

【山本座長】
 現在国会で審議中の教育基本法が通れば、第3条の関係で、生涯学習振興法も改正する必要がある。

【事務局】
 今後の方向性についてご意見を賜りたい。

【山本座長】
 様々な諸資格を一つの体系にまとめて、お互いに相互互換性を審査して、一つのMAPを作るのが今後の方向性ではないか。ただ、互換性は内容に関わってくるから、そう簡単なものではない。根拠が見えていなくてはならない。

【小杉委員】
 皆が納得するものでないと、いいものにはならない。

【山極委員】
 登録生涯学習制度は国内限定の制度か。国際化は考えられているのか。

【山本座長】
 互換の基準ができれば、国際化の方向性も見えてくる。例えば、海外におけるボランティア活動を日本で評価されるということも考えられる。

【事務局】
 ただ、海外の場合は資格の安全性についての担保が特に難しい。

【山本座長】
 結局は、海外の資格評価機関をどの程度信用するのか、ということとつながってくる。

【山極委員】
 本制度の周知方法については、今から考えていく必要がある。内容的には良いことをやっていても、周知が弱いと評価されない。

【山本座長】
 これからは、国民に対するサービスとして、国は制度の周知方法といったものも考えていかなくてはならない。今後の課題に加えていきたい。

【小杉委員】
 文部科学省の制度ということで、最も一般的なものは学校を通じた周知のように思う。

【山極委員】
 産業界に対しては、経団連等にご協力いただくということも考えられる。

【事務局】
 先ほどのニーズの話と同様、様々なところから意見を聞く必要があるように思う。

【小杉委員】
 他省庁との関係も積極的に持つべきである。経済産業省や厚生労働省等と、共同運営するような形も踏まえて考えるべきである。

【山本座長】
 どの省庁もこの問題には関心が高い。対立するのではなく、協調して制度を構築・運営していければ良いように思う。

─ 了 ─

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

(生涯学習政策局生涯学習推進課)