家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成18年2月14日(火曜日) 10時30分~12時

2.場所

霞ヶ関東京會舘 「シルバースタールーム」(35階)

3.議題

  1. 「地域の教育力に関する実態調査」報告について
  2. 平成18年度予算案(家庭・地域の教育力関係)について
  3. 今後審議すべき主な論点(案)について
  4. その他

4.出席者

委員

 大日向委員長、大宮委員長代理、松下副分科会長、江上委員、加藤委員、菊川委員、見城委員、興梠委員、佐藤委員、田中委員、土江委員、中込委員、山岸委員、山本委員、坂元委員、杉山委員、中橋委員、藤野委員、山極委員

文部科学省

 田中生涯学習政策局長、中田大臣官房審議官、久保生涯学習総括官、大槻政策課長、吉田調査企画課長、高橋生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、清水男女共同参画課長、小川参事官、早川家庭教育支援室長、山本地域づくり支援室長、萬谷民間教育事業振興室長、その他関係官

5.議事録

(1)株式会社日本総合研究所(以下日本総研)より、「地域の教育力に関する実態調査」結果について、資料1-1及び資料1-2に沿って説明が行われた。

(2)事務局より、平成18年度予算案のうち家庭・地域の教育力向上に関する内容について、資料2に沿って説明が行われた。

(3)調査結果と予算案の内容について、質疑応答が行われた。

○ 坂元委員
 実態調査のサンプリングの件で、10地域を選んで、バランスをとって、日本全国の傾向を捕捉できるという工夫をしておられると思いますが、その次に、今度その地域の中でどのようにサンプリングをしたかが気になります。回収率が非常に高いので、おそらく、学校を通じて生徒や親に配付をする方法をとられたのかなと思うのですが、その場合、その学校が各地域において何校ぐらいで、また、どのような基準でその学校を選ばれたのかについて質問します。

○ 日本総研
 自治体にお願いし、教育委員会を通じて、今回の依頼を出しておりますので、どちらの学校にお願いするかは教育委員会にお任せしております。したがいまして、どこの学校、どこの校区をというところまでは、今回の調査で何かお願いしたという経緯はございません。

○ 坂元委員
 そうなりますと、学校の特性について、少し分析を加えていただいて、その資料を掲示して、含めていただきたい。結果の解釈にかかわる場合があり得ると思いますので、学校の特性について入れていただくといい。多くの人が参照する調査結果になろうかと思いますので、ご検討いただければと思います。

○ 杉山委員
 回収率が高過ぎるのではないかという気がします。学校を通じたことも含めて、どういう呼びかけをして集めたのか、ご説明いただけますでしょうか。

○ 日本総研
 基本的には、地域の教育力に関して実態調査を実施したいということで、教育委員会にお願いをし、教育委員会を通じて各学校に配付していただきました。保護者に関しては、まずお子さんに持ち帰っていただいて、お答えをいただいております。お子さんについては、教室でお答えをいただいたケースもあると思いますし、お持ち帰りいただいたケースもあると思いますが、そのあたりは、担任の先生にお任せをし、特にこちらのほうから必ず出してくださいと重ね重ねお願いをした経緯はありません。おそらく担任の先生をはじめ校長先生方が今回の調査の趣旨をご理解いただいて、回収にご尽力を下さった結果だと考えております。

○ 佐藤委員
 家族が地域とコミットメントしていると、子どもも地域とかかわりが深くなるということだと思います。事例のほうであまりそういうお話がありませんでしたが、今までも熱心な方というのは何割かいて、その方たちの家族、子どもさんはある程度地域でのかかわりを持っているということだと思いますが、新たに、大人や、父兄が、地域にかかわっていくことがとても大事なことだと思います。ヒアリングの9事例の中から、そういう新たな試み、今まで地域活動などしない人たちを呼び込むようなそういう工夫があったのかどうか、少し教えていただきたいのですが。

○ 日本総研
 事例の中では、実際に活動しておられる方々に直接お話を聞くというよりも、館長さんや団体の代表者の方に伺ったこともあり、保護者の方が実際にご自身のお子さんも連れて参加されているかどうかまでは、詳細には把握できなかった部分があります。しかしながら少なくとも、その地域の大人の方に、お子さんがいる方にもいない方にもとにかく幅広く呼びかけて、例えば八戸では、伝統行事について太鼓をたたく指導をしてほしいという呼びかけに対し、地元の大人の方がおこたえになったり、公民館や図書館を拠点にした活動の場合には、読み聞かせをする大人の人を積極的に団体の方が図書館から呼びかけられて、それに応じる大人の方がたくさん出てきているというところはございました。

○ 藤野委員
 事例についてお聞きしたいのですが、3事例とも、課題は人だと思います。指導者やリーダー、そういう方の非常に大きな影響を受けておられるなと受けとめておりますが、今後、そういったリーダーの発掘や、継承をされて活動が発展していくということについて、「課題」として載っているのですが、具体的にリーダーの育成に関する取組は現実に今されているのでしょうか。

○ 日本総研
 これは、いずれの事例でも大変苦慮されているテーマかと思います。ただ、実際に育成をしているかどうかは別にいたしましても、確実に育ってきているという事例は見受けられました。例えば、八戸の公民館を拠点とした活動の場合、館長さんを中心に、周りの大人を、特に若手の大人を巻き込んで、いろんな行事をやっておられる。その都度、この地域のためにみんなで力を尽くしていこうというご自身のお考えを繰り返しおっしゃるので、それが地元の方にも浸透していっておりまして、おそらく館長さんの意思を引き継いでやっていこうという方々は確実に育ってきておられるのではないかと思います。ただ一方で、なかなかコーディネーターになる人材の育成に苦慮されておられるのは、例えば大垣市では、行政にキーパーソンがいらっしゃる場合に、行政の職員の方はどうしても異動もあり、せっかく地域の方との人間関係を構築しても、異動とともにそれがまたリセットされてしまう、そこをいかに行政として埋めていくかという課題があります。地域の方の中からそういったコーディネートを引き受けるよという声が上がるのを待つしかない部分があり、そういうところで非常に苦慮されている部分があるかと思います。

○ 田中委員
 まず、感想ですが、21ページから28ページでやられている分析、これは非常に今後の政策上、役に立つデータだと思います。質問とコメントを4つ。1つは、先ほどのサンプリングの件に絡めて、教育委員会を通してということですが、各学年100名ずつとは各学年、1校だけを選んでもらったのか、それとも10人、20人ずつ、何校かに分けてやってもらったのか、その辺確認できればと。それから、東京23区の都心のほうは区外からの通学の子も多い。そういうところは避けていただいたのかどうか。2点目は、表記の問題ですが、資料1-1のBのところに、子どもの両親へのアンケートとありますが、両親という言葉を避けて、保護者でいいのでは。3点目は、調査の聞き方の件ですが、資料1-2の4ページです。この結果から見ると、自分の親に相談するという場合、兄弟に相談するというのは、どこに答えるのか、その人が子どもを持つ保護者なら1番か、あるいは親戚に全部含めて答えているのか、迷うケースがあるのではないかなと思いますので、確認です。4点目ですが、6、7ページの子どもの活動の実態。これはマルチアンサー方式なのか、それとも、それぞれについて、よく遊ぶ、時々遊ぶという程度で聞いているのか、あるいは生活時間調査のように、昨日というふうに限定して聞いているのか、その辺の聞き方を教えていただきたいと思います。

○ 日本総研
 まず、一番最後のご質問ですが、マルチアンサーで、昨日ということも特に限定はしておりません。選択肢をすべて羅列いたしまして、よくやるものを3つまで回答を下さいという様式です。それから、サンプリングの件で、各学年100名ずつ、これは学校によってクラスの人数も違いますし、少なくともその学年で100人はいるところにお願いしますという依頼をしております。ただ、その学校の事情によりまして、複数校にお願いしたケースもありました。区外からの通学の件は、調べさせていただきます。4ページの自分の親に相談するとか、兄弟に相談する場合は、どこに当てはまるかということですが、ご両親がおそらく近くにお住まいの場合は、近くの親戚というところにご回答される可能性が高いかと思いますが、遠くにいらっしゃる場合には、確かにこちらですとどこにも当てはまらないということになってしまうかもしれません。

○ 田中委員
 おそらく、5ページのところで、祖父母やいとことの交流がかなり高いので、実際には、若いお母さんの場合、自分の親に相談する場合が多いのではないかと思ってお聞きしたまでです。その場合、友達の親に相談するのと自分の親に相談するのが、もしかしたら4ページで一緒のところに丸が書かれているかもしれないと気になったので質問しました。

○ 日本総研
 おっしゃるとおりかと思います。

○ 大日向委員長
 ただいまのご質問を含めて、アンケート用紙の原版はおつけいただけるのでしょうか。それがわかると、今のご質問はすべておわかりいただけると思うのですが、概要版のところでもそれをおつけいただければと思うのですが。

○ 日本総研
 そのようにさせていただきます。

○ 江上委員
 プロフィール、調査手法、担当者の属性分析、そして質問紙がついてくるとかなり理解が進むと思いますので、よろしくお願いいたします。おおむねの傾向が今回の調査のご報告で理解はできたと思うのですが、ここから政策を起こす根拠に用いるということを考えると、今回予算案のご説明がありましたが、関連の調査の内容でいいますと、子どもと、子どもを育てている保護者と、そこを調べているわけですが、そこを対象にして政策を立てるだけでは不十分ということがあるかと思います。地域力というのは、子どもを持ってない多くの人たち、あるいは、子育てが終わった多くの家庭の人たち、この人たちの力をいかに引き出して、子どもを持っている家庭のサポート、環境づくりに流れを作るかが非常に重要事項です。そこの視点、あるいはそういった働きかけの施策が今回のこの予算案の計画の中に落とし込んであるのかどうかを少し事務局にお聞きしたい点が1つ。2点目は、例えばアンケート結果でご説明いただいた7ページで、子どもが過ごす場所の回答ですが、「公園、原っぱ、空き地」という回答があるわけですが、公園というのは確かに東京都でも、児童遊園とかありますが、「原っぱ、空き地」という空間は中都市以上、特に大都市においてはもうほとんど事実上ない。実際にあれば子どもも行きたい、でも遊びの空間の行き場がないという現実の物理的な街づくり、都市整備環境が既にあろうかと思います。それで、これからの街づくりの指針に対して、物理的な街空間のハードのあり方をどうするのかということをぜひここの生涯学習審議会からも働きかけ、提言をしていくということが大変重要かと思います。3点目は、今回ご説明いただいた予算案の中で、2ページの子どもの生活リズム向上のための普及啓発事業の実施についてです。具体的な活動となると、ポスターをつくり、イベントをやり、全国フォーラムを開催し、それの地域版フォーラムをやるという活動内容になってくる。これはこれでよろしいかと思うのですが、もっとインターネットを使うとか、手段、方法にいろいろな工夫が考えられるのではないかと思いますので、その辺の構想などもお聞かせいただければと思います。4点目、家庭教育手帳をつくるというお話ですが、家庭教育手帳をつくるときに、こういうツールのつくり方1つで効果が上がったり、広がりが出たりということがありますので、少し従来型のスタイルからいろいろご検討いただけるといいかと思います。見本をいつもお送りいただいて、とてもいいものをつくられているのですが、もっと使いたくなるような工夫をさらにされるといいかなという気がいたします。たとえば、さわやか福祉財団のボランティア手帳などは、若い人や、子どもも喜ぶツールになっているようです。これはコメントです。

○ 大日向委員長
 今、江上委員さんのご質問は、次の(3)の論点整理もかなりかかわる重要な点をご指摘いただいたと思いますので、事務局にお答えいただきたいと思いますが、その前に調査のことで1点申し上げておきたいのは、やはりこの調査はかなり注目を集めると思いますので、何人かの委員の方からご指摘くださったサンプリングの問題、特に教育委員会を通した手法に関して、どれだけ普遍化できるのかというコメントは必要かなと思います。と申しますのは、子どもがどこで過ごすかという調査結果を見ますと、ゲームセンターとかコンビニの回答数が極めて低くなっています。これが果たして実態なのだろうか。中学生の回答、ほかの調査を見ますと、やはりコンビニ、ショッピングセンター、それからゲームセンターの比率は、この結果よりはかなり高くなっております。したがいまして、学校の教室という場で、先生の監督のもとで回答したということにある程度バイアスがかかっているかもしれないと思いますので、そのあたりのコメントも何か触れておいていただければいいかと思います。

○ 萬谷民間教育事業振興室長
 江上委員のご指摘につきまして、まず最初の地域のお話についてお答えを申し上げます。子どもを持っていない多くの大人からのサポートが必要だというご指摘、まさにそのとおりでございまして、例えば資料2の6ページの地域子ども教室推進事業におきましても、保護者だけではなく、その地域の方々の幅広いご協力を得まして、指導委員、ボランティアといった形でご参加をいただいて実施しておるところでございます。また、ご示唆等をいただきましたら幸いに存じます。

○ 清水男女共同参画学習課長
 家庭教育の関係でございますが、家庭教育の支援におきましても、子どもを持っていない大人も含めて家庭教育を支援していただくというのは、大変大事なことだと考えているところでございまして、予算の関係ですと、資料2の1ページ目、例えば(3)の家庭教育支援の総合推進事業、こちらは行政と子育て支援団体等が連携をして、子育て支援団体の中の子育てサークルなど、実際に子育て中の親同士が連携をしていく部分もございますし、子育てサークルをある程度卒業された方も含めたネットワークをつくっていく。ですから、子育てが終わった方なども含めた子育てネットワークと行政が連携することで、支援をしていくといった分も含まれているところでございまして、各地域いろいろなやり方があるかと思いますけれども、子育て中の親同士、あるいは子育てが終わった方も含めた地域の大人が子育てなり家庭教育を支援していくといったようなことを、総合推進事業の委託事業を通じましてモデル事業の支援という形で取り組んでいるところでございます。それから、もう1点、子どもの生活リズム向上プロジェクトの予算につきまして、従来型の手法といったところもございますので、よりインターネットの活用等を考えてとのご示唆をいただいたところでございます。まず、明示はしておりませんけれども、例えば子どもの生活リズムのホームページをつくる等々の経費も盛り込んでいるところでございますので、そういった新しいメディアも使って運動していきたいと思っていることが1つございます。それから、それ以上に、この予算の執行ということだけではなくて、むしろそれとあわせて、3ページ目以降でございます、PTA等の団体と一緒になって国民運動を実施していきたいということがございます。PTA、子ども会、子どもを取り巻くさまざまな団体の取り組み、またさまざまなアイデアがあるかと思いますので、そういったところと連携することで、行政だけではできないような手法で、子どもの生活リズムの向上により一層取り組んでいただければと考えているところでございます。

○ 田中生涯学習政策局長
 子どもの基本的な生活習慣の取得と、子どもの体力や学力や気力、意欲といったものとの相関関係というのは、証明することが非常に難しいのだろうと思いますが、この運動をする限りにおいては、単に早寝早起きをしましょう、朝ごはんを食べましょうというだけではなく、学力テストの話とか、お手伝いをよくする子は正義感があるとか、これまで若干の調査があるわけですが、それに匹敵するような、例えば今この地域の現状として、子どもは何時ごろに起きて、昼間はどういうことをやっている、朝ごはんを食べているか食べていないか、こういう取り組みをして子どもたちの生活習慣が必ずしも上がってくるかどうかわかりませんけれども、そのときに、では学力はどうなったのか、その町の安全性がどうなったのか。そういうのを早急に、少し研究してみることが重要なのだろうなと思っております。その問題に関しましては、まさにこの委員会で、調査する前にお諮りして、こういう観点を入れてやった方がより新たな施策に結びつくのではないかというところも含めてご審議を賜って、実際の運動をやらせていただければ大変ありがたいと思っております。

○ 大日向委員長
 予算案の内容に関しましては、先ほどの調査結果に対しても同様ですが、今後本審議会で議論すべき論点と非常に深くかかわっていくと思いますので、議題の(3)に移らせていただきたいと思います。この会では、これまでヒアリング等を踏まえまして、前回の会議におきまして、今後審議すべき論点案につきまして、各委員にご提出をお願いいたしまして、ご提案をいただいたところでございます。それらを整理したものを本日お配りしておりますので、まず最初に事務局からご説明をお願いしたいと思います。

(4)事務局より、資料3に沿って、今度審議すべき主な論点案について説明が行われた。

(5)資料3今後審議すべき論点案について、意見交換が行われた。

○ 加藤委員
 先ほど調査結果等とも関連して、2つ意見を申し上げます。論点については、ほぼ出ているだろうと思いますが、その際に注意しなくてはいけないことは、地域の問題ですから、国と地域それぞれの役割をしっかりと区分した議論が必要だと思います。地域ごとの特色があるので、あまりゼネラルに網をかけるような方策ばかりでは、効果が期待できないだろう。そういう意味で、その材料やバックデータ、国民が納得をするような、こうすれば上がるというようなことはないのでしょうけれども、国民が持っている疑念にこたえるようなバックデータをしっかり研究していただいて、それを提供することにより、地域の活動を促していくという視点が非常に重要ではないかと思います。特に、国がやる以上は、一番必要なところに必要な資源を投入するという意味で、特に今日の調査でもありましたが、大変数字の低いところ、こうあってほしいのに低いデータが出ているというところがたくさんありました。そういうところに、そこの「なぜ」をしっかり追及して、手を打っていくという議論の仕方が非常に重要ではないかと思います。

○ 菊川委員
 2点、意見を申し上げます。今日の調査で、公民館、図書館、博物館で過ごす子どもの比率が3パーセント台ということで、国あるいは私どもにおいても、いろんな施策を講じているつもりなのですが、3パーセントというのはやはり低いかなと思いました。関連しますが、こういう家庭や地域の教育力を向上させる因子として、例えば公民館の活動や、あるいはPTAの活動、子ども会の活動、学校との連携、そういうものをつないでいく役割として、従来からの社会教育行政や生涯学習行政があると思います。そういった観点から、もう1つの部会、国民の学習活動の促進に関する特別委員会で議論しておりますが、そこはどちらかというと、そういうものも含めて、ベースとなる施策の議論をしており、そういうベースとなる施策の議論の上に家庭や地域の教育力の向上の課題も乗っていると考えたときに、2つの部会の連携が必要と思います。

○ 大宮委員長代理
 3つありますが、1つ目は、1ページから2ページまでのポイントに、家庭教育をめぐる主な現状のところの項目として、今日のアンケートの結果でも、大人と子どもの地域へのかかわりが、家庭教育、家庭の中のコミュニケーションにも大きな影響を与えるというアンケート結果が出ている、今回の調査の一番ポイントが大人の地域へのかかわり、子どもの地域へのかかわりが家庭の教育力にもかなり結びついていくのだという結果が出ているので、この項目のデータ分析の中に家庭と地域を分けるのもいいのですが、それぞれに例えば家庭教育をめぐる主な現状の中に、今のような大人や子どもの地域への無関心が家庭の教育力を低下しているという項目をしっかりと起こして、アンケートの結果を入れたほうが、迫力がある。同じ観点で、(2)の家庭の教育力の向上のための方策についてという2ページのところに、方策として、父親の子育て参画の促進という形で具体的に挙げるのはもちろん結構ですし、これが課題でもありますが、今と同じような形で、地域社会とのかかわりが家庭の教育力を向上するのだという視点、その各地域での大人や子どもの地域社会とのかかわりをどう向上、支援するのかという観点が重要だということを掘り起こしたほうがいい。当然、その中に、今回のアンケートのデータも、90何パーセントお母さんが答えているわけで、父親が7パーセントぐらいしか答えていない。父親が家庭や地域にかかわるということが重要だということも含めて出てくるといい。もう1つ、今日のアンケートの結果を聞いて、5ページの3の活動に参加する人材の養成・確保という、ヒアリング調査の中で、結局地域のコーディネーターがしっかりいるところにいろんな活動が出てくる。ただ、それは個人の熱心な活動によって支えられて、その後継者がなかなか育たないという結果が出ていますので、かなりはっきりと地域の人材育成に関して、具体的に可能な地域住民の人材リーダー育成と、NPOを活用した育成、あるいは自治体職員として、例えば社会教育主事の高度化、あるいは生涯学習推進委員、これは地域住民の側ですが、これまであるさまざまな役割を持った人たちを、もっと生涯学習プラス地域づくり、地域力の向上という視点を持って何らかの強化策を講じるという視点も重要なのではないか。自治体職員がかなり地域と家庭の教育力の向上にとって重要なポイントになっているので、社会教育主事の高度化とか再教育とか、地域づくりの視点をあわせた能力向上支援みたいな部分を出した方がいいのではないかと思います。

○ 大日向委員長
 今のご指摘、とても大事だと思いました。このまとめだと、地域と家庭が平行で並んでいますが、もっと立体的に、地域、家庭、行政、そして企業を複合的に構造化して議論すべきだというご提案だったと思います。

○ 見城委員
 私は今までの議論を伺っていて、大人というくくりなのですが、3ページ、地域の教育力をめぐる主な現状のところの関連データにショックを受けました。つまり、近所の大人とよく一緒に過ごす小・中学生が、平日0.8パーセントで「なし」と考えたほうがいいような現状です。それで、こういうほとんどゼロの状況から、どう持っていくのかというときに、近所の大人というイメージをもう少し議論すべきで、もっと分解していくというのでしょうか。大人もいろいろあるのですが、例えばニートの人たちが近所にたくさんいらっしゃるわけですけれども、そういう人たちも含めて人数としては入っているのですが、本当に具体的に何かやろうとするときに、大人といっても出てこないという状況があります。もう少しここで、本当に具体的にかかわれる大人というものを分析して出していくべきだと思います。2点目は朝食のことですが、データがたくさん出てはいます。それは、朝食を食べない子がよくないというデータが出ているのですが、もし予算が何とかつけられるならば、私はもう少し具体的に朝食を、形を変えてでも、今育っている子どもたちに出せるような議論はできないか。朝食をちゃんとみそ汁から一式で出さなくても、何かできないかとか、そういう議論の余地があるなら、そういうものを入れていただきたい。今日からでも食べない子に食べさせたい気持ちがあるのですが、その辺を議論に入れていただけないかと。

○ 田中委員
 2つ申し上げます。1つは、家庭の教育力ですが、2ページに、きめ細やかな支援で女性への支援とか、母親に身につけさせるとありますが、どうして男性を削除しているのかよくわからない。後ろに男性も少し出てくるのですが、私のように20年間共働きでいろいろ子育てやってくると、もう疲れ果てて、やはりもっと支援していただきたかったと思うものですから、ぜひここは、「女性並びに男性への支援」とか、「母親並びに父親に身につけさせる」を検討していただけるとありがたい。もう1つは、地域の教育力ですが、全体に大人が頑張って子どもに体験させるというイメージが全面に出ているように思います。大事なのは、子どもの参画という考え方で、子どもが大人と一緒に築き上げていく、それが子どもの成長につながる、それこそが地域の教育力の大事な点だと言われるので、「子どもの参画」という言葉と、それから、それを進めていくと、大人と子どもが一緒に地域をつくっていくわけです。そうすると、地域づくりということと地域の教育力は、コインの両面みたいなところがある。ですから、「子どもの参画」ということと、「地域づくり」という言葉、概念を出していただけるとありがたいと思います。

○ 土江委員
 アンケート結果と18年度予算案を通して、これまでの論点整理の中に、さらに加えて議論できればと思いましたのは、新規事業の生活リズム向上事業をこれからどう推進していくのかといったときに、子どもの居場所づくりと、この生活リズム向上というのは当然リンクしているものだし、また、させないといけないと思っています。アンケート調査の中で、保護者の意識啓発のあり方が大きなポイント。子どもの居場所づくりは、1つには、地域の教育力を通して、家庭の教育力をどう高めていくか。だけど、実際になかなかそういう向上が見られない状況にもあるわけですから、そういったときに、生活リズム向上が出てきたというのは、非常に時宜を得たものだなと思っており、推進していくターゲットはだれなのかといったときに、保護者でありPTAのあり方をいま一度再考しながら、PTA活動のあり方を全面的に出していくことが必要になるのではないかと思います。

○ 山本委員
 基本的なスタンスの問題ですが、従来の家庭の教育機能や、地域社会の教育機能が失われてきている。これは歴史的に見て戻らないと思います。明治の末にもこれと同じような議論を盛んにしている。したがいまして、新しい社会の構成要素の持つ機能をうまく使うことを考えていく必要があるのではないかというのが1点です。具体的に言うと、今、地域コミュニティーという言葉がありますが、そのほかにネットコミュニティーが出ています。ネットコミュニティーといっても、ITだけではなくて、ヒューマンネットワークというものもあります。青年の組織は、今はネットワークで、昔の組織ではない。従来の手法で動員をかけてもうまくいかない。そのかわりネットワークでうまく動くところもあります。ですから、その辺の新しい社会の構成要素をうまく使っていくことが、1つ必要だろうと思います。それから、人材の問題ですが、従来のような人材を求めても、それはもう無理なので、新しい社会の構成要素の機能を持つような人材、例えばネットワークの技法をうまく持っている人たちも地域にはたくさんいるわけで、その人たちをうまくこういうところに結びつけていく、それこそネットワーク化していくことが必要ではないか。これが2点目。3点目は、全体のまとめの前提として、国民運動とする部分と、それから1割か2割か3割を対象とする部分をうまく切り分けていただければと思います。従来3割社会教育という言葉がありまして、3割目指せばいいところといわれました。今大都市中心ですから1割いけばいいところとなります。でも、それはそれで意味があるわけですから、そういうところと、それから先ほど来出ている国民運動的なところというのは、はっきり区分けしないとまずいだろうと思います。

(6)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

-了-

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生涯学習政策局生涯学習推進課

(生涯学習政策局生涯学習推進課)