家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成17年11月29日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省10F1~3会議室(10階)

3.議題

  1. 地域の教育力の向上について ‐関係委員及び有識者からのプレゼンテーション‐
    ○ 笹井宏益委員
    ○ 財団法人足立区生涯学習振興公社
    ○ 滋賀県草津市教育委員会
    ○ 牧悦子氏(岡山県津山市ソシオ一番街「まちなか子ども基地」運営委員会代表)
  2. その他

4.出席者

委員

 大日向委員長、大宮委員長代理、加藤委員、見城委員、佐藤委員、松下副分科会長、明石委員、土江委員、山岸委員、赤坂委員、坂元委員、笹井委員、杉山委員、中橋委員、藤野委員、藤原委員

文部科学省

田中生涯学習政策局長、久保生涯学習総括官、大槻政策課長、吉田調査企画課長、桒原生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、清水男女共同参画課長、小川参事官、佐藤生涯学習企画官、早川家庭教育支援室長、山本地域づくり支援室長、萬谷民間教育事業推進室長、その他関係官

オブザーバー

 保田幹夫(財団法人足立区生涯学習振興公社スポーツ部長)、小故島睦光氏(財団法人足立区生涯学習振興公社地域クラブ推進課主査)、築山えり子氏(草津市教育委員会生涯学習課指導主事)、牧悦子氏(岡山県津山市ソシオ一番街「まちなか子ども基地」運営委員会代表)

5.議事録

(1)笹井委員より「地域づくりの新しい方法」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 笹井委員
 地域の教育力を高めることにつながる地域づくりとはどういうことか、という問題意識で発表します。
 グラウンドワーク三島という市民団体(NPO法人)があり、まち全体が団体の活動により大きく変わってきました。それが子どもたちに対して非常にいい影響を及ぼしてきたという実情について、説明します。
 三島市は人口11万人、静岡県東部のまちで、富士山のすそ野に位置しています。川の周りに歩道がきちんと整備されており、非常に緑の多い、水のきれいなまちです。
 この川のきれいさやまちの美しさは、いろいろな立場の市民の努力のたまもので、地域の人たち、市民団体、地域団体のまちの環境保全、美しいまちをつくろうというこれまでの成果です。
 十数年前までは、郊外にある大きな企業の工場があり、そこの排水の温度が非常に高く、プランクトンが大量に発生して水が濁ったり、まち全体がとてもきれいと言えるような状況ではなく、これを何とかしたいということで、8つの団体が1992年にグラウンドワーク三島実行委員会をつくり、水の都、美しい都、三島の再生をしようではないかと活動を始めました。
 その際に、イギリスでよく利用されているグラウンドワークトラストというやり方を導入しました。関係団体の代表者が実行委員会をつくり、月に1回集まり、決めたことを各団体が役割分担として実行していくという形で、まち全体をきれいにする活動です。
 グラウンドワークの手法の特徴は、市民、企業、行政の3主体が協力して対応すること、実践的な活動を重視したものであること、各団体の代表者がグラウンドワークトラストを構成して協議し、最終的に意思決定をして、みんなが協力し合ってやること、それから、活動のプロジェクトごとにコアスタッフ会議を設けて、若い人たちに活動プロジェクトの中心になってもらうというやり方です。
 これまでに30近いプロジェクトを実施してきています。主なものは、まちの中心に流れている川があり、その環境再生と水辺の空間の整備。これは土地改良区や市役所の中でも公園整備課や教育部門やいろいろな部門が協力し合ってプロジェクトを遂行して、きれいな川を再生させました。
 地域づくりの方法ですが、環境という切り口で地域をとらえて、それを一つの大きな理念、ビジョンとして市民の人に提示し、一種のミッションとして、そのもとにみんなが集まって活動しようという形をとっています。基本的に一つの団体がやるのではなく、団体同士が連合体をつくって地域づくりを進めます。そして、意思決定までの協議、議論を重視しているということが、地域づくりの方法として非常に重要視されているところです。
 多方面から高く評価されており、特にまち並みや景観という観点から、国の機関から景観大賞を授与したり非常に高く評価されています。その理由として、1つはネットワークの構成がユニークである、もう一つはマネジメントが戦略的、3番目は行政の賢明、この3つの特徴があるからだと思います。
 ネットワークの構成とは、古いタイプの団体と新しいタイプの団体が両方入っているということです。町内会とか古くからある団体の顔をつぶさないようにして、新しい団体が先導して活動していくというやり方をとっている。古い団体の協力を得られないと何も進まないし、場合によっては無理なことを聞いてもらうことが必要です。
 縦横、非常に重層的なネットワークをつくっていることが、一つの大きな特徴です。それは自分たちの団体は不完全だという前提のもとに、足りない部分をみんなで補わなければいけないという考え方に立っていることと、若い人たちが集まってきて、しかも古い人たちとうまくつき合えるような組織の体制をつくっていることがユニークです。
 その接着剤になっているのが、みんなが共感できるようなミッションを提示していることと、意思決定機関にみんなが集まって徹底的に議論し、最終的な意思決定をすることです。そこの中で個人的な信頼関係ができていることが、大きなネットワークがうまくつくれている一つの理由だと考えました。
 2番目の戦略的なマネジメントというのは、このプロジェクトが終わるとこのテーマと、次から次へとアクションプランを提示して、常に前向き、未来志向で活動を重ねてきていることと、自分たちの活動した成果を目に見える形で示していることです。そのことによる動機づけを維持していることが、戦略的なマネジメントとして大きな意味を持っているのではないかと思います。
 まとめると、ミッションの具体化としてのアクションプランがあり、それを実践して、活動の成果を明確にし、それが次の活動をやろうではないかということに結びついて、さらにそれがミッションの充実、まちがますますきれいになってくることに結びつき、だからこそ、これまで関係なかった人もネットワークに入ろうではないかと、ネットワークの拡大につながるよい循環を生み出しているのではないかと思います。
 グラウンドワークトラストという意思決定機関に各代表の人が集まって議論をすることで、そこで決めた役割分担は、自分の団体に持って帰って、自分たちが責任を持ってやらなければいけないという構造になっているから、責任を持って発言して、それを必ず実行するという形の大人の学び場になっているのではないかと思います。
 3番目に、行政のかかわり方ですが、通常、行政というのはプロジェクトごとに補助金を出したりしますが、三島市の場合はせせらぎ事業推進室という市長部局が中心になって、グラウンドワーク三島の総事業費の3分の1を助成し、残りの3分の2は市民と企業の負担でと助成の枠組みを決めて、そこに毎年決まったお金を出すという形をとっています。
 これはプロセス支援と言われ、タスクそのものの達成を目的にするのではなく、市民や企業が自由に、自主的に行う活動を側面から、プロセスを保持する立場で支援するという行政のかかわり方をしています。このことが市民レベルのいろいろな関係のつながりや、関係性の構築を促しているのではないかと思います。
 このように大人たちが動いて、自分のまちをいろいろな団体が、それぞれの立場でまちをきれいにする活動をしていると、子どもたちも変わってきます。インタビューしてみると、子どもの教育にとてもいい効果があり、環境保全やまちをきれいにする活動は、体験学習的な意味も、奉仕活動、ボランティア的な意味もあり、一つの連合体として活動するわけですから、知らない大人たちとの交流機会も持てますし、自分たちの活動した結果が、目に見える形できれいになっていくわけですから、必然的に自分たちの地域を好きになっていく、郷土愛みたいなものが育っていきます。地域の教育力をつくるということはどういうことか。この事例から考えると、1つ目は、子どもを含めて地域の人たちとのつながりをできるだけたくさんつくることではないかと思います。
 これはつながりや世間をどうつくるかという問題で、教育力というと、教育力を持った大人がいて、それが子どもに対してどうアプローチするかという実体概念としての教育を考えてしまいますが、むしろ地域の教育力というのは、ソフトな環境をどうつくるかということではないかと思います。いろいろな団体がつながり合う、ネットワークをつくって、その中に子どもがうまくはまって活動するという形が、地域の教育力の一つのつくり方ではないかと思います。
 2つ目は、大人がまず行動して実践し、それを子どもが見て、子どもも一緒にやっていくという形になっている。子どもだけに焦点を当てるのではなくて、大人がどう行動するか、大人の行動をどう促すかが地域の教育力をつくることにとって大事なことではないか。
 最後に、この活動を促すような支援を、行政が側面からしてあげることが大事ではないかと思います。

(2)財団法人足立区生涯学習振興公社の保田氏、小故島氏より「総合型地域スポーツクラブの取り組み」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 保田氏
 足立区では、平成14年9月に足立区生涯スポーツ振興計画を策定しました。この計画の目標に、いつでも、どこでも、だれもが、いつまでも気軽に運動、スポーツ活動に親しめる生涯スポーツ社会の創出を掲げ、将来はいずれかのスポーツサークル等に所属をして、日常的に運動、スポーツ活動を実践している区民の割合を30パーセントに、また1回当たり30分以上の運動を週2回以上継続して、おおむね半年以上持続している人の割合を50パーセントにすることを目指すこととしました。
 これを達成するための手法、方策の一つとして、総合型地域スポーツクラブの育成に取り組むことにより、スポーツ人口の拡大のみならず、地域住民の健康・体力づくり、地域コミュニティーの形成、子どもの健全育成などを推進し、健康で心豊かな生活、明るく活力のある地域社会を実現していこうと考えています。
 しかも、地域のことは地域で解決するという、いわゆる住民自治、地域自治の考えから、足立区では地域に根ざしたクラブ育成に取り組んでいます。日常の区民生活に最もつながりの深い町会自治会連合会の25区域をベースに、体育指導委員や青少年委員が中心となって、町会、子ども会、学校、PTA、スポーツ団体等の代表や有志の参画による地域主導で進めています。
 現在、足立区には3クラブが設立され、活動を行っております。そして、今年度中には2つのクラブが設立を予定しているところです。

○ 小故島氏
 クラブの取組、活動概要について説明いたします。
 先に、クラブの活動状況を紹介いたしますビデオを3分ほどご覧いただき、それからご説明させていただきます。

(ビデオ上映)

 地域の方々が運営して、さまざまな活動をしていますが、総合型地域クラブの特徴は、地域住民の方の自主運営であること、子どもから高齢者まで世代を超えた活動を行う、スポーツだけではなく文化種目や、さまざまな地域活動を住民の発想によって行っていることです。もちろん、お年寄りの健康づくりや社会参加、そういった部分も目標にはなっていますが、やはりどのクラブも子どもの健全育成を大きな柱としています。
 いろいろな文化、スポーツプログラムを、1~2週間に1回という形で続けていて、そのほか区からの受託事業を行ったり、地域の運動会や商店街と連携した活動を行ったり、さまざまなプログラム活動を展開しています。
 総合型地域クラブの成果ですが、もちろん文化、スポーツ活動の充実というのはありますが、家族で参加できるものや、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に参加できるものなど、世代を超えた交流という点が一つの成果かと思います。
 クラブも一番初めにできたKITクラブは今、4年目に入っているので、かなり地域の方々からの認知度も高まってきて、住民からの提案や発信も、徐々にですが出てくるようになってきています。
 もう一つ、学校の施設を主に使用し、そこでいろいろなプログラム展開をやっているのですが、一つのクラブは英会話の教室を開いて、そこに中学生が参加したり、あるいは、学校の中にクラブハウスを置いたところ、そこに子どもたちが休み時間とか放課後に遊びに来て、いい息抜きの場になったりとか、近所で不審者が発生したときにクラブの方たちが一緒になって子どもたちを送っていったりとか、学校との連携も少しずつですが出てきています。
 指導者も、なるべく地域の方に指導していただくようにして、近所の子どもたちと一緒に活動するという場面が出てきています。
 最後に、総合型地域クラブの課題ですが、1つは、継続した地域の有志のボランティアの活動になるので、やはり運営スタッフの確保、モチベーションの継続。それから、自主財源のクラブということになっていて、足立区から補助金という形では出していないので、財源の確保も一つ大きな課題になっています。
 今後の展望としては、あだちコミュニティーキャンパス構想というものがあります。地域の子どもを地域で育てるということで、学校施設を地域の学びの核と位置づけて、学校、家庭、地域が一体となって子どもの教育、健全育成にかかわる仕組みをつくっていこうということで、これまでの総合型地域スポーツクラブの機能を拡大して、文化活動の充実や、居場所づくり、あるいは学習面の支援などいろいろ幅広い活動をする。クラブを介して広げていって、大人もただ参加するだけ、ただボランティアをするだけではなくて、自分も参加しながらその延長線上で子どもたちの支援をしていこうと。これから立ち上がります千住地区では、一つのモデルケースとして、取組を始めているところです。

(3)滋賀県草津市教育委員会の築山氏より「草津市の地域協働合校」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 築山氏
 草津市は、現在、人口は11万5,000人強、日本最大の琵琶湖を有する滋賀県の南東部に位置しています。東海道と中山道の分岐、合流の地であった本市は宿場町として栄え、華やかな人々の交流からすぐれた街道文化をはぐくんできました。市内には、現在、立命館大学、滋賀医科大学、企業研究所、それから県立琵琶湖博物館等、さまざまな学びの施設を有しています。
 本市は全国有数の人口急増都市となっていて、4年ほど前、全国1位の人口増加率を誇った年もありました。
 このような急激な都市化により、地域との人間関係が希薄化して、コミュニティーづくりが難しくなる面も出てきました。そこで、教育は学校に任せてきた今までの教育観を見直して、地域で子どもを守り育てる、地域の教育力を回復させることが重要となってきました。本市では、平成10年度より、子どもと大人の学び合い、かかわり合い、喜び合いで、地域の心をはぐくむ地域学習社会の構築を目指して、市民の皆様とともに地域協働合校に取り組んできました。
 地域協働合校とは造語で、「地域」は小学校区などを単位とした市内のさまざまな地域を指します。「協働」は、子どもと大人が世代を超えて知恵を出し合い、協力してともに活動することを表します。「合校」は、社会の変化に対応するために学び合う社会を表しています。
 地域協働合校の推進については、子どもと大人のかかわり合い、学び合い、喜び合いを大切にしながら、青少年の健全育成と地域学習社会づくりを目指し、家庭、地域がどんな子どもを育てるのかという同じ方向を向きながら、それぞれの持つべき教育力を高めて、役割分担をしていくことを明確にしながら、3者の連携、融合を進めています。
 平成10年から立ち上げました地域協働合校も、そろそろゴールの時期になってきました。平成18年は第3ステージで、各地域で進めていただいていますが、第4ステージにまで進んだ地域もあり、地域の子どもの小集団活動の促進や、大学や企業などの連携も進んできました。特に平成10年は、開かれた学校づくりという発信から学校に組織の事務局がありましたが、平成14年からは公民館に事務局を置き、さらに学校週5日制にも伴い、地域で子どもを育てるという仕組みがどんどん進んできました。
 地域協働合校の組織は、小学校13、中学校6で、19の組織がつくられています。自治連の組織、社会福祉協議会、老人クラブ、PTA、さまざまな連携機関と組織を組んでいます。
 地域協働合校の事業では、7つの分類に分けています。平成16年は、781事例が市内で地域協働合校事業として取り組まれました。
 中学校における地域協働合校事例ですが、地域の事業所と連携しましたキャリア教育、職場体験が進んでいます。
 小学校における地域協働合校事例では、やはり保護者の地域ボランティア、学習ボランティア等の連携で、教育課程に位置づけたものが進んでいます。
 立命館大学との連携、体育科、家庭科、理科、これも教科に位置づけて連携しています。
 琵琶湖博物館との連携では、総合的な学習の時間の中で、環境教育に特に力を入れて連携活動をさせていただいています。
 NPOとの連携で、すべての小学校で無農薬米づくりが進んでいます。それぞれ学区の特色を生かしています。
 老人クラブとの連携も進んでおります。
 公民館は、地域の学びの拠点ということで、さまざまな方との連携や、地域の方と子どもが土曜日、日曜日を使って学び合う地域環境づくりが進んでいます。
 伯母川博物館といいますが、地域の川を探検し、公民館に博物館をつくりました。地域の方がたくさん見に来られて、自分たちの身の回りの環境のすばらしさ、環境を守ることの大切さを学ぶ機会となりました。
 また、学校と公民館が連携して地域の祭りも進められています。ほとんどの学校で日曜日、土曜日に開催しまして、地域の方とともに文化活動の発表の場を共有しています。
 公民館サークルとの連携も大変盛んで、人と触れ合うことで人の温かさや生きる楽しさを体感したり、地域に愛着を持つ子どもを育てています。
 ふれあいまつり、大人と子どもがともに学ぶことで、学区の将来を担う一員として地域での一貫教育が進められています。
 公民館では、長期の夏休みになると、公民館で宿泊をする公民館の家体験合校が進められています。異年齢の集団の中で、さまざまな生活経験や自然体験をプログラムして、地域のボランティアの方とともに子どもが1泊以上を過ごしている事業です。これを経験した中学生がさらに小学生のリーダーとなり、地域での子どもの縦集団づくりの一つにもなっています。最近では、通学合宿というものに変わってくるところもあり、公民館から学校に通うという活動も行われるようになりました。
 8月に行われました渋川学区の地域協働合校の事業ですが、防災をテーマに、親子で学校に宿泊する活動を行いました。広域避難所になっている学校に避難したときにどうなるんだろう。大人と子どもがともに宿泊を通して、避難の大変さ、緊急時にどうしたらいいのか、身の回りにどんな危険があるのかを学ぶ機会になりました。
 非常時の簡易トイレなどもつくりました。バケツリレーも行いましたが、最近の子どもはバケツの水をまくことができないという実態に大人は随分驚きました。また、非常食を考慮したメニューということで、防災対策室から提供いただいたアルファ米を使い、非常食を中心としたメニューで過ごしました。ところが、子どもたちにとっては珍しく、大変おいしいということで好評でした。
 次に、夏休みに地域の学習ボランティアの方の協力を得た、教室開放のわくわく教室の取組です。学校にあるパソコン40台を夏休みの間に使わない手はないので、地域のボランティアを募って、子どもが楽しくパソコンを学習できました。また、地域の方と一緒に歌うという体験を通して、心温まる地域の方との触れ合い交流の時間も持つことができました。
 わがまちの子ども学び舎づくり事業も、地域協働合校事業として行っています。これは、町内会などにおいて、子どもと大人が体験的な学習を通してかかわり合うことを目的にしています。子どもたちにとってより身近な町内会において、日常的により多くの大人と子どもがかかわれるように支援する取組です。3カ年の実績としましては、81.5パーセントの実績を上げました。
 予算としては16年までということでしたが、自治連の会長の一言で、せっかく育てたメダカをお金がないからといって育てないのか、地域の美化活動をしているのにお金がないからといってやめてしまうのか、やはり地域で続けていきたいという一言でお金の心配もなくなり、今も継続して取り組んでいただいています。
 今後の取組の方針としては、輝くひとづくり、まちづくりを目指していくわけですが、この8年間の取組の成果としては、さまざまな体験を通して、大人と子どもがともにかかわり合うということで、顔と顔がつながり、地域が子どもを守り育てるという機運が育ちました。地域事業に参加する大人の数も増えました。大人の姿を見ながら、子どもがあんな大人になりたい、また青少年とかかわることであんなお兄さん、お姉さんになりたいという、子どもたちの生きる指針を学ぶ機会ともなりました。中学生の地域参加も少しずつではありますが随分増えて、青少年リーダー養成としての役割も果たすようになってきています。
 課題としては、やはりまだ限られた人で終わってしまっている部分もあります。本当の子どもを育てるための体験的な活動とは何だろう、子どもの育ちに合った内容になっているか、さらに検討しなければなりません。しかし、継続は力なり、市民主導による地域協働合校になってきたこの取組を、さらに輝くひとづくり、地域づくりとして進めてまいりたいと考えております。

(4)岡山県津山市ソシオ一番街まちなか・子ども基地運営委員会の牧氏より「まちなか・子ども基地の取組」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 牧氏
 まちなか・子ども基地は、商店街の中にあり商店街の空き店舗を使った開設になっています。 津山市は岡山県の北部にあり、今年の2月に合併をし、人口が9万人から11万人となりました。お城跡が残って、桜がきれいな名所があって、その周りに城下町として発展していったまちです。まち並みも昔のものが残っていて、そこに商店街が幾つもできて発展していったまちです。
 郊外の大型店の問題などあり中心部に再開発ビルを建てたのですが、なかなかうまくいかずに、中心市街地の活性化をみんなが口にするようになっていました。
 ソシオ一番街の通りですが、再開発ビルができるということで、アーケードのカラー舗装も一新してきれいな商店街に変わりましたが、毎年毎年、人通りが少なくなっている現状です。
 そういう中で2年前、津山まちづくり本舗というまちづくりを考える市民団体を、商店主だけではなく、市民活動をしている人たちを巻き込んで、行政も加わっているのですが、みんなでまち中、中心市街地を中心に考えるグループができました。この中で、ワークショップだとか、まち歩きとか、いろいろ行いました。
 その中で私は暮らしを考えようというグループに属して、いろいろ話をしていく中で、空き店舗利用もこの中の課題の一つであるので、空き店舗を使って子どもの居場所がつくれないかという話が多く出てきました。
 それで、まちなか・子ども基地の運営委員会を発足することになり、いろいろな活動グループがその中に加わっています。商店街のおかみさん会、エコネットワーク津山これは環境を考える市民団体で、まち並みとか、まちづくりも考えていくグループなので、積極的に参加しています。地元の小学校の放課後児童クラブも参加しています。NPOこども広場、このグループは地方都市ですので本物の劇や歌に触れる機会が少ないということで、それらを誘致して活動をしているグループです。あと、地元の大学の先生や学生さんがボランティアとして参加しています。
 これを立ち上げて、空き店舗があり、貸してもらえる、でも資金とかどうしようとみんなで話していたときに、文部科学省の子どもの居場所事業の支援があるということを聞き申請を出しました。
 この運営委員会、いろいろなグループが一緒になっているということで、得意分野を持ち寄れるという利点があります。
 7月にはすぐ申請もおり、商店街のイベントと連携をしながらのオープニングとなりました。
 昨年はイベントだけで土曜、日曜日の開設でしたが、今年からは毎週水曜日2時半から5時半まであけております。核になる遊びを少し決めて、その達人を地域の方にお願いして、月に一度顔を出していただいき、コマ回しや楽器、いろいろかかわってもらっています。イベント的な開催を月に一度行っています。
 隣の空き地で野菜をつくってみたり、子ども基地の名前のとおり自分たちの基地をつくろうということで段ボール遊びをよくやっています。
 こちらはイベント開催の様子ですが、夏休みに、宿題にもなったらどうかということで飛び出す絵本を、専門家の方を講師でお呼びし、親子で体験してもらいました。
 それから、みまさかネイチャーゲームの会の方と、自然をいろいろ体験したり、葉っぱや自然のものを介しながらのゲームで楽しく遊んでいます。すぐ近くに公園があるので、そちらに行って体験しています。
 伝統行事を体験しようということで、しめ縄づくりや亥の子行事、などの伝統行事で、地域のお年寄りの方や中学生などが指導に来てくれています。
 クリスマスの売り出しを前に巨大クリスマスツリーをつくろうということで、みんなで飾りをつくり飾ったのですが、大きな木も本物で、地元企業の好意で持ってきていただきました。
 子ども基地とは別ですが、商店街でいろいろ子どもにかかわる活動をしていて、いろいろな方と知り合うことで、ほかの大きなものに発展していきました。これは親子エコフェスタという地球温暖化防止を考えようというイベントですが、子ども基地も参加しました。
 地元の県立商業高校が授業の一環として商店街でお店を毎年3、4回ぐらい開いています。
 今後行っていきたいこととしては、昔の商店街は、子どもたちが安心して遊べる場所だったと思っています。安心して遊べる場所の確保、常設ができたらいいなと。今年、回数も増えましたが子どもが街の中心部には少なくなっています。集団で遊ぶことも少なくなっていて、そういう子どもが集まれるいい機会になっているので、どんどん増やしていけたらと思っています。
 それと、お年寄りとの交流。知恵、技術の伝承、地域文化の伝承などができたらと思っています。
 環境学習の拠点にもなるのではないかということで、昨年は家庭で使ったてんぷら油を持ってきてもらい、それがバイオでディーゼルエンジンのエネルギーにかわるという拠点も子ども基地にあわせてつくって、子どもたちにもいろいろ持ってきてもらいました。
 それと、指導者づくり。この活動を通じていろいろな人とのつながりが広がっているので、かかわっていただける方をどんどん広げていきたいと思っています。
 中心市街地の活性化がいろいろ叫ばれていますが、まちにかかわってくれる人をどんどん増やすことが、まちの元気につながっていくのではないかと、私たちも頑張っています。
 地域の教育力向上のための提案ですが、まちなか・子ども基地というのは、場所柄もありますが、商店街の子どもたちはお父さん、お母さんがみんな働いていて土曜、日曜でもお休みはないです。そういう環境の子どもだとか、サービス業についている親の子どもたちはやはり1人で、そういう子どもたちの居場所になれたらというのがあります。放課後児童クラブが核となって、サービス業で土日も親がいない子どもたちの居場所として活動もしています。
 地域の教育力の担い手は、地方の教育委員会では放課後は学校ではなくて地域へという考え方がとても強いと感じています。この子ども居場所事業が、地域で面倒を見なさいという方向に行くのではないかと、心配をしているところです。そして、放課後の健全育成事業を充実した中で、子どもの居場所事業を発展していってほしい、両方の事業の連携をとっていってもらいたいと思っています。
 津山の場合、放課後児童クラブは学校の中やすぐ近くにあるので、安心して親御さんは預けていらっしゃると思います。児童館や公民館などもありますが、より近いところで安全に遊んでもらいたいというのが親の願いでしょうし、いろいろなところにいろいろな条件があってもいいのではないかと思っています。
 習い事やスポーツクラブに参加したり、とても忙しい生活を送っている子どももたくさんいるように見ます。近くで本当にホッとできる、仲間と一緒に遊べる、いろいろな年の子とも遊べる、地域のおじさん、おばさんとも話ができる、そういう場所が子どもの居場所なのではないかと思っています。
 そして、事業の継続をお願いしたいと思っています。3年間ではやはり教育力はつきませんし、支えている私たちも育っていかない。年数を重ねていったら、小学生を対象にしているものですから、子ども基地を卒業していく子どもたちも増えているので、そういう子どもにものぞいてもらって、中学生、高校生も巻き込んでいろいろな展開ができたらと思っています。
 岡山県教育委員会が地域教育力再生フォーラムを開催しました。居場所づくりに関係している方や、PTAの方、250名ぐらいが集まって、活動報告やシンポジウムを開催されました。子どもの居場所づくりをしている中で、子どもももちろん楽しんでいるのですが、大人がとても楽しんでいる様子が見られる。大人たちがそこで知り合った人たちと人の輪をつくれ、子どもと一緒に成長していけることをとても楽しんでいるという声が聞かれました。

(5)4名のプレゼンテーションを受けて、意見交換が行われた。

○ 土江委員
 足立区のご発表に2点質問します。今後の課題として、子どもへの学習支援クラブを目指すということで、クラブの発展性を感じますが、特に学校教育とクラブとのプログラムの連携、融合が大切だと思います。この中で学校との有機的な連携を課題とされていますが、具体的にどのような課題なのか。
 2点目は、学習に親子で参加されているということで非常にすばらしいことだと思います。一人一人の育ちや満足度があると思いますが、これが地域としてのまとまりへ発展していく場合にどういう課題があるのか。あるいは、教育委員会としてのしかけづくり、子どもを語る場や地域を語る場などそういったことが自然発生的に現在出ているのかお願いしたいと思います。

○ 小故島氏
 1点目の学校との連携ですが、今のところはまだ、学校の場所を借りるという段階からスタートして、その中からだんだんとクラブの認知度が広まってきまして、実際に使っている学校の中にクラブハウスを置けるようになったり、その中で子どもや先生もクラブハウスに来て相談をしたりという場面は少しずつ出てきています。
 その上で、さらに連携を深めるということでは、学校の部活動を、大事な教育課程の一環として見ているところもありますが、やはりすべては見切れないという中で、そういった種目に関してはクラブで見ていってほしい。あるいは、小学生からスポーツ活動もクラブで見られるようにとか、そういった連携ができればということになっております。
 それから、学習支援ですが、これも地元の学校の校長先生と相談しながら進めているという段階で、まだ実際に学校との役割分担、かかわりは確立されていないのですが、形としては、放課後や土日など、そういった部分を地域のクラブ、地域のコミュニティーキャンパスという位置づけの中で学習支援をしていこう。これからスタートする段階ですので、はっきりとした整合性はとれていないというのが現状です。
 2点目、地域のまとまりや教育委員会からのしかけという部分に関しては、子どもの健全育成やあるいは地域のコミュニティー形成というテーマで、地域の町会とか自治会、あるいは子ども会や学校、いろいろな立場の方が集まってクラブの運営にかかわっています。もちろんクラブの運営とかプログラムのことを具体的に話し合う場面もありますが、その中で横の連携、コミュニケーションがとれまして、例えば地域の行事や学校の行事であったり、そういったものについて、横の連携を生かして立場を超えた話し合いができたりというところが自然発生的に出てきています。クラブを運営するための運営委員会のようなものを、どこのクラブも月1回とか2カ月に1回やっております。

○ 佐藤委員
 笹井委員のご発表は、これからの組織のあり方が非常にはっきり出ていたのではないかと思います。重層的なネットワークの意義と機能は、実際すばらしいのですが、やるのはなかなか大変で、こういう仕組みをつくるときに、リーダーシップがある人がいるからできたのか、それとも違う進め方で、紆余曲折があってこういう形になっているのかを教えていただきたいと思います。
 牧さんにお聞きしたいのですが、津山市の事例で、毎日こういうものがあればいいのではないかと思ってしまいがちなのですが、必ずしもそういうものではないのでしょうか、学校との関係などそこら辺をどのように考えていらっしゃるのですが、どういう状態であればベストだと思っていらっしゃるのか。

○ 笹井委員
 ネットワークのつくり方のポイントは2つあると思っています。1つが、ミッションで、すごく大きなところの理念の共有がなければいけないということ。もう一つは、日本は縦社会になっているので、縦社会を超える場合は組織と組織の関係がうまくつくれない。だから、個人同士がまず結びつくことによって信頼関係をつくっていって、つながりを大きくしていくというやり方。大きなマクロ的な意味でのミッションと、ミクロ的な意味での個人の信頼関係、この2つがないとネットワーキングはできないのではないかと思います。
 残念ながら既存の組織ではどうも元気がなくて、なかなか地域づくりがうまくいかないところがあるので、新しいエネルギーを持ったNPOなどの組織体が、古い組織とどういう関係をつくって地域づくりをしていくか。つまり、新しい血を入れないと、地域づくりや地域の教育力向上はなかなかできないのではないかと思います。
 ですから、ミッションと個人的な信頼関係と、その接着剤としての新しいエネルギー、NPOみたいな存在が必要かと思っています。

○ 佐藤委員
 今のお話の中で、ミッションというのは非常にわかるのですが、今までの組織は一枚岩でなければいけないような、逆に強固なものを求め過ぎたためにうまくいかない部分があったのではないかと。ですので、それぞれがそれぞれミッションを持っていた上で、何を持って結びつくのか、そこが難しいところだと思うのですが。

○ 笹井委員
 今の点ですが、環境問題というのは多面的なアプローチが可能なテーマです。つまり、自然環境の保全ということもあるし、地球環境の地球温暖化のアプローチもできるし、ごみとかリサイクルのアプローチもできます。いわゆる現代的課題というのはどうしてもそういう側面を持っていて、高齢化の問題もそうだと思うのですが、そういう意味では包括しやすいというか、一枚岩でなくても多面的なアプローチが可能であり、それぞれのテーマがうまくまとまりやすいものが環境問題だと思うので、これを切り口にしたというのは非常に正解だったと思います。

○ 牧氏
 人材不足のためにずっとは開けないのです。放課後の事業とするなら、私たちがやっているように2時とか3時から2時間ぐらいの開設になります。その報酬で働いてくれる人はなかなかいません。子どもにも関心があって、頼める適当な方がいない。朝から夕方までのお仕事ということなら頼めますが、きちっと子どもに関心を持ってやっている方は、本当にいろいろな活動をされていて、お忙しくて、なかなかそういう人を探すのが大変です。
 私たちの水曜日の開設は、同じ商店街のおかみさん会の方にお願いして、毎回いてくれる指導員を1人は確保しました。その方に無理にお願いをして、ほかの入る方の都合が悪くて来られないときは私が入るようにして運営しています。

○ 大宮委員長代理
 草津市の方へ。予算と事業について、例えば13組織、13組織、6校という形で、予算額が26万円、32万円、15万円となっていますが、これはコンペ方式でやるんでしょうか。その前の資料によれば102ぐらいの組織があって、その中からどのようにしてこの事業を選んで、地域協働合校として認定して教育委員会が支援するのでしょうか。

○ 築山氏
 主要事業の学区地区の13組織というのは、公民館を事務局にして小学校区に1つずつありますので、そこに委託をしています。小学校は別に、教育課程に位置づけた中で地域との連携事業を進めていただいています。中学校は市内に6校あり、中学校独自で組織を持っていただいて、進めていただいています。
 進める内容につきましては、1から7の類別をさせていただいていますので、それに合う形で進めていただければよいということで、わりと幅広い解釈の仕方でさせていただいています。
 あと、例えば小学校区の一覧、冊子の6ページですと、「志津」と一番左側に書いていますのは、志津小学校区の志津公民館にある組織ということで、自治連をはじめとしてビオトープの会まで、この小学校区にはどのメンバーから何人出ているかという一覧になっており、学区の特色を生かした、または学校の特色を生かしたメンバー構成がされております。ですから、教育委員会がこの方を入れてくださいということではなくて、学区の特色を生かすためには、または地域の特色を生かすためには、どんな方にメンバーに入っていただく必要があるのかを検討していただいた中で、でき上がっていった組織ということになっております。

○ 山岸委員
 草津市の方へ。市民主導でこういう形ができ上がってきたという趣旨は聞かせていただいたのですが、これぐらい広いことをやるときには、やはりコーディネートの力、それが単純に言える部分と総合的に言わなくてはいけない部分、たくさんあると思いますが、その辺のところをお聞かせいただきたいというのが1点。
 もう一つは、私はこれからの生涯学習の地域づくりというのは、大学とNPOが結んで新しい力でやっていこうということで、今、首都圏10カ所ぐらいで展開して、それを理論化して進めているところなので、あえてお聞きしたいのですが、立命館大学が参加しているということで、大学は決定力、スピードが非常に遅い。行政よりも遅いと私はいつも思っているのですが、大学は機関を通じて参加しているのか。これだけですから、多分、機関だと思いますが、そういう形式的なこととか周辺の対応全般。そして、もしお聞かせいただければ、立命館大学にとってメリットは何だとお考えでしょうか。

○ 築山氏
 コーディネートですが、学校に地域と学校を結ぶコーディネート担当者がいます。その担当者がイコール地域協働合校担当者ということで、公民館とのパイプ役に携わる、校務分掌に位置づけて仕事をする教員です。私も教育委員会に入る前は小学校におりまして、地域協働合校担当者及び学校と地域を結ぶコーディネート担当を校務分掌として行っていました。教務主任という立場と一緒にやるということで、地域の窓口となる職員、教員が必ず学校に1人、校務分掌としております。
 平成15年までは、地域コーディネーターの担当職員が公民館に1人ずつ配置されていました。15年までで予算が打ち切られましたので、その後は公民館職員の中に社会教育指導員が地域協働合校担当者という形で、学校と連携するコーディネーター役となっており、公民館にも学校にもパイプ役としてのコーディネーターがいるという動きになっています。
 ですから、教育委員会としては、地域コーディネーター担当者の研修になるような地域協働合校交流会を行ったり、視察を行ったり、連絡会を持ったりということで、できるだけコーディネーターの資質が育てられるような機会を持ったり、情報交換が互いにできる場も持つようにしています。
 それから、大学との連携でご質問がありましたが、地域協働合校が立ち上がった平成10年に立命館大学が草津市に誘致されました。それから、小学校に近い大学ということで、近いところからまず連携が始まってきたようには思いますが、草津市としましては、立命館大学との包括協定を平成15年に結びました。それによって、地域協働合校における事業で立命館大学との連携がさらに深まりやすくなりました。
 行政と学校がそういう協定を結ぶことで、さらに結びつきも強くなることができましたし、一言連絡をするだけでも話が進むというシステム的なものが構築され、さらに今、いろいろな形で連携できているのだと思います。
 大学にとってはどんな利点があるのか。私もいろいろな地域協働合校で大学生とかかわるときに話を聞きますと、クラブ活動でも、地域連携をしているクラブほど高く評価を学校の中でしてもらえる。今、貢献の時代だということで、学校に、学生が地域にどれだけ深く結びついてかかわり合っているかということで、随分評価をされるそうです。
 能楽部はどうしても地味な部ということで、今まで評価されることが大変少なかったのですが、小学校の子どもたちと伝統的なものを学ぶ、草津市も和心学びの推進事業というものを行っておりまして、お茶やお花など和の伝統を学ぶ機会に特に力を入れたいという市長の願いもあり、能楽の方も合校と結びついたことで、学校に随分評価されるようになり、学生も生き生きと部活ができるようになったということを耳にしました。

○ 杉山委員
 全員の方に1点。子どもの参画というところで、いろいろなプログラムを大人が全部準備して、そこにどうぞ子どもさん来てくださいというやり方ももちろんあるのですが、そうではなくて、例えば子ども自分たちで企画を出して、計画を立ててということを、大人がサポートするというやり方もあろうかと思うのですが、そういうことが実際されているのか。例えば、運営委員会みたいなところに子どもが入っているとか、そこまではいかなくても、子どもの参画みたいなことを配慮されているのかどうか、そのあたりをお伺いできればと思います。

○ 小故島氏
 足立区ですが、今、おっしゃるとおりのことをクラブの方々は願っております。将来的には、今、参加している子どもたちが運営に回って、縦のつながりがどんどん深まっていけばということですが、今の時点では、運営委員会に子どもが参加をしたりとか、あるいは子どもがやるものに関して大人がサポートしたりというところまではまだいっていません。いろいろな事業展開をする中に、子どもたちがスタッフ側にというか、お手伝いに回って、より小さい子どもたちに教えてあげたりという活動は徐々に出てきております。
 足立区では一番長くて4年のクラブですので、ほかのもっと長いクラブになってきますと、そういった子どもたちが今、大学生や社会人になって、実際に運営に回っているという足立区外のクラブの話も聞いておりますので、足立区も今、クラブの方たちがそれを目指して進めているところでございます。

○ 築山氏
 草津市も、やはり小学校の子どもたちが企画、運営に参加するということは大変少なく、子どもにとっても、興味、関心の深さや心構え、そういうものがないまま来てしまうというのはどうだろうということで、やはり事前の検討会、例えば公民館の家体験合校や通学合宿などは、それに入るまでに何回も子どもたちが集まって役割分担を決めたり、少しでもできることはないかということを話し合う場を公民館の職員の方と一緒にとっています。
 先ほど言いました、青少年のリーダー養成にもなってきているということで、中学生や高校生が過去、小学生で地域協働合校を体験している、8年たつということはそういうことなんだとつくづく考えるのですが、大人と子どもとのかかわりや、体験的な活動を小学校のうちに体験した子どもたちが、今度は小学生の子どもたちと、弟や妹になる子どもたちとどんなことができるかということを考えるような仕組みさえつくれば、やってくれるということがわかりました。
 公民館の家体験合校のキャンプファイヤーはオープニングから終わりまですべて、中学生、高校生の子どもたちに任せるというところが増えてきました。それで、お兄さん、お姉さんたちのリードで、楽しいキャンプファイヤーをする。小学生は、自分たちが中学生になると、ああいうふうにやってみたいなと思います。モデルがないとなかなか子どもたちは自分の力を発揮しにくいので、やはり年の近い者がリーダーになって示していく機会を持つことが大事だと思っています。

○ 牧氏
 始めて間もないこともあって、そういうことは全然やっていません。それと、子どもたちは、自分たちの発想で何かやりなさいと丸投げしても何もやらないです。何から何までおぜん立てというのはうっとうしいものですけれども、何か取っかかりになるようなものを少し用意してやる。それから始めていかないとなかなか動きません。
 今度クリスマス会をやろうということで少し提案をしてみましたが、子どもから意見が出てこない。残念な状態ですが、徐々にだと思いますし、土曜のイベントみたいなものは、ある程度決められた時間の中であることを楽しむ。水曜日の常設みたいなものは気楽に、商店街ということもあるのですが、来たらそのまま最後までずっといるという場所ではなくて、自由に出入り、30分ほどいたかと思ったらいなくなって、もうちょっとしたらのぞいてくる。そんな居場所になればと思っているところです。

○ 笹井委員
 グラウンドワーク三島の場合は、子どものためのプログラムを子どもが発想してということが残念ながらありません。この活動の特徴は、大人が日常的なレベルで活動することによって、子どもに目に見えないよい刺激を与えて、大人の姿を見て子どもも変わっていくというところにあるのではないかと思うのです。ただ、グラウンドワーク三島に所属している三島ホタルの会とか幾つか自然環境の団体がありますが、例えば子どもたちに呼ばれてホタルの説明会をしたり、学校に呼ばれて実際にホタルを持っていったり、そういう活動はあると言っていました。

○ 中橋委員
 2点質問ですが、1つ目は、この地域活動の中で、乳幼児と親が積極的に参加しているという取組があれば教えていただきたい。小学校生の弟や妹がついてくるケースはあると思いますが、それだけではなく、例えば幼稚園にも呼びかけをしていますとか、協力をしていますとか、ネットワークをしていますというような、特に小学校以前の子どもたちへの働きかけみたいなことをされているのであれば、その内容を教えていただきたい。
 なぜかというと、幼児期の子どもだと親が一緒についてこないといけない。親が地域の活動に子どもと一緒に参画することで、地域の人たちがどのように小学校の子どもたちを支えてくれているのかを親が見るいいきっかけになると思います。そのためには、小学校に入れば子どもが勝手に行ってしまいますから、その前の時期から何らかの形で接する機会があればいいと思っているので、もしそういうことがあれば教えていただきたいということが一つです。
 もう一つは、津山市のことで質問ですが、商店街の方ということで、子どもの放課後の居場所を、地域力という言葉ですべて商店街に任されても困るところがあるのではないかと思いながら発表を聞いたのですが、たまたま居場所づくりということで予算があることを知って始められたということですが、教育委員会に相談に行くと教育委員会が持っている予算は紹介してくれますが、そのほかで同じようなまちづくり、地域づくり、子どもたちのための予算が、これもある、これもあるという提示はなかなかしてもらえない。あちこち渡り歩かないとわからない。商工会議所であるとか、そういうところの情報は本当になかなか入ってこない状況ですが、どの程度まで実際に商店街の方々のところに届いているのかを教えていただきたいと思います。

○ 牧氏
 乳幼児のほうは特にやっていないのですが、通りがかりの小さいお子さんを連れたお母様が立ち寄って遊んでいってくれることはよくあります。
 それと、まちづくりを考えるまちづくり本舗から生まれた子ども基地ですので、もちろん商工観光課だとか商工会議所、いろいろなところと連携をとってやっております。ただ、商店街は、できることなら商業、商売をやってもらうお店に入ってもらいたい。子どもの居場所づくりはとてもいいことでどんどんやってもらいたいのですが、商売をやるお店に入ってもらうのが第一ですというのが、商店街の考え方にどうしてもあります。商工会議所にしても、商工観光課にしてもです。
 場所は、どんどん話がうまくいって、商工観光課が動いてくれて、空き店舗は市が買ってくれました。これをまちづくりの拠点ということで、さっき言われたお年寄りの居場所だとか、市民団体の活動の場とか、いろいろな拠点にしていこう。子どもの居場所づくりもその中の一つであると、そういう位置づけで展開していきそうです。

○ 築山氏
 子育て機関の方と地域との連携という部分で、草津市では子育てサロンというものが各公民館で月に1回開催されていまして、ゼロ歳から1歳までの乳幼児を持つお母さんと子どもたちが、公民館で歌を歌ったり、簡単なゲームをする時間がありますが、そこに小学校の子どもたちが一緒にかかわるという取組を行っている学校があります。それは小学校の子どもにとっても、自分が小さいときにこんなふうにお母さんにだっこされていたとか、こんなにかわいがってもらっていたんだということを、よその赤ちゃんと触れ合うことで感じるよさもあります。
 逆に、乳幼児のお母さんにとっては、それをきっかけに近所の子どもたちが声をかけてくれるとか、触れ合いが持てるようになったことをきっかけに運動会に行ってみようと思うようになったとか。近所にありながらなかなか学齢期にしかかかわらないということに驚きました。自分の子どもが将来入るであろう学校を身近に感じる取組が進んでいるところが、1つの学校ですけれどもあることはうれしいことですし、教育委員会としてはその情報を文書にして広く知らせています。

○ 小故島氏
 小学生ぐらいになりますと、親が連れてきて、すぐに帰ってしまうことが多々見受けられまして、クラブの運営スタッフの方々も嘆いているというか、なかなか理解していただけないという点はあります。
 乳幼児期への取組は、二、三歳児のお子さんと親御さんを対象にした親子の体操や、幼稚園児、幼児を対象としたプログラムも幾つかあります。千住地域では、クラブの方が幼稚園に行き、幼稚園の先生や保護者と一緒に企画を相談しまして、幼稚園であっても幼児体操ではなくて親子で、できればお父さんにも参加していただいて、月に2回ぐらいできるといいのではないかという提案から、プログラムが始まったという事例があります。
 運動習慣とか、学習習慣もそうですが、幼児期から習慣を身につけるとか、その時期ですと親も最初から最後までずっとそこにいますので、親を地域のそういった活動に取り込むといった意味では、この時期は大変重要だと思います。今のところは小学生対象が多いですが、これからクラブは乳幼児対象の事業を多く展開していくようになるかと思います。

○ 赤坂委員
 笹井委員と牧さんにお伺いしたいのですが、笹井委員のプロセス重視ということ、そして教育力というのは地域の人のつながりをできるだけたくさんつくることだとご発表について本当、こういう活動が行われているということが案外伝わりにくいのではないかと思います。そういう意味で、情報の発信の工夫などございましたら教えていただきたいと思います。

○ 見城委員
 草津の例で、自治連会長の一言がなければ続かなかったというようなことがございましたが、資金の問題はどうなのかということが1点。
 それから2つ目ですが、全体を通して、例えば児童館や学童保育との関係はどうなのだろうかと、疑問を持って聞いていた部分があります。児童館は近所にないのか、結局そういうものがないから皆さんがそうやらざるを得ないのか、その辺のところ。
 3点目は、自分の子ども時代、子ども同士で集まって、今日は何して遊ぼうかという、ここからすごくクリエイティブなことを訓練したという気が自分ではあるのですが、プログラムを組まれていくよさと、そういうことによるデメリットの部分があると思いますがその辺も含めてお答えいただければと思います。

○ 笹井委員
 グラウンドワーク三島の情報発信については、日常的には情報紙や冊子を発行していて、小さなまちですので、活動の中身は大体口コミで伝わるのではないかと思います。それから、企業も積極的に参加していて、例えば伊豆箱根鉄道の駅は企業みずから環境を重視した形の駅舎にするという工夫をし、実際、成果物を目に見える形で見せているということが大きな情報発信になっていると思います。かつ、平成15年度、NPOの生涯学習のまちづくり事業で、文科省の団体としても表彰されるなどいろいろなところで表彰されたことが、またフィードバックされて認知度が高まっているという、いい循環になっているのではないかと思います。

○ 牧氏
 今月はこういうことをやりますというチラシをつくって、周辺4つの小学校に配ってもらっています。あとは、その月に担当してくださる団体の関係の方に配ってもらう。そのほか、広報紙に取材してもらったり、新聞の記事に入れてもらったりしています。

○ 築山氏
 情報発信について、草津市では地域協働合校記者提供というのを各学校、地域にしていただくということで、事業があるたびに教育委員会の生涯学習課に出していただいて、生涯学習課から各新聞社に提供するという形で、よい取組についてはどんどん市民の方に知っていただくために、新聞を通じて情報発信できるようにしています。
 資金の面については、やはり草津市も財政難で、今、25万円、20万円の委託をしておりますが、将来的にこれがどうなるかというと、やはり徐々になくなっていくことは確実だと思います。ですから、市民主導だからお金も全部そっちというのは心苦しいのですが、少しずつでも各団体の方が、子どもを育てるためにできることって何だろうという共通土台で捻出していただけている現状が今も見えていますので、草津市としては地域協働合校の理念が大変浸透している、また、自治連の中にこれは大事だという思いが浸透しているということを大変感謝しています。
 また、予算がなくても、町内会ごとに町内の集会所で宿泊体験をしたという取組が今年1つありました。ゼロ資金でやるので、地域のボランティアの方、それから市の行政の環境課の者が環境学習のときには出向いたりとか、お金を使わなくても、遠いところに行かなくても、自分たちの町内会の宿泊所で一緒になって、ともに学ぶということをやっています。

○ 小故島氏
 足立区も児童館、学童、もちろんやっておりますが、今のところはクラブとの連携は特に行っておりません。クラブの活動は、体育館やグラウンド、広いところでのスポーツ活動が今のところ中心で、さらに文化的なものが少し増えてきたという段階ですので、今後は学童とか児童館との連携事業も行う必要があると思っております。
 学童も児童館もどうしても近い世代の子ども同士だけになりがちですので、世代を超えた交流という意味でも、今のところは別の展開をしているという段階です。
 それから、子ども同士でクリエイティブに遊びを発想するというのは大変重要ではあります。自分たちで考えるスポーツや、何でも遊びコーナーとか、そういうものも必要だと思うんです。実際、足立区外ではやっているところもあるのですが、幾つかのプログラムに加え、何曜日の何時は何をやるかわからないけれども子どもたち集まれ、そこでみんなで考えて、そのときにやりたい遊びをやろうと。そういうことは大変重要なことだと思いますので、今後は必要になってくると思っております。

(6)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

-了-

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生涯学習政策局生涯学習推進課

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