家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成17年10月26日(水曜日) 10時~12時

2.場所

コンファレンススクエア サクセス(1階)

3.議題

  1. 家庭の教育力の向上について ‐外部有識者等(谷本弘子氏、厚生労働省、広島県教育委員会)からのプレゼンテーション‐
  2. その他

4.出席者

委員

 大日向委員長、大宮委員長代理、加藤委員、佐藤委員、松下副分科会長、明石委員、興梠委員、土江委員、山岸委員、赤坂委員、坂元委員、笹井委員、杉山委員、中橋委員、藤野委員

文部科学省

 田中生涯学習政策局長、樋口政策評価審議官、大槻政策課長、吉田調査企画課長、桒原生涯学習推進課長、清水男女共同参画課長、小川参事官、佐藤生涯学習企画官、山本地域づくり支援室長、早川家庭教育支援室長、萬谷民間教育事業振興室長 その他関係官

オブザーバー

 谷本弘子氏(谷本子どもクリニック医師)、度山厚生労働省雇用均等・児童家庭局少子化対策企画室長、高杉広島県教育委員会生涯学習課長

5.議事録

(1)田中生涯学習政策局長より、子どもの基本的生活習慣の育成に向けた取組及び地域子ども教室推進事業の19年度以降の対応について説明が行われた。

(2)谷本弘子氏より「小児科医から見た子育て支援」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 谷本氏
 鳥取県の米子市で、ともに小児科医である夫とともに、小児科医院を開業しております。開業4年目の平成9年に社会福祉法人を設立しまして、保育園と病児保育施設を開設しています。
 病児保育というのは、病気のために保育園や幼稚園に登園できないお子さんを、1日単位でお預かりする施設です。まず、病児保育を始めようと考えた経緯などからご紹介させていただきます。
 子どもは保育園・幼稚園に入園した直後は、人との接触が増えるため、風邪などにかかりやすくなります。そのため、入園させた途端に仕事と子どもの看護の両立に悩む母親がたくさんいます。小児科の現場で、そのようなお母さんたちに出会ってきました。決して看護を放棄しているわけではないんです。責任を持って仕事しようとすれば、どうしてもぶつかる問題なのです。どうしても休めないとき、子どもに無理をさせてしまうことがあります。例えば熱が夜高くても翌朝下がったときとか、少々食欲がなくても熱がなかったときとか、保育園に登園させる場合があります。その結果、夕方子どもはぐったりしていて、小児科に駆け込んでくるのです。そのような子どもたちを見て、病児保育で看護すればこのような状態にならずに済むし、お母さんたちも仕事を辞めなくて済むのではないかと考えたわけです。
 それで病児保育施設の開設を考えたのですけれども、病気の子どもを預かりますので、急変時にすぐ駆けつけられるように、小児科医院の隣につくりました。次にスタッフの配置の問題です。病児保育の利用者数は季節的な変動が激しいものです。風邪などは季節によって多い少ないがあるせいなのですけれども、利用者数の多い冬場は、夏場の3倍もの数になります。そこで、スタッフの配置に柔軟な対応が必要ですので、保育園、小児科医院と連携することを考えました。
 看護という内容から考えても連携が必要と考えました。看護といいますと、まず第一は子どもの病気の状態に合わせて安静を保つことです。しかも、子どもを心理的に安定させるためには、退屈させずに楽しく過ごす必要がありますので、保育と看護に慣れたスタッフが必要になります。それと、十分な水分を取って、病状に合った食事をとることです。病児スタッフの手を調理に取られることなく、それぞれに合った十分な食事を調理することを考えまして、保育園の調理室でつくることを考えました。
 これが小児科医院です。隣接してここが保育園、こちらが病児保育施設です。このように隣接して開設しまして、それぞれを渡り廊下で移動できるようにしてあります。
 次は病児保育の部屋の配置図です。子どもが利用する部屋を4つつくりました。お互いの病気が移らないように、日ごとに部屋割をしています。それぞれの部屋にスタッフを1人ないし2人配置しますので、3部屋あるいは4部屋利用するときには常勤のスタッフでは足りなくなり、小児科医院や保育園から応援を出しています。4人の利用者で4つの部屋を使い、4人のスタッフが必要ということも多くて、人件費の効率は非常に悪いのですけれども、相互感染を起こさないためには必要だと思います。
 それぞれの部屋に入ったスタッフがお互いに協力ができるように、部屋の間をガラス張りにしてあります。
 これは、スタッフが子どもの状態をよく把握できるようにつくった看護保育日誌です。体温は1時間おき、症状、顔色や咳なども1時間おきに記載しますし、食べたもの、飲んだものは内容と、量もできるだけ詳しく記載しています。尿や、便も色とか性状とか、できれば量もはかって記載しています。最後に、1日を通しての食事や遊びの様子を書いています。
 これは、保護者に子どもの状態を伝えることにも役に立つのです。帰りにこの日誌を1部コピーして、保護者に渡しながら子どもの状態を説明しますので、状態がよくわかるようです。看護の方法を伝えることにも役立っています。例えば、この子どもは口内炎のためになかなか食べられなかったのですけど、ゼリーやうどんだったら食べられたということを話すことができます。喘息で安静が必要な子どもに対しては、トランプをしたら楽しくおとなしく遊べたというような、看護の方法を伝えることもできるのです。家に帰った時点から保護者による看護が始まりますから、看護を家庭に橋渡ししていくのが病児保育の1つの役割だと思っています。
 これは家庭の状況を聞き取るための用紙です。翌朝連続して利用されるときとか、次回利用してもらうときに、家庭の様子を書いてきていただきます。家庭の状況がこちらにもよくわかりますし、保護者にとっても自分の看護が振り返られると思うのです。
 これは利用者の様子です。数人で一緒に利用してもらうことがあります。病気が同じだからです。
 笑顔で気分がいい子もいますし、気分がすぐれずに1日おんぶやだっこで過ごす子もいます。病児保育を始めてみて、思った以上に子どもが快復する場合が多いのに気がつきました。スタッフがつきっ切りで、工夫しながら看護する成果があったと考えます。
 これは、昨年、利用者に行ったアンケートの一部です。「当施設が、あなたの家庭の子育てにどういうことで手助けになっていますか」というと、仕事を続けることに役に立っているという答えが一番多いです。もともと仕事を続けるために利用される方がほとんどですので、これは当然だと思うのです。それ以外に、子どもが早く快復するとか、看護の仕方を学べるとか、病気について説明が聞けるという利用者が多いです。利用するまでは期待されてなかった役割に気づいていただけたと思います。
 病児保育は単に保護者の代わりに預かるだけではなく、看護をして、それを家庭に橋渡ししていく、つまり家庭での看護を支える施設と考えています。保育園も同様に、単に預かるだけではなく、子どもの育ちを支える施設と考えてきました。多くの保護者に園の方針を理解していただき、お役に立てていると自負してまいりましたが、3年前に初めて小学校に卒園児を出す際に、多くの保護者から困ったという声を聞きました。放課後や休日に子どもがどう過ごすかという問題です。学童保育は夕方5時までで、結局、誰もいない家に帰らなくてはならない子どもが多かったのです。
 そこで、初めは卒園児だけを対象に、保育園の1室で学童保育を始めました。放課後、保育園の隣の小学校からは徒歩で来てもらい、それ以外の学校には車でこちらから迎えに行きます。保護者が迎えに来るまでなので、帰りの時刻はバラバラです。遅ければ、保育園が閉まる午後8時まで利用できます。休日は朝7時から利用できます。開始後、卒園児以外の希望者もあり、保育園に隣接した場所に増設して、現在、小学校1年から4年までの約50人が利用しています。
 これは外でサッカーをしているところです。人数が増えてきますので、こういうことができるようになってきました。
 これも外遊びです。一輪車や竹馬、鬼ごっこや駆けっこなどもよくしています。
 これは部屋の中での様子で、思い思いにしています。囲碁や将棋は、時々先生などに来ていただいて教室も行っています。カルタやトランプなども行っています。
 これは学校休業日です。学校休業日は時間がありますので、思い思いの活動だけではなく、時間を設定しての活動もしております。右の写真は遠足で児童公園に行ったとき、こちらはスキー教室を行ったときです。夏休みの水泳教室なども行っています。
 これも学校休業日にお菓子づくりをしているところです。このように調理を行ったり、工作教室や映画会なども行います。ここに来れば友達がたくさんいると、どの子どもも楽しみにしています。この年代の子どもたちにとって、友達と一緒に自主的に遊べる時間と場所はかけがえのないもので、安全に活動できる場所を用意するのが私たちにとって大切なことだと思っています。保護者も子どもたちがしっかり遊んでいる様子を見て安心して、親子で家庭に帰っていきます。
 以上のように手探りで運営してきた施設ですが、子どもたちの育ちの支えになり、それを家庭に橋渡しをしていけるように、今後も努力していきたいと考えています。

(3)厚生労働省の度山少子化対策企画室長より「厚生労働省における子育て支援の取組」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 度山氏
 前半の半分を少子化対策の全体的な枠組みについて後半の半分を、地域子育て支援の取組についてご説明をしたいと思います。
 3ページですが、最初にプランができたのは平成7年度からのエンゼルプランで、5年後には新エンゼルプランができ、ここ10年ぐらい新旧エンゼルプランで、主に保育対策を中心にいろんな施策を進めてまいりました。
 この10年間でどう変わったか、主なデータだけまとめました。両立支援という観点ではまだまだ不十分ではありますけれども、例えば、子どもの数が減っている中で保育所の入所児童数は増加しているとか、そのような取組をしてきたのですが、出生率は基本的には下がり続けている。これは、もう少し社会の構造的な問題として考えなければいけないという問題認識が、時を経るにつれ、だんだん深まってきたように思います。
 4ページには出生率低下の社会的な背景として昨年、「子ども・子育て応援プラン」という今年度からスタートしているプランをつくったときに、これだけではないかもしれませんが、この3つぐらいの課題を解決していくことが必要ではないかということでまとめたものです。
 1点目は働き方の問題ですけれども、長時間労働という状況があまり変わっていない。特に子育て期にある30代の4人に1人ぐらいが週60時間以上就業する。そうしますと、男性はほとんど子どもに向き合う時間を取ることができない中で、女性に育児の負担が集中する結果になっておりますし、そのような過酷な職場の中ではなかなか両立支援策が機能しない。育児休業制度も法律上ではつくりましたけれども、なかなか取れないという声も聞きますし、少々保育所をつくったところで保育時間の問題とかもある。やはりこちらの働き方の見直しも合わせて進めなければ、うまくバランスが取れないというのが1点。
 2点目は、確かにエンゼルプランでいろいろな施策を進めてきましたけれども、それで子育て支援サービスが行き届いたかといいますと、まだまだ不十分である。
 3点目に、日本の経済状況が厳しい中で、ニート・フリーター問題というように、特に若い方が社会的、経済的に自立できない環境になっている。失業率は今5パーセント弱ぐらいで推移してますけれども、15~24歳では大体その倍ぐらいになっています。家庭を築いて子どもを産み育てていくためには、それなりの経済的負担も必要となりますので、社会的、経済的に自立していないとなかなかその次のステップに移っていけない。
 このような3つの問題が、これから家庭を築いて子どもを産み育てていこうとする若い方の前に歴然と立ちはだかっていて、若い方がその前で足踏みをしているような状態にあるように思います。
 出生率の低下は、人口学的には未婚率の上昇、晩婚化の進行であり、結婚した夫婦の出生力が低下していると分析されるわけですが、その背景を考えてみるとこのようなことがあるのではないか。そして、このような観点から総合的に取り組んでいく必要があるのではないかという流れになってきていると思います。
 5ページ、6ページに、ここ数年の少子化対策、次世代育成支援対策の枠組みを書いています。6ページの少子化社会対策大綱といいますのは、平成15年7月に成立した少子化社会対策基本法に基づいて、政府が少子化に対する基本指針としてつくったものでございます。若い方の自立の問題から働き方の見直し、そして子育てを地域全体で支え合っていくといった社会的構造の問題に対応する3つの視点を持って施策が組み立てられているということを、ご理解いただければと思います。
 7ページには、昨年末につくった「子ども・子育て応援プラン」のアウトラインを示しております。少子化社会対策大綱の、平成21年度までの5カ年間の実施計画ということで策定したもので、若者の自立とたくましい子どもの育ちということから始まって、働き方の見直しの問題、生命の大切さ、家庭の役割の理解の問題、子育ての新たな支え合いと連帯、それぞれの重点課題に対応する形で具体的な施策や目標を整理して、政府全体で推進しています。
 実際に様々な施策を進めていくことになりますと、キーになるアクターが、地方公共団体と企業になります。これまでご説明してきた動きと並行して次世代育成支援対策推進法を平成15年につくって、地方公共団体と従業員301人以上の企業には行動計画の策定を義務づけて、今年度よりその取組をお願いしているところです。
 9ページ、10ページは地方公共団体の行動計画の策定状況です。県では1つ、市町村では12市町ほどまだ未策定が残っておりますが、ほぼすべての地方公共団体で取組が進められている状況です。
 10ページは、一般事業主、企業の行動計画の状況です。当初届け出が伸び悩んでおりましたが、施行後半年の9月末時点で調べますと、義務づけられております従業員301人以上の企業では84.4パーセントから行動計画を策定したという届け出が出てまいりましたので、かなり企業の方にも取組は浸透したと思います。
 11ページは地方公共団体の行動計画。地方公共団体には、狭義の子育て支援に限らず幅広い行動計画を策定していただいておりますが、いわゆる子育て支援に関わる各事業の目標を集計しますと、11ページにまとめた結果になっております。「子ども・子育て応援プラン」は地方公共団体の行動計画策定と並行して進めたものですから、市町村の行動計画をきちんと実行していただければ、国全体としても応援プランの目標をクリアできるということで、私どもも必要な予算を確保したり、研修などの支援体制をとることで、行動計画の達成を支援していきたいと考えているところです。
 12ページは企業の行動計画の状況です。資料に1点だけ修正をお願いしたいのですが、上の「大企業(従業員301人以上)」のところの2行目で、12,450社の後が59.5パーセントになっていますが、これは84.4パーセントの誤りですので修正をお願いします。
 企業の行動計画の支援策としては、行動計画をつくって実行して、例えば男性の育児休業取得者が出て、女性の育児休業取得率が70パーセント以上とか、所定外労働の削減のための措置などを講じているとか、そういう幾つかの条件をクリアしますと、厚生労働大臣が次世代育成支援に取り組む企業として認定しまして、熱心に取り組んでいることが外形的にもわかるような仕組みをつくっています。既に届け出があった企業に認定申請の意向も聞きますと、1万数千社の中の22パーセントぐらいが認定申請の予定があると答えています。未定と答えている企業も数多くございますので、1つでも多い企業にこうした取組を進めていただいて、企業風土全体を変えていく牽引役を果たしていただければと考えているところです。
 それから、どうしても中小企業の取組が遅れがちという実態がございますので、特に従業員100人以下の企業で、育児休業の取得や、あるいは復帰して短時間勤務の制度をつくるとか、初めてそういったことに取り組む企業に手厚い支援をできないかということを、今、概算要求しております。
 13ページに子育て支援対策の展開として、子どもが産まれてから学齢期に至るまでの様々な施策を図にしたものですが、私どもの施策だけでは完結しませんので、幼稚園とか子どもの居場所づくりとか、全てではありませんけれども文部科学省の方の関連する事業も載せております。
 エンゼルプランでは、主に低年齢児の保育に力を入れてきたのですが、まだ待機児童が今年の4月時点で全国に2万3千人います。こういった方にとっては、保育園に入れるか入れないかは、子どもを産んでみるまで、あるいは育児休業が明ける直前までわからない。こういった状況はやはり改善しなければいけないということで、待機児童ゼロ作戦を引き続き進めております。一方で、働き方の見直しということも、育児休業の取得を場合によっては1歳半まで延ばせるとか、その後の勤務時間短縮等の措置も広めていくという取組を行っているところです。
 これらを包含する形で、地域子育て支援として、子育て支援の拠点整備とか、一時保育とか、ファミリーサポートセンターとか、様々な取組をやっています。全国での箇所数を書いておりますけれども、結局、このネットがまだ十分ではない、あるいは地域によってかなり取組状況に差があるということで、特に3歳未満の地域子育て支援のところの網がかなり薄くなってきています。
 学齢時に入ってからで申し上げますと、放課後児童クラブを増設をしておりますし、文部科学省でも子どもの居場所づくりということで一生懸命広げてますけれど、まだこの部分のスポットが十分に埋まっていないのではなかろうか、このような網をできるだけきめ細かく進めなければならないという問題意識を持っているところです。仕事と家庭の関係で子育て家庭がどのような選択をしても必要な支援を受け、バランスを取って家庭が歩んでいけるように進めることが必要と考えております。
 そういった意味では、働いているいないにかかわらず、地域での親と子の育ちを支える体制づくりが必要ということで、14ページになりますが、地域子育て支援の取組を幾つかご紹介させていただこうと思います。
 まずは地域の子育て支援の拠点として、気軽にいつでも立ち寄っていろんな相談や交流ができるスポットを地域につくり出していくことが必要ではないかという問題認識を持っております。古くは保育所等に併設される形で地域子育て支援センターという施策を進めてきておりますが、それに加えて公共施設内のスペースや商店街の空き店舗や民家を利用して身近なところで集える場をつくれるよう、つどいの広場事業を平成14年度から行っておりまして、今かなり増えてきております。
 それから、保育サービスの面で子育てを支援するということになりますと、一時預かりのサービスを拡充しなければならないだろう。就労形態も多様化してますし、専業主婦の家庭でも緊急時や様々な家庭の都合で、一時的な預かりのニーズは高まっており、地域で受けられる体制もつくっていかなければいけない。
 それから、地域の住民が主体的にお互いで支え合う活動をサポートするという意味合いでは、古くからファミリーサポートセンターということで、労働者や主婦の方が会員になって、相互援助活動を行うという取組も進めてきています。当初、人口規模の大きい市町村から始めたのですが、今年度から人口要件を撤廃しまして、小さな市町村でも取り組んでいただけるようにしているところです。
 最後に、育児支援家庭訪問事業です。これは主に、家に込もりきりの親子をどうしていくか、児童虐待などの未然防止という意味合いもございますけれど、出産後間もない時期の養育者に対してヘルパーを派遣するとか、養育困難家庭に対して保健師や助産師など専門的な家庭訪問支援をするということです。
 このような総合的な取組を進めているところですが、どの地域でも行き届くというにはまだまだ不十分ということで、各市町村に行動計画をつくっていただいて、取組を進めていただくようにお願いをしているのが現状でございます。

(4)広島県教育委員会の高杉生涯学習課長より「子どもの望ましい基本的生活習慣育成のための県民運動の取組」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 高杉氏
 広島県では、平成10年5月に、当時の文部省から異例の是正指導を受けた経緯がございます。学習指導要領等の関係法規に照らして、逸脱あるいはそのおそれがあるものについて、13項目からなる是正・改善を求められた反省がございます。以来、広島県教育委員会の総力を挙げて、教育の中立性と公開性を柱とした取組を行ってまいりました。その結果、法令にのっとって、校長の権限と責任による学校運営が行われるようになり、一定の成果を残すことができたのではないかと整理しています。
 平成13年度から、是正から改革へというキャッチフレーズに、新たな教育県広島の創造を目指して、確かな学力、豊かな心の育成、信頼される学校づくりを基本方針に据えて、知・徳・体の「基礎・基本」の徹底と学校経営改革を柱に教育改革を進めております。
 また、教育改革は当然学校だけでできるものではないということで、やはり家庭や地域が一体となって取り組んでいく必要がある。そのために家庭や地域の教育力をもっと高めていく必要があるということで、今、取組を進めているところでございます。
 こういった流れの中で、広島県教育委員会では教育改革をより確かに、また実効あるものにしていくために、平成15年度、「基礎・基本」定着状況調査、体力・運動能力調査、幼児教育調査の3つの調査を実施しました。
 その結果、学力については、前年度に比べて正答率の低い子どもの割合や正答率のばらつきが減ってきております。基礎学力はおおむね定着してきているということです。これは、是正指導を受ける中で、学習指導要領にのっとった教育内容にしていったこと、また、授業改善を行ったり、学校が組織として機能するような様々な取組をしてきた成果もあろうかと思っております。
 体力的には、全ての種目で全国平均を下回るという、本当に大きな課題を抱えております。
 また幼児教育調査では、他者との関係を結ぶコミュニケーションが苦手である、生活の基盤である睡眠、また食事などの基本的生活習慣の定着が不十分ではないか、こういったことが明らかになったわけでございます。
 この3つの調査から、共通した事項も見えてまいりました。それは、毎日朝食を食べ、睡眠をしっかりとる子ども、しっかり体を動かしている子ども、いわゆる基本的生活習慣が身についている子どもの方が基礎学力や体力の定着はよいという結果が出たことです。具体的には、毎日朝食を食べる子どもの正答率と全く食べない子どもの正答率には、16.8パーセントの差が出てきております。また、きちんと8時間程度の睡眠をとっている子の方が正答率が高いという結果が出ています。
 幼児教育調査でも、基本的生活習慣がきちんと定着をしている子どもほど善悪の判断ができる、決まりを守る、きちっと我慢ができる、というところで高い割合を占めているという結果が出ました。
 それから体力・運動能力調査、これは公立小学校5年生全員に行ったものですけれども、よく体を動かす子どもは体力・運動能力が高いという結果です。1日の運動量が2時間以上の子どもは、運動量が30分未満の子どもと比べると、体力・運動能力が身についているといった結果です。
 また、学年が上がるほど本を読まなくなる、これは「基礎・基本」の定着状況調査の結果からですけれども、本県においても活字離れが本当に深刻でございます。
 これらの調査から、基本的な生活習慣が、「基礎・基本」の定着の度合い、体力・運動能力、また、人と関わる力と強い相関関係にあることが明らかになったということに着目しました。昔から当たり前のように言われてきたことですけれども、具体的なデータで基本的生活習慣の大切さを、この調査から知ることができました。
 この結果をどう家庭に届けていくかが次の私たちの大きな仕事かと思っています。子どもたちの健やかな成長は基本的な生活習慣の定着がポイントだということを、家庭にどう届けるかということです。
 そこで、県民にアピールできるわかりやすい取組、納得できるテーマを提供していくことが大事かと思いましたので、県教育委員会では平成16年3月から、子どもの基本的生活習慣の定着を目的として、「食べる!遊ぶ!読む!」というキャンペーンを展開しました。朝食摂取によって集中力や持続力、健康を高めていこう。遊ぶことで、外遊びによる体力、社会性、遊びの中にある教育的な力に着目しながら取組をしていこう。また、読書による考える力、想像力、表現力の育成ということでございます。
 その取組の方向で、まず「食べる」ですが、これは朝ご飯を大切にしようという取組から始めました。チラシ等を活用して、各種団体やマスコミ等の協力を得ながら全県に広げていきました。朝ご飯をきちんと食べるということは、実は前の日の夜の生活と深く関わってまいります。前の日にしっかりと外に出て遊ぶ。そして、本を読みながら早く寝る。そういうリズムをきちんとつけていくためにも、朝ご飯をまずきちんと食べようという取組から進めてまいりました。
 次に、「遊ぶ」です。今、文部科学省を中心に子どもの居場所づくり、また奉仕活動、体験活動と、子どもたちに様々な体験をする場を提供していく事業を進めており、本県でも進めています。遊ぶということは活動なんだ、体験活動なんだという捉え方もして、子どもたちにそういう体験の場をたくさん用意していこうという取組を進めております。総合型地域スポーツクラブなどの取組とも連携しながら進めているところです。
 「読む」については、本県では昨年度から言葉の教育県づくりを進めております。子どもたちの言葉の力の状況を見ますと、本県の共通学力テストの結果では、やはり論理的思考力、読解力、表現力など課題が大きいことが明らかになっております。また生活面でも、自分の気持ちを言葉でうまく伝えられない、あいさつや場面に応じた適切な言葉遣いができていないといった課題が指摘されております。言葉というのは、学習と生活の両面で基盤となる力であると思います。そこで、言葉の力を身につけさせる最も基本となる取組として、「読む」ことも位置付けたわけでございます。
 こういった「食べる!遊ぶ!読む!」というわかりやすい言い方で県民に提案していきました。最初は、ついに教育委員会が朝ご飯を食べようということまで言い始めるのかという話もありましたけれども、PTAや青少年育成団体に行って話をしても、確かな手応え、賛同をいただきながら一緒に進めているところです。
 この取組に当たりましては、対象を小学生以下の子どもと保護者に絞りました。生活習慣と基礎学力との相関関係をわかりやすく伝えていこうということです。社会教育主事が出前講座として、県内のPTA19カ所ぐらいに行って説明をする。ワークショップをして、子どもたちと一緒に、どうやってこのリズムをつくっていくかという話をする。どこに課題があるかモニタリングも行いました。その課題を元に今日お配りしているこのチラシを、今年の4月に40万部作りました。40万部ということは、全部の小学校の保護者、小学生以下の子どもに届けたということです。ただ渡すのではなく、先生方が家庭訪問に行った時の教材として使ってくださいという形で作ったものです。本当に届けたいところになかなか届かないということがよくあろうかと思いますが、そうであれば全部に届けてやれということを思いました。
 この小さいチラシは母子手帳の中に挟み込んでもらうためのものです。これは福祉の部局と連携を取りながら、役場の窓口で手帳を交付するときに、これを中に入れて配ってもらう。子どもの誕生を喜びながら、こうやって育てていきましょうということを訴えたかったので出しました。
 とにかく啓発に随分力を入れております。そのほか、市町の教育委員会の担当者を全部集めまして、その人たちに講師になってもらえるぐらいに理解をしてもらうための取組をしました。校長会とかPTAとも徹底的に連携を取りました。
 地域の中でこの取組を進めていただくため、例えばこのようなカルタを作ってみました。これは生涯学習センターにインターンシップで来ていた学生が作ったものです。ものすごく評判がいいです。子どもたちが学校の中でカルタをやりながら、食について自然に身につけていくことをねらっています。それからこれはボランティアの方に作っていただいた紙芝居です。とにかくいろんなところで使っていく、こういったものが欲しいと言う人に提供することもあります。
 「読む」ということでは、読み聞かせのボランティアの育成を精力的に行いました。平成16年4月には390ぐらいの読み聞かせのボランティアがいました。それを小学校区に1つぐらいの団体ということで進めて、全部で600ぐらいの小学校があるのですが、現在、722団体に増えました。これは県立図書館などが中心になって取り組んでくれた成果かと思っております。
 そのほか企業の社内報に書いていただくとか、このチラシを置いていただくとかで、24の協賛企業と一緒に取り組んでおります。JAとかJCには本当に力になっていただいております。
 こうした結果、15年と16年の結果を比べると、例えば毎日の朝食を取ることが僅かながらも改善している。もちろんこのキャンペーンだけで成果が上がったのではないことはよくよく承知しているわけですけれど、一つの力にはなっているということでございます。ほとんど毎日運動やスポーツをする、1カ月間本を読まない子どもの割合が減ってきている、といった成果も上がってきています。
 体力・運動能力の調査にしましても、全国平均に近づいてきているのは事実です。立ち幅とびという1種目ですけれども、全国平均を超えたものも出てまいりました。
 17年度「基礎・基本」定着状況調査の概要版も出てまいりました。中学校2年の国語は少し下がっておりますけれども、概ね定着をしつつあると思っております。
 こういう取組は少しやったからすぐに成果が上がるものでもなく、地道な取組を進めていきたいと思っておりますが、その大きな契機として、来年1月14日の全国家庭教育フォーラムという文部科学省の事業に手を上げました。先ほど田中局長が、早寝早起き朝ご飯というわかりやすい取組を言われましたけれども、私たちもそれに乗っかりながら、本県の取組を全国に発信したいと思っておりますし、全国の仲間と一緒にこういった取組をしていきたいと考えております。
 そして、こういった取組を地域の中に広げて、地域全体で子どもを育てていく取組につなげていきたいという大きな思いがあります。これまで私たちは行政のルートで教育委員会、学校、保護者にいろいろなものを届けてましたけれども、そのルートだけでは届きにくいので、地域のいろいろな人間関係を活用したルートから進めていけないかということで、今、来年度へ向けていろんな予算要求を考えているところでございます。

(5)3名のプレゼンテーションを受けて、意見交換が行われた。

○ 坂元委員
 広島県の取組は独自の地道な取組ということで、大変貴重なものだと思いましたけれども、1つ気になりましたのは、例えば朝食を取っている子どもの方が学力の正答率は高いというのは、あくまで相関関係であって、因果関係を意味するとは言えないことです。朝食を取っているから正答率が高くなることが証明されたというようなお話があったかと思うんですけれども、しつけのきっちりしたご家庭ですと朝食も取らせるし、勉強もよくさせる。その結果、朝食が成績、学力に影響することはなくても、相関関係は生じることがあるので、因果関係は結論できないのではないかと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

○ 高杉氏
 おっしゃるとおりで、保護者に話をするときは、実は今のところが一番よく説明をするところなのです。先ほどそういう説明に聞こえるような言い方をしたら、大変申し訳ないと思うのですけれども、あくまでもこれは相関関係である。では朝ご飯を食べさせれば子どもの学力が伸びるのか、そういうものではないということについては、よく理解をしていただいているのではないかと思っております。広報をしていくときに、特にそこのところは気をつけてやっております。

○ 坂元委員
 了解しました。因果関係を議論しようとする場合に、同一の対象者について継続的に調査をして分析するような手法もありますので、今後、検討していただければと思います。
 それからもう1つ、国でもこういう健全育成についての取組を進めているわけでございまして、国に対して期待されること、あるいは自治体と国との関係につきまして、どのようなご意見を持っておられるかについて伺いたいのですが。

○ 高杉氏
 家庭教育をどう家庭の中でつくり上げていくかは、保護者にとって本当に大きな課題だと思います。自治体は当然いろんな支援をしていくわけですけれども、まず県と市町との役割分担をしなければいけないと考えております。直接、住民に対して様々なことをやっていくのは市町かもしれません。しかしながら、県全体に関わる課題については、県がどんどんやっていかなければいけないという思いも持っていますので、キャンペーンは一市町よりも、県全体で取り組んでいこうということです。
 と同時に、国と県との役割というものが出てこようかと思います。国でこういった奨励をしていただく、全国的に一緒になって進めていくという発信をしていただくのは、本当にこれは力強い後押しだと思います。先ほど局長からありました、早寝早起き朝ご飯の話は、うちの県としては一緒に取り組んでいけると思いますし、様々なデータや資料を県に提供していただけるのは大きな力になってこようかと思います。そういう支援を国にはお願いしたいと思います。

○ 坂元委員
 次に厚生労働省に伺いたいのですが、多岐にわたるお取組をされていることは了解したのですが、お話しからも、資料を拝見しても、障害とか障害児という言葉がなかったので少し気になったのです。今、障害児が増えている中で、子どもを産んだ場合に障害児だったらどうしよう、自分が支えていけるのかどうなのかという不安を解消していくことは、子どもを産み育てようとする意欲にもプラスに働くのではないかと思うのです。
 実際、これまで随分改善はしてきたのでしょうけれども、障害児の子育てにはまだなかなか難しい点があります。例えば障害児を引き受ける保育園、幼稚園も豊富ではないから、遠いところに預けなければいけない。障害児の家庭でのケアですでに大変なところ、保育園、幼稚園に通わせることについても、障害のない子どもの場合よりも余分に負担になるわけです。また、学童期になれば、学童レベルで療育を受けさせてもらえる公的な専門機関はすごく乏しいとも聞いております。学校では社会適応がますます大変になるわけですから、療育は必要ですけれども、なかなかそこが難しいようです。
 これらの状況などを改善する取組のほかにも、例えば、子育てのイメージアップの取組の中に、障害にかかわらず子育てはすばらしいという部分を入れていくことなども考えられますけれども、お話しとか資料に障害というお言葉がありませんでしたので、このあたりのお考えと取組について少し伺えればと思いました。

○ 度山氏
 今日は時間の限られた中でベースラインの説明を申し上げたのですが、子ども・子育て応援プランの1つのコンセプトは、すべての子どもと親子を大切にする取組をしようということで、実はエンゼルプランや新エンゼルプランのときには、障害児の問題とか児童虐待の問題はプランの外側にあったのですが、今回のプランの中では入っております。
 ただ、具体的に障害児に対する取組を進めていくことになりますと、子どものときから大人になるまで一貫した取組が必要ということで、国の組織も障害保健福祉部でやっておりますし、障害者のプランもつくられており、様々なサービス提供の仕組みも一貫した仕組みをつくろうと取り組んでおりますので、私どもの子育て支援の取組の中で、そういったものが受けられるよう進めているのが現状でございます。
 保育でいえば、障害児保育は昔からやっておりますし、数年前から、いわゆる放課後児童クラブの中でも、障害児の受入れで追加的に人手が必要になるので加算の仕組みをつくったりとか、子育て支援施策の中でもノーマライゼーションが図っていけるよう考えてやっております。

○ 坂元委員
 最後に谷本先生に質問ですが、病後児の保育というのは聞くことがあるのですが、病児についても扱っておられるということで、大変貴重だと思うのです。大変ニーズが高いのではないかと思いまして、実際に人気があってなかなか入れない状態なのかどうか、また、それからいろいろ困難もあろうかと思うのですけれども、そういったことをどのように克服されておられるか伺いたいと思います。

○ 谷本氏
 定員は6名ですけれども、冬場の利用者数が多いときはかなりオーバーしています。最高14人まで入っていただきますけど、うちの施設は1部屋に、厚労省の基準では4人から6人ぐらい入れるような部屋を持っています。スタッフは小児科医院、保育園から応援を出せますので、それだけお預かりすることはできます。だから米子市で1つしかないのですけれども、かなり冬場は一杯です。ただし、夏場のとても少ないときには、利用者ゼロという日も結構あります。8年間で15パーセントぐらいは利用者ゼロの日です。今、年間で1,200人、冬場は定員の3倍近くになるぐらい利用していただいているのですけれども、それでも定員の稼働率を見ると70パーセントという状態です。
 ですから、やはり赤字なんです。補助金とかいろいろな収入からいいましても、人件費、スタッフ3人分がやっとで、パートの人を増やそうにも増やせない状態。小児科医としては私たちが見ていますが、こちらに対する手当ても何もなし、施設長に対する手当てもなしで、やっと現金は回っている状態です。建物の減価償却もできていませんので、将来的に施設が古くなったときにどう建て直すかということも考えているのですけれども。ということで、困難さといいますと、スタッフの配置の問題と、コストです。

○ 藤野委員
 「食べる!遊ぶ!読む!」のキャンペーンを受けて、各市町村教育委員会、幼稚園や学校、PTA、そして各企業、各団体、地域で、さらに特色ある活動に取り組んでいる事例がありましたら、聞かせていただきたいと思います。

○ 高杉氏
 市町では、例えば広報紙に載せていただいたり、家庭教育学級で「食べる・遊ぶ・読む」をテーマにした講座を開いていただいているということで、特に大きな話はあまりないのですけれども、地道な活動をしていただいております。
 PTAにつきましては、PTA単独もしくは学校と一緒になって取り組んだ単位PTAが約7割です。そのほか学校独自でやったのが3割でございます。
 その中では、PTAがワークショップで子どもと一緒に朝ご飯をつくるとか、アイデアレシピを保護者も含めて学校全体で取り組んだという報告を聞いております。また、地域のおやじの会が現在151、県内にできておりますけれども、地域にこれまでなかった祭りをみんなでもう1度再現してみようとか、そういう中に子どもたちが参画して取り組んでいくといった活動がございます。

○ 杉山委員
 資料4で子どもの生活リズム向上プロジェクトというのが今後できそうというのは、私もいいと思っているのですが、現場のお母さんたちや家庭を見て思うのは、わかっているけれどできないのです。そういう家庭が実際にかなり増えているので、やれと言われたことが逆にプレッシャーになる部分があろうかと思います。例えばNPO法人でコミュニティーレストランをやるところが朝ご飯を提供して、ここでご飯を食べて学校に行こうというやり方もあっていいと思いますので、全てお母さんが早く起きて朝ご飯を作りなさいというのではないやり方を、ぜひお願いできたらと思います。
 ノーテレビデーということになりますと、テレビ局や企業のトップの方たちのご理解がないと、面白い番組があると翌日に学校でその話題が出ていじめられることがありそうなので、テレビ局側からの取組も必要と思うのですが、いかがでしょうか。
 食育に関しては、厚生労働省の「健やか親子21」などでも恐らくやっていると思うのですが、そのあたりの連携があるのかお尋ねしたいと思います。
 次に厚生労働省にですが、幼稚園は2時とか午前で帰れる子どももいると思うんですが、その後の居場所がないということがちらほら聞かれております。そのあたりをどのようにお考えかをお伺いできればと思います。
 それと資料の14ページですが、育児支援家庭訪問事業というのができたのはとてもよかったと思っているのですが、やりたいけれどもできないという精神的にも能力的にも厳しい状況の家庭が増えているような気がしております。保健師や助産師の専門的なアドバイスは確かに有効であろうと思うのですが、実際に家事援助をすることも一方で必要かと思っているのですが、いかがでしょうか。

○ 田中生涯学習政策局長
 子どもの生活リズム向上プロジェクトですけれども、今、なかなか子育てのできない家庭がある中で、地域が家庭に若干のおせっかいをしていくことが必要になっているのではないかと考えたわけです。各家庭にちゃんとやりなさいと言うだけでは足りないのではないか、だから地域としてみんなで、子どもたちが朝早く起きられるような土壌づくり、子どもたちが昼間きちんと体を使って遊んで、早く眠れるような土壌づくりをしていくことが非常に重要でないかと思います。おっしゃるように、NPOを活用することも非常に重要だと思っております。
 それから育児支援家庭訪問事業ですけれども、去年、こういうことを厚生労働省がされるということを知りまして、文部科学省では子育てサポーターというのを養成してきていて、今は全国で8千人ぐらいいる。この方々も保健師や助産婦と一緒になって、家庭に閉じこもっているお母さんに声を掛けたらどうかということで、今、一緒になって取り組んでいる県も出てきています。今後とも両省の連携を深めながら取り組んでいきたいと思っております。
 ノーテレビデーにつきましては、企業等に働きかけることも重要だと思いますけれども、学校なり地域なりで取り組むことも重要じゃなかろうかと思っておりますし、そういう国民運動的なものをやっていくに当たっては、企業等にも参加の呼びかけはしていきたいと思っております。

○ 度山氏
 まず育児支援家庭訪問事業ですが、自分の家庭によその人が入ってくるというのは、実は相当大変なことです。老人介護でも、訪問ヘルパーは今ではかなり一般化しましたが、ゴールドプランが始まった頃は、家庭にヘルパーさんが入ってくるのは、多くの家庭にとってとても考えられないことでした。
 子育ても同じで、上手に相手の立場に寄り添ってあげながら、解きほぐしていくような形でサービスを展開しないといけないということです。解きほぐしていく中で、養育困難な家庭に対して専門家が関わるということと、具体的な援助もしていくということで、この事業は子育て経験者やヘルパーの方々が、実際に育児家事の援助を組み合わせた事業展開になっています。
 それから、幼稚園が終わってからの子どもの居場所の問題ですが、児童館というのが厚生労働省が持っている一般児童対策のツールでございまして、本当は全国いろいろなところに児童館があるといいと思いますけれども、今は箱物をどんどんつくる時代でもありませんので、むしろソフトだと思います。このソフトをどういう形でつくるかは、つどいの広場とか子育て支援センターとかをうまく活用していただいて、地域で何がうまくあてはまるのか、一番地域に身近な行政体である市町村でお考えいただくのがいいと思います。市町村に行動計画をつくっていただくのは、その意味合いもあったわけです。
 つどいの広場という事業は、主に3歳未満をターゲットにした施策としてスタートしましたが、地域によっては、ある時間帯からは3歳以上の幼稚園が終わった子どもが押し寄せているという話を聞くこともございます。いろいろなツールをうまく使って、子どものいる場所を整えていくことをお考えいただくのがいいと思いますし、その中で、私どもが準備しているツールも大いに活用いただけたらという考え方です。

○ 中橋委員
 香川県内でも病児保育は1カ所もなかったので、6年前に私たちが中心になって運動を起こして、今現在7カ所あります。それでも田舎に行くと、病児保育施設を建てるほど利用者数が見込めないけれども、非常に困っている家庭からの相談が数多くあるような現状です。
 そういうところで支えていくのはファミリーサポートセンターと思うのですが、香川県にはファミサポが1カ所もないのですけれども、他県の様子を聞くと、ファミサポで病児を受け入れているところも結構あるように聞きます。ただ、病児の取扱いのマニュアルが薄いような感じがして危惧していたところ、今年から病児対応のファミサポのようなものができたと伺ったのですけど、その現状をお聞かせいただければと思います。
 もう1点、広島県の取組で、ほかの団体との連携、例えば子育て関係のNPOにどのぐらい働きかけていて、どのような活動がされているかをお聞かせください。
 私は先週、岡山のある子育て支援センターに行ったのです。そこは保育園併設なんですが、センターをPRするために、保育士たちがポスティングに行っているという話を聞いたのです。子どものいる家庭だけではなくて、独居老人のような家庭にも、全部くまなくポスティングをしていると伺って、すごいなと思ったんです。「食べる!遊ぶ!読む!」とか、病児保育はここにあるとか、地域の子育てに関わる情報を、保育園だけでなく幼稚園や小学校も連携して、全ての家庭に届けられるような仕組みができれば、情報が行き渡らないで困っている家庭が少なくなるのかなと感じました。

○ 佐藤委員
 谷本さんの発表をもっと一般化するにはどうしたらいいかということを考えないといけないと思うのです。例えば地域のクラブをつくって支援するとか、全部厚労省で持ってくださるとか、どういう支援があれば、もう少し展開可能かということを教えていただきたいと思います。
 それから、企業は子育て支援をしたいと思っていますが、現実的には、育休で労働力がなくなっても、代替要員が担保されていない。それがすごく負担に感じられると思うのです。その辺まで踏み込んだ施策に展開していく気がおありかどうかということもあると思いますが、そのあたりを教えていただきたいと思います。
 もう一つ。広島県のお話ですが、先生方は多分、学力との相関に気付いていたと思うんです。その中で、チラシを持って家庭訪問をされた先生方がどういう反応で、どういうことを考えているか、どのように感じたかをお聞かせいただきたいと思います。

○ 加藤委員
 今、ニートとか引きこもりのような状態がある中で、生涯学習という観点からそういう人たちをどうしていくのかが、今後の非常に大きなテーマだろうと思います。国や地方公共団体が関わる以上は、的を絞り込んだ、ナショナルミニマムを達成できるような取組が必要だろうと常々申し上げています。
 そういう観点で言ったときに、本当に届いてほしいところに届かないとか、かけ声だけでは拒否されるという困難なところへのアプローチということで、例えば、朝食を取らない子どもたちにどのようにしてアプローチしていくか。先ほどのコミュニティーレストランも一つの対策でしょうけれども、そこにも連れていかない親は一体どうしたらいいのかというところで悩みや対策等ありましたら、お聞きしたい。また、100人以下の企業への対策で何かお知恵とか、今、どの辺まで分析や対応が進んでいるのかということをお聞かせいただければと思います。

○ 谷本氏
 幼児保育も学童保育も、なかなか全国的に増えないのは共通だと思います。単体ではとても運営しにくい施設だからです。病児保育は日ごとに利用者数が変動してしまう。学童保育は学校休業日は朝から夕方までですけど、普通の日は放課後のほんの数時間で、すごくスタッフの配置が難しい施設だと思います。
 うちは保育園を基盤にして両方運営していますので、例えば子育て支援センターみたいなもので包括してやるとか、地域クラブみたいなものに附属するとか、大きな基盤があってやっと運営できる施設ではないかと考えています。

○ 度山氏
 まず企業の取組ということで、育児休業などの代替要員のことを制度的に申しますと、企業が代替要員を確保する取組をするための助成金の仕組みもつくっておりますが、基本的に休業を取ってしまうと無給になって、給料を二重に払わなければいけないという話にはならないので、継続的な助成金ではなくて、初期準備に使っていただけるお金が、企業の規模によって金額は違ったと思いますけれども、ございます。
 ただ、日本の場合には、職務がはっきりしていない形の仕事の展開になっていますので、1人抜けた後の代替がなかなか難しい現状にあるのでしょう。これは根本的には、企業の中での仕事の配分の仕方というものを考えなければいけないと、個人的には少し感じているところでございます。
 それから100人以下の企業の分析ですが、全国平均でいうと、育児休業を取る権利のある女性の、大体7割から8割ぐらいが取得できている状況ですが、企業規模が小さくなるほどこれが落ちて、6割ぐらいになっていたと思います。企業規模が小さくなるほど代替がききにくく、休みが取りにくい状況であろうと思いますし、そういった企業であるほど、これからやらなければいけないと思っても、育児休業を取る従業員が出るのも初めて、その方が復帰するのも初めてというケースを、会社としてどうカバーするかという問題が出てくるので、いろんな形の助成金の仕組みを中小企業には特別に手厚い形で支援できないかという予算要求を今しているところです。
 それからファミリーサポートセンターの話で、恐らく「緊急サポートネットワーク事業」という事業のことだろうと思います。これは、主に働く方のサポートを中心に行っていたファミリーサポートセンターが、今の病気の話とか困難なところに取り組んでいけるように、少しグレードアップした形の事業を展開しております。今、かなり各地で調整をしてやっていると思いますが、その状況を詳しく承知しておりませんので、後日調べまして、ご提供申し上げたいと思います。
 あわせて、例えば病児の保育についてもこちらから出向いていく派遣型の病児保育の事業も展開しておりますし、いわゆる保育ママさんといいますか、家庭的保育事業というのもやっておりまして、例えば看護師の資格を持っている方が病児の対応もできるような家庭的保育事業を保育所が実施するような展開もあってもいいということで、これも予算要求中の事項ですけれども、申し上げたいと思います。

○ 高杉氏
 企業、NPOとの連携ということがございました。キャンペーンと連携した広告では、例えば「読む」というテーマで、感じ取る力とか想像力、表現力を育むとか、たくさん読もうとか、連動したものを入れて、その横にいろんな企業が広告を出すといった連携ですとか、また協賛団体、協賛企業を募って営業して歩いております。NPO等についても、県内全域を対象にしているNPO等には、食べる・遊ぶ・読むをテーマにした子どもの活動をたくさん仕組んでくださいと言って歩いています。
 あと「子ども夢基金」というのを広島県も持っております。いろんなイベントに職員が行って県民の方の浄財を集めたりするものです。現在2,000万円ぐらい、平成13年から始めて大体年間500万円ぐらいの支援をしています。食べる・遊ぶ・読むというテーマで活動しているNPOなどに助成しております。
 それから、学力との相関の中で教職員の反応ですが、例えばさっきお見せしたチラシを学校に送った後にアンケートをいただいています。こういう教材がもっとたくさん欲しい、あればやはりいいということが返ってきますし、子どもよりも親だという反応とか、保護者対象の食についての資料・教材等があれば参考にしたいという結果もあります。低学年は反応も早くて素直に行動に移せる、今日から頑張って食べてみようという声も聞こえるというような、元気の出るような結果をいただくことがあります。
 いずれにしても、このチラシは結構評判がよくて、あと何部欲しいという問い合わせが随分ありましたので、そういう意味では先生方も、子どもの課題が見えてきた中で、家庭での生活について、子どもの今の状況を通して保護者にいろいろな話をするということで活用していただいていると思いました。
 それから、ニート、引きこもりについての取組ということも踏まえて、キャンペーンをしても、本当に届けたいところにくさびを打つような施策になりにくいのではないか。これはどこの自治体でも悩んでいます。本当にここは今悩んでいるのです。
 「食べる!遊ぶ!読む!」は一つのツールだと思っています。保護者の中には、やろうと思っても夜が遅いし、朝は子どもが寝ているときに出なきゃいけないとかで、どうやって子どもと関係をつくったらいいかという相談もあったようです。そのときに、例えば朝ご飯を食べて、そこに一言親としての思いを添えるとか、いろんな工夫を皆さんでもっと持ち寄って話し合いましょうということをしています。
 届きにくいところへ届けるルートについては、例えば、問題を抱える子どもの立ち直りの支援をやっている団体が広島県にもたくさんあります。そういうところと連携をしながら、国の事業も活用しながら、地道な取組をしているわけですけれども、行政のこれまでのルートでない、地域の人間関係を活用したようなネットワークを仕組んでいけないかと思っています。それをお金を使わないでできないか。団体にお金を落とすのではなくて、それを支援するようなお金を積んでできないかということを、今考えてはいるのですが、なかなか難しいです。

(6)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

-了-

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