家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成17年9月8日(木曜日) 10時~12時

2.場所

グランドアーク半蔵門 「富士」(4階)

3.議題

  1. 家庭の教育力の向上について‐関係委員(赤坂委員、山極委員、中橋委員)からのプレゼンテーション‐
  2. その他

4.出席者

委員

 大日向委員長、大宮委員長代理、見城委員、佐藤委員、松下副分科会長、明石委員、赤坂委員、坂元委員、笹井委員、杉山委員、中橋委員、藤原委員、山極委員

文部科学省

 田中生涯学習政策局長、樋口政策評価審議官、大槻政策課長、吉田調査企画課長、桒原生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、清水男女共同参画学習課長、小川参事官、山田生涯学習企画官、山本地域づくり支援室長、大山地域学習活動推進室長、早川家庭教育支援室長、萬谷民間教育事業振興室長、豊岡幼稚園運営支援室長 その他関係官

5.議事録

(1)事務局より、資料5及び資料6について説明が行われた。

(2)赤坂委員より「幼稚園を拠点とした子育て支援」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 赤坂委員
 今日お配りしたパンフレットですけれども、全国国公立幼稚園長会が、幼稚園でできる子育て支援はどのようなものかということで、福祉医療機構助成事業として5年間実施してまとめたリーフレットです。後でお目通しいただければと思います。
 今、通園している子どもだけの教育を考えて幼児教育施設が一生懸命頑張っても、本当の子どもの育ちにはつながらないという認識を持っています。子どもそのものの発達が相当変わってきている。その背景は、保護者、特に母親の子育ての負担感が増大している。また核家族の中で、おじいちゃん、おばあちゃんという関わりもなくなっており、地域も、子どもを持つ家庭が少なくなっている中で、なかなか関わりが持てない。これは、幼稚園に通園してきている家族全てを巻き込みながら、子育て支援、親育て支援に向かわなければならないと考えました。
 では、幼稚園における子育て支援をどのように考えればいいかといったときに、誰かに助けてもらって一時的に安心するのではなく、子育ては大変だけれども楽しいという実感を保護者が持てるような支援をしていきたいと考えました。具体的には、幼稚園では親と子の育ちの場として様々な機会や場の提供をしよう、そして異世代の交流の場にしようということです。
 少し前は、保護者が幼稚園に来るときは参観という形が多かったと思います。今は、参観から参加、そして参画へという形で進めております。1人のお母さんが、数人の子どもと一緒に工作をやっている写真ですけれども、我が子だけが成長してほしいという発想から、我が子を取り巻く子どもの成長が我が子の成長につながるという親自身の意識改革も考えながら、子どもへの理解を深めるきっかけにもなっています。
 右側の写真は親子でトマトの苗を植えているのですが、あえて1つのプランターを2家族分として、成長を一緒に楽しんでいく中で、保護者同士が交流できる場が意図的にできるように工夫しております。
 サークル活動について。実はいろんなことをやりたいと思っている保護者が多いです。例えば今カレーづくりの写真が左側にありますが、料理サークルのお母さんは、年に4、5回カレーづくりに参加してくれます。担任の先生と子どもだけでは包丁を持たせることはできませんが、サークルのお母さんが入ることによって、5歳児は包丁を持って野菜を切るという体験の広がりがあります。
 右側は絵本の読み聞かせですけれど、毎月、読み聞かせボランティアのお母さんに来てもらい、いつもは集団で読み聞かせてもらっているのに、その日は好きな絵本を持ってきてお願いしているということで、お母さん自身も新たな文化に触れて、子どもへの理解を深めていると思います。
 これは隣の中学校との交流で、職業体験、保育体験も、積極的に進めています。今や中学生が、自分が親になるまでに、小さい子と関わることが大変少なくなっています。また、小さい子も、お兄さん、お姉さんと関わることが減っている。そこで、幼稚園がそういう場となっていくことに大きな意味を感じています。右側は、中学生が家庭科の授業で考えてきたゲームを子どもたちと一緒に楽しむという写真ですけれども、この後、このゲームが遊びの刺激となって、子どもの遊びが充実する姿も見られました。
 地域の教育力について。足立区は23区ではまだまだ緑が多いのですが、私もクリ畑があるなど知りませんでした。地域の方から、もしよかったら拾いに来ませんかと誘われて、子どもたち30人で60キロぐらい拾いました。
 右側は、マリンバの演奏。地域にはいろんな力を持っている方がたくさんいて、マリンバとピアノの演奏を親子で聞く場を提供してくださり、なかなか音楽を生で聞くことができないお母さんたちにとっては大きな刺激になったようです。
 前任の鹿浜幼稚園では4クラスあった学級が、10年以上前から2学級になりました。2つ空いていた保育室に、お母さんたちがボランティアで、親子で登園するサロンを運営していたのですが、16年度から区の子育て支援課と一緒にサロンとして開館しました。月曜日から金曜日に、地域の0~3歳の親子が来て遊んでいます。
 その中では、子育てに悩むお母さんが気軽に相談できるように、保健所と連携をして、堅い相談ではなく、膝を突き合わせながら相談に来る状況が見られます。
 右下は、遊んでいる親子の交流の写真ですが、実はこのお母さんは保育士さんだとわかりました。そんなことをつなげて、こういうお母さんがいる、何かあったら相談したらということで、お母さん同士が学び合うような場になっています。
 もう1つ、父親の保育参加ということで、土曜日ならお父さんが大勢参加できるので、子育てサロンの企画として、土曜日にうどんづくりをしました。1キロのうどんをつくるので、大体3家族が1つのチームになりますが、その中で、お父さんも子育てを楽しむ、あるいは父親同士の関わりも生まれたということもあります。
  この写真は子育て中のお母さんのパネル・シアターのグループです。プロ並みではないけれども楽しめる。あのくらいなら私たちも参加できそうということで、このサークルに参加するお母さんも出てきました。
 区ではいろいろな子育て講座をしております。あるとき、どういうことをしたらよいかと地域学習センターの職員が相談に来ました。そこで近くの保育園の園長とも相談して考え、今までビルの一角でやっていたものを、幼稚園を会場にしました。大変人数が集まり、延べ150人の参加があり、今年も幼稚園を会場にしています。これは地域の関係機関とのネットワークの構築にもなっていると思います。
 子育てサロンが始まってよかったことは、多様な関わりや地域の人材との出会いの中で、子ども自身は遊びや体験が広がり、教員は子どもの見方の広がりや深まりがあり、また、今までは地域から伝承されていた文化や遊びが、幼稚園が基盤となって伝承された。そして、子育ての楽しさを、中学生も含めみんなで共有できる場が増えたと考えています。多様な人が関わるにぎわいのある幼稚園が、子どもの心を豊かにはぐくんでいく兆しが見えています。人と人との出会いの場、様々な文化が行き交う場、双方向の学びが生まれる場として、幼稚園がこれからもっと活用されなければと思っています。
 私は幼稚園と保育園の一体型の幼保園の園長ですけれども、保育園でもできるところから同じようなことを今進めつつあります。ともに育て育ち合う地域環境こそ家庭の教育力を高め、地域の教育力を高めることに確実につながっていくと思います。 
 これは子育てサロンのプールですけれども、1歳児はたらい1個ずつ。夏の間大変盛況でした。
 これは、子育てサロンの2人の赤ちゃんですけれども、今ごろこういうことはあまり見られないんですけれど、同じぐらいの子どもが隣に寝ていて目を見つめ合っていて、何か大人も子どもも心が豊かになるという感じの写真です。 
 これは、お母さんたちのサークル活動の1つで、ハンドベルの演奏をしています。本当にいろんな条件のお母さんがいて、なかなか練習できないけれどお互いを感じ合いながら練習して、ここに行き着くまでの過程の中で、多分子どもはお母さんの姿を見たのではないかと思っています。
 これは、お母さんたちの人形劇サークルで、大きなカブの劇ですが、最初白いところが見えて、赤いところが見えたとき、京カブかなと思って、最後抜けたら七色の虹のカブでした。たまたまお父さんが劇場などの舞台をつくる方で、園を開き、地域を取り込むことによって、相当いい文化が幼稚園の中に持ち込まれます。
 これは、児童館の先生がオカリナを演奏したり、子どもの楽器を作ってくれています。やはり児童館には一杯財産があるなと思いました。
 これは卒園生のお母さんがボランティアで未就園児サークルをしています。今子育てサロンを無償でしていますが、それを支えているのは卒園生のお母さんたちです。自分たちがしてもらった喜びを次のお母さんたちにつないでいくという流れが、幼稚園を舞台に行われています。地域が、地域としての機能を持ちにくくなっている中で、幼稚園そのものが地域になっていくと考えています。

(3)山極委員より「企業における子育て支援」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 山極委員
 子どもは親を見て育ちますから、親が生き生きと誇りのある仕事をできるかどうかは子育てにおいて重要な要素だと考えております。そのためには、仕事と家庭の両立が欠かせないとの基本認識から、労働環境整備については早くから取り組んできました。
 当社の社員は現在、国内外を含めて約2万5千人で、国内の正社員は1万2,600人おり、その7割が女性です。また、お客様の9割以上が女性です。特徴的なのは、男女社員の勤続年数の差が狭まってきていること、結婚、育児などの理由で退社する風土ではないということです。
 さて、「仕事と家庭の両立支援」のための特徴的な制度・施策について、年代順にそれぞれの内容をご案内します。
 フレックスタイム制度は、仕事の状況に合わせて毎日の始業・終業時刻を自分で自主的に決める制度として1988年よりまず本社に導入しました。裁量労働制度は、通常の労働時間にとらわれずに自らの裁量で働くことができる制度で、1994年より研究所に在籍している一定レベル以上の研究員に適用しています。
  1990年に「育児休業制度」、育児休業制度は子どもが満3歳になるまで本人が希望する期間取得でき、2回以上取得する場合は通算5年まで取得できますが、残念ながら、男性の育児休業者はこの時点で1名のみです。
 また、1991年に「育児時間制度」を導入しました。育児時間制度は、子どもが小学校に入学するまで、1日2時間まで取得できます。04年度の育児休業制度取得者は延628人、育児時間制度取得者は延512名です。
  1993年には「介護休業制度」を導入しました。1回につき1年以内、通算で3年まで何回でも取得できます。介護時間制度は1日2時間まで、1回につき1年以内、通算3年以内取得できるというものです。
 仕事と生活の両面において、従業員の自立と自己責任に基づくキャリアアップとライフデザインを支援することを目的として1998年に「カフェテリア制度」(選択型福利厚生制度)を導入しました。メニューの考え方としては、育児や家族の健康管理ならびに介護を支援するメニューや自己啓発を支援するメニュー等を中心とし、毎年、社員一人ひとりに一定のポイント(年間で350~410ポイント)を支給し、サービスを受けるとポイントが消化される仕組みとしています。
 チャイルドケアプランは、社員が妊娠中も安心して働けるような職場環境を作ること、そして出産後は円滑に職場に復帰し、仕事と育児をバランスよく両立させながら働き続けられるように支援することを目的として1999年より導入しました。妊娠が判明してから職場復帰するまでの期間、本人と所属長が情報を共有しながらコミュニケーションをとっていく仕組みであり、ツールとしては、チャイルドケアシート、コミュニケーションシート、母性健康管理指導事項連絡カード、休暇管理表等がありまして、これはTOSの中に入っておりまして、ダウンロードして使えるようになっております。
 続きましては、育児休業者300名の声を収集して、2002年から育児休業者支援プログラム「wiwiw(ウィウィ)」を開始しました。「wiwiw(ウィウィ)」は、インターネットを通じて、育児休業者が必要な育児支援や職場復帰に向けたビジネススキル向上のための講座などを提供するプログラムであり、自宅にいながらにして取得できる育児休業者支援システムです。育児休業を取って家にいると、その間に会社の事情に疎くなってしまって、復帰してくると何をしていいかわからない、あるいは、会社の状況はどう変わっているかわからないということで戸惑う場合があるので、育児をしながらでも会社とネットでやり取りができるという本人と会社双方を考慮したシステムになっています。育児休業者だけではなく、企業にとっても優秀な人材の長期確保につながるといったメリットがあることから他の企業向けにも販売し、現在90企業が導入されています。
 「カンガルーム汐留」という名称で、2003年より事業所内保育施設を汐留に開設しました。保育施設開設の目的は、1銀座・汐留地区を中心とした東京圏で働く資生堂の子育て社員のサポート、2男女共同参画企業のシンボル施設としての役割、3近隣・賛同企業との連携による社会啓発(電通・日本IBM・ニチレイ)、4仕事と育児の新しい関係性の探索(職と育の接近)、5男性社員の育児への積極参加の促進であり、仕事と育児の両立支援、ワーク・ライフ・バランスの支援であります。
 女性の活躍は当社の企業活動を左右するものであることから、2000年にポジティブ・アクションの5つの具体目標を設定しました。
 まず第1に、資生堂グループ全体が、男性も女性も、ともに‘自分らしさ’を発揮できる職場になるよう、この考えの早期社内定着を図ることでした。
 第2の目標は、組織マネジメントのキーパーソンである男性管理職の意識と行動の改革です。
 第3の目標は、女性社員自身の意識改革です。女性管理職を育成しようという意図もあって、2000年から女性を対象とした教育・啓発機会として研修開始しました。
 第4の目標は、ジェンダーの視点で賃金制度の見直しを行い、男性が支給対象となることが多い世帯手当や家族手当を廃止もしくは縮小しました。また、合わせて、それらの手当てを賞与の算定基礎から除外しました。
 第5は、こうした目標達成のプロセスを大事にしながら、女性社員の管理職への公正で積極的な登用です。現在、管理職に占める女性比率は11。7パーセントですが、人材育成を続けることで間違いなく増加すると考えています。
 ワーク・ライフ・バランスについて、企業が横断的・継続的に研究・実践するためのワーク・ライフ・バランス塾を2004年度より民間企業36社(資生堂を含む)に呼びかけて開設しました。塾長は資生堂の岩田取締役、塾頭はニチレイの大戸会長とし、当面は3年間を目安としてスタートしています。2004年度のテーマは、「次世代育成支援行動計画策定」であり、2005年度は「働き方の見直し」をテーマに現在推進中です。
  2004年4月より、各部門で行ってきた活動をCSRの観点から、全社的に推進すべく社長直轄の組織として「CSR部」を設置しました。その中の「男女共同参画グループ」が男女共同参画の推進に取組んでいます。
 法改正への対応として、2005年4月より「有期契約社員へ育児休業制度を適用する」とともに、子どもの看護休暇制度として、有期契約社員を含む全従業員を対象に、有給休暇とは別に年5日間の休暇を制度化しました。
 また、男性が育児に積極的に参加できる環境整備を行い、男性の育児休業取得促進と仕事と育児の両立支援をさらに進めることを目的として「短期育児休業制度」を新設(1子どの出産以降、子どもが満3歳になるまでの期間内で、連続2週間取得可、2有給扱い、3現行の育児休業制度か短期育休業制度を取得するかは事前に本人が選択)しましたところ、2005年4月~10月までの取得者は男性4名で、徐々に利用されてきています。
 男女共同参画活動の第一フェーズ行動計画「アクションプラン」を次の目的で策定しました。1真のグローバル企業として、社員の多様性を生かす社内風土を実現する。2社員の多様性を尊重するという考えから男女を問わず全社員が一人ひとりの能力・意欲を高め、それを最大限に引き出すことによって、組織を活性化し、会社の成長に寄与する。3そのためには、過去の固定概念を払拭し、能力発揮の機会を十分に与え、公平な評価・処遇を行う。
 以下の4つを重点課題として、男女共同参画20のアクションプランを構築し現在推進中であり具体的な内容は以下の通りで、2005年から2006年の2年間でやっていこうというものです。したがって、今後は“若手・女性の経営参画の加速”と“社員のワーク・ライフ・バランスの実現”という2つの目標を掲げ推進していきます。“若手・女性の経営参画の加速”とは、組織のリーダーとなるための人材を育成し、ポストへ登用すること。管理職比率からリーダー比率へ、リーダー定義の明確化と女性リーダー比率目標を設定しています。
  “社員のワーク・ライフ・バランスの実現”とは、時間当たりの生産性や価値創造力を高めて、個人生活の時間を創出し、創出した時間で地域・家艇・社会などの多様な価値観に触れ、その多様な価値観を取り込んで仕事に生かす。つまり、企業価値を生み出す「人づくり」と深い関係性があり、社員の幸せと会社の業績アップのためにも大変重要なコンセプトです。

(4)中橋委員より「行政と連携した子育て支援団体の活動事例」をテーマにプレゼンテーションが行われた。

○ 中橋委員
 香川県におやじの会が20幾つあるのですが、2年前に文部科学省の委託事業を受けて、「第1回全国おやじサミット」を行いました。そのときに全国で活動をされている方々が、自分で旅費を払って香川県まで来てくれて非常に盛り上がりましたので、この週末には、「第3回全国おやじサミット」が京都で開催されました。その日の夜に代表の方から電話があって、もう第6回まで開催地が決まったと言うんです。地元の教育委員会の方は随分びっくりしているそうです。このように民間団体の動きから、行政が動いて、地域が動いていくという動き方は参考になると思います。
 インターネットで香川県内や全国のおやじ団体がつながっていて、常に隣を意識しながら、あそこには負けないということで活動の糧にしている、なかなか行政だけではできない動きができていると感じています。
 事例1は私のグループの活動で、携帯のメールを活用した子育て情報の配信サービスを始めました。スタートのときは、予算がかかるんじゃないかとか、現実にできないんじゃないかとか、批判も多かったんですけれども、私たちが子育ての支援の現場で今何が有効なのか見ていたら、やはり携帯電話が一番身近なツールということで、地域の情報、それもお住まいのエリアと、子どもの年齢に合ったきめ細やかなメールサービスを配信していくということで、2年半前にスタートしました。
 これはものすごく身近に感じていただいて圧倒的な支持を得ているんですけれども、少しずつ行政の方がついてきて、例えば公民館の人から、うちではこういうサークルができたとか、今週はこういう子育てのサークルをしているので来てくださいというような情報を寄せていただけるようになりまして、非常にいい交流ができるようになりました。もちろん全ての公民館ではないですけれども、公民館や幼稚園、保育園から情報をいただきながら、この情報サービスを行っています。
 また、去年は家庭教育手帳の携帯メール配信を行ったのですけれども、これも非常に様々な方に登録していただいて、感想などを寄せていただいております。つい昨日、香川県教育委員会から、来年もよろしくお願いしますと言われて、本当にいいタッグを組んで配信サービスができるようになりました。
 事例2として、つどいの広場という厚生労働省の事業ですけれども、商店街の空き店舗を活用して、子育ての広場を2カ所でしています。そもそもは自主事業としてNPOが始めた活動でしたけれども、県や市町が動いて委託事業として行っています。私が非常に感じているのは、行政の方が例えば地域子育て支援センターで子育ての広場を始めるときは、このスタッフ、場所、予算でできることを考えると思いますけれども、私たちNPOは、お母さんたち、お父さんたちにとってどんなことが必要なのか、そのためには幾ら予算がかかって、どんな場所が必要か、そのためには行政と連携できれば少し予算をもらえばいい、足らなければ地域の人たちに協力してもらう、知恵も出してもらう、人も出てきてもらう、理解のある人がいればお金ももらう、地域の企業にも支援してもらうという呼びかけが、NPOの方が軽いフットワークでしやすいんじゃないか。
 それが現実にうまくいっていると感じていますし、行政の方も、来年はこういう予算があるから使えるかもしれないと、理解ある方は言ってくれます。別の部署の動きを、同じ行政の中よりも、NPOの方が見つけやすいことも今までの経験で感じていて、いろんな部署をつなぎながら新しいことを動かしていけるのがメリットと感じています。
 それからもう1つ、企業に働きかけて子育て応援タクシーというのを昨年スタートしました。子どもと一緒にタクシーを使った時につらい思いをしたという声が非常に多かったので、子育て応援タクシーというのを走らせようと企画して、タクシー協会に持っていったのですが、あまり相手にしてもらえなかったんです。けれどもタクシー会社1社1社回って協力してくださる会社を見つけて、ドライバーの養成をうちでやって走らせたところ、非常に好評だったんです。香川県は、その後すぐに「子育て応援大賞」という大賞を、その子育てタクシーに出しました。企業に出すのはすごく異例なんですけれども、このことによって、ほかのタクシーの会社が今4社、予定を含めて5社ほどが、子育て応援タクシーに名乗りを上げています。
 ドライバーに子育ての理解をしてもらうための講座も、香川県からの委託を受けて実施できるようになりました。これも行政と連携してうまくいった例かと思っています。また、そのタクシーに、市・町・県のリーフレットなどをドライバーが常に携帯していて、子育てにちょっと悩んでいそうなお母さんがいたら情報発信してくれるようになったということで、今まで行き届かなかった情報を発信する機会が1つ増えたのは、行政にとってもよかったことではないかと思っています。
 それから、香川県に子育てサークルが200団体弱あって、そこと情報交換などもしていますけれども、その際に県が協力して、呼びかけのリーフレットを一緒に配布するとか、場所の提供とか、託児のときの補助を、もう7年ほど行っています。
 そんな中で、インターネット上でお互いの情報交換を常にできるように、香川県内の子育てサークル、行政、保健師、助産師たちが、個人として情報交換する場も設けまして、おやじの会の人たちも入っております。例えば行政の方で、メールに入ったときには教育委員会の担当だったけれども、その後、異動で中学校や高校の先生になった方とか、保健センターに行っている方たちもずっと個人として参加することで、おやじの会を自分の学校につくったり、空き教室を開放して地域の子育てに貢献したりということにつながっており、非常に広がりができて面白いと思っています。
 あと行政側から見た連携のメリットは、地域や企業の協力が、当事者の私たちが呼びかけた方が協力してくれやすいという実感があるのが1つと、同じイベントをしたり同じ冊子を作っても、行政が投げ込みでリリースしたときの扱いよりも、私たちNPOが、こういう思いでこういう行事をしたと呼びかけた方が、メディアの取り上げ方が全く違うんです。新聞、テレビで取り上げてくれることによって、広く多くの人に知ってもらう機会になっていると感じています。

(5)3名の委員のプレゼンテーションを受けて、意見交換が行われた。

○ 明石委員
 最初の足立区は非常に興味深い事例です。都は子育てサロンで臨時職員を1名雇用していますけれども、これだけうまくできるのはこの方が頑張ってくれているからかと思いまして、その処遇はどういう扱いなのでしょうか。

○ 赤坂委員
 おっしゃるとおりです。臨時職員は1カ月10日ずつの人が2人で、時給が790円です。たまたま2人とも保育士あるいは幼稚園教員の資格を持っております。なおかつ区の子育てサポーター講座がA・Bコースありまして、Aコース36時間を受講した者ということで臨時職員として雇っておりますが、基本的には園の卒園生の母親で、今まで無料でやっていた方が、この制度で臨時職員として働くことになりました。
 実は有償ボランティアがもう1人ついております。これはボランティア団体にお願いしているのですが、1時間500円で6時間分、1日3千円です。これは個人に渡すのではなく、ボランティア団体に支給しまして、そのお金を個人に分けるか研修に使うかは団体にお任せということで、その2人が従事していることが、やはり成功の大きな鍵を握っていると思います。

○ 明石委員
 資生堂のカフェテリア制度というのが非常に参考になるのですが、この利用実態はいかがでしょうか。仕組みとしては、使った請求をすれば、会社がお金を払うということでしょうか。

○ 山極委員
 育児関係者は100パーセント使っております。毎年、社員一人ひとりに一定のポイント(年間で350~410ポイント)を支給し、サービスを受けるとポイントが消化される仕組みとしています。何に使ったかという領収書は必要になります。

○ 明石委員
 個人的にお願いしてもいいし、民間の施設に預けてもいいし、領収書があれば支払うのですね。

○ 山極委員
 はい、そうです。

○ 明石委員
 非常に面白い取組だと思います。中橋委員にですが、非常に頑張っていらっしゃって、行政とうまくいっていると思うのですけれども、財政的にはどのくらい行政のサポートがあるのでしょうか。

○ 中橋委員
 子育ての集いの広場事業は委託事業ですので、補助金をいただいて運営していますけれども、それ以外はお金ではない支援が多くて、郵便物を送るときに一緒に送りますとか、こういう制度があるのを教えてあげますという程度で、資金的な援助はまだ少ない状況です。

○ 明石委員
 これだけたくさん仕事をされていますけれども、ランニングコストはどうやって確保しているのでしょうか。

○ 中橋委員
 私どもの子育て情報誌に企業からたくさん広告の協力をいただいておりまして、その収入でやりくりしております。

○ 杉山委員
 集いの広場とか、赤ちゃんサロンとかをやっているNPOの方から聞きますと、幼稚園を終わった後の子どもの居場所がないという話が出てくるんです。幼稚園は結構午前中とか2時頃に終わっていて、その後行くところがないという話があるようです。そのあたりはどうなっているのかお伺いできればと思います。
 さきほど、親にこういうことをしてあげますというお話が多かったように伺ったんですけれども、親の家庭での教育力を上げることを考える場合に、親を支援の受け手にしてはならないと思っていまして、最初は手厚い支援が必要かもしれないけれども、徐々に自立支援に変わっていくことが必要と思うんです。親の教育力をアップするためにどういうことをしているのか、お教えいただければと思います。
 もう1点、やはり企業の格差が少し広がっているような気がして、資生堂だからいいわよねという部分が出てきてしまう。私も企業の働き方の見直しとかを考えるのですけれども、ワーク・ライフ・バランスをすごく熱心にやっている企業に奥さんが勤めている旦那さんの企業が得をしている気がするんです。つまり、奥さんにそれだけ手厚いことがあるので、相手側はむしろ何もしなくてラッキーというような不公平感という部分をどうお考えなのか、お伺いできればと思います。

○ 赤坂委員
 3~5歳の子どもの居場所ということで、今、園庭開放を2時以降4時までやっています。4時ぐらいになると大抵のお母様は帰ってきますけれども、早く帰ったお母さんが子どもを放りっ放しにするとか問題があって、保育者が間に入りながら遊びを伝えたり、サークルの運動部員の人が活躍しています。これについては、小さい子は預かってもらえるけれども、土曜日、3~5歳はどうするんだということが、実は来週の土曜日の講演会の問題になりました。幼稚園の子どもも預かろう、小学校の子どもも預かろう、でもその子たちは小さい子の面倒を見る場にしようと今話し合いを進めているところで、おっしゃったとおり、大きな課題かと思います。
 もう1つ、親が自立していく支援に向けて、場をたくさんつくって、お母さんたちが自分たちで運営しながら、学びの出番をつくろうという形で、保護者主導型の講演会なども意図的に行っています。我が子だけでなく他の子どもを見ていく中で、相互に助け合い親同士のネットワークができるような支援も大きな課題かと思います。

○ 中橋委員
 3~5歳の子どもの居場所ですけれども、私のところは商店街の空き店舗を使って子育て広場をしていますけれども、商店街の方が、古い会館を貸してあげるから大きい子広場をしなさいというので、すぐ隣の場所で場所を分けて、ちっちゃい子広場、大きい子広場とやっているのですが、幼稚園から早く帰ってくる大きい子どもたちの広場に関しては、保護者の人たちが積極的に関わってくださっています。
 私たちのNPOは育児中の人たちが非常に多いので、広場もメールでの情報配信も、支援する立場から支援される側への発信ではなくて、同じ当事者同士としてアピールしています。支援してもらっているというよりは、仲間たちと一緒に関わっているという気持ちの人が非常に多いので、広場にしても、利用者の人たちが30分早く来て掃除しましょうとか、ゴミやオムツを置いて帰る人もほとんどいない。お母さん同士が互いに言い合いながら運営していますので、そういう意味では、支援してあげるのではないスタンスを常々貫いているところが、少しずつ浸透してきていると思っています。
 子育て広場に育児休業中のお父さんが毎日のように来ていたんですけれども、その方が、日曜日も広場を開けてくれと要望されました。リクエストがあって応えるのが私たちの仕事ではないので、呼びかけとかチラシを作ったりするのはお手伝いするけれども、運営は、お父さんに鍵を預けるからお父さん自身でやってみたらどうですかということで、もう半年以上前から日曜パパ広場というのを運営しています。これが非常に好評で、上手に新聞にも取り上げられて活発に活動していて、すごくよかったと思っています。

○ 山極委員
 当社の女性社員のパートナーの大半は社外の方です。当社の女性だけが育児をすることになると、その夫の長時間労働や、固定的性別役割分担が明確になってしまうのではないかという心配を私たちも持っております。その対策の1つは、男性が育児に普通に参加できるように、男性の育児参加を促進するセミナーを企画したり、恒常的な長時間労働を解消する取組み、研修などプロジェクトを設置して対策を講じています。一企業だけでは限界がありますので、ワーク・ライフ・バランス塾の36企業が、知恵を出し合って、働き方の見直し等を進めています。

○ 佐藤委員
 赤坂委員の事例は非常にいい試みだと思いましたが、幼保を一緒にした場合に、幼稚園のお母さんたちはあのような参加の仕方ができると思うのですが、保育所のお母さんたちはなかなか難しいのではないかと思っております。その辺、もし何かあったら、お聞かせいただきたいと思います。
 それから、サントリーも女性の活躍ということでは頑張っている方ですが、その話をよその会社の方にしますと、おたくはいいわよねと言われてしまうんです。企業が大きいとやりやすいということがあったり、トップの意識が高いとやりやすい。条件的には恵まれない企業でトップダウンではなくボトムアップで進めていくにはどうしたらいいか、お感じになっていることがあったら教えていただきたいと思います。
 それから、中橋委員の発表で、インターネットとか携帯だからこそ、いろんな方が来ていると思うんです。その辺の運営の難しさを含めて感じていらっしゃることがあったら教えていただきたいと思います。

○ 赤坂委員
 うちも認可上は保育園と幼稚園の一体型施設で、4月から園長になって同じようなことを考えておりました。本園の場合、前身が幼稚園で、そこに保育園機能がついたんですけれど、父母の会の活動なども前身の幼稚園からのつながりがありました。そこに保育園の保護者がどのように関わるのか、運営側としては、双方の保護者が相手のことを思いながら運営していくことが大きな課題だったのですけれども、意外と働いているお母さんも、計画的に保育参加の日やいろんな講座の日をお知らせすることによって、1時間なり2時間なり、きちんと空けてくれます。
 工夫としては、1日だけではなくて、3日間のうちの都合のいい日という形で選択できる工夫もしております。朝10時ぐらいから開いていた幼稚園の父母の会の役員会を、夕方の3時半からと工夫をしながら、双方一緒に考える。これはまさしくこれからの教育の大事なところで、お互いに違う環境・状況の人が共に暮らす小さな社会が幼保園の中にあると思っています。
 運営する側としては、双方そのことを理解しながら、それぞれが活躍できる場をつくっていくという配慮がございます。今までこれでいいと思っていたのが、いや、ちょっと考えなきゃいけないという空気を生み出していると思っております。

○ 山極委員
 「企業が大きいとやりやすい」と、皆さまからおっしゃっていただくのですが、私たちも多くの努力をして、今日までに至りました。ボトムアップは重要ですが、まずは、トップのコミットメントを得ないと改革は成功しないと思います。今、CSR部員は16人しかいませんから、会社全体を動かすには、委員会組織をつくり、全社的に影響力を与える仕組みにするとよいと思います。具体的事例を申しあげると、企業倫理委員会を97年に設置し、今その事務局をCSR部に置いてあります。全国に配置した企業倫理の旗振り役であるコードリーダー600人が、企業倫理の浸透・定着を図っています。

○ 中橋委員
 いろんなタイプのお母さんがいるから運営が難しいという部分も確かにありますけれども、例えば携帯のメールでコミュニケーションをとる場合、10代で若く子どもを産んだ親御さんが書き込みをしている。ほかのお母さんからレベルが合わないんじゃないかと思っても、そのときに、逆に高齢で子どもを産んだ高学歴の親御さんから、「子どもの様子の一つ一つが気になって、子育て一つ満足にできない自分にイライラして外に出られなかったのが、あまりにあっけらかんと子育てしている人たちがいるので元気が出た」という声がありました。放っておくとトラブルもあると思います。私のところの子育て広場は、必ず顔の見えるところにスタッフがいますので、上手に間を持ちながら、お互いにいい影響が出るよう意識しておりますので、特に大きな問題もなく、逆に意外な人たちの接点を持つことでお互いにいい影響があると思っています。

○ 見城委員
 赤坂委員に質問ですが、幼保園というものについて、幼稚園児と保育園児は別なのか、ゼロ歳から卒園までの状況を、簡単で結構ですが教えてください。
 山極委員の事例は並々ならぬ努力だと思うんですけれど、資生堂さんの東京本社と地方の支社ではアンバランスなどがあるのか。それを伺うと、地方でこういうものを立ち上げたい方へのヒントになると思うのですが、お願いします。
 それから中橋委員には、最初に「わはは」の核ができるとき、何があったんでしょうか。私もいろんなところで集まりがあるんですけれども、何かが足らないために「わはは」にならないので、そのようなところがありましたら、教えてください。

○ 山極委員
 実際にアンバランスがございます。例えば育児休業一つとっても、本社は100パーセントで、地方でも結構上がって96パーセントです。ただ現場では、育児時間も思うだけ取れないという課題がありますので、そこの支援に今、プロジェクトを幾つか立ち上げております。地方の方々に不公平感がないようにするにはどうしたらいいかということで、ワーク・ライフ・バランス、働き方の調査をやりましたら、95パーセントが支持なんです。実現できれば自分たちもモチベーションが上がるし、これからキャリアも積めるという地方の声が先月出ましたので、それを拠り所に、もっといいワーク・ライフ・バランスをやろうとしているところです。2年後には、きっといい成果をお話しできると思います。

○ 見城委員
 例えば本社でしたらすぐ周りに一緒に取り組める企業がありますが、地方の場合、何社か集まれるような状況は現実にあるんでしょうか。

○ 山極委員
 CSR委員会男女共同参画部会は各地から代表者を呼んでいますので、それを必要あるごとに集めたり、ダイアローグに行く。先月も、全ての支社に行ってまいりました。現場の声に応えなければいけないのでそれを聞いていく、インターネットなどを通して声をもらうということで、ずっと絶え間なく調査を重ねております。

○ 中橋委員
 子育てサークルというのは、子どもが幼稚園・保育園に入るときに自然消滅していく流れが多いんですけれども、私たちは、まず最初に奮発して印刷屋に出して大きな子育て情報誌を作ったことで、子育て中の方々からたくさんの声が届きました。困っていること、悩んでいること、行政に言いたいことなど、どこに言っていっていいかわからないお母さんたちがこれだけ多いのなら、これはちゃんと届けないといけないと感じたのが1つ。情報誌を印刷するお金もありませんから、企業に頭を下げて回ったんですけれども、そのおかげである程度運営資金ができました。きちんとした時給までは払えなくても、活動した活動費は支払えるように早くからしておりましたので、それも活動が継続した1つの理由かと思っています。
 香川県は中小企業ばかりですので、あまりお金は出してくれませんけれども、例えばうちの会社の会議室が空いているので週1回ぐらいだったら使っていいですよとか、うちのスーパーのここのコーナーで読み聞かせをしていいですよという情報が、企業を回ったことで非常にたくさん得られましたし、また、子どもを連れたお母さんであるからこそ、向こうも非常に油断をして話を聞いて、気がついたら何だか応援しないといけなくなったという持っていき方ができたと思っています。私たちの仲間はどんどん新しい人が入っているんですが、子どもを育てながらでも変わっていける、ないものをつくっていけるという達成感を感じるお母さんたちが増えているのが、私たちの継続するエネルギーになっていると思っています。

○ 赤坂委員
 保育園と幼稚園の実態ですが、制度上は1~3歳が保育園、4~5歳が幼稚園ですけれども、一体的運営になっていますから、4~5歳も7時半から夜の6時半までの保育を行っております。1歳児から5歳児の子どもが107名、保育士が11名、幼稚園教員が5名で保育をしてまして、特に3~5歳児に関しては、幼稚園教員と保育士が2人の担任で長時間、短時間で子どもを見ております。3歳児はほとんどが保育園の子どもですので早く帰っても4時半ですけれども、4~5歳に関しては、2時まで、4時まで、6時半までと、保護者が選べるようになっています。お母さんが働いているいないに限らずに、地域で教育をしていこうという大きなねらいを持っておりますので、地域に根差した幼保園ということが大きな役割かと感じております。

○ 見城委員
 以前、保育問題検討会とかで、もう少し保育園が開かれないかと随分申し上げたときに一番壁になったのが、保育園の措置費だったんです。働いているお母さんと、1週間に一遍預けに来る人と、どう差をつけるのかとか、それによって保育料が上がるのではないかとかいう意見が出てきて、大きな壁だったんですが、そのような保育時間の差は、保育料でどのようになっているのでしょうか。

○ 赤坂委員
 4~5歳に関しましては、いわゆる幼稚園の保育料、それから預かり保育を柔軟に対応しているところです。ですから、朝の7時半から6時半までという保育園と同じ子どもは、税金をあまり払わないご家庭であっても最高額の保育料を徴収している状況で、4歳になったら教材費も遠足に行くお金も長時間に関わるお金も、所得の状況に応じずにお金を取られます。そのことを理解していただいて、幼保園を運営させていただいております。長時間の子で、給食費も含めて1万8千円です。確かな資料が手元にございませんが、多分保育園の4~5歳児の一番多い金額に合わせたと思います。

○ 坂元委員
 赤坂委員の幼保園は大変な貴重な取組と思うのですけれども、今後その取組をいかに広げていくかが重要と思うのです。そうしたときに、なぜ赤坂委員の幼保園ではこうした実践が実現されておられるのか、逆に言えば、なぜ他の幼稚園では実現に至っていないのかについて、どのように考えておられるか。
 山極委員の事例も大変貴重な取組で感銘を受けたんですけれども、同じように、資生堂ではなぜこうした取組が実現されておられるのか、他の企業ではなぜ実現に至っていないのかについて、どのように考えておられるか。
 山極委員にもう1点ございまして、育児や介護の支援を手厚くされていますが、どうしてもコストがかかるように見えるわけです。仕事やキャリアの連続性が途絶えるので非能率さが生じるのではないか。企業は宿命的に利益を追求しなければいけないわけですから、そうしたコストは避けたいという論理があると思うんです。逆に言えば、経済的に大したコストではないことが知られれば、取組はどんどん広がっていくと思うのですが、そのあたりを伺いたいと思います。
 中橋委員の事例も大変精力的な活動でとてもすばらしいと思ったんですけれども、一方で、NPOというのはどうしても運営とか財政の問題があるわけでございます。行政や社会がNPO活動を活性化させ広げていく上で、実践モデルとともに財政運営モデルを提示していくことが重要ではないかと思う次第です。

○ 笹井委員
 今日の3人の方の発表を聞いて思ったのは、家庭教育支援のあり方として、親にしても先生にしても、地域住民の方もそうですけれども、ある種のポテンシャルを皆持っていて、そういう人たちが持っているものをもっとうまく引き出せるような形の支援が大事じゃないかと思ったんです。
 そうすると、講座のように知識を教える形ではなく、いろんな主体が一つの場で関わり合うことがとても大事になってきて、そういう関係を持つことで、それぞれのポテンシャルが外に出てくると思うんです。そういう場や機会を、これからの生涯学習支援としてどう政策にしていくかが大事かと思って聞いていました。

○ 松下副分科会長
 赤坂委員のレジュメに、イベント化せず日常化することが大事とあるんですけれど、私も、サークルや講座から家に帰って教育をするお母さんの教育力が大事と思ったんです。ご発表いただいたのは、家から外に出てみんなで共同作業や勉強をしている例だったのですが、我が家に帰って日常化することに関してフォローアップしていらっしゃるのか、それとも日常化に関して何か心構えを少し強化していらっしゃるのか、伺いたいと思います。

○ 赤坂委員
 他の園ではどうかというと、実は足立区は、文科省の幼児教育振興プログラムを受けて、平成15年7月に足立幼児教育振興プログラムを作成しました。そのときの大きな3つの柱が、各乳幼児教育施設の充実、それぞれの施設による安心と喜びの子育て支援、家庭地域の連携でした。当時幼保園がありませんでしたから、公立幼稚園3園を実践園として積極的に進めていこうというプロジェクトです。今、このプログラムをいかに実践していくかというプロジェクトチームをつくって具現化している真っ只中です。少なくとも公立幼稚園3園、そして幾つかの私立幼稚園・保育園が、子育て支援という視野も入れながら幼児教育を進めているのが現状かと思います。全国的に言いますと、国公立幼稚園では既にそのことを大事な視点として進めておりますので、多分このような取組はたくさんあると思いますし、違う観点で充実している取組もあると思っております。
 もう1つ、日常化が本当に大事だと思います。私の園では、今日お休みしますという電話一本を子育て相談として考え、一人一人のお母さんと先生との会話、あるいは保護者同士のつながりの中で学び合うということを心がけていますし、保護者自身が自分の気持ちを醸成していくような日常の関わりを考えていきたいと努力しているところです。ただ、何かイベントがあることで、今まで意識していなかった子育ての悩みや考え方が意識化されていって、改めて自分の子育てを振り返ることになりますので、これらは両方絡み合っていくと思っています。
 幼保園の運営のキーワードは、やはりつながるということだと思っています。つながり、関わり、高め合い、そして、それらが深まっていくことが大きな運営の課題と思っています。幼保園は子どもが育つ環境が大変豊かで、ノウハウも持っていますし、人もいます。ぜひこれらが生かされて、その関わりの場になるようにしたいと思っています。

○ 山極委員
 他の企業の状況ですけれども、実はこの1年間かなり進んでおりまして、2003年度の厚生労働省の女性の活躍推進協議会のデータで、190社がポジティブ・アクションをやっています。私たちの塾の36の企業でも、何らかの形で始めております。その背景には、女性の活躍が企業の売上げにつながるというデータを21世紀職業財団が調べています。例えば化粧品は女性のお客様が9割です。日産のゴーン社長も、60パーセントは女性が決定権を持っていると言っており、消費財の決定権は女性が持っていると言っても過言ではないので、そこに目をつけないビジネスの世界はないわけです。まだなかなか出てきていないと思いますが、ボリュームゾーンとして動いていることは事実です。
 コストがかかるということは、つまり、これをやらなければ次の企業は生きていけないということで、投資なんです。ただ、投資もやっぱり限界があるので、これはやはり企業だけではなくて、経済界、そして行政、みんなで連携していかなければいけないと思っております。

○ 中橋委員
 教育委員会の人たちがわからない情報を、NPOの人たちはつかんでいくことができる。私なども、例えば農協の委員とか公園緑地化の委員とか、いろんな部署からも呼ばれますけれども、すべて子育てに関係していくんです。1つのNPOがつかんだ情報を1つのところで持っておくのではなくて、あらゆる分野に常に発信し続けていくことで、地域全体がすごく活性化していくと感じておりますので、これからもほかのNPOにも呼びかけて活性化していきたいと思っております。

(6)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

(生涯学習政策局生涯学習推進課)