家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成17年7月26日(火曜日) 10時~13時

2.場所

如水会館 「富士の間」(3階)

3.議題

  1. 委員長・委員長代理の選任について
  2. 自由討議(「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」)
  3. その他(今後の日程など)

4.出席者

委員

 見城委員、佐藤委員、松下委員、大日向委員、大宮委員、土江委員、山岸委員、赤坂委員、坂元委員、笹井委員、杉山委員、中橋委員、藤野委員、藤原委員、山極委員

文部科学省

 田中生涯学習政策局長、樋口政策評価審議官、中田大臣官房審議官、久保生涯学習総括官、大槻政策課長、桒原生涯学習推進課長、清水男女共同参画学習課長、吉田調査企画課長、三浦社会教育課長、小川参事官、山田生涯学習企画官、早川家庭教育支援室長、山本地域づくり支援室長、その他関係官

5.議事録

(1)事務局より、あいさつが行われた。

(2)事務局より、各委員及び文部科学省出席者の紹介が行われた。

(3)委員の互選により、委員長に大日向委員、委員長代理に大宮委員が選出された。

(4)本特別委員会の運営・公開について、生涯学習分科会運営規則、生涯学習分科会の会議の公開に関する規則と同様の扱いとすることが決定された。

(5)事務局より、配付資料について説明が行われた。

(6)委員により、自由討議が行われた。

以下、審議の内容。

○杉山委員
 どうも、こんにちは。子育て環境研究所というのをやっております杉山と申します。幾つかポイントを絞って、お話をしたいと思っています。
 もう皆さんご存じだと思うんですけれども、家庭教育のこの事業もすごく進んできていて、一方で、先ほどご説明があったように、厚生労働省のほうも、子ども・子育て応援プランをやったりというふうに子育て支援を進めていて、こっちでも家庭教育がある。地域に住んでいる人であったり親にしてみると、どっちですかみたいな、同じことなのにちょっと管轄が違うんですというような、現場の戸惑いなんかをよく聞くんですね。相当庁内で連携はとられていらっしゃると思うんですけれども、もう一段というか、無駄のない支援ができるためにはどうしたらいいのかみたいなことを考えていくことも必要なんじゃないかと思っています。
 では、具体的にどうすればというのはすぐ浮かばないんですが、違いを認めながらも、よさもありながら、だけれども、1つ目指すところはここだよねというところの合意事項で、例えばパンフレット1つにしても、1個のものでいいと思うんですね。そういうのを厚生労働省と文科省でつくって、親のほうに伝えていくとか、そういうことがあってもいいんじゃないかなと思いました。
 もう一つが、最近ブログで若いお母さんたちと意見をやり取りすることがすごく多くて、ちょっと関心というか、改めて感じてきたのが、預けるということに対してどう思うかという部分を、いまだに罪悪感を感じてしまっているとか、そういう親が多かったりするんですね。1つ踏み絵になるのが、親がパチンコ屋に行きたいと思っても、子どもを預かるかどうかというようなポイントがあって、ここの家庭教育のところにもあるんですけれども、これからはすべての親の子育て支援施策ということであれば、子育てに関心が薄い親は多分パチンコに行くわけで、そういった親の支援、だから、そういう子どもも無条件で預かりますというようなスタイルがこれからは求められていくんだろうと思うんですね。まず、それをこっち側がやっていくということで徐々に親にも変わってもらう、そういうアプローチが必要になってきているんじゃないかなと思いました。
 もう1点が、先ほど資料のほうで、1ついい事例として江戸川区のすくすくスクールがあったかと思うんですけれども、そういう事例は伺うんですが、気になるのは、これは誰がそうやってうまく力を出したかという──絶対いるんですね、キーマンが。そこなんですね、知りたいのは。その人たちの力量は何だったんだみたいな、そういうことの調査が必要で、偶然うまくいったということは絶対あり得なくて、そういう人たちのよさは何だったのかということを知って、その人たちを増やすためにはどうしたらいいかというようなプログラムをつくって、各地で人材養成をするというようなことが必要かなと思いました。
 おそらく上から何か教える人ではなくて、コーディネートができたりとか、ファシリテートができたり、ワークショップが上手にできるとか、そういう能力なんだろうと思うんですね。そのあたりをどうやってみんなが磨くかというところが大事なんじゃないかなと思っております。以上です。

○ 大日向委員長
 とても大事な点を出していただいたと思います。家庭教育支援とか子育て支援とか、そもそも支援って何なのかとか、そのあたり無駄のない支援を、どうか杉山委員さんは現場のお立場からどんどんこれから出していただければと思います。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。はい、坂元委員さん、お願いします。

○ 坂元委員
 少し話題が違うんですけれども、文部科学大臣の諮問理由説明、資料3-2にございましたけれども、情報化の影に対する取り組みについて、家庭や地域の教育力の向上の必要性が指摘されて、その方策の提示が諮問されているわけでございます。
 私自身がメディアやIT問題の研究にかかわっておりまして、この問題にかかわりますので、ちょっと発言させていただきたいと思うんですけれども、情報化の影の問題につきましては、多様な問題が指摘されておりまして、その中には非常に深刻なものもあることは報道等で様々言われているわけでございます。
 この対応につきましては、家庭や地域における教育が非常に重要であることがしばしば指摘されておりまして、といいますのも、1つの大きな理由としては、学校での取り組み、これには限界があると考えられるからでございます。
 現在既に、情報モラル教育とかメディアリテラシー教育などの名称で、学校におきまして、情報化の影に対処するための教育というのは進められているところでございます。特に、長崎の佐世保の事件、その後、特に情報モラル教育の強化の方針を文部科学省は出しておられることかと存じております。
 しかしながら、学校における教育には、これももちろん重要なのでございますけれども、限界があるということも言われておりまして、例えば2つの問題がございます。
 第1の問題は、情報環境がそれぞれの家庭で異なっておりますので、一斉に同じことを教えるということが、生徒の理解にとっても、また、現実の家庭での日常生活における効果ということにつきましても、あまり有効ではないという指摘があります。先生方は大変教えにくいという印象を持たれるようでございます。
 それから第2の問題としては、学校の場では、それこそ生徒に何らかの悪影響とかストレスを引き起こすようなどぎつい情報を提示したり、険しい場面に追い込むようなことはできないわけでございます。本当はそういう深刻なものに対処しなければいけないわけですけれども、皮肉なことに、そうした深刻なものであればあるほど、学校では扱えないということがあるわけでございます。それが、家庭とか地域ということですと、子どもが実際に日常生活の中で、問題のある情報に接触している現場や痕跡などを周囲の大人が見つけて、そこでそうした情報を遮断したり、そうした問題性について理解させるというような適切な指導なり介入というのが可能であるわけでございます。これは非常に重要なことです。また、家庭とか地域では、当然ながら各家庭等の情報環境に沿った指導に当然なるわけで、そうした有益性もあるわけでございます。
 そのため、今後、もちろん学校における取り組みも進んでいくと考えられますし、それは非常に重要なことであるんですけれども、だからといって、学校に任せて、家庭や地域による教育がさほど重要でないというような考え方も、これはあり得ないことだと思います。
 今後、この特別委員会では、こうした大臣からの諮問があるということで、情報化の影の問題に対応して、家庭や地域の教育力向上をどう図るかという方策について検討が及ぶものかと思うわけでございますけれども、そこにおきましては、家庭や地域の取り組みが決して学校などの教育に頼ることのできない、後には引けない、妥協のできない取り組みである、そういう自覚で検討すべき問題であると考えております。以上でございます。

○ 大日向委員長
 今ご提起いただいた問題は、たまたま情報という観点から切り込んでくださいましたが、学校と地域と家庭の連携をどう進めていくかというときに、どこが何ができて、できないのかという限界の問題を語り合うという面では、この特別委員会が広くすべてのテーマでご議論いただく大事な点だと思います。ありがとうございました。
 お待たせしました。土江委員さんです。

○土江委員
 家庭の教育あるいは地域の教育力を考えたとき、今私が課題として持っておりますのは、先ほどいろいろデータもありましたけれども、食生活それから食育というところを大きな課題としてとらえている。今言われていますように、子どもたちのいわゆる生活リズムが狂っているという現状に注目して、本当に食生活の改善あるいは食育、こうした推進について、家庭、学校、地域が一体どう融合して、そのための学習を学校あるいは地域社会の中でどう展開していくのかという、そのリンクのあり方というふうなことについて、非常にテーマ性を持って、今考えているところです。
 先ほどの調査の結果にもありましたように、例えば朝食を食べている子どもたちというのは、小中学生でも親が意識として食べさせているというような高い率があるわけですけれども、では、今の乳幼児の実態はどうなのか。保育所からそれこそ高校まで、一体的な1つの実態の中で、こうしたものを取り上げていく必要があるのかなと。同時に、一貫したカリキュラムのあり方というふうなことについても今関心を持っているところです。
 例えば私どもは島根県の雲南市という中山間地域の4万7,000弱の小さな市ですけれども、1歳半児それから3歳児の健診で、ついこの間、322人を対象としたアンケートをしたんです。その中で、10時以降に寝た3歳児が118人、36.8パーセントある。それから、朝8時以降起床する子が26人の8.07パーセントというふうなデータが出ているわけです。
 そうしたら、朝食の問題等もありますし、また、実際に親が朝食を食べさせているという中でも、例えばその内容がチョコレートであったり、あるいは菓子パンとかケーキであったりとか、そうした実態をしっかりと把握しなければならない。そして、どう一貫性の中で考えていくのかなということ。
 それからもう一つは、今文科省の新しい施策として、栄養教諭が今年度からスタートした。これはいわゆる食のコーディネーターという形で大いに歓迎すべきなんですけれども、学校教育の中では、私の考えではかなりスムーズにいくんじゃないかと思うんですけれども、実際に家庭へ踏み込んでいくときに、いろいろなハードルもあるでしょうし、また地域との連携の中でどう推進していくのか、そうしたところで創設の制度を生かすための地域のサポート体制といいますか、地域の教育力というものが問われるんじゃないかなと思っています。
 最後になりますけれども、文科省として、さまざまな事業、中高校生を対象とする事業あるいは家庭教育支援総合推進の事業等、子育てについての社会教育の場での事業があるわけですが、では、学校の先生方がそういう事業をどれだけ理解されて、どれだけ連携しようかなという意識があるのかなと。学社連携、融合という課題の中で、大きなテーマの中で、まだまだ見えない部分がある。ただ単に教師の研修だけではなくて、社会教育に関する研修が必要である。家庭、学校、地域が一体となった、一貫した食に関する例えばプログラム開発あるいは地域の学習の必要性について、また議論してみたいなと思っています。以上です。

○ 大日向委員長
 ありがとうございました。
 はい、山極委員さん、お願いします。

○ 山極委員
 家庭・地域の教育力の向上として、1つは経団連等経済界との連携があげられると思います。と申しますのは、今年の7月経団連に「少子化対策委員会・企画部会」が新設され、その中のキーワードとして「子育て」があるからです。また、各種データを見ますと、家庭・地域に父親の参画がないという実態が指摘されており、これについては企業も大きな責任があると考えます。従って2つ目は、父親の参加促進があげられると思います。昨年10月に社内に「働き方見直しプロジェクト」を立ち上げまして、今年6月に働き方に対する実態調査をしたところ、30代の父親は子育てに参加したいという声が8割もありながら、長時間労働のために参加できないでいます。会社では、時間当たりの生産性を高め、残業を少なくして個人生活の時間をつくり出しましょう、ワークライフバランスを実現しましょうと、風土や制度、意識を変えるよう動いています。
 例えば制度を変えたことの1つの例としては、これまで社内に3年間取得できる育児休業制度は、男性が1名利用していただけだったのですが、今年4月に2週間有給の育児休業制度を設置したところ、4月から4名も利用者が出てきました。このように、制度を変えることで男性も普通に育児参加できるようになってきますし、休んでいる間に生活者の視点も養われ、地域への関心も出てくると思います。
 働く母親たちは、地域にも参加したいし、ボランティアもやりたい。けれども仕事と子育てだけで目いっぱいという声が多く寄せられています。そこで、性別役割分担をなくして、男性も女性も共に協力し合って働き、共に子育てし、共に地域社会に参加できるような環境整備を考えております。以上でございます。

○ 大日向委員長
 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。はい、中橋委員さん、お願いします。

○ 中橋委員
 香川県で主に乳幼児の子育ての支援をしている中橋といいます。
 主に乳幼児と私は日々かかわっているんですけれども、今回、地域の中の小学校、中学校、高校に突然押しかけて、突然参観というのをさせてもらって、乳幼児だけじゃなくて、今の子どもたちの状況を見せていただいたんですけれども、すごく感じたのは、幼い乳幼児の時期の育ちの影響が、小学校、中学校、高校という、家庭の中での育ちが学校の中で少しずつ大きく出てきて、問題になっているなということを感じたんです。
 乳幼児と小学校のかかわりとか、乳幼児と中学校のかかわり、幼稚園とか保育園と中学校が交流しますというような事業は少しずつあるんですけれども、もっと大事なのは、乳幼児を育てている親と高校生との触れ合いとか、乳幼児を育てている親と中学生との触れ合い──触れ合いというか、接点というのをもっと持たないといけない。乳幼児を育てている親は、目の前の子育てに一生懸命で、この子が将来どういうふうに育っていけばいいのかなというような具体的な目標とか具体的な夢というのをあまり持たれていない。初めて接する乳幼児が自分の子どもというケースが多いので、どういう子に育ってほしいから、今こういうふうにこの子にかかわっていくんだというような具体的な目標がないまま、追われて子育てをしていると非常に感じます。
 私が中学校を見に行ったときに、本当は素直になりたいのになれない、鉛筆がきちんと持てない、お箸が持てない、椅子にきちんと座ることができない、すねたふりをしているんだけれども、ほんとうはぶつかっていけば、素直に答えたいと思っているのに答えられないという中学生の子どもを見て、本当に涙がとまらなかったんですけれども、もっと乳幼児期に、家庭の中で親がするべきこと、あるいは地域でかかわっておかないといけないことにかかわれていれば、こんなに子どもたちは苦しまなくてよかったのかなというふうなことを、すごく感じました。
 香川県の中で、善通寺東中学校という非常に珍しい取り組みをしている学校がありまして、私は親に目標を持たせたいなと思っていたんですけれども、そこの校長先生は、今の子どもたちは目標がない、我慢して目標に取り組むことで達成感を味わった経験もないということで、プリント学習をさせるんですね。子どものレベルに合ったプリント学習をものすごくさせて、添削するのを地域の人に頼んで、地域の人がものすごく学校にフリーに出入りをしている様子を見ました。
 そのときに、保護者が、うちの子どもが点数がいいとか悪いとかというのが地域の人にわかってしまうじゃないか、何てことをするんだという苦情が保護者の中からすごくたくさん上がったというんですね。そのとき、校長先生が、文句を言ってきた保護者の方を学校に呼んで、あなたも添削のボランティアをしてみてください。いっぱいのプリントをものすごい時間で見ないといけないのに、だれができておるや、できておらんやいうこと、そんなこと一々覚えている人がどこにいますか。やってないから、あなた、そんなこと言うんでしょうと。ちょっと型破りな校長先生だったので、すごく成果があったんですけれども、それはたまたまキーマンのそういう恐れない校長先生がいたから、できたんだなと思うんですけれども、そういうことを学校で全部が取り組むということは難しいと思うんです。
 私が何を言いたいかというと、もっと地域のNPOを、ある意味今までの型にはまった取り組みだけではなくて、新しいことができるNPOを、もっと教育とか地域の現場に入れていただきたいな。私は、地域、香川県のいろんな委員をしていてもすごく感じるのは、地域組織というと、婦人会、老人会、PTAとかという既存組織だけで、地域の中でほんとうにいい活動をしているNPOの人を地域の人が知らないということが間々ありますので、もっと地域の中にいるNPOを活用していただきたいですし、そのためには、どのNPOがいいのかというようなことを行政のほうでも把握をして──いいというか、このNPOはこういうことをしているというようなNPOの現場のことも行政の人がもっと知っておいていただきたいなと感じます。
 さっき杉山さんのほうから、パチンコに行く親から預かるという話がありましたけれども、パチンコ屋さんの中にある託児所を経営されている方に話を聞くと、その園長先生はもともと公立の保育園の主任さんをされていて、体調を崩してやめられて、パチンコ屋の中の託児所を経営されているんですね。
  180度考え方が変わりましたというお話をされていて、なぜかというと、今まで、園児の募集でも、公立園だったら、広報で募集したら来る。でも、広報でパチンコ屋の中の託児所を募集しても、だれも来なかった。新聞に折り込みのチラシを入れたけれども、だれも来なかった。地域でよくお店で置いているフリーペーパーの中に広告を入れてみると、ものすごくたくさんの人が来た。来た人に、広報にも入れたし、新聞の折り込みにも入れたのに、どうして来なかったんですかと聞くと、広報なんか見たことがない。親しみが全然ない。新聞はとってないから、折り込みのチラシを見たことがないと。今までこれが子育てのやっていく道と思っていたものが、180度違っていたという話をされていて、多分文部科学省や厚生労働省さんがいろんなチラシやリーフレットを出して、皆さんに行き渡っている、ホームページでも公開したとか言っても、そこに全然親しみを感じていなくて、もし手に渡っていたとしても、ページをあけてもいないという人たちがたくさんいらっしゃるんじゃないかな。親しみがないという印刷物とかホームページに親しみを持たせられるのも、私は逆に地域のNPOが介入していくことでできていくのかなと感じていますので、ぜひそういう地域のNPOの活用というのを考えていただきたいな。
 企業との取り組みも、うちのほうが今、子育て応援タクシーというのをNPOで企画して、企業さんに持っていって、実際に走っているんですけれども、すごく親御さんたちから喜ばれているんですね。よかったなということは、タクシー会社の人たちが今まで考えていなかった子育てというところに振り向いてくれたということですね。
 おとといも、地元の工務店さんと子育て応援マンションというのを建てているプロジェクトの会があったんです。それもやっぱりいろんな分野の方がかかわって、住環境の中で、子どもと一緒に食事をしたくなる食卓ってどんなのだろう、子どもと一緒に長く過ごしたくなるリビングってどんなのだろうということを具体的に考えていくことができたんですけれども、なかなかこの話を行政の人にしても、いいなと言っても、すぐにアクションにはつながらないんですけれども、企業さんを巻き込んでいくことで、現実になっていくということがたくさんあるな。その呼びかけをして、橋渡しをするのもNPOの仕事かなと私はすごく感じているので、もっともっと上手にNPOと連携していっていただければうれしいなと思っております。以上です。

○ 大日向委員長
 ありがとうございました。中橋さんはNPOの立場から、地域とか企業とか学校をラディカルに揺さぶる方法をいろいろご提言いただきましたし、今後もいただけるのではないかと期待しております。地域には、キーマンとなるパワーのある校長先生も香川にいらっしゃるということですが、東京にもおられます。いかがでしょうか、藤原委員さん、何か今のと関連してでも結構ですが。

○ 藤原委員
 最初の1時間におそらく地域という言葉が100回以上出たんじゃないかと思うんですけれども、私の主たる関心は、地域とは何か、だれのことを言うのか、先ほどの杉山委員の発問と同じなんです。多分ほとんどの方が気づいていらっしゃると思いますけれども、都市部のほとんどの地域で、地域社会というのはもうほとんど風前のともしびで、おそらく地域と人が言った場合、それは普通、町会長を中心とした町会、商店会長を中心とした商店会、それから民生委員とか主任児童委員、青少年委員、そういう少年問題にかかわっていらっしゃる方々のことをわりと指すのかなと思うんですけれども、とにかく今、町会長とか商店会長はほとんど70代の方で、若い人たちがもうみこしも担がなくなったというんですね。だから、中学生を出してよね。中学生を出してくれないと、1年に1度のもちつき大会もできないというんですね。そんなような、学校が地域からエネルギーをいただくのではなくて、むしろ地域のほうにエネルギーを奪われるというぐらい、そういう状況なんです。
 日本の教育が戦後一貫して、地域社会というのを省みずに、情報処理能力の高いサラリーマンを増産した。これは欧米にキャッチアップするには大正解だったと思うんですけれども、その裏腹に殺されたものがあるというようなことだと思うんですね。何が殺されたかというと、地域の教育、住宅それから介護のような、地域社会の問題に積極的にかかわって、みずから責任をとろうとする市民というのを殺していったんだと思うんです。
 そこを再生しようというようなことだと思いますけれども、では、従来型の町内会や商店会を再生するのかということですね。お金を突っ込んだり、文科省が施策を出すと、こういう人たちが再び奮い立って、学校のためあるいは家庭のために頑張ってくれるのかというのが、ちょっと私には疑問なんですね。
 それで、私がやっていますのは、学校の中に地域本部というのをつくって、学校の中の地域本部という組織で、土曜日学校の運営あるいは図書室の平日の開館、貸し出しの一切、コンピューターを子どもたちに貸し出して、それを運用する一切、それから、学校って大体5,000坪ぐらい敷地があるんですけれども、その緑の維持、これらを全部、先生の手を介さずに、すべて地域本部の大人たちがやる。そういう地域を中につくって、部屋も持っているというような形。これがNPOであっても全然構わないと思います。やがてもしかしたらNPO組織になるかもしれませんけれども、和田中では地域本部としてやっているんです。
 このときに、構成員が今までの地域というイメージとちょっと違いまして、PTAでもない。1つはPTAのOG、OBです。この事務局長はもとのPTAの会長にやってもらっています。その前には、IBMのSEだった人だったので、仕事が非常にできる人なんですね。それから、付近に大学生が住んでいるわけですが、その付近に住んでいる大学生で教師になりたい、そういう教育にすごく関心のある大学生、教職をとっていなくても、教育にすごく関心があって、何かかかわりたいという大学生はたくさんいますので、そういう人たち。それからあと、普通はPTA活動、来てよ、来てよと言っても絶対来ない父親が、例えば芝刈りをやってほしい、芝刈機、エンジンをかけてやるというのをできるとなれば、来るんですね。あるいはコンピューターの技術を持った父親は、コンピューターの技術を生かす、そういう特定の目的のためには来るんです。こういう人たちが今組織化されて、和田中では、100人以上のボランティアをこの地域本部というところでマネジメントしている。
 だから、従来型の地域を復活せよ、地域の教育力をただ復活せよというのは、ちょっと僕は的が外れているんじゃないかなという気がしております。以上です。

○ 大日向委員長
 ありがとうございます。
 あとお一人ぐらい。はい、よろしくお願いします。赤坂委員さんです。

○ 赤坂委員
 私は今、幼稚園と保育園の一体型の園の園長をしておりますけれども、その立場から。
 ゼロ歳児からの生涯学習ということが書かれておりましたけれども、私の前任園では、地域の子育てサロンを幼稚園の空き保育室を利用して開設しております。具体的には、月曜日から金曜日まで、朝10時から夕方4時までの開設です。別の部屋では4、5歳児の保育が行われています。現任園の幼保園でも週4日午前中だけですが敷地内にある保育室に、地域のゼロ歳児から3歳児の親子が、通ってくる。
 どういうことがよいのかなと思いますと、これから成長していく子どもの姿が見えるところで、子どもを育てることに悩むお母さんたちが、こんなふうに育つんだなということを学んだり、あるいは在園の子どもが小さい子と触れ合えない現状の中で、泣いていたり、あやされていたり、かわいがられている姿を見て、ともに育ち合う。ゼロ歳児はゼロ歳児なりに、4、5歳児は4、5歳児なりに、そこが幼稚園の交流の場になっているというところは大きな意味があるかなと思います。
 それを運営しているのが、先ほどの和田先生の学校のようにまだ組織化はされていないのですけれども、PTAのOGであったり、近隣の高齢者であったりということで、幼稚園が地域のいわゆるコーディネーターの役割をする。児童館の先生に来てもらって、土曜日に親子でうどんをつくる。そうすると、3軒とか4軒の親が1つのうどんづくりにかかわりながら交流を持ち、そして、子どもの見方、あるいは子どもってかわいいんだな、あるいは何か困ったときにすぐ相談ができるんだなというようなことが生まれております。
 定期的に教育相談日を設けたり、保健所と連携して保健相談をしたりしているのですけれども、大きなイベントのような講演ではなくて、毎月第何曜日には教育相談の先生が来ますよと言いますと、短い時間を全体で聞き、あとは一人の先生に一人ずつ、こんなことで困っているんですというようなことで、気軽に相談できる。ごく日常的な親と子の学びになっているなと感じております。幼稚園は子どもが育つ大変よい環境なので、こういう取り組みが、是非これから広まっていくといいなと今考えております。以上でございます。

○ 大日向委員長
 ありがとうございます。
 お時間もなくなってまいりましたので、恐れ入ります。30分には閉めなくてはならないので、ちょっとご協力いただければ。どうぞ、一言。

○藤野委員 済みません。家庭教育ということで、PTAもずばりそのものなので、一言だけちょっと発言させていただきます。
 先ほどの調査の中で、声かけというのが結構あるというふうにデータに残っておるんですけれども、近所のおじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃんが子どもたちを怒ることが少ないというデータ資料が出ています。子どもがあまり外へ出ないというのが一番の原因かな。登下校の際には、「いってらっしゃい」「お帰り」という言葉は結構私の周辺にもかけられる方がおられるんですけれども、子どもが悪いことをしても怒らないというのは、子どもが外に出る機会がほんとうに少ないのではなかろうかなと思っております。
 それはもちろん家庭教育の保護者の責任でもあるんですけれども、ただ、この資料の中に、「現在、子ども自身も地域社会の人々との触れ合いを経験する機会が減少し、テレビ、ゲーム、パソコン、携帯電話等のバーチャルな世界の影響を強く受けながら成長しております」、こう書いておりまして、「影の側面にも一層着目した取組が必要と考えられます」ということなんですけれども、これをぜひいろんな角度から取り組みをしていただきたいなと。そしてまた、こういった取り組みの中で、PTAとしていろんな話し合いを持たせていただきたい、このように思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。以上でございます。

○ 大日向委員長
 ありがとうございます。せかしちゃって、ほんとうにごめんなさい。
 何かございますか。はい、どうぞ。

○ 大宮委員長代理
 それでは、簡単に一言ということで、皆さんのご意見を聞きながら、4つほど感じたんですが、1つは、今私大学生と毎日会っていて、人間力というか、コミュニケーション能力というか、総合的な人間力不足ということを常に感じています。それは家庭の教育力とか地域の教育力がほんとうにかなり弱くなっているということが背景にあって、異年齢、異世代体験、いろんな大人との体験がほとんどないまま大学生になっているということに原因があるのではないかと、日々考えています。
 きょう意見をお聞きしまして、家庭のいろんな価値観、いろいろな家族の特性に応じたきめ細かな施策を打っていかないと、例えばITも非常に重要だし、子育て手帳も非常に内容がいいんですが、読まない人にどうするかとか、それをどんなふうにして活用するかというような、片親家庭なんかも全部含めた家族特性に応じた対応をしっかりやっていかなくちゃならないなということを、もう一つ感じました。
  3つ目は、逆に言えば、地域特性に応じた──結構既存の団体がしっかり残って、活躍できる基盤が残っている地域もあるし、それがほとんどだめになっている地域もある。NPOが元気なところがあるし、NPOがあまり元気でないところもある。そういう意味では、地域特性に応じた、しっかりとした施策を多様に打っていかなくちゃならないなというのを感じました。
 最後に、地域づくりは人づくりでありまして、やっぱり地域リーダーをどうやって創出するのかというのが重要な課題なのかなということを、皆さんのお話を聞いて、再確認いたしました。以上です。

○ 大日向委員長
 ありがとうございました。
 ちょうど時間も終わりになりまして、今回は皆様にゆっくりご発言いただく時間がほんとうに少なくて、恐縮でございました。初回ということで、資料説明も大変大事だと思いまして、そちらのほうに時間をかけさせていただきましたが、第2回目以降は、皆様に存分に意見交換をしていただくような時間を大切にしたいと思います。この会の進め方等につきましても、どうぞいろんなご意見を事務局のほうに次回までにお寄せいただければ、参考にさせていただきたいと思います。今日ご発言いただけなかった委員の方には、ほんとうに申しわけありませんが、次回にどうぞご発言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局のほうにお返しいたしますので、今後の日程について、ご説明をお願いいたします。

(9)事務局より、今後の日程について説明が行われ、閉会となった。

── 了 ──

お問合せ先

生涯学習政策局生涯学習推進課

(生涯学習政策局生涯学習推進課)