国民の学習活動の促進に関する特別委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成18年5月23日(火曜日) 10時~12時

2.場所

三菱ビル コンファレンススクエア Mプラス「グランド」(10階)

3.議題

  1. 教育基本法について(報告)
  2. 国民の学習活動の促進に関する方策について
  3. その他

4.出席者

委員

 山本委員長、茂木分科会長、糸賀委員、工藤委員、小杉委員、小菅委員、坂元委員、柵委員、笹井委員、田中委員、中込委員、中村委員、水嶋委員、湯川委員、渡邉委員

文部科学省

 久保生涯学習総括官、佐久間調査企画課長、高橋生涯学習推進課長、三浦社会教育課長、小川参事官、佐藤生涯学習企画官、山本家庭教育支援室長、行松社会奉仕活動推進企画官、坂中参事官付企画官、圓入専門調査官、その他関係官

5.議事録

(1)冒頭、山本委員長より挨拶がおこなわれた。

【山本委員長】
 定刻になりましたので、ただいまから中央教育審議会生涯学習分科会「国民の学習活動の促進に関する特別委員会(第8回)」を始めさせていただきたいと思います。お忙しいところご出席くださいまして、ありがとうございました。
 まず本日の予定でございますけれども、初めに、ご承知のように国会で審議が始まっております教育基本法について事務局のほうからご報告いただきたいと思います。
 それから、糸賀委員から「生涯学習施設としてのこれからの図書館」ということで20分ほどご発表いただきまして、10分ほど質疑応答の時間をとりたいと思います。
 その後、事務局のほうから報告が3件ほどございます。1つは、事務局のほうで、生涯学習振興法の施行状況についてとか、生涯学習センターの運営状況について各都道府県等にアンケートを実施してくださっております。その概要が出てきておるようでございますので、ご報告をいただきたいと思います。
 2つ目には「生涯学習情報提供の在り方に関する調査研究」の報告書がまとまったということでございますので、その概要についてもご報告いただきたいと思っております。
 3件目でございますけれども、これまで特別委員会で審議していただきました主な論点について改めてご報告いただきます。
 その後、1時間ぐらいとれるかとは思いますが、自由にご議論いただきたいというふうに思っております。よろしくお願い申し上げます。

(2)今回が初めての出席となる中村委員について、事務局より紹介が行われた。

(3)事務局より、教育基本法案について、説明が行われた。

【山本委員長】
 ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。最後の振興基本計画の話もございましたので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

(4)次に、糸賀委員より、「生涯学習施設としてのこれからの図書館」について、プレゼンテーションが行われた。

【糸賀委員】
 それでは、私のほうからこれまでの当委員会の議論を踏まえまして、これからの生涯学習振興について私見を述べさせていただきたいと思います。
 資料2をご覧下さい。生涯学習振興を図書館から考えるということで、若干の資料と、今日は会場も初めて使わせていただくような会場で、映像を上映することもできるということでしたので、途中、DVDの上映も交えまして、意見発表させていただきたいと思います。
 それでは、早速ですが、資料2を1枚あけていただきたいと思います。
 なぜ図書館なのかということを挙げました。これは実は当委員会の第6回、今年の1月31日に開催された会議での配付資料でございます。これと全く同じものをきょう改めて事務局のほうに用意していただけました。それはこの資料2のほうに別紙という形でついております。
 第1図が図書館の認知状況です。これは、全国から1,700人余りの方に調査をした際、どのくらい生涯学習施設について知っているかということを尋ねたものであります。これを見ていただきますとわかるとおり、図書館の認知度が9割を超えている。もちろん、それに続きまして、公民館や博物館、文化施設、生涯学習推進センター等が続いておりますが、かなり高い認知状況にある。
 続きまして、もう一枚めくっていただきますと、今度はこういった生涯学習施設の利用状況が示されております。これが次の第2図ということになります。これを見ていただきますと、図書館の利用状況が43.2パーセントで、ほかの施設に比べて極めて高いということがわかります。残念ながら、公民館や博物館は2割程度しか利用されていない。これはおそらく過去1年間の利用状況を尋ねたものと思われますが、図書館の利用状況が非常に高い。一番右側に「いずれも利用しなかった」という欄がありますけれども、この利用しなかった人の割合が35.5パーセントですが、それを上回っているのは図書館だけということになります。
 さらに次の、これも同じ調査の抜粋になりますが、3枚目にあります第3図、第4図をごらんいただきたいと思います。第3図は、学習活動に取り組んでいる主な場所を尋ねたものであります。このグラフで見ていただきますとわかるとおり、一番多いのは自宅。これはある意味では当然かと思います。その次に多いのが公共の図書館ということになります。そのほか、職場での研修とか、育成指導も挙がっておりますが、公的な生涯学習施設としては2番目に図書館が挙げられているという状況にあります。
 次に、その右側の第4図ですが、学習活動を実際に行っている人が役立っていると思う場所を聞いております。これを見ますと、専修学校、各種学校が極めて高い。続きまして、民間の通信教育、カルチャーセンター等が挙がっておりますが、公的な生涯学習施設としては公共の図書館が6割以上、7割近い方が役立っているというふうに感じている現状がつかみとれます。こういうふうな事情もございまして、図書館が国民の間にかなり知られているし、実際よく利用されている。また、役立っているという評価も公的な施設の中では高い位置づけにあります。
 そこで、先ほどの資料2に戻っていただきますが、図書館を中心にというわけではございませんけれども、図書館から生涯学習振興を考える場合に、幸い、この3月に新しい報告書が協力者会議のもとでまとまりました。皆様のお手元に、こういった「これからの図書館像」という冊子が本日配付されているかと思います。これは今、資料2に戻りまして、3枚目にありますように、生涯学習政策局で1年半かけまして議論を進めてまいりました。その報告書がこの3月にまとまったということになります。これは平成13年に文部科学大臣によりまして、「図書館の望ましい基準」というのが告示されております。この図書館の望ましい基準の施行後の新たな視点や方策を提言するということでまとめられたものであります。
 これを見ていただきますと、3ページに第1章といたしまして、「地方公共団体への呼びかけ」というものも含まれておりまして、ここでは、ですます調でわかりやすく書かれております。
 さらに11ページ以降に「これからの図書館サービスに求められる新たな視点」ということで、9項目が掲げられております。こういった報告書がちょうどまとまったこともありまして、きょう皆様にご説明させていただこうという趣旨でございます。
 資料2の4ページをご覧ください。ここに今申し上げた、これからの図書館の新たな視点の9項目だけを抜き出して示してあります。この中で、きょうは時間もありませんので、特に私のほうから報告書の本体で言いますと13ページ、新たな視点の(3)、「課題解決支援機能の充実」ということについて、図書館の現状をDVDあるいはスライドを交えてご説明したいと思います。
 具体的な課題解決支援といたしまして、5枚目にありますように、ビジネス支援を初めとした各種の支援サービスというものが考えられます。お手元の5枚目の資料にもビジネス支援だけではなくて、行政支援とか、あるいは子育て支援、最近、多くの公共図書館で取り組まれているのは医療・健康に関する情報を提供して、いわば患者さんと患者さんの家族を情報面から支援していこうという試みも始められております。東京都立中央図書館ではこういったコーナーを設けまして、疾病別、つまり病気別に資料をそろえるというふうなこともやっております。きょうはそうした中で、ビジネス支援について少し詳しくご説明させていただきたいと思います。それでは、テレビ番組でビジネス支援を取り上げたものがございますので、それをご覧いただきたいと思います。

(DVD上映)

【糸賀委員】
 資料2で6枚目に、「図書館におけるビジネス支援」とあります。番組の中で登場した男性の方は、実はもともとおすし屋さんをやっていたのですね。それが、年齢がある程度いきましたので、家族の手を借りて、アイスクリームショップを開業するというときに図書館がいろいろと支援したという話であります。
 図書館におけるビジネス支援が、今の相模原の図書館以外でも進められた背景には、経済財政諮問会議、例の「骨太の方針2003」がまとまったときに、ここに掲げましたように「『起業』による就業機会の拡大を図るため、ベンチャー企業向けの実践型就業実習の実施や創業・技術経営の知識習得のための実効的カリキュラム・講座・ビジネス支援図書館の整備等により、総合的な事業化・市場化支援を推進する。」というふうに謳われたこともございまして、日本各地の図書館でビジネス支援に取り組み始めた。その一例を、たまたまある番組で特集として放映したということになります。

(DVD上映)

【糸賀委員】
 資料のほうに戻らせていただきたいと思います。
 こういうビジネス支援図書館は、今の相模原だけではなくて、神奈川の県立川崎図書館があります。ここはいち早く科学と産業の情報ライブラリーで、ビジネス支援ということを1つの売り文句にしております。あるいは科学技術支援とか、社史調査研究支援ということを謳っております。実際、川崎図書館の入口のすぐ右側にビジネス支援室がございます。また、例えば発明相談、特許情報活用相談というふうなことで、実際に創業に向けた相談業務を、発明創業経営技術相談のコーナーを設けて行っています。
 東京の品川区立大崎図書館でも、ビジネス支援図書館ということを1つのセールスポイントにして活動しております。2階がビジネス支援図書館のコーナーになっております。大崎ということで、工場がたくさんございますので、特にものづくりに関する資料を中心にここでは用意しているということでございます。各種のデータベースも使えるというように、従来の図書館とは少し形が変わってきております。よろず相談、環境に関する相談会、こういったものは、すべて大崎図書館のビジネス支援室で行われるわけでございます。先ほどの相模原と同じように、地元のNPOと連携いたしまして、図書館の資料の多面的な活用を図っているということになります。
 東京の立川市でも、「応援します、あなたの起業、生業」ということで、やはりビジネス支援コーナーを設けてございます。
 福井県鯖江の市立図書館の例でございますが、イタリアからの欧州の産業のデザイン、ファッション、企業の最新情報をこちらで用意しております。鯖江というのは、眼鏡のフレーム、あるいは繊維、漆器といったものを地場産業に持っておりまして、この関係の情報を図書館が提供しています。特に、役所のものづくり支援課との連携でこういうことをやっているという話でございます。これも図書館の入り口の入ってすぐのところにコーナーが用意されております。
 鳥取県の米子市立図書館でも仕事に役立つビジネス支援コーナーがございます。あなたの仕事を図書館は応援しますということで、ビジネス支援に力を入れております。
 岐阜市立図書館では、JR岐阜駅の地下にファッションライブラリーを設けておりまして、地元の岐阜女子大学生による自作デザインの洋服をこうやって展示しておりまして、毎週入れかえているそうです。ヨーロッパからの雑誌を用意したりして、これも地場産業、アパレルメーカーに対する支援ということで、岐阜市立図書館が試みている例でございます。
 同じようなことを今度は、福岡県の春日市立図書館ですけれども、暮らしの情報コーナーといたしまして、暮らし全般、ビジネス、健康、子育てといったことで、本だけではなくて、行政資料とか、雑誌もここに集めて利用できるようになっております。さらに新聞の切り抜きなんかもこういう図書館の一角に用意しているということでございます。
 今、こういういろいろなものを紹介いたしましたけれども、能登川の図書館は、ちょっとビジネス支援とは違った志向の図書館になっております。それについては、資料の別紙のほうを見ていただきたいと思います。別紙に新聞の切り抜きをご用意させていただきました。今、滋賀県の能登川の図書館を紹介いたしましたので、恐れ入りますが、新聞の2枚目のほうから見ていただいたほうがいいと思います。2枚目は、毎日新聞の昨年6月の朝刊の一番下にありますコラム欄、「余録」という欄です。この「余録」の出だしのところを見ていただきますと、一瞬どきっとするかもしれませんが、「自殺したくなったら、図書館へ行こう」。これは別に自殺を奨励しているわけではなくて、図書館に行って、自殺することを思いとどまるということなのですね。京都の出版社の方が、心が沈んでいる友達に会うと、そう言い続けていると。7年前、今紹介しました能登川の図書館を訪ねたのがきっかけだというわけです。これはビジネス支援とは全く違う、心の問題、癒しの空間を図書館が提供しているという、両面を持っているということのご紹介です。館内は天井が高く、そこには何枚ものタペストリーが雲のようにたなびき、ゆったりと風が流れております。畳みの部屋があり、お茶も飲める。書架の間にあるいすに座ると、ほかの人の視線が消え、居心地がいい。公共の空間だが、だれもが1人になれる居場所がある。死角が多く、あえて目が届かないところが多いように設計しているという館長さんのお話です。資料中に傍線を引きましたが、図書館はよりよく考え、生きるための場です。行き場のない人、けんかしても隠れる場所がない人たちを孤立させず、自殺させない。それも図書館の役割だというふうに、これは地域特性に応じ、立川や大崎ではビジネスに力を入れるし、こういった滋賀県の農村といいますか、穏やかな地域のところでは、こんな癒しの空間も図書館が提供しているということになります。
 もう1つの図書館の可能性を示すものとして、1枚目の新聞記事のほうにお戻りください。これも見出しだけを見ますと、一瞬何事かと思うかもしれませんが、「普通の主婦、暴力団と闘う」という見出しがでております。これはどういうことかといいますと、68歳の女性の方が、一人娘のまやさんを暴力団抗争による発砲事件の巻き添えで失ってしまうわけなのですね。この68歳の方が、娘のかたきを討つのにどうしたらいいかということで考え抜いた末に得た結論が、やっぱり法やということで、裁判を起こします。弁護士に相談に行ったけれども、相手が暴力団と知ると、みんな弁護士さんが及び腰になってしまうということで、それでは自分で勉強しようということで図書館に通い詰め、法律書を片っ端から読み始めたというふうにここに書かれております。線を引きましたけれども、ある日、帰ろうとする堀江さんの後を6人の若者が追いかけてきた。司法試験の勉強で図書館に通う学生たちだという。堀江さんがはしごをよじ登り、高い棚から分厚い法律書を引っ張り出すのが、危なっかしくて見ていられない。一体何をしているのかと尋ねるので、事情を話すと、翌日から法律の条文を解説してくれたということなのです。
 つまり、大学や会社といった大きな組織に属していない普通の女性が、法律を勉強して裁判を起こそうと思った場合に、どこで学習できるかというと図書館なわけなのですね。自分のペースで自分に合った本を探していき、いろいろと読んでいる。しかもここでおもしろいのは、6人の若者が同じ空間にいて、この若者の支援を受けることで一層裁判を有利に闘うことができた。この記事をずっと読んでいただくとわかるとおり、結局、この裁判でこの方が勝つわけなのですね。4,000万円の和解金を暴力団から得て、「まや基金」という亡くなられた一人娘のお嬢さんの名前をつけた基金を設けて、暴力団被害者の会を結成したという話が報道されております。
 つまり、こういった方々にとって最も身近にあって勉強しようと思ったときに使える施設が図書館だからこそ、初めに申し上げたような利用状況が非常に高いということにもつながっているのだろうと思われます。そういう意味で、図書館の持つ可能性というのは極めて大きいということがうかがえます。
 一番初めの資料2にお戻りいただきたいと思います。資料2では、こういった「図書館のもつ可能性」という資料が7枚目にあろうかと思います。読書のリテラシーから情報のリテラシーまで、図書館が持つ範囲というものは大変広い。また、国語力、読解力といった読書にかかわる部分とビジネス支援に見られるような知的な創造、新しいものを生み出していくという可能性も秘めております。先ほどの能登川の図書館にも見られるような癒しの空間あるいは生きがいをここで見出すという方もいらっしゃる一方で、アイスクリームショップをいかに繁盛させるかについて、図書館から新しい食材についての情報を得るという方もいらっしゃるということになります。
 ご存じのように、図書館は幼児から子供さん、高齢者の方々まで、これを受け入れる。しかも、いつでも図書館があいている時間であれば、だれでもがふらりと立ち寄ることができる。そういう特性を備えた施設ということになります。従いまして、生涯学習における図書館の位置づけを改めて見ますと、お手元の資料の8枚目ですけれども、「国語力」、「読解力」、「情報力」といったものと図書館は密接にかかわる。そういう意味で、あらゆる学習の基盤でありますし、幅広い年齢層と利用対象を持つということも他の施設にはない特徴として挙げられるだろうと思います。
 ほかにも、幅広い学習テーマと取材領域をカバーしております。文化や教養だけでなく、仕事とか、まちづくりといったことにもかかわる、役に立つような資料や情報を提供するということも、「これからの図書館像」の中にも詳しく触れられております。
 さらには、情報化とかネットワーク化、ハイブリッド化という、いわゆるIT、最近はICTという言い方をするかもしれませんが、情報コミュニケーション技術の活用についても早くから取り組んできたということになります。
 生涯学習振興における省庁間の連携の必要性ということを考えますと、既にこの会議でもしきりに指摘されてきたことですが、職業能力開発ということでは厚生労働省や経済産業省と、子育て支援に関しましては厚生労働省と、団塊の世代の支援ということにもつながってまいります。裁判員制度の普及では、随分、法務省からの働きかけもあるというふうに聞いております。こういったことで、図書館もそれぞれの職業能力開発や裁判員制度の普及に対しても関心を目下示しているところでございます。文部科学省との連携の中で、こういったことについても、図書館が地域住民の学習機会を提供していく上で機能し得るだろうと思います。とりわけ今日詳しく説明いたしました、図書館でのビジネス支援に関しましては、実は来年度、中小企業庁の経営支援課の紹介、仲介によりまして、社団法人中小企業診断協会が、公立図書館に中小企業診断士を派遣して相談業務に応じるということを提案してきております。実際、今年の7月ぐらいから3カ所の図書館で中小企業診断士が派遣されまして、相談業務に応じるということを予定しているようでございます。
 生涯学習を振興していく上での基本的な考え方といたしまして、既に平成16年3月の生涯学習分科会で、個人の需要と社会の要請のバランス、生きがい、教養など人間的価値の追求と職業的知識、技術の習得の調和、そして、知識、技術を継承しつつ、新たな創造を、ということが提案されております。こういった生涯学習振興を考えていく上での基本的な考え方と図書館が持っている特性というのが、極めてよく調和するということになります。そういう意味では、こういった観点から図書館をはじめとする生涯学習施設のあり方を今後考えていく必要があるのではないか。その際に、図書館はこういった考え方とよくなじむし、国民の間でもよく利用されているという実態がある、この辺を踏まえて、私どもとしても生涯学習振興の今後について考えていく必要があると思います。

(5)糸賀委員のプレゼンテーションについて、質疑応答が行われた。以下、その内容。

【小杉委員】
 聞きたいことは2つあります。1つは、私はビジネス支援図書館というのは実にいいことだなと思っているのですけれども、今どのくらい実質として広がっているのかというのが1点目です。
 2点目が、これから広がるとしたら何がネックになるのか、どこの部分が広がるためのポイントかということを教えてください。

【糸賀委員】
 ありがとうございます。ちょうどその点、私も説明が落ちました。どのくらいこういう図書館があるのか。それに関しましては、もう一冊、お手元に「ビジネス支援図書館の展開と課題」という、高度映像情報センターの冊子が配られていると思います。こちらを見ていただきますと、国内での普及の状況がよくわかります。表紙をめくっていただいて、1枚めくると、この冊子の目次が出てまいります。目次を見ていただきますと、第2章がスペシャルレポートで、アメリカとか先ほども紹介した神奈川の県立図書館の様子。中心は第3章の実践レポート。ここでは大阪府立中之島図書館、鳥取県立図書館以下、県立図書館や市立図書館で実際にどんなビジネス支援サービスをやっているかの、かなり具体的な詳しい紹介がございます。先ほどDVDでも紹介がありました相模原の市立図書館に関しましては、第4章のパートナーシップレポートの1のところで、NPO法人と連携してこのサービスを展開している様子が詳しく報告されております。
 数といたしましては、今度は同じ冊子の一番最後から1枚めくっていただいたところに「公共図書館の“ビジネス支援”関連ページURL」とございますが、ウェブサイト上でもこういったサービスをやっているところがございますので、この一覧のリストがございます。30から、現在40から50あたりのところでこういった試みがなされておりまして、年々増えております。
 2番目にお尋ねの、何がこの際のネックなのかというところですけれども、まだまだこういったことを生涯学習施設、社会教育施設でやるということの認識が、教育委員会関係者の中に十分にない。ビジネス支援といいますと、金もうけを図書館でやろうとしているのではないかというふうな誤解もありますので、これが地域の活性化につながり、ニート、フリーター対策にもつながっていくのだというところの道筋を、もう少し図書館関係者なり、私どもも明確にしていく必要があるだろうと思います。意識の問題ですね。
 それから、これをやっていく上で、従来の司書、図書館で働く専門職ですが、司書の仕事の仕方も従来と変わってまいります。データベースを使ったり、あるいはカウンセリング的な、コンサルティング的な仕事もしなければいけない。そういう意味で、図書館の司書の研修といったものもやっていかなければいけない。
 教育委員会関係者の意識と図書館で働く専門職のスキルのアップ、そして、もう少し今までとは違うセンスというものを身につけていかなければいけない。そういう意味で研修機会を増やしていくということも1つの課題だろうと思います。そのあたりがネックになっているかと思います。

【茂木分科会長】
 やはり、図書館はコミュニティセンターの1つでありますから、いろいろなコミュニティの中で、いろいろなお手伝いができるということは重要だと思います。ビジネス支援をしているというのは、私は全く知りませんでしたから、大変驚きました。ただ、図書館が、自己完結型でビジネス支援も、さきほど糸賀先生のご説明にあったような自殺する人を助けるというようなことも、すべて図書館がカバーするということになると、図書館にとって、かなりの負担になりかねないと思います。ですから、私は、図書館がそういう様々な役割を今後充実していくためには、いかに他の組織と連携するかということがポイントだろうと思います。そういう点で、最後のほうでお話があった、中小企業診断士協会との連携で中小企業診断士が図書館で相談業務等を行うことは、非常にいいことだろうと思います。せっかくこのような素晴らしい取組みが芽生えたことですから、他の機関との連携を深めて、うまく進めていただくといいのではないでしょうか。

【糸賀委員】
 はい。ありがとうございます。茂木分科会長のおっしゃるとおりだと思います。実際にこういうことをやるところでも、NPOと連携したり、当然、他の公民館とか学校と連携を図っていくことが必要になります。ビジネス支援の場合でいいますと、地元の商工会、商工会議所、商店街等と連携することで一層、図書館の役割が鮮明になるわけですし、逆に図書館では足りないところをそういう機関で補っていただくということにもなります。
 NPOが支えるからこそ、図書館の司書ならではのサービスができるわけですし、一方、図書館の司書が十分できないところに関しましては、むしろ地元のNPO、企業を退職した方々が立ち上げているわけですが、そういう方々が培ってきたノウハウを生かすということも当然行われております。そういう意味では、情報提供とか資料提供という面では図書館が中心になるけれども、実際には他の施設あるいは役所の他の部門との連携ということも当然必要です。先ほどの福井県鯖江市の例ですと、役所のものづくり課と連携しながら、図書館が情報提供しております。

【工藤委員】
 ビジネスだけではなくて、いろいろな人が図書館を利用されているという中で、社会的に居場所がない人、孤立する人が、実際図書館にとても多いのですね。日中、若い人は特に、暇で外を歩いていると社会的にも何をやっているのかなという目で見られますから、そのときの逃げ場として図書館がとても多いのです。
 もう一つは、所得が低い方々というのは、インターネットなどをあまり利用されないので、図書館を利用される方がとても多い。しかし、図書館に行ったところで、抱えている問題がすごく多種多様なので、司書の方が困るというのもやはりあったので、先ほど茂木分科会長が言われたように、専門家をたくさん置いていくというものの他に、ソーシャルワーク的な観点につなげていく専門家が入っていくと、もっといろいろな人が図書館の機能を十分に使いこなせるのではないのかなと思いました。

【糸賀委員】
 他の専門家との連携ということは当然考えていかなければいけないと思います。ただ、先ほど、例えばビジネス支援のときに商工会議所と言いましたが、図書館のよさは土曜、日曜、祝日でもあいているということ。開館時間であれば、特に行事がなくても1人で立ち寄っても困らないということ。つまり、居場所があるわけですね。ほかの施設ですと、何時からこういうイベントがあります、というときには参加できますが、そのイベントがないときには、行っても、ホールでいるだけだと。それに対して、図書館はいつ行っても受け入れる場所があるということですね。
 よく学校でも、保健室と図書室が教室に行けない生徒さんたちの逃げ場だというふうに言われることがあります。図書館とコンビニが、地域の中でそういう癒しの場だというふうなことも聞いております。そういう意味では、図書館の司書だけではなくて、ソーシャルワーカーとか、そういう専門的な技能を持った方との連携も今後考えていく必要が確かにあるだろうと思います。

【中込委員】
 私も図書館が大好きでよく行くのですが、小さな図書館になると蔵書数が大変少ないのですね。そうした場合に、図書館同士のネットワークというのは確立されているのでしょうか。例えばこういうことが知りたいのだけれども、どこに行けばいい、どこの図書館へ行けばあるのかということは、できるものでしょうか。

【糸賀委員】
 既に国内の図書館では必ず都道府県内でのネットワークというのが整備されておりますので、いらした図書館で必要な本が入手できなければ、今ですとインターネットを使って検索して、その本が県内のほかの図書館にあるということがわかれば、二、三日で配送するようなサービス体制は、ほぼ全国の都道府県で整っております。

【中込委員】
 それは都道府県ということに限定しないで、全国的に図書館で、例えばかなり専門的な書籍になりますと、なかなか見つけにくい部分があるのですね。そうした場合に全国的な図書館同士のネットワークというのがあれば、もっと通いやすくような気がするのですけれども、いかがでしょうか。

【糸賀委員】
 しっかりした体制が整っているのが都道府県ですので、今、県立図書館と県内の市町村図書館の関係で申し上げました。もちろん、県を越えて資料を提供するということも行われております。例えば、北海道から、九州にお住まいの方のために資料を配送するというふうなことも行われておりますし、国会図書館では関西館を含めて、所蔵資料を全国の方に利用していただけるような仕組みというのは、既にでき上がっております。

【中込委員】
 ということは、例えばこういうことを知りたいと。そうすると、どんな小さな図書館に行っても、ここへ行けばわかるよという仕組みができているわけですね。

【糸賀委員】
 そういう意味では、図書館の仕組みは既に水道と同じでして、国会図書館とか、大きな県立図書館は、言ってみれば豊富な本を持ったダムです。ここから、身近な地域の図書館は言ってみれば水道の蛇口ですから、身近な図書館に依頼すれば、水の流れと同じように本を搬送し、少々日数はかかりますが、それが届く仕組みがちゃんと出来上がっております。

【湯川委員】
 中高年の方々からは、よく、どこに行ったら音楽が聞けるのかということを相談されます。CD、レコードですね。一応、古いレコードを集めたりしているようなところはあるのですが、図書館の中で、例えばクラシックからポップスから歌謡曲、演歌まで、ある程度そろえていらっしゃるのでしょうか。今、不要になったCDやレコードが本当にたくさん捨てられていたりもするのですが、本と同じように、そういうものを図書館で集められて、いろいろな音楽療法を習っている人や、専門学校の生徒や、学校の先生など、地域で音楽を必要としている人が利用できるようにするサービスがあれば、ニーズとしては非常に高いと思いますが、いかがでしょうか。

【糸賀委員】
 お手元の「これからの図書館像」という冊子の56ページ、57ページを見ていただきたいと思います。56ページ、57ページにありますのは、図書館のサービスの指標の例といたしまして、各種の数値で国内でも先進的と言われているような図書館の平均的な数値を掲げております。この表の下から6番目、7番目あたりですか、ここに例えば視聴覚資料数、映像資料数の上位の図書館の数字が出ております。ここでいう聴覚資料には、例えば、湯川委員が言われましたようなCDあるいはカセットテープさらにはDVDといったものも含まれております。こういったものも、既に目録はでき上がっておりますので、どんなCDがどこの図書館に所蔵されているかということについて知ることもできます。それから、CDに関しましては貸し出しをすることができますので、必要があれば借りて、自分の部屋で聞いたり、あるいは通勤・通学の途中で聞くということもできるようになっております。
 ただ、こんな曲が聞きたいとか、それこそヒーリングの音楽にどんなのがあるのかといったことについて、職員の方が相談を受けて、こんな音楽がいいでしょうというふうに答えられるまで、音楽に詳しい図書館員がたくさんいるかというと、そこまではまだまだ難しいかと思いますが、どこの図書館に行けばどんなCDがあって、それが借りられるのかどうかということについては身近な図書館でもお尋ねすることができると思います。

【水嶋委員】
 糸賀委員のプレゼンテーションの5ページに、図書館による課題解決支援の中でビジネス支援、行政支援、子育て等とありますけれども、今後の図書館の生き残り戦略として、こういうビジネス支援を前面に出していこうとしているのか、あるいは1つのサンプルとして紹介されたのか教えて頂きたいのです。といいますのは、図書館の予算削減の問題とか、指定管理者の問題などがありますが、そのかわり引退された方がノウハウを持って、いろいろな支援するという意味でなのか、生涯学習の観点から図書館員だけではなくて市民参画を促すという意味でなのか、その辺いかがでしょうか。

【糸賀委員】
 今言われた要因がすべて絡んできていると思います。単に生き残りのためだけでビジネス支援というわけではなくて、地域の中でビジネスの情報を知りたいという方が増えてきている。とりわけマイクロビジネスが今かなり増えてきたわけですね。つまり、SOHOとか言われますけれども、自宅でごく少人数で新しいビジネスを始める。コミュニティビジネスみたいなことを考えたときに、そういった方々はデータベースを買い入れるほどの高いお金がない。資料室、図書室を持っているほどの大企業に勤めているわけではない。こういう方々が地域の図書館を使おうとするわけなのですね。
 そういった社会的要請もございますし、一方で、今後、2007年問題で団塊の世代の方々が退職されて地域に戻ってくる。そういう方々が活躍する場として図書館も考えられるというような要因も当然あります。ビジネス支援だけではなくて、ここに挙げたような子育て支援、患者支援、ひとり暮らし支援なども今後考えなければいけません。ひとり暮らしは別にお年寄りだけではなくて、若い世代のひとり暮らしもあれば、中高年で単身赴任の方のひとり暮らしもある。こういった方々が、実は、食事の問題、安全の問題、防犯対策の問題、健康の問題、そういったことで、それぞれ必要な情報を求めている。しかしながら、どこに行ったらいいかわからないといったときに身近な情報拠点として図書館が使えるという意味合いもございますので、水嶋委員が言われた幾つかの要素を考えて図書館がこういった課題解決をやっていることになります。特定のものというよりは、今おっしゃったことがすべて絡んで、こういうふうな方向に図書館が歩み出しているという状況にあります。

(6)事務局から、「生涯学習推進施策等に関する調査結果(速報)」(資料3)と、「生涯学習インストラクター」(参考資料1)について、説明が行われた。

(7)ひきつづき、事務局から、「生涯学習情報提供の在り方に関する調査研究」(資料4)について説明が行われた。

(8)事務局から、今後審議すべき主な論点(資料5)と、参考資料3(誰でも再チャレンジできる社会の実現に向けて)について説明が行われた。

(9)委員による自由討議が行われた。以下、その内容。

【山本委員長】
 それでは、これからしばらくフリーディスカッションということにしたいと思います。今、事務局から説明してもらいましたようなところで、これから我々としては論点のところを膨らませて、その中をさらに検討する。さらに、参考資料2にも「特別委員会における主な指摘事項」がございますから、ここら辺のところを膨らませていくということになってくると思います。特にどこに絞ってということではなく、お気づきのところについて、どんどんご意見をいただければというふうに思います。どうぞ。

【工藤委員】
 資料5の3ページ、(2)「ニート等若年無業者に対する支援」という部分ですけれども、私どもはこういう若者たちとよく一緒にいるのですが、基本的に最終的な自立というのは働くことであると考えています。なぜかといいますと、貨幣経済の中ではお金を稼がないと生きていけないという意味の最終的な自立を働くことととらえているのですが、最近、中学生、高校生、大学生、もともと無業の方と話をしていると、みんな同じことを知らないということが大体わかりました。というのも、例えば、お金の問題1つとってみましても、中学生と高校生、大学生、あとニート状況にある人は、今のところ保護者の庇護のもとで暮らしているわけですけれども、1カ月の生活費、幾らあったら暮らせますか、というようなことをゲーム形式でやったところ、平均が12万円から15万円ぐらいだったのです。基本的には暮らせませんが、そこの観点としては、納税、税金の問題とか、敷金、礼金とか、大人が当たり前のように知っていると思っていることを知らないという現状があります。そこを抜きにして、例えば、株の問題とか投資の問題とか、自立の問題の話をしても、多分あまり耳に入らないのではないかと思っております。昨今、職業というのはクローズアップされていますが、土台となるべき当たり前と思われた部分がとても抜けている人が多い。
 特にニート状況の人ですと、まず、家庭の所得とか環境があまりよくない方が多くて、家庭内でそういうことを教えていただけないということがある。仮に裕福であっても、給料が振り込みで、各種料金が引き落としの中では、あまりお金を見られないという部分で、水道料金が2カ月に1回ということを知らない人が8割ぐらいいるのですね。ひとり暮らししたことがない、そうすると、1年間の計画も立てられない。フリーターとサラリーマンの生涯年収が2億というよりも、1カ月間、幾らぐらいかかるのかを最低限わかっておくということが、無業に対する予防策の1つになるのではないかと思います。
 もう一点、ボランティアのコーディネーターの話など結構出ましたが、無業である本人、あと、その保護者に話しますと、ボランティアからでも始めたいと言います。しかし、実際、受け入れますと、ボランティアを受け入れるというのはかなりしんどいですね。ボランティアさんのために、こっちがボランティアしなきゃいけない。実際の事業にしっかり携わる時間を削られてしまいます。皆さん、自分たちが助けてあげるという意識で来られますが、こちらからしますと、ありがた迷惑というか、ボランティアとしての心構えや求められる資質について、もう少しいろいろ勉強されたうえで来ていただけると、中学生であろうと、団塊の引退された方であろうと、ご一緒にやっていけると思う場合が多いのです。自分を生かしてくれとか、自分のスキルを使ってくれ、みたいなことを言われると、受け入れる側としても結構困ってしまいます。社会参画が大事になって、NPO、ボランティア活動にどんどん参加するのはいいですが、そのための準備というか、相手を思う気持ちというのを学べる機会というのがあると、いろいろな意味で社会参画というのが比較的容易になっていくのではないかと思います。

【山本委員長】
 ありがとうございました。今の前半の方は、金融庁で金融経済教育の普及を始めまして、金融経済教育元年といって動き出しておりますので、その辺との連携をしていく必要があるかと思います。こちらの方の関係ですと、生涯学習インストラクターなどに頼んで動いてもらったらいいような項目も入っています。

【田中委員】
 資料5の2ページ以降の、「具体的方策」の(1)がどちらかというと総論的な内容で、(2)から(4)が各論的なものというふうに受け取りましたが、そう考えたときに、(4)の新しい公共について、コメントをさせていただきたいと思います。
 前回も申し上げましたが、1に書いてあるのは、どちらかといいますと、今まで言ってきました、現代的課題の学習という学習内容の面で課題を挙げたものだと思います。しかし、今、新しい公共と言われるときには、単にどのような学習内容を提供すればいいというのではなく、もう少し何か動的なというか、ダイナミックな動きの中での学習支援が求められていると思うのです。これまでの政府や地方自治体の審議会等の提言を振り返ってみれば、例えば、以前に21世紀日本の構想でしたでしょうか、あそこで新しい公というのが提案されたり、その後、中央教育審議会、産業構造審議会、また、今日、中村委員がお越しになっていますが、東京都の生涯学習審議会、こういうところで新しい公益とか公共とか、そういうものが次々に提案されてきたという経緯があると思うのですね。いずれもその趣旨は、従来行政が公共を担っていたけれども、それに対して個々の市民であったり、NPOであったり、企業であったり、異なるセクターの立場が、いわゆる協働、コラボレーションしながら、新しい形の公共をつくっていく、というような趣旨だと思うのです。そうであるならば、私たちの審議会の答申の中でも、こうした協働の仕組みの中で新しい公共をつくっていこうとする動きに対して、具体的な支援方策を提供することを考えなければいけないと思うのです。個々の社会教育施設をとおした支援と、地域全体でのシステム化の両面から具体的な方策を例示すると、次のようなことが考えられます。
 第一に、社会教育施設をとおした支援についてです。例えば、図書館について見れば、先ほど糸賀委員からご発表いただきましたようなビジネス支援という考え方を応用すると、新しい公共をつくるための協働の活動に対する学習面での支援といいますか、個々の地域でいくと、まちづくり支援とか、社会づくり支援とか、そういう観点からの相談・支援のサービスが重要ではないかというふうに思います。また、博物館をとってみれば、学芸員を中心に現状でも展示したり、地域の文化を一定のテーマのもとに展示したりされていますけれども、もう少し動きのある、個々の地域の地域学とか地元学、この地域がどういう資源を使いながら地域活性化していくか、そういうものを学習したり、研究したりする、そういうものを開発していくための施設の拠点として考える。つまり、地域学(地元学)の推進という方法をとおして、地域における新しい公共の創造活動を引っ張っていく、ということです。公民館であれば、従来の社会教育関係の団体やサークルを中心とした学びの場から脱却して、複数のセクターや異業種が一堂に集まり、討論や共同的な学習をとおして地域活性化の方策を探る活動(これは新しい公共を生み出そうとする活動にほかなりません)の拠点にしたり、それらの活動をサポートできる仕組みをつくっていく。
 上記のうち、とくに公民館について補足すれば、何年か前に文部科学省が、生涯学習に関する地域プラットフォーム(注;ここでいうプラットフォームとは、異なるセクターの人々が一堂に集まって、地域活性化について討論や試行錯誤を行う場や舞台のようなものと考えられています)の調査研究を行ったと思います。あの中の趣旨にのっとって考えれば、地域住民、NPO、企業、行政機関などの人々が一堂に集まって、異なる立場から新しい地域における公、公共をつくっていくための学習・研究の場として、公民館をもっと生かしていくということが必要になると思うのですね。そのときに、社会教育主事あるいは公民館職員が、さらに高度化したサポート機能を持たなければいけないと思いますので、その辺のことも含めて提案していただければと思います。
 第二に、地域全体でのシステム化についてです。上記のような諸施設に加えて地域に散在する資源、さらには外部の専門家とか、首長部局の情報も非常に重要ですので、それらも含めた総合的なネットワークが重要だと思います。いわば「新しい公共」づくりに向けた協働型の活動に対する総合的な学習支援ネットワーク(注;昨今の用語を使えば、そうしたネットワークをワンストップサービスとして活用できるような仕組み)をつくるということです。このように、地域の施設・資源、外部専門家、首長部局の情報などをネットワーク化して、総合的な学習支援の仕組みを考えるというところまで行かなければいけないのではないかと思います。

【中村委員】
 今まで議論されたこともかもしれませんけれども、生涯学習といった場合に、学習という言葉がついているがために、なかなか参加できない方々がいるのではないかと思います。来年から団塊の世代の方々が大量に退職します。積極的にNPOなり、地域活動に参加される方はいいのですが、生涯学習だからこういう場がありますよ、こういうツールがありますよ、と呼びかけたところで、果たしてその方々が生き生きとした老後を暮らせるのか。こういうふうに考えますと、私ども教育現場で、学校教育、家庭教育で問題のある子供さんの保護者にぜひ学校へ来ていただきたいのですが、問題のある保護者に限って、そういうところには参加しない。多分、来年以降、団塊の世代の方々の大量退職時代で、NPOなり地域活動なり、参加してほしいのだけれども、そういう人に限って参加しない。今までの生涯学習という観点とはちょっと違った仕組み、極端に言えば、お年寄りの居場所づくりみたいな、もうちょっとソフトな感覚でもいいのではないかなということと、そういう活動に参加できない方々や、新たな場所に行くことや、新たな仲間、人の顔を見ることに躊躇する方々には、例えば公共放送機関とか、新聞とか、テレビラジオがきっかけになるような社会参加の仕組みも、きっかけとしてぜひ用意しておかなければいけないのではないか、ということを感じました。

【湯川委員】
 この特別委員会に参加させていただいて、ずっと当初から気になっていたことが、生涯というからには生まれてすぐの乳幼児期というのが非常に大事だということです。日本にとって政治問題だとずっと思ってきています。中村委員のお話にもあったように、必ずしも働くお母さんということではなくて、育児というものの刷り込みがされていないとか、地域の中で育児が非常にしにくいとか、いろいろな問題が起きていると思うのです。そういう乳幼児期の子供たちへのサポート、つまり、教育基本法の中にもあるように、幼児、子供たちの心身の健全な発達という意味から言っても、例えば高齢者、団塊の世代の再チャレンジとか、出産育児から時間ができてきた女性の再就職とか、地域の中での育児サポートにも、この生涯学習というものが、何かの形でもっと積極的に参加できるのではないかと思います。乳幼児への、例えば教育サポーターでも介護サポーターでもなく、育児サポーターとか、そういうものがもっと見えてきてもいいのではないでしょうか。

【山本委員長】
 もう一つの特別委員会(「家庭・地域の教育力の向上に関する特別委員会」)もございますので、いずれ、その辺のところについて、すり合わせをお願いできればと思います。

【小杉委員】
 私は、この論点の大事なところは、これまでの受け身型の教育から、人を動かす、アクティブにするというのが、これからのフェーズだと思っています。そのことは、これまでもずっと議論していたことだと思うので、そのアクティブにするというところがポイントで、そこをもうちょっと強調したまとめ方がいいのではないかと思います。
 私は、これまでの居場所としての図書館という機能もあったと思いますが、居場所から一歩出て、さらにビジネス支援のように、次の行動に移すための知識基盤なのだという部分が、審議のまとめにおいては特に強調すべきことだと思います。特に若年者の問題については、アクティブにというところまで踏み込むと、ここで限定的に書かれているような社会参加、ボランティアという領域の話だけでは、入り口にすぎないわけですね。その点については、他機関、他省との連携による、というかなり自分で手足を縛ったような書き方をしています。この中では職業訓練の話が全然出てきませんが、アクティブにするというところ、若い人たちの再参入、ニート状態の人たちの再参入を支援していくとなると、職業訓練につないでいくという発想は必要だと思うのですね。そこまで踏み込んで書かないと、遠回し過ぎるのではないか。実際に職業能力開発は、違うところが中心になるでしょうけれども、そこにつないでいくつなぎ方、あるいは生涯学習センターのこれからの課題にはっきり出てきてよかったと思いますが、大学と職業訓練機関等の一元的な情報支援をしなければいけないという自覚が現場ではあるわけですね。その辺、少し他省の領域に踏み込んで一元的な情報支援の中で、若い人たちの人生を支援するわけですから、先まで踏み込んだ形での情報提供をしながらやっていかなければならないと思います。学習相談、事業実施だけではなくて、生涯のキャリアまで踏み込んだ支援をしていけるような体制をつくっていく必要があるのではないかと思います。

【糸賀委員】
 私も、当初から生涯学習という言葉に対する違和感といいますか、抵抗がありました。小杉委員が言われたように、生涯学習施設としては確かにアクティブな学習形態に取り込んでいこうという姿勢がうかがえる。そうしないと、地域の中で、図書館にしても公民館にしても埋没してしまうという、そういう危機感は確かにあるのだろうと思います。
 ただ、その一方で、我々が学習してもらいたいと考えている人間が、呼びかけたときに確かに反応してくるのか。学習という言葉があるがために、やや敷居が高くなってしまうのではないかという懸念はありますね。先ほど中村委員が言われたようなことを、私も感じるわけです。
 そうしますと、本来は、こちらが学習してもらいたい、こういうふうにやれば豊かな暮らしになるし、生きがいも出てくるだろうというふうに考えるのですけれども、必ずしもそういう人間ばかりではないのが現代社会であって、我々が育った時代と、明らかに10代、20代の人たちは違うわけですね。それの受け皿になるのが民間とのパートナーシップであり、先ほど来から出ている公共という概念なんだろうと思います。つまり、官がやってきた生涯学習行政だけではなくて、民のほうで自発的にいろいろなことが行われている。なまじ官が呼びかけると、腰が引けるというか、及び腰になってしまうような人たちが、そういうところに入っていけるような仕組みがだんだんと地域の中にできている状況だろうと思います。つまり、地縁とか血縁ではなくて、よく言われるような情報縁だと。ネットでつながっていることによって安心できて、そこでは匿名だからこそいろいろな意見も言える。そういう人たちに社会の中でプラスの働きをしてもらう、ポジティブに活躍してもらわなければいけないわけですね。匿名性があるからといって、ずっとそこに埋没されていたのでは、社会的な生産につながらないわけですから。それを何とか顕在化して、ポジティブな活動に向けていこう。そのときの受け皿としては、明らかに官がやる時代は終わってしまったので、そこで公共という、民も入り、官もそれを側面からサポートすることで受け皿になっていこうという考え方なのだろうと思います。その辺が、先ほどの公共のあたりの記述の中で謳われていく必要があるだろうと思います。
 それから、さきほど「学習」という概念が出てきたので、それに関連して教育基本法改正についてお尋ねしたいと思います。今回の教育基本法改正の中で、新たに「学習する」という言葉が入ってくるわけですね。そこでの概念整理は一体どうなっているのだろうかというのが最初からの疑問です。第3条に、「生涯学習の理念」というのが新たに取り込まれるという、これは私も、これからの時代にふさわしいだろうと思うのです。この中で、「あらゆる機会にあらゆる場所において学習することができ」という言葉が出てきます。
 一方で、「教育を受ける機会」という言葉も同時に出てきますね。他に学習するという言葉は、第6条の学校教育の、「みずから進んで学習に取り組む」とか、もう1カ所第12条の社会教育のところで、「国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用」という記述に続いて、「学習の機会」というふうに出てくるのですね。「学習の機会」といったときの主体と、「教育を受ける」というふうに表現したときの主体で、何か違いがあるのか。つまり、例えばニートならニートでも、学習する権利とか学習する機会といったときと、教育を受ける権利といったときで、同一人物であっても、理念としてのとらえ方に違いがあるのかどうか。どうもこの改正法案の中では、今も言いましたように、教育を受けるという行為と学習するという行為を使い分けているように思うのですよ。私自身は、それがどう使い分けられているのかよくわかりません。それが先ほど中村委員が言われたように、生涯学習という言葉でくくられたときに、必ずしもそのくくりの中にすべての人が入り込めるわけではない、だけれども、国民すべてが確かに何らかの形で生涯にわたって、学習するというのか、教育を受けるという表現が妥当かわかりませんけれども、必要な知識や必要な技術、技能というものを獲得していく、そういった機会が用意されているべきだろうと思うのです。
 改正案の中では、「学習する」という表現と、「教育を受ける」といったときで使い分けがあるのか、それともその辺は実は全く同じように書かれているのか、もしもおわかりでしたらご説明願いたいと思います。

【山本委員長】
 それにつきましては、教育基本法の答申を審議した中教審でさんざん議論がございました。臨時教育審議会の答申が出た後、中央教育審議会と生涯学習審議会で言われてきたような、教育と学習はコインの表と裏で表裏一体だというようなまやかしはやめようという話でした。つまり、どういうことかというと、社会教育を生涯学習に置きかえようとか、いろいろなことがあって、さんざんやってもうまくいかないので、生涯学習審議会の中で社会教育行政のあり方の検討をした際、整理しました。生涯学習とか、教育とか、学習とかは人によっていろいろと捉え方がある。そこのところの理解は、国民とかいろいろな学者にお任せするしかない。ただし、法律で「生涯学習」とか「学習」のことをきちっと言うのであれば、これは法制局できちんとチェックされますから、そこのところで整理しておかなくてはいけない。
 教育に関する法律の中に、「学習」という概念が入っているかというと、1つもありません。法制局で全部整理されています。ですから、今回もしそれを入れるのであれば、まずはその点について法制局のチェックを通過しなければならないでしょう。先ほどの「学習する」とかというのは日常言語ですけれども、第3条の「生涯学習の理念」のところは、よく見ていただくとわかりますが、「生涯学習」のことは言っておりません。「生涯学習社会」のことを言っております。生涯学習社会をつくるということが生涯学習の理念だという話になっています。ですから、社会建設のことを言っていて生涯学習のことを議論してはいない、という整理をしております。
 「教育を受ける」ということは従来どおりで、「学習する」ということは、それぞれ日常言語として学習する側から教育の機会を利用して学習するとか、そういうふうに受けとめていけばいいだろうと。ただし、今の説明でもって法制局を通過するかどうかはちょっとわかりませんけれども、そこのところは、平成10年でしたか、社会教育行政のあり方の検討をしている中で表には出ていませんけれども内部資料でつくってありますので、その辺で法制局とやりとりをする必要があるかもしれません。でも、今のこの感じでいけば、日常言語ですから、あまり問題はないのではないかと思います。

【糸賀委員】
 おおむね理解できました。ただ、「教育」といったときには、教育機関が学習者というか、相手を対象にする行為であって、「学習」というふうに言った場合には、主体性といいますか、学習する側の主体性が尊重されるから、必ずしも教育機関、あるいは教育者を通じて学習する必要はないわけですね。そうしますと、今のニートの問題とか、本来、学習してもらいたい人は、なかなか学習の機会に積極的に応じない。その一方で、既に学習している人、盛んにこの会議に出てきた、例えば企業内教育や職場で職業能力開発などをやっている人たちは、多分、自分は生涯学習をやっているという意識はあんまりない。自分自身は仕事上、あるいは職場でどうしても必要だから学んでいるのであって、これがいわゆる生涯学習だというふうには認知していない場合もある。そのギャップを何らかの形で埋めていかないと、せっかく教育の憲法に当たるような教育基本法の改正を審議するのですから、そこの概念規定は整理しておいた上で、だれでもが必ずしも教育を受けるわけではないけれども、学習する機会が生涯にわたって保障されるという仕組みを実現していくべきなのだろうと思います。

【山本委員長】
 おっしゃるとおりですね。それに関しては、先ほどの中央教育審議会で、教育と学習はコインの裏と表だという議論があったと言いましたけれども、学習のほうが概念としてははるかに広いのですよ。個人でやるものもありますし、文化・スポーツ・ボランティア活動などの中でやっていて、他からはわからないところもありますからね。学習のほうは教育の中だけじゃないところにもあるから、広い範囲にわたる。それについては生涯学習支援という別の観点、生涯学習振興法ですね、そちらのほうでカバーする。生涯学習振興法は他省庁にも民間のことにもかかわってくると思います。それと教育基本法との関係はどうかというと、先ほどのように法制局に対して説明しないと納得してもらえないかもしれません。私が申し上げたのは、学習のほうが幅広い、ですから、それをカバーする、サービスするというので、「支援」という言葉があるのだろうというふうに申し上げてあります。

【茂木分科会長】
 参考資料3は、おそらく文部科学省のペーパーではなくて、内閣官房のペーパーですね。「誰でも再チャレンジできる社会の実現に向けて」という資料ですけれども、「再チャレンジ」といっても、チャレンジしたいのにチャンスがない人あるいはチャンスが失われた人と、チャレンジしたくないといいますか、チャレンジするつもりがない人とを分けたほうがいいのではないかと思います。例えば、会社が倒産して失業した人、あるいは自分でベンチャービジネスを起こしたもののその会社が倒産して仕事がなくなってしまった人は、チャレンジしたくてもチャレンジのしようがないわけですね。そういう人たちに対してチャレンジの機会を与えるという意味では、こういう書き方でいいのかもしれませんが、ただ、チャレンジしたくない人、あるいはチャレンジするつもりがない人は別に扱う必要があると思います。それらを混同してしまいますと、両方とも中途半端になってしまう感じがします。

【山本委員長】
 今のご指摘については、再チャレンジ推進会議に持ち込んでいただくこととしたいと思います。

【渡邉委員】
 私は博物館の館長をしておりまして、博物館の中で生涯学習というものに非常に重きを置いて全国的に活動しております。ただ、国レベルの生涯学習の中では、博物館というのは、なかなか議論や検討の俎上に上がってこないと感じておりますので、その点について発言させていただきます。
 生涯学習の資料をたくさんいただきましたが、その中で、インターネットを中心にしたバーチャルな情報が生涯学習のかなり中心に出てきております。博物館というのは非常にアナログな世界でございまして、これは時代とは逆行しているとみられ易いですけれども、バーチャルな現代の世界であるからこそ、生涯学習の中では博物館というのはまことに重要な立場にあると思います。私も地方で実物に当たって、小学校や中学校、高校のグループと、できるだけ直接に教育することをいたしております。これを今、全国的に各博物館では取り組んでいます。
 ただ、インターネットや図書館と違いまして、1つの組織で全国的に動くということは非常に難しい。地域の小さなグループでもって活動するので、地道な活動です。でも、今、全国で博物館が大体5,000ぐらいございますので、博物館で実際に子供たちと物を見たり、また、お年寄りも物に触れたり、自分の手で作ったり、または絵を描いたり、手を動かして作業するということは、団塊の世代の方でもそうですし、男性も女性もそうですが、非常に精神的な安定感と生きる充実感というものを確かに受けとられているというのを、私は体験上、強く感じております。
 しかし、国の行政レベルでは、教科書の中にも博物館は1行ぐらいしか出てきません。ヨーロッパとかアメリカなど、特にフランスでは、小学校のときに博物館に行って博物館の授業を受けるということが行われています。アメリカでもかなり国として熱心ですし、イギリスもそうです。かつての日本は家庭や社会で、現在一部の博物館で学ぶような内容が充足されていたのですけれども、今はほとんどそれができません。ですから、もう少し小中学生の学校教育の中で、博物館教育というものを重視してほしい。そのためには、まず、先生の教育が必要です。
 ドイツでは、先生を集めて博物館教育をしたうえで、生徒に博物館学習をするのです。日本ではそういうことがほとんど行われておりません。これは実に、残念なことだと思っています。日本では昔から手を使った、ものづくりというのが国民のエネルギーの源泉になっていたわけですが、現代においては、ものづくり体験の原点は博物館にあるといえます。
 今、地方では体験を小規模ながらやっておりますが、それは将来、大きな力になると思います。ぜひ国レベルで博物館というものをもう少し考えていただきたいと私は思います。

【柵委員】
 実社会から学校など教育機関、学習機関へ向かうまでの中間には、1つ必要なものがあるのではないかと思います。というのは、学習段階の前には、実社会でいろいろ悩んでいることとか、次の道を探りたいとか、そういった様々な状況があって、すぐに施設に行く、あるいは相談に行く、ということがしづらい場合も、確かにたくさんあるのです。それは私たち(富山インターネット市民塾)の活動の中でもそういう方々がたくさんいらっしゃいます。
 したがって、そういう方々が参加できる場、そして、そこに自分と同じような状況にある人がいる、いろいろな活動をしている人がいるということを知る場、そういう中間の場が1つあってもいいのではないか。その結果、いろいろな選択肢が見えると思うのです。図書館へ行けばいいのか、博物館へ行けばいいのか、あるいはネットでいろいろ活動をすればいいのか等、いろいろな選択肢が見えるということが大事だと思います。今、そういう中間の層がなくて、少し右往左往というか、効果的になっていない面が随分多いと思います。
 もう一点、そういう中間の層というのは、小さい頃から生涯を通して参加できる形が必要ではないかと。小さい頃から実社会と触れて、実社会の人たちとも触れ合いながら学んでいく。そういうことがやがて社会に出る前からキャリア、人格というものを形成していく、そういう中間のプラットフォームのような場が必要だと強く感じております。

【小菅委員】
 渡邉委員の話を聞いていて、博物館は国の施策として1行載っているというお話でしたけれども、動物園は全く載っていないと思います。先ほどから、インターネットなど情報の世界ということが非常にたくさんこの場では論じられています。しかしながら、特に動物園は命を扱っている、生きた動物を扱っている博物館ということで成り立っていると思うのですが、その中で私は、本物というものがいかに重要なものであるかということを、いつも思っております。小さな子供たちが動物と一緒にいるということだけで何かを感じているということをいつも感じていますし、小さい子供であればあるほど、動物園に来て、さまざまなことを聞くのを目にします。お母さんに、あれはどうしてなの、これはどうしてなの、と。私は、実は、そこのところが一番重要だと思っております。疑問を持たない限り、それの答えを探ろうとか絶対しないわけですから。学習のもとのもとになるところとして、「えっ、何なんだろう」というふうに思う、その瞬間を非常にたくさん持って大事にしていかなければ、ゆくゆく大きくなって、何も疑問に思わずに、こんなものだからいいや、というだけで終わってしまうのではないかというような気がします。
 そういう意味では、渡邉委員は博物館でさまざまな活動に取り組んでいらっしゃるということですけれども、動物園、水族館もあって、先ほどの糸賀委員のご説明の中に動物園は出てきませんでしたが、よく見ると、動物園は利用したことのある人の数としては第4位に位置しているのです。結構の人が来ているわけですね。ということは、どういうものを求めて来ているのかということをもう少ししっかりと分析して、動物園、水族館の生涯教育について果たしている役割をしっかりと調査し、分析して、生涯学習というものに対してどのような役割を果していけるのかということを、ぜひご論議願えればというふうに思います。

【山本委員長】
 それでは、時間がまいりましたので、今日はこれにて閉会とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

─了─

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生涯学習政策局政策課