中央教育審議会教育振興基本計画部会(第14回) 議事録

1.日時

令和5年2月24日(金曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画について(答申(案))

4.出席者

委員

荒瀬委員、内田委員、清原委員、清水(敬)委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村岡委員、安孫子委員、岩本委員、大森委員、大日方委員、川口委員、河野委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉田信解委員、吉見委員、渡邉部会長
 

文部科学省

藤江 総合教育政策局長、藤原 初等中等教育局長、池田 高等教育局長、里見 大臣官房審議官、水田 文部科学戦略官、安彦 大臣官房審議官、森友 総合教育政策局政策課長、神山 総合教育政策局生涯学習推進課長 等

5.議事録

【渡邉部会長】  それでは,お時間になりましたので,ただいまから第14回,中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催させていただきます。大変御多忙の中,御出席いただきまして,また,リアルでの御出席の方もいつもよりも大変多く,本当にありがとうございます。全体としては,まだハイブリッド形式での開催とさせていただきます。
 本日は,いよいよ次期教育振興基本計画の答申案について御審議を頂きます。
 それではまず,本日の会議開催方式と資料について事務局から説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  事務局の川村でございます。本日もウェブ会議での会議開催とさせていただき,傍聴につきましてはユーチューブにて配信しておりますので,御承知おきください。
 御議論の時間におきましては,挙手ボタンを押していただければと存じます。部会長の御指名によりまして,順次御発言を頂きます。御発言時以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日の資料でございますが,答申案に関する資料として資料1から3,答申案に関する参考資料・データ集として資料4でございます。
 最後に,本日は全体30名の委員のうち25名にご参加を頂いております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは,早速議事に入らせていただきます。まずは事務局より資料説明をよろしくお願いします。
【川村教育企画調整官】  それでは,画面を共有して,失礼いたします。こちら,資料1から4まででございますけれども,資料1が,前回の部会からの修正点を見え消しにしてお示ししているものでございます。前回の御意見,また,パブリックコメント,団体意見等で頂きました意見のうち,更に追記をすべきもの等につきまして反映させております。なので,資料も補足をいたしておりますので,少し概略を説明させていただきます。
 まず,見え消し資料を1ページおめくりいただきますと,目次をつけております。こちら,項目に沿って目次を入れたというものでございます。
 それから,冒頭のところ,3ページでございますけれども,教育基本法の関係でございます。御意見として,教育基本法の目標に定められている事柄,こちらを明記すべきではないかという御指摘がございましたので,これまで抜粋の形で趣旨を書いておりましたけれども,条文をそのまま引用する形の修正とさせていただいております。
 続いて,9ページでございます。前回御指摘いただきました,教育の役割としての財政や社会保障などの社会制度を持続可能なものとするという観点を追記いたしております。
 続いて,10ページでございます。前回,ウェルビーイングの資料に基づきまして御議論がございましたので,それについて,獲得的,協調的ということについての説明,また,2つをバランスではなく調和的,一体的に育むということ,さらに,特徴やよさを生かすという観点を明記しております。
 続きまして,13ページでございます。大学の質保証のところにつきまして,前回の御議論を踏まえて修正をしております。
 続いて,14ページでございますが,グローバル競争におけるイノベーター,リーダー人材の育成,こちらの場所の移動,それから,国際理解教育,それから,国際交流に関する教育プログラム,こちらを追記ということでございます。
 続いて,17ページでございます。前回御意見ございました学位と資格との関係の可視化をこちらに移動させております。また,児童虐待,ヤングケアラー等についての記載,また,性的マイノリティーに関する児童生徒への配慮・対応,こういったところも若干位置の変更修正をしております。
 続きまして,27ページでございます。こども政策に関しまして,位置を修正するとともに,脚注のところで例えばということで,就学前の子供の育ちに関する基本的な指針とか,居場所づくり等について,いじめの防止体制の強化等について連携する具体的内容を例示しております。
 続いて,その次のページ,28ページでございます。教育政策,また,実践についての研究の深化を前回の御指摘を踏まえて追記しております。
 続いて,30ページでございます。フォローアップに関しまして,ステークホルダーの意見を聞きつつということで,御意見を踏まえた修正でございます。
 それから,36ページでございます。こども政策のところは位置を修正したものでありますが,各目標が独立したものではなく相互に関連しているということ,また,基本方針との関係も複層的なものであるということで,この点,留意事項としてお示しをしております。
 続いて,39ページでございます。大学入学者選抜のところ,入学志願者の思考力・判断力・表現力等を適切に評価するなどということで追記をしております。
 続いて,53ページでございます。博士課程の修了者の就職に関すること,理工系だけではなく全体について就職状況に関する指標ということで,指標の差し替えをしております。
 それから,56ページでございます。不登校の関係でございますけれども,教育支援センターを中核とした支援体制の整備ということで,より広がりのあるような形での追記となります。
 続いて,58ページでございますけれども,外国人児童生徒の関係,母語・母文化の重要性への配慮とか,NPO等多様な主体との連携について追記をしております。
 59ページでございます。高校定時制・通信制課程に関する質の確保・向上に関する追記をしております。
 それから,60ページでございます。特別支援教育関係の指標を,御意見ございましたこと踏まえて追加をしております。
 それから,65ページでございます。社会教育の関係,図書館の司書,また,博物館の学芸員,こういった方々についても明記する形での修正となります。
 それから,66ページでございます。校務DXが,教職員の負担軽減・働きやすさの向上につながるというところの明記でございます。
 続いて,70ページでございます。教師の魅力向上発信というところを少し具体的に仕事の価値ややりがいという修正,また,評価を人材育成に活用するという観点,また,ICTの充実に当たりましては,都道府県が中心となって域内の市町村全体の体制整備,これらを通じて自治体間格差の解消を図るということ,こういったことを追記しております。
 以上が本文の修正になります。
 これを溶け込ませたものが資料2になります。
 資料3につきましては,概要ポンチ絵ということでございます。
 資料4,参考資料として,教育基本法の引用とか,また,フォローアップの状況について載せております。30ページのところでウェルビーイングの資料を,こちら前回御議論いただいたものを追加しております。前回御指摘ございました,バランスということではなく,調和的・一体的ということで少し表現を変えまして,特徴やよさを生かしというような追記,また,そのつながりや達成などからもたらされる自己肯定感を基盤とした主体性や創造力,そして,最後のところは,子供が学校と家庭・地域の両方に関わるというようなところで若干図の微修正を行っております。
 説明は以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。それでは,早速,次期教育振興基本計画の答申案について,議論させていただきます。
 御意見のある方から,挙手ボタンでお知らせいただければと思います。会場の方は名札を立てていただいても,手を挙げていただいても結構です。
 早速,村岡委員,よろしくお願いいたします。
【村岡委員】  村岡です。ありがとうございます。それでは,私から,最後の取りまとめの部会ということで一言述べさせていただきたいと思います。まず,本日のこの答申の策定に向けまして,コロナ禍の中で大変御苦労も多かったと思いますけれども,ハイブリッドという形で議論を始めて,1年弱という短い期間でこうした形でまとめられたことに対しまして,部会長さんはじめ,委員の皆様,事務局の皆様の,これまでの御尽力のたまものであろうと思っております。ありがとうございます。また,委員の意見に加えて,ユース政策モニターの活用等によって,計画の正に当事者である子供たちの意見についても新しくくみ取って審議に反映されたということ,これも大変すばらしいことだと感じております。事務局の皆様方の御尽力に心から敬意を表したいと思います。
 私から第11回の部会で教師不足への対応についてお話をさせてもらいました。是非国におかれまして,教職の魅力とかやりがいの発信,イメージアップ,そうしたことを図っていただきたいということを発言させてもらいましたけれども,このことにつきましては,その後の教師に関する答申等を踏まえた上で今回の目標12の中にしっかりと記載していただきまして,感謝を申し上げたいと思います。教師不足の問題は大変深刻でございまして,諸施策が確実に成果に結びつくように国においても是非取り組んでいただきたいと思っています。
 それから,国の,今回の計画の策定後は,都道府県とか市町村の教育委員会でこれを参酌して計画を策定していくということになります。是非国の計画の内容がきちんと理解されて,そして,その方向性を踏まえて,各団体が地域の実情に応じて計画を策定したり,改定することができますように,自治体,また,教員や保護者,学校関係者への周知を是非丁寧に行っていただきたいと思います。
 それから,更に計画の実効性を高めていく上では,力強い施策と,その裏づけとなります十分な予算の確保,これが必要であります。例えば今回のGIGAスクール構想のように,多額の予算がついて,国全体で強い推進力となって大きく変革が起きましたように,予算措置というのは確実に大きな影響を与えますので,是非そこのところは特にお願いをしたいと思います。これから先が見通しづらい,社会変動が激しい時代でありますが,だからこそ,社会を牽引する駆動力の中核を担います教育,この果たす役割はますます大きくなってくると思っています。これから5年間の我が国の教育が更に充実しますように,国としてそれを後押しする,それに見合う予算措置がされますように是非お願いしたいと思います。
 最後に,私といたしましても,今回の答申案に込められた思いを踏まえまして,本県におきましても,次代を担う子供たちを育成するために,教育委員会,また,関係団体としっかりと連携をしながら,山口県らしい特色ある教育活動を総合的に進めていきたいと思っております。
 以上です。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。全体としては,教育行政のこれからの方針等にエールを送っていただいたようなお話だったと思います。本当にありがとうございます。特に教師については,教師の在り方に関する答申,それから,「令和の日本型学校教育」答申とその前の働き方改革答申も合わせて,全体としては三位一体の答申だと思っています。そういった答申全体の方針がこれから実現されていくと,今,御意見のあったような形で地域の自治体あるいは教育委員会との関連が非常に強くなると思いますので,今後とも是非よろしくお願いします。
 事務局から何かよろしいですか。
 ありがとうございました。それでは,ほかに御意見のある方,お願いいたします。いかがでしょうか。大森委員,お願いいたします。
【大森委員】  大森でございます。今回この部会に参加させていただいて,本当にありがとうございました。私自身も大きな学びになったなと思っております。
 もう感想の話ですけれども,最初から終始,ウェルビーイングということを柱に置いてこの計画づくりを考えてきたということ。何回目かのときにも申し上げましたけれども,全く教育とは違う取組の場面とかでも,ウェルビーイングというのは非常に今注目をされてきていて,「教育でもね」と話すと,意外と全然教育と関係ないところの人たちが,「えー,教育もなの?」みたいな感じになったりして新鮮に受け取ってもらったりもしているわけですけれども,むしろ教育と一番親和性があるのじゃないかとも私は思ってはいます。そういう意味で世界全体がもう一度ウェルビーイングということに向かっていく,そこのところに,教育もそれに向かっていくのだよということになっていくというので本当に大きな方向性を示せた内容になったのじゃないかなと思っております。
 私自身としても,打合せのときには少し申し上げたのですけれども,これから群馬県で来年1年かけて県の教育振興基本計画をつくっていきますけれども,その懇談会の多分,座長を務めていくことになると思います。ここで学んだことをしっかりと今度,県の中で現場に落とせるように取り組んでいきたいなと思っているところです。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。おっしゃっていただいたように,この基本計画の重要なコンセプトとしてウェルビーイングを最初の頃から議論いただき,いろいろな御意見を頂いて今回のようなまとめになったことは大変よかったと思います。今の世界情勢を見ると,これは日本だけではなくて,世界にこそ必要な視点だと思います。計画に関わった我々自身が伝道師となってウェルビーイングを今後いろいろな方面に広げていければと思いますので,是非よろしくお願いいたします。どうもありがとうございます。
 次,では,内田委員,お願いいたします。
【内田委員】  内田です。どうもありがとうございました。この計画がこのような形で結実をし,大変よい,世界にも誇るようなものができることになったことに対しまして,委員の先生方並びに事務局の皆様方に心からお礼を申し上げたいと思います。
 そう言いますのも,やはりウェルビーイングは,先ほどの話にもありましたように,今世界的に,教育だけではなくて,働く現場とか地域づくり,様々なところで重要な概念となってきています。一方でまだまだやはり片仮名語なので少し分かりにくいとか,ウェルビーイングって一体何なのだというようなお話もたくさんやはりいただくことがあります。そうした中で,あえてこのウェルビーイングという説明の必要な言葉を使って,だけれども,だからこそ,教育現場の中でうまく浸透させていくこと,それによって本当にこれが絵に描いた餅にならないように,一人一人のウェルビーイングを追いかけられるような教育現場づくりをしていくのだという方向にしっかりとルートができていったことというのは本当に重要なことだと思っています。
 発信ということにつきまして,1つだけコメントさせていただきたいと思います。私自身もやはりウェルビーイングを研究しているという立場でもありますので,多くこのような機会に,教育におけるウェルビーイングってどう考えたらいいですかというような御質問とか,詳しく教えてほしいというような御質問をたくさん頂くことがございます。ですけれども,なかなかもちろん個別で対応し切れないところなどもありまして,ここで是非事務局の方には今後,これが多くの学校の関係者あるいは地域の皆様方,一般の市民の方々,いろいろな方に,このウェルビーイングというものを通して,一体どういう国づくりあるいは教育現場づくりを目指しているのかということについて,ある程度ここの情報にたどり着けば大体のことが分かりますよというような,そういうプラットフォームの形成を是非御検討いただけないかと思います。
 具体的に言うと,動画とかをウェブサイトのプラットフォームで配信するということでもよいかなと思いますし,もちろんコンテンツを文章で出すのも大事だと思うのですけれども,文章でたどり着いてそしゃくするのはなかなか簡単ではないということも,お忙しい方々も多いと思いますので,そういう意味では動画のコンテンツなどはもしかすると効果的かもしれないと思います。また,その際に,日本語版だけではなくて,是非英語での発信と両方含めて国際的な発信にも通じるようなものを用意いただくことができないかと思っています。そういうものが必要だということがありましたら,また私たちもお声がけをいただければ,いろいろな形でコンテンツの作成には御協力させていただきたいと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。これから恐らく行政においてもいろいろ検討していただけると思いますが,御意見にあったように,学校関係者だけではなくて,是非社会にもアピールしていただくよう,例示されたようなプラットフォームを形成して,そこから情報発信するということも検討いただけたらと思います。これは是非行政に期待したいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】  どうもありがとうございます。今日,最後だということで会場にやってまいりました。今日は,たくさんの委員の方がいらっしゃるのですけれども,私自身はいつもオンラインでの出席ですみません。たまたま出張から帰ってこられたので,参加いたしました。
 これだけのものを短時間でまとめてくださった委員の皆さん,それから,事務局の皆さん,ありがとうございます。今回,新しい取組で,ユース政策モニターの方々への聞き取りとか,事前説明会が毎回きっちりとあって,これだけ委員の顔を見ようとされた事務局は余りないのではないかと思うのですけれども,それくらいきっちりとつくっていただいて,とてもよいものになってきたのではないかと,感謝しております。どうもありがとうございます。
 人生100年とか,それから人工知能がどんどん発達していく,更にVUCAの時代というか,そういうことの中でどういう社会をつくっていくのかといったことが今問われているのだと思います。そういうことの中で,今回のこの議論の中で,教育が社会を牽引するといいますか,もう少し言いますと,2040年以降の社会を見据えて,持続可能な社会の担い手づくり,創り手づくり,そういうことが明確になってきた。そして,そこにウェルビーイングが関わることによって,人としてどのような生き方をするのかといったことに関して,教育はどう関われるかという議論ができたのではないかと受け止めております。
 その上で,この点を考えますと,もし可能であればというか,前にも少し申し上げたのですが,いわゆる教育学研究といいますか,もう少し学際的に,例えばウェルビーイングと教育,ウェルビーイングと人の在り方,ウェルビーイングと社会といったようなことをきっちりと研究できるような仕組みというのか,又は体制といったことをつくることの重要性をどこかでやはり主張ができないかという気持ちもあります。その意味で今回,教育振興基本計画ですけれども,いわゆる行政の計画ではあるかもしれませんが,教育全体の振興計画ですので,それを支える教育学研究といったことももう少しどこかで入れ込めると有り難かったかなという思いもしております。
 そしてもう一つ,これは私の立場からですと,社会教育や生涯学習を専門にしておりますけれども,今回,ウェルビーイング,それから,人生100年,そして,教育が社会を牽引するということの中で,生涯学習が,今,政策的にも例えば学び直しとか,それから,リスキリング,また,リカレントという形で,生涯にわたって学び続ける力をつけ続けていきつつ,自分の人生を自分で設計していくことを保障するとようなということで出てきておりますが,どちらかというと,どうしても経済的なというか,人材の育成といったことと関わった議論になってきているのではないかと思います。その意味ではある種,西欧的なといいますか,一般には欧米的なというような形での生涯学習論に近くなってきたのではないでしょうか。
 そこから見ますと,逆に社会教育といったものの在り方が,従来,生涯学習と社会教育はどう違うのかとよく言われたのですけれども,今回,社会教育の在り方が地域を基本にして,いわゆる社会の基盤をつくっていくというか,そういう方向性が強く出されてきたのではないかと思います。その意味では,とても有り難いというふうに感じております。更にそういうことをベースにして,生涯,100年学び続ける社会をつくっていくといったことにつなげられればと思います。
 そういうふうに申しますのは,例えば,最近,私たちの業界というか界隈(かいわい)でレジャー論が少しはやってきているのですが,従来のカジュアルレジャー,いわゆるレクリエーション,気晴らしのレジャーではなくて,シリアスレジャーという形で,直訳すると真面目なレジャーということになるのですが,例えばボランティアに行ったり,又は,いわゆるセミナーに参加して自己の向上を図ったりすることをシリアスレジャーといいますが,このシリアスレジャーが注目されてきています。
 その話を最近若い学生たちとしていますと,彼らによく言われるのですが,「今頃何やっているのですか」と。「何で?」と聞き返しますと,「レジャーと言うというからには,ワークとレジャーを分けていますよね。ワーク・ライフ・バランスというのだけれども,ワークとライフを分けていますよね。ただ,私たちの感覚ですと,仕事そのものが社会貢献につながったり,仕事そのものが自己啓発や自己向上につながったりしていかないと魅力を感じなくなってきている」というのです。その意味ではシリアスレジャーとワークとを分けるのではなくて,むしろ「暮らしごと」なのだというか,仕事することそのものが生活全体の在り方に関わっているし,生活を楽しむことが仕事でもあるのだみたいな形での感覚になっているのだと思います。
 そこで大事になってくるのが,自己決定ができるということなのだと思うのです。そうなってくると,子育てといったことも含めて,長時間労働で苦しむということではなくて,むしろ自分で自分の日常生活の,時間の在り方も決められるし,働き方も決めていける。そして,社会にも役立っているし,きっちりと自分の家族や子供を育てることができる。こういうような生活の在り方を求めているのではないかと思いますし,若い彼らからこのような気持ちを吐露されることが多くなっています。そういう意味では,自分の人生が自分のものになっていく,自分のものとして還(かえ)ってくるという,そうしたものがやはり教育といったこととの関わりの中で捉えられてくる必要があるのではないかと思うのです。
 そうしますと,例えば,随分古い話ですけれども,戦後の社会教育の基盤をつくってきた寺中作雄とか鈴木健次郎が言っていたのが,社会教育は社会の地下水脈であるということが改めて意味をもってくるように思います。普通は気づかないけれども,ないと困る。さらに,寺中が言っているのは,私たちが社会教育を通して育成する人というのは,「社会我」という言い方を彼はしていましたが,社会の中に自分を見いだして,自分の中に社会を見いだすことができるような市民である。こういう市民を社会教育は育成するのだと言っていたのです。そうしたようなことが,今回の計画には明確には書かれていませんけれども,例えば資料3の「誰一人取り残さず」のこの真ん中の,オレンジ色の四角の下に,「人生100年時代に複線化する生涯にわたって学び続ける学習者」ということにおいて書かれていて,この「学習者」が新しい方向性としてこれから生きてくるのではないかと受け止めております。
 そういう意味では,今回この第4期の振興基本計画ができて,ウェルビーイングをベースにしつつ,新しい社会をつくって担っていく人を育成するという方向性が出てきた。少し気が早いですけれども,それを更に例えば5年後の第5期につなげるとすれば,例えば社会と教育の在り方をきっちりと捉えつつ,新しい社会を学び続けながらつくっていく人,つまり当事者をどう考えるかといったようなことにも,これからつながっていくのではないかと受け止めております。そういう意味ではとても重要な,そして,社会の転換期において必要とされるような教育振興基本計画になったのではないかと思っております。とても感謝しております。
 少し長くなりましたけれども,以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。もともと新しい教育基本法制定のときに人生100年時代の概念を入れて,生涯学習と社会教育を強く打ち出したことが非常に特徴的だったと思います。この第3期の教育振興基本計画期間でそれが非常に深化したと受け止めておりまして,牧野委員はじめ,生涯学習分科会の皆様には本当に力強い審議をしていただいたと感謝申し上げます。今回の答申案の中にもそれが力強くいろいろなところに入っていると思います。是非この具体化に向けてまたお力添えいただけたらと思います。ありがとうございました。
 杉村委員,お願いいたします。
【杉村委員】  杉村でございます。14回にわたり続いてきました委員会も,今日が最終回ということで,所感を述べさせていただきます。
 まず,本日,改めて事務局からの御説明を伺い,また,資料3にまとめられている図を眺めながら,これまで皆さまとともに検討してきたことのいろいろな場面を感慨深く思い起こさせていただいておりました。昨今,教育の世界は,特に競争やあるいは新自由主義的な効率を追い求める動きが多い中で,今回のこの答申の一番の特徴は,一人一人に視点を当て,そして,まなざしを持って学びを見詰め続けたという点にあると思います。ただ今,牧野先生がおっしゃったとおりのことですけれども,子供たちもですし,あるいは大人たちも含めて,一人一人の主体的な学びについて一生懸命皆さんで考えて,それをまとめ上げた答申だということを改めて感慨深く思っております。その意味では,ウェルビーイングと持続可能な社会の創り手という2つの柱を据えていただけたことは本当に大きな意味をもつと思っております。
 もう一点は,これも先ほど他の委員の先生方がおっしゃっておりましたとおり,今回の中央教育審議会の部会は,事務局のすばらしい御努力によって,様々な対話がたくさん進んだ部会であったと思います。正直申しまして,初回の会合に参加させていただいたとき,この人数でどのように審議が進むのだろうかと思っておりました。しかしながら,毎回,事務局より複数回にわたって事前の説明会をしていただいたおかげで,内容や議論すべきポイントもよく分かりましたし,何より委員の先生方と本当にいろいろとお話しする機会が増え,私はこれこそ正に,この答申にも盛り込まれたように,主体的な対話を重視した,議論の尽くし方であったと思います。
この流れを止めることなく,この第4期の教育振興基本計画が,今後,各自治体や様々な機関,団体等いろいろなところで実施されるときも,対話を重視していくことができればと思いました。今回,部会と並行して行われたユース政策モニターもそうですし,パブリックコメントもそうですし,あとは,文部科学省のジキコンの皆さんがお仕事の傍ら一生懸命考えてくださったアイデア等も私たちの心に深く響きました。いずれも皆さん,対話と,それから,もう一つあえて申し上げれば,この答申案の中にも出てまいりますが,連帯や協働ということでしょうか。そのことを大事にしておられたように思います。これらのキーワードを私自身も心に留(と)めて今後の自分の研究や教育活動にも生かしていきたいと思っています。
 最後になりますが,連帯と協働ということについて,国際教育学,比較教育学を専門にしております立場から申し上げますと,これまでも何度か言及させていただきましたが,現在,2050年までを視野に入れた教育の未来国際委員会のレポートが国際社会で大きく議論されています。日本もこれに大きく貢献していますけれども,そこで一つ言われているのがやはり連帯とか協働,対話や連携ということであるように思います。今回の教育振興基本計画は,コロナ禍の中で,しかもウクライナ紛争を始め,世界でいろいろな紛争や,対立が多発している中で,議論され,まとめあげられました。今日ほど,皆さんで協力して対話でネットワークをつくることが大事な時期はないように思います。同時に,そのことが今回の答申案では丁寧に盛り込まれたように思います。これまでの一連の御議論に対しまして,渡邉部会長はじめ事務局の皆様や委員の先生方の御尽力や御努力に感謝を込めてお礼申し上げますとともに,皆さんでまた更に共に育てていくことができるような答申として引き続き見守らせていただくことができればと思います。本当にありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。恐らく各省庁を見ても,これだけの関係先の多い審議会,あるいはパブコメも,1,000を超えて寄せられるというものはないのではないかと思います。そういったことに対応いただいた事務局には,今頂いたお褒めの言葉のとおり,御尽力ありがとうございました。
 それから,世界との関係性のところでおっしゃっていただいたように,ウェルビーイングもそうですが,協調的要素や連帯の要素,バランス・アンド・ハーモニーの日本発の調和と協調という概念は確かに今の世界には絶対必要であり,御意見のとおりだと思います。ありがとうございました。
 松浦委員,お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。本当に皆さんおっしゃるように,手厚い事務局のサポートと,それを裏づけにして,皆さん様々な観点から御意見を交わされてとても勉強になりましたし,まだまだ考えなければならないことがたくさんあるのだなということがよく分かりました。
 ずっと最初から,もう余り最近は強く強調はされないほど浸透したのだと思うのですが,今回の振興基本計画では,初等中等教育という段階の区別とか,あるいは学校教育,家庭,社会,生涯学習という,そういう領域の別を超えて各パートをつないでいくという,部会長のリーダーシップの下でそういう議論が進められていって,私個人的には,研究者としては高等教育が専門になり,自分の職務としても大学の経営に関わっていて,どうしても大学のことしか頭になかったものが,今回この1年間様々な御意見に触れる中で,やはり大学の問題を考えるにしても,広く改めて教育全体の視野の中で考えていかなければならないのだなということを勉強させていただきました。
 1年間こういう丁寧に,皆さんもおっしゃっていましたように,事前説明から始まって,そして,ハイブリッドで開催していただけたということも,会議の前後での様々な意見の交換もできましたので,とても貴重だったかと思います。この部会は直接参加の機会も与えていただいたことを,御準備等大変だったとは思うのですが,とても感謝しております。
 それで,こういう形で集中的な審議でこの立派な答申案がまとまったわけですが,私としてはやはりここからが始まりなのかなと思っております。特に見え消し版だと28ページから項目が立てられている,今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方ということで,この計画が計画だけに終わらないような形で,今後もちろん自治体や各パート,行政のパートでも,この評価とか投資の成果がどういう状況にあるのかということをやはり継続的に確認していくことが必要であると考えます。
 この答申案としては当然そうだと思うのですが,行政中心で点検や評価を進めていくというふうにも取れなくもないとは思うのですけれども,もっと広く,せっかくここをまとめるまでに様々な御意見を頂いてここまでまとまったわけですので,計画の遂行に関わる評価とか議論,点検に関しても,行政を超えた,また何か広い意見聴取や意見交換の場を設けていただけると,この計画,私どもが1年間議論をしてきた思いが実際の現場に浸透していけるのかなと思った次第であります。どうもありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。最初におっしゃっていただいたように,今回の答申案は,従来縦に分かれていたものを課題ごとに横につないでいったものです。概要版を整理したときに,これを平面図に落とすのは難しく,立体的なのですよねという話をさせていただいたと思いますが,まさしくこの答申では,いろいろなものが関係しながら形成されているということが非常に色濃く出たのではないかと思います。
 逆に言うと,学校やアカデミアは閉ざされたものではなくて,社会や経済界との関係の中で,開かれた学校,開かれた学問体系ということではないかと思いました。ただ,これは,おっしゃっていただいたようにどう実現するのかという,フォローアップの在り方が重要で,そこは是非行政に期待したいと思います。よろしくお願いします。
 では,黒沢委員,お願いいたします。
【黒沢委員】  黒沢です。いつもオンラインではお会いしていますけれども,こうやって本日参加している皆さんの顔をみるとやはり委員をやってよかったなと感じます。改めて事務局の皆さん,本当にありがとうございました。あわせて,部会長もすばらしいリーダーシップを発揮されていて,これだけよく皆さんの意見をまとめられているなというのは本当に感心しました。人生の先輩としても,こうありたいなと思ったところです。
 私が部会の委員として参加し一番感じたのは誰一人取り残さないというところになります。やはり不登校特例校の校長をやっていて本校の子供たちを見ていると,今回のキーワードであるウェルビーイングということからはとても遠い位置にいるように思える子がとても多いことです。この子たちにどうウェルビーイングを届けるのだろうなというのを実は会議が進むにつれて僕の考えの中で自問自答しながら今日14回を迎えたところです。
 やはり不登校の子供たちをどう支援していくというところは非常に守備範囲が広いテーマと思っています,なので,不登校の支援策などについては今後も継続していただきたいと思います。併せて次年度以降もいろいろなところから意見を集めたり,あるいは実践事例なんかも集めたりしながら,継続的に支援の手を手厚くしていく,あるいはもう少し厚くしていくというかな,考え方をぐっと厚くしていくということが必要になるのではと思います。この会議は今回で終わりますけれども,不登校への対策や検討に関しては今後とも何か機会をつくっていただいただけるとなお良いのではないかなと思った次第です。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。おっしゃっていただいたように,今回は誰一人取り残さず,全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現が非常に大きな位置づけになったと思います。多様性,公平・公正,包摂性,DE&Iといった言葉を今回入れたのも,そうしたものをより強くするためだったと思います。ありがとうございます。
 それでは,清原副部会長,お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原です。私も,今日の14回目まで,資料1にありますように,委員の皆様の御意見,そして,関係団体の御意見,パブリックコメントの御意見などを細大漏らさず反映をしていただいた答申案を検討することを本当に誇りに思います。
 例えば,ということで一つ申し上げます。9ページの「2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成」というところに補強をしてくださいました。特に,「一人一人のウェルビーイングを実現していくためには,この社会を持続的に発展させていかなければならない。特に,我が国においては,少子化・人口減少が著しく,将来にわたって『財政や社会保障などの社会制度を持続可能なものとし』,現在の経済水準を維持しつつ,活力あふれる社会を実現していくためには,一人一人の生産性向上と多様な人材の社会参画を促進する必要がある」とあります。
 ここに「財政や社会保障などの社会制度を持続可能なものとし」と挿入したことの意義でございますが,先ほど松浦委員も御指摘されました,28ページ以降に明記されている,「今後の教育政策の遂行に当たっての評価」だけではなくて,「投資等の在り方」について今回はしっかりと明記をしています。だからこそ,この9ページの挿入がしっかりできたのだというふうに思います。正に「教育政策の持続的な改善のためには,社会全体の経済的な安定,財政の安定がなければなりません」ので,「教育と社会・経済・財政の好循環」をきちんと意識してこの計画は立てていますということを言えるということは,極めて重要なこの答申の柱の一つではないかなと受け止めています。
 こういうことがここの最後のところまでにできたというこの間の経過を振り返りますと,昨年4月以降,令和4(2022)年度がスタートした直後の春,私たち30名は委員として新しい教育振興計画について検討するという「ミッション(mission)」を頂きました。しかし,多くの委員の皆様がおっしゃいましたように,委員が30名と多数でございますので,どのように議論ができるかなと少し,悩むほどではないにしても,遠慮があったり,少しタイミングをどうつかもうかなと思っていたところ,渡邉部会長のリードの下,私たちが検討する際に,事前の説明会を事務局が実施していただきました。また,最初の頃は,30名が一度に審議するのではなくて,半数ずつグループを分けてそれぞれ個別のテーマについて議論ができるようにしていただいたので,相対的に少人数で意見交換ができる場をつくっていただきました。そういうことをすることによって,私たち委員の「パッション(Passion)」が高まってきて,「ミッションをパッションに変えてきた」のではないかと思います。あわせて,関係団体の皆様や,あるいはユース政策モニター,ユースラウンドテーブルというこども・若者も含めた皆様との「コミュニケーション(communication)」が,委員間だけではなくて進んだと思います。
 そして,何よりも,この間,実は藤原総合教育政策局長から藤江総合教育政策局長に異動があり,佐藤政策課長から森友政策課長に異動があったのですが,そんなことは何のその,「ふじ」という言葉をつけさせていただきますと,「不死身(ふじみ)」の事務局が,池田高等教育局長の「行け行け」という,そういう応援によって,本当に「不死身の事務局体制」を築いていただいてきました。事前の説明会は1回につき2回,3回実施するということで,私たち委員の都合を尊重していただきましたし,本番にも私たちが遠慮なく意見をいう雰囲気をつくっていただきました。
 そこで,「これからが大事」と皆様が異口同音におっしゃっている気持ちに私も大いに共感いたします。今後の取り組みには,「アクション(action)」とか「エバリュエーション(evaluation)」とか,また「ション(tion)」がつくわけでございますが,「パブリック・リレーションズ(public  relations)」というのがやはり大事なのかなと思います。先ほど「動画も作ったらよいのではないか」という御提案もあり,私も今は文字だけではなくて動画も必要だと思っておりまして,この見通しは後ほど事務局にお答えをいただければと思っているのです。やはりこども・若者に届いてほしい,学習者本人に届いてほしいです。そして,計画というのは何か上から降ってくるものではなくて,正に地に足のついた足元から学習者のためにもたらされるもので,牧野先生も学習者という言葉を言っていただいたように,やはり学ぶ主体が行動の主体であり,社会のために反映する「創造的な創り手」が生み出されていくと信じています。「パブリックリレーションズ」を行政の担い手である地方公共団体,自治体に伝えていただくには,もう本当にいろいろな手法による発信が必要であると思います。
 先ほど渡邉部会長が,「これからは私たちが伝道師となってウェルビーイングのことや計画のことを伝えていきましょう」と呼びかけていただいたことを受け止めたいと思いますし,ミッションをパッションに変えてきた私たちですから,このコミュニケーションの基盤の上に成り立った教育振興基本計画をきっちりとアクションに変えていきたいという決意を述べさせていただきます。どうもありがとうございます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。前回,資料編の32ページの,ウェルビーイングの図で,子供・若者の位置を,学校側からもう少し社会に出したらどうかという御指摘がありましたが,今の御意見も聞きながら,確かに学校という閉ざされたものではなくて,パブリックリレーションという言葉を使われましたように,社会や家庭との関係性で考えるウェルビーイングという視点も含めて今回議論が進んだのは非常によかったなと思いました。御意見のとおりだと思います。
 教育投資の関係では,文科省と学校,学校と社会というものがどう人への投資によって好循環になっていくのか,そここそが問われるのだろうと思います。やはり起点としては,人への投資がないとなかなか好循環にならないので,まさしくこれからの頑張りどころだと思います。是非その好循環ができるように,またお力添えいただきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは,清水信一委員,お願いいたします。
【清水(信)委員】  ありがとうございます。本当に先生方,御苦労さまでした。私,14回部会に出させていただいて,本当に勉強になりました。特に教育行政の現場の方のお話,また,大学で教育学について日々研究されている先生方のお話,どうしても私は現場の人間なものですから,視野が狭かったなとつくづく反省しているところであります。
 いよいよ計画が実行に移されるわけですけれども,特に個人的には,共生社会の実現,これは期待でいっぱいであります。一つお願いがございます。誰一人取り残さないというところで,計画を実行する前に,最初に,現状の学校制度の中にある学びの格差を是正していただきたいなと。どこで学びのスタートを切っても同じ条件で学べるようにしていただかないと,やはりウェルビーイングというのは加速していかないのではないかなとつくづく考えております。
 ですから,まず,チェックをしていただいてですね。このチェックの方法はいろいろな方法があると思いますけれども,現行どんな格差があるのか,これは各教育団体に問合せをしていただければ,もうリストアップされたものはそれぞれの団体の中にありますので,それを精査していただいて,しっかり格差を是正していただいて,学びのスタートが全く同じ条件でスタートできるように,これがウェルビーイングの最短距離になっていくのではないかなと思っています。さらに,計画の実現のために,先ほども黒沢先生がおっしゃっていましたが,先進的な取組をしている事例は大いに現場に出していただいて,やはり現場の先生がその情報の中から,各学校現場の中で実行に向けた加速ができるのではないかなと思っています。
 本当に私自身,勉強させていただいた部会でありました。本当にありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。格差の指摘を頂きました。誰一人取り残さないというこの概念は,まさしくこの問題だと思います。ただ,今,世界の中で教育の格差を考えるときに,やはり公教育を強くしないと,格差問題はなかなか是正しないと思います。そういった意味では,この答申案を含めて,公教育をどう強くするのかという視点を持てたらと思います。ありがとうございました。
 それでは,関委員,お願いいたします。
【関委員】  ありがとうございます。本当に皆さま方の話の中にありましたように,この会議の運営の在り方,今までの流れの中から多くのものを学ばせていただいたような気がいたします。これまでやってきた私どもの審議会等を振り返ってみたときに,これだけいろいろな人の意見がくみ上げられるような場は,なかなか今まで自分たちにはなかったなということを改めて感じ,反省しながらこのすばらしさを感じたものでございます。
 あと,自分は本当にこの会の中でもそうだったのですが,従来の固定観念の下に生涯学習,社会教育のことについて考えてきたなということを改めて感じております。人生100年時代といったときに,どうしても私は高齢者の側(がわ)からだけ見てきたような気がします。これを逆に若者の立ち位置から人生100年を眺めてみれば,渡邊部会長がおっしゃったような,波乱万丈,マルチステージの人生をどうやってチャレンジしながら生きていくか,そのことについて今まで取り扱ってこなかった反省をさせていただきました。
 今回のこの計画の中でも様々な課題,テーマが提示されました。それらを我々は,自分の現場の中で一つ一つを具体的なテーマに置き換えて捉え,市民の皆さん方と語り合っていく,そのような場を増やしていくことが大事であり,それらの積み重ねが結果的に社会をよりよいものにして,みんながウェルビーイングに近づいていく道ではないかなということを改めて思いました。今回の計画を基盤に据え,更に現場の中でできることを,これからどんどん生み出していくような,そういう努力が必要だなということを感じております。
 この教育振興基本計画を第1期から4期まで改めて読ませていただいたのですけれども,過去からのつながりというものがきちんとあることを改めて感じました。社会教育,生涯学習にしても,戦後からの今までの歴史をきちんと踏まえながら,これから先の道を考えていかなければいけないのかなということを教えていただきました。本当に一年間ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。本当におっしゃっていただいたような形で,第1期から次期教育振興基本計画まで全部つながっているのだろうと思いますし,ゆえにこれからが非常に重要な局面となります。どうもありがとうございます。
 それでは,河野委員,次に岩本委員,お願いいたします。
【河野委員】  恐れ入ります。この1年間大変大きな学びをさせていたと思います。私自身も井の中の蛙(かわず)でございました。グローバル教育,英語教育とか国際理解教育,異文化理解教育という,そういうような分野で長年仕事をしてまいりました。その中で,日本の教育を受けた人がなぜグローバルで活躍できないのだろうという大きな課題というか疑問を常に感じながら推進してきたというところがございました。
 今回,ウェルビーイング,日本の教育,日本社会に根差したウェルビーイングということを強く打ち出していただきましたことで,そして,非常に全ての中にインクルーシブな,包摂性という言葉があらゆるところに散りばめられている。これは社会全体で共に生きる力を学ぶということに力を入れていこう。そして,教育がそれを果たす役割が非常に大きい。教育が全体で,幼児教育から大学教育までがそこに力を注ぐのだという,その強い姿勢を今回この1年間多くの先生方のお話を聞きながら感じて,私自身の一番大きな収穫は,留学とか国際理解教育,グローバル教育が特別なものという特別視をされていた,特別な人のみ与えられるというふうに今まで見られていたことが,実はもっと身近なものに捉えられる可能性が非常に高くなってきたなと。だからこそ一生懸命頑張って推進していかないなということを感じた次第です。
 そして,もっとこれを広めていくためにはどうしてもコストがたくさんかかる。モビリティーを伴いますと大きくお金がかかる。一般家庭に負担がかかる異文化理解教育というものを,もっと公のものにして,そして,経済的なサポートも含めて推進をしていけないだろうと改めて感じました。そのようなことで,今後アクションに結びつけるに当たっては,非常に大きな責任を一つの公的なNPO団体,異文化理解を推進するNPO団体として感じました。本当にありがとうございました。お世話になりました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。コロナ禍やグローバルリスクが高まる中で内向き志向がかなり出てきているのではと懸念されていますが,この答申案の検討と並行して,政府の教育未来創造会議でも骨太方針への反映も見据え,グローバル人材育成全体を議論いただいていますので,答申案と合わせて,総合的な対策をこれから打っていただきたいと思います。河野委員のこれからの活躍も期待していますので,是非よろしくお願いします。
 では,岩本委員,お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。本当にここまでありがとうございました。私は,今後に向けてということで大きく3点ほどで,そのうち1つは事務局への質問になります。
 1つ目は,やはりつくった後の周知・発信に関してです。内田委員はじめ,ほかの委員の皆さんもおっしゃっていたみたいに,国際的に発信していくことの重要性はこの計画の中で書かれていますので,英語でというのは当然やるべきだと思いますし,動画で直接,現場だとか,場合によっては子供たちにというのもやった方が絶対いいと思います。その中で,例えばですけれども,動画でただ概要を説明するだけではなかなか伝わっていかない部分が背景だとか含めてあると思いますので,場合によってはオンラインフォーラムみたいな形で,例えば教育とウェルビーイングとか,5つの基本的な方針,グローバル化する社会の人材の育成とか教育のDXとかそれぞれあると思いますので,場合によってはそういったテーマごとに,事務局と場合によってはこの委員の誰かそれに関連する先生とかでやりながら,背景だとか含めてもう少し伝わっていくようなものをオンラインで,また,オンデマンドでも残しながらやっていくというのは大事かなと思います。
 また,オンラインも重要ですけれども,私はやはり対面で意見を聞きながらというのも大事な部分かなと思っています。今後,場合によっては,47都道府県キャラバンではないですけれども,各都道府県で様々な機会を通じて呼んでもらって説明しに行くとか,また,今回委員になられた皆さんは様々な組織の代表というか関係ステークホルダーの代表をされていますので,そういった場でも呼んでいただいて話をするとか,そういったところでしっかりと周知・発信のところまで,この後,策定が終わったらすぐ取りかかれるようにしていくというのが大事じゃないかというのが1点目です。
 2点目がフォローアップに関してです。これも今回つくられた計画の中の29ページ,教育政策の企画・立案段階の最後にこのように書かれています。「状況に応じて柔軟に見直しを行うことができる仕掛けを立案段階で組み込むことが必要である」。ということで,少し質問になるのは,今回,今正に立案段階の最後だと思いますので,今後の見直しだとかフォローアップに向けての仕掛けみたいなものはどのようなイメージを持たれているのかとかがあればということで,もしよければ最後聞かせていただけたらと思っています。
 私自身,この計画,この後で書かれているみたいに,毎年度,政策評価と連動したような形でフォローアップをしていく。その際にステークホルダーの意見聴取と対話ということも今回非常に強く書かれていますので,そういったのもやはり見直しのタイミングで適宜しっかりと行いながら毎年度更新をしていくというような仕掛けが何らかの形で組み込まれていると,事務局も含めて皆さん異動で替わっていきますので,替わってもしっかりとできるようにというところで,今後のイメージがあれば最後に聞かせていただけたらと思っています。というのが2点目です。
 3点目が,今後に向けてこの部分はやはり更に深くしっかりと議論しながら進めていった方がいいと思う,この計画における宿題が,私は教育投資の話だと思います。計画はできたけれどもリソースはない,若しくはまだ足りないという中で,この教育投資のところにも,最後,国民の理解と寄附等の促進というようなところがあるかと思います。ここはやはり書くだけではなくて,私もこれは国民の理解も含めて本当の意味で仕掛けていく。ムーブメントを起こしていって,しっかりと次の計画をつくるときにはさらなる教育投資がしっかりと社会全体での合意のもとで進んでいくように,今からでも私はある種部会を今後つくってでも,教育投資をこの国でいかに確保していくのかと。そのために,国民の理解だとか様々な理解の醸成だとか,若しくは税金だけではなくて寄附等の促進も含めた,教育投資を社会全体で確保すると書かれていますけれども,そのための戦略や具体的な方策を本当に専門性がある方やステークホルダーの方たちなんかも巻き込んでしっかりと議論しながらこの計画の期間に進めていくようなところは是非この後進めていただけるといいなと思っているのが3点目になります。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。行政のこれからの体制について,非常に示唆に富む御指摘だったと思います。周知も非常に重要な御提案です。今いろいろな御提案を頂きましたが,ここにお集まりの委員の皆様は各基本方針の,それぞれの分野のプロフェッショナルでありますから,もし行政でそういった周知の仕組みをつくるとすれば,皆様には,逆に御協力いただくことがあると思いますので,是非お願いします。
 2点目のフォローアップに関する政策評価との関係性については,事務局から今の時点で説明できることがあればお願いします。
【森友総合教育政策局政策課長】  ありがとうございます。フォローアップにつきましては,これは毎年の,予算の仕組みの中で,年度予算でございますので,通常それぞれの予算事業について毎年ちゃんとできたかどうかというのを評価しつつ,翌年の概算要求に向けて検討を行っていくという作業をしております。その中で,特に今回の指標については,比較的多くの指標を盛り込んでいただいているのもございますので,その指標の状況も参考にしながら,しっかり全体としてフォローアップしていければなと思います。
 それから,国民の理解増進の話もございましたけれども,そこについてはおっしゃることはごもっともですし,我々としても取組を進めていきたいと思っておりますけれども,多分,教育全体として非常に投資効果が高いのだというようなことで申し上げるよりも,個別の施策の中でどれだけの効果があるのか。例えばトビタテ!の留学のプランですと,官民,もちろん企業の方々の御協力も強く頂きながらやっておりますので,場面場面でそういうことをしっかり考えながら取組を進めていき,その中で国民の皆様の御理解を頂きながら,そして,寄附は非常に難しい面がありますけれども,そういったことも機運を高めていけたらなと思っております。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。最後の教育投資の話は,文科省単独の問題ではありません。人への投資という形で今,政府全体が動いているので,そういったものに絡めて是非文科省からもしっかり働きかけを頂いて,この答申案の内容が骨太方針等にも盛り込まれ,教育投資に結びつくようにしっかりお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは,元紺谷委員,お願いいたします。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。元紺谷でございます。1年間大変お世話になりました。このような経験をさせていただき感謝申し上げます。
また,今回のこの答申づくりに当たって,事務局の方々の対応に感心しています。どんな小さな声にも,しっかり向き合って拾ってくださり,次の会議にはその意見が何らかの形で反映されておりました。私は,初めて中教審に関わりましたので,これが当たり前という認識でいましたが,先ほどの話では,ここまで丁寧に事前説明会を開くなど,対話ができるような工夫をされている会議はなかったというような話を伺い,とてもいい会議に私は参加させていただいていたのだと嬉(うれ)しく思っております。
 特に,川村調整官は,とにかくどんな僅かなことでもこちらから伝えると,無視はしません。そして,「ありがとうございます」としっかり向き合ってくれて,それが何らかの形で,例えば10ページでは,ウェルビーイングに関して前回の会議が終わった後に入れた情報報を真摯に受け止めていただきまして,皆さんも気になっていた,獲得的と協調的のこの二項対立に行きがちなこの議論を食い止めるための意見も,うまくまとめていただき,更に「バランス」ではなくて「調和と一体」という言葉でここをうまくまとめていただきました。
 当初から私は「ウェルビーイング」というこの片仮名の言葉にすごい抵抗感を持っていました。前にも言いましたように,私は「文部科学省非公認ウェルビーイングアンバサダー」を名のっています。先ほど渡邉部会長から,ウェルビーイングの伝道師というお墨つきを頂きましたので,今日をもって非公認を取りまして公認で行こうと思います。
 このウェルビーイングは,近年は民間企業では取り上げられ始めていますけれども,学校でも実践されているすばらしい先生はいらっしゃいますが,学校現場ではまだ数少ないです。ですから,恐らくこの答申にウェルビーイングの考え方が盛り込まれたことによって,日本においてウェルビーイングが広がっていくきっかけとなると思うので,今年こそがウェルビーイング元年といえるのではないかと思うのです。
 ここで提案というかお願いです。
 5月下旬に,全国の校長が一堂に集まる機会があります。同様の全国規模の集まりが,小学校や中学校でもあります。その会議のときには,必ず文科省の課長級の方々が行政説明をされます。そのときに何百ページもある膨大な資料が配られて,そこに政策が書かれていて,そして,持ち時間がたしか多分20分ぐらいだと思いますけれども,その時間,読み上げ原稿を読み上げるように,すごい早口でバーッと説明されます。
 お願いなのはここからなのですけれども,何人かの課長さんなのですけれども,そういうしゃべり方ではなくて,自分の言葉で,この計画をつくった思いはこうなのだということを語ってくれる方がいました。伝わります。多分ウェルビーイングを説明する部署はないと思うのですけれども,川村調整官がされたらいいと思うのですが,この答申でこのウェルビーイングはこういう思いで,今,日本の教育に入りますということを訴えるようなそんな場面があると,多分,校長に伝わり,校長が学校経営に盛り込むのではないかなというふうに思いまして,一言だけ言わせていただきました。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。文科省にとって大変ヒントになったのではないかと思いますので,是非今後の対応をお願いします。ありがとうございました。
 徳永委員,お願いいたします。
【徳永委員】  今回は委員の方,先生方,そして,事務局の方々と対話を深めることができまして,私も本当に勉強になりました。先ほどほかの委員から意見がありましたけれども,どんな声も拾っていただいたというのが本当に私も感謝の気持ちでいっぱいで,そういった意味で誰も取り残されない計画になったのかなと思いながら聞いておりました。
 これまでの1年間を振り返ったときに,一人一人が当事者意識を持ってこの計画づくりに関われたという,そういう文化をつくってくださったと思っています。こういった文化をこれからこの計画をつくった後に発信をしていって,計画を読んで関わりたいと思う人とか,教育行政だったり,あるいは学校現場の先生方だったり,子供たちが何かしら当事者として一緒につくっていきたいと思えるような仕掛けづくりといいますか,そういったことを今後やっていく必要があるのだろうと,この1年間を振り返ってみて思いました。
 そういった意味で,先ほどの先生方から出ていたような意見交換の場とか,発信だけではなくて,いろいろな人たちと子供も含めて対話ができるような,フォーラムなのか,オンラインのイベントなのか,実際に対面で会って話をする機会なのか,いろいろあると思うのですけれども,もしかしたらそういったことを考えるワーキンググループみたいなものがあると,何かこの次につながるのかなと改めて思いました。
 私個人的には,今回の計画で,概要の真ん中に誰一人取り残さないということ,そして,共生社会,多様性,公平・公正,包摂性というのが入っているということが非常に画期的ではないかと思っています。子供の貧困とかヤングケアラーの問題とか障害のある子供や外国につながる子供など忘れられがちな子供たちが真ん中にいて,そういった子供たちも包摂されるような,そして,そういう子供たちのウェルビーイングを目指す計画であるということがとても重要だと思いました。
 個人的には,外国につながる子供たちの研究や実践をやっているのですけれども,そういった子供たちを支援の対象だけではなくて,エンパワーメントの視点,強みとか長所,その子供たちが活躍できるような教育とか社会をつくっていくという,そういった新しい視点も入っていることもすごく重要なのではないかと思います。その点を含めて是非私も,どういう形か分かりませんけれども,何か発信だったりとか,もっとこの計画の魅力だったり,これを実際実行していくというところで関わっていければと思っています。
 以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。恐らくこれは中教審の組織自体の構えにも関係すると思いますし,行政の体制と教育現場との関係性の話でもあると思いますので,是非検討していただけたらと思います。
 それでは,吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  どうもありがとうございます。もう皆さんがおっしゃったことで尽きていますが,私からも一言お礼を申し上げたいと存じます。
 皆さんがおっしゃっているとおり,何といっても印象的だったのが会議運営です。高等教育では,実質的な学修時間の確保ということが盛んに言われております。予習,復習の充実,つまり授業に出るだけじゃなくてちゃんと予習をしなさいと。それで言うと,この会議ぐらい予習時間がちゃんと確保されてきた会議はないですね。川村さんたちの御努力の成果ですが,私たちはしっかり実質的学修時間を確保してきた。こういうふうに大学の教育もなっていくのがいいのだろうなと思いました。
 それから,今回,ウェルビーイングを軸に立てた大きな効果は,一つには教育の概念を広げたことだと思います。つまり,教育は先生が学生に教えることだというところから始まって,そうではないでしょう,双方向でしょうということで,学びが大切だという議論がずっとあった。ウェルビーイングは,どちらかというともう一つ外側なのですよね。だから,学校の教室における学びだけでなく,生涯学習,社会教育,いろいろなものをつなぐ議論があったわけですけれども,更にコミュニティであったり,人生だったり,そういくことまで全体を考えないと始まらないのが現代です。
 そして,この先ですけれども,もちろん先ほど清原委員がおっしゃったパブリックリレーションズは非常に重要なのですけれども,それに加えて幾つかやはり先にあるべき課題があると感じております。一つは,まずもって政策を実現していく財政的な基盤整備ですが,これは文科省予算ももちろんですけれども,他省庁,厚労省や国交省,いろいろな省庁で関連する予算枠がありますよね。つまり,ウェルビーイングは,文科省予算だけの話ではなくなると思います。またそこが,今回の計画で「ウェルビーイング」を正面に掲げる大きな戦略的な意味です。ですから,どうやって他省庁も巻き込んで大きな財務的基盤を築いていくかということは,私はよく分かりませんけれども,これから文科省の方々が本気でお考えにならなければいけない重要な課題ですね。
 他方,今回の話は地域の問題と非常に密着しますので,まちづくり・村づくり,地方創生,コミュニティービルディング,こういったところを教育にどう循環させていくかというか,相乗的な関係を築いていくかということが決定的に重要になってきます。
 最後に,私はずっと日本社会の単線的年齢主義を壊さないとどうにもならないということを言い続けてまいりました。人生を複線化すると書いていただきましたが,人生がマルチステージになって,みんなが当たり前のように人生を複線的に開いていく,その中でウェルビーイングを実現するという,そういう方向の議論を引き続きしていっていただきたいと思っております。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。基盤整備のところでお話が出た,ウェルビーイングは恐らく省庁横断的にこれから検討が進んでいくと思います。その中で文科省がこういう形でかなり強くウェルビーイングを押し出す省庁となりますので,是非他省庁をむしろ刺激していただいて,横断的なウェルビーイングの検討体制を立ち上げていただけたらと思いました。地域,コミュニティーとの関係性や,年齢主義の課題も,個別最適な学びの延長として再検討が進むだろうと思います。ただ,個別最適を進めないことには実現できませんので,もう少し検討を進めてからということだろうと思います。ありがとうございました。
 それでは,堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】  堀田でございます。本日は現地に伺えずに大変申し訳ございません。また,このたびは大変すばらしい答申案をおまとめいただきまして,事務局の皆様には大変ありがとうございました。委員の皆様の様々なお立場,御専門の分野からの御発言も,私,大変勉強なりましたが,何より渡邉部会長が大きな視野で牽引していただいたことに心に感謝申し上げたいと思います。
 私の専門分野の,情報化の部分につきましては,政策目標としては11番や12番のところに具体的に書いていただきました。基盤整備と,あと,人材育成の観点でやっていただきましたが,これはもちろん不可分でございます。特に人材育成については,データサイエンス等の人材育成が不足している,AI人材などの話もありますが,一方で広く全ての国民に身につけていただくリテラシーといったらいいでしょうか,この辺のこととGIGAの端末が導入されたことはとても深い関係があると私は認識しています。現に,2018年のPISA調査の,GIGAの前ですけれども,ICTを使って学ぶという経験とか,あるいはICTを使ってCBT等でテストに回答するみたいなそういう力は,家庭資本の指標で分けると,家庭資本に見事に影響してしまっているという現実がありました。義務教育段階でGIGAの端末が入って,全ての子にこういう学習経験を保障するということになったということ自体が,それこそ全ての国民のウェルビーイングに近づく第一歩になると私は認識しております。本当にありがとうございました。
 課題が一つあると思っています。これはもう皆さんがずっとおっしゃったパブリックリレーションズとか,これからのフォローアップの話になると思いますが,教育にかかわらずですけれども,世の中全般,クラウドの時代になって,様々な分野でDXが進んでいます。しかし,学校では,世間並みの進み方から見れば大変遅い現実があると私は思っております。特にクラウドの新しいいろいろな機能に対する警戒心が非常に強くて,昔から存在する機能以外は利用を禁止してしまったり,使えないように設定してしまったりする傾向があります。
 中教審がこうやってオンラインで普通に実施される時代に,学校現場の先生方の働き方や働きやすさを考えると,在校で研修を受けられるとか,必要に応じて在宅で勤務するとか,校長先生の校長会も何ならオンラインで大概のことはできるとか,常に必要なデータが共有されているとか,そういうようなことは柔軟にできるはずなのだけれども,実際はネットワークの管理の関係で,学校に行かないとデータにアクセスできないとか,つまり,学校にいないと仕事ができないので,家に帰れない。本当は子供を抱っこしながら片付けたいみたいなことがあるかもしれないのに,それも柔軟にできないという,そういう現実があります。働きやすいとは言えません。
 子供たちの学習も,クラウドをうまく活用すれば互いの学びの状況は可視化されますし,学びやすくなりますし,一人一人の個性も際立ってきますし,協働的な学びも起こりやすくなりますし,もっと言うと,学校外の方々との連携,あるいは学校外からの支援も入れやすくなるのですけれども,外の人との交信は禁止みたいな,そういうふうになっている自治体も残念ながらたくさんあります。
 こういう大変残念な制約,新しい考え方を生かさない過剰な制約とか制限は,一般には教育委員会がかけていたり,あるいは教育委員会はそこを崩そうとしていても,自治体の情報政策課のようなポジションの方々が,学校現場の学習支援の仕方とか先生の働き方とかということを余り承知せずに,市役所あるいは町役場の戸籍情報を守るような強いセキュリティーを学校にも施しているみたいなときがあります。今の話で分かるように,端末を入れるとかいう,ネットワークを高速にするということももちろん大事だけれども,これはインフラ整備なので,単純に物を入れるという話ではなくて,新しい技術でDXして合理的な仕組みにしていくのだという,そういう考え方を今後も広く周知していくことが必要かと思います。
 私からの発言は以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。一貫して教育DXを推進していただく立場からお力添えを頂き本当にありがとうございます。感謝しております。今回の不易流行という言葉の中の,流行(りゅうこう)の大きな要素はこの教育DXですが,お話しいただいたように,DXに対する抵抗感みたいなものは非常に強いのだろうと思います。ただ,子供たちは,教育委員会がどうあろうと,デジタルネーティブに育っていくと思いますので,教育委員会や自治体の考え方自体を変えていかないと,子供たちに追い越されてしまうのではないかと考えます。したがって,今回,教育DXの推進を非常に強い要素として取り上げていたのは,そういう意味でも大変重要になると思います。御指摘のとおり,まだ教育DXの第1段階ですので,第3段階に持っていくまでにまだまだいろいろな対策が必要になります。堀田委員には引き続きいろいろとお世話になると思いますが,よろしくお願いします。ありがとうございます。
 それでは,安孫子委員,お願いいたします。
【安孫子委員】  ありがとうございます。この1年間,本当に教育のプロの,諸先生方の熱意あふれる議論から多くを学ばせていただきましたことを心から感謝申し上げます。ウェルビーイングの人生をこれから追い求めていく時代に入るのだなということも大変誇らしく感じております。人生の豊かさは青壮年期で実を結ぶと考えますと,やはり正に仕事の取り組み方や,又は社会への貢献の仕方というふうにつながっていくのだと思います。ますます学校教育が,社会に出た後の仕事や社会貢献というパーパスにどうつながっていくかというところ,ここにおいて少しでも尽力できればと思っております。
 一つ懸念事項がございます。44ページにあるように,指標としてこれから示していって,到達度を皆で共有していくような考え方に賛同しますが,その中でも特にウェルビーイングという指標は,非常に複数の価値の集大成であると思いまして,それが定数化できるということに非常に難しさも感じております。今後,こういったビジョン達成に向かって近づいているということを全員が実感できるように,今後のディテールの協議,これをとても期待しているというところであります。
 私からは以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。応援していただいた気がいたします。
 それでは,清水敬介委員,お願いいたします。
【清水(敬)委員】  ありがとうございます。まず,1年間この教育振興基本計画部会という大変重要な部会に参加をさせていただき,また,各専門の先生方の貴重な御意見をたくさん聞かせていただきまして大変勉強になりました。ありがとうございました。
 私は,立場的に保護者の代表という部分での立場で参画をさせていただいておりまして,様々な先生方の専門的なお話を聞くたびに,なかなかどのような発言をしていいかというところで非常に悩みながらというところではありましたけれども,私は今回,事務局の皆様方が取りまとめていただいた,今後5年間の教育政策の目標というところの1番から16の目標の中で,当然家庭,地域云々(うんぬん)というところでございますので,目標9も当然重要視して見ておりますし,特に,今日はその中ではなくて,目標13の経済的状況というところの教育費の負担の軽減に向けた経済的支援というところについて,非常にここをしっかり取り組んでいただき頂きたいなと強く思います。
 今日の会議の最初に御発言をされました村岡委員がおっしゃったように,とにもかくにも,今後これを確実に実施させるためには,どうしても予算が必要になってくると思います。是非これから先,この予算の措置,また確保をしっかりとしていただいて,いろいろな方々が同一,同じ条件で教育が受けられるような,そのような時代になるように是非お願いをしたいと思います。
 以上,簡単ではございますけれども,私の意見です。ありがとうございました。大変お世話になりました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。これからもこの要素は非常に重要だと思います。ありがとうございます。
 それでは,川口委員,お願いいたします。
【川口委員】  今日はそちらに伺うことができず,最後まで申し訳ございません。また,遅れての参加になってしまいまして,今から申し上げることがほかの委員の御発言と重なってしまうかもしれなくて恐縮なのですけれども,お許しください。
 今回参加させていただいて,様々な分野の先生方の,特に現場の先生方の御意見を伺うことができて,非常に勉強になりました。本当にありがとうございました。また,何人かの先生方からもう既に御発言ありましたけれども,非常にユニークな会議回しで,人数が多い会議であるにもかかわらず,実質的な議論をさせていただく機会も多かったのかなと思います。どうも本当にありがとうございました。
 それで,私が思うのは,この後のフォローアップがやはり大事だということでございます。政府全体でエビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングを進めていくということが決まっていると思うのですけれども,その中で重要だというふうに言われているのが,アジャイル型のEBPMをやるのだと。状況が変わっていくので,それに合わせて,芯の部分はずらさないのだけれども,細かい部分では調整をしながら目標を達成していくという,そういうことなのかなと思っております。
 それで,行政の無謬(むびゅう)性神話から抜け出すということも政府全体の方針として掲げられていると思いますので,今回の計画は非常によく練られたものだと思うのですけれども,状況が変わっていくということはやはりあると思うのです。例えばなのですけれども,この議論を始めたときはChatGPTとかはなくて,私自身は,もう既にAIの専門家はそういうことは分かっていたのかもしれないのですけれども,やはりああいうものが出てくると,例えば大学教育でどういうことを教えるべきなのかということについてやはり深く考えさせられる契機になりまして,そういったものがこの1年間の議論をしている中でも出てくるというような状況の変化というのはやはりあると思うのですね。
 ですので,ここで合意した基本的な精神というのは当然守られて,5年間続けられていくべきことだと思うのですけれども,やはり折々の機会にそれをフォローして,どの程度達成されているのか,あるいはその目標自体が時代に合ったものなのかということも考えながら,次の5年間を運営していくというのが大切なのかなというふうに僣越ながら思いました。それで,次期の基本計画を決めるときには,今期の基本計画がどの程度達成されて,どこが難しかったのかというところも振り返りながら議論が始められるようになっているとよいなと思います。本当にありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。今回の答申案も,行政改革推進会議のアジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループの考え方を入れており,御意見のような形で,政策評価をこれから進めていくときにはこのアジャイル型の政策形成・評価で変化に対応しながら見直していくというような趣旨が記載されました。行政でも今の御意見を参考にしていただければと思います。ありがとうございました。
では,永田副部会長,お願いいたします。
【永田副部会長】  ありがとうございます。今回すばらしいまとめになったので事務方がすごく褒められていましたが,何といってもやはり渡邉部会長の手腕だと思います。1回目か2回目でウェルビーイングを主題にするというのを決めていただいたがために,これで一本筋が通った話合いになったのだと。不調和の部分があってもいいのです。とにかくそこに向かって議論をしているという過程があったので多分うまくまとまった。本当に部会長の労は大と思います。
 事務局がよくやっていただいたといっても,僕は言っても言っても1回も絶対に直してもらえないのが1個だけあって。実はこれを読む人が誰かを考えているうちに,社会やいろいろなサイエンスのセクター,財務省も,あるいは学校の先生,いろいろあるのだけれど,学生や生徒に向かって語りかけていないなという,それが最後まで僕,致命的に響いています。
 どういうところかというと,10ページのウェルビーイングの議論はついにいい感じになって,一番,こういうふうになるといいなという形になっているのですけれども,9ページのところにいいことが書いてあるのです。ところが,未来に向けて自らが社会の創り手となる,そういうことを頑張ってやっていきましょうと書いてあるのですけれども,何でウェルビーイングの創り手にはならないのかな。せっかくウェルビーイングのこと言っているんだったら,未来の社会の創り手,それは,だから,ウェルビーイングがかなった未来だというふうにとって一応納得しているのですけれども,あなた方がウェルビーイングの担い手になるのだよというコメントが読んですぐ分かるようなその1行があってもいいのではないか。
 そうすると,どうしても受け身になってしまいがちな,やはりこれは政策ですから,学生や生徒やその人たちがその現場にどれだけ入れるかは別としても,僕らからこう,こういうふうにやったらうまくいくよ,いくよとは言っているのだけれども,自分がこの計画を通じてその未来の担い手になるという自負を持たせたいのですね。それが1か所欠けていて,探したのです,いろいろ文章。未来をつくったりするのですけれども,ウェルビーイングはつくってくれないですね,今のこの習った子たちが。文章ではそうなっていないのです。それが少しだけ不満で,今日最後の最後でも,聞いてもらえる事務方だったら聞いてもらえるかなと思いながら言っています。
 それともう一つ僕が心配しているのは,これを何とか実行したいわけですよね。それで最後でいつも言っていて,これ,お金何とかしなくちゃいけないしという話になるのですけれども,煮詰めて考えていくうちにこういう感じになりました。つまり,我が国の国民は十分に成熟した民主国家の国民かどうかという問題にほぼ行き着いてしまいました。というのは,これは財務省とやり合うと,僕らとしては税制改正してくれと。もっと個人が自由に教育にお金を出せるようにすればいい。実際アメリカみたいに税制控除100%みたいなところもあるので,税金を払うのも寄附するのも同じ,等価なわけですね。そこにはチョイスがあるわけです。しかし,財務省はきっと信用していないのです,国民を。だから,自分たちが全部集めてうまく分配しますという多分国の方針なのだと思うのです。それを財務省に文句を言ってもしょうがないので,僕らの問題もあって,我々が成熟した国民として,教育をどこに置いてどういうふうに支えるかというふうに本気で思っているかどうか。それが税制改正につながるのだろうと思います。
 それが先ほど森友さんが言った,大きな議論と,それからもう一つ,局所の具体的な議論というのですけれども,ここはやはり大きな議論しなければいけないと思っていて,そうやって何回も何回も考えていくうちにだんだん,少し待ってよと。財務省を悪者にするばかりでは駄目だなと思って,僕にとっては悪者なのですけれども,もっとお金が欲しいなと,いや,それ,しかし,違うのかなと。もっと僕らが成熟した社会の担い手として,教育をどう見るかというのがまだ十分国民全ての人に浸透していないのだろうなと。
 だとすると,もうその頃は僕は引退しているのでしょうけれども,この次の基本計画のときには,もっとまた大きなスタンスで考えてもいいのかなと思いつつ,しかし,よく書けているなと思ったのですけれども,自分の思いだけは1行入っていなくて残念なので,考えてみてくださいというので,いずれにしても短い期間でよくまとまったと思いますし,ただ,いろいろな問題があからさまになって,それをまた,個々人がこうして考えるようなよすがにもなって,大変いい機会を頂いたと思います。どうもありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。今日も大変多くの御意見を頂きました。本当に建設的な御意見だったと思います。ありがとうございました。全体として,御意見を伺って,だいたい答申案という形では御了承いただいているのではないかと理解させていただきました。
 ただ,御意見のあったように,今後この答申案をどう具体化していくのか,フォローアップしていくのか,これは中教審組織全体の次のステップをどうするのかという問題にも関係しますし,行政としてどういうフォローアップ体制を組んでいくのかということにもつながります。今日いろいろな参考になる御意見がありましたから,是非行政で今後の対応について検討をいただけたら有り難いと思います。
 そういったことで,今日の御意見を踏まえて,修正部分については部会長一任とさせていただいて,年度中に行われます中央教育審議会の総会に答申案という形で審議させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。それでは,そのような取扱いとさせていただきます。
 それでは,本日がこの教育振興基本計画部会として審議を行う最後の会ですので,事務局を代表して藤江局長から御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【藤江総合教育政策局長】  ありがとうございます。総合教育政策局長,藤原の後を継いでの藤江でございます。本日はこの計画部会として最後の会ということで,私からお礼を兼ねまして一言御挨拶を申し上げさせていただきます。
 昨年の2月の諮問以来ということで約1年間,コロナ禍でハイブリッドという形ではございましたけれども,計画部会として14回,関係団体ヒアリングやユース政策モニター等も含めれば計17回ということで,皆様大変お忙しい中,密度の濃い精力的な御審議を頂きました。まずは委員の皆様方の御尽力にこの場を借りて心から御礼(おんれい)申し上げます。
 特に,何回も議論を重ねていただきましたが,そのたびごとに新たな視点とか大変深掘りした御意見をいただけて,計画として大変幅広いと同時に奥深いものになったと思いますし,先ほど来もお話が出ていましたけれども,施策の相互間の関係についてもお目配りいただいたので,体系的にも大変整理されたものとしていただき,感謝しております。
 改めまして,本当に渡邉部会長のリーダーシップの下,委員の皆様方の活発な御議論を経て,持続可能な社会の創り手の育成,そして,日本社会に根差したウェルビーイングの向上という,この2つのコンセプトの下,答申案をまとめていただきました。いつも部会長がおっしゃっていただいていますけれども,我が国の教育という大きな船の羅針盤になるものと感じております。
 今後,来月予定されております中教審の総会で答申としてお取りまとめいただくことになるかと思いますけれども,それが取りまとめられますと,次は政府として閣議決定に向けて進めていくことになります。閣議決定に向けましては,部会長からもお話しいただきましたけれども,教育未来創造会議とか,あるいは骨太の方針といった政府内での議論も控えておりますので,それも踏まえまして,この答申案の内容を更に充実したものとして計画としてまとめていきたいと思っております。
 閣議決定後はいよいよ計画の実効性の確保ということが重要になってくると思いますが,特に本日も多くの方々から御意見いただきましたが,まずは十分な発信,周知を図っていくということが重要であると思っております。以前もこの会議でも紹介させていただきましたけれども,文科省内で若手有志によるジキコンというのもさせていただいておりますけれども,このメンバーの協力なども募りながら,御指摘いただきました動画というお話もございましたし,あるいは対話重視ということも頂きました。学生とか生徒ということも頂きましたので,幅広い方々へ様々な手段を尽くして,周知あるいは広報していくように力を入れていきたいと思います。
 また,これも御指摘いただきましたけれども,計画のフォローアップにつきましても,しっかり力を入れていきたいと考えております。委員の先生方におかれましても,それぞれのお立場で計画の周知等への伝道師としてのお力添えをお願いすることがあるかもしれませんけれども,また引き続き,御指導,御鞭撻,御協力のほどお願い申し上げたいと思います。
 以上,簡単ではございますが,改めまして心からの御礼(おんれい)を申し上げて,挨拶に代えさせていただきます。どうも1年間ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 最後に,私からも少しお時間を頂いて御挨拶させていただきます。
 この答申の諮問がなされたのがちょうど1年前でした。令和4(2022)年というは,ちょうど学制の150年の年,明治の学制が始まってちょうど150年でした。この150年をちょうど半分にしたときに,学制から旧教育基本法,戦後の教育基本法が制定されたときがちょうど半分の75年です。そこから2022年というのが75年ですから,大きな節目がこの150年の間にあったと思います。
 前半部は教育の近代化ステージですね。戦後の教育基本法制定からは,これを民主的な,近代化を促進するというようなステージが今日まで続きました。その後半に,非常に重要な教育基本法の改正からのステージがあり,この教育振興基本計画を策定することになったわけですが,特にこの150年を迎えて今の世界情勢を見るときに,歴史的な節目に我々は立っているのだろうと思います。不確実性を表すVUCAの時代とよく言われていますが,まさしく我々はVUCAの時代にこの教育振興基本計画を審議したという,非常に大きな歴史の節目だったと思います。
 第3期の教育振興基本計画の期間は,未来志向型の教育政策の検討期間だったのではないでしょうか。今回の答申案の内容は,第3期の教育振興基本計画期間に出された答申や提言のある意味では集大成の内容になったと思います。この第3期を振り返ってみると,こちらにいらっしゃる大学分科会長の永田副部会長が,高等教育のグランドデザイン答申をまとめていただきました。第3期のスタートを切っていただいたわけですが,これが正に未来志向型の教育改革の道筋をつけていただいた答申だったと思います。その後の大学分科会もこのグランドデザイン答申を具体化する検討を進めていただいたと思います。
 今日はオンラインですが,荒瀬初等中等教育分科会長を中心にして,初等中等教育分科会では「令和の日本型学校教育」の答申をまとめていただきました。これも令和型という,ある意味では未来志向型の教育改革を答申としてまとめていただいたと思います。これに先立って働き方改革の答申もありますし,それから,それらを受けた,「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方答申という,先ほど申しましたように,三位一体の答申を初等中等教育分科会等でまとめていただきました。
 それから,先ほど少し話に出ました改正教育基本法,この中で打ち出されたのが生涯学習という概念です。こちらにいらっしゃる清原生涯学習分科会長を中心にした生涯学習分科会では,非常に重要な位置づけになった生涯学習,社会教育の振興方策という視点で審議をまとめていただきました。
 こうした第3期における答申群というのは,先ほど申し上げたように未来志向型の答申であり,この集大成としての審議が,まさしく皆さんに担っていただいた次期教育振興基本計画です。そういった意味では,歴史の節目に皆様と審議をしたのではないかと思います。
 この答申案のコンセプトである,2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の創り手の育成と,それから,日本社会に根差したウェルビーイングの向上というこの理念は,VUCAの時代だからこそ羅針盤が必要だと考えたときに,まさしくその羅針盤になり得る理念ではないでしょうか。
 そういった点では,何回も申し上げたように,この羅針盤的理念体系というのは,当然日本の教育にとって大変重要であることは間違いありませんし,今のこの世界情勢を見るにつけて,世界にこそこの理念が必要だと思います。皆様から御意見いただいたように,日本国内だけでなくて世界にどう発信していくのかということが大変重要です。
 折しも,この5月には広島サミットがあって,同時並行でG7の富山・金沢教育大臣会合が5月12日から15日に開催される予定です。これはOECDも参加する会議になりますから,日本発のウェルビーイングの理念体系を発信するタイミングとしては絶好の機会になると思います。文部科学省の皆様には,今日いろいろな御意見が出ましたように,そういったところへの発信も含めた期待は大変大きいですので,是非力強く発信をしていただきたいと思います。
 それにつけても,皆様からお褒めを頂いたように,事務局にはこの部会運営や答申案の取りまとめについて多大な御尽力を頂いて,大変な御努力だったと思います。御意見がいろいろとありましたように,関係先ヒアリングは,その関係先の多さに私も驚きます。先ほど申し上げたように,1,000を超すパブリックコメントはほかの省庁では滅多(めった)にないと思いますので,そういったものを取りまとめるお力は大変なものだったと思います。
 ただ,教育行政としては,今までの労力以上にこれからが大変重要な局面に入ります。まず中教審答申としてまとめなければいけませんし,先ほどお話あったように,政府として閣議決定もしていただかなければいけません。是非そういった道筋をしっかりつけていただくことを期待します。そして,この5つの基本方針,それから,16の教育政策,これをアジャイル型で是非実現していっていただけたらと思います。
 最後になりますが,皆様には14回にもわたって,事前会合まで含めて大変な時間を費やしていただきました。いろいろなバックボーンを持たれていて,本当にプロフェッショナルでいつも感心させていただきました。皆様のそういった積み重ねた御努力がこういう形で実ったことに深く御礼(おんれい)を申し上げるとともに,皆様お一人お一人に本当に敬意を表したいと思います。皆様のお話を聞いていて,日本の教育をもっとよくしたいというような熱心な気持ちが本当にいつも伝わってまいります。恐らくこれからこの答申のフォローアップ体制の中でも,文科省から皆様にまた御協力お願いする機会があるのではないかと思いますので,引き続き御尽力をお願い申し上げたいと思います。
 教育振興基本計画部会は本日をもって終了とさせていただきます。本当にありがとうございました。
 それでは,この後の案内は事務局からお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  ありがとうございます。この後,中央教育審議会総会に答申案を報告いたしまして,お取りまとめを頂くことを予定しております。
 先生方,本当にこれまで14回にわたりまして,ありがとうございました。
 以上をもちまして終了させていただきます。