中央教育審議会教育振興基本計画部会(第13回) 議事録

1.日時

令和5年2月7日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画について(答申(素案))

4.出席者

委員

内田委員、清原委員、小林委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村田委員、安孫子委員、岩本委員、大森委員、川口委員、河野委員、黒木委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉田信解委員、吉見委員、渡邉部会長
 

文部科学省

藤江 総合教育政策局長、藤原 初等中等教育局長、池田 高等教育局長、里見 大臣官房審議官、水田 文部科学戦略官、安彦 大臣官房審議官、森友 総合教育政策局政策課長、神山 総合教育政策局生涯学習推進課長 等

5.議事録

【渡邉部会長】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第13回中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催させていただきます。本日も御多忙の中、御出席いただき本当にありがとうございます。また、本会議はウェブ会議とのハイブリッドとなります。
 本日は、前回委員の皆さまより頂いた御意見、それから、パブコメ、団体ヒアリング等を反映させた次期教育振興基本計画の答申素案について御議論いただきたいと思います。
 それでは、まず、本日の会議開催方式、それから資料につきまして、事務局からの説明をお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  事務局の川村でございます。
 本日もウェブ会議での会議開催とさせていただき、傍聴につきましてはユーチューブにて配信をしておりますので、御承知おきください。
 御議論の時間におきましては、挙手ボタンを押していただければと存じます。部会長の御指名により順次御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日の資料でございますけれども、答申素案に関する資料として資料1から3、関係団体ヒアリング、パブリック・コメント関連資料として資料4から6、ユース政策モニター等に関する資料として資料7、ウェルビーイングの向上に関する資料として資料8、指標に関する資料として資料9でございます。
 資料3、4につきましては、1月20日、23日にオンラインで行いました関係団体ヒアリングの際の会議資料として文部科学省ウェブサイトに掲載していたものと同じでございます。
 最後に、本日ですけれども、全体30名の委員のうち24名にご参加を頂いております。お忙しいところ、ありがとうございます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは、早速、議事に入らせていただきます。まずは冒頭、事務局から資料説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  それでは、資料を共有して説明をさせていただきます。
 こちら本日の資料でございますけれども、資料1が次期教育振興基本計画についてということで、前回の審議経過報告から見え消しで修正したものでございます。こちら、後ほど御説明をさせていただきますけれども、これに当たりまして、これまで頂いた御意見を御紹介させていただければと思います。
 まず、資料の4でございますけれども、ヒアリングにおける各団体提出資料ということで、1月20日、23日に行いました関係団体ヒアリング、28団体でございますけれども、頂いた御意見の書面の資料でございます。
 それから、資料5でございますけれども、書面による各団体提出資料ということで、こちらも同じく頂いた資料でございます。
 なお、大変申し訳ございませんが、⑤の日本私立中学高等学校連合会の資料が、私どもの不手際で当日の書面の会議資料から抜け落ちておりましたので、おわびして訂正いたします。こちらのページとしては13ページでございますけれども、こちら御意見を頂いておりますので、御紹介をさせていただきます。
 また、ヒアリングの日程後に、⑧の全国特別支援学級の校長協会、また、20番の日本学校体育研究連合会から御提出いただいておりますので、こちらも追加をさせていただいております。
 それから、資料の6でございますけれども、こちらは意見募集ということで、いわゆるパブリック・コメントの結果の概要でございます。1月13日から25日まで実施をいたしまして、総計1,089件の御意見を頂いております。意見概要、総論的な部分また各論については、目標ごとにおまとめをしております。資料事前の御送付、また、事前の御説明をさせていただいておりますので、説明については省略をさせていただきます。
 それから、資料の7でございますけれども、ユース政策モニターからの意見募集ということで、これまで内閣府のユース政策モニターラウンドテーブルということで意見交換を行いましたけれども、それに加えましてウェブアンケートという形でこの意見募集を行いまして、478件の意見を頂きました。
 こちらは質問として、これからの学校教育で大切にすべきこと、どんな先生に教わりたいか、学校で幸せを感じるのはどんなときかという質問に対していただいた意見でございます。こちらも事前の御案内としておりますので、説明は省略させていただきます。是非御参照いただければと存じます。また、この後の資料にジキコンの追加実施についても資料をつけておりますので、御参照ください。
 以上が頂いた意見でございます。こちらの御意見を踏まえまして、また、前回の計画部会での御議論も踏まえまして、この見え消しをしたのが資料の1でございます。
 答申素案でございますけれども、まず、「はじめに」ということで、通常、答申の冒頭につけますこの文章、こちらを盛り込んでおります。学制公布から文部科学大臣の諮問、また、これまでの審議経過、そして、審議内容に関する事柄として、2ページ程度にわたりまして記載をしているものでございます。
 それ以降、本文の方の修正でございますけれども、4ページ以降になりますが、前回の意見、団体からの御意見またパブリック・コメントを踏まえまして修正をしております。例えば、この冒頭のところ、教育基本法第4条の教育の機会均等にも言及すべきではないかという御意見を頂きまして、修正を施しております。こちらも事前の御説明、資料のお送り等しておりますので、ポイントを絞って御説明をさせていただきます。
 文言的な修正もございますけれども、例えば、この7ページのところでございますが、社会の強靱さ、レジリエンスを備えた社会を構築すべきだという御意見等ございましたので、考え方に関わる部分として、記載を追記しております。
 それから、10ページでございますけれども、活力あふれる社会を実現していくという観点が重要ではないかという御意見がございましたので、こちらも付け加えております。
 それから、11ページでございますけれども、このウェルビーイングの関連要素として、達成感ですとかキャリア意識といったことも大事ではないかという御意見がございましたので、追加をしております。また、その下のところ、教師のウェルビーイングに加えて、職員ですとか支援人材の、学校の全ての構成員のウェルビーイングが重要ではないかという御指摘がございましたので、追記をしております。
 それから、13ページでありますけれども、前回、少子化・人口減少の観点が足りないのではないかという御指摘がございましたので、少子化・人口減少が著しく進展する我が国がこれからも活力あふれる社会として持続していくため、質の高い教育により一人一人の生産性や創造性を一段と伸長させていくことが急務であり、以下に示す取組を進めていかなければならないという認識を示しております。
 それから、その下のところにつきましては、総合知のところで人文社会科学系の知についても言及すべきであるという御意見ですとか、発達段階に応じた文理横断的、探究的な学習の推進という御指摘がございましたので、こちらを追記しております。
 それから、14ページでございますけれども、こちら前回の御意見、大学教育において自己の主体性を軸にした学びに向かう能力・態度の育成という観点が重要ではないか、また、この3つの方針に基づく大学教育の展開、全体的なことを研究すべきではないかという御指摘がございましたので、修正をしております。
 それから、18ページでございますけれども、少し文言的な修正もございますが、こちらの肥満、アレルギー疾患等の追記につきましても、御指摘を踏まえて現在の児童・生徒が抱える課題として追記をしております。
 それから、20ページでございますけれども、インクルーシブ教育システムについての御指摘がございましたので、こちらも追記をしております。
 それから、24ページでございますが、デジタルの関係で地域間、学校間格差の拡大につながらないよう十分な支援が必要であるという御指摘がございましたので、こういった観点も追記をしております。
 それから、27ページでございますけれども、私立学校につきまして、第3期までの計画での記載が、今回、審議経過報告の中で必ずしも言及されてない部分がございましたので、こちら追記を項目としていたしております。
 それから、続いて、28ページでございますけれども、各ステークホルダーの対話のところで、本計画の策定に当たってのヒアリング、パブリック・コメント、また、ユース政策モニター、子供・若者との意見交換等を行ってきたことについての追記をしております。また、データなどのエビデンスを踏まえた対話ということ、それから、この辺りは前回の部会でお示ししたところの御議論でしたので、定性調査に関すること、また、このデータを通じた対話に関する記載、この辺りも追記をさせていただいております。
 それから、30ページのところは、データを学校現場にフィードバックをして改善に生かせるという観点の追記。
 それから、31ページのところでは、オープンデータ、それから、対話についての記載を追記しております。その下のところ、教育投資については、未来への投資であるということを明確にする観点、さらに、この教育投資の効果といたしまして、経済的な効果のみならず、新たな価値創造ですとか未来の志向性、共生社会、地域コミュニティーの形成といった、必ずしも数値化できない効果があるという御指摘を踏まえた修正を行っております。
 それから、36ページに飛びまして、寄附の関係でございますけれども、重要であるということに続けまして、その方策として寄附税制の関係、クラウドファンディング、寄附募集の様々な取組について、手法を明示する形での追記をしております。
 それから、その下のところは子供施策との連携ということで、こども家庭庁も含めたこども基本法またこども大綱ということの中での連携についての記載をしております。
 それから、37ページでございますけれども、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づく教育大綱の策定に当たっての計画の参酌、また、総合会議の活用について、御意見を踏まえて追記をしております。
 それから、41ページでございますけれども、指標の関係、学力・学習状況調査のところ、授業において児童・生徒自ら学級やグループで課題を設定し、解決に向けて話し合い、まとめ、表現するという活動を取り入れた学校の割合ということで追記をしております。
 それから、45ページに少し飛びまして、公的機関・民間団体等が行う自然体験活動に関する行事に参加した青少年の割合につきましても、御意見を踏まえて指標の追加をしております。
 それから、その下のところ、学校保健関係、食の関係ですとか学校保健委員会に関係する内容、栄養教諭、こちらも御意見を踏まえて追記をしております。
 それから、56ページに飛びまして、特別支援学校における教師の専門性の向上、御意見を踏まえて追記をしております。
 それから、57ページでございますけれども、こちら不登校のところでございますが、前回の御意見、また、寄せられた御意見を踏まえまして、オンラインの活用を踏まえたスクールカウンセラー、ソーシャルワーカーの配置促進でありますとか、高等専修学校、高等学校段階におけるより詳細な記載ということで追記をしております。
 それから、続いて、61ページでございます。大学と産業界の連携によるリカレント教育の関係、前回御指摘を頂きました点、また、キャリア形成促進プログラムといった関係で追記をしております。
 それから、70ページでございます。共同学校事務室の設置・活用、それから教師の養成・採用・研修の一体的改革につきましては、答申を踏まえまして、特に教師の人材確保も含めまして記載を厚くするという形で追記をさせていただいております。
 その他文言的な修正も含めましてございますけれども、こちら前回の御意見、また、関係団体ヒアリング等を踏まえた修正ということでございます。この見え消しを溶け込ませましたのが資料の2ということでございまして、こちらはきれいになっている文章でございます。
 そして、最後に、資料の8でございますけれども、ウェルビーイングの関係で前回御指摘がございましたので、資料を追加させていただきました。
 ウェルビーイングとは、なぜウェルビーイングが求められるのか、日本発・日本社会に根差したウェルビーイングの向上ということで、これまで御議論いただいたものを整理いたしまして、さらに、教育ウェルビーイングということで、このウェルビーイングが求められる背景としまして、不登校やいじめ、貧困など、このコロナ禍や社会構造の変化を背景とした子供たちの抱える困難の多様化・複雑化する中での必要性、また、子供・若者の主体性や創造性を育み一人一人の自己実現を目指すということで、持続可能な社会のつくり手としての基盤となる能力・資質を育成するという観点、また、地域における学びを通じてのつながり、関わり、地域コミュニティーの基盤の形成、こういった背景等を踏まえてのウェルビーイングに関する教育に関連する要素ということで、これまで御議論いただいた、これは本文中の項目でありますけれども、11項目でございます。
 これらを、教育活動全体を通じて向上させていくということで、各要素を育む教育活動の例ということで、飽くまで例でありますけれども、これまで御議論があった内容について、こちらに例示ということでお示しをしております。
 そして、この主観的認識のエビデンス把握が必要ではないかということ、記載がございますので、関連する主観的指標ということで、現在、指標の中で、この上のウェルビーイングの項目に関連するような指標ということで、例えば、自己肯定感ですと、自分にはよいところがあると思うということ、また、自己実現ですと、自分の将来の夢や目標を持っている、それから、例えば、利他性ですとか、人が困っているときはすぐ助けているですとか、こういった主観的指標、関連する部分についての現状の指標ということで、対比をする形でお示しをしております。
 それから、次の資料につきましては、教師のウェルビーイング、学校・地域社会のウェルビーイングということで、子供たちの若者のウェルビーイングというのももちろん重要でありますけれども、子供・若者がいる学校における教師のウェルビーイング、また、学校がある地域、また、保護者も含めた家庭のウェルビーイング、こういったものが学校と地域の関わりによって育まれていくということ。さらには、そういった地域が増えることによって、社会全体にウェルビーイングが広がっていくという、こういう循環という考え方、本文で記載しております内容を図示する形でお示しをしております。
 また、今の幸せが将来の幸せですとか周囲、他者の幸せ、社会、地域の幸せという広がりも重要であるという観点。そして、その他の留意事項として、こちらは本文中の記載でありますけれども、QAの形で解説的に記載をしております。
 以降は、部会でお示しした参考データ、委員会の御提供の資料ということでございます。ウェルビーイングに関する資料は以上でございます。
 最後に、指標に関する参考データということで、これまでもお示ししておりましたけれども、追加をした指標も併せまして整理をしたものでありますので、こちらは是非御参照いただければと存じます。
 説明は以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今回出された次期教育振興計画の答申素案について議論をさせていただきます。
 御発言の際は、いつものとおり、挙手ボタンでお願います。あるいは、会場の方はネームプレートを立てていただいても結構です。
 それでは、いかがでしょうか。元紺谷委員、お願いいたします。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。前回の審議を受けまして、文言も整理され、そして、なるべく長文にならないように短文で整理されました。事務局の方に感謝申し上げます。
 私からは1点、この計画の実効性をどう確保するかという観点でお話をさせていただきます。そして、ウェルビーイングに特化して話をします。この議論を踏まえて各都道府県が計画をつくり、そして、各学校が新年度の計画をつくるという段階ですが、どうしてもタイムラグができてしまいます。これを何とか少しでも短くしたいというふうに思います。それで、今回、資料8のこのウェルビーイングのまとめは非常に分かりやすく、しかも、昨日の事前説明のときよりも更にバージョンアップして、スライドの順序もうまく流れるように整理されていて、かなりいいものが出来(でき)上がたと思います。これも事務局の方の御努力と感謝申し上げます。
 昨日、2月6日付日本教育新聞の社説にこんなタイトルがあるのを見つけました。「学校経営にウェルビーイングを」です。そこにはこう書かれていました。新しい片仮名言葉が出てきて現場は混乱すると捉える関係者もいるだろうけれども、決して新しいものではないというようなフレーズがあり、最後にこんなまとめがあります。新年度を控え、各学校は今年度の振り返り、評価、学校の設置者の考え方を踏まえ、経営ビジョンを練り上げることとなる。その際、中教審部会報告で論じている総括的な基本方針は論点を整理する上でかなり参考になるのではないかと。御一読を勧めますと。要するに、もう学校現場にこの案をスポンと下ろしてもいいぐらいの勢いで社説が書かれていました。
 正に、都道府県教委も必要ですけれども、出来たてほやほやのこの計画が何とか学校現場に届けるような工夫ができないものかと思います。何とかこの段階で、都道府県教委を通じてこんな感じで今進めていますというようなことが学校に伝われば大分違うのではないかと思います。
 それから、新年度に向けて文科省では研究指定事業等が立ち上げる計画があると思いますけれども、その事業の中に、ウェルビーイングを踏まえた取組というような観点を入れることによって、事業計画をつくるときに意識されたウェルビーイングが表に出てくるのじゃないかというふうに考えまして、提案といいますか、意見を申し上げさせていただきました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。大変貴重な御意見を頂いたと思います。
 おっしゃるように、教育振興基本計画が閣議決定された後に都道府県もそれを参考にしますので、同時並行で進めていただくところもありますが、都道府県はそこから作業を始めることもあるわけです。そうすると、タイムラグが大きく出てしまう。さらに、その先の学校に伝わるのは非常にタイムラグが生じますので、御指摘のとおりです。
 ましてや今のDX時代に、タイムラグを生じさせながら順番に伝達することでいいのかということもあろうかと思います。頂いた御意見をもとに、趣旨をどう現場に伝えていくかについては、行政の工夫のしどころですので、これは是非行政の方で預かっていただけたらと思います。
  それでは、次に、松浦委員、お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。本当に丁寧に議論の要素を反映していただきまして、大変感謝しております。
 特に教育投資に関しては、経済的な果実、効果だけでなく、価値の創出にも配慮が必要だということを明記していただいて、これは先ほどのウェルビーイングの広がりとも合致する形になって、大変意義深いのではないかなと思っております。
 その上で、細かいことで恐縮ですが、2点意見を述べさせていただきます。まず、見え消し版の6ページの丸で上から4番目のところの最後、赤字で新たに加えられたのかと思うのですが、ここは第3期の成果と課題ということで、学習成果を適切に評価されるよう、学位と資格との関係性を可視化するための方策について検討する必要がある、というのは、私も高等教育の研究者としては、このことは大変重要なことだとは思います。ただ、これが第4期の、今回の私たちの答申のところにうまく受け継がれているのかどうかというのは、整合が取れているのかということは疑問に思いました。
 ですので、ここで、3期の課題としてこれを触れるのであれば、何らかの形で後ろの基本施策の方に言及があった方がよいのではないのかなと思いました。それが1点です。
 それから、もう一つは、これもずっとくどいように繰り返し申し上げてきているイノベーションのことです。見え消しの50から53にかけてで、イノベーションは決して理工系だけの問題ではないということを申し上げてきて、基本施策の文中にはそれを大変厚く反映していただいていると思うのですが、指標が理工系偏重と言うとおかしいですけれども、上の方は修士入学者数の割合の増加、博士入学者数の割合の増加と来ていて、特に文理を問うていないわけですが、4番目にいきなり、産業界による理工系博士号取得者の採用者数と来て、これは恐らく実績値があるということに踏まえてこういう形になっているのかとは思うのですけれども、理系でもともかく、例えば、医療・健康マネジメント分野は文系ではなくても、しかし、理工系でなくて博士号取得者のキャリアパスとして産業界で活躍してもらうというのも、イノベーションとしては重要なポイントになってくるのかなと思います。ピンポイントで理工系に限定しないような指標を加えるか、あるいは、変更していただくかということを御検討いただけないかと思いました。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 最初の方は、大学分科会での議論も経てきた話かと思いますので、いったん預からせていただきます。
 それから、2つ目のところは、おっしゃるように、全体のトーンは、総合知という言葉で文理両方の要素が重要だと明確に記載しています。ですので、そういう考え方だということは伝わるとは思いますが、ただ一方で、世界各国との比較で、どうしても現状日本の理工系人材が不足していることも事実なものですから、それを強化するといった、他省庁からも来ている検討事項も踏まえなくてはいけないということがあります。そのため、この指標についてはそこがやや強化されている形です。
 したがって、この両方の要素を本文と合わせて調整を取っていくことになろうかと思いますので、工夫のしどころがあるか預からせていただきます。
 それでは、村田委員、お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。非常によくまとまって分かりやすくなりましたし、先ほどお話がありました資料8も非常によくまとまっているなと思いました。
 それで、私から大小3つ。まず、1つ目が6ページのところなのですが、丸の5つ目、見え消しのところでなくて新しく付け加わった「大学等の高等教育機関において」と始まる文章です。そこの下から4行目ぐらいに、「また、博士課程進学率が低い傾向が続いており」云々(うんぬん)という文章があるのですけれども、確かに、博士課程進学率が低いのは、理系はそうなのです。人文社会系は修士課程も低いわけで、ここは博士課程という理系だけではなくて、先ほどの松浦先生の御指摘とも若干関係あるのかもしれませんが、修士課程・博士課程とするのか、あるいは、人文社会系は修士課程とか、あるいは、大学院の進学率とか、人文社会系も含めてというニュアンスにしておいていただいた方がいいような気がいたします。それが1つ目です。
 それから、2つ目は、非常に細かくて本当に恐縮なのですけれども、31ページのところです。31ページの教育投資の在り方のところ。本当に細かくて申し訳ないのですが、「未来への投資としての教育投資の意義」というこの言葉、「未来への投資としての教育投資」、「投資」という言葉がダブっているので、「未来への投資としての教育の意義」でいいのかなと思ったりもしますので、これは語感の問題ですから、趣味の問題であるかもしれません。
 最後。逆に、渡邉部会長が御発言になるのかなと思っているのですが、「次期教育振興基本計画」というタイトルなのですが、渡邉部会長は、3期とか4期とかいうのではなくて全く新しい意味での振興計画というふうにおっしゃっていたかと思いますので、このタイトルは次期教育振興基本計画というのになるのでしょうか。それとも、何か違う案がお考えなのか教えていただければというふうに思います。
 私からは以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 最後の3点目からお話しさせていただくと、閣議決定の際は「次期」も入りません。教育振興基本計画として閣議決定されるのが今までの通常パターンです。副題を入れる場合も、閣議決定には入れられないものですから、先ほど御指摘いただいたように、教育現場にどう伝えるのかというときの工夫として、説明の際に表現するといったことが考えられるのではないかと思います。これも行政の方に是非、預かっていただけたらと思います。
 最初の修士、博士の問題については、どちらも国際比較すると非常に低いという状態ですので、博士課程だけの問題ではないというのはおっしゃるとおりです。文章の中に入れるかどうか検討させていただきます。いずれにしても、その全体を文理含めて改善していかなくてはいけないという趣旨が伝わるような形にできればと思います。
 それから、教育投資の在り方について、未来への投資というのはむしろ括弧書きなのかもしれないですね。未来への投資という方向で考える投資をしたいということですから、場合によっては、「未来の投資」を括弧書きにして、強調するというような形にしてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。
【村田委員】  お任せします、そこは。
【渡邉部会長】  では、そこは預からせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、次に、関委員、お願いいたします。
【関委員】  ありがとうございます。何回も重ねて言ってしまいました64ページのまちづくりを学校が核になって推進するという部分について、今回、「地域や子供をめぐる」という表現を加えていただきました。これによって、学校サイドも負担感が少なくなり、一緒に取り組んでいく意識に切り替わっていくことに繋(つな)がるのではないかと感じております。本当にありがとうございます。
 あと、これは細かいところですけれど、65ページの新たに加えていただいている赤字の部分です。下の方の部分ですが、社会教育主事が社会教育委員などの社会教育関係職員に関してというところで、まず、社会教育委員を関係職員と扱うべきかどうかというのは、特別職の公務員の位置づけではありますが、若干違うのではないかなというふうも感じております。
 それと、もう一点です。社会教育主事は教育の専門職員です。しかし、それ以外にも、例えば、図書館の司書、あるいは博物館の学芸員のような専門職もございます。そういった方々との連携の中で進めていく方が望ましいと感じております。できれば社会教育主事あるいは図書館司書、学芸員まで並立させて社会教育関係職員として、さらに、社会教育委員の皆さん方もいろいろな立場で関与していただくという表記の方が今後の方向性にはなじむのではないかと感じます。
 あともう一つ、これも細かいところで申し訳ございません。66ページの指標のところです。一番下のところ、「社会教育士の称号付与数の増加」、それに並べて「公民館等における社会教育主事有資格者数の増加」という表記になっているのですが、社会教育士なる新しい称号がより広く広がっていくような意味合いで考えるのであれば、あえてここは「社会教育主事有資格者数」という表記よりも「社会教育士」の方が良いのではないかと感じております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 確かに、社会教育主事あるいは教育委員会の事務体制は、もともとの社会教育法に定められている事項です。社会教育士は、令和2年度に文科省が、呼称として進めているもので、本来の意味は違いますから、御指摘のとおりだと思いました。
 それから、もう一つの指標のところは、おっしゃるとおり、社会教育士の称号付与の増加ということからすると、公民館等に配置しているのは社会教育士の方かもしれません。主事の方は、教育委員会のマターですから、これが分かるような形で全体の整理をさせていただきたいと思います。事務局、よろしいでしょうか。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。堀田委員。
【堀田委員】  堀田でございます。私は目標11と12について1点ずつ述べたいと思います。
 見え消しで申しますと67ページです。目標11は、教育DXの推進デジタル人材の育成というところに、2つ目の丸のところに校務DXの推進と書いてあります。それの1行目に、「教職員が場所を選ばず校務を処理できる環境の普及や」と書いてありますが、この後、後ろに学習指導・学校経営の高度化等々いろいろ書いてあって、校務のDXを進めるということが書いてあります。
 趣旨はそのとおりなのですけれども、私は今、校務DXの有識者会議の座長をやっておりますが、何より重要なのは先生たちが働きやすくなるということでありまして、現在、校務支援システムが閉域のネットワークからしかアクセスできないがために、先生は学校に来なきゃいけない、あるいは、いなきゃいけない、帰れないということが起こっております。
 そうではなくて、例えば、時間休のような休みの取り方や、子育て中の先生が、場合によってはですけれども、テレワークとかそういうようなことが可能になるような働き方を柔軟にするためにも、この教職員が場所を選ばず校務を処理できるということが重要です。もちろん個人情報は大事にしながらの話ですから、セキュリティーの話はありますが、趣旨としては先生たちの働きやすさが前面に出て審議を進めておりますので、そのことが分かるような表記にしていただきたいというのが1点目でございます。
 2つ目は、71ページになります。これは目標12の指導体制・ICT環境の整備云々(うんぬん)のところなのですけれども、ここにICT環境の充実とあります。ここに2行目の後ろの方から、「都道府県等がICT活用を広域的かつ組織的に支援する体制を整備し」と書いてあります。
 この言葉の趣旨は何かというと、これはICT環境、これからGIGAの端末の更新等が動きますが、都道府県が――義務教育の場合は市町村が学校の設置者であることが多いわけですけれども、都道府県が市町村ごとの調整をしたり、各市町村の取組を可視化したり、場合によっては、共同調達をしてスケールメリットを生かして価格を落としたり、そういういろいろなことを都道府県がやったかやらないかで随分と進み具合が違うという現実がございます。
 これは都道府県の教育委員会の役割として、各市町村の取組を可視化したり、あるいは、課題を共有したり、解決の仕方を共有したりするようなことが、この「広域的かつ組織的に支援する体制」という言葉の意味だと私は思っておりますので、それを分かるような書きぶりにしていただくと有り難いなというふうに思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。御指摘のとおりだと思います。
 一人一台端末は、GIGAスクール構想の下で、全国でそろえるために国費として進めて、かなり導入されたのですが、校務支援システムは、残念ながらまだ都道府県毎(ごと)に差がありますし、市町村に至ってはかなりの格差が存在しています。御指摘のように、これをどう埋めていくかというのは大変重要な課題だと思います。そういう趣旨も書いているとは思いますが、これは少し預からせていただいて、少し強化するような文言修正できるかどうか検討させていただきます。
【堀田委員】  よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  そこを強化するのが特に次期のステージでは非常に重要だということは共通認識でございます。
 それでは、次に、牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】  ありがとうございます。皆さんおっしゃることですけれども、ここまでまとめてくださって、どうもありがとうございます。大変な作業だったのではないかと思います。
 その上で、改めて拝見をしまして幾つか思うところがありますので、お伝えします。1つは、例えば、大きなⅢの「特に留意すべき事項」の中に、(3)で新しい「こども施策との連携」が入ってきているのですけれども、それに加えて、これは私たちいわゆる研究職に就いている者の責任かもしれませんが、研究といったことをどこかに書き込めないかなというふうに思うのです。
 なぜかといいますと、大きいⅠとⅡのところで、新しい社会に入ったことであったり、いわゆるVUCAの時代が到来したということで、ある意味で人間観ですとか社会観を組み替えなければいけないような大きな転換点に入っているのだということが書かれてあるので、そういう現状と将来への認識を受けて、教育をどうするかといったことをきっちりと研究して、それと政策と更に実践との間の往還関係をつくっておかないと、現場の方にいろいろな負担がかかってしまうのではないかとか、又は、政策もうまく展開できないということが出てくるのではないかと思います。
 その意味で、教育研究をより一層深化させていくというか、そうしたことを、例えば、国立教育政策研究所もありますけれども、大学や研究機関の機能としても、きっちりと教育の振興に役立つというか、役割を担っていくといったことを、例えば、Ⅲの(4)を起こして書いておくことができるのではないかと思います。
 それから、次に、細かいことになるかもしれませんが、先ほど関委員からの御指摘があった点、私も気になっていましたので、是非そこは加えていただきたいと思うのですけれども、もう一つ、社会教育や生涯学習との関係でいきますと、図書館とか博物館が今社会的にはとても重視をされてきていて、様々なところで新しい図書館づくりですとか、さらに、図書館を核にしたまちづくりのようなことが起こっているのですが、今回余りそういう記述が入っていないことが気になります。私たちが見落としてきたのがいけないのですけれども。
 そういう意味で、生涯にわたって学び続ける社会をつくるということの中に、これは目標10になるのかどうかですけれども、図書館や博物館の役割を書き込めないだろうかと思います。
 更にもう一つ、目標のそれぞれ、16今あるのですけれども、それぞれの中のものが相互に連関を持っていると思います。例えば、目標2と3で文化、芸術、スポーツといったことが出てくるのですが、それが目標5のSTEAM教育の「A」のところにも該当して、創造性とか価値創造性といったことも関わってくるので、単に豊かな心ということだけではないもの、芸術とかスポーツですとか、人間性全体を豊かにしていくことによって、それを新しい社会づくりにつなげていくというか、ウェルビーイングと関わってくるという議論にもなっていくかと思いますので、ここは目標を組み替えろということではないのですけれども、お互いの関係がよく分かるような文言を入れられないだろうかと、今、具体的な提案ができなくて申し訳ないのですが、そう思います。
 それから、前後してすみませんが、目標の1のところでキャリア発達の観点が入ってきているのですが、指標の方に十分反映されていない感じがします。先ほどの新しい社会に入ってきたということの中で、例えば、従来のように、学年別であったり、学校の段階別に分けていくような人生設計ではないという時代がやってきているのではないかと思います。それこそむしろ、学び直しですとかリスキリングですとかという議論と関わってきているものです。しかも、それが人生100年ですとかウェルビーイングに関わってくるので、キャリア発達という観点をもう少し前の方に押し出すような形で議論ができないだろうかというふうに思いました。
 この期に及んでという感じになるかもしれませんけれども、少しその辺りで御検討いただければと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 教育自体の研究の重要性というのは、例えば、30ページの客観的な根拠を重視した政策推進の基盤形成という記載がございます。ここではEBPMに焦点が当たっているのですが、国立教育政策研究所等において客観的な根拠に基づく政策に資する研究を行う体制整備を進める必要があるというくだりもあり、御指摘のようなことは一旦置いているということになるのかもしれません。
 ただ、おっしゃっていただいたように、こども施策との関連性、互換性をどうするかということは、こども基本法がこの4月から施行されますので、まだこの段階ではなかなか書き込みにくいということもあります。先ほどの客観的な根拠を重視した政策の基盤形成のところに今の御趣旨のようなことが入れられるのかどうか、事務局の方で検討していただきたいと思います。
 それから、あとの図書館、博物館等の関係については、従来はどうしても、先ほど関委員からも御指摘された社会教育法や生涯学習のところの整理の下で出てきており、文章とすると「公民館等」に含めているつもりではあります。「等」が広過ぎるという話かもしれませんが、位置づけとしては「公民館等」の中で、そういった趣旨は入れさせていただいていると思います。ですから、ここにそういった文言をもう少し加えるかどうか、検討させていただきますが、事務局の方はいかがでしょうか。
【牧野委員】  ありがとうございます。ただ、法体系上、図書館法とか博物館法がきっちりあり、それが社会教育の一環の中に組み込まれているはずですので、その辺りも少し御検討いただければと思います。
【渡邉部会長】  承知しました。そこも含めて預からせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、次に、河野委員、お願いします。
【河野委員】  ありがとうございます。ウェルビーイングの向上についてというところで、大きな資料の8のすばらしい図を描いていただきまして、これから現場の先生方と一緒にグローバル教育を推進していく上で非常に核となる資料を頂戴したと思っています。どうもありがとうございました。
 その上で、2点ほど、このグローバルに関するところで、見え消しの12ページと14ページに関して意見をお伝えしたいと思います。
 まず、12ページですが、「社会の持続的な発展に向けて」という目標が書かれているところに、一番下に「また、グローバル競争が激化する中、世界の中で我が国が輝き続けるためには、世界で活躍するイノベーターやリーダー人材を育成することが重要である」と書かれています。ウェルビーイング寄りの書きぶりと、競争社会の中で勝ち抜くという少し相容(い)れないニュアンスの文章が入っています。
もし可能であれば、「世界の中で我が国が輝き続ける」といった表現の見直しをしていただければということと、イノベーターやリーダー人材については、後の14ページの、グローバル人材育成のところに統合して組み込んでいただいてもいいのではないかと。似たような表現で書かれていますので、御検討いただければと思いました。それが1点です。
 もう一つは、14ページについてです。資料6の「グローバル社会における人材育成」の中に、「『国を愛する態度』は削除すべき」という御意見を頂戴しています。14ページの「日本への愛着や誇りを持ちつつ」というところが、もしかすると引っかかるという御意見なのだろうと思います。
 一番重要なのは、日本や外国の言語理解だけではなくて、日本で教育を受けた人がグローバルで活躍するということだと思いますので、日本の価値観とか日本の教育というところをハイライトした表現に修正をしていただければよいのではないかと思います。
 以上2点でございます。よろしくお願いいたします。
 【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 確かに、グローバルと持続可能性な社会というものが同じ項目に入っているので、非常に分かりにくいのかもしれません。もともとこれは教育基本法の前文から2条までに、この両方の要素が重要だと書いてあります。要するに、日本とか郷土を愛す、ということを踏まえた上でグローバルの主権を持つということが重要なのだと、これが教育基本法の教育の目的なり目標のところに記載されている趣旨だと思います。
 したがって、そこの要素を入れた上でこのグローバルのところを整理していくと、やや矛盾するように見えますが、教育基本法のもともとの趣旨を考えると、日本の国とか郷土のことをベースにしないとグローバル視点は持てませんよねという思いがあるので、こうした構成になっているのだと思います。御指摘のように同じ項目に入っているので、そこは分かりにくいのかもしれませんけれども、工夫ができるのかどうか、預からせていただくということでよろしいでしょうか。 
 それでは、ほかにいかがでしょうか。吉見委員、お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。打合せのときと比べても、特にウェルビーイングの資料などかなり改善されておりますので、私は今日黙っていようかと思ったのですけれども、一応、打合せのときに申し上げたことの確認の意味でも、もう一度ということになりますが、発言をさせていただきたいと存じます。
 そのときに申し上げました第1点は、ウェルビーイングに関する資料、今日で言いますと資料8の中で、なぜウェルビーイングなのかというときに、一般論的にOECDとか世界的な流れということだけではなくて、教育との関連をより明確にするべきではないかということを申し上げました。そのときの意味というのは、ウェルビーイングが教育の重要な目標であるということはもちろんそうなのですけれども、それ以上に、むしろウェルビーイングという条件を整えていくことが新しい教育を可能にする、あるいは、ウェルビーイングの目標が新しい教育でもあるという、もう一方の逆のベクトルが、この教育振興基本計画であればこそ示していくのがいいのではないかという意見でございました。
 具体的には、教育の目標がこれまでのように単に知識や技能を習得させるということではなくて、それ以上に考え創造する能力、先ほどのお話でも創発とか価値創生とかありましたけれども、考え創造する力を育成するということにあるとすると、そのときの基盤が、自己肯定感がみんなが持てるということにあるという、そこの関係が重要なのではないかというお話だったわけです。
 今日の資料8で申し上げますと、例えば、獲得的ウェルビーイングと協調的ウェルビーイングの我が国においては両者のバランスが必要と、それはそうなのですけれども、今言ったトライアウトな構造ということを考えますと、むしろこの獲得的ウェルビーイングと協調的ウェルビーイングは相互補完的な関係にある。つまり、バランスというと、こちらを上げればこちらが下がるということではなくてむしろ相乗的にといいますか、相互補完的な関係を持って、新しい考え、創造する力というものを支えていくのだという、そういうようなメッセージがもう少し明確になるといいのではないかと思いました。これはある程度打合せのときにも申し上げたのですけれども、同じことを少し繰り返させていただいた次第です。
 ついでに、打合せのときに申し上げて、これも今日余り出ていませんけれども、すぐに対応できることではないのですが、記録に是非残していただきたいという思いで申し上げるのですけれども、今回の教育振興基本計画の大きな柱の1つが教育DXということになっております。教育DXはもちろん重要なのですけれども、この間の振興計画部会に出ていて、私、ほかの委員の先生方もそうだと思うのですが、強く感じるのは、こういう政策決定過程のDXが必要ではないかと思うのです。
 今回も、パブコメが1,089件、それから、いろいろな諸団体からの意見が合わせると51団体というものすごい情報量のものが来ていて、これを川村さんたちがすごく涙ぐましい努力をしてまとめていらっしゃるのですけれども、実はこういうふうな大量の情報を構造化して可視化するのはAIが一番得意な分野ですので、むしろこの辺はかなりコンピューターでもいいのではないかという気がいたします。
 もちろん川村さんたちのお力は必要なのでしょうけれども、それをもう少しワーク・ライフ・バランスというか、若干いろいろな我々が考える要素が多過ぎてしまっていると感じがするので、それを少し整理して減らすためにも、ここでの議論そのもののDX化ということを次期には是非考えていただきたいと思います。
 最後に、少し付け足しで、先ほどの議論に付け加えて少し申し上げたいのは、先ほど村田先生がおっしゃったとおり、大学院への進学率が低いのが問題、理系は博士課程、文系は修士課程で問題なのは全くそのとおりなのですけれども、ただ同時に、見ていると、格差拡大あるいは格差化社会の中で、中等教育といいますか、中学、高校、特に高校とか学部前期とかその辺の10代後半ぐらいの段階の教育が底抜けしているというか、非常に弱体化しているという印象を受けるのです。
 それは今まで試験試験とそれだけでやってきてしまったことの弊害と人口減少が両方に重なって出ているのだと思うのですけれども、下支えというか、この中等教育部分をちゃんと支えていくということがこれから逆にすごく重要なのではないかという気もいたしています。それは補足でございます。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。いずれも、大変貴重な御意見を頂いたと思います。
 ウェルビーイングは、今回整理して、かなり御趣旨に沿うような形になっているのではないかと思いますが、バランスの問題は、教育は二項対立的な議論が起きやすくて、これは基本計画だけでなくほかの教育の議論もそうです。どうしても二項対立的に取り上げられやすいものですから、二項対立の陥穽(かんせい)に陥らないようにしようということは全ての項目に入っており、この獲得的ウェルビーイングと協調的ウェルビーイングも、こちらが弱いからこちらだとか、日本はこちらが強いからこれを打ち出すのだという議論ではないですので、それをバランスというのか、総和的に見るのかなど、いろいろな言い方はあると思います。基本はそうした二項対立の議論はやめようという思いですので、工夫ができるのかどうか、預からせていただきます。
 あと、ほかの御意見も非常に重要だと思いました。高校教育に課題があるということは、中教審だけではなく、ほかからも指摘されている事項ですので、この基本計画の中ではかなり強化されているとは思いますが、御指摘の視点は入れたいと思います。
 それから、AI活用の点についても御指摘のとおりだと思います。今回の答申素案でもデータベースをどう活用するかという点は非常に重要なテーマですから、行政も努力いただくということをお願いしたいと思います。全体を通じて、事務局より何かございますか。
 それでは、次に大森委員、お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。大森です。今日は遅れての参加で申し訳ございませんでした。もうおまとめを本当に頂いているので、細かい少し文言レベルの話になるのかなと思うのですけれども、2点ほど御提案申し上げたいと思います。
 1点目は、14ページの大学の質保証に関する文章のところで、赤いところを加えていただいて、より深みが増したかなというふうに思っています。一方で、ここは大学は質保証について書かれていたところに教育改善ということが入ってきたものですから、少しここで言わんとしていることの幅が広がったかなと思っています。そう考えると、少し文章を整えるというレベルのお話をしているのですけれども、教育改善ということと、それから、教学マネジメントということと、それから、内部質保証ということが、少しばらばら感があるというか、少しまとまりが良くないと感じてしまいました。
 もう一つ申し上げると、1行目に大学進学率が50%を超える中で、最初は50%を超える中で質保証に対する懸念が指摘されていたというところなのですけれども、今回はその中で、教育改善云々(うんぬん)ということが加わってきたと。ただ、ここまで全ての大学にということになってくると、50%を超えようが超えまいが、大学はやはり教育改善をし、質保証をしていかなきゃいけなかったのだよねということなのではないかなという気がしています。確かに質保証の問題は50%を超えて、いろいろな学生さんが来るので、質保証をしていきましょうという議論だったと思うのですけれど、教育改善ということになれば、どんな学生さんであっても、ちゃんと大学は改善をしていかなきゃいけないというふうには思うわけです。
 そんなことを考えたときに、御採用いただくかどうかは後で御判断いただいてよろしいのですが、少し文書を整えると、「特に」は取って、「また、大学教育については」、その後も取ってしまって、「教育改善に」につなげてしまって、「大学教育については、教育改善に積極的に取り組む大学と」云々(うんぬん)といって、そして、「こうしたことも踏まえ、全ての大学において、「3つの方針」に基づく体系的かつ組織的な」、ここが「組織的な大学教育の展開」というのは、これは「組織的な教学マネジメントの確立や、学生や社会の声も反映した大学教育の成果の点検・評価等による内部質保証の充実が行われて、学修者本位の」云々(うんぬん)と。つまり、教育質転換が行われ、教学マネジメントがちゃんと組織的に行われて内部質保証がしっかりされるという順番でしっかり書いていくと分かりやすくなるのじゃないかなと思ったところです。もし御参考になるようでしたら、後で文章案を事務局にお送りしたいと思います。それが1点。
 もう1点が、ウェルビーイング説明資料の資料8の3ページ目でしょうか。図の部分で、もしかすると最初は子供・若者というのは学校の中に入っていたような原案もあったかなと思うのですけれども、それを家庭・地域とも関係するような形でしていただく。学校だけで全部囲ってしまうというふうに見えないようにしていただいたのかなと思って、本当にありがとうございます。
 すごくわがままなことを言うのですけれども、それでもやはり学校に大分かぶっている感じがして、もう少し上に、家庭も地域も学校も、みんなで子供・若者をという、どこかにすごく比重がかかるような見え方、ぱっとこれ、すごく分かりやすくて、ぱっと目に入る図なだけに、もう少し子供・若者がいて、この頂点のところに学校の線が入るぐらいで半々ぐらいにしてもらってもいいのかなという感じをちょっとしたところです。これもお任せいたしますけれども、感想です。
 以上、2点でした。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。大学分科会において、第3期教育振興基本計画の期間では、まさしく質保証と教学マネジメントの議論をして、それぞれ非常によい取りまとめをしていただいています。最初の方の御意見は、まさしくその2つの要素が重要だと、より強調される文書を望むという御趣旨だと思いますので、これは受け止めさせていただいて、少し工夫ができるか検討させていただきます。
 2点目は、教育振興基本計画ですので、どうしても学校主体に考えてきたものですから、そうなってしまったのかもしれません。これも工夫させていただきます。ありがとうございました。
【大森委員】  ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは、次に小林委員、お願いいたします。
【小林委員】  皆さん既におっしゃっていますけれども、これだけ皆さんからたくさんの意見が出て、加えてヒアリングの様々な組織からのコメントも反映されて、これをまとめるには尋常ではない御苦労があったのではないかと思います。本当にありがとうございました。
 私からは最後になりますけれど、少し2点ほど気になったことがありました。1点目は、素案の70ページの、教員の養成・採用・研修の一体的改革のところなのです。今回、最後のポチのところで、「表彰者自身や他の教職員の意欲や資質能力の向上に資するよう」と加えていただいていますが、その前の部分で、「教職員一人一人の能力や業績を適切に評価する人事評価の実施と、評価結果の処遇等への適切な反映を促進する」と書かれています。人事評価は企業でも今、非常にホットなテーマになっていることですが、やはり人事評価の価値は、それが処遇等に反映することだけではなく、評価をされる個人の成長を促すということが、人事評価の一番の大きな価値ではないかと思います。この書き方ですと、人事評価を適切にして、それが処遇に反映するということが人事評価の中心になっているかのような書き方、そういうニュアンスで取られてしまいそうな気がします。例えば、「教職員一人一人の能力や業績を適切に評価し、成長を促す人事評価の実施」というような書き方にしていただくと、人事評価が単にできたかできないかではなくて、その一人一人の個人の得意な部分をどのように生かして、教員として、これから成長していくのかということに重きを置くというようなニュアンスも加わるのではないかと思いまして、この点、指摘させていただきます。
 それから、2点目は、ウェルビーイングに関してです。今更こんなことを言われてもというふうに思われるかもしれないので、意見として聞いていただければ結構なのですけれども、資料8で、今回ウェルビーイングに関して非常によくまとめていただいて、分かりやすくなりました。一方、分かりやすくなればなるほど、これは本当に日本社会に根づいたものに限定されるウェルビーイングなのかなと思いました。日本社会だけではなくて、地球全体でも、ウェルビーイングというのは、獲得的ウェルビーイングと協調的ウェルビーイングのが、一人一人の個人の中でうまく融合されて、それが社会と関わっていくということだと思います。となると、これ、「日本社会に根差した」という頭言葉を本当につける意味があるのかなということに違和感を抱いた。これは意見として聞いていただければ良いのですが、そういう感想を持ちました。
 以上2点です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。教師の在り方は、ちょうど今、働き方改革を踏まえた教師の処遇の問題、特に残業の取扱いと、給特法の法的な枠組みの関係性等について、別途議論していただいており、それを踏まえた取りまとめは別途行われる予定です。これは働き方改革答申を踏まえての検討事項であり、行政措置になろうかと思います。
 ただそのときの考え方として、評価とは何かというのはおっしゃるとおりだと思いますので、その辺の要素を入れるかどうかについては、検討させていただきます。ありがとうございます。
 それからウェルビーイングについても、ずっと議論をしていただいて、世界では、協調的幸福のニュアンスが、まだ認知されていないのではないかと思います。格差による分断が生じている中、世界にこそこうした協調的幸福が必要ではないかということで、日本でこうした研究をされている方に、世界に打って出て、こういう考え方を普及してほしいという思いがありますから、あえて「日本発」、あるいは「日本社会に根差した」という言葉を入れています。幸福感の中の協調的な要素とか、利他性だとか、そういったところは今の世界にこそ必要ではないかという思いもありますから、日本よがりではなくて、世界にこの考え方をむしろ普及させてほしいと思っています。そんな意味合いでこういう整理をしてきたので、その辺のニュアンスも含めて打ち出しの問題かと思います。先ほどのウェルビーイングの打ち出しをどうしていくかも含めて検討し、行政にも工夫していただきたいと思います。ありがとうございました。
【小林委員】  趣旨はそういうことだと思いましたが、「日本社会に根差した」というより、「日本社会のよさを生かした」みたいな、何かもう少し積極的に、日本はすばらしいのだという言い方の方が良いのではないかと思います。「日本社会に根差した」だと何か引いた感じでクローズドな感じなので、「日本発の」をアピールする言葉であってもいいかなと思います。以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。指標では、両方とも日本は高くはないものですから、強く出しづらいところもありまして、もう少しエビデンスを固める必要はあるかとは思います。貴重な御意見ありがとうございました。
 それでは、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  ありがとうございます。この取りまとめ、本当にすばらしく、ありがとうございます。私からは、答申の素案、見え消しのところに関しては、大きく3つ、まずあります。
 大きな1つ目が、「はじめに」のところ、新しく入ったところに関してです。少しここに関して、まず日本私立中学高等学校連合会さんの方からの意見で、教育振興基本計画策定を着実に実行するためにというところで、工程表をつくったりとか、定期的なフォローアップを入れるべきではないかという意見を出されていて、そういったものを入れるとしたらということで思ったのが、この1ページ目、一番下の丸ですかね。「政府においては、本答申の趣旨を十分に踏まえて新たな」ということが書かれているのですけれども、「教育振興基本計画を策定し」のところに、場合によっては「教育基本計画及び工程表を作成し、取り組んでいくとともに、各ステークホルダーとの対話を通じたフォローアップを行っていくことを求めたい」みたいな形で、何かそんな形で、ここでPDCAをしっかり回していくというようなことを言うというのもあるのではないかというところです。
 その先に、「また、各地方公共団体においても」というところで、地方公共団体の役割みたいなものを期待されるのが書かれているのですけれど、その地域の実情に応じた適切な対応がなされるようということで、何を求めているのかが少し分かりにくいというところがあるので、この基本計画を指しつつ、例えば各自治体における基本計画とか、先ほども意見でありました、学校とかにうまく共有していくとか、これを受けて各地方公共団体がどういったことをやってもらえるといいのかということを、もう少し例えばでも何か入れていくというのがあった方がいいのではないかというところと、あと場合によってはその後に、「また、学校や社会教育施設においても」とかで、学校とか、そういった現場においてもこれをこういうふうに生かしてもらうことが期待されるということです。これをどういうふうに生かすのかというところを、「はじめに」のところで、それぞれの関係者とかに分かるように、言葉として伝えるというのがいいのではないかというのが、大きく「はじめに」に関してのところです。
 2つ目が、36ページですかね。寄附等の促進というのが入ったところです。これ、こういった形でしっかりと入って、私はよかったなというふうに思っているところです。これを受けてのその後の目標だとか基本施策というところにひもづいていないので、こういったのを受けると、恐らく目標の14のところになるのかなと思うのですけれども、NPOとか企業とかとの連携・協働というところの、例えば企業との連携あたりにこういった内容なんかも企業との連携でやっていく、促進していくみたいな話をしっかりと書いていくとか、場合によっては目標事業の指標のところにも、教育への寄附の増加みたいなところが1つの指標としても見えるようにというようなところもあっていいのではないかというのが2点目です。
 3点目が、38ページ目ですかね。新しい時代に求められる資質・能力を育む学習指導要領の実施というところがあって、これ、今は実施、周知・徹底を図るとか、これはいいと思うのですけれど、数年この計画の期間を見ると、次期指導要領の検討とか策定みたいなのが入ってくるタイミングだと思います。そのときに、今の指導要領も、カリキュラムオーバーロードみたいな課題なんかも言われていますし、今、特別部会の方でも、高校自体をもっと義務教育的にした方がいいのではないかとか、義務教育でないのであれば、高校における学習指導要領自体が本当に必要なのだろうかとか、学習指導要領の在り方自体の見直しみたいな話なんかもある中で、ここは実施だけではなくて検証みたいな形にして、周知・徹底を図ったりとかしながらも、本当にこれからの時代、新しい時代に求められる学習指導要領の在り方自体をしっかりと検討していくということをうたって、この計画期間に、次の指導要領を抜本的にというか、本質的なところで見直しだとか改善、そして次の策定というところにいくのがいいのではないかというところが3点目です。
 最後、ウェルビーイングの資料8のところで、吉見委員の言われていたところ、私も非常に共感するところがありまして、両者のバランスが重要となっているのですけれど、私、結論からいくと、一体的充実みたいなところがいいのではないかと思って聞いていました。これは何を言っているかというと、獲得的ウェルビーイングって、恐らく個別最適な、個別的ウェルビーイングのことにつながると思いますし、協調的は協働的な学びとか、協働性につながるウェルビーイングの方だと思うのです。ここでいう左側と右側を一体的に、やはりこのウェルビーイングは重要だという中で、だからこそ学びも、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実をさせていくみたいなつながりが読み取れると、ウェルビーイングの向上と教育、そして、学校で今言われている個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実というのが、多くの教育関係者になぜこれなのかということや、ウェルビーイングと学びのつながりみたいな関係性みたいなところもイメージしやすくて、腑(ふ)に落ちやすいのではないかなと思って、本当はそういったことも図示できるといいなと思って見ていましたけれどもというところで、少しこの表現の仕方なんかは改善してもいいのかなというふうに思った次第です。
 以上です。
【渡邉部会長】  どれも本質的な御指摘を頂きましてありがとうございました。
 政府の教育振興基本計画と、冒頭申し上げた都道府県の教育振興基本計画の関係性というのは、教育基本法の中に書かれている文言でして、政府の教育振興基本計画を参酌して、各地方自治体で、地域の特性に合わせてちゃんとした計画をつくってくださいねという趣旨が含まれています。この「はじめに」のところを、もう少し膨らまして書きたいお気持ちはよく分かるのですが、ただここは閣議決定する際の文言と捉えなくてはいけない部分があるものですから、少し硬い表現かもしれませんが、そういう体系上の位置づけとして、一旦行政の方に任せていただけたら有り難いと思います。
 それから、2点目の寄附のところはおっしゃるとおり、連携が取れるような文章に工夫ができるのか、検討させていただきます。
 それから、3点目は重たい御指摘だと思います。いずれにしても次期の学習指導要領体系は、また別途、審議会等の場において検討される事項でございますので、そちらの方にリレーしていくということで受け止めさせていただければと思います。いずれも大変貴重な御指摘でした。
 気になったのは、高校の義務教育化についてです。これこそ大変大きな話であり、立法府の話になるものです。御存じのように、義務教育は教育基本法と学校教育法で明確に定められているのと、無償化は憲法第26条に係る話ですので、その関係性を整理しなくてはいけなくなります。ですから、今はむしろ実質的に、高校段階においても義務教育と変わらないような体制整備をしていって、教育の水準を上げていきたいという状況ですので、立法府に関わるようなところを、この計画段階においてはなかなか出しにくいということはあります。
 義務教育の在り方はワーキング等で検討していただいていますから、もう少しそういったところで基本的事項を整理し、段階を踏む必要があると思います。
 最後のところは、先ほどの御指摘もありましたので、表現の工夫ができるのか、おっしゃるように、もともと自立・協働・創造という理念があり、個別最適な学びと協働的な学びが深い学び、探索的な学びになっていくという関係もあります。新しいウェルビーイングを向上させて、個人や社会が幸せな状況になるのは、この両方を見る必要があり、二律的ではなく、そのベクトルの方向性は、個人と社会のウェルビーイングを達成することに結びつくということですから、それをどう表現するかということだと思います。少し工夫できるかどうか、これも預からせていただけたらと思います。
 事務局から何かありますか。よろしいですか。
 それでは、ありがとうございました。
【岩本委員】  すみません、1点だけ。誤解をと思って。私、別に高校の義務教育化をした方がいいということは全く言っていなくて、そういう意見も委員会の中であった中で、学習指導要領のこれからの在り方をということで申し上げましたので。
【渡邉部会長】  承知しました。ありがとうございます。
 それでは、清原副部会長、お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原です。まず部会長、事務局の皆様には、答申素案のお取りまとめに向けた集中的な御尽力に、私も深く感謝申し上げます。
 この間、12回の部会での皆様の御意見で充実した内容になってきましたが、更に28の関係団体からのヒアリング、1,089件のパブリック・コメントなどでの御意見を頂き、これらを反映して加筆していただきました。その部分を中心に、何点かについて気づきを発言させていただきます。
 1点目は8ページ、2つ目の〇についてです。この部分は、「我が国の教育をめぐる現状、課題、展望」の中の「(3)社会の現状や変化への対応と今後の展望」について書かれている部分の1つです。ここには、「成年年齢や選挙年齢が18歳に引き下げられ、若者の自己決定権の尊重や積極的な社会参画が図られるとともに、こども基本法及びこども家庭庁設置法が成立し、子供の権利利益の擁護及び意見表明などについて規定されたことを踏まえた対応が必要である」とあります。これは僅か3行程度の記述ではありますけれども、次期教育振興基本計画の策定、実施、評価、改善の過程を考えるとき、今までとは異なる新しい「こども観」として極めて重要な指摘であると思います。
 昨年6月、日本国憲法及び国連児童の権利条約の理念に基づいて、議員立法で制定されたのが「こども基本法」です。「こどもの基本的人権を保障し、こどもの最善の利益を実現すること」を目指しています。特に基本理念についての6項目のうちの2つというのは重要で、すなわち「全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会、多様な社会的活動に参加する機会が保障されること」、そして、「その意見の尊重、最善の利益が優先して考慮されること」とあります。ここで本部会でも、その理念を先取りして、積極的にこども・若者の声を聞く取組を行いました。
 このことについて、本日は28ページに加筆されました。これはとても重要な加筆だと思っています。すなわち、「各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップ」のこの赤字の部分です。「生徒・学生からのヒアリング、内閣府『ユース政策モニター」の子供・若者との意見交換・アンケートなどを実施し、寄せられた意見等を踏まえて検討を行った」と。「今後も、子供・学生・保護者・学習者、大学等の高等教育機関など、各ステークホルダーと政府が一体となって教育を振興していく共通認識を持つことが重要である」と書かれています。この点については、パブリック・コメントでも同様の趣旨が提案されていることを、私は心強く思いました。
 資料6にまとめていただいた、1,089件のパブリック・コメントのうち、最後の項目の(16)のところに、やはり「ステークホルダーに子供も含まれていることを歓迎する」等々、子供の声もしっかり聞いて政策評価をしましょうという意見を寄せていただいています。正に部会と各関係団体や、パブリック・コメントを寄せていただいた皆様と、子供・若者の意見に関する思いが共通していてよかったと思います。ただ、それを反映するのは本当に御苦労があったと思いますので、吉見先生が提起された「政策形成過程のDX化の必要性」に共感して、私も賛同します。
 EBPMを推進する意味でも、多様なステークホルダーの声を反映していくためには、AIの活用はもちろんのこと、議事録を簡単につくったり検索できたりするRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)など、教育統計の量的・質的な把握を可能にするデジタル化が求められます。
 ここで関連して1点だけ提案があるのですが、最初の項目についてですが、36ページの「3.今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方」として(3)が追記されています。この部分については、「今後の教育政策の遂行に当たっての評価・投資等の在り方」について、「評価」の部分も比較的長めに書いてありますし、「教育投資」の部分も長めに書いてあるのですが、「こども政策との連携」は6行程度なのです。短いけれども重要だと思っていまして、実は来年度、「こども基本法」が施行されるということもありますが、こども政策を総合的に推進するための「こども大綱」のことが重視されているのですが、「こども大綱」だけではなくて、実は今年度から既にこども家庭庁設立準備室と文部科学省、厚生労働省、内閣府等の関係府省では、ほかの次のような調査も一緒に行っているのです。例えば、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」の策定に向けた検討、「こどもの居場所づくりに関する指針(仮称)」の策定に向けた検討、更に「いじめの防止に向けた地方自治体における具体的な取組や体制づくり等の推進」、そして「こどもや若者からの直接意見を聞く仕組みや場づくり」、こども関連業務従事者の性犯罪歴確認の仕組みである「日本版DBS」の導入に向けた検討などです。
 そこで、本文には入れられなかったとしても、これらの具体的なテーマを、文部科学省とこども家庭庁、あるいは関係府省が連携していくということを注釈などに入れて補強されてはいかがかなというふうに思います。
 次に、2点目について申し上げたいと思います。これは「ウェルビーイング」について、皆様もおっしゃったように、資料8を作成していただき、まず感謝申し上げます。いろいろ記述を補強していただいたのですが、11ページの、3つ目の〇の補強部分の意義を痛感しましたので、一言申し上げます。
 もちろん教師のウェルビーイングの確保が大事だけれども、「加えて、職員や支援人材など学校の全ての構成員のウェルビーイングの確保も重要である」と加筆されました。これはヒアリングなどを通して補強していただいたのですが、私は本当に教員だけではなくて、職員の活躍への感謝と期待がこの挿入には含まれており、とても重要だというふうに思います。
 次に、3点目なのですが、13ページです。「主体的に社会の形成に参画する態度の育成と価値創造の志向」については、相対的に見て、日本の子供たちはアンケート調査では、どうやら社会的参画への意欲を積極的に示さないようで、そのことについて冒頭に書いてありますが、補強がされています。「地域の具体的な課題など、実社会における課題解決学習やキャリア教育、主権者教育など、参画する態度を育成していく必要がある」とあり、「なお」というところに、「校則の策定や見直しの過程」についても触れています。これは非常に重要で、「自ら校則を守ろうとする意識の醸成にもつながる」とあります。校則の策定や見直しの過程での、児童の参画について触れているというのは、極めて重要だと思います。
 こうしたことについて、関連して4点目、24ページ、3つ目の〇です。ここについては、「子供の貧困や虐待、いじめなどの困難というのはなかなか実態が見えにくいので、自治体において、データを連携させることで子供のSOSを把握し、プッシュ型の支援につなげていく」ということを更に補強してくださっています。こうした取組については、もちろん「個人情報の適正な保護、データ活用のバランスが課題である」ことも、丁寧に指摘されています。この取組は、既にデジタル庁とこども家庭庁設立準備室が文部科学省にも協力を求めながら、今年度モデル事業を行っていて、埼玉県戸田市の教育委員会の取組や、石川県加賀市の取組などが注目されています。是非今後の「プッシュ型のサービスの取組」としても、是非是非充実していければと思います。
 最後に、大きな3については「今後の教育政策を遂行に当たって、評価・投資等の在り方」というふうにタイトルを変えてくださいました。これまでは「留意事項」というふうになっていたのですが、「評価・投資等の在り方」としていただいたことで、より中身が鮮明になり、受け止められやすくなったと思います。いろいろ補強していただいているのですが、私が特に重要だと思ったのが、30ページの補足していただいた部分です。この部分にこのように書かれています。「収集したデータや分析結果を学校現場に分かりやすくフィードバックし、教育関係者が教育活動の改善に生かせるよう活用を推進する」と。その際、「過去の事例にとらわれず、柔軟に見直しを行うことが重要である」とあります。
 私はこのように、私たちがデータを本当に真のEBPMとして、真の評価と改善に結びつけていくためには、何よりも学校現場を始め、教育関係者のところにきちんとフィードバックして、最適な活用と改善を促していく環境整備が必要だというふうに思います。こうしたところ、ヒアリングであるとか、パブリック・コメントであるとか、ユースの皆様の御意見を総合的に反映して記述していただいたことで、本当に現場に即した計画の方向性が充実してきたというふうに思います。是非このことについて、本当に分かりやすくまとめていただいた本日の概要の表と資料8のウェルビーイングの表とともに、現場に早く届いて共有していただくことを私も願っています。
 以上です。どうもありがとうございます。
【渡邉部会長】  全体的に大変御評価いただき、ありがとうございました。
 特にこども政策との連携は、御指摘のように、8ページ、28ページ、36ページと、全体的にかなり書き込ませていただいています。御指摘のようなことは、実際いろいろなワーキングも動いていますので、むしろこれから行政としてどう実行するかのステージに入っていくと思います。したがって、この書きぶりというよりも、是非そういった取組に生かしていくということで理解させていただきたいと思います。ありがとうございました。
【清原副部会長】  ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは、徳永委員、お願いいたします。
【徳永委員】  ありがとうございます。定性調査の重要性ですとか、子供の声を聞くだけではなくて、それを政策に反映する、子供の声を踏まえるということも書いていただいて、本当にありがとうございます。私からはヒアリングに参加したことと、パブリックコメントを拝読して改めて気づいたことを少しお話したいと思います。
 全国国公立幼稚園・こども園長会様と、全国幼児教育研究協会様へのヒアリングの中で、現場で日常的な多文化化や多国籍化が進んでいて、特に外国につながる子供たち、日本語の支援が必要な子供たちがたくさんいて、そういった子供たちの支援に当たる教員の養成や配置が非常に強く求められているという切実な声がありました。幼稚園や保育園で起こっている状況は、今後小学校、中学校、高校などで更に鮮明にあらわれていくことだと思っていて、今後の日本の教育を考える上で、やはり外国につながる子供たちのニーズにどう応えていくのかとか、学校がどう変わっていけるのかというのをきちんと考える必要があると思いました。
 また、グローバル市民として活躍できる教育をどうつくっていけるのかというところが、果たして今回の計画の中でどの程度書き込まれているのかを考える必要があると聞いていて思いました。
 その中で、14ページのグローバル人材育成というところと、日本で学ぶ外国人等への教育の推進に関連してですけれども、先ほど河野委員からもありましたように、パブリックコメントの中でも、何点も外国につながる子供たちの教育について書かれていました。「日本への愛着や誇りを持ちつつ」という表現について、外国につながる子供たちや日本につながる子供たちが増えていく中で、この子供たちの権利保障をする上でこういった書き方でいいのかということを、やはり再度考える必要があると思いながら読んでいました。
パブリックコメントにもありましたが、こういった子供たちにとっては、母語支援とか、母文化支援も非常に重要になってくるので、そういったことを、例えば58ページの日本で学ぶ外国人等への教育の推進のところで少し触れていただけると良いと思いました。つまり、計画の中でも、日本の同調圧力が非常に強いとか、日本の学校に適応するだけではなくて様々な背景を持つ子供たちのウェルビーイングを保障していくということを打ち出していますので、そういった母語や母文化支援も追記していただけると良いと思いました。
 58ページの最初の日本で学ぶ外国人等への教育の推進というところで、「外国につながる子供が自らの「長所・強み」を活用し可能性を発揮できるよう、多様性を尊重しつつ、国内の学校への円滑な適応を図る」と書かれています。これは学校への円滑な適応だけでいいのかと少し気になっておりまして、こういった子供たちが日本社会で活躍できるように、そのための教育であるということを、書き方をもう少し変えてもいいのかと思っています。例えば、地域と学校が連携して支援をしていくとか、そういったこともできるというのが、ヒアリングに参加し、パブリックコメントを拝読して考えたことです。
 もう1点は、ヒアリングの中でも、やはりウェルビーイングという概念ですとか、様々なコンセプトが新しく入ってきて、それがなかなか現場におりてこない、なかなか理解しづらいという意見がありました。やはりその現場の教員やステークホルダーに負担にならないような計画にする必要があるというところで、今回つくっていただいた資料8のウェルビーイングの資料だけではなく、例えば、多様性と公正・包摂性ですとか、子供の意見表明権ですとか、インクルーシブ教育など、今回新しく入った概念を分かりやすい形で、例えばパンフレットだったりユーチューブの動画だったり、何かしらの形で工夫して伝えていけることが重要だと思いました。
 子供が理解できる計画であるということも重要だと思うので、子供がこれを読んで、今回どういうコンセプトを打ち出しているのかということも分かるようなものを作ってほしいと思います。今後の話だと思うのですけれども、すごく重要な点だと改めて思いましたので、再度お伝えします。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。御指摘のとおりだと思いました。修正できるところがあれば、書き加えるなど対応をしたいと思います。
 それでは、少し時間が押してきておりまして、今残っている方が、内田委員、川口委員、杉村委員、黒木委員、永田副部会長の5名いらっしゃいます。すみませんが、要点をまとめて御発言いただければと思います。申し訳ございません。
 それでは、まず、内田委員からお願いいたします。
【内田委員】  このたびは本当に大変なお取りまとめをありがとうございました。また、各団体の御意見というのも大変興味深く、私も拝読させていただきました。結構ウェルビーイングという新しい概念だけれども、それに対してどのように各現場で取り組んでいかれたいかというようなことの方針が様々に書かれていて、非常に私自身も勉強になるようなコメントが多かったと思います。
 質問とかリクエストというよりは本当にコメントベースなのですけれども、1つはやはりウェルビーイングというのは新しい概念でもありながら、結構温故知新的なところがありまして、これまでの教育現場で既に非常に重要視されて、やはり子供たちの豊かな生活であるとか、子供に限らず生涯教育ということを考えていっても、教育が果たすウェルビーイングの役割というのは、実は形には見えなくてもずっと意識されてきたところではないかと思います。それを今回、ウェルビーイングという言葉で見える化をして、教育現場全体のマインドセットの変更に働きかけるというところが極めて重要なポイントなのではないかなというふうに思いましたので、それを実際に資料に含めてほしいということではなくて、この方針が出されたということ自体が、これからどんなふうに変わっていくのかということをきちんと見定めていく、非常に重要な羅針盤となっていくというふうに思います。
 運用と実際のつなぎというところがやはり問われているところかなと思うのですけれども、先ほどの徳永先生の御発言にもありましたように、私も何らかの形で動画コンテンツとか、そういったものを用意できるとよいのではないかというふうに思いました。私自身も結構ウェルビーイングって何ですかという問いかけを頂くことが非常にたくさん個人的にもありまして、やはり一言であらわすのもとても難しいですし、読みものだけではなかなか伝わらないようなところもあると思うので、少し分かりやすい形で普及できるような、そういうコンテンツの用意ということが今後あってもいいかなというふうに思いました。
 それから、これが最後なのですけれど、日本に根差したということと、日本から発信するというところの話が途中で出てきていたと思うのですけれど、それに関連しまして、例えば資料2の2ページ目の一番後の丸のところです。「本答申は、次期計画のコンセプトとして「持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に出したウェルビーイングの向上」を掲げ」というふうに書いてあるのですけれど、ここに例えば、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上と世界への発信」というような言葉を、割とこの文書の早い段階で書いておくというのは1つの案ではないかなというふうに思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。世界への発信は、是非自ら行っていただくと有り難いなと思いながら聞かせていただきました。ありがとうございます。
 それでは、川口委員、お願いいたします。
【川口委員】  このたびは本当に大変なお取りまとめをありがとうございました。また、各団体の御意見も大変興味深く拝読させていただきました。ウェルビーイングに対してどのように各現場で取り組んでいかれたいかという方針が様々に書かれていて、非常に勉強になるようなコメントが多かったと思います。
 質問とかリクエストというよりはコメントですけれども、1つはウェルビーイングについてです。これは新しい概念でもありながら、温故知新的なところがありまして、これまでの教育現場でも子供たちの豊かな生活は重要視されていますし、子供に限らず生涯教育においても、教育が果たすウェルビーイングの役割というのは、形には見えなくてもずっと意識されてきたところではないかと思います。それを今回、ウェルビーイングという言葉で見える化をして、教育現場全体のマインドセットに働きかけるというところが極めて重要なポイントなのではないかと思います。この方針が出されたということ自体が、今後における非常に重要な羅針盤となっていくと思います。
 その際、運用と実際のつなぎというところが問われているところかなと思います。先ほどの徳永先生の御発言にもありましたように、私も何らかの形で動画コンテンツなどを用意できるとよいのではないかと思います。私自身もウェルビーイングって何ですかという問合せを頂くことが非常にたくさんありまして、読みものだけではなかなか伝わらないようなところもあると思うので、少し分かりやすい形で普及できるようなコンテンツの用意ということがあってもいいかなと思いました。
 それから、日本に根差したということと、日本から発信するというところの話が途中で出てきていたと思うのですけれど、それに関連しまして、例えば資料2の2ページ目の一番後の丸のところに「本答申は、次期計画のコンセプトとして『持続可能な社会の創り手の育成」及び『日本社会に出したウェルビーイングの向上」を掲げ」と書いてあるのですけれど、ここに例えば、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上と世界への発信」というように変更するのも1つの案ではないかなと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。極めて本質的な御指摘だとは思いますが、例えば、ウェルビーイングも今後、各省庁がそれぞれの視点で整理していくことになって、内閣府でもいろいろな指標の統合化のような形で動く可能性があり、既にそういう検討もあります。そのため、ここはやはり教育分野から見たウェルビーイングということだと思います。したがって、この教育振興基本計画ではこの射程範囲で一旦まとめさせていただいて、今後、各省庁が横断的に、ウェルビーイングを日本国のウェルビーイングとしてまとめたときに、例えば、御指摘のように従来のGDPに関係するような資産形成の要素とか、あるいは、家庭の格差問題といった視点は当然入ってくると思います。今回の射程範囲の中にそれを入れてしまうと、非常に分かりにくいものになってしまうと思いますので、一旦のこういう整理をベースにさせていただければと考えております。貴重な御意見だと思います。ありがとうございました。
 それでは、杉村委員、お願いいたします。
【杉村委員】  ありがとうございます。杉村でございます。感想と、それから少し細かいことですが、文言の御検討をお願いします。
 まずは事務局におかれましては今回も本当にありがとうございました。また先般、ヒアリングにも参加させていただきましたが、本当にいろいろな団体の方が真摯に、そして報告書を見ても、本当に丹念に読み込んで、皆様で考えてくださっている様子を拝見し、委員の1人として大変心強く、うれしく思った次第です。
 既に書き込まれていますけれども、そうしたパブリックコメントやユースの意見を取り入れ、それらを踏まえてつくられた答申であるということを是非大事にして、これからも皆さんで教育の方向性を考えていくことができればよいと思いました。
 あわせまして、同じく資料2の28、29ページですが、前回最後に申し上げた意見を反映していただき、データの調査結果に基づいて教育現場の声に立った、あるいは定性調査を含めた判断を整理して入れていただいた点も、御礼(おんれい)申し上げたく思います。
 あとは少し細かな点ですが、ページ番号と文言のことで申し上げます。まず、2ページ目の出だしの大変大事な書き出しのところですが、5つ目の丸のところですが、「審議会では」と始まっているところです。2行目のところ、「初等中等教育から高等教育、社会教育・生涯学習」とありますが、初等のところに含まれているという解釈かもしれませんが、就学前教育や幼児教育もいろいろと話題になっており、そこは文言としてはあえて入れなくてよいのかどうか検討が必要なのではないかと思いました。本文の中にも、いろいろなところに幼児教育に関する記述が出てきており、また先ほど徳永先生もおっしゃいましたが、ヒアリングのときに、私も幼児教育団体の皆様の御意見をお伺いしたのですが、大変大事な点を御指摘になっておられたのを思い出しました。
 2点目は15ページの上から9行目です。細かい点ですが、遠隔とオンライン、リアルを組み合わせたというプログラムの話が出てまいります。この9行目のところに、「距離や場所、時間の制約を克服するデジタルの活用により様々な国際交流の」と書かれていますが、交流だけではなくて、国際教育のプログラムが今日どんどん進展しているというところが大変大事であり、もしよければここは「国際教育交流」とか、あるいは「国際教育」としていただくと、今日盛んになってきているCOILすなわちコラボレイティブ・オンライン・インターナショナル・ラーニングの話ともつながり、よいのではないかと思いました。
 3点目が1つ戻りましたその前の14ページです。先ほどグローバル人材に関連して、河野先生もおっしゃいましたし、ヒアリングの中にも幾つか日本の要素をどう入れるかということで御意見が出ております。これに関してですが、今回入っていない文言で、しかしながら日本のこれまでの教育で度々言及されてきた言葉に国際理解教育というものがあります。今回それがほとんどグローバル教育という表現に置き換わる形で答申がつくられていますが、この国際理解教育という言葉は大変キーになるのではないかと考えます。
 ユネスコが唱(とな)える国際理解教育と、日本的な国際理解教育のニュアンスが異なるというのは議論が出ているところで、その違いが正に日本的な要素をどう考えるかということと関係してくるので、入れるかどうかは別としても、検討できればと思います。あわせまして、今日、ユネスコで1974年に出された国際理解教育、協力に関する勧告の改定が進んでいますけれども、国際理解教育というのが1つポイントになってきていますので、関連があるのではないかと思いました。
 最後に53ページのところに「大学の競争拠点化」というのが出てきます。私立大学の立場から申し上げるのも何ですけれど、冒頭の書き出しは国立大学法人等となっていますけれども、多分このことには私立大学も責任を持つべき点なのではないかと思いまして、高等教育機関全体として考えていただいてよければ入れていただければと思います。
 すみません、細々したことばかりでございますが、以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。少し検討させていただきます。ありがとうございました。
 それでは、黒木委員、お願いいたします。
【黒木委員】  ありがとうございます。本当に取りまとめ御苦労さまでございました。いつも感謝します。ありがとうございます。
 私、コロナウイルス関連のことを1点だけ。例えば、5ページの、下の丸のところです。下から2つ目です。「一方、新型コロナウイルス感染症の拡大により」というところで、ここはグローバルな人的交流の激減と体験活動の停留、停滞というのが出てきます。それは受け継がれる形で今後、それがずっと書かれています。例えば7ページにも、今後の展望の中で、丸の2つ目、グローバルと体験活動がやはり出てきます。セーフティネットという言葉も出てくるのですけれども。私、マスクという言葉と不可分だと思っていまして、そのことが一言も出てこないなという気がしております。つまり、この3年間において、マスクが外せなかった子供たちの心の育ちとか心の健康、そういったところが、今でもマスクを外す外さないということを議論しているのですけれども、マスクが外せないとか外すのが怖いとか、表情が分からないとか、印象が違うとか。先ほどの徳永委員の方から幼稚園・保育園の話が少し出ましたけれど、そういった就学前の、子供たちの心の育ちには、表情の読み取りとか、ミラーリングとかとても大事ですよね。そのあたりが全然どうなっているのか心配で仕方がないと幼稚園の経営者の方とか、おっしゃったりなさいます。
 元紺谷先生が、この答申をどうやって現場に届けるかというお話をされましたが、ホームページとかに載れば、きっとワードの検索をかけると思うのですよ。ひょっとするとだから、マスクという言葉が入っていると、やはりそこはコロナ後の3年マスクした後の5年間でのことですから、一番申し上げたいのは、先ほどの牧野先生の言葉に符合するのですが、恐らく高等教育機関とか研究機関が、このことを役割としてしっかり研究をしていただく。例えば、そういう研究が待たれるとか、そんな表記、表現はできないのかなと。マスクのことがどう書かれているのだろうと。それぞれ現場には、厚生労働省や文科省からのチラシとかマニュアルとか届いていまして、マスクはやはり一番神経質になっているのですね。このことは心の育ちにどんな影響をしたのか、そんな研究が非常に待たれるような気がしてなりません。どこかにマスクという言葉がヒットするような書きぶりができないのかなということを思っております。
 以上です。
【渡邉部会長】  答申は、今年度中に取りまとめたいと思っておりまして、恐らく政府の今のいろいろな動きは5月の5類移行がターゲットになっているので、行政措置の問題という形で受け止めさせていただくしかないのかなと思いました。書きぶりの中でどう工夫ができるのか、ストレートにその問題を取り上げるというよりも、行政措置として、今、非常に微妙なやり取りがあるものですから、研究等の文言で入れられるかどうか、そういう趣旨で受け止めさせていただきます。
【黒木委員】  はい。私、そういうつもりで言っておりますので、(2)のところにどうのというわけではございませんから、研究ベースで必要だということではないかなと思っております。以上です。
【渡邉部会長】  承知しました。ありがとうございます。
 では永田副部会長、お願いいたします。
【永田副部会長】  本当に委員の方々、いろいろな貴重な意見を頂いています。私としては、これを実行できるようにしたいので、お金回りのことがとても心配で、そのことに関して1点だけ申し上げます。
 教育の投資や寄附について、受益者が社会や国であるというのは分かるように書かれているので大変結構です。ただ、その対象が1か所しかなくて、国や企業による個人への投資とは書いてあるのですが、教育機関や教育システムへの投資というのはどこにも書いておらず、個人への経済支援を念頭に書いている感じがします。ですから、どこか1か所にでも、国や企業による個人への投資に加えて、教育機関や教育システムそのものへの投資という言葉を入れておかないと、後で国に対して要望できなくなると思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  おっしゃるとおりだと思います。ありがとうございました。
 それでは、時間になりましたので、今日の議論は以上といたします。今日も皆さんから、大変活発かつ建設的な御意見を頂き、本当にありがとうございました。
 若干時間を経過しておりますが、少しコメントさせていただきます。本日頂いた御意見、あるいはパブコメ等を通しましても、この次期計画について、2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会のつくり手の育成という視点と、日本社会に根差したウェルビーイングの向上という2つのコンセプト部分については、かなり賛同、評価を頂いた要素ではないかと思います。それを踏まえた5つの方針についても、骨格としてはかなり了承を得られているのではないかと受け止めさせ頂きました。
 ただ今日もありましたように、不易流行という言葉の流行(りゅうこう)という形で、新しく入ってくる要素、例えばウェルビーイングや教育DX、リカレント、DE&Iなどの新しい要素をどう浸透させるのかということに、いろいろな御意見を頂きました。これは行政の方でも是非工夫に向けた検討をいただけたらと思います。
 ちなみにSDGsも、国連での打ち出しは、2015年の9月でしたが、5年ぐらいの歳月を経てからようやく普及しているわけです。これは教育のカリキュラムにも入れていただいて、SDGsの普及をしているということがあると思いますが、例えばウェルビーイングも同じように、打ち出したものを行政として現場に伝えていき、場合によってはカリキュラムの中に織り込んでいく、これが非常に重要になると思います。SDGsがあれだけ定着したわけですから、是非新しいこの要素も定着させられればと思います。特に、今日のいろいろな御意見を踏まえても、DXの活用によって随分展開の仕方が違うと思います。従来のような上から段階論を踏むのではなくて、DXによって直接伝えるという手法ができますので、是非工夫していただけたらと思います。
 今日頂いた御意見を含めて、次回まとめた上で、答申案として御議論いただきたいと思います。そのような整理でよろしいでしょうか。
【清原副部会長】  賛成です。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。
 それでは、先ほど申し上げたように、次回、答申案の議論をして、年度内の答申に向けて進めさせていただきたいと思います。
 それでは、次回の予定について、事務局からお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  本日もありがとうございました。次回は2月24日金曜日、13時からの開催予定でございます。
 先ほど渡邉部会長からもお話ございましたとおり、次回は教育振興基本計画部会としては、答申案について御議論を頂きたいと考えております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  それでは、今日もありがとうございました。以上とさせていただきます。