中央教育審議会教育振興基本計画部会(第10回) 議事録

1.日時

令和4年11月22日(火曜日)15時30分~18時

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画の指標及び各論について

4.出席者

委員

荒瀬委員、今村委員、内田委員、清原委員、小林委員、清水(敬)委員、清水(信)委員、堀田委員、岩本委員、大森委員、大日方委員、川口委員、河野委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、元紺谷委員、吉田信解委員、吉見委員、渡邉部会長
 

文部科学省

藤江 総合教育政策局長、池田 高等教育局長、里見 大臣官房審議官、森友 総合教育政策局政策課長 等

5.議事録

 【渡邉部会長】  それでは,ただいまから第10回中央教育審議会 教育振興基本計画部会を開催させていただきたいと思います。本日も大変御多忙の中,御出席を頂きまして本当にありがとうございます。
 なかなか新型コロナウイルスの感染が収まらないものですから,今日もウェブ会議とのハイブリッド型で開催させていただきました。
 本日は,次期教育振興基本計画策定の指標と各論の議論を中心とさせていただきますが,同時に総会で示しました5つの目標を,概念整理という形で整理していただきましたので,その関係性も含めて御議論いただければと思います。
 それではまず,本日の会議開催方式,資料につきまして,事務局からお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  事務局の川村でございます。
 本日もウェブ会議での会議開催とさせていただき,傍聴につきましては,ユーチューブにて配信しておりますので御承知おきください。御議論の時間におきましては,挙手ボタンを押していただければと存じます。部会長の御指名により順次御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日の資料は,概念整理,指標,各論の案に関する指標として資料の1,2,3,基本的な考え方に関する資料として4,5,更に参考資料として都道府県の策定する教育振興基本計画で用いる指標をまとめたものをおつけしておりまして,全部で6つでございます。
 最後に,本日は全体30名のうち23名に御参加を頂いております。お忙しいところありがとうございます。
 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。それでは,議事に入りたいと思います。まず,事務局より資料説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  それでは,資料を共有して説明させていただきます。
 本日,まず資料1として御用意をさせていただきましたのが,この次期教育振興基本計画の概念整理検討のためのイメージ図でございます。前回の議論で基本的な方針,相互の関係ですとか全体として主張すべきポイントについて整理すべきという御議論ございましたので,こちらの資料を用意させていただきました。
 まず,この資料の構成といたしましては,この緑枠で囲っておりますのが基本的な方針5つということで,これまで御議論いただいたものでございますけれども,概念整理の御議論の中でウェルビーイングについては,上位概念ではないかという話が複数ございましたので,この共生社会の実現に向けた教育と別の形で,全体に関わる項目として配置をいたしております。多様な個人それぞれが幸せや生きがいを感じられる社会にということで,GDP以外のウェルビーイングの重要性ですとか獲得型と協調型のバランス,日本発の調和と協調あるウェルビーイングの発信,主観的ウェルビーイングの重視,こういった御議論があった内容を記載しております。
 その上で項目として,前回御議論の中で諮問にございました,2040年以降の社会を見据えた社会課題の解決,これにもう一度立ち返るべきではないかというような御意見もございましたので,この予測困難なVUCAの時代と呼ばれる中での様々な社会課題ですとか,また個人に関わるような格差,また地域間格差,社会のつながりの希薄化,こういった社会課題,また,それを解決するということと経済発展を結びつけて考えるのはSociety5.0で活躍する人材の育成に向けた「人への投資」,SDGs,またマルチステージの人生モデル,こういったものも概念上整理をさせていただいております。
 その上で,基本的な方針として,グローバル社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材育成,共生社会の実現に向けた教育,地域や家庭で共に学び支えあう社会の実現に向けた教育というこの3つございまして,それらを支える基盤として,教育デジタルトランスフォーメーションの推進,計画の実効性確保のための基盤整備・対話ということで並べております。真ん中にございますもののうち,この水色の丸で囲っておりますのは16ある目標ということでございます。この目標につきましては,それぞれ基本的な方針と近い位置に配置をさせていただいております。
 例えばグローバル,社会,人材育成というのはこちらの項目,また,この地域や家庭とともにということにつきましては,地域教育力の向上ですとか社会教育,また,多様な教育ニーズ,社会包摂については共生社会ということで,こちらも拝聴した上で,その核となるようないわゆる知徳体と呼ばれるもの,また生涯学習の推進,こちらについては真ん中に配置をしております。デジタルトランスフォーメーションにつきましては,全ての要素に関わるということでございますけれども,こちらは基本的な方針とそれから目標が一体となって関連ありということで,こちらに配置しております。また,実効性確保のための様々な体制整備等につきましてはこちらということで,その上でありますけれども,ウェルビーイングの関連要素につきましてはピンクの色をつけまして,それぞれのウェルビーイングの関連要素がどういった目標ですとか方針と関わりがあるかということで,例えば幸福感,協調性,利他性,こういった豊かな心との関連の深いようなことですとか,社会貢献意識ということでありますと主体的な社会形成の参画・規範意識,また多様性ということですとグローバル社会人材育成,それから多様なニーズ,これは両方対応して関わってくると思いますけれども,ここにはサポートがある。地域とのつながりというのは,この地域の教育力向上の中での関わりがあるということで,全て配置がこの一対一対応ではあるということでございませんで,様々な関わりがあるというものでありますけれども,一旦このような形で整理をさせていただいております。
 それから,社会課題解決イノベーション人材ということで,経団連からも御発表いただきました,必要と考えられる資質能力ということで,これにつきましては黄色で記載をしております。例えば主体性,リーダーシップ,またチームワークといったこと,また,創造力,課題発見・解決,論理的思考力,また異文化理解,こういった能力につきましても,このような目標の中で配置をされるということであろうかと思っております。
 こちらは概念整理検討のためのイメージ図でございますので,この資料自体を詰めるということよりも,総論ですとか各論の議論につながるような最終的には文章として計画自体は出来上がっていくものでございます。そちらの議論に資するような形で御活用いただければということで作成させていただいたものでございます。
 こちらが資料1の御説明でございます。
 続きまして,資料の2でございます。資料の2は,次期教育振興基本計画の指標例として今回お示しをさせていただくものでございます。字が細かくて恐縮でありますけれども,こちら構成としましては一番左側に次期計画の目標ということ,それから,その右側に基本施策ということでこれまで御議論いただいた項目を入れております。
 そしてその次にございますのが,今回お示しをする指標例(案)ということでございますけれども,こちらは今回お示しして,次期の計画の指標として,例としてお示しするものでございます。
 右側に(参考)現行指標とございますけれども,右側は現行の計画で設定をしている指標ということでございます。この指標例のアンダーラインを引いておりますのが新規の項目,それからの修正をする項目,また検討中の項目ございますけれども,こちらは主にアンダーラインを引かせていただいております。
 こちらは少し字が細かくて恐縮ですけれども,御覧いただきますと,まず,1項目目の確かな学力の関係でございますけれども,PISAですとかTIMSSの結果,こちら既存ございますけれども,学力・学習状況調査の結果分析とそれを改善に活用するですとか,また,幼稚園,幼保小の連携の関係,また,公立高等学校におけるスクールミッション・スクールポリシーを改革に活用している。さらに,大学と企業と連携して実施するPBLの開設の割合。課程を通じた学生の学修成果の把握を行っている大学の割合。また,職業実践専門課程,職業実践力育成プログラムの認定課程数の割合,こういったものを新しく追加をしております。
 豊かな心の育成の関係では,主観的ウェルビーイングに関する指標の向上ということで,これまでも自分にはよいところがあると思うですとか,将来の夢や目標を持っている,こういったものはございましたけれども,このほか幸福感ですとか友人関係の満足度等に関する指標を設定することを検討するということ。また,いじめはどんな理由があってもいけないことであると考える学生,児童生徒の割合。子供の不読率の減少,また文化芸術に関して,子供が文化芸術に興味関心を持った割合ということでございます。
 健やかな体の育成,こちらにつきましてはスポーツ基本計画でも既に示されておりますけれども,1週間の総運動時間が60分未満の,児童生徒の割合についての目標値,また,卒業後もスポーツをしたいと「思う」「やや思う」児童生徒の割合,こういったものを追加しております。
 多様なニーズへの対応と社会包摂につきましては,困り事や不安があるときに先生や学校にいる大人にいつでも相談できると感じている児童生徒ですとか,また,公立学校における日本語指導が必要な生徒のうちの,その指導を受けている割合,在留外国人数に占める日本語学習者の割合,こういったものを例としてお示ししております。
 次に,主体的に社会の形成に参画する態度の関係でございますけれども,これは新しい項目でございますが,目標でございますが,地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う児童生徒の割合,そういったものをお示ししております。
 グローバルの関係につきましては,これまで設定した指標に加えまして,この中高生の割合を一定以上にするということで,新しい指標の設定を検討しておりますけれども,留学等の国際交流については,教育未来創造会議等の政府全体における議論もございますので,そういったことも踏まえて指標を設定することを予定しております。
 イノベーションの人材の関係につきましては,自然科学(理系)分野を専攻する学生の割合,学部入学者に対する修士入学者の割合,修士入学者に対する博士入学者の割合といったこと,また生活費相当額を受給する博士後期課程学生数の増加,産業界による理工系博士号取得者の採用者数の増加,それから博士課程修了者数を採用した企業の回答のうち,「期待を上回った」「ほぼ期待通り」というような評価に関する指標,自治体や企業と連携をして,この医療人材の養成に取り組む大学の割合,理工系の学生に占める女性の割合の増加,起業家教育(アントレプレナーシップ教育)の受講者数の割合,こういったものをお示ししております。
 生涯学び,活躍できる環境整備,こちらにつきましてはこの1年くらいの間に生涯学習をしたことがある者の割合,これまでの学習を通じて身につけた知識・技能が自分の人生を豊かにしていると回答した者の割合ということで,これまでの指標に追加をしております。
 学校・家庭・地域の連携・協働等でありますけれども,こちらはコミュニティ・スクールの導入自治体についての指標ですとか保護者に対する学習の機会及び情報提供その他の必要な施策を講じている,また,地域との協働による取組や活動が学校の教育水準の向上の効果,これに関する指標,また地域学校協働活動の参画状況,保護者や地域と協働活動を行った学校,こういったことについての指標を設定することを検討しております。
 地域コミュニティの関係の社会教育につきましては,社会教育士の称号付与数の増加,こちらを指標の例としてお示しをしております。
 DXにつきましては,児童生徒の情報活用能力についての,指標の設定の検討,ICT活用の指導力に関する研修を受講した教員,ICTを活用した授業頻度の増加,数理・データサイエンス・AI等の受講対象学生数の増加でございます。
 指導体制・ICT環境の整備につきましては,教育委員会における働き方改革の取組状況の,公表割合の増加,また,教員業務支援員をはじめとした支援スタッフの参画,ICTを活用した校務効率化の取組状況,次世代の校務デジタル化を構築済みの自治体の割合,教員の採用選考試験における優れた人材を確保するための取組状況,教員研修の効果的な実施に関する取組状況,小・中の教員免許状の,併有の状況,ICT支援員の活用状況の改善。こういったことをまず初中で入ってございますけれども,例としてお示しをして,高等教育段階では大学における外部資金の獲得状況,また,中期的な計画を評議員会の議決を経て決定している法人の割合,こういったことを例としてお示ししております。
 それから経済的,地理的に関してはこれまでと基本的には同様の指標でございます。
 NPO・企業・地域団体等の連携につきましても,指標設定を検討しております。
 安全・安心,質の高い教育の関係,こちらもこれまでの指標を原則として踏襲する形としております。
 各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップにつきましては,国・地方公共団体の教育振興基本計画策定における子供の意見の聴取・反映の状況の改善,こちらを例としてお示しをしております。
 以上が指標例でございますけれども,お示しをしました指標に関しまして,これまでの実績値につきまして,以下で御参考して資料としてお配りしております。全ての指標ではございませんで,また,年度につきましても,調査が行われていない年度につきましてはバーとなっておりますけれども,おおむね過去5年程度の基準がある年はその年度ということで,こちらをお示ししておりますので,御参照いただければと思っております。
 それからこれに関しまして,こちら都道府県の指標の設定状況ということで,都道府県の教育振興基本計画において,どういった指標が設定をされているのかということを参考資料の方でお示しをしております。資料の順序は恐縮ですけれども,参考資料,最後の資料になりますけれども,こちら都道府県のうちの指標をまとめて掲載をしている自治体に関して,抜粋をしてお示しをしておりまして,19の府県に関する指標でございます。
 分量が多うございますので,かいつまんでということではありますけれども,例えばこの冒頭ございます山形県につきましては,自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合ですとか,将来の夢や目標を持っている児童生徒の割合ということで,国の計画での指標を活用されておりますし,また,県独自の教材を活用した県立高等学校の割合ということですとか,読書が好きな児童生徒の割合,また,毎日朝食を取っているということですとか,学力調査に関するような内容,また,大学進学に関するような状況,こういったところを指標化されております。グローバル化に関しては,国の指標と基本的には同様の指標が設置されております。ICTの活用に関する状況,また,自己実現を図るためのということで,将来の夢や目標を持っているということですとか,難しいことでも失敗を恐れないで挑戦するというようなこと,特別支援教育に関する「個別の指導計画」,また,教員の勤務状況に関するものですとか,地域の行事に参加している,よくするために何をすべきか考えるということ,この地域独自の関係の文化的な状況,青少年の関係等々ということで,最後スポーツですけれども,こういった形で設定をされております。そういう形で非常に多様な指標が設定をされているということでございます。
 少しもう一つ,御紹介をさせていただきますと,36ページ,岐阜県でございますけれども,岐阜県ではふるさと教育ということで,課外活動で地域のことを調べたり,地域と関わったりする機会があるという割合ですとか,地域の行事に参加している割合ということで,国の指標とそれぞれ県で取られている指標を組み合わせているということでございますし,キャリア教育についての将来就きたい仕事,また,グローバル人材の育成については,高校在学中に留学する高校生の数,優れた才能や個性を伸ばすということに関しては,科学技術に関するコンテストでの入賞した高校生の数ということを掲げられております。またコミュニティ・スクールですとか,特別支援に関する状況,多文化共生,いじめ等々ということでございます。また,資質・能力の育成についてはそのような活動に取り組んだことがある割合ですとか,英語力の強化についてはやはり国の指標が引用されているということでございます。情報活用能力に関しましても,授業中にICTを活用できる教職員ですとか,また情報モラルの指導,それから,人間性については自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合ということで,主権者教育,体力づくり,健康教育ということで,こういった形で各都道府県におかれて指標設定がされているということでございます。
 網羅的で恐縮でございますけれども,参考としてお示しをさせていただくものでございます。
 それから資料3でございますけれども,各論でございます。前回この各論については御議論いただきまして,その御意見を踏まえまして,修正をさせていただきました。
 頂いた御意見のうち,個別の項目に関する内容につきましては基本的に反映させていただきましたけれども,一部検討中のものがございますのと,項目がまたがるような形で御意見を頂きましたので,これについては少し全体整理の上で,また改めてということを考えておりまして,そちらは次回までにお示しさせていただきたいと思っております。
 今回の修正箇所の関係でございますけれども,前回の確かな学力に関して御意見がございました。全国学力・学習状況調査の実施・分析・活用,こちらにつきましてこの並びの順に違和感があるというような御指摘がございましたので,位置を修正するということでございます。
 それから大学入試を入学者選抜いたしましたのと,内部質保証という文言の追加,また,文理の表記の分けを解消すべきであるという御意見について,普通科改革等による文理横断・探求的な教育の推進ということ。
 それから,少し飛びまして8ページになりますけれども,特別支援の関係でございますけれども,インクルーシブ教育システムの実現に向けた取組を一層進めるという,この表現の修正でございます。
 少しまた飛びまして11ページになりますけれども,障害のある方の生涯学習ということで,取組の企画や運営に当事者の参画を得るといった記載の追加でございます。
 それから,ESDに関する頂いた御意見を踏まえた修正も行っております。
 また,この海外留学に関する児童生徒学生の安全確保の啓発に向けても追記をしております。
 国際教育協力についても,頂いた御意見を踏まえましての修正をさせていただいております。
 それから,理工系の人材につきましては御指摘ございましたので,少し場所を移しまして,理工系分野をはじめとした人材育成及び女性の活躍推進ということで,こちらで言及をするということとさせていただきましたのと,優れた才能・個性につきましては理数系分野に特化したということだけではないというような御意見がございましたので,こちら削除いたしております。
 また,生涯学習に関する御指摘いただきましたので,それを踏まえての修正,生涯学び,活躍できる環境整備という目標名の修正でございます。
 それから,家庭教育支援につきましても修正をさせていただいております。
 それから教育DXの関係,遠隔・オンラインを追記ということで,1人1台端末の活用の関係での充実でございます。
 それから,地方教育行政の充実に関しましては,項目立てをさせていただきました。24ページでございます。
 それから,経済的支援につきましては,現在,検討状況を踏まえた時点修正のような形で修正をさせていただいております。僻地や過疎地域等における学びの中でのデジタルの活用につきましても,御意見を踏まえた修正をさせていただきました。
 それから,最後の司書教諭の関係,少し記述の重複がございましたので整理をしての修正ということでございます。
 私からの説明以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。それでは,冒頭説明いただきました次期教育振興基本計画の概念整理と指標,各論について御議論いただきたいと思います。
 当初,資料1の概念整理と,指標,各論は分けて御議論いただこうかと思いましたが,概念整理は総論の全体体系も表しており,この体系に基づいて指標,各論を関連付けた御意見も出るだろうと判断しましたので,全体一括して御議論いただくこととしました。
 ただ,この概念整理についての御意見なのか,指標,各論の御意見なのかは冒頭少し言及していただく,あるいはこういう関係性についての意見と言っていただくと,今後の整理がしやすいものですから,その点について御配慮いただくと有り難いと思います。
 それでは御意見のある方は,挙手をお願いします。まず吉見委員,よろしくお願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。少し途中で出なくてはならないものですから,また戻ってまいりますけれども,一言,簡単に意見を申し上げさせていただきます。
 概念整理のところがだんだん整理されてきていると思いますけれども,このとき一つ前から疑問に思っておりますのは,一方で,誰一人取り残さない,そしてウェルビーイングを広めていくという方向と,もう一方で,グローバル人材といいますか,グローバルにどんどん活躍していくトップ層を伸ばしていく方向と,この関係が問われてきます。
 この2つの方向は,一見矛盾する面を含んでいます。そこをどう整理するかがいずれ問題になってくるはずです。そのとき,そこは両立するのだということを指標の中で具体的に示していくことが必要になってくるはずですね。誰一人取り残さないことと,トップをもっと伸ばしていくこと,この2つが両立することを,指標で具体的に示していただきたいと思います。以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。本来,個別最適をずっと伸ばしていくとグローバル人材,イノベーション人材といったものにつながっていきます。一方,協働的な学びを置き,なおかつ全体としてダイバーシティ,インクルージョンの視点を入れておりますので,セーフティーネットも同時に張っているということだと思うのです。全体としてはそういうバランスを取りながらの全体構図になっていますので,それをより分かりやすくできればと思います。
ありがとうございました。
 それでは,内田委員,お願いいたします。
【内田委員】  
 まず,資料1の概念図なのですけれども,とても分かりやすく整理を頂いたのではないかなと思っております。その上でこの資料1に関して,2点,意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 1点目,
 資料1の,真ん中の右のあたりに,健やかな体,スポーツのところに健康という言葉が出てまいります。これはウェルビーイングの関連要素として挙げていただいていると思うのですけれども,学校に関連する健康ということを考えたときに,身体的な健康だけではなくて心の健康というのは実は非常に重要な問題なのではないかと思います。ですのでここについては心身の健康とできないだろうかということを提案させていただきたいと思います。
 2点目につきましては,豊かな心に関連するところです。信頼関係のあるようなつながり,そういった場所を教育の現場が提供できているかどうか,こうしたことが今後のウェルビーイングの関連要素としても重要であろうと考えております。
 そうした中で,つながりとか信頼関係というのがどこにあるかなと思って見ていたのですけれど,右上の方に地域とのつながりという言葉はあるのですけれども,学校の中で友人や先生たち,様々な仲間とのつながりというものが実感できるような場であることというのが豊かな心を育んでいく上でも大切かなと思います。したがって,例えば学校でのつながりとか信頼あるつながりとかそういった言葉に落とし込んで,少し右上の方だけではなくて,中心に近いようなところにもそうした要素があるとよいかなと思いました。
 ウェルビーイングの関連要素というのは,学校に関わっている主体は生徒さんです。主観的な心の働きであるとか気持ちであるとか,どんなふうに感じることができたかということにつながる重要な要素だと思いますので,これはいつも申し上げていることで恐縮なのですけれども,主観的な指標というのも整理して,指標化を考える上で展開できるようにできないでしょうか。例えばこういうタブレットなどを活用して,簡便に調査に回答できるようにしていけば,私たちも直接的に教育を受ける人たちの声を聞くことができる,そんなことが実現できるのではないかと思いました。
 次に少し各論的なところで資料3の方なんですけれども,資料3でもかなり網羅的に様々なことが書いておられているので,非常に充実した内容かなと思ったのですけれども,ここであえて私は教員のウェルビーイングということを入れていただきたいと思います。これまでもこの話が何度か出てきたかなと思いますし,今回の中央教育審議会全体においても,教員免許制度の更新の話であるとか,教師の働き過ぎによるバーンアウトの問題等が議論されてきた中で,子供たちが安心して学べる場をつくるためには,教師や学校を取り巻く事務職員も含めてのウェルビーイングもとても大事ではないかということを思っています。このことを明文化していくことというのは重要なのではないかと思いました。
 もちろんどのように教員の方のウェルビーイングを測定していくかとか指標化するかというのは別の議論の話だとは思うのですけれども,目標として私たちは教員の人たちのウェルビーイングを考えるべきフェーズに来ているのだということは,ここでは明記してほしいなと思っています。この目標12あたりでしょうか,指導体制というあたりが一番フィットするかもしれませんので,その辺りは御判断いただければと思います。教師のウェルビーイングというものを考えるような学校づくりをしていく。その中で地域と連携しながら教員と保護者や地域が一体となってウェルビーイングを支えていくのだ,こうしたことをはっきりと記していただくことができないかなと思いました。
 以上でございます。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。冒頭の御意見のところは,目標や施策では豊かな心や健やかな体という形で,ウェルビーイングの関連指標だと分かるようにしていく工夫が必要ではないかと思いました。また,つながりも非常に重要なキーワードになると受け止めさせていただきました。教師については恐らくまたいろいろな御意見が出ると思います。別途,特別部会でも答申に向けて議論し,まとめておりますので,それとの関係性も含めて今後整理していく必要があると思いました。ありがとうございました。
 それでは,吉田信解委員,お願いいたします。
【吉田(信)委員】  ありがとうございます。様々な分野にわたりまして非常に網羅的に書かれていて,それぞれ非常に練り込まれている形に出来上がってきていると思います。
 その上で,私自身がやはりこれはもう少しずしっと土台というか,大事な言葉が少し抜けている部分があるのではないかなと思っていることを,この際申し上げさせていただきます。
 それは,この日本社会に根差したウェルビーイングということを言っているのであれば,やはり日本,あるいは日本という国,これをどうしっかりと捉えてやっていくのかというのを教育のど真ん中に私は据えるべきだということは常々感じているところでございまして,以前,愛国心云々(うんぬん)という言葉がありましたけれど,私はむしろ愛国心というよりは,日本という国の将来に対する,しょっていこうというその覚悟というか気概というか,それをどうやって子供のうちから皆さんで身につけていくかということは非常にこれからの日本は大事ではないかなということを感じているわけでございます。
 これはグローバル人材の育成であれ,誰一人取り残さない教育であれ,やはり根本的に我々はこの日本社会,日本という国に生きているわけでございますので,そこを抜きにしてはいけないと感じております。
 例えば12ページの主権者教育,これは社会で生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担うと書いてありますけれども,私はやはりこういったところにもむしろ日本という国の課題,これをどう解決していくか,その先にやはり世界に対する貢献というのがあるのではないかなと。地域からいきなり世界に行くのではなくて,やはり日本という国をどうするのかと。この問題意識というのをしっかりと我々は子供たちに一緒になって考えようよという姿勢が私は大事なのではないかなということを感じております。
 日本社会に根差したウェルビーイングということで全体を網羅していますよと言うかもしれませんけれど,やはりこういった主権者教育のところにも,国あるいは日本という言葉を明文化,言葉化していくことは私は大事じゃないかなと。日本という国をしょっていく,この意識をしっかり持っていくこと,これは例えば日本人といったときにこれからは多文化共生であるべきでありましょうし,私はどちらかというと帰化を進めている方なのです。いろいろな民族,いろいろな人種の方々が同じ日本人として日本社会をしっかりしょって,日本という国をしょって,そして世界に貢献していこうよという,そういうことをよく申し上げているのですけれども,やはり国とか日本という言葉がどうも全体的に足りないと感じております。
 それから,4ページの道徳教育です。ここも自己の生き方とか主体的な判断,自立した人間と書いてあるのですけれども,私はやはり他者とともによりよく生きるための基盤という道徳性,こういうふうに言うのであれば,例えばやはり人格の陶冶とか人間の品格であるとか,そういったところをもう少し何かうまく表現できないかなと思っております。
 今,実は礼儀作法とかに対する非常に関心がまた高まっていると聞いておりますけれども,あれは形としての礼儀というだけではなくて,やはり人に対するその接し方,人間の立ち居振る舞い,人間の人格を磨く,品格を磨く,こういったところにやはり道徳教育というのは非常に大事なのではないかと思っています。
 実はグローバル人材と言ったときに,正に日本人として外の世界に出て行ったときに,やはり尊敬される日本人でなければならないし,他国に対して,皆さん方からさすがだねと言われるようなそういう日本人になってほしい。私は常々そういうふうに思っております。その辺いろいろ申し上げましたけれど,要はその日本という国,こういったその文言が少し少な過ぎるのではないかな,日本あるいは国家,そういった文言が少な過ぎるということを指摘をさせていただきまして,私からの意見とさせていただきます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。今頂いたような御意見も踏まえて,これまでに教育基本法が改正されて,第一条でも平和で民主的な国家,それから社会の形成者といったものが強調されたのだと思いますし,公共の精神とか社会の形成に主体的に参画するといった言葉が明確化されたのだと思います。
 したがって,基本計画もそういった基本的な考え方をベースにして,それゆえにウェルビーイングも日本社会に根差したという形にしたということだと考えています。国家に関わる大変貴重な御意見を頂いたと思います。ありがとうございました。
 それでは次に,元紺谷委員,お願いいたします。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。まず概念整理について指摘させていただきます。非常にすっきりして見やすいデザインになったなと思います。
 それから,ウェルビーイングについては以前から話しているとおり,学校現場ではなかなか使われていない言葉なので,ぴんとこないということがあるので,どこかに説明が必要だと何度もお話しさせていただいています。ここにもウェルビーイングのことについては何となく書かれていますけれども,最終的には資料4の5ページに書いてある,この経済的な豊かさのみならず,精神的な豊かさや健康までを含めて幸福や生きがいを捉える「ウェルビーイング」という,このぐらいのフレーズはどこかにあってもいいのかなと思いました。
 次に,各論の話を1点だけ指摘させていただきます。私が所属している学校が定時制通信制の高校ですので,資料3の10ページになります。定通教育のことについて少し言及させていただきます。
 前回も頭出ししましたけれども,高校教育改革のページが2ページにありますが,高校教育改革でうたわれている文言については,ほとんどがやはり全日制が対象の内容だなというふうには理解してしまうのですよね。そして,定時制・通信制という文言を特出しして載せることについては,非常に大きな意味があると考えていますが。
定時制と通信制は実は違うので,通信制については前にもお話ししたように広域通信制の不適切な学校教育活動とかもあったこともあって,協力者会議などを含めてすごい議論が重ねられていて,質の保証がなされてきたのですけれども,そんな中で定時制が実は埋没しています。定時制だけを議論した話は,聞いたこともないのですけれども,定時制の位置ってどうなのだろう。夜間定時制の持つ意味,そして多部制,1,2部,3部制の定時制,この辺りの議論が必要じゃないかなと思っております。
 それで何を伝えたいのかといいますと,全日制,定時制,通信制というこのカテゴリーといいますか,これを根本的に見直す時期が来ているのではないかと提案したいと思います。特に不登校の生徒は全日制から定時制や通信制に流れるという,こういう流れを踏まえたときに,全日制と定,全日制と通という関係性を考える必要があります。実は通信制はほとんど学校に行かなくてもいいようなつくりになっていますけれども,逆に登校をできるような,要は全日制でないのですけれども,制で5日登校とか3日登校とかということで,不登校の生徒が登校できるような学校が増えてきています。特に広域通信制の学校では。
 これをもう少し公教育,地方公共団体が設置する公立高校においても,もう今や全日制課程を持つ学校が,全ての学校が通信制課程を併置し,そして全日制でうまくいかなくなった,つまずいた子が通信制にすぐその場で移行できるようにしてあげる。あるいは通信制に入りながらも,一部の教科科目については学校に通って授業を受けられるような,これはういう制度的には現行の制度下においてもできるはずなのですけれども,それがまだうまくいっていない。そういったところを今回のこの第4期のときに検討するような方向性を打ち出してはどうかなと思います。
 最後に細かい点なのですけれども,この定・通のところに学びの受皿という言葉を使われています。受皿って何となくイメージがよくないと思います。3期ではこの受皿という言葉は,学びのセーフティーネットと使われていたと思います。そして,その下の高等専修学校も受皿という言葉があるのですけれども,ここも学びのセーフティーネット。高等教育でも学びのセーフティーネットと使っていますけれども,ここはそういう表現の方がよろしいのかなと考えております。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。定時制・通信制について大変貴重な御意見を頂いたと思います。中途退学,不登校の問題も別途議論がされているところでございます。従来のセーフティーネットの考え方が多様な対応に変わってきていると思いますので,この辺の他のいろいろな検討も含めてもう少し整理をするということで,事務局としてもよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは次に,川口委員,お願いいたします。
【川口委員】  どうもありがとうございます。私,資料2に基づいて意見を申し述べさせていただきたいと思うのですけれども,1のところでTIMSSとかPISAを使って,世界トップ水準の科学的,数学的なリテラシーを維持するのだということが書いてありまして,これは大変結構なことだと思うのですけれども,恐らくこれはテストの平均点のようなことを考えてこういう記述になっているのだと思うのですけれども,誰も取り残さないとか例えばそういう目標を評価するのであれば,PISA,TIMSSのこの集計の仕方と,例えばボトム10%の人の成績が国際的な水準においてどうなのかといったような比較をすることによって,いろいろな目標をこの同じデータから評価することができると思うので,集計の仕方を工夫することによってこの1番だけではなくて,ほかの目標の評価,指標化のところでも例えばですけれども,PISAとかTIMSSというデータは使えるのではないかと思いました。
 それで2番目のところで,今回主観的ウェルビーイングが重視されるということで,幸福感とか友人関係の満足度についても指標を設定するということが組み込まれていると思うのですけれども,これはかなり議論があるところだと思うのです。というのは幸福感というと,よく社会調査だとゼロから10で幸福感を答えてもらうみたいな形のものが多いと思うのですけれど,例えばGDPが上がっても幸福感があまり上がらないみたいな話というのはあって,それは仮説としては,みんなが豊かになっていく中で相対的に自分のことを評価すると,必ずしも幸福度が上がっていかないみたいな,そういう説明の仕方とかがされていると思うので,どういうふうにこれを聞くのかというところについても,少し考えておく必要があるのかなと。
 一つ考えられるのは,そのレベルでの幸福感というのを聞くと同時に,過去と比べての差分での幸福感の変化みたいなものを直接聞くというようなことが考えられるのかなと。さらには望むべくは同じ個人を連続的に調査したパネル調査の中で,幸福感の質問を入れていくと,それに基づいて指標をつくっていくということを考えてもよいのではないかと思いました。
 それとEBPMについては,次回以降議論するというようなお話を伺ったのですけれども,やはりこの目標をつくっていく中で例えばなのですけれど,今画面に出ているので,例えばの例で申し上げるのですけれども,職業実践力育成プログラムの認定課程数の増加というのが掲げられているのですけれど,暗黙の前提になっているのは職業実践力育成プログラムというと職業実践力が上がると,例えば所得が上がるとか就業率が上がるというようなことが暗黙のうちに想定されていると思うのです。
 もう今回は何かエビデンスがないとやらないという話ではないと思うので,これを設定すること自体は全く問題ないと個人的には思うのですけれども,やはりこういうことをやったからには,それが本当に職業実践力というものに労働市場での評価にどういうふうにつながっていくのかというのを評価するような仕組みというのを同時に組み込んでいかないといけないのかなと。
 EBPMというのは何か別立ての課題というよりも,一つ一つの課題についてそれを振り返って後でどういうふうに評価するのかというところを組み込んでいくという考え方も必要だと思うので,今後,議論されるということかもしれないですけれども,少し気がついたのでコメントさせていただきました。どうもありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。指標例について,幾つか御意見を頂きました。
 最初のPISAやTIMSSは,日本の教育の現在位置が国際的にどういうポジションにあるのか明確化する非常に重要な指標だと思いますので,御意見いただいた内容も含めて精査していく必要があるのではないかと受け止めさせていただきます。
 Evidence Baseは恐らく今のこのコロナ禍で全部の数値が整わないということもありますが,全体としてEBPMについての考え方を取り入れながらどう整理するかということだろうと思いきます。ありがとうございました。
 それでは次に,牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】  ありがとうございます。私たちの議論をうまくまとめてくださって,更に概念もきれいに整理をしてくださって,どうもありがとうございます。
 その上で少し,この特に1の概念図についてなのですけれども,もう少しその構造化の在り方といいますか,視点を少し変えられないかなという思いがあります。どういうことかといいますと,5つの指標の基になるものがあって,黄色いところが社会課題解決のイノベーション人材の関連要素,ピンク色がウェルビーイングの関連要素ということになっています。ただ,全体の記述を読んでみますと,社会的な課題解決であったり,国の問題であったり,当然,国の教育基本計画なのでそうなると思うのですけれども,何か社会的な観点から人材を育成するとか,国民を形成していくというような形で議論が進んでいるような感じを受けるのです。
 その意味では,ここにある社会課題解決のイノベーション人材という黄色いところと,ウェルビーイングというこのピンクのところの関係も,どちらかというと課題解決のための人材育成の在り方として,例えばウェルビーイングを重視しましょう,また,課題解決のために人間の在り方としてウェルビーイングを重視しましょうとか,また,そのための環境整備の在り方として,ウェルビーイングを重視しましょうというような形に引きずられているような感じを受けて仕方がないところがあります。
 ただ,今,例えばこの部会での議論も予測不可能なVUCAの時代に入ったということの中で,これからの教育をどう考えるかというときに,従来の枠を超えるような形で,ある意味で,教育が社会をつくり,また引っ張っていき,社会が経済を引っ張っていくというような観点の中で,新しい国の在り方ですとか社会の在り方を模索するといった議論の一環として,教育をどうするかという議論になっているのではないかと思うのです。
 その意味では,例えば社会課題解決のための人材育成,またイノベーション人材という議論でいくと,いつまでも社会という枠の中に子供を閉じ込めてしまっていたり,また,課題解決の後追いをする教育の在り方みたいになっていってしまうところがあるのではないか。その観点から指標がつくられていって,評価を受けるということになると,教育といったものがなかなか革新されないというか,また社会を変える力になっていかないような感じを受けてしまいます。
 その意味では,例えば構造化というか,全体を構成する視点として,社会課題解決も大事なのですけれども,どちらかというと,例えば人生100年を生き抜かなければならない,生き抜くことができるようになった子供たちが,将来どういう形でこの社会を担うのかというか,もっと言えば,私たちがどういう形で子供たちにこの社会を引き継いでいくのかという観点から,少し全体を並べ替えてみると,少し違う全体の論理の構造になっていくのではないかと思います。
 そうなると,例えば今回頂いたものの中には16の目標がありましたけれども,それをもう少し整理ができて,今の構成ではどちらかというと並列みたいになっていますけれども,もう少し幹になるものと枝葉になるものといいますか,そうしたものが区分けができていって,もう少し分かりやすいというか,網羅的ではなくて,どこが重点であって,どこを私たちはまず目指していくのかということが分かるようなものになっていくのではないかなと思うのです。
 こう考えていくと,新しい教育振興基本計画ということで,前回も渡邉会長もおっしゃったように,4期なのだけれども,むしろ新しいものなのだと捉えられないかとおっしゃったこと,そうしたものがやはりここに反映されていくことになるのではないかと思います。少し全体の構造化の視点から考えると,いまの議論では,社会から見て子供たちをどうするのか,これは少し言い過ぎかもしれませんが,あえて言いますと,何か今ある大人とか社会が教育を通して子供は操作可能なものなのだと捉えているような観点が反映しているという一面もあるのではないかと受け止められてしまうところがあるように思うのです。
 そういう意味では,もう少しやはり子供たちを中心にして,子供のために今の大人が何ができるのかですとか,子供が将来生きていくといったことに関して社会はどうあったらいいのか,教育はどうあったらいいのかといったことを機軸に置いて,全体を少し構成し直してみると,もう少し社会を俯瞰(ふかん)しながら新しいものをつくっていくという観点につながるのではないかと思いますので,その辺り少し御検討いただければと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。大変重要な御指摘だと思います。確かに人生100年時代を生きられるようにするには,要するに個の成長に力点を置く,明確化するというのは非常に重要な視点です。
 その中心にある確かな学力や健康など,概念整理の中心にある水色で示したものがそれらを構成し,そこが教育の基本ですが,社会課題の解決はこの外にあり,どういう関係性を持つのかということだと思います。
 先ほど御意見がありましたように社会や社会課題との関係性をどう考えるのかということが,次の未来を考えたときには非常に重要な要素になりますし,事務局から御説明がありましたように,この課題に教育としてどう対応するのかということが今回の諮問事項でもありますので,そこは両方を見なければいけないと思いました。
 非常に重要な御指摘,ありがとうございました。
 それでは次に,清水敬介委員,お願いいたします。
【清水(敬)委員】  資料の取りまとめ,ありがとうございます。
 私の方は今日この会の場で申し上げることなのかどうか分かりませんけれども,せんだって小中学校の現場の先生方と少しお話をする機会がございまして,それを踏まえまして,今日資料3の1ページのところになりますが,目標1の2つ目の丸のところです。主体的・対話的で深い学びと学習指導要領というところの内容になりますけれども,ここの中でせんだって少しいろいろと話をする中で,現状今の小学校,中学校の授業というところでいきますと,いろいろな様々な教育が今あります。消費者教育であったりだとか,主権者教育であったりだとか,防災教育もしかりです。いろいろな丸々教育というところが非常にたくさん出てくる中で,気がつくと週単位で授業を受け持つ,こまの話になってくるのですけれど,非常に前の大昔の学校6日制だった時代と今を比べると,もうほとんど変わらないような週の時間数になっているというところでございます。
 そして,結果的にそれが実情でいくと29こまほどあるそうなのですけれど,非常に時間的な余裕代が子供たちもまた学校の先生方も非常にない中で,そういったところでいわゆる学校の先生方いわく,放課後のゆとりの時間といいますか,子供たちに向ける時間というところが非常に取りにくいというところもある。また,子供たちも,自分の子供もそうですけれど,非常に授業後,学校から帰ってきてばたばたと塾に行ったりだとかいろいろなことで忙しい子供たちがたくさんいる中で,なかなか現場,いわゆる放課後の学校での,先生との交流というか,ゆったりとした時間というのが非常に取りにくいというところが非常に今課題ではないかなと私も常々思っておりましたし,現場で働く先生方からもそのような話も聞いておりました。
 そういったことも踏まえまして,現状は小学校4年生から中学校3年生の子供たちが同じような時間数を毎週やっている,勉強しているというところになりますと非常に時間的な余裕がないものですから,そういったところも踏まえて,今後授業改善の推進であったりだとか,将来の教育課程の,基準のさらなる改善という部分について,改めてこの部分について検討するべきではないかなと思ったりもしますし,誰一人取り残さない教育,つまり豊かな学びの保障を常に優先に考えるべきではないかなと考えております。
 すみません,少し話があちこち飛びましたが,私の意見とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。先生方の働き方改革に関する御議論と非常に重なる部分もあります。働き方改革は別の答申が動いていますので,その視点も捉えたいと思います。
 その上で,カリキュラムの時間数の話は,ゆとり教育導入時に時間数を削減したことで何が起きたのかということも踏まえて,中身や質をどうするか,あるいはDXを使って全体の効率をどうするかとかという視点が重要なのだろうと思います。時間数を減らしてしまったことの問題点も数多くありましたので,そこのバランスは今後も必要なのではないかと考えます。ありがとうございました。
 松浦委員,お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。私はたたき台と指標例とを両方見比べてみて考えたことを申し上げたいと思います。
 事務局で議論を踏まえて丁寧に整理していただいて,概念図も非常に全体がよく分かる状況をつくっていただいたと思います。それだけにまた少し気になるところも出てきました。例えばたたき台の目標,基本施策と指標とされているものとの対応関係というか,整合性などについて少し気になることがあります。例えば細かいことですが,1のところで指標例として新しい項目も増えているのですけれども,学生の学修時間の充実というのが残っています。ただ,たたき台の文中にはこの学修時間のことは出ていません。学修成果の把握ということは書かれているのですけれども,今も大学設置基準は時間枠を基本的な立てつけとしているので,学修時間というのは単位の実質化という観点から重要ではあるとは思うのですが,オンライン教育等で例えばオンデマンド教材を2倍速,3倍速で学修してしまう現状がある中で,大学の学生の学修時間,学修量や学修成果というものを時間枠で測ることが限界があるのではないかと思います。そうしたこの文章にあるものと指標との関係が少し気になるところがあり,少し対応関係をよく精査してみる必要があるのかなと思いました。
 それとの関連で言いますと,もう一つは7番のイノベーション人材のところです。確かにイノベーションということで言えば理工系分野,自然科学分野ということに重点は置かれると,これも国全体の政策としてそちらの方へ向いているということも事実かとは思うのですけれども,この振興基本計画は全体的な包括的な計画となっていて,1のところでは文理横断・融合ということ,あるいはまた別の中では総合知ということも議論の中では出てきています。イノベーションというのも必ずしも科学技術だけでイノベーションがうまくいかなかったから今また問題になっているわけで,これこそ正に総合知というか,人文学,社会科学の知見というものも技術と融合させることで初めてこれからのイノベーションというのは実施できていくんだと思います。その辺りここの指標もどちらかというと自然科学,理工系に非常に重点化されているところが少しもったいないというか,この政策の意図自体をうまく指標として測れないようになっているのではないのかということを思いました。
 あと1点だ,こうやって指標として出していただくと,目標案の12番のところのこの指導体制・ICT環境の整備,教育研究基盤の強化というのが,何か幾つかかなり区別できるものが複合的に入ってしまっていまして,特に私,高等教育が専門なので気になるのは,ここに大学の外部資金獲得状況とか,それから大学のガバナンスの指標とかが入ってしまっているのは少し違和感があります。12の目標に関しては,各論のところでもう少し何か整理というか再構成することが必要かなと思いました。
 以上でございます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。総合知の必要性については,総論のときの議論では,文理横断とか総合知という形で整理しており,各論ではSTEAM教育にも言及しているので,御意見の趣旨は一応この総論の整理ではされているものと思います。
 ただ,現実的に高校以降の文理の偏り方は,やはり少し行き過ぎいるのではないかと思います。STEAM教育を高校から重視し,是正しなければいけないという議論になっており,自然科学と人文・社会科学の両方の視点を融合することこそがイノベーションなのだという考え方はおっしゃるとおりだと思います。自然科学については,今まで文理の比率があまりにも違い過ぎているものですから,少し強化せざるを得ないということもありますので,両方が大事だということはしっかり文言整理をしていきたいと思います。
 それでは,清原副部会長,お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原です。部会長,事務局におかれましては,これまで審議してまいりました総論に基づきまして,各論を充実するためにこれまでの私たちの意見を反映した資料を作成していただき,感謝します。
 私は資料3の各論を中心に,幾つか気づいた点について申し上げます。1点目は,3ページの目標2,「豊かな心の育成」についてです。この目標の最初の〇には,「子供の権利利益の擁護」が明示されています。これは「(国連)児童の権利に関する条約」と来年4月1日に施行される議員立法による「こども基本法」の理念を反映しているもので,極めて重要です。
 そして,2番目の〇には,「主観的ウェルビーイングの向上(自己肯定感,他者とのつながり等)」が明記されています。資料1に示していただきましたように,私たちが受けている諮問は,「2040年以降の社会を見据えた社会課題の解決」を目指しているわけですが,特に,「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を検討している際,それを上位に,あるいは共通基盤に置いている,そういう検討をしてきました。そこで,特にこの「主観的ウェルビーイング」という概念は重要になってくると思います。
 そこで,資料2の評価の指標でも,「主観的ウェルビーイングに関する指標を今後検討する」となされています。この場合,私が,少し調べましたら,先行しているものにOECDやユニセフのウェルビーイングに関する評価項目があるわけです。その上で,日本の子供のデジタル化を含む環境に合致するようにウェルビーイングの要素をリストアップしたり,類型化したり,評価しやすい指標にしていく必要があります。
 そこで,例えば「国際連合子どもの権利条約」に関して,2021年に示された「デジタル環境との関連における子どもの権利についての一般的意見25号」というのにも注目したいと思います。これは「デジタル環境の中で,子どもたちの生活のほとんどの側面にデジタル化が重要な影響を及ぼしている。したがって,子どもの権利の実現のためにいかにデジタル環境を安全で公正なものにしていくかということが重要になってきている」としています。
 子供たちが,この意見をまとめるときに話してくれた意見の中でも,「是非先生たちはオンラインの中で当てにならない情報に対応する手助けをしてほしい」とか,「自分のデータが実際どうなるのかについてはっきりさせてほしい」などの声を上げていたということも報告されています。
 そこで,こうした一般意見なども参考にするとともに,文部科学省の中でも研究が多くなされているOECDの取組も重要だと思います。昨年5月に採択されている「デジタル環境における子どもに関する理事会勧告」でも,「子どもを保護する対象としてだけ捉えるのではなくて,デジタルにアクセスするとともにその利益を享受できるように子どもたちをエンパワーメントすることの重要性」も指摘されています。これはここに書かれている「主観的ウェルビーイング」の概念と関連しているように思います。
 ウェルビーイングという言葉は抽象度が高いんですけれども,是非子供たちが,いかに日々の学びあるいは暮らしの中で満足感を持っているか,そして自己肯定感を持っているかなど,せっかくですので「日本型ウェルビーイング」を提唱するとともに,「日本型のウェルビーイングの評価指標」についても示すことができたらなと思います。
 2点目です。資料3です。目標4の「多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂」,そして,目標5の「主体的に社会の形成に参画する態度の育成・規範意識の醸成」。この2つというのはやはり子供あるいは大人を含めて学修者の基本的人権を尊重し,民主主義の担い手としての意識と行動を教育現場の中でしっかりと見据えて取り組んでいこうということが表れていると思います。特に目標5の指標には,「地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う児童生徒の増加」が代表的に示されています。
 そこで,私たちは定量的な指標だけではなくて,定性的な指標にも努力をしたいという共通認識を持っていると思いますので,よくするために参加してみたいと思う児童生徒の増加だけではなく,参加した児童生徒にはその意義をどのように感じるかといった定性的な把握もすることが必要ではないかなと思います。
 3点目は簡潔に申し上げます。8項目のタイトルを,「生涯学び,活躍できる環境整備」としていただきました。私はこれは幅広い生涯学習の趣旨を示しているとともに,私たちが受けている諮問を反映した修正ではないかなと思っています。
 諮問では,「全ての人が生涯にわたって学ぶ意欲と力を持つための教育の在り方」というのも求められておりますので,このタイトルの中にしっかりとリカレント教育(学び直し)も含めつつ,子供から生涯学習の意義について認識するということのメリットが明確になったと思います。
 加えて,9番目の「学校・家庭・地域の連携・協働の推進による地域の教育力の向上」,10番目の「地域コミュニティの基盤を支える社会教育の推進」,11番目の「教育DXの推進・デジタル人材の育成」といった項目が,非常に密接な関連性が一本通っていくためにも,8番目の「生涯学び,活躍できる環境整備」という名称が生きてくるように思います。
 特に感謝を申し上げたいのは,12の「指導体制・ICT環境の整備,教育研究基盤の強化」の24ページに,「地方教育行政の充実」の項目を入れていただいたことです。この「地方教育行政の充実」は,正に教育の現場である地域コミュニティにおいて,しっかりと機能を果たしていただかなければ教育計画の実現が果たされないと思っていますので,この4行は極めて重要だと受け止めています。
 4点目,25ページの目標13です。「経済的状況,地理的条件によらない質の高い学びの確保」,私は,この項目は特に国の教育計画として不可欠な視点の一つであると思います。すなわち「経済的状況,地理的条件によらない公平,平等な教育の保障は国の使命である」からです。もちろん自治体もそういう使命を負っておりますが,重要なものだと思います。ここの記述で特に大学,大学院について付加して書いていただいているあたりは,国の覚悟を示す意味でも重要だと思っています。
 最後に5点目,目標16,「各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップ」について申し上げます。
 この「各ステークホルダー(子供含む)からの意見聴取・対話」と,あえて子供もステークホルダーとして入れていただいています。関連して,実は11ページ,障害者の生涯学習のときには,「障害者が当事者として生涯学習の企画などを行う」という記述もありまして,要するに障害者もまた重要なステークホルダーなのですが,こども基本法の施行を目指して,特に子供を記述していただきましたが,私は,この「ステークホルダーからの意見聴取・対話」を今回の計画策定及びフォローアップで本当に重点的に取り組む際に,正に「多様なステークホルダー」を視野に入れているのだということを象徴して子供が選ばれていると思います。
 関連して,先ほど内田委員が教育に関わる「教師,教員のウェルビーイング」についても触れてはどうかと問題提起をされました。先ほど資料1に示していただいたように,「ウェルビーイング」は,今回の計画の全てを覆う,あるいは基盤となる重要な概念です。そうであるならば,23ページには,「学校における働き方改革の更なる推進」という重要な部分が用意されておりまして,ここの最後には例えば,「学校における働き方改革の様々な取組と成果等を踏まえつつ,令和4年度に実施した教員勤務実態調査において,教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況を把握した結果等を踏まえ,給特法等の法制的な枠組みを含め,教師の処遇の在り方を検討する」と明確に記述されています。
 私はこういうことを含めますと,やはり教員の意見聴取を計画づくりだけではなくて,フォローアップ・評価のときにも,しっかり当事者として関わっていただくということが重要かなと思いまして,そのことが教員の児童生徒,学修者とともに獲得できるウェルビーイングにつながるはずだと思っています。
 いずれにしても,誰もが傍観者になることなく,次期教育振興基本計画の当事者として関わっていくのだというような方向性が随所に示されていることを大変重要だと認識しております。
 以上です。どうもありがとうございます。
【渡邉部会長】  大変貴重な御意見ありがとうございました。
 こども基本法を踏まえ,こども大綱に向けた有識者会議が動いておりまして,この中でもウェルビーイングの視点が議論されているようですから,時期的にはこちらの基本計画が先に答申となりますが,事務局でも是非連携を取っていただけたらと思いました。
 それから後半の方で,いろいろな地域との関係やつながり,公平,公正の話も出ました。総論では,ダイバーシティ・インクルージョンは多様性,包摂性,公平,公正も入れて,DE&Iの視点で取り上げており,まさしく今の御意見の通りだったと受け止めました。ありがとうございました。
 それでは大森委員,お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。大森です。私から4点,最初の2点は少し概念的なこと,あとの2点は細かい文言のお話です。
 最初の1点目,最初に吉見委員が指摘された,ぐっと伸びていくことでも誰一人取り残さないということとの,ある意味トレードオフの関係をどう見ていくのかというお話のことなのですけれども,それと個別最適な学びと協働的な学びが,つい我々パラレルで議論をしかねないところがあると思うのですけれども,私はもう少しそこの概念整理をしたいなと思っていて,伸びていく子もゆっくり進む子もこれは個別最適な学びで対応ができて,個別最適な学びをすることで誰一人取り残さないということができるのだと認識をしています。
 だから,そこはパラレルではなくて別の次元というか,ぐっと伸びていく子も個別最適に支えてあげるし,ゆっくりゆっくり進む子も個別最適に支えてあげるという,その個別最適というのはそういう意味であって,そのことと協働的な学びは伸びていく子もゆっくりな子も一緒に学ぶ協働する学びというのは,絶対に社会として必要で,そういうところのお話というのが個別最適は伸びる子だけのお話のように,国民の皆さんに受け取られないような書きっぷりというのはすごく大事じゃないかなと思いました。それが1点です。
 2点目,資料1の概念図,本当にすごく分かりやすくなってきていると認識をしています。先ほど,牧野先生がおっしゃったことに関連するかと思うのですけれども,一番上のところにやはり社会課題の解決というのが出てきていて,これは解決という文言がついた方がいいのか,社会課題までなのかというあたり,つまり我々が今基本計画を考えているベースにある課題認識はこういうことがあって,そういう中でこういう学びをつくっていかなきゃいけないよねということだと思っていて,この解決のために人を育てていくのだとなるのとは少し違うかもしれないと理解しています。
 先ほど諮問のところから引っ張られていてというお話があったのですけれど,諮問の概要をもう一度見てみると,先ほど牧野先生がおっしゃったようにこういう課題があると,だから望む未来を私たち自身で示し,つくり上げていくことが求められる時代なのだと,そのためにどういう教育をやったらいいか考えてねというのが諮問だったと思うのです。だから,今分かっている課題を解決するというよりもそのことをベースにこういう教育をやって,新たな未来をつくっていく人たち,教育基本法に立ち返っても最初の目的って,国民の育成というのが第一義的なものに出ていて,社会課題解決が教育目的ですとはやはりなっていないので,そこに人の育ちということがある。しかし,こういう時代でこういう課題があるからこそというのは当然なきゃいけない話なので,それを否定するものではないのですけれど,この見た感じで解決が目標になっているように見られないような,しかし,こういう課題認識を持っていますよということをしっかりと示すような,何かそういう図になるといいなと,すみません,自分で図を書ければいいのですけれども,これはすごい苦労して書かれているのも重々承知でわがままを言っているのは承知なのですけれども,そういうふうに感じたところです。
 3点目,先ほど清原先生からのお話もあった24ページ,個別のところの24ページで,地方行教育行政のことを書き加えていただいたのは,私もとても有り難かったなと思っています。
 今回その指標で,地方行政がどういう指標をつくっているかという事例も示していただいた中で,見ていたときに気づいたのですけれども,やはりその市長部局の方で取っている指標もたくさんそこに入ってきていると思っています。私は群馬県で青少年健全育成審議会の会長をしておりますけれども,青少年行政であるとか子供・若者行政の方でしっかりと子供を見ている部分もあって,子供というところになったときにそこは縦割りになってはいけないという意味でこれが入ったことはすごく歓迎することで,加えて言うならば,もう少し書きっぷりを強めてもいいのかなと思ったというのがあって,例えば総合教育会議等を通じた連携と,総合教育会議にかなり寄っているのですけれど,それは中心としながらも日常的に連携を取っていってほしいというぐらいの,それはあちらだよね,これはこちらだよねではなくて,子供一人を見据えたときには一緒だよねというふうに地方行政がなっていってほしいなと。国全体では他省庁との連携というのを具体的に書いていただいていると同じように,地方行政もそうなってほしいという希望です。
 最後,これは今教員養成の方でこれから答申が出てくるということなのでそれを待ってということでいいと思うのですけれども,やはり現場あるいは大学の教育学部というところの課題を考えると,今教員になりたいという人が本当にすごく少なくて困っているというのは本当に喫緊の課題で,何か教員になりたいと思う人の割合が増えるとか数が増えるとか,そういう指標を具体的に書いてもいいぐらいではないかと感じています。これは少し蛇足かもしれないのですけれども,現場からするとそんなぐらいの思いを持って,教員不足ということの課題を感じていますということをお伝えします。
 以上です。ありがとうございました。
 
【渡邉部会長】  貴重な御意見を頂きありがとうございました。冒頭は,牧野委員の御意見と大体同じ御意見だったと思います。もう少し今後の議論を深めていく必要がありますが,諮問にあった課題認識にどう対応していくのかということに関わるものですから,諮問との関係性で,もう少し整理をさせていただければと思います。
 それでは次に,堀田委員,お願いいたします。
【堀田委員】  東北大学の堀田です。資料1の概念図,イメージ図に基づきまして,指標にも触れる形でお話ししたいと思います。
 この資料1,だんだん進化して,だんだん分かりやすくなっているなという印象があります。私はこの中の5つの基本的な方針,緑の太枠で囲んであるもののうち,左下に位置づいてこの教育デジタルトランスフォーメーション,教育DX,この周辺が専門ですので,その観点から意見を申し上げてきた関係で,これと線がつながっているようなところとの関係の指標について少し触れたいと思います。
 まず,この図の真ん中のあたりには,豊かな心とか健やかな体とか生涯学習とか確かな学力,これが知徳体,日本型学校教育の中心的なところがここにあるのかなと思います。そのこととDXはもちろん関係しているわけですが,以前も発言しましたが,この確かな学力というのが,一体どういう学力を指しているのかということについて,やや学力を狭く捉え過ぎて学力調査の結果だけで上がった下がったと言って一喜一憂してしまいがちな学校現場にならないようにするということが,指標化する際に非常に重要なことかと思います。
 今日の学校教育において,子供たちに確実に身につけさせなければいけないこととして,主体的・対話的で深い学びとか,あるいは個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実とか,そういう授業の在り方,ありようが示されているわけですから,ICTを用いることで,そういうような授業がどのぐらい実現しているかというようなことを指標化としてうまく入れられないかなと思います。これは指標で言えば11番あたりになるのですけれども,情報活用能力が伸びているかということだけでなく,ICTを活用した授業の頻度が増えているかだけでもなく,今言ったようなキーワードに向けた授業が,ICTを用いてどのぐらい進んでいるかというのがこの辺りに指標化されといいのかなと思います。これが1つ目です。
 3つ言おうと思っているのですけれども,2つ目は先ほどの資料1で言うと,このDXから右に延びている線です。これが要はきちんと基盤整備をすることによって,多様なお子さんたちに対応できるような教育環境を整えていきましょう。それがICT,あるいはオンラインを用いることで,結構いろいろな形で充実できるのではないかという話だと思います。それが多様な教育ニーズとか包摂性との関係にもなると思います。
 多様な教育ニーズ,社会的包摂の話は上の方に書いてありますが,私としては,これによって例えば不登校の児童生徒であるとか,あるいは日本語に通じないお子さんとか,そういうような方々がこのICTを使うことでどれだけ学習に参画できているかということが指標化されてもいいのかなと感じます。これがDXのこの一番右の計画の実効性,基盤整備のところへの寄与だと考えるからです。
 3つ目としては,DXのところから左上に伸びているところです。グローバルのところですけれど,このグローバル社会で今の子供たちが生きていくことになるわけですし,日本はどんどん一人当たりのGDPとかいろいろなものが下がってきて,決して豊かな国とは言えない状況に今なっています。
 そういう日本が,これから他国とうまく協調しながらどのように生きていくかといったときの,グローバル社会で通用する人材育成であり,あとは国際的協調であり,そういうときに立ち起こるビジネスの多くはイノベーション人材を要求しているわけです。DXとの関係で言えば例えばSTEAM教育とか海外と連携した教育,あるいは英語教育のようなことです。こういうようなことがICTを用いる,オンラインを用いることでどのぐらい実現しているかということは,指標まで行くか分かりませんけれど,私は大事なことだと思います。
 デジタル教科書の整備が今進んでいますけれど,その整備の順番も1番目にニーズが高かったのは英語です。これはDXのところから左上に延びている線と関係することだと私は感じておりますし,オンラインで海外と学校と協働で学ぶとか,例えば国際支援で,国際協力で活躍している人の話をオンラインで聞くとか,そういう実践もいろいろ出てきていることを考えると,このグローバルとDXというのも十分に関係あるかなと思いますし,そういう実践が増えるという意味でも指標にしていってもいいのかなと感じております。
 私の意見は以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。このイメージ図はどうしても平面図で,文章にしてもただ羅列したものになってしまいますから,むしろ教育のDX側から,立体的に見ると,恐らくいろいろなところに関係性が出てくるということだと思います。
 ただ,残念ながら立体ではなかなか示されないものですから,今の御意見をどのくらい各論,指標で表せるかということかと思いました。ありがとうございます。
 それでは次に,河野委員,お願いいたします。
【河野委員】  ありがとうございます。議論をビジュアルに分かりやすくまとめていただき大変,助かっております。
 いろなところでもう既に議論を重ねてこられたことであるのかもしれませんけれども,1点,表現,言葉の使い方について,違和感を抱いた点を問題提起させていただきます。
 それは基本方針の2,次期基本計画目標6のタイトルの部分です。グローバルで使われております人材という言葉,ここについて少し見直しをする可能性があるのであれば御検討いただきたいと思いました。つまり人材というのは人と材料というような言葉,使うとか役立つという意味合いがあるのではないかと思います。組織側から見た視点で人材を使われているのではないか。英語でも直すとヒューマンリソーシスという言葉になります。リソーシスという言葉がこの場合,適しているのかどうかという点です。
 例えば,グローバル市民という用語が環境問題をはじめとするこの地球レベルの課題が顕在化した70年代頃から盛んに使われるようになって,私たちはこの世界の一員であり,責任を果たす個人であるという意味合いで,私どものような留学団体やグローバルなネットワークを持つ組織においてはこの市民,シチズンシップという言葉が非常に多く使われます。
 そこで一つ提案ですけれども,地球規模の問題解決のために自ら主体的に行動を起こすグローバル市民の育成,これがまず教育の柱にあって,そしてこのグローバル市民が組織に役立ち,経済成長につながるイノベーションを生み出すような人材になっていくという順番ではないか,これを御検討いただければと思いました。
 教育基本計画が予測不可能な時代の教育の在り方を示すものであって,学修者を主体に置いて,リカレント教育を含むこの生涯教育を目指すというそのようなキーワードが随所に出てきている,そういうことを考えましても,この基本方針というのは人材の育成というよりも,市民の育成にする方が2040年,先を見据えた日本の教育姿勢(世界に対して日本の教育姿勢を発信することにおいても)が鮮明に伝わるのではないかと思いました。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。確かに人材は,企業によっては材を財にするなど,いろいろと工夫しているように,この人材という言葉がよいのかどうかは議論があると思います。グローバル分野におけるグローバル人材とは何かというときに,御指摘のようなグローバルシチズンシップという考え方が非常に強くなってきているということですので,このグローバルの捉え方は,頂いた御意見を参考にさせていただきたいと思いました。
 ただ文章全体で,人材を使うのをやめましょうとなると,恐らく現場が読んで分からなくなってしまう可能性もありますので,全体としては今の使い方は残しつつ,グローバルのところにどういう工夫ができるのか,御意見を踏まえた検討をさせていただければと思います。
 次に小林委員,お願いいたします。
【小林委員】  私からは2点申し上げたい。まず1点目は,既に先ほど松浦委員がおっしゃった点と同じでございまして,今回文理融合は一つ大きな課題になっているのですけれども,特に目標7のイノベーションを担う人材育成というところでは,各論のたたき台ではその辺り意識をされているのかなという気はするのですけれども,指標の方は理工系に非常に偏ってしまっているように思います。これは前回も申し上げましたけれど,イノベーションというのは技術だけで出来上がるものではありません。この点指標をもう一歩工夫して理工に偏らない,文理融合という視点からの指標を考えていただいた方がよいのではないかと思いました。これが1点目です。
 それから,2点目ですが。この2点目はどういうふうに反映していただくのがいいのか分からないのですが,資料1の全体図の中で,左上に「異文化理解」とあるのですが,これが社会課題の解決,イノベーション人材の関連要素と位置づけられています。多様性の価値はただ多様な人材が集まればいいということだけではなくて,そこに集まっている異なる価値観を認めて,「そこから学ぶ柔軟性を持つ」ことが本当に多様性を生かすということだと思うのです。
 イノベーションという観点から考えますと,ただ異文化を理解するのではなくて,異なる文化に根差す価値観や発想を認めて,そこから次に新しいものを共同して生み出していくということがイノベーションにつながっていくのではないかと思います。全体の中で多様性の意味をもう少し付け加えていただくと良いと感じます。また,黄色で示されている異文化理解というのがイコールグローバルではなく,もう一歩踏み込んで,そこから日本が何を学ぶのかというようなところまでが表現されるような,これはこの図では無理だと思いますので,各論の方に御配慮いただけると多様性の意味がより膨らんでくるような気がいたします。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。確かにこの図では少し表現が難しいので,各論で検討させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは黒沢委員,お願いいたします。
【黒沢委員】  いつもお世話になっています。先ほど清原委員の意見で子供たちのエンパワーメントということをおっしゃっていたと思うのですけれど,とても僕,大事だと思います。ただ,現場の校長として少し意見を言わせていただくとエンパワーメントする前に,教員がもう少しエンパワーメントをしてあげないと,少し難しいかなというのも思っているところです。あまりにも忙し過ぎるとか,やはり余裕がないとかそういう状況の中で,子供たち一生懸命エンパワーメントをしようと思ってもなかなかできない部分もあるので,やはり教員を少しエンパワーメントする必要があるのかなというのは感じているところです。
 そこで,資料3の23ページのところに校務DXいう項目がたしかあったと思うのですけれども,その前後のところでも働き方改革とかってあるのですけれども,やはり教員だけではなくてその周りを支えるサポーターですとか心理職も含めて,そういう人たちが共通で使えるプラットフォーム的な校務環境を整えてあげないとなかなか情報も共有化しにくいとか,異動したらもう前の情報を全然使えないとか,そういうふうにならないように,全国共通のシステムをやはりきちっと基盤整備してあげて,その上で先生方あるいはその周辺を支える人たちがみんなで情報共有しながら,子供たちをエンパワーメントできるようなことに取り組めるような環境を少し整えてあげた方がいいのではないかなと思っております。
 働き方改革の方できっと議論はされていると思うのですけれども,是非そういうものを,教員をエンパワーメントできるツールを是非全国共通で開発できるとなおいいのではないかなと思っております。
 私からは以上になります。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。GIGAスクール構想で子供たちの1人1台端末は都道府県でかなり均一化したのですが,御指摘のように校務支援システムは都道府県でも差がありますし,市町村に至っては大きな差がございますので,働き方改革の関係からしても,御指摘のとおり大変重要な視点だと思います。ありがとうございました。
 それでは次に,関委員,お願いいたします。
【関委員】  ありがとうございます。3点お願いしたいと思います。
 1つ目は目標8の項目設定,生涯学び,活躍できる環境整備としていただきまして,今まで感じていた従来の生涯学習とリカレント教育がうまく結びつきました。今までどちらかというと個人の学び,生きがいづくり等に取り組んできた部分が多かったのですが,これから先の新しい時代の,マルチステージの人づくりの中で,こういったリカレントあるいはリスキリング的なものの重要性を改めて感じさせていただきました。
 あと,この指標の中で書いてありますのに,生涯学習をしたことがあるカウントをここで求めているようでございますけれども,ここもできればリカレント的なものとあるいは従来の生涯学習みたいなものがある程度区分できてもいいのかなというのが,この中で感じました。
 2点目ですが,目標9,19ページの一番下のところにコミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進ということで,まちづくりといった課題解決のためのプラットフォームにもなり得る学校を核とした地域づくりを推進するという記述がございます。確かに学校は地域の様々な人がよりどころとする場所であって,そこでいろいろな活動を起こしていくことは可能かと思うのですけれども,これを担うのはやはり社会教育の側(がわ)ではないかと私は考えます。このことを学校が核になって動いていくということになると,恐らく学校も先生方の負担も非常に過重になっていくのではないかと思われます。活動が拡充することによって結果的に地域がよくなっていく,そういったものが地域住民が主導で生み出されていく,そういう場が地域学校協働活動のようなものであるという方がふさわしいのではないかなと感じます。
 あともう一点です。20ページの下から2つ目の丸の部分にあります社会教育士についてです。現在もその数が増えている社会教育を進めていく上の人材として非常にすばらしい制度ではないかなと思っております。
 しかしながらこの社会教育士が活躍できる場所,ここでは公民館等での職員としての勤務という項目はあるのですけれども,もっと幅広にいろいろなものがあるということをお示しいただいて,そして,できれば指標の中でも称号付与者の数という形だけではなく,実際にその活動をどういった形で行っていったか,その実際の活動をしたカウントみたいなのが何か出ればいいのではないかと考えます。
 以上でございます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。リカレントは社会からの要請も強くなってきましたので,従来,生涯学習の方で進めていただいているものを少しバージョンアップするような指標設定になろうかと思います。コミュニティ・スクールや学校,地域との関係性は,御指摘のとおり大変重要な要素だと思います。生涯学習分科会で御議論いただいている内容をできるだけ踏まえる形とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,杉村委員,お願いいたします。
【杉村委員】  ありがとうございます。上智大学,杉村でございます。まずは事務局におかれましては,本当に様々な意見を取りまとめ,毎回バージョンアップいただき,御礼(おんれい)申し上げます。
 私からは資料に基づいて申し上げたいと思います。まず資料1のイメージ図なのですが,黄色のいわゆるコンピテンシーといわれる身につけるべきところに,もう一つ,「表現すること」を含めたコミュニケーション力というのがあるといいのではないかと思いました。OECDのラーニング・コンパスにも出てまいりますので,それが入ると更にこの黄色の部分にあるコンピテンシーに厚みが増すように思いました。
 それから,2つ目ですけれども,今度は資料2のところでございますが,指標に関するところです。1ページ目の一番下にある「主体的に社会の形成に参画する」という,今回新しく入った部分です。ここの指標に何を盛り込むかということについてですが,他の項目との接合を促す指標が必要になるのではないかなという気がしております。今の時点では「地域や社会をよくするために何かしてみたい」という指標が一つ入っているのですけれども,実は何かする前に必要なこととして,正に先ほどの図1にも出ている通りですが,何が課題発見か,ありは問題発見に当たるような指標をどう取り入れるかということについても,少し大きな問題ですが,あればいいのではないかと考えます。
 もう一つは,自分事として捉えるというか,地域課題でも地球規模課題でもいいのですけれども,何かしてみたいというときに自分とつなげて考えるということが,ESDでも大事な観点になっており,それを何か表せるような指標があるとよいのではないかとおもいます。今はまだ,一つしかないため少し寂しいように思い考えてみました。さらに,そのことと併せてなのですが,実はこの資料2の指標は,他の指標と重なってくる部分があるようにおもいます。既に一部もう重なって書いていただいているところもありますけれども,その要に重ねて指標を書くことで,実施主体である自治体とか学校とか,あるいはステークホルダーの方から見ると,この指標が幾つも出てきて大事なのだなというメッセージ性をもつのではないかとおもいます。そういう意味では例えば個別最適な学びというのは他も出てきているわけですけれども,指標が一つずつ対応していなくても,多少重なって入っていくのもいいのではないかと思います。
 ちなみに,指標で御参考になるかと思うのは,現在,日本のESDを進めているユネスコスクールに関して,経年変化でACCUという団体が調査を取ってくださっています。ちょうどこの前,今年の調査結果について発表がありましたけれども,ここには正に個別最適な学びを,これはユネスコスクールに関してではありますけれども,学校で実践を通じてどういう力が子供たちについたと思うかとか,どのような実践がよかったかというのがデータになって出ていますので,そちらの指標も参考にするとよいのではないかと思いました。
 併せまして,同じ資料2の2ページ目にあるイノベーションのところについては,松浦先生や小林委員もおっしゃいましたので,繰り返すまでもないことですが,このSTEAMのところに,以前はSTEMだったのが,「A」すなわちアーツ(Arts)が入ったことにすごく大きな意義があり,イノベーションの力が更に重視されています。そのため,指標を理系中心に書いてしまうと,逆に言うとイノベーションをそういうふうに捉えていると誤解を与えてしまうように思います。おのことは,もう松浦先生がおっしゃったとおりですけれども,ここの指標の書き方をもう少し考えたらいいのかなと思います。文理融合でもいいですけれども,高等教育になってきますと今は文理融合というよりも学際的とか,少し分かりにくいですが,学融合的という言葉をよく使っています。大学の学部や研究科で新領域とか学際領域のものもいっぱい出てきています。高大連携との関係では,高等学校におかれても教科横断的な学びが今推奨されていますので,繰り返しになりますけれども,この点を申し添えさせていただきます。
 資料3でございますが,各論,たたき台のところで12ページ目のところのESDについては書換えをしていただきまして大変ありがとうございました。この部分でもう一つだけもし加えていただけるとしたら,ちょうど9月の国連で行われた教育変革サミットでも,岸田首相の総理ステートメントの中にこのESDを,日本を挙げて推奨するのだという力強いメッセージが組み込まれました。ESDにはいろいろな担い手がいるわけですけれども,国内のネットワークだけではなく,海外とのネットワークをつくることで,正にグローバルな人材の推進といったことがより求められるのではないかと思います。人材については先ほど河野先生が大変大事な御指摘をされて,グローバルシチズンというのもあるのではないかという御意見もありましたけれど,日本が得意としてきたESDというのがありますので,それを使って国内外のネットワーク,「内外の」という点を少し入れていただけると幅が出るかと思いました。
 最後にこれは今日の御議論の部分ではないのですが,今日つけていただいている資料4の基本的な考え方(案)の1つ目の丸の部分dす。記載の問題だけなのですが,資料4の,最初の丸のところは,「学びの変容」で丸になってとじているのですけれども,これはもしかして「学びの変容を促す」といったように,何か文言が入るとほかの項目との釣合いが取れるかと思いました。そのときに入れることができればよいかと思うのが,そのトランスフォームということです。国際的な議論の中でトランスフォーミング・エデュケーションというのが盛んに議論されており,今回の資料の中ではデジタルトランスフォーメーションというのはもう出てきているのですけれども,デジタルだけではなくて,教育全体を変革に向けて動かすという見方が必要かと思います。2050年までを目標とした「教育の未来」に関するレポートでは,何とかトランスフォーメーションを促していこうということがうたわれているので,日本の振興計画でもそれを踏まえ,教育の変革ということに言及してはどうかと考えます。特にこの最初の丸のところがたまたまそれに当たるのかなと思いましたので,言葉として付け加えていただけるとよりメッセージ性が強くなるように思いました。以上でございます。
 
【渡邉部会長】  ありがとうございました。指標が各目標に跨がるという問題は確かにほかのところにも生じやすいです。第3期のときは,一つの指標にほかの施策群が重なるような場合は,留意事項的に再掲の施策群として項目だけを示すなど工夫して書いています。
 今回の整理も,とにかく立体ではなく平面にして,しかも文章で並べなくてはいけないので,御指摘の点はこれからも出てくると思います。そこは,事務局で少し工夫しながら,重なる部分の表現,特にウェルビーイングの指標で重なるところは,是非工夫をしていただければと思いました。
 それから,STEAMについてはCSTIでの議論もあって,できればリベラルアーツとして捉えて,横断性を持たせるという方向性になっており,ここでのSTEAMもそれを踏まえたものとして捉えていると思います。ですから,そこは文理横断や,高等教育では学際的といった点も踏まえて,そうした概念で捉えていくのがよいのではないかと思います。ただ,当然今は学部に分かれていますので,連携といった形にするなど,表現を少し工夫する必要があるものと思います。
 また,トランスフォーメーションについては,DXを入れていくことによって教育のトランスフォーメーションになるという整理ではないかと思いますが,今後は海外との関係もあるというのは御指摘のとおりです。ありがとうございました。
【杉村委員】  ユネスコで議論しているのは大きい,トランスフォーミング・エデュケーションということで,それは多分デジタルだけではなくて,例えば非伝統的な学びみたいな言い方をしているのですけれども,正にオンラインを使ったり,あるいは堀田先生がおっしゃったような,正に先ほどおっしゃっていましたけれども,グローバルに向けてどういう学びをつくっていくかという主体的な個別最適な学びと,正にそれそのものだと思うのですけれども,それをやることがトランスフォーメーションなのではないかと思いますので,そこをもう少し広く取るような出し方がいいのかなと思います。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。それでは,清水信一委員,お願いいたします。
【清水(信)委員】  ありがとうございます。
 まず,資料1のイメージ図,ありがとうございました。非常に分かりやすくなってきましたし,また,現場の先生が理解しやすいのではないかなというふうに見させていただきました。私の方からは,資料1と資料2について,少しお話をさせていただきたいと思います。
 まず,資料1のウェルビーイングの関連要素,ピンク地の部分ですけれども,こちらで重要な言葉が抜けているのではないかなと私は思っています。具体的に言いますと,こちらは多分お忙しかったんだと思いますけれども,「多様性」が2か所に書かれているのです。中心の右と左に「多様性」が2か所ございます。それを1つにしていただいて,多様性の関連では,基本方針の中に「公平,公正」,それから「包摂性」という重要な言葉があったと思いますし,また,「誰一人取り残さない」という大切な言葉があるのではないかなと私は思っていますので,関連要素のキーワードを,もう一度見直しをいただければ有り難いなと思っています。
 また,資料2に関してですけれども,まず,6番目の施策,グローバル社会における人材育成で留学生のことが書き込まれております。前回の会議の中で,留学生の受入れに関して高等専修学校という学種が高等学校との間に格差があると。専修学校なのでN2が必要だということなのですけれども,高等学校はN2が必要ではないというお話をさせていただきました。これについては,教育未来創造会議の方でも話題になっているということですので,多分早い解決を見られるのではないかなと思って喜んでいるところです。
 もう一つは,15番目の施策,安全・安心のところですけれども,この指標例の中に,上から3つ目のポツ,私立学校の耐震化の推進というのがございます。おかげさまで,私立学校の耐震化の推進に補助金をつけていただいて,進んでいるというふうに自覚をしているわけですけれども,これは阪神・淡路,また,東日本大震災の後に,高等専修学校,又は専門学校の先生が非常に御苦労されました。124条の専修学校は,激甚法の対象になっていないのです。ですから,学校再建,また,再開のために非常に御苦労されていて,何とか追随という形で補助金を出していただけて再開までこぎ着けているような現実がございます。前にもお話しさせていただきましたけれども,激甚法の対象になっていないということだけではなくて,日本スポーツ振興センターの災害給付金の問題も解決まで二十数年かかりました。誰一人取り残さないという観点では,スタートラインを是非一緒にしていただきたい。どこで学ぼうが同じスタートが切れるように,これは是非現場に落とす前にチェックしていただいて,スタートラインをそろえていただいたら有り難いなと思います。
 繰り返しになりますが,イメージ図の中でキーワードをもう一度見直しをいただければ有り難いなと思います。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。多様性のところは,D&Iはグローバルダイバーシティーの視点でも必要ですし,いろいろなところでダイバーシティーアンドインクルージョンという概念が必要なので,恐らく,これも先ほどと同じくいろいろな施策に重なるという話と関係しているのではないかと思います。1か所ということではなくて,いろいろなところにダイバーシティーアンドインクルージョンの考え方,あるいは「DE&I」が関係しますという整理をさせていただきたいと思います。
 それから,留学等の整理は,御指摘いただいたように,今,教育未来創造会議でもかなり充実した議論をしていますので,事務局の方で是非連携を取っていただければと思います。
 最後の耐震性等の問題についても,受け止めさせていただきます。
 それでは,次に,徳永委員,お願いいたします。
【徳永委員】  ありがとうございます。丁寧に資料を作り込んでくださって,本当に感謝いたします。
 私の方からは,資料2の目標4について,少し述べさせていただきたいと思います。今回,誰一人取り残さないというのがとても重要な概念になっていると思うのですけれども,その重要な担い手として教員がいると思っていまして,他の委員の方々からも教員の話が出ていましたけれども,多様な教育ニーズへの対応とかダイバーシティー&インクルージョンに関する教員研修というのが1つの指標として入ってもいいのではないかと思いました。多様なニーズに対応した学校づくりを担い,そのために地域と連携したりICTを活用したりするので,教員研修の実施状況とか,そういったものが指標に入ることは可能なのかどうか気になったというのが1点目です。
 2つ目は多文化共生というところで,今回,資料2の目標4で多分初めて「公立学校における日本語指導が必要な児童生徒のうち,日本語指導等特別な指導を受けている者の割合」というのが入って,これは本当に大切な項目だと思いました。実際に日本語支援が受けられていない子供たちが多い中で,やはりこういう指標を作ることで日本語指導の取り組みが広がっていくと思います。ただ,今回,ダイバーシティー,エクイティー,インクルージョンの視点を重視するのであれば,実際に,例えば日本語指導が必要な高校生の中退率とか,あるいは大学等の進学率など,そういった指標も入れる必要があるのではないかと思いました。これは,日本語指導が必要な児童生徒だけではなくて,不登校の生徒とか貧困家庭の子供とかとも通じる点だと思います。目標13の方には,生活保護世帯の子供の大学等進学率などが指標として入っていたので,多様なニーズを持つ子供たちの教育実態を知るためのデータをきちんと取って,それを指標化して分析していくという視点を打ち出していった方が,エクイティーを実現するという点では重要ではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。担い手も含めて,不登校問題といったところは,先ほどの清原委員からも出ましたが,ちょうど,こども家庭庁が発足して,有識者会議でも来年の大綱に向けた議論がされており,文科行政ともタイアップする部分になりますので,ここも是非連携を取っていただければと思います。文科省としてどういう形で入れていくのかは,恐らく来年度以降も調整が必要になりますので,是非事務局の方で整理をしていただきたいと思います。ありがとうございました。
 次に,大日方委員,お願いいたします。
【大日方委員】  ありがとうございます。
 私も,これまでたくさん意見が出ているように,子供の意見をしっかり聞くということにつきましては,もう少し指標に工夫があってもいいかなと感じました。例えば資料4の基本的な考え方というところで,校則の見直しや策定,そういったものに対して子供が関与していくこと,これは非常に役に立つということが記載されていますので,こういったことを指標として入れていく,例えば,どのぐらいの学校が子供たちと一緒に校則の見直しについて考えているかというようなことなども指標として考えることができるのではないかなということを,1点目,申し上げさせていただきます。
 2点目なのですが,高齢者の生涯学習の推進というところにつきまして,目標8の中で触れていただいております。こちらが,ほかのことはかなりリカレント,リスキリングというようなところにフォーカスが当たった記載になっているのですが,目標11のところでも触れられておりますけれども,高齢者の方も,デジタルディバイドの解消という点では非常に大きな課題といいますか,実際,困っている方が多いのではないかなと思っております。高齢者の生涯学習の推進という項目では交流ということが中心になって目標設定されてありますけれども,社会が変わっていく中で変化に追いつき切らない高齢の方々,デジタルデバイドを学びたいと思っていても,どこから手をつけたらいいか分からないというような方,あるいは,そもそも何が何だか分からないというような方,こういう意見も多くありますので,こういった視点の目標も加えられるということがいいのではないかなと感じております。
 そして,3つ目ですが,1つ目のところとも少し重複するのですけれども,資料1,概念図の方で整理していただいた中で,見ていて重要だなと思ったのは,子供たちの主体性とか自己肯定感というところを育む中で,子供が教室,あるいは家庭も含めて,心理的な安全性を感じられることが重要ではないかなという点です。資料1の概念図に入れるべきかどうかということとは別の議論かもしれませんが,子供たちが自分の意見をしっかりと言ってもいいのだ,あるいは,言うことによって誰かから阻害されないというような意味では心理的安全性の確保,あるいは大人の期待を押しつけられない自主性といったところも重要ではないかなと感じました。
 そして,最後です。これは少し細かいところになるのですが,資料3の目標3です。スポーツを通じた共生社会の実現というところを書いていただいておりまして,趣旨としては非常にいいのですが,7ページから8ページにかけての部分に,「東京2020大会のレガシーとして」と書いていただいているのですが,本来的に趣旨に立ち返りますと,レガシーだから共生社会の実現を行うというものではなく,共生社会の実現に東京大会はレガシーとして寄与できたのかどうかというところだと思います。「レガシーとして図る」というよりは「レガシーとしても」とか,そもそも必要なものがレガシーとして推進,振興が進んだというような書きぶりにしていただけると,より本質的なものが伝わるのではないかなと感じた次第です。
 以上,4点申し上げさせていただきました。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。指標で全部表し切れないものは,各論のところの表現で工夫させていただきたいと思います。東京オリパラのいわゆるレガシーのところは,担当している方からすると大切にしたいという意見も出ますので,先ほどの「レガシーとしても」というような表現で工夫させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 今村委員,お願いいたします。
【今村委員】  今村です。
 まず,概念図をお作りいただきまして,ありがとうございました。ウェルビーイングがきちんと上位に示されたということが,もう少し整理が必要かなとは思いつつも,まずはとても進化したなと感じました。
 その上で,この概念図ではウェルビーイングを目指した絵になっているのですけれども,その他の資料においては,これまでどおりウェルビーイングも横並びの目標になっているように見えるのですが,最上位目標がウェルビーイングというところに設定したのであれば,やはり目標も横並びにするというやり方で本当にいいのか,見直す必要はないのかということは確認したいなと思いました。
 2点目なのですけれども,最上位目標のような数字は置かなくていいのかということもやはり気になります。最上位目標というか,最上位指標ですね。これは1点ではなくてもいいと思うのですけれども,全部横並びで全部追いかけるというよりは,全体として絶対にここは追いかけていかなければいけないというところはどこなのか。これは,もちろん,学校教育とか,ここで語られる教育だけでなし得ることではないのですけれども,例えば学齢期で自死をする,又は自死未遂をするお子さんたちは1人も出さないということだとか,また,不登校をゼロにするのは不可能だと思うのですけれども,相談につながっていない子はゼロといいますか,減らしていくとか,それから,先ほど黒沢先生もおっしゃっていましたけれども,働く方々が大事という話があって,本当にそうだなと思っているのですが,やはり先生たちのやりがいとか生きがいというところも,教育をよいものにし続ける上で最上位に置くべきかなという感じで,この3つかどうか分からないのですけれども,やはり共通として,ここだけはというところが必要ではないかなと思いました。これが2点目です。
 3つ目なのですけれども,これまで私の活動の現場においても,NPOを運営しているのですけれども,学力というところは物すごく重要だなと思っています。これは,別に日本の国際競争力を上げるためにとか,全体的な学力を上げていくためにということ自体が目標というよりは,やはり分からないことが分かるようになることは,とても子供たちにとって自己肯定感を獲得しやすいステップとして本当に役に立つゲームといいますか,学びなのですね。すごくうまく設計されていると思います。これは,PBLのような難解な方法論よりも自己肯定感を獲得しやすいという感覚もあって,これがたとえドリル学習であっても,すごく自己肯定感を感じやすいものだと思っています。
 ですので,例えばこの指標として示されているものも,平均的なものとか学校ごとのこれまでのテストのようなものではなくて,今,埼玉県とか横浜市が採用しているような一人一人の学力がどれぐらい伸びたのか,一人一人が学習とどれぐらい向き合うことができて,先生と生徒が一人一人の伸びを実感できるような,そういった指標の置き方という,そういった先行事例もここの中に明記すべき重要な事例なのではないかと思います。これはウェルビーイングにもつながる重要なところだと思います。
 4点目なのですけれども,先ほど,この前に発言なさった先生もおっしゃっていたポイントだったんですが,私も目標5の主体的に社会に参画する態度の育成・規範意識の醸成という目標について,もう少し明記すべきことがあるかなと思っていて,それは正に先生がおっしゃった一番子供たちにとって身近な社会である学校の当たり前を自分たちで変えていけるのだというところに参画をさせていく。これは校則のみならず,暗黙の慣例みたいなものを含めてだと思うのですけれども,今当たり前になっているものを先生と生徒がみんなで捉え直しながら見直していく。それで少しでもよい方向に変わったなというふうな実感を子供たちが持って経験ができるということは,実際に校則が白い靴下から黒もオーケーになったとかということ以上に自己肯定感を獲得するためにもとても重要なことだと思いますし,包摂的な学校をつくり直すことにも,先生の視点だけよりもいい方向性につながるということは,これまでの実証の中でも見えてきています。ですので,やはり学校の当たり前を見直すということをもっと生徒に開いていくようなことも明記していく必要があるかなと思います。
 そのための指標として,今,明記されているのは,「地域や社会をよくするために何かしてみたいと思う」と書いてあるのですけれども,地域や社会よりも学校というのが生徒たちにとってはリアリティーのある現場ですので,そこに参画をした子供の数とか,実際にそういったことが行われている学校の数とか,まだこの活動自体がほぼ行われていない現在地ですので,結果的に,ここに書かれているような,地域や社会をよくするために何かしたいと思うという結果のところに指標を置くのではなくて,そういった取組をしている学校の数,そういったことに取り組んだことを実感している生徒の数のような,そういった活動のインプットのところに目標を置くのが目標5のところの現在地かなというふうにも思いました。
 私からは,4点,以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。最初のウェルビーイングのところは,前の議論にもありましたように,今回,各論の議論をして,もう一度総論に戻るという意味もあり,次回以降全体をまた見ていただくことになります。総論ではウェルビーイングと共生社会の実現に向けた教育が1つの文章として基本方針の1になっているのですが,これを前回御説明したように前文を設けるなどして,ウェルビーイングをどういう位置づけにするのか,次回以降,もう一度全体感を示す中で,また御検討いただければと思います。大変な重要な御指摘だと思います。
 また,後半の指標の,設定の仕方については,今後の議論も含めて,事務局の方で少し検討いただければと思います。特に不登校のところが今,強調されていますが,不登校への対応は学校だけではなくて,家庭の要素もあり,先ほどの繰り返しになりますが,こども家庭庁と文科省の協働事項になると思います。したがって,ここは非常に重要な要素でありますので,どう連携しながら対応していくのか,是非文科省としても連携を取りながら進めていただければと思います。何かこの点に関して,事務局からありますか。
【今村委員】  すみません。その点でいうと,現在,こども家庭庁としては勧告権を持って関わるということは明記されて,こども家庭庁の役割になっているのですけれど,不登校においては明確に,今,文科省の仕事になっていますので,やはり教育振興基本計画の中で位置づけを重くしていく必要があるかなと思います。
【渡邉部会長】  文科省のマターではありますが,家庭の要素をどう入れていくか,あるいは,その関係性をどうするかというところでは,現行の厚生労働行政が関係する部分をこども家庭庁とどう調整するのかという,かなり広い概念で捉えていかないといけないと思います。要するに,それ以前に見える化がまだされていないので,各自治体の協力を得て見える化をするところから始まりますから,そういった面では,今後,連携を取りながら全体像を示して,文科省としてどう対応ができるのか考える必要があります。指標の中でどう対応していくかということと同時並行だと思いますが,非常に重要で,社会的にも関心を持たれているものですから,少しそういった大きな構えで行かないといけないという趣旨で発言させていただきました。よろしいでしょうか。
【今村委員】  はい。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは,荒瀬副部会長,お願いいたします。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございます。ここまでおまとめいただき,大変感謝申し上げます。また,いろいろな方の御意見を伺っていまして,賛同するものがたくさんありました。ありがとうございました。
 2点,申し上げます。1つは,資料3の8ページなのですけれども,今も話題になっていました不登校児童生徒に関するところであります。実は,中教審の初中分科会に個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会がありまして,そこに3つのワーキンググループがあります。こちらの方の議論の中で,やはり今の学校の在り方が子供たちに対してどうなのだろうかというような問いかけがなされております。この義務教育や高校教育のワーキンググループでも,今後,このことについては検討していくのだと思うのですけれども,そういったことも踏まえて申し上げますと,この8ページの記述は極めて明快ではあるのですが,これだけでいいのでしょうかということであります。もう少し書き込む必要があるように思います。それが1点です。
 もう一点は3ページで,キャリア教育・職業教育ということで書いていただいているのですが,この1つ目のポツのところです。1つ目のポツの文が3つありますけれども,その2つ目の文,「初等中等教育段階においては」というところから,「『キャリア・パスポート』等を活用し,児童生徒が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら」,その次です。「社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を育成する取組を推進する」と書かれているのですけれども,これは少し古いですが,2011年の中教審答申,キャリア教育・職業教育に関する答申が出ていまして,その中でキャリア教育の定義がなされていて,これが今も生きていると思います。その定義では,一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育,これがキャリア教育だと述べられています。
 また,今,全ての学校段階で新しい学習指導要領に入っておりますけれども,その学習指導要領の改訂に向けた2016年の中教審答申では,社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現していく過程をキャリア発達としているということで,この「キャリア発達」という言葉が大変重視された形で述べられています。その点を踏まえる記述について御検討いただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。先ほどの今村委員と同じように,不登校の問題は社会的に非常に関心が持たれている事項であります。指標の設定の仕方や書きぶりについては,もう少し御指摘いただいたものが浮き彫りになるような形で,検討させていただきたいと思います。事務局としてもよろしいでしょうか。
 それから,2点目のところは,大変貴重な御意見,ありがとうございました。高等学校におけるキャリア発達の位置づけは大変重要ですので,御意見を参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,時間も迫っておりますので,今手を挙げている方が最後になります。岩本委員,お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。もう時間もないということで,本当に手短にと思います。
 私は,各論と,その指標のところに関してですけれども,まず,目標1の高等学校教育改革のところです。この最後の文章,「あわせて,生徒の多様な学習ニーズに取り組み,基礎学力の定着を図る」というところですけれども,ここに関しては,前回,新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキングの審議まとめを見ると,ここの大きなテーマは,多様な生徒が社会とつながり,学ぶ意欲が育まれる魅力ある高等学校教育の実現と。当時,このときの審議も学習意欲の喚起というところが一つ大きな課題で,それで今の高校改革の様々な施策が審議されたというところですので,基礎学力の定着も重要ですが,今回でいけば,学ぶ意欲だとか学習意欲というところがやはり入ってきて,それをきちんと指標としても見ていくというようなことが重要ではないかというのが目標1です。
 次,目標5,主体的に社会の形成に参画する態度というような辺り……。
【渡邉部会長】  岩本委員,すみません。今,直前の御発言が聞こえない状態になっていたので,少し前のところから繰り返していただけますでしょうか。
【岩本委員】  そうですか。すみません。では,もう時間も押してしまってきていると思うので,後でその部分,また文章でお送りします。
【渡邉部会長】  すみません。では,お願いいたします。
【岩本委員】  大変失礼しました。
 それでは,次,目標5のところです。主体的に社会の形成に参画する態度というところですが,子供の意見表明や主権者教育とあります。私は,社会の形成といったときに,日本はやはり民主主義社会でありますので,民主主義社会にきちんと参画していくというところにおいては,選挙というのが意見表明の1つの形であり,社会参加の表れではないかというふうにも考えられるのかなと思っています。こうしたときに指標も,場合によっては,18歳で選挙権を取得したら選挙に行くと思う生徒の割合だとか,場合によっては,18歳の投票率みたいな,こういったところがきちんと民主主義社会に参加する若者が育っているのかというところで目安にするような指標としてもあるのかなということが目標5に関してです。
 目標7のイノベーションを担う人材育成ですが,この指標を見ると,結構大学の話とか高等教育のところが中心になっていて,場合によっては,小中学校の理科とか数学,算数が楽しいと思う生徒の割合だとか,高校段階での文理分断からの脱却とか普通科改革だとか,こういったところも指標として大学より上というところだけではないところも検討が必要ではないかというのが目標7です。
 最後に目標13のところで,へき地や過疎地域における学びのところです。各論のところでICTの活用が入ったのは非常にいいなと思っています。それに加えて,こういった地域の小規模化していくような学校の学びを担保する上で異校種間連携,小学校,中学校,高校,こういったところが一体的に連携しながらという部分と,学校間連携,ほかの地域の他の学校とも連携していくといったところも必要だということが記述であるといいのかなと思います。
 すみません。時間が来てしまいました。以上です。
 
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。高校段階の主権者教育は非常に重要な要素になると思いますので,検討させていただきます。高校教育のところは今までも御意見を頂いていますので,受け止めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは,時間になりましたので,以上とさせていただきますが,事務局から全体を通じて何か御意見等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは,時間が過ぎてしまっているのですが,私の方で,若干,今日の振り返りをして,次回につなげさせていただきたいと思います。
 1点目は,概念整理のためのイメージ図の位置づけ等について御意見いただきました。総論で整理された5つの目標と各論指標の関係性を整理するために作成いただきましたが,教育振興基本計画は文章として閣議決定しなければなりませんので,直接答申に入るものではありません。ただ,清水委員からも現場の先生方が大変理解しやすいという御意見を頂きましたので,今後,答申の概要を説明する際とか,あるいは現場に向けてこの情報を発信する際には,是非事務局の方で活用していただけないでしょうか。大変分かりやすい概念図になっていますので,是非お願いしたいと思います。
 それから,ウェルビーイングの位置づけについても御意見を頂きました。基本的方針案としては,1項目に,共生社会の実現と併せて入れていますが,先ほど申し上げたように,次回,総論との関係をもう一度御議論いただいて,答申段階で前文の工夫をするとか,その関係性をこの図に近いような形で整理させていただきたいと思いました。ありがとうございました。
 3つ目は,基本施策について,全体的に指標の置き方の問題としては,第3期の際に測定指標と参考指標に分けたり,あるいは,重複する部分は,先ほど説明したように,重複指標だということを示したりという工夫をしています。次回以降,今日御議論いただいたものを指標化したときに,どういうアクセントをつけて工夫をするのか,あるいは,重複をどう表現するのかについては,今日の御意見も反映して,事務局の方で次回までに整理していただきたいと思います。
 それから,牧野委員等からありました,図に「2040年以降の社会を見据えた社会課題の解決」というものが一番上にあるが,これが教育の目標なのかということについての御意見は,教育の本質は,むしろ,今日の絵でいうと,真ん中の,水色の部分の知・徳・体を中心にしたところです。これは,教育の外にある社会課題を示しているわけなので,それが教育の目標ということではありません。
 ただ,今日も説明がありましたように,2040年以降の社会を見据えたときに,こういった社会課題,あるいはSociety5.0に対応できるような人材をどう育てたらよいのか,持続可能な社会を築くためにどうしたらよいのかということが,今回の諮問事項として明確に問われているわけです。しかも,今の日本の社会は課題先進国になってしまっていて,課題解決先進国になり得ていない問題が指摘されています。したがって,この課題解決意識は,全体として重要事項だと思います。しかも,諮問事項にありますから,これをどう表現するかは非常に重要です。教育の目的が誤解されないような形で,こういった認識の下に進めなければいけないことをどう表現するか工夫させていただきたいと思います。
 ただ,総論でも,2040年以降の社会を見据えたときに予測される社会の課題や変化に対応して人材を育成する視点ということと,予測できない未来に向けて自らが社会をつくり出していくという視点の双方が必要だという表現をしています。この考え方が基本にあって,今回のイメージ図になっていると御理解いただきたいと思います。したがって,教育の本質的目標というものと認識すべき社会課題というような整理が必要だろうと思いました。
 御意見としては,教育の本質は何かという御指摘だと思いますので,そこの誤解がないような形にはしたいと思いますが,諮問として受けている課題意識,これもまた大事ですので,この図をそういう形で理解できるようにしていければと思います。これは,次回以降,そういった形で事務局に総論と各論の全体を再整理していただいて,また全体を見て御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,次回の予定について事務局の方からお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  本日はありがとうございました。次回は,12月12日月曜日14時半から開催予定でございます。次回は総論から各論,指標を含む全体について御議論いただくことを予定しております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  
 では,本日は以上とさせていただきます。今日はありがとうございました。
 
―― 了 ――