中央教育審議会教育振興基本計画部会(第7回) 議事録

1.日時

令和4年9月20日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議

3.議題

  1. 次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方について

4.出席者

委員

荒瀬委員、今村委員、内田委員、清原委員、小林委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村岡委員、村田委員、安孫子委員、岩本委員、大森委員、大日方委員、川口委員、河野委員、黒木委員、黒沢委員、杉村委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉田(信)委員、吉見委員、渡邉部会長
 

文部科学省

藤江 総合教育政策局長、里見 大臣官房審議官、森友 総合教育政策局政策課長、桐生 教育推進DX室長 等

5.議事録

【渡邉部会長】  ただいまから第7回中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催させていただきます。本日は大変天候も悪く,また御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。
 本会議は,新型コロナ感染症の感染拡大防止のため,引き続きウェブ会議形式になりますが,よろしくお願いいたします。
 本日は,次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方についての議論を進めたいと思います。
 そこで,事務局からの資料説明の後に,まずこれまでの審議において更に議論を深めるべきとの御意見がありました「日本型ウェルビーイング」と「教育DXの3段階,デジタルとリアルの最適な組合せ」について,2つのグループに分かれて議論をさせていただきます。
 その後,また戻っていただき,基本的な考え方について,全体での議論を進めたいと思います。
 それでは,本日の会議開催方式と資料につきまして,事務局から御説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  川村でございます。本日もウェブ会議での会議開催とさせていただき,傍聴につきましてはYouTubeにて配信をさせていただいております。
 まず,事務局の人事異動がございましたので御紹介をさせていただきます。
 9月1日付で総合教育政策局長として藤江が着任をいたしております。恐縮でございます。本日遅れての参加となっております。
 同じく9月1日付で総合教育政策局政策課長として森友が着任をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は,まず資料説明の後,内田委員,堀田委員からコメントを頂きまして,その後,日本型ウェルビーイングと教育DXのグループに分かれて御議論を頂きます。大変恐縮でございますが,ウェルビーイングのグループの先生方におかれましては,事務局の説明が終わった後に,チャット欄にお送りするURLから別のZoomに移っていただくようお願いいたします。
 また,司会につきましては,日本型ウェルビーイングのグループ,永田委員に,教育DXにつきましては荒瀬委員に司会をお願いさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 テーマ別の意見交換中はYouTubeを2本配信いたしますので,傍聴されている方におかれましては,それぞれのURLより御視聴をください。
 テーマ別の意見交換終了後,また全体で集まった後,基本的考え方についての議論を行っていきたいと考えております。
 御議論の時間におきましては,通常と同様「挙手」ボタンを押していただき,部会長又は司会の御指名により順次御発言をお願いいたします。御発言時以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日の資料は,基本的な考え方素案として資料1,各分科会での次期教育振興基本計画についての意見をまとめた資料2,事務局資料としての資料3の3つでございます。
 最後に,本日は全体30名の委員のうち,26名の皆様に御参加を頂いております。少し出入りありますけれども,全体としては26名ということでございます。お忙しいところありがとうございます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】   ありがとうございました。それでは,今の御説明のとおり議事を進めてまいります。最初に,資料の1,2,3の,3つの資料についての御説明からお願いしたいと思います。 
【川村教育企画調整官】  それでは,資料を共有して説明をさせていただきます。画面,お手元,どちらでも結構でございますけれども,御覧をいただければと思います。
 まず資料の1でありますけれども,「次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方(素案)」というもので,こちら,これまでの計画部会での御議論,また他の会議等での答申,審議まとめ等を踏まえまして,事務局において整理したものでございまして,現行計画1部,2部とございますけれども,1部の総論的な方向性に該当するというような性質のものでございます。
 御議論いただきました内容のうち,各論的なものにつきましては,また今後,第2部の方で,後半の御議論ということになりますので,まず本日については,総論的な基本的な考え方ということで御議論いただければと思っております。
 ゼロのコンセプトのところは前回と基本的に同じですので,こちら省略をさせていただきまして,前回のお示しをした骨子に文章を肉づけした形で整理をさせていただいております。
 まず,1ポツの我が国の教育をめぐる現状と課題のところ,普遍的な使命といたしまして,学制150年,また教育基本法の前文,また教育基本法に示す教育の目的,また2条における教育の目標,こういった教育基本法の理念・目的・目標が,この教育の「不易」であり,また計画というものは,「不易」なものを普遍的な使命としつつ,「流行(りゅうこう)」としての変化の中での大きな羅針盤となるものでなければならないというような趣旨のことを記載させていただいております。
 (2)の第3期期間中の成果と課題につきましては,これまで頂いたフォローアップの御議論を文章化したものでございます。これまで3期の計画における計画概要,また,それ以降,初等中等教育段階における第3期期間中の成果,GIGAスクール構想等,また高等教育段階における制度改正,またグランドデザイン答申等の成果,さらには学校段階を通じた教育費負担軽減としての幼児教育・保育の無償化等々の,この軽減策の拡充,また施設整備ということについてでございます。
 一方ということで,コロナウイルス感染症の拡大によりますグローバルな人的行為の激減等の課題的な側面,いじめ,また児童生徒の自殺に関する状況,学校における働き方改革,さらには教師不足の課題ということに関すること,また地域の教育力の低下ですとか,家庭を取り巻く環境の変化,こういった課題意識でございます。
 さらに,社会経済の発展観点からの,イノベーション人材の不足,労働生産性の低迷,また高等教育機関における取組の状況ということでございます。
 この辺りフォローアップの御審議いただきましたことを踏まえまして記載をした上で,社会の現状や変化への対応というところでございます。
 こちら「VUCA」の時代と言われる中での3期計画期間中での課題,こちら継続的にあるという一方で,この期間中に発生したコロナ,またロシアのウクライナ侵略による国際情勢の不安定化,こういったことが予測困難な時代の象徴,さらにはDXの進展ということ,この計画期間中の特筆すべき事柄を挙げております。
 その上で,2040年以降の社会を見据えたときに,現時点で予測される社会の課題や変化に対応して人材を育成するという視点,また予測できない未来に向けて社会を創り出していくという視点の双方が必要であるという御議論を,こちら記載しております。
 人口減少に関すること,またデジタル人材,グリーン人材の不足に対応するようなこと,また経済的豊かさのみならず,ウェルビーイングの考え方の,重視の背景,社会の多様化が進む中での共生社会の実現,社会的包摂。成年年齢の18歳引き下げ,またこども家庭庁,それからこども基本法の成立への対応といったことが社会の変化としてございます。
 また,VUCAの時代における,予測できない未来に向けての社会を創り出していくという視点から,学習指導要領前文に定められた,一人一人が自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値ある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り開く,「持続可能な社会の創り手」,これが正に求められる姿であろうということでございます。
 そして,未来社会像としてのSociety5.0ということでございます。
 (4)教育政策に関する国内外の動向ということで,中教審における各種答申,また審議まとめ,さらには教育未来創造会議,総合科学技術・イノベーション会議等々における他省庁における議論,また国際的な議論,動向についても記載をしております。
 その上で,2として,今後の教育政策に係る基本的な方針ということで,5点挙げております。日本型ウェルビーイングの向上・共生社会の実現に向けた教育の推進,マル2として,社会の持続的な発展を生み出す人材の育成,マル3として,地域や家庭で共に学び合う社会の実現に向けた教育の推進,マル4として,教育DXの推進,マル5として,計画の実効性確保のための基盤整備・対話ということで,前回の骨子を踏まえた上で,この5本の柱を設けております。
 まず,日本型ウェルビーイングの向上・共生社会の実現に向けた教育につきましては,日本型ウェルビーイングの概念整理ということで,波線のところ,本日,特に御議論をグループ別に頂きたいというふうに考えているところでございますけれども,このウェルビーイングの国際的な比較調査における欧米的な文化的価値観に基づく内容というのが,我が国においてどのように概念整理をすべきかということで,思いやり,利他性,社会貢献意識などを重視する協調的な幸福感が重要な意味を有するということ。また調和と協調という,このウェルビーイングの考え方が世界的に取り入れられつつあるということで,構成要素としての「主観的な幸福感」,「開放的協調性と多様なつながり」,「自己肯定感と自己実現」,「安全・安心な環境」ということで,御発表資料,また御議論を踏まえて記載をしております。
 そのための,教師のウェルビーイングの確保ということ,また,これが結果として,家庭や地域のウェルビーイングにもつながるということでございます。
 さらには生涯学習・社会教育におけるウェルビーイングの実現の視点ということでございます。
 誰一人取り残さず,全ての人の可能性を引き出す学びによる共生社会の実現というところにつきましては,一人一人の多様なウェルビーイングの実現のための学びというものを,学校をはじめとする教育機関の日常の教育活動に取り入れていく必要性ということで,いじめ,児童生徒の自殺者数の増加,また不登校生徒数,それから特別支援を受ける障害のある子供,病気療養,ヤングケアラー,貧困ということで,子供の抱える困難の多様化・複雑化,更に特定分野における特異な才能のある児童生徒への指導・支援の必要性,外国人の児童生徒,海外で学ぶ日本の子供ということで,誰一人取り残さない形での教育の展開ということでございます。
 その際ということで,マイノリティの子供の「弱み」だけではなく,「長所・強み」に着目するエンパワーメントの視点というところの重要性でございます。
 さらには,「公平,公正」の概念ということで,Diversity,Equity and Inclusion,DE&Iという考え方の重要性。さらに,離島,中山間(さんかん)地域等ということで,へき地における教育の充実。
 こうした方向性については,初中段階だけではなく高等段階にも求められるということ。また,このための活動として,自らとは異なる立場にいる地域,人々と接するような機会の確保。
 この背景には,「同調圧力」ということの指摘があり,これは,お互いの組織や集団の境界を越えて混ざり合うことが今後重要になってくるということ,そのための土壌としての「風通しの良い」組織・集団。また,この考え方はイノベーションの創出にもつながるというようなことで,まとめさせていただいております。
 続いて,共生社会の実現に向けた教育の方向性でございますけれども,これは個別最適な学びと協働的な学び,こういった学びの方向性,既に出ておりますけれども,これらの教育,共生社会の実現に向けて必要不可欠な方向性,また高等教育においても,グランドデザインで多様性という観点が出ております。こういった観点,こうした目指すべき教育の方向性を共生社会の実現という観点から改めて捉え直した上での,日常の,教育の営みの中に取り込んでいくということでございます。
 さらには,ICT環境の効果的な活用ということで,様々な距離,場所,時間の制約を取り払われるということ,活用するという観点でございます。
 さらには生徒指導,そして教育相談ということで,現在議論もあります,この生徒指導の方向性についての記載でございます。
 さらには体験活動の重視ということで記載をさせていただいております。
 そして,個人と地域・社会のウェルビーイングのつながりということで,個人のウェルビーイングが社会のウェルビーイングをもたらすために,保護者,地域住民等一体となった学校運営という観点から,コミュニティ・スクール,地域学校協働活動,また高等教育段階における地域連携の枠組み,こういったものを活用して「三方よし」となるような取組を推進ということでございます。
 続いてマル2として,社会の持続的な発展を生み出す人材の育成ということで,社会の持続的な変化に向けて,気候変動等様々な国際的な情勢がある中で,この社会を持続的に発展していくという観点からは,一人一人の生産性向上ですとか多様な人材の,社会参画の促進の必要があるということ,Society5.0時代における「人」の力,「人への投資」といった観点。
 また,そのための,まず,この主体的な社会参画意識,日本が低いと言われる中での,OECDの,生徒のエージェンシーの重視とも軌を一にするような考え方としての主体的な社会参画意識の醸成,これを様々な活動を通じて育成する必要があるということ。
 また,その時代における将来を見通した際の分野の人材育成ということで,デジタルですとかグリーン,こういった価値創造につながると見通されている分野における人材育成の機動的シフト,また「総合知」の重要性の観点からの大学における文理横断・文理融合,また初中段階における探究・STEAM,ジェンダーギャップの解消といったことを記載しております。
 さらに,主体的・対話的で深い学び,アクティブ・ラーニング,大学教育の質保証ということで,「正解主義」からの脱却の観点からの「主体的・対話的で深い学び」,これは不可欠であるという視点。
 さらに,学習者を主体とした,こういった考え方というのは,初中段階のみならず,高等段階,生涯,社会教育においても重要であるということで,高校教育改革,大学入学者選抜改革,大学等におけるアクティブ・ラーニング,こういったことも必要であろうということ等々でございます。
 さらに,グローバル人材の育成という観点からは,コロナ,また国際情勢によって分断が強まる中でのグローバルリーダー,また地域社会においてグローバルな視点を持って活躍する人材の必要性ということで,留学,また外国語教育等々の充実が必要であるという観点でございます。
 また,その際,「持続可能な社会の創り手」という観点で,SDGs,ESDの推進が求められるということ,その際,遠隔・オンラインを組み合わせたプログラム展開ということも記載をしております。
 さらに,地域・産学官連携,また職業教育ということでございますけれども,地域の持続的な発展のための地域連携,学校と産業界が一体となった人材育成ということで,様々な能力というのが今後,求められる能力を変化するという中での,学校を地域や社会に対して開いていくということでの取組のこと。また高等専門学校,さらには地域産業における中核的な役割を担う専修学校の職業教育の充実,こういった観点も記載をしております。大学等におけるアントレプレナーシップの教育ですとか,産学連携による大学院教育の強化,さらには,そのための共創拠点としての施設設置,こういったことも盛り込んでおります。
 さらに,多様な才能・能力を生かす教育といたしまして,これまで一人一人の多様な才能・能力を埋もれさせないというような観点から議論が十分行われてこなかったということで,同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方にとらわれない,この画一性を排した教育が求められるという視点でございます。
 また,生涯にわたって学び続ける学習者の育成と環境整備につきましては,人生100年時代における中での,日本における社外教育等が進まないという状況。
 さらに,生涯学習を実現するというための,初等中等,また高等教育段階において,この基盤を培って学びを習慣化していく,生涯にわたって能動的に学び続ける態度・涵養ということの重視。また,高等教育機関等における社会人の学び直し,企業等における適切な評価,こういった観点を記載しております。
 マル3は,地域や家庭で共に学び合う社会の実現ということでございまして,こちらは生涯学習分科会における審議まとめも踏まえてということでございますけれども,社会教育が地域コミュニティの形成に強くつながっているということで,関係省庁における政策提示,これも地域コミュニティが維持されていてこそ機能するということで,このための「つながり」や「かかわり」のつくり出し,関係の土壌を耕しておくという考え方が必要,重要であろうということでございます。
 それから,公民館等の社会施設の機能強化,公民館,図書館等,デジタル田園都市構想におけるデジタルの活用,さらには社会包摂的な機能も必要であろうということ。また,オンラインだけではなくて,対面によるつながりの機会の充実も求められるという観点,社会教育人材の活用が重要であるということ,こちら記載しております。
 あと,生涯学習社会の実現につきまして,職業能力向上だけではなくて教養を高めるという,自己実現を図るための学習の重要性,また,その中でも,障害のある方の生涯学習機会の不足ということ,こちらについても取組の促進が必要であるという視点を記載しております。
 DXにつきまして,こちら本日の御議論でございますけれども,DXの一般のこの3段階に関する事柄,こちら後ほど詳しく御説明させていただきます。
 そして,GIGAスクール構想により1人1台端末の実現をはじめとして,飛躍的に進展する中で,当面は第3段階を見据えながら,全国全ての学校で第1段階から第2段階への移行を着実に進めることが適当であるとの考え方。その際,将来的な第3段階の構想のイメージを,教育行政,教師が共有した上で取組を進めることが重要であるという視点でございます。
 各段階における教育DXの推進ということで,初中教育,また高等教育におけるDXの,また生涯学習における,この視点というのをお示ししております。
 さらに,デジタルの活用とリアルの活動の充実,重要性ということで,デジタルとリアルの最適な組合せということでございましたけれども,これは必ずしも「二項対立」の関係には立たないということで,様々な場面,状況,一人一人の状況に応じたメリット・デメリットも考慮ということで,例えば大学におけるメリット又はデメリットに関すること,小中学校における指導の組合せの在り方に関する事柄,また,その際の教科書・教材・ソフトウエアの活用といったことでございます。また,リアルな体験機会の充実も必要であるという観点もお示しをしております。
 5は,この実効性確保のための基盤整備・対話ということで,経済的状況によらない学びの確保のための経済支援に関すること,また指導体制ということで,これまでの,教育現場での教師の熱意と努力によって支えられた国際的な高い評価,これを維持するための様々な取組,教師不足の問題が顕在化する中での人材確保,教職の魅力の向上,「チーム学校」としての支援スタッフの役割の重要性,給特法等の法制的な枠組みを含めた処遇の在り方の検討,ICT環境のこの維持といったこと,こういったことを記載しております。
 また,NPO等の多様な担い手ということで,「自前主義からの脱却」ということで,様々なNPO,企業等々の団体との連携・協働に関する記載でございます。
 さらには,安全・安心でということで施設的な整備,また学校図書館,教材の整備,安全確保,最後が各ステークホルダーとの対話を通じた計画策定・フォローアップということでございまして,こちら素案の御説明でございます。
 続いて,資料2でございますけれども,こちら各分科会での議論まとめということで,大学分科会,それから初等中等教育分科会,生涯学習分科会に計画について御説明した際の意見でございます。事前にお配りもしておりますので,項目だけ御紹介させていただきます。
 まず,ウェルビーイングに関する御意見,これだけ頂いております。また,共生社会の実現に関する御意見でございます。
 学習者主体の学びの重要性,またイノベーションや学修者本位,高等教育段階における御意見,またリカレント教育,学び直しに関する御意見でございます。
 さらに,グローバルということに関する御意見,社会教育・生涯学習に関する御意見,また教育データ利活用,デジタル化に関する御意見,健康教育に関する御意見,計画の実効性に関する御意見,最後,全般ということで,こちらも御参考いただければと思っております。
 資料3でございますけれども,こちらは既存の資料もございますので,まず私の方から全体について御説明した後,こちらの桐生室長に代わりまして,DXについては桐生室長から御説明をいたします。
 日本型ウェルビーイングの関係,一度御議論いただいた際の資料,OECDラーニング・コンパス,それからOECDのウェルビーイング指標ということでございますが,こちら新しい資料でありまして,OECDのChild Well-being Dashboard,日本の結果として,この社会・情緒的な発達の状況が随分低い結果出ております。自己有用感がある子供の割合が低いということでございますが,実際の質問を見ますと,「困難に直面したとき,大抵解決策を見つけることができる」という質問に対して,そのとおり,全くそのとおりと回答した子供の割合で高低が出ておりまして,なかなか日本は,この質問に対して,そうであると答えづらいということでございまして,例えば「自分の人生には明確な意義や目的がある」という質問に対する回答ということもございますので,この辺り文化的な背景も考慮する必要があろうかと思います。
 また,慶應大学の前野教授が提唱するウェルビーイングの4つの因子ということで,「やってみよう」「ありがとう」「何とかなる」「ありのままに」という因子の御紹介もさせていただきます。
 これ以降につきましては,内田委員の発表資料,また岩本委員の発表資料,さらには尾上校長先生の発表資料ということで,第4回における発表資料をまた御参考いただければと思います。
 DXにつきまして,まず堀田先生からの御発表資料,最初2枚つけさせていただいております。
 以降,桐生室長の方から御説明をさせていただきます。
【桐生教育DX室長】  教育DX推進室長の桐生です。私から,教育DXの現在の展開状況と今後の御議論の論点と考えられる点を御説明いたします。
 まず,こちらの図ですが,以前堀田委員からも御提示がありましたDXは3段階ありますというお話があり,それを「電子化」と「最適化」と「新たな価値」と銘打って整理しております。
 それに加えて,現在の教育行政の展開状況を下の矢印で示しております。GIGAスクール構想による1人1台端末の整備や,デジタル教科書の普及促進,あるいは大学等のデジタル化推進は第1段階に位置づけられると考えておりまして,今,ここを着実に進めているところであります。
 加えて,水色の部分ですけれども,第2段階以降を見据えて,大きく3つの柱で書いております。そこでは今後デジタル化した上で,データをどう使って,そこから知見を引き出していくかが大きな焦点となってくると考えておりまして,1つ目として教育データの定義や標準化,これはルールと言っておりますけれども,ルールをまずどのようにしていくかということです。
 それから2つ目としては,基盤的ツールです。全国的に広く共用できるようなツールというのは,国で作って,それを皆さんでカスタマイズして使っていこうといった形の取組が2つ目で書いてあり,こちらをツールと呼んでいます。
 3つ目は分析と活用となっております。データを標準化して,それから共通ツールを使って,現場や行政の政策の意思決定において使えるような形にしていく分析や調査研究を進めております。この3つの柱で今,手を打ち始めているといった段階です。
 今後,第2段階,第3段階は本格的に訪れてくるといったことが考えられていますけれども,その際にどういったことが想定されるのかというのを,その下のDXで変わること(イメージ案)でお示ししております。
 「これまで」と「これから」でそれぞれイメージをお示ししております。「部分的・静的」な把握,要はスナップショットを撮るような把握から,学びの仕方であるとか,やり方,それから指導のやり方もダイナミック(動的)な把握ができていくことが一つです。その結果,二つ目にあるように,属人的な知であったそれぞれの取組が集合知として活用できるようになるのではないかと考えています。
 それから三つ目は,標準的なモデルアプローチと言っていますけれども,同じタイプの子供の指導方法ですとか,教材や使い方が,標準的なモデルとして考えられていたところを,それを例えば認知特性や,その子の興味関心に応じた個別最適なアプローチができてくるだろうということ,それから,四つ目は,事件・事故対応などで後手後手の対応になりがちだったところを,ある程度の未然予防というのもできてくるのではないかと考えております。このように,第2段階,第3段階で,どういった価値を付与していくかという観点では,キーワード的な方向性は議論されてはいるのですけれど,もう少し具体的な方向等の点での御議論をいただければ幸いだと考えております。
 以降は参考資料となっておりますけれども,文部科学省の「教育データの利活用の有識者会議」において,これまで御議論いただいてきており,特にゴールイメージが真ん中の将来像,具体イメージに書いてあります。このような具体的なイメージを基に議論を進めていけばいいと考えておりまして,そのための参考資料としてお示ししております。
 また,デジタル庁を始め4省庁で教育データの利活用ロードマップを今年の1月に策定しており,ここにおいても,現状の「as is」から「to be」に今後なっていくといった将来像を示しておりますけれども,これらの蓄積も参考にしていただきながら御議論いただければと思います。
 こちらの,教育データの利活用のロードマップにおきましては,図の真ん中にありますように,「誰もが,いつでもどこからでも,誰とでも,自分らしく学べる社会」というものを掲げてやっております。先ほどのお示しいたしました「教育DXで変わること(イメージ案)」と大体同じことを示していると思いますが,ここでは更に具体的な姿を御議論いただければと思います。
 私から以上です。
【川村教育企画調整官】  以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,次に,もう少し議論を深めるべきとした2つのテーマについて意見交換をさせていただきたいと思いますが,その前に,まず日本型ウェルビーイングについては内田委員から,それから教育DXについては堀田委員からそれぞれ,これからの意見交換に向けてのコメントをお願いしたいと思いますが,よろしいでしょうか。
 まず内田委員,よろしいでしょうか。お願いいたします。
【内田委員】  御指名ありがとうございます。内田です。よろしくお願いします。
 7月の会議において,私の方から日本型ウェルビーイングに関してどのように捉えるべきか,あるいは,これまでの経緯なども踏まえた上で,新たな形で日本型のウェルビーイングというものを取り入れて,こちらの基本計画の中に入れていく際にどのようなことに留意するべきかというようなこともお伝えをさせていただきました。本日の議論についてもいろいろな様々な御意見があるかなと思うのですけれども,私の方から幾つか,もし可能であれば,議論したいポイントというのを提示させていただければと思っています。
 一つは,日本型ウェルビーイングといったときに,結局どのようなことを重要視していくのかということです。先ほどの説明資料の中には,協調性,思いやり,あるいは利他性というようなことが含まれて出てきましたけれども,こうしたことを教育の目標としてウェルビーイングの中に取り入れていくに当たって,どういうことに留意をするべきかということを考えることができればと思います。
 それからもう一つは,先ほど資料の後半の説明にもありましたように,世界基準の指標とのずれをどのように考えていくのかということだと思います。
 今現在,例えばOECDのデータに関しましても,有意義感とか,人生の目標や意義がウェルビーイングの測定に組み込まれています。これ多分,大人が聞かれても,明確に答えられる人がどれぐらい今の日本社会の中にいるかと言われると,私自身は非常に難しいのではないかと思っています。そうした大人の状態を鑑みることを飛ばして,では子供からどんどんこれをやってくださいというような体制が整っているのかというと,必ずしもそうではない。
 こうした視点が不必要だと私は思わないですし,これを入れていくこと自体は重要なことだとは思うのですけれども,唯一こうした世界基準の項目のみを用いていて日本の子供たちのウェルビーイングにとっても重要なことが提示できているかというと,協調性や利他性,共生社会に向けてという視点における視点が含まれていない指標が今の世界基準になっていると思います。
 そうした中で,日本の中での教育のウェルビーイングとその測定をどのように考えていくのかというのを検討していくことができないだろうかと思います。
 ウェルビーイングは学力の問題と対立的に捉えられることではなくて,そのウェルビーイングというものを実現するためには,一定のスキルや学力,こうしたものが必要にもなってくることだろうと思います。また,学習環境とか,子供が安心して学校に通えることができるような,ウェルビーイングを支える要因ですね。こういったことも含めて,安全・安心な環境であるとか,学校給食の問題であるとか,教員のウェルビーイングの問題にも関わってくると思いますが,そうした安全・安心な環境がちゃんと提供できていて,それを子供たちが主観的に,どのように認識をしているのか,どんなふうに感じているのかを知る必要もあります。幾らこちらからこんなことを提供していますよといっても,子供たちに届いていなければ,あまり実践的な意義が持てないのかもしれない。本当の意味で子供の主観的なところに届いているのかどうかというのを理解していくことというのも私は必要ではないかと思っておりまして,こうしたことについても多少なりとも議論ができるのであれば幸いでございます。
 以上で発言を終わらせていただきます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは,引き続いて堀田委員からもコメントをお願いしたいと思います。
【堀田委員】  東北大学の堀田でございます。2つお話しします。
 まず1つ目は,学校現場の様子を見に行きますと,先生方は本当にぎりぎりの人数や状況で一生懸命御対応されている様子が分かります。児童生徒の多様化,家庭の多様化かもしれませんが,そういうことに対応すればするほど,何というか,教師の仕事の範囲というのはどこまでなのかとか,学校という枠組み,あるいは制度が,今までのものでは限界が来ているのかなと思うところがございます。
 学校教育が前提とできる基盤が,デジタルのプラットフォームも加わりましたので,このデジタルのプラットフォームの話は,例えば不登校児童生徒のオンラインの学習であるとか,コロナ禍でのオンラインでの家庭学習支援であるとか,もうそもそもクラウドで様子をお互いが認識しながら協働的に学びを進めていくなんていうのは教室でも起こっていることですし,様々なデジタルの教材で個別最適な,指導の個別化もできるしなどなど,いろいろ考えると,これから議論されるあらゆる各論に,デジタルのプラットフォームを利用する話は出てくると思います。
 ですので,いろいろある中のDXというよりも,あらゆるところに出てくるデジタルプラットフォーム,そしてDXの形というのが,一つの議論のポイントかと思っています。
 もう一つについては,私の資料のノンブル28ですかね。これですけれども,DXには3段階あるというのではなくて,3段階目をDXと言うというふうに,よく言われています。そして,第3段階というのは突然来るのではなくて,第1段階と第2段階を完了しない限りDXは来ないというふうに言われています。
 学校現場は,先ほど桐生室長に御説明いただいたように,ようやくGIGAで端末が来て,いろいろなことを紙でやっていたのをデジタルにしてみようか,その方がいろいろ便利になってきたねみたいな,校務も少しデジタルでいろいろやろうかみたいな,まだ第1段階なのです。だから,まだDXではありません。
 しかし,第2段階に向かって,こういう工夫があるといいよ,場合によっては,いろいろな自治体の制約を外していかなきゃいけないものもあります。そういうようなことや,あるいは,もしかしたら何らかの制度的なことの規制緩和も必要になるかもしれません。
 第3段階というのは,恐らくウェルビーイングが実現するときのデジタルプラットフォームの利活用の仕方みたいなのが,僕は第3段階ではないかと思いますので,そう考えてみると,それに向けて第1段階,第2段階で,いろいろ議論しておかなきゃいけないことがあると。文科省としては,既にデジタル教科書はどうあるべきか,デジタル教材はどうあるべきか,CBTはどういうふうにするか,あるいは集まった教育データをどういうふうに利活用するか,そのとき気をつけなきゃいけないことは何か,ほかの省庁とも連携しながら,様々なことを議論はしていますけれど,そういうものを少しずつ解きほぐしながら,様々な場面でデジタルプラットフォームが使われて,全ての子供たち,あるいは先生たちのウェルビーイングが実現するようなときのデジタルプラットフォームも活用した教育環境というのはどうあるべきか。そのときのことをDXとイメージしたいというふうに思いますので,このような形で,通らざるを得ないところをどうしていくかというのが,これから5年間の非常に重要な課題かと思いますので,そういう視点で御議論いただければ幸いでございます。
 私からは以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは早速,今の2つのグループに分かれて意見交換をさせていただきますが,先ほどの御案内のとおり,永田副部会長と荒瀬副部会長に進行役をお願いして進めたいと思います。
 では進行方法について,事務局から改めて説明をお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  それでは,事前に御希望をお伺いしておりました先生方もいらっしゃいましたですけれども,それぞれのグループということで,今回ウェルビーイングのグループの先生方,チャット欄に今URLをお送りしましたので,そちらにお入りいただきまして別グループでの御議論ということで,DXの先生方は,このままお残りいただくようお願いいたします。
 現在,15時40分でありますので,30分程度の御議論で,16時10分をめどに御議論いただきまして,その後,お戻りいただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
(日本型ウェルビーインググループの委員が移動)
 
(教育DX等グループの議論)
【荒瀬副部会長】  皆さん,荒瀬でございます。よろしくお願いいたします。もうよろしいでしょうかね。では,事務局の方で全面的にお助けを頂くということでよろしくお願いいたします。
 これから30分ということでありますので,今し方も御説明いただきました教育DXの3段階,3段階目がDXと呼ぶのだということで堀田先生おっしゃいましたけれども,デジタルとリアルの最適な組合せグループの意見交換をしたいと思います。御発言をなさる場合は「挙手」ボタンを押していただくようにお願いしたいと思います。
 ただ,私が,もし気がついておりませんでしたら,どうぞミュートを外していただいて,発言したいということを身振り手振りも交ぜていただいてアピールしていただけると大変助かります。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 では,まず村岡委員,お願いいたします。
【村岡委員】  山口県知事の村岡でございます。ありがとうございます。なかなか公務の都合でこの会議に出席できておらず心苦しいのですけれども,先ほど堀田委員さん,お示しいただきました教育DXの3段階,大変分かりやすくまとめられていますし,なるほどと思って聞かせてもらっていたところであります。我々の取組,山口県としての取組も今どんどん進めておりまして,これを重ね合わせて考えることができました。
 現在,GIGAスクールの構想におきまして,全国の多くの学校では第1段階のデジタル化が進んでいて,本県におきましても,コロナ禍の中で,県立学校においては1人1台タブレット端末を一斉に導入して,この活用をこれからしっかり進めていこうとしているところです。その中で今やっているのは,民間企業と連携し,モデル校を2校選定しまして,教育データを活用し,3つの改革――1つは生徒の学び方,それから教員の教え方,それから教員の働き方,この3つの改革を進めていこうということで取組を始めようとしています。
 それから,クラウドサービスを使った校務のデジタル化の取組も試行的に始めているところでありまして,お示しのあった第3段階に向けてしっかりと進めていければと思っているところなのですけれども,その中で,一つネックになるだろうというふうに今感じているのが,教育データの取得の仕方とか活用において,保護者の方の理解をあらかじめちゃんと得ないといけないというのが大きな課題であります。
 そのためには,保護者に理解をしてもらう必要がありますし,データを活用する目的ですとか,これは子供たちのよりよい学びの環境につながっていくのですよ,そのためのデータの取得,活用,これが必要なのですよということを,分かりやすく丁寧に説明をする必要があります。
 ここでつまずいてしまうと,やろうとすることが何もできなくなってしまいますし,皆さんの同意を得なければいけないので,ここはなかなかうまくやらなければいけないところで,大変苦心するところではないかなというふうに今感じながら進めています。
 それから,併せて必要になるのは,セキュリティ対策とか情報の管理ですね。ここが,もし何かあったときには,一遍にそういった信頼も失われてしまいますので,非常に慎重な対応をしていかなければいけないだろうというふうに思っています。
 そういった意味で,この第3段階を円滑にいい形で迎えるためには,そうしたルールづくりといいますか,その辺りをしっかりする必要があると思います。保護者の理解とか,セキュリティ対策ですとか,そうしたところをしっかりと整えながら,予算措置も併せて議論していく必要があるかなというふうに思っております。
 それから,デジタルとリアルの最適な組合せ,このことは学校現場でも試行錯誤をしながら進めています。デジタルの時代においても,特に実体験で学ぶことの価値,このことを再認識して,体験的な活動も,一方で充実させていかなければいけないと思います。
 コロナ禍でデジタル化が進んできましたけれども,一方でリアルの学校の中でのつながりとか地域のつながりというのは非常に難しくなってきておりますので,その方向でデジタルを進めるのはいいのですけれど,一方でリアルという部分も意識して,しっかりここはここで充実しなければいけないということも,今このコロナ禍を乗り越えていく段階で,しっかりと重点を置いていかなければいけないというふうに思っております。
 以上です。よろしくお願います。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。具体に進めておられる際のいろいろなお話を聞かせていただきまして,ありがとうございました。
 清原委員,では続けてお願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原です。ただいまの村岡知事さんからの御発言に触発されました。御発言の2点とも大変重要で,共感をして聞かせていただきました。
 1点目の教育データの活用に関する配慮について,私も問題意識を述べたいと思います。今,総務省においても自治体DX推進計画というのが再構築されましたし,国でもデジタルガバナンスということで電子政府化が進んでおり,いろいろなデータの収集というのが系統立って進められていますけれども,今,村岡知事さんが配慮されて御発言されましたように,生かせば本当に個別快適な,学習に役立つ教育データについては,誰が責任を持って個人情報を保護して収集し,そして当事者に有効に提供していくかということについては,やはり自治体レベルだけでの取組でというだけではなくて,文部科学省,あるいは国全体の中で,本当に確固たる標準的な,系統立った計画がつくられなければ,自治体としては,具体的な活動に取り組めないのだなということを改めて思いました。
 国がデジタル庁を中心に進めていくDX計画の中に,教育に真(しん)に有効な取組については,文部科学省が中心となって,4省庁連携して試行的な取組をされているというところを基盤にして,この計画の中でも実現に向けた記述をすることが必要だと思いました。
 2点目の問題提起の「デジタルとリアルの最適な組合せ」についてですが,第3段階を適切に迎えるためには,第1段階,第2段階において,いかに教科の中でデジタルと,そしてリアルの適切な配分をしていくかということが問われるとともに,それは国語の中でどうだろうか,算数,数学の中でどうだろうか,英語の中でどうだろうとかという教科ごとの最適な組合せが検討されるだけではなくて,複数の教科をまたいで,この教科は相対的に,例えばタブレットで集中的な学びをする比率が7割かもしれないけれども,ほかの教科で体を動かしたり心を動かしたりするような学びをすることで補完してリアルとデジタルの最適な配分をしていくという発想もあるでしょうし,体験授業や農業体験,動物との触れ合い,さらには赤ちゃん,乳幼児や障害者,高齢者との直接的な出会い,職業体験,野外教室,修学旅行の位置づけが今までと変わっていくのかどうかというところも,重要な論点になっていくのではないかと思います。
 したがって,今,知事さんがおっしゃった2つの視点というのは,第3段階のDXに向かう上で,第1段階,第2段階でしっかりと準備をすべき課題の御指摘であると共感し,私も少し具体的な取組について発言させていただきました。
 以上です。よろしくお願いいたします。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。清原先生のお話を承っていながら思ったのですけれども,教科によっていろいろと変わっていくというところもあるのでしょうが,同じ教科を学ぶ中でも,それこそリアルとデジタルの組合せというのが多様に,きっとあるということも含めた御意見というふうに承りましたので,それでよろしいでしょうか。
【清原副部会長】  はい。そのとおりです。もちろんです。本当にタブレットを使いながらアクティブ・ラーニング,友人たちとのグループ学習が充実するということもあって,対面しながら,しかしデジタルを活用すると,こういうようなことも実際起こっているわけですので,今,荒瀬先生が言われたような方向だと思います。ありがとうございます。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございます。
 それでは,今手を挙げていらっしゃるのが4人いらっしゃいまして,黒沢委員,松浦委員,吉見委員,杉村委員の4人の皆さん,この順でお願いいたします。では,黒沢委員,お願いいたします。
【黒沢委員】  皆さん,いつもお世話になっております。現場の意見というわけではないのですけれども,率直に感じたところを少しお話しさせてください。
 やはり現場の先生を含めて,先ほどの第3段階と示されても,では,データの利活用はよく分かるのだけれども,何のデータをどう利活用するのかというのが,具体的にぴんとこないのですね,今の段階だと。これからいろいろなことがつまびらかになっていくのかもしれないのですけれども,そこは少し懸念していまして。
 三十何年前に企業がパソコン入れて,OAなんていってコンピューター化してきましたよね。それも,僕もずっとその中で生きてきたのですけれども,最初にコンピューター,ワープロですね,最初に入ったのはね。ワープロが入り,一太郎が出てきて,ノートパソコンでなんていって,紙だったものが全部電子化されて,これは便利だということで,いろいろな帳票類がみんななったりとか,いろいろな提出書類がワープロになったりとか,そうしたのですけれど,そうこうするうちにインターネットが出てきて,コミュニケーションツールとして使っていこうということで,コンピューターの使い方が,そこで大きく飛躍したと思うのですよね。コミュニケーションができるようになると,今度はサーバーだ何だなんていうもの,もちろん入ってくるわけですから,そうすると,部署の中での仕事のワークフローだとか,部署の中でメンバーがいろいろな情報を共有しながら仕事を次の一手を考えていくという,いわゆるグループウエアみたいなものが出てきて,自分たちの環境が,もう朝来たら,とにかくパソコン開いて,その中で仕事を完結するというのになっていったわけですよね。
 加えて,パーソナルアシスタントとでも言うべきものが,いわゆるスマートフォンですけれどね,そういうものでスケジュールの管理だとか,人とつながりながら,何かアドバイスをもらったり,あるいはちょっとしたものを調べたりなんていうのも,そういうパーソナルアシスタントも出てきて,そういうのがずっと大きく成長してきて,今の世の中になっているわけですけれども,ここで教育現場が,DXだといって入ってくるときに,どういうふうに入れていくか。GIGA端末だけでは僕,成り立たないと思うので,そういうところもよく考えていかないと,なかなか理想には近づくのが難しいのではないかな。
 ちなみに,本当に現場は,まだ第1段階ではなくて,0.5段階にも行っていないという感じです。
 すみません,感想も含めてでした。以上です。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。現場の意見というわけではないがと前置きなされましたけれども,現場の実態はそういうことではないかと私も思いながらお聞きしました。ありがとうございました。
 では,松浦委員,お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。私,2つのことを申し上げたいと思うのですが。
 1つは,このDXの3段階ということで,今までの各委員の御発言とも絡むのですけれども,この3段階がきちんと行政や政策の観点でコントロールされれば非常に有効というか,希望が持てるのですが,デジタルに関しては,いろいろなアンダーグラウンド的な要素。例えばSNSの活用や悪用ということもあって,どちらかというと子供たち,あるいは大学生も含めてですけれども,そうしたデジタル活用の負の側面というようなものにもさらされているところがありますし,それから私どもの大学でもDX推進ということでやっておりますけれども,やはりコマーシャリズムというか,どうしてもここは市場主義の影響を受けて,いわゆる大学のLMS,Learning Management Systemでも,ある企業さんのものなのか,違うところなのか,どこが利点があるのか,どこがポピュラーなのかというようなことを見ながら,そして財布と相談しながらということになっていきます。
 そうしたことの観点も,この3段階の中で,やはりきちんと行政,政策で,コントロールというか,ガバナンスをきちっと効かせていくということが大切なのかなと一つ思いました。
 それからもう一つ,教育データということなのですが,本日の資料でも非常に多局面にわたって,この教育データの活用ということが図式化されていますけれども,もう少し何か分類,整理をして議論をしていく必要があるのではないかと思いました。
 教育データというのは,例えば教育や学習のリソースとして,デジタル教科書は典型的にそうだと思うのですが,それを使って教育,学習を行っていくという側面と,それで教育実践,あるいは学習を行うこと,そのプロセスの中で,また新たに活用されたり生まれていくデータというものがあるのと,それからアウトカムベースというか,そうしたプロセスを経た上で,教育や学習の成果として出てきたデータというものがあって,それらの活用の仕方とか,あるいは先ほどの,データのセキュリティの問題も含めて,オープンにできるところと,きちっとセキュリティを守っていかなきゃいけないところとがあって,そのデータの生成や活用の局面に応じた教育データの議論というものをしていかなければいけないのではないかと思いました。
 以上でございます。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。実際進めていく上でも,全くおっしゃったように,行政とか政策上のガバナンスをどう効かせていくか,これは本当に大事な話で,それなしでは相当危ない話になってくるということを改めて思いながら伺いました。ありがとうございます。
 今,手を挙げていただいていますのは,4人いらっしゃいまして,安孫子委員,小林委員までで一旦切らせていただいて,あと10分余りです。すみません,大変申し訳ありませんが,御発言を手短にしていただくということと,最後に,全体をお聞きいただいて,桐生さんと堀田先生からコメントを頂きたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 では,吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。私は先ほど堀田委員おっしゃった,デジタル化というのは幾つかある課題の中のワン・オブ・ゼムではなく,全体を貫くものなのだという御発言,全く同感です。その意味で,3点申し上げたいことがございます。
 第1点は,冒頭の,今日の事務局からの資料に出てくる,すごい数の課題ですね。少し卒倒するのですけれども,このとんでもない数の課題を,もう少し構造化していかないとならない。構造化していくと,ある種,緊張関係を持っているものがいろいろある。
 例えばグローバル人材の育成とローカルな地域を大切にすることはイコールではありませんね。それから,サステナブルな人材とイノベーティブな人材もイコールではない。いっぱいそういうフリクションを持っているものがあります。これ,普通に考えたら両立しないのですけれども,これを両立させていく鍵がデジタル化にあると思います。
 デジタル化は,3点,軸を持っていて,1つはボーダーレス化。つまり教科だとか,分野だとか,国内外だとか,地域,それを横につないでしまう力を持っています。
 2番目が記憶の爆発で,それまで世の中にいろいろばらばらに散らばっていたデータや記憶や資料,これを全部つないで膨大な記憶のベースをつくっていく力があります。
 さらに,プロセスをリサイクル化していく。つまり,個々の成果物を集めるということだけではなくて,全体のプロセスをデジタル化していく力があると思うのです。
 こういうふうな力を,先ほどの物すごい数の課題を構造化して,対立を明確にし,両立しないものを,デジタルを入れることによって,どう両立させていくかという,このデザインが必要になると思います。これが第1点,一番大きい点です。
 あと2点は細かい点で,少しだけ,すぐ申し上げます。
 2点目は,中教審は文部科学省の,文部系の審議会ですけれども,例えば文化庁の著作権課だとか,それから国立国会図書館で進んでいるデジタル化の取組と,もっと積極的に連携していくべきだと思います。国会図書館や文化庁で,デジタル化や記憶のデジタルアーカイブ化の取組が進んでいます。それらを教育の中に生かしていく仕組みが,もっと考えられるはずです。そこにNHKだとか,いろいろな図書館も,もっともっと巻き込んでいく仕組みを是非文部科学省全体としてお考えいただきたいと思います。
 3点目です。デジタル化の中には,生徒や学生たちについての個人情報に関わる部分があると思います。そうすると,その個人情報に関わる部分は,誰がどうマネージするのかという。これは忘れられる権利の方の議論は盛んなのですけれども,私は記憶する権利といいますか,誰が記憶するのか,そして活用するのかという,この権利をめぐる議論が,国として考えられなければならない。誰が何を記憶する権利を持っているのか,活用する権利を持っているのかという議論を,もっと活発化する必要があると思っています。
 以上でございます。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。いずれも大変重要な御指摘を頂きました。時間も縮めていただいて,ありがとうございました。
 では,杉村委員,お願いいたします。
【杉村委員】  発言の機会を頂戴し,ありがとうございます。本日のテーマであるデジタル化ということに関連し,実は本日は,出張でスペインにおりまして,こうして時空を越えてつながることができるということを今,実感しているところです。
 吉見委員からボーダレス化という観点が出されました。高等教育の現場では現在,コロナ禍以後,特にCOIL,Collaborative Online International Learningといって,正にリアルとデジタルを組み合わせて,海外にいる留学生と,目の前にいる教室の学生をつないで授業が行われることがどんどん始まっています。
こうしたデジタル化の動きは,もう一つの新しい動き,すなわち今日,国際社会で議論されているトランスフォーマティブな学びをつくるという,ユネスコの「教育の未来」レポートでも提案されている動きともつながる可能性を秘めていると思います。
 その点で,更に含めることが出きればと思う点は,教師,というよりもむしろ,こういうデジタル化による学びを推進する「教育者」,あるいは「ファシリテーター」の養成のことです。デジタル化をめぐってはデジタルリテラシーを習得することの重要性に言及されますが,学生や児童生徒にとどまらず,エデュケーター,教育者の人たちも,どのようにデータを読み込み,分析するかということが求められていると思います。今日の,教員養成課程のカリキュラムの中では,恐らく,こうしたトピックが,まだ十分には入れられていないように思います。このことは,もう一つの分科会のウェルビーイングという観点にも共通することかもしれませんけれども,そうした学び手を育てる側(がわ)の養成の視点にも,是非デジタルトランスフォーメーションの観点を含めるべきではないかと思いました。
 大学教育においても今日,反省を繰り返しながらいろいろな取り組みを実施しておりますが,教育の学びを皆さんでつくっていくという点が大事だと思いましたので,付け加えさせていただきます。ありがとうございました。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。スペインは7時間の時差があるようでありますが,おはようございますという感じです。
【杉村委員】  先ほどは,間違えて,おはようございますと申し上げてしまい大変失礼いたしました。
【荒瀬副部会長】  いえいえ。今おっしゃったお話は,渡邉会長がやっていらっしゃる「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会というのがございますけれども,そちらの方でも教員養成について,本当に重要であるということで検討を進めているところでございまして,引き続き,またそちらの議論,あるいはまたフラッグシップ大学なんていうのもできていますので,そちらの方で,また検討していただくことになるかと思います。ありがとうございました。
 それでは,安孫子委員,お願いいたします。
【安孫子委員】  ニトリの安孫子です。デジタルとリアルの融合についてという考え方は大変共感しています。企業において,デジタル人材育成を今,推進しています。これは待ったなしで,企業の死活問題です。リカレント含めて,会社全体で進めている中で,デジタルかリアルかという学びの方法の違いではなく,何を解決するのかという,問題解決力の育成が,やはり真ん中にあると考えています。その大事なポイントをベースにし,ツールとしてデジタルをどう使いこなすか,瞬時に便利に使える仕組みをどうつくるのかを,リテラシー教育として学び直させています。
 やはり何のためにというところが大事だなと思って,時にはデジタル,時にはリアル。そしてデジタルで行った問題解決の仕組みがリアルに着地して現場が楽になる。そういった構造を軸に,教育をさせていただいているところです。以上です。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。実際,今,何のためにやっているのかという,これを忘れては本当に何もならないので,改めての確認をしてくださいまして,ありがとうございました。
 では,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】  時間限られていますので,簡単に要点のみ申し上げさせていただきます。今,吉見先生あるいは安孫子さんの発言とも関連してくると思いますが,やはり,これを進めていくに当たっては,目指す姿というのを具体的に示していくことが重要と考えます。どんなイメージの教育,デジタル化した教育というのを想定しているのかということのクリアなイメージをつくって,みんなが共有できるようにしていくというのが,まず第1点。それを実現するために具体的にどんな障害があるのか整理をしていくと,進め方が明確になると思います。
 先ほど課題はたくさん挙がりましたが,課題を積み上げていって,そこから,それぞれのソリューションを挙げていくという方法ですと,なかなか最後のゴールがどこなのか現場の方たちには見えなくなると思いますので,現場の人たちがイメージできるような具体的な姿というのを見せることが重要ではないかと思います。
 それからもう一つ,2点目ですけれども,今いろいろ議論がありまして,なかなか難しい問題ですが,やはり時間軸をしっかりとつくっておく必要があるのではないかと思います。例えば,前回の1人1台というのがなかなか進まなかったにもかかわらずコロナという特殊な状況で一気に進んだということを考えますと,時間があるからといって進むわけではなくて,ある程度しっかりとした時間軸を持って,ここまでにやるのだというゴールを明確にしていくことが必要だというふうに思います。
 以上です。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。クリアなイメージと時間軸という非常に重要なポイントを御指摘くださいまして,ありがとうございました。
 それでは,大変時間限られた中でありまして,御発言いただけなかった委員の方もいらっしゃるのですけれども,最後に,桐生室長,それから堀田先生の方から,本当に一言になってしまいますけれども,今お話を聞いてくださいまして,コメントがございましたらお願いしたいと思います。
 では,桐生室長,お願いいたします。
【桐生教育DX室長】  ありがとうございました。第2段階,第3段階通じて,どういった姿になっていくかというのは,正に最後の小林委員の発言にもありましたように,クリアなイメージというのをやはり持っていくことが大事だと思いますので,是非,また今後,この計画部会の中でも御議論,積み重ねていただければと思います。ありがとうございました。
【荒瀬副部会長】  堀田先生,お願いいたします。
【堀田委員】  堀田でございます。安孫子委員がおっしゃった,そもそも何のために,どんな問題を解決するために,人が動くのか,あるいはデジタルのツールを使うのかという考え方が極めて重要かと思います。よく体験かデジタルかみたいに対比されて議論されるのですけれど,僕らは日常から両方使っていると思うし,使い分けていると思うし,使い分け方は人によって違うと思うし,目的によっても違うと思います。そういうことができる人を育てる以上,あれも使い,これも使い,体験もやり,デジタルもやり,紙の教科書でも学び,デジタル教科書でも学び,それを学び分ける,使い分ける,そういう子供たちにする環境の整備が必要かと思います。
 そこで集められたいろいろな教育データについては,いろいろな心配の方が今のところ前に出ていまして,これは桐生室長等が非常に丁寧に整理されていますけれど,黒沢委員がおっしゃったような,業務のフローが変わるかとか,グループウエアみたいなのが出てくるというのが,僕は健全な成長だと思っていまして。ただ,学校における業務のフローは,恐らく学校現場で,管理職のリーダーシップで結構変えられる部分があるのではないかと思います。
 一方で,国あるいは県,あと行政,いろいろな設置者ですね,そういうところのレイヤーによって標準化されなければならないものもあると思います。このトップダウンでいろいろ決めていく合理的な仕組みと,現場に権限を持たせて管理職がしっかりとドライブして現場の目線でいろいろよくしていただくということの両輪が必要かと思っております。
 私からは以上です。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございました。限られた時間の中で御発言いただき,いずれも重要な御指摘でありました。最後のお二人のまとめも本当にありがとうございました。
 では,ウェルビーイングの皆さん,戻ってきていらっしゃいますので,これで渡邉部会長にお返しをいたします。ありがとうございました。
 
(日本型ウェルビーインググループの議論)
【永田委員】 話す内容については内田委員がサマリーをしてくださいました。繰り返しますと,日本型ウェルビーイングを考える際に何が重要と考えるかというのが1点目です。それから,世界基準とは少し違うところがあるが,それはそれで認めたとして,変えるかあるいはそれをどのようにどう適合させるか,あるいはどのように付加していくかということだと思います。それから,教育のウェルビーイングというのは二つあって,十分な教育を受けられるという意味での環境整備ができているかということと,それから,ウェルビーイングそのものを初等中等からどう理解させていくか,このようなことだと思います。ここが決まればこの教育振興基本計画はきっとできます。ここが決まらないと,教育振興基本計画は失敗します。ですから,今の内田委員の問いに,全部でも一つでも御提案いただくのが一番いいかと思います。認識は皆さんほとんど同じなので,資料3の11ページに内田委員のサマリーがあり,協調的幸福感と獲得的幸福感と書いてあります。何となくそうかなと思い当たる節が皆さんあると思います。いかがでしょうか。内田委員。中身はそのような感じでよろしいでしょうかすか。
【内田委員】  ありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。
【永田委員】  協調的幸福感,獲得的幸福感と内田委員が書いてくださったことは非常に役に立っていて,欧米的な方も翻って社会を豊かにするとなっているわけです。日本的幸福感も,目指すものはやはり周囲や社会の幸せだと思うのです。
 最後のところは似ているが,日本はその後に個人の幸福感が来るようにできているから,そこが問題なのだと思います。結局は,このような社会的動物として,個人の幸せは当然だと思いますが,集団全体の幸せを希求できないと社会は存続しないので,このような形になるのだろうと思います。以前は協調的幸福感と獲得的幸福感はすごい差だと思っていました。似通っているようで,社会というものをどこで意識するかの違いだと思って,このレジュメを最近よく見ています。何か御意見等あればお伺いします。
 牧野委員,どうぞ。
【牧野委員】  お願いいたします。少し私も話題提供的に話をさせていただければと思います。今の永田委員のお話と,先ほどの内田委員の御指摘もそうなのですけれども,
また,私の前回の社会教育に関する発表でも申し上げたのですが,日本の場合,協調的幸福感というときに,いわゆる帰属の問題になっていってしまうところがあると思うのですね。日本的な考え方もいわゆる欧米的な考え方も,個人をベースにして考えて,日本の場合はどちらかというと協調的といえるのだという議論になり,それが帰属するとか所属するということになっていってしまうところがあって,そこで個人が相互に抑えあってしまう。それが,ある意味では,最終的には個人の幸せをみんなで考えましょうという議論になると思うのですけれども,個人が協調的であることと帰属との関係をこれからどう組み替えるかといったことが問われてくるのではないかなと思うのです。
その意味では,協調的にということもありますけれども,むしろ例えば一緒につくっていくですとか,帰属するのではなくて,新しい関係をつくって,お互いの幸せなら幸せを追求できるような条件をお互い保障し合うような関係をつくっていく,そういうことが重要ではないか。それはまた言い方を変えれば,お上が何でもやってくれるとか,国が言ったことに従っていればいいとか,また,親が言ったことに従っていればいいという議論ではなくて,むしろ自分で判断して,お互いに新しい社会,新しいつながりをつくって,一緒に生きていく,そういう社会をつくっていくのだというような,そういう議論になっていくということではないかなと思いますね。
【永田委員】  すばらしいですね。
【牧野委員】  そういうふうに考えたいと思いました。
 以上です。
【永田委員】  ありがとうございます。欧米だって,月へ行くと言って,組織に従属しなくても,個々が月に行く工夫をしてアポロ計画は成り立っていて,結果として月へ行きました。ですから,別にそんなに違わないのですが,今,牧野委員がおっしゃった帰属になってしまうというのは,頼りない気がします。
大森委員,どうぞ。
【大森委員】  ありがとうございます。私も2点,一つは今の御議論の延長線で,私も同じようなことを考えていて,やはり社会が,何というか,例えば多様性を享受しましょうとか,共に生きる社会をつくりましょうとか,そういうことと似た文脈だと思うのですけれども,そのときに,あなたは幸せにならなくていいけれど社会全体の幸せを考えてねというぐらいに理不尽なことはやはりなくて,ほかのお友達を大切にしましょう,しかし,あなたは大切ではないからねというのはあり得ないのですよね。
 まず自分が,あなたが個として幸せになっていいのだよということが,まず大前提にあってというところのバランスで,北米的なのはまず個が際立ってしまっていて,日本はもしかすると社会が際立っていると言っているみたいな,そこのバランスを今回のこの議論の中でうまく持っていけたら,すごくすてきなものになるような気もするし,今,いろいろな施策の中で,まちづくりでもウェルビーイングなまちをつくろうといったときに,いろいろな指標を組み合わせながら,町のウェルビーイングを考えていくという方向になっていく中で,そういう今の御議論はすごく大事だなと思ったのが1点。
 もう1点は最初に永田先生がおっしゃってくださった,元は内田先生がおっしゃってくださってあるのですけれども,学校とか学びの空間のウェルビーイングと,それから,子供たちが,ウェルビーイングとは何かというのを学んでいくと。
 これは質問になるかもしれないのですけれど,その先に,ウェルビーイングな社会をつくり出す人に成長してもらうというか,何かそういう観点というのは教育にあり得るのか,人材育成的なところですね。ウェルビーイングが分かったよというところで終わるのか,つくり出せる人までにもっと上の学年になったら成長してもらいたいのかなとも思ったり,2番目は質問です。
【永田委員】  ありがとうございます。
 内田委員,質問部分についてはコメントいかがでしょうか。
【内田委員】  ありがとうございます。おっしゃっていただいたとおり,バランスというのが私も,これからの日本社会の課題だなと思っていまして,そのバランスの行き着く先がウェルビーイングをつくり出す人材の育成にもつながるのではないかと思っています。
というのは,先ほど永田先生の御指摘の通り,アメリカの個が強いような社会というのは,自分のウェルビーイングがあって,それが翻って社会をよくするという信念がある。自分が社会を変えるというある種の効能感みたいなものが伴ってこそ,こういうことができるのだろうなと思っています。日本の社会の場合,そこが少し弱いのですよね。場が強いので,自分が何かを変えられるという感覚がなかなか育っていかない。
しかし,ウェルビーイングというのを考えていったときに,そういうところまで発展できるということが,目標としては,良い案なのではないかなと思いました。
本当コメントみたいな感じですけれど。
【永田委員】  河野委員,どうぞ。
【河野委員】  ありがとうございます。私は,少し違う視点というか,日本におけるウェルビーイングを目指していく上での課題を指摘してみたいと思います。
 私たちが目指す幸福感というのは,恐らく心の豊かさというのに関係していると,心が豊かになるということは,いかなる状況であってもポジティブな気持ちを持つということだと思うのですね。
 このポジティブさはどこから生まれるかというと,実は,私は楽観主義というのと非常に関係があるのかなと思っています。というのは,社会学者のホフステードの文化次元モデルというのを御存じの方多いと思いますけれども,日本は不確実性を回避する傾向が非常に強い文化として分類されていると思います。
 つまり,この不確かなものに不安を覚えて,確からしいもの,あらかじめ答えがあることに安心感を持つ傾向が強いということを示しているのだと思うのですが,確かに私たちは計画を立てることで安心し,計画どおりに物事が進まないと不安になりますね。ルールがあることで安心して,ルールにはみ出ると不安になると。
 他人と同じであることに安心して,違うと不安になるということで,協調的な幸福感というのが日本人の特性だとするならば,そうした日本人の文化的な思考とも関係しているというふうに思うので,同調圧力からの脱皮というのは,文化的傾向から見ると非常に難しい,難易度が高いなと。なぜならば同調していないと不安になる性質を,もともと我々が持っているからです。
 こうした背景を踏まえたときに,これから先のVUCAの時代は確からしいものが見つかりにくくて,答えがなくて,計画どおり物事が進まないことが多いので,一つの型にはまらない,多様な生き方をしていいのだよと言えば言うほど,生徒さんたちは多分,あるいは大人たちも不安になって,寄る辺なく自信を失いやすいという気がします。
 多分,VUCAの時代に心の豊かさを得るためには,一旦私たちの個々が持っていた,文化的しこりを捨てて,学び直し,新たな価値観を獲得する。不確実性を回避するのでなくポジティブなもの,チャンスが広がると捉えることができる思考を育む必要があるかなと。学校教育に期待したいのは,先ほど申し上げたように,楽観思考ですね。どんな状況でもそれをすばらしいと思えて,わくわくする心を育てる。それから,不安領域を減らして安心・安全領域を増やしていく。そういったときに初めて自己の効用感みたいなものを高めることができるのかなと。そういう方向に教育が向かってほしいなというふうに思いました。
 以上です。
【永田委員】  ありがとうございます。後でまたそれをどうするかですね。そこを目指すでもいいと思います。
 徳永委員,どうぞ。
【徳永委員】  ありがとうございます。
 内田委員の三つ目の論点として,ウェルビーイングを支える要因ということをおっしゃっていて,私はそれがすごく重要なのではないかと思いました。ウェルビーイングの話になると,個人にどう働きかけるのかとか個の話になってしまいがちだと思っていて,それを支える,ウェルビーイングを保障できるような制度をどのようにつくっていくのかとか,あるいはなぜウェルビーイングが保障されない人がいるのかとか,その辺りをきちんと制度的に保障していく視点をもつ必要があり,環境の方もしっかり皆さんと議論していった方が良いと思いました。
 以上です。
【永田委員】  ありがとうございます。
 元紺谷委員,どうぞ。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。少し視点が違うのですけれども,ウェルビーイングの本質についての議論ではなく入り口の話をさせていただきます。第4回のときに,内田委員から,ウェルビーイングのコンセプトが共有されているかという点について,浸透には一定の時間がかかるのではないかというお話がありました。
また,岩本委員からは,先生方は片仮名とか英語とかには結構抵抗感があるので分かりやすく伝える必要があるという話もありました。ここの部分なのですけれども,専門家が使うのであれば,それほど抵抗感がないと思うのですけれども,一般のいわゆる学校の教員とか生徒や児童にはこの言葉は定着しているとはいい難いので,ウェルビーイングって何ですかってなると思うのですよね。
そのたびに「ウェルビーイングとは」の定義づけを一旦確認して,その言葉を使っていかなきゃいけないということになってしまいます。そこで,例えば岩本委員から提案のありました「持続可能な幸せ」を頭につけたらどうかなと思っています。
内田委員も,「より包括的で,個人のみならず個人を取り巻く場が持続的によりよい状態」というふうに言っているので,「持続的に続く」は一つのヒントになってくるのかなと思うのです。
それで,この言葉を使いこなす上で,ある程度日本語の説明もおりまぜているなど,その辺りを整理したらいいなと思っています。
以上です。
【永田委員】  ありがとうございます。
 次に吉田委員,どうぞ。
【吉田信解委員】  埼玉県本庄市長の吉田でございます。お世話になります。
 先生方のいろいろな話を聞く中で,現実のお子さん方であるとか,あるいは市民を取り巻く現在の環境の中で,少し問題意識を持っていることについて申し上げたいと思うのですけれども,私,前回内田先生のお話を聞いて,本当にすとんと落ちた部分があって,我々もっと自信を持って,私たちの日本的幸福というのを,自信を持つと同時に客観的に捉え直しをしていくということが大事だなということは思ってはいるのです。
 ただ,現実の世の中を見ると,かつて日本人がこの日本的幸福というものを培ってきた土壌のようなものというのは,実は現実にはかなり損傷されているというか,壊されてしまっている状況があって,多分,大きな家族の中で,いつも生まれたときからたくさんの人がいて,その中で兄弟もたくさんいて,もまれて,高齢者から自分よりも年下の赤ちゃんまでいてという,そういう様々な人間がすぐ身近にいて,その中で育ってきたというのが,かつての日本の社会であった。個人個人がそうであったんだろうと。
 そういう中で集団主義みたいなものも生まれてきた部分もあるのですけれども,現実はどうかというと,今すごく「個」というよりも「孤独」の「孤」ですね。「孤」というのが実際の社会を覆ってしまっているのが現状でございます。
 お子さんを見ても,ほぼ核家族で,中には要するに離婚された親御さんお一人という環境の中で,また一人っ子,非常に地域社会の中で同じように遊ぶような子供たちも周りにいなかったり,学校に行ってようやくその集団,保育園だとか幼稚園でようやく集団というものに出会えるという環境。
 現実は非常に「孤」というのが社会を支配してしまっていて,その中で何というのでしょうかね,もともと我々が幸福,価値観として感じてきた多様な人とのあらかじめあるつながりみたいなものが,もう既になくなってしまっているというのが,現実の社会は起きているのですね。
 何が必要かというと,私は人と人とのつながりをどう回復していくかということがすごく日本は大事ではないかなと思っていまして,実はこの間,ある保育園の先生と話したのですけれども,実はコロナ禍前です。コロナで非常にできなくなってしまっているのですけれども,中学校の生徒さんに,赤ちゃんとの触れ合いというのを体験させると。
 これ,非常にいい効果というか,赤ちゃんというのは本当に無垢(むく)で,誰かに支えてもらわないと絶対生きられないわけですよね。その赤ちゃんを中学生が抱く。そこで非常に無垢(むく)な笑顔というものを見て,それが非常に中学生にいい影響を与えているのですよなんて話を聞いたこともある。
 あるいは小学校の子供さんたちが高齢者施設に出かけていく。そこで,ある意味非常に孤独な状態に置かれているお年寄りが,お子さんが来るだけで非常に喜んでくださる。残念ながらコロナ禍の中で,非常にこういう人と人とのつながりはなくなってしまっているのですけれど,私は現実問題として,人為的にも,日本社会の「孤」の状態をどうやって解消していくかということをすごく大事にしていかないといけない。人と人とのつながりを回復する中で,実は日本的な幸福感はより増すものであろうと思っているのですけれど,その土台がもうかなりなくなってしまっているというのが非常に問題意識としてございます。
 そういう教育の中でも,本当に人と人とのつながりをどう,これは同じ学年とかだけではなくて世代間を超えた,子供たちに様々な人との多様なつながりをどう回復していくかというのを,もっともっと根本に据えてやっていかないといかんのではないかな。少子化,高齢化,人口減少時代にそのことを強く感じているところでございます。
 以上でございます。
【永田委員】  ありがとうございます。
 関委員どうぞ。
【関委員】  教育振興基本計画の中で,人生の上り坂の部分を充実させる視点が強調されるのはやむを得ないことだと思うのですけれども,どうしても今,人が人生の下り坂を歩んでいく時代もあるかなと思うのですよね。
 人間やはり幸せはずっと,死に至るまでそれを追い求めていくものだと思うのですけれども,今回の計画の中では,そういった人生の後半戦を生きていく人の幸せなるものがどういうものかというのはなかなか見えてこないような気がしてならないところす。新型コロナ感染等によって,今までの状況とは違う世界になってしまった中で,人生の後半戦を生きていく人はなかなかつらい思いをしている人も多いと思いますので,そういった人の羅針盤となるような,ウェルビーイングなるものが示すことができればいいのかなというふう感じたものでございます。
 以上です。
【永田委員】  ありがとうございます。
 黒木委員,どうぞ。
【黒木委員】  よろしくお願いいたします。
 今,ずっとお話を聞いていて,すごく共感するところがありまして,特に牧野先生が前回おっしゃった,帰属ではなくてつながる方向に進むのではないのかというお話ですね。ちょうど最初の方でお話しいただきましたけれども,私はそれがずっと意識の中にありまして,吉田市長さんも,何とか人をつなげなくちゃいけないのではないのという話であるかなと思うのですね。
 環境をどう整えて,このウェルビーイングにするかということになると,つながるということはとても大事なので,つなぐ人が必要だというようなことになるのだと思うのですね。あるいは広げる人が必要だということになるのだと思うのです。
 そういった人づくりのところにも視点を当てていくというのがとても大事かなと思っています。つなぐ人は恐らく言い換えるとコーディネーターとか,あるいはリエゾンというのかもしれませんね。そういう人を育成するということに目的がやはり出てくる。あるいは広げる人というのは,ひょっとするとコンソーシアムというのかもしれませんね。
 そういう仕組みをつくる人をしっかりつくっていく。そして,そういう環境を整えるということが大事なのかなと少し感じました。よろしくお願いします。
【永田委員】  ありがとうございます。
 清水委員,どうぞ。
【清水信一委員】  ありがとうございます。端的に1点だけ,私は教育現場におりまして,特別支援教育,四十数年携わっております。
 今日の議論の中で吉田委員の方から人と人とのつながりのお話を頂いて,中学生が赤ちゃんを抱いて,その交流で得られるものの大きさでいうと,やはりインクルーシブ教育というのが私はキーワードであると思っています。
 四十数年やっていて,卒業生が教員で戻ってくる,保護者で戻ってくる,そして卒業後,高等教育を出た後,医療関係とか福祉関係とか教育関係に従事する卒業生が数多いというのも,ある意味インクルーシブ教育の成果だと思います。
 ですから,やはり幼児期からのインクルーシブ教育の継続,時間はかかりますけれども,これを一つ攻めていかなきゃいけませんし,また,幼児期からのインクルーシブ教育が欠落している大人には,今度,大人用に攻めていくという両輪をうまく回した展開というのが必要ではないかなと思います。
 すみません。ありがとうございました。
【永田委員】  ありがとうございます。
 そろそろ時間になります。最大公約数を申し上げると,個々に幸福を希求するのは誰も否定していません。その次に,その結果としてか,あるいは目標でもいいが,集団なりつながりを持った仲間が,社会が幸せになることをもってウェルビーイングであると大体お考えです。メソッドとしてつながりという言葉が出てきていて,もう1個付け加えると途中で出てきた,何かをつくっていく,何かつくるというのは必ずしも物ではなくてもいいし,気持ちでもいいのですが,あるいはつながりそのものをつくるのでもいいのですが,そのようなものが出てきたのだろうと思って聞いていました。
 当然,最後のインクルーシブというのはつながりという意味で別に分け隔てなくどこでもつながるということなので,もう既に入っていると思うのです。ただ,そのインクルーシブを書くためには,もともとこの教育振興基本計画ではつながりを大切にしていますとか,実は他者を大切にしていますということがあるので,それぞれ認め合ったインクルーシブとなると思うのです。
 ですから,個々が幸せになる,社会がその結果であれ目的であれ,幸せになるからウェルビーイングであって,つながりや何かをクリエーションをしていくというのは大変重要であり,そのような中で,あとは,いろいろな我々がこれまでお話ししてきた単語が消化できるかどうかなのです。
 最後に1つだけ,我々が,教育振興基本計画は政府にもやらせなければいけないので,政府へ注文を一つ出したいが,それは,やはり日本型ウェルビーイングというのだったら,それを政府が世界に訴えないといけない。つまり,我が国の文部科学省なり官邸は,日本の幸せはこういうものであって,これは世界的にはここに位置づけられて,この部分に関しては十分日本というのはいいということを政府が言わないといけない。いつまでたっても中央教育審議会の下部の方で議論していても世界には伝わりません。
 これは文部科学省も聞いているので,書いておいてもらいたいです。やはり文部科学省や政府の役目の一つとしては,子供たちに達成感がないとか自信がないとか言いますが,自信を持たせるようにこれまでの議論の観点から欠損している部分,吉田委員がおっしゃっている補強をしなければいけない部分などがあり,それがとても日本的にはウェルビーイングの一角を成しているということを堂々と言っていかないといけないと思います。それは注文しておきたいと思います。
 皆さんで元に戻って,全体の討論なので,またそこでお話しいただければと思います。今回のグループの議論は大変よかったと思います。ありがとうございました。それでは,戻りましょう。
(日本型ウェルビーインググループの委員が移動)
 
【渡邉部会長】  ウェルビーイングのグループの方も戻られていますでしょうか。活発な御議論も頂きまして本当にありがとうございました。
 それでは,ここからは,時間も限られており,大変申し訳ありません。総論全般についての議論をさせていただければと思います。今議論されたテーマ以外のところを中心に御意見いただけると助かります。
 それでは,早速ですけれども,挙手ボタンの方をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 それでは,清原委員,お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。時間がもったいないと思って手を挙げてしまいました。
 それでは,資料1の「次期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方(素案)」について意見を申し上げます。
 この資料1は,これまでの計画部会等における委員の皆様による貴重な話題提供と,その後の意見交換を踏まえて,幅広い論点を分かりやすい文脈で取りまとめていただいています。まず,事務局の御努力に感謝いたします。
 特に「0.次期教育振興基本計画のコンセプト」においては,私も発言させていただいた,今期の計画が認識すべき現在の国際情勢についての認識を踏まえて,1つ目の〇で,次のように整理していただいています。「誰一人取り残さず,すべての人の可能性を引き出すための教育の実現に向けて,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実,学習者主体の学び等の充実を図り,日本型ウェルビーイングの概念整理を踏まえた上で,多様な個人のウェルビーイングの実現を目指す。また,共生社会の実現・地域コミュニティの再構築に向けて,個人と社会のウェルビーイングの実現をつなぐ学校や社会教育施設の役割・機能を重視する」とあります。この集約された取りまとめは,次期教育振興基本計画の理念として,極めて重要な指摘であると思います。
 「Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状と課題」についての記述には特に異論ありません。
 ここで「Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針」について,賛成するとともに,それを具体化するために求められる方向性について意見を申し上げます。①日本型ウェルビーイングの向上・共生社会の実現に向けた教育の推進から,⑤計画の実行性確保のための基盤整備・対話と5つに集約されています。これは,数として多くもなく少なくもなく,私たちの意見を適切に5つにまとめていると思います。この5つの方針は,過去の成果を尊重しつつも,今後の未来志向の教育振興に向けて,いずれも必要で不可欠な方針と思います。
 そして,それぞれを実現するためには,実は①から⑤までの内容というのは,相互に関連し合っているとともに,例えば②の人材,④の基盤としての教育DX,⑤計画の実効性の確保というのは,正に私たちの理念としてまとまったものを具体的に教育現場で実施していくための「基盤」にもなるものであって,先の5年だけではなくて,その先にも必要な,重要な「基盤」であると思います。
 国民が学びの主人公であり,その主体性の尊重を前提とした上で,国のなすべきこと,教育の最前線の現場である自治体がなすべきこと,国と自治体が連携して進めるべきこと,更に地域社会や民間が協働して進めることが有意義なことなどがあると思います。
 そこで,5番目の「計画の実効性確保のための基盤整備・対話」と書いてある,この「対話」というキーワードに私は注目をさせていただき,これを極めて重要な方向性として,具体的に今後,記述していただければなと思います。
 すなわち,現状を振り返るときに,5ページの冒頭に,「こども家庭庁設置法案」及び子供の意見表明の機会を保障することが明示されている「こども基本法」の成立が紹介されています。そこで,是非,この「対話」の中身としては,つまりステークホルダーの中には,児童生徒,学生,学習者が含まれますし,その対話が重視されるという方向性は,極めて重要な指摘だというふうに思います。
 加えて,例えば今日,「デジタルとリアルの最適な在り方」というのも議論され,「日本型ウェルビーイング」が議論される中でも重要なことで申し上げると,文科省とそれ以外の府省庁,例えば教育と福祉の連携では厚生労働省,食育や農業体験等では農林水産省,アントレプレナー教育では,あるいは職業体験では経済産業省,デジタル化では総務省,デジタル庁,環境教育では環境省というふうに,当然のことだと思いますが,来年4月に開設されるこども家庭庁を含めて,文部科学省と他の府省庁が,教育振興基本計画の実現のためには,有効な連携,対話をしていくことを明記していただきたいと思いますし,教育の最前線である地方自治体首長部局と教育委員会との一層の対話についても明記をしていただくとともに,学習者が主体的・自主的に教育の体現者として取り組むための,機運醸成といいましょうか,そういうことも,方向性として示せたらなと思っております。
 以上です。口火を切らせていただきましたので,皆様,よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。資料1の基本的な考え方全体の整理の意味づけを御説明いただいたような御意見だと思います。今後の教育政策に関する基本的な方針は,先ほど解説していただいたとおり,コンセプトの位置づけ,それから他省庁も含めて,義務教育段階や高等教育といった縦の課題として並んでいたものを,1から5の横断的テーマで整理してみたという位置づけでございます。それに基盤や財源をどうつけていくのかということは各論でも,また議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。これは私個人の意見というより,ほかの委員の先生方がもっと詳しく展開できるところではないかと思うのですけれども,多分ここでの大きな議論の焦点になるのは,基本的な方針として出されている5つの柱,これがこのままでいいのかという議論があると思います。その意味で2点,やはりもっと重要なのではないかと思う柱があります。
 1つはグローバル化です。グローバル人材の育成は,高等教育にとってはとても重要だし,それから中等教育,初等教育にとっても,グローバルな流れの中でどう人づくりをしていくのかということは,もっと強調されてもいいのではないかと思います。そこをどういうふうに生かしていくかという課題を一つ提起させていただきたいと思います。
 もう一つは,ウェルビーイングというところに入ってはいるのですけれども,マルチステージといいますか,私自身の言葉で言えば,脱単線的年齢主義。直線的な人生観ではない,マルチステージの人生の中で,新しい教育をどう立ち上げるのか。リカレントと絡みますけれども,これも非常に重要な柱なのではないかという気がいたします。
 このグローバル化とマルチステージという2つの柱を,この5つの柱にどう埋め込んでいくのかについて,もう少し突っ込んだ議論をしていただければというふうに思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。今の御指摘は,事務局としても非常に悩ましかったところだと思います。現時点の整理としては,基本的な方針マル2の「社会の持続的な発展」の中にグローバル人材育成を,持続可能な社会の志向と合わせて,入れております。
 コロナ禍でグローバル視点が薄れていますので,このタイミングにおいて,この位置づけでいいのかどうか,また引き続き議論させていただければと思います。
 リカレント教育も同じです。学び直しは,生涯学習の延長で,13ページの人生100年時代のところなどに入ってはいるのですが,教育未来創造会議では,かなりウエートを高くした議論がなされており,レイヤーごとの横連携もかなり強調されています。この各論的な位置づけでよいのかどうかというのは御指摘のとおりだと思いますので,ここはもう少し慎重な議論が必要かなと思います。ありがとうございました。
 それでは,次に村田委員,お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。今,渡邉部会長がおっしゃったので,私が言うことなくなってしまったのですが,リカレントのところ,吉見委員がおっしゃったように,13ページのところにちょこっと書いてあって,中身も本当に表面を触っているだけなのですね。
 リカレント教育,あるいはリスキリングと言い換え,少し中身も変わってきている中で,これだけでいいのかなと思います。②の中の一つの項目になってしまっていて,③の中の公民館教育だとか,社会教育は入っているのですが,もう少し抜本的にリカレント教育をちゃんと書かないといけないと考えます。例えばイノベーションだとか,デジタルトランスフォーメーションに結びついていかないので,ここが弱過ぎないかなと思って発言をさせていただきました。
 既に渡邉部会長がおっしゃったので,もうこれ以上申し上げません。以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。今回,先ほど繰り返しになりますが,横断的をキーワードとして,どういうテーマを立てたらよいのかということで,5つのテーマに,くくろうということがありました。各論的に見たときに今のこのウエートでよいのかどうかは,御指摘のとおりだと思います。改めてそこは伺った御意見を踏まえどういう整理ができるのか,検討させていただきます。
 その次に,川口委員,お願いいたします。
【川口委員】  どうもありがとうございます。東京大学の川口と申します。政策評価研究教育センターというのが大学にございまして,そちらの方で,地方自治体さんから様々なデータをお預かりして分析するということをやっています。その意味では,現場の人間の一人だと思っているのですけれども。
 すみません,データの利活用の話になってしまって,渡邉部会長の方から,その他の論点でということがあったのですけれども,データを利用する側(がわ)からの立場として,少し大事かなと思うことを申し述べさせていただきたいのですけれども。
 やはり個人情報の保護というのが非常に大事なことであるというのはよく分かっていて,皆さんの御協力,御理解が得られるということが大切なのも確かなのですけれども,その一方で,個人の秘匿性みたいなものを上げていこうとすればするほど,データとしての運用性というものが下がってきてしまうということがありまして,どうしてもトレードオフがあるのですよね。
 ですので,データの個人情報の保護というものを確保しながら有用なデータを使うというような技術的な可能性というのがございまして,例えば,1つのサーバーの中でデータ分析を行って,統計分析の結果だけがそこに出ていくみたいな形の使い方というのもありまして,かなりその辺は,具体的なデータ利用の姿というものをお見せすることによって,国民の皆様の理解を得ながらデータを収集していくというようなことが必要になっていくのかなというふうに思っております。
 それで,これはデジタル化だけに関わる話ではなくて,様々な施策が今期の計画に基づいて行われていくのだと思いますけれども,その様々な政策を評価するためのプラットフォームになるデータの話でございますので,全体とも関わるかなと思いまして,発言させていただきました。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。テーマ別の議論でも,その辺の御指摘を頂いていました。データ利活用への理解が進まないとDXもなかなか進まないということと,それをどうルール化するのかという点は大変重要な要素だと思います。ありがとうございます。
 堀田委員,何かありますか。
【堀田委員】  はい。そこは常に表裏一体といいましょうか。どちらかというと我が国は,ほかの国に比べると,個人情報を守る側(がわ)にすごく力の入った取組が多く,データをうまく活用して,何か世の中うまく回していくみたいなところが,どちらかというと弱いと思います。それは,例えばコロナの患者数を適切に把握するとか,どこにたくさんの資源を投資しなきゃいけないかというようなことの資源配分の判断が難しいとか,そういうような形ですね。教育データも,もちろん個人情報の部分もプライバシーの部分もありますから,それをどうするかということを慎重に考えながらも,マクロに見たら国の,例えば学習指導要領が適切な配分になっているのかとか,そういうマクロ評価もしていかなきゃいけないのではないかと私は思っています。
 もう一つ言うと,学校現場は,特に初等中等教育の学校現場は,子供たちの,ある意味,家庭の様子とか,そういうことも含めて教師は把握しています。把握していないと指導や支援できないことはたくさんあります。それをデジタルにどこまでしていいかという議論は,慎重に考えなきゃいけない一方で,いろいろなところで生じるデジタルデータをうまく組み合わせると,教師だけでは気づききれなかったようなところの支援をデータができる部分もあります。
 そういうようなことが,いろいろな成功例,幾つか出てきていますので,法的に問題がないか,課題がないかを含めて,そういうグッドプラクティスみたいなことをしっかり集めていくことが今,大切なことなのかなと思っております。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。ルール化等も含めての検討ということになろうかと思います。
 では,次に牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】  よろしくお願いいたします。私の方からは,少し観念的なといいますか,大枠の話をさせていただきたいと思います。最初の我が国の教育をめぐる現状と課題で,教育の普遍的な使命というところの最後の方で,不易と流行(りゅうこう)という言葉が出ています。これは,松尾芭蕉が言った俳諧の不易流行の議論から取ってきているのだと思うのですが,何か政策系の文書を見ますと,いつも不易と流行(りゅうこう)を分けていて,不易は変わらないもので,流行(りゅうこう)というのは変わるべきもので,不易を保つというか,不易の上に流行(りゅうこう)を乗っけるような議論がとても多いのではないかと思うのです。しかし,本来この不易流行の議論というのは,変わらないためには変わらなければならないというか,不易であるためには流行(りゅうこう)でなければならないという,俳諧といったものを維持していくためには,俳諧の中身を含めて変化しなければならない,流行(りゅうこう)でなければならないという議論だと思うのです。
 そういう意味では,本質が変わらないためにはやはり流行(りゅうこう)であるべきだという議論につながっていくと思いますので,何かそうしたことをベースに全体の構成を考えられると,もう少し,今皆さんがおっしゃったようなこととは違うというか,縦割りのものが横に融合していくような議論になるのではないかと,そういう印象を持っていまして,その辺りで少しここの議論を,教育基本法の理念,とても大事なのですが,これは絶対というか,枠組みとしては多分,変わってはいけないものとしてあるのですけれども,人格の在り方から,それから人権ですとか,いわゆる変わってはいけないものといったものの中身はどんどん,人間の本質は変わらなくても,変わっていかなければならないものとしてあるべきだと思いますので,その意味で,この不易と流行(りゅうこう)の捉え方を変えることで,もう少し全体の構成を考えられるのではないかという印象を持ったということです。
 それから2つ目は,先ほどから皆さんがおっしゃったことにも関わりますけれど,また私が関わっている生涯学習分科会の議論とも関わるのですが,人生100年時代を迎えて,どうしてもやはり,教育振興基本計画で今まで学校教育をベースに子供のこと,人材育成,国民形成という議論をしてきたので,子供たちですとか若者の議論が中心になることはよく分かるのですが,人生100年生きていくという議論の中で,先ほどのリカレントですとか,学び直しですとか,リスキリングが出てきて,今,多分そこで止まってしまっている感じがするのですね。
 本来であれば,例えば地域社会で子供たちが育って,きっちりと社会を担う人材になっていくというような議論も含めて,学校と地域社会や,学校と社会,つまり今までは子供たちは社会から切れていて,学校の中で保護されるというような観点から施策がつくられてきていると思うのですが,そうではなくて,やはり学校と社会がシームレスにつながっていくことで,子供たち自身は学校で学びながら,けれども社会でも学んでいく,社会を担っていく次の担い手として育成されていくというようなことも含めて,もう少し,先ほどのマルチステージやパラレルキャリアの議論も含めて,学校と社会の在り方についての議論が深まると有り難いなと思っていました。
 そういうことの中で,グローバル化の問題ですとか多様化といったことの議論が進んでいくのではないかなというふうにも思いました。
 以上です。
 
【渡邉部会長】  ありがとうございます。大変重要な御指摘を頂いたと思います。不易と流行(りゅうこう)については,おっしゃるとおり松尾芭蕉の言葉から来ていまして,本質は同じというところがあったと思います。今回のコンセプトでは,本質はやはり多様な人や社会が幸せにならなくてはいけないということだと思います。この本質を守るために,従来の歴史で築いた変わらないものと,変えなくてはいけないものの,両方の組合せで新しい教育体系をつくらなくてはいけないといった意味で私自身は捉えていました。
 人生100年時代においての学校あるいは大学は開かれた形となり,横の連携が重視されるというのは御指摘のとおりだと思います。ありがとうございました。
 それでは,永田副部会長,お願いいたします。
【永田副部会長】  教育振興基本計画部会なので,言いづらいことかもしれませんが,いろいろなことを哲学的に言って,その後,施策に落ちないといけません。施策に落ちるとお金がかかるということで,改めて,教育の受益者が誰かということを明確にしてほしいと思うのです。それは個人の幸せにもつながるが,結局,社会の幸せにもつながるし,国の幸せや世界の幸せにもつながっていって,それは個人が必ずしも全ての受益者ではないわけです。
 申し上げたいことは,もっと社会資本や寄附を教育に入れましょう,そのための税制や規制緩和をしましょうということなのです。
 今日,日本型ウェルビーイングの話をしていて,個人を中心にした欧米社会が,実は寄附とか社会資本を教育に戻しているにもかかわらず,社会が幸せになってほしいと願う日本社会は,全然そこが増えません。個人も企業もどうしてなのかということで,書きようは少しお任せしますが,そのような意味です。教育の本質的な受益者は誰なのだろう。では,そこに,国は当然のことながら,個人もある程度は当然のことながら,もっと社会の資本をつぎ込む,そのようなシステムをつくった上で,この5つの柱にのっとって,プラス,リカレントや吉見委員がおっしゃったことを書き込んでいただきたいです。
 少しこのようなことも入れておかないと,よくないと思います。振興するためにはやはりそれなりに必要なものは必要だと思うので,是非とも入れていただきたいと思います。
 
【渡邉部会長】  今おっしゃっていただいたことは,10月以降に議論する予定にしておりますが,教育政策の遂行に伴う指標や,それに向けた基本施策をどういう形で5年間進めていくのか,その財源どうするのか,ここである程度明確にしないと政策になりませんので,御指摘のとおりだと思います。いろいろなところに,明確な意思として入れていく必要があると思います。ありがとうございました。
 杉村委員,お願いいたします。
【杉村委員】  ありがとうございます。私も,議論に横串を刺すときに,この観点も含めてはどうかということで1点,申し上げたいことがあります。それは,先ほどから出ている「グローバル」ということに関し,例えばOECDのラーニング・コンパスをどう使うかといった点などとも全て関連すると思うのですけれども,グローバルの方向を進めれば進めるほど,一方で国際標準とか,あるいは平準化がどうしても求められるという点です。例えばウェルビーイングを進める場合,国際的な議論の中でのウェルビーイングに対し,日本型ウェルビーイングというのを,ここではうたおうとするわけですけれども,この両者についてどのように整合性を持たせるかというのが,重要なポイントになるのではないかと思います。
 今日,大学では,国際化を進める中で,学生のモビリティーを促す,あるいは留学生を受け入れるといったときに,単位をどのように相互に互換するかという問題があります。世界中の単位互換システムには様々な違いがあるわけですが,同時に,国際標準,平準化が進んでいく動きもあり,日本の,あるいは日本型をどのように位置づけていくかということが重要になってくるのではないかと思っております。
 今回,教育振興基本計画部会で作成する文案の冒頭の書き出しでは,教育基本法の大事な観点が挙げられていて,そこにははっきりと,日本人を国際的に,あるいは日本人の育成ということが書かれているわけですが,一方では,グローバル人材という言葉が出てきており,恐らく,この対象とするところは,外国につながる子供たちなども含めてのことになると考えたときに,正に国際的な標準規範と,それから日本的なものを,どのようにうまく組み合わせて両方見せていくかということが一つのポイントになるのではないかなと思います。コメントを述べさせていただきました。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。国際化やグローバル人材のところは,先ほどの御指摘もありましたので,位置づけをどうするのかについて,もう少し議論させていただきたいと思います。
 ウェルビーイングについては,OECDのラーニング・コンパスの視点との調整は当然必要になると思います。ただ,日本の特徴,あるいはそれを生かすという視点で考えたときに,OECDのままでよいというのは違うのではないか,といった整理をしてきましたので,そことの調整をしつつということではないかと思います。ありがとうございます。
【杉村委員】  ありがとうございました。
【渡邉部会長】  それでは次,大森委員,お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。私は全体というより,少し細かいところになってしまうのですけれども,先ほど吉見先生がおっしゃったマルチステージというか,あるいは単線的学年主義みたいなところの御意見に私もアグリーをしているのですけれども,先ほどリカレント教育というところに意見が行っていましたけれども,その学校教育の中でも,その観点て,すごくこれから出てきて,やはりこれからの大きなテーマが,ここの中でも何回か出てくる個別最適な学びと協働的な学びの一体的なというところが新しい教育の在り方の,一つのテーマになっていく中で,その同一年齢で同一内容を学習することを前提とした云々(うんぬん)という文言は,多様な才能を生かしていこうというところには出てくるのですけれども,そこだけということになっていて,学校全体で個別最適な学びということを本当にやっていったときに,そこを議論することを避けられないのだろうと思っていて,やるかやらないかというのは,いろいろな現実的な問題あるの重々承知なのですけれども,やはりそこの議論はあってしかるべきかなと思っていて。何か,その多様な才能を生かすためだけにこれを議論するということではないような気がしていて,いかがでしょうかということだけです。
 少し明確なソリューションなくてなのですけれど,ここにしか出てこないというよりも,学校全体が個別最適な学びというところを意識し始めると,そこは避けて通れない話にならないでしょうかどうでしょうかというところを,もう一回少し検討していただいていいのかなと思ったというところです。
 以上です。
【渡邉部会長】  まさしく「令和の日本型学校教育」の答申も,そこの論点で二項対立に陥らないように創造性にどうつないでいけるのか,また,深い学びにどうつないでいけるのかというような視点でまとめていたと思います。貴重な御意見を頂き,ありがとうございました。
 それでは,内田委員,お願いいたします。
【内田委員】  ありがとうございます。ウェルビーイングの議論に補足みたいになるかもしれませんが,一つは,その国際基準にどうしていくかということも踏まえた上でなのですけれども,日本から発信をしていくことも非常に重要ではないかと思っています。今,この間のワールドハピネスレポートもそうですし,OECD,ユネスコ,ユニセフ,様々なところで,やはり新しい価値への展開みたいなことも非常に議論がされている中ところでもあります。日本型のと言いながらも,それは世界の中で,実は今必要とされていることかもしれないというふうにも思います。
 SDGsの議論があったときもそうでしたし,ウェルビーイングに関しても,例えばブータンからイニシアチブという形で国連に提案があったりしたことも皆さんの記憶にも新しいかなというふうに思うのですけれども,そういう意味でも,日本が国際社会の中でリードしていくというような,それぐらいのスタンスがあってもよいのではと思います。
 そのためには,ある程度やはりエビデンスが必要な気がしていまして,理念としてはいろいろいいことがあっても,実際に本当にそれで子供たちのウェルビーイング,あるいは教育現場のウェルビーイングというのがどんなふうに変わっていったのか,あるいは学びの体制が変わっていったのかということについて,しっかりと検証していく必要があるのではないかというふうに思っています。
 これまではOECDの中ではPISAなどの測定があるわけですけれども,そういうものに依存せざるを得なかったような部分もあります。文科省の中でも,もちろんこれまで取ってきたものであるとか,あるいは内閣府が子供の幸せみたいなことを包括的に議論していたりもすると思うのですけれども,今回せっかくこのような基本計画ができるのであれば,それに基づくようなエビデンスの集約ということも検討に入れていければいいのではないかというふうに思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。大変力強い御意見だと思います。様々な分野で,ルール化の際には,特に欧州のルールに従うという発想をしてきたということですが,このウェルビーイングについては,むしろ今の状況からすると,世界の中でも日本が先頭走れるかもしれません。
 御指摘のように,エビデンスをしっかり取って,この分野は日本がリードするのだというような打ち出しができると本当によいと思います。ありがとうございます。
 次に,吉田委員,お願いいたします。
【吉田(信)委員】  吉田でございます。先ほどの中でもお話をさせていただいたのですけれど,実はそのウェルビーイング,日本型ウェルビーイングというのを世界に発信するということと同時に,私,実は,先ほど少し日本社会の基盤であった,人と人との多様なつながりみたいなものが現実の社会の中では非常に失われていて,孤独というか,孤独の孤ですね,が非常に社会に蔓延(まんえん)してしまっているという現状を,地域社会の中においても私自身,感じているという話をしました。
 それをやはり克服していくために,実は先ほど,その後,私の次に,ある先生から,それこそインクルーシブ教育だよねという話をいただいたのですけれど,正にこのインクルーシブ教育というか,インクルーシブな社会づくりに頑張っている方々に,もっともっと自信を持っていただきたいなという思いがございます。
 ある保育園の先生が,中学生と乳児の触れ合いの場をつくって,それが結果として中学生の非常に頑張ろうという気持ちにつながっていったり,あるいは今でも,スポーツ少年団であるとか,いわゆる子供さんたちが非常に少なくなっている中でも,その子供を集めて,一緒にいろいろな活動をして,子供会もそうですけれども,そういう子供と子供をいろいろな体験をさせようと思って頑張っている方々がいらっしゃる。そういう方々が,正に,内田先生のおっしゃっていただいた,この日本的なウェルビーイング,協調的幸福感というのを紡いでいる人たちなのですね。その紡いでいる人たちに,やはり自信と誇りを持って頑張ってもらいたい。それを国全体で推し進めていく中で,ある意味やはり,この日本的な幸福感というのは大事なのだよねということを我々自身が自信を持って言っていくことができるのではないかな。
 残念ながら,それを,自信を持って言っていく基盤となる,社会的な分厚さが今,非常に薄くなってしまっているというのが私自身,感じているところでございますので,それを何とか,このつないでいこうよ,人と人とをつないでいこうよと頑張っている人たちに自信が持てるような,そんな教育行政であってほしいし,国の政策であってほしいと,そのように強く感じているところでございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。本来,日本が強かったはずのものが,このコロナ禍で弱まってしまったのではないかという問題提起は,おっしゃるとおりではないでしょうか。それゆえに,ウェルビーイングや横のつながりをもう一度強化する必要があると思います。ありがとうございます。
 一旦,今,手を挙げられている方は以上ですが,よろしいでしょうか。
 荒瀬副部会長,先ほどの点も含めて何かコメントございますでしょうか。
【荒瀬副部会長】  ありがとうございます。いろいろお聞きしていて,非常に納得のできるお話といいますか,何か言い方が変かもしれませんけれども。私,特に思いますのは,日本型ウェルビーイング。私は先ほどデジタルの方,DXの方にいたのですけれども,DXの方での議論もそうなのですけれども,何をどうしていくのが最もよいのかということを考えるというのが本当大事だなということを思っていました。
 教育振興基本計画というのは,これからやっていくことの重要な点を網羅しているということも非常に性格的に必要なことだろうとも思いますので,いっぱい書いていくということ大事なのだということを思いつつも,ただ,本当に何をどうしていくのかということを,も更に考えていくことも重要だろうなということを思いました。
 その中で,今話題になっている日本型のウェルビーイングって何なのだろうかということで,何かこれ,私だけがこう思っているのかもしれませんが,ウェルビーイングというと,それでまかり通るというのでしょうか,ウェルビーイングの前では,みんな,ああ,それは大事なことだよねって言わざるを得ないみたいなことになっているわけなのですけれども,本当に何をもってウェルビーイングと呼ぶのか,何を目指していくのかということの,本当に丁寧な議論ということがなされていくことが大事で,その辺は先ほどから,正に内田先生もおっしゃっていることだというふうに思っています。
 ですから,その辺り,一方で締切りがありますので,それまでにやらなければならないというのはあるのですけれども,少し詰めた議論ができればいいなということを思いながら参加しておりました。
 ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。先ほどの議論も踏まえた貴重な御意見を頂きました。
 それでは,少し時間も押してまいりましたので,皆さんからの御意見は,ここで一旦区切らせていただきます。もし,この場で御発言できなかった方がいらっしゃいましたら,メールで事務局の方に提出していただければと思います。
 ここで,新しく就任いただいた藤江総合教育政策局長,その後,里見大臣官房審議官からも何かありましたらコメントをお願いしたいと思います。
 では,局長,お願いいたします。
 
【藤江総合教育政策局長】  ありがとうございます。最初から遅参して申し訳ございませんが,9月1日に前任の藤原の後任で総合教育政策局長となりました藤江と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日,総論ということで,まず計画の全体の方向性どうかということで,渡邉会長からもお話しいただきましたように,横断的な枠組みについてどう考えていくとかという,本当に基盤的な重要な部分について御議論いただきました。
 本当に幅広く御意見いただいて,例えば連携,対話が重要だとか,グローバル化の問題,あるいはリカレントについてといったような重要な視点ですとか,あるいは人生100年時代の学校と社会の在り方,あるいは本質的な受益者についてどう考えるか,そしてエビデンスの重要性といった,非常に整備すべき点についても御指摘いただいたと思います。
 今後,本日の御議論も踏まえまして,さらなる課題についても御議論いただいて,内田先生からも日本がリードすべきという力強いお言葉も頂きましたので,しっかりと整理させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。
 それでは,里見審議官からもお願いいたします。
【里見大臣官房審議官】  審議官の里見でございます。私もこの計画部会,重ねて出させていただいております。
 今,藤江局長の方からもございましたように,私も今日,事務局からたたき台として出させていただきました基本的な考え方素案につきまして,非常に発展させていただくような御意見をたくさん頂いたと思っておりまして,是非それをまた私どもとしても反映するということをさせていただきたいと思っております。
 御紹介させていただきたいのは,実は文部科学省の若手の職員も,この基本計画につきまして,有志で集まって議論をしているということがございます。この有志の中で,私この間,中間的な報告会を聞いたのですけれども,特徴的だと感じましたのは,ウェルビーイングについては当然なことと考えているのですけれども,特にマジョリティーとマイノリティーということにこだわっておりまして,ややもすると社会的包摂というのはマジョリティーの側(がわ)からマイノリティーを巻き込むという議論になりそうなところなのですが,この若手が議論しておりましたのは,むしろマジョリティーを教育すべきではないかというようなことを言っておりまして,やはり私どもがどういう視点で議論するかということについて,非常に重要なことを考えているなと思いました。
 もう一つは,計画というのはやはり難しくなりがちで,なかなか全体を読んでもらうということが難しいので,届く言葉で,ステークホルダーに届く言葉でこれを届けたいということを議論している職員たちがおります。これも非常に重要なことだと思っておりまして,やはり一人一人のウェルビーイング,どうしてもこちらのサプライサイドから考えがちなことが多いと思うのですけれども,届けられる側(がわ)の方々がどう感じているかというのをキーワードである,先ほど清原委員からもありましたが,対話を通じて聞き取っていくということは非常に重要だと思っておりまして,若手の職員,これからこの計画ができますと,それを実現する側(がわ)に回る職員がこのようなことを議論しているということを御紹介させていただきまして,私ども文部科学省の職員も一体となって,これを推進させていただければと考えているということで御紹介させていただきます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,時間も迫ってまいりましたので,今日の議論を私の方から少し振り返らせていただいて,終わりにしたいと思います。
 今日は冒頭に,6,7月の部会で議論された,日本型ウェルビーイングと教育DXについて,2つのパートに分かれて御議論いただきました。今回の基本的な考え方の中で,この次期教育振興基本計画のコンセプトを冒頭に示しているわけですが,この2つのテーマは,コンセプトを形成する大変重要なテーマではないかと思います。
 資料に記載のとおり,今,我々が直面しているものは,国際秩序を揺るがすような世界情勢の変化やコロナ禍であります。本日の2つのテーマは,こうした中で特に重要なテーマとして浮かび上がってきたのだと思います。
 ウェルビーイングの議論としては,日本の教育の中での位置づけを明確化しながら,多様性を尊重して,多様な個人のウェルビーイングの実現を目指すということが,今の情勢だからこそ求められる視点だろうと思います。
 日本の特に義務教育段階は,世界から高く評価されていますが,そうした中でもいろいろな課題が指摘されています。この2つのテーマは,まさしく課題になっていることではないかと思います。
 コロナ禍で明確になったのは,世界との比較の中で,日本社会全体のデジタル化が明らかに遅れてしまったことであり,恐らく周回遅れと言われても仕方のない状況になっていると思います。これは教育界も同じ課題を背負っているわけで,そういった意味でも,今日御議論いただきました,教育DXに向けて,今まだ第1段階が始まったばかりという認識だと思いますが,第2段階に早く進めて,教育DXまでの道筋を明確化することが必要です。
 ただ,DXというのは,あくまでも手段であって,目的ではないと思います。当然このDXの先には,人間中心のSociety5.0,これはfor SDGsの概念で整理されていますが,そういった社会にどう対応するのか,あるいはその社会を支えるような人材をどう育成していくのかということが,本来やるべきことであります。そのためには,このDXの3段階を早く進める必要があるという整理ではないかと思います。
 本日の御意見を踏まえて,基本計画のコンセプトの中で,この2つのテーマについて再整理をさせていただければと思います。
 教育DXについても,今日,大変貴重な御意見を頂きました。Society5.0社会を形成する上で,今いろいろな要素が課題として浮かび上がっています。例えばイノベーションやサステナビリティといったいろいろな課題に対しては,DXが間に入ると,課題をつなぎ合わせて解決できるのではないかという,大変示唆に富む御意見も頂きました。
 それから,その後に議論させていただいた基本的な考え方全般についても,大変いろいろな御意見を頂きました。
 先ほど見ていただいた,資料1の5ページに記載されている教育改革に関する国内外の動向のとおり,第3期の計画期間で,中教審の答申だけではなくて,有識者会議のまとめもありましたし,それから関係省庁で教育政策に関する提言が様々示されました。やはり大きな歴史の節目に立っているからこそ,こうした提言が出ているのだろうと思います。そうした意味では,今,歴史と未来の結節点に立っているのでしょう。
 未来志向という視点でも,例えば,学びの羅針盤と言われるOECDラーニング・コンパス2030のように,国際的にも動いていますし,国内でも今までの答申の中で,2040年を想定した人間中心の社会であるSociety5.0を描いて,そこからバックキャストする考え方を志向してきました。
 こういった前提に立ったときに,今日,不易流行についても御意見いただきましたけれども,次期基本計画は,いろいろな答申の中にも見られるような,歴史と未来の結節点にある中での普遍的な使命と変化要素というものが,何が本質として同じなのかを,弁証法的に導き出し,羅針盤を示すことが重要なのではないかと感じます。
 以前御指摘がありましたように,初等中等教育,高等教育,それから生涯学習というレイヤーごとの区分で,今までいろいろな答申が出されていますが,本日お示ししました5ページ以降の今後の教育政策に関する基本的な方針は,先ほど御意見もありましたし,私からも解説させていただいたように,横断的テーマとして整理をしたということであります。5つのテーマについては,先ほど議論いただいたウェルビーイングだけではなくて,デジタルトランスフォーメーションも入っていますし,それに加えて,社会の持続的な発展を生み出す人材の育成や,地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育,更にこれらの基盤整備があります。加えて,先ほど御意見のあった,ステークホルダーとの対話を基にしながら,しっかり実効性を確保していくといった視点で,この横断的テーマという形で示させていただき,総論としてまとめさせていただければと思っています。
 できれば次回も,このまとめのための意見交換をさせていただいて,10月以降は,今後の教育政策の遂行に向けた特に留意すべき事項の整理や,評価指標の在り方,あるいは教育投資の在り方について,議論を進めていきます。先ほど永田副部会長からも御指摘あったように,教育投資をしなければ政策を実行できませんので,そういった視点をしっかり踏まえた上で,基本施策としての目標,指標を整理していきたいと思います。
 これから大変重要な議論に入っていきますので,引き続き御協力いただければと思います。今日は本当に長時間ありがとうございました。
 それでは,次回の予定について事務局からの報告をお願いします。
【川村教育企画調整官】  次回は10月13日木曜日15時半から部会開催予定でございます。次回も本日の議論を踏まえまして基本的な考え方について御議論いただくことを予定しております。
【渡邉部会長】  よろしいでしょうか。
 それでは,以上とさせていただきます。今日もありがとうございました。
 
―― 了 ――