中央教育審議会教育振興基本計画部会(第5回) 議事録

1.日時

令和4年8月5日(金曜日)14時00分~16時30分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室、3F2特別会議室(東館3階) ※WEB会議

3.議題

  1. 社会教育・教育と地域の連携について
  2. 教育と産業界の連携について
  3. 生徒・学生からの話題提供
  4. 総論全般について

4.出席者

委員

内田委員、清原委員、小林委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村田委員、安孫子委員、岩本委員、大森委員、大日方委員、川口委員、河野委員、黒木委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉見委員、渡邉部会長
長谷川 日本経済団体連合会常務理事、北海道清里高校 矢口さん、大正大学 鈴木さん

文部科学省

藤原 総合教育政策局長、里見 大臣官房審議官、佐藤 総合教育政策局政策課長、森友 文部科学戦略官 等

5.議事録

【渡邉部会長】  それでは,定刻になりましたので,ただいまから第5回中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催させていただきます。御多忙の中,御出席いただきまして,本当にありがとうございます。新型コロナがなかなか収まりませんので,今回も感染拡大を防止するため,ウェブ会議での開催とさせていただきました。
 本日は,教育と社会の連携・接続という観点から2つのテーマ,1つ目は「社会教育・教育と地域の連携」,2つ目は「教育と産業界の連携」を設定させていただきました。この2つについての御議論をお願いしたいと思います。
 また,これまでの議論の中で,生徒・学生からも是非お話を聞いたらどうかという御提案がございました。そちらについても話題提供の時間を設けさせていただきます。
 最後に,総論全般について,キックオフとなる議論を進めさせていただければと思っております。
 それでは,本日の会議開催の方式,資料につきまして,もう少し詳しく事務局から説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  川村でございます。本日は,ウェブ会議での会議開催とさせていただき,傍聴につきましてはユーチューブにて配信をしております。
 本日は,まず事務局からの資料説明の後,「社会教育・教育と地域の連携」について牧野委員と関委員より,また「教育と産業界の連携」について大森委員,安孫子委員,日本経済団体連合会の長谷川常務理事より,それぞれ話題提供いただきたいと考えております。
 双方のテーマとも教育段階を横断したテーマでございまして,教育段階全体の連続性・一貫性が産業界や国際社会も含めた幅広い社会のニーズに応えるものとなることが必要という諮問文に示された観点からの検討に資するものであると考えております。
 先生方からお話を頂いた後,今回もグループを2つに分けましての意見交換とさせていただきます。大変恐縮でございますが,「社会教育・教育と地域の連携」グループの先生方におかれましては,発表が終わった後にチャット欄にURLを送りいたしますので,そちらから別のZoomに移っていただくようお願いいたします。
 「教育と産業界の連携」グループにつきましては永田委員に司会をお願いさせていただいております。「社会教育・教育と地域の連携」グループにつきましては清原委員に司会をお願いさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 テーマ別の意見交換中は,ユーチューブを2本配信いたしますので,傍聴されている方におかれましては,それぞれのURLより配信を視聴いただきますようお願いいたします。
 テーマ別の意見交換終了後,また全体で集まった後,お二人の生徒・学生さんからの御自身の活動や学習状況,学校への期待などについてお話を頂きます。最後に,総論全般についての御議論もいただければと考えております。
 御議論・質疑の時間におきましては,通常と同様,挙手ボタンを押していただければと思います。部会長の御指名により順次発言をお願いいたします。発言時以外は,マイクをオフにしていただきますようお願いいたします。
 本日の資料は,資料1,そして,話題提供いただく各委員,生徒・学生さんからの発表資料として2~8,総論全般に関する議論の材料として資料9,この9つを用意しております。
 最後に,本日は,全体30名の委員のうち24名に参加いただくこととなっております。お忙しいところ,ありがとうございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。それでは,早速,議事に入らせていただきます。
 まずは,事務局から資料1として今日のテーマに関係する資料を用意していただきましたので,御説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  それでは,画面を共有して失礼いたします。本日,事務局資料として用意しているものでございます。目次のみ御紹介させていただきます。
 この資料としましては,諮問文の関連部分の抜粋,これまでの教育政策に係る提言,審議状況に関する資料,中央教育審議会生涯学習分科会における議論の整理,社会教育行政,公民館・図書館,社会教育主事・社会教育士,コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進,青少年の体験活動の推進,地域と教育の関わりに関する資料を御用意しております。また,高等教育段階,初等中等教育段階におけるそれぞれの連携に関する施策ですとか提言等についても御用意しております。事前に御送付,御説明を申し上げておりますので,中身の説明は省略させていただきます。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 資料の方は随時参照していただければと思います。
 それでは,今日のテーマの1番目「社会教育・教育と地域の連携」についてスタートさせていただきます。話題提供は,まず牧野委員からお願いしたいと思います。
 早速,よろしくお願いいたします。
【牧野委員】  牧野です。よろしくお願いいたします。それでは,画面の共有をさせていただきますので,お願いいたします。時間も短いものですから,早速始めさせていただきたいと思います。
 私からは,社会教育と地域社会ということで,特に社会教育につきましては,多分,委員の皆さんはあまりなじみがないのだろうと思いますので,少し私から社会教育の考え方ですとか,概念的なお話をさせていただければと思っています。特に,教育振興基本計画を考える場合に社会教育はどうあったらよいのかという観点からお話ができればと思います。
 そして,申し訳ありませんけれども,具体的な地域社会との連携につきましては,次の関委員にお願いできればと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 最初に,社会教育概念についてということですけれども,まず,このように考えられないかということです。1つは,社会教育と言いますけれども,教育という概念,基本的には皆さんが一般的に持っていらっしゃる,教えるという感覚のものから,住民が主体になって学びを組織していくという形のものに組み替えられないかと考えております。
 それはいいかえれば,社会の基盤としての人々の関係を,共感的・協調的な関係へと耕しておくこと,その意味では事前のもの,つまり問題が起こる前のものとしてあるのであって,問題が起こったあと,つまり事後的に対応すべきものではない。つまり,社会教育には特定の目的というものはなくて,むしろ,社会の持続可能性に関わる社会基盤としての在り方というものが求められるのではないかと考えています。
 そして,このような社会においては,当然,人々の在り方も帰属,例えば国ですとか,企業ですとか,地域社会ですとかというものに帰属する在り方から,むしろ,お互いがつながり合って,改めて自分たちで地域社会を担っていくという関係に組み替えられる必要があるのではないかと思います。
 これからお話をしますのは,この考え方に対するある種の理屈づけといいますか,そのようなことになるかと思います。
 最初に,最近の政策動向ですけれども,これは皆さん御存じのとおりで,コミュニティが政策的なターゲットになってきていまして,その中で社会教育や公民館が重視される傾向が強くなってきています。
 それは最近だけの傾向かといいますと,むしろ,戦後の新しい国造り,社会づくりの過程でもコミュニティがターゲットになっていました。そこで公民館ですとか,また社会教育が重視されたのですが,この絵にありますように,社会教育や公民館というのは地域社会,特に住民が自分たちのふるさとづくりを自分たちでやっていくための人的基盤を整備する拠点として考えられていたのです。その実践では,社会的な,又は政治的な問題だけではなくて,むしろ産業形成ですとか,文化交流ですとか,更に郷土振興といったことが重視され,特に重視されたのが次世代の育成で,社会を持続可能なものにするための施策・期間として形で考えられてきたという歴史的経緯があります。
 その意味では,社会教育の固有性というのは,教育をして教え導くというよりは,むしろ,住民たちが社会,特にコミュニティとして生き延びていくことが重点的に考えられていたのだといえます。つまり,地域コミュニティづくりの最先端の実践を住民が担いながら,次の世代を育成して社会の持続可能性を高めていくものとして,社会教育は考えられてきたという経緯があります。
 その意味では,あえて言えば,社会教育は社会を永続させるために人々の関係を耕していく営みであって,その上に一般行政がのることによって,うまく機能していくものとして構想されていたのではないかと考えられます。
 では,社会教育とは,どういう概念なのかといいますと,もともとは明治以降,「通俗教育」と呼ばれていたのですが,1921年に初めて官制上で「社会教育」という言葉が使われ始めました。
 ちょうどその頃に日本の資本主義国としての発達があって,ある種,市場社会が形成されて「社会」が出現したと基本的には考えられています。
 社会教育とは一体何かといいますと,その頃の社会のつくられ方は,学校を基軸にして,人々を市場に統合していくということが基本でしたので,むしろ,学校に行けなかった人々や,さらには生活上の困難などで就学機会を失った人々を,教育を通して統合していったり,保護者に学校に子供たちを送るように奨励したりする,という施策であったと言われます。
 その意味では,社会教育学研究の領域では,一般的には,社会教育は歴史的な概念である,つまり「歴史的範疇」としての社会教育という言い方をしてきました。言い方を変えれば,学校教育をメインストリームに置いた上で,それとの対比で社会教育を自己規定してきたということになります。
 このように,歴史的な概念ですので,戦後,改めてコミュニティ形成と社会教育との関わりは捉えられたわけですけれども,その後,社会が発展していく過程で,学校経由の人生設計が一般的になる中で,教育は学校教育がメインであって,そして,社会教育がそれを補う,又はそれ以外のものだという観点が基本となって,社会教育を捉えてきたわけですが,今,改めて地域コミュニティと住民の自治の在り方そして社会参加の在り方とのかかわりが問われてきている。そして,社会教育が再び重視されるという動きになってきているのではないかと思います。
 そうなりますと,当然,人の在り方といいますか,人間観も改めて考えなければいけないのだと思います。従来であれば,1つの価値をある意味で共有していくというか,内面化して,我々意識をつくって,社会的な統合を進める。そして,社会が発展して制度化が進められる過程で,社会の枠組みがはっきりしてきますので,それに帰属することで我々意識がつくられていき,例えば一つの私たち日本人という感覚がつくられていく。
 その後,この社会が発達してくる過程で,今度は大量消費社会に入ることで,価値観が多様化していく。そうなりますと帰属が解体していき,個人が屹立(きつりつ)するようになる。そして,私たち自身の存在の在り方が,ある意味で動揺又は孤立するといったことになっていきます。
 さらに,現在のようなVUCAの時代に入ることで,改めて枠に入る帰属ということよりは,むしろ,お互いがつながり合って新しい関係をつくっていくという形の個人の在り方に変わってくるのではないか。言い方を変えれば,個体的な主体観といったりしますけれども,個人が帰属ベースで自己をつくっていくということから,むしろ,関係的な主体観へ,つながりをつくっていくことで自分たちの在り方を考えていくという社会に入ってきたのではないかとも思われます。
 その意味では,少しまとめ直しますと,これまでの社会をつくっていた帰属という人々の在り方が不全化していく。当然,この中には学校が不全化していくといったことも含まれます。大きな社会に対する帰属が壊れ,しかも,その人々の日常生活におけるにおける在り方である企業や地域社会における在り方である町内会への帰属が壊れていく中で,強い個人が前景化されてくるという事態となって,生涯学習が主張されてきたわけです。しかし,これからはむしろ,強い個人を前提にするというよりは,つながったり,関わったりしながら相互の承認関係をつくっていく。そのことを通して,お互いにつながって新しい社会を一緒につくっていく。こういう,ある意味,個人重視の社会から関係重視の社会に切り替えていく必要が出てきたのではないか。そこで,改めて今,社会教育や公民館が重視されてきたという経緯があるのではないかと思います。
 個人の在り方も帰属からつながりにおいて自己を確立していくといいますか,自分の居場所を社会の中にきっちりとつくっていくような存在に変わっていくのではないかということになります。
 そうなりますと,当然,実践の在り方も変わっていかなければいけない。簡単に言いますと,目的志向であるような,言い方を変えれば,帰属ですとか枠組みを中心にして,それを達成するような在り方から,むしろ,枠組みではなくて,新しいものをどんどんつくり出していく在り方へと変わる必要がある。つまり,生成や変化志向,又はプロセス志向の在り方に変わっていく必要があるのではないかと思います。
 これは,OECDのLearning compassから取っているものでありますけれども,このAnticipation,Action,Reflectionという新しいものをどんどんつくっていくという関係の中で,新しい関係性を志向していくという実践の在り方に変わっていく必要があるのではないかということなのです。
 そうなりますと,社会的な実践の在り方としましても,For Allをベースにしながら,つまりみんなに保障されるということをベースにしながら,むしろ,新しいつながりづくりへ,By Allへという形に切り替えていく必要があるのではないでしょうか。
 私たちが関わってきました様々な社会事業においても,住民主体で,お互いに配慮し合いながら,「よきこと」に気付いて実践していくといったことが見られるわけですけれども,その意味では,そこでの実践の在り方というのは,学んでいくといったこと,つまり「学び」を公共財として社会実装していく。そして,お互いに配慮し合いながら新しい関係をつくるという,ある意味では人間関係を耕していくということになっているように見えます。
 この実践では,時間をかけて地域社会で豊かな相互的な人間関係を築いておくこと,対話しつつ新しい関係をつくっていくといったことが大きな役割になってきますし,そこでは人々はサービスの受け手ではなくて,むしろ,社会の担い手になっていく。その意味で,For Allの基盤の上にBy Allで社会を担ってつなげていくといったこと。この営みに社会教育が深く関わるのだという観点が出てくるのではないかとも思います。
 これらの意味で,新しい社会教育の在り方としましては,対策や対応から,むしろ,生成とか変化,又は関係をつくるという形のものに転換する必要があるだろう。そして,そこで問われてくるのが専門職としての在り方,特に学びのオーガナイザーとしての社会教育士をどうこれから拡充していくのかといったことが問われるのではないかと思います。
 改めて申し上げますけれども,社会教育というのは,社会基盤としての社会教育,人々がつながりをベースにして新しい社会を担っていく,主役になっていく,そのための「学び」を組織するものとしてあるべきではないかと考えています。
 実際の地域社会との関わりについては関委員にお任せをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。社会教育の新しい視点,それから地域との関係についても大変分かりやすく御説明いただきました。生涯学習分科会での議論の骨格も理解できたように思います。ありがとうございました。
 それでは,続けて関委員からお願いいたします。
【関委員】  新居浜市生涯学習センターの関と申します。
 社会教育と地域の連携について,特に公民館に焦点を当てて,私の場合は体験的な話題提供になろうかと思いますが,よろしくお願いいたします。
 私は,新居浜市の職員でございます。昭和56年に泉川公民館を皮切りに,社会教育や生涯学習の畑で長く仕事をさせていただいた者でございます。
 昭和の頃は,婦人会であったり,青年団であったり,社会教育関係団体をターゲットにした学級,講座主体の社会教育であったかと思います。それが全国生涯学習フェスティバル,平成元年に幕張で行われましたけれども,それを機に一気に個人の学習要求の充足を目指す生涯学習にかじが切られて,学びの世界が一変したことになります。
 令和になって今感じますのは,私ども送り手の側(がわ)が描いている理念と受け手の市民の側(がわ)が抱いている概念がかなり乖離(かいり)しているのではないかという点であります。今こそ新しい時代の旗印が必要ではないかと感じております。文科省の組織も変わりましたけれども,例えば地域共生とか地域協働の学習といったものが,市民感情に合うものではないかなと考えております。
 続いて,ここ20年間,公民館の数は減少傾向をたどっています。ピークの平成11年に比べると,もう4,500近く減少しています。ここで問題だと思いますのは,公民館がコミュニティセンター等に移行していったものが多かったですが,その過程でどうなったか,課題が生まれていないのか。そういった実態の検証がまだまだ乏しいのではないかと感じています。その変化をきちんと評価しないままに,このままの流れになってしまうと,限界点を超えて元に戻れなくなるのではないかと心配します。
 先ほどの牧野先生の話にもありましたが,公民館的な機能への期待が高まっている今こそ,今後の方向性をきちんと打ち出すべきではないかと考えます。
 続いて,公民館は,一定地域の住民を対象とする施設として,今まで社会関係資本を蓄えてきた存在です。地方では,今も住民の信頼が厚い施設でございます。地域のことは自分たちでやっていこうという補完性原理も残っています。
 世の中は,ともすればメリットやデメリット,効果,効率を優先する交換の論理で動いていますけれども,公民館には,まだ過去からの恩のつながりを大切にして,損得勘定を超えた贈与の論理といいますか,先ほどの牧野先生の話にもありました「恩送り」の精神が地域の中には残っています。それを大事にしなければと考えます。
 多くの人は,卒業した学校に対して強い愛着を持っております。私どもの中学校の例ですが,荒れたときに学校支援地域本部事業として学校の環境整備に取り組んだことがありました。そのとき,地域で建設会社社長の卒業生が言った言葉が今も心に残っています。「声をかけてくれてありがとう。昔,学校に迷惑をかけた。その償いがしたかったのだけれど,ようやくできた」と,そのとき感謝されたことを思い返します。
また,ある二十歳過ぎの女の子は,自分が昔とても楽しかった子供教室の体験を大人になった今,子供たちにやってあげたいと名のりを上げてくれました。正に「恩送り」の活動ではないかと思っています。子供のときに種をまくこと,それが結果的に大人になって芽が出る,そういったことを教えられた体験でありました。
 あと,今は地域課題を解決する学習が社会教育の領域になっています。しかし,課題解決というと引いてしまう人がたくさんいるのも事実であります。今回の議論の争点であるウェルビーイングを実現するために,共に学んで活動しようという方が市民には受け入れてもらいやすいのではないかと最近,特に感じます。
 その際,学びには,やはり大人版のアクティブラーニング,とりわけ対話が大切ではないかと思っています。他者の異なる価値観を尊重し,白黒を付けるのではなくて,納得解を探り出して,新たな実践につなげていく。そのような学びであれば,子供たちとも一緒に地域学校協働活動の中で取り組んでいけるものと考えます。
 地域の中の様々なウェルビーイング・ターゲットを発見して,小さなことから,できることから始めていって仲間が増えていく,そんな活動をしていけば,いつの間にか,そこに住んでよかったなと思える人が増えてくると考えます。
 健康寿命の延伸であったり,子供たちの支援であったり,あるいは多様な人との共生であったり,空き家問題や環境保護の問題など,ターゲットはたくさんあります。これらは,今動きが広がっている地域運営組織の方向性にも合致するものと考えます。その際に,誰がイニシアチブを取るのかを競うのではなく,どうすれば共に力を合わせることができるかを探っていくことが大事ではないかと思います。
 ICTが世の中を大きく変えました。しかし,都市と地方の格差は大きく,学校と公民館ではまだまだ違います。Wi-Fi環境や学習機器は最低限の社会資本です。今こそデジタル田園都市国家構想の下に,公民館は誰一人取り残されない社会を実現するために,デジタルデバイドの解消に自ら名のりを上げるべきではないかと考えます。
 また,リモートでの講座で都市と地方の学習格差が緩和されることもコロナの下で学んできました。JMOOC(ジェイムーク)等の活用も含めて,新しい学びのシステム構築に取り組むべきではないかなと思います。
 最後に,ウェルビーイングを実現する新たな人材,社会教育士に触れます。社会教育主事は行政内の学びのオーガナイザーですが,社会教育士は自らの人生の経験値や志を発揮して,自分の得意な領域で活躍する実践者でありたいと私は考えております。
 この2年間で約2,500人に称号が付与されましたけれども,今後,増加してくるのか否かは,活躍できる場の存在とモチベーションを保つための仕組みにかかっているのではないかと考えます。
 社会教育士が孤立しないように緩やかにつながって,情報交換や協働の活動ができる,以前ありました“公民館海援隊”のようなネットワークを文科省が提唱していただいて,つくっていくべきではないかと考えます。
 令和の時代にふさわしい公民館の姿を,公民館的機能を持った施設も含めてでございますけれども,この計画の中に示すことができれば何よりかと思っております。公民を育てる教育の場としての機能は無論必要です。しかし,そこはゴールではない気がいたします。学びを基盤にして対話を大切にし,自分にできる力を出し合ってウェルビーイングを実現していけば,そういう形で,これから更なる発展を目指していくべきではないかと思います。
 今こそ公民館は,地域社会の幸せを願う人が集う場になるのだというメッセージを送るべきではないかと考えております。今こそ公民館イコール,幸せという字を冠して,幸せの「幸民館」である,そう宣言するべき時期ではないかと考えております。
 以上でございます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。実践されている立場から,公民館など社会施設の機能強化,それから社会教育士の役割について,大変分かりやすく御説明いただきました。本当にありがとうございました。
 それでは,続きまして2つ目のテーマに移らせていただきます。「教育と産業界の連携」について,まず大森委員から話題提供をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【大森委員】  皆様,こんにちは。大森でございます。今日は話題提供の機会を頂きまして,本当にありがとうございます。私は,群馬県の前橋市にある共愛学園前橋国際大学で学長をしております。
 本日は,地方大学の現場の事例報告というような形でさせていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
 では,早速,資料を共有させていただきます。時間の関係で,かなり飛ばして資料を御覧いただくことになると思うので,後ほどまたごゆっくり御覧いただければと思います。
 今日のテーマ,「教育と産業界の連携」についてということで,本学の取組を中心にここにあるようなコンテンツでお話をさせていただきます。
 産学連携ということについて,初めに少しだけ持論を述べさせていただこうと思っております。本学では,連携ということから一歩進んだ「地学一体」というコンセプトを持っています。本学にとって産業界というのは地域そのものですので,ここでは地域と呼んでおりますけれども,連携や協力はとても大切なことで,それ自体,否定するものではもちろん決してありません。
 ただ,連携というのは,別の主体が協力していくということだと理解しています。考えてみますと,大学も学校も地域と切り離されたものではなくて,その一部であるはずだと思っています。そこに2つの意味を書きましたけれども,もう一つ,人材が必要なのは,産業界を中心とする地域社会です。であるならば,地域の皆さんも人材育成の主体になりませんか。大学,学校という主体と地域,あるいは地域産業界という主体が一つになって,子供・若者を育てていく,主体と主体が協働するという意味で一体ということを考えています。
 本日は,こだわらずに連携という言葉を用いていきますけれども,考え方の根底についてお話をさせていただきました。
 その上で,産学連携のトレンドを考えてみたいのですけれども,これまでの産学連携は,大学と産業界がシーズ,ニーズを持ち寄って技術開発とか製品開発を行ってきたイメージがあります。
 ただ,今は,それに加えて,あるいは,それを包含する形で産業界と学校,あるいは大学の間に生徒や学生がいて,一体となって人を育てていくような連携がたくさん起こっています。つまり,人材育成のための産学連携というフェーズにシフトしているのではないか。産学連携という言葉の響きから得られるイメージを更新していかなければいけないのかなと,そのようにも感じているところです。
 では,具体的にどんな学びの実際があるのか見てみたいと思います。本学の事例が中心になるので,少しだけ本学の紹介,そこに書きましたけれども,末尾にも資料を加えておりますので,後で御覧ください。
 本学は,群馬県前橋市にある大学で,単科大学でGLOCAL人材の育成に取り組んでいます。受験生はおかげさまで年々増えているのですけれども,ほとんどが群馬県出身,そして,ほとんどが群馬県内に就職していきます。
 さて,インターンシップは,最もオーソドックスな産学連携,人材育成の取組だと思います。本学でも4か月間,大学に来る代わりにインターンをしてくるようなチャレンジをしています。そのほか,参考として最近注目されているコーオプ教育であるとか,あるいは本学も関わっている高校における探求型のインターンシップであるとか,あるいは,これは,個人的に私はPTAとして取り組んだ小学校と地域産業界,地元産業界の地域学校協働本部的な取組も紹介しておりますので,後で御覧ください。
 それから,今,文理融合とか分野融合という学びが求められているというのは,大学分科会でも議論があるところなのですけれども,特に地方においては物づくりの企業さんがたくさんいらして,そのテックを真ん中に置くと大学連携であるとか,あるいは文理融合ということがイシュー・ベースで展開できるということも実際の中から実感しているところであります。
 産学連携は,特殊な課外活動プログラムが展開されているというものではなくて,正課のカリキュラムを構成していくものです。典型的な地域連携の授業をここに挙げてみたのですけれども,たくさんの産業界の皆さんが授業を一緒につくってくれていたり,あるいは担当してくれたりしています。
 例えばキャリアプランニングの授業でも,実際に企業課題をテーマにすることで,本学,いわゆる文系大学なのですけれども,その必要性を学生が感じながら,数理,データ,そういった学びも展開できていると思っています。
 例えば,こういったたくさんの企業さんが学生とともに歩んでくださったり,あるいはグローバルなプログラムも,地元企業さんと設計したりということをしています。
 こういった学びは,当然,ディプロマポリシー,学校教育目標から必然として導かれるものであるわけですけれども,ちなみに本学の学修成果指標である「共愛12の力」も地域産業界からも意見を頂いてつくったものです。このポリシーメイキングでも,地域ニーズを踏まえた産学連携が起こってくるのかなと思っています。
 では,学校と産業界,どんな関係づくりをしていくのかということですが,これは2019年まで本学が主導していた群馬県の地域人材育成スキームですけれども,ここから発展して,ぎゅっと凝縮したというか,前橋の中で産官学の地域課題解決のためのプラットフォームがつくられました。文科省さんだけでなくて内閣官房さんとか,日本商工会議所さんにも注目を頂いているところです。前橋で学ぶ・働く・生きるということをテーマに事業を展開しています。
 実際には,地域産業界とは協定を結んだり,あるいは私自身がいろいろな経済団体の会員にならせていただいて,関係を現場でつくっています。また,高校の先生と企業の皆さんを結びつけるのも,その真ん中にいる大学の役割かなと心得て取組をしたりもしています。
 産業界との連携は,当然ながら学生たちのキャリアへと結びついていく学びの営みです。本学では,KYOAI CAREER GATEというポートフォリオ並びにSHOWCASEのシステムを持っていまして,学生たちは自らの学びを自ら可視化し,そのプロセスで自律的な学修者へと成長していきます。実際に学修成果の可視化の仕組みを就職マッチングに生かし,採用後もその学生の学修歴とか能力を踏まえた配置とか,人材育成に接続してもらう取組も始まろうとしています。これも重要な産学連携の取組になるかと思っているところです。
 参考までに地域産業界との取組を本格化させてから,地元定着率は当然ながらですが,年々高まってきているところでもあります。
 さらに,キャリアへの接続というだけではなくて,キャリアとの接続ということで,学生が就業している企業さんに調査をさせてもらったり,これも産学が一体となって学生を育てるために重要なポイントだと思っています。
 卒業生調査も行っておりまして,本学は30%と比較的高い回収率があるのですけれども,学びの機会で企業の状況などを学ぶことができたという回答や,あるいは実社会との接点を感じることができたという一定の評価が卒業生から出ています。参考までに,いろいろな力の獲得の様子でもございます。
 「地学一体」の人材育成という産学連携のトレンドについてお話しした上で,産学連携は分野融合を生み出していくことや,カリキュラムを作っていくこと,そして,キャリアとの連関についてお話をさせていただきましたけれども,これは,全て子供・若者,本学で言えば学生たちの幸せな生涯のためにあると考えております。あるいは,そのためにバックキャストすると,当然このような地域産業界との連携というのが進んでいくということが言えるのかもしれません。
 以下,参考資料として大学紹介等を挙げておりますので,御覧いただければと思います。御清聴ありがとうございました。以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。実践されている地域連携プラットフォームの具体的な姿から,人材育成のための産業連携の重要性が大変よく分かりました。ありがとうございました。
 それでは,続けて安孫子委員からもお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【安孫子委員】  ありがとうございます。
 それでは,早速,お話をさせていただきたいと思います。株式会社ニトリホールディングスの安孫子と申します。
 ニトリは,創業1967年以来,経営の重要な柱の一つとして人材教育に努めてまいりました。結果,大きな変化に対応できるような人材育成を自前で仕組みをつくり,育ててまいりましたので,結果として高い労働生産性を生み出せていることがニトリの特徴の一つになっています。日本は,今,824万円の労働生産性のところ,ニトリは,その2.7倍という実績になっているところです。
 これは,ニトリの従業員が成長・活躍する人事制度の全体像になります。人材教育体系を構築するには,私たちは社会にどう貢献したいのかという志をニトリはロマンと呼んでいます。豊かな暮らしを世界の人々に提供するというロマンが一番筆頭にあり,更にビジョン,これは具体的な数値と業態目標をつくって,これに向かって進むという計画になります。その下には事業計画,未来組織計画があり,人材育成計画があって,その下に8つの様々な制度がある,そういった全体像になっているところです。
 制度があって運用の仕組みがあって浸透しますので,立派な制度も運用の仕組みがまずいと,なかなか浸透しません。我々の約830店舗が日常,水が流れるように制度が運用されるためには,その都度,問題を発見して解決する仕組みも一方で重要になり,月1回,人事制度に対する様々な問題を取締役討議会にて議論しながら進めています。
 続きまして,教育体系図です。これは,ニトリのマス教育の体系図になっていまして,向かって一番左側が基礎編。ここはビジネススキルを年代,役職別に学んで,強いリーダーシップを育むプログラムになっています。
 真ん中のコアコンピタンスは,ニトリならではの教育の軸になります。そういった軸とともに,一番右端にニトリらしい自己育成の軸があり,自己育成も含めて,私たちはマスに向けた教育体系を持ち,それぞれの専門部署と接続している形になります。
 様々な問題解決を,マス教育を受けた社員が現場の業務で実践しながら経験を積み,おおよそ3年ぐらいの配転で様々な仕事の経験をして成長していく流れになっています。
 その専門分野の一つに,今,国も企業も待ったなしで人材育成,スピードを上げているIT人材という育成に対する取組があります。北海道大学とニトリ,そして北海道,札幌市,四者連携協定で行っている「みらいIT人材」育成,2019年から5か年計画として今進めているものでございます。
 この活動は,大学・大学院にとどまらず,今は小学校,中学校,高校と拡大しているところであります。大学院のところにあります北海道大学寄附講座,ここの「ニトリみらい社会デザイン講座」について,少し説明させていただきます。
 北海道大学と進めている講座ですが,北海道大学の先生と学生の皆様が非常に主体的かつ積極的に取り組んでいただきまして,私たち企業が抱えている問題解決をテーマにして様々な研究を通して,その成果を提供してくださっています。
 その2つが,実践型研究と挑戦型研究となっており,実践型研究については,正にニトリからの研究テーマを学生の皆さんも参画しながら研究を重ね,そして,私たちは,この研究を通して社内のIT人材を育成する,そういった目的で進めています。
 更に挑戦型研究については,最先端のAI研究をニトリと北海道大学が共同研究するという形で,我々が社員を研究員として派遣して,そして,高度IT人材育成に努めているという流れでございます。
 今年,高校生においても,その活動が広がっておりまして,こういった研究の活動報告を行ったところです。その中で,我々の代表取締役社長の記念講演があり,学び,教養が社会でどう生かされるか,をテーマに,私たちの業務上にあるDXの事例を共有いたしております。
 さらに,ニトリ会長が60歳のときに立ち上げまして,既に18年経過しています似鳥国際奨学財団というのがあり,今は8,000人の卒団生を送り出しているような大きな財団になってきましたが,その中で2019年から「みらいIT人財」の奨学金も進めているところであります。
 つい先日,7月24日に北海道大学の寳金総長様をお迎えしまして交流会を開催し,19人の発表学生が研究分野を超えて交流を行い,参加の皆様より大好評を頂きました。
 続きまして,これらのデジタル人材育成は,将来対策として広く産官学でIT人材育成に関わるニトリの取組の一方で,社内としてもデジタル人材の育成を積極的に教育体系として再構築しているところです。
 重要なのは,当初からIT人材として採用していく教育体系や教育プログラムと同時に,今,我が社にいるたくさんの優秀な社員にリカレントとして学び直し,デジタルの教育を施して,IT人材の専門部署に接合するという教育体系になっており,これを2032年には1,000人規模の人材育成を目指す目標で進めているところです。
 そして,これらのデジタル教育は,創業当初よりデータを重視した問題解決を企業文化で醸成してきましたので,更にデジタル教育をリテラシーの柱として加えて,店長までの若手に100%のデジタル教育を施して,現場の仕事の仕方を大いに変えていこうというところで,今,活動を強化しているところです。
 まずはデジタルを瞬時に活用するための情報提供のインフラを整えるとともに,若手が問題意識を共にした仲間とともに研究,実験を繰り返し,成果を上げて,それを発表するニトリ・ワールド・サークルという改善活動の社内コンクールも年1回開催することでデジタル教育の浸透,拡大を進めているところです。
 最後になりますが,全ての人材育成の仕組みは,私たちの会社の存在意義,ロマンの実現に向かっております。そのロマンに向かって人材育成がなされ,共に学びながら問題を見つけて改善し,そして浸透していく,そういったスパイラルを回している構造そのものがニトリらしい仕組みとなっています。
 私からは以上になります。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。自社の地域での産官学連携事業を,「みらいIT人材」の育成やリカレント教育による社内の人材育成につなげている大変よい事例を御発表いただきました。ありがとうございました。
 それでは,このテーマの最後になりますが,経団連の長谷川常務理事から話題提供をお願いしたいと思います。
【長谷川常務理事】  次期教育振興基本計画の検討に当たり,諮問事項の中に,「初等中等教育から高等教育まで全体が連続性,一貫性を持ち,社会のニーズに応えるものとなる教育や学習の在り方」「学校の内外において生涯を通じて学び,成長し,主体的に社会の形成に参画する中で,共生社会の実現を目指した学習を充実するための環境づくり」などを挙げていただいたことは,産業界としても歓迎しており,非常に心強く感じております。
 こうした観点からの検討の一助となればと思い,本日は産学協議会における2021年度の検討成果の中から,ここに挙げた4点を中心にお話をしたいと思います。
 まず,御案内のとおり,経団連と国公私立大学のトップで構成する「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」は,Society5.0で活躍する人材を育成するために産学協働で具体的な方策を検討しており,既に3年半を迎えております。
 Society5.0人材に求められる能力について,産学協議会では,この左下の図にあるように数理的推論,データ分析力や外国語によるコミュニケーション能力などのリテラシーの上に,論理的思考力と規範的判断力,課題発見・解決能力,未来社会を構想・設計する力,そして,これらを涵養(かんよう)するためのリベラルアーツ教育,そして,更にその上に高度専門職に必要な知識や能力が必要ということで合意いたしました。
 また,これらの能力を身に付けるには,初等中等教育から始めて大学院レベルまでの学修,また,社会人になっても学び続けることが必要であるということでも合意しております。
 また,こちらの右下の図にありますように,企業は今,多種多様な人材を求めています。経団連が本年1月に公表したアンケート結果では,その中でも大卒者に特に期待する素質として,主体性,チームワーク・リーダーシップ・協調性,そして学び続ける力が挙げられています。また,期待する能力としては,課題設定・解決能力,論理的思考力,そして創造力というのが上位に挙げられており,産学協議会の認識と同じ方向性となっております。
 次に,新卒者の採用における今後の動向として,左下の図にありますように,新卒一括採用の割合が減少し,通年採用の割合が増加する傾向が見られます。また,職種別・コース別採用やジョブ型採用の割合が増加し,既卒者採用と同様に多様化が進んでいくものと見られます。
 また,分野別専門人材の採用・育成については,右下の図のとおり,数理・データサイエンス・AIをはじめとする高度な専門性が求められる分野では,即戦力のある専門人材を社外から獲得することで,環境変化に即応したいと考える企業が増えていることが分かります。
 さらに,社員のキャリア形成に関しては,今後は社員の自律性を基本とする企業の割合が6割を超えており,会社主導による受け身のキャリア形成から,働き手自らが自分のやりたい仕事やキャリアパスを考えて必要なトレーニングや教育を受けるという,働き手の自律性を重視したキャリア形成へと転換を目指す動きが見られます。
 これらのデータが示すように,変化の激しい人生100年時代を迎える中で,社員が働きながら大学などで学ぶ,あるいは仕事と大学などを行ったり来たりするということを社会に普及・定着させていく「仕事と学びの好循環」の確立が重要です。
 産学協議会でも,この好循環の実現に向けて,学生や働き手が自らのキャリアをデザインする能力を高めることが重要であるという認識で一致しております。
 この図は,「仕事と学びの好循環」によりイノベーションが促進され,働き手のエンゲージメントも向上し,個人のウェルビーイングが実現することを示しています。その実現には経済界,教育界と政府が連携して環境整備に取り組む必要がありますが,その鍵を握るのがリカレント教育だと考えています。
 産学協議会では,リカレント教育を設計する際の切り口として,対象とする受講者,これは,先ほどのニトリと北海道大学の例もありましたが,特定の企業,それから大学が合意して設計するカスタマイズ型と,多くの企業を対象とする汎用型で分けられます。そういうものやレベル,正にリテラシーなのか,大学院レベルの修士の応用なのか,博士課程相当のエキスパートなのかというレベルでまず整理するとともに,産学協働でリカレント教育プログラムを開発する際の重要な点を大きく4つ整理しております。
 プログラムの内容に関して最も重要なのは,Aとして企業側ニーズと大学側シーズの把握,Bとして企業側ニーズと大学側シーズに関するマッチングの促進,Cとして受講形態の改善,Dとして政府・地方自治体の支援です。
 産学協議会では,昨年度,企業側のニーズと大学側のシーズを把握すべく,「企業の業種横断的な重要テーマ」である3つのテーマ,具体的にはDX,グリーン成長・GX,そして地域活性化の3分野について,企業と大学に調査を行いました。その結果を基に,企業側のニーズと大学側のシーズを簡易なデータベースとして整理しております。
 この作業を通じて,産学の認識ギャップやマッチング機能の充実に向けて,企業側ニーズと大学側シーズに関する情報発信の強化やコーディネート人材の育成,マッチングの場の創出が必要であることなどが明らかになっております。
 具体的な課題方策についてはスライド10と11にまとめておりますので,後ほど御覧ください。
 産学協議会で議論した際には,企業側の課題として,社員の受講環境の整備やリカレント教育を受講した社員の適切な活用や評価などが,また,大学側では,大学教育におけるリカレント教育の位置づけの見直し,そして,政府・自治体に対しては,リカレント教育推進に向けた国によるインセンティブの付与が課題として指摘されています。
 まず,受講形態の改善に関しましては,オンラインの積極的な活用も,単なる受講の手軽さという観点だけではなく,多様なバックグラウンドの人材が交流し,分野横断的な協創の場(イノベーション・ハブ)としての高度な学びを実現するという意味からも重要だと考えています。
 また,単位や学位に対する産学間の認識ギャップの解消に向けて,今後,産学双方にとって,より意義のある単位・学位の在り方を検討していく必要があります。
 大学設置基準にリカレント教育を位置づけることや,産学協働でリカレント教育プログラムを開発した大学などに対する国・地方自治体による財政支援も是非お願いしたいと考えております。
 最後に,自律的なキャリア形成支援の推進に関する学びを産学協働で実現していくという観点から,学生のキャリア形成支援の在り方についても簡単に御紹介します。
 冒頭申し上げました「仕事と学びの好循環」の実現を目指す上で,学生には早い段階から自らのキャリアについて考えることが重要です。そこで産学協議会では,我が国でも就業体験を伴う質の高いインターンシップを普及させるべきと考えて,新しいインターンシップを下段にありますとおり,「学生がその仕事に就く能力が自らに備わっているかどうかを見極めることを目的に,就業体験を行う活動」と定義することで合意しております。来年度からの本格実施を目指して,現在,普及・定着活動を推進しております。
 学生のキャリア形成支援における産学協働の取組は,インターシップのみならず,いろいろな段階で行っていく必要があります。このスライドでは,産学協議会が整理した4つの活動の類型について特徴をまとめておりますので,後ほど御覧いただければと思います。
 駆け足の説明でございましたが,私からは以上です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。リカレント教育やインターンシップに関する産学協議会の取組を御説明いただきました。ありがとうございました。
 それでは,これより,話題提供いただいた2つのテーマについて意見交換をしていただきます。先ほど事務局から御説明がありましたように,清原副部会長に「社会教育・教育と地域の連携」グループ,それから永田副部会長に「教育と産業の連携」グループの司会をお願いし,それぞれ分かれて議論を進めたいと思います。詳しくは,事務局からお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  それでは,事前にも御希望をお伺いしておりましたけれども,「教育と産業界の連携」のグループの先生方,こちらのZoomにお残りくださいますようお願いいたします。
 「社会教育・教育と地域の連携」の先生方,今,チャット欄にURLをお送りいたしましたので,そちらにお入りいただきますようお願いいたします。現在,14時55分でございます。およそ45分御議論いただき,15時40分をめどにお戻りをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【教育と産業界の連携について】
【永田副部会長】  それでは,早速始めさせていただきます。社会教育のグループと分けましたが,大森委員のお話を聞いていると社会教育と企業との連携といろいろ入っていて,両方に関係があると思って聞いていました。
 それから,産学連携は,ニトリさんからは北大を中心に,最後に経団連からは,いろいろと取り決められたことが出てきました。いろいろな観点で話はあると思います。
 連携というのは,一つは教育そのものにおける連携,これは当たり前だと思われるかもしれませんが,先ほど事例がありましたように教育現場としての助け合いです。もう一つは,我が国の高等教育に対する産業界の姿勢という意味での連携,つまり,諸外国では御存じのとおり,アメリカは特にそうですが,学生さんを育ててもらうということが既に感謝の対象になっている,この感覚が日本には全くないと思うのです。
 ですから,片方は本当の意味での,連携の中身,もう一つの方は,僕らの将来を担う教育をみんなで育てるという考え方の中で,大学と企業がこれからもっと太いパイプが作れるか。教育の受益者はもちろん学生そのものなのですが,大きく言えば雇用していただいた会社であり,そこが生み出す,つまり,我が国の,そして世界の利益ということにつながっているわけなので,矮小(わいしょう)化しないで話してもいいと思うのです。
 大体,この2つの観点で,是非とも御意見を頂戴したい。既に連携事業,教育の話,幾つも出ました。ほかにも事例があれば出していただければいいし,それから,社会に利益をもたらすという観点から考えたときに,もっと違う観点の支援や連携があるのだろうということもあります。
 いかがでしょうか。なかなかぼんやりしていて難しいでしょうか。大森委員,今回のお話は,相手方がいるので,相手方と折衝したりするわけですが,それはシステムとしてやられているのですか。それとも,個人的にコネクションがある人に,それを基盤に大学でやってみましょうかとしてやられているのですか。それとも,大学として積極的に,戦略的にあそことあそことやりましょうとしてやられているのですか。
【大森委員】  今日御紹介したのはごく一部なので,かなり膨大にいろいろな企業さんとやっていて,それを一律でシステムとしてやっているかというと,そうはなっていないです。やはり先生の個人的なとか,私が社長と飲んでいて話が盛り上がってとか,どちらかというと,そちらの方が多いかなということもあったり,あるいは,ふだんからの関係で,商工会議所が企業さんを連れてきて一緒にやりたいといっているのだけれどとか,いろいろなパターンがあって,それらをうまく組み合わせて教育にコーディネートしていくのが我々教育人の技なのかなとも思っていて,あまりチャンネルを限定しないようにしています。
 ただ,小さい組織なので,それが可能だということも言えるかもしれません。そんな感じですね。
【永田副部会長】  皆さん,何かあれば手を挙げていただければ即座に御発言いただいていいです。ニトリさんの先ほどの事例を聞いてですが,ニトリさんで雇用されている方々の出身,簡単に言うと理系か文系か,あるいは真ん中ぐらいか,どのような割合で入ってきているのか。また,そのような方々にデジタル教育をやるというのはどのような効果が本当にあるのかを教えていただきたい。
【安孫子委員】  ありがとうございます。私たちは,いろいろな商品開発もやっているのですが,やはり小売業ということで,圧倒的に文化系が多いのですね。
【永田副部会長】  やはりそうですか。
【安孫子委員】  ただ,仕事の教育次第において問題解決をしていく,そういった学びを積み重ねていく中で,だんだんと数字を理解して,数字を活用するということができるようになってきて,そこにデジタルの教養を加えて更に強化しようということで,文系でも,ちゃんと学び直しで戦力になることをすごく実感しているところです。
【永田副部会長】  ありがとうございます。大学で行うデジタルサイエンスの教育は,企業に入ってからでも間に合うのであれば,そこで協力することも可能です。では,大学としては何を行えばいいのかということで,きっと何かお考えだと思います。どうですか,村田委員。
【村田委員】  分かっております。
 今,データの話があったのですが,先ほどの企業と産業界,あるいは企業との連携のところ,今日,大森先生の話を聞いていて,人材育成のところで新たな視点でというのは,重要なのかなと思いました。
 というのは,例えば,これまでの産業界と大学の連携は,どちらかというと理系の人材で,それこそニーズとシーズだったのですが,イノベーションそのものが大きく定義が変わってきていますから,むしろ人材育成をどうしていくかということと,もう一つ大きいのは,SDGsとどう絡めていくかというところだと思います。うまく共通のテーマが出てくるのかななんて,最近少し考えているところです。
 残念ながら,企業様で社会科学系や人文科学系の人材育成ってなかなか難しい,どうしてもシーズ,ニーズという研究開発中心のところになるので,そこのところは少しSDGs,あるいはカーボンニュートラルといったところは,もう社会全体を,世界全てを含むテーマですから,こういうところでの人材育成がうまくできるキーワードになってくるのかなと考えていました。
 私からは以上です。
【永田副部会長】  もう少し言えば,企業のESGをサポートする大学と,それから企業が意識したものを大学で勉強するというのもあるのでしょう。
 元紺谷委員,どうぞ。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。北海道にあります有朋高校の元紺谷といいます。産業界がテーマでしたので,それに関連する御意見や御質問が出た後に高校のお話をさせていただこうと思っていましたが,御意見があまりないようですので,高校のお話をさせていただきます。
 今回の諮問の柱にSociety5.0とウェルビーイングがありますけれども,実はもう一つ,私は,大きなテーマとしては人口減少問題に関わる持続可能な社会の育成にあるとっています。
 今回,ニトリさんの安孫子委員のお話にもありましたように,高校生の探究サミットはすごくいい取組だと思います。この取組は高等学校に限らず,小学校や中学校においても,学びの中に地域を素材にした探究学習をもっと充実させる必要があると思います。しかも,それは各校種単発で行うのではなく,小中高が連携して,発達段階に応じた長いスパンでのプログラムを組んで育成することを充実させる必要があると考えています。その中で,子供たちの学びが,ひいては地方創生につながると考えています。もう一つは,先ほど大森委員からお話がありましたように,大学における産業界と連携したキャリア教育の取組ですが,小中高においても当然必要であると考えています。キャリア教育の中に地域の学びを入れることによって,子供たちが地域を愛し,地域にとどまる,つまり児童や生徒の学びを通じて地域創生が実現される,この柱を一本,きちっと定める必要があるのではないかと私は考えています。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。大変重要な発言だと思います。
 小林委員,どうぞ。
【小林委員】  私は,企業側の立場におりますが,その立場としては自虐的な意見かもしれません。今,SDGsという話が出ましたけれども,SDGs,サステナビリティですとか,環境問題に関しての専門家の育成が日本の大学では大変遅れています。
 それはなぜかというと,日本の企業が,そこに対してのニーズに気が付くのが非常に遅かったからだと思うのです。IT人材も,そうだと思います。
 そういう意味で,今,産学連携ということで,産が学に対して何ができるかということを考えるわけですが,一つは,企業の努力として,これから先の産業においてどういうスキルが必要になるのかという世界の潮流をもっと早くつかんでいく努力をしていく。そこで,こういう人材が将来必要になるから,日本の大学,日本の高等教育においても,こういう人材を育成するような研究なり,カリキュラムを作ってほしいということを言っていかなければいけないと考えます。企業側の姿勢として,何がこれから必要になってくるのかということをより早く察知して,日本の学に投げていくのは産業界の責任ではないかと思います。
 それから,先ほど経団連さんから御発表があったのですけれども,いろいろなことを高等教育の機関に要求するわけですが,では,こういったスキルを身に付けてきた若い人たちが,今,実際に企業で本当に力を発揮できるかというと,企業の中の制度,あるいは人事システムが,必ずしもこれを受け入れて,そして企業の価値向上につなげるような仕組みはまだできていないというのが現実だと思います。
 この辺りは,是非,学の方から,どういう企業に入ってから,どのようなキャリアをつくっていくのか,どういうことにぶつかっていくのかというようなことについてのフォローアップをして,企業に対して厳しく要求していただきたいと思います。
 学にこういうことを求めているのに,せっかくそういう学生をつくって送り出しても,企業が活(い)かしていないということは往々にあると思いますので,こういったことは学校側がフォローすると同時に,企業に対してフォローアップの要求もしていく必要があるのではないかと思います。
 加えて,先ほどの高等教育以前のところでの地域を主体とした人材育成ということですが,必ずしも全ての子供が高等教育を受けるわけではない,大学に行くわけではない。大学に行きたくないと思っている学生もいるわけですよね。
 このときに我々が気を付けなければいけないのは,方針として,高等教育を受けた子供が産業界と連携して活躍していくというフレームワークだけを作るのは非常に危険だと思っています。小学校,中学校の段階から地元と密着して,自分にどのような将来があるのかということをしっかりと見せていくことが重要ですし,広く社会全体で様々な仕事に従事する人がいなければ,どんなに企業が成長しても,大企業は結局,仕事が回らないわけですね。
 なので,そういう地域密着型の仕事においても十分に価値があり,そして,そこで子供たちが自分たちのウェルビーイングを達成できるのだというような絵を見せていくことが必要だと思います。
【永田副部会長】  ありがとうございます。元紺谷委員のおっしゃったところと全く最後同じなので,これは教育振興基本計画部会ですから,将来に向けて,小中高大,そういうものを一貫して考えなければ駄目ということだったと思うのです。
 もう一つ,気付きました。企業が自虐的にとおっしゃいましたが,もっと駄目なのは大学です。大学の先生は,人から何を言われようが,いつも斬新な研究をやっていなければいけない。そのような人が出てこない大学は,いらない。
 ですから,もっともっと自由な研究と分野を広げた研究をやっていないと,世界の動向をつかめるわけがありません。大学も自虐的に言えば,そのようなことだと思います。
 川口委員,どうぞ。
【川口委員】  御指名いただきまして,どうもありがとうございます。
 2点,意見を申し上げたいと思いまして,1点目は,今の小林委員の,フォローアップの話にも関わるのですけれども,やはりデータの整理で,大学で学んだ内容が労働市場でどのように使われているのかということに関して,学びの内容と卒業した後の働き方のデータというのが接続されていないと,なかなか分析できない。
 同じ大学を出ても,いろいろな科目を取って卒業していく学生がいるのですけれども,どういう科目を取った学生がどういう産業で活躍しているのか。知ろうと思ったときに,先ほどの,大森先生の御発表の中で,少しそういうことに触れられていたと思うのですけれども,多くの大学では,そういうことをやろうと思っても個人情報の保護という問題が出てきて,なかなかうまくできないということがあって,そういったところについてルールの整備が必要だなと思います。
 あとは,今,文科省でパネルデータを作られていますけれども,それを継続して,卒業した後のフォローアップというのも続けていっていただくことが重要だろうなと思います。
 2点目は,大学の中でどういう人を育てるかという話なのですけれども,デジタル人材という話があるのですが,デジタルの機能というのは学ぼうと思うと結構インターネットで学べるような部分もあるのかなと思いまして,どこまで大学で教えるのかというのは難しい課題なのかなと思いました。
 その一方で,長谷川理事の御発表の中で資質と能力が分けられて語られていたと思うのですけれども,求められる資質の2番目にリーダーシップですとかチームワークという話が入っていたのですが,それは育成できるものなのかどうなのかという論点があると思うのです。
 それは,しっかりと分解すると,交渉をうまく進めるとか,チームワークをうまく進めるというのは,チームワークとは一体どういうことなのか,交渉とはどういうことなのかというのを一回抽象化して,そうすると,その内容を教えられるようになると思うのですね。それは,アメリカのビジネススクールで教えられている科目だと思うのですけれども,実を言うと,そういう科目を大学で教えていくことも必要なのかなと思いました。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。
 内田委員,どうぞ。
【内田委員】  ありがとうございます。それぞれの御発表を大変興味深く拝聴しました。
 私から2点ございまして,1つは,どういう人材が求められているのかという教育に求める人材のところで,特に経団連の長谷川様から御発表いただいたデータを,私もすごく面白く拝見したのですけれど,主体性や課題解決能力というのは,ある意味,発信力があったり,突破力があったりということが求められているのだなと思う一方で,これには現実の意識との不一致もあると思います。私どもが,社会で求められるスキルとはどういうことだと思いますかというのを大学生であるとか,あるいは子育て中の親に質問調査をする研究を行ったことがあります。まだ予備調査の段階ですが,スキルはコミュニケーション能力を重要視する人が多く,さらには自分に備わったものというよりは,場に特化したものだと考える人も多いようです。求められている主体性のようなものとは現段階ではギャップがあるのではないかなと思います。
 今後はそのギャップを埋めるべきなのか,それとも主体性をもう少し日本型の,場に特化して回していくというようなことも一つの主体性だと捉えて見直していく方向性がある得るどうかというのをお尋ねしてみたいなと思いました。これが1点目です。
 もう一つは,大学がどのように橋渡ししていくのかです。私も大学で教えている身として非常に心苦しいこともたくさんございまして,例えば文系の博士人材の,企業での活躍は,日本ではまだ進んでいないと思うことの一つです。修士,博士に行った人というのは,論理的思考力であるとか,実行力であるとか,あるいは一つのスキルのトレーニングをしています。
 私の分野である心理学の例で言うと,文献を解析したり,データを分析したりというような統計の能力とか,そういうものも備わっていくわけですけれども,理系の修士,博士の人材とは違って,専門性がいまいち理解されにくいというような現状があります。そして,学部生の専門性についてももっと不明確であるということにもなったりしてしまっています。結局,先ほど申し上げた「コミュ力さえあればよい」みたいなところに戻っていってしまうのかなと懸念しています。
 これを是正するという意味でも,ニトリさんの取組にもあったように,社会に出てからもう一度,大学の中での研究と接合していくことによって,文系,理系にかかわらず,研究を通した学びというのは実際に企業の中でも活用できるなというようなことが見えてくるとよいのではないかと思いましたので,多様なスキルを獲得するチャンスというものを今の大学,高校とかに限定するのではなくて,少し拡張していくようなやり方もあるのかなと思いました。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。いいヒントがたくさん入っていました。一番の疑問は,親たちが認識しているものと社会が認識しているものはなぜ違うのかということで,親の世代もいろいろあるでしょうが,上は多分,50なり,55なり,下は40代があって,その人たちは社会の中核をつくっているにもかかわらず,なぜ産業界の上の人のアンケートと親のアンケートの回答が違うのか。
 これは,やはり社会教育とも大いに関係あるのですが,きちんと分析しないと,このギャップを埋めるのに,次にまた30年かかります。社会をつくるのにまた30年かかるので,理系女子が少ないのもほとんど同じだと思いますが,あっという間に変わらないのです。
 なぜかといったら,今言った親の世代は,この社会をつくっている中心のはずなのに,全く昔のままの頭になっています。その人たちが子供を育てるので,子供は変わらなくて,また変わるのに何十年もかかるという繰り返しなので,今,内田委員がおっしゃった,同じ世代の人たちが立場を変えるとアンケートの答えが違うのは,なかなか恐ろしいことだと思います。
【内田委員】  次世代の教育についてはコンサバティブになる傾向があります。
 だから,二重構造を是正していくのは非常に大きな問題だと思います。
【永田副部会長】  それは,それだけではなくて,きっと社会の認識と個々人の認識,家庭の認識を取っ払わないと,多分,次の振興計画にならないのではないでしょうか。
 松浦委員,どうぞ。
【松浦委員】  ありがとうございます。慶應義塾の松浦です。少し駄目な大学の立場からということになってしまうかもしれませんが,大学と企業,あるいは産業と教育の連携という前に,もっときちんと対話というか,あるいは相互批判をする作業が必要なのではないか,これが言いたいことなのですけれども,例えば今ずっと議論になっている人材像とか人材育成,どういうアピールが必要なのかということに関しても,今の状況を見ていればデジタルとか,データ,数理というのは確かにそうなのですけれど,これが20年,30年,本当にこのままなのだろうか。
 主体性にしても,協調性にしても,Society5.0というのが一つの理想社会みたいになっていますけれども,携帯のキャリア1社が不通になっただけで,相当大きな社会的な影響がある中で,Society5.0というのも決して理想的な社会として想定して,それに向けての人材育成ということを無批判に前提はできないと思うのですよね。
 産業や技術の発展や変化があって,今,永田先生がおっしゃったように,実は教育と産業とか幾ら連携しても教育の方にタイムラグがあって,人を育てるには20年,30年,時間がかかってしまうので,20年後,30年後見ているだけではひょっとしたら駄目かもしれないなと思うのです。
 リカレントは,経団連からおっしゃっていただいたように,本気で大学に入れたいとは思うのですが,リカレントを組み入れるとなると,今度はレギュラーの学士課程をどのように組み直していくのか。レギュラーの学生の教育と10年後ないしは20年後に迎える社会人の学生との関係をどう考えるかということがやはりあると思いますので,割と長いスパンで,このことをきちっと見ていかないといけないのかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【永田副部会長】  ありがとうございます。簡単に答えが出る,変革できるものではないという認識の下に,次の何年間かのことを考えるということです。
 大森委員,どうぞ。
【大森委員】  すみません,2回目で。
 先ほど村田先生がおっしゃったSDGsって私も同感で,実際に群馬県の企業さんがすごくお金を出してくれて,群馬県内の学生を集めて,自社の若手社員と一緒に環境をテーマにPBLを1年間やるみたいな取組をやってくれているのですね。それは学生にとっても,それから企業人にとってもすごく意義がある。
 ただ,その取組は終わりまして,その企業さん,外国資本が入って,それはなしということになって,だから企業さんと組むというのは,そういうことが起こるのだということを学校側も踏まえて臨機に対応していくという度量を持っていないとできないかなと思うけれど,そういうことです。
 もう一つ,小林委員と川口委員がおっしゃったキャリアの話なのですけれど,先ほど私がお話ししたように,SHOWCASEを企業さんが見てくれて,この子,こういう活動をしてきたのなら,この部署かなみたいなことをやり始めようとしています。その行った先で何が足りないか卒業生調査をやると,やはりデータを使って分析する力が足りないと,企業さんからも本人たちも答えるので,来年からデータサイエンスの授業,10単位全員必修というカリキュラムに変えるのですけれども,そういうことがバックキャストで起こってくる,そういう連携はすごく必要だなと思っています。
 最後にもう一点,永田先生が最初におっしゃったことはすごく大事だなと思っていて,二本立てのもう一本の方なのですが,例えばシリコンバレーのお話とかシアトルの話,大学があるからとよく出るのだけれども,それは大学がぽんとあったからではなくて,地域の皆さんが,その大学に相当にいろいろなお金を出してくれて,これをやろうよといってくれている。
 今,例えば私学で言うと,私たちは大学運営,学生の学費9割でやっていますので,学生のためにまずやるべきなのですよね。そこのところがリカレントという話になってきたときに,うちもリカレントを始めましたけれど,地方ではなぜか持ち出しでやっているという状況です。だから,なかなか進まない。
 やはりそこのところ,口も出してもらっていいと思うのですけれども,それが,私が今日最初に言った地学一体って,そういう意味で,皆さんも主体になって育ててくださいよ,そのベースは大学なりがつくっていきますからという,何かそこの関係が必要だなと思って,永田先生が最初に言ってくださったことに,「そうだ」という思いを強めたという感じです。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。難しい問題なので,なかなか簡単に議論できませんが,必要だと思います。
 長谷川委員,どうぞ。
【長谷川常務理事】  ありがとうございます。1つは,小林委員から御指摘があった,日本企業がサステナビリティ人材育成のニーズに気付くのが遅れたという点は,御指摘のとおりだと思います。ただ,今回,産学協議会に参加されている大学や企業を対象に,大学側シーズと企業側ニーズの簡易データベースを作ったところ,グリーントランスフォーメーションに関するプログラムやサステナビリティ人材育成プログラムを実際に提供されている大学が結構多いことが分かり,そのことが驚きでもありました。
他方で,企業人が例えば「ESGが学びたい」,「サステナブルファイナンスについて学びたい」,「GXに必要なトランジションやテクノロジーについて学びたい」という動機で大学院修士課程に2年行ってきますと言える状態にあるかという点については,通常の大学院修士課程の授業として開講されているプログラムの大半において,必要な環境がまだ整っていないという面はございます。
 ですので,私のプレゼンで申し上げたとおり,オンラインで週末や隙間時間に受講できるなど,やはりプログラムの提供の仕方について工夫を頂きたいと思います。
 それから,御指摘があった大学の学修成果や学修内容が,就職後,本当に仕事に生かされているかというのは我々も非常に関心を持っておりますので,是非,大学側からもフォローアップ調査などを実施していただければ有り難いと思います。
 企業側も少しずつではありますが,ジョブ型雇用を推し進めているところであり,その仕事に求められる能力やスキル,採用後の処遇などを採用時に明らかにしていくという企業も徐々に増えています。
 現在,文科省と経団連が連携して推進しているジョブ型研究インターンシップ,これは理工系向けの取り組みですが,同様のインターンシップを人文社会科学系の大学院修士レベルでも実施できないか,産学協議会で検討しています。しかし,1年間議論する中で,やはり人文社会科学系の大学院,修士のスキルが実際の仕事にどのような能力としてマッチングするかという部分は非常に見極めが難しく,実施はなかなか難しいという意見が主流です。
 ただ,例えば心理学であれば採用や人事で生かせるのではないか,あるいは,社会学であれば統計やビッグデータを結構扱う学問なので,データサイエンティストとして活躍できるのではないか,さらには,文学や外国語を専門に学んだ人は,実はシステムエンジニアに向いているのではないかといったように,その専門で身に付く能力が企業における仕事にどうマッチングできるかということが少しずつ分かってきました。今後,そういったことをもう少し精査してうまく整理していけば,マッチングももう少し進むと思っています。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。
 杉村委員,どうぞ。
【杉村委員】  ありがとうございます。今日も大変興味深いお話をありがとうございました。社会教育のお話も大変印象深かったのですが,お三方の御発表を伺い,皆さんが共通に抱えている今日的課題について,具体的にグッドプラクティスを通じて御紹介いただけたことに感謝申し上げます。
 既に,委員の先生方がいろいろおっしゃっておられますので,少し違った視点で今日私が学ばせていただいたことを3つ申し上げたいと思います,1つは,正にニトリの安孫子様もお話になっておられましたが,御社の「ビジョンの前にロマンがある」とおっしゃったことで,大変心に響きました。「豊かな暮らしを世界の人々に提供する」というロマンから始まって,それを実際に制度と運用の仕組みに組み込んでいく。実は,そのことは大学もそうですし,それから小中高を含め,全てのいろいろな社会の組織で必要なのではないかと考えます。
2つ目として,ロマンを動かすメカニズムですね。これは,例えば共愛学園様を例にしてもそうですし,北海道大学と組んでいろいろな取り組みをされている点など,そうしたところにも非常にロマンとメカニズムがあると思います。
そして3つ目に,今日お伺いしていて,どの事例にもキーパーソンの方がおられるということを大変印象深く感じました。もちろん組織として動いていらっしゃるということもあると思いますが,これからの教育がどのような人材を育てるべきかということを考えるときに,今日出されていたような批判的思考力だとかコミュニケーション力,他者共感力などを兼ね備えた人物像がキーパーソンとして取り上げられるように思います。人と人をつないでプラットフォームをつくっていくことができるような,そうした人材が必要なのではないでしょうか。今日御紹介いただいた事例や,あるいは共愛学園にも,更に連携しておられる企業にもキーパーソンがおられるかと思います。ロマンを共有し,メカニズムに則して,みんなで動ける,そうした人材がすごく大事なのではないかということを今日は学ばせていただきました。
 先ほど大森先生がおっしゃった地学一体ということは,本当にすばらしいと思います。実現するのは本当に難しいと思うのですけれども,このような良い実践例があるので,今後,私たちがビジョンを描くときの参考にさせていただければと思います。
 事前の勉強会では文科省の方々が本当にお骨折りいただいて,毎回丁寧にブリーフィングしてくださいますが,今回も事前にキーワードのマッピングの図を事前に見せてくださいました。この部会で話し合っているいろいろなテーマがちりばめられているわけですが,この中に加えていただきたいと思うのは,教育に対するロマンということです。私も大学に所属している身として,先ほどの永田先生のお言葉にもありました通り,大学もまだ課題が多いという点については反省しきりです。集中と選択,あるいは効率性をよく問われ,大学も本当にきゅうきゅうやっております。そうした中で,「先生は夢物語みたいなことばかり言っていて」と,よく学生から言われておりますが,教育を考える者が夢を忘れたら終わりだと思っております。この部会では毎回,どんな発表にも皆さんの夢がいっぱい込められていて,それを是非教育振興基本計画部会として強く打ち出していけるといいのではないかと伺っていて思いました。
 感想になってしまいましたけれども,今回も御発表にとても励まされました。私自身も今後,自戒を込めてやっていきたいと思います。ありがとうございます。
【永田副部会長】  ありがとうございます。
 堀田委員,どうぞ。
【堀田委員】  東北大学の堀田です。2つ申し上げたいと思います。
 1つは,今,経団連の長谷川さんの8ページを見ているのですけれども,学士・修士・博士課程とあって,私どもの東北大学は研究大学だからという部分もあると思うのですが,社会人でエキスパートになるために博士課程に入学されるというケースが,それが共同研究だったり,寄附講座だったり,そういうことにつながっている事例が結構あるように思います。
 これはこれで良いのですが,意外と修士の方が社会人の受入れが難しいなといつも思います。先ほども少し意見が出ましたけれど,部分的に学びたい人がいると思うのですけれど,やはり30単位取らなければいけないとか,修士論文を書かなければいけないとか,そういう仕組みの中で,修士課程は在宅でとかオンラインでとか,何年もかけてつまみ食い的にやっていて,だんだん単位を蓄積していくみたいなやり方が,少しやりにくい仕組みになっているかもしれないなと思います。今では,履修プログラムとか,いろいろなことが動いていますけれど,それが必ずしも学位に結びつくわけでもないので,そこで学んだことがどうやって証明されるか,あるいは,それを会社に認めていただくかみたいなことが一つの課題かもしれないと感じます。
 大学を卒業してから働いて活躍している方が多いことを考えると,修士レベルの学び,最新の学びが遠隔にいながら,働きながら学べるというのはすごく大事なことで,ここでオンラインとかICTとかとかデジタルとかをもっと活用して弾力的に履修できるようにすべきところがあるなと思うのです。これが1つです。
 もう一つは,私は,どちらかというと初等中等教育が専門なのですが,初等中等教育においても産業界との連携というのは極めて重要なテーマで,例えばプログラミング教育がそうです。先生方は大変多忙なので,もっと民間の力を借りるべきではないかみたいなことは,総論としては,みんな賛成しているのですけれど,各論としては制度的な課題で,いろいろなところがうまくいかない部分があります。
 うまくいかないことの一つの大きな理由は保護者の意識です。その保護者の意識が,先ほど内田委員がおっしゃったことと非常に近いのですけれども,永田先生もおっしゃったように,社会の中心で働いているときはコンピテンシーベースで考えられるのに,自分の子供の話になると,何か旧態依然の受験の形に頼った判断になりがちだと思います。
 実は学習指導要領もコンテンツベースからコンピテンシーベースへ既に変わっていて,コンテンツについては,ネット等を含めていろいろなところで学び直しやすい時代になってきていて,むしろ,学びに向かう力とか学ぶスキルとか,そういうことが重点化されています。
 先ほど内田委員がおっしゃった文系人材の評価の話で言うと,心理学をやっている人は人の心が分かるみたいな,そういうコンテンツの話とは少し違って,むしろ統計ができるとか類型化が上手とか,そういうスキルをもっと前に出して評価しなければいけないのに,やはり見る人は,みんなコンテンツで見ているのではないかというところがあります。
 これは,実は高等教育,あるいは社会人の教育のことが話題ですけれども,初等中等教育から始まってしまっている残念な連続があるように思っていて,これは日本の教育に対する考え方をもっと社会に,スキル,あるいはコンピテンシーが大事だということを強く訴えていく必要があるのではないかなと感じました。
 すみません,これまた感想で,以上でございます。
【永田副部会長】  いえいえ,最後は非常に大切な,ほぼ結論なのですが,ありがとうございました。
 安孫子委員,どうぞ。
【安孫子委員】  まず,先ほど大学での学びが企業で生かせているのだろうか御心配というお話を聞いて,一つの事例ですが,我が社の事例を御紹介したいと思いました。
 毎年500人ぐらい学生を採用している我が社なのですが,残念ながら学生のほとんどが,自分が何がやりたいか分からないという人たちは,我が社の配転教育というのに大変興味があるということで入社される方が多いのですね。
 我が社の配転教育というのは,経験値を高めるために2年~3年ぐらいのスパンで,いろいろな部署を経験しながら自分のなりたい姿を見つけていこう,それとスキルを高めていこうという教育です。
 ということは,恐らく大学を選ぶ段階で学生さん方は,成し遂げたいことやなりたい姿というのがなかなか描けないで大学を選ぶ現状があるのかなということと,大学で学びながらも自分が社会人になったらどのような貢献をしようかというところが具体的に描けていない事実もあるのかなと思います。
 私たちも今,教育体系を再編しながら今一生懸命やっていることは,どのような職位がどのような仕事をやっているのかを言語化して,それを皆さん丁寧にお伝えして,そこに行くためにはどんなキャリアを積んだら,そこに近づくのだというところを体系化しています。幼い頃の学びにあった「大きくなったら何になる」というなりたい姿からから積み上げていく教育が大事なのではないかと思いました。
 以上です。
【永田副部会長】  ありがとうございます。今日は,直接ではないのですが,文理横断とか文理融合という観点に近い話でした。
 現実,会社に入るときでも,安孫子委員のニトリさんみたいなところでも,何をやっていいか分からないが,ニトリに入ったという方がたくさんいらっしゃる。ましてや18歳のときに,どこどこ学部の何々学科ではないと嫌だというのも不自然な部分があります。
 学部・学科はそのまま残ればいいと思いますが,学生さんは別にどこだっていいではないか。そのような発想に大学はなかなか至りませんが,先生から見ると,ディシプリン型は安心です。学生から別に,今,安孫子委員がおっしゃったように,卒業して会社に入社してもどこの部署に入りたいか分からないといっている子がいる時代に,どうなのでしょうという,少し今日のテーマとは違う分野のところでとても役に立つ話で,面白く聞かせていただきました。
 先ほど出てきた幾つか重要なことがあります。教育振興基本計画ですが,やはり長いスパンの教育というのがあって,その何年間かについて我々は今話し合っているわけです。今,最も主たるものは何でしょうと。
 しかし,やはり松浦委員がおっしゃったように,全体像を見て話さないといけないでしょう。研究も教育も,今,みんながやっているからというようなものは,四,五年たったら,なくなってしまう可能性があるとか,古くさいという形に往々にしてなりかねなくて,やはりどっしりと先を見据えたことをやらないといけません。
 ただ,そんなことを言っていると夢物語であり,夢はいいのだが,夢だけで終わってはいけないので,そのような意味で,この教育振興基本計画部会があります。
 今日は大分いろいろな御意見を頂きまして,私は大変勉強させていただきました。ニトリさんや経団連からもいろいろためになる御発表であったと思います。
 それではよろしいでしょうか。では,一旦,ここまでとさせていただきます。
 
【社会教育・教育と地域の連携について】
 
【清原委員】  「社会教育・教育と地域の連携」のグループの意見交換を始めたいと思います。先ほどは牧野委員,関委員から,それぞれこのテーマにつきまして話題提供をしていただきました。それに従って,あるいは御自身の御意見を是非御発言いただきたいと思います。なお,議事録作成の関係でこのセッションはレコーディングしておりますことを御了承ください。
それでは皆様,挙手ボタンを押していただきましたら私の方から指名をさせていただきます。どなたからでも,いかがでしょうか。武蔵野東学園の清水委員,お願いいたします。
【清水(信)委員】 牧野委員,関委員,本日は発表ありがとうございました。非常に勉強になりました。公民館について初めて詳しく知ることができました。身近にある公共施設でしたけれど,私学にいると公民館さんとの関わりがあまりありませんでした。ただ学校と公民館,何が違うのかなとお話を聞きながら考えました。公民館は利用者を選べないというところ。公立学校もそうですね。しかし私学は建学の精神や教育の目的によって入学者を選択することができる。このような言い方が適切ではないかもしれないけれども,私学はやりやすい環境にあると思うのですけれど,公民館とか公教育の場合は選べないというところでは非常に多様な利用者がいて,その全てを考えて,全てに対応しないといけないというところで,本当に難しいところがあるのだなということがよくわかりますし,また関委員のお話の中で恩送りという話がありましたけれども,こちらは,教育の現場も,公立も私学も全く同じだと思っています。やはり,教育の基本は恩送りであると私は思っておりますのでその点は非常に感銘を受けさせていただきました。お二人の委員,本当にありがとうございました。勉強になりました。
【清原委員】  清水委員,ありがとうございます。大変重要な着眼点を示していただきました。公民館と学校の違いの中に,「来る人を選べない」,「開かれている」という,正に「公である」ということ。もちろん,学校教育においてもそのようなところはあると思いますが日頃の学校教育の御経験から直感的にそのような違いを認識されたということでした。
 どうぞ皆様,積極的に御発言いただければと思います。どなたからでもどうぞ。
 そして,もちろん牧野委員,関委員にはその都度また対応していただき,更に議論を深めていきたいと思います。いかがでしょうか。どなたからでも。どうでしょう。
 それでは,吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  牧野委員,関委員,ありがとうございました。2点ほど,私から提案をさせていただきたいと思います。1点目ですが,文化庁の文化審議会の中に文化経済部会というのがございます。私,そこで座長をして昨年末に報告書をまとめたのですけれども,その報告書は,文化と経済の好循環を実現する文化芸術活動の創造的循環をテーマとしました。その冒頭は,文化と経済の好循環が文化や芸術の根幹たる土壌を豊かにし,教育や福祉,地域からグローバル市場までの創造的な循環システムをつくること,要するに文化とはカルティベーション,耕すことなのだということを非常に強調した報告書になっています。例えば空き家とか,あまり使われていない公共施設,普通は文化財になってしまう建物を地域のいろいろな活動に使っていく仕組み,文化財として保存するだけではなく公共的資源として効果的に使っていく仕組みをつくろうとしております。
 今日,牧野委員がお話しになったことと非常に関係が深いので,同じ文部科学省の中なので,文化庁系の方と社会教育系が一体になって議論していくことをお考えいただければと思います。これは文化庁の事務局には前から言っているのですけれども,是非教育サイドからも御検討いただきたいと思います。それが1点目です。
 それから,2点目なのですけれども,公民館の話,ありがとうございました。実は,私,これはまちづくりの方のですけれども,まちづくりで幾つかやっているプロジェクトの一つで,正式な公民館ではないのですが,「動く公民館」というものをつくろうとしています。その動く公民館というのは,比較的大型のバン,ないしはバスみたいなものですけれども,その乗り物が「動く公民館」と称してあっちこっちに移動するのですね。そうすると,移動をした周りにその場その場で公民館をつくっていくみたいな,公民館的な公共の空間をつくっていくということをやろうとしています。
 なぜそんなことを考えるかというと,大都市では今,自動車の量は減っています。ですから,多くの道路が比較的空(す)いているのですが,道路交通法とかいろいろな理由で道路の文化的な公共目的の利用がなかなかできないのですね。しかし,本当は公共的な空間を広げていくためには,今までの建物の中だけでなくて,道路そのものを公民館的に活用していくとか,そういうオープンな公共空間の創出をしていくことによって,まちづくりと社会教育がつながっていく新しい可能性が開けると思っている次第です。
 こうした可能性も,是非この社会教育の未来として御議論いただければ幸いです。
 以上でございます。
【清原委員】  吉見委員,大変重要な問題提起を頂いて,今後,このグループでの議論の活性化が図られると思います。
 1点目の,文化庁での取組の中で,文化というもので,例えば文化財の活用も含めて御提案がありました。このことについて少しやり取りをさせていただきたいと思います。
カルティベーション,カルチャーということで,実は,必ずしも先の基本計画の経過を踏まえ過ぎる必要はないのですが,一つの検証結果として,コロナ禍もあり文化芸術活動については停滞をしていたという評価がありまして,次期基本計画においては,生涯学習の分野,芸術文化について少し着眼をしていくというような課題も,検証の中から示されているところでもあります。
 牧野委員,いかがでしょうか。吉見委員に,牧野委員の御発言にも触発されてリンケージの御提案を頂きましたが,どうぞ,御意見をおっしゃってください。
【牧野委員】  ありがとうございます。早口でまくし立てた感じになってしまったので,申し訳ありませんでした。
 先ほど吉見委員がおっしゃったことにとても強く共感していまして,例えば,今この社会で,経済界との関係でいろいろな議論があると思うのですけれども,どちらかというと生産性向上の議論に傾いていると感じるところがあって,ただ,この社会,今私たちは成熟社会に入ってしまっていて,人口減とか高齢化ということもあって,むしろ,資産選好と言いますけれども,選好というのは選(よ)り好むということなのですが,人々が資産を持つこと,ため込むことを選好してしまう社会に入っているので,生産性を高めていっても消費が増えないということがあって,市場が縮小してきてしまっているという一面があるのだと思います。
 先ほどニトリの我孫子委員からも御報告がありましたけれども,むしろ違うものをきちっと育てていく,社会が多様になっていくことと人々が結びついていく,つながりの中で新しい価値を生み出して消費を増やしていくという議論につなげていかないと,多分この社会はなかなか次へ行けないのではないかなという印象を持っているのです。
 この意味で,吉見委員がおっしゃった,文化や教育にきっちりと手当てをしていきつつ,それらを公共財として保障していくという議論をしなければいけなくて,そこと社会教育というのはとても親和性があるのではないかなと思うのです。
 その一環で,例えば先ほどの移動公民館,私も後から申し上げようかと思ったのは,沖縄県那覇市の公民館がやっているパーラー公民館という実践があるのですが,出かけていく公民館です。例えば,ビーチパラソルとテーブルを組み合わせたものを公園に持っていって,公民館だと言い張るみたいな実践なのですが,そうすると地域全体が公民館化していって,人々が集う関係が出来上がってくる。そこでいろいろな議論がなされて,様々な発想がでてくることで,そこが公民館と言いながら,実は子供食堂になったり,移動図書館になったり,またPTAの会合場所になったりと,いろいろな形で人々がまちに集うような場所ができてくるのです。まち全体が人びとがつながる場所になっていって,そこから新しい価値や消費が生まれていくことにつながっているのです。今,吉見委員がおっしゃった議論を社会教育の在り方とつなげていくことはとても大事ではないかと思いました。
 もう一つは,単に文化そして多様性という問題だけではなくて,例えば,今,医療の方でも社会的処方という言い方が出てきていて,社会で人間関係をきっちり整えていくことで最期,終末期を迎えるときに「ああ,生きてきてよかった」と思えるような状態にしていくという医療の在り方が問われてきていますから,それも,当然,社会教育や文化の役割だと思うのです。
 こうしたことも含めて,いろいろな行政領域をうまく束ねていきながら,基盤としての社会教育をどうつくっていくかという議論ができるととても発展性のあるものになるのではないかという印象を持ちました。
 ありがとうございます。
【清原委員】  ありがとうございます。
 関委員もいかがでしょうか。公民館という建物の件数自体は減ってきているということですけれども,吉見委員が言われたように,文化財であるとか空き家であるとか,まちづくりと社会教育を連携していく,あるいは動く公民館という御提案もありましたが,どうぞ御発言ください。
【関委員】  ありがとうございます。正に吉見先生と私も同じような考えでございます。
 もともと公民館は現在のような建物がなく,青空公民館で始まった起源を持ちますよね。そういう中で,そこに集う人がみんなで一緒になっていろいろなことを語り合い,考えていく,その中で新しいアイデアが生まれて何かをみんながつながることによってコトを起こしていくのがもともとの公民館だったと思うのですけれども,いつの間にかそこにやってきてもらうということが前提になってしまったような気がします。
 今回,特に新型コロナで,集まることが逆に拒絶されてしまった中で,むしろ届けていくというかアウトリーチ型のものを我々は求めなければいけないのかなということで,リモートであるとかいろいろなものにも,今,関わりを広げていっているような気がいたします。
 あと,公民館の下にコミュニティーの集会施設,あるいはまだまだ利活用可能な空き家のようなものが,今,地域にはいっぱいあると思うのですけれども,そこに地域の人に来てもらうことができれば,より身近なところで,公民館には行きにくい人も,多様な学びを広げる可能性が広がってくる気がするので,是非そういう身近なところに基盤を置く,学びの場ができればいいのかなと思っております。
 以上です。
【清原委員】  ありがとうございます。
 1点だけ私の事例を申し上げます。市長時代に図書館の分館を造ったのを契機に移動図書館をやめてはどうかという話があったのですが,私の判断でやめなかったのですね。どうしてかと言いますと,どんなに狭い市で住宅都市であっても,移動に困難な人がいますし,子育て中の世代などには,児童遊園などに移動図書館が行くことが助けになるという声があったからです。
 したがって,先ほど吉見委員もおっしゃいましたけれども,都市部だからこそ恵まれていない面もあるので,いろいろな柔軟な発想をしていくということは,共感を持って伺いました。
 それでは,今の吉見委員の問題提起に関係しても結構ですし,その他についても,お二人の手が挙がっていますので,順に御発言いただきます。
 岩本委員,お待たせしました。よろしくお願いします。
【岩本委員】  岩本です。ありがとうございます。
 3点ほどありまして,1点目は,私,先ほどの発表とかを聞きながら,今回,社会教育のルームと企業とかそちら側に分かれたわけですけれども,本当は分かれなかった方がいいのではないか,若しくはごったにした方がよかったのではないかくらいな感覚を覚えました。
 というのも,社会教育はこれから,より社会に開かれていく必要がある。特に,先ほどの発表を見ていまして,大学,リカレント教育といったようなところもそうですし,私が驚いたのは企業ですね。企業との連携がもっと必要ではないかというのは感じました。
 例えば,先ほどのニトリさんの発表でも人材育成の中でもいろいろなことをされていましたけれども,コーディネート研修とかは割とコンピテンシーで入っていたり,経団連さんの話でもコーディネート人材の育成とか,割と社会教育とかでも言われているようなことが,大学や企業の中でも,人材育成の中でも言われていたりという中で,ここら辺のテーマを今後はもっと越境していく,若しくは橋渡ししていくみたいなところが,今後,より重要になるのではないかというのが1点目,少し感想に近いですけれども,社会教育と企業や大学との連携,協働というところです。
 2点目が,動く公民館の話は非常に面白いなと思って聞かせてもらっていました。私,もう一つは,デジタル公民館とかオンラインでの公民館的機能というものも今後可能性を探求していくべきテーマではないかと思っています。
 というのは,公民館はどちらかというとローカルコミュニティーというか,地縁,地域に根差したコミュニティーにおける学びの拠点という意味合いがあるかと思います。今後,様々な学びを考えたときに,若しくはコミュニティーもテーマ型コミュニティーみたいな,コミュニティスクールも地縁的コミュニティーもあればテーマ型コミュニティーと言われるようなものもあるように,テーマによる共通性を持ったコミュニティーにおける学びの拠点というのは,動くとかオンラインの場で学び合うということも相性がいいというところだと思いますので,例えばですけれども,社会教育士,2,500人ですか,育成されて,継続的な学びを求めている声はたくさん出ていましたけれども,社会教育士の方たちの学び続ける拠点が一つ,オンラインとかデジタル公民館的なところで,全国の社会教育士の方たちがいろいろな事例とかを持ち寄ったりしながら学び合うみたいな,そんなところからでも始めることを今後検討していくのもいいのではないかというのが2点目です。
 最後,3点目が,牧野先生の話でもありました,これからの社会教育を担い,つくっていく,中核として期待されている社会教育士の中で,アンケートを見ていると活躍の場がないという話が結構多く出ています。今後は,社会教育士の学びのオーガナイザー,専門職としての活躍の場をしっかりとつくっていくというのを政策的にやっていく必要があると思います。
 一つは,学校教育との関係でいけば,地域学校協働活動推進員みたいなところもそうだと思いますし,私が関わっている高校の分野でいくと,新しく普通科高校が学際的な学科だとか,企業とか大学とかも連携したような,STEAM教育をやっていく学科,地域社会に関わる学科というのがつくれるようになったのが今年度からです。
 そういう新しい学科にはコーディネート人材を配置してやっていくというふうに高校教育の中でなっていますので,例えば,そういったところでのコーディネート人材というのは,この社会教育士をしっかり学んだ方がなっていくとか,こういう政策,連携をしっかりと取りながら,社会教育士の方たちの活躍の場などをしっかりと学校教育の分野で,その先には大学だとか企業の中でつくっていくというような形で,今後進めていくべきタイミングではないかと感じています。
 以上です。
【清原委員】  ありがとうございます。
 1点目は,正に社会教育,生涯学習と産業,そして,大学,高校なども含めてのさらなる関係性をもっと明確に示していくということ,2点目は,地域コミュニティだけではなくて,テーマごとのコミュニティというところでの社会教育の在り方,そして社会教育士についても問題提起いただきました。
 現在,もう間もなくまとまる今期の生涯学習分科会のまとめの中には,今,岩本委員がおっしゃったように,社会教育士がもう少し学校教育現場でも活躍できるようなことも含めて提案をしております。ありがとうございます。
 以上の3点を受けながら,またほかの委員の皆様も御発言いただければと思います。
 それでは,続きまして,黒木委員,お願いいたします。
【黒木委員】  御指名ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 今日,また御説明を受けながら,私,学校教育現場にいたものですから,この社会教育という分野が,教育行政を預かっていながら一番実は学びの足りないところでございまして,学校の方ばかり向いていた分,外側に全然目を向けていなかった自分がおります。
 今,このように行政を預かるようになりまして,まさしく公民館の行く末とかいうのは非常に気になっておりました。そのことを牧野委員からは,「帰属」から「つながり」なのですよというお話があり,本当に心に響きました。また,関委員からは,幸せな「幸民館」なのだという幸の一文字を示していただいて,これもすごく心強く思いました。
 今,たくさんの御意見も寄せていただく中から,動く公民館とかパーラー公民館とか,デジタル,そこにまた社会教育士の役割,そういったこともすごく心に響いております。ありがとうございます。
 実は,こういう行政を預かる中で,同じように行く末の気になっているものがほかにありまして,例えば,社会教育団体の行く末のことなのですけれども,青年団は今後どうなっていくのかなとか,PTA,それこそいろいろなところで話題になっていますが,どうなっていくのかなと。ボーイスカウト,ガールスカウト,それぞれ団体,青年団とか,ボーイやガールの方は従事者が減ってきたり高齢化してきたりしている,そういった実情が地域にはございます。PTAは,様々な意見が今まさしく,本当に好ましいと思うのですね,交流されている。
 こういった社会教育団体の行く末につきまして,もしよろしければ,ヒントになるようなこと,御示唆をいただけるような知見がありましたら,お教え願いますと非常に助かります。学びの場にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【清原委員】  ありがとうございます。
 社会教育関係団体について,どなたか,今の黒木委員の問題提起に対応していただける方はいらっしゃいますか。関委員,あるいは牧野委員,いかがですか。では,関委員,どうぞ。
【関委員】  確かに黒木委員がおっしゃったように,今,社会教育関係団体が,平成になってかなり弱くなってきている状況であるのはどこの地域も同じではないかと思います。
 その背景には,社会が変わり,すべてがメリットとかデメリットという感覚でいろいろなことが論じられている気がするのですよね。多分,それではないところに価値観を持っていかないと,なかなかいろいろな団体の活動というのはつながっていかないのではないかなというのを感じます。
 先ほど来,恩送りという言葉を使ってきたのですけれども,恩は返すものではなくて,次の世代に送っていく,つなげていくようなものという感覚が,これまでの社会教育団体,公民館とかの活動をやっている人の中にはまだ残っているような気が私はいたします。小さいときに受けた自分が楽しかったことを,今の子供たちにつなげていこうとか,そういう小さなことの積み重ねが,地域を何とか持続可能な社会につくってきたのではないかなと思います。
 理想的なイメージが強過ぎるかもしれませんが,今こそ恩送り的な考え方を残さなければ,この先,恩を受けた経験のない人間は,誰かに恩をつなげていくことはできないのではないかという不安を感じているところであります。
【清原委員】  ありがとうございます。黒木委員が問題提起していただきました社会教育関係団体については,例えば,ここではこれ以上時間が取れないと思いますが,現在,クラブ活動の地域移行が課題になっておりまして,その中で,受皿として地域の社会教育関係団体やスポーツ団体があるところ,ないところがあり,悩んでいらっしゃるというお声が届いているのも事実ですので,今,お悩みを言っていただいたところは実はかなり大きなテーマに今後なっていくかもしれないと思います。ありがとうございました。
 それでは,徳永委員に続いて,黒沢委員,河野委員の順でお願いします。徳永委員,お先にお願いします。
【徳永委員】  ありがとうございます。お二人の委員の御報告,大変勉強になりました。お話ありがとうございました。特に「帰属」から「つながり」へとか,一体となって協働していくこと,そして,障害者や外国人とともに生きていくということなど,本当にいろいろと示唆的なお話をありがとうございました。
 今の皆さんの意見交換や今日の話題提供を聞いていて,前回とのつながりを少し考えていたのですけれども,誰一人取り残さないというところで多様性と包摂性の視点から,社会教育とか学校と教育の連携を考える,捉え直していくというのはとても重要なことだと思います。
 例えば,先ほどお話のあった動く公民館や移動図書館は,様々な地域に住んでいて,一つの公民館や図書館にアクセスしにくい人が,アクセスしやすくなる可能性を持っています。外国人の例で考えると,多言語対応がされている移動バスですと,更にアクセスしやすくなり,社会的包摂にもつながっていくと思います。そもそも公民館に誰がアクセスできているのかということもとても重要な問いだと思います。経済的に厳しい状況の人や言語や文化の障壁がある外国人などは,これらにアクセスしにくいことを想像すると,多様性や包摂性という視点から改めて問い直すことも重要だと思いました。
 もう1点は,今の点と関係しますが,地域と学校との連携というのが今回のテーマの中でも大きな鍵になっており,前回,マイノリティーを包摂する教育について少し話題提供をさせていただきましたが,地域の中に当事者や様々な専門性を持った人たちが暮らしていて,そういう方たちが,学校と協働して多様な教育ニーズを持つ子供たちの支援に関わっていき,包括的な支援体制をつくっていくことを打ち出していく必要があるのではないかと思います。
 行政が学校あるいは地域に委託したりとか,あるいは学校ができないことを地域が補完したりとか,ボランティア任せにしてしまうとかがよくあると聞きますが,そうではなくて,それぞれが持っている強みを生かしていき,対等な立場で協働していく,そういった関係性をつくっていくことが重要だと思います。連携することが包摂性を高めていく上でとても重要だということを今回改めてきちんと明記することで,連携に戸惑っている学校現場や,負担になるからというところで二の足を踏んでいる学校現場も連携を進めやすくなるのではないでしょうか。基本計画の中で誰一人取り残さないためにも連携を進めていく,そして,それを支える仕組みをつくっていくということをきちんと明記した方がいいと今回のお話を聞きながら,そして,前回との接続というところで考えていました。
 ありがとうございます。以上です。
【清原委員】  徳永委員,ありがとうございます。
 今期の生涯学習分科会の取りまとめでも,「ウェルビーイング」とともに「社会的包摂」を重要な概念と取り入れ,不十分ではありますが,「外国人への取組」についても,学校教育等々との連携についても,触れさせていただくとともに,特に「障害者の生涯学習,社会教育」については,検討会での検討などを踏まえながら,従来以上に提言をしたところです。
 したがって,今おっしゃったように「社会的包摂」ということを考えるならば,学校教育だけではなくて,社会教育,生涯学習,そして,先ほど岩本委員もおっしゃいましたように産業界との連携,協働,コラボレーション,対等性というのが大事ということを,今,徳永委員の御発言からも確認しました。ありがとうございます。
 それでは,黒沢委員,お願いいたします。
【黒沢委員】  ありがとうございます。
 今日,御発表された先生方,大変,私も学びの場になりましたし,自分自身の人生と重ね合わせて,「ああ,そうか。あれがこうなのだな」というので何か点と点が線になったような感覚なのですけれども,学校長として現場を預かる身として,子供をどう育てていくかというところで私は考えてみたのです。そう考えながら,皆さんの話を聞くうちに,近所のおじさんとしてどう生きていくべきかの方が重要かなと思ったりしたのですけれども,やはりうちの学校の中でもそうですが,子供たちにつけさせたい能力として社会性というのがあるのですね。
 社会性とは何か。言い換えると人と関われる力だと僕は思っているのです。その人と関わる力以前に,人の相談に乗れる力とか,人に相談できる力とか,そういうのも含めて,人と関わるというところが子供たちにとって非常に将来に向けて重要だなと感じています。
 そういう中で,特に異文化と交流したり異年齢と交流したり,それから,大人になると異業種となるわけですけれども,そういう異なる自分の生活圏,違った人たちと交流することでまた伸びていくと思うのですが,もともとのそういうところに関われる力というのは,子供の時期にどれだけそういう活動に身を置いていたか,自分の意思とは別にそういう活動ができていたかというところが大切だなと思っています。
 僕自身振り返ると,地元のお祭りとかはいろいろな人が関わりますよね。何か知らないけれど,参加して楽しかったと。楽しいというインセンティブが一つあれば,いろいろな活動に子供たちというのは参加していくわけですね。これは大人も一緒かなと思うのですけれども。そういう場が,今,失われつつありますし,PTAもそうですし子供会もそうですけれども,大人にとって何か楽しいというインセンティブが生まれにくくなっているのかなと思っているので,やはり学校長としては,子供たちにできるだけそういう機会を与えて,将来大人になったときに,「ああ,あれ,よかったな」と思えるような,そのようなことをロングレンジでやっていくしかないかなと思ったところです。
 感想じみていて申し訳ないのですけれども,以上です。
【清原委員】  いいえ,ありがとうございます。黒沢委員がいつもおっしゃっている,誰もが相談できるわけではないと。相談するということができる,そういう力をつけるのもとても大事なことだということです。
 それでは,河野委員,お願いいたします。
【河野委員】  本日はありがとうございました。私にとっては本当に新しいことばかりで,学びをさせていただきました。ありがとうございました。
 その中で,皆様のお話の中で三つほどインスピレーションが湧いたことについて共有させていただきます。一つ目は,場としての公民館,あるいはそういう集まる場,それから,もう一つが意識の問題,それから三つ目が仕組みについてです。
 一つ目の場というのは,公民館が減ってきているということを伺い,「確かにそういえば」と思いました。
 私ども全国に70,ボランティアの支部がありまして,そこに1,600人のボランティアが活動しているのですけれども,活動の場というのは過去には公民館であったことが非常に多かったのです。ですので,恐らくボーイスカウトとかガールスカウト,そんなようなボランティア団体,ボランティアをする場として公民館というのが捉えられていた。それが,確かに少なくなってきているということ,これを何とかして増やして意味づけ,価値を見いだしていく必要があると思いました。これはグローバル教育の場としても一つ考えられるかと思います。
 それから,意識の問題ですけれども,これは先ほど消費活動の問題とリンクしてお話しくださった先生がいらっしゃいましたけれども,消費活動が減っていることへの何かしらの寄与ができるとすると,日本人はどうしてもため込む文化がありまして,なかなか使うことをしないということがありますので,こういう場所を公に資す活動する場としてそこに投資する,例えば寄附をしていく,お金を使っていく,消費していく場としての公民館の位置づけも考えてはどうかと思いました。
 最後は,仕組みの問題ですけれども,OECDのEducation 2030を見て,ラーニング・コンパスのことを学んだりしますと,これからますます協働エージェンシーを高めていく活動が重要なのではないかと思います。
 学校教育を学校だけに任さない,地域と連携することが必要で,学校の先生の役割が本当は教育を施すというよりもコーディネーターではないかと思っていたところなのですけれども,先ほど社会教育士という制度があったということを改めてインプットしていただきましたので,この社会教育士,そして学校との連携を是非仕組みの中に取り入れていけたらいいかと思いました。
 ありがとうございます。
【清原委員】  ありがとうございます。
 あと5分となりました。あと5分ではございますが,まず清水委員に発言していただいて,牧野委員,関委員と,あと5分を充実したいと思います。
 では,清水委員,どうぞ。
【清水委員】  ありがとうございます。
 今,お話を聞いていて,障害のある子供たちの生涯学習,学びについて,一つ事例をお話しさせていただきたいのです。
 それは本学園が行っていることなのですけれども,30年前に卒業生の親御さん多くにアンケートを採りました。卒業後,何が困っているか。それは,一番大きいのは親亡き後の問題。もう一つは,学ぶ場がないと。旅行にも参加できないし,カルチャースクールにもなかなか障害があって参加しにくいという問題がありました。
 そこで,本学園では,平成5年から卒業生講座というのを年間20回ほど土曜日に開催をしています。ですから,学校と地域の連携,障害のある子供たちの学びの継続として,まず第1段階に特別支援学校の高等部さんでそのような講座をつくって,障害理解教育が進んできたら地域に移していくとか,そのような段階を踏んでいくと,障害のある子供たちの学びの場が増えていくのではないかと思って,本学園では実践しているので,御参考になればとお話をさせていただきました。よろしくお願いします。
【清原委員】  大変貴重な事例をありがとうございます。
 それでは,牧野委員,お願いします。
【牧野委員】  どうもありがとうございました。
 最後ですけれども,今,皆さんが議論されたことで,例えば,社会全体の包摂性を高めていくとか多様性を豊かにしていくということに関わると思うのですけれども,少し画面共有をさせていただきますが,こういう事例があるのですね。中学生の子が巨大マンションの自治会の役員になったという話です。
 従来の社会教育関係団体というのは,ほとんどが地縁関係だと年齢で分けるような分け方でセグメントされているのです。過去の産業社会というか工業社会に対応した組織のつくり方になっていたと思うのですけれども,今やそうではなくなっているという面があって,その意味では,多様な年代が一緒になって関わるとか,子供たちの意見もちゃんと尊重しながら大人がちゃんと対話的な関係に入るとか,そういうこともベースとなる中で様々な多様なものを地域社会が持つようになってくる。その意味では,単に地縁的な関係だけではなくて,ある種,関心共同体のようなものが幾重にも重なっていくということであるとか,先ほど吉見委員がおっしゃった移動公民館も,むしろハブみたいなものになっていくという形で,しかもそれが社会の中で移動しながら,ある種,網の目が移動して人々を結び続けていくような形の,社会の構成の在り方といったことが今後は考えられるのではないかなと思うのです。
 そして,そうしたことが,例えば経済とか人材育成とか,そんなことにも関わってくるような在り方という形で,社会基盤を構想することができるような時代に入ったのではないか。そんなこともありますので,是非ともそうしたことも含めて,社会教育を,もう少し皆さんからいろいろ議論を頂いて,多様な方々が豊かに生きられる社会の基盤として考えたいと思いました。
 どうもありがとうございます。
【清原委員】  ありがとうございます。
 最後に関委員,一言どうぞ。
【関委員】  私は,先ほど岩本さんに言っていただいたように,全国の仲間がつながっていくような仕組み,それはリモートの世界でもいいと思うのですけれども,いつでも不安になったときには悩み事の相談ができて,学びもみんなが共有できるような,そんな仕組みを是非つくってもらえたらいいなと思っております。
 以上です。
【清原委員】  諮問文には,「リアルとデジタルの最適な組合せを」というようなこともございましたが,今日,吉見委員の御発言から皆様がつながりまして,いずれも,「多様性」とか一人一人が本当のそれぞれの「ウェルビーイング」を感じられるような,望ましいつながりをいかに社会教育としてつくっていくかということです。また,つくっていけるだろうし,つくっていくためにも,様々な機関が対等に協働していくということの重要性が確認されたと思います。
 皆様,本当に貴重な御発言ありがとうございました。ちょうど時間となりましたので,また先ほどの会議室のところに戻っていただきます。 皆様,ありがとうございました。では,後ほどまた。
 
【全体再集合】
 
【渡邉部会長】  社会教育・教育と地域の連携グループの皆さん,戻られましたでしょうか。
 それでは,再開させていただきます。
 冒頭で御紹介しましたように,これまでの議論の中で,当事者である子供の声を聞く機会を設けてはどうかというお話もありましたので,今日は委員に御紹介いただきました高校生の生徒さんと大学生の学生さん,お二人に話題提供をお願いしようということになりました。
 最初の高校生の方は,元紺谷委員に御紹介いただきました北海道の清里高校2年生の矢口新大さんでございます。
 それでは,矢口新大さん,御発表をお願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。
【矢口】  これから私の発表を始めます。私は,北海道清里高等学校の2学年,矢口新大といいます。
 私が清里高校への進学を決めた理由は,地元から汽車で往復3時間かかる町外の学校に通うより,家から徒歩5分ほどの地元の高校で,自分のペースで勉強したいと思ったからです。
 私が通っている北海道清里高等学校とは,北海道のオホーツク管内にある人口3,800人ほどの自然豊かな町,清里町にある唯一の道立高校です。全校生徒数は89人の小規模校で,各学年1クラスあります。地図にあるとおり清里町から札幌までだと車で6時間ほどかかる場所にあります。
 清里高校は,主に国際理解,地域連携,遠隔授業「T-base」を中心とした教育を行っています。
 国際理解は,清里町からALTの先生が2名派遣されて,英語教育に力を入れています。姉妹校であるモトエカハイスクール,ニュージーランドにある高校との交流も盛んです。
 地域連携は,地域施設での学校祭や授業で学校行事を企画するといったことをやっています。
 遠隔授業「T-base」とは,2021年度から開始した札幌の配信センターの先生と双方向で対話をして授業するというものです。課題提出は,主にタブレットPCを利用しています。
 次に,遠隔授業「T-base」についてです。私は2年生で,今受けている授業は数学2と世界史Bと物理基礎となっています。
 数学2の授業についてです。テストは単元テストとなっていて,教科書の例題や練習問題だけでなく,章末問題や模擬試験で出題された問題の解説を行っています。
 世界史Bの授業についてです。世界史Bは,テストは教科書,資料集等持込みで,記述式のテストとなっています。用語をただ覚えるのではなく,今,日本や世界で起きていることを歴史の勉強を通して深く理解できる楽しい授業となっています。
 物理基礎は,テストは単元テストで,物理法則から日常生活で見られる物理現象を自ら考察し,考える授業となっています。
 遠隔授業を受けての感想です。自分が履修したい教科を履修できるようになったということです。今までは教員数が少なく,大学受験に必要な科目の履修は困難でした。
 2つ目は,大学受験を意識した授業ができるようになったということです。大学受験を希望する人,そうでない人で分けることで,それぞれのニーズに合った授業ができるようになってきていると思います。
 次に,遠隔授業に対しての要望です。まず1つ目は,授業内での演習量を増やし,より本質に迫った授業を受けたいです。2つ目は,自分に合った課題ができ,より自由度が高いシステムにしてほしいです。3つ目は,模擬試験前後の支援をより充実させてほしいです。
 3つ目に,自分の願いです。まず1つ目は,困っている人や弱い立場の人を見捨てない社会づくりをするということです。社会的,経済的格差がこれ以上大きくならないようにすることで,よりよい社会ができていくと思います。
 2つ目は,個性を尊重し,相互理解を深められる学校になってほしいです。社会に出たときにコミュニケーションにおいて困らないような教育活動をしてほしいです。
 3つ目は,教育の自由化です。それぞれのニーズに合わせた授業,互いに教え合い解決していくという力を身に付けていけるようにしてほしいです。
 次に,自分の将来の夢です。私は,今,宇宙物理学者になるという夢があります。その理由は,中学3年生のときに学校で勉強することが将来,直接役に立つような職業に就きたいと思ったからです。
 2つ目は,宇宙の謎を,物理法則を用いて数式で表すというところに魅力を感じました。下に写真が載っているのは,私の好きな偉人であるアルベルト・アインシュタインです。
 最後に,進学校に行かずに自分の夢に向かって進めるか不安はありましたが,地元だからできないのではなく,地元だからこそできるというところを強く思って頑張っていこうと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。ふるさとにいても,ふるさとから夢を目指すのだという思いが伝わり,遠隔授業を使って,そういった夢をかなえることに御努力されている姿が分かりました。要望の内容についても,今日文科省の方々もいらっしゃるので,しっかり受け止めたと思います。ありがとうございました。
【矢口】  ありがとうございました。
【渡邉部会長】  続きまして,今村委員に御紹介いただいております大正大学1年生の鈴木美緒さんにお願いしたいと思います。では,よろしくお願いいたします。
【鈴木】  大正大学心理社会学部臨床心理学科1年の鈴木美緒です。福島県白河市出身で,「手話カフェ~しゅわしゅわ~」というプロジェクトの代表をしています。昨年度,マイプロジェクトアワード全国summitで文部科学大臣賞を頂きました。
 手話カフェは,イベント形式で,カフェを貸し切って行います。「手話カフェ~しゅわしゅわ~」の目的は,聾者・手話を使いたい聴者への居場所づくりと障害を知るきっかけの場所をつくることです。そして,来ていただいた全ての人に非日常的な体験を通して,自分自身の「当たり前を問い直して」もらうことを大切にしています。
 昨年の6月と8月に行った福島での手話カフェの様子です。地域の手話サークルのメンバーや中高生などが集まり,一緒に手話や指文字を勉強し,ゲームをして楽しみました。壁には障害や手話についての掲示,また,特別ドリンクの提供などを行いました。
 今年の7月には東京都巣鴨でイベントを開催しました。手話カフェのチラシはCanvaというアプリや手書きで全て作成しています。70名以上の来店があり,約15名の聾者の方に来ていただきました。
 左下にあるように,大学生のグループと近くに住む聾者のグループをつなぎ,大きな輪にするような橋渡しを行い,たくさんの交流が生まれました。
 私が手話に興味を持ち始めたのは中学生のときでした。学校の先生と話すのが得意ではなく,言葉以外のコミュニケーションに興味を持ち,本やTikTokというアプリを使用し,独学で手話を学び始めました。
 精神疾患を患い,高校で全日制から通信制に転校した際,学校に行かなくていいと安心した一方で,社会での居場所がどこにあるのだろうかと悩むようになりました。悩んだ末,誰かのために何かをしたいと思うようになりました。
 東京には聴覚障害者の人が働き,注文を手話や指指しで行うスターバックスがあると知り,福島にもそういう場所をつくりたいと思いプロジェクトが始まりました。
 大学には,高大接続入試の探求課題活動型で入学しました。手話についての活動報告書を作成し,志望理由書,面接,筆記試験を受けました。
 大正大学を選んだ理由は,課外活動を続けたかったため,地域との結びつきのある大学だったからです。また,実習先に聴覚障害者の方がいる施設があると聞いたからです。学びたいことを自由に学べている今がとても楽しいです。
 私の場合,大学の入試方式よりも,活動拠点であったエマロンを通じて応援してくれる大学職員の方とつながれたことが大きかったです。また,入学後すぐに学長や副学長の前でプレゼンをし,活動継続を公言できたことがよかったです。
 私が手話カフェをやっていてよかったと思うことは,学校と家以外の居場所ができたことです。やりたいことを応援してくれる大人や,手話に興味を持ち,不器用だけれど手話を覚えて使ってくれる大人が地域にいたことが衝撃的でした。学校に認められなかった私でも,社会に認められたのだという気持ちが大きかったです。
 私は,自分の中の当たり前を更新していくことが大切で,当たり前は人それぞれであるということを多くの人に広めていきたいと思います。特に聴覚障害や発達障害,精神疾患などの目に見えない障害への理解や配慮は,まだまだ足りていないと思います。
 私は,誰にとっても過ごしやすいまちをつくりたいです。そして,学生にとって学校はとても大きな位置づけだと思います。学校という場で受け入れられないことは,学生にとっては社会からはみ出たように感じてしまいます。学生の言葉をそっと聞き,一度受け入れてくれるような存在が学校にあってほしいと思います。
 ここに並べた写真は,手話カフェで出会った仲間です。全て世界共通手話であるI love you,愛しているの手話を使用しています。よりよい社会になってほしいです。御清聴ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。「手話カフェ~しゅわしゅわ~」の具体的な取組や仲間,地域とのつながりが非常によく分かるお話だったと思います。手話というコミュニケーションの仲立で,個人個人それぞれを認め合うような,そういう姿が写真からもよくうかがわれました。本当にありがとうございました。
 それでは,せっかくの機会でございますので,あまり時間はございませんけれども,お二人の発表を受けまして委員の先生方からもし御質問等あれば伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 清原副会長,お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。杏林大学及びルーテル学院大学客員教授の清原慶子です。
 矢口さん,鈴木さん,ありがとうございます。お一人,1問ずつ質問させていただきます。
 この6月15日に国会で「こども基本法」が可決され,来年4月1日から交付されるのですが,そのこども基本法の理念の一つに,全ての子供について,「年齢及び発達の程度に応じて,自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会,多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」ってあります。今日のお二人が意見を表明されたのは,正に,この法律の公布前に先取りされた取組だと思います。
 そこで,谷口さんにまず質問します。私は「国立天文台のあるまち三鷹市」に住んでいます。宇宙物理学者に是非なってほしいのですが,今日表明していただいた遠隔授業に関する提案などは,在籍している学校の先生やお友達たちと話す機会がありましたか,そして反応はどうだったでしょうか。
 鈴木さんに伺います。すばらしい大学選びで活動されていることはすばらしいと思います。このように自分に合った大学を選ぶときに,どのような仕組みがあると鈴木さんのように居心地がよく活動が継続できるでしょうか,ヒントをいただければと思います。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  それでは,今の御質問について,初めに,矢口さんいかがですか。
【矢口】  遠隔授業に対しての意見は,基本的には私個人としての感想,要望であるのですが,私個人的に友達に遠隔授業がどうなっていけばいいかという話を一緒にしました。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 それでは,鈴木さんいかがでしょうか。
【鈴木】  自分に合った大学を選ぶにはという質問だったと思うのですけれど,私にとっては大学が決まった後に応援してくださる大学職員さんと出会ったということなので,本当に偶然だったというか,縁だったという形になるのですけれど,私が思うには,やはり自分のやりたいことを明確にして,それと合致するような大学を選ぶことが必要なのではないかなと考えています。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
【清原副部会長】  ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは,御紹介いただいた元紺谷委員,今村委員から何か補足的なお話があれば伺いたいと思います。元紺谷委員,いかがでしょうか。
【元紺谷委員】  ありがとうございます。北海道は広域分散型の地域ですので,地方にそういった子が地元にいながら学べる教育環境をつくることは大変重要なことと思っています。
 地方で学んだ子供たちは,地元を愛し,将来,何らかの形で地元に関わってくれるのではないかと思っていますので,これが地方創生にもつながる,そして人口減少問題を抱える地域の活性化にもつながるのではないかと思っています。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 今村委員は今少し席を外しているようですので,ほかに御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは,お二人には,大変すばらしい発表を頂き,本当にありがとうございました。これからのお二人の活躍を祈念しております。
 では,拍手をお願いいたします。(拍手)どうもありがとうございます。
 それでは,今日は残る時間で総論の全般について,皆さんと議論を開始したいと思います。
 事務局からは資料9について,御説明をお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  それでは,資料を共有させていただきます。こちら,資料の9として御用意しているものでございます。
 これまでの審議における総論関係のキーワードのマッピングでございまして,本日の議論はまだ入っておりませんので,全て網羅的ということではございませんし,今後の議論によって項目間のラインですとか,そういったものも追加されていくようなものだと考えておりますけれども,今の時点で,これまでの議論は可視化をするという観点で,網羅的ではございませんが,作成させていただいたものでございます。
 これまでの議論の中,例えば堀田先生からの発表で教育DXというのがございましたので,左上のところにプロットさせていただきました。このDXの関係ですと,例えばデジタル化の3段階ですとかGIGAスクール,情報活用能力というようなこと,また,先ほどの遠隔教育にもつながってくるのだと思いますけれども,そのことについては個別最適な学び等から,近時の学習指導要領改訂に関わる非常に重要なキーワード,こういったところに結びついてくることがあると思いますし,働き方改革という文脈では,それが教員確保というところにつながって,黒木委員から御発表いただいた計画の実効性,こういったところに関わってくるのかなと思っております。
 実効性という観点では,様々な条件整備も必要ですし,ステークホルダーとの対話が必要で,子供の声を聴くということ,18歳成年,そういったことも議論がこれまであったかと思います。
 また,真ん中の方へ参りますと,超スマート社会ということ,また,日本型ウェルビーイングと,この前議論がございましたけれども,この辺り,人間中心社会という概念で結ばれるのではないかということ。
 また,超スマート社会の関係でいきますと,御議論がございました文理横断・融合ですとか,STEAM教育,この辺りと親和性が高いと思いますし,探求からPBLへの流れ,高校教育改革,学修者本位,学校段階のつなぎ目,また,単線から複線へ,脱・年齢主義,こういったところも関わってこようかと思います。
 また,生産性向上ということ,本日の安孫子委員の発表でもございましたけれども,ここはリカレント教育ですとかグローバル人材,人口減少と関わってくると思いますし,さらにはウェルビーイングの方からは自己肯定感,開放的協調性という言葉がありましたし,持続可能な幸せといったことがございました。また,主観指標の重視,こういったことも議論があったかと思います。
 この辺りからインクルーシブ教育,ここに直接つながるのではないかというような御議論がございまして,そうしますと右側上のクラスター,共生社会,誰一人取り残さないというところの議論とつながってくるのかなと思っております。この中には様々な子供たちが取り残されず,包摂的な教育が求められるということで,ダイバーシティ&インクルージョンという考え方にもつながってこようかと思います。
 それは留学・異文化交流ともつながってくるというようなことで,評価の観点では質的指標,ポリシー・ベースド・エビデンスというような御議論もございましたし,その背景としてVUCA,地球環境問題,国際情勢等々のこと。また,一番上のところには教育基本法の理念でございます人格の完成,国家・社会の形成者,不易と流行(りゅうこう),学制150年のタイミングである希望の持てる計画にすべき,未来の学校の姿というようなキーワードを頂いております。
 これまでのテーマ間の関わりを可視化するという観点でも,こういった資料,議論の材料として御用意させていただきました。
 説明は以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 全体感について,これから本格的な議論がスタートすることになりますので,いろいろな場や審議で使われているキーワードをこういう形で整理していただきました。これからの基本計画策定に向けて,今日は自由に発言を伺っていきたいと思います。
 それでは,御自由にどうぞ。では,堀田委員からお願いします。
【堀田委員】  堀田でございます。私は,この会議の前半で教育DXについてお話をしました。そこでお話ししたように,DXというのは段階を踏んでいくもので,今まで紙でやってきたことをだんだんデジタルにしていき,それでだんだん効率がよくなり,それが当たり前になってきて,そもそもデジタルが当たり前なのだったら,今までのやり方,制度,組織みたいなことを変えてもいいのではないかといって改革が起こるという話でございます。
 マップで言えば一番左の方に書いてありますが,例えば一番右の方の誰一人取り残さないで言えば,児童生徒,学生,社会人,みんなの多様性が出ているこの時代に,学校教育には限界もあろうかと思いますし,そういう中でデジタルによって,お子さんたちのいろいろな事情に合わせて一定の教育を提供することができる,そういうことを前提にした教育制度をどうするかみたいな考え方で言えば,これは教育DXが援用できる部分かと思いますし,それによっていろいろな方々のウェルビーイングが実現していき,そういうみんなの自己充実みたいなことがSociety5.0の社会において非常に大事になるのかなと思います。
 DXというのは物の考え方で,デジタルでSTEAM教育に関係するとか,個別最適な学びに関係するとか,情報活用能力に関係するとか,そういうのにはもちろん関係するのですけれど,もっと社会全体の基盤がデジタルによって新しい枠組みに捉え直されていくという形でも使える話かなと思いますので,そういう考え方でいければいいなと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。主に,この絵の左側の,変化要因の視点でお話しいただいたと思います。
 今日は,こうした形で,まずは自由にお話しいただきたいと思います。次に岩本委員,お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。総論でのキーワードのマッピングを見たとき,少しこの要素が弱いのではないかというところに関して発言させていただけたらと思います。
 これからの教育を考えたときに,多様性や包摂性,とても重要になってくるところだと思いますけれども,その際に私は,やはり越境と架橋。越境というのは分野だとか文化だとか,場合には業種みたいな境を越えていくという意味での越境。架橋というのはいわゆる橋渡し,つながりづくりとか横断させるというようなところだと思うのです。
 この越境して架橋していく,橋渡しをしていくというところが今後重要になってくる中で,橋渡しとかつながりづくりとかコーディネートというところは出ていると思うのですけれども,特に越境していくという部分なんかが少し弱いかなと見えましたので,今,社会の様々な問題はもう断絶だとか分断というところから起きてきている。今後,グローバル化だとかデジタル化みたいな中で,やはりクロスボーダーというところが非常に重要になってくる。
 イノベーションということを考えても,クロスボーダー,越境していくというのは非常に重要な概念で,今,企業だとか大人の学び,リーダーシップの育成とか開発で,越境学習とか,そういったところで言われて,様々な形で導入が進んでいますけれども,日本の場合,それから学校教育の場合,どうしても連続性とか計画性とか系統的な学習というものをものすごく大事にして,それ自体は基盤としてものすごく大事だと思うのですが,そこから非連続だとか非計画的な中での学びだとか,いわゆる越境学習,越境経験みたいなものがあまり推進されてこなかった。
 どうしても今いる枠から出ない中で交流しましょうとか,つながりましょうというところで,今いる環境だとか枠組みから一歩踏み出していく,越えていく,異質性だとか異文化の中に飛び込んでいく,そういったところが海外留学とか地域留学を含めてもそうですけれども,こういったキーワードの中でも弱いところで,今後,そこはもう少し議論をしていったり,今後のキーワードの中でも考えていく必要があるのではないかと,少しこれを見て感じたところです。
 以上です。
【渡邉部会長】  共生社会,誰一人取り残さない,ダイバーシティ&インクルージョンの中の個性には,特異な才能という分野もあります。今,お話があったように,突出した部分をどうするかという議論は,ほかの審議会等でも議論を進めているところですので,大変重要な御指摘ではないかと思います。ありがとうございます。
 それでは,次に牧野委員,お願いいたします。
【牧野委員】  どうもありがとうございます。お願いいたします。
 私も今,実は岩本委員と同じような感覚を持ちまして,これ,私たちが議論した総論に関するところで,とても大事なマッピングだと思うのですけれども,どうしても今の社会が求めているものとしてどうするかという議論になりがちではないかなと思ったのです。
 その意味で,今の新しい社会を迎えて,これからどうするか。特に,ここでも議論になってきたVUCAの時代に入っていくということの中で,一体,枠組みとか,又は目的みたいなものを設定するような形で,そこから求められる教育って何なのかという議論では,うまくいかなくなっているのではないかという印象を持ちます。
 今日の私の発表も同じような観点に立っているのですけれども,私たちとして譲ってはいけない価値のようなものは絶対あると思うのです。例えば命ですとか,又は人権や尊厳,例えば民主主義の社会であったり,自由であったり,そのようなことがベースにあるわけですけれども,そうしたことをベースに置きながら,開放的な試行錯誤の体系としてぐるぐる回っていくようなといいますか,いろいろな形で結びつきができてきて,それが新しい価値をどんどん生み続けていく。
 ただ,それを自分だけのものにしていくわけではなくて,もっとそれを社会に広げていく形で,社会全体の底上げといいますか,向上につなげていく。そういうことの中から新しい産業の芽が出てきたり,また,新しい社会基盤ができていったりというような構想の中で,教育又は文化ですとか,そうしたものが社会を引っ張っていくのだというような観点を,もう少し強く打ち出せないかという印象があります。
 その意味では,教育の在り方というのは人材育成という形に傾きがちなところがあると思うのですけれども,むしろ,子供たちや今いる大人たちが教育に関わったり,学んだりしていくということにおいて,どういう形で自らの人生を一緒につくっていくのか。その中にどういう形で新しい経済が生まれていくのかというような議論を展開できればと考えています。そのような形で枠組みというか,総論をまとめていかれると,より発展的な議論になるのではないかという印象を持ちました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。今日のお話からも分かりますように,学びには,社会的な価値創造につながる視点もあるかと思います。Society5.0の要素にも人間中心の創造力や想像力といった視点が入っていましたが,そうした分野をもう少し前面に出すという話にもなるかと思いました。ありがとうございます。
 大森委員,どうぞお願いします。
【大森委員】  ありがとうございます。これ,事前の説明のところでも文科省のマークが羅針盤だというようなお話を頂いたのですけれども,そういう観点から方向を示していくという感じだと思うのですが,私は,一個一個の項目というよりも,この配置が結構大事だと思っていて,真ん中に何が来るか,見た人にとって,まず真ん中から見ると思うのですよね。そこから放射線状にいろいろな関係ができていく。
 そうしたときに,超スマート社会がど真ん中にあるというのが振興計画のまとめでいいのかなと。例えば右上にある誰一人取り残さないみたいなものが真ん中にあって,誰一人取り残さない人間中心の共助型未来ウェルビーイング社会になっていくのだよねというのがまず真ん中にあって,そのためには個別最適な学びが絶対必要だし,そうしたらDXも必要だよねとか。
 真ん中に置くもの,今,私はそれがいいと思っていますけれど,そうではない意見があってもいいのだけれど,真ん中に置くものが結構大事かなと思って,これなのかどうなのかなというのが,もう少し議論があってもいいような気がしましたということです。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。確かに,これからまとめていくときに,羅針盤にどういう主軸や視点を置くのか,いろな考え方がありますので,今の御意見をベースにしながら,また伺っていきたいと思います。
 吉見委員,お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。このキーワードのマッピングを見ると,第一印象は,目がちらちらするのですね。あまりにも要素が多すぎて,どこから見たらいいか分からない。今,大森委員は真ん中からと。全て入っているので,全部足し算で足していくと,このようになるのだと思うのですが,これを見ただけではまだ天の川で,星座の形になっている気がしない。思うにこれ,欠けているものがあると思うのです。
 その欠けているものの一つは時間軸だと私は思います。つまり,平面的に二次元で書かれていますから,物すごく横に広がって見えるのですけれども,これを幾つかの時間軸で構造化していく必要があるのだと思います。
 もちろん,1つは目標との距離による時間軸があります。2030年までに実現するもの,2050年までに実現するもの,2070年までに実現するものとか,そのように少し時間軸で組み立て,三次元に組み立て直していく必要があると思います。
 同時に,学修者の時間軸があると思います。学修者のどの時点で,どういうことを考えていくのかということ,これは必ずしも年齢ということではない時間軸があり得ると思います。もう一つは学びの時間軸,それを実現するためにどのくらいの時間が必要になってくるのかというふうな考え方もあるかと思います。
 全体を通してポイントは,時間軸を設定すること,しかしそれを一本にしないということだと思います。複数の,つまり,複線的な時間軸をここの中でどう作っていくかということを,この空間展開の先で考えていただければなと思います。
 最後に,時間軸は必ずしも未来に向けて,目標に向かって最も合理的な線を進むだけのものではありません。本当に一番大切なのは,地域だとか,記憶だとか,ストックされた資産だとか,つまり時間軸といっても,未来に向かう軸には乗らないものがあって,それが今,実は一番重要なのです。私たち自身の社会が既に保持している価値ですね。それをどのように生かしたらいいかが,これからの課題です。以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。時間軸について大変重要な視点だと思います。
 それでは,村田委員,お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございます。今,吉見委員の言われたことと全く同じなのですけれども,時間軸も大事だと私は思うのですが,同時にキーワードのマッピングを見たときに,目標なのか,手段なのか,外部環境なのか,それぞれカテゴリーが異なるものが同じレベルで,下に脚注がありますように,議論に出てきたものを関連付けてとあるのですね。当然,関連付けておられるわけですから,こういう目標であれば,こういう方法でって議論がなされているという形になると思うのですよね。
 例えば,VUCAだとか地球の温暖化というのは外部環境だと思いますから,正に教育振興基本計画部会として,あるいは文部科学省として何を一番真ん中の目標とするのか。例えば文理横断だとかSTEAMとかありますが,文理横断が重要というのは,これからの学びは,単に専門知だけではなくて総合知が必要で,総合知を学ぶときにどういう形でやっていくのか。それは正に手段としてはProject Based Learningであったりというような,一体どういう学びをしていくことが,それが正に下の方にございます。単線ではなくて複線で,年齢主義ではなくてというようなことにみんな結びついていくと思うのですよね。その基本的な設計図といいましょうか,基本的なポリシーといいましょうか,考え方,それをちゃんと出した上で,それを中心に組み立てていくことが必要なのではないかと思うのです。それが,正にこの基本計画で一番求められていることではないかと思います。
 そのことは,今回,ここにはパッと見た限り私には見えないのです。イノベーション,あるいはイノベーティブな人材をということは,いろいろな答申だとか政府の文書に出ているのですけれども,正にそこが足らなくなってきているのではないかと思いますので,是非そこのところをもう一度組立てをお願いできればなと思います。
 私から以上です。
【渡邉部会長】  環境要因とか,いろいろな要素を考慮して組み立てるということですね。ありがとうございます。
 川口委員,お願いいたします。
【川口委員】  すみません,ありがとうございます。
 真ん中の辺りに生産性向上というのが来ていて,私は経済学者なので,やはり生産性の向上というのは大切な目標なのだよなと思います。それは,今の日本の,経済問題の中で最も深刻だと思われている問題の一つが,賃金が上がらないということで,その賃金が上がらない理由として生産性があまり上がっていないということがある中で,問題を解決していくためには生産性向上が重要な問題であるというのは,そうなのかなと思っています。
 その上に来ている少子化の話,こういう中で社会保障の制度を維持していくということを考える上でも,現役世代の方々の生産性を高めていくというのは,もう避けられない課題なのかなと。
 ただ,これが真ん中にくると,いかにも成長主義的な,従来型のものだというようなイメージを与えてしまうかもしれないのですけれども,生産性を向上させることによって我々は例えば土曜日に休めるようになったり,余暇の時間を増やすことができるようになったということがあって,そういったことはウェルビーイングにも直結しているように思うのですよね。
 あと,生産性を上げて賃金を上げるということが実を言うと格差の問題とも非常に強く結びついていて,いわゆる学歴が低い人という言い方が適切かどうか分からないですけれども,例えば最終学歴が中卒の方々の仕事がなくなってきているという実態がある中で,そういう人たちの生産性を上げていく。
 そういう教育を行うことによって格差問題を解消していくのだというような,生産性を向上させることによって何を実現しようとしているのかというイメージがもう少しつかめるような形になっていると,あまり誤解を与えないのかなと思いました。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。どう分かりやすく誤解のないような形で表現していくかということだと思いました。
 それでは,小林委員,お願いいたします。
【小林委員】  実は私が申し上げたかったことは,先ほど村田委員がおっしゃったこととほとんど同じなのですけれども,このマッピングを見たときに,いろいろな要素が同じ平面に並んでしまっていると思うのです。
 このキーワードを整理し直して,社会的な課題と今回の基本計画がどういう社会を念頭に置き,どういう社会を目指していくのかということ。そこの中での教育の役割,教育がどういう問題を解決していくのかというところを整理し,もろもろキーワードありますけれども,例えばキャリア教育ですとか,コミュニティ・スクールですとか,そういうのは一つのツールであると思いますので,そこの段階を分けた複層的なマッピングにしていくと,もう少し整理されてくるのではないかと思います。
 いずれにしても,今回の基本計画が何を目指すのかというポリシーのところ,何を目指すのかというミッションのところをはっきりさせて,それを核に,これらのキーワードをどのように組み込ませていくのかというプロセスを踏んでいく必要があるのではないかと思います。
【渡邉部会長】  大変貴重な御意見を頂きました。
 それでは,時間も迫ってまいりましたので,本日の全体の振り返りをして,終了させていただきたいと思います。まず「社会教育・教育と地域の連携」については,牧野委員,関委員の話題提供から始まって御議論いただきました。社会教育を学びの組織化,つながり,あるいは地域共生に向かっていくような教育と捉えていく必要があるという御指摘がありました。
 そのためには社会教育士の役割を明確にし,ファシリテーションやコーディネート能力などを活(い)かして,活躍の場を広げていくというような視点が重要なのではないかというお話がありました。
 なおかつ,それはコミュニティ・スクールや社会教育,学校教育の連携,あるいは学校と地域社会の協働体制につなげていくということだったと思います。
 公民館等の,社会教育施設の機能強化のお話もありました。ウェルビーイング創造センターといった視点で考えられないかというような御意見もありましたし,そのためには何といってもデジタル活用による機能強化が重要になるという御指摘もございました。
 そうした視点では,デジタル田園都市国家構想との関わりも含めて,こうした施設の在り方を考えていく必要があるというお話だったと思います。
 それから,2つ目として御議論いただいたテーマは「教育と産業界の連携」であり,大森委員,安孫子委員,それから経団連の長谷川常務理事から話題提供いただきました。従来の大学と産業界の関係は研究開発の連携という視点から始まっていたわけですが,これに加えて人材育成の産学連携という視点が非常に重要になるのというお話がありました。しかも,それは地学一体とか,協力から協働へという視点もあわさったものだと思います。
 とりわけ,今の日本の課題として地域創生がありますので,地域連携プラットフォームのような形での人材育成が大変重要になっているのではないか,そのための文理融合とか企業テックの融合等の視点が必要なのでは,といった御議論もあったと思います。
 それから,地域における産官学連携としては,共同研究による課題解決という視点から,「みらいIT人材」の育成やデジタル教育につながるという御意見がありました。
 また,産学協議会の例ということでリカレント教育,あるいはリスキリングについて,従来のレベルからより主体的なキャリアアップにつなげるようなリカレント教育,つまり,リテラシー,応用,エキスパートと,より高度化したリカレント教育とそれらをつなげるための工夫が必要ではないかという御議論だったと思います。
 なおかつ,リカレント教育・リスキリングは仕事と学びの好循環のような連携した形で実現していく必要があるということでした。
 特に地域連携,産学連携は,大学側はビジョンやKPIといった評価等に反映させる必要がありますし,企業側は,それらをキャリア形成にどうつなげていくのか考えなくてはいけません。やはり産学の相互理解が非常に重要であるということだと思います。それと同時に,保護者も含めた社会の理解を醸成する必要もあるということでした。
 それから,子供の体験活動や探究学習といったものが地域創生にもつながるという御意見や,小中高大一貫したキャリア教育の軸が必要だという御意見もありました。また,STEAM教育のような教科横断的な学習推進の重要性も御指摘いただきました。
 こうした議論のあと,最後に,キーワードのマッピングについて御議論いただきました。大森委員に御指摘いただいた配置の話は私も非常に印象深く受け止めました。文科省のロゴマークは羅針盤で,一番上の丸がポラリスを表しているそうですが,ポラリスの方に向かっていくものとして中心線を見ると,パーパスやビジョンのような理念系のキーワードが並んでいると思います。ポラリスのところには,不易と流行(りゅうこう)や学制150年などがありますが,これらは恐らく教育基本法と関連する教育の普遍的な要素であり,そうした歴史で培われてきたものがまさしくポラリスのところに位置づけられていると受け止めました。
 なおかつ,縦のラインの,理念系のキーワードを見ると,日本型ウェルビーイングとか,超スマート社会・Society5.0,SDGs,学修者本位,人間中心社会といったものがポラリスの方向に向かう縦線の中心にあると思います。
 左側の方にあるのは,堀田委員が御指摘いただいたような世の中の変化要因であり,イノベーションや社会全体の変化に対応する要素が置かれています。
 つまり,社会の変化に対応するために必要なものとして,教育DXやGIGAスクール,デジタル活用,個別最適な学びとか協働的な学び,働き方改革があるといったことではないかと受け止めました。
 それから,右側の方は共生社会や誰一人取り残さない,包摂性など,ダイバーシティ&インクルージョン,あるいはセーフティーネットとのつながりが強いキーワードではないでしょうか。
 そして,左右をつなぐものとしてSTEAM教育とか文理融合教育などがあるのではないかと思います。
 今日の御議論では,吉見委員に御指摘いただいたように,これに時間軸やそれぞれのストーリー性という視点も必要といった御意見がありました。立体的になってしまい整理が非常に難しいのですが,教育振興基本計画ですので,時間軸を入れて,ロードマップとして整理する必要もあると思いました。いずれにしても,本日頂いた御意見を更に深めながら,体系的に整理し,できればストーリー性があるような形でまとめられるとよいと思います。
 今日頂いた御意見を反映させるだけでも議論がまだ相当必要だと思います。次回,また各論をやらせていただきますが,その後に総論を議論し,年内にはまとめに進んでいければと思っております。
 それでは,次回の予定について事務局から報告をお願いします。
【川村教育企画調整官】  次回は8月23日火曜日の13時から開催予定でございます。テーマは,「グローバルの関係」,それから「スポーツ・文化・芸術体験活動」ということで予定いたしております。次回の会議後半では,総論全般についての議論も行いたいと考えております。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  少し時間を超過してしまい,申し訳ございませんでした。今日は以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――