中央教育審議会教育振興基本計画部会(第2回) 議事録

1.日時

令和4年5月13日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(東館3階) ※WEB会議

3.議題

  1. 第3期教育振興基本計画の進捗状況等について

4.出席者

委員

荒瀬委員、今村委員、内田委員、清原委員、小林委員、清水(敬)委員、清水(信)委員、永田委員、堀田委員、村田委員、安孫子委員、岩本委員、大森委員、大日方委員、川口委員、河野委員、黒木委員、黒沢委員、杉村委員、関委員、徳永委員、牧野委員、松浦委員、三好委員、元紺谷委員、吉田(信)委員、吉見委員、渡邉委員

文部科学省

丸山 文部科学審議官、藤原 総合教育政策局長、出倉 大臣官房審議官、安彦 総合教育政策局社会教育振興総括官、水田 初等中等教育初等中等教育企画課長、神山 総合教育政策局生涯学習推進課長

5.議事録

【渡邉部会長】  それでは、ただいまから第2回中央教育審議会教育振興基本計画部会を開催いたします。本日は大変御多忙の中、御出席いただきまして本当にありがとうございます。
 この会議は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、前回同様、ウェブ会議方式と対面を併用した形での開催とさせていただきます。
 それでは、まず本日の会議開催方式と資料につきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。
 それではよろしくお願いいたします。
【川村教育企画調整官】  失礼いたします。まず事務局に人事異動がございまして、御紹介させていただきます。私、4月1日に教育企画調整官として着任いたしました川村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、5月に文部科学戦略官として森友が着任しております。よろしくお願いいたします。
【森友文部科学戦略官】  森友と申します。よろしくお願いします。
【川村教育企画調整官】  部会長から御説明いただきましたとおり、本日も前回同様、ウェブ会議と対面を併用した形の会議開催でございます。加えまして本日は、報道関係の方と一般の方向けに、ユーチューブにて配信をしておりますので御承知おきください。
 本日、質疑の際には、会場で参加の委員の皆様におかれましては、御発言がございましたらネームプレートを立てていただき、ウェブ会議の方は挙手ボタンを押していただければと存じます。会長の御指名によりまして、順次、御発言をお願いいたします。
 会場で御参加の皆様は、御指名があった後、事務局がマイクをお持ちいたしますので、既にお1人1台設置しておりますパソコンに向かいまして、お顔を映して御発言いただければと存じます。会場の先生方は、パソコンの操作は特段必要ございません。
 また、ウェブ参加の先生方につきましては、御発言時以外はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日の資料は、資料1のみとなっております。御不明な点等ございましたらお申しつけください。
 最後に、本日、30名の先生方のうち7名が会場御参加、21名がウェブ御参加ということで、28名の御出席を賜っております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきます。最初に、前回の部会の振り返りをしておきたいと思います。前回は、次期教育振興基本計画の諮問事項の趣旨を確認させていただきました。
 その時にお話しさせていただいたのは、留意すべき視点ということで、超スマート社会であるSociety5.0時代を、一人一人の人間が中心となる社会だと捉え、未来志向に立ちましょうということ。
 個人や社会全体がウェルビーイングを実現するような制度の在り方を目指したいということ。
 それから、一人一人の可能性が最大限引き出されるように、同時に、誰一人取り残されないような多様性と包摂性の視点を持ちましょうということ。
 最後に、実効性を確実にするための資源・財源の確保、あるいは再分配ということについて留意しましょう、といったことでした。
 また、多くの委員の皆様から、現行の第3期教育振興基本計画の検証、あるいはエビデンスを基にした分析が重要だという御指摘、御意見が出されました。
 計画の構成やフォローアップも含めて、何が機能して何が十分でなかったのかも含めて検証・評価することが重要ではないかという御意見もいただきました。
 そうしたことも踏まえて、現行の第3期教育振興基本計画についての振り返りを、今回は行うということであります。
 ただ、第3期の計画自体は、当時、ロジックモデルを作りながら、議論を重ねた上で整理をしました。計画は第1部・第2部となっていますけれども、第1部では教育政策の全体観、それから第2部では教育政策の目標と施策ごとの測定指標、参考指標を示しております。
 本日は、事務局で大変な作業をしていただきまして、資料が用意されております。コロナ禍にありましたので、定量的な資料の作成もなかなか難しかったと思いますが、御努力によりまとめていただきました。
 
 それでは、まず事務局から、資料の説明をお願いします。
【川村教育企画調整官】  失礼いたします。それでは、資料を共有して御説明をさせていただきます。会場の皆様は、前方とお手元の資料、両方ございますので御覧いただければと存じます。
 第3期教育振興基本計画の進捗状況についてということで、まず全体構造でございますけれども、第3期、左側にございますとおり、基本的な方針が5つ、それに教育政策の目標が21ございまして、それぞれ21の目標に施策群が連なっている構造となっております。
 この21の目標につきまして、それぞれ測定指標・参考指標がございますので、その達成状況を中心に御説明をさせていただきます。
 まず(1)、確かな学力の育成でございます。(1)のみ丁寧に御説明をして、その後、測定指標の達成状況を中心に御説明させていただきます。
 (1)、子供たちの基礎的・基本的な知識・技能と思考力・判断力・表現力等、主体的に取り組む態度を育成するということで、測定指標は、OECDのPISA調査等の国際調査を通じて世界トップレベルを維持ということでございます。
 図が若干細かいですけれども、下に解釈を書いておりまして、数学的リテラシー及び科学的リテラシーは引き続き世界トップレベルにある。読解力は2018年、平均得点順位が低下したという結果となっております。
 右側、参考指標でございます。測定には至らないけれども参考にすべき指標ということで策定時に示されているものでございまして、左側のグラフが習熟度レベルが2未満(下位層)、右側がレベル5以上(上位層)ということで、それぞれ経年での比較でございますが、読解力につきまして、下位層の子供たちの割合が増えているという、OECD全体と同様の結果が見て取れます。
 各施策の進捗状況につきまして、その下、それぞれの項目に応じて、この5年間の取組を整理いたしております。
 これがずっと続いてまいりまして、学力調査、高校教育改革等ございまして、最後、赤枠で進捗の総括、また課題とその対応でございますが、進捗の総括、先ほど申し上げた世界トップレベルの水準維持。また学力調査におきましては、新型コロナウイルス感染前から比べて学力の変化が見られなかった、あるいは一部上がっていたと解釈できるという結果も併せてお示しをしておりまして、目標に向けた施策としてこういったことを実施してきたということでございます。
 課題につきましては、幼児教育と小学校教育の接続の課題解消。また、先ほど申し上げたPISA調査における読解力の平均得点の低下。高等学校における学校生活満足度・学習意欲の低下。そういったことが課題であって、それに対応する必要があるということでございます。
 これから(2)以降、測定指標の達成状況を中心に御説明させていただきます。
 (2)豊かな心の育成でございますが、この指標は、自分にはよいところがあると思う児童生徒の割合の改善ということで、小学校が青、中学校が赤ですけれども、小学校は一旦上がって少し下がってきていて、全体としては横ばい。中学校は上下がございますが、計画当初と比べると若干改善傾向ということでございます。
 右側、いじめの認知件数に占めるいじめの解消しているものの割合の改善ですが、こちらは割合としては低下傾向にあるということでございます。
 下に解釈を書いておりますけれども、いじめの認知件数に占める解消しているものの割合ですが、例年8割で推移しておりまして、多くのいじめ事案は適切に対応されていると考えられるが、ここ数年減少傾向にあるということで、その背景として、いじめの解消について定義をされまして、その定義が浸透したことにより、安易にいじめが解消していると判断せず、慎重な判断がされている側面もあると考えられるということでございます。
 豊かな心の育成につきましては、様々、これらの項目が3期の計画で定められておりまして、こういった施策群に基づきまして3期期間中に行ってきた施策を縷々記載をしております。
 進捗の総括のところ、自己肯定感についての小中学校での様子、またいじめの関係でございまして、課題とその対応のところ、いじめの重大事態の発生、暴力行為の発生、不登校児童生徒数、いずれも増加傾向ということで、自殺者数も減少するに至っていない、極めて憂慮すべき事態ということでございまして、これらの対応を記載しております。
 (3)は、健やかな体の育成でございます。測定指標としては、子供の体力水準を昭和60年の水準まで引き上げるということで、一部の種目を除いてそこまで至っていないということで、令和2年度、若干サンプル数が少なくて参考値扱いでございますけれども、そういった傾向でございます。
 右側、生活習慣でございまして、就寝と起床の時間が上側、それから朝食欠食が下側でございますが、いずれも横ばいという結果でございます。
 施策群がございまして、進捗の総括、課題の対応のところ、子供の体力レベルが低下傾向ということで、体育・保健体育の授業等を通じた運動に親しむ子供たちの増加等、対応を挙げております。
 (4)は大学教育の関係でございます。問題発見・解決能力の修得ということで、測定指標は学修時間の充実、それから学生が大学教育を役に立っていると思う割合ということで、左側、学修時間でございますけれども、青と赤のところがゼロ時間、1から5時間ということで若干短め、それから緑が6時間以上ということで、これまでなかなか改善が見られなかったところ、令和2年度については授業外の学修時間が増加しているということでございます。
 コロナ禍によりまして、課題提出型のオンライン授業が一定程度の割合を占めたことも考えられるという解釈を載せております。
 右側、大学教育は役に立っていると思う学生の割合。おおむね、この青と赤のところ、8割程度が「役に立っている」「とても役に立っている」ということで見ておりますが、下側2つ、統計数理の知識・技能、外国語を使う力といったところが役に立っていると考えている学生が半数以下という状況となっております。
 施策の進捗としては、高大接続改革、また、学生本位の視点に立った教育の実現ということ、進捗の総括、課題というところで、まだまだ課題があるというところ、教学マネジメント指針に基づく取組の促進ということを記載いたしております。
 (5)でございますが、社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成ということで、参考指標扱いでございますけれども、進路について、将来の仕事に関することを意識する高校生の割合ということでございまして、若干微増傾向でございます。
 こちらの施策につきましては、進捗の総括のところ、新学習指導要領でのキャリア教育の充実の明記、キャリアパスポートの導入、こういったものを図ってきているということでございます。
 (6)につきましては、家庭・地域の教育力の向上等でございまして、測定指標は、地域において子育ての悩みや不安を相談できる人がいる保護者の割合ということで、平成28年と令和2年を比べまして低下傾向にあるということでございます。コロナウイルスの影響も考えられます。
 右側、地域の行事に参加している児童生徒の割合の改善ですが、小中学校とも増加傾向にございましたが、直近足元の令和3年度は下がっているということで、こちらもコロナの影響が考えられます。
 これまで行った施策を書いておりまして、進捗の総括、また課題のところ、家庭教育の充実に向けた家庭教育支援チームの増加というようなところも、対応として必要であるということでございます。
 (7)グローバルに活躍する人材の育成でございますが、こちらは、まず小中学校の子供たちの英語力ですけれども、一定の水準を設けまして、そこに5割が達成するという目標でございますが、5割までは行っておりませんが、着実に増加傾向にあるということでございます。
 下側、日本人高校生の海外留学の数を6万人ということでございますけれども、増加傾向にございますが、足元数字がございませんが、コロナで激減しているという状況でございます。
 それから、大学生でございますけれども、グラフが2つございますが、目標12万人ということで、左側が主に学位取得を目的とした留学、右側は大学間交流協定等に基づく短期留学を含む数字ということで、増加傾向にございましたが、一番右端のところを御覧いただきますと、コロナで激減しているという状況でございます。
 外国からの留学生につきまして、こちらは30万人が目標ですが、一旦達成した後、またこちらもコロナによって減少傾向にあるということでございます。
 外国からの留学生につきまして、こちらは30万人が目標ですが、一旦達成した後、またこちらもコロナによって減少傾向にあるということでございます。
 進捗の総括、課題の対応のところは、やはり激減したことに対応する施策が必要であるという認識でございます。
 (8)大学院教育につきまして、測定指標は、修士課程修了者の博士課程への進学率の増加ということで、赤いラインのところが全体の進学割合でございまして、中長期的には低下のトレンドにございますが、この計画期間中だけ取り出して見てみると、若干微増ということでございます。棒グラフは実数でございます。
 産学協働による情報技術人材の育成、大学発ベンチャーの設立数につきましても、足元少し増加傾向、この後増加があることを見込みますと、堅調な増加傾向にあるということでございます。
 次のページ以降で施策を記載しておりまして、進捗の総括・課題の対応、大学院につきましては、博士後期課程の学生に対する経済支援の抜本的な拡充が図られたということでございまして、着実な実施、またキャリアパスの多様化といったことに取り組む必要があるということでございます。
 (9)はスポーツ・文化等の人材育成ということで、参考指標ですが、オリパラの金メダルの数、またドーピング防止の数、違反率の関係。また、文化芸術の鑑賞割合ということでございまして、スポーツの分野では進捗が見られるということでございますが、文化芸術はコロナによりまして低減をしているという傾向でございます。
 進捗の総括・課題についてもそういった傾向、また、これへの対応ということで整理をしております。
 (10)、人生100年時代を見据えた生涯学習の推進。測定指標としましては、これまでの学習を通じて身につけた知識・技能・経験を、丸1、仕事や就職で生かしている。丸2、家庭・日常の生活に生かしている。丸3、地域や社会での活動に生かしているということで、丸1、丸2は上昇傾向にございますが、丸3は低下傾向ということで、丸3は後ほど出てまいりますが、丸1、丸2につきましては改善が見られるということでございます。
 進捗の総括、また課題の対応のところも、そういったことで記載をいたしております。
 (11)、先ほどの丸3のデータでございますけれども、これまでの学習を通じて身につけた知識や技能を地域や社会での活動に生かしている者の割合ということで、こちらは低下傾向にございまして、地域コミュニティーの衰退等も背景にあるのではないかということで、進捗の総括のところ、社会教育士の活用促進ですとか、社会教育施設の運営といったことが重要ではないかという内容を記載しております。
 次、(12)でございますが、職業に必要な知識・スキルを身につけるための社会人の学び直し。測定指標は、大学・専門学校等での社会人受講者数を百万人ということでございますが、前半増加傾向にございましたが、直近やや減少傾向にあるということでございまして、これまで様々な施策を取り組んできておりますけれども、今回、教育創造未来会議でも大きな柱の一つでございましたけれども、そういった方針に基づいてさらに推進していく必要があるという認識でございます。
 (13)障害者の生涯学習の推進ということで、こちらは、そういった機会がある、確保されていると回答される方の割合、青と赤のところが3割程度ということで、7割が不足していると感じているということでございまして、こういった課題。
 また、右側はスポーツ実施率ということで、一般の方に比べてやはり参加の機会が少ないという傾向でございます。
 こういったことについて、進捗の総括として整理をいたしまして、課題とその対応のところで、今後必要なことを記載しているということでございます。
 (14)、こちらは家庭の経済的状況や地域的条件への対応ということで、主に経済支援の関係。測定指標は、経済的に厳しい世帯にある子供たちの高校進学率・大学等進学率の改善ということでございまして、青が高校進学率、赤が大学等でございますが、青につきましては90数%でかなり高止まりということでございまして、赤のところ、大学等でございますけれども、特に一番下、住民税非課税世帯の子供の大学等進学率を御覧いただきますと、高等教育の修学支援新制度という大きな制度が導入されたことによりまして、進学率が大幅に上昇している傾向が見て取れるということでございます。
 それから右側、大学中退・高校中退の数。まだ一定数いますので、依然として課題でございますが、低下傾向にはあるということでございます。
 これまで行ってきた施策でございますが、この分野は非常に大きな制度改正がございましたので、施策の進捗の2行目のところ、幼児教育・保育の無償化、高等学校等就学支援金の引上げ、高等教育の修学支援新制度の実施により、大幅な教育費の負担軽減が図られたということでございまして、これによる成果が見られるということでございます。
 (15)多様なニーズに対応した教育機会の提供ということでございまして、特別な配慮を必要とする子供たちの個別の指導計画・教育支援計画の作成率。こちらは上昇傾向でございます。また、小中学校における通級指導、こちらも増加傾向でございます。
 不登校児童生徒の関係で、学校内外の機関で相談・指導等を受けていない子たちの割合、こちらが指標になってございましたが、不登校児童生徒の数自体が直近5年間でかなり増えておりまして、それに伴って、受けていない児童生徒数、またその割合も増加傾向にございます。そもそも相談先を知らないですとか、自身の抱える困難を認識していないことが要因として考えられるという解釈をお示ししております。
 こちら、進捗の総括・課題とその対応のところに、先ほど申し上げた傾向、またそれへの対応を記載いたしております。
 (16)でございますが、新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備ということで、これ以降、条件整備のところでございます。
 まず指標として、現職教員、特に管理職の、学校種類に相当する専修免許状保持者の割合の改善ということで、小中学校の管理職の方、グラフは緑と青のところになりますけれども、こういった方々については専修免許状の保持者の割合が増えているということで、成果が見られるということでございます。
 特別免許状の授与件数、社会人の方たちが教壇に立つということでございますが、こちらも増加傾向にあるということでございます。
 測定指標の右側、働き方改革の関係で学内総勤務時間を短縮ということが出ておりますけれども、こちらは、本格的な調査は今後実施予定でございますけれども、教育委員会で実施された調査を集計しましたところ、グラフのピンクのところが経年変化になりますけれども、残業時間が比較的少ない方々の割合が増えていると。令和2年度はコロナで少し突出しておりますが、改善傾向が見られるということでございます。本格的な調査につきましては、今後実施予定でございます。
 こういったことで、進捗の総括でございますけれども、この分野につきましても、法律改正によりまして、学級編制40人から35人への引下げですとか、また、小学校高学年の教科担任制の導入というところで進捗があった分野でございます。課題とその対応のところにも記載をいたしております。
 (17)、こちらも大きな進捗があった分野でございまして、ICT利活用のための基盤の整備ということで、指標が幾つかございますが、教師のICT指導力の改善。また、その下のところ、学習者用コンピューターの整備の状況でありますけれども、直近、令和2年度は1.4人に1台ということで、5.6人に1台というところから大幅にGIGAスクール構想によって改善したということでございます。無線LANの整備、また超高速インターネットの整備についても進んでおりまして、大学でもICTを活用した授業の割合というのも増えております。
 これらの施策ということでございまして、進捗の総括のところで、この分野についての大幅な上昇傾向について記載をいたしております。
 (18)施設等の関係でございまして、安全・安心の耐震化、また長寿命化計画の策定率ということで、こちらは上昇傾向にございますし、下のところは改修済みの面積をグラフにしておりますけれども、こちらも増加傾向にあると。また右上、国立大学等の老朽施設の関係、改修済みが増えている。私立についても耐震化率が上昇しているということで、一部未策定・未実施のところ、これから対応する課題がございますけれども、一定の進捗が見られるということでございます。
 (19)児童生徒の安全確保でございますが、死亡事故、それから障害を伴う負傷・疾病等ということで、若干上下はございますけれども、年間40から60件の死亡事故が発生しておりまして、また、400件程度の負傷・疾病も発生しているということで、ゼロには至っていない状況でございますので、本年3月に学校安全の推進に関する計画の新たなものを決定いたしまして、これに基づいて対応を推進していく必要があるということでございます。
 (20)教育研究の基盤強化に向けた高等教育のシステム改革。こちらは全て参考指標でございますが、寄附金受入額、中長期計画の策定、また大学間連携に取り組む大学ということで、いずれも改善傾向ではございます。
 また、こちらの分野は、ガバナンスの関係、国立・私立大学とも制度改正が行われまして、進捗があったということでございます。
 こちらで最後でございます。日本型教育の海外展開と我が国の教育の国際化ということで、こちらも海外における教育事業での日本側の参加者の数ということで、順調に進捗しておりましたが、令和2年度はやはりコロナウイルスの影響で低下しているということでございまして、これへの対応が必要であるということでございます。
 最後の2枚で、これまでの指標を一覧化しておりまして、1から21の目標におきまして、「順調に進捗、目標達成」というものが赤字、それから「課題がある、達していない」というものを下線、それ以外は修飾なしということでございまして、先ほど申し上げた課題があるというところでアンダーラインを引かせていただいております。赤字のところが進捗があったということで、またこちらは一覧的に御覧いただく際に御活用いただければと存じます。
 駆け足でございましたが、資料説明は以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局からの説明を受けまして、皆さんからできるだけ多くの御意見をいただきたいと思います。
 進捗状況についてまとめて説明いただいたわけですけれども、21もの政策になっておりますので、少しくくりをつけた方が議論をしやすいと思っております。
 したがって、初等中等教育段階を一つの視点、次に高等教育段階、その次に生涯学習や社会教育、スポーツ・文化芸術と、この3つの順番で議論させていただけたらと考えています。
 委員の皆様におかれましては、PDCAを回すために、これまでの進捗状況について、次期計画にどう生かすのかという観点で、ぜひ御意見いただければと思います。
 併せまして、第3期から引き続き次期計画に盛り込むべき事項はどれなのか。あるいは、次期計画に新たに盛り込むべき要素というのはどういうことなのかといった点についても御意見いただけると大変ありがたいと思います。
 それでは最初に、先ほど申し上げた初等中等教育段階について御意見のある方から挙手をお願いします。いかがでしょうか。
 それでは村岡委員、お願いいたします。
【村岡委員】  ありがとうございます。山口県知事の村岡でございます。私から2点ほどお話をさせていただければと思います。
 1つは、6番の家庭・地域の教育力の向上、学校との連携・協働の推進の部分です。
 これは全国でも取組が進んでいますが、山口県におきましては、全ての公立の小中、そして高校、また特別支援学校で、コミュニティ・スクールを100%導入しています。
 これは、学校と家庭、地域、それだけではなくて山口県の場合は企業とか大学も含め連携・協働して、子供の豊かな学び、育ちを支えていこう、また、郷土への誇りとか愛着、そういった心を育てていこうという取組をしております。
 実際にやっていく中におきまして、各地域からも、これは非常にいい取組であって、なかなか機会がないわけです、大人と出会ったりとか、あるいは、子供たちの意識の中にも、将来、地域のために何かしたいという気持ちが、そういう大人と接する中で芽生えてきたりということが出てきておりまして、非常に、子供たちの自己肯定感とか、郷土への誇りとか愛着、そうしたことにつながっております。
 また、特に高校段階になると、企業とか大学とかも入れてやっていまして、社会に開かれた教育課程、そうしたことを実現していくことも大変重要だと思っております。
 この取組を進めてきているわけですが、今お示しいただいているところにもあるとおり、地域の行事に参加している児童生徒の割合というのは、コロナの中で減ってきているわけです。コミュニティ・スクールの活動も、コロナの中で色々な制約があって難しい面が出てきております。
 これがちゃんと継続していかなければいけませんので、今色々な支援策も講じてもらっていますが、もちろんコミュニティ・スクールだけではなくて地域活動全般に色々な制約があって、かなりブレーキがかかっているのですけれども、これが途切れることなくしっかり継続するように特に力を入れて、この継続の部分の後押しをしていく必要があるだろうと思いますので、ここを強く、コロナ禍の中で落ち込んでいる部分をしっかりとやっていくのだということを示していただきたいなと思います。それが1点です。
 それからもう1つは17番です。ICT利活用のための基盤の整備のところで、こちらもGIGAスクール構想によって、全国の小中学校、グラフにあるとおり飛躍的に整備が進んできました。
 本県におきましては、高校においても連続してICTの活用が行えるように、全国に先駆けまして、県独自の予算で全ての県立高校も1人1台の端末を整備しました。
 そうした中で、子供たちの学びや育ちをICTのいい部分をしっかりと使って伸ばしていくということと、併せまして、教員の働き方改革に寄与していく校務の効率化、様々な場面において有効活用していく必要があると思います。
 このため、本県におきましては、民間企業と連携して、教育データを活用したエビデンスに基づく指導の実践、あるいはクラウド環境を公務に活用して業務の改善を図っていく、そうした研究と実際の導入を進めていこうということで、どんどん取り組んでいるところです。
 次の計画におきましては、ICT環境の整備、これも引き続きとても重要なことでありますけれども、それは元よりですが、全国の学校で、デジタルとリアルの最適な組合せ、この教育活動ができるように、実践的な取組につながる審議が求められていると感じております。
 それぞれ、山口県でもそうですが、現場で試行錯誤しながら、デジタルとリアルをどううまく組み合わせれば最適なのかということがあると思いますけれども、こうしたことを国全体で取り組んでいくということも大きく示していく、ハード整備とともにしていく必要があるだろうと思いますので、そうした方向もしっかりと位置づけていただければと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。コミュニティ・スクールをはじめとして、家庭だけではなくて社会・地域とのつながりを持つ開かれた学校を目指す。コロナ禍でかなり制約があったわけですが、大変重要な御指摘だと思います。
 ICTについても、GIGAスクールで大分進みましたけれども、高校段階でも御努力いただいているということですし、最後におっしゃっていたように、これからデジタルとリアルの融合の中でどう活用していくのかというステージに入っていくというと思います。ありがとうございました。
 それでは次に、村田委員、お願いいたします。
【村田委員】  ありがとうございました。今、村岡委員がおっしゃったところと若干重なるのですが、私も17番のICT利活用のための基盤の整備のところについて、少し述べさせていただければと思います。
 課題の対応のところですけれども、先生方、いわゆる教師のICTの活用の指導力を向上となっておりますが、私立の高等学校とそれから公立学校とで、恐らくかなり差が出てきているのではないかなと思います。そこをより具体的にどうするかということを考える必要があるということが一つ。
 それから、御存じのように共通テストに「情報」の科目が入ってきますので、これをどう利用するか、あるいはこれをどう捉えていくかということが大学に課せられているわけなのですけれども、逆に、高等学校までの「情報」の教育の中身がどのレベルなのか。これはかなりばらつきが多いのだろうなと思うので、そうすると、せっかく後期中等教育でこれをしているのに、高等教育への連携がどうするのかというところ、ここが難しい。そこのところをちゃんとしておくのが一つの大きな課題なのかなと。
 ITの革命が起こりまして、アメリカは生産性を上げましたけれど日本はできていない。AIが今度活用をどうするかということが大きな課題になってきますが、基本的には「情報」の教育も含めてそれに結びついていくわけですから、高等教育と後期中等教育をどうするのかというところが課題だと思いますので、ぜひそこを考えていただければと思います。
 私からは以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。情報教育は学習指導要領にも明確に位置づけられて、これからどう実効性を高めるのかという重要な指摘です。ありがとうございました。
 それから次に、牧野委員よろしくお願いいたします。
【牧野委員】  ありがとうございます。私は、中教審の生涯学習分科会にも関わらせていただいておりまして、今回の資料の取りまとめでは、大変な御苦労をかけたと受け止めています。少し観点が変わってしまうかもしれませんが、先ほどの初等中等教育とのかかわりで発言させていただきます。
 先ほど部会長からも、基本計画のこれからの考え方として、人間中心、そしてウェルビーイング、多様性・包摂性を基本にということでお話があったのですけれども、全体の議論をするときに、何かもう少し、価値を置いてみるとか、そうしたことが必要になる時代に入ったのではないかと受け止めております。先ほどお二人の委員からのお話もありましたが、コロナ禍がこうなるとは、前計画のときには誰も思っていなかったことでもありますし、それから今回、戦争がこのようなこの時代に起こるといったことも誰も考えていなかったのではないでしょうか。しかもさらに、気候変動ですとか様々な大きな社会的な変動が、私たちの日常生活に襲いかかってくるというか、私たち自身が否応なしに日常生活でそうした問題を引き受けざるを得なくなるような時代に入ってしまったということがあるのではないかと思います。
 その意味では、先ほどの人間中心ですとか、ウェルビーイングですとか、多様性・包摂性という考え方を要請するような、何か基本的な価値のようなもの、そのようなものを置いてみるといったことも、これからの議論では必要になるのではないかと思うのです。
 それは、例えば命ですとか、さらには人権、尊厳、それに民主主義とか平和とか自由ということになるかと思いますが、そうしたものを基本に置いておきながら、社会をどうつくっていくのかということが問われ始めてしまったのではないかと思います。
 その上で、例えばいわゆる国の教育制度としての初等中等教育をこれからどうするのかといったことを、考えなければいけなくなってしまったのではないかというふうにも受け止めています。
 その意味では、このコロナ禍で様々な取組があったというお話、私たちも地域学校協働活動に関わったり、いわゆるコミュニティ・スクールづくりにもコミットしたりしているのですけれども、特に国の教育振興基本計画という、計画ですから当然、指標をつくって評価をしていくということは、どうしても政策的には必要になるかと思うのですが、各自治体がこれを参酌して、いわゆる自らの自治体の基本計画をつくっていくことを考えますと、少し何か国から、社会や国とか、また私たちはここで、この日本という国で生きているといったことを基本にしながら、一体どのようなことを実現しようとしているのか、何を価値として置こうとしているのかといったことを示すような形で、第4期の議論につなげられないかなという思いを持っております。
 そのような論理をつくっていくことで、現場レベルでそれらの価値を実現するように、各自治体はどうしたらいいかという議論ができるようになっていくのではないか。その意味ではもう一度、少し大きな話になってしまって恐縮なのですけれども、第3期のこの振興基本計画の進捗状況の確認をするときにも、そうしたことを念頭に置きながら、なぜこの指標が求められていて、その指標を達成することがなぜ必要なのかといったことを、もう一度きっちりと議論をしておく必要があるのではないかと感じております。
 第4期の基本計画には、ある種希望を持てる計画といいますか、理想を置くということよりは、むしろ希望を語ることができるような計画になるといいと思っておりまして、そうしたものがこの社会の閉塞感を打破することにつながっていくのではないか、そのようにも感じておりますので、できましたら少し御検討いただきたいと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。今のお話は、この教育振興基本計画そのものがどこからスタートしたのかという本質論を指摘していただいたと思います。
 この計画自体は教育基本法の改正時からスタートしております。現行の基本計画でも教育の普遍的な使命とは何かというところを確認するところからスタートしていますが、今の御指摘はまさにその視点だと思います。
 したがって、次期計画においても、教育の普遍的な使命を冒頭で確認することが重要なのではないかと思いました。ありがとうございます。
 それでは次に、大森委員、お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。大森です。お世話になります。今お話を伺っていて、私も少し考えていたのですけれども、これは初等中等に限らないことであると思うのですけれども、冒頭、部会長からウェルビーイングというお話があって、これは社会全体が今目指そうとしているところで、そこに違和感はないというか賛成なのですけれども、そこをもう少し、ウェルビーイングとは何かというか、そういうところはある程度共通理解を持たないと、この施策がそこにつながるのか。つまり、子供たちが育つことでウェルビーイングな社会ができていくということもあるでしょうし、子供たち自身がウェルビーイングに生きていける力を育むということもあるかもしれないし、その辺りは少し整理をし、そしてまた、4期の最終的なこの指標の中には、ウェルビーイング指標みたいなものが入ってくるのかどうか。これは今、まちづくりなんかではそういう観点で大分議論が進んできているところですけれども、そういったことも必要なのかなと。
 それは多分、学齢期にとらわれない話になってくるとは思うのですけれども、4期の全体としてそれを目標に掲げるとすれば、そういう観点が必要だなと、今お話を聞いて感じたところでもあります。
 あとは細かいところなのですけれども、やはり私も6番のコミュニティ・スクールのところは非常に重要だと思っています。
 これが、当初コミュニティ・スクールがスタートしたときには、地域学校協働本部の中で教員の任用についても議論するというところは、少しハードルが高いなというところでなかなか進まなかったところ、柔軟に対応ということになってきているわけですが、その柔軟に対応した結果が、よりコミュニティ・スクール化を促進したのかどうかということは少し検証して、まだ、もしそこがハードルがあるのだとしたら、そこのポイントというよりも、やはり子供たちが地域の中で学んでいく、地域と協働して学んでいくということが重要なので、4期ではもう一歩、次の段階を考えるということがあってもいいかなというのが1点です。
 もう1点は、同じ6番のところに、これは多分、社会教育の範囲に入るのだと思うのですが、同じ6番なので、家庭教育支援チーム、これも非常に重要な取組で、年々チームが増えてきていることは重々承知しています。
 その中の実態をもう少し精査をして、例えば訪問型家庭教育というのは相当にハードルが高いので、実際にどのぐらい行われているかというのは、後で結構なので教えていただけると。そこのハードルを越えていくのか、そのことを一旦、昔やめたことがあったと思うのですけれども、その辺り、例えば民生・児童委員との協力とか結構大変な部分があるのです。その辺りをどうしていくかというものの、次のステージを考えられるかな。細かい点で恐縮です。
 そして最後に、これは子供たちを中心にだと思うので、社会全体の問題ではあるのですが、初等中等のところで申し上げると、14番に関連して、経済支援をしっかりやってきていただいていると同時に、この数年間で起こってきたこととして、私もニュースレベルでしかというところはあるのですが、ヤングケアラーの問題とかは第3期に入ってきていなかったのかなと思うのですけれども、より多くの子が安心して学べる環境をといったときに、この間に起こってきた子供たちの状況というのをもう一回捉え直すことが、次にとって必要だなと思って、例えばヤングケアラーの問題などということだと思っています。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  いろいろと御指摘いただきありがとうございました。
 最初のウェルビーイングについては、OECDのラーニング・コンパスでも示唆された内容ですし、これからの時代、非常に重要なキーワードだと思いますので、今後の議論中で一度テーマ設定をして、そこで議論を深めたいと思います。ありがとうございます。
 それでは次に、清水敬介委員、お願いいたします。
【清水(敬)委員】  清水です。私も、今の大森委員、あと冒頭の村岡委員と同じところでございます。目標の6のところです。家庭・地域教育力の向上、学校と連携・協働の推進というところでございます。
 先ほどからもありますように、コミュニティ・スクールというところで、先ほど山口県は100%のお取組だというお話がありました。このコミュニティ・スクールに関しましては、我々PTAとしても連携をしていかなければいけないですし、PTAとしての関わりというのは非常に大切なところではないかなと考えています。
 とはいうものの、まだまだ全国的に、このコミュニティ・スクールに関しての普及度であったりとか、取組を御熱心にされているところとの差がまだまだあるというところもあります。伴って、全国の保護者、PTAの保護者の皆さんも、ここのコミュニティ・スクールの取組の内容について、まだまだ御存じではないという方が多数お見えというところも聞いております。
 そのようなこともありまして、私たちPTAといたしましても、広くこの周知徹底をしなければいけないということで、いろいろとPRをして、皆さんに分かりやすく御理解していただくような動きも今、進めておりますし、動画みたいなものもつくって、広く皆さんにお示しをしていきたいというような取組をしております。
 ですので、特にここの内容につきましては、第4期の内容についても十二分に取り組んでいただきたいというところでございます。
 以上、意見です。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  日常のPTA活動等の視点で、いろいろと感じていらっしゃることを率直におっしゃっていただき、ありがとうございました。大変参考になる御意見でした。
 次ですが、初等中等教育に関して、まだ7人の方が手を挙げていらっしゃいます。この後、次の高等教育等の議論もありますので、一旦、今、手を挙げていらっしゃる方までで区切りをつけさせていただければと思います。
 それでは、堀田委員、岩本委員、河野委員と3名続けて御発言いただきたいと思います。まず、堀田委員、お願いいたします。
【堀田委員】  東北大学の堀田でございます。お時間いただきましてありがとうございます。
 第3期の計画の評価、まだ中間かもしれませんが評価のデータをありがとうございました。先ほどから出ているように、私どもはコロナを体験しましたので、この社会の大きな変化がこれからも何か起こり得るという前提にしたときに、今までのものを少しよくする、付け足していくみたいな考え方から、組み直して大きく構造を改革して柔軟な体制を整えておくみたいなことを、この第4期でやはりやらなくてはいけないのではないかと考えております。これを前提に、2つ発言させてください。
 1つは、私の専門は教育の情報化ですが、この今どきのICTあるいはネットワークというのは、教育分野で言えば教育の基盤と考えることができます。したがって、学習指導の高度化を考えるのはそれはもちろんですが、それだけではなく、例えば合理的配慮とか、そういう特別支援につながるようなことのように、一人一人にどのように対応するか。いじめの相談がしやすくなっているかみたいなことにもICTは関係してきます。先ほども出ていましたが、学校外人材からどうやって学ぶかみたいなところも関係します。当然、コミュニティ・スクールについてもそうです。あるいは、教員の働き方改革が言われますけども、それはもちろん大事なのですが、それだけではなく保護者との情報共有とか提出物のデジタル化とか、この辺をちゃんとやっていかないと、提出する保護者も大変だし、提出されたものが紙だと、先生は入力するのでまた忙しくなるわけです。根本的な、教育基盤のデジタル化を考える必要がある。
 それに、デジタル教科書とかデジタル教材とか、これから増えていくと思います。当面は紙と共存するとは思いますが、だったら余計に、こういうデジタルなものを今のうちに津々浦々に恒常的に提供できる仕組みとか、その仕組みが普及していく割合を指標としてしっかりとモニターしていくことが必要ではないかと思います。
 ICTを使っていろいろなログが取れますので、こういう利用ログや、あるいは学習の成果をしっかりと把握して、それを実態把握し、学習指導や特別支援、合理的配慮に返していくような、そういうような形ですね。先生が全部丸つけしなくても、ある程度のものだけ丸つけすれば、残りは評価が常に手元で見ることができるみたいなことも、また働き方改革にもつながるのかなと思っております。これが1つです。
 もう1つだけ。指標の問題を、量から質にある程度変えていく必要があるのではないか。これは、先ほど出ていました価値の問題とも関係するかと思います。
 例えば、今般の学習指導要領では、「学力」という言葉が、それだけでは少し狭いイメージを与えてしまうので、「資質・能力」という言い方にして、例えば非認知能力とか学びに向かう力とかそういう概念が入ってきています。
 だけれども、何かの達成指標が、学力調査の点が伸びたかみたいなところに矮小化してしまうことによって、結局、昔に戻ってしまう形になっているのではないかと。
 例えばICTを入れてドリルをいっぱいやらせたら、それはいわゆる計算力が上がったり、漢字の力が上がったりしますが、それで学力が上がったと言うのかということです。今日の時代における、求められている資質・能力を考えたときに、こういう指標を工夫することが必要かと思います。
 今までは端末が何%行ったかとかそういう形で物量を評価していましたが、今度は、情報が上手に使われているか、取れているか、それによって質が向上しているかということを上手に指標化していく必要があると思います。難しいとは分かっておりますが、意見として申し上げておきます。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。大変貴重な御意見でした。第3期計画のICT活用は、どちらかというと基盤整備段階、ハード整備段階でしたので、次のステージではこれをどう学習コンテンツや校務支援など、あらゆる場面で活用していくのか、そして質を高めていくのかという御指摘だったと思います。ありがとうございました。
 では岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。大きく3点あります。1点目は、今回施策を並べてみたときに、小学校、中学校そして大学というところの指標や施策に比べて、高校段階というのが、数が少ないところですので、今後、切れ目なく施策を進めながら、子供たちの育成を考えたときに、第4期はまさに今年度から、普通科改革をはじめ新しい時代の高校改革も始まっていますので、高校という視点もしっかり、小中と並ぶような形で位置づけて、抜け・漏れがないかということはやっていく必要があるのではないかというのが大きくあります。
 また、その際に一つのポイントとなるのが、18歳の姿というのを、今後第4期を考える際に検討するというのも効果的ではないかと思います。
 今年度から18歳、成人となっています。我が国における成人としての、これは初等中等教育段階を抜けてというか、その先のというか、その姿、初等中等教育を通して本当に育てたい我が国の成人だとか18歳の姿は何なのか。そこに必要な資質・能力や、まさにどういった価値を体現している18歳を目指して、小学校、中学校、高校という中で教育環境をつくっていくのかというところで、一つはこの18歳というところの目標だとか、指標というか、そういったところの工夫というのが必要ではないかというところです。
 2点目に関しては、新しい観点としては、今まさに清原委員を中心に、地方教育行政のこれからの在り方が今年度審議されています。こういった教育環境づくりを進めていくに当たって、いわゆる教育委員会の機能強化とかその在り方というのが、やはりここも変わっていかなければいけないというところで、その議論をされているわけですが、やはり学校の姿だとか、こういった子供たちの姿を実現するために、地方教育行政ですね、教育委員会を含めて、がどうあるのかという視点も、第3期には入っていなかったと思いますが、第4期では必要ではないかというのが2点目です。
 最後3点目は、全体を通してのことになってしまうのですが、今回第3期の進捗の状況というので、事務局の本当に多大な苦労の下にこういったすばらしいものができた、見える化されて議論ができたと思うのですが、もう一つ、第3期の検証という意味では、プロセスの検証もあった方がいいのではないかと思います。
 教育政策のマネジメントを考えたときに、いわゆるエビデンスと対話に基づく政策マネジメントが重要だとしたときに、これは計画も、計画の策定の段階と、共有・浸透、そして活用・実行、そして評価・改善と、このそれぞれのフェーズで、どのような形で、第3期の場合は策定してきたのか。
 その時に、例えば子供の意見だとかそういったもので、取ったのか取らなかったのかというのもそうですし、共有・浸透ではどういう形で、ちゃんと現場に共有するようなことをやってきたのかとか、評価・改善も年々状況が変わっていく、コロナだ、様々なことがある中で、どういう形でPDCAを回してきたのか、こられなかったのか。
 そこのプロセスを明らかにした上で、では第4期の策定だとか共有・浸透、実行もしくは評価・改善をどのようなプロセスで進めようとするのかという、このプロセスのデザインと見える化というところで第3期を振り返りながら、第4期のよりよいプロセス設計もどこかで議論をしながら、見通しを持って進めていけるといいのかなと思いますというのが3点目です。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。高校等に関する最初の2点については、令和の日本型学校教育の答申でも言及しており、御指摘のような点をこれから高校段階で強化していくことになると思っております。
 それから最後の御意見については、第3期計画でもロジックモデルの議論をかなり重ねていって、今のような整理をしております。また根っこから始めるとロジックモデルの整理で1年ぐらいかかりますので、この第3期のロジックモデルを使いながらPDCAを回して、第4期につなげていくという進め方をしたいと思います。
 それでは次に、河野委員、お願いいたします。
【河野委員】  河野でございます。非常に多くの御努力によって、たくさん資料を御作成いただいたこと、ありがとうございます。
 一つ、グローバル教育の観点から御提案を申し上げたいと思います。
 この中には、21の教育施策の目標がありますが、それらに対する指標が非常に多いというのが率直な感想です。
 例えば、相互に関連し合っているようなものの相関関係を見極めることを行っていただくと、もう少しKPIを絞れるのではないかと思います。
 例えば、グローバル教育の観点から申し上げますと、確かな学力の育成部分は、OECDのPISAの調査の結果が指標にされていますが、このOECDには、2018年にPISAの調査に加えられたグローバル・コンピテンシーがあります。
 このグローバル・コンピテンシーは、御承知のとおり、多文化的な課題を批判的に、多様な視点から分析できる力で、自分と他人との違いを理解して世界の中で協働していくことができる力です。こういった力を育成することが、今、グローバルでの教育課題になっております。
 これを日本にも導入して、読解力とか数学的な力などの従来の指標に加えることで、1番と7番の指標を合体することができ、グローバル人材の育成を確かな学力の育成の中で見ていくことができるのではないかと思います。
 例えば、現場で仕事をしていると、英語力とか留学人数の到達度、これは必ずしもグローバル人材の育成とは一致しないという印象を持ちます。グローバル人材というのはもっと心の育成と関係があって、平和な世の中を築き、戦争を起こさないようにするにはどうしたらよいかを考え、差別とか偏見をなくし、多様な価値観を受け入れて協働できる力を育成することと非常に深く関係していると思います。
 英語力とか留学人口といった表面的な数値にとらわれるのではなくて、グローバル・コンピテンシーを必要な学力の中に組み込んでいくことを、提案したいということでございます。
 もう1つは、数の問題ですが、もし今後も数字の目標を置いていく場合、留学数をモビリティの数だけに限定してしまいますと、今回のようなコロナがあったりすると数値目標の達成が難しくなりますので、デジタルによる異文化理解教育プログラムなどの参加数も、指標に加えてはどうかと思いました。
 以上2点、御提案申し上げます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。次期計画のKPI設定について、データベースの活用も次元が変わってくるようですから、どう設定するかについて、大変貴重な御意見だったと思います。ありがとうございました。
 それでは次に元紺谷委員、それから杉村委員、黒木委員の順番でお願いしたいと思います。それでは元紺谷委員、お願いします。
【元紺谷委員】  北海道有朋高等学校の元紺谷でございます。私からは、3点お話したいと思います。
 まず、目標の15に関わってですが、本校は遠隔授業配信センターも併置しておりますので、その関係で遠隔事業の話をしたいと思いますが、まだまだ制度的には不十分な部分もありまして、研究開発をしながら進めていくという実態があります。
 今まで十数年間、遠隔授業を手がけてきて、ようやく集中化、要するに教員が片手間ではなくて、専門的な遠隔授業を配信する教員を置いて、今年は16名の教員がいますが、この教員の質の保障といいますか、インセンティブが実はないという課題がありまして、こういった普通の高校の教師ではない仕事をしてもらう教員に対する手当のようなものは、今後必要ではないかと私は思っております。
 さらに、遠隔授業を行う、北海道は広域分散型で、特に地方に、1学年1クラスしかない学校が、北海道の道立高校の4分の1がそういう実態ですので、そういった学校を何とか存続させる必要があります。これは地域創生にもつながるということで、コンソーシアムとか、それからコミュニティ・スクールの関係でもここは充実させる必要があるということで、今回、まだその文言が出てきていませんので、次の計画には、遠隔授業の充実に関わる項目が必要と思います。
 2点目です。通信制のことについてお話しします。高校の全・定・通の中でも、少子化であるにもかかわらず、通信制に通う生徒の割合が増えているという。特に私立の広域通信制がかなり生徒を集めています。
 これは、学びの多様化が進んでいるといえますが、実は、通信制はもともと働き学ぶ勤労学生のために制度設計されておりますので、それが、今その制度設計の中で、違う形で使われ始めている。
 それはもう前から知っていたことなのですが、ある私立の大きな事件があって、それ以来、通信制の教育の質の保障が叫ばれていますが、まだまだだと思います。
 ここで、特に通信制は、毎日生徒が来ないというところがイメージとしてあるのですが、実際、広域通信制の学校では、毎日登校する生徒もかなりいる実態があるという。
 そして、教員の定数の話をしますが、通信制には標準法では定数として養護教諭は置かれていないという事態があります。当然、生徒が毎日学校に来ないからなのですが、しかし、もうそういう時代ではないということをよく認識してほしいことと、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの必要性も非常に高まっています。
 本校は通信制もありますので、全道に3,000人の生徒を抱えておりますが、その子たちの家庭環境、生育歴はすさまじいものがあります。そういったこともあるので、通信制にもっと光を当てる必要があると考えます。
 「令和の日本型」の答申でも、定・通教育のページの中のほとんどが通信教育の課題について書いてあります。それぐらい、通信についての問題認識があるので、ここをこの計画でももう少し具体的に文言を入れたほうがいいのかなと思っています。
 3点目です。目標の1に関わることですが、高等学校教育改革の推進に関わって、現場サイドから言うと、小中学校は何とか授業改善が進められているという。そして、高校を変えるためにどうするかということで、大学をまず変えて、大学入試を変えて、そしてようやく本丸である高校改革に今、着手しているはずなのですが、大学入試の共通テストが始まりましたが、試行問題のときよりも、本番ではかなりやはり、現実的に問題としてつくっていくのが難しいことがあるのではないのかなと思っています。
 ということで、高校の学びは変わりづらい現状がまだあります。そして、英語の制度設計もありましたが、英語も民間の検定を使うというのが先送りになっていますが、あれがどうなるのかということも私は注目しています。
 今、文科としては、普通科の高校の改革を進めていますが、この辺りのところがどうなるのかということも、この計画で、方向といいますか、各論ではやっていますが、計画にも盛り込む必要があるのかなということで、3点指摘します。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。高大接続の議論では、高校改革にも視点を置きながら、第3期計画にその要素を盛り込みましたが、御指摘のような様々な問題が出ていることは間違いないと思います。令和の日本型学校教育の答申の中ではその辺についての方向性は出ていますから、その要素を組み込んでいくことになるのではないかと思います。ありがとうございます。
 それは杉村委員、お願いいたします。
【杉村委員】  ありがとうございます。杉村でございます。まず、今回第3期のまとめをしていただきましたこと、また、今回のこの部会の会議以前に、議案の説明会を複数回にわたって開いていただきました事務局には、心からお礼を申し上げます。ほかの先生ともお話しする機会があって、大変ありがたく思いました。
 私からは、先ほど渡邉部会長から、次期に継続するもの、あるいは新しいもの、そうしたものを提案するようにとおっしゃっていただきましたのを受け、そのことと関連して、ぜひ、優れた実践を次に繋げて打ち出していくものの一つの例として、提案させていただきたいことがあります。
 ページでいきますと、7ページ目標2の豊かな心の育成に書かれていることなのですが、そこに、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進というのがございます。
 この項目は、ここに書かれていますが、私の考えではこの項目こそ、色々な項目に関わっている、しかも日本が優れた実践を持っているものであると思いまして、次期の計画にもぜひ入れたらよいと考える次第です。
 理由のひとつは、ESDというのは、御存知の先生方も多いと思いますが、まさに持続可能な開発と社会の担い手を、創り手を育てるということで、ちょうど現行の学習指導要領では、総則と、幼稚園から高校に至るまで全ての学校がESDに取り組むということが盛り込まれたという点です。
 もともとこのESDを含むサステナビリティという課題は、国際社会で議論され、特にESDについては、2005年から2014年まで「国連・ESDの10年」というのが実施されました。この間に日本ではユネスコスクールという、このESDを推進する基盤となる学校が、2005年の16校から2019年の時点では1,120校まで伸びていて、全世界で11,000校あるユネスコスクールの10%を占め、最多となっております。そうした実績があるということが2つ目の理由です。
 このESDで行われている実践は、そのすぐ下に書かれている環境教育ということをよく聞くのですが、実際にはESDが取り扱うものは、環境教育以外にも多文化共生や平和構築、生物多様性、防災、それからコミュニティーとの連携というように、色々な観点からの協力が可能であり、かつ求められるようになっています。日本の地域社会や、あるいはコミュニティーとの連携では、日本の学校におけるESDの実践として蓄積しつつありますので、ぜひこの部分を生かしていくとよいのではないかと思いました。
 今日では、世界中でこのESDのロードマップの実施が進んでいます。そこにはいくつかポイントがあり、ホール地域コミュニティーやホールスクールアプローチを進めようということ、それから政策的支援とともに展開していくということ、教育者の役割を重視するということ、さらにユース、若者を、もっともっとこうした問題に目を向けていく主体にしていく、そのための支援ということが挙げられます。そうした動向を踏まえますと、本日の資料の最後のページにある課題を見ながら、ESDがどこに関連するかと考えた場合、かなりの項目に関わるような気がします。
 例えば、現在、ESDが書かれているのは2番のところですが、1番の確かな学力の育成もそうですし、4番の問題発見・解決能力のところも当てはまりそうです。あと、番号だけ言いますと、6番、7番、それから11番、21番の海外発信にもつながるかなと思います。先ほど河野委員より、この目標間の関連性を生かしたKPIづくりということのお話がありましたが、こうした他の項目とのシナジーを、連携を通じてうまく生かしていくという意味で、ESDを、ぜひ計画に含めていただけるといいのではないかと思いました。
 以上でございます。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ESDはSDGsとかウェルビーイングといったところとの関連もあると思います。大変、貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、後から手を挙げられた方もいらっしゃいまして、少しポイントを絞ってお願いできればと思います。先ほど御指名した黒木委員、その後、吉見委員、お願いいたします。
【黒木委員】  御指名ありがとうございます。宮崎の黒木と申します。よろしくお願いいたします。私は3点、お話をさせていただきます。
 まず1つは、先ほど来、牧野先生や堀田先生のおっしゃったことと関連がありますが、コロナとウクライナの不幸な出来事は、これまでの15年間とは明らかに違うわけでございます。ですから、これからの5年間は、やはりここからスタートしなければいけないのではないかなと思います。
 ですから、この5年間が、ひょっとすると次の5年、10年に向けての接続とか再考とか転換とか、そういう役割を大きく担うべきだと思っております。そのような計画になるか、それがまず1つでございます。
 2つ目ですが、私は行政の責任を務めておりますので、行政の責任の方から申し上げますと、この5年間でできることもしっかり考えなければならないと思っております。
 それは定量的なことだけではなくて定性的なことも含めて、この5年間で成し遂げる。そして、それはもちろんその後の5年間や10年間につながることになるのかもしれませんが、そういった行政としての責任、そこにも注目をしていただいて、ぜひそんなチェックポイントを考えていくべきだろうと思っております。射程は長くていいのですけれども、短い射程もあるのかなと考えております。
 最後に3点目ですが、今の2つは全体的なことでございますけれども、最初に御提案のありました初等中等教育に関して申し上げますと、5番でございまして、私はもともと高校の教員でございますので、子供たちというのは何で勉強しなければならないのかとか、何で働かなければならないのかとか、そのようなことを本当に思っています。そういった子供たちが、言えば、今と自分しか見えていない部分があるのです。
 そういう子供たちに社会と未来を見せていくのが教育の使命だと思っておりますので、そういうところに、社会にどういう自分が役割を持つべきなのかというようなことを考えるキャリア教育は、とても大事だと思っております。
 それが自立に向かうことにつながっていて、ひょっとすると、くくりでは1の基本的な方針の中に入っておりますが、最も根底にある部分なのかなとも思っております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。先ほどの教育の普遍的な使命ですとか、社会の担い手としての視点での御指摘と受け止めさせていただきました。
 それでは、吉見委員、お願いいたします。
【吉見委員】  ありがとうございます。渡邉部会長から第3期の進捗を第4期にどうつなげるかについての意見をということですので、その観点から申し上げますと、私も先ほどの堀田委員がおっしゃった、個々の個別の項目をどうつないでいくかという課題ももちろんありましょうが、それ以上に大切なのは、これら全体をもっと大きな枠組みの中で組み換えていくこと、その方向を示すべきだという意見に賛成でございます。
 その点から申し上げますと、やはり一番重要なのはつなぎ目だと思います。つまり、初中教育は初中教育、高等教育は高等教育、社会教育は社会教育でそれぞれ専門の部会があっていろいろな議論をされているわけですけれども、やっぱりその全体を通じてといいますか、異なる段階のつなぎ目をどう再設計するかということが最も重要ですね。
 とりわけ、この初中教育と高等教育のつなぎの問題がすごく大きい。先ほど岩本委員のお話にも出ましたけれども、後期中等教育、すなわち高校の部分が極めて重要になってきていると思います。
 いろいろ見聞するところでは、中高一貫校が増えていますけれども、学校によっては大体4年か5年で指導要領の部分は全部終えて、あとはもう受験対策に集中している学校もあるように聞いております。実は、この高校段階の部分は、国際的に制度的な形態が非常に多様です。本当は、16歳から18歳にかけてという成長段階は全教育課程の中で最も重要な部分だと思うのですけれども、なかなか今は大学受験準備に使われている。ここの設計が今のままでいいのか、という問いがあるのではないかと思います。
 私は、この点を考える上で非常に重要なポイントが、年齢主義的単線主義からどう脱却化するかという点にあると思います。もう七十数年前に、六・三・三・四・二という単線的な軸が決まり、それでずっとやってきた。そこから動いていないのです。
 しかし、そろそろそれを変えていく、そういう方向に歩み出すタイミングではないか。その時に、六・三・三の最後の三ですね、つまり高校の部分をどういうふうに再設計していくかというところがとても大きな課題で、高大接続ということに止まらず、これを正面から議論していくことが、第4期にとって非常に重要なテーマなのではないかと思います。以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。以前は高大接続という議論でしたが、もっと普遍的に、全体のつながりを体系的にという非常に重要な御指摘をいただきました。そういった大きな枠組みの議論というのが重要だと受け止めさせていただきます。ありがとうございます。
 この後、大日方委員と今村委員より手が挙がっていますので、ポイントを絞って御発言いただければありがたいと思います。
 まず大日方委員、お願いいたします。
【大日方委員】  ありがとうございます。私からは全体的なことを1つと、個別のことについて2点、申し上げます。
まず全体的なお話に関しまして、いろいろな委員の方からも御指摘がありますけれども、パンデミックや戦争のこと、これらを踏まえるに当たり、日本の子供たち、あるいは我々そのものが考え、感じているのは、一つは、自分自身の問題や危機として感じにくいのではないかなという、どこか他人事であるとか、極端に自分の身近な、自身の生活のこと、中心のこと、あるいは、無関心になってしまっているような感じがいたします。この当事者として、あるいは主体的に考えて解決して選択していくということが、やはり必要になってくるのだろうと感じております。
もう1点、これ以降は個別のことについてですけれども、まず8ページの豊かな心の育成の指標について、私、今回拝見して驚いたのが、小学校と中学校のところでは自己肯定感というところです指標はあるのですけれども、多くの議論がされている若者世代の自己肯定感といったところについては、ここでは語られないのだなということが印象に残りました。
小中学校のときにはまあまあ肯定的にとらえているのだけれども、年齢が上がると、どこかでずれて自己肯定感が下がる、けれども、なかなかこの計画ではこの課題が見づらいというような、そういう指標の設定の仕方というところも少し工夫ができるとよいと思いました。
次に、健やかな体の育成というところですが、スポーツ基本計画の部会長を務めさせていただいて策定をした私が言うと、少し妙に聞こえるかもしれないのですが、この健やかな体の育成というところと、体力基準、体力という指標が、私の感覚の中では必ずしも一致しない部分があり、実はスポーツ基本計画の部会の中でも他委員からも意見も出ていたところであります。
指標には継続性というところが重要なのは分かりつつ、これだけを測定指標とするのでよいのかというところについても議論が必要かなと思っております。
例えば質的な指標という意味で、スポーツが好き、運動すること、体を動かすことが好きだと思う子供がどのように増えていくのかというようなところについての指標を設定することも考えられるのではないかと思います。
以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。先ほどもお話があった、量的な面から質的な面へという視点とも重なる御指摘かなと受け止めさせていただきました。ありがとうございます。
 今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  今村です。私から、3点だけお話しさせていただきます。
 1点目なのですけれども、先ほど岩本委員もおっしゃいましたけれども、今年成人年齢が下がったというところはきちっと踏まえなければいけないと思いますし、何よりも少年法も変わっている状況なので、子供たちが判断する、大人になっていくということを、この教育課程で本当に重く受け止めながら取り組んでいく必要があると思っています。
 その観点から、豊かな心の育成というところで、どちらかというと伝えていくという内容が多いように思うのですけれども、自らが判断していくこと、判断する主体になっていくのだということを前提にした教育、例えばなのですけれども、既存の学校の校則、ルール、部活の在り方、それらの在り方に対して生徒自身がどう思っているのか、その改善に自ら関わっていけないのか、そういったところを、今、全国各地でブラック校則を行政主導で、例えばトップダウンで変えていくとかそういうのもあるのですけれども、このような学びのチャンスはないのだということを前提に、その改善に生徒たちが関わっていくような、そういうやり方を推進していくべきなのではないかと。まさにそれが豊かな心と言われるものなのではないかと思いました。この点が1点目です。
 2つ目なのですけれども、目標15の「多様なニーズに対応した」というところで書いてある様々なことなのですけれども、多様なニーズに対応するということには手も足も財源も足りなくて、人も足りないという現状の中で、多様なニーズに対応するというのは本当に大変なことだと思います。
 特に、私、この直前まで時間がちょうどかぶっていたのですけれども、特異な才能のある子供たちをどのように支援していくのかという有識者会議に参加していたのですが、そういった不登校という困難さだけではなくて、能力が高いことによる困難さとか、そういった課題も出てきて話題になってきている中で、多様というのは100人いたら100人全員の多様なニーズがあるという前提に立つことが必要で、行政だけの設置目標とかそういうことではなかなか対応し切れないと思うのです。
 ここに、やはり社会教育もそうですし、民間活用を含めて全体で何をなし得ていて、どこまでなし得ていなくて、誰を取りこぼしているのかということをはっきりするような評価の仕方というのを、ぜひともやっていくべきなのではないかと思っているというのが2点目です。その中には教育支援センターとか、例えば夜間中学とか、そういった公が設置している特例校とか含めて、不登校の施策はいろいろと動いていますけれども、それらもありますけれども、やはりフリースクールとか、色々な受け手があると思うので、その地域資源を含めてみんなで受け止めていく、誰を取りこぼしているのかというところが評価されていくような仕組みで、ようやく多様なニーズに対応していけている実態が見えるのではないかと思います。
 なので、そこの辺りは、評価の仕方、政策の打ち方について、次の場面では考えていくべきだと思っています。
 3つ目なのですけれども、全体的にたくさんの目標、先ほどたくさん目標があるなという話もありましたけれども、こども家庭庁が今日、衆議院を通ると思うのですけれども、その中で、この文部科学行政から外していけるものはないのか。
 つまり、学校の仕事から外していけるものはないのか。本当にないのだろうかということ。学校だけではなくて教育委員会を含めてですけれども、その観点もちょっと踏み込んで見つけていくということも、次にやっていけないものかなと思っています。
 例えば16ページに「家庭の教育力」という言葉がありますけど、本当にそれをやるのかと。それはもう厚生労働省のこども家庭局の仕事にしてもいいのではないかとか、やっぱり書くからにはきちっとやらなければいけないということだと思うので、そういったことも考えることが、先生たちや教育委員会のスタッフの方々の働きやすさ、または働きがいづくりにほかならないと思いますので、何を外すかという論点も、何の目標を外していくのかという論点も重要な点かなと思いました。
 私からは以上です。
【渡邉部会長】  大変重要な御指摘をいただき、ありがとうございました。最初の主権者教育のところは、有識者の方にも御議論していただいておりますので、その要素をどう第4期に生かせるのかということだと思います。2つ目の包摂性とセーフティネットは、従来もかなり書き込んでいるのですが、特異な能力も含めた多様性をどう生かすのかというのは、新しい指摘になるのではないかと受け止めさせていただきました。
 最後のところ、働き方改革も含めて、学校マネジメントに関わる要素をどうしていくのかという御指摘だと思いました。ありがとうございます。
 それでは、初等中等教育のところについては以上とさせていただきまして、残る時間、大分押していますので、高等教育段階と生涯学習・社会教育関係・スポーツ全体を通じて、御意見を伺いたいと思います。大変申し訳ありませんが、区切りなく、全体を含めて御意見いただければと思います。
 それでは、安孫子委員、お願いいたします。
【安孫子委員】  ニトリの安孫子です。ありがとうございました。2つあります。
 1つは、まず目標5番の「社会的・職業的自立に向けた」の13ページ、「高等教育機関における」で、DX分野のテーマが取り上げられていますが、企業の立場から言いますと非常に重要な人材育成のテーマでありまして、メインテーマで扱っていただくことをお願いしたいです。
 デジタル専門人材の育成も重要なのですが、もはや企業においては、日々の業務の中の効率改善で、デジタルリテラシーが必須の状態になっておりますので、この分野をさらに強化をしていきたいと感じます。
 また、こういった教育体系を構築する上では、14ページにありますキャリア教育の充実はとても大事だと実感していますので、個々のキャリアプランに、きちっと自分のなりたい姿が実現できるようなレールが見えているかが重要です。それを踏まえ2つ御提案したいと思います。
 1つは、この教育課程の中で、高等教育、初等中等教育で、企業のプロフェッショナル、または経営者の教育現場への参加の機会が大いに増えていくべきではないかと思うのが1つ。
 そして、教育体系をつくっていきながら目標を設定する上では、やはり結果として、労働生産性の低い日本、809万円というこの実態を、いかに上げていくかという具体的な目標も、やはり必要なのではないかと思います。
 2つ目ですけれども、これは全体的な運用の話になりますので、49ページ、50ページ、ここでお話を伺いながら、大変な御尽力に感謝するとともに、少し違和感があるところがあります。
 1つは、課題が非常に多いというところ。課題が多ければ、優先順位をつけないとなかなか成果に結びつけられないと思います。
 2つ目が、評価基準が非常に分かりづらいというところ。微増で丸なのか、または向上で丸なのか、その辺の成果がなかなか読み取れないというところが、企業側としては非常に違和感があります。
 あとは、5か年、5年間という中長期での計画を実装していく中で、途中で、例えば5ページの、いじめ問題があまり解決できてないみたいなところ、こういったことが分かったら、途中でこの進捗を確認しながら、どう対策を打っていくかも、5年を通してどんな成果を導くのかが具体的であれば、途中の動かし方も少し違うと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。教育未来創造会議でも指摘されている内容とも関係する大変重要な御指摘をいただいたと思います。ありがとうございます。
 それでは川口委員、お願いいたします。
【川口委員】  御指名ありがとうございます。東大政策評価研究教育センターの川口と申します。政策評価の観点からコメントさせていただければと思います。
 部会長から、この第3期の計画はロジックモデルに基づいて策定されたというお話がありましたけれども、今回の振り返りを拝見しますと、特定の政策が目標の測定指標にどう影響しているのかというところが明らかでないケースもあって、課題が残ったのかなと思いました。
 本来であれば、第3期の振り返りを通じてエビデンスを得て、それを第4期の計画策定に生かしていくというEBPMの観点が重要だったと思いますけれども、これからエビデンスづくりをしていると、今年度中に計画策定するということは難しいと思いますので、今からできることは限られているのかなと。
 もしもやるとすれば、的を絞って分析を行って、次の計画につなげるというようなことが可能かもしれない。例えばなのですけれども、課題の14で取り上げられている高等教育の無償化と貧困世帯の児童の大学進学率の増加の関係などは深掘りして、この政策の改善の余地がないかというのを探って次の計画につなげるというようなことが、例としてあってもいいのかなと思います。
 次の計画策定という観点から見てより重要だと思うのは、これから行っていく施策を、施策を行いながら、それでエビデンスを得ていくというポリシー・ベースド・エビデンスという考え方だと思います。
 例えば、様々な施策の効果を評価できる生徒、教員、管理職のパネルデータの整備ですとか、様々なデータを用いた施策の効果分析を次期計画の中に盛り込んで、それを基本計画を実行している中で、同時進行で評価していくというようなことが望ましいのではないかと思います。
 その次の第4期の計画が終わったときには、エビデンスが蓄積されていますので、それを見ながら第5期の計画を練っていくというようなサイクルというのをつくっていけるといいのかなと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。確かに、今の段階でエビデンスを全部整備して次に進もうとすると、かなり無理があると思います。スケジュールもありますので、次の計画の中でエビデンスを生かしながらアジャイル型でという視点だと思いました。大変参考になる御意見をありがとうございました。
 それでは次に、松浦委員、お願いいたします。
【松浦委員】  ありがとうございます。慶應義塾の松浦でございます。私は高等教育ということで2点、関連することですけれども申し上げたいと思います。
 1つは、これまでも出ていることですが、量から質へという、これは指標ということで、初中の問題のときに議論が出ていましたけれども、指標としてももちろんなのですけれども、高等教育の学習成果の評価自体に、そういう発想をもっと、次の第4期では浸透させていく必要があるかと思います。
 目標4の指標で、これはよく出てくるものですが、授業外の学習時間ということの数値が出ておりますけれども、まさに今、デジタルとリアルの融合ということでいきますと、授業内外とか、それから学習時間というものが、どれぐらいの学習量の計量的な意味のある数値になっているかということは、今後見直していかなければならないということ。教室の内外、あらゆるところで学習が進んでいくものを、質的にきちっと評価をしていく。そのためには、大学設置基準自体が弾力化されているとはいえ、やはり単位制というのは時間量でもって学習成果をはかる、あるいは教育をはかるという発想がありますので、そうしたものに、いきなりそれを変えていくということではないにしても、その発想のシフトを第4期に向けてつくっていくことも必要かと思います。
 それとも関連してなのですけれども、接続のこと、吉見委員がおっしゃったことに私も共感をするのですが、高大接続の評価については、残念ながら大学にいる者としては、特に入学者選抜の改革については非常に混乱をしたという思いがございます。
 いろいろな原因はあるとは思うのですが、やはり接続改革といいながら、結局は入学者選抜の継ぎ目のところだけの議論をしてしまったからではないのかと思います。
 やはり、初等中等教育と高等教育との内容も含めた接続、それから新たに大学院も含めて、第3期で大学院改革についてはかなり進展したということはとても実感しているのですが、大学院改革のキャリアパスの多様化といっても、今度は大学院を出た後のキャリアになかなかうまくつながっていないところもありますので、教育制度の接続だけでなく、やはり社会と教育制度の全体的な接続関係というものを、第4期では視野に入れる。それこそが基本計画として、大きな枠の中での議論ができていくのではないのかということを期待しております。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。先ほどの吉見委員と同じ視点からの御指摘だと思います。高大接続の議論では、どうしても入試問題に特化した形になってしまいました。高校改革は、令和の日本型学校教育の答申ではかなり焦点を当て、色々なところから御議論をいただきましたので、全体をどうつなぐかといったことをもう一度、高校改革も含めて再構築すべきと思います。ありがとうございます。
 それでは、永田副部会長、お願いいたします。
【永田副部会長】   ありがとうございます。第4期に向けて、どのようにつくっていったらいいかということだけについて意見を言わせていただきます。
 今日も、初等・中等教育から始まって高等教育、生涯教育と続き、どこで話したらいいか迷いませんでしたか。皆さんも。どこでも話さなければいけないということは、分けては駄目だということだと思います。どの局面に対しても、初等・中等・高等教育、それから生涯教育が全部コミットしているはずなので、そのような分け方をまずはやめた方がいいです。
 それから、今回見ていて、とても頑張ってまとめてありますが、指標の任意性が非常に高過ぎて、冷静な判断に届かない。このような見方で見たらこう見える、あのような見方で見たらあのように見えるというのが出てきてしまっています。水準の設定もそろっていません。
 政策ドリブンに、例えばICTの機器が用意されましたというのは、ダイレクトに答えは、増えました、となります。しかし、それは目標でも何でもなくて、いかにICTが教育効果を現したかを本当は見なければいけないことですが、そうはなっていないわけです。
 我々は第2期をポリッシュアップしてさらに第3期に、大志を抱いてつくってゆくわけですから、やはり指標設定を考えなければいけない。
 そのためには、我々が認識しなければいけないのは、目標がある、課題がある、そこに政策や施策がある、それの直接のアウトプットと、それがもたらすアウトカムの関係を、もう少しAI的な解析をしないと、つながらないだろうと思います。
 ですから、先ほど言ったように、初・中・高・生涯、全部外してほしいと思います。それから、それぞれの水準、成果は、ダイレクトにリニアな結果として出るものはいいですが、そうではないものは、そこにどんな変数が入っているかは、先ほど何人もの方がおっしゃっていましたが、複合的に関わっているので、そのような観点を逃さないようにしないといけない。
 最後にアジャイル的にいうと、例えばこの第3期のところで、コロナでいろいろな施策が打たれました。その施策が、それぞれこの21の目標に、どこに、どれだけ、どう効いたかというのは、ある程度検証ができるはずです。
 ですから、そのように設定しなければいけないし、第4期ではぜひともアウトカムを、先ほどから出ていたヒューマンセントリックな社会、それにどれだけ課題や目標、政策がコントリビュートしたか、インクルーシブな社会の構成にどれだけ役立ったか、一つ一つの地球規模課題解決にどうやって役立ったかということを最終的に見えるようにしたらいいと思います。
 なかなか難しいです。なぜなら、教育の成果が5年で出るわけがないと思っていらっしゃる方々が、5年で出ることを今議論しているというところに矛盾があります。
 ですからもっと、本当に計画から成果へコリニアにつながっているものと、その先にあるものをうまく配置して、計画を立てないといけないと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  大変、本質的な御指摘をありがとうございました。
 先ほど出た御意見とも重なりますが、おっしゃっていただいた、アジャイル的にどう組んでいくかということに尽きるのかなと思います。
 今、立ち止まって全部を分析することはできませんので、御指摘のように、アジャイル型で組み換えながら、新しい要素が入ってくるデータベースも生かして進めていく必要があると思いました。
 また後ほど事務局から何か御意見あればお聞きしたいと思います。
 それでは次に内田委員、徳永委員、お願いいたします。最初に内田委員、お願いいたします。
【内田委員】  3期の状況の取りまとめを本当にありがとうございました。状況が非常によく分かり、整理されていたと思います。
 この3期の中で、やはり多様性というようなことが様々な場所で盛り込まれていたのではないかと思います。グローバル教育もそうですし、こうした多様な人材の育成をしていこうという方向性自体は、私自身はよかったのではないかなと思いますし、新しい次の計画の中でも重要視されているウェルビーイングということにも、多様性がつながっている概念であろうと思いました。
 一方で、この多様な学びが、実感として本当に学びを受けた側の人たちにとって有効な形で機能しているのかどうかということに、少しまだ疑問点が残るなということを考えていまして、これは次の計画を考える上でも、どのようにステップアップしていくのかということを、しっかり議論していく必要があると思います。
 計画の中でいうと、恐らく5番や7番、あるいは10番から12番の、様々な生涯を通してスキルを身につけていくということと関わっていくと思います。どのようなスキルというのを持っていると社会の中で活躍ができるかどうかということについて、学生それから社会人の人たち、それから子育て中の人たちにそれぞれ調査を行ったところ、多くの人たちがコミュニケーション能力と回答しました。
 こういう計画にあるように、非常に多様な学びというものを用意しましょうということが言われているにもかかわらず、教育を受けた側、あるいは教育に関連したことを考えている親の側とかの実感として、「結局コミュニケーション能力でしょう」とまとまってしまうというのは、多様な学びという視点から考えると、非常に単一的になってしまっていると思います。本当はコミュニケーション能力というと、細かくブレークダウンしていけば、そこには批判的思考であるとか、自分の考えについて整理する力、あるいはそれを外に発信していく力という、様々なことが本来的にはあるはずなのですけれども、とはいえ包括的に「コミュ力」に集約されてしまっている。すると多様なスキルという個人差が認められる方向性が機能していないのではないかなというような懸念も抱きました。コミュニケーション能力の重要性は日本に限ったことではなくて、アメリカの人たちの回答にも見られました。
 ところが、能力を身につけた後に、それが他の国でも通用するか。あるいは、全然違う分野のところに転職をしたとしても通用するかどうかという意識については違いがあり、日本の方が、全体的には、自分が持ち得た能力やスキルというのは、この場では使えるけれども違う国に行ったら使えない、あるいは全然違うフィールドに転職したら使えないと思う傾向があるようです。多様な形でのスキルは、自分が一旦身につけたら、それは他のところでも通用するのだという形で理解されるようになることも必要かもしれません。
 また、先ほども指標の話が出ましたが、学んだ側にとっての実感がきちんとあるかどうか。これは多分ウェルビーイングの話とも関わってくると思うので、ぜひ、そういう主観的な部分についても測定していくということを検討する土壌づくりというのが必要なのではないかと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。学ぶ側から見たときに、ウェルビーイングにつながっているのかどうかという視点が重要だと理解しました。このウェルビーイングについては、この次の段階でテーマ設定して議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、徳永委員、お願いいたします。
【徳永委員】  ありがとうございます。丁寧にまとめていただき大変ありがとうございました。目標14や15と関係してくると思うのですけれども、第4期に向けてということで、やはり子供や若者の声を反映した政策づくりというのを意識していく必要があるのではないかと思います。
 特に目標15では、多様なニーズに対応した教育機会の提供の必要性について、障害のある子供とか不登校の子供とか、外国人児童生徒が書かれていますけれども、今回の計画をつくる際や、目標の達成状況をはかるときに、こういった子供たちの声に耳を傾けることが非常に重要なのではないかと思っています。
 例えば会議で、こういった若者たちの声を聞くということかもしれませんし、あるいは一部であっても、今議論しているこの案について、当事者に参加していただいて議論に加わっていただくことかもしれないと思っています。そのような形で、当事者の子供たちのポテンシャルを私たちがきちんと認識して、それを言葉にして組み込んでいくという視点も、次期に向けてとても重要になってくるのではないかと思います。
 また、目標15のところで、今回はそこまで記載されていなかったのですけれども、外国人児童生徒の教育について、やはり重要な課題として取り上げていく必要があるのではないかと思います。
 既に日本は多様化が進んでいて、今後ますます多文化化が進み、多様な言語的・文化的な背景を持つ人々が暮らしていくと思いますが、今、そういった住民たち、そして子供たちを支援の対象として見る視点が非常に強く多様性が尊重される社会を共につくっていく担い手という視点があまり打ち出されていないように思います。今後に向けて、今、外国人児童生徒の教育体制の整備が進んでいますけれども、こういった子供たちや住民たちの日本語能力の問題だけに焦点をあてるのではなく、子供たちが様々なポテンシャルを持っていること、例えば多言語の能力であったりとか、文化間を調整する力だったりとか、グローバルな視野を持つことなどですが、そういったストレングス、強みを私たちがきちんと認識して、強みが引き出されるようなアプローチから、こういった当事者と共に多様性のある社会をつくっていく視点をきちんと打ち出していく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。生徒児童の側、併せて、外国人児童等を含めた多様な学ぶ側の視点で、そういった声も聞く必要があるのではないかということでした。これも大変な重要な視点だと思いますので、また後日のテーマとして議論したいと思います。ありがとうございます。
 それでは、清原副部会長、お願いいたします。
【清原副部会長】  ありがとうございます。清原でございます。今回、第3期の振り返り資料の作成とそれに基づく御説明をいただいたことは誠にタイムリーで有益であり、本日も委員の皆様から、本当に有益な視点を提起していただいたことに感謝申し上げます。
 生涯学習等に関連して、3点申し上げます。1点目は、本日の御説明を伺いまして、初等中等教育のみならず、高等教育、生涯学習の分野においても、コロナ禍の地域コミュニティの課題を検証しつつ、今後の在り方を検討する意義を確認したいと思います。
 例えば生涯学習については、目標10、「人生100年時代を見据えた生涯学習の推進」の課題と対応において、「人生100年時代においてマルチステージの生き方が志向される中で、高齢者を含めた全ての人々がそれぞれのニーズに応じた学びを可能にするため、ICTの活用などによる柔軟な学びの機会の一層の充実を図るとともに、特に高度な学習内容については、大学や専門学校等におけるリカレント教育を積極的に推進していく必要がある」と指摘しています。
 特に「リカレント教育の充実」は重要な課題であり、目標12の「職業に必要な知識やスキルを生涯を通じて身につけるための社会人の学び直しの推進」の部分の課題として明記されておりますように、「行政機関、大学、専門学校、企業等が連携・協働する必要」について賛同いたします。
 そして第4期においては、これをただ課題、目標として設定するだけではなくて、いかに具体的な連携や協働の在り方を示していくかが重要だと思います。
 戻りまして、目標10の最後の課題にこういう記述があります。「新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ文化芸術活動については、文化芸術事業や文化芸術団体の活動に対する支援等により、国民の文化芸術鑑賞機会の拡大を推進する」と。
 この部分で、文化芸術活動を明示されましたのは、とても深刻な影響を受けたからです。同時に、地域における生涯学習・社会教育の現場も、学校教育同様に大きな制約を受け、課題に直面しています。
 したがって、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ地域の取組についてはぜひ具体的な内容を今後提起していく必要があると思います。
 関連して、目標11、「人々の暮らしの向上と社会の持続的発展のための学びの推進」のところでは、進捗の総括の最後に、実は「地域コミュニティでの活動を促進していく必要がある」のだと、改めて「地域コミュニティ」というキーワードを明記していただいております。
 学校教育において、これまでの委員の皆様の御意見でも、「コミュニティ・スクール」がいかに有意義であるかということが再確認されました。それと同様に、従来の生涯学習・社会教育の実践を踏まえて、ますます地域コミュニティのまちづくりと生涯学習の位置づけが重要と受け止めました。
 また、初等中等教育の課題に、ヤングケアラーという重要な問題提起もございました。また、不登校・虐待等の子供たちの人権が損なわれる事案については、教育委員会と福祉部門との連携はもちろんのこと、地域社会の活動の力が重要です。学校教育と生涯学習・社会教育の関係性の強化を、地域をベースに、さらに重要性を、「コミュニティ・スクール」の視点からだけではなくて、生涯学習の視点からも確認したいと思います。
 2点目に申し上げたいのは、部会長が提起された、「多様性、包摂性、ウェルビーイングを尊重した、誰一人取り残さない」生涯学習の方向性についてです。
 これは、目標13の「障害者の生涯学習の推進」、目標14の「家庭の経済状況や地理的条件への対応」、目標17の「ICT利活用のための基盤の整備」においても、経済状況や地理的条件の影響を受けることなく、また障害の有無に関わらず、全ての人に学習の機会が保障されていかなければならない。それが初等中等教育・高等教育のみならず、生涯学習においても保障されていかなければならない。
 これは吉見委員が指摘されました、初等中等教育・高等教育・生涯学習の「つなぎ目」を示していく必要と同時に、共通して人々の学ぶ、学習するという、まさに基本的な教育の保障ということを、全ての分野でさらに充実していくための方向性を、ぜひ今回、充実して示していきたいと思います。
 3点目、最後です。堀田委員、河野委員より、指標KPIの選択や、量と質等に関して触れられましたし、ほかの委員からも、指標の選択や解釈の重要性について指摘されました。
 生涯学習の場合は、成人のみならず、徳永委員が提起されましたように、私も、子供・若者の声を傾聴する、学習者のアンケートとかヒアリングの機会、そして初等中等教育の場合は児童生徒の当事者の声、高等教育の場合も、アンケートにとどまらない学生の声を反映することの仕組みの提案も、今後は重要になっていくと思います。
 本日、恐らく国会の委員会で「こども基本法案」が採択されるのではないかなと見込まれます。子供の基本的人権の保障をしていくために、それを教育や生涯学習の機会に反映していくための仕組みが提案できたらなと感じています。
 以上です。どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。生涯学習分科会での色々な議論が、非常に関係しており、御指摘のような視点が重要になっていると思います。
 とりわけリカレント教育については、考え方としては第3期計画でも明確に出ているのですが、今日的なリカレントという視点でより強化すべき項目だと思います。ありがとうございます。
 あと4名の方が手を挙げられていますが、大分時間が押し迫っているため、大変申し訳ないですが、一言ずつお願いできればと思います。
 関委員、村田委員、牧野委員、大森委員の順で、まず関委員からよろしくお願いいたします。
【関委員】  1点だけということで、まず社会教育施設が、この数年間で首長部局への移管が相当程度進んでいったかと思うのですけれども、地域のコミュニティーとの連携下で、地域課題解決学習を進めていく上で社会教育がどのような役割を担っていくべきか、その方向性について、地域の独自性に委ねるのか、ある程度、国として全体の共通性を示していくべきか、その辺を議論していけたらいいのかなと思っております。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。
 それでは村田委員、お願いいたします。
【村田委員】  私からは目標の1の確かな学力について、それから目標4の問題発見・課題解決能力の修得のところ、それと、先ほど吉見委員からありましたように大学と高等学校、中等教育と高等教育の接続、あるいは、いろいろな方がおっしゃいましたコロナとかウクライナのことも含めての観点から、お話を一言だけ申し上げます。
 いずれにしましても、VUCAの時代に、それをどう解決していくかということを考えたときに、例えば確かな学力の育成、これは15歳でPISAを受けたときにはOECDトップクラスなのですが、残念ながらハヌシェクという経済学者の分析では、このPISAの数学あるいは理科、科学のリテラシーと、生産性とか経済成長率が極めてプラスの相関を持っているという事実があります。ところが、日本の労働生産性はOECDのうち21位です。という意味では、この数学と理科の能力がそこにつながっていない。
 これは大学のところでうまくいっていないのです。文系・理系に分かれていますから。高等学校は20%しか理系がいない、大学・高等教育でも26%しかいないという、そこをどうするかという問題。これをちゃんと教育をして、まさに分理横断、未来創造会議でも1つのテーマになっております分理横断をどうするかということが重要かなと思います。
 もう1つは4番目、問題発見・解決能力ですが、これも高等学校・中等教育のところでは探究型の教育が入れられているにもかかわらず、むしろこれからの大学教育での問題はPBLをどうしていくかということ、そういった教育の在り方が根本的に変わろうとしているわけです。そういう教育をしていくことでしか、先が見えないVUCAの時代に対する色々な問題をどう考えていくかという能力は養われないわけで、そういった大きな視点で、高大接続の観点、それからそういった大きな視点で全体像を捉え直すということが重要なのかなと思っております。
 2つの例を挙げさせていただいて、意見を述べさせていただきました。以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。分野横断的なレイヤー型や、DX時代の横断性というような考え方にも通ずる、大変貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
 それでは牧野委員、お願いいたします。
【牧野委員】  すみません、度々失礼いたします。もう時間がありませんから簡単に申し上げます。私も、実は先ほど永田委員がおっしゃったことにとても共感をしておりまして、私たち自身が今、日常生活の中で様々な問題が起こる中で、やはり教育をどう受け止めたらいいのかというところに、人々の戸惑いがあるのではないかなと思うのです。
 それが例えますと、従来のいわゆる産業社会といいますか、大量生産・大量消費で経済を発展させていくような社会の産物であるような学校ですとか社会教育・生涯学習といった制度から、新しい社会を迎えるに当たって、私たちが日常生活で感じていることをうまく吸い上げていけるような制度にしなければならなくなってしまっているのではないかと思います。
 その意味で、私たち自身が、教育ですとか学習といったものが新しい社会をつくっていく基盤になるものだということを受け止め直す必要があるのではないかというふうにも考えております。
 各省庁の施策も、昨今コミュニティー政策にどんどん下りてくる中で、学習をベースにするような形でのコミュニティの在り方の検討が進められていることもあります。その意味では、ここまでにしておきたいと思いますが、「教育立国」と言ってきたのですが、「学習立国」というような形での新しい社会の提示の仕方も、これから求められるのではないかとも考えております。
 また後から文書で出したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございます。
 それでは最後になりますが、大森委員、お願いいたします。
【大森委員】  ありがとうございます。6年後ということを考えて現場から申し上げます。
 12番と20番ですけれども、リカレントの重要性がますます増す中で、今これは社会教育の観点から、学ぶ側の環境整備をしっかりと書き込んでいただいてきたかなと思いますが、いま一つ頭打ちになっているという部分で、それを提供する側、いわゆる高等教育にとってのインセンティブというのが、まだ見えづらいと。
 18歳を受け入れないと大学として認めてもらえないという状況があって、パートタイムの社会人学生が幾ら増えたとしても、大学としてはあまりインセンティブがないという状況があるので、提供側にどうするかというのは、高等教育と社会教育とでタッグを組んで考えていかなければいけないだろうということが1点。
 それの関連で、20番で地方小規模大学ということを書いていただいていますが、では18歳がいないなら社会人に入ってもらおうといったときに、そういうふうにはいかないということがいま一つ問題があるということと、それから、この先大学間連携をさらに進めましょうといったときに、連携推進法人の機能をもっと拡充して、連携のメリットが出てくるようなことを次は考えていってもいいかなと思っています。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 今日は大変貴重な御意見をたくさんいただき、本当にありがとうございました。
 本日のこのフォローアップを踏まえて、次回以降は、御意見いただいた中でも特に重要テーマと思われるところを定めて、優先的に議論を進めていきたいと考えます。
 諮問文で示されましたテーマや、事務局が委員の先生方に御意見を伺った中で関心の高かったもの、あるいは今日伺って重要だと思われる、例えば、これからのICT利活用の第2ステージに向けた教育DX、デジタルトランスフォーメーションに関するテーマ。それから、ウェルビーイングについては何人かの方から御意見が出て、これからの視点として大変重要だと思いますので、ウェルビーイングの視点や、誰一人取り残さない教育、多様性と包摂の視点があると思います。
 また、社会や地域とのつながりの視点、グローバル人材育成の視点、それから教育現場での計画の実効性というようなことが、本日御意見いただいた内容も含めると重要テーマになるのではないかと考えました。
 この辺は事務局で整理していただいて、また一つ一つのテーマをこれから議論させていただきたいと思います。その上で、夏頃までに総論的な議論を始められたらと考えます。
 次回の教育振興基本計画部会は、6月2日の14時を予定しておりますので、ぜひ御出席をお願いいたします。
 それでは、今日は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――