中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第6回)・基本問題小委員会(第1回)・初等中等教育分科会教員養成部会(第127回)合同会議議事録

1.日時

令和3年12月22日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 研修の充実と教員免許更新制の発展的解消に関する制度改正の方向性について
  2. 校内研修(現場の学び)に関するヒアリング
  3. 教職課程認定基準の改正等について
  4. その他

4.議事録

【渡邉部会長】  それでは定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第6回の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会、そして、第1回の基本問題小委員会、あわせて、第127回の初等中等教育分科会教員養成部会の合同会議を開催させていただきます。
 本日もウェブ会議システムを活用しての開催でございます。
 今申し上げたように、合同開催という形になっておりますように、前回、設置をお認めいただきました基本問題小委員会の第1回を兼ねております。また、この基本問題小委員会につきましては、お手元の資料1にございます委員の皆様にご就任をいただいております。
 なお、この小委員会の主査並びに主査代理につきましては、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会の運営規則に定められており、部会長が指名することとされております。したがいまして、このたび、主査を加治佐委員に、主査代理を松木委員にお願いしたいと考えております。お二人の委員につきましては、これまでも、特別部会、教員養成部会等における議論をリードしていただきました。引き続き、よろしくお願い申し上げます。
 また、この基本問題小委員会でございますけれども、専門委員といたしまして、京都府教育委員会の橋本教育長にも御参加いただくことになりました。橋本委員につきましては、前期の中教審にも御参画いただいておりました。ここで一言、御挨拶いただければと思います。橋本委員、よろしくお願いいたします。
【橋本委員】  皆さん、こんにちは。京都府の教育長、そして、全国都道府県教育長協議会の副会長をしております橋本です。今御紹介がありましたように、1期前、教員養成部会の委員もさせていただいておりました。改めて、よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
  基本問題小委員会の委員の皆様におかれましては、参考資料3にございますとおり、先日、整理いたしました検討の方向性に基づいた議論をお願いしたいと思います。
 それでは、本日の会議の進め方について、事務局からご説明をお願いします。
【中村教育人材政策課長補佐】  文部科学省教育人材政策課の中村です。
 会議の進め方について、確認させていただきます。
 本日も会議システムを活用していますことから、発言に当たりましては、聞き取りやすいようにはっきり御発言いただきたいこと、それから、御発言の際は名前をおっしゃっていただきたいこと、そして、発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただきたいこと、御発言に当たっては、手を挙げるのボタンを押していただきたいことにつきまして、御協力をお願いいたします。
 Webexのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど、補助的な使用としていただくようお願いいたします。
 本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。
 配付資料は、議事次第に記載のとおりでございます。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 本日でございますが、3つの議事を用意しております。
 まず、議事の1でございますが、前回11月15日に特別部会で取りまとめました「審議まとめ」を受けた今後の制度改正、および研修受講履歴を活用した対話と奨励のイメージ等について、事務局の説明の後に意見交換したいと考えております。
 議事の2でございますが、こちらでは、新たな教師の学びの姿を実現する「研修」に関して議論を深めるという趣旨から、特に校内研修、現場での学びに光を当てまして、お二人の委員から発表をいただいた後、意見交換を予定しております。
 本日は、まず、教科の垣根を越えた取組がしづらい面もあると思われる中学校における事例研究、事例発表ということで、宮澤委員より発表をお願いしております。
 それから、もう一人は、教育現場での実践等も踏まえた発表ということで、荒瀬委員にお願いしております。
 議事の3でございますが、教職課程認定基準に関わる内容でございまして、教員養成部会の議事ということで準備をしております。したがいまして、こちらの進行につきましては、教員養成部会の加治佐部会長にお願いしたいと考えております。
 冒頭申し上げましたように、本日は基本問題小委員会の第1回を兼ねてございます。これに関して、議事内容の補足説明につきまして、事務局からお願いします。
【中村教育人材政策課長補佐】  参考資料3-1を御覧いただければと思います。こちらにつきましては、前回の特別部会、11月15日に御議論いただきまして、整理いただきました検討の方向性を概要の形でお示しているものになります。
 今回、基本問題小委員会第1回を兼ねておりますので、この後に実質的な議論が続いていくわけですけれども、本日は、この中で言いますと、ローマ数字2の検討の方向性の4つ目の区分にある研修、この中に、さらに、新たな教師の学びの姿の実現に向けた体制整備というところを検討テーマとして整理していますけれども、これに関わる議論にもなってきますので、そういった位置づけで基本問題小委員会第1回という形で開催させていただきたいと思っています。この後のスケジューリングにつきましては、その下にありますように、基本問題小委員会において専門的な議論を深めて、令和4年夏頃までをめどに小委員会における一定の結論を得るといったような流れで行ければと思っておりますので、御承知おきいただければと思います。
 補足は以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。今後の小委員会の運営については、今の説明のとおりでございます。
 それでは早速でございますが、議事の1に入らせていただきます。
 まずは、議事の内容について、資料2に基づきまして、事務局から説明をお願いします。
【平野教員免許企画室長】  失礼いたします。教員免許企画室長の平野でございます。
 議事1に関しまして、説明をさせていただきます。資料の2-1を御覧ください。研修の充実と教員免許更新制の発展的解消に関する制度改正の方向性についてということでございます。
 文部科学省では、先日お取りまとめいただきました「審議まとめ」というものを踏まえまして、次期通常国会での法案提出を目指して、現在、具体的な検討、調整を行っているところでございます。
 資料2-1でお示しするものは、現在、文部科学省として検討中の法案提出に向けての内容でございます。今後も関係府省との調整等により、内容について変化が生じる可能性はあるわけでございますけれども、現時点でお伝えすることができる内容ということで、本日、御説明させていただくものでございます。
 「審議まとめ」においては、いわゆる教員の資質の向上のための対話と奨励の仕組み、また、教員免許更新制の発展的解消、このような内容が盛り込まれていたわけでございます。
 (1)公立学校の教師に対する学びの契機と機会の確実な提供ということで、ここの部分は教育公務員特例法の改正でございます。
 「審議まとめ」でも、研修受講履歴等というものについて、しっかりと記録、管理をして、その履歴を活用しながら、効果的な資質の向上を図るための研修の事項を奨励していくということが盛り込まれていたところでございます。
 マル1任命権者は、校長及び教員ごとに研修の受講等に関する記録を作成する。まず、このようなことを位置づけることを考えてございます。その上で、この記録には何を含むべきなのかということについて、4つ、類型を整理してございます。1番が任命権者が実施する研修、2番が大学院修学休業により履修した大学院の課程等、3番が任命権者が開設した免許法認定講習及び認定通信教育による単位の修得、ここは今持っている免許を基に、免許を上進されるケースなどに使われるものでございます。4番が資質向上のための取組のうち任命権者が必要と認めるものを記載するということでございます。この4番目は一義的には任命権者に記載するものの判断が委ねられている部分でございますけれども、後ほど、国として、こういったところに何が含まれることが期待されるのかという考え方について、説明させていただきたいと思います。
 マル2任命権者(県費負担教職員の場合は市町村教育委員会)は、校長及び教員からの相談に応じ、資質の向上のための機会に関する情報を提供し、資質の向上に関する指導及び助言を行う。その際、教員育成指標及び教員研修計画を踏まえるとともに、先ほど御説明した記録を活用する。今、このようなことを考えております。
 「審議まとめ」においては、いわゆる任命権者が対話と奨励をしっかり行っていくんだと。その上で、服務監督権者たる市町村教育委員会などがどのような形でこの中で役割を果たしていくかということについては、人事評価制度における事務の分担などの例も踏まえつつ、法制的な観点からさらに検討を深めていく、これが「審議まとめ」の記述でございました。
 今回、まず、対話と奨励というところを法制的に具体的に書き下してまいりますと、1つは相談に応じるということ、2つ目は情報を提供するということ、3つ目は資質の向上に関する指導助言を行う、このような形で具体的に表現することで考えてございます。
 その上で、これは任命権者だけではなく、県費負担教職員の場合は、その教員の実情をよく御存じの市町村教育委員会にこれを行っていただくことを考えているものでございます。実際には、市町村教育委員会といっても、教育委員会事務局というよりは、学校の校長先生などが行うということが念頭にございます。
 マル3教員研修計画にマル2に関して必要な事項を書いていただく。相談、情報提供、指導助言を行うに当たって必要なことについては、教員研修計画に盛り込んでいただく。また、県費負担教職員については、市町村教育委員会が行う指導助言等に関する基本的な方針というものを任命権者たる都道府県教育委員会でしっかり定めていただいて、これを基に、市町村教育委員会でこれを行っていただくということを想定してございます。
 マル4任命権者(県費負担教職員の場合は市町村教育委員会)は、独立行政法人教職員支援機構や大学等に情報の提供等必要な協力を求めることができることとするということでございます。
 マル2番にございましたように、任命権者(市町村教育委員会)、実際には校長先生などになってまいりますけれども、相談に応じて情報を提供していくことが求められるわけでございます。その情報を提供するに当たって、もちろん、手持ちの情報の充実を図っていくことは大事なわけでありますけれども、さらに情報を得ることが必要な場合などに、法的な根拠を持って、大学、教職員支援機構にお尋ねすることができるようにする、このようなことでございます。
 以上が教育公務員特例法の改正の概要、方向性でございます。
 (2)番が教員免許更新制の発展的解消、教育職員免許法の改正ということでございます。
 免許更新制の際に導入された仕組み、有効期間でありますとか、また、更新講習の仕組み、こういった部分については、規定を削除するということになってまいります。今後発行される免許状については、有効期間の定めがないということに加えて、当然、先ほど申し上げたように、更新制に関する規定がないということになってまいります。
 施行の際に現に効力を有する免許状の扱いについては、現在、法制的な観点から、引き続き検討しているところでございます。
 続きまして、2ページでございます。(3)施行日でございます。先日、文部科学大臣から、記者会見でも言及があったところでございますけれども、(1)番、教育公務員特例法の改正、記録の管理でありますとか、いわゆる先ほど申し上げた指導助言等の仕組みという部分については、令和5年度当初の施行で検討しております。
 一方で、教員免許更新制の規定の削除という部分については、来年度、国会で法律が成立、お認めいただけ次第、速やかに施行するという方向で、現在、検討を行っているところでございます。
 なお、先ほどの記録の作成管理、また、指導助言等につきましては、法律の施行を待たず、各任命権者等において取組に着手するよう、できるところからしっかり取り組んでいただくということについて、文部科学省から促していくことを考えているところでございます。
 (4)番でございます。法律改正というものではございませんけれども、教員免許更新制に関する規定の削除というところと同時に、「審議まとめ」の中で触れていただいている期待する水準の研修を受けているとは到底認められない教師に対する対応や、教師の身につけるべき資質能力を明らかにするための国の指針の改訂、ガイドラインの策定等についても実施するということで、しっかりと進めてまいりたいと考えているところでございます。
 現在、調整中の内容であり、今後、変更点が生じてくる可能性があるものでございますけれども、現段階で想定している内容ということで説明させていただきました。
 資料2-2と2-3については、課長補佐の中村から説明させます。
【中村教育人材政策課長補佐】  続きまして、資料2-2を御覧ください。タイトルにありますとおり、研修受講履歴を活用した対話に基づく受講奨励と振り返りの流れをイメージ図という形で、運用のイメージを現時点で1回整理してみたものでございます。
先ほど法律の説明の中でありましたように、研修計画の中に対話と奨励に関して必要な
 事項ということを任命権者に規定いただくということで予定しておりますけれども、その具体的なイメージというものを上半分の白い枠の中に書かせていただいております。この箱の中のポツ、5つありますけれども、ポイントを書かせていただいていまして、まず、1つ目のポツにあります受講履歴の記録の範囲ですけれども、大きく3つに分かれると思っていまして、マル1に書いています任命権者実施研修・講習、それから、大学院修学休業の学びといったことについては必須と書かせていただいていますけれども、こちらが先ほどの法律上で言えば、必ず記録いただきたい必須記録事項ということに当たると考えております。
 それから、マル2とマル3は、必須というよりは、法律上でいうと、任命権者が必要と認める研修という類いの研修になってくると思っていますけれども、その中でマル2とマル3で少し段差をつけようかと思っていまして、マル2職務研修や職専免研修など職務内容に関連するような研修については可能な限り記録をいただきたいということで、法律上の義務ということを予定しているわけではありませんけれども、記録することが望ましいという形で段階をつけさせていただいていまして、例えばということで例に書いていますように、服務監督権者である市町村ですとか、あとは教職員支援機構、大学、民間等、様々な主体で主催される研修や講習といったものが、これに該当し得ると思っております。それから、校内研修や校内研究等、現場の学びにつきましても、中教審の議論の中でも、非常に現場重視の学びということは指摘されておりますけれども、こちらについても、できる限りという意味で、記録を取っていただきたいという形で載せております。
 それに関して、少し補足として、下の括弧書きに書かせていただいていますけれども、特に校内研修など、現場の学びについては、多様なスタイルで行われているという実態があるかと思っておりますので、それについて、全ての校内研修を一律に任命権者の記録という形にすることについては、一定程度、柔軟なやり方も考えられるのではないかと考えておりまして、例えば、学校の中で管理職との対話をするときに記録を振り返るというところが主眼でありますので、そういった学校の中での振り返りに活用するために学校内で記録・管理するといったような運用も考えられるのではないかということで括弧書きに書かせていただいております。
 それから、例えばということで、過去分ということで、この法律が施行される前に行われた研修等についても、可能な限りということで、記録いただくことが望ましいと思っておりまして、その中で、免許状更新講習につきましても、更新講習そのものにつきましては、発展的な解消ということで法施行以降は存在しませんけれども、これまでの蓄積された学びという意味では、そういったものについても、可能な限り、履歴を記録、蓄積いただきたいというところで書かせていただいております。
 マル3は、それら以外の任命権者の判断によって、多様な学びを記録することも考えられるという区分でお示ししようかと思っているところです。
 次の記録の内容につきましては、研修名、研修内容、主催者等々という形で、考えられる項目の内容を書かせていただいていますけれども、こちらにつきましても、研修の性質に応じて、一律にこうしたほうがいいというところを示すのはなかなか難しいことから、研修の性質に応じて、必須の記録の事項もあれば、こういう研修であれば、こういったことを記録することが望ましいのではないかという形で、望ましい事項、ここら辺を示させていただくということになろうかと思っていまして、その旨を記載しております。
 次に記録の方法ですけれども、特に法律上、このような方法でという制限をかけようということは考えておりませんので、システム上で記録、入力をするということですとか、電子ファイルで記入するということ、それから、紙媒体ということも、方法として排除するものではありませんということを書いております。
 次に、記録の時期と、その次の受講奨励の方法・時期をまとめて御説明しますと、記録の時期については、こちらもシステム上とかであれば、受講の都度、自動的に記録されるということになりましょうし、受講奨励の方法・時期のところと関わりますけれども、具体的に、対話と奨励というところについては、例えば、人事評価における期首面談、期末面談といった場を有効活用して、学校現場に適したような様々な機会で活用いただくことを想定しておりまして、そのイメージを下半分に模式図的に書かせていただいています。こういった左から右に時系列で流れるようなイメージで考えておりますけれども、年度当初に、校長など管理職から校内研修計画の策定、共有がなされて、そういったことを踏まえた上で、期首面談等、人事評価における期首面談という形で行われる期首面談の中で、人事評価そのものではないんですけれども、例えば、過去の研修受講履歴を活用して、こういった研修がありますねとか、こういうことに力を伸ばしていけたらいいですねという形で、管理職などから指導助言を行う。これが受講の奨励ということに当たったり、教師個人の観点からすると、主体的な学びや学校を支える力を獲得したい、教科の力を伸ばしたいといった自らの職能開発のニーズや、それを踏まえた目標設定といったことを踏まえて対話をしていただくということが考えられるのではないかと思っていまして、そういったときに、この記録を活用していただくということを想定しております。期末面談のところについても、当該年度に行われた研修の状況等を踏まえて、管理職からは、今後の資質の向上のために指導助言を行うことだったり、教師個人からすると、これまでの記録を振り返りながら、学びの成果、それから自らの成長実感、そして今後の課題といったことについて、管理職と対話しながら振り返っていただくことを考えておりまして、こういう期末面談をするような前に、例えば、まとめて、当該年度に行われた研修の記録といったことを記入して提出してということも考えられるところでして、具体的には、現場のやりやすい方法、今行われている人事評価などの場を有効活用するなどした、適した方法でやっていただくことを考えているところでございます。
 資料2-2の説明につきましては以上です。
 続きまして、資料2-3も御説明させていただきたいと思っております。新たな教師の学びの姿に関する体制整備についてということで、研修の体制整備について、論点提起という形のペーパーにしております。
 1ページ目はおさらいですけれども、「審議まとめ」で提言されているような、学びのイメージといったことを改めてお示ししているものです。
 2ページを御覧ください。こちらについても、おさらいということではありますけれども、さきの「審議まとめ」の中において、現職研修のさらなる充実に向けた国による指針の改正といった提言がなされています。そういったところがあって、今回、こういった指針を改正するという中にあって、今日の議論も踏まえて、指針の検討をしていきたいと思っているところです。
 3ページを御覧ください。これも同じく「審議まとめ」の中を抜粋しておりますけれども、具体的にこういったことを盛り込むことを提言、検討すべきではないかといったこと、具体的な内容について、太字、下線でポイント的にお示ししているものでございます。こういったことを踏まえて、指針の検討をしていきたいと思っております。
 4ページを御覧ください。こちらも、日付としては同じ11月15日に整理いただきました検討の方向性における記述の抜粋ということで、この小委員会、第1回を兼ねていますけれども、ここでの検討テーマにもなるわけで、赤字で書いています校外研修・講習のほか、校内研修や授業研究に代表される教師同士の学び合いによって得られる気づきなどの「現場の経験」を重視した学びを含む職能開発に関する校内推進体制の整備、こういったものについても検討を深めていくという方向性で示されているところです。
 これにつきまして、具体の論点という形で、以下、御説明していきたいと思うんですけれども、5ページを御覧ください。過去の中教審の振り返りでございますけれども、過去、中教審等の答申においては、教師の資質能力の向上に当たりまして、校内研修ですとか、授業研究の重要性といったことが、かねてから指摘されてきたというところでございます。
 6ページを御覧ください。平成27年の中教審答申においても、経験年数の異なる教師同士のチーム研修ですとか、メンター方式といったものの有用性について示されるとともに、研修リーダー等を校内に設け、校内研修の実施計画を整備し、組織的・継続的な研修を推進するということが提言されているところです。
 7ページを御覧ください。研修に関する校務分掌の現状ですけれども、学校内において研修を担当する者としては、地域の実情等に応じて、教務主任とか主幹教諭がその中核的な役割を担ったり、研修に特化した研修主任や研究主任といった校務分掌が位置づけられているという現状でございます。
 また、特定の担当者が中核的な役割を担うといったこと以外にも、教務部、研究部、研究推進委員会などの分掌組織が校内に設けられているということが一般的に見られるところです。
 8ページ、それから、9ページもその続きになっていますけれども、具体的な事例ということで、幾つかの自治体における学校管理規則を抜粋しているもので、これを見ましても、例えば研修主任ということについて、8ページのところで、各自治体における学校管理規則上に、研修に関わる中核的な分掌として位置づけているような自治体がございますし、9ページには、研修ではないですけれども、研究主任という形ですとか、もしくは名前としては現職教育主任とかといった形で、研修とは言っていないものの、実質的には資質向上に関する分掌といったことを独自に置かれている自治体の例がございます。
 10ページを御覧ください。校長の校内研修推進体制に関する現状認識について、調査、データを示させていただいています。これは国公私立の小中学校を対象に、校長の現状認識を問うているものですけれども、校長のリーダーシップの下、研修リーダー等を校内に設け、校内研修の実施計画を整備するなど、組織的、継続的な研修を行っていますかという問いに対して、99%、ほとんど全ての校長から、よくしている、もしくは、どちらかといえば、しているという肯定的な回答が見られているところです。
 こういったことを踏まえまして、11ページに具体の論点を挙げさせていただいていますけれども、まず、1ポツ目に書いていますように、元来、教師は、教育基本法において、国公私立の別を問わず、絶えず研究と修養に励むこととされていまして、教員の養成と研修の充実が図られなければならないといったことが規定されております。
 それから、今般の「審議まとめ」で提言された新たな教師の学びの姿の実現に向けて、学校における働き方改革の環境整備といったことと併せて、学校管理職等のマネジメントの下での協働的な職場づくりや学び合いの校内文化の醸成が一層重要になると考えられます。
 このため、国公私立の別を問わず、以下のことについて検討してはどうかということで3点掲げさせていただいていまして、まず1点目、校長のリーダーシップの下、主体的・自律的な研修に向けた全校的な推進体制を整備することについて明確化してはどうか。
 それから2点目、さらに、校内研修推進体制を一層充実させることが重要であるという観点から、教師の新たな負担とならないよう留意しつつ、校内において教員研修の中核的な役割を担う分掌を制度上明確化することを検討してはどうかということで、例えばということで、「研修主任」(仮称)と呼んでおります。
 3点目、「研修主任」(仮称)の担う主な役割としては、平成27年の中教審答申で提言されました「研修リーダー」が果たすことが期待されている役割を基本としつつ、具体的には、校長等の学校管理職を補佐しつつ、校内研修計画の企画立案や研修・研究に関する連絡調整、情報提供、助言等が考えられるのでないかという論点提起として書かせていただいています。
 12ページ以降は、過去の中教審答申を参考として掲げておりますので、説明は割愛させていただきます。
 私からの説明は以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 今の説明にありましたように、委員の皆様で議論をしてまとめました「審議まとめ」に基づいて、今後、法制化あるいは制度化というステージに入っていくことになります。それでは、今の説明について、御意見あるいは御質問を伺いたいと思います。御意見、御質問のある方は、いつものとおり、挙手ボタンをお願いします。
 それでは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。
【戸ヶ﨑委員】  戸田市教育委員会の戸ヶ﨑です。
 大きく5つ申し上げます。1つ目は、服務監督権者である基礎自治体の教育委員会が果たす役割が今ひとつ不明確であり、パッシブなイメージというのがあるように感じます。各基礎自治体の特色を生かして、任命権者の策定する教員研修計画を補完する計画を策定するなどして、主体的に研修を実施することも重要な役割だと思います。また、校内研修の活性化のカギは、教育委員会事務局が握っていると考えています。研修の適時見直しが大きな課題です。求められる学校長の役割も増えるわけで、そのサポートも必要です。活性化された一部の学校の取組を横展開していくために、各学校の校内研修のメンターとなる教師が校種を超えて学び合う研修の機会や、教科等横断的な視点に立ったカリキュラム・マネジメントに加え、今後は、学校横断的な視点に立った、言うなれば地域カリマネなどの研修の機会は、教育委員会の主体的・自律的な対応にかかっています。こうした場で教師同士の「気づき」の感度が上がり、校内研修の活性化に生かされていくものと考えています。
 2つ目は、研修受講履歴の「管理」システムとか研修履歴の「管理」など「管理」という言葉が気になります。データベース化等が目的ならばそれでもよいわけですけれども、資質向上に向けた「活用」が大切なわけですから、管理の代わりに「活用システム」などの言い方の方が良いのではないかなと思います。
 3つ目は、校内研修とか学校課題研究における大切なキーワードは、「全員」「共通」「継続」だと考えています。つまり、一人一役とかそれぞれがプロモーターになって提案するとか、一人の例外を出すことなく、全員でチームとなって研修や研究をすること、そして、知の共有化に加えて、互いの授業のよさや、最も大切なのは、変わりつつある学校や子供の変化を共有することです。この変化の共有こそが次へのモチベーションの要です。そして、そういった取組を一過性のものにせず継続することが大切だと思います。
 4つ目は、授業改善が進んでいる学校の校内研修等を探っていくと、例えば教科を超えての学校としての授業改善のテーマを設定している、すべての教師が授業研究を行い意見を述べている、子供の学びを省察し語り合う、教室の事実から学んだことを語り合う、などの共通点があります。こうした活性化や先程の学校や子供の変化の共有化の言うなればストラクチャーやパターンを見出し、暗黙知を形式知へ転換する取組も、今後は国レベルで必要かと思います。
 最後に、今の社会のデジタル化等の流れを受けて、本市でも行っていますが、学校内に閉じていた校内研修を、中学校区研修や市内外への研修へと広げていくことも可能になっています。そういったよさの共有を、今後は積極的に広げていくことも必要かと思います。
 長くなりました。以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 全体としては、法制化に向けて、これからいろいろな議論がされていくと思いますが、今の御指摘のような視点は、「審議まとめ」の中にも多く含まれていると思います。また、自主性の尊重は、今後の具体化の中で、非常に重要なキーワードになると思います。
 それから、先日開催されました中教審総会でも、「管理システム」という名称について御意見がございましたが、その際に荒瀬委員から、名称以上に、何を目的とし、どのような位置づけのものにするのかが重要であるとの御指摘をいただきました。今後、制度整備をしていく上で、このシステムの目的について、現場に正しく理解してもらうという視点が非常に重要になるのではないかと考えます。現段階においては、仮称としておりますが、今後、制度化するときに、どのように整理するのが最も現場に受け入れられやすいのか、行政において検討を深めていただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、次に、根津委員、お願いいたします。
【根津委員】  早稲田大学の根津です。
 それでは、資料2-2を共有していただきたいんですけども、お願いできますでしょうか。こちらを拝見したときに、「研修受講履歴」という語が、ちょっと引っかかるところです。後段で御説明がありました校内研修や授業研究を考えますと、どこかが開講して、それを受講するという方法が前提ではないはずですので、この「受講」という言葉が要るのかなというのが素朴に思ったところです。研修履歴あるいは研修を奨励するというところで十分ではないかなと感じたというのが一つです。
 次に、これはお答えいただけるかどうか分からないんですが、他校の視察ですね。非常に優れた実践を行っている学校を見に行ったり、あるいは学術学会の大会や研究集会、各種のオフィシャルな集会等で発表したりという教員もいるわけですけれども、それらは教員個人の研修として扱えるのかどうか、それも任命権者が判断することになるのかというのが2つ目の疑問といいますか、今のところでは、まだはっきりしないところです。
 最後に、これまでの更新講習ですね。これを次年度は開設したほうがいいのかどうか、各大学でもいろいろと御議論があるところかと思いますけれども、それを各大学等はどう判断すればいいのかなというのは、今の時点で素朴に疑問に思ったところです。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。名称については先ほどの御指摘と合わせて検討させていただきたいと思います。
 また、好事例の横展開という点については、恐らく法令レベルとは次元の違う御指摘だと思いますので、今後、制度整備の中で具体化するときに、行政にて検討をお願いしたいと思います。事務局より何か補足説明される事項はありますか。
【平野教員免許企画室長】  今いただいた中で、3点目、更新講習の開設についてでございます。今、開設状況の調査を各大学に行っているところでございます。文部科学省から御説明しているのは、次期通常国会に向けて、法案の提出に向けた具体的な検討、調整を行っているということ。また、次期通常国会で法案というものの体制が認められた場合には、来年度末に有効期間を迎える方については、更新手続や更新講習の受講が必要なくなることが想定される。こういったことについてお示しした上で、各大学においては、来年度、講習というものを開設されるかどうかというところについて御判断をいただきたい、このような言い方でございます。法案がお認めいただけるかどうかということは、これは行政の範囲を超えている側面というものがあるわけでありますけれども、文部科学省としては、現在、お伝えできる情報をお伝えした上で、各大学にお願いしている状況でございます。
【中村教育人材政策課長補佐】  続けていいですか。
【渡邉部会長】  どうぞ。
【中村教育人材政策課長補佐】  続けてすみません、中村です。
 御質問いただいた件で、「受講履歴」という言葉の話にも関連するんですけれども、我々としては、設定されている研修と講習といったことに限って、研修履歴といったことを記録することを考えているものでは全くないわけですけれども、言葉の使い方等々について
は後ほど精査させていただくとして、まず、我々の思いとしては、現場の学びということ、
校内研修、授業研究といったことについては、これまでも、非常に重要性を指摘されていることは十分認識しておりますので、そういったことについても、ぜひ、学びの中心として生かしていただきたいというところは変わっておりません。
 その上で、記録をするということが、今回、法改正の中における一つの柱になってくるところはありますけれども、記録をするというところについても、その目的が、いわゆる資質の向上を図るために、この記録を活用して、振り返って、その次の学びにつなげていくというところが主眼かと思っていますので、いわゆる記録をするということは確かにするものなので、どういうことについて、どういう範囲について、どういう内容についてするかということについては、一定程度ガイドラインを示していかなくてはいけないという認識でおりますけれども、一方では、記録をするということ自体が目的化して、記録することに多大な労力をかけてしまって、本来の資質向上の取組に悪影響が及ぶようなことがあってはならないということも併せて考えていかなくてはいけないと思っていますので、それにつきましては、引き続き、いろいろな方の御意見、地方自治体の御意見も含めて聞いていきたいと思っております。制度設計の中で進めていきたいと思っていますし、現状においても、我々が示す記録の範囲の中の、資料2-2で申し上げればマル3に当たるんですけれども、多様な学びということが記録の対象になり得るということは現時点でも想定しておりますけれども、多様であるがゆえに、どういった内容について記録すべきなのか、できるのかといったことについては、それこそ地方自治体におけるシステムの導入状況ですとか、これまでの経緯等々で異なってきますので、そういったところについては、任命権者による最終的な判断ということはありますけれども、そういった多様な学びについて
も、振り返ることを前提にした記録ということについて考えていっていただきたいという
ことは、こちらとしても促しをしていきたいと思っているところです。
 私からは以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 現在、益川委員、中原委員、橋本委員から手が挙がってございます。
 次の議題との関係もございますので、3名の方に続けて御発言いただいて、補足すべきことがあれば答えさせていただくという形にしたいと思います。
 それでは、益川委員、お願いいたします。
【益川委員】  資料2-2の表示をお願いします。こちらについてコメントさせてください。
 1点目は、このイメージ図での校長等と教師の間での受講奨励と振り返りの流れが、自主性の尊重の例ではなく、管理的な側面の例として偏っていると感じたところです。基本的に校長等の面談を通して、自分が受けたいものを決めて、それで記録をするというようなものが例とされていますが、これはいわゆる個別最適な研修の自主的なパターンでして、今回、教師同士の協働的な学びという側面も入っているため、協働的な学びのイメージも入れる必要があるのかなと思います。例えば、自主性とは必ずしも一人で行う必要もなく、先ほど御発言があったように、学校で全員がチームとして活動することも必要です。そういう意味では、例えば研修リーダーの下、先生方が対話をして、本年度、どのような研修を受ければいいのか、全員共通である必要もないので、私はこの研修、あなたはこの研修、そういうことを対話しながら決めて受講していくことによって個人も学校全体もパワーアップできるよねみたいな取り組みです。実際に行って、その記録を振り返って、来年どうしようというような、そういうサイクル例も示すことが可能ではないでしょうか。
 続いて、2点目として気になったところが、受講履歴の記録の範囲で、マル2の最後の括弧のところ、校内研修など研修の態様によっては、学校内で記録、管理することも考えられるという箇所についてです。学力調査の質問調査で、99%のところが何らかの形で校内研をやっているという話ですが、この中身の質が非常に問題だと思われます。形骸化していて課題を抱えている、時間が限られ最低限しかやっていない学校もたくさんある現状の中で、各学校がどのような校内研修に取り組んでいるかというところを任命権者も把握し、効果的な校内研修を提供できるような、直接的に個の教員に返すだけでなく、学校組織に返していく活用ができるよう、多様な研修の状況というのを記録できるような仕組みにしておくことも大事かなと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 協働的な学び、多様な研修についてのお話として受け止めさせていただきました。
 それでは、中原委員、お願いいたします。
【中原委員】  ありがとうございます。各先生方が既に言っていることかと思うんですが新たな教師の学び」と銘打つからには、やはり、そのコンセプトを明確にするべきだと私は思います。「研修管理」が前にくる、前面に出るのではなくて、「新たな教師の学びの全体像」をまずは議論し、先生方に提示するべきではないでしょうか。「研修をやらされる」という従来の固定概念から、「先生自身が自主的に学びを選び取り、決めて、実行してください」という風にパラダイムをかえていくことが重要です。どうしても資料2-2も資料2-3もそうなんですが、教員免許更新制度の廃止の議論からはいっているため、研修制度の仕組みが前に出過ぎていています。これを見た先生方が、「新たな管理が始まります」「今度はどんなやらされ研修で管理されるのかよ」という具合に、思われると思います。といいましょうか、ネット上の議論をはたで見ておりますと、既に、すごく現場で誤解されていると私は思います。「研修管理システム」は「あと」、「新たな教師の学びの全体像」が先だとわたしは思います。
 その上で、やっぱり、「教師は、どのように何を学ぶのか」のかということを、まず1回、きちんと議論したほうがいいと思っています。
まず、教師の学びといえば、もっとも大きな資源になるのは「現場の経験」ですね。要するに「経験学習」です。別の言葉でいえば、「日々の業務経験に対する振り返りをとおして、自分の成長を実感していくことですね」ですね。こちらは、目標設定ー日常的な業務実施ー振り返りのサイクルを、いかに現場で回すか、とのかいうことです。ちなみに、資料2-2で必要とされる任命権者(リーダー役)との対話は、研修受講の問題だけに限られていますが、それは、人材開発の観点からするとナンセンスです。まずは、授業、保護者対応、学級運営ふくめて日々の業務の振り返りを、他者との対話を通じて実現することが重要です。もちろん、研修で何を受けるかの相談も重要ですが、どちらが重要かというと、日々の成長実感です。
第二に、校内研修ですね。こちらの学びは授業力の洗練化にもっとも影響力をもちます。校内研修は、年間に何度も行えるわけではないですし、すべてのひとが実践できるわけではありません。また形骸化もかなり問題になっていると思います。職員室、教員集団の心理的安全性が確保できていない学校では、おそらく機能しないでしょう。
 第三の資源は「教師同士のかかわりのなかから学ぶ」ということです。こちらにはOJT制度や、メンターチーム制度などがありえます。これらが形骸化していないのか、チェックが必要です。
 3つの資源にくわえて、個人的に思うのは「教員の学び」と「子どもの学び」を「同期」させていくことの重要です。これを新たなコンセプトに加えていくことを提案します。今、子供の学びの姿もどんどん変わっていっています。それと同時に、やはり教師の学びも子供の学びと同期していくということが恐らく大事だと思います。
子供がデジタルで学ぶのであれば、教師もデジタルで学ぶべきだと思いますし、子供にアクティブ・ラーニングさせるのであれば、教師の学びもアクティブ・ラーニングであるべきだと私は思います。なぜなら、教師は「自分が学んでみて、それを、はじめて実践できるから」です。子どもがデジタルで学ぶのに、教師の学びがアナログであると、子どもの前では、デジタルの学びを提供することは難しいのだと思います。子どもの学びがアクティブラーニングなのに、教師の学びが一方向の座学であるのは紺屋の白袴です。
 これ以外にも、「教師の学びの全体像」に含まなければならないものは、まだまだあるのかもしれません。しかし、「教師の学びの全体像」をきちんと描いたうえで、それを全部踏まえた上で、それでも足りない部分が「研修の学び」だと思うんです。人材開発の観点からいえば、研修の学びというものは、その程度の影響力だということです。あるいは、研修は、上記の「教師の学びの全体像」を「仕組み」として動かすために提供される、というのが普通の考え方です。
 つぎに申し上げたいのは、今回の議論は、「研修管理システム」の部分とか、研修の提供手段、メディアなどの「HOW(どのようにして学ぶのか?)」についての議論が前提に来ていますよね。ここまで論じてきたことも、いかに「学ぶか」という議論でしょう。
でも、より重要なのは「WHAT(何)」を学ぶのか、ということなんです。研修管理システムで学べます、というけれども、そもそも「何」を学ぶのでしょうか。これが一向に見えてきません。この「何」を考える部分を、現場の管理職に丸投げしても、当の本人に丸投げしても、おそらく、困惑するだけだと思います。なぜなら「何」の部分をきちんと考える習慣があるひとは、残念ながら、それほど多くないと思えるからです。これからの教師は、いったい、何を学ぶといいのでしょう。少なくともガイドライン、判断のよりどころになる者は提示していき、そのなかから、自分のキャリアや能力にあったものを選んでもらう、という取り組みが必要でしょう。
 最後は、再三にわたって申し上げていることなんですけれども、資料2-3に「校内の研修推進体制の充実」という言葉が掲げられていますが、「推進体制の充実」ということの内実にも、「長時間労働是正の問題」をぜひ書き込んで欲しいと思います。
長時間労働は学習資源というものを喪失させます。ここに書いてあるとおり、12時間を超える労働時間42%ですので、それ以上、学べる時間がないということだと思うんですね。そういったことをやっていくことも校内の研修体制、教師の学びを推進していく非常に大きいことだと思います。長時間労働是正なくして、教師の学びなし。教師の学びなくして、子どもの学びの革新はなし、だと思います。長時間労働是正を行いつつ学習資源を確保していきながら、一方で、教師の学びをセットで充実させていく必要があるでしょう。
 もう一つ気になるデータがございまして、三菱UFJコンサルティングさんですかね、そちらの会社が「教師の継続的専門能力開発」について調査なさっているんですけれども、この調査によると、時間があっても、それだけでは厳しい現状も見えてきます。といいますのは、現場の先生方の全員が「自分の能力開発・スキル開発は、本当に自分事だ、自分でデザインするのだと思っているのかどうか」というとそれは疑わしい、ということなんです。この調査によりますと、つまり、過去12時間、職能開発をしていない層というのが20%程度いるそうなんです。そして、その層の存在は、労働時間の長さにはよりません。要するに、長かろうが、長くなかろうが、職能開発に迎えていないひとは20%いるのです。
ここは論点をちゃんと整理する必要があります。まず、わたしどもの研究でも、教師が学べるかどうかは、長時間労働の長さが影響をあたえることは間違いありません。三菱UFJコンサルティングさんも同様の見解をもっておられます。ただし、長時間労働は大事なんだけれども、それだけでOKかというと、事態はより深刻だと言うことです。つまり、「職業人として、自分の能力・スキルを高めるということは、自分で選択し、デザインし、決めていかなければならないことなんだ」と思ってもらわなくてはならないということです。教員養成課程の頃から、常に、そうしたメッセージングをこれからしていく必要があるのではないかと思います。
 冒頭に戻ります。いま、論じるべきは、研修管理システムの前に「新たな教師の学び」を、わたしたちが解像度高くイメージしていくかということです。イメージできないものは、マネージできません。イメージできないものは、普及させることすらできないのです。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 新たな教師の学びという視点は、これからの小委員会での議論において、さらに検討を深めていただく要素だと思います。また、子供と教師との同調性ということについての御指摘も、大変貴重だと思いました。
【橋本委員】  ありがとうございます。
 私も資料2-2について、数点申し上げたいと思います。
 まず、今回お示しいただいているような資料ですが、受講履歴の記録管理を行って、これを基に研修受講の奨励等を行っていく、この方向性自体は理解はできますし、実際、京都府においては、かなり以前から、総合教育センターあるいは市町を含む教育委員会が実施する研修を対象に、名称は研修履歴情報システムですけれども、こういったシステムを設けた上で、緩やかな単位制履修制度を取ってきたところです。ただ、先ほど来、多くの方がおっしゃっているとおり、この資料2-2を見ていますと、どうしても、校長による教員に対する管理強化の仕組みと見えてしまいます。恐らく、現場の教員がこれを見られると、かなり抵抗があるのではないかなと感じます。研修が負担というのはそもそも残念なことだなと思いますが、厳しい勤務の状況を踏まえ、多忙さに十分配慮しつつ、研修意欲を高め、教員自身が主体的に適切な研修を選択できるよう管理職が支援を行う、こういった仕組みであるべきであろうと思いますし、もうちょっと前向きなといいますか、主体的に、よりよい研修が受講できるようになるんだという、そういったイメージが強調されないのかなと感じました。これが1点です。
 次に、受講履歴の記録管理に関してですが、現在、受講記録を行っていないという県もそこそこある中で、今後、全国的に同じような仕組みを構築していくのであれば、国において統一的なシステム、それも入力等の負担が少なくて済むようなものを構築していただけると、合理的でよいのではないかなと感じます。京都府におきましても、システムの構築時のイニシャルコスト以外に、その後のランニングコストについても、毎年500万円以上かかっておりまして、コストに見合う内容を作っていただけるなら、いつでも乗り換えていいかなとも思っております。このことが2点目です。
 それから3点目は、記録の範囲についてであります。丸1 で示されている任命権者実施研修等、これを必須とされること、あるいは丸2 の中で、服務監督権者や教職員支援機構が主催される研修について、可能な限り記録すべきだという点については、任命権者が記録する範囲として理解はできます。
 しかし、多様な民間等主催の研修記録、これもかなり負担だと思われますし、さらに、先ほどもありましたが、内容やレベル、また、時間についても、大変多岐にわたる校内研究まで任命権者で記録していくというのは、これは現実的ではないなと考えますし、やるとしても、括弧書きで示されていますように、学校内での記録管理にならざるを得ないだろうなと考えます。いずれにいたしましても、記録の範囲とか内容につきましては、任命権者とか服務監督権者の意見をよく踏まえていただきたいと思いますし、ガイドラインにおいては、詳細な義務づけのようなものはなるべく限定的にしていただき、恐らく、説明をお聞きしているとその方向だと思いますけれども、任命権者の裁量にある程度委ねてほしいなと思います。
 それから4点目ですけれども、受講奨励に関してです。これにつきましては、資料にあるとおり、対話による本人の理解というものも重視した指導助言でなければならないと思います。決して命令あるいはハラスメントとして受け取られるようなことのないよう、十分留意を促しておく必要があるかと思います。
 それから、校長自身も全教科を教えてこられた小学校はいいと思いますけれども、教科の専門性の高い高校などの場合、領域あるいは一般的な指導は別として、教科等に関する研修について、適切な受講奨励を校長が行うということは非常に難しいと思います。的外れな指導助言を行いますと、教員との信頼関係を損なう要因ともなりますので、この辺りについては課題があるように感じます。
 取りあえず、以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 それでは、本件について、御意見は以上とさせていただきます。本日も大変多くの貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。資料2-1で説明がありましたように、これから教育公務員特例法の改正、教育職員免許法の改正など立法府での検討ステージとなります。一方、本日は、法律改正を伴わない要素も含めて御意見をいただいておりますので、これについては小委員会での検討事項としていただければと考えます。
 事務局から補足すべきことがあれば、お願いいたします。
 よろしいですか。
【平野教員免許企画室長】  はい。
【渡邉部会長】  では、研修の充実、教員免許の更新制の発展的解消に関する制度改正について、事務局におかれては、本日の議論も踏まえて、さらに検討を進めていただきたいと思います。
 それでは、議事の2に入らせていただきます。
 冒頭申し上げましたように、本日は、新たな教師の学びの姿を実現する研修について議論を深めるために、宮澤委員と荒瀬委員から御発表いただくこととしております。お二人の発表の後に、意見交換をさせていただければと思います。
 それではまず、宮澤委員からお願いできますでしょうか。
【宮澤委員】  はい、よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  よろしくお願いいたします。
【宮澤委員】  それでは、パワーポイントを共有していただけますでしょうか。私の勤務する板橋区立中台中学校における校内研修について紹介させていただきます。
 校内研修は、年10回程度、計画しております。ICTのタブレットの活用、あるいは中学校学習指導要領が変わりましたので、評価についてなどという研修も行っておるんですが、本日紹介させていただくのは、その中でも、コラボ授業についてのものでございます。
 中台中学校は教科センター方式という学校でございまして、数学とか、国語とか、全ての教科が特別教室扱い、生徒が移動しながら授業を受けるというスタイルの学校でございます。14学級で、全校生徒482名、福井大学教職大学院の拠点校ということで連携も進めております。また、ICT機器を日常的に使っておりまして、学校情報化優良校という認定も受けております。
 次、お願いします。まず、校内研修の狙いについてでございます。これからの学校教育では、令和の日本型学校教育や学習指導要領で示されているような「主体的な学び」、「協働的な学び」、そして「汎用性」、これらのことが求められますが、この指導を生徒たちに行うためには、教員が十分にその意味を理解することが重要と考えました。そのために、同じ学びを教員に体験させたいと考えました。
 次、お願いします。校内研修では、教員の資質・能力の向上を図ることが最優先でございます。そして、中学校では、先ほどもありましたが、他教科に口出しをしないという、教科の壁がつくられる傾向がございます。この壁を取り除き、風通しをよくしたいということも考えました。
 さらに、教職員全体で学校教育を組織的に進めていく意識を高めたい、このようなことも考えました。
 そして、研修を行うに当たっては、やらされ感で行うのではなく、全員が参画しながら、楽しみながら自発的な活動となるようにしたいと、このように考えました。
 次をお願いします。2の学校のキーワードというものです。今、説明したような学校教育、これからのことを考えまして、中台中学校ではキーワードを私が掲げました。そこにありますような、つなげる・深める・広げるということでございますが、いろいろなことに活用しています。今回のコラボ事業につきましては、学びということですので、学びを生活につなげる、あるいは学びと学びをつなげるということもあります。深めるでは学びを深める、そして学びを広げて考える、発表していくというところもございます。このキーワードは、このほかにも学校と地域をつなげるとか、小学校と中学校をつなげるということにも活用しながら、使っているところでございます。
 次をお願いします。3になりまして、校内研修の実際ということでございます。校内研修を行うに当たっては、校長の私から研究主任に、まず、伝えたことが2つです。1つは授業をつなげて、学びの意味を生徒たちに伝えたい。もう一つは、全教員に参画意識を持たせ、自発的な研修としたいというものです。早速、研究主任は研究推進委員会、五、六名のメンバーなんですが、そこに持ち帰り、検討した結果、コラボ授業という案を持ってきました。教科同士にコラボしながら授業を行うという方向性が決まりましたので、全員が関われるような工夫を取り入れ、全体計画を研究推進委員会で話し合った上、計画を作成いたしました。
 次をお願いします。研究主任が考えたものは、本校には24人の教員がいます。これを8人ずつの3グループに分けまして、3回ローテーションで全員が相談会に参加するという仕組みを持ってきました。相談会というのは、自分の教科と他教科でどんなつながり、コラボができるかを相談する会のことでございます。この相談会は10分が1回で、3回のローテーションということで実施しましたが、実際にやってみると時間が足りないぐらい、教員同士の話合いが盛り上がりました。相談会が終わった後は、3人が実際に授業を行うことになっております。授業者は毎回くじ引で決めます。当たった人が授業をするということで、3本当たりがあるんです。管理職の私と副校長も参加して抽せんを行います。私は今まで、残念ながら当たったことがないので、別の教員がやっております。
 次をお願いします。これが相談会のイメージです。体育館で、このような形で黄色い丸のところがホストになります。そのホストを中心に、ほかの教科の教員が一、二名加わりながら、どんなコラボ授業ができるかという話をいたします。ほかの教科の教員があまり行かないとか偏りがあった場合には、研究推進委員会のメンバーがそういったところに行って人数調整をしたりしています。
 次をお願いします。これが実際の相談会の様子でございます。机のところに国語と書いてありまして、そこに国語科ホストがいます。国語科の教員が、今度の授業で奥の細道をやりますという情報を聞きつけて、そこに社会科の教員と数学の教員が来たところです。社会科の教員では、社会の東北地方と関連しながら奥の細道をたどっていくことができるのではないかとか、数学科の教員は松尾芭蕉が奥の細道を移動していった早さを調べても面白いと。実際に調べたらかなり早かったということです。そこからも学びが広がっていく様子が分かりました。
 次をお願いします。こちらが、実際に10月13日に行った授業になります。今回は体育科の教員が当たりくじを引きましたので、授業者となりました。そして、話合いの結果、数学科、こことコラボして授業をしようということになりました。テーマは、ここに書いてあるとおり、1,000メートル走のタイムを伸ばそうということでございまして、事前に1,000メートル走りました。そして100メートルごとのラップタイムというのを生徒たちが記録しています。それをグラフ化して、そのグラフを見て、グループで話合いをして気づいたことから、じゃあどんな話をすれば早く走れるのか、理想的な走りを考えましょうという授業を実施しました。グラフの作成等につきましては、数学科の教師が体育の授業に入って指導を行いました。
 次をお願いします。生徒たちが作ったグラフはこのような、大まかに分けると3通りになります。一定のスピードで走ると一番左のようなグラフになります。真ん中のは、横軸が100メートルごとの周回のラップで、縦軸が時間になっているんですが、真ん中のグラフは初めに飛ばし過ぎた、後半にばてるという形で、一番右は逆です。前半に抑えすぎて、後半焦って走るというようなグラフになりました。
 生徒たちはこのようなグラフを見まして、どのようなペースで走れば1,000メートルのタイムがより早く短縮されるかということで、グループで話合いを行いました。その結果、子供たちから出てきたのは、一定のスピードで走れば無駄がなく、全体的に速く走れるだろうということになりました。つまり数学の比例のグラフのように走ればいいのではないかというのが子供たちの理想として出てきたわけです。
 次をお願いします。これが実際の授業で、左にいる緑の者が体育の教員です。電子黒板の前に立っているのが数学科の教師です。生徒たちは各自が一定の速さで走るということを想定しまして、100メートルごとの理想のラップタイムを計算で求めました。そして、授業の終わりには実際に校庭に行って、自分の計算で出した100メートルごとのラップで走りました。実際に100メートルを20秒で走るというのはこういうことかということで、体感をさせたわけです。次の体育の授業に理想のラップタイムを意識しながら走ってみようということで、1,000メートルを走ったということでございます。その結果、ほとんどの生徒がラップを意識して走ることができました。そして、記録を伸ばすことができたということが、結果として出てきました。まさに、数学を使って体育、実際に1,000メートルの記録を伸ばすことができた、数学はこうやって使うんだということが生徒たちにも分かったという授業になりました。
 次をお願いします。校内研修を行った後には、このような協議会を毎回行います。4人から5人に教員が分かれまして、左のほうの写真です。生徒の反応とかつながりの効果、疑問や質問、改善策という4つの観点から、まず、各教員が付箋に書きます。その付箋を出しながら、グループの中で意見交換を行います。そして、このような形で付箋を模造紙に貼って、職員室の廊下のところに掲示しております。ですから、この写真はAグループなんですが、AからEグループぐらいまで常に見ることができます。ほかのグループはどういう話をしたのかというのも、職員室に出入りするたびに見ることができるようになっております。また、右の写真は、年度末に毎年作成している校内研修のまとめの冊子でございます。全教員がA4、1ページ以上を今年度行ったつながりについての取組をまとめて冊子にしているものです。これを全教員が見ることによって、振り返ることができます。そして、次年度へ改善として、どうつなげていったらいいか、来年こんなこともできるではないかということもベースにしてもらっています。また、学校というのは教員が入れ替わったりしますので、新しく来た教員には、この冊子を配布して、研修がうまく円滑に継続できるような資料としても使っているところでございます。
 では、次をお願いします。最後に、成果と課題ということでございます。成果としては、研修をきっかけに、教員たちが日常的に授業について話し合うようになりました。教科の壁がなくなったというのを私は実感しております。そして、教員が主体的な学び、協働的な学び、そして汎用性ということについて、身をもって体験することができた、ここからしっかりと理解が深まり、学ぶことができたと私は捉えております。
 そして、課題としては、コラボ授業、教師同士が話し合いながら、授業について計画を立てるということなんですが、やはり時間が足りないということです。今回の10月の授業も夏休み中の時間を使って、数学科と体育科で話合いを行いました。ですから、こういった取組をもっと進めていきたいんですが、実質的に、時間的に厳しいというところでございます。さらに今回は教科同士をつなげるという授業でしたが、さらに一歩進んで生活につなげる、教科、学びの意味、学ぶことによってどう社会に貢献することができるのか、活用することができるのかと、その辺のところにつなげていきたいと考えております。
 私からは以上でございます。
【渡邉部会長】  大変貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、続いて荒瀬委員からお願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。資料を共有させていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
 では、よろしくお願いいたします。今、宮澤先生は具体のお話をなさいましたが、私はそういったことではなくて大変失礼いたしますが、「生徒を主語にする学校をつくるための校内研修を」というタイトルでお話をいたします。
 「生徒を主語にする」というのは、1月26日の令和の日本型学校教育の答申の、これは幾つもの会議のまとめのエッセンスが入った答申であるわけですけれども、高等学校につきましては、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループで議論しておりました。その審議まとめの「はじめに」のところに、生徒を主語にした高等学校教育を実現していくんだということが書かれているし、令和の日本型学校教育の「はじめに」のところにも、一人一人の子供を主語にする学校教育を目指していくということが述べられています。子供を主語にするというのは学習指導要領に基づいた取組をしていくことが大切なんだということなんですけれども、高等学校の学習指導要領の始めの部分を見ていただきますと、黄色のマーカーをつけたところですが、現行が上で、下が時期学習指導要領です。上は、黄色の部分が下と内容的には全く一緒なんですけれども、順番が違っています。「地域」から書き起こしているか、「生徒」から書き起こしているかというところが、全く一緒のことを書いてあるんですけれども、大きな違いです。次期学習指導要領は「生徒」から書き起こしている。まさに生徒を主語にするということが学習指導要領に盛り込まれているということかと思います。生徒を主語にする学校とは、要は、生徒が学び、学び合う学校をつくっていくということだろうと考えます。申し上げたいのは、雑駁な言い方で申し訳ありませんが、それをつくるためには教師が学び、学び合う学校にしていく必要があるということです。教師が学び、学び合うという際に、教師の新しい学びというものをどう具体的に実現していくかというのが大事になってくるわけですが、それはつまり、どういった研修が行われていくかというものだろうと考えます。
 研修を進めていく上で、特別部会の審議のまとめに重要な指摘がありました。そのうちの1つは「学びに専念する時間を確保した一人一人の教師が」というところです。時間がないということがとても大きな問題になっていています。ここを本当に何とかしなければ、学びに専念するということが絵に描いたもちになってしまいます。専門職性を高めていくということが難しくなっていくと、子供たちが学び、学び合う学校になかなかなっていかない。子供たちの学びを確かにするため、ここを本当にしっかりとする必要があると言えます。
 加えて、重要なメッセージとしては、現場の経験も含む学びのスタイルの多様性を重視していくんだということです。さらには、教師の個別最適な学び、共働的な学びの充実を通じて、主体的、対話的で深い学びを実現していくんだということです。これを学校の中の研修、校内研修でどう実現していくのかということを考えていく必要があるということであります。
 これは資料にお付けしていなかったスライドですけれども、学習指導要領の解説に、主体的、対話的で深い学びについての中教審での議論がそのままの形で載っています。その中に、主体的な学びというところで、自己のキャリア形成と関連づけながらといった言葉が出てきます。これは子供の学びについての記述なんですけれども、決して子供だけじゃなくて教師にとっても大事なんだと思うのです。自己のキャリア形成との関連づけもそうですし、あるいは対話もそうですし、深い学びに至っては、下から3行目を見ていただくと、情報を精査して考えを形成したり、次の部分でありますが、問題を見いだして解決策を考えたりといったことが出てくるわけで、本当に主体的、対話的で深い学びが教師の学びにとっても大事であるということが言えます。学校をどのようにしていくのかということは、教師の学びに掛かっていると言えます。ですから、研修をただやっただけで終わるんじゃなくて、必ず振り返りの機会を持つことが重要で、振り返ることで学びを定着することによって、確かなものにしていかなければなりません。振り返りがあるかないかというのが、研修として意味があるかないかということにつながると言ってもよいほど、大きな要素になると思っています。
 真ん中に「研修の主体」と書きましたけれども、教育委員会の行う研修や学校でやる校内研修、それから大学や大学院が提供する研修、あるいは民間事業者、また、私が今おります、教職員支援機構も研修を提供するわけですけれども、校内研修がこういったところとの関わりも持ちながら、体系的・計画的に行われていくということが大事だと思います。さっき資料の2-2で、初めに校内研修計画の策定、共有というのがありましたけれども、校内研修がとても大事であるのは、まさに教師は現場で育つということに着目をしているからだと思っていています。なればこそ、意味のある校内研修にしていかなければなりません。
 「審議まとめ」で教職員支援機構の役割として、先ほどから話題になっています研修受講管理システムとの関わりで、3つの仕組みというものが述べられていて、こういったことをやっていくんだと書かれているんですけども、我々自身も、いかに私たちがやっている研修を見直していくかということを目下やっているところであります。来年度の計画を今、立てているところなんですけれども、夏頃に1つ具体にやっていきたいと思っていますのは、課題の発見を含めて校内研修をデザインできる教職員や、あるいは研修自体を効果的に回していく教職員をどうしたら育てられるのかというのを考えていきたいと思っています。これを今、連携している8つの教職大学院、地域センターということでお願いしているわけですけれども、その地域センターの教職大学院の皆さんのお力も借りて検討する、あるいは有識者の方からのヒアリングなんかも行って、具体的に進めてまいりたいと思っています。
 また、その際の研修履歴の活用でありますけれども、これはあくまでも学びの自己管理と自己評価を行うためにやるということが大事ではないかということを思っています。すなわち、今後の主体的、対話的で深い学びを進めるための先生自身の基礎資料として使うというのが、これがまず、第一義的にあるんじゃないかと思います。当然、任命権者、管理職による対話や指導と研修計画のためにということも言えるわけですけれども、まずは研修を教職員自身の大切な学びであるという考え方で整理する必要があるだろうと思っています。
 例えば、今度、新しい学習指導要領では総合的な学習の時間が高等学校の場合、総合的な探究の時間となります。どう具体に計画していくのか、そしてやっていくのか、あるいは、また各教科でも探究が新学習指導要領は非常にたくさん教科名にもついていますし、学び自体を探究的にしていく、まさに生徒が主体的に、対話的に、そして深い学びを進めていくためにはどうしていったらいいのかということが問われているわけでありますので、そのための教師の資質、能力をどういう方法で養うのか、こういったことは本当に日常的に、校内研修として必要になってきます。
 となると、必ずしも、全員が1つのところに集まってということだけではなくて、教科でとか、学年でとか、あるいは、また学校の中の様々なパート、校務分掌と呼んでいる、そういったところで考えていく、そういう分散型の校内研修というのも当然あるだろうということを思っています。あるいは、先ほどお見せいたしました高等学校ワーキングの中間まとめに詳しく書かれているわけですけれども、スクール・ポリシーというのを高等学校それぞれがつくっていくということになっておりますが、それを実質的にいいものにしていくにはどうしたらいいのかということを考えていくということもあります。あるいは、また、各高等学校は進路検討会というものをいろいろな形でやっていると思うんですけれども、ややもすると、大学進学の場合、偏差値がどうで、合格可能性がどうで、この子がこの大学に受かるか受からないかとか、もっとほかのところを示したほうがいいんじゃないかとか、そんな話になって終わってしまうという進路検討会があるということも聞いておりますけれども、それではあまりにももったいなくて、進路を選択するというのは、ある意味、これまで学んできたものを全部使って、自分の人生をどう開いていくかという、1人の生徒にとっては大変大きな選択になってくるわけでありますので、その生徒を支えるためには、その生徒自身を多角的、多面的に見ていく、すなわち単に進路担当者がホームルーム担任と話をして、この子はどこを受けさせようかと、そんな話で終わるんじゃなくて、教科担当者も含めていろいろな角度から生徒の姿を浮かび上がらせていく。そして、生徒自身のキャリア発達を促すために活用していく、こういった発想がとても大事だと思います。これもまた、重要な校内研修として位置づけていくべきではないかと思っています。その辺をまとめて書きました。
 最後のスライドは、つぶやきのようなことを書いております。お時間のあるときに御覧いただければと思います。長くなりました。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。これより、お二人の発表について意見交換を行いますので、御意見、御質問のある方は、挙手をお願いいたします。それでは、秋田委員、お願いします。
【秋田委員】  学習院大学の秋田です。宮澤先生、荒瀬先生、大変貴重なお話をありがとうございました。特に小学校以上に校内研修が難しい中学校や高校の目指すべき方向をお示しいただけたと思い、コラボ授業もわくわくしながら聞かせていただきました。
 その中で伺いたいところなんですけれども、校内研修等に関わっておりますと、まず、最初の段階では、いかにみんなが参加するかというところや、やり方の議論が多い。それがだんだん教師が探究をしたり、深まっていく段階では、学びを深めていくためには何回かの研修がどうやって、1回ずつの研修が何回かあるというだけではなくて、より学びを年間を通して深めていくのかという課題や、それから、公立の学校の場合には異動がありますから、それを超えて学校文化というか、体制として、どのようにして維持発展居ていくかが課題となります。さっき、研究の冊子を作っておられるというお話もありました。恐らく全国、どこでも紀要の冊子が作られても、それがうまく活用される学校と、それから作って終わりの学校というのが、たくさん現実にあるわけです。その辺り、校内研修を持続可能なものにしていくための工夫ということがない限り、恐らく荒瀬先生が言われた生徒を主語にするとか、子供の学びを中核にしていくというの研修というのは、最初はやり方研修になりがちです、どうしても教員は時間がないのでノウハウののものから、自分が気づき自分が問うていくそういう研修に変えていくために持続可能性が必要なところだと感じております。この辺りの持続可能な研修体制、また、教師自身の新たな学びというときに、1回面白いことをやったというだけではなくて、教師自身が問いを持ったり、探究をしていくような学びにしていくためには、いろいろな気づきの質が変わっていくことが必要だろうと思っているんですけれども、そこが中学校の場合、どうなんだろうかというところや、それをどう高校では考えるのかというのが1点、学びを深める持続体制ということの質問です。
 あと、2点目なんですけれど、校内研修の議論の中で、近年、国際的には授業研究で言われているのが校内の、内側だけではなくて、ナレッジブル・アザーズ(knowledgeble other)という少し知識のある指導主事とか大学の教員とか、今回の場合、大学と連携されていたりということがあると思うんですけれども、そうした毎回ではないかもしれないけど、そういう外部者がどういう機能を果たし得るのだろうかというところが、今後、体制をつくっていくときに、内側でよくしていくということと、ネットワークで開いていくときに、それを深めるために外部のリソースをどう活用していくのかということがキーになっていくだろうと思っております。
 その辺りについて、ぜひ宮澤先生に伺ってみたいし、荒瀬先生に伺ってみたいと思ったところです。また、実際、私の知っている中学校では、生徒の声ということで、生徒自身が校内研修、授業研究に終わった後、意見を表明したり参加する学校というのも、今、幾つか出てきています。この辺りも含め、どのように今後、考えていくのか、お話を伺えたらと思っています。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。お二人への御質問ということですので、校内研修等の持続性と外部連携について、まずは宮澤委員、いかがでしょうか。
【宮澤委員】  貴重な御意見、御質問ありがとうございました。
 まず、持続可能にしていくための研修体制ということですが、毎回、校内研修の1回目は、先ほどお示ししたような冊子に基づいて、中台中学校では、こんな取組を今しているんですという、全体が見えるようなことは伝えています。これによって、新しく来た先生たちもこういうことをしているのかというところは御理解いただいていると思います。
 そして、先ほどのような相談会をやって、実際に学期に1回ずつぐらい授業をやっていくと、もう本当に職員室で今、こんな授業をやっているんですけど、そっちの教科はどうですかというような話が毎日のように出てくるんです。ですから、これが継続というところにもつながっていくと思うんです。そして、今までのベースを基にして、さらにもう少し中身、子供たちに考えさせるような、工夫ある授業にしようという話になってくる。その辺が、教員たちが自分たちにも問いながら、探求を進めていくという研修になっていると思います。
 2つ目のところで、知識のある外部人材の活用というところですが、冒頭、お話しさせていただきましたように、福井大学教職大学院の拠点校ということで、今はコロナの影響で、福井大の先生がおいでいただけていないんですが、それまでは年2回ほど、福井大学教職大学院から準教授とか教授の方が校内研修のときに来てくれています。一番助かるのは、学校の現場でこういう取組をしていて、独りよがりではないのかというところがあるんです。実践的には自分たちでできている。それを大学の人たちが来て、理論的に裏づけをしてくれる。教員たちは、自分たちがやっていたことは間違ってないんだということで、さらに自信を持って取り組むということでは非常に効果がある内容だと思います。また、引き続き、福井大学とも連携を図りながら進めていきたいと考えております。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。それでは、引き続き、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。柱になる重要な研修というのをしっかりと打ち立てるということが大事ではないかと思います。
 今日、申しました、3つの例ですけれども、探究というのは、これは必ず柱になると思っています。それから、スクール・ポリシーということで言うと、まさに教育課程の編成方針を考えていこうとすると、新カリキュラムをどうするのかというのは非常に重要な案件になってくると思います。また、進路検討会というのも、生徒の最後の選択、高校時代の最後の選択に向けた取組をずっと3年間やってきたわけですから、そういう意味では、どういうところに行って、そこでおしまいじゃなくて、その後どうするのかという人生設計も含めた、キャリア教育に基づく進路指導というのが必要になってくると思います。
 これは、それぞれ担当している部署があると思います。探究ということでいうと、私がいた学校には研究部がありましたし、スクール・ポリシーで教育課程に関することで言えば、これは教務です。私たちは学務部と呼んでいましたけれども、あるいは、進路検討会については学年とか進路部が担当します。また、生徒のいろいろな課題が出てきた場合、生徒の学校生活を支援するために学校生活部というのがありまして、この中には保健室も入っていますけれども、そういったところが年間を通じてというのもありますし、突発的に起きたことに対してどうしていくのかということに対することもあります。そういったことについての話し合いを全部、実は研修だと私は思っています。職員会議で議論していることも、教職員にとって重要な研修であってほしいと思います。大事な研修というものが、実はあっちこっちにあるわけで、そこをしっかりと研修と位置づけてやっていくということが大事ではないかと思います。
 私のいた高校では、年間に1回だけですけれども、教育研究大会というのをやっておりまして、このときに授業を見てもらって、具体的にいろいろな方からお話をいただく。その際、指導主事や大学の先生に来ていただいて問題提起や評価をいただくとか、そういったこともしていまして、それは非常に有効であると思っています。先週金曜日も、私がおりました堀川高校では研究大会が開かれまして、これはオンラインと、それから実際にリアルとのハイブリッドで行われていましたけれども、全国の先生からもいろいろと指摘をいただけるし、非常に有効な研修であると思っております。
 お答えになったかどうか分かりませんが、以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。それでは、高橋委員、お願いいたします。
【高橋委員】  東京学芸大学の高橋です。よろしくお願いいたします。
 荒瀬委員、宮澤委員のお話、大変ありがとうございました。感想というか、コメントになります。
 特に荒瀬先生も宮澤先生もですが、拝見いたしまして、学ぶだけではなくて学び合うと、お互いが講師というか指導者のような立場になったり、学ぶ側に立ったりする、その行ったり来たりが非常に重要なんだろうと感じました。このように考えますと、先ほどから話題の研修主任というのは、研修を受ける側でもあるかもしれないし、研修を企画する側かもしれませんが、研修を実施する側でもあるんだろうと。となると、研修の受講履歴というよりかは研修実施履歴の側に記録が残ると。だから、ひょっとしたらもう研修履歴ぐらいにして、実施と受講の両側が記録されていくのかと思いながら、感じました。
 私も中学校の関わっているところで、研修はすごく難しさを感じておりますが、私の関わっている学校では、日常的にチャットで、ちょっとした1枚の写真とコメントのやり取りをしたりして、日常的に研修しておりますので、これはどのように研修の履歴に残していくのかというのが悩ましいわけなんですが、先生方も研修の動画を、ミニ動画とかを作って出し合ったりして、そのミニ動画が非常に、作る側ももちろん研修になりますし、見た側も研修になりますし、それが学校の先ほど冊子というお話がありましたけど、ビデオに残していくと次に着任した先生がそれを見ると、生徒の様子も先生の様子も結構動画で見られると、結構情報量が多くて、行き帰りの通勤のときに見ているとかという感じで、なかなか新しいデジタルの世界で、これまでと形が変わっていると思ったりもしました。
 ありがとうございました。以上になります。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。現在、安家委員、松木委員、古沢委員、岩本委員、今村委員、貞廣委員の6名の方が手を挙げられています。時間の関係で、一問一答の形で質疑応答を行うのは難しいため、大変申し訳ありませんが、順次、御発言、御質問をいただき、最後にまとめてお二人から御回答いただきたいと思います。
 それでは、安家委員からお願いいたします。
【安家委員】  全日本私立幼稚園幼児教育研究機構の安家と言います。どうぞよろしくお願いいたします。
 先ほどからの発表をお聞きしていたり、前段の議題の1つ目の話もございましたけれども、私ども幼稚園、認定こども園の学習では、それ以降の小学校、中学校、高等学校の学習と違いまして、圧倒的に私立の学校が多いわけです。ということで、教育委員会が全体を把握されたりということがなかなかやりにくいということがあったり、都道府県の教育委員会の中に、幼児教育専門の指導主事の方もほとんどおられないという現状が、実はございます。そういう意味で、他学種と少し状況が違うわけですが、先ほどから議論になっております、園内の研修の件でございますが、これについても、私ども全国団体として、各都道府県の担当の教育研究の先生方に、ぜひ園内の研修を奨励していったり、現在、私どもで持っております、公開保育を主にした園内研修のシステムがありまして、これはステップワンからステップファイブまで、その園で様々な研修を積み重ねて、ステップフォーのところで保育を公開して、様々な先生方においでをいただいて議論をして、そして研修をするというシステムを持っております。その研修システムを受講していただきますと、私ども機構のほうから修了証の発行させていただいて、各園の玄関のところに掲示していただくということをしていたりします。そのような研修を奨励して、今現在、コーディネーターを養成して、ECEQと私どもは呼んでおりますが、その研修の一般化を図っていこうということをやっているわけです。
 そういうことをしておりますのと同時に、先ほど少しお話が出ましたけれども、園内の者だけではなくて、臨床心理の専門家であったり、それから支援教育を研究なさっておられる大学人であったり、そういう方を招いて、園内で様々なケースワークを行うということは私どもも年間に何度もやっているわけでございますが、これにつきましても、各園の温度差は様々でございます。そういう意味では、私どもとして、できるだけそれを一般化し、皆様方が園の中で研修をどんどんとやっていけるような体制を取っていくということをしたいわけですが、私ども幼児教育が無償化を今、実現されておりまして、保護者の負担があまりかからないような状況に現在、なっております。ということは私どもの幼稚園に多額の公費が投入されているということもあって、私どもの評価の問題が今後も出てこようかと思いますが、その中では、今の園内研修なども評価の対象として、当然問題になってくるであろうということから、先ほど教えていただいた様々な事例なども一般化して、皆様方にお伝えをしたいと思っている次第でございます。
 少し他学種と違うということを御認識いただければということで、発言をさせていただきました。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。令和の日本型学校教育の答申の中では幼児教育も非常に重要な位置づけにあるとしております。貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
【安家委員】  ありがとうございます。
【渡邉部会長】  それでは、次に、松木委員、お願いいたします。
【松木委員】  松木です。宮澤委員さん、それから荒瀬委員さんのお話を聞いての感想ですので、御返答は要りません。
 教員研修の在り方を論議するにあたりお二人のお話を聞きし、「子供の学びを支えていくために教師の学びをどう支えていったらよいのか」ということが中心的なテーマになるとあらためて思いました。そして、何のために教員研修を行い、それをどのように行うのかを根本から考え直さなければならないと思いました。特に、校内の研修から校外研修へどう繋いでいくか、単発の研修から記録等を介しながら、次の研修へどう繋げていくかということの重要性、さらに、そういったことを通して校内での研修の整備、特に、教師自身が学び合うコミュニティーをつくっていくためにどうしていったらいいのかということが、お二人の発表に述べられていたように思います。
 その話を受けて、つまり、お二人の話された教師の学びを支えるために、法令的な整備が必要になってくると改めて思ったところです。前半の議題で教員研修を論じたときに、どうしても管理イメージが強い研修履歴案になっているという話がありました。それを払拭するのには、子どもの主体的な学び、それを支える教師の主体的な学びや、学び合うコミュニティーを育てるための法整備なんだという点で、もう一回、内容について再検討しなければならないと思って聞かせていただきました。ありがとうございます。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。大変意味のあるお話だったと思います。
 では、続けて古沢委員、お願いいたします。
【古沢委員】  ありがとうございます。古沢です。お二人のお話、大変興味深く拝聴しました。
 宮澤先生の発表で、先ほど来話題になっている、いわゆる管理的な方式ではなくて、学び合いも強くて非常に充実した研修をされている姿が伝わってきました。
 その上で、地域の中で、こうした取組がどのぐらい広がっているのかということを知りたいと思いました。もちろん異動もあるでしょうし、こうした取組ができれば、ほかの学校にも広がってほしいと思います。それとも関連するんですが、中学校は大変忙しい中で、相談会とか準備について、どういう時間の活用の工夫をされていらっしゃるかと、どのように時間を捻出されていらっしゃるかということもお聞きしたいと思いました。
 荒瀬先生のお話で、1人の生徒を多角的にという進路選択が非常に重要だということは本当に、全ての高校に浸透させてほしいと思うんですが、一つ、分散型の研修ということをおっしゃっていて、できれば、もし時間があれば、少し具体的にどのような形になるのが望ましいとお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。それは後ほど、お二人よりコメントをいただきたいと思います。
 それでは、次に、岩本委員、お願いいたします。
【岩本委員】  岩本です。よろしくお願いします。
 私はお二人に質問させていただけたらと思います。現場の経験を含む多様な学びというのは、これからの教師の学びにとても重要だということ、全く異論ないですし、校内研修は本当にすばらしいことをされていると思いましたし、進路検討会とかも含めて、それも研修として位置づけて、学びの機会なんだという考え方自体も全く異論なく大賛成なんですけども、私はどうしても、そのことと先ほどの研修受講管理システムに記録をさせるということがなかなかつながりません。多様な学びや進路検討会で、こういう学びの機会にしましたということを、教員それぞれや学校がシステムに記録を可能な限りしていくとしたときに、それが本当に学校や教員の学びを豊かにするということに対して効果的なんだろうかというイメージが、私はまだつかなくて、べき論として校内研修を含め、多様な学びを見える化したほうがいいという理想論は大賛成なんですけども、今のシステムで、あの記録する範囲とかをそれぞれの校内で、誰かが記録、それぞれが記録するということが本当に効果的なんでしょうかということが、質問というか、どういう形だったら時間をわざわざ教員や学校にかけさせてでも記録をすることが、それ以上のメリットとして返ってくるやり方なのかということに関して、御意見あればというところです。
 私は大学だとか教育委員会の研修だとか、教職員支援機構がやっている研修の情報を共有するということは全くいいと思うんですけど、学校現場にそれを記録させていくみたいなことを、また仕事を増やすみたいなことが、コスパが悪い施策のように見えて、現場の感覚や研修されているところからの御意見というのはぜひ伺いたいと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。教職員支援機構との関係もありますので、主に荒瀬委員から、後ほど御回答いただければと思います。
 それでは、今村委員、お願いいたします。
【今村委員】  今村です。先ほどの、今の岩本さんの御発言に近いものもあるんですけれども、先ほど荒瀬先生から、これから高校の教育課程が探究の柱にならざるを得ない、なっていくという中で、そこかしこに教師の学びは既に現場にあって、そのリフレクションをするということこそが、振り返るということこそが経験を学びに変えられる機会なのであるというお話が、本当にこれからの教師の学び論の中心に据えなければいけない考え方だと、お聞きしながら思いました。
 そういう意味では、今、岩本さんがおっしゃっていたような、履歴をつける的な考え方というよりは、もしかしたら学びのポートフォリオ的な荒瀬先生のお話なのかもしれないんですけれども、御自身の学びを記録していく、自分のために記録していくようなものという考え方が、性善説かもしれないんですけれども、重要なのかなということも感じました。
 その中で、荒瀬先生にお伺いしたいんですけれども、リフレクション、現場での振り返り、そこかしこの経験を学びに変えるためには、私は高校生たちの伴走、探究学習の伴走をしてきた中で、それを支えるには、壁打ち相手のスキルとか経験を学びに変える役割の人のスキルをどうつくるかというところこそが、とても肝になってくるということを感じてきました。これは教師の学びにとっても、きっと同じなんだと思います。その意味で、教師のリフレクティブな学びを支える伴走者のスキルをどう上げていくのか、どういう体制が必要なのか、そこにこれから投資をしていかなければいけないということだと思いましたので、そこに対するアイデアをお聞かせいただけたらと思いました。
 もしかしたら、それはいつもなさっているファシリテーター研修なのかもしれないんですけれども、全ての現場がリフレクティブな学びになっていくためには、どういった仕組みが必要なのか、そこに御意見いただけたらと思います。
 以上です。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。こちらも後ほど、荒瀬委員からコメントがあればお願いしたいと思います。
 次に、貞廣委員、お願いいたします。
【貞廣委員】  ありがとうございます。千葉大学の貞廣と申します。宮澤委員、荒瀬委員、貴重な御報告をいただきまして、ありがとうございます。その上で、私から2点意見を申し上げますので、意見ですので、特に御返答は結構です。
 1点目でございますけれども、学校を軸にした、校内研修を中心とした教師の新たな学び、これを実現するためには、校内研修を企画、運営できる人材の育成、これが肝であるということを再確認させていただいたということです。そして、議題1のところで研修主任という分掌の位置づけをというお話もありましたけれども、改めて言うまでもなく、分掌で位置づけられたところで、実際にこれを担う方、しっかりとそういう企画運営できる方がいなければ、魂が込められない制度になるわけで、ここのところを本当に注力していく必要があるということを再確認させていただいたということが1点目でございます。
 2点目は、先ほど来、出ています研修履歴の件です。研修履歴は決して管理ということではないということを、何度もこちらでも出ていますけれども、学びの自己管理と自己評価を実現できる、これが目的であるということです。また、これも先ほど来、いろいろな委員の方々からも出ているとおり、現在では研修のありようも非常に多様です。そのように考えると、管理するときためには必要となる網羅的に入力するとか、入力に厳密性を求めるとか、そういうことは、もしかしたら必要ないんじゃないかと思います。
 既存の、例えば教育委員会や大学が企画して、提供しているような、NITSさんが提供するような研修については入力するけれども、それ以外にも校内で豊かな学びはあるんだということを想定して、研修履歴では、最低限のところだけを振り返ることできるという在りようのほうが先生方の学びが広がっていくように思いますし、それを支援するものになるように思います。
 以上、意見でございます。ありがとうございました。
【渡邉部会長】  ありがとうございました。
 先ほど手を挙げていただいた方の御質問等は全てお受けいたしましたが、森山委員からも手が挙がったようです。それでは、森山委員、お願いします。
【森山委員】  先ほどの宮澤先生、それから荒瀬先生の貴重な意見をいただきまして、ありがとうございました。
 その中で、2つのことを検討する必要があるのではないかと、改めて先生方のお話を伺いまして感じたところです。
 まず、校内研修のところが中心に据えられておりました。研修の主体として、これは前の資料にもありますが、文書が示されています。校内研修の講師を近隣の大学等に依頼するという場合がほとんどではないかということを考えますと、近隣の国公私立大学との連携協力を結んでいる市町村教育委員会が、ほぼ全てではないかと思います。今回、宮澤先生の学校は福井大学との連携ということでもございましたが、都道府県、それから教職大学院、そして支援機構のほか国公私立大学、つまり、大学をある程度、位置づける必要があるのではないかと感じました。そうでないと、恐らく実際の学校数から生じる研修の希望に応じることが不可能になるのではないかと思います。したがって、国公私立大学等を計画として入れるということが必要ではないかということを感じました。
 それから、もう1点は、2人の委員の説明を伺いながら、研修というもののコンセプトの共有が必要ではないかということを感じました。今回、履歴等にも関わると思いますが、研修と研究の結合というか、理論と実践の関係の在り方が当然、中心になってくるわけです。そうなりますと、先生方の多様な学び、教師の多様な学びとか、あるいは、新たな教師の学びというところを明確にシフトしませんと、形骸化していくこともあるでしょうし、あるいは、実践的なことを取り上げるということについて、ベースは実践的な研究の土台があって、そして、そこにいろいろな形での働きかけがあるということが意味のあることだと思います。そういう広い意味での多様な学びを、履歴として分かりやすく示せるような形が、検討するときには重要ではないかと思いました。
 以上です。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。
 御質問いただいた意見について、全てコメントすることは時間的にも難しいと思いますので、宮澤委員、荒瀬委員からコメントすべきことがありましたら、お願いしたいと思います。宮澤委員、いかがでしょうか。
【宮澤委員】  貴重な御意見や御感想、ありがとうございました。
 古沢委員から地域への広がりとか時間の活用というところがあったかと思います。そこだけ簡単にお答えさせていただきます。
 地域の広がりというところでは、もう学校だよりに載せたり、ホームページというところで、こういった校内研修の取組を紹介しています。また、区内の初任者研修とか中堅教員研修にも、本校のコラボ授業、これを単位として認定していただくということで広めていたりしております。
 また、時間の活用というところでは、年10回ぐらいなんですが、水曜日の1時間を使ってみんなで集まって、話をしたりというところはそこに集中しています。それ以外の時間は個別に準備をしておくということで、そのような形で工夫しながら何とかやっているところでございます。よろしくお願いいたします。
【渡邉部会長】  ありがとうございます。荒瀬委員、よろしくお願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。分散型の研修と申しましたのは、いくつかのケースがあると思っていまして、1つは実際に参加する人が、その学年の人とか教科の人とか、関わる校務分掌の人とかといった参加者が違っている場合。また、企画運営を教務部がやるとか、あるいは学校生活部がやるとか、そのように主催が異なる場合。さらにはまた生徒との協働をするといったことも高校でしたら結構あると思います。そういうものも含めて、教職員全員が参加するものも、そうではないものも、その辺りも含めて、いろいろな形の研修があるんじゃないかと思います。
 そういったことになってくると、資料2-2の受講履歴の記録の範囲というのをどう読み取るかということが重要かと思います。丸1は必須ですけど、それ以外は別に必須じゃないわけで、それどんどん、どんどんバイアスがかかっていって、現場におりたときには全部これも書かないと駄目なんだということをやめない限りは、教職員の負担ばかりが増えることになります。
 先ほど会長からも御紹介いただきましたが、名称もさることながら、名前がどうなっていっても、これをどう読み取るかによって履歴の記録の意味合いが全然変わってくると思うんです。研修によって学びを深め専門職性を高めることが重要ですから、記録については、ぜひとも必須はこれだけ、後はもう、どうぞ、お好きなようにと、それぐらいの意味合いが大事かと思います。
 最後に、貞廣先生がおっしゃっていた、入力の厳密さは不要かということにつきまして、記録という点ではあまり厳密にする必要は本当にないと思っています。
 ただし、先生御自身のことを考えると、やっぱり記録はしておいたほうがいいと思います。高校生の探究では、記録の重要性ということについて、中教審でも相当議論をいたしましたし、学習指導要領でもそこのところが大事だとしています。同様に、御自身の学びを記録するのが大事だと思います。これはあくまでも御自身にとってということで、そこを教育委員会や校長先生方がちゃんと理解していただくことが重要です。
 さっき生徒との協働ということも申しましたけれども、立場の違う人が対等に話し合える場を学校の中につくっていくことが望まれます。福井大学がやっていらっしゃるラウンドテーブルがそういう場になっていますが、最近、高校生とも一緒にラウンドテーブルをやっていて、非常に学びになります。立場の異なる人との対話を通して、必要なスキルを身に付け、いろいろな人がアイデアを出し合いながらまとめていく、やってみる。駄目ならまたやり直していくと、そういうことの繰り返しが、子供を主語にする学校をつくる上で大事なように思います。
 長くなりましたが、以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。大変貴重な意見交換ができたのではないかと思います。宮澤委員、荒瀬委員、大変示唆に富んだ御発表ありがとうございました。
 今後の立法府での検討につながるような御意見もございましたが、基本的には、現場への理解が必要だという御意見が非常に多かったのではないかと思います。特に、新たな教師の学びの姿をどう位置づけるのか、個別最適な教師の学び、協働的な教師の学び、そしてこれを児童生徒との同調性でどう考えていくのかについて御意見がありました。大変重要な要素だと思います。
 ただ、自主性を持たせるにしても、学びの成果の可視化、見える化がなければ、自己管理も難しいですので、学びの成果の可視化、見える化というのは大変重要な要素になると思います。審議のまとめの中にもありますが、それを組織的に共有するという要素も、十分認識していく必要があるのではないかと感じました。いずれにしましても、お二人の御発表、それから意見交換の内容を踏まえまして、事務局において、新たな教師の学びの姿に向けた研修について、さらに検討を進めていただくようにお願いしたいと思います。
 予定の時間になりましたが、議事の3が残っておりますので、若干、会議の延長をお許しいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、議事の3に入らせていただきます。教員養成部会の議事になりますので、進行を加治佐部会長にお渡しいたします。加治佐部会長、よろしくお願いします。
【加治佐部会長】  分かりました。教育養成部会長の加治佐です。
 議題1点です。それでは、教職課程認定基準の改正について、事務局のほうから説明をお願いいたします。
【平野教員免許企画室長】  失礼いたします。資料の4でございます。教職課程認定基準の改正でございます。
 2枚目の新旧対照表を御覧いただきたいと思います。前回の教職課程認定基準の改正において、小学校教諭の教職課程の入学定員が50人を超えた場合、50人を超えるごとに2名増員しなければいけないということで、その配置の範囲を自由化した改正を行ったところですが、左側の改正案にありますように、教育実践に関する科目という部分に専任教員を配置することができないような規定になってしまっているところがございます。
 このため、今回、教育実践に関する科目についても、増員した場合には専任教員を置くことができるというような趣旨のメンディングを行うものでございます。
 説明は以上でございます。
【加治佐部会長】  ありがとうございました。ただいまの説明について御意見、御質問ございますでしょうか。
 特に御意見ないようですので、案のとおり、進めることといたしたいと思います。
 それでは、進行を渡邉部会長にお戻しいたします。よろしくお願いします。
【渡邉部会長】  加治佐部会長、どうもありがとうございました。
 本日の議事としては以上でございますけれども、さらに時間を延長して申し訳ありませんが、事務局よりもう1点、重要な報告がございます。
 それでは、事務局からお願いいたします。
【寺島企画官】  失礼いたします。企画官の寺島でございます。
 すいません。時間が過ぎておりますので、状況の御報告だけ手短にさせていただきますけれども、資料の5-1、5-2でありますけれども、いわゆる教師のわいせつ防止法、これが今年の6月に議員立法で成立をしたところでありますけれども、その中では、文部科学大臣が基本的な指針を示すということになってございます。
 今回、5-1、それから5-2が本文でございますが、基本的な指針の原案が大体固まりましたので、今回、こういう形でお示しをさせていただきました。そして、この指針は、本日よりパブリックコメントを開始いたしております。あわせて、資料の5-1の3枚目、4枚目にありますように、関連する省令の改正も行いまして、併せてパブリックコメントを本日から開始をしたところでございます。このパブリックコメントを踏まえまして、最終的には基本指針を制定し、来年の4月1日から新しい法律を施行するという予定で作業を進めておるところでございまして、本日、時間の関係で指針の内容を説明する時間はございませんけれども、5-1、5-2にありますような内容で指針を定めて、こういったわいせつ行為がないように取り組んでまいりたいと思っております。
 内容の説明する時間がなくて失礼いたしますが、状況は以上でございます。
【渡邉部会長】  どうもありがとうございました。本件は重要な報告事項ということで、お知らせさせていただきました。
 本日は以上となります。長時間にわたりお疲れさまでございました。また、予定時間を延長させていただいたことをお許しいただき、ありがとうございました。令和の日本型学校教育を担う教師の在り方につきまして、引き続き、基本問題小委員会を中心とした検討が進みますので、委員の皆様にはよろしくお願いしたいと存じます。
 それでは、本日は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

(総合教育政策局教育人材政策課)