中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第3回)・更新制小委員会(第4回)合同会議

1.日時

令和3年8月4日(水曜日)14時00分~16時30分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 学校管理職を含む新しい時代の教職員集団の在り方の基本的考え方
  2. 教師に求められる資質能力の再整理について
  3. 教師の新たな学びの姿を踏まえた今後の現職研修の在り方について
  4. その他

4.議事録

【渡邉部会長】 それでは定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会第3回「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会ならびに第4回の教員免許更新制小委員会の合同会議を開催させていただきます。

コロナ禍が収まらない中、また皆様それぞれ御多用の中にもかかわらず御出席いただき本当にありがとうございます。そういった事情もあり本日もウェブ会議システムでの開催とさせていただきます。

初めに、事務局の人事異動、ならびに本会議の進め方について、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【中村教育人材政策課長補佐】 文部科学省教育人材政策課の中村です。声が小さければ、合図を送っていただければと思います。

事務局の異動につきまして、7月1日付で、教育人材政策課長が小幡泰弘に交代しましたので、御報告いたします。

なお、文部科学省からは、文部科学審議官の丸山洋司ほか、関係局長、課長等が出席しております。

続きまして、会議の進め方について確認させていただきます。本日もウェブ会議システムを活用していますことから、御発言に当たりましては、聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただきたいこと、御発言の際は名前をおっしゃっていただきたいこと、発言時以外はマイクオフにしていただきたいこと、御発言に当たっては、手を挙げるのボタンを押していただきたいことについて、御協力をお願いいたします。Webexのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど、補助的な使用としていただくようお願いいたします。

本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信しております。配付資料につきましては、議事次第に記載のとおりで、資料1から3まで、参考資料は1から4までであります。

説明は以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。

前回の特別部会では、このたびの教師の在り方についての諮問の検討を進めるうえでまずは学校全体の在り方を押さえる視点からスタートすることが重要だろうということで、そのコアとなる学校組織マネジメントについてのヒアリングあるいは意見交換をさせていただきました。

その続きとして、今回は学校組織マネジメントにおいて重要な役割を果たす校長等の管理職を含めた新しい時代の教職員集団の在り方をどう構築していくのかという点の議論を深めたいと思います。

その次に、教師個人に求められる共通的な資質能力の再定義についても議論を進めさせていただければと思います。

議事の進め方でございますけれども、皆様の意見交換の時間を最大限確保したいと考えますので、まずは御手元の資料にあります議事(1)から(3)までの内容について、事務局からまとめて説明いただきたいと思います。それぞれの議事内容は相互に関連する内容でもございますので、その後に意見交換の時間を設けさせていただければと思います。

なお、議事(3)の今後の現職研修の在り方につきましては、教員免許更新制小委員会で検討を進めている教師の新たな学びの姿とも関連いたします。小委員会の委員の方は今までかなり議論を重ねられていますけれども、小委員会以外の委員の方につきましては、その点についての御意見があれば、議事(3)に関連して、本日御意見をお聞かせいただければと思っております。

それでは、議事(1)から説明をお願いします。よろしくお願いいたします。

【中村教育人材政策課長補佐】 それでは、議事(1)につきまして、資料1に基づきまして、御説明いたします。文部科学省教育人材政策課の中村です。

資料1の2ページ目を御覧ください。前回の特別部会の審議のポイントとして、おさらいをしておきます。赤字のところに書いてございますけれども、前回、学校組織マネジメントに関して有識者のヒアリングを行いまして、その中でのポイントということで抽出したものでございますけれども、学校における働き方改革や業務改善、協働性や心理的安全性を確保した職場環境づくりによって、学ぶための資源である、「学ぶ時間」や「学ぶマインド」といったものを確保していくことを大前提に、教師が「経験を振り返ることを基礎とした学び」と「他者との対話から得られる学び」が重要な役割を果たすと考えられるとまとめております。

次に、3ページのスライドを御覧ください。こちらも前回の特別部会の審議のポイントの続きですけれども、3つ目の赤字のところからですが、学校自体を、教師の学びのコミュニティーと捉えて、自律的な研修組織として機能させていくことが重要であり、その推進役となる学校管理職やリーダーの果たす役割が大きいということで、その次の4ポツ目、教師が学校組織で働く中で、自らが成長実感を持って、学校教育活動に当たることが重要である。こういった内容が議論されました。

4ページ目を御覧ください。目指すべき姿、まず、教職員同士のプラスの相互作用を促す校内文化の醸成ということで、青字のところを中心に御説明しますけれども、2つ目のポツで、職場における協働性・心理的安全性を確保しつつ、学校の内外環境を教職員間で共有した上で、校内研修等の学び合い、対話を通じた課題解決など、教職員同士の関わり合いを軸に、自らの学校が直面している教育課題を克服しようとする校内文化の醸成が鍵と言えるのではないかと考えております。

その次の3ポツ目ですけれども、その校内文化の醸成に当たりまして、学校管理職やミドルリーダーを中心に、人と人の織りなす相互作用をプラスの方向に向かって促していくファシリテーション能力が求められると言えるのではないかと考えております。

5ページ目のスライドにつきましては、今申し上げましたファシリテーションに関しまして、解説的なものを参考文献から持ってきております。1行目に基本的な働きを書いていますけれども、ファシリテーションとは、集団が持つ知的相互作用を促進する働きであって、人が本来持っていた力を引き出し、相互に掛け合わせることで増幅し、集団の力を最大限に高めていくといった働きと説明されております。

6ページのスライドを御覧ください。目指すべき姿その2ということで、キーワードとして、それぞれの強みを伸ばし、自律的な成長を促す環境づくりということで、2ポツ目を中心に書いておりますけれども、校務をつかさどる校長のリーダーシップの下、教頭、副校長、主幹教諭等がそれを補佐し、任された範囲においてそれぞれがリーダーシップを発揮しつつも、学校を支える全ての教師が、学校教育活動にそれぞれの強みや適性等を生かすことが期待され、その意味において、校長を含めた管理職その他の職場の上司は、強み等を背景に特定分野の学校教育活動を牽引する教師に対して、時にフォロワーシップを発揮することも重要ではないかということで論点提起をさせていただいております。

7ページのスライドを御覧ください。こちらは、学校管理職(特に校長)に求められる資質能力ということで、制度の現状をおさらいしたものです。1つ目のポツに書いてございますけれども、学校管理職、特に校長に求められる資質能力につきましては、公立学校では、校長も含めて教員育成指標といったものの対象になっていまして、多くの都道府県教育委員会等で、教諭等とは別に、校長の教員育成指標といったものが策定されております。

そして、2ポツ目にございますように、教員育成指標の参酌指針という文部科学省告示を定めておりますが、校長固有の資質能力として、「的確な判断力、決断力、交渉力、危機管理を含む組織のマネジメント力」といったものを挙げさせていただいております。

次に、8ページ目を御覧ください。こちらは、制度の現状を踏まえて、こちらからの論点を提案させていただきたいと思ったものでして、1つ目のポツに書いてございますが、「校長」につきましては、2行目以下に書いていますが、教職の延長線上のキャリアステージというだけではなくて、「校長」という別の職であることを再認識した上で、その資質能力を具体的に明らかにしてはどうかと考えております。

その次のポツとして、その上で、特別部会における議論を踏まえて明らかにされた新たな時代における校長に求められる役割や資質能力について、校長の教員育成指標の策定に当たって参酌することとなる大臣指針において、盛り込むこととしてはどうかと考えております。

さらに、その際、各任命権者は、校長の選考を行うに当たり、面接等を含む選考試験を実施していることが一般的ですけれども、その選考基準と校長の教員育成指標との整合性の確保についても上述の指針において記載することとしてはどうかと考えております。

さらに、そのような校長等の管理職あるいはその候補者の養成についても、教職員支援機構が実施する教職員等中央研修の機能強化、教職大学院・民間企業等との連携、教育行政や複数の学校種など多様な学校における勤務経験との関係などに留意しつつ、検討を深めてはどうかと考えております。

9ページを御覧ください。これまでの資質能力に関する整理を振り返るということで、1つ目のポツに書いていますが、「学校組織マネジメント研修モデル・カリキュラム」といったものを過去策定してございまして、スライドのとおり、管理職の役割が示されておりまして、こういったことを基礎としながら、今日の学校教育をめぐる状況も踏まえ、校長の役割と資質能力を再整理してはどうかと考えております。

10ページのスライドを御覧ください。こちらは最近の動きということで、学校管理職(特に校長)に求められる資質能力に関して、1つ目のポツに書いてございますが、都道府県教育委員会等が定めています学校管理職の教員育成指標の多くで、御覧のような事項が共通的に求められているところでございます。

さらに、2つ目のポツにございますが、近年の中央教育審議会答申などにおいては、特に、1つ目のひし形にございますけれども、働き方改革の文脈で学校組織マネジメントの能力ですとか、2つ目のひし形のところで、地域との連携・協働といったことについて、管理職に必要な資質として指摘されているところでございます。

さらに3つ目のポツにありますように、今般の新型コロナウイルス感染症を受けた子供たちの学びの保障においては、教育委員会の支援の下での、各校の自主的・自立的な取組が重要だったということが指摘されておりまして、危機的な状況における管理職のリーダーシップの重要性が再認識されたといったことが、さきの令和答申の中でも指摘されております。

次に、11ページを御覧ください。今まで御説明してきました最近の動きを踏まえまして、学校管理職に求められる資質能力について、このように整理できるのではないかという提案でございますが、基本的な考え方として、1つ目がビジョンの提示、学校経営方針の提示ということ、2つ目は組織づくり、人づくりも含めた組織づくりというくくり、3つ目が学校外とのコミュニケーションといった形で、基本的な役割ということで、大くくりに、このように整理できるのではないかと考えております。

12ページを御覧ください。12ページは、今までの基本的な整理といったものに加えるといいますか、最近の動きということで、このような観点も加味して議論してはどうかということで、さきに示されました令和答申において、教師・教職員集団の在り方といったものが具体的に提言されてございます。太字になっているところが具体的に関係する部分ですけれども、具体的には13ページ以降で御説明しますので、13ページを御覧ください。

「令和の日本型学校教育」において特に求められる能力に関しまして、1つ目のポツにありますように、令和答申においては、望ましい教師・教職員組織の在り方として、学校教育を取り巻く社会の変化を前向きに受け止める。それから、継続的に学び続けていく。そして、多様な知識・経験を持つ人材との連携を強化、それから、そういった人材を取り込んでいくといったことが示されております。

2つ目のポツにありますように、そのための学校管理職の役割としては、目指すべき学校運営の方向性を示すため、学校の状況や課題を適切に把握する、学校組織のアセスメントと呼ばせていただきますが、そういった力と、学校内外の関係者の相互作用によって学校の教育力を最大化していくファシリテーション能力といったものが特に求められていくのではないかと提案させていただきます。

14ページのスライドを御覧ください。今申し上げたことを少しビジュアル化したものですけれども、左側の表の中に、教師・教職員諸組織の在り方として、令和答申の中で求められた役割、姿といったものを記載させていただいておりまして、真ん中の表には、実現のための条件ということで、こういったことが言えるのではないかということを書かせていただいております。こういったことを達成していくための学校管理職に求められる能力を一番右に改めて整理していますが、少し御説明しますと、大きく2つ挙げさせていただいていますが、アセスメント能力というのが、学校経営方針の策定に向けて、学校教育活動に関わる様々なデータや学校が置かれている内外環境に関する情報を、収集・整理・分析して教職員間や学校運営協議会で共有していく。

そして、このような適切な状況・課題把握を踏まえ、新たに取り入れるべき知識や技能に関する教職員間での認識の共有をしていくことがアセスメント能力の具体的な場面として考えられるのではないかと思っております。

もう一方のファシリテーション能力につきましては、多様な背景、経験、専門性等を有する教職員が円滑にコミュニケーションを取れる心理的安全性の確保。

それから、学校運営協議会などの学校・家庭・地域等の関係者間の協議における学校運営改善に向けた相互作用の促進といったことが、具体的な能力の発揮場面として考えられると思っております。

15ページを御覧ください。校長を含めた管理職に、このような力を必要とするという議論をさせていただく上で、一方で、校長にも様々な支援が必要ではないかという観点から少し整理したものでして、1つ目のポツには、校長自身の学びを支援することも重要といったことを記載させていただいています。青字のところを中心に御説明していきます。

2ポツ目では、校長自身の学びの観点から、校長同士の学び合いといったことが有効ではないかということを考えております。

3つ目ですけれども、その上で、特に新任校長につきましては、OJTにより自らの経験を振り返りつつ、域内のネットワークを活用した先輩校長からの日常的な支援やフィードバックがあることも有効ではないかと思われます。

さらに4つ目のポツですけれども、研修の具体的な方法として、経験豊富な退職校長の活用ですとか、退職校長が実務家教員として登用されている教職大学院と教育委員会との連携協働による研修、それから、前回の特別部会で発表いただきました中原先生、町支先生のように、組織開発を専門とする外部有識者と協働して実践と振り返りを交えた継続的な研修を実施することが具体的な手法として考えられるのではないかと思っております。

16ページと17ページにつきましては、参考資料として、前回の特別部会で御発表いただきました中原先生、町支先生の発表資料から引用させていただいた継続的な協働型校長研修によって実践的な定着を図る例を紹介させていただいています。

最後、18ページですが、議論のまとめとしまして、一番上に書いています教師の持続的な成長を支える環境の在り方としては、職場における心理的安全性が確保されつつ、多様な教職員同士の関わり合いを軸に学校が直面する教育課題を克服する組織において、それぞれの教師が「経験を振り返ることを基礎とした学び」、それから「他者との対話から得られる学び」といったものを蓄積していける環境が求められるのではないかと思っておりますが、そのために必要な方法として、2段目に書かせていただいています、様々な背景や経験を持った全ての教師がそれぞれの強みや適性等を生かして学校運営に参画するということが重要ではないかと思われます。

そして、こういった学校組織をまとめていく学校管理職の在り方としては、管理職に求められる基本的な役割を果たす上で、従前より求められている教育者としての資質や的確な判断力、決断力、交渉力、危機管理等のマネジメント能力に加えまして、令和の日本型学校教育においては特に、様々のデータや学校が置かれた内外環境に関する情報について収集・整理・分析、共有、いわゆるアセスメントということと、学校内外の関係者の相互作用により学校の教育力を最大化していくファシリテーションが求められるのではないかとまとめさせていただいております。

資料1の説明につきましては以上でございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

前回の特別部会議論あるいは従来の審議会答申等も踏まえて、まとめていただいたところであります。

それでは引き続き議事(2)についても、事務局からの説明をお願いします。

【中村教育人材政策課長補佐】 引き続き、議事(2)につきまして、資料2に基づきまして御説明いたします。

資料2の2ページ目を御覧ください。前回の特別部会でもお配りさせていただいたスライドを改めて確認させていただきたいと思いますけれども、教師個人と学校組織それぞれに求められる力の基本的な考え方のイメージを示したものでございます。それぞれの教師の資質能力として六角形の青い枠で示していますのが、いわゆる教員免許で担保すべき最低限の基礎的な資質能力のイメージでございまして、こういったものを最低限確保することを前提に、外側に赤い枠でそれぞれ形が違うものを示しておりますが、教師個人の強みや個性といったものが発揮されることを表しているつもりでございます。このような教師が集まって、一番外枠、グレーの線で黄色で網かけしていますが、こういった形で教職員集団の総合力を発揮していくといったことが学校の機能として求められていくのではないかと思っておりまして、教師それぞれについては左側に書かせていただいていますけれども、学校管理職などとの円滑なコミュニケーションの下で、教師個人からは、主体的な学びですとか学校を支えるといった観点からの研修ニーズを出していただいて、学校管理職からは、教師個人にこれからどう成長してほしいかとか、学校にとってこういう力が必要だといった対応力の確保から育成の方針とかを伝え、これらの対話によって、資質能力の向上といったものを図っていくことをイメージとして書かせていただいております。

3ページ目以降が今回の議論になりますけれども、教師個人の資質能力につきまして再整理したいと思っておりますが、その整理の観点として、大きく3つ示させていただいております。具体的には、この後のスライドで御説明していきますので、先に4ページを御覧ください。

整理すべき観点として、資質能力の大枠と具体的な能力記述といったものが一つ。それから、資質能力の「観点」と身につけるべき「水準」を考えていく必要があると思っております。そのために、この特別部会でどのようにするかということを提案させていただくものですが、特別部会では、各学校種・教科等を横断して全ての教師に共通して求められる資質能力として、教員免許で担保すべきと考えられる「基礎的な」資質能力に関して、「教諭」を念頭に置いた資質能力の大枠を議論し、求められる資質能力の具体的内容を明らかにしてはどうかと考えております。

その上で、その資質能力の具体的内容を踏まえた、新たな教職課程の科目・内容につきまして、別途設ける小委員会等において、教職課程コアカリキュラムとの関係も踏まえつつ、専門的な検討を行うこととしてはどうかと考えております。

それから、資質能力の向上に向けて、入職後、教職生涯にわたって身につけていくべきキャリアステージごとの水準(指標)につきましては、各地域の教育委員会と大学等で協働して策定する現在の教員育成指標の仕組みによって、各教育委員会が明らかにすることとしてはどうかと考えております。

国としては、その指標の策定に当たって、参酌すべき指針を示すといった関わりを考えております。

次に、5ページ目を御覧ください。養成、採用、研修、それぞれの役割について、教育職員養成審議会時代ですけれども、従来の審議会の整理をおさらいとして載せているものでございます。

6ページを御覧ください。今申し上げたこの後の流れにつきまして図で表したものでして、一番左にありますように、この特別部会で議論していただきたいところは、教員免許で担保すべき基礎的な資質能力の具体的な内容(能力記述)といったことは後から御説明したいと思います。

7ページを御覧ください。整理すべき論点の3つのうちの3つ目として、資質能力の構造的な整理と、「行動」レベルでの能力記述といったことをテーマとして挙げさせていただいておりまして、具体的には、1ポツ目にありますように、従来提言されてきた教師に求められる資質能力につきましては、並列的に資質能力を列挙する形でしたけれども、今回整理する新たな時代の教師に求められる資質能力の再定義に当たりましては、可能な限り構造的に整理することとしてはどうかと考えております。

その際に、各資質能力を表す具体的な能力の記述(能力記述文)につきましては、単なる知識(概念)の理解にとどまらず、可能な限り、「~しようとする」「行動できる」「説明できる」といった意欲や行動レベルで考えてはどうかと考えております。

能力記述文につきましては、新たに検討していく教職課程の到達目標にもつながるものと考えておりまして、新たな教職課程について、教員養成段階の性質を踏まえつつ、ビルド&ビルドの発想ではない、真に骨太な視点に立った検討ができるよう、その基となる資質能力の能力記述文につきましても、シンプルかつ骨太のものにすべきではないかと考えております。

8ページ目から10ページ目にかけましては、これまでの中教審答申等で提言されてきました教師に求められる資質能力の記述に関して、参考として掲載させていただいております。

11ページのスライドを御覧ください。資質能力の構造化の試案(イメージ)ということで、その検討の進め方について御説明していきます。

資質能力の構造化に当たって、教師に求められる資質能力の再整理に当たっては、教育委員会等が定めます教員育成指標の参酌指針である教育公務員特例法第22条の2の規定に基づく大臣指針、こちらにおける7つの観点といったものがございまして、こういったものをベースに、まず資質能力の大枠を議論してはどうかと考えております。

その際に、令和答申において示されました「令和の日本型学校教育」において実現すべき教師の理想的な姿を踏まえまして、資質能力の観点そのものの再構築も含め、その具体的内容(能力記述)について議論してはどうかと考えております。

12ページを御覧ください。今申し上げました大臣指針における7つの観点の記載を抜粋しております。

この7つの観点を、13ページのスライドで便宜的に見出しをつけて、この7つをベースに再構築していくということで、14ページから、具体的な再構築のイメージを示させていただいております。

資質能力の再構築に当たって、左側が現行の大臣指針の7つの観点ですけれども、真ん中の赤字で、教師の理想的な姿について、令和答申において新たに明示された要素を記載しておりますが、例えば、学習者中心の授業観ですとか、子供の主体的な学びを支援する伴走者としての役割、個別最適な学びと協働的な学び、ICT活用指導力やデータリテラシーといった資質能力、こういったことが令和答申において明示されたところでした。

こういった要素を踏まえつつ、大枠を再構成するということで、今回、大くくり化の資質能力として整理させていただいたものが右に示させていただいた5つです。上から、教職に必要な素養等、学習指導等、生徒指導等、特別な配慮や支援を必要とする子供への対応、ICTや情報・教育データの利活用等といった5つの大くくりの資質能力を再構成の案とさせていただきまして、これらに関連しまして、右下に赤字で注釈を記載させていただいていますが、マネジメントやコミュニケーション、このコミュニケーションの中の一つの作用としてファシリテーションといったものがあると考えておりますが、そういった要素、それから、連携協働といったことが横断的な要素として存在するのではないかと考えております。

15ページを御覧ください。今申し上げました5つの大くくりの資質能力の関係性につきまして、少し解説しております。上の点線の枠囲みの中でありますけれども、1つ目の「教職に必要な素養等」を基盤にしつつ、主たる教育活動である「学習指導等」、それから「生徒指導等」を柱として、「特別な配慮や支援を必要とする子供への対応」や「ICTや情報・教育データ利活用等」が「令和の日本型学校教育」が目指す「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」を実現するための方法、手段として位置づけられるのではないかという関係性と理解しております。

16ページを御覧ください。5つの大くくり化された資質能力の究極的な目標を整理したものでして、左側にありますように、日本型学校教育の強みとされている子供の知・徳・体の一体的な育成といったものに向けて、5つの大くくりの資質能力が総合的に発揮されるという関係性にあるのではないかと考えております。

17ページを御覧ください。5つの資質能力の相互の関係性をもう少し具体的に表したものでございます。真ん中から下段にかけて、教職に必要な素養等、こちらがいわゆる基盤的な部分としてあるというその上に、真ん中、緑の枠で書いていますけれども、学習指導等と生徒指導等が2本の柱として立って、それから左側、特別な配慮や支援を必要とする子供への対応、これは学習指導や生徒指導、いずれにも関わってくる、それぞれを個別最適に行うものとしての手段としての位置づけではないかと。それから、右のICTや情報・教育データの利活用等につきましては、学習指導、生徒指導、特別の配慮や支援を必要とする子供への対応、これらに関しまして、それをより効果的に行うための手段という位置づけではないかと理解しております。そして、資質能力といったことで5つの大くくり化をしているわけですけれども、その土台や背景となる部分としては、一番下にグレーの点線の枠囲みで書かせていただいていますけれども、豊かな人間性、使命感、責任感、教育的愛情、人権意識、倫理感、社会性等ということで、これまでも中教審答申等でも指摘されてきているところでございますけれども、こういったことが土台にあった上での基盤と、それぞれの資質能力の柱といったことになるのではないかと考えております。そして、これ全体を通しまして、左側に2層構造を書いておりますけれども、下の基礎免許で担保すべき基盤的な資質能力といったものが土台となった上で、さらにその上の現職研修や免許状の上進を含む学びの深化により高度化する部分といったことによって、それぞれの教師の強み、それから専門性を発揮していく、そういう2層構造と整理できるのではないかと考えております。

18ページ、それから19ページも似たようなものですけれども、横断的な要素として挙げさせていただいているものの例として「マネジメント」、それから、19ページは「ファシリテーション」ですけれども、それぞれのイメージを5つの大くくり化された資質能力の発揮場面に合わせて、例示的に、こういった要素が「マネジメント」として挙げられるのではないかということを18ページに示させていただいております。

19ページは「ファシリテーション」のバージョンですけれども、それぞれ5つの資質能力に関連して、特に「ファシリテーション」につきましては、教師同士、それから教師と子供、子供同士といったそれぞれの相互作用の発揮場面があると考えられますので、そういったことについて横断的に関わっていくものではないかと理解しております。

それから、20ページから23ページまでがシリーズになっておりますけれども、20ページ以降につきましては、今申し上げてきました5つの大くくり化した資質能力の観点ごとに、具体的な「基礎的な能力記述文」と表現していますが、いわゆる教員免許で担保すべきと考えられる能力記述文の例として、試案ですけれども、イメージを示させていただいたものです。

20ページにつきましては、教職に必要な素養といった大くくり化した観点の中に、ここでは5つ、具体的な能力記述文を書かせていただいております。これら全てに関して、一番下の赤の注釈で書いておりますけれども、マネジメントやコミュニケーション(ファシリテーションの作用を含む)、連携協働といったものが横断的な要素として関わっていくと理解しております。

21ページは、学習指導等についての具体的な能力記述文について記載させていただいていますけれども、特に令和答申の中でも指摘されておりますが、1ポツ目に関連の部分を入れていまして、関係法令、学習指導要領及び子供の心身の発達や学習過程に関する理解に基づき、子供たちの「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うなど、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実に向けて、学習者中心の授業を創造することができるといったことを総論的なものとして、能力記述文の記載をさせていただいております。

それから、22ページの生徒指導等の能力記述文につきまして、一番上のところを紹介させていただきますけれども、子供一人一人の特性や心身の状況を捉え、よさや可能性を伸ばす姿勢を身につけているといった総論の下に、その後に続いていますのは、生徒指導ですとか教育相談、キャリア教育、進路指導、学級経営といった、それぞれの場面についての能力を書かせていただいております。

23ページは、特別な配慮や支援を必要とする子供への対応とICTや情報・教育データの利活用等ということで、それを具体的に記述文として記載したものでございます。

こういった能力記述文につきましては、いわゆる基礎的な資質能力という理解で、養成段階で身につけるべき資質能力を考えておりまして、こういったことを踏まえて、この後も議論していただきまして、小委員会などで、新たな教職課程の目標や科目、内容について検討していくといった流れにできればと考えております。

24ページは、教員免許のカリキュラムの具体的なイメージということで、現行制度を参考として載せたものでございます。

説明は以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

教師に求められる資質能力については、従来、中央教育審議会においても議論を重ねてきたところであり、今までのいろいろな積み重ねがあるわけですけれども、改めて今回、資質能力の大枠の構造化をすることが示されました。特に養成段階においては非常に重要な要素になりますし、現職においてもこれが共通する要素にもなっていくわけですので、本日はぜひ多くの議論をいただけるとありがたいと思います。

それでは、議事(3)の内容についても、引き続き事務局から説明をお願いします。

【中村教育人材政策課長補佐】 引き続き、議事(3)につきまして、資料3に基づき御説明させていただきます。

教師の新たな学びの姿を踏まえた今後の現職研修の在り方についてということで、少し重なる部分もありますけれども、主に、教員免許更新制小委員会におけるこれまでの議論をベースにして、今後の現職研修の在り方について論点を提示させていただくものです。

1ポツのこれまでの議論につきましては、米印に書かせていただいていますが、5月24日の小委員会の資料から抜粋したものでございまして、新たな学びの姿の具体化に向けての論点例ということで、ここに3つ書かせていただいていますが、1つ目のポツ、教師が自らの学びを振り返り、将来の見通しを持って主体的に今後の学びを考えるといった眼目の下に、具体的に3行目から4行目にありますように、教師の研修受講履歴を記録・管理していくことが重要ではないかという論点を出させていただいております。

それから、2つ目の丸ですけれども、特に公立学校の教師について、2行目以降ですが、本指標――教員育成指標のことですが、教員育成指標や研修の受講履歴等を手がかりとした教師と任命権者等――「任命権者等」と書いていますけれども、実際的には学校管理職がその役割を担うと思っていますが、そういった者との「対話」や研修の奨励が確実に行われるよう、制度的な措置を講じることが必要ではないかとさせていただいております。

それから、3つ目は、いわゆるオンラインコンテンツの拡充、それから、学校等における活用促進といったものが重要ではないかという論点提起でございます。

1ポツに書いています論点(例)に関しまして、こういったことを実現するための現職研修の在り方といったものにつきまして、2ポツ以降で御説明したいと思います。2ポツの現職研修の充実方策に係る論点として、枠の中に書いていますように、「新たな教師の学びの姿」の実現により、全ての公立学校の教師に継続的な教師の学びの契機と機会を確実に提供し、その資質能力の向上を担保するためには、現職研修自体も一層の高度化を図っていく必要があるのではないかと考えております。

その際に、各地域の自主性や自律性に配慮しつつも、「Society5.0時代」、「予測困難な時代」の到来など、大きな社会変容を考慮した上で教師の資質向上を図るに当たり踏まえるべき基本的な視点といったものを明らかにすべく、教育公務員特例法第22条の2に基づく指針、いわゆる大臣指針と呼んだりしますけれども、それの改正を行う必要があるのではないかという論点提起でございます。

具体的に、2ページのところでブレークダウンしていますけれども、1つ目の丸にありますように、現在、この特別部会で行われています教師に求められる資質能力の再定義の議論を踏まえて、時代の変化に応じて教師が身につけるべき資質能力の視点について、この指針に明記してはどうかというものです。

そのほか、2ポツ目にありますが、例えばということで、以下のようなことを盛り込むことが考えられるのではないかと思っております。

1つ目のポツにあります中堅教諭等資質向上研修後のものも含めた、法定研修以外の研修機会のさらなる充実といった観点。2ポツ目の研修内容が最新の学校現場の教育課題に即した内容に適時見直される仕組みを整えるという観点。3つ目、研修方法に関して学習効果の最大化が図られるよう、対面・集合型の研修だけでなく、オンデマンドまたは同時双方向型のオンライン研修を組み合わせるなど、効果的・効率的な実施方法が採られているといった観点。4つ目、日々の経験や他者から学ぶといった「現場の経験」を重視したスタイルの学びが求められるようになっていることを踏まえて、校内研修や授業研究をはじめとする学校における様々な機会や場面を、教師の学びとして位置づけて活用していくなど、日常的な校内研修などを充実させるといった観点。最後に、管理職等のマネジメントの下で、「協働的な職場づくり」の構築や主体的・自律的な研修に向けた全校的な推進体制を整えるといった観点。こういったことを指針に盛り込むことが考えられるのではないかと思っております。

それから、最後の白い丸ですけれども、研修受講履歴を用いた対話と奨励によって、教師の主体的・自律的な研修を促進していく一方で、任命権者や学校管理職などは、当該履歴を記録管理する過程で、特定の教師が任命権者や学校管理職の期待する水準の研修を受けているとは到底認められないような場合につきましては、服務監督権者や学校管理職等の職務命令に基づき研修を受講させることが必要ではないかということを論点提起させていただいていますけれども、こちらにつきましては、現在でも初任者研修ですとか中堅教諭等資質向上研修等の法定研修において、職務命令を出した上で受講するといったことが行われていますので、そういった中にあって、特に、万一、到底認められないような場合があるときには、そういった方法が考えられるのではないかという考えでございます。

こういった考え方につきまして、指針やガイドラインなどの中で明らかにすることを検討するべきではないかということで問題提起させていただいています。

説明としては以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

今の内容につきましては、参考資料2-1から2-3にありますように教員養成部会や教員免許更新制小委員会とも関わる事項でありますので、適宜それらの資料を参照していただきながら、御議論いただければと思います。

【中村教育人材政策課長補佐】 補足をいいですか。

【渡邉部会長】 お願いします。

【中村教育人材政策課長補佐】 大変失礼いたしました。説明が漏れた点がございまして、最後の議事(3)、資料3に関連する部分としまして、実は本日、参考資料を幾つか配付させていただいていまして、その位置づけを簡単に御説明させていただきますと、参考資料2-1、2-2、2-3という参考資料2のシリーズですけど、こちらにつきましては、教員免許更新制小委員会と、その前身となる教員養成部会における包括的な検証についての資料を再度、掲載させていただいておりまして、それと、参考資料3-1、3-2が教員免許更新制小委員会で報告されました現職教員に対するアンケート調査の結果の概要と本体でございまして、こちらも小委員会で報告させていただいた上で議論させていただいているものでございます。

それから、参考資料4につきましては、教員研修履歴の管理等に関する調査結果ということで、小委員会で配付させていただいて議論させていただいたものですけれども、こちらにつきましては、小委員会で配付させていただいたものから、数値とか、グラフの見栄えですとか、幾つか修正を行った上で、再度、この部会としてお配りさせていただいておりますので、小委員会の先生方には、前回のものと少し異なっておりますことについて、おわびして訂正いたします。

補足は以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。

ここからは意見交換と質疑応答の時間といたします。できるだけ多くの方の御意見を伺いたいと思いますので、御協力をお願いします。

それでは、挙手をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

まず、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】 まず、議題(1)に関してです。教職員のスキルアップ、個人に加え、集団の学び合いの風土づくりが大切で、学校での育成機会のほとんどが、管理職の采配の範囲にあります。リーダーシップ次第で、日々の教育活動が育成教材として活用できるわけで、正に管理職の自主性や自立性が問われています。「校長がかわれば学校がかわる」と言われますが、「かわる」という意味は2つあり人事異動だけでなく意識改革の意味もあります。

また、教員採用とともに管理職選考の倍率低下に歯止めがかからないことも喫緊の課題です。処遇のあり方などに加え、「仕事は忙しい人に頼め」という「横並びのシワ寄せ」がその一因と考えられます。まずは、学校の組織マネジメントを充実させることこそ歯止めの近道だと思います。

次に、議題(2)に関してです。資料2の7ページに「行動レベルの能力記述」とありますが、エピソードベースでの記述ではなく、管理職の育成を含め、匠の技や、実践知・暗黙知などを、可視化、言語化、定量化して、それらが客観的に「測定・評価」できる仕組みを作っていく必要があると思います。

また、14ページの右に、新たな5観点が示されていますが、「特別な配慮や支援を必要とする子供への対応」と「ICTや情報・教育データの利活用等」は、現状の実態や課題から強調されたものと理解します。しかし、特別支援教育の視点は生徒指導をはじめ、すべての教育活動において、当然すでに生かされている必要があります。また、ICTは資質能力というよりあくまでも学習指導等のマストの手段なわけです。データの利活用はともかく、この2観点は、今後はあえて掲げなくても済むことを望みます。

続いて、14ページの下、マネジメント、ファシリテーションなどが横断的な要素として存在、とありますが、近年、「学級経営力」の低下を危惧する指摘をよく聞きます。学級経営の充実には、これらのスキルは非常に大切ですし、学校のチーム力を強化したり外部の人材を活用したりする上でも、益々重要となるので、18、19ページのような強調の仕方もよいのですが、5つの観点と同等の位置づけとなるような示し方も検討して欲しいと思います。

最後に議題(3)に関してです。教育実習や初任者のときに「難しい」と感じてることこそ、養成の段階においても特に時間を注いで身につけるべき力だと考えます。また、初任者に初任者研修を受けさせながら、担任を持たせることが当たり前になっている現実は、決してよいことではないと思います。それらを解消するために、大学4年次は1年間を費やしての主体的なPBL型の「インターン研修」を行い、教育実習の単位としても認めるなどの制度変更はできないものかと思います。また、初任者の時期には、子供との「遊びや語らい」などを含め「児童生徒との触れ合いから学ぶ」ことを主眼に自ら課題設定と解決を図る「臨床研修」を設けてはどうかと思います。学校現場が求めている教師は、優秀であるにこしたことはありませんが、荒削りでもよいので、人間的な魅力のある教師です。これこそ最も必要な資質能力ではないかと考えます。

【渡邉部会長】 戸ヶ﨑委員が今まで積み重ねてこられた実践に伴う御意見だと思います。特に、今まで暗黙知で行ってきた部分を可視化するという御意見は、大変貴重であると思いました。

それから、最後のマネジメント、ファシリテーションの重要性をどう位置づけるのかという点については、今回の資料自体が養成段階にかなり焦点を置いた整理がされているわけですけれども、養成段階のみならずほかの段階とも共通する視点になると、マネジメント、ファシリテーションが重要だという御指摘はそのとおりだと感じました。ありがとうございました。

【戸ヶ﨑委員】 ありがとうございました。

【渡邉部会長】 それでは、ほかに御意見のある方、挙手をお願いします。では、今、挙手の順に御指名させていただきます。市川委員、貞廣委員、中原委員、この3名の方について、続けて御意見を賜れるでしょうか。

では、市川委員からお願いいたします。

【市川委員】 全国特別支援学校長会の市川でございます。

今日のお話ですが、校長として、感想というか、意見になるかどうか分からないんですけど、お話をさせていただければと思います。

今、私も学校長として学校経営をしていますが、学校全体の課題に応じて学校全体で組織的に研修活動を進めることは学校経営という観点から進めやすいし、学校全体のテーマを設けて研修することというのは、どこの学校でもやっているのではないかと思うんですね。

一方、一人一人の先生方の資質能力を向上させるための研修を奨励していくということについては、正直言って、難しい部分があります。現在、私は校長として、先ほど話があったキャリアステージに応じて求められる資質能力という観点からいえば、東京都の場合には、教諭から主任教諭選考を受験して主任教諭になって、主任教諭から主幹教諭選考を受けて主幹教諭になるという、キャリアアップの段階ごとに、こういう研修をやったり、こういう学びをしたほうがいいのではないかという研修の奨励ができます。そういう観点では、教師のキャリアアップの在り方はどうあるべきかということも一緒に考えていかないと、研修の奨励をどう進めるかということにつながらないのではないかなと思っています。

一方、校長としての資質能力は、まさにお話しいただいたことは校長として学ばなければいけないことだと思っていますし、自ら高めなければならないなと思いますが、一方、校長に与えられている権限はどうあるべきかということについても考える必要があるのではないかなと思います。例えば人材育成の観点からいえば、校長に一層の異動等の人事権が与えられるという権限も検討するべきではないかと思います。

また、教師一人一人の資質能力の育成という観点から考えますと、勤務評定の中に、現在、先生一人一人の研修とか能力アップについてのことが、今の段階では、具体的にはそこまで反映できていません。校長として、勤務評定の中でもそういうものを反映させていくことができていくと、先生方一人一人に対して、次はどこまで学んだのか、どんなことをやっていくのかということが具体的に言えるのかなと思っています。

非常に校長としての感想になってしまいますが、以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。

先ほどの戸ヶ﨑委員の養成段階と初任者との違いもあるという御意見と同じように、キャリアステージごとにというのは、大変、参考になる御意見だと思います。キャリアアップをどうしていくのか、教師としてのプロフェッショナル性をどう高めていくのか、さらには管理職登用も含めた形でのキャリア形成をどう育んでいくのか、だと思いますけれども、そういった段階の踏み方という視点で大変参考になる御指摘をいただいたと思います。ありがとうございました。

それでは、貞廣委員、お願いいたします。

【貞廣委員】 ありがとうございます。千葉大学の貞廣と申します。それぞれの議題に1つずつ意見を申し上げたいと思います。

3、2、1というふうに行きたいと思いますが、まず、議第3、資料3に関してですけれども、校内研修の充実の方向性というものをお示しいただいていまして、これを歓迎したいと思います。ぜひ管理職の力でそれを強化・充実させて、さらにその活動を第三者が認証して、校内研修自体が研修履歴となっていくということが必要だと思います。

また、それ以外に関しても、例えば資料3の2ページ目のところ、2つ目の丸でしょうか、現場の教育課題に即している研修にするべきだという記載がございます。これはとても大事なんですけれども、だからといって、すぐに役立つハウツー的なものばかりに偏ってしまうと、研修履歴があたかもスタンプラリーのようになってしまいますので、すぐに役に立たなくても、例えば教職大学院等も積極的に活用して、本質的なことを学ぶことを保障したり支援したりすることも必要だと思います。

次に議題2、資料2に関してです。資質能力を大くくり化していくということでございますけれども、大くくり化というものは、本人の学びや学びを提供する側の主体性・自主性を発揮する空間が広がりますので、これについても歓迎したいと思います。また、私自身も教員養成に関わっておりますけれども、その経験から、例えば教育実習の評価などは、このような形で大くくり化していただいたほうがずっとしやすくなるなという感触があります。

ただ、資料2の20ページから23ページのところに、それぞれ大くくり化された資質能力のそれぞれに基礎的な能力記述分がぶら下がっている形で書かれていますけれども、ちょっとここが細かく書き込み過ぎなのではないかという懸念があります。ここももう少し大くくり化することが必要なのではないでしょうか。

と申しますのは、コアカリキュラムの轍を踏みたくないというか、現在、コアカリキュラムによって教員養成の質の保証をしようとしているわけですけれども、無理に内容を網羅することを目指して、内容の軽重とか学びのめり張りを低減させてしまうというところがありますので、この部分ももう少し大くくり化する方向性もあるのではないかということです。これが2点目です。

最後に3点目、議題1に関して、14ページのところに、管理職に求められる能力で、データですね、内外環境に関する情報を収集・整理・分析をしていく能力が必要だと書かれています。

戸ヶ﨑委員のお話にもありました様に、もちろん経験知・暗黙知を可視化していくということは必要です。ただ、データは毒にも薬にもなりますし、生半可に向き合うとやけどをします。誤読やつまみ食いを生みかねず、逆機能が大きくなりかねない。これを全ての校長に課すというのは無理があると思います。

むしろ本人、全ての校長先生に必要なのは、分析結果を正しく読み取り、理解し、学校改善に結びつけていけるような、いわゆるデータマインドのようなものだと思います。

ですから、本人にはデータマインドを持っていただいて、データ自体については、データの分析を行って、正しく翻訳・仲介してくれるような、データサイエンティストのような存在がむしろ必要だと思います。校長先生にやらせるというのは、私はちょっと荷が重過ぎるのではないかというふうに感じます。

以上でございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。研修の多様化、主体性重視、さらにデータを何のために活用するのかという御意見をいただきました。大変貴重な御意見ありがとうございました。

それでは、中原委員、お願いいたします。

【中原委員】 人材開発や組織開発の観点から、まず幾つかお話ししたいと思います。チャットに書いていきます。

まず、校長に必要な能力として提示されている「ファシリテーション能力」ですけれども、資料1のP4、P5ですね、これは、人の織りなす相互作用をプラスの方向に持っていく、このことを、この資料ではファシリテーション能力としているのですが、これは本当に妥当なのか、ということです。

目標を設定して、関わり合いを生み出し、プラスの成果を創出するというのは、組織論では「リーダーシップ」と言うのだと思うんです。リーダーシップとは「みなで山登りをしている現象」のようなものとお考えください。山に登るためには「どの山に登るか」を決めなければなりませんね。それが「目標設定」です。そのうえで、沈黙して山に登る人はいませんね。つまり、ひとびとのあいだに関わり合いや、サポートや、励まし合いを生み出さなくてはならない。そして、こういう「状況」のこと、「現象」のことをリーダーシップといいます。リーダーシップというものを生み出すには、いくつもの「手段」があるでしょう。たとえば、目標設定の能力もひとつですよね。その手段のひとつのなかに「ファシリテーション能力」というのが恐らくあるんじゃないかなと思っています。これはコメントです。

次に、資料1のP11のところで、管理職の役割提示をここでしています。例えば学校経営の方針の提示とか、組織づくりとか学校外コミュニケーションですね。これを実現するべきだといっている。しかし、これを提示していくのはいいんですけれども、単純に言うと、すぐに「絵に描いた餅になる」と思うんです。これを実質的にワークさせる、成果を出すためには、何らかの形で「管理職の評価」と連動させるべきではないのだろうかというのがもう1つ目です。

校長の役割定義を考えるときには、もうひとつ留意しておかなければならないこともあります。それは、校長先生の役割定義を考えるときには、その前のポスト、すなわち、教頭や副校長には、何が期待されているのかを明示することです。それを行わないと、連携ができません。結局、あるひとつの管理職の役割定義だけをとりだして議論できないのです。それ以前のキャリアの役割定義と重ね合わせ得て議論することが重要です。

つまり、教頭のときにはある意味、何にどの程度の時間・労力をかけて、何を達成しなければならないのか、校長になったらどうなのかということを一つ一つ整合的にしていく必要があるのかなと思いました。

これまで、わたしは、多くの組織で、管理職の資質能力を高めるプロジェクトに今まで従事してきましたが、その経験からいうと「評価と連動しない役割提示」と、「キャリアを踏まえていない役割提示」というのは必ず忘れ去られるという印象があります。これが2つめです。

次、資料2の4ページ、ここでは教員の資質能力の定義の在り方についての議論が出ていますけれども、私は、これをつくるプロセスこそ「データに基づくべき」だと思います。教育学の中に、そうしたデータがあるのかないのかは知りませんけれども、「データに基づきながら必要な資質・能力・行動」というのを定義していくべきではないでしょうか。

まず、例えば、定性的なやり方も定量的なやり方もいろいろなやり方があると思うんです。定性的には、誰からもリスペクトされ、高い教育成果を上げているような教員にヒアリングを行ったり、観察を行ったりすることもあるかもしれません。そういうプロセスの中で、定量測定ができるようなフレームワーク、ルーブリックのような行動基準ができます。あとは、量的に、その妥当性を検証していくこともありえると思います。つまり、教員の資質・能力の定義こそ、データに基づかないと、誰かの思いつきが、そのまま羅列されるということになるのかなと思います。

もう1つポイントがあります。このような資質能力基準をつくるのであれば、これは「使われなければ意味がない」ということです。理想的には、教員養成の現場、現場での面談、さまざまな場面で、教員の能力やスキルを高める議論や対話を行われるときに、使われなければほぼ意味がないと私は思います。教員の資質・能力を、教育委員会だけが知っていて、研修担当者しか意識しないのは、意味がないのです。日々のひとびとの会話にはいっていくくらいに流行させることが重要です。

現場で使われることの意味というのは、つまり面談で使われる、研修を受けるときに使われる、受けた後に使われる、評価の際に使われるということで、その時には、要は例えば20個も30個もの行動基準とかって誰も使わないんです。いっても7とか10だと思うんです。この、シンプルな記述とかネーミングを含めてそうなんですけれども、この資質能力基準を使うときに、「あらゆる人に使われる」ということを作成のコンセプトになさったほうがいいのではないかというふうに私は思います。また、それを用いた対話などを管理職、教員間でうながすのであれば、今までやってきた業務を見直すことも必須です。なるべく負荷を軽減しましょう。これは、いくらやり過ぎても、やり過ぎということはありません。

最後です。将来の教員研修についての「コンセプト」も必要なのではないでしょうか。オンデマンド、オンラインも用いるということでしたので、オンラインの特性をもっと行かした方がいいです。オンラインを用いる場合には、短時間で、頻度をあげて研修もできるわけです。短い時間で高頻度の研修ができる。

そうすると、研修1回目ではちょっと知識のインプットをして自分でやってみる。研修2回目では知識のインプットをして、また自分でやってみる。こういうふうにサンドイッチ型にするなどして、「自分でやってみるということ」ができるようになります。

すなわち、研修と実務の往還、学びと実践の往還ができる。研修で学んだことを現場で実践することを「研修転移」といいます。これからの教員研修は、量を徹底的に精選してもいいので、確実に学んだことが実践されること、その実践を振り返ることを重視なさったらいいでしょう。

企業の研修はとにかく「研修転移」を高める方向にいっています。しかし、教員研修は、これまでどうだったんでしょう。それを高める方向にデザインされていたのでしょうか。

つまり、一番大事なことを研修で習った内容を、単に頭の中に蓄積するだけじゃなくて、学んだことを実践させて、必ず持ってきて振り返るということです。こういうサイクルのある研修が実現できるのではないかと思います。

もちろん、このままやってしまえば、現場への負担にもなります。ですので、量をもっともっと減らしてもいいと思います。前回の議論から申し上げているとおり、教員の負担軽減がもっとも大切なことです。まずはさして研修転移を期待できない研修を徹底的に減らす。そのうえで、確実にやりきれることをやり、研修転移をうながす。やったことに関しては、やりっぱなしにせずにリフレクションをさせる。

要するに、今後の教員研修を考えるためのコアコンセプトの3つとして「研修転移を高める」と「リフレクション(振り返り)を促す」を「量を徹底的に減らす」ことをコアコンセプトにしたほうがいいように思います。

確実に実践できるもの、確実に経験を積めるもの、確実に経験学習できるものを重視したほうがいいのではないかというふうに思いました。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。先ほども説明しましたように、今回の資料は資質能力の要素について、養成段階に重心を置きながら整理したものでありますが、今の御指摘は資質能力の基準を現職段階の面談資料や評価基準との関係性といった見方で捉えられた大変示唆のある御指摘だと思います。

例えば、現在の評価については、勤務評価という形で教育委員会がそれぞれ独自に設定したモデル等もありますが、確かに今いただいた視点での整理がなされていないような気がいたします。評価基準との連動性というのは大変大きな課題でもあると思いますので、貴重な御意見をいただいたと思います。ありがとうございました。

それでは、続いてまた何名か御指名をさせていただきたいと思います。根津委員、それから坂越委員、松木委員、この順番で3名の方に御意見をいただきたいと思います。

根津委員、よろしくお願いいたします。

【根津委員】 早稲田大学の根津です。資料1と2について、感想というか印象です。今までの御意見について表現を変えてお話しするだけになるかもしれませんけれども。

まず資料1についてですけれども、教員不足のことが前提にあってなのですが、それは結果的に管理職不足や校長不足も起こっている、あるいは起こり得るであろうというふうに思っています。

ただ、これは養成段階ではなかなか難しいところです。まだ教員になったことがない学生に「校長先生は」と言ってもなかなかぴんとこない。そうなってまいりますと現職教育、入職後ですけれども、そこで管理職の魅力等についてどういうふうに扱っていくのかというのは非常に大きいテーマだろうと思います。

関連して、先ほども御意見あったかと思うのですが、校長先生や管理職の手前の段階の厚みというものをどういうふうに増していくのか、そこも1つの課題だろうというふうに思っています。

あまり今回の資料1にはなかったような気もするのですが、一口に校長・管理職といいましても、地域差、先ほど東京のお話がありましたけれども、あるいは義務教育とそれ以外、やはり小中と高等学校で大分違うのではないかという印象が拭えません。こういう違いも起こっているだろうというふうに思います。どのように校長になったのか、管理職になったのか、そのキャリアパスの違いに対応した専門性の深化というところも必要かなというふうに思います。

続いて資料2についてですけれども、この手のものが網羅的になるというところは非常によく理解できるのですが、明示されない、遊びですとか余裕ですとか隙間のようなものがどこかに残っているといいなというふうに、個人的には思います。

あと、資料2の13ページです。先ほど見出しの言葉についても少しお話があったかと思うのですが、見出しとして便宜的にまとめると、どうしてもこのまとめた言葉で思考しがちになるので、私の専門はカリキュラムなんですけれども、この立場からしますと、例えば(2)の教育課程の編成、これは実は(1)から(7)全般に関わってくるところです。

これを一括して「学習指導など」というふうに示すのは、「など」の部分だと言われればそれまでかもしれないのですが、ちょっとまとめ過ぎな感が否めないなという。それはこの後のシリーズといいますか、それについても同様です。

最後になりますけれども、この後の議論になるかと思いますが、今回の内容を学校段階の違いにどういうふうに対応させていくか、ここは慎重に検討を要するだろうというふうに見ています。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。キャリアパスをどうしていくのかという話と、最後にあった各学校段階における違いの話は、特に義務教育段階と高校段階は制度としてもかなり違いますし、それぞれの位置づけも違うでしょうから、検討に値する視点だと感じました。ありがとうございました。

それでは坂越委員、お願いいたします。

【坂越委員】 坂越です。よろしくお願いします。教員養成に関わっていますので、資料2の資質能力のことに関して少し発言をさせていただきます。

こういう形で構造化していくこと、またその上でいろいろな資質能力を横断的に育成・形成していくこと、これは必要だろうというふうに思います。ただ、その時に、それぞれの例えば教職課程科目が単発・並列で実施されるのではなくして、この教職課程を一体的に運営するような組織、それこそ教職課程組織マネジメントが必要になるだろうというふうに感じました。

その点と、こういう構造化の中で、私が一つ――どれもポイントではあるのですが――注目したいのはやっぱり素養のところです。教職の素養の部分、これは大変大事なんですけれども、でも、教職課程の科目として、カリキュラムとして考えたときに、責任感とか使命感という教職科目を出すというのは、これはあんまり得策じゃないですよね。

それこそアクティブラーニングとかディープラーニングの先行例に学ぶわけですけれども、やっぱり様々なコンテンツを通してコンピテンシーを培っていくというほうが効率的だろうし、実質的だろうと。むしろ、使命感も責任感も大事なんだけれども、その教科の中身をどうこうということよりも、それこそ学び方の改革ですよね。グループワークだったり、対話だったり、それからフィールドワークだったり、そういう学び方改革を通してこそ、こういう倫理感や、そういうコミュニケーション能力も含めて身につくのだろうというふうに思います。

この辺りは教職大学院の先行事例もあることなので、やっぱり先行モデルを取り入れることが有効かなと思いますし、それに合わせて、教師として現場に出たときに必要最低限のことができるということを考えると、教育実習改革はかなり迫った改革の必要性があるだろうと思います。思い切ってインターンシップをもっと重視するとか、1セメスターの間、毎週何曜日かに学校現場に出ていくというような、そういう形を取らないと、なかなか2週間とか3週間、長くて4週間、それだけの教育実習で、4月からさあ担任ですよと言っても、ここはかなりきついかなというようなイメージを持っていますので、この際一つの検討課題になるかなと考えています。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。養成段階と入職後の現場でのOJT的な要素というのをどうブリッジさせるのかという点について、インターンシップのお話もありましたけれども、重視する資質能力を段階にあわせてどう育んでいくのかという御指摘だと思います。ありがとうございました。

それでは、引き続いて松木委員にお願いできますでしょうか。

【松木委員】 今、坂越委員さんから出た話と幾分ダブってくるのですが、教員養成の当事者として2点、意見を述べたいと思います。

1点目は、教師に求められる資質能力の再整理ということに関してです。現在、学校現場では、新学習指導要領に基づいて、ある意味、コンテンツベースからコンピテンシーにかなり重点の移った授業が展開しようとしていますが、その一方で教員免許に関しては、資料2の24ページに示されているようなコンテンツの表で示されているわけです。ですから、大学の授業はコンテンツベースの授業をしているわけです。そこのところを変えないでいくというのは、やはり大きな問題だと思っていました。

今回、この部分に関連して、能力ベース、行動レベルで考えていくんだという話や、構造化していくということについては賛成したいと思います。ただし、それを24ページのこのような表の中に仮に落とし込んでいってしまえば、今までと同じ大学の教員養成の授業に戻っちゃうんじゃないかなと思います。

行動レベルで表現するということは、授業自体も行動を伴うような授業であって、一斉授業の講義で最後はテストで測るといったような授業ではないはずですよね。大学の授業の在り方自体を大きく変えていくということを、同時に、何らかの形で示していかないといけない。表現方法を幾ら能力ベースで変えたからといっても、免許法の表に落とした瞬間に元どおりの一斉授業、つまり、一斉講義の一律ペーパーテストで済まされるような形に戻っていっちゃうような気がいたします。

ぜひ、教師が求められる資質能力を免許の表に落としていくときに、もうひと工夫していただくことが必要じゃないかなというふうに思います。

2点目は、教員研修に絡んでです。最近、教職大学院もかなり充実してきています。実務家教員の雇用も含め、教育委員会との連携もかなり進んできていると思います。

卑近な例で申し訳ないのですが、例えば福井大学の例で挙げますと、マネジメントをメインとするコースに入学された現職教員院生の方々は、学校拠点方式ですので学校の中にいて、大学がその学校に出かけていきます。そして、院生はその学校が抱えている課題をその学校の同僚とともに解決をはかります。そこの校長先生もスタッフとして巻き込みながら一緒に考えて、学校づくりを進めていく大学院です。特に校内研修を組織していくということと、そこでの省察的実践についてロングスパンでまとめ、異校種や異専門の方々とじっくり論議することを、教職大学院のメインの活動に取り上げています。

そういった学校改革を基盤にした教職大学院も増えてきていると思っています。ぜひとも、教職大学院と教員研修の効率のよい制度的な重ね合わせの仕方ということについて、もっと検討していっていただけるといいなと思います。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。実際の大学での研修実績があると思いますので、先ほどの大学の授業の中でいかに行動レベルに根差したものにするのかという点や実践されている事例などについても、ぜひ改めて御教示いただければと思いました。ありがとうございました。

それでは引き続き、挙手されている方に御指名させていただきたいと思います。永田大学分科会長、お願いいたします。それから益川委員、松田委員、続けてお願いします。

【永田委員】 ありがとうございます。大変難しい問題を含んでいるということは理解しています。あえて申し上げると、教員集団や管理職あるいは教職員そのものを考えたときに、この資料全体の中に1か所も、「教職員の個性に鑑みて」とか、「教職員の固有の能力を発揮させる」という文言が見当たりません。

要するに、先ほどから幾つも意見が出ていましたが、何を身につける必要があるのかということはよく分かる内容である一方で、個々の先生たちが持っている個性や能力を発揮できないような枠組みの議論になっていると思います。

なぜそのようなことを言っているのかというと、先ほどから評価の話にも出ていますが、勤務評定としてここに書かれているポイントは理解できるのですが、これは教育の中身あるいは教育者の教育の力の評価につながる問題なのか、ということです。

そういう観点からいっても、その評価は簡単ではないに決まっていますし、教育や教育者の評価が簡単にできるのであれば、こんな苦労はしていないのだと思います。

こういうコンピテンシーをつけてください、と指示したものをつけたら良い先生になるかという問題ですが、結局はそこに疑問が戻ります。

教員のキャリアパスの話が先ほど出ていましたが、管理職になりたいから先生になる人と、教師になりたいから先生になる人のキャリアパスは明らかに違うでしょう。後者から前者が育つというプロセスが普通なのでしょうが、Dr.コトーみたいな人だっていてもいいのかなと思うのです。一生管理職なんかどうでもいい、子供たちをとにかく育てたい、という人もいると思うのです。

良い先生になるということと、ここに書かれていることはパラレルであるという証拠はどこにもなくて、これを全部身につけたらそれは良い先生なのだということは、私は、押し付けみたいで若干抵抗感があります。これを読んだ後に教職課程に入る学生の気持ちを思うと、本当にこれで良いのか、と思います。

将来、こういうことが自分には課されていくだろうし、こういうことやそういうことを身につけるということはわかるのですが、僕は僕、私は私の、それぞれ固有の能力を生かすためにはどうしたらいいのかということについては全く言及されていないのでは。

そういうものは自分でやって当然、ということなのかもしれませんが、こんなに細かく書かれてしまうと、そこだけあえて無視されているような気がします。

全体の枠組みを変える気はなく、そこまで変えろと言っているわけではないのですが、できれば先生がそれぞれ勇気を持って、努力をしたくなる、そのような文言も盛り込まないと、実際の効果は出ないのではないかなと思いました。

以上です。

【渡邉部会長】 本質的な御指摘をいただき、ありがとうございます。恐らく養成段階に重心を置いたうえで「個別最適な教師像」のような位置づけを言葉としては入れているのですけれども、御指摘のように、全体の人が管理職を目指すわけはないし、プロフェッショナル性を高めていきたいという人もいます。キャリアパスにはこの両方のキャリアパス的なものが含まれるでしょうし、その中の個別最適な教師像というものも、このプロフェッショナル性を高める方にも当然にあるのではないかと、お話を聞いていてそんな印象を受けました。大変本質的な御指摘ありがとうございます。

それでは続いて益川委員、お願いいたします。

【益川委員】 聖心女子大学の増川です。僕自身は学習科学が専門ですので、その視点からちょっとコメントできればなというふうに思います。

では資料2のほうからコメントしていきたいと思うんですけど、21ページをお願いできますでしょうか。資質能力の構造化の試案ということで、例えばここは学習指導等に主として関するものとして記述されているんですけど、先ほどからほかの委員からも御指摘があるように、ここの基礎的な能力記述分が、うまく授業のデザインとマッチするような記述をつくっていくことというのがとても大事なのかなというふうに思って見ておりました。

ここをたくさん書き過ぎるとやっぱり固定的になってしまうので、シンプルにするというのはとても大事だと思うんですけど、例えばこの一番上、「関係法令、学習指導要領及び子供の心身の発達や学習過程に関する理解に基づき」と書いてあると、じゃあそれをまず授業で教え込もう、というふうになってしまうかもしれないと。その後に、「子供たちの「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行う」、それで授業をつくることができるとなると、設計の仕方というのを学んで、実習に行って、行ってこいみたいな、あまり従来と結局は変わらないことになってしまうのかなというふうに思います。

例えば、僕の専門的な知見から話すと、子供の発達とか学習過程に関する理解って相当難しいんです。日々の授業の現場の先生でさえ、こうやって見取っていきながら、どのぐらい学べたのか、そして授業を変えたらどういうふうにまた子供たちの反応が変わっていくのか、試行錯誤の毎日だと思います。

そういうのを机上で学んだ理解を持っていけばいいというものではないので、例えば僕が前任校の静岡大学の教職大学院で行っていたことは、新しい科学的な学びに関する理解というのを授業でやりつつも、実習先で授業を実践したり観察して、そのデータを持ち帰って、また大学のほうで分析して、実際どうだったのか、議論とどう関連するのかというのを振り返って、また授業づくりに行くみたいな形の、授業と実習をかなり往還しながらやっていくことで、初めて両方が深まっていくということがありました。

ですので、例えばこういうところの記述も、「関連法令、学習指導要領及び子供の心身の発達や学習過程に関する理解」というのを、一通り授業ではまずつくるんですけど、それによって、どういう授業をやったらどういう学びが起きるのかという仮説みたいなのを持って、実際に授業の実践で、「主体的・対話的で深い学び」の実現をやってみて、その結果、またそれについて振り返ることで、さらに子供の発達や学習過程に関する理解を深めていくみたいな、そういう行き来が求められるような、そういう力自身が実際大事ですし、授業や実習のプロセスにとっても大事なので、何かそういうところのレベルで書いていくことで、大学での教員養成の授業や実習の在り方の見直しにもつなげていくような、そういう基盤の記述というのを検討していく必要があるのかなと思ったのが1つ目です。

2つ目は、そういうふうに考えていたときに、自分はすごく、子供たちがどういうふうに学ぶのかというのを、しっかり実態を捉えて、議論と照らし合わせて深めていくことってすごく大事だと思っていまして、そうすると、例えば教職に必要な素養等というところで幾つかのコンピテンシーが描かれているんですけど、そういうところにも、人の心の発達とか学習過程に関する何か最新の科学的理解みたいな内容を学ぶということも、すごく大事ではないのかなというふうに思っております。

続いて資料3のほうに行きたいと思うんですけど、研修についての改善の検討というのが進められていると思うのですが、これも中原委員が、たしか発言されていたかもしれないのですが、研修は研修、日々の実践は実践というふうに切り分けてしまうとまずいんじゃないかなというふうに思いまして、できるだけ研修で扱う内容を、そのまま日々の、例えば授業改善であれば授業実践に適用して、そこで子供たちがどういうふうに学びを深めていったかというエビデンスを取って、また研修に持っていっていろいろな先生と交流するであるとか、日々の授業実践と研修が連続的なものになるような設計というのがすごく大事だと思います。

また、先生方の経験が大事だというふうなところって、まさにそうだと思うんですけど、その経験の振り返りというのが、あまり主観的な、「こういう経験をしたからこうだった」というような、口の上での主観的な感想の言い合いではなくて、もうちょっと実際の情報、データ、エビデンス、最近ICTを活用することでいろいろな情報が取れるようになってきているので、そういうことに基づいた振り返りというのがより促進されるような機会が増えることが大事かなというふうに思いました。

最後、資料1のほうなんですけど、校長先生の集合研修みたいな機会ってとても大事かなというふうに思うんですけど、同時に、こちらの話も、より日常の日々の仕事と関連づけるような形で、例えば校長先生同士、横同士のネットワークが、校長会みたいな特別な会での交流だけではなくて、日々情報交換しながら自己を高めていくというような、そういう体制づくりも大切なんじゃないかなと思いました。

自校の強みや弱みを把握するというのは、やっぱり他校と比べないと見えてこないものもあったりしますので、特に新任の校長先生がその学校に着いたときに比べるとなると、自分が校長というポストに就く前での他校の経験というふうになるんですけど、それだけではなくて、多様な、近隣校とか、ネットワークを使ったらもうちょっと距離を越えた学校の校長先生ともつながることができるので、そういう中で、共通の課題意識を持つ校長先生方が横のネットワークをつくって、相談しながら解決していけるような。

校長先生の判断力というスキルは確かに大事だと思うんですけど、そこを支えてあげる、その負荷を対話を通して共有していくような、何かそういう仕組みもできるといいかなというふうに思いました。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。養成段階の研修と現職の先生方の実践における研修について、相互に高められるような連携性のある設計について御指摘がありました。それから共通の課題意識を持つ校長間のネットワーク、これはベンチマーク型というのでしょうか、このベンチマーク型で相互作用を高めるというような御指摘もありました。共通するのは、研修内容とか実践型というものをどう相互関連させるのかというような視点の重要性だと思います。ありがとうございました。

引き続き、松田委員、お願いいたします。

【松田委員】 ありがとうございます。Teach for Japanの松田でございます。変化が激しい時代になってきており、その中で教育や教員の在り方を変化させていく事に対する期待も高まってきています。そして、この期待に応えていくプロセスの中で教員の資質能力も複雑化してしまっているものだと思います。複雑化していくからこそ、この設計段階において、インプリメンテーションをしっかりと意識した議論が必要だと思っています。

恐らく歴史的にも、教員の資質能力の検討は幾度と行われてきていると思いますが、要件の複雑化が、現場へのインプリを難しくしてしまっている原因としてあったのではないかなというふうに推察します。

議論されている事が全て整えばすばらしいことだと思いますが、現場の状況や一人一人の資質能力やキャリアステージの違いも考えると、全てかちっと定義してルーブリックなどで固めることの意味と実現可能性について、改めて再度考えていく必要があるのだと思います。

現場管理職を基軸にした育成体制の構築も、理想的ではありますけれども、これも属人的になってしまって、学校によっては育成体制の質が高い・低いが生まれてしまうことも避けたいところです。

Teach for Japanでもこれまで独自に、教員の採用や育成を通して学校現場に教員の御紹介を続けてきておりますけれども、最初はルーブリックをかちっと固めていました。しかし、最終的に研修担当や管理職がルーブリックをどう活用できるかがポイントになり、育成者の質に依存してしまうリスクがありました。

これらの経験から、いま一度シンプルにすることが大切だと思い、当時、複雑なルーブリック運用からシンプルにそぎ落としたものにしていきました。

これはあくまでも個人的な意見ですが、今、教員には学級ビジョンや生徒ビジョンを定め、そこの目標やビジョンに向けて、周囲のリソースやサポートを得ながら、教員自身が学習し続ける姿勢を持ち、子供たちと向き合う対応力が求められているのだと思います。

例えば目標設定やモチベーション管理は現場で行い、教員免許の更新制度も今、検討が進んでいますけれども、オンライン研修コンテンツのプラットフォームみたいなものの構築を進めていき、先生方一人一人のランニングゴールやニーズに合わせて、研修コンテンツを組み合わせることも検討していってはいかがなものかなと思っております。

本日の議論のように構造化することに反対ということではなくて、インプリメンテーションを意識した設計が必要で、実現性も含めて検討が必要であることを主張したいと思います。メッセージはシンプルに、そしてインプリをサポートするようなリソースの構築を期待していきたいと思います。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございます。御指摘の点は大変重要だと思いました。構造化になるとどうしても全体の漏れがなくという視点が強くなってしまうのですが、実践においても使える整理にしていくためには、シンプル化というのは大変参考になる御意見だと思いました。ありがとうございます。

それでは、引き続き、挙手をされている方の指名をさせていただきます。安家委員、それから安部委員、岩本委員、3名の方に続けてお願いできますでしょうか。

【安家委員】 私立幼稚園幼児教育研究機構の理事長の安家と申します。本日は大変膨大な資料の御説明をいただきましてありがとうございました。私は数回こういう会議に出させていただいて、我々は教育公務員が従事している学校ではなく私立の学校であるということから、今お話しになっている内容が若干ぴんとこないところも実はございまして、そんなことと、私も養成大学に身を置いているものですので、その立場からちょっとお話を申し上げたいというふうに思っております。

私は養成大学に勤めて10年ほどになります。学生たちをずっと見てまいりまして、本当に今の学生は余裕がない。今現在は夏期の休暇中でございますが、この夏期の休暇中に、学生たちは保育所実習などに参ります。

夏休みというのは、昔は私どももわくわくしたものですけれども、学生たちは全くわくわく感がなくて、実習などに行くこととアルバイトで夏の休暇を過ごしているというのが現状でございます。

私どもの教育は、遊びと生活によって教育がなされていくわけで、学生たちは、実は外の遊びも仲間との遊びもほとんど経験がないままで、現在、大学に来ていて、そして幼稚園の教諭になってくる子たちがいるわけです。

現実に、現場に入っても、遊びを知らないものですから、ある意味非常につらい。先ほどの大学の教育課程もございましたが、非常に多忙な大学生活を送って、まさに専門学校に行って、教職の資格を取るだけのために大学にいるようなムードが実際にしております。

私は「自然と遊びのワークショップ」という授業を担当しているんですけれども、野山に連れていって、さあ遊びましょうというふうなことを言っても、全く手も足も出ないような人たちばかりでございます。

これが、実は小さい頃から公教育を受けてきた人たちの、ある意味なれの果てでございまして、そういう意味では、私は学校生活というものがもう少し余裕のあるものになっていかないのかなというふうなことを非常に強く感じております。

私が大学院に参りましたときに、大学の教官と非常に長い間語り合いました。大学の教官の部屋でお茶を飲みながら、長い長い議論をいたしました。そういうふうな大学の先生方の余裕もほとんどございません。先生方が授業に追われ、本当に学生たちのお世話に追われ、モーニングコールもしなければならないような事態に陥っていると。これが教員養成の現場でございます。

私は、やはり余裕、隙間が必要だなというふうに思っていて、先ほどから、あれほど校長のがちがちのものを押しつけられたり、教員に対する指導やコンテンツが並べられるというのは、私は若干いかがなものかなというふうな感じが、これは感想でございますが、いたしました。

それと、私立幼稚園の特性というのは、先ほど申し上げたように公務員ではございません。そして、結婚や様々なことで、都道府県をまたいで先生たちが移動するケースがかなりございます。そのような場合に、先日来お話しになっているように、各都道府県別の教育委員会が教育研修の履歴を構造化されているところが幾つか発表されておりましたけれども、都道府県別にそういう履歴の蓄積がなされていると、都道府県をまたがったときにそれが通用しないようなことが起こってくる可能性もございます。

私立幼稚園団体としては、文部科学省の幼児教育課と協力をいたしまして、幼稚園ナビというナビゲーションのシステムを持ち、全国的な研修をそのナビゲーションから申込みをして蓄積をしていくという方法を既に取っております。もう少し拡充をして、オンライン研修などもどんどん使えるようなプラットフォームをつくろうと、今、努力をしておりますが、そういうふうな仕掛けが、今後教員免許の更新等の扱いについても必要なのではないかというふうなことを、2点目に思います。

それから、教員の研修といいますとやはり外部研修のことがメインになりますけれども、先ほどから少しお話に出ていたように、実は園内で起こる様々な子供の状態であったり、保護者との対応であったり、置かれている立場であったりすることから研修課題を持ち上げて、園内で園長を中心に研修会をするということが、私立幼稚園の場合はたくさんございます。

しかし、このことは研修履歴のポイントになかなかなりにくいんです。園長がするやつでは駄目で、大学の何とか先生の講義だったらなるというふうな形になっているものが多うございます。私はやはり、現場でのそういう気づきや悩みなどを中心にした研修を、しっかりとした研修として認めていくことが、今後は非常に大切なのではないかなというふうに思っております。

以上3点についてお話しさせていただきました。以上でございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。令和の日本型学校教育の議論の中でも、幼児教育段階は非常に重要であるという議論がありました。

自然と遊びという視点が幼児教育段階では非常に重要ですし、それを養成段階でどう位置づけていくのかという御指摘だったと思いますけれども、貴重な御意見として承りたいと思います。ありがとうございました。

それでは、引き続き安部委員、お願いいたします。

【安部委員】 長崎短期大学の安部でございます。資料2の、教師に求められる資質能力の再整理について、少し感想めいたことを述べさせていただきたいと思います。

これは試案として、大枠構造化のイメージ、5つの観点で資質能力を示していただいているわけですけども、この5つの観点について、養成段階から採用・新任・中堅・ベテランという教員のキャリア段階を通底して、その段階ではどのような資質能力が必要か、その資質能力の見える化を図るために、先ほど、あまり細かいことを設定すると使えないというお話もありましたけども、私は達成度のレベルを表すルーブリックを、この5つの観点ごとにまずは作成してみる必要もあるのではないかなというふうに思います。

いわゆる養成段階までに求め、到達するべき段階をベースに、採用されてからは、この5つの観点でいいますと、上の、教職に必要な素養以外の、例えば学習指導、生徒指導、特別の配慮を必要とする子供への対応、ICT等の利活用能力等につきましては、先生の間でも、例えば非常に授業のうまい先生、そして生徒指導ですね、生徒に寄り添う能力が高い先生、指導力のある先生、そしてそういう特別な子供、課題を持つ子供に対して対応できる、そして今のICT等に対するリテラシーに長けているというような、いろいろな先生がいらっしゃってもいいわけで、全ての教員がルーブリックの最高段階まで行く必要はないんですけれども、研修等を通じて、例えば学習指導や生徒指導に関しても、これに特段強いような先生に関して、専門教員、よく「プロ教師」などという言葉もございますけども、そういう教師の新たな能力というか、資格とまでは申しませんけども、そういう素養というものも認定するような研修などの開発も必要なような気がしますので、私は、資質能力の構造化というのを図るべきではないかというような意見を持っております。

以上でございます。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。先ほどの大枠の議論に、見える化などによってそういった定義を明確にしていくということだと思います。ありがとうございます。

それでは引き続き、岩本委員、お願いいたします。

【岩本委員】 岩本です。よろしくお願いします。大きく2点あります。1点目が、管理職、特に校長に求められる資質能力というところに関してです。これに関して、特にこの令和の日本型学校を目指す今の段階で、やっぱりはっきりと明示しておいたほうがいいのではないかと思う視点が、リソースマネジメントの視点です。

学校現場、教職員は本当に余裕がない、余力がない、だから学ぶ意欲もなかなか湧かないと、こういった働き方の問題がこれだけ起きている中で、管理職は限られた資源を一体どういうふうに使うのか、外から資源を持ってくるのもそうですし、今、学校の中にある、教員の時間といった本当に限られた資源をどうやって使っていくのかという、ここの視点がないと、常にビルド・アンド・ビルドを学校の中でもやり続けてしまう。

いかに減らしていくかというのが、中原先生を含めて今までずっと話があった中で、今回、校長・管理職にやっぱりアセスメントもファシリテーションも非常に重要だと思います。特に今は、こういった減らすというか、縮減していくだとか、この視点はやっぱり強調して、はっきりと管理職に示していくというようなところは必要じゃないかと思います。

また、管理職のこういった資質能力がはっきりしていく中で、恐らく、若くてもそういう資質能力がある人間が校長だとか管理職になっていくだとか、場合によっては、そういう資質能力が非常に高ければ管理職・校長を60過ぎてもやるとか、そういう柔軟なキャリアパスというか配置というか、そういったことも併せて運用の中ではできるように考えていくというのが必要ではないかというのが、管理職に関する1つ目です。

2点目は、教員の資質能力の構造化に関してです。再三、この場で出ていましたけども、現場でいかに使えるものにしていくのか。特に現場の教員がこれを活用するという視点を考えたときに、資質能力の記述だとか整理の方法の中で、今、子供たちに、児童生徒に対しての資質能力の評価で、知識・技能・思考判断・表現とか、学びに向かう力、人間性と、こういう3レイヤーでやっているかと思います。

私は、この3層というか、これをうまく活用していくと、やっぱり教員が生徒たちの資質能力を評価したり、目標を設定するということを日常的に使っている見方・考え方から、それを自分たち自身だとか教員同士の中でも、もう使い慣れているものを、新しく何か難しいことをやるというよりは、子供たちと我々の資質能力の構造としては共通ということであれば理解しやすいし、実際使いやすいんじゃないかとも思いますので、そういった視点も今後、検討されてもいいのかなと思います。

最後、それに関して、育成の中では、どうしても知識・技能というのは、すぐ身につけようというので余裕なくやってしまう部分はあるかと思うのですが、やっぱり教員一人一人の学ぶ意欲、学びに向かう力を引き出すという意味においても、教員の主体的な学び、特に教員養成段階も、先ほどPBLという話もあったかと思いますけども、探究的な、自ら課題を設定し、自らこれをさらに学んでいきたいという主体的な学びをする中でコンピテンシーを身につけていくというような、そういう研修だとか養成の在り方というのも、やっぱり今後より一層重要になってくるのではないかというふうに思います。

すみません、ちょっと長くなりましたが以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。最初に御指摘されたリソースマネジメントの視点は、働き方改革の議論にもありました。それからICTインフラ整備や外部人材活用といった議論もありましたので、それら全体をマネジメントする視点として受け止めさせていただきました。

また、いろいろな構造化の問題についても貴重な御意見いただきました。ありがとうございました。

それでは、残る方々に引き続きの御意見をいただきたいと思いますが、申し訳ありません、時間が少し押し始めましたので、若干コンパクトな形での御意見をいただければと思います。

それでは、森山委員、大字委員、それから宮澤委員の3名の方、お願いしたいと思います。

まず森山委員、お願いいたします。

【森山委員】 ありがとうございます。教員養成に関わっている立場でもございますので、時間的なこともありますが、議事2に関わって意見を述べさせていただきたいと思います。

これは教員の資質能力の構造化というのが主として示されたわけですけれども、このような構造化を議論する場合に、私は筋道を立てて構造的に、あるいは体系的に受け止めるためにはどうすればいいかということを眼目に置きながら、2つの点を考えています。

1つは、WHY・WHAT・HOWの3つの問いを掲げて検討していくということです。理由(根拠)、意味、方法を問う三本の柱を立てて、多様な叙述内容を整理しながら受け止めるということです。もう1つは、大きな柱を立てて多様な内容を整理するために重要なのは、それぞれの柱についての、大とか中とか小という項目を区別して関係づけて、筋道のある捉え方をするということではないかと思います。

今回、構造化は、いわゆる体系化であるわけですから、令和の学校教育を担う教員の資質能力とは何かについて、いくつかの大項目をあげ、そのそれぞれにどのような内容の中または小項目が包摂されるかを吟味することが必要であると思うのです。したがって、そのことをはっきりさせるためには、やはり包摂の関係を明らかにさせておくことが必要ではないかと思います。

具体的には、今回提示されました構造化は、令和の学校教育においての教師の在り方を踏まえたものであるわけですから、新しい学校像とか、あるいは新しい学校観と言ってもいいのでしょうか、その構造をしっかりと捉えて生まれてくるものだと理解します。そうしますと、やはり令和の学校教育の中心課題から実践課題を導き出していくということが必要ではないかと思います。

いろいろな委員から御指摘がありましたけれども、非常に詳細に、細かくたくさんの項目が入っているという指摘もありました。ただ、同次元の、列挙するという方向にならないような形で、これら全体を一つの構造体として、立体的・統一的に捉えようとする、あるいは組み立てるということが必要なのではないかと思います。

科目ごと、あるいは内容ごとで小さく固めてしまいますと、先ほど何人かの委員からもございましたけど、科目の内容としてクリアとか、非常に短絡的な方向に行ってしまうということもあろうかと思います。

ただ、今回提示されました案は、これまでの研究がよく整理をされているとも思っています。そういう意味に加えて、「個に応じた最適な学びを実現する」という、今回非常にクローズアップされた令和の学校教育の教師像としては、新しさという意味については、もう少し検討を進める必要があるのではないかとも思います。それには、令和の日本型学校教育そのもののしっかりとした構造化、体系化が早急に示されなければならないと考えます。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。目指すところは令和の日本型学校教育であり、御指摘の視点は新しいものに向かうときにどう構造化するのかということだったと思います。本当に御指摘のとおりだと思いました。ありがとうございました。

それでは、大字委員、お願いいたします。

【大字委員】 小学校長会の大字でございます。2点お話をさせてください。1点は、資料1のほうですけれども、資料1の2ページ目に書かれていることは、全くそのとおりだなと、大変納得のできるところであります。

特にOJTや校内研修、授業研究などが教師の持続的成長の中核であると。まさにそのとおりで、そのための時間を学校ではしっかりと取って、教職員を成長させていきたいと、常々そう考えていますが、ここで一点、学校の現状をお伝えしておきたいのは、この学ぶ時間の確保というのが大変今は厳しいという現状です。

今回、学習指導要領が改訂になり、総授業時数が増加しました。どういうことか具体的に言えば、簡単に言うと例えば月曜日から木曜日までは6時間授業、金曜日は5時間授業で、金曜日の6時間目はクラブや委員会、これが1週間の5日間です。

この中でどうやって学ぶ時間を確保していくか。これは大変、どの校長も苦慮していることです。ここでお話合いをされることかどうか分かりませんが、今後、年間の総授業時数のことであったり、教員1人の持ち授業時数のことであったりをぜひ御議論いただいて、この学ぶ時間をしっかり確保して教師の成長につなげる、その辺りをお願いできればなというのが、この資料1のところです。

資料2については、構造化の試案についてなんですけれども、先ほど学習指導と生活指導が2本の柱であると。それは納得できるところなんですけれども、日本の学校教育のよさは、学習指導と生徒指導と、そこに特別活動という3本の柱が非常にバランスよく行われていることが、日本の学校教育のよさだと私は感じておりますので、この中にもう少し特別活動の視点、重要性といったものが分かるような形で取り上げていただけると、よりよいものになるのではないかなと思います。

以上です。

【渡邉部会長】 ありがとうございました。先ほどの御議論にもありましたけれども、どう教職員が学ぶ時間を確保して新しいものにしていくのかという点や、構造化の在り方については、より精査をしていくべきであると理解させていただきました。ありがとうございました。

引き続き、宮澤委員、お願いいたします。

【宮澤委員】 では、よろしくお願いいたします。全日本中学校長会会長、宮澤でございます。資料の1、2、3、それぞれ少しずつお話をさせてください。

資料1では、9ページのところになると思います。学校管理職に求められる資質能力、ここにある表のものをベースにして肉づけをしていく、そういうふうに捉えておるんですが、学校ビジョンの構築、先ほどからも出ておりますが、令和の日本型学校教育を進めていく上では、学校ビジョン構築のところに、例えばSociety5.0を踏まえるのであれば、未来を見据えたビジョン、あるいはSDGsを展開していくのであれば、世界・地球規模でグローバルな視点というところもぜひ織り込んでいけると、よりよい管理職の資質能力を明確に示すことができるのかなと思いました。Society5.0、AIがはびこっているような世の中を、今逆算して中学校では何を学ばせるべきか、こんなふうに考えておりますので、そういった視点もぜひ入れていただけるといいかなと思いました。

資料2は、最後の24ページのところになります。免許状取得に当たっての単位というところですが、こちらの一番上に「情報通信技術の活用を含む」とあるんですが、例えば、教育実習で現場で受け入れます。まず困るのが、学生さんたちは、電子黒板を使ったことがない、デジタル教科書も使ったことがないということなんです。ですから、より実践的なものを大学のほうでも学ぶ環境ができるといいなと。それがもしできないのであれば、先ほどから出ているインターンシップをある程度制度化していただけるといいのかなと。うちの学校にも学生ボランティアが2人ほど来ています。1人の大学は、インターンシップということで単位になります。もう一人のほうは、まるっきりのボランティアで、授業がないのでこの日だけ来ますということなんです。ですから、このインターンシップ制度もしっかりと制度にしていただけると、学校でもいいし、ウィン・ウィンの関係ができると思います。そういったところに気づきました。

あと最後は、先ほど大字委員も話をしていましたが、教員というのは、基本真面目な人間がそろっています。時間さえあれば、研修を自分でやると思うんです。ですから、そういった環境をつくっていただけるとありがたいなと。では、今の状況ではどうするか。やはり学校で学べる、オンラインを使うとか校内研修をやったものも、いろいろな研修における単位数のようなものとしてカウントしていただく、そんなような制度が進められるといいかなと思います。

以上、現場で感じたことをお伝えさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。先ほども令和の日本型学校教育の目指す理念型のようなものを中心に据えて全体の構築をするという御意見がありました。一方で実習生のデジタルインフラに対する理解度といったものがまだまだ遅れているということは、ショックに感じました。養成段階の大学こそが最先端になっていてほしいと思いますので、今の御意見は大変重要な御指摘をいただいたと思いました。ありがとうございました。

それでは、引き続き、手を挙げていらっしゃる方に御指名をお願いしたいと思います。藤田委員、喜多委員、今村委員、では3名に続けてお願いいたします。よろしいでしょうか。

【藤田委員】 東京都教育委員会の藤田でございます。よろしくお願いします。私のほうからは、議事(1)を中心に、(2)、(3)も若干絡むんですけども、手短にお話ししたいと思います。

まず、資料1の3ページのところの3つ目のところに、「学校自体を、教師の学びのコミュニティとして捉えて、自律的な研修組織として機能させていく」、これはもう大賛成でございます。これをやるために、先ほど来、大字委員等々からも出ておりますけれども、2ページのところの協働性・心理的安全性を確保した上で、学ぶ時間や学ぶマインドを確保していくというので、これがまず前提でないと何も進まないということですので、授業時数の在り方ですとか、そういった定数等々の問題も含めて、全ての学校運営の中の制度的な面が関わっておりますので、ぜひその辺の、目に見えるような抜本的な対策というんでしょうか、それには、私ども都道府県教育委員会の努力も必要な部分だとは思っておりますけれども、ぜひぜひそこのところもよろしくお願いしたいと思います。

その上で、校長先生の役割が非常に大きいということで、校長の資質能力をこの指針に書き込むに当たって、なるべく具体的なほうがいいんですが、あまり具体的過ぎて、全国的に見た場合に地域の特性を生かしにくかったりというようなことがないように、地域性等々にも御配慮いただければありがたいというふうに思います。

それから、校長の選考基準と育成指標の整合性を明示するに当たっては、これから管理職になっていこうとかという若手で意欲がある教員が、どうやっていったらそういう副校長・校長になっていけるんだろうとか、あるいは、主幹教諭だとこう、あるいは何年目の教員だったらこうというような、そういったことが分かるように、キャリアステージごとに、学級経営だけじゃなくて、学校経営としての意識ができるような明示の仕方をしていただければありがたいと思います。

そうすることによって、資料1の4ページのところにありますけれども、教職員同士の関わり合いを軸にして、自らの学校が直面している教育課題をみんなで一緒に克服しようという校内文化が出来上がっていくと、先ほど来の先生方の細かい資質を書き込んでいただいたことが、意識する、しないとに関わらず、自然な形として実現ができていくんだろうなというふうに思います。

最後でございます、資料1の15ページです。「校長のマネジメント能力の発揮を支援する環境整備」という中で、教育委員会が研修等々をやることはもちろんなんですが、これは私どもの反省も含めてですけど、都道府県教育委員会と市区町村の教育委員会が連携協働して、日常業務でも校長先生方を、権限への介入にならない範囲で、大きな意味でのバックアップをきちっとやっていくということを形で示していかなきゃいけないんだろうなというふうに思いますので、これは私ども連合会等も含めて、これからちょっと議論を深めていきたいというふうに思っております。

以上でございます。ありがとうございました。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。全体として、教育委員会と、最後にありました各市区町村との連携において、校長をはじめとする学校に対する支援体制をどう構築できるのかというのは大変大きな要素だと思います。これからも、教育委員会全体としても連携協働できるような形の御協力をお願いできればと思いました。ありがとうございました。

それでは、喜多委員、お願いいたします。

【喜多委員】 全国特別支援学級・通級指導教室設置学校長会の会長をしています喜多と申します。資料2の「教師に求められる資質能力の再整理」に関わって、2点ほどお話をさせていただければというふうに思います。

スライドの17、資質能力の構造化の試案に、すごくこれはよくまとまっていて分かりやすいなと思って拝見をさせていただきました。その中で、特別な配慮や支援を必要とする子供への対応ということで、生活指導、学習指導に関わる部分で個別的な配慮をする上で大事だということで、1つ項目を、必要な力として書き入れていただいていることは、すごくありがたいなと思いながら拝見しました。

その上で、スライド23にございます資質能力の観点と具体的な内容に関してなんですけども、ここは、教員免許で担保すべきと考えられる基礎的な能力の記述例ということで、もうこのとおりなんです。ただこれを、じゃあ大学養成、基本的教職課程の中でどれだけ担保できるかというところがすごく課題じゃないかなというふうに感じています。つまり、スライド24にありますように、小・中の教職課程の中で、特別支援に関わる単位というのは、1単位以上、大体1単位なんですね。その中で、今、この特別支援教育が抱えている課題、通常の学級の教員も、全ての教員が関わっていくわけですけども、これだけの資質能力を高められるか、身につけられるかというところは、これはちょっと不安なところがかなりあるなというふうに感じているのが1点目であります。

2点目は、現場の校長としてということで、感想じみたことなんですけども、一番最初に戸ヶ﨑委員から、学級経営になかなか苦慮している現状があるというお話がございました。本当にこれは、本校はそうでもないんですけども、ほかの学校、各地区の校長の話を聴くと、この部分がすごく大きいです。この学級経営に関して、スライド22の中で、生徒指導等の中の一番最後、それぞれの可能性や活躍の場を引き出す集団づくり(学級経営)ということで、きちんと文言として取り上げていただいていることはすごくいいなというふうに感じました。また、加えては、この生徒指導の一番上にある「子供一人一人の特性や心身の状況を捉え、良さや可能性を伸ばす姿勢を身に付けている。」これがしっかりできていれば、集団でのマネジメントも十分できる力が身につくんじゃないかなというふうに感じているところです。ぜひこの文言というのはすごく大事にして今後取り扱っていただけるとありがたいなというふうに思ったところです。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。「令和の日本型学校教育」の答申をまとめる際にも、この特別支援等に関する視点は、大変ページも割いて重要視した次第です。今回も、そういった点を踏まえてこういう整理をしているわけですけれども、大きな枠組みとしては、ダイバーシティー&インクルージョンについてのリテラシーを明確に持っていくことにつながるのだろうと思います。大変貴重な御指摘だったと思いますし、この資質能力の中にもそれを明確に位置づけているということで御理解いただければと思いました。ありがとうございました。

それでは、今村委員、お願いいたします。

【今村委員】 NPOカタリバの今村です。一つ一つの論については、先生方がおっしゃっているところにお任せするんですけれども、全体に関わることを。先ほど永田先生と松田さんがおっしゃったこととちょっと近いかもしれないんですが、誰しもやはり、たくさんのことを知っているということも大事ですけれども、与えられたコンセプトに自分を合わせに行くよりも、自分のそのコンセプトづくりに巻き込まれることがモチベーションの源泉になるという現象が、地域づくりとか、学校運営とか、いろいろなところでよく起きるのかなと思っています。こういった資質能力を各みんなが自分で設定するというのは難易度が高いことが前提なので、こうやって国として設定して出すことは大切なんですけれども、でも、ぜひ校長先生たちには、どういう先生がいい先生か、よい伴走とは何かとか、どういう職場がいい職場かとか、そういった資質能力をこの職場においてはどうあったらいいかという哲学対話みたいなものが、実は先生たちにとってすごく研修的な効果があったり、関係構築になったりします。こういったことを事例として同時に下ろすというか、伝えて、発信していただけると、マネジメントとしてチームの総力戦を挙げるということにつながるのかなと思いました。

私からは以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。先ほどのダイバーシティー&インクルージョンにも関連する話だと思います。個別最適性を求めながらも、多様性をどう活かしていけるのか、多様性を活かすということは個性を活かしていくということだと思いますので、全体に通じる重要な要素だと思います。ありがとうございます。

一通り挙手された方について御意見を伺いました。本日も大変貴重な御意見を多くいただいたと思います。事務局から、今までの御意見等も踏まえて、若干補足がございますので、お願いします。

【平野教員免許企画室長】 失礼いたします。免許室長の平野でございます。先ほど、ICTの活用力についてお話がございました。今日の資料に入れていないわけでありますけれども、本日付で教育職員免許法施行規則の改正が公布をされているところでございます。ICT活用指導力というものを充実する観点から、新たに「情報通信技術を活用した教育の理論及び方法」という科目を新設して、1単位以上の修得を必修化するということに加えまして、従来から修得が求められている「情報機器の操作」2単位に代えて、「数理、データ活用及び人工知能に関する科目」2単位を修得できるようにするといったような制度改正が行われて、来年4月1日から施行される予定でございます。

施行通知の中で、大学等において、ICTを活用した学習活動の意義について、学生自らが経験的に理解しておくということが重要であることから、特定の科目に限らず、教職課程の授業全体でICTを積極的に活用するということが期待されること。また、こうした学習を行うことができるように、教職課程の授業においてICTが普遍的に使用できる環境整備に努めることが期待されるということについて、各大学に本日付でお知らせをしているところでございます。このような環境が整っていく中で、教育実習などに行った学生についても、ICT活用指導というところの大学と現場との格差を埋めていくことが期待できるものと考えております。

本日資料を入れていなくて恐縮でございましたけども、ちょうど本日公布ということでございますので、御紹介をさせていただきました。

以上でございます。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございました。本日いろいろな御意見が出ましたけれども、事務局のほかの御担当者で、何か補足しておいたほうがよいというふうにお考えの方がおられましたら、どうぞ。よろしいですか。

それでは、補足はないということでございますので、本日いただいた御意見を踏まえて、今後の整理に役立ていただきたいと思います。本日お聴きした中で、それぞれ感想も述べさせていただきましたけれども、私より、総括的なことを申し上げておきたいと思います。

本日は3つの議事について御議論いただいたわけですけれども、まず、1つ目の議事内容では、令和の答申の中で明らかにされた「望ましい教職集団の在り方」とはどういうことなのか。それに伴って、学校の管理職の在り方についての御議論をいただきました。この点については、過去の中教審答申でもいろいろな整理がなされている訳ですが、従来の教職員集団の延長線上のキャリアステージではないものを、より今の時代に合わせて構築すると、どういう資質能力と言えるのかということだったと思います。特にこれから持続的な成長に向けて急激な変化にどう対応できるのか、そういった視点が管理職層には求められていると思います。そこで、私は皆さんの御意見を聴きながら、主な要素として3点あったのではないかと感じました。1つ目はこういう新しい変化の要素、理念に向かって学び合うコミュニケーション、コミュニティーの形成をするという視点、2つ目はそれを踏まえて外部人材を含めて多様な人材を生かしながら、学校組織の総合的なマネジメントをどう高めるのかという視点、それから3つ目は、本日新たに説明がなされましたけども、管理職としてアセスメント、あるいはファシリテーションの能力を発揮するという視点であり、新たな議論がなされたのではないかと思いました。そういったものを総合的に整理してキャリアを重ねていくとことによって、管理職が育成されるということだと思います。

それから、2つ目の議事内容の個々の教師に求められる資質能力について、特に今回は養成段階に求める基礎的な部分についての整理ではありましたけれども、これは現職にも共通した要素であるという議論が多かったような気がいたします。全体とすれば、構成要素の構造化といった概念の整理でした。また、具体的な能力記述もございましたけれども、全体的なこの構造化とは何なのかということについては、私なりの言葉で適切かどうか分かりませんが、たて糸・よこ糸を理念に向かうような要素にして立体的な構造化をすることなのではないか、と受け止めさせていただきました。

たて糸要素というのは、本日の資料2の16ページで整理されたような、従来の養成段階で重要視されている子供の知・徳・体を一体的に育むといった理念像に向かって、5つの大枠で整理された項目ということだと思います。その中に、特別に配慮、支援を要する視点やICT・情報・教育データ利活用の視点など新たに加わった要素もあり、これらも含めて整理するというのが、たて糸要素をしっかり整理するということだろうと思います。

もう一つ、よこ糸の要素というのが、18ページ目以降で整理されていました学校組織マネジメントの視点、コミュニケーション能力、ファシリテーション能力の作用、あるいは連携・協働というような言葉、これはいずれもチームワーク力とかマネジメント力のことであり、よこ糸の要素ではないかと思いました。

そして令和の日本型学校教育の実現化に向かうような、また理念に向かうような力にこのたて糸・よこ糸を持っていく、それが立体的な構造化なのではないかという印象を受けました。皆様の御意見を聞いて、そのような構造化が重要ではないかと思います。

それから3点目の議事は、教職免許更新制や研修をめぐる見直しについての議論であります。これは既に小委員会で議論していただいているわけですけれども、小委員会に所属されてない方の御意見も本日は伺うことができました。教師の持続的な学びや、自己研鑽を後押しするような仕組み、学びの支援の重要性ということが、本日の御意見では非常に強かったように思います。小委員会では、参考資料2-3のような形で整理をしていただいておりますので、こういった整理をベースにして、本日いただいた御意見も参考しながら、引き続き小委員会の加治佐主査のほうで深めていただければと思います。

加治佐主査より、何か御意見はありますでしょうか。

【加治佐部会長】 いいえ、特にはありません。ただ、かなりたくさん意見もいただきましたし、参考にさせていただきたいと思います。小委員会のほうでも、これまで何度か独自の会合も含めて行っておりますし、事務局のほうも、それを踏まえた審議のまとめということで、大きな方向性が出るのではないかというふうに思っております。

いずれにしても、一番大事なのは、更新制が存続するか云々も大事なんですけども、それ以上に、科学技術の発達でありますとか、教師の置かれた働き方の環境の変化、そういうものを踏まえて、いかに新しい研修の仕組みをつくるかだと思うんですね。ですから、そういう視点で、とにかく次のものに移っていくことになるんじゃないかなと思っているところです。

以上です。

【渡邉部会長】 どうもありがとうございます。参考資料2-3や今の御指摘のとおり、教員免許更新制の課題は明確にはなっていますけれども、本日は今後新たな養成段階や現職の研修をどう体系立てていくのか、継続的な学びにしていくのかといったことについて重要な御議論がなされたと思いました。ありがとうございました。

先ほども申し上げました通り、引き続き小委員会の加治佐主査の下で、この参考資料2-3の議論を深めていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

それでは、時間も経過いたしましたので、本日の議事は以上とさせていただきます。本日も大変長時間にわたって御議論いただきありがとうございました。



―― 了 ――

 


(総合教育政策局教育人材政策課)