中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会(第6回)会議

1.日時

令和4年4月25日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化について

4.配付資料

5.議事録

【加治佐主査】  定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会第6回基本問題小委員会を開催いたします。本日もウェブ会議システムを活用しての開催となります。  それでは、本日の会議の進め方などについて、事務局から説明をお願いいたします。

【中村教育人材政策課長補佐】  文部科学省の教育人材政策課の中村です。会議の進め方について確認させていただく前に、画面上、会議システムの都合上ですけれども、今、御覧いただいている画面共有の画面が焼きついてしまっていまして、大変申し訳ないんですけれども、この画面から変えることができませんので、その後に、追加的に画面共有していくことはできるんですけれども、これがいわゆる背景のような形になってしまっています。その点だけ御了承いただければと思っております。

 さて、本日もウェブ会議システムを活用していますことから、御発言に当たりましては、聞き取りやすいよう、はっきり御発言いただきたいこと、御発言の際は名前をおっしゃっていただきたいこと、発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただきたいこと、御発言に当たっては「手を挙げる」のボタンを押していただきたいことにつきまして、御協力をお願いいたします。チャット機能につきましては、傍聴者は閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど補助的な使用としていただくようお願いします。本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。

 配付資料は、議事次第に記載のとおりとなっております。

 私からは以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。本日の議事は、既に御案内のように、教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化についてであります。文科省からの御報告と、3つの大学にヒアリングで御協力をいただきます。3つの大学は、まず、大阪教育大学の岡本学長、峯先生、それから横浜国立大学の和田先生、鳴門教育大学の佐古学長、梅津先生、山田先生ということでございます。後ほどどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります。まず、事務局から説明をいただきます。その後、3大学からの御発表、最後に全体を通しての質疑応答、意見交換をしてまいりたいと思います。

 それでは、事務局から説明をお願いいたします。

【小畑教員養成企画室長】  事務局でございます。資料を共有させていただきます。

 それでは、事務局より、教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化に係る検討の方向性と主な論点(例)について御説明をさせていただきます。

 御説明に際しまして、資料1-1においてお示ししております、概要の資料と併せて御確認をいただければと思います。

 まず、教員養成大学・学部、教職大学院をめぐる状況についてでございます。社会の変化や技術革新に対応し、教師としての資質・能力を継続的に高めるといったことが求められている中、教員養成大学・学部、教職大学院が中心的な役割を果たし、教員養成・研修機能の高度化に取り組むことが重要となっているというところでございます。こうした中にありまして、令和の日本型学校教育を担う教師の育成を先導し、教員養成の在り方自体の変革を牽引するため、新たに教員養成フラッグシップ大学の取組が開始されたというところでございます。関連資料は少し省略をさせていただきます。

 次に、今後の公立小中学校の採用者数の見通しにつきましては、退職者数が減少局面に転じているということ、それから地方公務員の定年が段階的に引き上げられることなどの影響もありまして、令和4年度以降、減少していくといったことが予想されているところであり、各地域における教員需要の減少に対応した組織体制や各大学、学部間の連携の在り方について検討を進めていくといったことが重要となっているところでございます。

 また、大量採用が続いているということもございまして、公立学校採用者に占める国立教員養成大学・学部卒業者の割合についてでございますけれども、ここ30年程度の間に大きく低下する一方で、国立教員養成大学・学部の教員就職率につきましては、近年おおむね6割程度で推移しているというところでございまして、教職以外の職に就く者の数といった者が増えている状況にございます。教師を目指す優秀な学生を引きつけ、教師としての就職を促す取組を進めるとともに、多様な教職員集団へと転換が進む中で、教員養成大学・学部卒業者に期待される役割といったものを改めて捉え直し、特色あるカリキュラム展開を進めていくということが求められているところでございます。

 以下、関連するデータに関する資料でございます。こちらも説明は省略をさせていただきます。

 次に、大学院段階についての御説明でございます。国立大学教員養成系修士課程につきましては、原則として教職大学院に段階的に移行することとされたことを受けまして、教職大学院の全国的な整備が進み、定員総数も大幅に増加しているところでございます。他方、近年の新規採用者数の増加やミドルリーダー層が少ない現職教員の年齢構成の影響などもありまして、入学定員の増加に比して十分な志願者の増加が見られず、定員充足率につきましては、現在約80%前後となっているところでございます。学校現場や教育委員会、学生のニーズといったものも踏まえながら、教職大学院の特徴であります、いわゆるストレートマスターに対する教育、現職教員に対する教育、それぞれの観点から教職大学院を活用した教職の高度化に向けた取組を進めていくといったことが求められているところでございます。

 こちらも関連のデータ等に関する資料でございまして、説明は恐縮ですが割愛させていただきます。

 次に、特別部会において示されました検討の方向性における関連の記載について改めて確認をさせていただきます。多様化した教職員集団の中で、中核となる教師を養成する教員養成大学・学部、教職大学院について、教員養成フラッグシップ大学での取組も踏まえて、その機能強化、高度化のための方策について検討すること、特に学部と教職大学院との連携、接続の在り方や、教育委員会との連携、協働の在り方について検討することとされているところでございます。また、資料一番下のポツでございますけれども、教職大学院修了者に対する教員採用の特別選考や、初任者研修、中堅教諭等資質向上研修の内容の弾力化などの先進的な取組も踏まえつつ、その充実方策について検討することとされているところです。

 こうした特別部会での御指摘も踏まえまして、本日、基本問題小委員会における御審議に際しまして、改めて検討の方向性をお示しさせていただければと思います。本資料にございますとおり、絶えず変化していく学校や社会のニーズに対応していく上で、多様性と柔軟性を備えた教職員集団へと転換していくことが求められており、こうした中にあって教員養成大学・学部や教職大学院においては、多様な教職員集団の中で中核となる教師を養成することが期待されているというところでございます。とりわけ今後、新たな教師の学びの姿が学校現場で実践されていくに当たりまして、管理職のリーダーシップの下で、校内研修等の学校内での学びをリードする中核的な人材として活躍する教師の養成といったものが強く求められているということが考えられます。こうした点を踏まえまして、各教員養成大学・学部、教職大学院においては、教員養成フラッグシップ大学における実践も参考に、自らの強みとして、学習科学等の実証的な学問成果に基づく政策的実践を通じて学び続ける教師の育成に今後一層力を入れて取り組んでいくということが重要ではないか、こうした観点から、理論と実践を往還させた省察力による学びのデザインなどを強みとする教職大学院と学部との連携強化を推進することとしてはどうかといった検討の方向性をお示しさせていただいたところでございます。

 また、検討の方向性について御審議いただくに当たりまして、主な論点の例といたしまして、学部と教職大学院との連携を促進するための方策についてどのようなことが考えられるか。学部と教職大学院の有機的な連携の強化、学生の意欲や能力に応じた高度な学びの提供といった観点から、教職大学院への進学を希望する者に対するコースなどの設定を促進するといったことについてどう考えるか。さらには、学部・教職大学院を通じた在学年限の在り方についてどう考えるかといったものを挙げさせていただいております。

 次に、2つ目の検討の方向性といたしまして、教育委員会と大学との連携促進に関する内容をお示しさせていただいたところです。現場ニーズを踏まえた学部・教職大学院の機能強化、高度化を推進するとともに、教職を目指す学生を引きつけ、教師としての就職を促すインセンティブを働かせるといった観点から、教育委員会と大学との連携強化を推進することとしてはどうか。とりわけ研修段階におきましては、研修受講履歴を踏まえた資質能力の向上が進められていくということも踏まえ、新たな仕組みの下で、教職の高度化に向けた大学と教育委員会との連携体制をより一層実効性あるものとする取組を推進することとしてはどうかといった内容をお示しさせていただいたところでございます。

 なお、下に参考でございますけれども、令和2年3月に開催されました都道府県教育長協議会の分科会においても関連の御議論がなされているというところでございますので、資料の抜粋を掲載させていただいております。

 この検討の方向性について御審議をいただくに当たりまして、主な論点の例といたしまして、教員育成協議会を効果的に活用し、各地域において教育委員会と大学が必要な事項、例えばということで、下に例を記載してございますけれども、教師の養成、採用、研修に係る共通理解といったもののほかに、新たな教師の学びの姿を実現するための教育委員会と大学との連携体制、人事交流、教師の学びを生かしたキャリアパスの設定、教職大学院修了者に対する初任研、中堅研等の受講減免などについて協議をし、共通理解の下で連携を深めていくといった取組を促進していくための方策についてどう考えるか。あるいは、今日的な学校教育課題に対応した実践的な教員養成を推進する観点から、学部段階におきましても教職経験を有する教員、実務家教員の配置を促進し、教職大学院における実務家教員も含め、教育委員会等との人事交流を推進するといったことについてどう考えるか、その際、学校現場での実践と大学における教員養成を架橋する役割を担う者として、教職大学院修了者を中心的な対象者として位置づけ、教育委員会と連携を図りながら教職大学院修了者が早期に学校管理職を経験した後、教員養成大学・学部、教職大学院における実務家教員となって、高度専門職としての教師養成に参画するといった、教職大学院における学びを生かしたキャリアパスを描いていくといったことについてどう考えるか。さらには教職大学院での学びをより多くの現職教員に提供するとともに、高い学習意欲を持って学び続ける教師が学びを積み重ねることにより、専修免許状や教職修士、専門職の学位を取得しやすくするための方策についてどう考えるかといった内容を示させていただいたところでございます。

 こちらは先ほど御説明させていただいた1つ目の論点に関して、今後、教員育成協議会において、協議することが望まれる事項の例として、想定される内容を段階ごとにイメージとしてお示しをしたものでございます。

 また、審議まとめにおきましても、大学に対する期待ということで御指摘いただいたものがございましたので、その内容をまとめた資料ということでございます。

 また、関連する制度改正の御紹介でございますけれども、先般、大学院設置基準の改正が行われまして、社会人など大学院に所属する学生以外の者に対する一定のまとまりのある学習プログラムであります、履修証明プログラムについて、大学院の単位として授与することを可能とする制度改正が行われてございまして、各教職大学院におきましては、こういった新たな制度を活用して、教職大学院の学びに触れる機会の拡大に努めるといったことや教職大学院入学前に一定程度、履修単位を積み重ねることによりまして、教職大学院での学位を取得しやすくするといったことなどの取組を進めていくということが期待されているところでございます。

 また、こちらは現職教員に対する法定研修であります初任研、中堅研と教職大学院の学びを並べてお示しした資料でございますけれども、各地域におきましては、教職大学院修了者に対しまして、初任者研修の一部を免除する取組を行っていましたり、あるいは大学、大学院が開設する講座について、中堅教諭等資質向上研修の一部として活用するといった取組を進められつつあるというところでございます。

 また、こちらは全国の都道府県指定都市の教育長が教職大学院に対して望むことについて、アンケート調査をまとめた概要ということでございます。現職教員が教職大学院での学びにアクセスしやすい環境整備であったり、コースやカリキュラムに関する内容、あるいは教育委員会の研修への協力などについての要望が上げられているところでございます。

 また、回答の中で、その他という回答を少し取り上げたものでございますけれども、地域の抱える教育課題のカリキュラムへの反映であったり、教育委員会をバックアップするシンクタンク的な役割といった回答のほか、教職大学院を中心とした教育学部全体の学生の教育実践力の向上といったことも要望の内容としてあったところでございます。また、こちらは令和3年度現在におきまして、各教職大学院が開設する専攻コースを特徴別に分類したものでございまして、一番上、ミドルリーダーの養成といったもののほかにも、特別支援教育に関する専門性の向上や学校管理職養成に特色を持たせたというものなど、多様な学習ニーズに対応したプログラムの展開といったものも見られるようになってきているところでございます。

 また、こちらは各教職大学院に対して実施した調査結果をまとめた資料でございますけれども、資料左上にございますように、教職大学院修了者については、教育委員会の研修の一部が免除されるように教育委員会と協定を結ぶという取組が行われていたり、また、資料右上にございますように、教育委員会と連携をして、教職大学院に所属していない現職教員を対象とした研修を実施するという取組が進められていたりするほか、資料の下でございますけれども、教育委員会との人事交流や連携協力校におけるサポートなど研修以外におきましても、教育委員会と連携する取組も進められているところでございます。

 また、各大学におきましては、教職大学院の学びの機会を幅広く提供していくといった観点から、修業年限、授業の時間、場所などの実施方法に関して、様々な工夫を行っているところでございまして、また、資料右上にございますが、多様な学習ニーズに応えるために教職大学院で学びながら、同時に小学校教諭免許状を取得できるコースやプログラムを設けるといった取組も進められているところでございます。

 また、教職大学院で学ぶ学生の経済的負担を軽減するために、大学独自に奨学金を設定したり、授業料を減免したりする取組、教職大学院に在籍する学生以外に対する取組として、科目等履修、履修証明プログラムを実施するといった取組も行われているというところでございます。

 また、教職大学院の実務家教員に関するデータでございますけれども、資料左下に学位の保有状況をまとめてございますが、教職大学院制度ができ、10年以上が経過する中で、実務家教員の中にも一定割合、教職大学院を修了することで得られる教職修士の学位を保有するものといった者も出てきているところでございます。また、資料右上に実務経験をまとめてございますが、灰色ところでございますけれども、教育委員会から交流人事として大学に採用された教員といったものも一定割合存在しているところでございます。

 最後、3つ目の検討の方向性でございます。教員就職率の向上、組織体制の見直しに関する内容でございますが、高度職業人材としての教員採用ニーズが高まる中、学生の教員就職に係るモチベーションの維持向上を図る取組や、各地域の教員採用ニーズに応じたカリキュラムの展開など、教員就職率の向上に資する取組を一層充実させることが重要ではないか。また、今後の人口動態・教員採用事業等を踏まえ、入学定員の見直しや大学間の連携、教職大学院の充実に向けた取組といったものを一層推進していくことが重要ではないかといったものをお示しさせていただいております。

 また、この点に関する主な論点の例といたしまして、入学前、入学後の学習、就職対応など、それぞれの段階におきまして、教員就職率の向上を図るためにどのような取組を行うことが考えられるのか、また、全国的な教員養成機能の強化、高度化を図りつつ、入学定員の見直しや大学間の連携、教職大学院の充実に向けた取組を促進するための方策についてどのようなことが考えられるのかという内容をお示しさせていただいたところでございます。

 また、こちらは関連のデータの資料でございますけれども、1つ独立行政法人日本学生支援機構が実施をしました大学生の悩みや不安といった調査結果を見てみますと、学部共通でございますが、希望の就職先や進学先に行けるか不安だという項目を回答する学生が最も多い状況でございますが、資料下の注書きに、教育教員養成系の学生の結果について把握できる内容を記載してございますが、他の学科系統に比べまして、卒業後にやりたいことが見つからないといった回答が少ない状況でございますが、一方で、希望の就職先や進学先に行けるか不安だといった回答については他の学科系統と比べて大きな違いが見られないといった傾向も見られてございます。

 また、御参考といたしまして、以下、教師の就職を促す各大学の取組事例、また、大学進学前に教職への志望を高めるための高大接続に係る各大学の取組事例について、参考資料としてお示しをしてございます。

 それから、こちらは、国立の教員養成大学・学部の設置状況でございますけれども、各都道府県に設置された国立大学で教員養成に取り組んでいるというところでございますが、資料左上のほうに幾つかございますけれども、近隣の大学同士が連携して教員養成に取り組む事例といったものも複数出てきているという状況がございます。

 以下、また、こちらも参考でございますが、大学間連携に関する各大学の取組事例及び関連する制度改正の概要、その後ろには、教職大学院の特色ある取組事例であったり、関連する予算関連資料などもおつけしてございます。

 大変駆け足の説明となって恐縮でございますけれども、事務局からは以上でございます。

【加治佐主査】  どうもありがとうございました。教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化について、検討の方向性や課題等について、総合的に御説明いただきました。

 その上で、これから3大学から御報告いただきます。今後、機能強化の方策を提案しなきゃいけないわけですが、その際の参考になるという大学からの事例でございます。

 それでは、まずは、大阪教育大学のほうからよろしくお願いいたします。

【岡本学長】  大阪教育大学長の岡本でございます。本日は先般、文部科学大臣から指定を受けた本学の教員養成フラッグシップ大学構想につきまして、取組のあらましを紹介させていただきます。

 まず、1ページ目を御覧ください。本学の構想の全体像でございます。本学独自のテーマの実現に向け、3つの柱を掲げております。左上の青い枠ですけれども、大阪アドバンスト・ラーニング・センターの設置です。大阪市教育委員会との協働により、本学天王寺キャンパスに産官学連携による共創環境を構築し、本構想推進の拠点といたします。

 次に、左下の緑色の枠を御覧ください。全国的な教員養成ネットワークの構築と成果の展開でございます。連携開設制度の活用などによる先導的、革新的な教員養成カリキュラムの展開や、学び続ける教員を支えるプラットフォームの構築を掲げております。

 右側のオレンジの枠を御覧ください。先導的、革新的な教員養成カリキュラム、教職科目の研究、開発です。フラッグシップ大学の特例制度を活用し、ダイバーシティへの対応と令和の日本型学校教育を担う教員の育成を行います。それぞれの内容については、後ほど詳しく説明をさせていただきます。

 次のページをおめくりください。テーマの設定の理由、背景です。本学が所在する大阪は、特別支援学級に在籍する児童生徒数や外国にルーツのある日本語指導が必要な児童生徒の急増、貧困状態にある子供や不登校児童生徒の増加などが、全国平均に比して高い数値で推移するなど、多様な教育課題を抱えており、早急な対応が求められております。こうした状況は、全国の学校現場でも直面している課題ですが、大阪がとりわけ顕著であり、縮図化しており、その状況を、本学ではダイバーシティ大阪と呼んでおります。このような課題に対し、本学はダイバーシティを尊重し、多様な児童生徒一人一人に寄り添った、きめ細やかな指導力を備え得る実践力に力点を置いた人材養成カリキュラムを開発することで、単に知識を教える教員ではなく、ファシリテーター的能力を有した教員を養成し、その成果事例を日本全国に浸透させます。この目的を実現するため、資料左下に記載のとおり、本学独自のテーマを設定しております。このテーマには、大阪から日本の教育を変えるという気持ち、気概が込められております。

 次のページを御覧ください。教員養成フラッグシップ大学の指定大学に求められる重点課題と、科目等との対応関係でございます。本学では、公募において示された指定大学に求められる重点課題、1から7の全てを選択し、テーマを設定していますが、表に示すように、学部における特例措置と教職大学院の弾力措置を活用し、系統性を踏まえたカリキュラムとして、重点課題に対応した科目を位置づけております。

 次のページをお願いします。これまでの教育委員会との連携実績の1つとして、大阪市教育委員会との連携による、教職大学院を中心とする協働研究講座があります。現在、大阪市の資金拠出により、4名の実務家教員を配置しており、教員育成指標に対応した管理職研修や、学校教育ICT推進リーダーの養成、海外の学校改革に学ぶ研修プログラム、エビデンスベースの学校改革に関する研修プログラムなどを開発、実施しております。

 次のページを御覧ください。こちらは、ネーミングライツを契機とした産業界との連携事例の1つです。教科書会社である東京書籍との間で、ネーミングライツを提携したことをきっかけとして、他の企業からも機器の提供を受け、デジタル教科書体験コーナーを整備し、教育研究活動やFD研修に活用するなど、単なる命名権にとどまらない連携につなげております。

 次をお願いします。ただいま説明しました教育委員会や産業界との連携実績を発展させ、大阪市との協働により、大阪の中心に位置する本学天王寺キャンパスに大阪アドバンスト・ラーニング・センターを設置します。日本の将来を見据え、学校教育に求められる変革に教育委員会、学校現場、企業、大学がそれぞれ抱える課題、弱みや資源、強みを一堂に集積し、大きな成果を生み出す、全国でも類を見ない取組でございます。さらに、大阪市との協働により、拠点校方式による大阪版チーム学校モデルを構築します。学校現場において、大学教員や大学院生、企業、NPO法人、カウンセラー、ソーシャルワーカー、地域等の多様な人材が組織的連携に取り組むことにより、複雑化、多様化する教育課題に取り組むとともに、学生に対しては実践的な学びと省察を通じた学習観の転換や、多職種協働といった力量の形成を図ります。

 次を御覧ください。このページは、大阪アドバンスト・ラーニング・センターの機能でございます。現職教員向けの研修施設である大阪市教育センターとしての機能、本学の教育研究機能、企業、NPO等との専門的知識、技術機能がシームレスに連携する共創環境として、施設全体で養成、採用、研修の一体的な改革等の組織的な共同研究に取り組み、成果の社会実装や全国への発信、シンクタンク機能の確立を目指します。3階、4階の未来型教室では、企業等との連携により教育DXの活用、STEAM学習コンテンツの利用、検証や、教師に求められる新しい専門性の育成に資するプログラムの開発を行います。また、5階のノンテリトリアルフロアは、企業ブースやプレゼンテーションコート等を備え、産官学連携による共同研究拠点として活用します。

 次のページを御覧ください。このページは、先導的、革新的な教員養成プログラムの概要でございます。ダイバーシティ教育の基礎、展開、応用・発展で構成された3つのプログラムの積み上げと、それを貫く実習系科目、各プログラムと実習系科目をつなぐ省察、協働により、理論と実践の往還を通じて、より深い学びを実現するものです。1年生のプログラム1の基礎では、ダイバーシティを尊重し、多様な児童生徒一人一人を理解するための科目を開講します。2年生のプログラム2からは、ダイバーシティ教育の理論と方法に加え、ファシリテーション能力、学習者中心の授業デザイン、教育データ活用、教科横断と探究学習などの4つのテーマ領域に対応した学習指導法を開講いたします。3、4年生のプログラム3では、プログラム1と2で習得した理論と方法を駆使して、さらに応用・発展させるべく、実践的な学習や演習でさらに能力を深めていくという流れを考えております。

 次を御覧ください。本学では、先導的教員養成プログラムの一環として、デジタル技術の進展に対応し、教育DXを積極的に進めていきます。その主なものが、教職実践教材、バーチャルスクールでございます。クラウド上に、学校を取り巻く地域をバーチャルに構築し、様々なバックグラウンドを持った子供や学校現場を取り巻く様々な職種、地域等をシミュレーションできる教材を開発し、学生の経験を拡張します。

 次を御覧ください。学び続ける教員を支えるプラットフォームのイメージ図でございます。本学では、令和2年度にオープン・エデュケーション・システムを構築し、本学が蓄積する学習コンテンツを、インターネットを通じて発信しております。令和3年度の免許状更新講習において実証研究を開始し、デジタルバッジによる履修証明も行っています。こうした取り組みを発展させ、大阪教育大学オープン・エデュケーション・プラットフォームを構築します。

 次を御覧ください。学部と教職大学院の一体的なカリキュラムです。6年間の系統性を持たせた教員養成プログラムを構築し、より効果的な教員養成を行うとともに、例えば、前倒し履修により生み出される時間を活用して、特別支援教育を含む他校種、別教科の免許取得を目指したり、将来的には、大学院2年生におけるインターンシップ等を通じて、所得を得ながら実践力の向上を図るといったプログラムや5年一貫履修プログラムの提案につなげていきたいと考えております。また、本学は関西大学、近畿大学と連合教職大学院を設置していますが、他大学との連携を一層強化することや、学んできたことがそれぞれ違う多様な進学者へのきめ細やかな対応も必要だと考えております。

 次を御覧ください。フラッグシップ大学構想を推進する体制図です。上側の緑色の枠は、本構想を推進する学内体制です。未来教育共創推進本部を令和4年4月に立ち上げており、その下に、先導的教員養成プログラム開発部、教育DX推進部、産官学連携推進部などの3つの部を設置する予定です。また、下側のオレンジの色の枠の中ですけれども、大阪市教育委員会との連携組織となっております。大阪アドバンスト・ラーニング・センターを拠点とした事業を推進するための組織として、大阪アドバンスト・ラーニング・センター機能強化検討部会を令和4年2月に設置しており、その下にシンクタンク機能作業チーム、人材育成機能作業チーム、協働研究講座活性化チーム、そして、チーム学校実現作業チームなどを設置する予定です。教員養成フラッグシップ大学構想、大阪アドバンスト・ランニング・センター、大阪市との連携事業、これらはばらばらな取組ではなく、三位一体のものでございます。これらの組織やプロジェクトをファシリテートする人材として、教育版URAを配置します。

 教育版URAにつきましては、次に少し補足をさせていただきます。従来のURAと教育版URAの業務内容を比較しています。公教育が対応すべき教育課題が複雑化、多様化する中において、産官学連携による課題解決は必要不可欠であり、教育分野においても、URA的な役割の人材が研究プロジェクトを企画、マネジメントすることが重要ですが、配置は進んでおりません。教育版URAは、研究成果を教育課題の改善策や教育政策の提示につなげる支援が主な目的であり、研究分野のみでなく、教育現場や教員養成の専門的知識に精通することが必要になります。また、共同研究プロジェクトの企画に当たっては、企業のメリットを明確化し、ウィン・ウィンの関係を構築することが重要だと考えております。このように、従来のURAと役割が大きく異なることから、本学は全国のモデルとして、教育版URAの業務内容の標準化や研修、教育プログラムの開発、質保証制度の構築、キャリアパスの確立に必要な人事制度改革等に取り組み、教育版URA人材育成のインキュベーターとなることを目指します。

 本学はこれまで、実践力を備えた教員や教育支援人材の養成、教育のグローバル化などに対応すべく、抜本的な大学改革や地元教育委員会、産業界との連携を着実に推進してまいりました。今後は、令和6年に完成を控える大阪アドバンスト・ラーニング・センターを拠点に、教員養成フラッグシップ大学として、ダイバーシティ教育、教育DXの推進、学習観、授業観の転換といった教員養成の高度化に全学を挙げて取り組み、多様な教育課題の縮図とも言える大阪から、令和の日本型学校教育を牽引してまいります。

 説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、横浜国立大学からの報告をお願いいたします。

【和田教授】  それでは、横浜国立大学教職大学院におけます、学部と教職大学院との連携・接続の推進に関する取組事例について、御説明をさせていただきます。

 特に本学の教職大学院では、飛び入学の学生が生まれましたので、この点について、具体的に御説明できればと思います。

 まず、本学の学部につきましては、令和3年度に教育学部の課程を定員200名の3コースから成る学校教員養成課程に改組いたしました。これと連動いたしまして、教職大学院も定員15名の派遣教員をメインとしたものから、定員60名の3つのプログラムから成る専攻へと改組いたしました。中でも学部新卒学生を受け入れる教科教育・特別支援教育プログラム、こちらはより協働性を重視して、また、学内からの教職大学院への進学者はリーダー的な存在となっていくことを重視いたしまして、3つの学部のコースから、3つのグループというところにつながっていく、こういった連続性を重視した改組としております。

 今、御説明しました内容をまとめましたものがこちらになりますけれども、イノベーティブな教育理論や実践の開発には協働性が不可欠であるという考えの下、学部の各コースからの進学者が教科の枠を超えて、関わりを深められるグループ制のプログラムとなっております。学部のコースから教職大学院のグループへ、この中で主体性と協働性を育むことを重視する点が、本学の学部と教職大学院の接続上の特色となっております。

 こちらは学部のコース編成の具体ですけれども、教員として基礎的な知識、技能を教科教育学、教科内容学を中核に深めまして、教科横断的、協働的に学ぶことを意識づけていくこととしています。特に教科横断的な部分に関しましては、カリキュラム上の工夫で副免許、2種の免許の取得を推奨いたしまして、これを取得しやすいカリキュラムとしております。

 学部の教職カリキュラムの具体ですけれども、学部では理論と実践の往還、これを重視いたしまして、1年次から教育現場に入って理論に基づく授業観察を中心に行う教育実地研究、そして2年次には、アシスタントティーチャー等、より実践性を重視したスクールデー実践、これを配置しまして、これらのインターンシップ科目を経て、3年次の小学校及び中学校の教育実習につなげております。こうしてコースの中で、小学校に基盤を置いた学校教育を担う教員として必要な知識技能を身につけて、実践において活用できる能力を育んでいくというカリキュラム構成になっております。

 その上で、教職大学院では学校課題の解決を理論と実践の往還・融合によって実現できる力を強化するということで、本学においても、理論と実践の往還から融合までを発展させて自分なりの理論、実践の開発、そして理論を実践の場において翻訳する力、これをもったバイリンガル教師を目指そうということで進めています。この中で、教育現場の先生方と深いコミュニケーションを生み出していって、総合的な教師力も育んでいくということです。つまり、理論と実践の往還・融合を通じて、教育課題の解決に関わる実践研究の部分と、総合的な教師力の向上を一体化して進めていこうというものであります。

 教科教育・特別支援教育プログラムのカリキュラムになりますが、各教科等において、教材デザイン、あるいは授業デザインといった理論を学ぶ科目を設置しております。これと学校実習と学校課題解決研究、これを通じて理論と実践を往還させて、そして融合を図っていくということを狙っております。また、本学は、希望者には修士論文相当の教育課題に関する実践研究を可能にしておりまして、連合大学院の博士課程への接続も考慮したカリキュラムになっております。

 こちらが、具体的な時間割表になります。本学はターム制を導入しておりますので、1年次の前半は必修科目を中心に理論を学習いたします。原則として、毎週金曜日、年間を通じて学校実習となっておりまして、特に学部との関連では、先ほど御説明いたしました学部のインターシップ科目と教職大学院の実習を同じ金曜日に実施することで、教職大学院生の実習校へ学部生が訪問をして、実習の様子を捉える機会となるような工夫をしております。例えば、昨年度は、附属学校の学校研究に教職大学院生が参画をさせていただいて、公開研究に向けての定期的な授業研究、これを実施していただいて、そこに学部生がインターンシップ科目を通じて参加をするという、授業観察の力を向上させるような取組を実施いたしました。

 こちらが2年次のものになりますけれども、年間を通じた学校実習は同様に金曜日に実施をしていくという形になっております。

 次に、本学の選抜制度ですけれども、全体では6タイプの選抜方式を準備しております。学部との接続を考慮したものが学内特別選抜というものになりますが、こちらを通じて、教科教育・特別支援教育のプログラムへ学内の学生は進学していくことになります。

 こちらは2021年度の入試概要となります。A、B、Cの日程で3回の入試を行いました。この中で、学内特別選抜はA日程、9月の入試のみということになっております。

 こちらが実際の入試結果となります。2022年度の入試では全体で入学志願者が100名、入学者が定員60名に対して64名となりました。この中で学内特別選抜は、各グループのところ、合計8名となりました。特に、赤枠内の自然・生活のグループの5名の合格者の中の1名が、学部3年次からの飛び級入学者ということになっております。

 学内特別選抜ですけれども、概要としましては、書類審査と口述試験を課しての選抜となっております。およそ10名程度を見込んでの選抜ということになっております。この選抜に向けては、指導教員からの推薦、そしてグループでの面接、そして後ほど説明させていただきますが、接続準備プログラムといったものを受講していただいて、特別選抜に臨むということになっております。

 こちらが学内特別選抜の出願資格や要件をまとめたものになっていますが、こういった成績要件等を中心に、学内での説明会を通じて、学生及び教員に周知をしていくということで進めております。

 また、今回、初めて出ました飛び入学の学生に関しましても、こういった飛び入学制度を、新入生をはじめ、特に3年次生に周知をしております。特に飛び入学の成績要件、赤文字の部分、それから学部の卒業扱いにはならないといった点や教員免許状の取得に関する注意事項などを周知するようにしております。

 こちらが昨年度、2021年度の学内特別選抜の流れになっております。ここにお示ししました6月の前のところ、4月、5月に学内での説明会を実施した上で、学内特別選抜の受験を考えている学生さんを対象として、6月に接続準備プログラムの説明会を行って、これに参加をいただきます。これに申込みをいただいた上で、7月に学内での希望者への面接を行った上で、接続準備プログラムを受講いただきながら、9月の選抜試験に向けた準備を進めていただくという形になっております。

 繰り返し出てきました接続準備プログラムの内容ですけれども、こちらにありますような、種々のプログラムを準備しております。教職大学院の授業を先行体験できるプログラムや、現役の院生の課題解決研究、これの中間報告会等への参加、そして特に4番目になりますけれども、教職大学院科目を先行受講するプログラムを準備していまして、これで10単位を上限として、単位認定できるということになっております。これを通じて、教職大学院進学後に学習を深められるという点で、学内特別選抜での進学希望者には、魅力的なプログラムの1つとなっております。

 先ほども少し御紹介させていただきましたが、改組後、2年目までの学内特別選抜による進学実績になります。2021年度が、7名の進学者がございました。全員教育学部からの進学者です。2022年度入試の部分では8名への進学者、教育学部の学生は7名ですけれども、うち1名が飛び入学の学生ということです。それから都市科学部、これは他学部になりますけれども、1名の学生が学内特別選抜で入学したという結果になっております。このような結果について、学内のオリエンテーションでの周知をはじめとしまして、少しずつでありますが、先ほど御説明した学部のインターンシップ科目での教職大学院生との関わりとか、研究室への配属後に学部生と院生が一緒に教育研究活動を行ったりしていますので、学生の間に、徐々に教職大学院の認知度、理解が高まっていった、そういった結果ではないかと考えております。

 最後に、学内特別選抜での進学者の資質・向上、どのような実態、現況となっているか御報告をさせていただきたいと思います。まず、10単位までの先取り履修を可能としていることで、進学後の実習時間を増加させられるという点、その中で実践研究の深まりを生んでいるということが見られています。1年次で学会発表などを行っている学生も出ている状況です。また、学校実習は、学内特別選抜の学生は、1年目、または2年目に附属学校で実習を行うこととしています。これは学部生の教育実習の補助であったり、インターンシップ科目の指導補助、これを通じてリーダーシップの育成を促進できると考えている点がございます。また、附属学校ですので、学校研究に院生が参画をして、実際の学校現場でのダイナミックな実践研究の過程に身を置くということができますので、それによって自らの実践研究も深める機会になっていると考えています。理論と実践の往還から融合の基礎固めをできているような段階ではないかと考えています。

 そして、2年目は連携協力校で実習ということで、1年目の成果を連携協力校の学校課題解決研究に生かしていくということで、理論と実践の往還・融合を深めるというところに、現在進行中ですけれども、期待をしているところです。

 こちらは参考資料になりますけれども、飛び入学の学生に関わる部分で、このような手順で進めているというのをまとめさせていただいたものになっております。特に吹き出しの部分ですが、飛び入学で進学した学生さんは学部での卒業研究が未履修となっていますので、こちらを補完するために、修士論文相当の学術論文の提出を進学後、求めるということで、この部分の力を補完していこうということで現在進めているところでございます。

 以上になります。御清聴ありがとうございました。

【加治佐主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、最後に鳴門教育大学からお願いいたします。

【佐古学長】  鳴門教育大学から御報告いたします。

 四国の国立5大学で取り組んでおります連携教職課程の設置について、基本的な考え方とこれまでの経過、現状課題等についてお話ししたいと思っております。構成大学は、表紙にございますように、徳島大学、鳴門教育大学、香川大学、愛媛大学、高知大学の国立5大学でございます。令和5年度に運用することを目指して、連携教職課程の設置作業を進めております。

 資料に沿って説明いたします。まず、連携教職課程に至る背景と経過でございますが、少し飛ばしまして、スライドナンバーの5番、お願いします。先生方が御存じのように、学生が教員免許を取得するためには、各校種・教科に応じた科目区分ごとの単位修得が必要であります。

 次のスライド6番に実技系の内容を書いておりますが、どの教科も、5ないし6の専門領域が設定されております。5ないし6の専門領域を単一の大学で全てカバーするということは、教員配置上、難しいという状況になっております。従いまして、本来であれば、多様な専門性を学修することが求められておりますが、単独大学では開講困難な授業を大学間の連携協力によって開設しまして、四国全体として、教職課程を豊かにしていこうということが、今回の連携の方向性でございます。

 連携教職課程設置の経過につきましては、資料、スライドの7番目でございますが、これは四国の5国立大学の全体の連携の経過でございます。これまでにも四国の国立大学では教育研究、入試、防災、産学連携というものについて連携を進めておりまして、学長会議、あるいは、その下部の会議で検討体制を構築しております。

 教職に関する連携の経過は、スライド8番でございます。そもそも四国地区の教職関係の連携のスタートは、教職大学院の連携でございまして、2017年に教職大学院連携協力推進協議会というものを設置いたしまして、2018年には、教職大学院間で単位互換協定を開始しました。その後、2018年の5月に、このような教職大学院の連携をベースにいたしまして、教員養成分野での連携を推進するということを学長会議で確認いたしまして、その後、具体的には実技系科目で、共同教職課程の具体化を検討するということになっております。その後は、様々な連携組織、検討組織を作りまして、2021年の3月に一般社団法人を設置いたしまして、2022年には大学等連携推進法人の認定を受けました。

 次に、本連携が考えております狙い、理念というものを御紹介させていただきます。スライド番号10番は、その背景となっている事柄でございますが、これは2040年の18歳人口、大学入学者数の推計でございます。右側に枠で囲んでおりますように、四国4県は、いずれも2040年を2017年ベースで定員の充足率を見ますと、大体7割から8割になっております。非常に厳しい状況が続くとなっております。

 こういうことを背景にいたしまして連携を進めたわけでございますが、他方、私たちは人口減少社会において教員養成系の大学・学部が非常に大きな役割を持っていると思っております。1点目は、もちろんですが、それぞれの県における教員の養成を担っているのですが、それだけでなく、第2には、教員の研修を担っています。それから、第3には特に実技系の教科につきましては、文化の振興において教員養成系の学部、大学の役割は大きいと思っております。従いまして、特定の地域に教員養成機能を集約、統合することは、被統合県の人材育成、教員研修、地域文化の活性化に実は大きなダメージを与えるのではないかと思っております。そういうことから、この連携とは人口減少に対して、教員養成系の縮減、集約統合という考え方に代えて、理念としては、分散協働型の広域連携で機能強化をしようということが1つの方向性でございます。各大学がそれぞれ特色あるリソースを持ち寄りまして、幅広く専門領域の教育を行う。それによって教員養成課程の豊富化を実現するということと、連携することによって四国という地域性や現代的な課題に応え得るような教育を実現するということで、教職課程の特色を図ろうと思っております。後でも述べますが、これによって、先ほど18歳人口の減少に対応すると申し上げましたが、非常に豊かで面白い教職課程をつくりまして、教職志望者を四国に呼び込むということをねらいとしております。

 検討の過程でございますが、スライド番号13番、これは検討体制でございます。3つの層で検討しております。1つは、一番上の大学等連携推進法人協議会、これは学長レベルの会議でございます。ここで学長レベルの合意を図ります。その次には連携教職課程設置準備委員会、これは今年3月まではこの名称でございましたが、ここは学部長、並びに副学長レベルでの合意を図っております。それから、今お話ししているのはスライド番号13番の右側の系図でございますが、その下に連携教職課程設置準備ワーキングというのが6つ並んでおります。これは教科ごとの教科担当者のワーキングでございまして、ここで具体の授業科目等を検討しております。このように学長レベル、それから学部長、副学長レベル、それから担当者レベルということで、3層で検討を進めております。

 それで、その結果、14番のスライドでございますように、一般社団法人をつくり、大学等連携推進法人の認定を受けました。その連携を図る上での課題というものを少しお話ししたいと思っております。

 スライド番号の15番です。様々な歴史、地域性が異なる5大学が教職課程の一部を共有するということでございますので、様々課題がございましたが、大きく言うと、1点目は各大学の将来構想との関連が難しかったということでございます。各大学が教職課程、あるいは教員養成を今後どのように考えて、維持ないし発展するかということと、連携をどう活用するかということについて、各大学の考え方がそれぞれありまして、これを整合させることが難しかったことです。

 2番目は、それに伴いまして、各大学が、当然ですけども、教員養成学部の人事計画を策定するわけですが、そういうものと、この連携教職課程における教員の運用というものが密接に絡みますので、ここを調整することが難しかったと思います。

 あとは、3番、4番、5番は、具体の事業を実施する上での課題でございました。

 5大学で授業を共有するということなりますと、学年暦や時間割の調整から始まりまして、実習を含む科目をどうするかとか、あるいは、オンライン授業の教員の補助者をどうするか等々、具体の問題がございまして、なかなかこの辺は担当者間の調整に苦労したところでございます。

 それで、ちょっと先に進みますが、今回、文部科学省に課程認定の申請をいたしておりますが、そのことについて次にお話をいたします。

 スライド番号17番です。

 今回、我々が活用いたしましたのは連携開設制度ということで、真ん中に赤枠をくくっております。これは、大学等連携推進法人や複数大学法人に参画する大学が連携して、他大学が開設する科目を自らの大学の授業科目とみなす仕組みです。

 それから、その下の専任教員の共通化ということがございまして、上記の仕組みを活用する複数の大学が同一の免許状の教職課程の認定を同時に受けようとする場合に、一定の要件を満たした場合には、大学間の専任教員の共通化を可能とするということでございまして、先ほど冒頭申し上げましたように、各大学で、なかなか幅広く専任教員を配置するということが難しい状況の中で、この制度を活用して、各大学の、それから四国全体の教職課程を充実しようというような試みでございます。ただし、ここには条件がございまして、そこの一番下にございますように、専任教員の共通化を可能とするためには、学生が在籍する学科等において8単位以上を修得し、それ以外の学科等のいずれかで8単位以上を修得するものとして必要な単位数を開設することとされております。つまり、学生にとりましては、在学大学以外の、他大学の単位を8単位以上取るということが条件になっているということであります。

 それで、実際に今回申請しております内容について御説明いたします。

 ちょっと飛ばしまして、19ページ、お願いします。

 今回、これは令和5年4月の開設予定ということで、今文部科学省に申請しております連携教職課程の構成でございます。

 教科といたしましては、中学校・高校の美術と家庭及び高校の情報、3教科でございます。それぞれの教科に対して参画する大学が丸で書いてあります。このような状況でございます。

 それから、20ページ、21ページ、22ページには、連携開設科目となりました授業科目の一覧を付けております。このように、幅広い専門領域にわたって各大学の授業科目を共有することで、学生は非常に豊かな教職課程を受講することができるようになっております。

 23ページには、そのうちの幾つかの授業科目の例を書いております。これは飛ばさせていただきます。

 それから、実際の授業の方法でございますが、四国は1つの島の中にあるのですが、県を越えた移動が困難な状況でございまして、当然そうなるとオンラインということを使うということが前提になるのでございますが、実技系の教科になりますと、なかなかオンラインではなじまない授業科目がたくさんございます。特に実技を含むものにつきましては難しいところでございまして、24番のスライドの上にございますように、学長間の合意といたしまして、両括弧1番でございますが、担当者の負担を勘案して、学生移動方式や授業者移動方式など多様な開講方式を工夫するということで、むしろ教育効果を高める方向で工夫しましょうということでございます。そういうことで、授業科目によって開講方式も多様になっております。

 それからもう1点、25番のスライドで書いてございますが、実技系のコースの学生の数は、実は各大学でもかなり少ない実情ですので、単独大学で授業をいたしますと、ごく限られた学生が集まって授業を受けるということなりますので、そうではなくて、複数の大学の学生が集まることで、学生間の交流を促すことができる。そのことによって、様々な教育上の効果が期待されるということで、むしろオンラインで1人で学ぶということだけではなくて、学生移動、教員移動によって複数の大学の学生が共に学ぶという機会を教育に活用したいと思っております。

 それで、26ページのスライドでございますが、これまで申し上げてきましたように、連携教職課程を四国で組むに当たっては様々な課題もございました。交通の問題、それから各大学の教員養成の方針の問題、開設に係る経費・負担の問題、実技系授業の難しさなどです。しかしながら、一方では、このことによってもたらされるメリットも非常に大きい。幅広い領域をカバーする教員組織が成り立つということと、自大学では難しい授業が提供できる。それから、四国の文化、地域性を生かした授業ができる。複数大学の学生が交流し合うことができるというようなことでございます。我々といたしましては、学修者本位の観点から、大学連携による教職課程の高度化を実現していくという方向を実現したいと思っております。

 冒頭述べましたように、このことによって、教員志望者を四国にむしろ呼び込むような魅力のある教職課程をこれからつくっていくということで、私たちは「教員養成は四国から」ということで、これから充実・発展させたいと考えております。

 次に、お時間がございませんが、連携の作業を進めるに当たって、2点ほど、制度上の運用について、課題だと思われることがございますので、その点お話ししたいと思います。

 1点目は、スライド番号28番です。

 何かといいますと、先ほど専任教員の共通化ということを実現するためには、学生が他大学の授業を8単位以上履修することが条件になっていると述べましたが、そのときの他大学の授業ということの範囲の問題です。例えば、A大学の教員とB大学の教員が共同して授業を開設することができますと、これは連携による効果が非常に大きい。つまり、これまで単独の大学ではできなかった授業が、異なる大学の教員によって実現するとなりますので、これは非常にメリットが大きいと考えておりますが、しかし、そうなった場合に、共同開設型の授業になりますと、これもどちらかの大学の開設科目にしかならないということがございまして、結果的には一方の大学の学生が、この授業科目を受けても他大学の授業科目の単位にならないということになっております。学生の負担が大きいということもございまして、なかなか共同開設型の授業の実現につながらない。

 したがいまして、四国の連携の例で言いますと、共同開設型の科目につきましては、開設する大学のいずれもが開設大学として認められるというような措置を取っていただければ、非常に魅力的な授業がこれから増えるだろうと思っております。これが1点目でございます。

 2点目は、29番目のスライドでございますが、これは連携教職課程を設置する場合には、このスライドの真ん中下にございますように、各大学それぞれ8単位の連携開設授業を設けるということが求められております。2大学の連携教職課程の場合には、8単位ずつ取りますので、それで整合しているのですが、四国のように5大学で連携する場合に、8単位ずつの授業科目を出しますと、最大40単位分の授業科目が設置されるということなりまして、そうなりますと、逆に体系的な履修であるとか、あるいはカリキュラム編成が非常に難しくなる。要するところ、学生が履修しない授業科目を多数用意しなければならないことになりますので、この点も連携教職課程に参画する大学数に応じて何らかの運用をしていただければありがたいと思っております。

 この2点が、連携をしていく上で、私たちが制度の運営に関して少しお考えいただきたいという点でございます。

 最後、31ページに質保証の仕組みということがございまして、これは5大学で授業科目を共有いたしますので、1つは、教学管理体制の構築ということで、先ほど検討体制のところで3レベルのお話を申し上げましたが、学長のレベルと学部長、副学長のレベル、それから授業担当者のレベル、このような体制を教職課程設置後もスライドさせまして、それぞれのレベルで授業のチェックであるとか、あるいは教職課程の有効性について検討を行って、教学管理体制をつくっていきたいと思っております。

 以下、自己点検・自己評価、それから外部からの評価、それから改善に向けたFDの実施なども共同で行うことで、これは今後、5大学で検討して協力していきたいと思っております。

 少し早口になりましたが、以上、四国における連携教職課程についてお話しいたしました。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

【加治佐主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、これから質疑応答、意見交換に入ってまいります。手を挙げるボタンを押していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 それでは、まずは、戸ヶ﨑委員、そして益川委員。まずは、戸ヶ﨑委員、お願いいたします。

【戸ヶ﨑委員】  戸田市教育委員会の戸ヶ﨑でございます。

 3つの大学の御発表、ありがとうございました。大変勉強になりました。

 私から、資料1の「~検討の方向性(たたき台)」取組の方向性と主な論点例にある3つの柱について、それぞれ意見をさせていただきます。

 まず、1つ目の学部と教職大学院との連携、接続の推進という観点についてです。

「新たな教師の学びの姿」をそれぞれの学校現場で実現していくためには、現在校内研究や研修など、教科横断的な視点を持って、校内の学びをリードする人材が求められています。教員養成大学・学部には、こうした役割を担うことを含め、多様化する教職員集団の中核を担う教師の養成に重点的に取り組んでいただきたいと存じます。

 また、高い教員採用ニーズが続いていることに加え、ミドルリーダーが少ない現職教員の年齢構成等もあり、現状としては、大学院レベルの高度な学びを経験する機会が十分に行き届いてないという状況にありますが、ますます多様化・複雑化する学校教育課題に対応していくためには、教職大学院における実践的で高度な学びをより多くの者が経験することは意義のあることだと思います。

 数年後には教員採用ニーズが大きく減少していくことを踏まえれば、あまり適切な表現ではありませんが、今後は、より一層「質」を重視した教員採用となっていくのではないかと思われます。意欲と能力のある学生が、教職大学院での高度な学びを先取り履修し、例えば、トータル5年程度で教職修士の学位が得られるというようなことになれば、学生の履修負担が軽減され、多くの学生が教職大学院の実践的で高度な学びを経験できるようになり、教職の高度化につながっていくのではないかと思います。

柔軟な制度設計を期待したいと思います。

 次に、2つ目の、教育委員会と大学との連携強化の促進についてです。

教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化を図っていく上で、現場のニーズに対応したものとしていくことは大変重要な視点であり、「新たな教師の学びの姿」の実現を図る上でも、教育委員会と大学とが一層の連携を深めていくことが重要です。

 教育委員会の立場としても、多様化・複雑化する学校教育課題に対応するため、研修の高度化を進めていくという必要があり、そのためには、大学との連携をより一層深めていかなければならないと考えています。

特に、引き続き大量退職が続いていく中にあって、令和の日本型学校教育を現場で牽引する学校管理職の養成は、目下の重要課題となっています。基礎自治体の教育委員会の研修だけでは養成していくことが難しい現状があります。教職大学院においては、教育委員会と連携を図りながら、学校教育を現場から変革していくような人材を継続的に輩出することを、期待したいと存じます。

 こうした、現場ニーズに対応した教職大学院の高度化に資する取組については、教育委員会側もしっかりと関わっていくことが必要であり、教職大学院修了者が早期に学校管理職を経験した後、実務家教員として高度専門職としての教員養成に参画する、といったキャリアパスを設定していくことは、重要であろうと思います。

実務家教員として勤務した後、また学校管理職として現場で活躍するということも考えられるのではないと思います。

なお、大学の講座は、教職課程の高度化と言いつつ、学校現場の課題と乖離したアカデミックな講座に大きく傾くことのないように留意してほしいと思います。

 最後に3つ目、教員就職率の向上、組織体制等の見直しについてです。開放制大学とは異なり、教員養成大学・学部である以上、優秀な教師を輩出する使命や役割があり、教員就職率の向上に向けた取組を積極的に講じていただきたいと思います。優秀な学生を確保することは、教育委員会側にとっても大きな課題であり、教員就職率の向上に向けた取組を進めていくに当たっては、地域の教育委員会と連携していくといった視点を持つことが有効ではないかと思います。

 以上でございます。

【加治佐主査】  ありがとうございました。3点にわたり、大変貴重な御意見をありがとうございました。特に、教職大学院の修了者を早期に管理職にして、そこで実績を積んで大学での教員養成に当たると。そして現場に帰って、また管理職になって、子供や地域に貢献すると、そういう循環に対して、教育委員会の側から、大変力強いお言葉をいただいたのかなというふうに思います。

 それでは、益川委員、お願いいたします。

【益川委員】  益川のほうから、主に2つの視点から質問させていただいて、お答えいただけるようだったらお答えいただきたいと思います。

 その2つの質問をする前の前提としまして、3つの大学の取組、これから期待できると思いながら話を聞きました。それらを通して、教員志望の学生がより教員になりたいという強い思いを持って、かつ学び続ける教師として活躍してほしいなというふうに思うと同時に、実習等を通じて、学校現場に学生、院生が関わっていくことで、そこの学校の先生方、現場の先生方も、改めて学び続けたいなと思い直せられるような、そういうウィン・ウィン関係ができていくといいと思いながら話を聞いておりました。

 その上で、1点目の質問としては、各大学共通ですけど、フラッグシップ大学でも、学習観の転換、今回も議論になっていますけど、研修を通じて転換していくことの大事さということを言われていまして、これからの教育を担っていくためには、自身の高校までの経験だけじゃなくて、今後どういう教育をしていくことが理想なのかという、そういうところを一人一人に実感持って納得し田植えで教壇に立つことが大事だと思います。

 その意味では、それぞれの大学のカリキュラムの中で、学生が学習観の転換を強く実感して、または意識しながら取り組んでもらえるようなプログラム、そういうところを強調した取り組みがあれば、ぜひ教えていただきたいのが1点目です。

 もう1点は、学び続ける教師として学生が成長すると同時に、実習先や訪問先の学校や先生方も共に成長していくことが大事だと思っています。そういう視点から質問します。大阪教育大では、最先端な技術などを学べるカリキュラムが用意されて、しかも、建物もそれに合わせて設計されておりすごいなと思いますが、それと同時に、そこで学んだことが現場に入ったときのギャップが起きないかどうか。せっかく学んだのに使えないだと、宝の持ち腐れになり意味がないかなと思うため、現場に入った後も、そのギャップを埋めていきながら、現場の教育環境もよくしていくような、そういう力量形成まで見越して何か検討されているかどうか、お伺いしたいと思います。

 続いて、横浜国立大学では、学部と院生を、週の金曜日に一緒にセットにすることによって、学年の異なる多様な経験の学生同士で学び合えることは大きな強みだと思いました。では、その実習で関わる学校も一緒に成長していくような、そういうメリットのところについて、どのように考えられているのかお聞きしたいと思います。

 最後、四国5大学の取組、各大学地域を訪問し合うような、教員も学生も移動しながら、一緒に学び合う機会をつくっていく、興味深い取り組みだと思いました。

 そこで、例えば他県のところに行って学ぶことによって、地域や各学校の特色などの違いがあると思いますので、その教科の中身を学ぶだけではなくて、例えばそこの地域の学校と深く関わっていくことで、他県の学校の様子、多様性を学んでまた戻ってくるような、そういう点も意識されて検討されているのかどうか伺いたいです。

 以上になります。

【加治佐主査】  それでは、1つは、学習観の転換がカリキュラムにどう工夫されているかということ、これは3大学ということですね。あと3つあったわけですけど、それぞれ大学ごとでしたので、まずは3大学それぞれに学習観の転換を、そういう意識や力量を学生に身につけさせるために、カリキュラム上の工夫といいますか、それについて、簡潔にまずは述べていただきたいと思います。

 大教大から、先ほどの発表の順でお願いいたします。

【峯教授】  失礼します。大阪教育大学の峯でございます。

 先ほどの質問に合わせまして、本学の、先ほど学長が説明しました1ページ目の資料を御覧いただいたらと思います。

 既に、それぞれの指定大学に求められる、それぞれの科目が配置されているのと同時に、特に実習科目において、実習科目と省察協働というのはループになっています。すなわち、それまでの教員養成の中では、実習は実習の期間を終えてから、帰ってからさらに大学で学ぶというような形になっていたんですけれども、それぞれの実習を経ながら、省察と協働の科目自体を配置することって、実習と、いわゆる協働というのを往還しながら学んでいくというのを配置しているということでございます。

 それから、1年次にダイバーシティ科目というのを基礎として全員が学び、2年次には教職をさらに選択するものがそれを学んで、さらに3、4回生で、さらにそれぞれの科目について専門的に学んでいるという、こういう構図になっております。

 以上でございます。

【加治佐主査】  それでは、続きまして、横浜国大、お願いいたします。

【和田教授】  横浜国立大学ですけれども、今お示しをさせていただいております学部の教職カリキュラムですけれども、1年次に入学した際に、この教育実地研究という科目を通じて、これは秋学期ですけれども、学校現場の実際の授業を、理論というものを用いながら客観的に捉えていくという、そういった営みを重視した活動を実施しています。

 特に小学校教育のところを中心に行っておりまして、やはり中学、高等学校で学生たちが培われてきた学習観というものを、小学校の学習観というところと比較をさせながら、この教育実地研究を通じて、現場での実践というものの意味、ここを捉えさせ、さらに理論と実践の往還を実現していく中で学習観の転換を図るところを、まず学部段階では目指しています。

 教職大学院のほうになりますと、こういった形で、学校実習が毎週金曜日に通年にわたって実施されます。これを金曜日に実施をするのですが、新入生は、4月、5月の段階は事前指導という形で理論部分を整備していきながら、6月からの本格的な学校実習に備えるような形を取っています。そして、実習が始まりますと、こちらの学校課題解決研究、グループごとに曜日が違うのですが、自然生活のグループを例にしますと、木曜日にこのような形でそれぞれの学校課題を共有し、その解決を学校実習の中でどのように進めているか。そういったところをお互いに共有したり協議したりというようなことをして、また翌日の実習に各自が入っていくというような、そういった中で、理論と実践の往還からさらに融合を目指していくような中で、学習観の転換というものをより強めていく、そのようなところを目指しながらやっております。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。

 鳴門教育大学、お願いいたします。

【佐古学長】  私どもの連携教職課程の中では、学習観の転換というのをダイレクトに扱うことはちょっと難しいですが、鳴門教育大学の教職課程ということで少しお話をさせていただきたいと思います。

 学習観の転換ということと、教職課程のこれからの在り方を考える場合、これまで我々は学生に学ばせるもの、コンテンツですよね。何を学ぶかということに、主に力点を置いてカリキュラムの改編をしてきたと思っております。これから、4年ないし6年の教職課程、あるいは教職大学院を含めた課程の中で、学生がどう学ぶかという学び方ですよね。教師としての学び方を、いかに学部と大学院で修得させるかということが、恐らく将来にわたって学び続ける教員を育てる素地になると思っております。その点で、鳴門教育では、コンテンツの改編だけではなくて、学び方の改編ということで、カリキュラムを今つくり上げております。これは、梅津のほうから少し説明させます。

【梅津理事】  学部レベルと教職大学院のレベルを少し分けながら、現状と、そしてこれからという観点で御質問に対して答えていきたいと思いますけども、学部カリキュラムにつきましては、いわゆる平成18年頃から20年代にかけて各大学が大学教育のGPを競い合うというのが盛んにあったと思います。鳴門教育大学でも、それにチャレンジすべくカリキュラムの改編を行ってきました。

 とりわけ、18年以降のカリキュラム改編は、教員の資質能力をスタンダードという形で整えると同時に、それをルーブリック化して、どの授業、どの先生方にも必ずこのスタンダード、ルーブリックを参照しながら、学生たちが何ができるようになるかということを先取りする形で、到達目標とそれに対応した学修課題(パフォーマンス課題)を必ずシラバス上に記載していただいて、それを対象にした15回の授業を計画していただき、コンテンツを教え込む形の教育から教員として必要とされる資質能力と照らし合わせて何ができるようになるのかということを念頭に置いた教育を重視して学部のカリキュラム編成をしてきました。

 ただ、しかしこれは、先ほど学長が申し上げたこととの関わりでいうと、やはりきちっと子供たちに目標達成する授業ができる、教授ができるということを念頭に置いておりましたので、その意味においては、今日的かというと、さらに工夫がいると考えております。だから、そのために来年度のカリキュラム改編を計画しておりますけど、まさにこれに関わってのダイバーシティー、インクルーシブ、そしてICTを活用した個別最適な学びを子供たちに保障するために、教師はどのような資質・能力を身につけるべきか、何ができるかというところを重視したカリキュラムに転換しまして、とりわけ学び方を学ぶ、子供への学ばせ方を学ぶというような、子供の学習のオーガナイザーとしての教員の養成というところに5年度以降は改編していこうとしております。

 教職大学院もそれに連動する形で、まさに学習オーガナイザーとしての力量形成のための共通科目の在り方とか専門科目の在り方とかというのを改めて検討し、学部、大学院合わせて5年度に改編する計画をしております。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。

 それでは、これから個別大学についての質問になります。回答のほう、できますればちょっと工夫いただいて簡潔にしていただければと思います。

 大教大に対して、非常に最先端なんだけども、そこで学んだものが現場とギャップがあるんじゃないかということ、いかがですか。

【峯教授】  ありがとうございます。

 先ほど、6ページと7ページの資料を出させていただいたらいいんですけれども、参考にください。

 既に大阪教育大学では、大阪府、大阪市、堺市などと教員養成共同研究コミュニティーを組織して、教員育成指標の活用に関する共同研究を進めているんです。特に、大阪市教育委員会とは、学校教育、ICT推進リーダー研修や、エビデンスベースの学校組織改革の研修プログラムを開発しているんです。すなわち、既にもう十分教育委員会と密な関係をつくっていますので、そういったところで、教職大学院の学びがどのように還元されているのかということのリサーチもできますので、それを反映していきたいというふうに考えています。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。

 横浜国大では、いろいろ連携してやられているけど、学校の成長にはどうつながるかということだったと思うんですが、回答のほうをお願いいたします。

【和田教授】  横浜国立大学の、特に学校実習において、学生たちに周知している点が、理論と実践の往還、そして融合という部分をいかにつくり上げていくか。融合の部分に関しては、理論を理論として学校現場で話をするのではなくて、自分の実践というものに理論がどう関連して、それを具体的な言葉で、自分で学校現場において説明ができないと、学校の先生方とのコミュニケーションがうまく成り立たないよということで、そこを非常に重視しながら進めています。

 そういったことを重ねていく中で、学校現場の先生方が、教職大学院での実践研究が、学校現場の実情に即したものとしてやろうとしているというようなことを徐々に感じ取っていただけるようにはなってきていて、実際私の関わっている学生での感触では、大体半年ぐらいたつと、そういったところでお互いのコミュニケーションが、実践研究というところを中軸に、一緒になってやっていっていただけるような、そういう状況が生まれているなというふうに感じています。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。鳴門教育大学には、他県の特色というか強みというか、そういうのを学ぶ工夫はどういうふうにされているかということだったと思いますが、いかがでしょうか。

【佐古学長】  これは、授業科目の中で、例えばそれぞれの県の文化、地域性ございますので、例えば、住居の特徴にしましても、各県の文化と密接に関係するようなことがございますので、そういう4県の文化と、例えば住居の関係をお互いに報告し合って、違いと共通点を探していくというような授業が工夫されるというふうに思っております。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございます。

 それでは、現在手が挙がっておりますのは、中原委員、根津委員、橋本委員ですね。

 それでは、中原委員、お願いいたします。

【中原委員】  ありがとうございます。3大学の先生方、お疲れさまでございました。

 私が思ったこととしては、まず、学部教育と教職大学院の連携について、資料1-1の1ページ目でしょうか、学習科学を生かす理論と実践を往還させる省察力ですが、その手のことが大事だというふうに書いてあります。

 私がまず第一に思ったことは、これがその教職大学院学部教育のコアコンセプトであるならば、それを支える実証的研究がどれだけあるのか、もっともっと強化が必要なのではないか、リソースが必要なのではないかということです。とりわけ、こうした実証研究ということになっていきますと、私、専門に近いので思いますけれども、フラッグシップ以外の大学においても、どれだけこれらをちゃんと進められるのかというのが非常に思うところでございます。

 また、理論と実践の往還、アクションラーニングですけれども、こうしたものは非常にリソースが必要です。フラッグシップ大学へのリソースが足りているのか、そして、以外の大学に関しては、恐らく相当逼迫しているのではないかというふうに考えていまして、このリソース問題をどうやって解決するのかというのがまず1つ目です。

 これらに加えて、今2点お話をしましたが、大学での教室の卵の学生たちの学びの在り方と、学校における子供の学びというものを同期させる必要があるのではないか。大阪教育大学のほうでは、教育DXのことを取り上げてくださいましたけれども、こうしたものを大学においてもどんどん推進するべきなのではないかというふうに思います。

 2つ目は、教職大学院の定員未充足問題についてです。私は、入口と出口というふうにいつも考えているんですけれども、私自身が社会人大学院の教員でもございますので、出口のない、出口がなかなか明示できないような教育機関は長続きしないというふうに思っています。入口と申しますのは、要するに誰が、いつ、どこから入ってくると、誰が送ってくるのかということです。とりわけ大事なのは、出口、出た後どういう知識を生かしてどういう活躍をするということが求められているかということです。

 今回、資料1-2の24ページ目に、「多様な教員集団の中で中核となる教師」というふうに書いてありますが、ここは非常にベイグだと思います。曖昧だと思います。

 要するに、どういう人が、いつ来て、その後どうなるのかということを、より解像度を高く明示していく必要性があるとは思いますし、先般、ミドルリーダーの不足という話も出ていましたが、そういうミドルリーダーの不足に寄与するということをより明示していく必要があるのではないかなと思います。

 ちなみに、老婆心ながらですが、学部卒のストレートマスターと社会人が混在するということになってくると、恐らく質保証の観点からいろんな問題が出てくるんじゃないかなというふうに思っています。この未充足問題に関しては、恐らくオンライン授業というのも非常に有効なのではないかと思います。働きながら学べるということを求めているという、さっき御意見がありましたけれども、社会人には非常に好評でございますので、その点も考慮いただければなというふうに思います。

 最後、学部教育の連携の在り方です。現状、採用数が減って、教育学部に入っても教師にならない学生も増え、一般学部から教師になる学生も増えてくるということになっています。これに関して、どうするのかというのを、そろそろ考えていかなければならないのじゃないかと。

 今回、その1つの回答が鳴門教育大学の分散協働型の広域連携ということだと思うんです。これ、恐らく非常に大事なのは、今後リソースも逼迫していく中で、どうシナジーを生み出せるかどうかということだと思います。シナジーを生み出すためには、連携ということのその先に、どういうような戦略を見いだすのかということ、そして規制緩和等も必要なんじゃないかなというふうに感じました。シナジーを生み出すための広域連携の先のことを、そろそろ考えていかなければ非常に厳しいのではないかというふうに思います。

 以上です。

【加治佐主査】  多岐にわたって御指摘ありがとうございました。理解できました。リソース、おっしゃるとおりです。大変厳しいものがあると思います。

 それと、教職大学院定員未充足ということで、よりターゲットを明確にすべきだとかいったような御意見ですね。働きながら学ぶということが有効だということですけども、オンラインを活用したものは今広がりつつあるんじゃないかなと思います。あと、鳴門教育大の分散協働型は結構なんだけれども、シナジー効果を生み出すということ、これは、私も中長期の連携協働について見通しがいるのかなということは思います。というよりも、まずは、こういう取組が増えていかないと、また一過性のものでは困るわけで、これが本当に増えていくような、継続するような、何かそういう資源の投入とかいろんなことがいるんじゃないかとは思っています。非常に参考になりました。ありがとうございました。

 それでは、根津委員、お願いいたします。

【根津委員】  早稲田大学の根津です。御発表、3件、ありがとうございました。私立大学で教職大学院も担当する一教員として、今週は2科目計4コマ担当しています。御発表3件について、感想を2つ述べます。

 3件とも国立大学の取組で、どちらかといいますと自大学自学部生の囲い込みという認識が若干感じられました。飛び入学や先取り履修もその具体例と言えるでしょう。それはそれで意味がありますが、教員養成学部が母数となるだけですと、やはり先細りが心配なところです。

 関連して、開放制という点で、教員養成学部以外の学部を卒業した免許状保有者に対する広報や対応が気になりました。ここは、横浜国立大学さんの御発表に少し含まれていたところではありますけれども。

 2点目です。地域により数のばらつきはありますが、公立大学や私立大学出身者へのアピールや対応は考えられないでしょうか。この件、大阪教育大学さんの御発表でも少し触れられていましたが、やはり気になったところです。国立大学と公立、私立大学との教職大学院の共同設置や連携の活性化も1つの案かもしれません。先ほど、資源の投入というお話もありましたけれども。四国5大学さんは、学部の教員養成レベルで、いわゆる実技系の教科が御発表の中心でしたけれども、基本的な議論は同じだろうというふうに見ています。

 以上です。

【加治佐主査】  何か御意見を伺ったほうがよろしいですか。

【根津委員】      いえ、時間の関係もありますので、結構です。感想ということで。

【加治佐主査】  よろしいですか。貴重な御意見というふうにさせていただきます。

 それでは、橋本委員、お願いいたします。

 橋本先生、ちょっと音がうまくこちらに伝わらないですね。お顔はよく見えているんですけど、声が。申し訳ありません、メール等で御意見いただければと思います。すいません。申し訳ないです。

 それでは、今手が挙がっておりますのが、森山委員、お願いいたします。

【森山委員】  3大学の先生方の御発表、ありがとうございました。

 先ほど、根津先生からも御意見がありましたが、私も、その辺りのところを中心に伺いたいと思っていたところでしたので、短めにお話をしたいと思います。

 1つは、オール四国ということで、すばらしい具体化が図られる計画が示されていると感じました。以前から、国公私立大学の連携の積み重ねが四国の場合はあるということを伺っておりましたが、それがベースとなっているという具体的なお話を伺えたと思います。この点で、私立大学等々の連携などは、今後検討なさる予定がおありでしょうかということが1点です。

 それからもう1件は、教職大学院の機能強化、高度化に際して、実際には教育学部以外の、特に中等教員の養成等の関係の仕組みをある程度検討していく必要があると考えております。

 これは、国立大学だけの問題ではなくて、私立大学も含めてのことであろうかと思います。教育学部以外の学部の学生の進路としての教職大学院ということで、そのような観点からも、もし御意見等がありましたら、あるいは、ある程度の方向性が示されているようであればお教えいただければありがたいと思います。

 以上です。よろしくお願いします。

【加治佐主査】  ありがとうございました。私立大学との、まず1つ目が連携の意向あるのかどうかということですが、これは3大学についてということですか。

 それから2番目の、教育学部以外からの進学者ですよね、教職大学院への。それとの関わりをどうするかということですね。これも3大学ですか。分かりました。

 それでは、今の2つについて、3大学それぞれから簡潔なお答えをお願いします。

【岡本学長】  大阪教育大学、よろしいでしょうか。

【加治佐主査】  大教大、お願いします。

【岡本学長】  ありがとうございます。

 私立大学との連携ということでございますけれども、今、教職大学院レベルでは、本学は既に関西大、近畿大学と連携をしており、それ以外の私立大学からもお話が来ておりますので、精査して話合いを進めようとしているところでございます。

 また、学部のほうでも、共同教職課程を視野に入れて、近隣で教育学部をお持ちの私立大学と話を進めているところでございます。

 また、教育学部以外の方の学生の進路ということですけども、本学は、教職大学院にそのまま入っていただくという形にはまだなっておりませんけれども、京大、阪大、奈良先端科学技術大学、それから神戸大学などと、高度理系教員養成プログラムというものを既にもう10年近く行ってきておりまして、ドクターをお持ちの方に高校現場に入っていただくということを視野に入れて、より教職をしっかり学んでいただいて教育現場に出ていただくという取組をしております。

 このような取り組みを、また教職大学院のほうに展開していくということも視野に入れております。

 以上でございます。

【加治佐主査】  鳴門教育大学、お願いいたします。

【佐古学長】  鳴門教育大学ですが。

【加治佐主査】  すいません、順番間違えましたけど、鳴門教育大学からお願いいたします。

【佐古学長】  私学との連携のお話ですが、現時点では具体的に私学と連携するようなお話は出ておりません。

【加治佐主査】  横浜国大学、すいません、お願いいたします。

【和田教授】  横浜国立大学は、既に私立の4大学、東京理科大学様、関東学院大学様、上智大学様、それから北里大学様と連携協定を結んでおりまして、これらの大学様からも、先ほど御説明させていただいた、学内特別選抜と同様に、連携大学特別選抜というような形で進学者を受け入れているような状況です。

 こういった中で、接続準備プログラムも、連携大学の皆さんにも同様に受講していただいて、教職大学院への接続を円滑に進めるような、そういった取組をしているところです。

【加治佐主査】  ありがとうございました。

【中村教育人材政策課長補佐】  事務局です、申し訳ございません。

【加治佐主査】  どうぞ。

【中村教育人材政策課長補佐】  ただ今、電話で橋本委員とつないでおり、橋本教育長から御発言いただける状況になりましたので、お願いいたしたいと思います。

【加治佐主査】  分かりました。

【橋本委員】  京都府の教育長の橋本です。

 本当に、それぞれ興味深い報告をいただきまして、ありがとうございました。特に、大阪教育大学の取組については、地域の抱える課題を基にダイバーシティー教育をベースにしたカリキュラム開発を進められていること、また、大阪市さんと高度な連携を図っておられること、学部と教職大学院の一貫したプログラムを設けようとされていることなど、先進的ですばらしい内容だと感じました。

 そこで、もし可能なら、1点だけ質問させていただきたいんですが、大学と市のセンターが同じ施設に入られるということですが、大阪市の教育委員会とはどのような議論や経過を経て、こうした拠点、アドバンスドラーニングセンターを開設するということになったのか。また、そのメリットをどう考えておられるかということについてお聞きしたいと思います。

 あと少し、簡単に意見を申し上げたいと思います。資料1-2の23ページに、教職大学院、大学等の学修成果を採用選考で評価されることが重要とあります。ただ、採用への反映というのは、ある意味、受験者間の差異化を図ることでもありますので、一定レベルを超えた明確な違いが求められると思います。客観的な基準づくりなど、制度設計はかなり難しいと思いますが、例えば先ほど御報告いただいた大阪教育大学さんのような立派なカリキュラムできちんと学習をされたのであれば評価したいような気持ちにはなります。こういたことは、今後の研究課題だと認識をしております。

 それから、教職大学院生についてなんですが、もちろん教科の専門性の高い学生は多くいるわけですが、現状では大学生に比べて、特に採用試験の合格率が高い状況にはなっておりません。現場で早く教えたいという、ある意味、意欲的な学生の大半が院に行かないので、大学を出てすぐ教壇に立つことへの不安がある学生や、試験に落ちた学生が院に進むということもありまして、こうした結果に<つながっているのかもしれません。

 いずれにしましても、採用側としては、院生の質に少し課題があるような印象を持っておりまして、それだけに、優秀な学生が引き続き、教職大学院で学びたくなるような内容が用意されていることや、採用後も、院で学んだメリットがしっかり感じられることなど、やはり学生が院を目指すインセンティブを強化する必要があると考えます。

 その一方で、現職教員が大学院で学ぶことは大変重要であり、実際に現場に戻って活躍されている先生方も多いと思います。今後、リモート方式の活用などによって、より学びやすい工夫等をしていただければ、院で学びたいという先生はさらに増えていくと考えます。

 また、そうした人材を増やしていくことで、資料1-2の27ページに記載されていますように、管理職を経て実務家教員として教員養成に参画するという道筋もより現実的になるんじゃないかなと考えます。

 以上です。

【加治佐主査】  ありがとうございました。ちょっと私、どうしても聞き取れない部分もあったんですが、各大学に対して、場合によっては事務局に対してもあったかもしれませんが、何か御質問等もあったようなふうに聞きましたけれども、時間の関係もありますし、もうお一方、手が挙がっておりますので、橋本委員の御回答につきましては、3大学のほうからまた文書で、メール等でお答えいただくということを、事務局のほうで手配していただくということはできますか。

【中村教育人材政策課長補佐】  事務局です。大教大のほうに明確に御質問いただいているということで、我々は聞き取れているのですが、大教大のほうは大丈夫でしょうか。

【加治佐主査】  大教大のほうは聞き取れていますか。

【岡本学長】  岡本でございます。申し訳ございません、加治佐先生と同じく聞き取りがほとんどできておりません。

【加治佐主査】  分かりました。それでは、事務局から、橋本委員の御意見を大教大のほうに伝えていただいて、それから大教大のほうから、申し訳ないですけど、また後からお答えいただくということでよろしいでしょうか。議事録には載せられますよね。

 それでは、最後に、坂越委員、お願いいたします。

【坂越委員】  すいません、時間が迫っている中。ごく簡潔に。

 論点のうち、教育委員会との連携についてちょっとお尋ねです。大阪教育大学は、もうがっちりと組んでおられるのでいいんですけど、横浜国立大学さんなんかだったら、横浜、神奈川との連携だけじゃなくして、学生さんたちはかなり広域から集まっているだろうと思うんです。その辺りの苦心というか、何かありましたら教えてほしいということ。それから、四国5大学さんに関しては、本当にすばらしい取組なのですが、それぞれの各県が自分たちのところの教員育成指標を持っていて、5大学の連携ががっちり進めば進むほど各県との連携の仕方というところの工夫がいるのかなと思ったりするんですけど、もし、手短にお答えいただけるようだったらお願いします。

【加治佐主査】  分かりました。

 ではまず、横国大のほうからお願いいたします。

【和田教授】  横浜国立大学は、募集段階で、神奈川県を中心とした教員を志望されている方ということで募集をしております。

 その1つの大きな理由としましては、教員養成・育成スタンダードを神奈川県内の各教育委員会と共同して作成している点がございます。それに基づきながら教職大学院の教育を展開していくということで、この部分を強調した学生募集をしているところもあって、全体としては、神奈川県内の教員を志望する学生が、教職大学院に関しては集まっているような状況です。

 学部は全国から集まっておりますので、様々な状況になっているというところです。

 お答えになっていますでしょうか。

【加治佐主査】  鳴門教育大学、お願いいたします。

【佐古学長】  ありがとうございます。

 連携教職課程の制度上の特徴は、各大学がそれぞれの大学として責任を持って教員養成を行うことだと捉えております。そのうちの一部の授業科目を他大学と共有するというような仕組みですので、各4県の教育学部それぞれに、教育委員会と連携をして教員養成をしておりますが、そのことについては変わりない。

 その下で、さらによい教員を育てるために、他大学から使える授業科目を学生に履修させるというようなこととして運用しております。

 以上でございます。

【加治佐主査】  ありがとうございました。

 以上で、質疑のほうを終わらせていただきたいと思います。

 教員養成大学・学部、教職大学院の高度化、機能強化につきましては、基本的な方向性は事務局から明確に出されたと思います。これを、今後実効性のあるものとしていかに具現化していくかということになるわけですけど、今日、3大学の、大変先進的、あるいはチャレンジングな事例、取組がありました。大変参考になるものじゃなかったかと思います。

 また、委員の方からは、それを評価すると同時に、いろんな現実的な課題も出されたかなと思います。

 また、今後、一定のまとめをするということに、事務局のほう、なるわけですけれども、そこのところをぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 本日は、大阪教育大学の岡本先生、峯先生、横浜国立大学の和田先生、鳴門教育大学の佐古先生、梅津先生、山田先生、本当にどうもありがとうございました。

 これで終わりたいと思いますが、事務局のほうは大丈夫でしょうか。よろしいですか。

【中村教育人材政策課長補佐】  大丈夫です。

【加治佐主査】  それでは、第6回の基本問題小委員会はこれで閉じたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

 

【橋本委員の発言への大阪教育大学の回答】

大阪市とは、平成30年2月に「子どもの未来を拓く大阪市と大阪教育大学との包括連携協定書」を締結しています。この包括連携のもとで、大学の知見を活かした新たな教員研修の企画・開発や、連合教職大学院で学ぶ現職教員のスクールリーダー育成に向けた指導、大学院生及び学部生に対する大阪市の魅力を伝えるセミナーの実施、大阪市の学校現場での実習を通じた即戦力としての教員養成など、養成・採用・研修を通じた教員の資質向上に取り組んできました。

大阪アドバンスト・ラーニング・センターの設置は、こうした連携体制をさらに発展させ、大学院及び大阪市教育センターの機能強化を図るとともに、複雑化・多様化する教育課題に対応するため、天王寺キャンパス内に大阪市と本学の協働により産官学の共創環境を構築するものです。

日本の将来を見据え、学校教育に求められる変革に、教育委員会、学校現場、行

政、産業界、大学等が、それぞれ抱える課題(弱み)や資源(強み)を一同に集積することにより、シナジー効果を誘発するとともに、知の拠点としてのコミュニケーションの活性化やネットワーク化、業務の効率化、経費の節約等のメリットがあると考えています。


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(総合教育政策局教育人材政策課)