中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会基本問題小委員会(第2回)会議

1.日時

令和4年1月31日(月曜日)16時00分~18時00分

2.場所

WEB会議(Webex利用)

3.議題

  1. 優れた人材確保のための教師の採用等の在り方について
  2. その他

4.議事録

加治佐主査】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央教育審議会「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会第2回基本問題小委員会を開催いたします。
 本日もウェブ会議システムを活用しての開催です。
 それでは、本日の会議の進め方等について、事務局から説明をお願いいたします。
【中村教育人材政策課長補佐】  文部科学省教育人材政策課の中村です。
 会議の進め方について、確認させていただきます。
 本日もウェブ会議システムを活用していますことから、御発言に当たりましては、聞き取りやすいようはっきり御発言いただきたいこと、御発言の際は名前をおっしゃっていただきたいこと、御発言時以外はマイクをオフ、ミュートにしていただきたいこと、御発言に当たっては、「手を挙げる」のボタンを押していただきたいことについて、御協力をお願いいたします。
 Webexのチャット機能につきましては、傍聴者が閲覧することができませんので、マイクがうまく機能しない場合の緊急連絡手段としていただくなど、補助的な使用としていただくようお願いいたします。
 本会議の模様は、報道関係者と一般の方向けにライブ配信をしております。
 配付資料につきましては、議事次第に記載のとおりです。
 以上です。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 今回は、優れた人材確保のための教師の採用等の在り方について、議論を深めていきたいと思っております。
 議事1では、事務局からの説明に続きまして、ヒアリングを実施いたします。本日は、埼玉県教育局から石井市町村支援部長、奈良県教育委員会から前田次長、奈良教育大学から宮下理事・副学長に御出席いただいております。後ほど御発表をお願いいたします。
 石井部長、前田次長、宮下理事、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事1に入ります。
 事務局より説明をお願いいたします。
【中村教育人材政策課長補佐】  事務局の中村です。
 それでは、資料1-1に基づきまして、私から御説明いたします。
 資料1-1の1ページは表紙で、2ページを御覧ください。
 プレゼンテーションをしていただく方との連絡のところが、ちょっとうまくできていないところがありますので、別途調整いたしますが、私のほうから委員の皆さんにお話を続けさせていただきたいと思います。
 2ページを御覧ください。こちらは、11月15日、昨年の特別部会において、検討の方向性として、今後の議論の方向性について確認いただいたものを、改めて掲げさせていただいていまして、今回は、真ん中の「検討の方向性」のところの、主に教師の採用に係る部分を中心に御議論をいただく場として進めさせていただきたいと思っています。
 次、資料の3ページを御覧ください。こちらは現状の資料ということで、昨年9月の資料とほぼ同じ内容でありますけれども、確認として、教師の人材確保をめぐる状況としまして、1ポツ目に書いていますように、公立学校教員採用選考試験における採用倍率が2.6倍、こちらは後ほど、その他のところで報告として扱わせていただきたいと思いますけれども、本日付で直近の採用倍率を公表することにいたしておりますので、その倍率が過去最低となるなど、教師の人材確保をめぐる状況は依然として厳しい状況ということと、2ポツ目に書いています国立教員養成大学・学部卒業者の教員就職状況につきましては、平均で6割台といった低減傾向にあるほか、一般大学・学部においても、教職課程の履修を断念する傾向が見られるといった例もございます。
 3ポツ目、公立学校の新規採用教師に占める民間企業等勤務経験者の割合、こちらも4%程度ということで、特別免許状授与件数が全国で年間200件程度になっているということを踏まえると、社会人等の多様な人材が学校現場に積極的に参画しているとは言い難いといった状況になってございます。
 4ページ以降は、今、申し上げた現状のデータになってございまして、4ページ、5ページのところについては、本日公表いたします、いわゆる採用倍率の最新の状況を反映したグラフになってございまして、小学校の部分につきましては、昨年をさらに下回って、過去最低の2.6倍という状態になってございます。
 5ページは、中学校・高校の採用倍率のグラフでございます。
 その次の6ページは、小・中学校の退職者数、それから、次の7ページは採用者数ですけれども、それぞれの今後の数の見通しということを都道府県教育委員会等から聞き取っている中身でございます。
 8ページは、国立教員養成大学・学部卒業者の教員就職状況の推移をグラフ化したものになっております。
 9ページは、以前、資料で出していますけれども、一般大学、開放制の例ということで、ある大学における教員免許状の取得状況ということで、履修状態が非常に厳しくなってきているという例でございます。
 10ページは、公立学校の新規採用者の教師の中に占める民間企業等勤務経験者は4%程度と申し上げたバックデータになってございます。
 次、11ページを御覧ください。以上のような教師の採用をめぐる現状を踏まえた上で、「検討の方向性」の中で、特に教師の採用に関する検討の方向性として上げています、教育委員会における大学・教職大学院との連携協働の促進、それから、人物重視の多面的な採用選考、そして、教員採用選考試験の実施スケジュールの在り方、以上の3点につきまして、検討を深めてはどうかということで、特に、大学・教職大学院との教育委員会の連携協働の促進ということと人物重視の多面的な採用選考ということについては、本日この後、奈良県、奈良教育大学、それから埼玉県の取組のヒアリングをさせていただきたいと思っていますので、そのヒアリングも踏まえて検討を深めてはどうかと考えております。
 12ページを御覧ください。各論のテーマの一つとして、教育委員会における大学・教職大学院との連携協働の促進ということで、1ポツ目にありますように、教育委員会と大学等との連携協働につきましては、主にその採用の側面で着目すると、マル1に書いています、採用試験における大学・大学院の推薦といったことによる特別選考の実施ですとか、マル2にあります、大学院に進学する者に対して、採用候補者名簿の登載期間の延長といったことの特例を適用させるといったこと、それから、3つ目にありますように、各教育委員会が大学と協議をするということで、法定されています教員育成協議会を活用して、教師の採用に関するイベント(フォーラム)の検討・実施といったことなどを協議するといった事例が存在しております。
 2ポツ目にあります、質の高い教師の採用を促進するために、教職大学院を含め、大学等における学修成果について、教育委員会における採用選考において適切に評価した上で、教職への入職を促していく必要があるのではないか。
 それから、3ポツ目にあります、教職人材の高度化の観点から、大学院(教職大学院)への進学や教職大学院修了者に対する教員採用の特別選考、そして、初任者研修の内容の弾力化の実施、それから、博士号取得者に対する特別免許状授与を前提とした採用選考の実施などの取組を拡大していくべきではないかということを論点として掲げております。
 13ページは、今、申し上げた、大学と教育委員会との連携協働における具体的な事例のデータを載せているものでございます。
 14ページを御覧ください。論点2つ目として、人物重視の多面的な採用選考ということで、1ポツ目にあります、筆記試験、実技試験、面接試験等による受験者評価の方式に限らず、過去の一定期間を通じた実績に基づく丁寧な受験者評価、こちらを行うことは、人物重視の多面的な採用選考の観点から有効と考えられます。
 2ポツ目にあります、教員採用選考試験においても、大学からの推薦によって面接試験を除く一部試験を免除とした特別の選考を実施するといったことのほか、教育委員会の設置する教師養成塾の修了者に対して、採用選考試験の一部免除を含む特別選考を実施している例といったことがございます。特に、教師養成塾につきましては、自治体ごとに特色を持ったプログラムを、早い場合は大学1年次から実施しているという例もありまして、教師養成塾における学習成果や経験を教員採用選考に生かすことは、人物重視の多面的な採用選考にも資するのではないかということを論点として掲げております。
 15ページにつきましては、前回の中教審の包括諮問に基づく答申の中の教師の採用部分に関係する抜粋を、改めて掲げさせていただいているものです。
 16ページは、教師養成塾の取組の実施状況ということで、左側については実施状況そのものと、右側のほうは、教師養成塾を対象とした、採用選考の特別選考の実施状況といったことを表しております。
 17ページを御覧ください。論点3つ目としまして、教員採用選考試験の実施スケジュールの在り方ということで、1ポツ目にありますように、教員養成大学・学部以外の一般大学・学部の学生については、大学4年の前期に教育実習を行うことが一般的でして、一定程度の学生が、同時期に行われる企業等の就職活動と競合する結果、教職課程の履修継続を断念しているといった指摘がございます。
 受験時期の早期化や受験ルートの複線化については、例えば、一定の者に大学3年時に一次試験を受験可能にするとか、特定の専門性を重視した特別選考を促進するなど、教員採用選考試験の柔軟化といったことが考えられるのではないか。そして、その一例として、国家公務員総合職採用試験において行われています教養区分試験といったことについては、大学3年時の9月に試験を受験し、合格した場合に、翌年夏季の官庁訪問に臨めるといった形式になっておりまして、一つの試験の在り方の参考になるのではないかということで、論点として掲げております。
 18ページを御覧ください。この論点の続きとしまして、教員採用選考試験の実施スケジュールの在り方につきましては、今後実施します、教職課程を持つ大学の学生に対する志望動向調査の結果も踏まえまして、「検討の方向性」で示されています、効果的・効率的な教員採用選考試験の実施といったテーマ、これの検討と併せて、教職員支援機構を中心に都道府県・政令市教育委員会等の任命権者との協議の場を設けて、検討を進めることとしてはどうかという論点を書かせていただいております。
 19ページは、参考ですけれども、採用試験の実施方法の情報として、出願時期ですとか内定時期、あとは試験そのものの実施時期についての全国的なデータを載せております。
 20ページにつきましては、こちらも参考ですけれども、いわゆる一般の民間の就活のスケジュールといったことのイメージ図を掲げております。
 21ページは、先ほど一つの例として掲げさせていただきました、国家公務員総合職採用試験の「教養」区分の試験のスケジュールですとか試験内容、あとは評価といったところについてまとめたものでして、スケジュールについては、大学3年の9月から1次試験を受けることができるということ、それから、下から2つ目の試験内容のところにありますけれども、試験内容の特徴としては、1次試験のところにあります専門試験は行わず、基礎能力試験・総合論文試験といったことを通じて、公務員として必要な基礎的な能力や幅広い教養、総合的な判断力・思考力といったことを問うほか、2次試験のほうでは、1次試験と同様に専門試験は行わないといった代わりに、グループ討議を通して、プレゼンテーション能力ですとかコミュニケーション能力を問う政策課題討議試験ですとか小論文、それから、口述式による企画提案試験といった、人物重視というふうにも見えるような試験を行っているというところが特徴でございます。
 この結果、評価点として書いていますけれども、専門試験を行わないということもあって、受験者の多様化といったことが見込まれることと、あとは、20歳(大学3年次)から受験可能と、こちらも受験者層の多様化につながっているというところが考えられます。
 22ページは、今回の議論と直接ではないですけれども、もともと「検討の方向性」で掲げさせていただいていました、効果的・効率的な教員採用選考試験の実施ということで、いわゆる共通問題、共通化といったところについての都道府県の意向調査の結果でございます。
 23ページ以降は、過去の答申を抜粋しているものでして、説明は割愛させていただきます。
 私からの説明は以上です。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 採用に関わる検討の方向性と、それについてのデータ等の資料をお示しいただきました。
 それでは、これからヒアリングに入ってまいります。意見交換はお三方の発表の後に行いますので、よろしくお願いいたします。
 まずは、埼玉県教育局の石井部長から、どうぞよろしくお願いいたします。
【石井市町村支援部長】  埼玉県教育局市町村支援部の石井でございます。
 まずは、本日、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、埼玉県埼玉教員養成セミナーの取組と特別選考の現状につきまして、御説明をいたします。
 この資料に基づいて御説明いたしますが、1枚おめくりいただきまして、1ページを御覧いただきたいと思います。本県で行っております埼玉教員養成セミナーの概要についてでございます。この教員養成セミナーですが、平成18年度から実施している事業でございまして、今月、第16期の教員養成セミナーがスタートしたばかりでございます。
 この事業の趣旨は、一番上にありますとおり、埼玉県の公立小学校教員を強く希望する大学3年生等が、大学卒業後、本県の新採用教員となり、豊かな人間性と実践力のある指導力を持ち、将来、埼玉の教育を担う教員として活躍できるため、資質・能力を育成するという趣旨で行っているものでございます。
 実施期間は、1月から9月までの9か月間でございます。これは年度末の子供たちの卒業や進級を見据えて、学級づくりや年度初めの学級づくりを経験していただくことが目的で、この期間を設定しているものでございます。
 このセミナーは、その下にありますとおり、大きく3つ内容がございまして、1つは学校体験実習、それから、講演・講義・演習、3つ目に体験活動、この3つを柱として行っているものでございます。
 受講生は、連携しております24大学から、大学3年生等の学生を推薦をしていただき、その中から、50名程度を選考で決定しています。
 それでは、内容について御説明申し上げます。まず、学校体験実習でございますが、県教育委員会で指定した県内の小学校において、43日間、設定をしております。受講生は、学校体験実習の中で、子供たちと関わり、成長を感じながら教職の楽しさを実感するとともに、小学校教員の実務を学ぶということでございます。また、中学校での異校種体験を実施しているところでございます。
 続いて、講演・講義・演習でございますが、県内の会場を使用しまして、専門家による講演や小学校教員としての資質向上を目指した講義・演習を行っているところでございます。9か月間で、日曜日になりますけれども、13回程度、実施をしております。
 受講生は、学校体験実習を通して疑問に感じたことなどを、講演・講義・演習を通して確認をしたり、また、講演・講義・演習で学んだ内容を、学校体験実習で実践をしたりということができるようにしております。
 続いて、体験活動でございますが、主に大学生の長期休業中を利用しまして、県内の社会教育施設を使用し、3日間程度、実施をしているものでございます。具体的には、県立の施設である、げんきプラザという社会教育施設がございますが、夏休みの子供キャンプなどのボランティア体験などを実施しているというものでございます。
 もう一枚おめくりください。埼玉教員養成セミナーにおいて、どのように大学生を養成しているのかについて、御説明を申し上げます。
 まず、一番上の専任講師による指導でございますが、受講生4名から5名に1人の専任講師を配置しております。この専任講師は、退職された校長を充てておりますけれども、専任講師は学校体験実習において、当該校の校長や教頭などから受講生の状況を聞き取って指導するとともに、一緒に教材研究だとか授業実践を行う際の指導助言を行っております。
 また、その下の2番の体験実習校における管理職による指導でございますが、学校体験実習校の校長も直接指導をする機会がございます。
 また、3番の所属の学級担任による指導がございますけれども、受講生は各小学校に配置されて、既に本採用になっている学級担任とともに実践を行っているわけでございますけれども、その学級担任から直接、話を聞いたり、指導を受けたりする、そういった機会もございます。
 そして、右側にありますとおり、専任講師及び学校体験実習校の校長によって評価を行います。この評価の回数ですけれども、年に3回程度行い、この評価を、教員採用選考試験の特別選考の資料として活用をしているという状況でございます。
 もう一枚おめくりください。埼玉教員養成セミナーの特別選考について、御説明を申し上げます。
 まず、特別選考の受験資格でございますけれども、埼玉県の公立小学校採用選考試験の受験資格を満たして、かつ、教員養成セミナーの受講生で受講修了見込みの者としております。
 試験内容は、個人面接と集団討論、論文試験を行っております。この内容は、1次選考の合格者と同じ、いわゆる1次試験免除者と同じ内容でございます。
 3番の選考方針でございますが、論文試験や面接試験の成績に加えて、先ほど申し上げました、埼玉教員養成セミナーの受講実績、いわゆる専任講師の評価、当該校の校長の評価と併せて勘案して、総合的に選考することとしております。
 4番に、過去5年間の採用状況を記させていただきました。令和3年度実施の試験では、セミナーに参加した受講生のうち、1名が不合格になっているという状況でございます。
 それでは、もう一枚おめくりください。最後に、成果と課題について、御説明を申し上げます。
 成果といたしましては、1つ目に、教員養成セミナーの第1期生から第14期生までが、既に本県の新採用教員として活躍しております。894名が今、小学校の教員として活躍している状況でございます。そして、その多くの者が、学校の中核として、例えば学年主任や生徒指導主任などの省令主任として、活躍している状況でございます。また、初期の教員養成セミナーの受講生の中には、管理職選考試験に合格をし、主幹教諭として、または行政機関の指導主事として活躍している者も現在おります。また、9か月間の教員養成セミナーの受講を通して、実践的な指導力の育成が図れるとともに、採用後も、互いに情報交換をしたり、相談したりしながら教育実践を行っているという状況も多く見られております。
 また、一番下に書きましたけれども、教員養成セミナーを通して、大学との連携が一層深まり、教員の養成・採用・研修について、大学と意見交換をすることができるということも、大きな成果であると考えております。
 次に、2番に示した課題でございますけれども、1つは、教員の大量採用や教員採用選考試験の志願倍率の低下に対する教員養成セミナーの在り方について、検討していく必要が出てきております。
 具体的に申し上げますと、1つは、教員養成セミナーへの参加を希望する学生が少なくなってきているという状況がございます。また、大学との意見交換の中でも、セミナーを希望する学生の質も低下しているのではないかというお話もいただいているところでございます。このような状況の中で、いかにセミナーの参加者を確保していくかということは、大きな課題であると捉えております。
 また、2つ目でございますけれども、学校教育を取り巻く課題が多い中、教員養成セミナーの内容も改善、充実を図っていかなければならないという課題もあると考えております。
 非常に雑駁でございますけれども、埼玉県の説明は以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【加治佐主査】  石井部長、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、2つ目のヒアリングです。
 奈良県教育委員会の前田次長と奈良教育大学の宮下理事、どうぞよろしくお願いいたします。
【宮下理事】  私、奈良教育大学理事・副学長の宮下でございます。
 これからお話しする内容は、奈良県教育委員会と本学との強い連携の中で行われているものです。今日は奈良県教育委員会のほうから、本来、教育長がお見えになるところでしたが、急なコロナの会議で、代わって次長にお越しいただいております。前田次長です。私と2人で御説明申し上げたいと思います。今日はこのような機会をいただきまして、ありがとうございました。
 まず初めに、今日の話の中心は、本学教職大学院が奈良県の教員採用試験合格者に対する特例措置を設けたことについてですが、まず前提として、先ほども申し上げましたように、奈良教育大学と奈良県教育委員会との連携がどのようになっているのかについて次長のほうからお話しいただいて、その後、中心の話へと進めてまいりたいと思います。
 それでは、次長、よろしくお願いいたします。
【前田次長】  奈良県の前田でございます。
 まず、奈良教育大学と奈良県教育委員会との連携について、御説明を申し上げます。
 資料1-3の1ページを御覧ください。大学と県教育委員会は、1の目的のところにございますけれども、大学及び教育委員会が、教職員の資質向上を図るとともに広く教育に関する諸課題に対応するため、組織的、継続的に相互に連携協力して教育研究の充実、発展に寄与することを目的として、協定を結んでおります。
 連携協力の内容といたしまして、教員養成に関する事項、教員研修に関する事項、学校教育に係る共同研究に関する事項、学校教育上の諸課題への対応に関する事項を定めており、そのほか両者が必要と認める事項についても、必要に応じて連携協力することになっています。
 また、教職員の人事交流や現職教職員の教職大学院への派遣、この後、宮下副学長から発表していただきます、奈良県公立学校教員採用候補者選考試験合格者に対する特例措置についても、この協定で定めているところでございます。
 これらの協定が円滑に実施できるように、大学と県教委との連携協議会を設置し、さらに具体的な事項を検討するための専門部会を置いています。専門部会といたしましては、英語教育部会、ICT教育部会、高大接続部会、教員研修部会、へき地教育部会の5つを置いており、奈良県の教育課題と合致するようになっています。必要に応じて各部会を開催し、具体的な内容の話合いを行っているところです。
 そのほか、大学が主催する奈良教育大学経営協議会の学外委員に奈良県教育委員会教育長が参加したり、県教委が主催する奈良県教員等育成協議会には、奈良教育大学の理事・副学長に参加していただいたりと、互いが様々なところで連携協力を行って、奈良県教育、大学の発展のために取り組んでいるところです。
 それでは、次に、宮下副学長から説明をしていただきます。
【宮下理事】  今、次長からお話がありました、県と大学との様々な協定も含めた関係ですけれども、その礎は、教育担当理事・副学長と教育長との関係だと思うんですね。何かあるたびに教育長から、これ頼むわというようなことを話しかけてくださったり、教職大学院の、後でお話ししますけど、なかなか募集が集まらないんだというようなことを教育長に投げかけて、じゃ、一緒に考えるわというような、そういう関係がこの長い間で、私の前任の副学長もそうでしたけれども培われてきたことが、これから申し上げる特例措置の実現に繋がったのかなと感じております。
 それでは、先ほどから申し上げております特例措置、正確には「奈良県公立学校教員採用候補者選考試験合格者に対する特例措置」について、御説明を申し上げたいと思います。
 まず、このことに至った背景ですけれども、奈良県教育委員会、奈良県においては、やはり将来的に、全ての新人教員を教職大学院修了レベルに引き上げて、県の教育水準の向上を推進したいということがあるようです。
 それから、GIGAスクール構想ですけれども、数年前は、奈良県のインフラは全国で最下位に近いぐらい低かったんですが、ここ二、三年でトップに上がってきたわけです。それはいいんですけれども、今後は、インフラが整った中で、高いICT活用能力を持つ新人教員の養成が喫緊の課題となっております。それも、本学の教職大学院への要望の一つでもあります。
 3つ目ですけれども、今申し上げた、ICT以外の喫緊の課題として、県が抱えるものとしては、インクルーシブ教育の充実、それから、小学校外国語教育、英語教育に強い新人教員を求めているということがあります。
 それから、初任研に係る新人教員と指導教員の負担軽減、これも課題です。働き方改革の推進を図るということが、県の課題としてあるようです。本学の卒業生はあまり早期離職はないのですけれども、初任者が予想していなかった多忙さに対して、辞めていってしまうというような例も、奈良県のみならず、ほかの地域の教育委員会からも多く聞いているところです。
 一方、本学の教職大学院の背景としては、1つ目ですけれども、高度な実践力と奈良県が抱える喫緊の課題に対応できる力を持つ新人教員を奈良県に輩出するというミッションを第3期中、掲げておりました。
 それから、2つ目が大きいんですが、大学院進学のための採用猶予措置、これは奈良県だけではなくて、他府県にもあるわけですけれども、それを活用して大学院に進学する者が少なかったという現状もあります。
 なぜかと学生に聞きますと、やっぱり大学院にも行きたいんだけれども、それよりも早く教壇に着きたいんだと。学部4年を出て、教員採用試験に受かったならば早く教員になりたい。それから、授業料がやっぱりかかるんだよなというようなこともありました。それがやっぱり大きな一つの要因で、どうしたら採用猶予を使って大学院に迎えることができるかということは、結構考えてきたところでもあります。
 3つ目は、これは現実なんですが、教員採用試験不合格者や未受験者が教職大学院に来るというような状況がありました。つまり、学部4年生で教員採用試験に受かった学生は、教職大学院には行かずに就職する状況がありまして、本来、教職大学院が持っている教員養成の高度化を目指すという趣旨と少しずれがあったのではないかと認識しております。
 奈良県の教育長は、教職大学院修了者には採用のインセンティブを与えよと国は言うんだけれども、ちょっとまだ信頼ができないんだというようなことをよくおっしゃっておりました。
 確かに本学の教職大学院もこれまで、本学から上がってくるというよりは、他大学から本学の教職大学院に来るという学生が多かったことは事実です。というのは、今まで近畿圏は、教員採用試験に受かりやすい状況にあったということもあります。ただ、本学教職大学院生は、教員採用試験の1回目はどうもなかなか受からないけれども、次の年は受かるというような傾向があって、一生懸命教育をした成果かなと私たちは思っているんです。
 それから、4番目も大きいです。ここのところ定員を割っておりまして、安定的に入学者をどうしたら確保できるかということ、これは他の教職大学院でも抱えていることではないかなと。こういう背景がありました。
 これらの課題や背景を打破するための、これから申し上げる特例措置の概要を、オレンジのところで囲ってあります。説明をいたします。
 基本的には、奈良県の採用試験に合格して、奈良教育大学教職大学院にも合格した場合、1年目は採用が留保されて、2年目に採用されるということです。2年目は勤務をしながら、残りの科目、実習、学位研究報告書、修論に代わるものですけど、オンラインとか休日を活用し、それから、教職大学院の教員がその院生の勤務校に出向いて指導・学修するという形態を取ります。また、初任研の内容と時間は、特例措置の対象者でなくても教職大学院修了生は一部免除されますが、本措置を受けたものはさらに軽減することを予定しています。そのために、当該院生には1年目に、特別プログラムということで、ICT、インクルーシブ教育、小学校英語のことについて力をつけるということを行っております。
 それから、2年次の授業料は、大学負担として免除することとしました。14条特例の2年目の現職教員も、2年目はほとんど大学に来ないんだから授業料も要らないということにしておりましたので、それとそろえて、この特例措置の場合も、2年目の授業料は大学が持ちましょうということにしました。先ほど背景のところでも述べましたけれども、1年次の授業料は、まだ学生でアルバイトぐらいしかできないので、1年目の授業料は2年目に採用されてお給料をもらったら、そのときに納入すればいいですよということにいたしました。
 下から2つ目のポツですが、教員採用試験の1次試験直後に実施される教職大学院入試、何回か行っておりますが、7月に1回目の入試をするんですが、そこで合格すると、まだ教員採用試験の最終2次試験の前ですので、これから向かう教採の2次試験で最大15点の加点が得られるということがされております。
 そして、教採最終合格した者で、まだ教員採用試験を受けている最中などに、この特例措置を受けようかなと考えた場合は、教員採用試験を合格した後、11月に行われる入試を受験してもらう。そこでは、もう教員採用試験に受かっているんだから、集団討論とか模擬授業は免除することになっております。
 今、申し上げた全体のスケジュールが、下の緑色のところに書いてあります。
 成果として、今年、試行的に行った1期目ですけれども、2人、本学に入学しておりますが、このQRコードを見ていただくと、2人が対談している動画が見られますので、ぜひ見ていただきたいと思います。一つ成果として言えることは、教職に就くことに対する不安の払拭です。教員採用試験に受かったんだけれども、このまま4月から現場にすぐ立つということには、かなりの不安があったということを言っています。そのために、こういう制度ができたことはよかったと。
 それから、GIGAスクール構想もあまりにも早く進んでいるので、私たちは本当にICTに関わる指導がやっていけるかどうかということにも不安があったというようなことを言っております。今、特別プログラムで特訓をしていますので、自信をつけて、その悩みが解決できるのではないかなと思います。
 その後、3ページからは、今日ここでは御説明いたしませんが、特例使用者に対して特別に行っている、教育DX、ICTのこと、それから、特別支援、インクルーシブ教育のこと、それから、小学校英語のことについて、どういうプログラムを行っているかを資料として載せておきましたので、また御覧いただければと思います。
 奈良教育大学の柱の一つに、「養成と研修の融合」ということを掲げております。今、申し上げた、3ページ以降に掲げていますプログラムに、奈良県の現場の先生たちが行っている研修の中に、大学院生も参加する取組を取り入れています。学部生も研修の中に入っているんですけれども、そのようなことで現職教員研修を先取りしていくプログラムとして、今、実施しているところでございます。
 この特例措置について、県側で感じているメリットについては前田次長からお話しいただきます。
【前田次長】 本特例措置の県教委としてのメリットについてお話をさせていただきますけれども、教員採用候補者選考試験に合格した者が、奈良県の教育課題、例えば、今も説明がありましたが、ICT教育や英語教育等について、教職大学院で1年間しっかりと学び、より高度な専門的知識や実践的指導力を身につけて、学校現場に立つことができるというのが最大のメリットと考えております。
 TIMSS2019年の結果を見ましても、日本の小学校教員の大学院卒業の割合は、他国と比べても非常に低いのが現状でございます。この取組を通して、教職大学院で高度な学びをした教員が教壇に立ってもらいたいと思っております。県教委がどのような教員を求めているのかということを、大学側と専門部会等で共有しているからこそできる取組だと考えています。
 また、採用された1年目も、大学の先生方が学校に出向いて指導してくださるということも大きなメリットだと考えております。
【宮下理事】  ここまでが特例措置の説明になりますが、もう一つ、奈良県と本学が取り組んでいる、特色あるプログラムもありますので、これも関係しますので、次長のほうから説明していただきます。「奈良県次世代教員養成塾」です。簡単に5分程度で説明をお願いします。
【前田次長】  では、資料の21ページをご覧ください。奈良県次世代教員養成塾について説明をさせていただきます。
 奈良県次世代教員養成塾では、本県の教員を志望する学生、生徒に、本県教育を担う資質・能力を育成することを目指して、奈良県の小学校教員を志望する奈良県の高校生に対して、大学進学後も継続するプログラムを実施しています。このプログラムは、奈良教育大学と県教育委員会が、先ほど御説明申し上げました連携協定に基づいて協力し、平成30年度に策定をいたしました。
 資料にもございますけれども、小学校の教員を目指す高校生が、学ぶことの意味を考え、自らの目標を達成するために学ぶ、行動を起こすこと、また、キャリアデザインにつながるような内容を目指しています。
 高校生の対象の前期プログラムでは、つながる力をキーワードにして、奈良教育大学をはじめ、実行委員会を構成する奈良県内に法人を置く6つの大学が実施する講座を通して、高校生が自分自身を見詰め直し、自尊感情を高めること、仲間や社会とのつながりを通して、コミュニケーション力を高めること、学ぶ楽しさを教える楽しさや喜びにつなげるための基盤をつくること、これらをコンセプトとして、前期プログラムを構成しています。
 プログラムで育むものとしては、教育観、コミュニケーション力、情熱や人間性を上げています。前期プログラムには現在、4期生が86名、後期プログラムには、1期生40名、2期生15名が登録をしています。3期生については、現在、高3になるわけですけれども、前期修了認定が終わり、大学への進学を目指しているところでございます。
 資料22ページは、プログラムの大きな流れを示しています。高校生対象の前期プログラムは、原則土曜日の午後に10回の講座を実施しています。
 具体的な授業の形態や各講座の中身については、次の23ページの資料にまとめておりますので、後ほど御覧ください。
 各講座の内容及び目標を達成するために、6つの大学で工夫をしていただいております。受講生は、各大学において約3時間の講座を受講します。ただ、この2年間は、新型コロナウイルス感染症の状況により、オンデマンドによる講座も取り入れました。10回の講座が終了した8月末頃に、実行委員会を開催して修了認定を行っています。前期プログラムの修了認定を受けた生徒が、小学校一種免許状を取得できる小学校教員養成課程の大学に進学した場合、後期プログラムを受講することができます。
 大学生対象の後期プログラムについては、県立教育研究所が担当しています。1年生、2年生は、講座としては年に1回だけですが、講座以外にも、読書活動、ボランティアなどの社会体験活動、インターンシップなどを自ら計画して実施することを課しています。3年生では、教育研究所に集合する講座を6回実施し、授業づくりをはじめ、教員の仕事につながる幅広い学びを実施する予定をしています。大学4年生の初めに後期プログラムの修了認定を行います。
 さらに、教員としての資質・能力の育成を奨励する観点から、後期プログラム修了後、大学院・教職大学院に進学することも奨励したいと考えております。
 資料23ページはプログラムの詳細をまとめていますので、後ほど御覧ください。
 次世代教員養成塾の様子を御紹介いたします。資料24ページの写真は今年度、4期生の講座の様子です。第1回講座後の受講生の感想を紹介させていただきます。
 初対面の人と意見交流することや、同じ夢を持つ仲間の意志を聞くことは、自分の夢のために努力しようというモチベーションにもなるし、仲間のように自分も頑張ろうという刺激をもらうことができ、有意義な時間を過ごすことができました。
 同級生の考えを聞いて、自分にとってよい刺激をたくさんもらいました。同じ夢を持つ人と受ける講座だからこそ、共感し合える部分が多く、会話が弾み、学ぶことの楽しさを感じました。
 教員は常に学び続けられる職であることから、生徒とともに進化できることが教員としての楽しさではないかと考えました。
 こうした感想が寄せられています。参加している生徒にとっては、同じ目標を持つ仲間との出会いが、よい刺激になっているようです。
 以上で、奈良教育大学と奈良県教育委員会の取組の発表を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
【加治佐主査】  前田次長、宮下理事、本当にどうもありがとうございました。よく分かりました。
 それでは、これから意見交換に入ってまいりたいと思います。御質問、御意見を御自由にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。「手を挙げる」ボタンでお願いします。
 では、橋本委員、まずはお願いいたします。
【橋本委員】  それぞれ、本当に興味深く、また、参考になる発表をしていただきまして、ありがとうございました。
 最初に、奈良県さんと奈良教育大学の取組について、これは感想になります。
 まず、双方の連携の濃さ、そして、教育委員会側から見ると、大学側の大変積極的な協力姿勢等に驚きましたし、また、感心をしたところです。特に、教育委員会と連携して、採用試験の合格者に対する様々な特例措置を講じておられることとか、特別プログラムによる高度な学びを院で経た上で教壇に立てるという、こうした取組は本当にすばらしいなと思っています。
 その一方で、私ども京都府というのは、国立の教員養成系大学以外に、私学がたくさんありまして、別に遠慮する必要はないんでしょうけれども、なかなか、一つの大学とだけ、濃い連携を行うところに、やや難しさがありまして、そういう意味では、地域ごとの大学の設置状況の違いというのは、連携協働の濃度とかスタイルに多少影響が出るのかなという気もいたしました。
 しかし、本当にすばらしい内容ですので、これはぜひ地元の教育大学のほうにもこの資料を見ていただいて、もうちょっと頑張っていただけるような働きかけもしてみたいと思いますし、それと、最後に発表がありました、高校生に向けての養成講座のような取組ですけれども、我々のほうも、なかなか確保に苦しんでおります。こうしたものもちょうど考えたいなと思っておりましたので、この辺りも参考にさせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。
 それで、次の埼玉県さんの教員養成セミナーについて、少しお尋ねをしたいと思います。
 京都府におきましても、大学3回生等を対象に、同様の養成講座を実施しております。もともとは小・中学校の志願者だけを対象にしておりましたが、数年前からは高校、特別支援学校の志願者も一部、講座の対象に加えておりまして、期間は5か月、受講者数は80名程度で行っております。
 実は最近になりまして、大学側からは、忙しい学生がもっとこういった講座を受講しやすいようにならないか、負担軽減できないかという要望もいただいておりまして、今年度から、教員養成系以外の一般の大学からの志願者も多い、高校の志願者に限ってですが、ワンデー、ワンウイーク、ロングと学生の希望に合わせた形で、参加しやすいプログラムというのも始めたところです。
 先ほどの説明では、かなり埼玉県さんのセミナーというのは期間も長いですし、内容も濃いように思いましたが、埼玉県さんのほうでは、セミナー受講に伴う負担面などについて、大学あるいは学生側から要望等が何かないんだろうかといったこと、また、セミナーの内容等に関して、どんな評価を受けられているのかなといったことが、まず1点です。
 2点目は、だんだん志願者が減ってきてというお話がありましたけれども、大学からの推薦を基に選考されていると思うんですが、どの程度の大学からの推薦者があるのか、そして、どのような選考をされているのか、これが2点目です。
 そして最後、3点目ですけれども、特別選考の結果として、ここ5年では、3年度の1名を除きますと100%、受講生が採用されているという結果になっておりますが、こうなりますと事実上、セミナーに参加できるということが合格の切符を得るというようなことになるかと思うんですけれども、こうした選考に関して、特に課題等を感じておられることはないんだろうかという点です。
 以上3点ですけれども、よろしくお願いいたします。
【加治佐主査】  それでは、埼玉県の石井部長、3点についてのお答えをお願いいたします。
【石井市町村支援部長】  ありがとうございます。御質問を受けたことについてでございますけれども、セミナーの連携大学から推薦をいただいて、どのように選考しているのかというような質問に、まずお答えをしたいというふうに思います。
 大学は、連携をしている24大学から推薦をいただいております。この24大学というのは、埼玉県内にあって、小学校の教員養成課程を有する大学がまずあります。プラス、これまでの本県の採用選考試験で実績のあった大学にお声がけをさせていただいて、教員養成セミナーに参加をしていただけるといった大学さんのほうに推薦をいただいているという現状がございます。
 3つ目の質問ですが、セミナーについて、ほとんどの者が合格をしているということについてでございますけれども、まず、このセミナーについては、特別選考で実施をしていて、1次試験免除で、2次試験の面接と論文試験等を、ほかの受講生、試験を受験する方と一緒に選考しているものでございますが、その結果、こういった結果になっているというものでございます。
 また、セミナーに参加するに当たっては、先ほど申し上げました、大学からの推薦、一部大学の中では、選考をやって推薦をしている大学もあると伺っているんですが、大学からの推薦があって、また、本県でも面接試験、それから論文試験をやって、セミナーの参加を決定しているということで、9か月間のセミナーの受講を通して、専任講師、当該校の校長等も指導しながら、養成を図っているというところでございます。
 そういった結果、ほとんどのセミナー受講者が教員になっているという現状があるということで、これについては一部学生の中からは、セミナーに参加すれば教員になれるという声もあるわけなんですけれども、教員採用選考試験については、公正公平な選考を実施しております。
 また、1つ目の質問、順序が逆になって申し訳ないんですけれども、かなり学生に対して負担があるのではないかという御趣旨の御質問であったかなというふうに思いますが、9か月間に及ぶセミナーを通して、大学のほうからも非常に高評価をいただいているところが実際でございます。
 そういった中で、先ほども申し上げましたが、教員になってからも、セミナー生同士が情報交換をして、教員として実践していく中で、悩んだことを相談し合う体制もできていますので、そういうことも含めて高評価をいただいているのではないかなと思います。
 また、セミナーに参加した学生からも、やはりセミナーに参加をしてよかったという声も多数いただいているところですので、本県については、このセミナーについては今後も進めていきたいと思っております。
 また、京都市さんと同じように、今後、大きな課題としましては、中学校または高校、特別支援学校の教員についても、こういった教師塾、養成をしていく必要があるのかということは、現在、本県においても検討しているところでございます。
 質問にお答えできたかどうか分からないんですが、以上でございます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
【橋本委員】  どうもありがとうございました。
【加治佐主査】  それでは、根津委員、荒瀬委員、坂越委員、森山委員、中原委員ですね。今、手が挙がっております。この順番でお願いいたします。
 まずは、根津委員、お願いします。
【根津委員】  早稲田大学の根津です。
 恐らく回答いただく時間がないと思いますので、感想だけ述べることになるかと思います。どちらも義務教育で小学校が中心の内容というふうに受け止めました。現在も続いている興味深い取組でして、今後も注目していきたいというふうに思います。
 気になったところとしましては、志願する大学生の確保が課題とされていたわけですけれども、埼玉県さんの御発表で、大学院生や社会人の参加というものはあまり想定されていないのかなというのは一つ気がついたところです。
 関連してですけれども、職業選択の自由という点から見ますと、他県の受験ですね。ほかの自治体の教員採用試験の受験や、あるいは幅広く進路を考えたい大学生、あるいは奈良県さんのケースですと、高校生にもなるわけですけれども、ちょっと敬遠してしまうといいますか、そういうこともあり得るのではないかと。かなり間口を狭く、そこは設定しているがゆえの課題でもあるわけですけれども、そうなりますと、通常の教員採用試験では合格できない層の方を結果的に採用してしまっているというリスクがどうしてもあり得ると。これにはどういうふうに対応していくのかなというところです。
 最後ですけれども、非常に興味深い取組なのですけれども、これらの取組がいわゆる情実人事や癒着ですとか、ひいてはあってはならないことですが、不正ですね。こういうものにならないための歯止めや工夫というのは具体的にどういうふうになされているのかというところはちょっと気になったところです。
 以上です。
【加治佐主査】  非常に興味深い御指摘なんですが、よろしいですか。お答えしていただきましょうか。もしお答えできるのであれば、3点御質問いただきましたけど、石井部長、それから前田次長、宮下理事、全部じゃなくても結構です。何か特に言及したいことがあればお願いしたいと思いますが、なければ結構なんですが、いかがですか。
【石井市町村支援部長】  埼玉県、石井でございます。全てお答えできるか、分かりませんが、お答えさせていただきます。
 社会人の参加等の間口が狭くなっているんじゃないかという御指摘でございますが、埼玉県の本日御説明させていただいた、この教員養成セミナーについては、小学校の教員というような形で対象とさせていただいております。また、本県の教員採用選考試験では、ほかに入り口がございまして、例えば社会人の特別選考だとか、臨時的任用教員の特別選考だとか、また、小中高、特別支援学校も含めて、大学推薦等も含めて、そういった特別選考も準備して、間口を広げて選考試験を行っているというのが実情でございます。
 また、不正とか癒着というそういう疑念を抱くのではないかということでございますけれども、ここについては、本県についても公正公平な選考を実施するよう徹底して行っているところでございまして、合否につきましても、先ほど申し上げましたが、このセミナーの特別選考につきましても、1次試験免除でありますが、2次試験の対象者と同じように選考を行っているというのが実情でございます。
 お答えになっているかどうか分かりませんが、よろしくお願いしたいと思います。
【加治佐主査】  ありがとうございました。奈良の方はいかがですか。
【宮下理事】  言い忘れましたけれども、この特例措置、今年までは小学校と特別支援学校の希望者を対象に行っておりましたが、今、県教委の方では、更に枠を広げるということを検討しております。
【前田次長】  高校の前期プログラムを受講しないと、後期に進めないということでございますけれども、高校の段階で、奈良県在住で、他府県の、例えば私立の高校に行っているというような生徒等に対しては、大学からの編入制度というのを設ける予定でございます。また、次世代教員養成塾については、修了が認定されましたら、1次試験の一部を免除するということでございますので、癒着とか不正ではなく、大学、高校を通しての学びがきっちりと評価されれば、そういった特例が認定されるということで対応していくということでございます。
 以上でございます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは、荒瀬委員、お願いいたします。
【荒瀬委員】  ありがとうございます。荒瀬でございます。お三方、大変、興味深い御発表をありがとうございました。
 冒頭、中村補佐からのお話と絡めてお尋ねしたいのですけれども、中村さんからのお話では、教員の採用についてということで、とりわけ教員の確保という点で、もちろん質の高い教員の確保というのは非常に重要なことでありますので、御紹介いただいた取組というのはそこに向けた非常に丁寧な取組であると承っておりました。
 ただ一方で、小学校の教員の確保というのがなかなか困難な状況になっているということでありますので、先ほどの埼玉県のお話でも、この50名がなかなか確保するのが難しくなってきているということもございましたし、その辺り、奈良県なら教育大学と、あるいは埼玉県の方で、どういう形で教員の確保について、とりわけ小学校についてお考えなのか。こういったお取組も、特に高校生からといったことは教員確保につながっていくと思うんですけれども、その辺りでどんな課題を持っていらっしゃるのかというのをお尋ねしたいのと、それから、奈良教育大学の方の御説明で、なかなかこれは言いづらいことをおっしゃっていただいたなと思うんですけど、教員採用試験の不合格者や未受検者が、結局、教職大学院に入学してきて、教員養成の高度化の趣旨とずれがあったというお話でしたけれども、逆に言うと、不合格になった人とか、受験してもいないような人たちが入学してきた上で、教員養成の高度化を図るといったようなことも、教員確保という点では非常に重要な視点なのかなと思ったりするんですが、現実にはなかなか難しいのは分かりつつも、いかにして力をつけて教員になってもらうのか。要は、確保、掘り起こしということで、どういったことを考えていらっしゃるのかというのをお聞かせ願えるとありがたいです。
 以上です。
【加治佐主査】  それでは、今度はちょっと逆で、奈良、そして埼玉の順で参りたいと思います。奈良の方からまずお願いいたします。
【宮下理事】  大学の立場として、2点申し上げます。
 まず、本学は教員養成大学ですが、100%の学生が教員になりたくて受験してくるかというとそうではなくて、9割、8割ぐらいなんですね。それが100%になればいいわけですけれども、これは昔から、入学後は一旦、教員になりたいという希望は下がるんです。けれども、3年生の教育実習で、やっぱり教員という仕事はすばらしいと実感してV字でがっと上がるんですね。そういう傾向がありました。
 それで、今の本学のカリキュラムは、初年次から教育現場を知るということで、初年次の導入教育や、スクールサポートなど学校現場に行くことを推奨しているんですが、どうも今の教育現場の非常に大変な場面を最初に見ちゃうと、これはもう私はできぬと思ってしまう傾向がすごくあるんです。そう思っても立ち直らせるということは一つ大事なんだけれども、ここからは私の個人的な意見になりますが、再来年ぐらいにカリキュラムを変えたいと思っているんですね。それで、初年次は、やっぱり人に尽くすとか、何か人と一緒に活動して、人と一緒に喜びを分かち合えるとか、感動を体験するとか、特に奈良なんかは奈良公園にいっぱい修学旅行生が来るわけですね。それをガイドする。別に何かを教えるということじゃなくて。そうすると、人に喜んでもらえた、奈良のすばらしさが分かってくれたという感動を経験できるんです。そうした人に尽くす感動経験がありさえすれば、子供たちに算数を教えることって楽しいんだなとか、教職ってこんなに楽しいんだなというふうに思えると思うんですね。そういうふうに少しモチベーションの持たせた方の順序を逆転させていこうかなということを考えています。最初から教育というよりも、人と関わること、それから、自然や文化財を見て感動することというような、感性に関わるところから入っていけないかと。
 もう一つの面では、教職大学院の入学者は100%教員を目指し、100%教員になっていきます。これは、本学教職大学院の教員が、本当に、何か自慢げに聞こえるかもしれませんけど、丁寧に指導しております。チームになって、17人の専任教員がおりますけれども、一丸となって、教えております。実習に行くときも何度も何度も足を運んだりとか、そういう丁寧な指導をしておりますので、そのうち大学の先生がこんなにやってくれている、ああ、教育というのはこういうもんなんだなということを強く感じて勉強するようになりますね。そして、1回目の教員採用試験は落ちてしまうけれども、2回目以降はぐっと伸びて合格する。それで、今も活躍している者もおりますので、そういう教職大学院教員努力かなと思います。
 以上、学部に関してはモチベーションを持たせる動き、教職大学院に関しては、教職大学院としての指導というようなことが言えるかなと思います。
【前田次長】  奈良県教育委員会です。現在の次世代教員養成塾は平成30年からと先ほど申し上げましたけれども、それ以前に、平成20年から10年間、奈良県ではディア・ティーチャー・プログラムといいまして、埼玉県さんと同じように、大学3回生から約9か月かけて、現場での実習も含めて、教員を養成する、そういったプログラムを行っておりました。それは教育委員会が主体となって行っていたわけですけれども、先ほど癒着や不正といった心配がないかということがございましたけれども、現在では、奈良教育大学さんだけでなく、6つの大学、地元にある大学と地元に法人を置いている大学にも協力をいただいて、実行委員会形式で、生徒の修了認定も行っているということで、そういった心配は少なくなってきているのではないかなと思います。
 少し話は別なんですけれども、奈良県では平成17年から高等学校の普通科に教育コースを2校置いておりました。小学校の教員を目指す子供たち、高校生が小学校にも実習に行ったりしながら学ぶ、いわゆるキャリア形成していくという取組を行っておりましたけれども、必ずしも高校で教育コースで学ぶ子たちが小学校の教員だけを目指しているのではなく、中学校、高校にも教員志望や、また、一般大学、教員養成ではない大学に進学するという子供たちも多くおりましたし、奈良県の教員になる大学生が必ずしも教育コースを卒業した、教員養成系の大学を卒業しただけではない子供たちも含まれているということで、新たに平成30年からのプログラムに練り直していったという経緯がございます。次世代教員養成塾には、今年度19校から高校生が集まっておりますが、県立だけでなく、公立、私立からも参加していただいておりますので、幅広く掘り起こしといいますか、教員を目指す子供たちに対してプログラムを実施できているという現状があります。
 以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 石井部長、いかがですか。
【石井市町村支援部長】  本県についてもこの教員の確保というのは大きな課題でございます。ここ数年の採用を見ていますと、小学校については800人規模で採用しているんですけれども、倍率につきましては、ここ3年、3倍を切ってしまっているという状況があって、何とか志願者等から確保していかなければならないというのが大きな課題で、教員養成セミナー以外にも様々な取組をしているところでございますけれども、我々が考えているのは、やはり教職の魅力、学校の先生って本当にかけがえのない仕事であって、子供たちと触れ合うことが本当に楽しいんだという、そういう魅力というものを何とか学生さんたちに伝えていきたいということで、大学とも連携をしながら今進めているところでございます。先ほど24大学と申しましたけども、その24大学の中の幾つかの大学と協定も結んで、直接、県の職員が大学に行って講義を行ったり、また、大学から、今度は初任者研修などの研修にも来ていただいて講義をしていただいたり、そういった連携を進めているところです。
 また、奈良県さんほどでもないんですけども、県内の公立高校の生徒さんたちに、直接、教職のセミナーみたいな形で出向いて、教職の魅力を伝えたりということもやらせていただいております。
 今考えているのは、この教員養成セミナーは大学3年生以上でやっているものでございますけれども、やはり大学との連携の協議の中からいろいろ出てくるのは、大学の1年生や2年生から子供と関わる楽しさだとか、そういう先生の仕事の楽しさだとか、そういうものを伝えていくことも必要ではないかという御意見をいただいて、この教員養成セミナー以外にも学校体験についても今、検討を進めているところでございます。
 簡単ですが、以上でございます。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、坂越委員、お願いいたします。
【坂越委員】  広島文化学園大学の坂越です。よろしくお願いします。
 埼玉県と奈良県のとても充実した取組を教えていただいて、どちらも、奈良県の方は教育大学さんが関わっていますけど、埼玉県の方は大学がなかなか届かない部分をきちっとフォローアップしてくださっていて、すごくいい取組だなと思いました。
 お尋ねしたいのは、とりわけ石井部長さんになるかと思うんですけれども、大学というか、その対象学生をどう選ぶかというか、参加大学(大学生)と採用側・教育委員会の関係性です。もちろん、採用する側とすれば、自分の県の小学校教員を志望してくれる人たちにセミナーや塾をちゃんとやってあげますよということで当然のことなんですけれども、大学の方から見れば、大学は広域でいろんな学生が集まっていて、例えばちょっと想像ですけど、埼玉県も、埼玉県内だけではなくて県外から来ていて、埼玉県内でいろいろなフィールドワークをやりたいという学生もいるでしょうし、逆に、埼玉県外の大学に出て学んでいて、私はやっぱり埼玉県の教員になりたいんだという、そういう県外他大学生もいるでしょう。その辺の対応、受入れ姿勢について、県内で頑張る学生を鍛えるんだという言い方もあるとは思うんですけれども、やっぱり県外から埼玉に就職したい学生は、ちょっと僕たち不利だな、みたいなことを思ったりしないのでしょうか。県教委の側としては何かお考えがおありでしょうか。
【加治佐主査】  お願いします。
【石井市町村支援部長】  ありがとうございます。
 本県で行っているこの教員養成セミナーにつきましては、連携している24大学から申請をいただいているということですので、当然、地方からおいでになって、大学に通ってセミナーに参加している方も多くいらっしゃいます。そういった方も本県で教員になっているというのが実情です。逆に、他県等で大学に通われていて、本県の教員採用試験を受けたいという者もあるんですが、そういった方については、現在のところ、教員養成セミナーについては対象にはなってないというのが実情で、今後、やはりいろいろ考えていかなければならない大きな問題かなと思っています。本県の教員採用試験の中では、大学推薦というのもございます。これは大学から推薦をしていただいた者が1次試験免除で受験することができる、そういった仕組みになっているわけなんですけども、ぜひ他県等で大学に通われて、本県の教員採用試験を受けたいという者については、そういう大学推薦等の機会というのは得られるんじゃないかなと思っているところでございます。難しい問題ですけども、今後また考えてまいりたいと考えております。ありがとうございます。
【坂越委員】  ありがとうございます。あと一言だけ。これは石井部長にお願いすることでは全然ないんですけれども、夢物語としては、大学と教育現場、教育委員会の連携の一つの在り方として、他県へ就職する教育学部生も、その大学所在の県で、こうこうこういうフィールドワークをやって、こういう力がついた。それじゃ、君は大学所在地の県教委が発行する「プレ研修証明書」をもって別の県の教員として頑張ってください、みたいなことが何かできればいいなと思います。もう希望です。
 以上。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 一方で、埼玉とか東京は必ずしもそうではないのかもしれませんが、逆の課題として、学生の、恐らく地方の国立大学はそうだろうと思うんですけども、地元志向が強過ぎるというのがありますね。結局、地元で公務員になるという意識が強過ぎて、自分のところは採用数が少ないので、なかなか通らないんだけど、採用数の多い他都府県があるわけですけども、そこにはなかなか行きたがらないという傾向がありますね。これを何とかしようというのが本学なんかではもう長年の課題ですね。なかなかこういう内向き志向といいますか、ある意味、グローバル化に反しているわけですけども、こういうのを打ち破るというのは難しいですね。そこも今のお話を聞くと、何か他県の方からもっと誘いをいただくといいのかなという感じもしますね。ありがとうございました。
【石井市町村支援部長】  すみません。埼玉です。ちょっと、一言申し上げてよろしいでしょうか。
【加治佐主査】  どうぞ。
【石井市町村支援部長】  今、その内向き志向についてちょっと1点加えさせていただきたいと思うんですが、本県では、かつて、例えば東北だとか、九州だとか、そういったところで採用試験を行っておりました。ですので、東北出身の方も本県の教員として採用されているというのが実情です。
 ただ、そういう教員を追っていきますと、数年たって、地元の教員採用試験に受かって地元に帰りたいという教員もおりました。県の教育委員会としても、それはもうその人の事情ですので、致し方ないのかなと思っているんですが、そのような状況もあったということでお伝えしたいと思います。ありがとうございました。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは、森山委員お願いいたします。
【森山委員】  ありがとうございます。まず、埼玉県教育委員会並びに奈良教育大学と奈良県教育委員会の御報告、本当に参考になりました。どうもありがとうございました。
 私の方からは、まず、この採用に関わって、確保という面からお伺いしたいと思います。この試みの採用全部の確保の中からの位置づけについて、質と量という面から、どのような位置を占めるのか、現状と今後の方向性に関してお伺いできればありがたいと思います。これが1点です。
 それから2点目は、埼玉県もそうですし、奈良県の教育委員会もそうでございますが、中等教育の教員の採用、あるいはその研修についての今後の方向性につきまして、ぜひお伺いできればありがたいと思います。
 それから、最後ですが、埼玉県の教育委員会の方からのお話もございまして、課題として、教員セミナーを志願する大学生の確保とか、あるいはセミナーの内容の充実ということが挙げられておりました。その後もいろいろと御説明いただいたところで、非常によく理解することができました。これは大学そのものがそうなのですが、参加する学生が、毎年減っておりまして、いろいろなセミナーに参加する学生の数というのは、この数年でもう半分以下ぐらいにまで落ち込んでいる状況もございます。これは大学側としては、単位認定が一部の大学で実施されています。また、単位の実質化という面でも課題がございます。土曜日の開校についての課題等、様々な物理的な問題もありまして、課題が多いということも大学からも伺っているところでもございます。そういう意味では、今後の改善の具体的な方向等も伺えるとありがたいと思いますが、これは大学の一方的な今のところの課題と、学生の課題ですが、報告をさせていただきました。
 3点、以上でございます。
【加治佐主査】  それでは、奈良さんの方からお願いします。
【宮下理事】  まず、研修についての今後ということでお答えすることでよろしいでしょうか。
【前田次長】  現状ですけれども、法定研修以外に採用2年目から10年目を対象に希望研修を実施しています。小学校で7日程度、中高で4日、特別支援学校で3日程度、これは教育研究所が講座を行ったり、各教員が様々な自主研修というものも含めて行っているというのがございます。こちらについては、初任研、それから法定の10年研の間の実力を高めていくということで行っていることですけれども、今後もそれは継続していく予定でございます。
 それから、先ほどの次世代教員養成塾の方は80名を前期プログラムでは募集しておりますけれども、年によっては100名を超える希望もございましたが、後期に進む学生は約半分に減っているというのが現状でございます。小学校教員の募集は、奈良県ではここ数年、110名から120名あたりですので、3分の1程度、実際になってくれるといいなという状況でございますけれども、当面は現状で続けていきたいということを考えております。
【加治佐主査】  埼玉の方、いかがですか。
【石井市町村支援部長】  ありがとうございます。
 現状と方向性ということでございますけども、特に今後の方向性について、まずお答えします。この教員養成セミナー、先ほど御説明させていただいた中に50名程度ということでお話をさせていただきました。これは本県の教員採用選考試験の小学校の採用見込み数の1割を上限としているというのが前提です。なぜかというと、一般で受けてくる方を圧迫するような、そういう採用選考試験にはしたくないということで、これはもう最初からそのように設定をしてやっているというのが実情です。先ほども申し上げましたけども、今後の方向性とすれば、小学校だけでなく、中学校とか高校とか、そういったところもやはり採用が厳しい中でございますので、広げていく必要があるのかなということを現在、検討しているというのが事実でございます。
 それから、研修についてでございますけれども、研修についても、採用試験に受かると、採用された後は初任者研修ということで、1年間、実施しているわけでございますが、やはりこの初任者研修についても、非常に難しい問題がございまして、しっかりと研修させたい。ただ一方、採用された者の負担にならない程度にということで考えております。そういった中で、今コロナの状況を踏まえオンラインが非常に活用されるようになって、本県においては、今まで集合型でやっていた研修の一部をオンライン等でやりながら進めているというのが実情です。また、宿題等でレポートなんかも課していたんですけども、そういったものもよく精選をして、そういった中で、なるべく負担を減らす中で、教員としての質も向上できるような、そういう研修の内容に、今ちょうど検討して、変えていこうというところで取り組んでいるところでございます。
 以上でございます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは、中原委員、お願いいたします。
【中原委員】  それでは、まず現状から確認したいのですけれども、要するに、1)採用したくても人がなかなか応募してくれなくなっていて、2)通級指導とか、特別支援とか、いろんなスキルを持った人材が必要になっている、3)離職はそれほど多いわけではない、ということですね。
 まず、この現状において、すぐ思ったことは、まず「登る山の高さ=目標」を見つめ直すということです。そのためには、このまま、何もしなかった場合に、仮に5年後、どのような場所で、どのような人員が不足するか、その予測値というのをはじき出すというのが一番最初なんじゃないかなと思いました。予測のために要員計画をたてる、ということですね。企業ならば、まず、事業停止を避けるために、そのことを考えます。
教員は育成するためにも4年間時間がかかります。今後5年間でどうなるかということを予測していかないと、目指すものもあきらかになりません。ゴールがイメージできないことには、マネージ(やりくり)さえできないのです。ゴールがイメージできていないのに、まして施策は立てられません。確保できる人員が現在の本当に打ち手(施策)で足りるのか、わたしには自信がもてません。
 もしかしたら、定量的に、それが把握できない、というのなら、定性的にでも結構です。このまま何もしないでいると、5年後の学校は、どのような状況に陥るのか。ある管理職の目線で、その管理職が、どのような一日を過ごすのかを、シナリオプランニングしてみるとよいと思います。ここでシナリオプランニングとは、組織に影響する要因を整理し、具体的に、我々がどのような未来と対面するかをストーリー化することです。かつて、横浜市教育委員会とわたしどもの研究室で、それを共同で行ったことがあります。そうすると、おそらく、解像度を高く未来を予測できるのではないでしょうか。
 もう一つは、くどいようですけれども、長時間労働の是正等々、安心・安全の職場をつくることが「最大の採用ツールだ」と私は思っています。長時間労働の是正なくして、将来の教員採用の未来は望めません。長時間労働に関しては、必要なリソース(ひと・かね)を行政で確保していき、さまざまなひとを配備していくとともに、これを遵守することは管理職の仕事なんだという認識を徹底的にインプットしていくということが二つ目に大事なことなんじゃないでしょうか。
新卒採用の解決策とか、中途採用の解決策とか、どんなものを出しても結構ですが、いろいろ考えてみましたけれども、結局、先ほどの将来予測値とのギャップというのが分からない限り、どのような打ち手で、何人確保しなければならないのか、の目安が立たないのですね。
とりわけ、「私たちは、今、学生を選べる立場にない」ということを認識して、「学生から選ばれている存在」だということを前提にして、教員採用は進めなければなりません。その中核になるのは、教育委員会さんと教員養成系大学です。教育委員会さんと教員養成系大学がタッグやアライアンスを組んで、円滑なトランジション(学生の現場への供給)を行っていくということが大事だと思います。
 その前提にたったうえで、以下、いろいろ解決策の案を、新卒・中途採用ふくめてお話しします。ただし、これはジャストアイデアです。そもそも何人の人員が必要なのか把握できていない、そして、データに基づいて全くないので、その程度の案だと思ってください。あと、ここまでやるのか、あるいは、もうすでにやっている、ということも含まれると思います。大切なことは、人手不足の時代にあっては、「あの手この手を尽くして、なりふりかまわず、愚直に魅力を訴えることであり、よいひとを採用する努力をしつづけること」です。これは、何も教育業界だけでなく、多くの業界の共通の課題だと思います。
まず、新卒採用の案です。
第一に、教員養成試験の共通問題作成とかはできないんでしょうかということです。これができると、多くの県の問題を特段試験対策なく進めることができるのではないでしょうか。
つぎに、試験項目の妥当性検証です。今、ある試験項目は、本当に入職後の成果と関連あるものになっているのでしょうか。つまり、学生が教員になることをそもそも諦めてしまうような試験というのも存在じゃないんだろうかというのがすぐ思ったことです。
二つ目は試験時期の弾力化です。昨今の就職活動では、3年の春学期にはもう企業のインターンが始まっていきます。3年の夏・秋・冬のインターンが主戦場。むしろ4年制の春にはすでに内定をでている子もいます。よって、教員養成系大学の皆さんが、民間企業を志すかはわからないのですけれども、もしその可能性がある場合には、かなり前倒していかないと、恐らく就職検討の余地にもならないということです。学生の進路・就職に影響をあたえる親は、おそらく、民間企業への就職も視野にいれて考えるでしょうから、なおさらです。
 あとは採用のチャネルを増やすということがあり得るんだと思います。例えば教員養成セミナーの受講者の試験免除も既に行われていると思いますが、その卒業生にリクルーターになってもらって、学内で広報してもらうなどのこともできると思います。なるべく、学生に近い視点をもったひとに広報に協力してもらうこともそのひとつです。
 あとは初年次教育では魅力的な先生に早く会わせるということです。今、大学の1年生で大体4分の1が、企業内での一日インターンなどに参加しています。昨今では、初年次教育において企業とのコラボ授業も多数なされるようになってきて、その意味では、社会への露出(exposure)が、早いのです。ですので、教育現場においても、生身の魅力のある先生の声に触れられる経験を、なるべく早期に確保していくことが大事なんじゃないでしょうか。
 あとはそこまでやるのかいと思われるかもしれませんが、実際民間ではやられているので、あえて言います。わたしは、学生の進路・就職選択の際に、親ブロック(親がとめること)をされている可能性がかなりあると僕は思っています。そういう場合には、親向け、あるいは親子参加で、教員の仕事の魅力とか、学校の現状を伝えるということをやっていくというのが一つなんじゃないでしょうか。親は、一方向的にマスメディアで喧伝される現場のイメージをもっています。そうしたイメージを刷新していくことも重要です。こんなことを申し上げますと、ここまでやるのかい、と思われる方もいると思います。しかし、人手不足時代に、人材確保を行うということは、そういうことです。あの手この手を尽くして、いっても、人が採用できるかできないかの、瀬戸際だと思います。
 つぎに中途採用です。情報、英語など、とりわけ専門性の高いスキルを必要とする必要な教員では、新卒採用のオーガニックグロース(内部育成)だけで、その必要人員を埋めるというのは非常に難しいんだと思います。そうしたときに中途採用を弾力化することも一計でしょう。
一度教職を離れたけど、もう一度先生になりたい人もいます。新卒で企業に出て、やっぱり教員なりたかった人もいるでしょう。そうしたひとびとに対して、リスキリングを行って教壇に立てる仕組みをつくるというのがよいと思います。
とりわけ地方へのIターン、Uターン等々、多様な働き方を求めて、ひとが動いています。第一線のIT企業で働いていたけれども、セカンドライフは違うこともやってみたいひともいるでしょう。そういう人材を活かしていくことも重要でしょう。
もちろん多様な人材が学校に入ると言うことは、管理職のマネジメントコストは高くなるので、力量形成も必要です。
 以上をまとめます。まず第一に、どのくらいのヘッドカウントが必要になるのか、しっかり未来予測をたてることです。それは定量的であっても、定性的であっても、関係者がその深刻さを理解できればよいと思います。そのうえで、ありうる「打ち手(施策)」をすべて並べてみることです。わたしは、きょう、いろいろいいましたが、この程度の施策ならば、現場のフロントラインにたつ方々は、もっと精度のよいものをおもいつくはずです。そのうえで、ギャップを各施策が、どの程度埋められるかを考えてみることです。
私は、恐らくですけれども、5年、10年というふうに考えていくと、今よりもかなり深刻になる事態が予想できるんじゃないのかなと思っています。といいましょうか、すでに情報の教員は足りていません。都内でも人手不足の悲痛な叫びはよく聞きます。管理職や主事が現場になっているケースも聞きます。もうすでに、子どもに影響をあたえているのだと思います。わたしは、今の延長上にあるような施策が、この深刻な事態を埋める「打ち手」として適切なのか、と問われると、「貴重であるが、それだけでは、不足が生じるのではないか」と思います。「守りの人材確保」ではなく、あの手この手を尽くした「攻めの人材確保」が必要だと思います。「攻めの人材確保」を行っていても、それでも、思ったように採用できないのが、人手不足の本質です。
 以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 提案されたいろんな事項、よく分かりました。これまでこの教員養成部会や特別部会等で示されてきた、養成・採用・研修に関わるおおよそ改革の方向性とほぼ一致するのかなと思いましたけれども、本当に示唆のある御意見をいただきましたので、また、生かしていければと思います。
 予測値のこと、全くおっしゃるとおりなんですが、これまでも教員ニーズの予測値は出てはいるんですね。ただ、生産年齢人口の大幅な減少という中での在り方と、それからもう一つ、コロナ禍で出生数が減ったということを入れた予測値がまだないような気がします。コロナ禍はまだまだ途中ですけど、これを入れたものを早急にやらないと、3年後、4、5年後にはもう影響が出てくることになりますので、確かにおっしゃるとおりだと思います。そういう新しい予測値が必要なのかなということは全く私もそのように思いました。本当にいろいろ御意見、ありがとうございました。
 それでは、あまり時間もなくなってきましたので、ちょっと先を急ぎたいと思います。あと、安部委員と益川委員が挙がっておりますので、もしなければ、お二人で締めたいと思います。
 安部委員、よろしくお願いいたします。
【安部委員】  ありがとうございます。長崎短期大学の安部恵美子です。
 二つの県からの教員確保のための非常に先進的な取組について御議論いただきました。ありがとうございました。その中で、私、特に埼玉県の教員養成セミナーについて少し御質問と、それから意見を述べさせていただきたいと思います。
 埼玉の教員養成セミナーは非常に長い期間、学校体験実習、講演、体験学習等を合わせますと、59日間にわたって学生は参加をするわけですけれども、確かに教員養成においては、現場を実習期間以上に経験することとか、あるいは現職の教員の方から実際の教育の内容とか、教育の方法についてのお話を聞くことというのは非常に有益だと思いますが、3年生から4年生にかけてかと思われる学校体験実習が、43日というのは、1週を5日といたしますと、8週間以上の実習期間ということになりますので、これは学生たちが在学している学校、それぞれの養成課程の授業だとか、あるいは教育課程そのものとかにどのような関わりを持つのだろうということにちょっと疑問、疑問というか、どうなのかということをお尋ねしてみたいなと思いました。もちろん土曜日とか、あるいは長期休暇中とか、そういうところを利用されて、講演とか体験活動をなさるんだろうと思うんですけども、学校体験実習においてはどうしても授業日が入ってきますので、これに関して、連携を結んでおられる24大学のところとどのような申合せ等があるのかということをちょっとお聞きしたいと思いました。
 以上です。
【加治佐主査】  それでは、石井さん、お願いします。
【石井市町村支援部長】  ありがとうございます。学校体験実習、43日間って非常に学生たちに負担ではないかということだったと思うんですが、この43日間というのは、大学等で行う教育実習も兼ねているということです。そのようにして学生の負担を軽減し、大学の授業との両立を図ることができるようにしているところでございます。よろしいでしょうか。
【安部委員】  すみません、よろしいでしょうか。私、いわゆる実習を増やしていくことは教員養成課程において、例えばクオーター制などを導入して、実習を主とする期間を教育課程に想定することが必要ではないかと思っています。ここでは、このセミナーに参加をされ、採用された方の予後が非常に良く、リーダーシップを取られるような教員になられたことが、15年以上のこのセミナーの実績の中で、お伺いしてましたので、学生にとっての長期の現場体験というのが非常にいいものになっているのでないかと思いましたので、質問させていただきました。
 以上です。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは、益川委員、お願いいたします。
【益川委員】  益川です。自分も昔、静岡大学に長く勤めていたので、そこでの教育委員会とのやり取りを思い出しながら、お話を聞かせていただきました。例えば、名簿の登載とかは、教職大学院が始まった頃は、結構、教職大学院協会で情報交換したりとか、横のつながりを通して情報共有していたかと思うんですけど、例えば今回のような倍率低下に対して、こういう教師養成塾も始まってもう10年以上たって、幾つかの自治体は取組の蓄積がありますので、例えば教育委員会同士で情報交換をして、どういう取組に効果があって、効果がなかったかという整理であるとか、成功例とか、失敗例みたいな、何かそういう蓄積というのが横のつながりを通して行われているのかどうか。そのような取組や共有による分析結果など知りたくて、質問させてください。よろしくお願いします。
【加治佐主査】  奈良、埼玉の横の展開ですね。教育委員会の方からお伺いします。まずは奈良の前田次長、いかがですか。
【前田次長】  奈良県です。具体的にどの場で、どういう形でされていたのかということですけれども、指導主事会や、教育長協議会、教育委員会協議会などでこのようなテーマが挙げられて、情報交換がなされていたかと思いますけれども、具体的にどの程度までということは、把握できておりません。
 以上です。
【加治佐主査】  橋本さん、いかがですか。橋本さんにお聞きしたほうがよろしいのかな。
【橋本委員】  実際、去年の秋に、近畿の中の教育長の年1回の意見交換会があるんですけど、そのときのテーマが正にこの人材の確保ということで、あわせてこういう各府県の養成の取組等についても少し情報交換をやったところです。
 ただ、そうした情報、よい情報を得て自分のところに生かしたいということとともに、ある面では府県間で人材の取り合いをしているという関係もありますので、複雑な事情も背景にございます。
【加治佐主査】  ありがとうございました。
 それでは、時間も大分来ておりますので、意見交換はここまでにしたいと思います。
 私の方から、2点、簡単に感想を申し上げます。埼玉県さん、そして、奈良県の取組ということで、大変本当に参考になりました。今後の審議に生かせると思います。
 一つは、埼玉県さんのセミナーですね。セミナーと大学の教員養成プログラムとの関わりですね。つまり、恐らくこれが始まった頃は、特に実践性というか、実践的指導力を育成するとか、体験をするとかいったような面で、大学のプログラムは弱かったかもしれません。ところが、その後、大分変わってきておりますので、どうでしょうかね。ちょっと学生にとって重複とか、そういうのはあるんじゃないかという気がしますね。それがある意味、学生の負担感を増しているんじゃないかという気もします。ですから、そこのところをまた大学とよく話し合われて調整されるのがいいのかなという気がしますね。参加している学生、かなり負担に感じているんじゃないかと思います。ひょっとすると同じことをまた大学でもやっているなというふうに、昔と違って、思われているかもしれないですね。ちょっとそこが気になりました。
 それから二つ目は、奈良県さんと奈良教育大学の取組、大変結構だと思います。ある意味、教職大学院の一つのあるべき姿を表してくれていると思います。ただ、私、気になりますのは、これを進めていくときに、負担の在り方の問題なんです。つまり、大学が負担されていますね。大学の経営者としては非常にこれは気になりますね。結局、現職教員に対して2年目の14条適用で来られる方もそうだし、特に新しい、こういうすばらしい取組でも、結局、大学が持ち出してやるということですね。どうですかね。これもあえて申し上げますけど、初任者研修を、ある意味、大学が肩代わりしていますよね。特別のプログラムもつくっていますよね。とすると、やっぱり受益者負担の観点からは教育委員会になるんじゃないかという気もするんですけどね。
 2年目の方は給料をもらっていますので、できれば御自分が受益者になりますので、それを負担されるか、それ以上にこういうプログラムなり、そういう人材をつくることは意味があるというふうにお考えであれば、また大学とよく話し合っていただいて、できれば何らかの県からの負担というのがあると、大学としては非常に元気づくんじゃないかという気がしますし、今後、こういう取組というのは一層進んでいくんじゃないかという気がいたしました。私が知らない事情もあるかもしれませんので、また、御検討いただければと思います。
 それでは、本当にありがとうございました。石井部長、前田次長、そして奈良教育大学の宮下理事におかれては、大変参考になる御発表をありがとうございました。なお、本日の御発表や意見交換の内容を踏まえ、事務局においては新たな教師の学びの姿の実現に向けた教師の採用について、更に検討を進めていただきたいと思っております。
 それでは、本議事を終了いたします。どうもありがとうございました。
 最後に、結構重要な調査を事務局の方で行っておりますので、その説明を中村補佐からお願いいたします。
【中村教育人材政策課長補佐】  中村です。残りの時間で調査、三つほどございまして、資料2-1、2-2、2-3ということですけれども、中心的には2-1について御説明して、残りは簡単に触れる形にしたいと思っています。
 資料2-1は、教師不足に関する実態調査ということで、このたび初めて全国的に調査を実施いたしました。資料の2ページ目を御覧いただいて、調査概要で目的のところですけれども、これは臨時的任用教員などの確保ができずに、学校へ配置することとしている教師の数に欠員が生じる、これを教師不足とこの調査で呼んでおりますが、それに関する実態調査をして、年度当初の4月、5月における全国的な実態を把握するために行ったものです。対象としては全国の68の教育委員会ということになっています。対象学校種も小・中・高・特別支援学校と全体的に聞いておりまして、教員の定義は御覧のとおりです。
 3ページを御覧ください。3ページに、縷々ポイントを書かせていただいておりますけれども、具体的に申し上げると、各スライドに表が載っていますので、そのスライドの方を御覧いただければと思うんですけど、4ページを御覧ください。
 4ページ、これは教師不足の全体概要になっております。これのポイントとしましては、真ん中の(C)、不足という欄が縦にございますけれども、ここのところで特に小中学校合計で言いますと、上の5月1日時点のところを見ていただきますと、小中学校合計で不足が1,701ということで、これ全体で言うと0.28%に当たります。このところにいわゆる教師不足というふうに今回呼んでいます、配当されている定数に対して、人が置けていない状態といったことが発生しているというところでして、小・中・高・特支全体で言いますと、その下の方にあります2,065人ということが実数になっております。こちらにつきましては、いわゆる配置することとしている教師の配当数に対して、実際に教師が置けているかということを聞いているものですけれども、ここに書いてないというか、はっきり書いてないところがありますけれども、すみません、ここの中には書いてないんですけれども、いわゆる国の方で標準的に算定しております義務標準法に基づき算定される小中学校の定数といったことがありまして、そちらにつきましては、全国平均で101.8%となっておるということで、そういう標準定数といったことに対しては全国平均で100を上回っているという状況になってございます。
 それから次に、ページで言いますと8ページのところを御覧ください。8ページのところは、こちらは小学校の学級担任の代替状況といったことを示している表でして、本来、学級担任ではない役割の教師が学級担任を代替する状況、このことを学級担任不足というふうに本調査で言っておりますけれども、その状況について表しているものです。小学校の学級担任不足のところ、全体で言いますと、474人ということで、不足が生じていると。全体で0.18%に当たります。これらの学級担任不足に対して、どういう状況で代替しているかといったことがこの表の真ん中、左記の内訳というところに、マル1からマル5と書かせていただいているところですけれども、マル1にありますような、いわゆる学習指導、少人数指導など、そういったことに対して加配している教員で学級担任を代替していたり、マル2にあります生徒指導のための加配の教員で代替していたり、マル3、マル4のように主幹教諭、教務主任、あるいは管理職といった形で代替するようなケースもございます。
 それから次に、9ページを御覧ください。9ページは、中学校、高校の教科担任不足の状況ということで、教科担任不足の意味ですけれども、上の箱の中に書いてあります中学校、高校において学校に当該教科の教師がいないことによって当該教科の必要な授業を行えていない状態、こちらを教科担任不足というふうにこの調査では調べております。その結果、5月1日時点で授業が行われていないという学校が中学校で16校、高校で5校という状態でございましたけれども、いずれの場合もこの後に聞き取りなどの調査を行いまして、教育委員会の方に聞いた限りでは、5月中にはおおむね解消、遅くとも7月時点では全て解消しているということを聞き取っております。
 それから、10ページを御覧ください。10ページは教師不足の要因というのをアンケート調査したものです。教育委員会に聞き取っているものです。こちらについては、上の箱の中の矢印二つ目にありますように、特に産休・育休取得者、それから特別支援学級の増加、病休者数の増加といったことによって、必要となる臨時的任用教員が見込みよりも増加したということを要因として認識されている自治体が多いという傾向にありました。
 それから、11ページを御覧ください。11ページについては、こちらは同じくアンケートですけれども、臨時的任用教員の成り手不足の観点からアンケートしたものですが、こちらについては、上の箱の矢印一つ目にありますように、講師名簿登録者数の減少ということが、一番、講師の成り手不足といったところについて影響しているという回答が多く、そのほか、もともと臨時的任用教員として勤務していた者の正規採用が進んだということですとか、あとは臨時的任用教員の成り手となる人が既にほかの学校や民間企業といったところに就職していることによって、講師名簿登録者数が減少しているということを理由として挙げるところが多いという状況でした。
 それから、「また」のところに書いていますように、講師登録名簿に登録されているけれども、免許状の更新をしておらず、または更新手続の負担によって更新がなされていないことにより採用できなかったということ、それから、それを理由に本人が辞退するといったケースも半数以上の自治体で要因として挙げているという状況でした。
 これらについての調査結果を踏まえて、文科省としては、一番最後13ページのところにありますけれども、これまでも教師不足の状態というのは聞き取りなどで把握していましたが、今回、全国的な実態調査といったことを初めて実施した上で、この後、引き続きということではありますけれども、教育委員会における教員採用選考試験における取組の収集、発信といったことを前提にしまして、横展開をしていくですとか、文科省として行っています、いわゆる人材バンクを通じた講師の成り手確保に向けた取組をやるということ、それから、学校における働き方改革の推進など、勤務環境改善を含めた教職の魅力向上ということについて取組を進めていきたいと思っておりますし、あわせて免許状を保有しているけれども、長らく教壇に立っていない者が教師を志す際に、教壇に立つ際に必要な知識、技能といったものの刷新を図って、スムーズな入職をできるような、そういったオンラインで利用できるような学習コンテンツの開発ということを行ってまいりたいと考えております。こちらが調査の資料2-1に基づきまして説明をさせていただきました。
 それから、簡単ですけれども、最後2-2について御説明したいと思います。資料2-2は、定例で行っております教員採用選考試験の実施状況といった調査ですけれども、ポイントとしましては、このページの上の白い丸一つ目が全体概要ですけれども、全体としての競争率については3.8倍で、前年度4.0倍から減少しているということと、あわせて、特に次の丸、試験の区分別の中の小学校のところですけれども、小学校については競争率2.6倍ということで、前年度、2.7倍から減少して過去最低という状態になっております。中学校と高校については御覧いただいているとおりです。
 こちらについては2ページを御覧ください。2ページのところで分析を書かせていただいているところですけれども、一つ目のポツのところにあるように、中長期的なトレンドとしては、採用者数が平成12年度以降、ほぼ一貫して増加していまして、近年の採用倍率低下といったのは大量退職などに伴って採用者数の増加といったことが起こっているところが大きく寄与しているのではないかと考えております。具体的に次のポツにありますように、小学校においては採用倍率が過去最高の12.5倍だった平成12年度といったのは3,683人が採用者数でしたけれども、今回、令和3年度においては採用者数が1万6,440人と5倍近くに増えているという結果として、採用倍率2.6倍というところまで落ち込んでいるというふうに状況を見ております。
 それから次、少し飛ばしまして、4ポツ目のところに書いていますけれども、小学校の受験者の内容を分析してみると、こちらは昨年度と同様の傾向ではありますけれども、新規学卒者については小幅な増加。前回、昨年は小幅な減少でしたけれども、小幅な増加というふうなところで、ただ、受験者が減っているのは、既卒者が大きく減少しているといったところが効いているものと認識していまして、これらについては、この次のポツに書いていますけれども、小学校の受験者数の減少傾向というのが、いわゆる教員採用試験に再チャレンジしてきた層が正規採用されたことによって、既卒の受験者といった層が減ってきているというところが主要因であると考えております。
 最後のポツに書いています中学校と高校についても、全体として4.4倍、6.6倍というふうな倍率ですけれども、これらにつきましては、既卒者の受験者数の減少に加えて、新規学卒者の減少といったものも見られている状況でして、これらについては、いわゆる小学校に比べれば、中高は民間の採用状況に左右されやすく、新規学卒者の減少傾向に歯止めをかけるといったことが今後ますます必要になってくるものと考えております。
 説明としては以上です。
【加治佐主査】  どうもありがとうございました。
 本日の議事は以上になります。皆様、どうも長時間にわたってお疲れさまでした。ありがとうございました。
 令和の日本型学校教育を担う教師の在り方について、引き続き、基本問題小委員会を中心としながら検討を深めていきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
 本日はどうもありがとうございました。これで終わります。
 
―― 了 ――

(総合教育政策局教育人材政策課)