地方文化財行政に関する特別部会(第2回) 議事録

1.日時

平成29年10月30日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

スタンダード会議室 虎ノ門SQUARE2階会議室

3.議題

  1. 地方文化財行政の在り方について
  2. 特別部会まとめ(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

小川部会長、亀井部会長代理、荒井委員、岡田委員、小西委員、鈴木委員、世良委員、中原委員、馬場委員、山添委員

文部科学省

髙橋局長、白間審議官、下間審議官、中岡文化庁次長、山崎文化財部長、髙橋伝統文化課長、矢野初等中等教育企画課長、佐藤初等中等教育局企画官、松淵初等中等教育局企画課市町村教育委員会連絡調整官

5.議事録

【小川部会長】  それでは、今、鈴木委員もお見えになりました。ちょうど定刻になりましたので、中教審の地方文化財行政に関する特別部会、今日で2回目ですけれども、開催させていただきたいと思います。本日も、本当にお忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本会議は議事全体を公開しております。
 それでは、まず、事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
【松淵調整官】  それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料は、議事次第に記載しておりますが、資料1から資料6の6点、参考資料が8点でございます。不足等がございましたら、事務局へお申し付けください。
【小川部会長】  ありがとうございます。資料の確認、よろしいでしょうか。もし不足があれば、事務局の方にお申しください。
 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。本日の議題は、議事次第にありますとおり、地方文化財行政の在り方について、そしてもう一つは、特別部会まとめ(案)について審議を進めていきたいと思っております。よろしくお願いします。
 早速、議題1に入っていきたいと思います。まず、先日の24日に行われた文化審議会の文化財分科会企画調査会における審議状況について、事務局から説明をお願いいたします。これは髙橋伝統文化課長の方からですかね、よろしくお願いします。
【髙橋伝統文化課長】  それでは、資料1を御覧ください。前回のこの部会の後、企画調査会が10月24日に開かれまして、そこでこの文化財保護の所管に関する議論が行われましたので、その概要について御紹介を申し上げます。
 この企画調査会の中間まとめについて8月の末に公表したわけでございますけれども、9月の間、パブリックコメントを掛けておりました。そこの中の意見を捉まえて、最初のポツにあるような意見がまずあったということでございまして、そのパブコメの中で、最初の矢印のところにございますけれども、文化財保護行政というのは長期的な視点が必要なんだけれども、首長は4年で交代してしまうということで、首長部局が所管することについて継続性への不安があるというような話でございますとか、特に埋蔵文化財に関しまして、首長の判断が優先されて現状でも保存がままならないときがあるという中で、教育委員会が引き続き所管をすることで緊張関係があった方がいいのではないかというような意見でありますとか、あるいは、自治体においては美工品でありますとか無形文化財といった分野について専門的人材がほとんどいないということでもって、専門的知見を踏まえた活用が難しいんじゃないかというような意見が寄せられたことを受けまして、所管を移すということについて慎重な判断が必要ではないかというような御意見がございました。
 ただ、一方、その意見に対しまして、下から2つ目のポツのところを御覧いただきますと、首長の任期の継続性という点について、実際には2期、3期ということで長くやられる首長が多い一方で、むしろ自治体の文化財担当者が数年で異動するということから、首長が代わるかもしれないからといって教育委員会が所管するべきというのは現状と乖離しているのではないかというような反対の御意見でありますとか、あるいは、最後のポツのところでございますが、埋蔵文化財について、現在でも首長の所管になったからといって単純に壊されるということはあり得ないんだということで、それを現状のまま保存するか、あるいは記録保存――記録保存といいますのは、遺跡の状況を記録にとって、結果としてその遺跡は破壊することになるんですが、そういう記録保存かというようなことは、専門的な判断ができれば、それはどちらが所管するということがあっても別にいいのではないかというような御意見がございました。
 また、2つ目のポツでございますけれども、やはり地方文化財保護審議会というものがしっかりと機能強化されて整備されれば、そこは問題ないのではないかというような御意見でありますとか、あるいは、やはり専門的知見を持った職員をきちんと配置することが大事だというような意見、こういった意見がございまして、大勢としては、先般の企画調査会においては、文化財保護行政を要は選択制にするということについて大筋異論はなかったのではないかと我々としては受け止めておりますけれども、まだこの問題については引き続き企画調査会において議論がなされるということになってございます。
 以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。今、24日に開かれた調査会の議論の概要について説明いただきましたけれども、これについて何か御質問とか、この場で確認するようなことがございましたら。委員の方から何かありますか。なければよろしいでしょうか。
 それでは、次に入らせていただきたいと思います。続いて、これも前回と同じですけれども、地方公共団体からの事例紹介に移らせていただきたいと思います。本日は3人の委員の方からの御報告を予定しております。1人目は与謝野町の町長である山添委員、そして津和野町教育委員会の教育長である世良委員、そして長崎市教育委員会教育長の馬場委員の3名からの御発表をお願いしております。順番は、山添委員、世良委員、そして馬場委員の順でよろしくお願いいたします。
 なお、質問とか議論については、3人の御報告が終わった後に一括して時間をとりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、山添委員の方からよろしくお願いいたします。
【山添委員】  皆さん、改めましてこんにちは。京都府の北部、丹後半島の付け根に位置しております与謝野町というところで町長をしております山添と申します。本日は特別部会において本町の意見照会ということで機会を頂き、心から感謝を申し上げたいと思っております。
 まず、本特別部会の主眼でございます文化財行政を選択制にしてはどうかということでございますけれども、私といたしましては、そのような方向性で議論をまとめていくことが適切ではないかと考えております。そうした立場から、数点にわたって、私の個人的な見解を含めてお話をさせていただきたいというように考えております。
 私自身、京都府北部に住んでいるということから、日頃から文化の要素を感じながら生活をいたしております。そうした観点から、文化と経済が両立し得るまちづくり、あるいは国づくりということが、これからの時代、非常に大切になっていくというように考えております。少し昔の川柳でございますように、「売り家と唐様で書く三代目」という川柳がございます。これは、かつて第一代、第二代の経済的な豊かさを誇った家が、三代目になるとその財産を滅失してしまうことが非常に多いということから、三代目の生き方を皮肉った川柳になっております。しかしながら、三代目というのは、文化や家族、自然を愛しながら生きているというような生き方を指すんですけれども、私といたしましては、この三代目の生き方というものが見直されてもいいような時代背景に移りつつあるというように考えております。そうしたことから、今後におきましても本町としても文化を大切にしたまちづくりを進めていきたいというように常々考えているところでございます。
 私どもの町につきましては、全国級の文化財のテーマは2つございます。1つは、古代史「丹後大国」の大型の古墳群でございます。第2に、織物の産業史ということで、「丹後ちりめん産業」関連文化財群がございます。私どもの文化財保護行政につきましては、この2つを軸にして、現在、取組を進めているところでございます。
 現状といたしましては、文化財保護行政につきましては教育委員会部局での所管ということから、主に発掘などをはじめ、文化財にまつわる事業を所管しているということであります。私ども首長部局におきましては、これらの文化を背景とした文化財の活用という観点から、観光振興などをはじめ、経済に結び付くような取組を所管しているというのが現状であると考えております。
 3ページ目の資料を御覧いただきたいというように思うんですけれども、ただいま御紹介をさせていただきました古代の地域王国史といたしましては、1800年前のガラス釧が大風呂南古墳群というところから発掘されたり、あるいは蛭子山古墳・作山古墳と言われております丹後半島の中では大変大きな古墳の公園として整備をしたりしてまいりました。現在もなお、この古墳群に訪れられる方は全国からも大変多くございます。こうした古墳を活用したまちづくりというものの可能性についても、今後、開けていくことが考えられるのではないかというように考えております。
 また、第2に、織物産業史といたしまして「丹後ちりめん産業」の関連文化財群ということで、数点にわたりまして写真の方を付けさせていただいております。平成17年に指定を頂きました重伝建の保存地区がございまして、この保存地区におきましては、古くからの織物の産業を町並みに生かした回廊ということになっており、現在、この修景を含めてまちづくりを進めさせていただいているところでございます。本年の春には日本遺産といたしまして「丹後ちりめん回廊」とする認定を受けたということから、現在、この丹後ちりめんの街道における観光客の方の満足度のアップ、さらには集客をしていきたいということから取組を進めているところでございます。この「丹後ちりめん回廊」の取組につきましては、保存ということと活用、これらを両立させていくということが大変重要なテーマであると考えております。町並みの保存という観点から申し上げますと教育委員会部局の所管ということになりますけれども、これらの町並みを活用した観光資源の開発につきましては町長部局でつかさどっているということから、これらの連携を非常に密に、現在、取組を進めさせていただいているというところでございます。
 このように大きく2点にわたる柱を据えながら、私たちといたしましては、文化財保護行政の保存と活用という観点からまちづくりを進めているという状況でございます。現在の制度上におきましても私どもとしては特に支障を来しているということではございませんけれども、確かに日々の業務の中で職員間における責任ということを考えましたときに、その境界線で非常に意見が対立をして、長年にわたって進んでいないということもございます。そうした場合に、ある種、これまでなかなか話を進めることができなかったという局面におきましては、これまでとは違った観点からの意見を入れながらまちづくりを進めていくということが非常に重要なのではなかろうかと考えているところでございます。
 本日、皆様方にお配りさせていただきました資料につきましては、私どものまちづくりの一端について御紹介をさせていただいており、この文化財保護行政の在り方についても意見ということでまとめさせていただいております。こうしたことを少しでも今後の議論の参考にしていただきながら、この文化財行政が日本国全ての地域において息づいていくということがあると、私たちにとっても大変うれしいなと思いますし、ひいては、この国をこれから支えていく子供たちにとっても大変有益なものになっていくのではないかというように考えているところでございます。現在、私ども、多角的にまちづくりを進めておりますけれども、これらの内容につきましても皆様方から様々な御意見を頂きながらブラッシュアップしていきたいと思っておりますので、この後の質疑応答におきましては積極的な御意見を頂きながら議論を交わすことができればと考えております。
 私ども、人口2万2,000人ということで大変小さな町でございます。しかしながら、この文化財保護行政を一つの大きなまちづくりの柱にして、今後とも努力を重ねていきたいと思っております。皆様方の御指導よろしくお願い申し上げまして、簡単ではございますけれども、私からの意見発表ということで代えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【小川部会長】  山添委員、ありがとうございました。
 それでは、続けて、世良委員の方からよろしくお願いします。
【世良委員】  それでは、失礼いたします。島根県の津和野町の教育委員会の教育長をしております世良と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元の資料、これを流しますと多分20分は超える資料になろうと思いますので、かなりはしょって要点だけをかいつまんでの説明とさせていただきたいと思います。ただ、せっかくのこういった機会ですので、我が町の紹介も若干したいというところで、ところどころに直接関係ない写真等も入っておりますけれども、お許しいただけたらと思っております。
 まず、簡単に津和野町の紹介でございますが、島根県の最西端に位置しておりまして、山口県と県境を接しております。人口が7,700人とありますが、実際には一番近いところの数字でいくと7,638人という小さな小さな町でございます。面積は約307平方キロございまして、お隣の白河市さんとほぼ同じぐらいの面積になろうかと思いますけれども、人口はこれだけということです。横浜市の1平方キロ当たりの面積に住んでおられる人口よりも更に少ないという、本当小さい町でございます。
 ただ、亀井4万3,000石の城下町として、年間、多くの観光客の方においでいただいておりまして、藩校養老館という藩政時代の藩校から、森鷗外あるいは西周など明治期に活躍した偉人を多く輩出しておるというところでございます。隣の写真がその藩校養老館の一部でございます。今、改修中ではございますけれども。そのほかに、国の指定の鷺舞、それから今年ちょうど400年という伝承の津和野踊りというような古くから伝わる民俗芸能も残されておるというところでございます。それから、平成27年に創設されました日本遺産にも「津和野今昔~百景図を歩く~」というストーリーで認定を受けております。そのほかにも重伝建の地区の選定等、多く文化財を絡めたような町の運営ということが一つの町の特徴でもあると思っております。
 ただ、指定文化財の状況につきましては、この表のとおり、そうたくさん指定をしておるわけではございません。前回の奈良県、京都市、それから横浜市さんと比べるとほんのちょぴっとしかありませんので、お恥ずかしい限りではございますけれども、平成20年から22年度にかけて行いました「歴史文化基本構想」の中で文化財の調査ということで各地域で調査をしたところでございますが、約1,200件ぐらいの文化財関係のものがあるというふうに調査ができております。この差を今後埋めていかなくてはいけない部分もありまして、そういった認定の作業、こういったことも大きな課題になっておるところでございます。
 紹介はそれぐらいにさせていただいて、今回の議題であります首長部局に文化財関係を移管するに当たっての留意事項ということで、大きく何点かに分けて整理をしておるところでございます。
 これは言い尽くされたものでありますけれども、開発と保存のバランスということが非常に大事だろうと思っております。基本的に、教育委員会部局でありましょうと首長部局でありましょうと、行政で守るべきものは守らないといけないし、開発すべきところは開発するということで、どちらでやっても特に支障は起こらないのではないかなということが根底にはございます。
 ここでちょっと津和野町の例として載っておりますけれども、これは従来から町道の横に旧津和野城の掘り割りの跡がございまして、そこのところの開発がかなり課題となっておりましたが、今年、ようやくここに方向性の決着を付けたところでございます。守りながら開発をするという決着に最終的にはなっております。ここら辺が、首長部局の立場と教育委員会部局の文化財保護の立場とのすり合わせの中で結論が出たというところでございます。今後、こういったことを、首長部局になろうと、やっぱり守るべきものと開発すべきものという整理のバランスが必要であろうかと思っておるところでございます。
 2点目のところに一気に飛ばさせていただきますけれども、これは当町だけのことかもしれませんが、移管する場合の条件として、文化財だけでなく、今はもう文化関係は首長部局で所管することは可能になっておりますけれども、できればそういう関連したことは一手に同じ箇所でやった方が合理的であろうと思っております。ここで、例えば我が町でいいますと、森鷗外の旧宅というのがございます。そのすぐへりに森鷗外記念館という文化施設がございまして、ここを一体的にそこの職員が管理をしておるわけでございますが、ここが切り離されますと、職員の配置から日常の管理に至るまでかなり面倒なことになろうかなと思っておりまして、そこら辺は当然首長の判断によるところがあるわけでございますけれども、一緒に移管するべきではないかなと考えておるところでございます。
 ここにありますうちの行政の文化財関係でございますが、文化財の係として3名、それから文化施設係として今の森鷗外旧宅記念館等で2名、それから文化振興係ということで1名で、教育委員会関係の文化財関係が6名の職員が配置されております。町長部局でも商工観光課の方で重伝建あるいは歴まち等の事業を展開しておりまして、そことの連携で1名、観光関係の職員がおるということで、今、こういった形で連携をしながら行っているところでございます。お互いがお互いを理解し合いながらやっているということで、今のところは非常に連携がとれているかなと思っております。今後も、文化財関係が仮に町長部局に行っても、そういった守るところと開発する部分の連携というのは必要になってこようと思っております。
 4ページの方ですけれども、もう1点、学校・社会教育との関係ということで、文化財関係の職員は特に島根県はふるさと教育というのに力を入れておりますので、そういった歴史関係のこと、文化財関係のことで学校の授業に呼ばれることが結構多くございます。そういったところが、前回も言いましたけれども、町長部局に行ってしまうと、教育委員会がお願いをしないと来ていただけない形になってまいります。そういった形で、今までは学校に行くのもいわゆる仕事として業務命令で派遣をしておったわけですけれども、そこら辺が今度は命令ができないというところがございまして、そこら辺の学校・社会教育との関連がうまいこといくようなシステムが必要になろうかなと思っております。
 最後に、その他(想定されること)ということで、これは移管された場合のメリットという意味合いでございますが、今、教育委員会を通さないと国・県に認定申請等が出せませんが、これは首長に部局になりますとストレートに申請ができるということで、許認可にスピード感が出るのかなと思っております。
 それから、首長の政策に直結した取組になろうかと思いますので、方向性の決定がスムーズに行くであろうと。教育委員会はレイマンコントロールで、うちの場合は4名の教育委員と私で5名の教育委員会の中で審議をして大きなものは方向性を決定させていただいております。ここでいつも同じ意見で意見がまとまるというばかりではなくて、やはり反対の意見を言われる委員さんもおられるというような状況の中で、首長が幾らやりたいと言っても、今までは反対の意見があって止める部分もございましたけれども、そこの整合性が今度はストレートになりますので、文化財保護審議会の中での位置付けというのがしっかり図られないと、いわゆるお手盛り行政のような形に住民の方が見られるようになってはいけないと思っております。ということで、首長の判断がより重要性が高くなるのではないかと、そういうふうにも考えておるところでございます。
 それから、住民への周知が必要になるということは、前回、横浜市の教育長さんの方からもおっしゃっておられましたけれども、うちなんかでも災害が起こったときなど、例えば屋根の瓦が飛んだよという電話があるのは、いつも委員会に直接ございますけれども、今までのイメージとして教育委員会に来て、「うちじゃないんですよ」ということで電話を転送するようなことにしばらくはなるのかなと思いますので、しっかりそこら辺も広報が必要になってこようというふうにも思っております。
 最後のところで私見でまとめておりますが、大体、今、流れの中で申し上げたことをまとめたような形になっております。最終的には、どちらで行っても可能であるし、今までと同じように教育部局との連携というものも必要になってくると。首長の判断がより重要になってくるということ。それから、どちらにいたしましても、担当職員の意識というものは、首長の意見に流されることなく、しっかりした意見を言っていただくということが必要であろうと思っております。
 以上、ちょっと長くなりましたが、報告とさせていただきます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、最後、馬場委員、よろしくお願いします。
【馬場委員】  長崎市の教育長をしております馬場と申します。よろしくお願いいたします。
 長崎市は、鎖国時代に日本で海外に窓を開けていたという歴史と文化を持つまちでございます。そういう中では、歴史的な文化財的なものを観光とかまちづくりに大いに生かしているまちの一つであろうと思っております。そういう中でも、明治の前から明治にかけて日本の社会を動かしてきた軸になっているところが長崎の希有な文化の歴史でもございます。そういう中では、出島が、社会科の方には載っていますが、町なかに埋もれてしまっているものを顕在化しようということで100年計画で進めておりまして、今年11月にやっと表門橋、橋を渡って島に入るという架橋が、それは復元じゃございませんので現代橋になりますけれども、その架橋がやっと50年ぶりにかなえるという記念すべき年を迎えております。また、世界遺産につきましては、明治日本の産業革命遺産に登録されました。また、来年は長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産登録を目指している、2つの世界遺産を持つまちを目指しているところでございます。そういう中におきまして、長崎のまちそのもののまちづくりが文化財の保存と活用、それを主にしたまちづくりとなっているところでございます。
 そういう中で、今回、議論になっています制度的にどうなのかということについて、資料4にまとめさせていただいております。
 これは言うまでもなく長崎市の現状ですけれども、法の改正がございまして、20年4月1日に文化に関すること、それも文化財の保護に関することを除いて市長部局に移管をさせていただいております。また、下の方にもございますが、文化財保護に関することは、地方教育行政の組織及び運営に関する法の23条の1項の規定により、市長の固有事務として移管はできませんけれども、まちづくりとして保存と活用を軸としているところもありまして、事務の効率的な執行の観点から、地方自治法180条の7の規定に基づきまして、教育委員会の権限に属する事務を、市長の補助機関である職員に補助執行という形で業務をさせていただいているところでございます。
 2ページを見ていただきますと、20年の4月以前につきましては、教育委員会の所管事項としまして、文化に関することに加えて文化財の保護に関することを所管しておりましたが、20年4月以降につきましては、文化財の保護に関することは、ほかの文化財の所管の方が首長部局にありますので、そこの方に補助執行という形でさせていただいております。また、教育委員会の附属機関として文化財審議会あるいは個別の指定文化財等の保存・整備委員会をそれぞれ設けまして、それぞれの遺産・遺構に関しましての保存、また整備の計画を作っている状況にもございます。
 そういう中で、今回ありましたように、移管するに当たりましての留意事項としてまとめているのが3ページでございます。
 その前に、一番最初、25年の12月に文化審議会文化財分科会企画調整会の報告にありました4つの要件、ここに注意事項は表現されているものと思っております。専門的・技術的判断の確保、政治的中立性、継続性・安定性の確保、開発行為との均衡、学校教育や社会教育との関連、この4つをやはり留意事項の柱として必要であろうと考えているところです。
 その中におきましても、ここの(1)に書いていますように、文化財保護に関することを首長部局に移管した場合、教育委員会会議における決定は不要となります。しかしながら、文化財審議会あるいは文化財の保存・活用に関する附属機関がなくなるということではございますが、そこはしっかりした形での組織立てが必要ではないかと思っております。また、専門的・技術的判断及び政治的中立性の確保のために、首長部局に文化財審議会や文化財の保存・活用に関する附属機関が設置されると思いますけれども、そのときにも、今、長崎市の場合は事務補助執行という形で文化財課の方で、首長部局の方でこの審議会も保存計画委員会も運用しておりますけれども、その際にも文化庁及び県の文化財の所管課と緊密に連携をとって、法令遵守で事務を行っております。こういうことで継続性あるいは安定性については確保できるものではないかと考えているところでございますし、今も実際、事務補助執行でやっている中におきましても、それを危惧するような事態にはなっていないということでもございます。
 その他として(2)にしておりますが、教育委員会以外の組織での文化財の保護に関する事務が行われるということにつきましては、今、事務補助執行といいながらも、合議制である教育委員会に議案をかけながらの執行をさせていただいております。学校教育あるいは社会教育との連携は十分に図れるような仕組みづくりは必要ではないかと考えているところでございます。また、長崎の場合は、2ページ目にありますように、文化財課というところが文化財に関することを行っておりますけれども、それ以外にも、それぞれのシーボルト記念館であるとか、出島復元整備室であるとか、世界遺産推進室、それぞれが首長部局にございます。そういう中では、文化財の保護だけが教育委員会の合議体の委員会の方にかけられるわけでございますけれども、その中での学校教育・社会教育の連携というのは十分に図られているところでございますが、先ほども申しましたように市そのものがまちづくりの根底に文化財の保護・活用がございますので、その部分については今でも長崎学研究所というのも実はございます。これも首長部局にございます。そういう中で学校教育との連携は長崎学研究所の中に割愛の教職員を配置しておりまして、学校教育との連携は密に図れるように、また、長崎学研究の教育バージョン、要するに子供バージョンという講座も設けておりまして、常に連携がとれるような形にしております。
 また、資料には記載しておりませんが、首長部局に移管するに当たっての留意事項として欠かせないことにつきましてもう一つ、少し話をさせていただければ、やはり一番肝心なことは専門性の確保ではないかと思います。今も文化財審議会あるいは整備計画の委員会とございますけれども、その中でもその委員の選任であるとか、それについてはそれぞれの文化財に対しての専門性が確保されなければならないと思っておりますので、これも先ほども申しましたように、国あるいは県との連携を基に適材な人材をしっかり入れながら、専門性の確保、価値の確保を、首長、行政マンではなくて専門性の高い方にきちんと見ていただくというのは必要なことであると思っております。
 また、もう一つは、所管の専門性、これは首長部局にあったとしても、長崎の場合は首長部局に事務補助執行をさせていただいて置いておりますけれども、それぞれに学芸員の配置は厚くさせていただいております。やはり執行する所管の職員がその必要性あるいは価値、そういうものに慎重な判断が求められるものと思っております。
 また、公平性を保つという意味では、文化財行政の情報公開も一つ必要なことではないかと思います。文化財審議会そのものは自由な意見交換を妨げることがないように非公開としておりますけれども、その後の審議結果あるいは審議内容については、発言した委員や文化財の所有者などの個人が特定されないよう配慮した上で、現在も公開の対象としております。そういうことで審議の透明性を確保することが、逆にこれが保存の、市民も含めて公にしっかり守っていかなければならないという壁にもなるのではないかと思っております。また、審議会の中にはそれぞれの専門性を持った方の選任に努力をしておりますけれども、それ以外にも、オブザーバーとして文化庁の方あるいは県の教育委員会の方に来ていただくような透明性・中立性の確保にも留意をしているところでございます。こういう部分につきましては、首長部局に保護の部分が移ったとしても保たれるべきものではないかと考えているところでございます。
 これから長崎市も様々な文化財を守っていく、また、それを活用していくことになお焦点を当てたいと思っておりますので、今日の会議、是非参考にさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今、3名の委員の方から御説明いただきました内容につきまして、皆さんの方から御質問や御意見がございましたら、そしてまた、地方文化財行政の在り方についての御意見も絡めて御発言いただければと思います。どなたからでも構いません、どうぞ。
 それでは、中原委員、どうぞ。
【中原委員】  貴重なお話を幾つも聞かせていただきまして、ありがとうございました。この部会の大きなテーマであります文化財保護行政の選択制に関わるところで、例えば、先ほど事務局から御紹介ありましたような企画調査会の12回における議論の概要であるとかパブリックコメントの内容などを見て、文化財の保存という問題についてはかなり議論がなされてきているように感じました。
 世良委員にちょっとお尋ねしたいと思うんですけれども、大変重要な御指摘をなさったと考えております。といいますのは、学校・社会教育と文化財の連携の確保、そういう部分が企画調査会の話の中には、連携をとるということだけで、具体的な話が出てないような感じがいたしておりました。世良委員の方から、今までは教育委員会の中で職員をふるさと教育の中に派遣してということができていたけれども、それが難しくなるかもしれないという危惧がございました。学校教育はこのまま教育委員会に残るわけですから、そちらと文化財の専門職員が首長部局に行った場合に、失礼ですけれども、津和野町さんのような小規模なところであれば割と連携できるかもしれないですけど、大きな自治体になればなるほどそこら辺の連携が課題になってくるのではないかなという気がしています。私自身もふだんから苦労していると言っては失礼なんですけれども、学校の先生方のニーズをつかまえることに非常に苦慮しております。こちらとしてはいろいろとプレゼンしたいことはあるのだけれども、学校の先生は、大変お忙しいので、そういう話をさせていただくという機会がなかなかなくて困っています。文化財側からのアプローチもなんですけれども、学校の側からのニーズの把握ですね、これがもし分かれた場合にどういうことになってくるのかということについてのお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
【小川部会長】 世良委員に対する御質問ということで、よろしくお願いいたします。
【世良委員】  分かれた場合のニーズ調査、私の町はちっちゃな町ですので、中学校が2校と小学校が4校というごく小規模な町なので、今現在は、「この日のこの授業でこういうことがしたいので、職員を派遣してもらえませんか」という依頼があって、それに応じて日程調整をして出しよるという形なんですけど、その要望については、多分、我が町では同じような形で要望があるだろうと思います。例えば社会の時間で城山へ行って説明をしてほしいというようなことがあれば、それに応じてやるわけですが、今は教育委員会、いわゆる身内なので、物が言いやすいわけですね。すぐ直接教育委員会の事務局の方を通じて文化財の方に指示をして行ってもらうという形になりますが、今度は、教育委員会にじゃなくて、直接その文化財の担当の町長部局の課の方へ連絡をしてという形になろうと思います。ニーズ調査という、もともとこの日にこういうことが要るという年間の計画は学校はシラバスである程度作っていますが、それに基づいてある程度この時期にこういうことをやりたいということは出てくると思いますけれども、そこら辺の依頼先が今度は町長部局になると今までどおり気楽に声を掛けることができなくなるかなという、ちょっとそういった心配はしております。ですので、そうなったときには、例えば教育委員会を通じて教育委員会から依頼をすると。今度は先ほどの国・県への申請の逆のパターン、ちょっと面倒くさくなるかもしれませんけれども、内部的にはそういう形をとらざるを得ないのかなというふうなイメージを持っております。ですので、うちの場合は、町長部局に行くかどうかというのは分かりませんけれども、もし仮にそういう形になった場合には、教育委員会の事務局が中に入って町長部局とつないでいく、そういう形をとらないと、多分、学校から直接あるいは公民館から直接その担当課へ声を掛けるということにはならないのかなと思っております。
【小川部会長】  今の世良委員の御説明を受けて、中原委員の方からまた何かございますか。
【中原委員】  いや、ありがとうございました。前回の部会の議論の中でも、学校教育との連携について、指導主事の配置であるとかそういったことのできるコーディネーター役を置くとか、そういうシステムを作っていかないといけないだろうという話があって、あえてお聞きしました。そうした方向で考えることが必要なのではないかと思います。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。では、亀井委員、どうぞ。
【亀井部会長代理】  部会長代理というのはあんまりしゃべっちゃいけないという立ち位置だと思うんですけれども、1つお聞きしたいのは、大きい自治体なら分かるんですが、小さな自治体で公平性・中立性を保つために例えば審議会に専門家を置くという場合に、その専門家の確保というのはどういうふうな形でやっておられますか。例えば奈良県とか京都府だと国の機関もあり、大学もあり、それぞれの専門家がたくさんいますから、すぐに埋まると思うんですけれども、例えば同じ京都府でも北側の山添さんのところではどんなことなのか、あるいは世良さんのところではどうなのか、ちょっとその辺を聞きたいと思います。
【小川部会長】  小さい自治体におけるそういう専門家の確保というのはどうなされているのかという御質問で、これは世良委員、鈴木委員、そして山添委員にお尋ねしたいと思いますけど、じゃ、まず世良委員、どうですか。
【世良委員】  失礼いたします。津和野町の場合は、6名、今、文化財保護審議会の委員さんがおられるんですけれども、本当にある程度研究をされておられる方というのは、西周の研究をされておられる方が1名おられます。それが審議会の会長になられておりますが、それからあと、樹木の関係、天然記念物とかそういった形で樹木医をやられている方が専門的な方がおられます。ほかは、ある程度歴史的なものに造詣の深いという町民の方、自分で研究をして、大学の先生とかではないんですね。いろいろな専門的な部分については、例えばお城の整備なんかは整備委員会を作っておりますので、そちらに石垣の専門家の方、大学の先生方を招いて、そこで研究、いろんな意見をしていただいて、その結果を文化財保護審議会に持っていくと、そういうような形をとっております。ですので、国とか県とかちょっと大きな部分については、そういった審議会で検討させていただいたものを改めて文化財保護審議会にかけると。それから、小さな町レベルの部分については、そのとき、そのときに必要な大学の先生とかに声を掛けて御意見を頂いて、それを審議会の中に持っていくという、そういう形をとっております。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 じゃ、鈴木委員、山添委員、何かございましたらよろしくお願いします。
【鈴木委員】  うちの方も地方自治法の補助執行で文化財の行政の大半は市長部局で担当しておりますが、うちも文化財審議委員会は教育委員会の方でやっておりますので、私も詳しくはないんですけど、中には、白河市だけではなくて大学の先生なんかも入っていますし、建築の先生なんかも入っておられて、白河市内だけでなくて仙台とか郡山だとか、そういうところの有識者にも入っていただいて、十分な専門的な、あるいは中立的な、そういう見解を頂戴しておりますので、いろんな意見を総合すると、ほとんど白河の文化財のいろんな提言、審議には支障は来してないと、こういうことだと思います。
【山添委員】  私どもの町につきましても、専門家の皆さん方の招聘ということについては特に問題なく進行してございます。先ほど御紹介をさせていただきました丹後ちりめんの街道の付け根にあります昭和初期の旧加悦町役場庁舎というのがあるんですけれども、この旧加悦町役場庁舎という庁舎の在り方につきましても、教育委員会、町長部局、さらには大学の先生などの知見を頂きながら議論を深めていくというスタイルをとっております。私どもが文化財保護行政を前に進めていきたいということを申し上げました際には、特に京都市内の大学を中心にして積極的な御協力を頂けているというのが現状でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。亀井委員の方から何か追加の御発言ございますか。
【亀井部会長代理】  企画調査会の方で、審議会の方に権限を持たせるのはいいんだけど、果たして全国津々浦々でそれだけの専門家を確保できるんだろうかという心配がちょっと出たんですね。現状でも確かにそういうことがあろうと思うんですけど、中には大学の先生もおられまして、「いや、実はいろんなところの委員をやっているんだけど、どこに行っても同じようなメンバーで構成されている」というようなことがありましたので、一つの自治体から見ると、確かにいろんな先生、近くにいるので結構ですけど、その先生にしてみれば、いろんなところから声が掛かる。大変うれしいことでしょうけれども、「なかなかちょっと頭の痛い問題である」というようなことを言っておられましたので、ちょっとお聞きした次第でございます。いずれも、今日御発表あるいは前回御発表された自治体の方々は文化財の優等生でありますので、大変結構なことだと思います。ありがとうございました。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかに何かございますか。なければ、時間もありますので、先を急がせていただきたいと思います。それでは、議題1はこの辺にして、次の議題、特別部会(案)の方に入っていきたいと思います。
 前回の会議におきまして、事務局の方に、この部会における議論の具体的なたたき台を基に議論を今日できるように準備をお願いしておりましたけれども、各委員の方には事前に送付されて、既に御覧になっているかと思いますが、今日またこの場で改めて事務局から特別部会のまとめ(案)について御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【矢野課長】  初中企画課長の矢野でございます。それでは、資料5、6を基に、今、座長から話のありました特別部会のまとめ(案)について御説明申し上げます。資料6をお開きいただきたいと思います。
 まず、1ページ目でございますが、「検討の背景」ということで、平成16年の中教審の地行部会、教育制度分科会等における議論、その後の議論をここに経緯として書かせていただいておりまして、今回の骨子となりました企画調査会の中間まとめを基に本特別部会が設置されたということを1ページで記載しております。
 また、2ページ目でございますが、2ページ目は2といたしまして「地方文化財行政の現状と課題」ということで記載させていただいておりまして、その(1)といたしまして、文化審議会企画調査会からのオーダーであります「文化財保護に関する事務を地方公共団体の選択によって首長の権限の下に置くことを可能とする」、そのことについてはどうかという意見を御紹介させていただいております。
 一番上の丸ですが、事務の所管の判断は地方公共団体に任せるべきであるということ。
 あるいはその次、活用なくして保存はない。活用と保存というのは一体であると。文化財の価値を住民に理解してもらわなければ守っていくこともできない。別々ではなくて一体的に考えるべきであるというような御意見。
 3番目としては、文化財の保存。保存ができなければ、やっぱり活用というものは始まらないのではないかと。保存ができる体制がとれるかという点が首長部局への移管する場合の鍵ではないかというような御意見。
 これが首長部局に移管する――おおむね首長部局に移管すべきではないという意見はなかったと承知しているところでございます。
 (2)、3ページをお開きいただきたいと思います。その首長部局に移管できるように選択制をとった場合において、文化財保護に関する事務を首長の権限の下に置く場合にどのような留意をすべきかということにつきまして、例えば、今御議論ありました地方文化財保護審議会の設置、あるいは専門的知見を持った職員を配置する、政治的中立性、継続性・安定性の確保策として地方文化財保護審議会や条例に基づく第三者機関による確認、そういったものを所管する際には置くべきではないか。
 あるいは、学校教育との連携と。今日も御意見ございましたが、指導主事の配置、コーディネーター役を果たせるような人材の確保、人事交流などの日常的な連携の構築といったような御指摘。
 あるいは、教育に役立ててほしいという思いで寄託・寄贈されている。ここには書いていませんが、例えば文化財の看板に何々教育委員会というようなものが書かれていると。市長部局に所管を移す際には関係者等に事前に理解を得ることが必要ではないかと。また、市民に周知することが必要ではないかということ。
 あるいは、以前は開発関係者と――これは主に埋蔵文化財の発掘調査のことでありますが、緊張関係があったけれども、開発行為との調整の歴史、かなり熟した関係ができているんじゃないかと。今では開発関係者にある程度の理解が得られており、埋蔵文化財の場合はそれほど心配ないのではないかというような御意見。
 これに、恐らく、今日頂いた御意見あるいは発表していただいた意見をこの中に溶け込ませることになろうかと思いますが、事務局としてのたたき台はそういうことにさせていただいております。
 4ページ目をお開きいただきたいと思います。「地方文化財行政の在り方について」ということで、ここに本部会の結論めいたことが書かれておりますが、3段目以下でございます。今回の教育委員会から市長部局に移管することを可能とするという背景として、ここに書かれておりますとおり、3段目でございます、地域の資源を活用して地方創生に取り組む機運などが高まっていると。地域に存在する文化財を積極的に活用した地域づくりが進められる中で、文化財を取り巻く社会状況も変化していると。また、近年、文化財に求められる役割がますます増大しているということにより、景観・まちづくりや観光など他の分野も視野に入れた総合的・一体的な取組の需要が急速に高まっていると。つまり、点線の文化財保護から面・空間的な文化財保護、まちづくりの一環としての文化財保護が求められていると、こういうことだと理解しておりますが、地方公共団体の選択によって文化財保護に関する事務を市長部局の下に置くことが可能となるような制度改正が求められていると。
 その次の段落では、文化財保護に関する事務については、引き続き教育行政部局が担当することを基本とはするけれども、社会状況の変化、地方公共団体からの声に鑑み、景観・まちづくり等の事務との総合的・一体的な事務の管理・執行を考慮し、各地方公共団体が文化財保護に関する事務をより一層充実するために必要かつ効果的である場合に、条例により首長が文化財保護に関する事務を担当することを選択できるような制度とすべきであると。
 ただし、その際には、文化財は国民の貴重な財産であり、一旦滅失、毀損すれば原状回復が不可能であるといった特性があることから、平成25年の文化審議会文化財分科会企画調査会報告で示された4つの要請を担保することを条件とすべきであるといったような内容にしているところでございます。
 資料5にも書かせていただいておりますが、以上でありますが、もう既に様々な角度から意見を頂いているところでございますが、仮に文化財保護に関する事務を首長部局が管理・執行することを可能とする制度改正ということを行うのであれば、中教審において議論されたことを踏まえて、更に留意すべき点としてどのような点があるか、突っ込んだ御意見を頂戴できればと考えています。
 以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、今、事務局の方から説明がありました本部会におけるまとめ(案)の内容について、皆さんから御意見を頂ければと思います。これまでの議論とも重複するかと思いますけれども、今までの議論を更にこの特別部会まとめ(案)の中にきちっと文言として書き込んでいく作業というのが第2の議題の趣旨ですので、これまでの発言とオーバーラップする点については全く構いませんので、改めて、このまとめ(案)にどういうふうな文言で書き込むかということも含めて御意見、御発言いただければと思います。
 それでは、どなたからでも構いません、御発言どうぞ、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。鈴木委員、何か発言したい様子ですが、いかがでしょうか。
【鈴木委員】  いえ、そんなことないです。
【小川部会長】  どうぞ。
【鈴木委員】  私は全くこの文言の整理に賛成です。ちょっとこれは語弊があるかもしれませんが、ともすれば、従来、教育委員会と知事部局・市長部局というのはいい意味での緊張関係にはあったのかもしれません。ともすれば、市長部局は政治的に走りがちだと、開発志向になりやすいと。どうやらこういう先入観、懸念があるやにも感じておりまして、教育委員会はまさしく専門的・中立的な行政を行うと。ちょっとそれはいかがなものかなというふうには思ってはいました。首長は選挙という洗礼を受けて、一定期間、行政を任されるわけですけど、それほど極端な人はいないのではないかと。総体的にバランス感覚のある方が首長にことが私は多いと思いますので、これによって文化財が毀損されるだとかいうことも、もちろん懸念はないわけではありませんが、それ以上に、今、担当課長から話がありましたように、むしろまちづくりですね、文化財を核にしたまちづくり、景観、歴史、文化、こういったものが我々地方自治体にとってとても必要な時期になってきているということからすれば、30年、40年前の知事部局・市長部局と教育委員会の在り方というものから、それは相当大きく状況が変わってきていると考えたときに、もちろん幾つかの懸念はあるとは思いますけど、私は市長部局・知事部局においても文化財行政をでき得るという体制にするのは当然のことであろうと思っております。どんな制度を作っても完璧なものはないわけでありますから、そこはですから、教育委員会と知事部局・市長部局との連携、大きい自治体は大きい自治体なりに問題はあるにせよ、これは連携でしかないと思います。一方が全て正しくて一方がそうでないということはあり得ないので、この時期ですね、こういう時期だからこそ、市長部局・知事部局でこの文化財行政、まちづくり、歴史、景観行政、地域振興の一環としてこの文化財を位置付けるという意味で、今回の法律の改正は私はまさしくタイムリーであると、こういうふうに思っております。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。岡田委員、どうぞ。
【岡田委員】  済みません、この中でなかなか議論にしづらいというか、ならなかったものの一つに、文化財の保全にはお金が掛かります。とても掛かります。それで、市場経済に任せていたのでは失われていってしまうものをどうやって保存するか。もう一つは、経済的な価値を生まないと保存できない。前回の奈良県知事や京都市長が非常に力説されていたことはそこにあると思うんですけれども、経済価値を生むためには、やはり活用がなければ保存はあり得ないと。それはすごく正しいと思うんですけれども、そこに任せておいたのでは失われていってしまうものをどう保存するかと。両方の視点から、やっぱり行政マンとしては予算をしっかり確保し、あるいは市民的理解を得て、そのための経費をどうやって捻出して、財源を捻出して文化財を守っていくか、あるいは活用していくかということを考えないといけないと思うんですね。その視点では、今までどこからも御意見もといいますか、お金の話は一切出てきていないんですけれども、とても大事だと思うんですね。文化庁にはもっと頑張っていただいて、しっかり予算をとっていただいて、やはり国が指定したものは国のお金を使いながら保存できるように、地方自治体の苦しい状況もやはり分かっていただきたいなと思いますので、その価値をなくさないための保存と活用と、市場経済に任せておいたのでは失われていってしまう文化財をどう保護していくのかという問題と、両方の視点から考えると、所管がどこにあるかということよりも、守れるためにはどこにあった方がいいかというようなことなのかなという気もいたしますので、どちらで見たらよりしっかりと財源の確保ができていくかということの視点も重要だと私は思っていまして、横浜市の場合も、文化行政を今、保存と、それから活用って分けてやっていますけれども、それは文化観光局が所管した方がしっかり市民的コンセンサスをとって税金を使っていけるものはそちらにと。教育委員会がしっかり持っていって、市場経済に任せておいたのでは失われていってしまうものは見ていくというようなことで、今、役割分担をしていますので、どちらかというのはやっぱり自治体の選択権にしっかり任せてほしいということと、もう一つは、その根本になる予算、財源確保をもっともっと国に頑張っていただきたいということはどこかに書いておいてほしいなと思います。
【小川部会長】  はい、そうですね。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。はい、荒井委員どうぞ。
【荒井委員】  市町村の方の御意見、よく分かりました。本当に同じような状況だなと思いました。その中で、まとめられる上でこの議論の中の論点というふうに思います点をちょっと整理して――整理できているかどうか分からないけど、申し上げたいと思います。
 1つ目の論点は、首長部局の利益相反性というか、利害対立をどうするのかという論点がございます。それは、埋蔵文化財のような開発と保存というので厳しく対立してきたもののように思いますが、明日香の住宅地開発で明日香立法ができた例がありますが、今おっしゃったように、そのような開発と保存、埋蔵文化財について利害が対立するような状況にはないように思います。首長部局に移っても、その利害の調整はほかの分野でも必ず利益相反性のようなものがしょっちゅう起こっております。それを克服するのは組織を分けるという手よりも、公開をして議論を、みんなに透明性を求めるという方が、今、主流になっていると思います。知らないところで組織対立をして勝手にするといったようなのは、古いパターンのように思います。どのような過程でそのような結論を首長が出したのかという政治責任は必ず問われますので、それをプロセスの公開性・透明性というのが文化財の保存・活用でも是非必要かというふうに思料いたします。
 
その中で、一部の人が極端な意見を言わないようにするには、プロセスの標準化といいますか、文化財の値打ちとか意味を市民の方に知ってもらう必要があろうかと思います。教育は、例えば教育委員会は、私立大学の学生は所管しておりませんし、公教育の部分だけなんですね。私立大学の学生に教えに行くのは知事部局が所管しております。そのような行政上の観点がありますので、むしろ市民の方が理解を深めていただくのは専門家の義務があるように思います。市民の常識的なサポートが何より必要かと思います。それはむしろ知事部局の方がやってきた分野でございますので、そのためには文化財の値打ちということを、各々の文化財の値打ちを専門家の人が言えないと、専門家が値打ちを言えないと誰が言うのかというぐらいの気位を持って説明してほしい。それと、それを常識化するというようなプロセスが必要かと思います。
2つ目の論点は、政治的中立性が失われるという論点。首長も政治家でありますので。ところが、政治的中立性は教育委員会だけで守れるのかというと、政治的中立性を守る仕組みはいろいろございますので、このように恐れられるほどのものはないように、透明性があれば政治的中立かどうかというのは分かる。過去の例で政治的中立が一番守れなかったのは、国が行った廃仏毀釈であります。あれでどれほど外国に貴重なものが流れたかというのは、その反省もないまま政治的中立と言われると、何か、国が言っておられるわけじゃないけれども、困ったもんだと思います。地方で政治的中立があると、文化財の政治的中立というか、それぞれが任されると、文化財の熱心な県とそうでない県が多少分かれても、動かせるものは文化財の熱心な県のところへ保存しておこうと、そういう構造が地方分権のメリットであります。それが起こりますので、国に任すよりは地方に任せた方がいいように、政治的中立が確保できるように思います
そこからもう一つの論点は、埋蔵文化財で保存の仕方というのが確立してないように、専門家に任せても、どういう観点で、例えば記録保存と現地保存するのかと。奈良県は埋蔵文化財ばかりだから工場も建てられないと、風評被害に遭っていますけれども、発掘はどんどんするようにと。先ほど予算がないというか、発掘の予算を確保して、もうみんな発掘文化財を悉皆調査してもいいぐらいだと、こういうふうに言っております。そのときの保存の仕方がみんな現地保存だったらもたないし、また、その必要性もないように思う。この15年間で現地保存したのは2つぐらいしかないんですね、奈良県みたいなところでも。記録保存というのはとても重要な保存の仕方でありますので、映像であれ、その出てきたものは必ず保存いたしますし、穴ぼこなんかは記録保存すると十分な保存になろうかというような印象がございます。記録保存するという意味をもう少し確立して、そのときの保存の標準化というのをどういうふうにするのか、例えば市町村の教育委員会に任せて、これはこうだと頑張る人が出ると現地保存一辺倒になるので、もう一つ、市町村の教育委員会と県の教育委員会と国のチェックと、重層的チェックがあった方がいいように思います。
そこからもう一つの論点は、保存とは何かという、専門家に任せておいたら保存できるんだ、そうではないと思いますね。専門家も専門でないこともあります。高松塚古墳は人災であると朝日新聞に出て、山﨑さんと対立した時期があったんだけど、本当に専門家でない人が行ってこうだと言ったら、これはひどかったということでありますけれども。だから、専門性とは何かという、専門家のバッジ付けていたら専門性があるのかって、そうじゃないと。専門性の吟味というのは是非とも必要で、専門性の程度というのを我々は知りたい、非専門家が知りたいところでありますので、その専門性を高めて保存するのは知恵の累積が要るように思います。それぞれ格闘して、どのように保存すればいいのかというのが要ると思います。そのものが保存されているのか、手付けず保存と、手を付けて保存と、2つあると思いますけど、法隆寺は原木は2割しかないので、世界遺産登録のときに当時のユネスコの問題になったと思いますが、2割だけを形を整えて木を差し込んで保存しているんだという主張が受け入れられなかったんですね、当時のユネスコは。やっと受け入れられて最初の世界遺産になったという経緯がありますので、手を付けて保存するという保存の仕方とか、保存の仕方は、割と日本はいろいろ朽ちるものが多いですので、随分発展していると思いますが、その保存の仕方を発達させるというのは随分大事かと。
 最後に、国への期待ということでございますけれども、先ほど横浜市がおっしゃられた保存の予算がやはりある程度要るかと思います。値打ちのあるものを活用して保存に回すという知恵も、PFIみたいな、要るんですけれども、奈良の社寺みたいに展覧会をどんどんして保存のケースを立派にするというのも一つですが、埋蔵文化財なんかは幾らお金掛けても値打ちはそんなにないわけであります。しかし、やっぱり掘らなきゃいけないというので、やっぱり予算が要ると。その保存の予算はやはりある程度ずっと確保しないと、日本はこれだけの積み重ねた国ですので、できないと。
 予算とともに、保存の人材養成も是非お願いしたいと思います。人材養成のプログラムがはっきりしてない専門性の分野の人材養成をどのようにするのかということを、是非この際、確立していただきたい。専門家という方の、小さい専門家から大専門家になってほしい。小専門家から大専門家に成長してほしいと。世界のどんな学会に行っても一家言を述べられるような専門家をたくさん育ててほしいなと。それはこれだけフィールドがありますので、育てようと思うと育てられると思いますので、小さな分野で固まらないで、もっと他流試合をしたり、武者修行に行ったり、フィールドをたくさん経験したりという人材養成のプログラムを作っていただきたいと思います。
 それから、保存の在り方自身、先ほど申し上げましたが、技術とか、それと保存の哲学とか、活用と結び付ける、値打ちを表現できる理念とか仕組みというのは是非とも日本では必要だと思いますので、その保存の哲学、在り方の発達というのを是非心掛けて、とりわけ標準化ということがあると、市町村の人材がなくても、このようにすれば保存ということに一応なっているんだよと、こういうことができるようになればと思います。
 たくさん申し上げて恐縮でございましたが、いずれにしても、文化財保存行政には抜本的改善が必要かと思います。
【小川部会長】  ありがとうございました。文化財保護行政に関わる重要な論点についての指摘かと思います。この特別部会のまとめ(案)の基本は、文化財保護に関わる事務を首長部局に移管ことに関るテーマですので、今、荒井委員から出た全てをこのまとめ(案)に組み入れるというのは、恐らくなかなかちょっと難しい面もあると思いますけど、可能な限り本部会の趣旨に沿う形でもって、今のような御発言の中身は反映させていきたいと思っています。ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。
【中原委員】  よろしいでしょうか。
【小川部会長】  どうぞ。中原委員、どうぞ。
【中原委員】  先ほど荒井委員が言われました埋蔵文化財のことに関しては、多分、文化庁の方で調査の標準化であるとかそういう取組を幾つもされていると思いますので、それはそちらの方でまた議論がなされるのではないかなと思います。私自身も、いささか調査が詳細に入り込み過ぎる場合は、部下をたしなめたりすることもあるので、そこら辺のところはきちんとやっていただけたらと思います。
 今、荒井委員の方からも、市民の方の理解を深めるということの重要性と、また、岡田委員の方からも、市民的な理解をもってコンセンサスをというお話がありました。これはすごく重要な視点だろうと私は思っております。というのは、ここでは地方文化財行政の在り方について議論しているわけですが、文化財というのはそもそも誰のものなのかということ。もちろん、お寺さんであるとか、建造物の所有者の方であるとか、そういう所有者の方はいらっしゃるわけですけれども、文化財というのは広く市民に公開活用して理解を深めていくということが必要なのではないかと思っています。
お時間とって誠に恐縮なんですけれども、今日、「よどえまるごと道草日和」という資料を配らせていただきました。これは私が前職、国史跡のむきばんだ史跡公園にいたときに始めて、今年で5年目になる取組です。長くなりますので経緯等は御説明いたしませんが、一つには、それぞれの小さなプログラム、活用プログラムが、せいぜい定員10人とかで行うわけなんですけれども、その下に小さな写真が付いております。これがこのプログラムをやる場合の催行者あるいは支配人と呼んだりしておりますが、こういう一般市民の方たちが文化財のハードルを下げていろんな取組をやっていただく。そういう市民の方たちが対応できる自分の範囲というのが10人とか20人とか、そのぐらいだったらということでいろんな活用に取り組んでいただける。こういう市民の方の理解ということが非常に重要なので、文化財を実際に活用していく主役としての市民ということはどこかに盛り込んでいただきたいなという気がしております。
 あともう一つ、見ていただくと分かりますように、内容が極めて多彩です。これが多分、私のような文化財専門職員がやると、かなりガチガチの内容になるんですが、それが、例えば遺跡で、朝、ヨガをするとか、あるいは古民家でフラメンコギターのミニコンサートをやるとか、こういう発想というのはむしろ一般市民の方が、門戸を開いてあげればいろんなアイデアが出てくるような気がいたします。そして、こういうようなものを全部見ますと、これは文化財の一方的な情報発信ではなくて、まちづくりとかまちおこしとかそのものだと思っております。紹介が遅れましたけれども、淀江というのは私どもの史跡公園がある町なんですけれども、米子市に合併する以前は史跡と名水の町ということで、多分、津和野町さんであるとか、あるいは与謝野町の合併前の旧加悦町さんであるとかと同じく、文化財にすごく力を入れていた町でございます。そういうところがまちづくりをするのにこういう取組をやっていくということが大きな目玉になっていくのではないかなと思っていますが、これは実首長部局の補助金を頂いています。去年までは実は文化庁の補助金を頂いていたんですけれども、今年から、この表紙の一番左下の方に、小さくて申し訳ないですが、「響かせようトットリズム」という小さなロゴが入っております。これがまさしく首長部局の方のまちづくりの補助金を使ってやっているというところでございまして、まちづくり・人づくりということになると首長部局との連携というのが今後ますます重要になってくるのではないかなと思っておるところです。お時間とって申し訳ございませんでした。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかに。よろしいでしょうか。亀井委員、どうぞ。
【亀井部会長代理】  企画調査会の方でもいろいろな観点から議論しているんですが、事行政の在り方についてですが、実を言うと、人材の育成というのは書いてありますけれども、文化財というのは御承知のように個別の文化財からだんだん集団的な文化財、さらに、それを守るために歴史文化基本構想、あるいはそれを計画に上げようということで、時代とともに大いに発展しているんですね。したがって、その時代に即した人材の確保、人材の育成、知事も言われましたけど、やっぱり現地で中心になってやっていく方、官にいようが、民にいようが、そういう方の育成というのが非常に大事になってきていると思います。特に、どこの部局にいようと、専門家の育成や確保というのが焦眉の課題になってくるのではないかと思っております。文化財が広がれば広がるほど、あるいは地域と密着すればするほど、そういう人材の確保あるいは育成というのが大事になってきますので、ここにも少しは書いてありますけれども、もう少し強調した形で、できれば文化財専門職としての位置付けの主事とか、これ、私、前から言っているんですけど、あるいは文化財大学校みたいな行政官の年間を通しての育成、そういう手だてを文化庁さんの方で考えていただければいいのかなと。そこまで書き込む必要はないのかもしれませんけど、少しその辺をお考えいただいて、文化財行政をどこに移管しようが、より強固になれるように、また新しい文化庁に期待するところはそういうところだと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
【小川部会長】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。世良委員、どうぞ。
【世良委員】  意見ではないんですが、ここのまとめを読んでいてちょっと違和感を感じたのが1点あったので、どうかなということで言ってみたいと思いますが、4ページの下から4行目のところに、この分科会報告で示された「4つの要請を担保することを条件とするべきである」と示されておるんですけど、それはこの隣の3ページの(2)で書いてある4つのことではないかと思うんですが、一番下の部分というのは要請かなと思ってですね。ここは心配ないよということが一筆書いてあるだけで、実はここのところは心配は今ないけれども、やっぱり重要な部分だろうと私は思っていて、油断はしちゃならんよというところを書き込んでおく必要があるのかなと思いました。
【小川部会長】  2ページと3ページのところは意見の列記になっているので、この辺は、ただ単にそれぞれの意見の列記だけでは終わらせないように……。
【矢野課長】  この4つの要請は、2ページの下の方の部分です。
【小川部会長】  あ、2ページの下ですね。
【矢野課長】  はい。
【小川部会長】 はい。今の世良委員の御発言の趣旨は分かりますので、その辺はまとめのところで少し工夫していきたいと思っています。
【亀井部会長代理】  繰り返しになるけど、ここに4つの要請とはこういうことだと、こっちに列記すればいいんじゃないですかね。
【小川部会長】  はい、そうですね。はい、分かりました。
 ほかによろしいでしょうか。
【馬場委員】  先ほどもちょっと出ましたけど、保護するには財源が本当に掛かります。先ほどから岡田委員からもございましたように、財源の確保あるいは人材の育成、これらはやはり私もどこかにきちんと入れていただきたいなと思っているところです。
【小川部会長】  よろしいでしょうか。荒井委員、どうぞ。
【荒井委員】  財源の確保で、国なり県、市町村の直接的な補助金だけじゃなしに、活用から財源にできないかという、例えば文化財を展示しますね。そのときの上がりの一部を、出国税みたいなんだけど、文化財保護基金に積み上げると。それをこの地域の文化財保存に回すといったようなことはアイデアとしてあるんだけれども、なかなか社寺はそういうことをしてくれないんだけど、京都とか奈良は展覧会多いんだけど、それをできるようにしてもらうと、あるいは地方でもいろいろな展示が保存につながるといったような仕組みができないかなと、こう、ちょっと発想だけだけど、思っているんですけど、また知恵者の皆様方の知恵をめぐらしていただければという要請であります。
【小川部会長】  人材の問題、育成の問題とか予算の話が、今、多くの委員の方から出てきていますので、事務局の方から何かその辺についての御回答とかお考えがあれば御発言いただければと思うんですが。
【髙橋伝統文化課長】  文化庁としても予算の確保は毎年努めておるところなんですけれども、必ずしも皆様の御期待に沿うような形にはなってないところです。ただ、来年度の概算要求ではこれまでとは違って大幅な拡充の要求をしておりますので、我々としては全力でその確保を目指していくということと、あと、国庫補助だけではなくて、実は地方交付税でかなり措置されているところがございまして、我々としては、各自治体の皆様にそれを是非とも文化財に――文化財の経費として一応積んであるわけですけれども、交付税ですので使途は自治体に委ねられているというところはございますが、それを文化財の方に是非とも使っていただきたいと思っております。国庫補助の方は国庫の予算確保に向けて努力はしますけれども、是非とも既に皆様の御判断で使える部分については文化財の方で使っていただけるように、まずはそれぞれの自治体において今どういう状況になっているかというところも含めて御確認いただいて、その上で国と皆様方と一緒になって財源の確保・充実に努めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【小川部会長】 荒井委員、どうぞ。
【荒井委員】  済みません、じゃあ一言だけ。失われる文化財で一番心配なのは無形文化財ですね。これは文化と直結しているので、知らない間になくなっているというのをどのように保存するか。これは小さな予算でも、イベントをしたり催しをすることで維持できる面がありますので、物の掘るのは物すごく金要りますけど、無形は多少の今の交付税ででも保存ができると。それをはやすというか、そういうものをできるんだよ、できるんだよというふうに国の方から発信してもらうと、地方に弾みがつくように思います。地方は、実行は地方でしろよと、こういうふうに言っていただいても結構でございますけれども、無形にちょっと着目してもらえたらと。文化財の大きな要素であろうかと思います。
【小川部会長】  鈴木委員、どうぞ。
【鈴木委員】  今、全国市長会の中で地方財政研究会というのを作っていて、税財政の在り方について検討を加えているわけですけど、そういう中でも、今、文化庁に対して予算の確保という要求はもちろん必要だと思いますが、私ども、もう一回やっぱり地方交付税の中身を勉強する必要があるなというふうにつくづく思うんですね。これは一般財源ですから、どう使おうとそれはいいんですけど、でも、やっぱり交付税上は単位費用とか補正係数でしかるべきものは積み込んであるわけですよね。そこのところをもう一度原点に立ち返る必要があると。どうしても地方は国の方にお願い、お願いということなんですけど、相当やっぱり地方交付税にも入っていることは間違いないですね。ただ、財政当局からすると、文化財って、どうしてもやっぱり建設とか産業の方にお金を回しがちであることは間違いないので、もう一度、我々知事部局・市長部局・町村長部局で資金の使い方を精査する必要があるなということも含めた上で、国の方にきちっと要求すべきは要求するということの姿勢もまた必要であろうということを、これは自分で最近はよく考えることであります。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。はい、山添委員、どうぞ。
【山添委員】  ただいま議論しております特別部会のまとめということなんですけれども、全体的な流れ、骨子については賛成ということでございます。その中でも特に私も町長として就任をして以降、特に流れを感じておりますのが、4ページ目の3段落目でございます。地域資源を活用しながら地方創生に取り組む機運ということなんですけれども、私たちといたしましても、地方創生を取り組むに当たって、住民の皆さん方、さらには教育部局の皆様方をはじめ、大変多くの議論を積み重ねてきているわけなんですけれども、この議論を聞いておりますと、確実に流れといたしましてはないものねだりではなく、あるもの探しということにかなり柱が置かれているのではないかと思います。そういった中で地域が脈々と継承してきた歴史であったり、伝統文化、さらにはそれに関する文化財に対する期待、さらには果たすべき役割というものは、これから年々高いものになっていくのではないかというように考えております。そうした中で、地方創生、地域づくりの重要性が、更にこの文化財行政というのは高まりを見せるということを、私自身もこの間の職務の中で体感しているところでございますので、その点につきましては強く私の方も申し上げておきたいと思います。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。岡田委員、どうぞ。
【岡田委員】  お金のことを言い始めたので、責任持って最後まで言うのですけれども、交付税の仕組みなんて分かって言っていることなんですが、そうではなくて、やっぱり文化は国の品格を決めるわけですから、文化庁の一定の予算だとか制度ですとか地方自治体への物申す権限だとかというのがやっぱり一定あることが、これからの日本の国の品格を決めていくんだと思うんですね。そういう意味では、やはりもっとしっかり予算も獲得してほしいし、それが日本のこれからの品格として必要なんだということをもっともっと言っていってほしいという意味も含めて発言をさせていただきました。何か国のいろいろな審議会をまとめるときとか、あるいは意見をまとめるときには、是非しっかりとした財源確保の上に地方自治体を引っ張っていくというような機運で書いてほしいなという思いがありますので、そこはちょっと交付税の話とは別に受け取ってほしいなと思います。
【小川部会長】  ありがとうございます。小西委員、どうぞ。
【小西委員】  今回このような会議に初めて参加させていただきまして、大変勉強になりました。本当に貴重な機会を頂戴しましたことを改めて御礼申し上げたいと思います。
 今回、各地方で取り組んでいらっしゃる文化財保護と活用に対し、大きな課題があることが改めて認識できました。今後、各地方文化財の保護と活用の両方を発展させるためには、今回の審議結果は良い方向だと思います。私自身は現在公益財団の理事長を務めていますが、民間企業出身ですので、企業目線かもしれませんが、方向性は示しても実践されたのかどうか、そして結果に繋がったのかどうかを確認すること。そして、良い結果が出たら横展開でさらに大きな結果に繋げていくことが大切だと思っています。今回の審議案の方向性が実践されると、恐らく各地域でさらに素晴らしい成果が出てくるのではないかと思いますので、そういったことを是非成功事例として発信していただきたいと思います。そして、あの地域が成功しているんだったら、うちもやってみようというような機運を全国に作っていっていただきたいと思います。
【小川部会長】  確かに法制度後のフォローアップの話は、この部会でそういう議論は余り今までなかったので、重要な視点かと思います。ありがとうございます。
 もう時間も大分迫っていますけれども、もしもなければこの辺でよろしいでしょうか。今日は全ての委員の方に御発言いただきまして、先ほど事務局から御説明のあった資料6の特別部会のまとめ(案)、ほぼこの内容でいいのではないかというふうな御意見を多く頂きました。ただ、基本的にはこの方向でいいが、更にこういう視点で加筆していただければ、また、こういうふうな点についてはもう少し新たに付け加えてほしいとかというような意見もたくさん頂きましたので、今日頂いた意見の中身をどういう形で審議のまとめに反映させていくかは、事務局の方と相談しながら作業を進めていきたいと思います。審議まとめをどういうふうに加筆・修正していくかは、部会長の私の方に御一任いただければと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【小川部会長】  はい、ありがとうございます。そういう形で進めさせていただきたいと思いますけれども、恐らく、この審議まとめ(案)の内容を加筆・修正する作業の段階で、時によっては委員の方にフィードバックして再度御意見を伺うとか、そういうふうな過程もあるかと思いますので、そういう場合にはまた御協力いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 今日の御意見を踏まえた修正案をまとめて、メール等々で委員の方にもう一度、こういう案でよろしいかという最終的な御了解を得たいと思います。で、皆さんの方から御了解を頂きましたら、この審議まとめを中教審の総会、これは11月ですかね、11月に中教審の総会が予定されておりますので、その中教審の総会においてもこの審議まとめについては御報告をさせていただいて、中教審としての了承を得たいと思っております。よろしくお願いいたします。
 それでは、今日の予定は全て終了しましたので、この辺で今日の会議は終わりたいと思いますけれども、事務局の方から御連絡、御説明があれば、よろしくお願いいたします。
【松淵調整官】  委員の皆様におかれましては、集中的な審議に御協力いただき、誠にありがとうございました。この審議のまとめ(案)につきましては、部会長に御一任された後、各都道府県等にも送付し、周知を図ることとしています。また、予備開催日として11月10日(金曜日)を御案内しておりましたが、本日の会議におきまして審議のまとめ(案)につきまして御了承を頂きましたために、その11月10日は開催いたしません。
 また、資料につきましては、机上に残していただければ、後ほどお手元に郵送させていただきます。
 以上です。
【小川部会長】  それでは、これで今日の会議を終わりたいと思います。ありがとうございました。
―― 了 ――

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初等中等教育局初等中等教育企画課教育委員会係

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