教育振興基本計画部会(第8期~)(関係団体ヒアリング(第3回)) 議事録

1.日時

平成29年12月13日(水曜日) 15時00分~16時40分

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 関係団体ヒアリング

4.出席者

委員

(教育振興基本計画部会委員)
 北山部会長,川端委員,戸ヶ﨑委員,樋口委員,百瀨委員,山内委員
(中央教育審議会総会委員)
 篠原委員

文部科学省

 瀧本大臣官房審議官,塩見文部科学戦略官,矢野初等中等教育企画課長,堀野高等教育企画課高等教育政策室長,三浦大学振興課長,山路専門教育課長補佐,角田私学行政課長,廣野専修学校教育振興室長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐,他

5.議事録

【北山部会長】
 ただいまから,第3期教育振興基本計画の策定に向けた第3回のヒアリングを開催させていただきます。
 本日は,お忙しいところお集まりいただき,誠にありがとうございます。今回のヒアリングにつきましても,関係団体の方々から御意見を伺うことができる大変貴重な機会でもありますので,中央教育審議会の総会委員にもお声掛けをさせていただいております。間もなく来られると思いますが,総会からは篠原委員に御出席いただく予定になっております。
 御案内かと思いますが,この第3期教育振興基本計画の策定につきましては,去る9月19日の第17回計画部会におきまして,「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」を取りまとめ,9月28日の第113回総会において,報告いたしました。そのときの資料を,資料3‐1から3‐3として配布しております。
 また,今後,答申を取りまとめるに当たって参考にすべく,10月17日に13団体,11月27日には6団体からヒアリングをさせていただいております。
 本日は,前回に引き続き,3回目のヒアリングとして,関係団体の方から御意見を頂戴します。
 それでは,議事に入ります。
 まず,タイムスケジュールについて,事務局から御説明をお願いするとともに,配付資料の確認もお願いしたいと思います。

【内田教育改革推進室長】
 タイムスケジュールですが,まず資料1を御覧ください。本日の日程を記しておりますが,本日は,合計7団体から,それぞれ8分程度で御意見を賜りたいと思っております。2ないし3団体を1グループとさせていただきまして,それぞれ8分程度御意見を賜りました後に,10分から15分程度の意見交換をいただければと思います。合計三つのグループに分けてヒアリングを行っていただく予定としておりまして,終了が16時40分前後を予定してございます。
 この資料1の下に,既に実施済みのヒアリング団体のリストも掲載してございますので,御参考にしていただければと思います。
 次に,配付資料の確認ですが,資料は,資料1,2‐1と2‐2,3‐1から3‐3と,資料4,更に参考資料となってございます。また,端末に関係資料も入れてございます。資料などに不備がございましたら,お知らせいただければと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 日本私立大学連盟から松本教授,日本私立中学高等学校連合会から吉田会長にお越しいただいております。今,事務局から説明がありましたように,8分程度でお願いできればと思います。
 それでは,まず,日本私立大学連盟の松本教授,よろしくお願いします。

【松本氏】
 日本私立大学連盟の松本でございます。第3期教育振興基本計画の策定に向けた「審議経過報告」が取りまとめられましたことに敬意を表するとともに,改善が必要だと思われる点につきましては,10月16日に意見具申をいたしております。意見は細部にわたっておりますので,本日は,概要のみ述べさせていただきたいと思います。
 全体を通じての意見として,3点を指摘しております。
 まず,今後の教育政策に関する基本的な方針に基づく「目標」の「測定指標」ということでございますが,この基本的な方針の最後の項目として,教育政策推進のための基盤を整備することが加えられ,私立学校の振興の重要性に言及されていることは高く評価したいと思っております。
 しかし,基本的な方針に基づく21に及ぶ「目標」の「測定指標」につきましては,今後更に再考していただくことを希望しております。測定を確実に行うことができ,数値化が容易にできる指標を選び,かつ,年度ごとの目標値を明記して,フォローアップを行いやすくする工夫が必要であろうと思われます。
 次に,若干の文言についての意見でございます。
 教育全般をめぐる認識として,今後もグローバル化の加速が予見されておりますが,英米の政策判断の変化とともに,世界全体でグローバル化の停滞感が顕著になってきたことは否めません。時代の最新の変化を精緻に分析して,現実を踏まえた認識を示すことが必要だと思われます。
 また,本報告において「国際化」と「グローバル化」という言葉が,ほぼ同義語として使われておりますが,本質的な意味は大きく異なっておりますので,学術的知見を踏まえた記述が求められると考えます。
 最後に,産業界への要望が記されていないという問題がございます。教育の問題は産業界を筆頭に社会全体の問題であるという認識のもと,第3期教育振興基本計画には,産業界への要望を具体的に盛り込むべきであると考えております。
 さて,全体論を離れまして,基本的な方針に関する具体的な意見を記載の順を追って申し上げます。
 1番目が,「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」についてです。
 「目標(4)問題発見・解決能力の修得」に関して,全教育課程に対してアクティブ・ラーニング推進の必要性が説かれており,その「測定指標候補」として,「大学の授業が能動的な学修を促す形態になっている割合の増加」が挙げられています。
 しかし,知識・技能を確実に修得させながらアクティブ・ラーニングを行うためには,教員の準備時間,学生・生徒・児童の学修時間の大幅な増加と工夫が必要となります。この要件が満たされない形だけの実施率や指標となることがないように注意していただきたいと思っております。
 また,「学生本位の視点に立った教育の実現」において,ST比の改善が提言されています。私立大学にとっては,これは経営的な問題でもあります。私立大学は,公費助成が極めて少ない中で,学生に幅広く高度な学びの機会を与えるため努力をしております。私立大学の実情を踏まえ,学生の視点に立った測定指標が必要であると考えます。
 さらに,「目標(5)社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成」に関しては,専門職大学,短期大学についての記載がありますが,新たな高等教育機関が従来の教育機関と比べて,どのような特質を持つものであるかの説明が不足しているように見受けられます。これらを含めて,今後の高等教育制度の全体像を具体的に提示することが必要であると思われます。
 2番目でございます。「社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成する」というところに移ります。
 この基本的な方針において,「博士離れ」の改善が提言されていますが,産業界への要望として,有能な博士号取得者を積極的に雇用する旨を公表し,また,これを実行すべきことを盛り込む必要があるのではないかと考えます。
 さらに,超スマート社会においては,全学問分野の枠を超えた協働の必要性が説かれているにも関わらず,工学系のみに重点を置いた文言があるのは,多少疑問が残るところでございます。
 「目標(7)グローバルに活躍する人材の育成」に関しては,「測定指標候補」として,「短期留学の成果を活(い)かしたグローバルに活躍する人材の育成」が挙げられていますが,短期留学に限定することには妥当性がないのではないでしょうか。
 さらに,「英語をはじめとした外国語教育の強化」については,英語専門教員に対して,より高度な英語力を求めることも大切ではないかと思われます。
 3番目の「生涯学び,活躍できる環境を整える」につきまして,「目標(10)人生100年時代を見据えた生涯学習の推進」に関して,「地域の課題解決を主体的に担うことができる力を身に付けるための教育」が強調されておりますが,産業界が地域で雇用創出の努力をすべきことを盛り込む必要があると思います。
 また,「高齢者等の生涯学習の推進」についても,産業界にリカレント教育を受けた有能な高齢者を雇用する姿勢を要請するなど,特に産業界を対象とした提言が必要であると思っております。
 「目標(12)職業に必要な知識なスキルを生涯を通じて身に付けるための社会人の学び直しの推進」ということがございます。その「測定指標候補」として,「大学・専門学校等での社会人受講者数を100万人にする」ことが挙げられていますが,現状から見て,実現性が低いのではないでしょうか。100万人という数値目標の根拠が不明であるということを指摘させていただきたいと思います。
 5番目のところで,「教育政策推進のための基盤を整備する」について申し上げます。
 基本的な方針において,国公私の設置者別の役割分担の在り方や,国公私の設置者の枠を超えた連携・統合の可能性について検討を行うことの必要性が記述されておりますが,具体的な説明がございません。今後の方向性を示すべきだと考えます。
 さらに,高等教育のユニバーサル・アクセスを進めることに関して,「障害のある学生」と「社会人」を一くくりにした議論が見られます。これは不適切ではないでしょうか。大学が持つべき機能との関連で,別々に議論すべきものと思われます。
 さらに,「目標(16)新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導体制の整備等」の項目では,これからの学校教育を担う教員の資質・能力の向上についての記載がありますが,教員免許が現在の要件で十分かどうかの検討をしていただきたいと存じます。
 最後になります。「目標(18)安全・安心で質の高い教育研究環境の整備」に関しては,「公教育の大きな部分を担っている私立学校の重要性に鑑み,その基盤としての教育研究環境の整備を推進する」とされ,かつ,その「基盤的経費等の公財政支援その他の施策の充実・推進を図る」ことが述べられています。その一方で,「測定指標候補」として「私立学校の寄附文化の醸成」が挙げられています。これは,あたかも,私立学校は公財政支援よりも,寄附金によって運営されるべきと主張されているように見えます。私立大学は,これまで国立大学に比較して公財政支出が極度に低いため,その是正を要求してまいりました。現状の改善が図られるよう,この目標については再考されるべきであります。また,寄附文化を醸成する必要性は,国公立大学法人にも言い得ることでありますので,特に改善をお願いいたしたいと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 意見交換は,両団体からお話をお伺いした後に行いたいと思います。
 それでは続きまして,日本私立中学高等学校連合会の吉田会長,よろしくお願いします。

【吉田氏】
 日本私立中学高等学校連合会の吉田でございます。よろしくお願いします。
 今回,第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過が発表されまして,私ども日本私立中学高等学校連合会といたしましても,様々な機会に検討し,意見書は既に提出したところでございます。そういった中で,教育振興基本計画というもの自体が,1期,2期と,どれほどの成果を上げたのかについて明らかにされていません。今回の3‐1の概要で見ましても,第1部の2に教育をめぐる現状と課題の中で,成果として初等中等教育段階における世界トップレベルの学力の維持,学力の底上げ,大学における三つの方針の策定,公表等が書かれており,その一方で,課題として,PISAにおける読解力の低下や若者の自己肯定感が諸外国と比べて低いこと等が挙げられ,また,社会の現状や2030年以降の変化等を踏まえ,取り組むべき課題として,急速な技術革新やグローバル化の進展と国際的な地位の低下というものが挙げられております。
 そうした中で,私どもとしましては,この1期,2期の計画について,実際にどこまで成果が上がっているのか,そして,成果が上がっていないとすれば,どうしてなのかについて,しっかりとした検証がなされないと,第3期計画を作っても,また絵に描いた餅になるのではないかということを危惧しているところでございます。
 具体的な施策の中で,まず,審議経過の29ページにあります私立学校の振興につきましては,決定的に重要であるということが述べられ,私学助成の基盤的経費としての基本性格を踏まえた上で支援を行いつつ,めり張りを付けることが重要であるとされたことに対しては,感謝しているところでございます。私ども私立学校の存在をしっかりと御理解いただきまして,その拡充策を具体的に書いていただければ,更に良いと思います。ただ,その後の「また」以下の文言で,私どもが,一番危惧しているところでございますが,「寄附金収入その他の民間資金を自主的・積極的に調達するための環境の整備や,各学校法人が,経営環境の厳しい中,経営状況を的確に分析し,自主的な早期の経営判断を行うよう必要な支援を実施するなど,私立学校の教育研究環境の整備に向けた取組を推進することが重要である」とされていますが,あたかも寄附によって自分たちで賄うべきとも受け取れる標記になっております。68ページにも税制面から寄付の促進について触れてございました。特に高等学校以下の法人では,日本という寄附文化の非常に薄い社会において,寄附に頼るということは,現状においては不可能でございます。やはり各私立学校で良い教育をするためにはしっかりとした助成をしていただき,経営の安定を図るべきではないかと思います。
 そして,今,日本の教員の働き方改革等について議論がされております。27ページにも,「日本の教員は,教科の指導や生徒指導,部活動などを一体的に行っており,その教育方法は国際的にも高く評価されているが,負担も大きいことが指摘されている」と述べられていますが,正におっしゃるとおりでございます。ただ,こうした中で,現職の教員やこれから教員になりたいという人たちを見ておりましても,皆生徒と接したい,生徒とともに成長したい,そういう思いを抱いております。ところが,家庭の責任というもの全てが学校に押し付けられてきていることから,特に公立学校等では,先生が生徒と接することよりも,保護者への対応などに追われており,教員は非常に厳しい状況にあるのではないでしょうか。今回の教育振興基本計画の中で,教員の定数増等によって人を増やしていただき,子供たちが先生と一緒に向上できる,そういう環境作りが一番大事ではないかと考えております。
 また,47ページ以降で,先ほどのグローバル化の進展に合わせまして,英語をはじめとした外国語教育の強化が挙げられております。大学入学者選抜において,平成32年度から英語4技能を評価するため,民間の資格検定試験を活用することが提案されております。私どもとしては,これには大変賛成でございまして,既に今,多くの大学で入学試験にこの4技能の検定試験を採用しているのが事実でございます。しかしながら,今回の高大接続改革の中では,こういった検定資格の有効期限について,生涯資格であったり2年間有効という形があるにもかかわらず,高校3年次に2回指定したときだけの受検結果しか使えないこととされており,一歩間違えると,帰国生等で既に英検1級を持っている子や,TOEFLやIELTSでハイスコアを持っている子たちも,それが高校3年次にもう一度受けなくてはいけないことになり,それこそ負担になるのではないでしょうか。そのようなことから,国として,資格検定というものをしっかりと理解した上で,英語教育の強化伸長に努めていただければと願っているところでございます。
 そして,何と言いましても,今大きな問題は,ICTの問題でございます。65ページ以下に出ておりましたが,ここにおいて教員のICT活用や学習用のコンピューターを三クラスに一クラス分の整備や,LANの配備などが目標として挙げられています。以前言われておりました義務教育段階での一人1台コンピューター整備という話は一体どこにいったのでしょうか。今,3.6人に1台を目指すということを言っていたら,2030年以降の超スマート社会に本当に追い付けるのでしょうか。超スマート社会に対応できる人材の育成を我々ができるのでしょうか。そしてまた,教員も,しっかりとこのICT環境に合った教育をするだけの資質の向上が求められ,さらには,校務等にICTを活用していくことも考えられるわけですので,ICT環境の整備については,しっかりと行われるよう教育振興基本計画の中でも述べていただきたいと願っているところでございます。
 そして,私どもが,やはり何と申しましても心配しておりますのは,こういった振興基本計画を作るに当たって,今後5年間の教育政策の目標と施策群が発表されているわけですが,この目標を実現するために必要となる施策群をより具体的な形で整理する必要があるということでございます。私どもにとりまして,初等中等教育は,広く子供たちに将来社会で生きていくための基礎的な知識や思考力,判断力を育むために重要な役割を担っております。そして,公立中高一貫教育校の生徒と同じ立場にいる子供たちの学びの保障の観点からも,公的支援がおろそかにされてはなりません。現在,私学助成とともに就学支援金等が行われておりますが,公私間で保護者の経済的負担の格差は解消されておらず,学校運営の柱である私学助成の拡充をしっかりとしていただくことは,絶対に必要であると思います。それとともに,今回の基本計画が3期目として実行できるためには,しっかりとした財源が確保され,各施策が確実に実施されるよう,具体的な予算措置の達成目標も含めて,工程表の形で示していただけることを強く望むところでございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それではここで一旦時間を取り,委員の皆さんとの意見交換,質疑応答に入りたいと思います。
 最初に私から一言申し上げますと,御存じかとは思いますが,中央教育審議会では,高等教育の将来構想や,教員の働き方改革についての検討が,それぞれ別の部会で進められております。また,政府主導で,幼児教育や高等教育などの財源に関係する議論も進められておりますので,本部会では,それらの動きを踏まえつつ,随時,計画を加筆,修正していくこととしています。特に松本教授がおっしゃった中で,幾つかの点が,高等教育の将来構想とも大きく関連していたかと思いますので,まずその点を御理解いただければと思います。
 では,委員の皆さん,いかがでしょうか。

【山内委員】
 すみません,吉田先生にお伺いしたことがございまして,ICT環境のお話でございます。
 この65ページに書いてある「私立学校についても,国公立学校の状況を勘案しつつ,ICT環境整備を推進する」という文章ですが,これは,私は,読ませていただいたときに,御意見書には私立学校が遅れているかのようなという書き方をされているのですが,余りそういう認識は持っておりませんで,もちろん実態として私立学校は非常に進んでいるところがたくさんあるということもありますし,一番大きな問題は,実はICTが重要であるということは間違いないですし,財政的にも私立学校に行ったから不利益を被るということはあるべきではありませんし,それは本当にそうなのですが,教育の経営の自立性があると思います。つまり,ICTが重要なのだけれど,どういうふうに入れていくかというのは,恐らくそれぞれの学校のポリシーによって結構違うのではないかと思います。だから,三クラスに一クラス分というのは,これはもともと別途開催されている学校におけるICT環境整備の在り方に関する有識者会議のものを引っ張ってきているのだと思うのですが,これは要するに,最低基準なので,ここから積み上げて,一人一台いく学校もあると思いますし,逆に,これはこれでいいのだけれど,別途,伸びる学生にはプロフェッショナルな環境や人脈をそろえて,特別な教育をするというのは,私立学校だとできると思います。つまり,私立学校の教育の独自性や自立性を考えたときに,この文章があるのかと私は思っていました。その辺りに関して,むしろそろえた方がいいという御意見なのか,いや,それはそれでやはり独自性は担保したいのだという御意見なのか,そこは確認させていただければと思います。

【吉田氏】
 ありがとうございます。
 おっしゃるとおりでございまして,私立学校は,それぞれの独自性に基づいて,自分たちのICT環境を整えているのが実態でございます。ただ,我々が審議経過を受け取ったときに思ったことは,財政的支援の問題です。実際に今,私どももやっておりますが,今一番問題になってきていますのが,実は超高速インターネットの引込みです。公立学校の場合ですと,LGWANをうまく利用したりということができているわけですが,私立学校の場合,例えば,50名が一斉にインターネットを使ってオンラインスピーキングを外国とつないで行ったりしています。50台一斉に使うと,やはり何台かは画面が見えないなどの問題もあります。この環境を整えるにしても,補助額は最大で経費の2分の1で,それも圧縮されているような状況です。そういう中で保護者負担が増えていくということを考えると,国公立の状況を見てということよりも,私立学校で先行しているところがあれば,そこにもきちんとした財政的な支援をしていただきたいということが我々の強い思いでございまして,全ての学校で同じICT環境にしたいということではございません。

【山内委員】
 はい,分かりました。

【樋口委員】
 松本先生にお尋ねしたいのですが,頂いた資料で2ページ目に産業界への要望,これを記述するようにというようなことで,具体的に3ページの(3)のところがそれに該当するのかなと思っておりましたが,そういう理解でよろしいのでしょうか。
 もしそうであるとすれば,例えば,(3)のところでは,人生100年,実は私も今,議論しているところなのですが,そこで有能な高齢者と限定しているのですが,これは何か特段の意味があるのか,あるいは,在職者等についても,リカレント教育というのは非常に重要だと思うのですが,それを学んだ者を活用できるような,そういう環境というようなことは考えていらっしゃるのかどうかということです。

【松本氏】
 おっしゃるとおり,産業界への要望というのは,いわゆる生涯学び,活躍できる環境を考えるというところにかなりのところが当たっているわけであります。
 それから,この報告では,「高齢者」という言葉を付けておりますので,そのまま私は申し上げましたが,これは高齢者に限ったことではございません。現在の状況で,企業に言わずに大学に通っている方もいらっしゃると仄聞(そくぶん)しております。そうではなくて,企業が社員をきちんと認めた形で大学に通わせることができるような社会にしなければならないので,これは産業界に対して言わなければいけない。
 そして,企業の方から積極的にそうしたリカレント教育をさせて,あるいは,リカレント教育をしたい人を採用して,もっと生涯学習を活用すべきであると思います。

【樋口委員】
 ありがとうございます。

【戸ヶ﨑委員】
 同じく松本先生にお伺いしたいと思います。今,樋口委員からあった内容とも重複するのですが,産業界への要望ということについては,非常に重要というか,今までは産業界の要請に基づいた人作りが行われてきました。しかし,今後は将来を見通すことが一層難しい時代にあって,逆に教育が社会をリードしていくという視点が大切だと思います。今おっしゃった人生100年時代云々(うんぬん)ということ以外に,せっかくの機会なので,こういうことを盛り込むべきということがあったら,付け加えていただけると有り難いかなと。大変興味を持っていますので。

【松本氏】
 それは産業界と理解していいでしょうか。

【戸ヶ﨑委員】
 はい,そうです。

【松本氏】
 リカレント教育等に関しては,今,お話ししたとおりでございますが,やはり教育というのは,社会全体をリードしていくべきものだと思っております。ですから,教育の観点から企業等に関して,あるいは産業界に関していろいろ提言していくことは必要だと思います。
 今回ここで話題になってはおりませんが,採用の仕方を非常に心配しております。新規採用で一括して採用していくわけです。そして,一度,既卒になってしまいますと,なかなか就職が難しいということがありますので,これも先ほどのリカレント教育などを妨げるということと同じ構図ができているということ。
 それから,新卒採用する場合に,今,日本経済団体連合会さんが少し就職開始時期を遅くしてはいただいているのですが,それは日本経済団体連合会に加盟する大企業だけでありまして,全体的に見ると,やはり何ら状況は変わっていない。学生たちは,3年生の終わりの頃から就職活動をする。そうすると,1年以上,教育が成り立たないような状況に大学ではなっているわけです。こうした状況も変えていただきたいということです。
 それから,そういったことと捉えて,新卒で採用しなければならないのだという考え方を取り除いていただきたいということも申し上げたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。

【戸ヶ﨑委員】
 もう1点,よろしいですか。

【北山部会長】
 お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 では,もう1点,お伺いしたいのですが,3ページの英語の専門教員に対して,より高度な英語力ということがありましたが,義務教育で現在のところ国で示されているのは,小学校の教員は示されていませんが,中学校の英語の教員については,準1級,さらにはTOEICで730という基準が示されています。ここで言っている高度な英語力というのは,それ以上を求めたいということでしょうか。

【松本氏】
 こうした英語の教育は,例えば,我々の大学でもそうですが,ネイティブの教員をたくさん配置しています。ネイティブの教員ではなくても,かなり長い間,留学をしてきて,語学力,語学力だけではなくて研究力もですが,そうした能力を持っている人材を採用し,大切にするようにしております。こういうことになりますと,初等中等教育においても,そうした英語や,あるいはほかの外国語を学ばせるときに,例えば,国の方で推奨して,資金もある程度の補助をしながら,先生方を留学させるなどといった取組も必要ではないかと考えております。

【吉田氏】
 すみません,続けてよろしいですか。

【北山部会長】
 はい,お願いします。

【吉田氏】
 高校以外の教員に関して,あえて言わせていただければ,子供たちに語学力を要求するのであれば,外国語の教員だけではなく,その他の教員免許においても,せめてCEFRのB2ぐらいの技能を,求めることも教育振興基本計画の中で書いていただきたいということが1点ございます。
 それからもう1点,今,高等教育の無償化等が言われている中で,今回の基本計画の中に,初等中等教育の直接助成や,支援の充実について全く触れられておりません。そのことについても提言していただきたく,よろしくお願いします。

【北山部会長】
 先ほども申し上げましたとおり,財源の問題については,今後また,いろいろな動きを踏まえて加筆していくこととしております。
 ちなみに,リカレント教育に関しては,先日,『IDE』という高等教育関係の月刊誌に東京大学の天野先生が巻頭言を寄稿されていました。それによりますと,文部科学省に生涯学習政策局ができた約30年前も,リカレント教育という言葉こそなかったものの,生涯学習の重要性が叫ばれていたそうですが,それが今でも,一向に進んでいない。したがって,リカレント教育について議論するなら,これまで日本ではなぜ生涯学習が進んでこなかったのかという点を十分に分析して,それを踏まえて真剣に検討すべきだということでした。
 それでは,吉田会長,松本教授,どうもありがとうございました。

【松本氏】
 ありがとうございました。

【吉田氏】
 ありがとうございました。

【北山部会長】
 それでは,次のセッションに移ります。
 まず,独立行政法人国立高等専門学校機構から,谷口理事長にお願いしたいと思います。
 8分程度でよろしくお願いします。

【谷口氏】
 御紹介いただきました国立高等専門学校機構,理事長をしております谷口と申します。よろしくお願いします。
 「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について」に対する意見をということで,これを読ませていただきましたが,全体的に書いてある方向,その視点,これは大変優れたといいますか,良い内容になっているということをまず申し上げます。基本的な方向性に関しては,一点の異議もありません。
 ただ,一つだけここでお願いをさせていただくことがあるとすれば,高等専門学校というのは,御承知かと思いますが,我が国の非常にユニークな教育のシステムでございまして,中学校を出た15歳からの若い学生さん,若者をしっかりと教育をして,世界のトップクラスの技術者にまで育てると,こういう役割を果たしてきたということがございます。そういうことがございますので,これまでの審議経過の中に全く記載されていないとは言いませんが,例えば,48ページに,国際展開の中で「高等専門学校」という言葉がありますが,全体的にはほとんど書いていないと言ってもいいのではないかと,私の目からはそのように見えてしまいます。できるならば,このユニークな教育システムを明記するために,高等専門学校という,いわば項目みたいなものが一つあると有り難いということが,1点だけ申し上げたいことであります。
 高等専門学校がどれだけ頑張ってきたかということを少しだけお話させていただきます。
 例えば30ページに,高等専門学校のことが書いてあってもいいなと思いますし,41ページの高大接続の話,あるいは43ページのところにもう少し書いてあってもいいかなというところがございまして,高等専門学校がいかに頑張ってきたかということを少しお話をさせていただきたいと思います。
 高等専門学校というのは,現在は,教育界,大学等ですが,あるいは産業界はもとより,国際社会から非常に高い評価を有り難いことに受けております。この高等専門学校というシステムは,基本的に外国にはない,我が国独自のユニークな教育システムです。ですから,外国へ行って私が説明するときには,「高専is KOSEN」という言い方をします。自分たちの国の何かに合っていると思って,これに似ているなと思うような理解の仕方をしないでくださいと,そのような理解の仕方をすると間違いが起こります,高等専門学校というのは我が国が生み出したユニークなシステムであって,これで我が国の産業の発展,今までの経済発展を支えてきましたという言い方をさせていただきます。そういうこともあって,国際社会から非常に今,高い期待を寄せられているということでございます。
 教育の特徴は,もちろん講義もありますが,そのほかに非常にバランス良く実験や実習などを普通の高校や大学に比べて数多く散りばめてあります。このような教育のほかに,幾つかのコンテストがございます。先般,もしかしたらテレビで御覧になったかもしれませんが,割と有名なロボコンというコンテストや,それ以外にも,プログラミングコンテストやデザインコンテストなどがありますが,ロボコンが分かりやすいからということで,割とテレビ等で取り上げていただきます。このコンテストを活用して,しっかりと教育する。コンテストに参加するということは,例えば,チームで仕事をするということを自然のうちに学びますし,いつまでにこれをやり上げないといけないかということも,教えなくても勝手に,予選があれば,そこまでに間に合わないといけない,本選があれば,そのときまでに間に合わないといけないということがありますので,きちんと間に合わせる。企業では納期と言いますが,そういうものにきちんと合わせるということも,教えるのではなくて,コンテストに参加する中で自然に学んでいく。いろいろな学習も,物を先に作って,うまくいかないから勉強して,また新しいものを上手に改良していったらいいか,そういうような勉強の仕方をやります。普通,大学ですと,図書館にまず入っていろいろ調べるのですが,高等専門学校の子は,どちらかというと,先に物を作ります。形を作って,更にそれを改良していく中で必要な学習をしていく,そのように御理解いただければと思います。
 高等専門学校は55年前にできましたが,55年前に比べて今の社会情勢は全然違いますから,その中で全国に国立の場合には北海道から沖縄まで51の高等専門学校がございます。そこのどこを出ても,最低限ここまでは理解しているという,教育の質の保証のために, 6割ぐらいのところは,モデルコアカリキュラムをやっていますが,来年の4月から,全ての高等専門学校で実施させていただきます。
 もう一つは,学生さんが将来働くのは日本だけではございません。海外にも企業はたくさん進出しており,外国で働くことがありますので,国際展開ということを一つの大きな軸にさせていただいています。学生さんのためでもありますし,高等専門学校はいまや世界から非常に熱い視線を向けられていて,同じようなものをそれぞれの国に作りたいとおっしゃるので,そういうことに対しての貢献もやりたいということでございます。
 資料の次のページをめくっていただきますと,今申し上げたような高等専門学校教育の特徴が書いてございます。特に実務教育を大事にさせていただいています。高等専門学校は,基本的にモデルコアカリキュラムで,6割はどこを出てもその力は最低限持っていますという質保証をするということを申し上げましたが,それを更に展開していくために,実務教育をかなり重視しています。やった成果を社会実装していくところまでつながっていくようにという教育をします。
 それから,若い方を教育するということで,例えば情報セキュリティを若い方に教育することは,非常に有効であるため,そういうことを中心にさせていただいています。
 次のページ,その右側のページには,先ほど申しましたように,国際展開を書いてございます。これは国際社会で働けるような学生さんを育てるということはもとより,世界には,大学や高校はあるけれど,日本の高等専門学校のようなものはありませんので,是非作りたいという御希望があります。この御希望に対して私どもはできる限りの支援をさせていただいております。
 これはある意味では,外交にもなるし,国家安全保障にもつながるのではないかと思って,私どももできるだけのことはさせていただいています。海外には日本の会社も進出しています。例えばタイには,8,000社あります。そういうところからの要請もあって,質保証されたレベルの高い人材を育成することで貢献をさせていただいております。
 あとは,その辺りの細かいことが書いてあるので省略をさせていただきますが,先般,タイの国会から呼ばれまして,国会の中で高等専門学校とは何ぞやという話を1時間半ほどさせていただきました。その後,1時間ほど質問が止まらなくて,やはり自分たちの国にも作りたいという,非常に熱心な御意向もあるようですので,そういうことにも貢献したいと思っております。
 8分になりましたので,これだけにさせていただきます。ありがとうございました。

【北山部会長】
 谷口理事長,ありがとうございました。
 それでは,続きまして,中核市教育長会から,早川会長,よろしくお願いします。

【早川氏】
 よろしくお願いします。岐阜市の教育長の早川でございます。
 私ども中核市は,先進的な政策を提示し得る最適な規模と政策立案能力を持っていると,思っております。未来の作り手になるために必要な教育は,いつの時代でも追求され,いつの時代でも教育改革はあったわけですが,中心課題にAIの存在があるということが今までなかったことで,時代に合った学びがより重要になり,教育に対する要望が今まで以上にこれから増え続けていくだろうと思っております。
 確かなことは,AIがもたらす影響を子供たちのチャンスにしなければならないということです。これまで日本の工業社会の中でのボリュームゾーンの子供たちには非常に効果のある教育をしてきて,優秀なコモンの形成には大いに貢献してきたわけで,この世界最高水準は維持されるべきであります。これを放棄したら,日本の安心安全はありませんので,これらの子供たちに地方創生のリーダーシップをとってもらいたいと期待しております。
 それらを支えている子供の生活を,丸ごと,しかも精密に見ていく日本教育のありようは維持されるべきであると同時に,才能を伸ばすことに全力を尽くし,超スマート社会Society5.0に対応する教育を実現していく必要があります。
 これらの政策は,一見して背反しているように見えますが,それらを同時に取り組んでいくスキルがこれから行政には求められてくるのだろうと思います。
 岐阜市では,土曜授業と並行して,学校教育を超えたギフティッド教育を実施し,才能を開花させるきっかけ作りをしておりますが,エリートの育成が進めば,変化が進むと思っております。
 学校現場はそろえるということが最大の価値になっている学校も残念ながらあり,時間や決まりを守ることも大事ですが,それよりも大事な価値があり,見方によっては,学校は先生が問題を与え,待っている子供を育てる場,全ての道具がそろって過去のことを教えている場となっています。先生も伝統的に育て上げられ,そして力のある先生ほど最後のところで可能性の芽を摘んでいるということもあり得るのです。教育は新しいアイデアをどう伸ばそうかということに集中すべきで,そうすれば,従来まで考えられなかったような世界的レベルのポテンシャルを秘めた子供があらわれる可能性もあるわけです。
 全体としても,個としても,教育課程にフィットしない能力開発は意識して行われるべきであり,多様な才能の実現を妨げない教育があらゆる場で実践されなければならないと思います。
 次に,貧困対策について述べます。
 ゴールをそろえるよりも,子供の学びの前提条件をそろえる方がより効果的であり,出口の高校で調整するよりも,入り口の幼児教育の方が効果的だと思っておりますが,両方やることになったようです。
 無償化は,高所得者の方により有利に働き,近隣の町で給食費無償化をしたところでは,ゆとりの出たお金は塾通いに使うという例もありました。貧困家庭に補助して,その子供のパフォーマンスが良くなったという研究はないとも聞いております。貧困家庭の一番の問題は,ストレスがたまりやすく,悲観的になりがちであるということ,けんかやDVが家庭の中にあり,トラウマになっているということ,ポジティブな思考に接しにくく,成功へのスキルを身に付けるチャンスがないということです。貧困を理由にして,我が子の将来を悲観的に考えるのでなく,貧困の連鎖を断ち切る方法があるということを広めていくことが何より大事だと思っております。
 コールマン,ブラウニー報告では,四つの優位性あるもののうち,学校の環境よりも教員の質よりも親の経済力の方がより影響があるということを示しているそうで,世の中の問題意識もここで止まっています。親の経済力よりも,親の接し方の方が影響があるということをもっと世の中に知らせるべきで,さらに地域の教育力は親の代わりになることも証明されております。経済格差ではなくて,実はしつけ格差であるということです。貧困対策は,親の経済力への補填よりも,親のしつけ方へのサポートにお金を掛けた方が効果的だと思います。
 昔は,親戚のおじさんやおばさんがロールモデルでしたが,今は,地域の教育力がその代わりとなる可能性があります。学校,地域,家庭だけでなく,それに企業も足して,みんなが協力しようと思っていますが,学校がどうしてほしいと言わなければ社会は動かないので,地域の教育力は困難な家庭にも届く,その意味でコミュニティ・スクールは有効に働く可能性があります。
 岐阜市では,8,000人に対して調査を行い,団結しようとする集合的有用感が教育に効果があるということが証明されました。市民にソーシャルキャピタルの力を自覚してもらうことが大切だと思います。
 教員の資質向上についてもお話をしたいと思います。
 管理職へのキャリアパスの中で,学校経営マネジメントの機会が欠落しています。良い学級経営をしていたから,良い教頭になり,校長になるとされ,管理職に選ばれているわけですが,しかし,現実は良い学級経営をしていたから,良い学校経営ができるというほど甘くなく,次世代の学校には多様で個別的なニーズに耐え得る付加価値の高い教育の提供が求められており,あらゆる場面においてマネジメント能力の向上は不可欠になるわけです。
 チャンスは教職大学院にありますが,研修等でその措置が絶対数が不足しているわけで,岐阜県では,岐阜大学と協力して,登用の資格としての管理職研修講習の修了を位置付けました。
 教員採用試験に関しては,地方公務員法上の制約はありますが,採用前の臨時的任用期間の評価や,大学からの情報の活用など,情報公開に耐え得る透明性をもって正式に活用できるようにし,質の高い教員の採用に努め,初任者研修の軽減を図るべきだと思います。
 その分で浮いた予算を管理職登用の資格としてのマネジメント講習に活用した方が,教育界全体のパフォーマンスは上がるものと思います。
 働き方改革についても意見をしたいと思います。
 根本的な方向性としては,子供の生活を丸ごと見る日本の教育の在り方を維持するために,教職員定数の増員を図ることを強く要望します。そうは言っても,諸外国同様,教員以外の職種を学校に増やし,教員の業務を限定的にする考えもありますが,前者がもしできないとしたら,後者で人材確保を図り,チーム学校という考え方もあるようですが,現有勢力で最大の効果を上げるための声掛けをしていく必要があるでしょう。
 その上で,実態と完全に乖離(かいり)している教職調整額を引き上げる。又は,超勤4項目を外し,時間外手当にするということになると思いますが,一定分は,最低限,上乗せをすべきです。
 その上で,時間外勤務時間の振替日の新設を要望したいと思います。年次休暇の取得期間を9月から8月とし,時間外勤務の振替日も年次休暇も,夏季休業中に集中的に使用できるように都道府県教育委員会の条例の改正を要請したいと思います。
 3週間程度は学校を閉庁にし,安心して休めるようにすることは,教職の魅力を高めることになると思います。その際,研修や日本中学校体育連盟など整理が必要になってきますが,この取組は,国や都道府県,市町村が協力してなし得ることなので,どうにか実現できればと思います。
 先生が元気でないと,子供たちは元気になれないわけで,子供自身がこの問題をどう考えるか,私も聞きたくて,中学校3年生に対して,先生の日課を説明し,どこをどうすれば先生の忙しさが軽減できるかをテーマに,私自身,授業をしてみたのですが,彼らが言ったことは,「先生,もっと朝読書とかノート点検なんか,僕らに任せてくれよ,僕らはやれるよ」ということが彼らの主張で,担任は涙を流して感激しておりましたが,教育振興基本計画には,働き方改革の軽減のための政策は,是非書き込んでいただきたいということを思います。
 以上でございます。

【北山部会長】
 どうもありがとうございました。
 それでは,ここでお二方との意見交換,質疑応答の時間を取りたいと思います。
 では,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 ありがとうございます。
 早川教育長にお尋ねしたいのですが,17ページのところで,学校,地域,家庭,プラス企業とございますが,具体的に企業にはどのような形で協力があったらいいのかということを教えていただきたいのと,もう1点,19ページの3週間程度の学校閉庁とございますが,保護者として,割と夏季休業中にいろいろなことが起きるという予想もあり,日本中学校体育連盟,全国高等学校体育連盟,いろいろそういう行事もございまして,もちろん先生方にお休みしていただけるようなシステム作りも大切なのですが,そういった部分はうまくいくのかなというようなところを教えていただきたいと思います。

【早川氏】
 ありがとうございます。
 まず,各企業が社会的責任の中で,食育,キャリア教育などいろいろプログラムをたくさん用意していらっしゃいます。企業も貢献したいと思っているのですが,学校現場はなかなか,忙しい,時間が作れないなどと言って,そのフィット感がないところが多いと思います。しかし,企業のそうしたプログラムの活用は,非常に効果的に発揮できる可能性があります。家庭,地域,学校という地域の中に,例えば,コミュニティ・スクールは学校運営協議会などがありますが,なかなか地元の地域,企業の方が入っていらっしゃることが少ないと思います。私どもの場合は中小企業しかないのですが,中小企業の人たちもどうにか貢献をしたいとおっしゃっているので,運営協議会の中にも企業の方を入れて,学校,地域,家庭,企業と四つぐらいでいった方が社会的な動きが良くなるのではないかと思います。
 それから,夏季休業中は,委員のように大変学校に理解のある方は,学校の休みの中でも先生方が一生懸命働いていることを分かっていただいていると思いますが,世の中的な理解では,学校の先生は夏休みは休みだろうという方も多いと思います。もちろんそうではないということで,研修や部活動など,集中的にやっております。そうした場合の緊急の対応については,3週間というのは少し衝撃的に言いましたが,実際,今,三日,四日は休業日を作っているところがあります。それをせめて2週間ほど,私どもは,来年やりたいと思っていますが,その際に,緊急事態の代替措置として,公用の携帯電話を学校ごとに指定して,そこで緊急事態に対応できるようにすることと,教育委員会もその電話番号を知らしめて,教育委員会にも窓口を作っていくということで,とにかく先生方は休みがとれないで,年休もうんと残してしまうということがありますので,8月が年休の終了日になれば使い切っていただけると思います。それは都道府県の条例の中ですので,是非実現してもらいたいと思っています。

【川端委員】
 ありがとうございます。

【百瀨委員】
 ありがとうございます。早川教育長に,2点お伺いしたいと思います。
 1点は,17ページにあります親のしつけ格差ということで,どのようにすべきか,あるいは,この計画に盛り込むとしたら,こういうことを盛り込んでより具体的に一歩踏み込んで,もしこういうことを入れてもらえればということがあれば,一つはコミュニティ・スクールなのかも分かりませんが,これが1点。
 二つ目ですが,18ページに,教員の定数増に関して,日本の教育の在り方は子供の生活を丸ごと見る,何から何までというところが特に低学年,小学校ではあろうかと思いますが,一方,だからこそ逆に教員が大変だと思われて教職を目指さないのではないかと。したがって,それこそ働き方の部分が見直されているのではないかと思います。もしこの定数改善に関して,こういう点で,こういう点に力点を置いた,単に基礎定数を増やせばいいのか,あるいは,何かもっと別の形での定数増がいいのか,もし具体の御意見がありましたら,お聞かせいただければと思います。

【早川氏】
 ありがとうございます。
 親のしつけ格差については,いろいろな研究があると思うのですが,例えば,貧しい家庭の中にあっても,いいパフォーマンスをした子供たちの共通のありようというのはどういうことかということで,例えば,美術館へ行くとか,そういう研究もあるのですが,ほとんどが,いかに学校の生活と家庭の生活を結び付けるかということが主軸なようです。ですから,そうしたもう既にそういう先進的な計画を文部科学省も出していらっしゃいますが,それらを世の中に知らしめるということがまず大事なことだということを思います。
 それから,そういう意味でいろいろな観点があるので,貧しいから進学率が低いからそのまま駄目ということではなくて,しつけ格差という観点があるのだと,それはあなただけではなくて,皆さんに頼ればいいのだということです。
 先ほど,8,000人の調査をしたと言いましたが,面白い結果が出まして,地域の人が小学生の子供に接すると,何が一番効果があったかというと,ふるさと教育でした。ふるさとを愛する心。ところが,中学生は,直接的に子供の勉強のやる気につながったということがありました。そういう意味では,地域の教育力に助けてもらうということが,その代わりになり得るのだということは強く思いました。
 それから,定数増については,一つは基本的に,やはり人間というのは不幸な方が見えやすいから,大変だ,大変だと言いがちなのですが,でも,先生方に,「じゃあ,あなたの教員としてのやりがいは」と言ったら,たくさん話すことはあると思います。そのことをきちんと世の中に分かっていただくことと,もう一つは,定数的には,一番は,なぜ休めないかと言うと,自分が,学級担任がいないときに,誰かほかの先生に行ってもらわなければいけないということです。補充へ入っていただくのは,小学校でも中学校でも,ゆとりがあって,誰かが補充に入っていただけるような状況ではなく,教頭先生に入っていただくとか,誰かすぐに補充に入っていただけるような状況がないので,みんなで譲り合って,休みやすい環境作りのための定数というと,それは教育的ではないですが,実際に先生方が一番,私が休んだら,誰か代わりに入ってもらわなければいけない,子供たちが自習になってしまうと,そこが一番休みにくい環境を作っているので,教育委員会に何人か先生を置いて,いざとなったらそこへ補充に行っていただいたら,すぐ補充に行けるぐらいの定数を教育委員会が持ってやるというのも方法かなとは私は思っていますが,是非再任用の先生方にもそうやって頑張ってもらえるような工夫を作っていきたいというように思っています。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,篠原委員,お願いします。

【篠原委員】
 早川さん,今のお話にも少し関連するのですが,私はこの貧困対策のところで,経済格差ではなく,しつけ格差なのだという位置付けは大変卓見だと思います。これは貧困家庭だけではなくて,一般の家庭においても,家庭のそういう教育力が,私は昔よりは落ちていると思います。だから,これを貧困対策として絞り込んでやるだけではなくて,もう少し,岐阜なら岐阜の一般家庭全体にも浸透するような広がりを持たせるような施策をお考えかどうかということをお聞きしたいと思います。
 それから,谷口さんに一言。先ほど,タイの国会で演説をされたという話を聞きましたが,ほかの国から作りたいのでいろいろ教えてくれという話は,どういう国々か,アジアが多いのか,どういう国々からそういう申出があるのでしょうか。

【谷口氏】
 お配りした資料の,ページで言うと7,3枚目ぐらいのところに幾つか書いてございますが,東南アジアがメインのところが一つございます。それから,お話が来るのは,中央アジア,アフリカ等,更に,中南米からもあります。今,具体的に進めてオフィスを作って展開をしているのが,モンゴルです。モンゴルの場合には,日本の高等専門学校を卒業した人が校長先生になって,今,三つのモンゴル型というか,日本型というか,日本語も教えていますから日本型の高等専門学校をモンゴルではもう既に走らせています。タイは,近いうちにできると思います。今,タイの場合には,タイの中学校を出た精鋭を毎年,タイの国費留学生として日本に十二,三人ずつ,しばらく送り込む,日本の高等専門学校にそのまま入れてくださいという話があります。しばらくたってタイ本国に高等専門学校ができていくというになるかなと思います。いろいろな国がございます。

【篠原委員】
 ありがとうございます。
 その関連で,そういうものを御相談に乗って,設立の支援をする場合に,国からの支援体制は,今,どうなっていますか。

【谷口氏】
 一つは,文部科学省に支援をしていただいています。
 それから,先生を派遣するときなどに,JICAのプログラムを使わせていただくこともあります。もちろん自前のお金もあります。それから,向こうの国がという場合もあります。大きいところは,やはり日本の文部科学省のお金と,JICAのお金と思っていただいたらいいのではないかと思います。ふんだんにあるというわけではありません。

【北山部会長】
 それでは,早川会長,お願いします。

【早川氏】
 おっしゃるとおりで,一般家庭も同様の問題を抱えていると思います。私は,PTAでなるべくそういう話をいろいろなところで話そうと思って話しているのですが,残念ながら,来ていただける親御さんは,やはり最もターゲットにしたい人たちは来ていらっしゃらないので,私は来ていただいた方に,地域の教育者として自覚して,あなたの声掛けが隣の困難な家庭にも届くのでということでやっているのですが,その辺は余りうまくいっていないところだと思います。

【北山部会長】
 谷口理事長にお伝えしたいのが,私は日本タイ協会の会長も務めておりまして,タイといろいろな交流があるのですが,タイでは,ボケーショナルスクールなどについて大変頭を悩ましておられると聞いています。そのため,日本,特に高等専門学校に学びたいという思いを非常に強く持っておられるので,そういった点でも,よろしくお願いします。

【谷口氏】
 我々もコンタクトをとってやらせていただいています。

【北山部会長】
 ありがとうございます。

【谷口氏】
 先生から育てないといけない,そういうこともあります。

【北山部会長】
 それでは,お二方,ありがとうございました。

【早川氏】
 どうもありがとうございました。

【北山部会長】
 お待たせいたしました。本日最後のセッションになりますが,お三方にお願いしまず。まず,全国公立短期大学協会から,東福寺会長,よろしくお願いします。
 恐縮ですが,8分程度にまとめていただきますようよろしくお願いします。

【東福寺氏】
 それでは,失礼いたします。全国公立短期大学協会で会長をしております東福寺と申します。よろしくお願いいたします。
 また,本日は,この教育振興基本計画につきまして,意見表明をする場を与えていただきまして,ありがとうございます。
 全国に短期大学はたくさんございますが,その中で公立短期大学の占める比率は大変少のうございますので,少し最初にお時間を頂戴して,公立短期大学の特色等について述べさせていただきたいと思います。
 まず,公立短期大学は,岩手県から鹿児島県にわたり,全国で,現在15校ございます。総じて地元からの入学者が多く,卒業後も地元への就職率が高いということで,地域密着型の高等教育機関と言うことができるかと思います。
 お手元の資料が見にくくなっているかと思うのですが,グラフが二つ描いてありますが,特に下の方は,全国公私立大学で29年度の学校基本調査から作成しております。さらに続きますが,こうした15校の学科や専攻分野を見てみますと,文学であるとか,あるいは生活科学,芸術科学,社会科学と幅広くございまして,また,資格についても,看護師,保育士,幼稚園教諭,介護福祉士,栄養士など,就職に直結する資格取得が可能でございます。
 お手元の資料で,入学定員の男女比率というのがございます。これは誤解を招くかもしれませんので申し上げますが,15校のうち,女子だけを対象にした女子短期大学が2校ございまして,その2校の定員が16%ということで,残りの13校は全て共学と御理解いただければと思います。
 当協会が数年前に実施した調査によりますと,公立短期大学に対する魅力と言いますか,なぜ公立短期大学を希望したのかということを尋ねましたところ,授業料が安いということ,その上で,お手元に少人数教育等の例が示されておりますが,少人数を対象にしてしっかりとした教育を受けることができる。そしてまた,資格取得も可能であるということが学生たちの魅力になっているということが確認できたところでございます。
 また,地域貢献についても,公立という点で,各大学とも力を入れております。
 一つの例として,平成28年度,昨年度に開設されました公開講座や講演会の数は,全てで727講座に及び,延べ8,894人が受講しております。
 このような短期大学が公立短期大学というところでございます。
 さて,本日のテーマでございます教育振興基本計画への意見ということで述べさせていただきますが,お手元に当協会の会員校からの意見をまとめたものをお示ししております。特にこの中から高等教育にかかわる意見について抜粋をしていきたいと思います。
 まず,23ページ,社会の持続的な発展を牽引(けんいん)するための多様な力を育成するというところにつきまして,大学進学率が上昇する中で,高度人材育成のみに目を向けるのではなくて,特に短期大学で学ぶ学生については,むしろそういう高度人材を支えるような立場になる学生が多いかと思いますので,それ以外の人材をどのように育成していくのかという視点も必要ではないかと思います。
 それから,30ページの教育政策推進のための基盤を整備するというところに関わりまして,いつでも学び直しができる開かれた教育の実現を目指すとありますが,それをどのように実現していくのかを,この項目で是非示していただきたいと思います。
 また,高大接続改革が叫ばれておりますが,大学を社会や企業に開くための基盤整備も望まれると考えるところでございます。
 続きまして,47ページのグローバルに活躍する人材の育成にかかわるところでございます。
 大学,短大が外国人留学生を受け入れているところが多うございますが,それができていないところもございます。恐らくそういうところでは,留学生を担当する専任の教員を置くまでのゆとりがないという大学であると考えられますので,もしこうした留学生の受入れを推進していくのであれば,それなりの助成をしていただきたいと思います。
 それから,59ページにかかわるところで,誰もが社会の担い手となるための学びのセーフティネットを構築するというところでございますが,夜間中学の話もありましたが,高等学校の定時制課程や,通信制課程の質の確保,向上,これは是非とも進めていただきたいと思いますが,さらにそれに続くところは,大学,短大の夜間課程が考えられると思います。公立短期大学で,現在,夜間課程を持つところは2校しかございません。かつてはもう少しありましたが,今は2校に数を減らしております。しかし,多様な国民の学習要求にこたえていくためには,こうした夜間課程についても是非その存在意義について御検討いただければと思うところでございます。
 そして,67ページ,教育環境の整備,安全・安心で質の高い教育環境の整備のところでございます。
 国立大学や私立大学への言及はございますが,公立大学,公立短期大学についても同様に老朽化が進んでおり,それぞれ苦労しているところでございます。こうした公立大学,公立短期大学については,地方交付税措置で対応しておりますが,これは総務省に申し上げるところかもしれませんが,こうした交付税の増額措置もお願いしたいと思います。
 さて,全体に対する所見でございますが,こうした計画をまとめていただいた御苦労には敬意を表しますし,期待をするという意見がある一方で,幾つかの懸念が示されております。
 一つは,机上の理想論にならずに,実際に施策として実行できるかどうか。ここが重要ではないか。
 そしてまた,4年制大学を主眼としている印象を受けるので,多様な高等教育機関を想定した議論をもう少し行った方が良いという御意見でございます。
 最後に,これは全体を通じてですが,財政的なバックアップについて,是非具体的な提案をしていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 次に,日本私立短期大学協会から,滝川副会長,よろしくお願いします。

【滝川氏】
 本日は,私ども日本私立短期大学協会に発言の機会を与えてくださり,ありがとうございます。私の趣旨は,30ページで6点にまとめましたので,最後に申し上げたいと思います。
 私たちは,教育期間を2年又は3年に限っているとはいえ,これまで高等教育機関の一員として歩んできて,昨今の国民の高等教育に対する評価の低さには,誠に残念に思っております。
 しかし,一番残念なのは,その状況そのものではなく,評価を低めた一因である各高等教育機関の境界線の曖昧さが放置されていることです。どこで相談をしても,都道府県の所管だからとか,自治体としてはお聞きすることしかできませんと言われます。日本の高等教育のために,こうした状況を是非改善していただきたいと思います。
 初めに,状況を説明いたします。
 最近の文部科学省の資料等を見ますと,高等教育には,大学院,大学,短期大学,高等専門学校,専修学校専門課程,すなわち,専門学校の五つの学校種が入っています。しかし,私が教員になった頃は,大学院から高等専門学校までの四つでした。しかし,この変化がどこで議論されたのかを私は知りません。恐らく専門学校の学生募集において,高等教育という言葉が利用され,数が増えてきたことによって変化したのではないかと思います。この変化が世界からどのように見えるかを,特に短期高等教育に焦点を絞って,ユネスコの国際標準教育分類(ISCED)を参考に考えてみたいと思います。31ページを御覧ください。
 短期高等教育(Short‐cycle tertiary education)とは,労働市場に直接結び付く技術的・職業的スキルを学ぶ最初の第3段階教育,すなわち高等教育及び上位の高等教育へ進むことができる教育とあります。
 私たち短期大学は,学校教育法第108条において,「深く専門の学芸を教授研究し,職業又は実際生活に必要な能力を育成する」とあり,研究と職業教育を内包し,短期大学種という学位を根拠に上位の高等教育への進学が可能です。したがって,ユネスコの短期高等教育に該当すると判断されます。
 また,中等以降高等以前教育(Post‐secondary non‐tertiary education)は,中等教育を基にし,高等教育進学や雇用の準備をするプログラムであり,さらに,教育内容は広く高等教育ほど複雑でないとあります。学校教育法に記された専門学校の目的である「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し,又は教養の向上を図る」と合致し,教育が必ずしも教養教育,専門教育を持たず,また研究をベースにしておらず,高等教育ほど複雑ではないという点から,この中等以降高等以前教育に合致します。国際標準から見ると,短期大学はShort‐cycle高等教育,専門学校はPost‐secondary高等以前教育だと考えられます。しかし,現在では,先ほど申し上げましたように,高等教育局所管の短期大学と,生涯学習局所管の専門学校は,高等教育と一くくりにされています。
 また,現在の専門学校は,卒業生に専門士,4年制の専門学校では高度専門士という称号を与えていますが,学位の継続性を持たないまま,上位の高等教育への進学が可能です。32ページに文部科学省のお作りになりました資料を引用させていただきました。
 さらに,専門士はDiploma,高度専門士はAdvanced diplomaと英語表記され,日本語にすると学位記や上級学位記に相当しますが,外国の方は前者を4大レベル,後者を大学院レベルであると間違える可能性があります。
 まとめますと,研究経験がなく,学位を持たず,また必ずしも教養教育や専門教育を経験しない卒業生が,DiplomaやAdvanced diplomaを持って,日本だけでなく,外国の大学や大学院へ進学する,これで良いのかと疑問に思います。高等教育として,質保証の観点からも疑問があります。認証評価機関によるaccredit,すなわち,信用状がないということは,設置以降に教育情報や財務情報の公表もなく,必ずしもPDCAによる教育改善やガバナンス強化が行われない高等教育機関であるということです。
 さらに,運営上の問題としては,文部科学省による全国一律の管理を受けないため,著しく早い段階から学生募集活動や入試を実施し,中等教育の実施や短期大学,大学といった国際通用性を堅持する高等教育機関への進学を阻害しています。
 31年から開設が予定されている専門職大学,専門職短期大学も同様です。この設置基準には,研究者を入れることになっていますが,その数は短期大学設置基準を下回る設定がしてあります。また,認証評価の実施も決まっていますが,開設直前ですが,評価基準が示されておらず,質保証の中身が示されないまま入試が行われることになります。職業教育のウエートを高め,高等教育のウエートを低めているのに,なぜPost‐secondary non‐tertiaryではないのか。そして,世界に例のない高等教育機関となる専門職短期大学をどのような英語で伝えるのか,大変疑問に思います。
 以上のことから,皆様に30ページの6点のお願いを申し上げたいと思います。大変恐縮ですが,順番を変えさせていただきました。二番を一番に,一番を二番にさせていただきたいと思います。
 一,今後の在り方として,日本の高等教育に「国際通用性」を持たせることを標榜(ひょうぼう)していただきたい。
 二,日本の「高等教育機関」とは,どのような条件を備える学校のことであるかを整理していただきたい。具体的には,国際通用性に鑑み,研究,学位,認証評価,教育・財務情報の公表,教養教育,専門教育の有無を明らかにしていただきたい。
 三,高等教育のグローバル化,外国人学生の増加,さらに日本人学生や卒業生の海外での活躍を推進するために,学校名や学位など,高等教育に関する英語表記と意味を整理し監督していただきたい。
 四,「学位」の意味,機能,役割を明らかにしていただきたい。具体的には,国際通用性に鑑み,上位の高等教育に進学する場合の学位の有無を明らかにしていただきたい。
 五,中等教育を阻害し,優れた高等教育機関への進学を阻害する可能性のある早期の学生募集を全学校種に対して禁止していただきたい。
 六,監督の場所が異なる学校間の懸案は文部科学省が解決していただきたい。
 短期大学は,その学校数をピーク時の半分に現在減少させております。その最も大きな原因は,短期大学経営者の努力不足だと思います。しかし,短期大学の多くは,石にかじりついてでも教育の質保証や学位にこだわり,世界に通用する高等教育であることに誇りを持って歩んでいます。したがって,こうしたことをしない学校が高等教育を名乗ることを受け入れることはできません。どうぞ本部会において,こうした課題を御検討いただきますよう,短期大学経営者を代表しましてお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは最後に,日本私立大学協会から,小出常務理事,よろしくお願いいたします。

【小出氏】
 私立大学協会の小出でございます。まず,このような機会を頂戴したことに,北山先生はじめ委員の先生方にお礼を申し上げたいと存じます。
 私ども日本私立大学協会は,昭和21年の設立でございまして,現在,北海道から九州,沖縄まで407の私立大学が加盟いただいてございます。全国七つのブランチ,ブロックに分かれまして,全体共通課題,地域の課題,今日的な課題につきまして,様々な意見具申,共同解決等を行ってきてございます。
 その意味から,今回,このお出しいただいております審議経過に関しましては,少子高齢化社会の到来の状況,グローバル社会の到来の状況,さらには高度情報化社会の到来の状況,こういうものをしっかりと踏まえる形で,それぞれの課題についての基本的な方向をお示しいただいておる点に関しましては,大いに敬意を表して,その実質的な実現に向けまして,一層の御尽力を頂戴したい,このようにまずお願いを申し上げたいと思います。
 その際にではありますが,今日,私立大学全体の姿といいますのは,大規模ブランド私立大学が都市部に多く所在してございますが,全国に立地をいたしております私立大学は比較的中小規模でありましたり,歴史は浅そうございまして,定員の未充足という事態にも悩んでおるところでありますが,精一杯建学の理想を実現いたすべく,教員も職員も役員も一緒になりまして,その努力を進めておるところであります。
 これからの時代が正に成熟社会となり,様々な時代の要請や国民の負託があるといたしますと,高等教育,大学教育自体も多様な価値追求,多様多層な人材養成というものが必要になってくることは当然のことでございます。これら全国に展開いたします中小規模の私立大学に対しまして,大いに鼓舞激励となるような計画を,この際,お作りを頂戴したい,こう思っております。
 また,方向をお示しいただくと同時に,その実質に向けまして,今後の行政指導等も着実にお進めいただかれるように,この部会において,最後まで見届けていただけるようにお願いをしたいと思ってございます。
 具体的にお願いを申し上げたいと思いますが,ペーパーを1枚用意いたしました。33ページに当たるところでございますが,今日,この高等教育改革,大学改革の問題につきましては,大学分科会をはじめとする中央教育審議会の各部会で検討がなされてございます。また,内閣府においても大いなる検討がなされておるところでございますが,言ってみれば,これらを相互調整いただく形で,当部会が大きな役割を果たすように御期待を申し上げます。
 その際には,我が国の大学教育のおよそ8割近くを担当いたしておるところの私立大学を,高等教育計画の中心に据える形で,そのグランドデザインをお示しいただきたいと念願をするものでございます。高等教育政策につきましては,今後の我が国の盛衰を決定付けるものだと認識をしてございますので,それをある意味,私立大学を基幹とする形での高等教育政策へと一大転換願いたいと思うのであります。
 折しも来年はちょうど明治維新150年であります。この国の発展の礎となった明治維新以降の高等教育政策に関しまして,大いなる評価をいたすものでありますが,成熟社会日本の始まりの中にあっては,多様な価値追求を行い,多様多層な人材養成を行う私立大学を政策の基本に据えた形での転換を御期待申し上げるものであります。
 二つ目の課題でありますが,こちらは,持続的な高等教育システムの構築についてという問題であります。70ページに関連の指摘がございますが,これらにつきまして,国土の均衡ある発展を図る観点から,定員割れを抱えながらも,その地域に必要とされ,教育研究の充実と経営の強化,産学連携及び地域連携等に努力する大学に対しては,財政支援を行うことも,また国の重要な使命であろうと存じます。折しも地域創生が政府の重要課題となっておるところであります。この点,地方に立地いたす私立大学を大いに活用していただきたいものだと念願をいたしております。
 三つ目,社会人の学び直しについてであります。55ページ関連でございますが,社会人の学び直しに関しましては,これは大学の努力が前提になることは当然でありますが,大学だけで実現できるお話ではございません。社会全体の構造的な問題であり,とりわけ産業界の横断的な労働市場の形成,そうしたようなことも御理解を頂戴して働き掛けをお願いしたいものでございます。
 学びのセーフティネットの構築について,四つ目にお願いをしたいと思います。低所得層に位置する学生に対する経済的支援制度の充実がまず図られるべきでございますが,そのことにあわせて,私学助成における機関補助とのバランスについての特段の御配慮をお願いしたいと思っております。
 最後に申し上げたいと思いますが,それは,私立大学のよって立つ精神である自主性の堅持の話と,公共性の高揚にかかわる御支援の話でございます。建学の理想を実現するためには,この自主性が最重要の課題だと考えておりますので,この点についての御配慮をお願いいたします。
 私立大学協会の様子紹介や,あるいは今申し上げた関連のデータにつきましても,先生方のお手元にお届けをしてございますので,御高覧を頂ければ幸いでございます。
 以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,意見交換,質疑応答に入りたいと思います。どなたからでも結構ですので,お願いします。

【樋口委員】
 小出常務理事にお尋ねします。
 最後のところで,地域創生あるいは内閣府の検討との整合性というお話が出ました。まち・ひと・しごと創生会議,私もメンバーで,今,議論しているところなのですが,その中で,23区における新設の大学についての要請,あるいは定員増というような考え方が打ち出されておりますが,こういったものについては何か御検討なさっていらっしゃるのでしょうか。

【小出氏】
 ありがとうございます。すこぶる重要な問題だと心得ます。
 これは,都市部と地方部との教育環境をどう整えていくかという問題だと承知をいたしております。そのことの前提に,これを私立大学セクターの問題だけで考えるよりも,国立大学セクター,公立大学ラッシュの問題もございますので,公立大学セクターも含め,日本の高等教育全体の中でこの問題は考えられるべきだと私は考えてございます。
 それから同時に,東京一極集中の問題は,都市部と地方部との均衡ある発展に関わる問題だと思います。日本の国は,「ほどほど」という言葉があるわけでありますから,時代の状況の中で,その辺りのところは適切に措置されていくことがよろしい方向ではないかと思っております。
 雑駁(ざっぱく)でありますが,以上でございます。

【北山部会長】
 お三方とも御存じだとは思いますが,先ほど言及のあった高等教育の将来構想をはじめとして,教員の働き方改革など,中央教育審議会ではいろいろなテーマでの検討が同時並行的に進められております。したがって,本部会では,そういった議論も踏まえつつ計画を随時ブラッシュアップしていくという進め方をしているという点を御理解いただければと思います。

【戸ヶ﨑委員】
 それでは,東福寺さんにお伺いしたいと思いますが,先ほどの御発言の中では触れられなかったのか,私が聞き落としたのかよく分からないのですが,27ページのところで,コミュニティ・スクール,地域,学校連携本部のお話が記述されています。ここの中で,それを持続させていくためには,各市町村,行政に任せるだけでなく,国からのきめ細やかな情報提供云々(うんぬん)とありますが,これは,文部科学省の肩を持つわけではないのですが,様々きめ細かく市町村教育委員会に支援等を頂いています。ただ,委員に対してのどのぐらいの金額の報酬をやったらいいか,という問題などについては,まだまだ見えていない部分があって,こういうところに格差が生じていく可能性はあるのだと思います。
 それから,28ページ目の教員の負担軽減に関する部分での教員定数の改善に言及しないのはなぜかというところですが,ここは非常に難しい問題で,どこまで教員を増やしたらいいのかということに関するエビデンスがなかなか示せないというのが現状であろうと思います。あわせて,ここには文言がないのですが,チーム学校ということに関する部分で,連携する相手が増加することは,その核となる教員が云々(うんぬん)「一様に負担減につながるものではない」とあります。これはそもそもチーム学校の推進によって一様に負担減につながるものではないので,この辺りのところも誤解と言っては失礼ですが,認識の違いはあるのかなと思いました。御回答は,もしあればということで。

【東福寺氏】
 どうもありがとうございます。
 ます,コミュニティ・スクールについてですけれども,これは私の知る限りのところで,例えば私が住んでいる県では,コミュニティ・スクールを非常に盛んにやっているところもあれば,全く手を付けていないところもあるというように,かなり温度差があるようです。その温度差が何から出てくるかということを考えますと,そこにいる人材に依存してしまっているというのが大きな原因ではないかと思っております。
 したがって,コミュニティ・スクールの意義など,文部科学省としていろいろと御苦労されていらっしゃるということでございますが,もう少しアピールしていただくと,もっと広まっていくのかなと思いますし,是非そうしていただければ,学校の教育もさらに質的に向上していくだろうと思います。
 先ほどの教員の負担についても,コミュニティ・スクールをすると教員の負担が増えるのではないかという意見も,聞いたことがあります。実際にそうではないということも併せてお示しいただけると,更なる推進につながっていくだろうと思っております。
 以上でございます。

【北山部会長】
 2年前に開かれた12月の中央教育審議会総会で,馳大臣に,学校に関する三つの答申のセットをお渡ししました。具体的には,チーム学校,コミュニティ・スクール,それから教師の養成,採用,研修に関する答申でしたが,今,文部科学省でそれらを受けた施策が着々と進められつつあるという理解でよろしいですか。

【内田教育改革推進室長】
 はい。

【北山部会長】
 ほかはいかがですか。よろしいですか。
 それでは,時間となりましたので,これで終わりにしたいと思います。
 先生方,お忙しい中,お集まりいただきましてありがとうございました。大変貴重な御意見を多く賜りましたので,今後の議論に生かしていきたいと考えております。
 最後に,今後の予定について,事務局からお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料4に記載してございますが,第19回の教育振興基本計画部会を,来週月曜日,10時から,文部科学省の第二講堂で予定してございます。よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 委員の皆様,また来週よろしくお願いします。
 皆様,どうもありがとうございました。本日はこれで終わりにさせていただきます。

―了―

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