教育振興基本計画部会(第8期~)(第17回) 議事録

1.日時

平成29年9月19日(火曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

全国町村会館 ホール(東京都千代田区永田町1‐11‐35)

3.議題

  1. 第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について

4.出席者

委員

 北山部会長,河田副部会長,明石委員,阿部委員,石田委員,大竹委員,金子委員,川端委員,菊川委員,白井委員,高橋委員,柘植委員,戸ヶ﨑委員,中井委員,永田委員,羽藤委員,丸山委員,宮本委員,百瀨委員,山内委員,山脇委員

文部科学省

 小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,高橋初等中等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,村田私学部長,神山大臣官房審議官,塩見文部科学戦略官,瀧本大臣官房審議官,萬谷生涯学習推進課長,八木社会教育課長,土肥青少年教育課長,矢野初等中等教育企画課長,堀野高等教育企画課高等教育政策室長,氷見谷生涯学習政策局政策課長,内田生涯学習政策局政策課教育改革推進室長,寺坂生涯学習政策局政策課教育改革推進室長補佐 他

5.議事録

【北山部会長】
 第17回教育振興基本計画部会を開催いたします。お忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 前回までの議論を踏まえて,今回は,,これまでの審議経過を取りまとめた資料について御審議いただきたいと思います。オーバーラップする部分もあろうかとは思いますが,総論の第1部と各論の第2部に区切って進めていきたいと思います。
 それでは,まず,事務局から配付資料の確認をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 配付資料ですが,資料1‐1が「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(案)(概要)」,資料1‐2が「今後5年間の教育政策の目標と主な施策群(ロジックモデル)」,資料1‐3は「第3期教育振興基本計画の策定に向けたこれまでの審議経過について(案)」となっております。資料2が「今後の日程について」,さらに参考資料として「人生100年時代構想会議配布資料」をお配りしております。過去の資料等につきましては端末に入れております。資料等過不足ございましたら事務局までお知らせください。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,早速議事に入ります。先ほど申し上げましたように前回の部会で,素案について御審議を頂きましたが,委員の皆様や各分科会から頂いた様々な御意見を踏まえて,事務局で整理し,修正案を策定していただきました。また,先日,官邸で人生100年時代構想会議が行われましたので,そうした動きなども含め,事務局から御説明をお願いしたいと思います。

【内田教育改革推進室長】
 それでは,資料の御説明をさせていただきます。これまで,委員の皆様におかれましては,審議経過報告について審議を重ねていただきました。本日も更に御審議を頂きたく存じます。
 資料2といたしまして今後の日程を記載しております。全体のスケジュールの確認でございますが,本日の御議論を踏まえ,今月28日に総会がございますので,北山部会長から状況の御報告をしていただく予定でございます。
 また,今後,国民の皆様からの意見募集や関係団体ヒアリング等を事務局としては検討しておりますが,こちらも随時北山部会長とも御相談の上,進めさせていただきたいと考えております。
 それでは,資料1‐1を御覧ください。こちらは,資料1‐3を1枚で要点を整理したものでございます。本文を御覧いただきながら,こちらの資料につきましては後ほど適宜御参照いただければと思います。
 また,資料1‐2といたしまして,ロジックモデルの資料を配付しております。このロジックモデルの資料は前回の資料との大きな変更点はございません。字句を本文の修正に合致させている程度の修正でございますので,後ほど御確認いただければと思います。
 それでは,資料1‐3を御覧ください。前回からの修正点を赤文字で記しております。まず,5ページ,6ページ目を御覧ください。次世代までを長期的に見通した政策検討の必要性を改めて記載しております。
 7ページ目,8ページ目を御覧ください。委員の皆様からの御意見を踏まえ,2期計画期間中の成果を追記しております。
 9ページ目を御覧ください。こちらも委員の御意見を踏まえ,我が国が第4次産業革命への対応において世界に後れをとっているという厳しい現状を記載しております。
 13ページ目を御覧ください。「教員の負担」について,こちらも御意見を踏まえ,教員の勤務実態の調査に関する記載を脚注から本文の方に移して,より丁寧に記載しております。
 15ページ目を御覧ください。こちらも本文の解説として脚注を二つ追加しております。
 17ページ目を御覧ください。前回までは「超スマート社会の実現」としていましたところ,「超スマート社会を生きる」というタイトルに修正しております。
 19ページ目を御覧ください。こちらも御意見を踏まえ連携についての記載を追記しております。
 20ページ目を御覧ください。初等中等教育から大学までを一貫して教育観,教育の考え方の下,どう施策を打ち立てていくべきかという考え方を記すべきという御意見がありましたので,学力の3要素の考え方を中心に文章を追記しております。
 21ページ目以降につきましても,各委員からの御意見を踏まえて適宜追記しております。なお,28ページ目の下の方の追記については,初等中等教育分科会における,昨今の様々な健康課題等の困難さといったものを踏まえた各機関の連携の必要性についての御意見を受けての追記でございます。
 29ページ目,30ページ目を御覧ください。私立学校の振興について記述が足りないという御指摘がありましたので追加しております。
 36ページ目を御覧ください。こちらは各論の「豊かな心の育成」の指標でございますが,御意見を踏まえ,「人の役に立つ人間になりたいと思う児童生徒の割合」を指標に追記しております。前回も意見がございましたが,日本人は控えめで自己肯定感が低くなりがちなので,自己有用感といったものを測定できるような指標として追記いたしました。
 38ページ目を御覧ください。東日本大震災のみでなく,日本全国の様々な災害を幅広く読める記述としております。
 39ページ目以降は,それぞれの委員の御意見を踏まえて追記している部分でございます。
 45ページ目を御覧ください。子供だけでなく保護者の働き方への配慮といった御意見もございましたので,中段にその趣旨を追記しております。
 53ページ目を御覧ください。女性の学び直しに関連し,保育環境の整備の必要性について御意見もございましたので,追記しております。
 54ページ目を御覧ください。社会教育の指標でございます。2ぽつ目として,民間,NPOなどとの連携の状況が把握できるような指標,3ぽつ目として,地域住民の参画を促すために特に必要なボランティア登録制度を設けている社会教育施設の割合の増加という指標を付け加えております。これらに関しては様々な主体との連携の必要性,また,地域住民の参画の必要性についての意見が前回特にございましたので,このように指標を記載させていただいております。
 55ページ目を御覧ください。放送大学の学び直しに関して,先導的役割をもっと明確に打ち出すべきだという御意見がございましたので,そういった趣旨の文章を追記しております。
 56ページ目を御覧ください。障害者の学びに関して,研究や成果普及等を行い,各ライフステージにおける学びを支援といったように,前回よりも更に具体的に追記しています。
 58ページ目を御覧ください。こちらは私立小中学校への支援ということで,初等中等教育分科会において,この調査研究について追記すべきという御意見がございましたので,記載させていただいております。
 60ページ目,61ページ目を御覧ください。こちらについても,同じく初等中等教育分科会において,夜間中学の方向性を明示すべきとの御意見がありましたので,全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学が設置されるように促進するという方針を追記しております。
 63ページ目を御覧ください。教員の資質能力の向上に関して近年の制度改正を踏まえて方向性を追記しております。
 64ページ目を御覧ください。委員の御意見を踏まえ,指標に超高速インターネットの100パーセント整備を記載しております。
 最後に69ページ目を御覧ください。近年の安全上の課題を踏まえ,学校安全の取組について具体的に追記しております。
 資料1‐3の説明は以上でございます。続きまして参考資料について御説明させていただきます。先ほど北山部会長のお話にもございましたとおり,官邸において今月11日に,人生100年時代構想会議が開催されており,その動きを御紹介したいと思います。
 1ページ目が会議の開催要項でございます。2ページ目を御覧ください。中段にございますように,今後4年間,政府が人生100年時代を見据えて実行する政策を検討する会議となっております。枠内の丸1から丸4がテーマでございまして,リカレント教育,高等教育改革,新卒一括採用だけでない企業の人材採用の多元化,全世代型社会保障となっております。スケジュールとしては,年内に中間報告,来年前半に基本構想が出される予定となっております。
 3ページ目を御覧ください。会議の議員のリストでございます。文部科学大臣も副議長として参加しています。有識者議員を御覧いただきますと,10代から80代まで,各世代の方々が入っていらっしゃる構成となっております。
 当日の会議の模様ですが,総理からは人づくり革命は内閣が目指す1億総活躍社会を作り上げる本丸だということ,生産性革命とともに内閣の最大テーマが人づくり革命だといったお話がございました。
 また,委員からの御意見を少し紹介しますと,学びを進め,生産性を高めていくことが必要であり,それに対して教育機関,企業も理解してしっかり支援していくことが必要という御意見,例えば一括採用の見直しやキャリアアップにつなげていくことが重要であるという御意見,さらには奨学金,授業料負担軽減につながる経済的支援が重要であるという御意見が出されまして,その前提として大学の質の向上,構造改革の必要性も求められているという御意見がございました。
 説明は以上でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,先ほど申し上げましたように,総論の第一部,すなわち資料1‐3で申し上げますと31ページまでの部分になりますが,こちらについて御意見,御質問がございましたらどなたでも結構ですので,お願いします。
 それでは,まず宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 11ページの一番上の丸についてでございます。今まで気づかなかったので大変申し訳ないのですが,ここに「学歴等により生涯賃金には差が見られる」という一文がございますが,差が見られるということ自体が問題ではなく,学歴の下位層の生涯賃金に著しく問題があるということを指摘すべきだろうと思います。これは子供の貧困に関する記述でありますので,より言えば,単に生涯賃金の問題だけではなく,子供の貧困による教育の問題がその後の賃金をはじめ,例えば失業率や無業率など,重要な指標に影響を及ぼしているということがポイントだと思われますので,この1行は少し改良が必要ではないかと思われます。
 脚注24を見てみると,大学・大学院卒,高卒それぞれの正社員の場合の生涯賃金,それから非正規社員の場合の生涯賃金もそれぞれ記載されており,学歴による違いを数字で示しています。ですが,この数字自体,確かに差はありますが,これがどう問題なのかということは分からないわけで,差があることが問題だということであれば,差をなくすのかという話になりますので,もう少し注意深く問題を把握する必要があると思います。例えば,差の趨勢(すうせい)がどのようになっていて,今あるのかなどといったことが見えるような記述にしていただけるといいのではないかと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,百瀨委員,お願いします。

【百瀨委員】
 ありがとうございます。前回,欠席しておりますので,なかなかこの経緯が分からない点がありますが,13ページの「教員の負担」のところで,平成25年の調査結果が使われています。ですが,昨年度の調査結果が今年の4月に出されておりますので,できればそのデータに基づいて記載された方がよろしいのではないかと思います。小中学校の教員の1日当たりの学内勤務時間等々がやはり直近のデータとしてはよろしいのではないかと思いますので,御検討お願いします。
 以上です。

【北山部会長】
 おっしゃる通り,4月に調査結果が公表され,報道でも大きく取り上げられたと記憶しています。この部分は,なぜ25年の調査結果を用いたのでしょうか。

【内田教育改革推進室長】
 諸外国と比べ厳しい実態があることを客観的に示すためにOECDのデータを入れているという経緯がございましたが,昨年度の調査結果もございますので,そのデータの記載の方法に関しては検討させていただければと思います。

【北山部会長】
 それでは,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 20ページの「夢と自信を持ち,可能性に挑戦するために必要となる力を育成する」の四つ目の丸で,学力の3要素が必要になるために,初等中等教育から高等教育まで一貫して育成する教育となっているのですが,それに伴いまして一人一人の子供たちが小学校・中学校で,例えばいじめに遭うなど様々な境遇があり,次のステップに上がれないお子さんも多々いますので,その辺りのことを是非,幼小中高で情報共有などもしていただけると,こういったものにつながるのではないかと考えています。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,戸ヶ﨑委員,お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 内容とは直接関係ないのですけれども,よろしいでしょうか。

【北山部会長】
 はい。

【戸ヶ﨑委員】
 先々のことを考えると,今,思っていることを少しお話ししておいた方がいいかなと思いましたので発言いたします。この振興計画を作っていく中で,以前私からも簡単にお話し申し上げたと思うのですが,せっかくこれだけの知見が集まって作られているものなので,学校現場や教育委員会といったところに周知されること,さらには活用されるので,今のうちからある程度準備をしておいた方がいいのではないかということで,大きく二つほど意見,お願いを申し上げたいと思います。
 一つは,飽くまでも周知されるという視点での話なのですが,いわゆる学校の管理職にこの第2期振興計画の存在を知っていますかと私なりに聞いたところ,見たこともないというような管理職もいて,ましてや教員レベルでそのような話をすると,恐らく存在すら知らないという教員もいるのではないかということが危惧されます。逆に言うと,このような計画があるということを知らなくてもどうにか学校経営ができているという現状について,これがある意味問題でもあるし,不思議でもあるということを感じているところです。そこで是非お願いしたいことは,従来のように冊子で配るだけではなくて,この計画が目指している将来の教育,姿などが理解できるイメージ性の強いPR動画のようなものを是非作っていただけないかということです。いわゆる発信の準備を今からでもしていかないと厳しいと思うのですが,この計画は我が国の教育の羅針盤であるとともに,ある意味,夢を与えるものであってほしいという思いが強くします。
 今,書籍でも「未来の年表」という本がかなり売れているわけですが,日本が目指していく近未来の教育の姿を国民はもちろんですが,できれば世界の人にイメージができるような動画,それも単なる解説ではなくて,音声は一切ない,飽くまでも映像だけを見ればそれが伝わり,大体時間的には10分程度で,インパクトのあるものを作っていくといいと思います。一例で申し上げますと,インテル社が作っているようなブリッジング・フォー・フューチャーという,いわゆる橋を子供たちが作っていくという動画があります。これは音声等何もなくても,このような未来の教育があるのか,ということがよく分かります。民間企業の知見や手を借りながらできるだけドラマチックな動画を作成してほしいと思います。
 あわせて,教員の研修会やそこでの利用,コミュニティ・スクールがこれから広がっていくわけですが,そのようなときの学校運営協議会の中でも社会に開かれた教育振興基本計画ということで説明していく必要があるのではないかと思います。地域や保護者への情報提供のことに鑑みますと,先ほどの発信のPR動画以外にも,例えば,教職員支援機構で教育課程の解説の動画を発信されていますが,これは非常に好評で,教員たちもたくさん見ているわけですから,あのような解説の動画や,繰り返し利用できるようなプレゼンテーションのスライドポンチ絵のようなものを是非発信していただけると,学校側でそれらを利用して,地域や保護者等にも説明できるのではないかと感じています。
 少し長くなってしまい恐縮ですが,もう一つは活用という観点でお話ししておきますと,今後は学校基本調査や全国学力・学習状況調査をはじめとした様々な国の調査と,この基本計画と測定指標との紐付けを明確にしていくことが必要だと思っています。そうすることで,教育委員会や学校は調査のたびに本計画を意識したり,また,振り返ったりすることができて,国の計画,教育施策と自分の学校の教育活動のそれとを関連付けながら,ある意味,教育活動の成果と課題をエビデンスベースで捉えることができるようになるのではないかと思います。
 また,各測定指標の目標値と自校の達成度,それが逐次参照できるようになれば,自分の学校の教育振興の一つ一つの区切りというものが,大事な形成的な評価,単なる総括的な評価だけではなくて,形成的な評価が可能になるのではないでしょうか。要は,データの集計と公表というだけではなくて,データが逐次活用されて進捗状況が還元できるような観点から,是非,どうしたら活用されるのかということも視野に入れていくといいと思います。それを考えるプロセスを考えていけば,ワンソースワンマスターといったものがどんどん進展していって,調査がある意味削減も期待できて,信頼性も場合によっては高まるのかもしれないと思います。少なくとも調査のための調査ではなくなり,国の各調査への実施の負担度といったものも同時に減り,無理なくこの振興計画が活用されていくと思います。
 最後になりますが,意図的,計画的に教員の研修の中にもこういったものを落とし込んだり,また,メッセージとして発信したりする必要もあるのではないかと思います。少し長くなりましたが,活用,それから周知という視点で申し上げました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。周知,PRに関しては,当然ながら,今後の検討において重要な点だと思います。また,活用という点についても,よく言われるとおり,PDCAのCは,単に調べるだけでなくて,その次のAにつなげるためのチェックですので, PDCAサイクルをどう回していくかといった計画の根本にも関係してくるテーマだと思います。重要な御意見,ありがとうございます。
 白井委員,お願いできますか。

【白井委員】
 ありがとうございます。事務局の方にはたくさんの意見を本当に丁寧に反映していただきましてありがとうございます。これだけ丁寧に作っているので,先生方,あるいは親たちにもしっかり分かりやすいようなPRを行うことは本当に重要だと思います。
 その中で一つだけ少し表現で気になったところがあります。22ページの一番下の丸の家庭教育の部分で,「安らぎを感じることのできる家庭環境づくりが大切である」を割とさらっと書いてあるのですが,13ページの「家庭の状況変化」で,かなり家庭が多様化していて,なかなか理想の生育環境を提供したくてもできないということをきちんと記載している中で,「安らぎを感じることができる」は,割と簡単ではない感じがするのですよね。不登校など,様々な課題を抱えている家庭のみならず,今,メディアなどでも,それこそ偉い方や有名な方の家庭の問題など様々言われていますが,やはり皆さんが安らぎを感じることができる家庭環境をどうやって作ったらいいのかというところで皆さん悩みを抱えていると非常にひしひしと感じられるところなのですが,もし,これを書くのであれば,例えば愛情がしっかり感じられる,あるいは子供が安心することができるなど,もう少し具体的に記載いただいてもいいのではないかと感じました。
 以上です。

【北山部会長】
 今の御意見は,もう少し言葉を足した方がいいということですよね。

【白井委員】
 はい。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
それでは,次に河田副部会長,お願いします。

【河田副部会長】
 高等教育についてですが,31ページの「あわせて」のところで,設置基準や設置審査,それから認証評価制度のことが出てまいります。そこに「評価における社会との関係強化」,「評価の効率化」の2項目があるのですが,ここに是非とも,「国際性」や「国際通用性」という一言を入れていただきたいと思います。
 と申し上げますのは,金子委員が昨年の6月27日だったと思いますが,日本経済新聞に,中国の大学から頼まれて認証評価のような形で,武漢大学を視察したという話,また,中国の教育も量的拡大から質的改革・改善に転化していることをおっしゃっています。
 先週,私は永田委員が会長をなさっている大学基準協会が姉妹提携している認証評価機関である台湾評鑑協会の依頼を受けて,マカオの大学の認証評価の実地調査に参りました。そうしたところ,認証評価を行う台湾評鑑協会の委員長は台湾の大学の元学長,それから日本人の私,それから,そのほかにオーストラリアの西シドニー大学の副学長,さらにアメリカの大学の教授,北京の清華大学の教授がメンバーでした。台湾の認証評価機関の方が,正に国際化が進んでいることを実感いたしました。日本の場合,残念ながら全部内向けで,日本人が日本の大学を評価しています。それは大学基準協会もそうですし,学位授与機構もそうですし,高等教育評価機構もそうです。ですから,ここに是非,評価の効率化だけでなくて,「国際通用性」,「国際性」ということを入れていただくと,認証評価にもそのような国際化が進展するということになるのではないかと考えますので,是非よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。阿部委員,お願いします。

【阿部委員】
 何回かお休みしてしまいましたので,もし既出でしたら申し訳ありませんが,27ページの辺りで「多様なニーズを持つ者」という言葉が何度か出てくるのですが,その中に一つの例示として,「子育てをしながらの学業をやる者たちへの配慮」も一つ付け加えていただきたいなと思います。これは特に高等教育ではもちろんそうなのですが,特にそれ以前の二十歳前だと妊娠と同時に学業を諦めるという状況ですので,貧困率が非常に高くなっています。ですから,是非そのような視点も加えていただければと思いました。

【北山部会長】
 ありがとうございました。
 それでは,32ページ以降の第2部について,意見,御質問ございましたらお願いいたします。
それでは,菊川委員,お願いします。

【菊川委員】
 測定指標の関係で小さいところですが何か所かございます。60ページで,「小・中・高等学校等において通級による指導を受けている児童生徒数の増加」を測定指標候補に挙げているのですが,通級指導というのは必要性があって受けているので,数が伸びることを測定指標にすることはいいのだろうかという疑問でございます。必要がある通級指導者のうち,なかなか条件が整わなくて全員が必ずしも受けていないということがありますので,そのパーセンテージ,それが難しければ,例えば参考指標にする等の方法もあろうかと思います。通級指導の数でその増大を目標値にしたりするということに疑問を感じたというのが1点です。
 それから,62ページなのですが,「現職教員に占める当該学校種類に相当する専修免許状保持者の割合の改善」,あるいは「教職大学院の修了者の増加」が測定指標に挙がっているのですが,専修免許状を学校現場の中でどのように位置付けるかという議論は,必ずしも正式な形で出ていないのではないかと思います。例えば,専修免許状者への給与への反映や専修免許状の教員の中の位置付けなど,システムとして正式に位置付けられているのでしょうか。ですから,今のところはまだ専修免許状を持つのは個人の努力であったり,あるいは地方公共団体が大学院に派遣したりするなどといったことではないかと思います。位置付けの議論がなされているのであれば測定指標でいいのですが,その辺りはどうだろうかという疑問を持ちました。それが2点目です。
 3点目に,36ページ,指標ではないのですが,「道徳教育の推進」のところの「『特別の強化 道徳』の実施により,答えが一つではない道徳的な課題を」という表現についてでございます。確かに,「考え議論する道徳」への転換は正しい方向と思いますが,一方で,弱い者いじめはいけない,あるいは物を盗んではいけないなど,議論の余地なく答えが一つの課題もあるかもしれないので,「答えが一つではない」という表現は,なくても良いのではないかという感想でございます。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,柘植委員,お願いします。

【柘植委員】
 1点発言します。4ページの「はじめに」のところと32ページの第2部の冒頭の「考え方」というところに関する点です。
 本日最初に事務局から説明していただいた資料2の今後の日程のところの「(参考)」の10月以降の二つ目の丸なのですが,「エビデンスベースでの教育政策推進」が明確に記載されています。そもそも第3期教育振興基本計画には,二つの諮問内容があって,それでスタートして,その二つ目が「エビデンスに基づく」ということなのですよね。4ページの「はじめに」の上から三つ目の丸に,「今後5年間の教育政策の目指すべき方向性や,それを実現するために必要な施策群について,整理を行った」と,とてもうまい具合に書いてくださっています。これは第2部に該当するところだと思うのですが,例えばここに,この背景にはエビデンスベースでの教育政策推進をすることが求められているからなどといった記載が今回の資料の中にどこかあるのでしょうか。なかったように思ったものですから,それで,今,4ページのところを読み上げました。
 32ページを御覧いただくと,いわゆる一つ一つの施策群のところの基本的な考え方を載せようではないかということで,私含め何名かの委員の方からも同じような発言をされて,ここに載せていただきました。ここも基本的に分かりやすく書いてあるのですが,一言で言うと,エビデンスに基づいた教育政策をこれから頑張っていこうという文章がないものですから,何となく分かりづらいです。
 先ほど,戸ヶ﨑委員が各都道府県や市町村でもこのような計画を作っていくというお話をされていましたが,彼らにも分かりやすくアピールする看板としてそのような文言を少なくとも4ページのところと,この32ページのところには入れた方がいいのではないかと思いました。
 それから,資料1‐2のロジックモデルの施策群についてお伺いしたいのですが,この資料は計画本体である資料1‐3の後ろにくっつく形で公表されるのでしょうか。そうではなくて,この資料1‐3だけで様々議論されていくのでしょうか。
 以上です。

【北山部会長】
 事務局から,回答をお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 資料1‐1から1‐3までセットで公表や対外的な説明を行うことを検討しております。
 また,今,委員から御指摘がございましたエビデンスに関する記述でございますが,全体の中でどのような場所に記載していくかということは,今後検討させていただきたいと思いますが,現時点では19ページの下から二つ目の丸のところに,「エビデンスに基づくPDCAサイクルの確立を進めていくこと」を記載しております。

【柘植委員】
 どこにも入っていないということではないことは分かりました。
 私の先ほどの発言ですが,4ページのところと32ページの2部の冒頭のところに入れた方が恐らく国民の皆さんも分かりやすいだろうし,これを参考にして自治体が自治体版の計画を作成するときにも大きな発信になるのではないかと思い,発言しました。資料2の参考のところにもはっきり記載されていましたし,思い起こせば,そもそもこれが2年前にスタートしたときはそれが二つ目の重要な諮問の事項だったものですから,申し上げました。

【北山部会長】
 それでは,その点については修正するか否かを含め,検討いたします。
 それでは次,羽藤委員,お願いします。

【羽藤委員】
 すみません,私も柘植委員と全く同じ質問だったのでもうよろしいかと思いますが,今後,教育投資と財源確保の在り方,エビデンスベースでの教育政策推進の方策を中心に更に検討ということもございますし,エビデンスベースというところが,もちろん第1部のところでは書かれてあるので,これは適切だと思っています。ただし,第2部の教育政策の目標と施策群に入っておりませんので,できれば,基本的な方針5の「教育政策推進のための基盤を整備する」に「エビデンスベースの施策推進に向けた基盤統計情報の整備」などといったような項目を一つ設けていただければと思います。恐らく教育現場の先生方もそのようなエビデンスを少し参考にしながら,自分の教育の仕方を議論したり,修正したりといったようなことが必要でしょうし,あるいは既に大学ですと教育研究実績データベースといったものを既にお持ちの大学,整備している大学もございますので,そういった既存の活動も少し後押しするような形,無理のない範囲で少し広げていくような施策という形で少し記載できるのであれば検討していただけたらと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 それでは,秋以降に,エビデンスベースの施策の推進に関して議論する際に,第1部と第2部にどのような形で更に追記していくかを検討させていただきたいと思います。
 次は山内委員,お願いします。

【山内委員】
 64ページになりますが,「ICT利活用のための基盤の整備」の測定指標候補に関して少しコメントさせていただきます。
 前々回に私が要望させていただいた,「超高速インターネットの100パーセント整備」を今回追記していただきまして,大変事務局にはお手数をお掛けしましたが,ありがとうございました。これに関して,前々回,私はこれを必要であるという論拠として,教員が教室で動画を使う話をさせていただきましたが,それだけではないので少し補足させていただければと思います。
 先日,軽井沢にある世界中から様々なバックグラウンドの高校生が集まっているインターナショナルスクールのISAKという,結構有名な学校の授業を見せていただきました。ここは,ICTがある意味で売りではないのですが普通に一人1台ノート型のパソコンがあり,全寮制ですので各自パソコンを持って帰るような環境です。見せていただいた授業は歴史の授業なのですが,歴史を規定する要因になる地政学的な状況や人口動態的な状況をそれぞれ二,三人のグループがみんな調べ,その調べた結果を授業で発表するということを行っていました。各国政府が出しているようなデータを動画に可視化した様々な学習リソースが世界中に上がっているのですが,みんなそれを使っているのです。要するに学習者は様々な学習を進めていくときに,もはや動画を使わずに学習するということはほとんどないので,実際にプロジェクト学習やアクティブラーニングのような学習をしようとすると,大したことないように見えますが,この超高速インターネットがきちんと入っていて,普通に動画を見せられる状況にあるかどうかということは結構重要な意味を持ちますので,そのような意味でもここはとても重要な項目で,入れていただいて大変良かったと思います。
 その上で,先ほどからエビデンスの話が出ていますが,実はこの測定指標候補の中に,教員がどのようにICTを使っているかが入れられるといいですねという意見も申し上げたことがあります。これはなかなか難しいので結局,参考指標にも入らなかったというところがあります。結局,測定指標というのは取りやすいデータが比較的入り,参考指標には,まあ取りにくいけれど参考になるようなデータが入り,逆に言うと,データが取れないと参考指標にも入りません。つまり,今,我々が手にしているエビデンスは結構偏っていて,その中で結局,この施策に関しても判断していかなければいけないということです。何が言いたかったかというと,当然,ICTが整備されたり,100パーセント整備されたりすることはとても大事なことで,入れていただいて感謝しているのですが,測定指標候補や参考指標候補になっているものは「教員のICT活用能力の改善」や「児童生徒のICT活用状況」など,ある種,下位項目に来るものだと思うのですね。したがって,今回はもう,しようがないのは分かるのですが,実際に実施するときには,ある種,そもそもこの測定指標は何のためにあったのかを意識しながら是非進めていっていただければと思いまして,コメントさせていただきました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,宮本委員,お願いします。

【宮本委員】
 二度目で申し訳ないのですが,35ページの1行目に関して,赤文字で追記されています。これは,私の方で先日,追記していただきたいとお話しさせていただき,非常に工夫してこちらを追記していただいたのですが,趣旨を伝えるために少し文字を足していただけるといいと思います。例えば,赤文字の前に「日々の生活や社会に出て必要となる実践的知識や技能等に関する指導も含めた」といった文言を足していただくと,少しは通ずると思います。要するに,教科だけでは問題が解決しない,多様な学習ニーズを持っている生徒にとって生きていくために,何が必要な知識や技能であるのか。それから,社会に出て必要なもの,その辺りをよく見極めた指導が高校現場のある部分では必要ではないかということで,足していただけると有り難いと思います。
 ついでにもう2点ほど,発言させていただきます。1点目,少し前の方に戻りますが,27ページの下から二つ目の丸の1行目のところに「さらに,複合的な困難を有する子供など,多様なニーズのある子供に対して」という文言がございますが,これは子ども・若者育成支援推進法等で指摘されてきた内容だと思います。これに関して言うと,一つ文言を足していただいた方がいいと思うのですが,「多様なニーズのある子供のニーズを早期に発見し」ということで,これは,学校のプラットフォーム化がその前のところに記載されていますが,学校においてもできるだけ素早くニーズを発見し,そして年齢階層で途切れることなく適切な支援が続くというような内容になるべきところではないかと思いますので,少し御検討いただければと思います。
 2点目です。先ほども御指摘あった同じ文言なのですが,22ページの一番下の丸の1行目,2行目の「安らぎを感じることのできる家庭環境づくりが大切である」について,これは,主語は「保護者が」という意味でよろしいのですよね。つまり,保護者は安らぎを感ずることのできる家庭環境づくりを心掛けるべきであると言っております。「さらに」ということで並行して,そのための環境づくりや家庭教育支援が必要だということが記載されているのですが,この辺りはどのようなスタンスに立つかによって書きぶりが大分違ってくると思います。私自身の意見では,安らぎを感ずることのできる家庭環境づくりが大切だといっても,それができない実態の方が大きな問題だという現状があると思いますので,一言直すとすれば「さらに」ではなくて「しかし」にでもしていただき,強調点が並列にならないで,保護者の役割と同時に更に一層重要なことということにしていただいた方が,今,直面している問題に対しては対応が可能ではないかということでございます。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,丸山委員,お願いします。

【丸山委員】
 36ページ,いじめに関する測定指標候補と参考指標候補について発言いたします。年1回の問題行動調査で,このいじめの認知件数の都道府県の差が非常にあるなと見ておりました。毎回,数が多い少ないではないという説明があるのですが,まだこの認知件数という意味が十分に浸透していないのが現場だと捉えております。
 そうすると,測定指標候補の二つ目の「いじめの認知件数に占める」といった記載がありますが,認知件数の意味が十分でないとぶれが生じてくるのではないかと思っております。さらに,まだこの認知件数が十分でない段階で「いじめの解消しているものの割合」の改善を求めてしまいますと,いじめが解消しても更に経過観察は必ず必要になってくるものですから,数だけで追ってしまうことにならないだろうかということを懸念いたします。
 ですから,測定指標候補と参考指標候補の都道府県の格差はセットなので,まずは参考指標候補にある都道府県の格差を十分になくすことだけにしてはどうかと考えております。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,中井委員,お願いします。

【中井委員】
 少し先の話になるのですが,基本計画の策定に当たって,「はじめに」のところにも記載がありますが,現在,並行して進んでいる働き方改革特別部会等の議論も踏まえてということになっているわけですが,今回議論している第3期教育振興基本計画の答申が出されて基本計画の策定に反映されていくという段階で,やはりこれらの諸施策につきましては,学校現場でどれだけそれを実現できるかということについては現在言われている教員の多忙化,長時間労働の改善がしっかりとできないと絵に描いた餅になりかねないところがあるわけです。そのような中で基本計画においては働き方改革の特別部会の議論も十分反映されるということではありますが,現在のこの議論の審議経過の中では,教育施策推進のための基盤整備の小さな項目としてしか記載されていません。基本計画においては,今後5年間,正に学校現場の教員やそのほかのスタッフの充実が教育施策を充実する上で大前提になるということで,もっと大きな扱いでこのことをきちんと記載しないと,十分な教育現場での施策の実施,浸透ができないということではないかと思いますので,その点について要望という意味も含めて申し上げておきたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 次に高橋委員,お願いします。

【高橋委員】
 高等教育に関しまして第1部,第2部それぞれのところで記載を増していただきありがとうございました。13ページの下にございますように,超スマート社会において学び直しをして生産性を上げていくことが求められている中で,産業界からの期待に応えていくという指摘は,私も重要だと思います。そうであれば,55ページに記載されている学び直しをするときの経済的な支援については,実際はなかなか得られることが困難であります。通常,OJTといった企業内で研修を行うことはありますが,大学での学び直しとなると奨学金なども少なく,なかなか現実化できないことは御存じだと思います。
 そのような中で,55ページの下から二つ目の丸に,「労働者の学びに関する企業側の理解促進」とございますが,私は,企業側も産業側も期待があるのであれば,それは企業側の社会的役割として労働者の学びを支援すると,もう一歩踏み込んだ言い方をしていただければと思います。大学と企業の双方向の連携,そして大学も運営費交付金が減少している中,企業と具体的に連携しながら,そのような実践的な職業教育に関することも連携を行っていくのであれば,企業側の具体的な支援に期待したいと考えますので,もう一歩ここは突っ込んだ書き方をしていただければ有り難いと思います。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,阿部委員,お願いします。

【阿部委員】
 39ページの「健やかな体の育成」について意見を申し上げます。今回,「学校給食の実施率向上を図るとともに」と,明示的に書いてくださったことはすばらしいことだと思っております。ですが,学校給食の実施率はもう既に取っているデータなので,この時点でもし可能であれば,測定指標候補として入れていただくことによって各自治体の取組に一層拍車がかかるのではないかと思いますので,是非測定指標候補に入れていきたいと思います。
 また,この項の書きぶりが,特に小中学生を念頭に置いていると思われるのですが,子供の食の格差はむしろ中学生,高校生以上の方が大きく,特に経済階層による栄養の偏り度は,高校生以上になると非常に大きくなってきます。そういった意味では,年齢の高い子供たちの健やかな体の育成のための最低限の食事といったところについての取組についても一言加えていただければいいと思いました。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,金子委員,お願いします。

【金子委員】
 私の専門は高等教育ですが,ただこの計画において非常に重要だと思っていたことは,一種の教育のミニマムスタンダードの確保です。そのような観点から関連部分を通読していますと,少し偏りがあるのではないかと思っていました。
 一つは,以前も一度申し上げたと思うのですが,7ページ,8ページにPISA,TIMSSの結果が出ていますが,PISAの結果は平均としては確かに国際的にも上ですし,近年二,三年は上がっているのですが,PISAは1から5段階までで能力を評価しています。このうち1A,1B,2はかなり低いです。この1A,1B,2というのは,問題の趣旨自体を余りよく理解できていないのではないかと思われるところであるにもかかわらず,これは日本の場合,まだ2割ぐらいいるわけで,決して低い水準ではありません。特に諸外国の場合には,親が移民の家庭なども非常にいるということ,あるいは多民族の国も多いということを考えれば,日本は非常に好条件に恵まれたところでこのような人たちが2割いるということは決して看過できるものではありません。その下に読み能力が少し下がったというようなことも書いてありますが,基本的にはかなりの部分の学力がかなり低いです。これは15歳段階ですが,低い。しかも,かなり絶対的な差がついてしまっているということは非常に重要な問題ではないかと思います。これは,このロジックモデルの最初のところに入れていただいたような気がするのですが,審議経過報告になってからは少し見えなくなってしまっていました。
 もう一つは,先ほども宮本委員がお話になった10ページから11ページのところの書き方がそのような意味では少しぼんやりしているといいますか,余り趣旨がよく分かりません。基本的にここで言いたいことは,日本ではやはり絶対的な所得格差自体がある程度,いわゆる増える傾向にあって,その根本には教育機会自体に格差が増えているのではないか。教育格差が増えている要因の一つには家庭の背景があるし,もう一つは教育費の負担の能力があるというような形で,10ページの丸と11ページの丸に記載していることをもう1回整理し直すべきではないかと思います。
 それから,特に4年制大学のみが問題になっていますが,実は高校の就学率,それから専門学校を含めた高等教育の就学率でも差があるわけです。大学だけお金があるないという問題になっていますが,実はそのような問題では必ずしもないと思いますので,そういった意味でバランスのある書き方が望ましいと思います。
 それから,26ページ,学びのセーフティネットでは,要するに家庭背景に問題があるということで,同じスタートラインに立てるように幼稚園,保育所等々での手当を行うことは記載されています。
 それから,45ページになりますと,具体的には居場所作りといったことが言われています。ここは所得格差が拡大していて,教育機会の格差が拡大している,学力格差も拡大しているという出発点から,それはやはり非常に家庭環境に問題があるから,家庭環境の格差を是正するための初等中等段階,あるいは就学前段階での手当を行おうということで記載されており,それは分かるのですが,では学校教育は何をするのかというところは,ここにはほとんど何も記載されていません。学校教育上のセーフティネットというのは何なのか。私は,小中高を通じて学力確認,それから特に一定の段階に学力が達していない子供に対する手当は不可欠だと思いますが,そのところが全くないというのは,私は少し解せないといいますか,少し納得し難いところです。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,川端委員,お願いします。

【川端委員】
 先ほど戸ヶ﨑委員がおっしゃったことに付随するのですが,この計画の周知活用という点で申し上げたいと思います。教育をする側(がわ)だけではなくて,受ける側(がわ),保護者,それから実際に受けられる小学生,中学生,高校生も,何のために自分たちは勉強していくのだろうということを思っています。したがって,小学生,中学生,高校生は,この国はこのような方針でやっているのだということももちろん分かる年齢でありますので,そういったところから是非教育をしていくが必要だと思います。また,保護者に対しても,学校の方針の説明会がそれぞれの学校であると思いますが,それぞれの学校での思いを御説明することは当然ですが,そこに国としてこういう思いで,こういう目的でお子さんたちに教育を受けさせているということを分かりやすく御説明いただけるようなものがあったら助かります。よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,白井委員,お願いします。

【白井委員】
 今までの審議の中で見落としていた2点について,申し上げます。まず37ページの一番上の問題行動を起こす児童生徒についてです。いじめへの対応の中で,加害児童について切り捨ててしまうような対応だと,また同じことの繰り返しになるということで,「当該児童生徒の人格の成長を旨として」を足していただいたのだと思うのですが,一つ,「問題行動等を起こす児童生徒については」の「問題行動」は,必ずしもいじめに限ったことではありませんので,この前段のところといじめられている児童生徒の立場に立ったというところが,少し対応していないのではないかという点が気になりました。
 それから,いじめの問題への対応というのはやはり毅然(きぜん)とした対応と寄り添う対応のバランスがしっかりうまくとれると,加害児童に対しても被害児童に対しても,必ず解決すると体験上感じているところなのですが,まだこの文章を見ると,もう少し「毅然(きぜん)」の方が勝っている印象を受けます。「出席停止や懲戒等の措置も含め」というのは,ただでさえ毅然(きぜん)とした措置であると思いますので,その下の「毅然(きぜん)とした」を取っていただいてもいいのではないかと思っております。その方がよりバランスのとれた文章になると思います。
 もう1点は,60ページです。下から二つ目の丸の「不登校児童生徒の教育機会の確保」の3行目,「児童生徒が安心して教育を受けられる魅力ある学校づくり」と記載があるのですが,不登校の子供たちにとって,魅力ある学校だけれども行けないというのが実情です。精神疾患など様々な課題を抱えていて,本当に行きたいけれども行けないという子供たちのことを考えると,魅力を出せば行けるというものではないので,この「魅力ある」を削っていただいて「安心して教育を受けられる学校づくり」という形にしていただいた方がいいかと思います。よろしくお願いいたします。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,山脇委員,お願いします。

【山脇委員】
 私は,中井委員の意見に全面的に賛成なのですが,63ページの「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上」を読みますと,今の状況でこういった聖人(せいじん)のような教員を求めるのは余りにも酷ではないかという思いにかられます。少なくともここの中に,「この教育現場の環境を整えた上で」ぐらいのことを少し入れるべきだと思います。そうでないと,長時間労働やいわゆるモンスターペアレンツへの対応など,本来の教員に求められていることを逸脱した仕事をさせられている教員に,更にその資質能力の向上を求めるのかと読めてしまいます。少なくとも「この教育現場の様々な問題を是正した上で」ということをどこかに入れることが必要ではないかと思います。本来ならば中井委員がおっしゃったように1項目でも2項目でも,もっと割いた方がいいとは思いますが,今,審議経過報告の段階ですので,追記するだけでも必要なのではないかと思っております。

【北山部会長】
 ありがとうございます。教員の働き方改革に関しては,6月に諮問があり,初等中等教育分科会を中心に今,正に審議が行われておりますので,その諮問の趣旨等も踏まえて,書きぶりを検討させていただきたいと思います。
 次に戸ヶ﨑委員,お願いします。

【戸ヶ﨑委員】
 何度も申し訳ないのですが,資料を見ていて細かいことに気付きましたので,発言させていただきます。一つは34ページです。下から二つ目の丸に「全国学力・学習状況調査の実施・分析」と書いてありますが,この中に一つ,やはり悉皆(しっかい)で調査を行っているという意味は何なのかということを考えたときに,実施・分析だけであれば別に悉皆(しっかい)でなく,抽出であってもできるのではないかという論になってしまいますので,やはり「活用」という言葉が是非必要なのだろうと思います。自校それぞれの学校全部で行っているということは,それが活用されて初めて意味を成すものではないかと思いますので,「実施・分析・活用」という言葉を入れていただけたらいいと思いました。
 それから,36ページ目のいじめのところなのですが,「いじめ等への対応の徹底,人権教育の推進」の2行目の「基本的な方針」は恐らく改訂されたものも含んでの方針ということなのだろうと思いますが,「内容について周知徹底を図る」という言葉で実は終わりではなくて,様々な重大事案が起こっているその背景・問題を分析していくと課題となっているのは,自校の情報共有がなされていなかったことが必ず指摘されています。したがって,このところは「各学校におけるいじめの積極的な認知を徹底」ではなく,「認知とともに情報共有を徹底する」の方がいいと思いました。
 先ほど周知と活用ということで御意見申し上げました。周知は動画という視点でいいのですが,この活用のところで一言補足を申し上げますと,前々回ぐらいに測定指標がただ単に国で示したものではなくて,測定指標が測定指標を生むというお話をさせていただきました。新たなものを生んでいくという視点を考えていったときに,やはり何が必要かというと,そこにエビデンスが必ず不可欠なのではないかと思います。前々回のときにも申し上げたかと思いますが,当初あったこのエビデンスの言葉が,様々な理由があるのだろうと思いますが,だんだんその影が薄くなってきたということで,先ほどから出ているように,このエビデンスという言葉をもう一度クローズアップしていただければと思います。活用のためにもエビデンスは非常に必要だと認識していますので,御検討よろしくお願いします。
 以上です。

【北山部会長】
 ありがとうございます。
 それでは,永田委員,お願いします。

【永田委員】
 ありがとうございます。高等教育関係のところですが,49ページ,50ページの「目標(8)イノベーションを牽引(けんいん)する人材の育成」について意見を述べさせていただきます。イノベーション創出を強調することは良いのですが,全体を通じて基盤的な研究や教育の重要性に関して言及がありません。例えば,「研究力強化の推進」を見ると,「世界の中で存在感を発揮していくため,学際的・分野融合的な研究や国際共同研究を推進する」ことが重要だと記載されています。しかし,高いレベルの教育研究が基盤となって,インターディシプリナリーな状態が引き起こるわけです。イノベーションという項目でまとめているからだとは思いますが,その視点が欠けていると思います。したがって,「基盤的な研究分野の強化」が明記された上で,それに加えて,「学際的・分野的」と続けないといけないのではないかと思います。
 それから,同じような観点なのですが,今回,29ページの下から30ページにかけて私立学校の振興について追記いただいたのは大変結構だと思います。ただ,教育施策推進の基盤を整備する項目の中で,私立学校の振興だけが別立てになっていることに違和感があります。国公立大学については,その一つ前の項目で,施設整備については記載されていますが,基盤的な教育研究の充実については記載がありません。このままでは,建物やインフラ整備以前に基盤的な教育研究あるいは経営が問題となるのは私立学校のみである,という感じを受けます。国立・公立の運営費交付金削減の是非がようやく問われつつある中で,国公立学校についても,基盤的な経費を確保した上で「このようなインフラについては」という記載にすべきではないかと思います。
 要するに,一方は主に施設整備で,もう一方は教育研究のコンテンツに大きく関わる内容になっています。このように,問題の質が大きく異なっているという点について,もう少し配慮いただきたいということです。国立・公立の基本的な支援も充実させるのだ,という点を追記することについて是非ともお考えいただきたいと思います。

【北山部会長】
 ありがとうございます。基礎研究の部分に関して,50ページの二つ目の丸の4行目以降を引用しておられましたが,その直前の二,三行目に,「基盤となる学術研究と戦略的・要請的な基礎研究の推進に向けて」と記載があります。御意見としては,この部分とは別に,基礎研究に関して更に記載を行うべきといった御趣旨でしょうか。

【永田委員】
 御指摘のあった文章は,「イノベーションを牽引(けんいん)する人材を育成するため」になっていますが,大学の研究はイノベーションだけが目的ではありません。もちろんイノベーションに関係することもありますが,哲学者,あるいは数学者の研究目的は何かということです。つまり,大学の研究の全部が「イノベーションを牽引(けんいん)する」という文脈で書かれておりますが,本当にそれでいいのかということを述べさせていただいています。イノベーションも重要だけれども,我が国はその基礎的な体力があるからイノベーション牽引(けんいん)することができる,となるのではないかと思うのです。

【北山部会長】
 その点については,目標(8)が「イノベーションを牽引(けんいん)する人材」となっているためかとも思いますが,御趣旨は承知いたしました。
 本日様々な御意見を頂きました。まだ追加で御意見があろうかと思いますが,その際は事務局にお寄せいただければ対応いたします。皆さんの御意見を踏まえた具体的な修正内容につきましては,私と事務局に御一任いただきたいと思います。事務局と相談の上,適宜修正すべきところは修正し,皆様にはメール等で御報告させていただきたいと思います。
 冒頭,今後の日程ということで説明がございましたが,9月28日に行われる総会,それから各分科会に審議経過を報告させていただき,御審議いただきたいと考えておりますので,あらかじめお伝えしておきます。一方,文部科学省におかれては,審議経過報告を一般に広くお知らせして意見を募っていただきたいと思いますので,そちらも併せてよろしくお願いします。
 そのほか何か御意見ございませんでしょうか。現時点では意見が今ないということでございますので,審議はこれで終わりたいと思います。
 次回の日程について事務局から簡単にお願いします。

【内田教育改革推進室長】
 本日は貴重な御意見を賜りまして誠にありがとうございました。今,北山部会長からもお話がございましたが,資料2に今後の日程を記載しております。次回は10月17日に,関係団体ヒアリングを予定しております。詳細については部会長と御相談の上,後ほど事務局から御連絡させていただきます。

【北山部会長】
 それでは,本日はこれで終わります。本日はお忙しい中,お集まりいただきまして,ありがとうございました。

―了―

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

改革企画係
電話番号:内線:3279

政策審議第一係

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