学校教育法改正に関する主な検討

 団体名:指定都市教育委員・教育長協議会

1.学校種の目的及び目標の見直しについて

 今まで、教育基本法と学習指導要領との間にはギャップがあり、国を愛する心情を育てることなどは、教育基本法の規定よりも先に学習指導要領に示された経緯があった。
 学校教育法の目的及び目標は、この2つを明確に結びつける大綱的基準として機能するように改めるべきであると考える。
 幼児教育の重要性については、語るまでもないところである。幼児を取り巻く環境は大きく変化してきている。教育基本法の改正により、新たに家庭教育及び幼児期の教育について位置づけがなされたが、学校教育法にも目的及び目標として適切に盛り込むべきである。
 さらに、例えば「情報教育」や「規範意識」というような今日的な課題についても触れるか否かについて、検討する必要があると考える。

2.義務教育の年限を9年とする規定について

 現行の6、3制に問題があるのか、あるとすればどのような改革が必要か等については、慎重かつ時間をかけた議論が必要である。
 また、いわゆる「中1ギャップ」等の課題を踏まえ、学習指導要領において、9年間の連続性・系統性を一層図っていくことなどにより、小学校及び中学校のより密接な連携が必要ではないかと考える。

3.学校の評価等に関する規定について

 学校評価に関しては、学校運営の改善とともに保護者や地域から信頼される学校づくり、さらには教育の質の保障と向上という視点から、大変重要であると考える。
 学校評価については、すでに学校設置基準等が規定されており、その中で、自己評価の実施と公表について述べられている。
 また、現在検討が行われている評価システムの中で、評価する側のメンバーの育成を含め、外部評価をすべての学校で実施できるかという懸念がある。さらに、第三者評価についても今後どのように制度化されるのかが問われており、十分な検討が必要である。その際に、国の機関による第三者評価については、国による統制強化にならないように慎重に対処すべきである。
 併せて、既存の学校評議員制度との整合性を図る必要がある。現在、学校評議員が外部評価の評価者となっている場合がある。そのため、学校評議員の役割分担を明確にした緻密な制度設計を進めていくことが重要である。

4.副校長その他の新しい職の設置について

 現在、様々な分野から学校への変革や要望が高まり、学校はどのような課題に対しても、柔軟かつ機動的に対応できるようなマネジメント力の強化が求められている。
 特に、時代の変遷とともに、現在の学校組織では、課題を解決するには制度上の限界があり、校長、教頭、教員の組織では、十分に対応が取れない状況にある。
 そのため、解決策の一方法として、新たな管理職として校長や教頭を補佐する「副校長」や「主幹」制度の導入が必要である。そして、新たな職の導入によって組織的な学校経営ができるように制度化を進めるとともに、管理職のマネジメント能力の向上を図ることが重要であると考える。ただし、すでに一部の自治体では、学校経営上の課題を解決するため、「管理職ではない学校現場のリーダー」としての「新たな職」を導入している場合もあるため、副校長その他の制度の導入にあたっては、調整が必要な場合も考えられる。

教育職員免許法等の改正に関する主な検討事項

1.教育職員免許制度の改善(教育職員免許法の改正)

 教員は、児童・生徒の心身の発達にかかわる専門職であり、その活動は、児童・生徒の人格形成に大きな影響を与えることとなる。教員としての資質能力は、教員養成・採用・現職研修の各段階を通して形成されていくものであり、教員生活の全体を通して、その資質・能力の向上を図ることが求められている。
 そのため、教員一人ひとりが自己の資質能力の向上のために一層研鑽を積むことが強く求められるとともに、教員としての適格性や専門性を適切に判断することの重要性が高まっている。
 現在、教職員免許制度は、終身有効の教員免許状を授与する制度であるが、この制度については、教員免許状の授与に際して、実際の教科等の指導力や適格性等を含めた教員としての全体的な資質能力は必ずしも十分に判断されていないことなどが指摘されている。
 このような状況に鑑み、教職員免許制度の改善については、更に議論が重ねられることを期待する。

2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法の改正)

 学校教育の成否は、その直接の担い手である教員の資質能力に負うところが大きく、指導力が不足している教員の存在は、児童生徒に大きな影響を与え、保護者等の公立学校への信頼を大きく損なうものである。
 指導力不足教員の認定に当たっては、各都道府県や政令指定都市でそれぞれ、指導力不足教員の基準を定めているが、認定の基準については、「児童または生徒の心を理解する能力や意欲に欠ける」といった項目基準を定めている教育委員会もあれば、「児童生徒を適切に指導できない」と抽象的な表現にとどめる教育委員会もあり、また、認定後の研修も、研修期間の上限が「1年」や「上限なし」と、教育委員会により様々である。
 そのため、国において、指導力不足教員の統一認定基準のようなガイドライン等を定めることが必要であると考える。併せて、指導力不足教員に対する共通な指導・研修体制の確立が必要である。
 さらに、認定にあたっては、校長及び教育委員会、学校評議員、学校運営協議会委員の評価を最も重視すべきであり、保護者、児童・生徒の評価は、当事者であるが故に、単に当該教員に対する主観に左右される恐れがあるため、教員評価にあたっては、校長等と同格にするのではなく、参考意見とするべきであると考える。
 また、指導力不足教員に対する厳格な運用により、教員として不適格な者として分限制度が適用できるように法令等の改正も視野に入れるべきである。

地教行法改正に関する主な検討事項

(1)教育委員会の責任体制の明確化

 専門性の高い教育長に対して、教育委員が様々な立場から自由に意見を述べることができるよう、教育委員に対しては、教育行政運営にかかる情報提供や説明が十分にされなければならない。
 また、教育委員会(教育委員)と教育長及び事務局が、適度な緊張関係を保つことが必要である。
 住民による意思決定(レイマン・コントロール)が機能するために、教育委員会(教育委員)が事務執行状況の監視・評価を行うことに特化することや、教育委員会(教育委員)の定数を弾力化するなど、より広く地域住民の意向を反映する仕組みを構築することなどを検討するのも必要と思われる。その流れで、教育委員会における教育長の役割・責任も明確にされるものと考える。併せて、教育委員会形骸化論を払拭することも必要である。そのために、教育委員長の常勤化や、教育委員会のすべての事務を掌る教育長が、同時に教育委員の身分も併せ持つという現行の規定の見直しも含めて、検討を進めるべきであると考える。

(2)教育委員会の体制強化

 教育委員会(教育委員)は、各界から人格が高潔で、教育に関し見識の高い方を選任しており、学校現場や社会教育施設を視察したり、首長や住民と意見交換を重ねていくことで自然に教育行政の理解を深めているため、研修等の必要性については、各教育委員会で独自に判断すべきものと考える。
 教育委員会(教育委員)の規模の適正化については、人口規模や面積で一律に共同設置や統廃合基準を定めるのではなく、それぞれの地域の事情を考慮した緩やかな指針にとどまるほうが好ましい。

(3)教育における地方分権の推進

 教育委員数の弾力化は検討するべきだが、それぞれの地域の事情も考慮し、一律にするべきではないと考える。
 教育委員会と首長の所掌事務についても、同様に考える。
 私立学校に対しての教育内容等についての専門的な指導・助言は、私立学校の独自性を尊重すべきだが、義務教育段階での生活習慣の改善などを啓発・発信すること等、教育委員会及び首長の果たすべき役割もあると考える。

(4)教育における国の責任の果たし方

 あくまで、市区町村、学校現場が義務教育の実施主体である。
 教育委員会の再生は地方分権の立場から考えるべきであり、それぞれの地域が権限と責任を持って教育に取り組むことが基本である
 教育行政は、国と地方の適切な役割分担のもとで進めていくべきであり、国の責任で行うのは「目標設定とその実現のための基盤整備」と「教育の結果の検証」にとどめるべきであり、国の教育委員会に対する関与については、問題点等の把握やチェック機能を目的とした第三者的な機関を設置する等、その中立性・透明性が確保される必要があると考える。

(5)その他

学校運営協議会設置校(コミュニティスクール)等への寄付文化の醸成について

 学校運営協議会の設置拡大及び地域の参画意識をより高め,効果的な学校運営を図るため,学校運営協議会,又は学校運営協議会が創設するファンドへの寄付金に対する税制上の特例措置を講ずるなど,地域・民間の力を活かした「寄付文化」の創出につながる施策を実施すべきである。
 関連法令:地教行法,所得税法,法人税法等

提案の趣旨
  • (1)公立学校の再生に学校運営協議会の設置(コミュニティスクール)が効果を挙げている。
  • (2)学校への支援の気運が高まる中で,個人が学校に寄付を申し出る,あるいは学校が寄付を募る場合もあるが,現行制度上は国や地方公共団体に対する寄付でないと,所得税の寄付金控除が認められない。
  • (3)地方自治体が指定寄付として受け入れた場合は寄付金控除の対象となるが,予算上議会の議決を経てからの支出となり,運営経費等随時必要な支出ができない。また,地域の学校を地域で支えるコミュニティスクールの趣旨が生かせない。
  • (4)学校運営協議会への寄付は,コミュニティスクールの活動を推進する,いわゆる「コミュニティファンド」の基本財産として,学校の自律性を高め,保護者や地域の方々の学校への参画を推進する一つの源である。
  • (5)そのため,国民が教育の充実に貢献する活動に対して自主的に浄財を提供する「寄付文化」の創出につながる施策を実施されるべきである。
  • (6)具体的には
    1. 学校運営協議会又は学校運営協議会が創設するファンドに法人格を有することができるよう「地方教育行政の組織及び運営に関する法律(第47条)」の規定の見直し
    2. 1により法人格を有した学校運営協議会又は学校運営協議会が創設するファンドが寄付控除の対象となる「指定寄付金」の指定が認められるよう「所得税法施行令第217条第1項」及び「法人税法施行令第77条第1項」の規定の見直しを行い,大学等の独立行政法人と同様の扱いとされたい。
参考1

 (1)現行法令により所得税の寄付金控除が受けられる特定寄付金の例

    1. 国や地方公共団体への寄付金
    2. 指定寄付金(社会福祉法人への寄付等)
    3. 特定公益増進法人(私立学校法人・日本育成会・日本赤十字社等)への寄付金
    4. 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
    5. 認定NPO法人に対する寄付金(現在48団体)
    6. 政治活動に対する寄付金

 (2)寄付金控除額
 (総所得金額等の30パーセント又は寄付金額のいずれか低い方)-5,000円

参考2

寄付文化の醸成に伴う必要な法改正等について

  • (1)地教行法の改正(学校運営協議会又は学校運営協議会が創設するファンドが法人格を有するため)
    地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の規定の見直しを行い,以下の条文を新たに追加する必要がある。
    • 第47条の6 教育委員会が認めた学校運営協議会は,その学校の所在地において登記することによって法人となる。
    • 2 この法律に規定するものの外,学校運営協議会の登記に関して必要な事項は,政令で定める。
    • 3 学校運営協議会に関して登記すべき事項は,登記した後でなければ第三者に対抗することはできない。
  • (2)所得税法及び法人税法の改正(法人格を有した学校運営協議会又は学校運営協議会が創設するファンドが寄付控除の対象となるため)
     「所得税法第78条第2項第3号」及び「法人税法第37条第4項」の適用を受けるために,「所得税法施行令第217条第1項」及び「法人税法施行令第77条第1項」の規定の見直しを行い,以下の条文を追加する。
    • <所得税法施行令>を追加
      • 第217条 法第78条第2項第3号(公益の増進に著しく寄与する法人に対する寄付金に規定する政令で定める法人は,次に掲げる法人とする。
        • 一 独立行政法人
          (省略)
        • 七 学校運営協議会
    • <法人税法施行令> を追加
      • 第77条 法第37条第4項(公益の増進に著しく寄与する法人に対する寄付金)に規定する政令で定める法人は,次に掲げる法人とする。
        • 一 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人
           (省略)
        • 七 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の6に規定する学校運営協議会
           なお,「所得税法第78条第2項第2号ロ」及び「法人税法第37条第3項第2号ロ」の改正による税制上の特別措置では,募集目的,募集対象事業,募集期間が限定されることから,日常の教育活動を支援することを目的とする学校運営協議会に馴染まない。

市町村独自の手当等支給制度について

  1. 関連法令:地教行法,市町村立学校職員給与負担法
  2. 現状
    • 基本的には,県費負担教員が市町村立学校において十分な教育活動が行えるよう,国・都道府県において,手当等の予算の確保が必要である。
    • ただし,教員は,学校設置者であり,地域の教育に責任を持つ市町村の方針に基いて様々な教育活動に従事している。
    • しかし,都道府県が定める給与条件は画一的であることから,市町村の実態が適切かつ十分に反映されたものとはなっていない。
  3. 具体的な提案内容
     市町村が独自に企画する地域の教育課題に即応した職務や研修に,教員が主体的に従事した場合,市町村の独自条例にもとづき,予算措置のうえ,活動の実態に応じて,別途,手当や研修費,研修旅費を支給できる制度を設ける。
     ⇒ 新たな職務や研修に対して措置する給与であり,決して「給与の二重支給」ではない。また,都道府県の財政負担を軽減する意図では毛頭ない。
    • (主な内容)
      • 教育課題の解決に意欲をもって積極果敢に取り組む教員への研修費の支給
      • 市町村が教育課題に応じて企画する研修に参加する教員への研修旅費の支給
      • 校長,教頭を補佐し,管理職に準じた役割を担う市町村独自の職である「副教頭」等への職務手当支給
      • 卓越した指導力を有し,「スーパー教師」として,全市レベルで指導力向上の任に当たる教員への手当支給 など
参考

 市町村立学校の教員の給与・手当制度に関する法令

  • (1)市町村立学校職員給与負担法
      市町村立学校の教員の給与(給料,手当及び旅費)は,都道府県が負担するものと定められている。
  • (2)地方公務員法(抄)
  •   第25条 職員の給与は,…(略)…条例に基いて支給されなければならず,又,これに基かずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。
  • (3)地方教育行政の組織及び運営に関する法律(抄)
    • 第42条 県費負担教職員の給与,勤務時間その他の勤務条件については,…(略)…都道府県の条例で定める。
    • 第43条 市町村委員会は,県費負担教職員の服務を監督する。
    • 第45条 県費負担教職員の研修は,…(略)…市町村委員会も行うことができる。

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初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室)