中央教育審議会 教育制度分科会・初等中等教育分科会における意見発表について

平成19年2月26日

中央教育審議会
教育制度分科会・初等中等教育分科会
分科会長 梶田 叡一 様

全国公立学校教頭会
会長 松島 健治

 貴分科会が、第4期中央教育審議会設置以来、教育職員免許法・地方教育行政の組織及び運営に関する法律・学校教育法等の改正について審議を行い、我が国の教育制度および義務教育の在り方について議論されていることに深く敬意を表します。全国公立学校教頭会といたしましても議事録等を精査しているところですが、この度、意見表明の場を与えていただきましたことに心より感謝申し上げます。全国公立学校教頭会3万2千余名会員の総意として、下記により意見表明いたします。

資料2‐1 4. 副校長その他の新しい職の設置について

1 副校長職の設置について

 学校教育法第28条4項で「教頭は、校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」と規定されています。この規定から法制度上、教頭には、校長の補佐、校務の整理という2つの主たる職務と、児童・生徒の教育という副次的、補充的職務が予定されていることがわかります。しかし、その職務権限については、必ずしも明確ではありません。
 東京都等においては組織編制権に基づき、教頭を副校長と位置づけ裁量権を与えていますが、各地方自治体の取り組みに任せることなく、国として法令整備を行うことが大切であると考えます。
 また、教員評価システムの導入等、教頭にかかる負担は、ますます増大しています。教頭本来の職務は、学校のマネージメントです。学校教育法施行規則10条における、教頭の資格については第8条の校長の資格に準ずるとされました。民間人教頭の任用が可能になったことからも、「及び必要に応じ」の解釈については、授業を持つことが常態化したものではないととらえるべきであると考えます。
 本全国公立学校教頭会の調査によりますと、全国で、教頭の未配置校は小規模校を中心に約300校、学級担任をしている教頭は約600人に上っております。
 新聞報道によりますと、改正案では、校長‐教頭に加えての、副校長その他の新しい職の設置は任意とのことです。しかしながら、副校長職の設置に当たっては、職務権限について法令による整備を図られるとともに、学校教育法28条「ただし、特別の事情のあるときは、教頭または事務職員を置かないことができる」、また4項における「及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」との規定は削除し、必置の職とされることを望みます。

2 民間人教頭の任用について

 優秀な教員が必ずしも優秀な管理職とはなりえないという観点から「スーパーティーチャー」の議論が起きたとき、全国公立学校教頭会では、このような制度ができたら管理職を志す教員は皆無になるのではないかという議論をいたしました。また、民間人校長が登用された際も、その職務からして教頭への民間人登用は困難との判断をいたしました。しかしながら、今、教頭への幅広い人材の確保が提言され、本会も、現在通常に行っている教頭の職務と、社会から求められる教頭の職務の整合性について改めて研究を進めています。
 学校教育法施行規則に規定された、民間人教頭の任用は、学校運営上特に必要な場合の「例外的措置」であり、校長・教頭ともに「登用の原則」は、教員免許状を有し、教職経験があること、登用試験に合格すること等であります。よって民間人教頭の登用にあたっては、円滑な学校運営が行われるよう、十分な配慮を行ったうえで、個々の任用や人事配置が行われるような手立てを講じられることを望みます。

3 主幹制度について

 既に平成10年の中教審答申「今後の地方教育行政の在り方」の中で、学校の自主性・自律性確立のために、学校運営組織の見直しを行うことの必要性が指摘されました。
 学校の組織的運営は、学校教育を改善する、一番の力となるものす。しかし現実は、組織的運営にはほど遠い実態の学校が多々存在することは衆知の事実です。学校を組織的に運営するためには各種主任等の位置付けが今以上に明確にならねばならず、中間管理職ではない指導職としての主任では不完全なものといえます。
 東京都で導入された「主幹制度」については、現在の学校運営組織には、1.意思決定のシステムが十分機能していない、2.教職員間に横並び意識がある、3.学校組織が鍋蓋構造になっている等の問題点を指摘した上で、教頭を補佐し、教諭等を指導・監督する「主幹」を置いたものであり、学校を組織的に運営するという観点から積極的に評価すべき制度です。
 このような施策を財政上実行可能な都道府県のみが都道府県単位で行うのではなく、国レベルで制度化することを求めたいと考えます。中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月)の戦略3(地方・学校の主体性と創意工夫で教育の質を高める)でも述べておられますが、「学校運営を支える機能の充実のため、管理職を補佐し、一定の権限を持つ主幹などの職を置くことのできる仕組み」を、都道府県の裁量に任せるだけでなく、学校教育法を改正し、全国一律の職とすることが必要と考えます。
 ただし、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(義務教育標準法)」による教職員定数の改善は、財政問題から、進みが遅くなっております。主幹制度など新たな職を置く場合、教職員定数を改善することがぜひ必要です。定数改善なしでは、教諭が主幹を、教頭が学級担任を兼ねることになり、職を置くねらいを達成することはできません。

資料3‐1 1. 教育職員免許制度の改善(教育職員免許法の改正)

4 教育職員免許制度の改善について

 中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月)の戦略2における「教師に対する揺るぎない信頼を確立する」ためには、信頼される質の高い教師の育成が必要です。さらに、中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度のあり方」(平成18年7月)で「時代の進展に応じて更新されるべき教員の資質能力を定期的に刷新する」とし、教員の専門性の向上が期待できるとされました。
 教員免許授与時に終身有効だった免許状に途中から有効期限を設けることについては、公共の要請により、合理的な範囲内で新たな制約を課すことは許容されるとされています。信頼される教育を担っていくためには、更新制による刷新が必要であることも確かです。
 多くの教員は、誠実で今日的な課題を的確にとらえ対応しています。しかし、そうでない教員がいることも確かです。「一部の教員のためになぜ?」「命を預かる医師でも更新制はないのに」と多くに教員は思っています。
 しかし、教員の公共性や子どもへの影響力を考え、「負担が多少増えるのは仕方がない。子どものための研修だ。」と考えを変えていく必要があると考えます。
 教員の専門性育成に資する形で運用されるような立法措置を講じられるよう望みます。また、研修にあたっては、学校運営に支障がでない措置を望みます。

資料4‐1 (4). 教育における国の責任の果たし方

5 義務教育費国庫負担制度について

 全国公立学校教頭会は、一貫して、「義務教育費国庫負担制度は、全国すべての学校に、必要な教職員を確保し、都道府県間・市町村間における経済的格差に基づく教職員配置や教職員給与水準の不均衡を生じさせないことを保障するもので、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、国家として必要な極めて重要な制度」と考えています。もとより義務教育諸学校は、市町村又は都道府県にその設置義務が課せられ、実施主体は地方とされているものですが、憲法上の国民の権利・義務である義務教育無償の原則を実質的に保障し、教育の機会均等と水準の維持向上を図ることは「国家としての重要な責務」であり、この理念に基づき実施されてきた我が国の義務教育制度は、今なお世界に誇る制度と考えています。

 以上、全国公立学校教頭会の見解の一部を発表させていただきましたが、地方分権の流れの中で、「義務教育費国庫負担制度堅持」そして、義務教育においては政府・文部科学省の役割を今以上に果たしていただきたいという考えを持っております。一教育団体として大きな期待を持って審議を見守るとともに、委員の皆様の高い見識を応援いたしますので、今後とも十分な審議をお願いいたします。

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初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室

(初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室)