参考資料8 教育における地方分権の推進に関する提案-概要版-

平成19年2月14日
全国市長会
教育における地方分権の推進に関する研究会

1.教育と地域における人材の育成

1.地域に根ざした教育の必要性と市町村の主体的かかわり

  • いじめをはじめとする昨今の教育現場における諸問題に対処するには、国よりも教育現場に近い地域、或いは市町村において迅速かつ適切に対応することが最も効果的。
  • 教育は、国よりも住民に身近な基礎的自治体である市町村が主体的にかかわるべき。

2.教育における市町村の責任

  • 教育は、市町村における総合行政の重要な一分野であるとともに、他の行政部門との連携など、地域・社会における総合的な取組が必要。
  • 教育現場に近い「市町村の教育力」を高め、住民の負託を受けた市町村長の主導により、市町村の主体性と責任において、迅速で的確な教育行政への対応を図ることが必要。

3.国と地方の役割分担の再構築

  • 国がナショナルミニマムを確保した上で、地方によるカリキュラムや授業時数の弾力的な編成などを可能にするとともに、地域の文化や様々な実情等に応じ、地域住民の意向を反映した教育を行うことができるよう、国は制度改正を行うべき。

2.市町村への権限・税財源の移譲

1.市町村が主体となった制度設計

  • 市町村がより適切な教育行政を行うためには、義務教育の機会均等、水準確保、無償制等を、引き続き国の責任において行った上で、市町村が学級編制権、教職員定数権、教職員人事権の移譲等を踏まえ、制度設計を行う仕組みにすることが必要。

(1)学級編制権、教職員定数権

  • 少人数教育、特別支援教育・外国人児童生徒教育等を考慮し、学級編制の在り方については、地域の実情に応じて行えるようにするべき。
  • 学級編制権と教職員定数権を一括して、中核市をはじめとする都市自治体に移譲することが必要。

(2)教職員人事権等

  • 政令指定都市・中核市のみならず、都市自治体に対し、教職員の資質の向上につながる研修権はもとより、所要の税財源措置と併せて人事権を早期に移譲することが必要。
  • 小規模な自治体等に配慮し、広域的な人事交流を行うため、関係市町村等で構成する「協議の場」の設置が必要。

2.必要な財源の確保

  • 地方自治の理念の下、基礎的自治体である市町村に教育に関する権限を移譲することは当然であり、その権限を適切に執行できるよう、所要の税財源措置が必要。

3.教育委員会制度の見直し

1.教育委員会制度の見直しの必要性

  • 現行教育委員会制度は、1地域の実情に応じた臨機応変な行政が展開しにくい、2合議制であるため、迅速な対応が難しい、3複数の教育委員による執行体制であるため、責任体制が不明確である等の弊害が指摘されており、その見直しが喫緊の課題。

2.教育の中立性の確保

  • 教育行政は特に住民の関心が高く、常にチェックを受ける分野である。何よりも、首長は住民からの負託を受けて選出されており、首長個人の信条が政治的な偏りとなって行政の執行に反映されることはなく、中立性は確保される。

3.教育委員会設置の選択制と地教行法の改正

  • 行政全般に責任を持つ市町村長が、一体的に教育行政に取り組むことができるようにするため、法改正により、市町村における教育行政の実施について、教育委員会を設置して行うか、市町村長の責任の下で行うか、地方自治体が選択可能な制度とするべき。

4.地域に応じた教育の推進

1.市町村が直面している課題

  • 市町村が直面している課題には、家庭と学校だけでは対応しきれない問題も多く、地域の問題として社会全体で取り組み、住民が参加する協議会の設置等、問題解決のための体制整備を行うことが必要。

(1)社会環境問題への対応

  • 子どもの育成に大きな影響を与えている情報化社会の進展や、利潤を重視した企業の経済活動に伴う問題については、大人社会の反省に立って、家庭はもとより、社会全体としてその解決に向けた取組を推進するべき。

(2)各教育関係機関との連携

  • 社会環境の変化等により、多様な教育が必要となっており、家庭と学校だけでは対応しきれない場合も多いことから、地域の各教育関係機関や企業との連携・協働により、その地域の特色に応じた教育を推進することが必要。

(3)幼児教育の在り方

  • 幼児期は、人間形成の基礎を培い、子どもの個性を育むために重要な時期である。幼児教育における様々な問題を解消するため、家庭・幼稚園・保育所・小学校・地域社会が一体となって取り組み、よりよい幼児教育の推進のための環境づくりを行うことが必要。

(4)外国人児童生徒への対応

  • 外国人の子どもの中には、経済的な問題、文化や言葉の問題により就学する機会を与えられずにいる場合も少なくない。こうした問題は、国際化の進展に伴い、今後ますます増えると思われ、外国人学校等による受入体制の整備、義務教育に該当する年齢の外国人児童生徒の就学義務化や就学システムの整備等、早急な対応が必要。

(5)教員を巡る課題への対応

  • 指導力に欠ける教員の問題、家庭からの過大な要求への対応や煩雑な事務等による教員の多忙感の問題等、教員を巡る諸課題への対応が求められている。補助教員や民間からの専門科教員の採用、不適格教員の他の職域への転換システムの構築、また、家庭・学校間の問題に客観的に対処できる第三者機関の設置等の検討が必要。

(6)学力の問題点

  • 日本の子どもの学力が国際的に低下傾向にあることや子どもの学力が高低二極化傾向にあるなどの問題が指摘されており、また、障害を持つ子どもや外国人児童生徒等への学力保障も十分ではない。
  • 各学校の実情を踏まえた少人数指導や複数担任制が可能となる人的配置、特別支援教育等を推進するための人員配置等が必要。

(7)市町村合併等に伴う公立小中学校の統廃合への対応

  • 市町村合併等に伴い、公立小中学校の統廃合を進めている自治体があるが、この問題については、市町村において総合的な検討を加え、対応することが肝要。

2.地域社会における教育目標の明確化

  • 地域がよりよい社会をつくっていくために、社会に貢献できる人材を育成することを目指すなど、教育について、家庭、学校、地域が密接な連携の下、目標とそれぞれの役割・責任を明らかにすることが必要。
  • 地域の特色を活かし、地域自らの責任で人間を育成していくとの認識の下、国による抜本的な制度改革と併せ、教育に関する条例の整備の検討など、「教育における地方分権の推進」を真摯に目指すことが必要。

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(初等中等教育局初等中等教育課教育制度改革室)