教育制度分科会(第29回) 議事録

1.日時

平成25年8月7日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

三田共用会議所 1階 講堂

3.議題

  1. 教育行政における国、都道府県、市町村の役割分担と各々の関係の在り方について
  2. 学校と教育行政、保護者・地域住民との関係の在り方について
  3. その他

4.議事録

【小川分科会長】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第29回教育制度分科会を開催いたします。本日はお忙しいところ、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日の会議には、後ほど義家政務官も御出席いただく予定と聞いております。
 では、本日の資料について、事務局から確認をお願いいたします。

【堀野企画官】  それでは配付資料につきまして確認させていただきます。議事次第にございますように、配付資料として資料1から資料5と参考資料がございます。不足等ございましたら、事務局までお申しつけください。

【小川分科会長】  よろしいでしょうか。資料などの不足がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。
 では、議事に入る前に、今日配付をしております資料5にありますように、7月31日付けで全国知事会から「教育委員会制度の見直しに関する意見」という意見書が、下村文部科学大臣に提出されております。この内容について、橋本委員から御説明を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【橋本委員】  はい。ありがとうございます。7月31日に全国知事会からの意見ということで、文部科学大臣、それから総務省の方に、文教環境常任委員会委員長の佐竹秋田県知事が要請活動を行ってまいりました。その内容につきまして、資料5が付いておりますので、御覧いただきたいと思います。
 問題点がどこにあるかということについては、皆さんも考え方が共有されているんじゃないかと思いますけれども、ここに書いてございますように、責任の所在が不明確とか、意思決定に至る迅速性の欠如、審議の形骸化、そういったことを踏まえて、どう見直せばいいかということについては、同じような考えを持っておりますが、その直し方について、「記」について御説明をさせていただきたいと思います。
 まず一つは、地方教育行政の最終的な責任者は、選挙で選ばれた、住民の意向を反映できる首長とすることということでございますけれども、これは教育といいましても、やはり地方行政全体の中で考えていく必要がある。特に税収といいますか、財政基盤で言うと、内訳の4分の1ほどは教育に費やしているわけでございますので、そういったことを考えて、他の行政分野とのバランスなども考慮できる首長が責任者になるべきである。例えばいじめ問題が今回の発端になっているわけでございますけれども、いじめ問題について言えば、警察、行政、一般行政との関係も大変強いわけでありますので、そういうことも考えた上でやっていかなければいけない。そうすると、全体を見られる首長が責任者になることがふさわしいんではないかということでございます。
 その次に2番目、教育長の位置づけについてでございますけれども、教育委員会制度を改革する場合には、住民に対して直接責任を負う首長の下で実務的に教育事務をつかさどる機関とすべきであること、そしてその際に首長には任命権や罷免権、またその実効性を確保するための指揮監督権など、教育長の適切な事務の執行を確保するために必要な権限が認められるべきであることということでございますけれども、例えばこれまで教育委員会の中で、互選によって教育長を選ぶという形になっていますけれども、これはもう全く有名無実でありまして、実質的にはこの人を教育長にしたいということで、あらかじめ想定した上でお願いしているわけでございますから、そういった点も含めて、首長は議会の同意なども得ながら、しっかりとこの対象といいますか、教育長である人を定めて提案し、任命すべきであるという趣旨でございます。
 それから、教育委員会の位置づけでございますけれども、2行目に、首長と教育長に対する監視機能や、教育の基本方針などに関与する法的な権限を持った附属機関とすべきであることということでございまして、これもこれまでこの委員会でも大分議論がありましたし、中立性、継続性、安定性を確保する観点を考えた場合には、教育委員会をこういう形でこれから活用していったらどうかという趣旨でございます。
 それから、4番目の国の関与についてということでありますけれども、今回国の方からは、この自治体に対する改善・指示権について、「教育を受ける権利が侵害されたりする場合」にまで拡大するとされておるところでございますけれども、平成24年に国等による違法確認訴訟制度が創設され、是正の要求等の関与についてはその実効性が、ある程度実施に当たっての裏づけというシステムができたわけでございますので、そういった中で、あえて国による指示権の範囲を拡大する合理的な理由はないんではないか、国の関与の強化は一切行わないことと書いてございますけれども、地方教育行政の抜本的な見直しを行う中で、地方の自主性・自律性の拡大を図る地方分権の観点についても、十分に考慮していく必要があるんではないかということであります。
 さらに、いじめで子供が亡くなられた後、この権限が使えないということを社会には知られているわけでございますけれども、そういったことについては少し解釈というものを変えていけば、十分に今の法律でもできるんじゃないか、あるいはまた、必要があれば若干法律を変えていくということで、本格的な中央の提案関与というものを強める必要はないんではないかなと思っております。
 それから最後、今後の進め方についてでございますけれども、必要に応じて国と地方の協議の場というものが設けられております。地方自治制度全般に関わる問題でございますので、そういった大きな立場からの議論というものをしていく必要があるんではないか、そしてそこで地方の意見を十分に反映していただきたいということであります。「なお」ということでありますけれども、市町村などにつきましては、人口規模なども大変多様でありますので、その市町村の意見も十分に反映した形にしていただければということを書いてございます。
 単独であるのか、あるいはまた、広域といったことも考えられるのか、そういうことも含めて御審議をお願いできればと思っておるところであります。私どもとしまして、例えばこういったことをやっていくに当たって、この前、二見委員から広島の例が言われましたけれども、実は私はちょっとおぼろげな記憶にあったものですから調べてみましたら、あの当時5代続いて広島県の教育長は実は文部科学省から行っているんです。
 それでなおかつああいう事態を引き起こしている。文部科学省がしっかりやれば、ああいうことは収まるということではないわけでありまして、これについてはやはり地方分権という中で、議会、あるいは住民の監視というものがしっかりなされることが必要ではないか。この広島事件につきましても、そういった形でふたが開かれ、そこから大きな問題になっていったわけでございますので、議会なり住民なりがしっかりしていく、あるいはまた、首長もしっかりしていく、教育長もしっかりしていくという形でやっていくことが筋であって、この権限は、私は教育長ということとは若干別な次元で考えていただいていいんではないかなと思っております。
 それからもう一つつけ加えておきますと、7月31日に下村文部大臣に秋田の佐竹知事がお会いしたときに、下村大臣からのお話として、このうちの1、2、3についてはそのとおりだと思っておりますので、中教審の中でそういう位置づけになっていくと思いますというお話を頂いているところでございます。
 ただ下村大臣の方からは、4の国の関与ということについて、違法確認訴訟はできてはいるんですけれども、この特に「児童等の生命・身体の保護のため緊急の必要があるとき」に限定されている、そういう中で、8割の県教委が賛成し、実際のところこれによって問題のあるところはないに等しいと思います。ただ、いろいろな団体があるということも言っておられるところでございますけれども、それについては先ほど申し上げましたように、もし権限を強化したとしても、従わなければ結局は違法確認訴訟に持っていかなければいけないわけでございますので、今回法律でただ国の関与を強めるだけで問題が解決するとは、私は思えないと考えております。
 以上です。

【小川分科会長】  ありがとうございました。教育委員会制度の見直しに関わる議論については、次回以降予定しておりますので、今日は特に時間を割く予定はございませんので、よろしくお願いいたします。
 それでは今日の議事に入っていきたいと思います。
 今日の前半におきましては、文化・スポーツ・社会教育など学校教育以外の分野の在り方について、まず事務局からの御説明と、もう一つは明石委員から御説明いただいた後、議論をしていきたいと思います。
 そして後半につきましては、前回、前々回の会議で、諮問事項2、諮問事項3について皆様から御意見を頂きましたので、そうした御意見を踏まえた上で、今日は諮問事項2、諮問事項3の論点ごとに少し議論を整理して、前回までの議論を更に深掘りしていきたいと思っております。
 そういうことで、前半は文化・スポーツ・社会教育など学校教育以外の分野の在り方、そして後半は前回、前々回の議論を踏まえて、諮問事項2、諮問事項3について議論を、それぞれ1時間ずつ時間をとって行いたいと思います。
 では、今日の前半ということで、事務局から御説明いただいた後に、明石委員からは生涯学習分科会社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループにおける審議状況について、御報告いただくことになっております。
 では最初に事務局から、説明をお願いいたします。 

【堀野企画官】  それでは、資料1に基づきまして、総括的な説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。「教育委員会制度の見直しに伴う学校教育以外の分野の在り方について」という資料でございます。
 まず、1番の現行制度とございますとおり、現在の地教行法23条におきまして、教育委員会の職務権限が規定されております。これは教育に関する知事、市長の権限と対比をして、教育委員会の職務権限を整理したものでございます。1号から11号につきましては、教育機関の設置・廃止、教科書・教材の採択等、主に学校教育に関することが書いてございます。その後、12については社会教育に関すること、13、スポーツに関すること、14、文化財の保護に関すること等と、教育委員会の職務権限が規定されております。
 この点につきまして、平成19年に教育三法の改正があった際に、法改正の事項がございまして、この文化・スポーツの中でも、文化財を除くのと、学校体育を除くスポーツについて知事部局で所管できることとするという法改正をしております。
 2番目の19年改正の概要にございますとおり、スポーツ及び文化行政につきましては、地域の実情や住民のニーズに応じて、地域づくりという観点から、他の地域振興等の関連行政と併せて、地方公共団体の長において一元的に所掌することができる。ここは特にこの2分野につきましては、政治的中立性等の要請もさほど強くないだろうということから、条例で定めれば首長の所管分野とできる、こういう改正がなされたところでございます。ただし学校体育については学校教育の一部である、文化財保護については開発行政との距離を置いた方がいいだろうという考え方から移せない、こういう整理がされたものでございます。
 2ページを御覧ください。今回の教育再生実行会議の提言に基づく見直しによって、地域のあるべき姿や基本方針、また教育長による事務執行のチェックを行うというように、教育委員会の性格が改められた場合に、新しい教育委員会の中で社会教育・スポーツ・文化、こういったものを引き続き教育委員会がやった方がいいのか、首長部局とともに柔軟にできるようにした方がよいのかということが、この点となってございます。
 これにつきまして、文化財等は文化審議会、社会教育は生涯学習分科会で議論がなされているところでございまして、この後、それぞれ説明がございます。
 3ページは資料でございます。後ほど御覧ください。
 私からの説明は以上でございます。 

【小川分科会長】  引き続きお願いいたします。 

【平林伝統文化課長】  文化庁の平林でございます。資料2を御覧いただければと思います。
 1枚めくっていただきますと1ページ目、ただいま事務局から御説明がございましたように、現在地教行法におきまして、文化財の保護に関する事務を教育委員会で実施しておるところでございまして、特例はございますけれども、引き続き教育委員会で行うということで、教育委員会固有の職務とされているところでございます。
 具体の事務でございますけど、2ページ目に掲げさせていただいております。文化財保護条例をそれぞれの自治体で作成して、文化財保護に取り組んでいただいているところでございますし、また右側では国指定の文化財に関する事務、これは例えば参考資料の13ページに重要文化財――建造物であるとか美術工芸品に関するものでございますが――に関する主な事務を簡単に掲げさせていただきましたけれども、そういったような事務を担っていただいているところでございます。
 また、地方の文化財保護の審議会を設置されて、それに基づく行政であるとか、あるいは国指定の文化財の中でも所有者が不明であるもの等につきましては、管理団体としてその管理とか、あるいは修理等に当たっていただいているといったこともございますし、また地方独自、県指定あるいは市町村指定の文化財というのもございます。それに関する事務。
 あるいは保存・公開のために、いろいろ様々な施設であるとかいうものを設置して運営されるといったこと。
 それから特に大きいのは、埋蔵文化財に関する事務につきましては、やっぱり基礎自治体、それぞれ自治体として、文化財保護に取り組んでいただいているところでございます。
 1ページまためくっていただきまして、3ページ目でございます。こういったように、文化財保護体系自身が教育委員会制度を前提に制度を組み立てられているという面もございますので、また実務の実態等を踏まえながら、今後の在り方につきまして検討しようということで、今年の6月に文化審議会の下に企画調査会というものを設置したところでございます。メンバー等につきましてはここに記載のとおりでございます。
 先月の7月16日に1回目の企画調査会というものを開催したところでございまして、今後教育委員会制度が変わることによって、どう影響があるのか、今後の在り方を検討しよう、また改善点はないかといったことを検討していこうと考えているところでございます。
 3ページ目の後段、下半分のところは、その第1回の企画調査会でお配りした資料を抜粋したものでございます。どういった観点を今後検討する必要があるだろうかということを、例示として挙げさせていただいております。
 国・地方で文化財保護について権限を委任等行うことによって、国全体として文化財保護を図っていくということで、どういう影響があるのかといったようなこと。文化財保護につきましては、専門的な知見なりも必要ですので、そういった専門性・技術性をどう確保していくかといったようなことであるとか、あるいは一貫した保護を行うといった点での政治的中立性の観点であるとか、あるいは文化財に対する理解を、子供の頃から身に付けていただこうという観点からの学校教育とか社会教育との連携といったような観点。それから、特に私どもが論点として大きいと考えておりますのは、首長部局で行っている開発行為等との均衡を図って、文化財保護を確保していくといったことが必要であるという観点。
 それから、文化財は必ずしも人口に比例しているわけでなくて、やっぱり偏在もしているということで、小規模の自治体における文化財保護の在り方をどう考えていくかといったような視点を示しているところでございまして、こういった点につきまして御議論いただこうと考えてございます。
 第1回ということでございますので、そこに出た議論というものを、次の4ページ目に簡単に抜粋させていただいております。あくまでもそのときに出た議論ということでございますので、ここで決定うんぬんかんぬんというものをしたわけではございません。中では、専門性・技術性の確保といったことの議論もございましたし、あるいは学校教育との連携であるとか、あるいは首長部局、開発行為との均衡といったようなことも議論として出ておるところでございますし、やっぱり首長との情報共有というものも非常に大事だということも、議論として出ているところでございます。
 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、この分科会における審議状況も踏まえながら、やっぱり文化財保護について、それを推進するという観点から、企画調査会において議論を続けていこうと考えているところでございます。
 埋蔵文化財につきまして、引き続き担当より御説明させていただきます。 

【榎本記念物課長】  文化庁記念物課でございます。今の資料の5ページから、埋蔵文化財に関連する、少し現状なども含めて、簡単にお話しいたします。
 まず5ページでは、開発事業とそれに伴う埋蔵文化財保護の例を幾つか挙げております。報道等で新しい考古学的な発見があったということが、しばしば見られますけれども、そういったもののほとんどは、開発あるいは何らかの事業の一環の中で見つかっているものです。初めから学術目的で調査をするというものではなく、いろいろな整備をしていく中での話でございまして、この5ページでは四つほど例を挙げておりますが、上の二つ、マル1は昨年の例、マル2は今年の前半の例でありました。
 こういったものも個人住宅の整備、あるいはバイパスの建築に当たって発掘調査をして、最初は普通の縄文の地域だろうと思って掘っていくと、マル1のところでは突然2メートルぐらいのこん棒が出てきて、これは何だろう、住宅でもないし、よく分からないんだが非常にクリアに出てきたりするという例があります。このマル1の例の場合にも、こういったものは、遺物は収集し、それから遺跡の状況は記録をして冊子などにいたしますけれども、この遺跡の場所自体は、この上に住宅を整備しておりますので、ここが遺跡として残るということはありませんでした。
 マル2の場合、これは今年前半に古墳時代のよろいを着た人骨が見つかったと、かなり大きく報道がありましたけれども、これもバイパスの建設の一環でありました。ここの場合には一部部分的に残すということを地元が考えておりますが、バイパスの建設そのものは当然進んでいくというものであります。
 マル3のように、まれに非常に大きなものが見つかった場合、マル3左側の三内丸山といったようなものですと、いろいろなもとの当初計画の見直しということが見られましたが、本当にこれは全体の中でごく一部に限られております。
 こういった活動は、6ページに参りますと、一般的には都道府県、それから市町村教育委員会の文化財担当の方が非常に熱心に携わっておられます。6ページではこの昭和25年の文化財保護法以来の歴史を簡単に記載しておりますが、当初は国における規定が中心だったものでございますけれども、昭和50年になりまして自治体における位置づけを条文上明確化し、更に平成11年の分権一括法の際には、各種の開発に伴う届出の受理といったもの、これは県又は市の事務であると、条文上位置づけてきているところでございます。
 こういった事務に関しまして7ページでございますけれども、実務をごく簡単に申し上げますと、上の方でありますが、まず、いろいろな地域におきまして、自治体において埋蔵文化財包蔵地というのを設定いたします。これはそれまでのいろいろな知見も踏まえながら、ここはまだ掘っていないけれども恐らく何か出てくるであろうというところを包蔵地として、まず市が調査をして、それを都道府県が県内の状況等を把握した上で、県として取りまとめて公表するとしています。
 この埋蔵文化財包蔵地において開発が行われる場合には、民間の場合、あるいは自治体の場合等ございますけれども、あらかじめ教育委員会の担当にお知らせをしてもらって、無駄なあつれきが生じないように心掛けるという行政がずっと行われてきております。先ほどの関係で、この開発に伴って必ず発掘調査が要るというイメージがかなりありますけれども、実務におきましては、できるだけ発掘調査を無駄にやらないようにという運用はかなり心掛けられておりますので、開発をする60日前までの届けというのがありますけれども、実際に発掘調査に至るのは大体五、六件に1件というのが全国的な風潮になっています。
 それは発掘調査をするよりも、ここは駐車場にしてしまうことで無駄な調査をしないようにしようですとか、いろいろな工夫をしながら、できるだけそういった発掘調査を減らすという意味もございます。発掘調査を行いましても、多くの場合には記録保存という形で、報告書を特にまとめる、それから遺物は収集するということでもって、開発は続行することがほとんどの事例でございます。
 8ページにグラフを掲載いたしましたが、これは昭和50年代からの包蔵地におきます届出件数、それから下の方のほぼ横ばいのグラフが、発掘調査の実際の件数でございます。包蔵地における開発としての届出は右肩上がりで増えております。これは個人住宅も1件と数えますので、そういった細かい案件が増えてきているということもありますし、またこういった包蔵地に関しては、あらかじめ届出をするということがだんだん定着する中で、このように数は増えておりますが、実際に届出を受けても調査を行う、発掘をするというのは、この中で4万件のうち7,000件ぐらいということでありまして、包蔵地であれば必ず全部ローラーを掛けて発掘調査をするということでもないのが現状でございます。そういった実態をよく念頭に置きながら、実務が行われているというものでございます。
 以上です。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。
 引き続いて、生涯学習課分科会、社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループの審議状況について、生涯学習分科会長の明石委員、よろしくお願いします。 

【明石委員】  明石でございます。お手元の資料3を御覧ください。
 本年3月に、本教育制度分科会と並行的に、生涯学習分科会の下に、社会教育推進体制の在り方に関するワーキンググループを設置させていただきました。これまでに6回ほどの集中審議を行いまして、先月の25日に審議の整理(案)を提出していただきました。その概要を今日御説明したいと思います。
 大きく三つの固まりがありまして、まず1番目は、教育委員会制度の趣旨の確認ということを2点ほどまとめさせていただきました。簡単に申しますと、社会教育に関する事務は学校教育に関する事務と同じように、教育委員会が所管するのですよ、ということです。二つ目は、この本分科会でも議論されてまいりましたけれども、教育行政の執行に当たり、政治的中立性の確保と継続性、安定性の確保と地域住民の意向の反映を図ることの三つの趣旨は、社会教育においても引き続き確保していくことが必要であるということを確認いたしております。
 それで、具体的に今の社会教育行政の現状と課題は何であるかということを、5点ほどにまとめさせていただきました。
 1点目が、よく言われますように、学校と社会教育の連携・融合・協力というのが非常に効果を高めておりますよと。具体的には放課後子ども教室や学校地域支援本部、コミュニティ・スクールなど、地域住民と学校の連携・協力による様々な取組が活発化して、地域が元気になってきているということが1点挙げられます。
 こういう連携をすることによって、2番目でございますけれども、学校教育の充実や学校運営の円滑化が非常になされてきています。例えば千葉の木更津の学校支援ボランティアというのは、もう14年間続いておりますけれども、これで非常に学校が元気になったということも度々報告されております。またその支援ボランティアに参加することによって、地域住民の学習成果を発揮する機会も生まれている、ということであります。
 3番目は、よく社会教育には、政治的な中立公正は要らないんじゃないかということが言われますけれども、そうではなくて、中央図書館の図書選定とか、公民館の学習講座を設定する場合とか、講師を選ぶ場合には、かなり政治的な意図を持ったような選択も生じるので、社会教育においても学校教育と同じような形で中立公正は必要であり、学校教育との連携もしていきたいと思っております。
 4番目は、地域住民の意向や地域の実態が社会教育に反映されるような仕組みは、これまでに社会教育委員会制度というのがございました。今各市町村では消えつつありますけれども、これは1号委員、2号委員、3号委員と言われますように、学校教育関係者と社会教育関係者と専門家が入っていて、その地域の人々の意向が学校教育行政にも反映される仕組みを保っております。
 5番目が、教育委員会においても学校教育、社会教育が一体となって行われることは、教師自身の資質向上や適当な人材確保・配置の円滑化という利点もあります。これは社会教育主事というのがございまして、教員を経験された方が教育委員会なりで3年、5年、社会教育主事を経験されますと、その幅広い視点から学校教育の活性化に寄与できるという面もございます。
 二つ目は、人づくり、人材育成の観点から、総合的な学習機会の提供ができるということを議論いたしました。
 大きな固まりが三つある中で、一つですけれども、要するに教育委員会が社会教育に関する事務を所管することによって、社会教育委員や公民館運営審議会等を通して地域における個人の要望や社会の要請の実態把握を踏まえて、地域の課題に対して教育という観点から総合的に施策を取り組むことが可能となる、ここが一番大きいのです。地域の教育課題を学校だけでなくて、様々な人の知恵をかりて提案できるということが大事になってきます。そのための人材育成をしなければいけないということをここで言っております。
 とはいえ、そういう大きな課題を抱えると、今のままの教育委員会が提供する学習機会の多くは、趣味と教養といった学習が大半でありまして、かなり批判を受けております。これではいけないので、公民意識の涵養や現代的な地域課題に関する学習や学習成果の活用の支援については、一層の充実が必要であります。
 例えば地域において、いろんな非行少年を扱う保護司のなり手がいないとか、民生委員のなり手がいないとか、自治会長のなり手がいない、といわれています。生涯学習で学習したことが社会貢献まで行っていないという批判もありますことも、素直に認める必要があると思って、さらなる一層の充実が必要ということを提案しております。
 もう一つ、教育委員会は首長から独立した行政委員会と位置づけられているために、首長部局が所管する多様な行政分野との連携に関する経験・人脈などが少なく、連携事務がうまくいっていないことがあるところが多々見られます。要するに、教育委員会だけでなくて、首長部局とも連携したネットワーク型行政ができる人材育成というのが、これからは求められてくるとまとめております。
 最後、それであるならば、3番目で、他の教育行政との連携の広がりや自治体の組織編成における自由度拡大の観点から、自治体の判断により、首長が担当することを選択できるようにするなどの弾力化も一つの考えであるということも認めております。
 とはいえ、やはり社会教育に関する事務は、学校教育との連携や生涯学習の構築の観点から、学校教育行政と一体として担当することの利点の方が大きいという主張でございます。そうした場合に、冒頭で述べましたように、教育の特性と申しますか、中立性とか地域の意向を汲むとか、継続、安定性のことを配慮しながら、そういうことを担保にするための仕組み構築が必要だという提案でございます。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。今まで、文化・スポーツ・社会教育、そして文化財保護などの学校教育以外の分野の在り方をどう考えるかということに関して、事務局及び明石委員から御説明いただきました。残り30分ほど時間がありますので、今の報告をベースにしながら、皆さんから御意見を伺いたいと思います。どなたからでも、どうぞ、御発言いただければと思います。いかがでしょうか。村上委員、どうぞ。 

【村上委員】  御説明ありがとうございました。それぞれ文化財保護と社会教育と、それから説明にはなかったんですが、文化・スポーツのことについて簡単に申し上げたいと思います。
 まず文化財保護なんですけれども、やはりいろいろ政治的なことから、文化財保護というのはある程度守られる必要があって、今、特段政治的中立性の観点で問題は生じていないかもしれないんですが、セーフティーネットという観点からも、教育委員会で所管する意味というのはあるんだろうなと思っております。 
 あともう一つは、総合行政という観点が一方であるわけですけれども、総合行政のメリットというのももちろんあると思うんですが、開発と保護のジレンマというのが文化財保護にはあるので、そういう点では、総合行政のメリットもあると思うんですが、デメリットも出やすい領域ではあると思うので、一歩引いた立場で、専門的な見地から判断する必要が、文化財保護に関してはあるのかなと思いました。まちづくりという観点もあるんですが、やはり開発と保護のジレンマということも少し考えなければいけないのかなと思います。
 社会教育については、中立性という観点ももちろんあるんですが、先ほどの説明も継続性、安定性は必要だということだったんですが、その辺をもう少し具体的に詰めた方がいいのかなと。政治的中立性は先ほど少し御説明があったんですが、社会教育における継続性、安定性の観点はどうなのかというのを検討する必要があるのかなと思いました。
 最後に文化・スポーツなんですが、これは今日出てこなかったんですが、今選択制になっていると思うんですけれども、これについては選択制にした後、どう実態が変わっているのかというのを、我々研究者が自戒を込めて申し上げますと、研究者がやはりきちんと実証しないといけないのかなと思っておりますので、選択制にした後の変化というものを丹念に見てから、制度を判断してもいいのかなと思いました。
 以上です。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。質問というわけじゃないですけど、今、村上委員が触れたことですが、社会教育の専門性については先ほど少し明石委員の方から御説明があったんですけれども、継続性、安定性の視点という点では、何か議論があったのかどうかという点についても御紹介いただければと思っています。 

【明石委員】  御指摘ありがとうございました。特に2番目の継続性、安定性の確保というのは、まだ十分でありませんけれども、こういう議論もあったのです。放課後子ども教室ってありますよね。それで国からの補助金も出るんだけれども、首長がかわるとだんだん予算を少なくなる場合があります。これが一番困っているんです。その3分の1のものをどう使うか。総合行政でしょうから、首長の権限で大きくもできるし、少なくもできます。そういうことが非常にございます。
 それで例えばコミュニティ・スクールってありますよね。それも首長の意向によって三鷹みたいにやるとか、千葉市もお願いするけどまだそういうのが進んでいないところもあります。こういうように現代的な課題に対して、首長が4年でかわるごとに、その方の意向によって変わり得るということが非常に心配です。特に学校教育は10年に1回、学習指導要領が変わりますけれども、社会的行政というのは首長の4年間で意外と変わり得ることがあるので、この安定性、継続性の視点は極めて大事なポイントかと思っております。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。はい、門川委員、よろしくお願いします。 

【門川委員】  ありがとうございます。京都市の取り組んできたことになりますが、まず、体育施設の管理などスポーツ行政については、昭和33年から市長部局で補助執行しております。一方で、十数年前から、スポーツ少年団などの子供のスポーツ行政、については、逆に教育委員会の方に移し、学校教育との連携を強化しておりますが、スポーツ行政は市長部局で補助執行しております。
 それから逆に、私学事務についてでありますが、私立幼稚園、あるいは私学、私立学校など、非常に京都は私学が活発ですが、それについては教育委員会で補助執行し、小中と幼稚園との連携、さらには保育園、こうしたことは所管が教育委員会ですけど、中学校グループで保幼小中連携を進める上で、私学も含めて取り組んでいこうということで、教育委員会の所管にしております。これは昭和37年からやっています。
 それから、生涯学習についてですが、教育委員会で所管するのが正しいと思います。ただ、市長部局との連携が非常に大事であり、また市民組織の育成、連携が大事ですので、生涯学習市民フォーラムという199団体が参加した市民組織を作り、同時にそれに対応して、行政連絡会議を作り、議長は市長が務め、事務局は教育委員会が担当し、生涯学習の成果を社会貢献、地域貢献、学校教育の支援、そういうことに生かしていこうという体制を作っております。
 最後に文化財行政ですけれども、京都市内には国宝の約20%、重要文化財の15%があります。それで文化財保護行政というのが非常に大きな役割を担っているわけですけれども、これも市長部局で補助執行しております。文化市民局という局を作って、その局の大きな仕事として文化財保護がある。ただし補助執行ですので、大事なことは教育委員会会議において説明し、教育委員会の会議で決定する、こういう手続をとっております。
 市長部局で担当すると、開発の圧力に屈してしまうかどうかということですけれども、これについては非常に権威ある審議会が公開の下に行われておりますので、より一層こうしたことがないような仕組みとなっています。埋蔵文化財は非常に大事であります。しかし世界遺産ということがある中で、文化財を点で守るのではなく、面で守る。例えば、世界遺産の周りは全部15メーターの高さ規制にして、瓦屋根にしなければならないとか、こういうことにより面で守っていく取組を進めております。
 京都の文化財の場合、徹底して借景を守る、あるいは眺望景観を守るということで、6年前に新たな景観政策を実施し、例えば、来年の8月中に、京都市内の屋上の看板は全部撤去する。京都市内の看板、ちかちかと光る電飾の看板、パチンコ屋さんなどの看板です。これらは全部撤去する。約4万の建物にいろんな形の看板がついていますけど、これの7割が既存不適格、法律違反になることとなります。これは100人体制でローラー作戦で、全部撤去していきます。
 こういうことを進めていますが、こうしたことは議会で条例を作り進めていく。これも京都というまちを一つの文化財と見て、徹底的にその価値を高めていこうということであります。地下のことも大事ですけど、地上のことも大事です。こうした取組を進めていくのは、実に政治との戦いであるという面もあります。あるいは実在の経済活動との戦いでもありますが、独自にそうしたことに取り組んでおります。
 話をもとへ戻しますが、こうした状況も踏まえ、非常に大事である文化財保護行政について、決定権は教育委員会でありますが、実務を市長部局が行っており、これは昭和33年から京都市独自でやっています。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。梶田委員。 

【梶田委員】  社会教育や文化財保護、あるいは文化活動全体の分割ということで、今の幾つかの御報告があって、はっきり言いますとほとんどの知事さん、市町村長さん、私は教育委員会とどちらが実質的にやられても、同じようになると思うんです。ただ、この教育委員会制度って基本的に私の見るところでは、フェイルセーフなんです。まずくなったら困るなと。私は首長さん側から言うと、例外的な場合に、例えば教育の政治的な中立をどう担保するか、あるいは継続性をどう担保するか、あるいはいろんな市民の多様な意見を、どう首長さんの意向と別な形ででも踏まえることができるかというところからできている、ある種のいわばフェイルセーフの制度だと思っております。
 ですからうまくいっているときは、首長さんも政治的な中立性をできるだけ担保するように考えておられるでしょう、継続性も担保ということでいいんですけれども、やはり現実の問題として言いますと、選挙で選ばれたんだから私はオールマイティーだ、全て私に権限があるんだ、そういう感覚で、そしてこれに文句があるんだったら次の選挙は落とせばいいだろうという、これがあるわけです。こういう態度をおとりになるのは、私は民主主義にとって、実はある種の極めて危険なことだと思っている。
 これは危惧をしているんじゃなくて、実際にあるわけです。実際にある、そういういわば首長さんの一つの行政姿勢、あるいは政治姿勢に対して、一旦これでまずくなってしまった、取り返しがつかないような部分があります。例えば今の埋蔵文化財の問題でも、一旦私はオールマイティーだ、これでまずかったら次の選挙で落としゃいいじゃないかと。それで破壊されたらあと、いわば人々の共有財産は守れないわけです。
 これはもう非常にはっきり見える形ですけれども、その他いろんな学校教育についても、例えば4年ごとに首長さんが替わって、全く違うものを学校に持ち込まれたら、子供たちは少なくとも義務教育だけの9年、今みんな行く高校まで行くと12年。12年安定して継続的に育てないといけないときに4年ごとに、いや、今度は確かに信用を失ったから次の首長さんがまた違う方針で来ました。4年して、また次の首長さんが違う方針を出しましたで、それがストレートに教育の中身にまで、あるいは具体的な在り方にまで及んでくるとすれば、極めて危険だということからできている制度が、私は教育委員会制度だと思います。
 したがって、いい例はいっぱいありまして、首長さんと教育委員会が本当に協力してやっておられる例があって、私は今の門川市長の京都市の例なんか、本当にその一つの例だと思います。大きな方針は教育委員会で決めてもらうけれども、ぼんぼんと言うとおかしいですけど、補助金等支援のあれを市長部局でまた考えられる。こういういい例はいっぱいあると思うんです。
 これも大事な事例ですけれども、私たちはいろんな意味で取り返しがつかない――学校教育もそうです、文化財保護もそうです――ということが起こらないためにどういう制度的な歯止めを仕組みの上で作っていくのか、ここで議論して、歯止めになる仕組みということをやはりきちっと考えていかなくちゃいけないんじゃないか、そう思います。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。はい、橋本委員、よろしくお願いします。 

【橋本委員】  ありがとうございます。私自身は今の制度をあまり疑問には感じていないんですけれども、大変スムーズに運営ができていると思っています。ただそれよりも、中身が我々として困る。例えばここにも放課後子ども教室と書いてありますけれども、放課後児童クラブとどう分けるのか。対象も違っている、6年生までと3年生までか、午後に掛けるか掛けないか、そういった様々な違いがあるものですから、それを現場がどうやってこなしていくかというのは、非常に困っているんです。
 今、幼保一元化ということでいろいろ進んできておりますけれども、こちらの方はさっぱり動きがない。国の分かれている縦割りの行政の方が、我々としてはよっぽど迷惑しているわけでして、そういったことについてどうやれば、今の制度でももっとうまくいくか、今の制度のどこに問題があるのか、今日聞いておってもさっぱり分からなかったんですけれども、問題があるんだったらそこを集中して議論すればいいんじゃないかなと思っています。
 それから、例えば先ほどスポーツ少年団という話がありました。これも今は、学校のクラブ活動とどうやって分担していくのか、ここが非常に困ってきている。スポーツ少年団はどんどん潰れています。ですから場所によって、一生懸命やってもなかなかもうそういうことは難しい地域も出てきている。大変少子化が進んでいますから、そういうこともいろいろと、二つの制度のどっちに入っていればいいんだろうかと、子供たちが迷うような形になっている。
 あるいは、先ほどの放課後児童クラブ、あるいはまた子ども教室になると、校長先生が事なかれ主義、何かあったら大変だというので、自発的にどんどん出ていくということをしない。周りから言われても、なかなか実施に移してくれない、そういった問題もあります。
 あるいは生涯学習で言いますと、大分民間の機関が多くなってきております。行政が何をやるべきか、もう民間に相当任せてしまってもいい、行政がやる生涯学習の分野というのは限られてきているんじゃないかと思っております。専修学校その他にたくさん来ていますので、わざわざ気を回していく必要がない。そうすると行政はどういうことをやるのか。その中で生涯学習行政というのは何をやったりするのか。そういうことも含めて議論をしていく必要があるんじゃないかなと思いますし、先ほど申し上げましたように、私は何が今問題なのか、はっきりしませんものですから、そこをちゃんとやってほしい。
 例えば文化財行政で、先ほど首長が突っ走るんじゃないかということをおっしゃいましたけれども、それは市民に対しては首長は突っ張れないわけでして、そういう仕組みは幾らでもできるんだと思うんです。責任をどこが持っていくか、方向をどこが出すか、その過程をどう作るか、これはもう別だろうと思っていますので、そういった点も含めて議論をしていただければ有り難いんじゃないかなと思っております。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。今の意見に関わってですか。じゃ、明石委員、よろしくお願いします。 

【明石委員】  橋本委員、ありがとうございました。例えば放課後子ども教室と地域の学童クラブというのは、はっきり言ったら文部科学省の補助金と厚生労働省の補助金の戦いがあるんです。これはやっぱり重々認めなきゃいけない。今度は子ども・子育て3法が生まれまして、御承知のように平成27年からこども園が出てきて、保育と教育が合体するという動きがあります。同時に学童保育も3年生から6年生までがやるという動きがありますよね。やっぱりそういう動きを理解して、生涯学習分科会でありましたけれども、両方をつなぐコーディネーターを教育委員会で育成をしなければいけない、と思うのです。これが一点。
 もう一点、例えば成人式があります。あるし市の場合、成人式は市長部局が扱っているのです。責任は教育委員会にあるのですが、成人式の中身は勝手に市長部局がやっているのです。で、青年が暴れたときに新聞でたたかれたら、教育委員会が頭を下げているのです。
 だから言いたいのは、ばらばらにやりタコつぼに入る行政の仕組みを、いかにタコつぼから出てきてくれて、総合的にコーディネートするかという、ネットワーク型教育行政の人材育成が大事だということを、一点申し上げたいのです。これからこれが非常に大事だと思っております。それを生涯学習分科会では議論し始めています。
 以上です。 

【小川分科会長】  他にいかがでしょう。白石委員、どうぞ。 

【白石委員】  私の町は標準的な町村の一つですけれども、前に申し上げましたように、教育委員会の組織的なものを、首長の権限にするのか、教育委員会というものに附属したものにするのか、これはこれから議論が続くわけですけれども、教育委員会の中でも、私のところは学校教育課と社会教育課に分かれているわけです。二つあるんです。
 学校教育課については前にも言いましたが、学校というものがありますので、なかなか首長が簡単に入っていけないという事情があります。ただ、社会教育課は人権教育であったり、あるいはスポーツ・文化、埋蔵文化財、いろんな分野を所掌していますけれども、これについては現在でも、町長と一体になってやっているんです。
 それは教育委員会としておかしいんじゃないかと言われると、確かにそこの部分で教育委員会のありようを今検討しているわけですから、現実的には、この文部科学省の調査、資料1の3ページですが、学校教育以外の分野の事務の執行体制について、スポーツ・文化に関する事務の所掌の弾力化というところで、市町村の教育委員会は、これを見ると非常に少ないですね。私の町は例外かなという気がするんですけれども、今の教育委員会の社会教育課は全部事務としては所掌しています。
 ただし、首長の関わりから言うと、非常に自由に関わっているんです。例えば高齢者大学で言えば、当然私も町の将来について、行って話をします。あるいは様々なスポーツ大会でも、当然これは私どもも一緒に関わってやりますし、そういう面で社会教育分野というのは、単に教育委員会が事務をしているから教育委員会でやるんじゃなくて、これは住民全体といいますか、町全体といいますか、現実的にはそういう関わりをしているんです。
 ですから学校教育とは若干違いまして、教育委員会制度を議論するときに問題にすべきは、学校教育との在り方だろうと思うんです。ですから社会教育は町長部局であろうと何であろうと、所掌としては非常に自由にやれるものが多いんです。ですから教育委員会制度のありようの中で、こういった学校に関する教育事情と、その他の社会教育、文化・スポーツ含めたものと、若干分けて考える必要があるのかなという感じはいたします。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。門川委員。 

【門川委員】  誤解があったらいけませんので、先ほどの文化財の行政はあくまでも教育委員会の権限であり、補助執行を市長部局で行っている。文化財保護行政が京都の場合余りにも巨大ですので、教育委員会の仕事にしますと非常に大き過ぎるということで、市長部局で局のようなものを作って補助執行している。権限は教育委員会にあるということですので、あらゆる行政がそうだと思うんですけれども、権限はしっかりと位置づけながら、総合行政として推進するために、子育て支援等も含めまして全局体制を作っていく、こういうことが大事だと思います。だから権限と実務執行というのを、時には分けて考えることも必要じゃないかなと思います。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。そろそろ前半のパートは時間がありませんけれども……。他には発言の方いらっしゃいますか。では、竹原委員、二見委員という順でお願いいたします。 

【竹原委員】  明石先生がお話しされたワーキンググループのメンバーでしたが、例えば身近な例で、「子育て」というキーワードがあったときに、子育て支援や子育て関係の団体の担当を全部市長部局に移すということがよくありますが、そうすると「学び」というところがとても薄くなってしまいます。
 日常的に緊急課題がとても多くありますので、啓発的なことももちろんしていますけれども、やはり従来の社会教育が担ってきた役割は果たせていないのではないかと思います。学び合いから支え合いになって、グループができ、子供が成長するとともに、地域のリーダーになったり、担い手になるというプロセスをたくさん見てきますと、学びというものを丁寧にできるのは社会教育の部分だと思っています。
 そのため社会教育のその部分は教育委員会にあった方が、丁寧に学び合いのプロセスをつくり、時間とともにまちづくりにつなげていけるのではないか。そこで最も大事なのは、やはりネットワーク型行政ということで、市長部局とのパイプを常に作っていくなかで、教育行政の役割があると考えています。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。 

【二見委員】  今日頂いた資料の中で、スポーツ・文化に関する事務の所掌の弾力化というところで、政令市あるいは都道府県と市町村と比べると、弾力化の状況が随分違う。その他も事務委任についても随分違うんですけれども、なぜ市町村が事務委任などを弾力化できにくいのかというところを、やはり分析していただきたいのが1点あるんです。
 というのも、小さな町レベルになりますと、スポーツや文化に関わるのは、土曜日、日曜日、いわゆる職員として休みの日にほとんど対応しているのは教育委員会の者だけがやっているという中で、なかなか首長部局の方に委譲したいものもできないというのもあります。そういう教育委員会のスタッフの意欲の問題というのは、小さな規模になればなるほど、委譲しにくい状況が現実にあるということでございます。
 それから全く別件ですけれども、ちょっとどこで発言をさせていただくべきかと思ったんですが、冒頭の橋本知事の知事会の御報告の中に、広島県の是正指導に関わりますところで、5代にわたって文部科学省から教育長が派遣されてうまくいかなかったという事項がありましたけれど、若干補足しておかないといけないと思いまして。広島県が是正指導を受けたのは平成10年でございまして、それ以後の教育長といえば3人。
 しかも広島県で是正を受けたのは、教育委員会レベルの課題はありますけれども、その背景には、知事部局といいますか、知事、議会、議長を含めた、がんじがらめで教育委員会が身動きできない状況の中で、教育委員会が一人で頑張ってきた。そういう中で、なかなか解決しにくかったという背景があるわけです。そういう点で、3代にわたっていますけれども、結果としては3年間で一定の方法を見いだしたという点は、ちょっと報告させていただきたいと思います。
 以上でございます。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。では、予定の時間を切ってしまいましたので、まだ御意見がある方も多いかと思いますけれども、一旦ここで前半の議論は終わらせていただきたいと思います。
 引き続いて後半の議論に移りたいと思います。これは先ほど言いましたように、諮問事項2「国、都道府県、市町村の役割分担等」、諮問事項3「学校と教育行政、保護者・地域住民との関係」について、前回、前々回、議論をしてきたわけですけれども、今日はそれを整理した上で、総括的な議論をしてみたいと思います。
 まず、事務局の方から、前回、前々回での意見を整理していただいておりますので、それを報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。 

【堀野企画官】  それでは資料4を御覧ください。これまでの論点メモに沿って、出た意見をまとめております。
 1ページ目ですけれども、まず公教育における国の最終的な責任の果たし方。地方公共団体の法令違反や児童生徒の権利侵害などがあった場合に、どのような要件の下で、国が是正・改善の指示等を行えるようにするかという論点につきましては、教育委員会において問題が起きたときに、国の責任を果たす手段を用意することは重要である。往々にして教育委員会はサプライサイドの立場になりやすいですけれども、国は教育のデマンドサイドの立場から必要な行動をとることができるのではないか。
 また、かつて学習指導要領に逸脱するような教育が行われたり、こういったいろいろな事案があった際に、文部省からの是正指導で随分と変わった。各自治体における課題に迅速に対応できるために国の関与が必要であるといったこと。
 一方で、地方自治法で違法確認訴訟ができたところであり、地方分権の時代に国の権限を強化する方向はよくないのではないかという御意見や、指示をしても自治体が従わなかったらそれまでであるといった御意見もございました。
 また、違法確認訴訟については、是正の要求をした後に、地方公共団体が措置を講じず、さらに、国地方係争処理委員会等への審査の申出もないときに初めて訴訟を起こすことができるということで、時間が掛かる。したがって、緊急性を要するときの国の関与というのを地教行法、あるいは個別法に書き込むという方法も必要ではないかという御意見もございました。
 また、地方公共団体において違法行為というケースについては、国の関与が必要ということは分かるけれども、緊急性のある事案について、具体的に国がどう関与できるのかということについては、どういう場面なのか、しっかり分けて議論した方がよいのではないかという議論もございました。
 2ページを御覧ください。県費負担教職員の人事権の市町村への委譲と、人事交流の調整の仕組みについてという論点ですけれども、人事権が市町村にない場合には、自分の自治体で頑張って育てなくてもよいという意識が芽生えて、当事者意識が薄らいでしまうのではないかという御意見、人事権を委譲し、市町村で教員を採用することにより、責任と権限を一致させることが重要であるといった御意見。
 また、現在ブロック単位での人事異動を行って支障が生じていない自治体に、人事権を委譲していくのがよいのではないかといった御意見などがございます。
 また一方で、教員の異動は一番の研修の機会でもあり、広域異動がしっかり確保できるようにした方がいいんではないかという御意見。
 また、市町村合併が進んでも、なかなか1町1村では人事権の行使は難しいといった御意見。
 また、従来教育事務所管内で人事が完結していたが、中山間地域では管理職登用が難しくなってくるという事情もあって、広域人事に切り替えた。町村では単独ではなかなか人事はできないということで、中核市とその周辺、指定都市とその周辺というエリアで考えていかないと、中山間地、島しょ部は人材を確保できないといった御意見。
 また、人事異動だけではなくて、採用という業務がありますので、小さな自治体において採用業務ができるのかといった御意見。
 3ページ目に参りますけれども、各都道府県において教員の人事異動の状況は随分違うということに注意すべきという御意見。
 また、都道府県内の幾つかの市区町村で人事グループを作り、グループ同士で人事交流をして、都道府県教委がそれを調整という方法もあるという御意見。
 一方で、広域での調整の仕組みというのはなかなか簡単ではないという御意見がございました。
 また、前回ヒアリングに来ていただいた大阪の豊能地区の取組について、よい取組ではあるが、たまたま地元で勤める教員が多いという地域事情があって、やりやすかったということであるので、ここでできたから他の地域でもできるということでは必ずしもないといった御意見。
 また、市町村に人事権がおりた場合に、事務手続の煩雑さは、給料が上がった場合には給与計算等の事務もかなり発生するので、できることはやるけれども、しないところはしないというオプションもあった方がいいんじゃないかといった御意見もございました。
 次に、指定都市に給与負担を委譲することについての論点ですけれど、都道府県が給与負担をしていると、教員の一体感が生まれにくいという面もある。人事権と給与負担を一致させることで主体性を発揮できるようにすることという御意見。
 県が給与を負担していると、給与のめり張りを付けるのも県の意向によらざるを得ない。指定都市に移管してほしいという御意見。
 また、委譲するということはよいとしても、じゃ、財源はどうなるのかということになると、膨大な金額が動くので、なかなか合意形成が難しいであろうという御意見。
 また、今、県と指定都市で議論をしていますけれども、もともと三位一体改革などは国と県の負担の関係をどうするかという観点もあるだろうという御意見がございました。
 次に4ページを御覧ください。教職員人事等における校長の意向の反映についてですけれども、教員版フリーエージェント制度を作って、校長先生が「こういう先生が欲しい」という意思を尊重すべきという取組の紹介。
 また、学校運営協議会を設置した学校で、校長と学校運営協議会の代表が、応募してきた教員と面接をしたりするという方法もあるということ。
 また、予算についても校長の権限の強化ということで、予算項目に捉われない合算執行、残った予算を翌年度に回せる予算キャリー制度、こういったことについての御意見がございました。
 次に、教育現場の士気を高める方策につきましてですけれども、部活動や担当学年、担任など、職務に応じた手当の在り方ということを考えるべきではないかという御意見。
 また一方で、むしろ本給の部分で対応するべきであって、手当を増やしていくことには反対という御意見もございました。
 また、学校の表彰ですとか、子供たちや校長が先生を表彰するといったような、士気を高めるような仕組みがよろしいのではないかという御意見。
 また、表彰だけではなく、表彰を受けた教員が若い先生の講師になるといった方法も士気を高めるのではないかといった御意見。
 教員が自分のノウハウを学校に提供するといった貢献についても、評価したらよいのではないかという御意見。
 個人の評価だけではなくて、学年・分掌といったチーム単位での評価というのも有効ではないかといった御意見などがございました。
 次、5ページを御覧ください。第三者評価の仕組みについての御意見ですけれども、学校の様々な情報を公開し、共有することにより、家庭・地域が学校を高めるような仕組みづくりをしていく必要があるという御意見。
 また、学校運営協議会及び学校評価に関する検証委員会といった組織を作りながら評価をしていくといった御意見がございました。
 次に、6ページを御覧ください。コミュニティ・スクールや学校支援地域本部など、地域住民や保護者に開かれた学校づくりといった論点ですけれど、コミュニティ・スクールと学校地域支援本部といった施策によって、住民の参画を増やしていく、そして子供たちの教育は社会総掛かりというメッセージが必要であるという御意見。
 また、自由参観に来てもらうのも、参観に時間単位で来るのではなく、月曜から金曜までじっくり見てもらって、保護者や地域に先生の大変さをどうサポートするかといった当事者意識を学んでいただくことができるという御意見。
 また、校長の権限と責任を明確にしながらやっていくことが必要だということで、コミュニティ・スクールを申請する際に、校長がまず申請をし、教育委員会が指定する、あるいは、学校運営協議会が学校運営の支障になるならば、校長の申出により解散を命ずるという担保を設けて、しっかりと校長が勇気を持って取り組むという御意見を頂きました。
 また、コミュニティ・スクール等によって学力向上や不登校減に結びついている。
 また、学校運営協議会への寄附を税額控除できる仕組み、あるいは表彰等、学校運営協議会導入促進へのインセンティブが必要であるという御意見。
 また、学校と地域をつなぐコーディネーターの養成や、コーディネーター同士のネットワーク化による課題共有がとても大事だという御意見。
 最後、7ページですけれども、教育委員会、校長、教職員で共通理解が不足していたり、行政内部でも学校教育と生涯学習・社会教育部門の連携できていなかった例がある、こういった例が課題であるといった御意見がございました。
 簡単ですけれども以上でございます。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。時間もありませんので、諮問事項2、諮問事項3まとめて、どういう観点からでも御意見いただければと思います。どなたからでもどうぞ。比留間委員、よろしくお願いします。 

【比留間委員】  人事権の委譲の問題でちょっと申し上げたいんですけれども、そもそも何のためにこの問題が提示されてきたのか。義務教育の場合は、市町村が責任を持った義務教育の設置者であり、主体になっている。教員は決定した教職員制度の中で、制度上はその市町村の職員ではあるけれども、任命権を持っていない。
 ここのところで帰属意識の問題とか、そういういろいろな問題があって、そこを一致させるべきじゃないかというところから来たと思うんですけれども、もし本当にそれがそうであるとするならば、広域的な人事の仕組みというのは、一体都道府県がやるのとどこが違うのかという感じを絶えず私は持ち続けていて、教員の質を確保する、資質の向上を図っていく、一定のレベルを確保する、そのためには広域的な人事が必要だというのは、それはそのとおりだろうと思うんですが、この問題が出てきたときの、要するに地域のことを地域住民と一緒に考えながら学校教育に当たっていく、そういう教員であってほしいという、そもそもそこの問題提起のところとかなりぶつかるんじゃないかなという気がしておりまして、この点について是非申し上げておきたいというのが1点と、それから人事権の問題と給与負担、財源の問題ですけれども、この財源の問題が難しいというところで、なかなかここの議論が進まないようですけれども、財源の委譲を伴わない人事権の委譲が果たしてあるのかということを考えておりまして、例えば教員の定数を決めるのは一体誰がその場合決めるんだと。
 教員の処遇体系を決める、例えば独自の制度を作りたい、こういう職を作りたい、そのときにこういう教員の処遇を新たに設けたいというときに、それを決めるのは一体誰になるのか。人事権を持つことの意味というのが、財源のところまで、給与負担のところまできちんと一緒におりない限り、この問題、人事権だけ、例えば任用関係の問題とか、採用だとか、研修だとかというところだけを委譲することは、基本的にはあり得ないんじゃないかなということをずっと考えておりまして、是非この2点だけは申し上げておきたいなと思っております。 

【小川分科会長】  ありがとうございます。制度設計の上ではかなり根本的な問題だと思いますけれども、この場で御意見があれば、またお受けしますけれども、いかがでしょうか。帯野委員、そして今田委員、門川委員という、その順で。じゃ、帯野委員からよろしくお願いします。 

【帯野委員】  すいません、先回は余りにも専門的でしたので、発言する勇気がなくて。まとめて2点発言させていただきます。今の御意見にもちょっと関係するのですが、まず人事権の委譲について。政令市、中核市の責任を明確にするという意味で、人事権の委譲というのは一つの流れではあると思いますが、その財源確保、これはいずれということでなくて、急いで結論を出すべき問題で、財源とセットで人事権、給与負担を政令市、中核市におろすべきであると思います。
 ただ、問題はその他の市町村でありまして、私も先回、先々回の皆さんのプレゼン、それから御意見を聞いていて、なるほどそれぞれ様々な事情があるのだなということを知り、大変よい勉強になりました。しかし、山間部、離島をどうするかということを言っていても、これは10年たっても結論が出ない。やはり今は一歩進むべきときであると思います。その点では先回の豊能地区の例は、本当に注目に値する取組であると思います。
 今、豊能地区の様子を見ながら、手を挙げようかということを検討している市町村、あるいは中核市プラス周辺の市町村も、かなりあるのではないかと思いますが、大切なのはそのときに豊能地区のような取り組みが広がる可能性を後押しするような制度。といいますのは、ちょっと質問を先回できなかったのですが、この豊能地区の権限委譲の特徴の中に、委譲事務の執行に係る財源が大阪府の委譲事務交付金であることというのがありました。この委譲事務交付金の中身を問えなかったので、ちょっと議会の議事録等で調べたのですが、人件費相当で3,000万、事務費相当で820万、合計4,000万を市町村課でありますから、総務部所管の予算から取っていて、大阪府の一般財源です。
 これを是非国庫負担で、よく分かりませんが、教育分権交付金といったような、インセンティブを作って、やろうかと思っているところを後押しする。そういうふうにして、まずやれるところから始める。繰り返しになりますが、今一歩進める、これが一番大切なのではないかと考えます。
 それからもう一つ、真に頑張っている教員の士気を高めるにふさわしい処遇でありますが、これは大切なテーマで、いかに権限を都道府県から市町村の教育委員会に委譲しても、個々の本当にやる気のある先生が報われる、やる気のある先生を育てる制度でなければ、仏作って魂入れずということになります。そういう意味では手当というのが一番ふさわしいのではないかと思いますが、これは審議事項1の教育委員会の在り方に深く関わってくると思います。つまり教育委員会にその運用能力があるか否かというところであります。
 これも先回頂いた資料でちょっと驚いたのですが、副校長、主幹教諭、指導教諭の創設について。この頂いた資料では、設置数のみが記載されているだけで、設置数が増えたから教育現場がよくなったのかどうかということは、これでは見て取れない。
 副校長とか主幹教諭、これは行政に関わるところですから、恐らく学校運営が効率的になったのではないかと察しますが、肝腎の指導教諭の方。67分の20ですから、恐らく20の都道府県、政令市で1,470人が創設されたということだと思うのですが、この1,470人を配置したことによって先生たちに、本当にやる気が出たのか、学校がよくなったのかということを教育委員会が直接学校現場に問うたかどうか。アンケートであるとか、あるいは抜き打ちのヒアリングでもよいので。もしそれを対象の教育委員会の7割、8割がやっていたのなら、それはそれでよしとしますが、そうではなく、一律に校長に調査しただけであれば、これは単なる処遇になって、給与総額が増えるだけで決してメリハリはつくものではない。
 そういう意味で、手当は教育委員会の運用能力次第ということで、慎重にする必要があるのではないかと思います。私見ですけれども、今までの手当を見直すことも必要です。指導教諭は手当ではなく、給与、特2級でありますけれども、いっそ手当にして、今年齢の下限が定められておりますので、それをとって本当に若い先生、やる気のある先生に使えるような手当にするというのも一つであると思います。
 それから、手当が教育委員会の能力次第で難しければ、まずは評価の徹底。私の手元にあります資料、これは自治体だけでありますけれども、査定昇給を実施していない都道府県が7県もあります。その中で、全職員対象にしているのは22県だけで、教育職員以外、教育職員を対象にしていないところが2県あります。評価というのは、プライベートセクターでも公的セクターでも、組織の血、これが流れて組織が活性化しますので、まずは評価を徹底して、やる気のある先生には大胆な処遇を与える、給与に反映する。できない先生は頑張っていただく。やる気のない先生は退場していただく。これが先にあって教員のやる気がおこるのではないかと思います。
 それから最後に一言だけ。これを給与に反映する場合に、難しいのは、給与に反映させると、生涯賃金に反映しますので、どうしても上位評価傾向になります。どこまで行っても公平性、透明性の完全確保というのは難しいので、賞与に反映させるというところから始めて、全教職員対象にした評価を徹底するというのが先にあるべきと考えます。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。今田委員。 

【今田委員】  ありがとうございます。先ほど東京都の比留間教育長の方からお話がありましたけれども、指定都市のサイド、我々の方のサイドとすると、私の考え方としては、当然人事権を持つことは、その財源の委譲も含めての話。そうでないと正直な話、そんな虫のいい話はあり得ないなと。それであり、その財源の委譲もしつつ、そこに都市の成熟度の中で、都市の主体性が発揮できるようなものが確保できる。そこに一歩踏み出すということが可能じゃないかなと、私の方の立場からするとそんな見方をしております。 

【小川分科会長】  門川委員。 

【門川委員】  国と地方との関係ですけれども、知事会の要請にもありましたが、地方自治の観点から、国の関与を最小限にするということは当然のことであります。ただ、地方が自浄能力を発揮できていない、教育委員会が責任を果たせていない、その結果、法令違反が続いている、あるいは子供の人権が侵害されているというのは言語道断でして、こういうときに国が責任を果たす体制を作るということは、非常に大事だと思います。
 校長の権限を強化していく、自主性を尊重していく、そのことと同時に、教育委員会が学校を指導しきるという、学校と教育委員会との関係、ちょっと例は悪いですけれども、これは教育委員会が指導しきれるから、校長に権限が委譲できるわけでして、地方自治と国との関係はちょっと例が適切ではないですけれども、特異な事件が発生し、連日のように報道される。そうすると、真面目に一生懸命教育活動をやっている教職員が、また地方の教育委員会が、他の地域での事案と一緒になって信頼を落としていく。
 教育というのは親や子供、地域の信頼が非常に大事であり、それが大津の事例によって、日本中の教育委員会がむちゃくちゃやっているようなことになるわけです。こういうのはしっかりと国が責任持って、オープンにして、期限を切って、公開の下にしっかりと指導し切れるように、国に権限を与えることは、決して地方自治の本旨を踏みにじるものではないと思います。それよりも、真面目に一生懸命頑張っている多くの教職員の信頼を確保する、そうした観点からも大事だと思います。
 2点目は、指定都市の給与の移管、長年の懸案ですから、是非とも実行していただきたい。今、手当の問題がございましたけど、政令市で独自の手当を出せない。京都市が独自の手当を出して、住民監査請求で訴えられて、個人の教育長が返還しなければならないということがあったわけですけど、そういうばかばかしいことが起こるわけです。表彰制度でも、しっかりとした評価をして、保護者も地域住民の代表も参画して、オープンな議論の下で選考し、教師を表彰するというのをやっておりますが、それに対して1万円の図書券も渡せない、こういうことなんです。こうしたことについては、指定都市においても条例を制定することによって実施できる根拠があれば取り組むことができます。是非検討いただきたいと思います。
 ただし、実態を的確に把握して、全ての都道府県が負担した金額を指定都市に委譲する、これなしに実行できませんので、非常に複雑な難しい問題ですけど、その制度設計をしっかりとやっていただきたいなと思います。
 以上です。 

【小川分科会長】  他にいかがでしょうか。じゃ、橋本委員、そして早川委員でしょうか。 

【橋本委員】  今日のこのペーパーの1ページ目ですけれども、私どもとしては、この知事会の要望書、大分議論して、この内容になったところでございますので、是非尊重していただきたいと思います。この中で4番目の国の関与、「教育を受ける権利が侵害されたりする場合」にまで拡大すると、極めて曖昧なんです。違法確認訴訟で手続が面倒くさ過ぎるという話がありましたけれども、これは慎重に慎重を期すために、あえてこういう表現になっている。それでは今回いろいろ例に挙げられるのは、専門家も大津の事件で亡くなっても国の話題にもできないと言っている。
 それだったらこの何条でしたか、地教行法の第50条ですか、生徒等の安全、生命、身体の保護のため、緊急の必要がある場合でなくなるから関与できないという話がありました。それだったら生徒等の生命が失われた場合とか、何かちょこっと直せばいいだけであって、これを基にして全部を直してしまうというのはいかにも乱暴であり、国、地方全体の関係でもどう考えるかという点からしても、大きな問題を抱えているんではないかなと思っております。
 それですから、どう直そうとしているのか、この教育を受ける権利が侵害されたりする場合という一般論で書くのか、一般論で書くとするとどこまで入ってくるのか、際限なく広がってしまう。その辺について事務局でも、どういう考えを持っているのか、示していくべきだと思います。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。早川委員、どうぞ。 

【早川委員】  任命権と財源の委譲の件でございますが、財源まで委譲すると、恐らく広域人事は非常に困難になると思うんです。政令市規模ならばそれはいいと思いますが、中核市やそれ以下の市町村に対して財源も委譲すると、任命権が変わることに伴う、例えば給与裁定や人事管理システムの構築とメンテナンスなど大変煩雑なことになると思うんです。制度を変えることに伴う事務量の増大は軽視できません。
 広域人事が困難になるということは、各市町村で先生の囲い込みということが起きて、結果、義務教育の機会均等や質の低下を招くことになるということを私は危惧しています。実施する場合には、市町村をまたいだ任命権の異動が極めて容易にできる仕組みが構築されることが前提になるべきだと考えます。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。露木委員、お願いいたします。 

【露木委員】  人事権の委譲のことについてです。学校という立場、教員という立場で言ったときに、教員の思いで言うと、指定都市以外の話ですけれども、私は何々県の教員であるという考えを持っている教員が多いんじゃないかなと、私は考えています。ある県の教員になったら、いろんな県の各地を回って、その中で教員として成長していくんではないかと考えているんだろうなと、私は思っています。
 先ほど、異動する中で、それが教員にとって研修になっていくんだという御意見もあったようですけれども、人事権を委譲するうんぬんということと別なのかも分かりませんけれども、広域で教員が異動できる制度というのは、やはり何らかの形で残しておく必要があるのではないかなと感じますので、人事権の委譲、それから財源の委譲プラス広域の人事異動が可能な制度設計ができるといいなと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。 

【小川分科会長】  船橋委員、どうぞ。 

【船橋委員】  私は今民間にいるので、ちょっと皆さんと状況が違うので、分かっていないことがあると思うんですけれども、広域人事という部分に関して、非常にこだわっていらっしゃるというのを感じています。
 ちょっと一例を、本当にそうなのかなという観点を挙げたいんですが、企業の中でも日系企業、日本の企業と、例えば韓国企業が海外に駐在員を出すというところに大きな違いが今出てきているんです。日系企業はある種広域人事みたいな感じで、ローテーションという名前で定期的に3年、4年の期間でいろんなところに駐在させる。これが長期的に人材育成にとってはそれも大事だということでやっています。韓国は、国としての事情もあるんですけど、もうある国に10年間も、ここで命を捨ててくれというようなことで、骨を埋めてくださいという感じで専門性をもろに期待する。
 これは現地の社員からすると、日本人の3年、4年の無責任な感覚の駐在員は要らないんだと思っているんです。そういうのもあって、本当に広域人事以外の育成の方法がないのかなというのは、よく考えた方がいいなと思っていまして、例えば、囲い込みは難しいかもしれないですけど、地方の中で地域の私立学校に3か月インターンしてみるとか、企業にインターンしてみるとか、他に育てる方法はないのかという観点も、1個あるかもしれませんし、囲い込みに関してもユニークな制度を取り入れることで、あっ、この地域なら一生この先やってみたいなということが生まれるのかもしれないので、すいません、ど素人的な感覚かもしれませんが、もうちょっと違う観点で、何を差別化したら囲い込みに魅力を持ってもらえるんだろうかというのもあるかもしれませんし、ちょっと財源の問題は置いておいて、他に人材育成の方法はないのかという観点もあるのかなと思います。
 広域人事、もちろん私の会社は体験があることを非常に重要視していまして、いろんな体験をする、海外に行くのも大事だということでやっていますので、広域人事での体験、育成は非常に価値がある、効果があるのはよく知っていますが、いろんな事情がある中で、一律にするのが多分相当難しいんだろうなと、もう私は見ていますので、何かもうちょっと違う方法がないんだろうかというところにも、1回頭を振ってみるのも大事なんじゃないかと思いました。
 以上です。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。主に今まで出てきたのは、人事、給与の委譲に関わることを中心に、国の関与、そしてあとは教員のやる気に関わる給与改善等、そうした議論での御意見が多かったのですけれども、他の違った論点でも構いませんので、あと20分ぐらい時間がありますので御自由に。高橋委員、そして露木委員、白石委員、その順でお願いします。高橋委員からお願いします。 

【高橋委員】  はい、評価の在り方というところで発言をさせていただきたいと思います。義務教育行政に関して、我が国にふさわしい第三者評価の仕組みはどうあるべきかということですが、これは教育委員会制度の在り方にも通じることだと思います。私は評価がしっかりできていないということが、教育委員会として大きな問題ではないかと考えています。その評価を次の施策に生かすためには、自己評価書を作成し外部評価委員の方に読んでいただき評価していただくことも大事ですが、内部からしっかりと教育長、事務局の仕事、それから首長さんの指導も含めて評価をしていくということが、本当は教育委員会がすべきことだろうと思っています。
 そのためには十分な情報提供が必要になると思います。その上で、教育委員の能力を上げていく必要もあります。また教育委員会が審議会程度になって権限がなくなることは、事務局の教育職の人ばかりで教育を行うということになって視野が狭くなる危険性があるから、私はそれが一番問題だと思います。学校でも学校運営協議会を開くというのは、多様な人の意見を聞いて、そして自分の学校の教育の在り方を評価していただいて改善する、それをまた公表するというプロセスをとることと同じことだと思います。この評価の在り方ということが、教育委員としての大事な仕事であるということを、是非お考えいただき
たいと思います。 

【小川分科会長】  露木委員、お願いします。 

【露木委員】  先ほどの広域でということを繰り返し言いましたら、広域ということで御質問されたような気持ちでちょっと。東京の場合でも、1村1校の学校から1区で70校、80校とある地区、いろいろな地区があるわけです。先ほど教師の研修という立場から広域という話をさせていただきましたけれども、様々な自治体がある中で人事権の委譲ということは、実際の状況と余りにも違いますから、その状況をやはり勘案しながら考えていかなければ、人事権の委譲ということはあり得ないだろうなと私は考えています。そういう意味で、1村で1校しかない地区も考えれば、どうしたって幾つかの広域の人事ということを考えていかなければ、あり得ないんではないかなと考えています。
 以上です。 

【小川分科会長】  白石委員、お願いします。 

【白石委員】  前回の会議で大阪の広域の例が出まして、人事権あるいは財源も含めて、広域的に運用するというのは一つの方法かなと私自身も考えてはみたんですが、ただ現実には、例えば地方では、消防であるとか、あるいはごみ処理であるとか、福祉であるとか、そういった部分は広域的に実際にやっているわけです。ただ、これが教員ということになって果たして広域でうまくいくのかなということ。例えば今私どもがやっている一部事務組合に当てはめて考えてみると、なかなか採用とか異動とかになってくると、ちょっと違うのかなという感じもするんです。
 今の教育委員会のありようを考えたときに、もし広域化ということになると、それでは広域教育委員会を作るのかという話が出てくるわけです。ですから、あくまでもやっぱり教育委員会制度をしっかりと議論した上で、そういうことも十分あり得るということであれば、検討する必要はあるかなと思います。そのときに、当然人事、採用、異動を含めて、あるいは財源も含めて、やっぱりその広域的な組織に責任を持たせる。
 教育委員会そのものの役割としては、先ほどちょっと言いましたように、学校教育に関わる部分と社会教育は、私は違うと思うんです。今問題になっているのは、いじめがどうとか、学校での体罰とか、あるいは学力の問題というのが出てきたから。我々がこの教育委員会を問題にしているのは、そういった部分が主な原因だろうと思うんです。
 つまり、社会教育で文化財保護がどうだからとか、あるいは生涯学習がうまくいっていないとか、スポーツ振興がうまくいっていない、そういうところからこの教育委員会の問題を議論しようということになったんじゃないと思うんです。ですからそこの部分は分けてもいいんじゃないかなという感じがいたします。
 それともう一つ、例えば私どものところは幼稚園が二つあるんです。これは私どもの方で幼稚園の教諭を採用するわけですから、二つの幼稚園を行き来するしかないんです。一つの町でもそういう幼稚園の例なんかをとると、他との異動はないわけです。それでもきちんと運営はできているわけです。つまり先生は同じでも、入ってくる子供たちは年々変わってくるわけですから、先生の心構えがあれば、一つの学校、二つの学校でもできないことはない。
 これはまさに先生、教諭の質の問題に掛かってくるんだと思います。この間、昔懐かしい「二十四の瞳」を見ましたけれども、あそこは先生1人です。でもやはり地域がその先生を支えて、学校を支えてやっているわけですよね。ですからそういうような気持ちが住民の中に広がっていけば、案外そういった1校に長くいるだとか、あるいは隣の学校と行き来するだけじゃないかということは、余り私は問題にならないのじゃないか、そうすべきだろうと思うんです。そういう意味で、先生の質についてももっともっと高める、あるいはありようについても考えていく必要があるだろうなと思います。 

【小川分科会長】  今までの議論をかなり整理していただいたような感じで、ありがとうございました。時間が余りないですけれども、村上委員、二見委員、そして明石委員ですね。では、村上委員からお願いいたします。 

【村上委員】  すいません、2点申し上げます。
 1点目は、主に二つ目の国、都道府県、市町村の関係に関わってというところになるんですが、今まで割と具体的な話をさせていただくことが多かったのですが、もしかしたらもっと前に申し上げるべき議論だったかもしれないのですが、私自身は国の責任というのは、個別法、ないし地教行法に書き込んでいいんじゃないかという立場ではあります。
 それに関わってもう少し原理的な話になるのですけれども、地方教育行政法の理念自体が、国、都道府県、市町村の連繁要するに連携ですね。国、都道府県、市町村の連携とか一般行政と教育行政の調和ということは、現行の地方教育行政法の理念になっているのですけれども、この連繁とか連携とか調和という言葉が、いろんなことを曖昧にしてきたような側面があるんじゃないかと考えておりまして、やはり連携とか調和ってもちろん大事なんですけれども、抑制と均衡、チェック・アンド・バランスというのを、きちっと地方教育行政法の理念として盛り込むべきではないかと。
 今の法律というのは、そのところが市長と教育委員会の関係にしてもそうですし、国、地方関係にしてもそうなんですが、調和とか連携は非常に強調しているのですけれども、抑制と均衡、チェック・アンド・バランスという側面がやはり弱いのではないか。なので、ちょっと具体的な話ではないですが、やはり大事な点として、法理念の中に、国、地方、それから市長、教育委員会、そういった一般行政、教育行政関係について、調和と連携だけではなくて、抑制、均衡という考え方をきちっと盛り込む。
 そういった意味で、国の責任というものもやはり地方が果たせなかったときに、国がきちんとチェック・アンド・バランスの役割を果たすことが必要なのではないかということが1点です。調和、連携だけではない。もちろんそれも重要なのですが、抑制、均衡という理念も法の中にきちっと入れる必要があるのではないかということです。
 2点目ですが、2点目は先ほどの白石委員のお話に関わるのですが、やはり学校教育と社会教育は少し、教育委員会制度を扱うときでも違うのではないかというお話でして、それは私もそういう面はあるのかなと思いまして、それに関わって、前半に橋本委員のお話で出てきた、何が問題なのかというところが、やはり学校教育とかの問題に比べてちょっと分かりづらいというのは、実は私もそうかなと思っていまして、どういうことかというと、つまり学校教育に関しては、ある程度何が問題かということは何となくの合意がありますし、研究的にも調査、研究というのは結構教育委員会制度とか学校教育に関してあるわけですが、今日前半に出てきた社会教育とか文化・スポーツとか、文化財保護とかの学校教育外の話については、何が問題なのかということをそもそもきちっとエビデンスベースドで、やはりまず明らかにする必要があって、それなしでいきなり制度設計とか何か制度をいじるというふうにはならないんじゃないかと。
 ですので、やはり教育委員会制度の在り方とか学校教育については、ある程度エビデンスもあって、議論もあって、問題点もはっきりしていてというところはあるんですが、今日前半に出てきたような部分は、何が問題なのかということを、エビデンスベースドできちっと確認してから制度設計に入ってもよいのではないかと思いました。
 以上です。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。どうまとめようかなと今考えていたんですけど、そういう枠組みの一つの意見を述べていただいた感じがしました。では、二見委員、どうぞ。 

【二見委員】  前回も広域人事と、あるいは市町村のレベルだということで意見を申し上げましたけれども、東北大震災であるとか、いろんなところで大災害が起こったときに、遠方から通勤している先生が学校に来られないという状況が随分これまでありました。そういう点では、先ほどの白石町長さんがおっしゃったような、本来先生方は学校の近くに住んで、親や子供とすぐに接せられる、そういう環境が一番望ましいとは思っております。
 しかしながらそういうことは、町村レベルに行けば行くほどなかなか実現しにくい状況だというのは、地元の人材が確保できていないという現状があるわけでございます。あわせて、地元の人材がせっかくいても、政令市であるとか都市部に出ていって、なかなか地元で勤務できていないという実態もあります。では、その自分の町で採用すればいいではないかという形になると思いますけれども、私も教員の経験がありますが、教員の教育文化というのは随分、同じ県内でも地域によって違うわけです。
 その違う文化を経験することは、人事異動によるすばらしい研修であり、人材育成の一つにもなっている。長い40年間近い教員生活の中で、囲い込まれた地域の中で、一部の教育文化を感じることが本当にいいのかどうか、これはまた考えてみたいと思います。そういう点で、基本的には私は、これまでの状況の人事、採用から任用等については、従来のものを踏襲していただきたいのが考えです。
 もう一つは、政令市は既に人事権はあるわけですけれども、この囲い込みが非常に強い。今後中核市等が人事権を委譲していけば、大きい町が囲い込みをして、小さな市町の人材が確保できにくいということは、十分御存じいただきたいと思っています。
 以上でございます。 

【小川分科会長】  では、明石委員。 

【明石委員】  私は高橋委員の提案に非常に共鳴しまして、この第三者評価の在り方というのが、今後の新しい教育委員会制度の設計において大事かなと思っております。その意見を申し上げたいと思います。
 実は私は千葉市の教育委員もしておりますし、もう一つは千代田区の第三者評価の委員もしております。千葉市の場合は、外部の委員は年2回しか会合を開きません。千代田区の場合、年3回なのです。それで外部評価を一応するのです。レポートを出しますけれども全然効果がない。ただ教育長はそれを見ただけで、そうですか。こういう第三者評価の在り方が、今の教育委員会の変なところを作ったかなと思っているのです。
 そうすると、新しい教育委員会制度を考える場合に、やっぱりもう教育委員長は辞めてもらって、教育長と事務局が一つのグループを作る。そのかわり、この外部の第三者評価が新しい名前を付けて、そこで評価とチェックをして、権限を持たせる。そういう形の新しい仕組みを作っていかないと、外から見て非常に分かりにくい。
 それで、それも常設ぐらいの形で、もう月に1回ではなくて週1回程度、半常勤程度で、全ての社会教育から学校教育、文化行政も含めてチェックして評価していく。それを答申で出す。かなり拘束性を持つようなことをしていかないと駄目です。それはやっぱり教育長だけに任せたら困るので、そういう第三者評価の在り方を、一度この分科会の中で集中的に審議をしてみると、従来の教育委員会の在り方と新しい教育委員会の在り方の中身が変わってくるかと思いまして、発言しました。 

【小川分科会長】  ありがとうございました。終わりの時間が迫ってきていますが、よろしいでしょうか。もしもあれば一、二受けます。では、帯野委員で最後でよろしいでしょうか。帯野委員、よろしくお願いします。 

【帯野委員】  すいません、意見というより質問なんですが、先ほどから皆さんの議論を聞いていてよく分からないのが、広域という定義です。これは都道府県のことを言っておられるのか、ある人口規模のことを言っておられるのか。人口規模であれば、この間大阪府から頂いた資料で、豊能地区人口65万程度ですか、これが鳥取から福井まで5県とほぼ同等ということであるのでそれで良いと思うのですが、何をもって広域というのを考えるのが必要であると思います。
 そうでなければ、広域都道府県対小規模の市町村ということだけで考えていると、先が見えないのではないかと思いますので、そこは是非教えていただきたいというか、定義を定めていただきたい。
 それから、都道府県の中で広域を作る意味があるのかということですが、例えば大阪府のように、今880万、もう少し減っているかもしれませんが、その人口規模の大阪府で、またいろいろな意味で条件がほぼ均一の大阪府下でも、南と北というのは教育事情は全く異なりますので、やはり都道府県の中で広域というか、中規模というか、ある意味の広域という制度を作るのは、意味があると思います。そういう意味で60万という規模のが出されたと思いますので、これも一つの指標にすべきではないかなと考えます。 

【小川分科会長】  事務局から説明いただきますか? いいですか。では、よろしくお願いします。 

【堀野企画官】  広域の人事の在り方も県によってかなり事情は違いまして、一番極端な場合ですと、鹿児島県のように離島が奄美大島から沖縄の手前までありますので。それから薩摩半島と大隅半島で、大分交通の便も違います。こういった県では、広域といったら本当に端から端まで行きます。島にも当然行くし、本土の中でも3地区回らなければいけないとかという感じで、完全県内広域になります。
 ただ多くの県では、恐らく県を幾つかの教育事務所単位で言うと、6つとか8つとかに割っていって、それがもともとその地域の作りにもよりますけれども、昔からそこが一つの生活圏であったと。郡であったとか、昔の藩でここで分かれていたとか、そういう生活圏として一体感のあるブロックの中で基本的には回るんだけれども、何回かはそのブロックを越えて遠くにも行くというような広域異動が多いんじゃないかと。県によってはほぼ市町村内で人事が回って、それで済むところもありますので、広域の定義は、地理事情と歴史的事情とによって、かなりばらばらでございます。 

【小川分科会長】  帯野委員、今の説明でよろしいですか。 

【帯野委員】  そうですね。ただ、どの程度の規模が適切かということは、何か基準がないと、県でばらばらとか、地域によってとかいうのでは、広域人事が無理であるとか、可能であるとかいうことを議論するスタートラインに着いていないなという気がしました。

【小川分科会長】  そのテーマは確かに地方教育行政の大きなテーマでして、そういう人事を含めた、ある部分完結した地方教育行政を適正に管理運営するためには、適正規模をどう考えたらよいのかという議論は、戦後初期からいろいろ議論されてきているんですけれども、ただ、都道府県の地形・地理的状況、県内における市町村配置や人口の偏在など都道府県ごとに本当に実情が違うので、そういう違った実情がある中で、アプリオリに、人口60万程度であれば、人事を含めて適正な教育行政の管理運営ができるとは、なかなか言い切れないものがありまして、その辺のところはまだ、整理できていないといった方が現状かと思います。

【比留間委員】  すいません、ちょっといいですか。

【小川分科会長】  はい。比留間委員、どうぞ。 

【比留間委員】  東京都の例で申し上げますと、一般的な言い方として広域という場合には、東京都の場合区市町村という言い方をしますけれども、行政の単位を超えて人事異動をする、一般的にはそういう考え方でやっています。それと、適正規模というのは今座長がおっしゃったように、かなり難しいだろうと私も思います。23区の中に80万の世田谷区から60万人規模の例えば足立区とか大田区とか。じゃ、足立区とか大田区とか世田谷区が、自己完結の教員人事でいいと考えているかどうかというのは、直接聞いたことはありませんけれども、決してそうは考えていないんじゃないかとも思えます。
 ですから、人口の規模だけでこれが大体適正で、そこで人事が完結しますよと、今の制度の中では恐らく考えていないんじゃないかなと思いますので、多分そこは難しい問題だろうと私も思います。 

【小川分科会長】  研究者には是非そういう研究をきちんとやってほしいという思いがありますが。
 時間がもうありませんので、今日はこれくらいで終わらせていただきたいと思います。この3か月ほど、今日まで諮問事項1、2、3に関わって、一通り全体を一巡して、諮問事項ごとに御意見を頂きそれを整理できたのかなと思っています。
 次回以降、具体的な制度設計ができるところについては、そういう方向で、2巡目に入った議論をしていきたいと思います。次回の開催については私の方からお知らせいたします。次回会議は、8月22日水曜日、10時から12時まで、場所は文部科学省の旧庁舎6階の第2講堂で開催する予定ですので、お願いいたします。
 次回以降は、諮問事項1の「教育委員会制度の在り方」について、これまでの議論を踏まえて、どのような制度設計が可能かという具体の論議に入っていきますので、よろしくお願いします。
 では、本日の分科会をこれで閉会したいと思います。ありがとうございました。

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