全専各連総発第160号
平成16年9月17日
中央教育審議会教育制度分科会
地方教育行政部会長 鳥居 泰彦 殿
全国専修学校各種学校総連合会
会長 鎌谷 秀男
この度の「地方分権時代における教育委員会の在り方」に関して、本連合会として別紙のとおり意見を提出いたしますので、お取り計らいのほどお願いいたします。
「地方分権時代における教育委員会の在り方について」に対する意見
貴会で整理された「論点の整理」をも踏まえ、我が国の教育制度において人間性豊かな人材を育成する職業教育機関として、また、地域に密着した生涯学習機関として重責を担っている専修学校各種学校の立場から、以下のとおり意見を申し述べます。
都道府県及び市町村の規模などにかかわらず義務教育や公立学校の教育の水準を維持する必要から、引き続いて教育委員会における教育行政の中立性・安定性・継続性などを確保することは重要である。さらに「人間カ」向上をはじめ必要とされる教育的施策を展開するためにも教育委員会の役割はさらに大きくなるものと考える。
この役割を検討する上で重視すべき内容の1つに、専修学校各種学校の機能の活用があげられるが、そのためには学校に対して専門的指導が行えるような教育委員会の事務局体制の整備が優先されると考える。現在、中学校や高校の現場では、相変わらず中学校では高校中心、高等学校では大学中心の進路指導が行われている。これは教育委員会における専修学校各種学校の認識の欠如によるところが大きいと感じる。不登校生や高校中退者を受け入れて職業教育を通じて立ち直りを実践している高等専修学校の実績、新規高卒者の2割弱が専門学校へ進学している実態なゼを踏まえると、進路指導の在り方も必然的に変わらざるを得ないはずである。子どもたちの個性を重視した初等中等教育段階の進路指導を展開できるよう、専修学校各種学校を理解し、学校への的確な助言・指導を行える専門的な体制を整えることが重要である。
専修学校各種学校の大多数は私立学校として知事部局の所管となっている。
私立学校は個々の建学の精神に基づき特色ある多様な教育活動を展開しており、我が国の学校教育の充実・発展に大きく貢献してきている。これは知事部局の所管のもと、私立学校の自主性・自律性を尊重した指導・監督が行われてきた結果であり、今後とも社会の要請を踏まえて主体的かつ機動的に教育活動を展開していくためには、私立学校に対する知事部局の所管は堅持される必要がある。
なお、生涯学習における首長と教育委員会の役割分担についても、教育委員会での一元管理には問題がある。実際に専修学校各種学校の認識が十分でない教育委員会においては、教育委員会主導の生涯学習推進事業から専修学校各種学校が外され、教育委員会所管の施設中心の企画運営が行われることが多く、地域住民の意向や要請を充分に反映していないと感じることがある。首長部局と教育委員会とで必要な情報を共有し、連携しながら進めることで、「まちづくり事業」としての生涯学習の展開も図れ、職業教育の実績を踏まえた専修学校各種学校の活用も望めると考える。
地域の特性を活かすために、都道府県の指導性と市町村の自主性のバランスを考慮することは重要である。全国を通じて一定水準の教育を確保するために広域的な指導は確かに不可欠であるが、地域人材の育成、地域経済の活性化など、個別の実情に応じた教育を展開する上では、独自の狭域的な教育行政の執行が必要であると考える。
前述のとおり、私立の専修学校各種学校が知事部局の所管となっていることもあり、教育委員会との関係は決して十分とは言えない。例えば、都道府県教育委員会において専修学校各種学校の活用を視野に入れた根本的な方針を定め、個別の実情に応じた方針で市町村教育委員会が責任を持って運用することができれば、地域ごとに競争原理も働き、結果的に全体の教育の質の向上に資するのではないかと考える。
地域の実情に応じた教育を展開していくためには、学校の裁量、責任でカリキュラム編成などが行えるよう、弾力的な対応を行うことが重要である。
現時点でも、高校と専門学校の教育連携が行われている事例が見られるが、今後とも専修学校各種学校が蓄積してきた職業教育の成果やノウハウを、広く義務教育諸学校及び公立学校の教育に反映させることができるよう、柔軟な対応が必要であると考える。
以上
生涯学習政策局政策課