県費負担教職員制度のもとでは、市町村教育委員会と都道府県教育委員会が役割を分担して人事行政にあたっている。また多くの都道府県教育委員会には、出先機関として教育事務所が設置されている。前項での結果でも示されているとおり、教育事務所は都道府県における人事異動の一つの単位となっているほか、都道府県教育委員会(本庁)と業務を分担している。
多くの県で教育事務所を設置している。一部では教育事務所に人事担当者を置かないという県もみられたが、その場合であっても情報収集など、ある程度の事務を分担している。教育事務所が設置されている県の場合、その半数以上では異動の原案作成にも関わっており、各県における教育事務所の役割が決して小さいものではないということが分かる。
都道府県教委における人事異動事務に関する、「市町村教委からの意向をそのまま広域的に配置するだけで形骸化している」という指摘(「地方教育行政部会(第4回)における意見」より)について検証する。都道府県では市町村教委からの意向をどのようにして異動案作成に反映しているのか。
一般教員については教育事務所で、また学校管理職については教育事務所と都道府県教委の二段階で調整を行っているという回答が多い。都道府県と教育事務所の役割について比較すると、(対象教員の数が多い)一般教員の異動に関して、特に事務所の役割が目立つ結果となった。
また、市町村教委の意向を都道府県(本庁)が集約するだけで異動案を作成するという回答はみられず、2‐1と同様、都道府県教委や教育事務所が調整機能を発揮することで人事行政が進められているという傾向が示された。これは、市町村教委の意向をそのまま集約するだけでは人事が成立しないという状況を示していると言い換えることもできる。
2‐2で確認できた、都道府県教委(本庁)や教育事務所の調整機能や役割分担について、教育事務所単位で活動を確認するとどうなるのか。「意向をそのまま」集約したり取り次いだりするのか(教育事務所単位での調整機能があるのかどうか)、教育事務所で「異動案を作成」するのかどうか、という二つの観点で活動状況を調査した。
教育事務所単位でみると、一般教員に関しては異動案の作成を行う事務所が、また学校管理職に関しては市町村の意向を調整する事務所が多く、都道府県教委との役割の分担を行っている。このことからも、市町村教育委員会の意向をそのまま反映することでは人事異動の事務は進めにくく、教育事務所がその調整の役割を担っているということがわかる。
多くの回答において、市町村教育委員会の意向よりも都道府県や教育事務所の意向・方針が優先されている。これについては、都道府県や教育事務所が市町村教育委員会の意向を軽視しているという解釈も可能であるし、反面では多くの都道府県や教育事務所において、市町村教委の意向を優先するだけでは人事異動がうまく機能せず、調整を優先して広域人事を進めていることを示していると解釈することもできる。
生涯学習政策局政策課