ここでは、教育委員会会議の具体的な姿を、主として教育委員長調査を用いながら明らかにすることとする。まず、会議運営の諸側面に着目する。
定例と臨時を含めた教育委員会会議の開催頻度は、年間11回以下が1割(9.9%)、12~14回が35.3%、15~17回が4割(39.1%)、18回以上が15.7%であった。平均は14.7回である。
会議の開催頻度について、満足であるかどうかを聞いたところ、全体の約8割(78.6%)は「おおむね十分である」と回答している。一方、「かなり少ない(1.0%)」「やや少ない(19.1%)」を合計すると2割(20.1%)が少ないと感じている。「かなり少ない」を1点、「かなり多い」を5点とした平均は2.80である。
1回の会議にかかる時間は、2時間未満が6.2%、2時間以上3時間未満が約5割(49.7%)、3時間以上4時間未満が35.9%、4時間以上が8.1%であり、平均2.43時間であった。
なお、会議の開催頻度と会議時間との相関はないといってよい。
委員会会議で採決に至ることがあるかどうかを聞いたところ、「あまりない」との回答が4割以上(44.3%)あり、「全くない(18.2%)」を加えると6割を越える。「全くない」を1点、「しばしばある」を4点とした平均値は2.32である。会議の活発度(2-(1)-12を参照)との間には、統計的に有意な関係は見いだせない。
議題について結論が出ずに、つぎの会議に持ち越されることがあるかどうかを聞いたところ、「あまりない」との回答が半数を超えた(54.2%)。「全くない」を1点、「しばしばある」を4点とした平均値は1.96である。
1回の委員会会議の報告事項は多いと思うかどうかを聞いたところ、「どちらともいえない」が半数近く(46.1%)となり、次が「あまり多くない(30.7%)」との回答であった。「多すぎる」を1点、「全然多くない」を5点とした平均値は3.12である。
1回の委員会会議の審議事項は多いと思うかどうかを聞いたところ、「どちらともいえない」が半数を超えている(52.7%)。「多すぎる」を1点、「全然多くない」を5点とした平均値は3.30である。
事務局の準備する資料が、議論をする上で質・量ともに十分であるかどうかを聞いたところ、「やや十分である(43.5%)」と「十分である(27.5%)」を合わせると約8割が不足を感じてはいないことが分かる。
教育委員会会議に際して、各委員への事務局による資料配付がいつ頃であるかを聞いたところ、半数を超える自治体で「会議の当日(52.2%)」との回答であった。
資料配付の時期が適切であるかどうかを聞いたところ、「やや適切である(33.3%)」は最も多いものの、「非常に適切である(13.8%)」を合わせても半数に満たず、「あまり適切とはいえない」が3割弱(26.9%)となっている。「全く適切ではない」を1点、「非常に適切である」を5点としたときの平均は、3.23である。
事務局による説明がわかりやすいかどうかを聞いたところ、「だいたいわかる(58.5%)」「とてもよくわかる(26.3%)」を合わせると85%近くがわかるとしている。
教育委員会会議の特徴について聞いたところ、以下のような結果を得た。
平均値は、「全くそう思わない」を1点、「とてもそう思う」を5点とした平均である。
全くそう思わない | あまりそう思わない | どちらでもない | ややそう思う | とてもそう思う | 市町村平均 | 都道府県平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1.会議では多様な意見が自由に交わされる | 0.4% | 3.9% | 5.2% | 44.6% | 45.9% | [1]4.32 | [1]4.62 |
2.提案された政策について活発な議論が展開される | 0.5% | 5.3% | 13.2% | 48.3% | 32.8% | [3]4.08 | [3]4.41 |
3.反対意見でも自由に発言できる雰囲気がある | 0.4% | 3.1% | 9.7% | 44.3% | 42.5% | [2]4.25 | [2]4.54 |
4.提案された政策に関してはあまり発言はない | 25.4% | 41.4% | 18.1% | 12.7% | 2.3% | [5]2.25 | [5]1.54 |
5.提案された政策は特に意見もなくそのまま認められることが多い | 22.1% | 36.6% | 19.7% | 19.4% | 2.3% | [4]2.43 | [4]1.87 |
調査に回答した委員長は、議論が活発に行われているととらえていることが分かる。教育委員会会議の特徴についての本設問を「教育委員会会議の活発度」を表す一つの指標とするために、1~3の設問に「全くそう思わない」と回答した場合を1点、「とてもそう思う」を5点とし、4と5については得点を逆にして平均を出し、全体の平均値よりも低い場合を「不活発」高い場合を「活発」として層化し、他の設問との関連を見ることとする。
行政区分別に見ると、政令市・中核市・特例市・東京特別区を併せると「不活発」のグループに入るのは22.4%、「活発」には77.6%が入るのに対して、一般の市では「不活発」が37.3%、「活発」が62.7%となり、町村では「不活発」が46.4%、「活発」が53.6%となる。
全くあてはまらない | あてはまらない | どちらともいえない | あてはまる | よくあてはまる | 市町村平均 | 都道府県平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1.事務局スタッフは問題の理解を促進するために資料提供に従事している | 0.3% | 4.7% | 12.4% | 64.3% | 18.3% | 3.96 | 4.26 |
2.事務局スタッフは意見や議論を方向付けている | 7.6% | 24.1% | 34.9% | 29.1% | 4.3% | 2.98 | 2.45 |
「事務局スタッフは意見や議論を方向付けている」との質問に対する回答は、「全くあてはまらない」と「あてはまらない」を合わせると3割になり、「どちらともいえない」が3割、そして、「あてはまる」と「よくあてはまる」の回答を合わせると3割となり、その回答は分かれたものとなった。その一方で、「資料の提供に従事している」との質問では、「あてはまる」と「よくあてはまる」の回答の合計が8割を越えている。
事務局スタッフについては、2については「活発」のグループが「全くあてはまらない」「あてはまらない」と回答する傾向が強く、1については逆になっており、特に1では「よくあてはまる」との回答が「活発」では24.4%であるのに対して、「不活発」では9.5%に留まる。会議の活性化のためには、事務局が議論の方向付けをするのではなく、議論の基になる資料提供に専念するのが望ましいととらえることもできるが、活発な議論を展開している会議ならば、事務局が敢えて議論の方向付けをしなくともすんでいると見ることもできよう。
つぎに、市区町村教育長への調査データを用いて、教育長からみた、教育委員会会議の様態について明らかにする。
全くあてはまらない | あてはまらない | どちらでもない | あてはまる | よくあてはまる | 市町村平均 | 都道府県平均 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
教育長のリードで展開する | 4.5 | 20.1 | 35.5 | 34.7 | 5.2 | [4]3.73 | [5]2.26 |
提案はそのまま認められる事が多い | 1.3 | 5.2 | 20.5 | 62.6 | 10.5 | [5]3.16 | [4]3.61 |
提案への発言はほとんど無い | 10.2 | 48.0 | 29.3 | 12.1 | 0.5 | [6]2.45 | [6]2.03 |
反対意見が自由に発言できる | 0.1 | 1.1 | 12.1 | 69.0 | 17.6 | [2]4.03 | [2]4.24 |
議題への活発な議論がある | 0.0 | 3.7 | 26.2 | 54.9 | 15.2 | [3]3.82 | [3]4.18 |
多様な意見が自由に出る | 0.0 | 2.9 | 12.5 | 61.9 | 22.6 | [1]4.04 | [1]4.55 |
教育委員会会議の様態に関する質問項目の回答からは、教育長が教育委員会会議は活発に機能していると捉えていることが理解できる。「多様な意見が出る」、「活発な議論がある」、「反対意見が自由に発言できる」といった、会議に対する肯定的な項目の平均点は高得点になっていると共に、「提案への発言はほとんどない」などの否定的な項目への回答は、「あてはまらない」、「全くあてはまらない」といった回答の割合が増えている。すなわち、本調査で使用した項目のほとんどで、教育委員会会議は活発に機能しているという結果となった。
また、上記の質問項目を「全くあてはまらない」に1点、「よくあてはまる」に5点を与え得点化した上で(「教育長のリードで展開する」、「提案はそのまま認められることが多い」、「提案への発言はほとんど無い」については、「全くあてはまらない」に5点、「よくあてはまるに」1点を与えた)、全ての項目の点数を足して、その平均値を求め、それをもとにして会議が活発な教育委員会と不活発な教育委員会とに分けた。その上で、改革進展度(3-2を参照)とのクロス集計を行った。
その結果、教育委員会会議が活発な教育委員会においては、改革が進展している教育委員会が過半数を占める一方で、不活発な教育委員会においては、過半数の教育委員会が、改革進展度が低い層に属していることが理解できる。
前記2-(1)-12で作成した「会議の活発度」と会議運営に関する様々な側面とのクロス集計を行い、会議の運営のあり方が、会議の活性化とどのように関係しているのかを明らかにした。
会議の活発度、会議の開催頻度とそれに対する満足度には統計的に有意な関係があった。
すなわち、会議が不活発であると認識している委員長は、会議が少ないと感じており、「頻度への満足度」が「活発」の委員会よりも低い。
教育委員会会議の議題がつぎの会議に持ち越されることの有無と会議の活発度とのクロス集計を行ったところ、「活発」に属する教育委員会よりも「不活発」の教育委員会の方が次回持ち越しは少ない傾向が見られた。
会議の活発度との関係では、「活発」のグループでは資料の質と量について十分であるとの回答が、「不活発」よりも多くなる傾向がある。
会議の活発度との関係でも、「不活発」のグループでは当日であるとの回答が多く、「活発」のグループでも半数近くが「当日」ではあるが、会議日よりも前に配布される傾向が強い。
会議の活発度との関係では、「活発」では「やや適切」「非常に適切」を合わせると51.7%になるが、「不活発」では39.7%に留まる。
会議の活発度との関係では、「とてもよくわかる」について「活発」では35.4%が回答しているのに対し、「不活発」では14.2%に留まる。
改革進展度(3-2を参照)とのクロス集計を行ったところ、会議の活発度が高いグループは、改革進展度も高く、逆に会議の活発度が低いグループは改革進展度が低い自治体が多いという傾向が見られた。
生涯学習政策局政策課