資料6 教育委員会の在り方に関する論点の整理(教育制度分科会)

中央教育審議会総会(第41回)配付資料

平成16年7月29日

 (この「論点の整理」は、第1回から第7回までの地方教育行政部会において出された論点と主な意見について、教育制度分科会で議論し分科会として整理したもの。)

1 総論

(1)市町村や学校の裁量と責任の拡大について

  • 市町村や学校の人事・予算に関する企画立案、原案提起などの裁量を拡大し、市町村や学校が特色を出し競って向上に努めるようするとともに、その内容について説明責任を果たすような制度としていくべきではないか。

(2)全国的な教育水準の確保について

  • 地方分権を進めると同時に、とりわけ義務教育については、ナショナル・スタンダードを示して、全国的な教育水準を確保していくことが必要ではないか。

(3)保護者、地域住民の教育への参画について

  • 学校運営協議会制度の活用などにより、学校運営や教育行政に保護者、地域住民の参画を得て、その意向をできるだけ反映していくことが必要ではないか。また、保護者、地域住民と学校が協力して、人間としての基本的な礼節、倫理観、道徳、社会常識、基礎知識等の教育を行っていくべきではないか。

(4)制度改革と運用改善について

  • 制度改革は、現在の地方教育行政制度の基本的な理念を維持しつつ、改革の合理性・有効性を検討して行うべきではないか。その際、教育委員に適材を得るなど可能な運用改善をまず行った上で改革を検討すべきではないか。

2 各論

1 教育委員会制度の意義と役割(教育委員会制度の在り方)

(1)中立性の確保について

  • 教育は、地方行政の最重要課題の一つとして政治的争点となりやすく、現在でも教育委員会制度によって政治的中立性を確保することが必要ではないか。

(2)継続性、安定性の確保について

  • 教育は、首長の交替による影響を受けず、継続性、安定性が確保されるべきではないか。一方、教育行政も自治体の行政の一部であることから、首長の交替に伴う自治体全体の方針変更に沿って改革していく必要性にも留意すべきではないか。

(3)教育行政の首長からの独立について

  • 教育の中立性、継続性、安定性を確保するため、首長から独立した執行機関が教育行政を担当すべきではないか。※なお、仮に首長の教育政策に問題がある場合は選挙で選ばれなくなること、また議会によるチェックも働くことから、首長が教育行政を担当してもよいのではないかとの意見もあった。

(4)レイマンコントロールについて

  • 専門家のみが教育行政を行うのではなく、地域住民の意向を教育行政に反映するレイマンコントロールの考え方は今後も維持すべきではないか。※なお、複雑化した現代の行政においては、レイマンコントロールが機能することは実際には難しいとの意見もあった。

(5)合議制について

  • 教育行政の執行機関が様々な分野の代表者で構成されている方が、地域住民の幅広い意見を代表することになるのではないか。※なお、合議制は決定が非効率で責任の所在も不明確となるのではないかとの意見があった。

(6)教育委員の人選について

  • 教育委員の人選は、教育委員会が機能する上で非常に重要であり、人材の充実・確保を図るべきではないか。※なお、小さな町村では教育委員の人材確保は難しいのではないかとの意見があった。

(7)教育長・教育委員会事務局の在り方について

  • 教育委員会が執行機関として実質的に方針を決定し、事務局はその方針に従って事務を行っていくようにすべきではないか。また、教育委員の活動を支援する専門の職員を配置すべきではないか。
  • 学校に対して専門的指導が行えるよう、指導主事の配置の充実など教育委員会事務局の体制を整えるべきではないか。

(8)制度改革について

  • 教育委員会を設置するか否かは、教育行政の基本事項であり、自治体の判断に委ねること(任意設置)は不適当ではないか。※なお、自治体が自己の組織について決定権を持つべきとの観点から、任意設置とすべきとの意見があった。
  • 市町村の人口規模や行政資源は様々であることから、教育委員会制度を人口規模などに応じて多様なものにできるようにすべきではないか。
  • 具体的な制度改革としては、以下のようなものが考えられるのではないか。
    • 教育委員会を置かないこととする場合、教育の政治的中立性を担保するため、首長のもとに教育審議会を置いてはどうか。
    • 意思決定の迅速化と責任の明確化のため、教育委員を常勤職としてはどうか。
    • 教育委員の選任に地域住民の意向を反映させるため、公募や公選で選任するようにしてはどうか。
    • 地方の実情に応じ、教育委員の人数を弾力化し自治体の判断に委ねてはどうか。また、教育委員の人数を増やしてはどうか。
    • 教育長が教育委員長を兼任できるようにしてはどうか。
    • 教育長の専門性を高めるため、教育長を資格が必要な職としてはどうか。

2 首長と教育委員会との関係

(1)首長と教育委員会との連携方法について

  • 首長と教育委員との定期的な協議の場の設定、審議会の設置、自治体が策定する基本構想の活用などにより、首長と教育委員会の連携を深めるべきではないか。
  • 予算の編成・執行や事務局職員の人事について、教育委員会の自主性が配慮されるべきではないか。

(2)教育行政への議会の関わりについて

  • 議会が教育行政について関心を持ち、議論していくようにすべきではないか。

(3)生涯学習、文化、スポーツ等における首長と教育委員会の役割分担について

  • 生涯学習、文化、スポーツについては、学校教育とあわせて教育委員会が所管すべきではないか。一方、これらの施策はまちづくりの一部であり首長との関係も深いのではないか。首長か教育委員会かという縦割りの議論ではなく、自治体全体としてどう取り組むのかを考え、両者が連携していくべきではないか。
  • 幼児教育は教育委員会が関与していくべきではないか。また、市町村の役割が重要ではないか。
  • 私立学校については、私学としての自主性の尊重や公立学校との交流連携なども勘案しつつ、教育委員会の関わりについて検討していくべきではないか。

3 都道府県と市町村との関係及び市町村教育委員会の在り方

(1)国、都道府県、市町村の関係について

  • 国の指導が、都道府県、市町村、学校と進むに従って強く受けとめられ、教育が画一的となる傾向があるが、都道府県、市町村、学校それぞれが何ができるかを主体的に考えることにより、そのような状況を改めるべきではないか。
  • 全国を通じて一定水準の教育を確保するとともに、地域の特性を活かすことが必要であり、都道府県の指導性と市町村の自主性のバランスが重要ではないか。

(2)市町村教育委員会の在り方について

  • 子どもや住民に最も身近な市町村教育委員会が責任を持って教育行政を担う仕組みが必要ではないか。また、小規模市町村では、共同処理などによって教育行政を広域で行っていくことが必要ではないか。
  • 政令指定都市については、原則として都道府県と同等の権限を与えるべきではないか。

(3)都道府県教育委員会の在り方について

  • 義務教育の実施における都道府県教育委員会の役割を、評価や条件整備に特化していくべきではないか。また、都道府県は、市町村の求めに応じて職員を派遣するなど支援すべきではないか。

(4)教職員人事権の市町村への移譲について

  • 教職員の人事権を市町村に移譲する方向で検討すべきではないか。一方、懲戒処分も含めた人事関係事務を現在の市町村の事務体制で処理することが困難であることや、一定水準の人材を県内全域で確保するため広域人事を行う必要があることに留意すべきではないか。
  • 中核市については、すでに研修の権限が移譲されており、教職員の任免や配置などの権限についても移譲すべきではないか。

4 学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立

(1)学校の裁量拡大について(学校への権限委譲)

  • 教職員の人事権について、校長の権限を拡大する方向で検討すべきではないか。一方、人事関係事務を学校が処理する際の負担や、現在の職員の資質向上の重要性に留意すべきではないか。
  • 学校の予算については、教育委員会が総枠を決め、使途を校長に委ねるようにすべきではないか。
  • 学校管理規則を見直し、カリキュラム編成などについて学校の裁量を拡大していくべきではないか。
  • 学校の裁量拡大に伴って、教職員の配置の見直しや学校組織の強化など条件整備が必要ではないか。

(2)学校評価について

  • 学校評価は、保護者・地域・学校の三者が情報を共有し、学校運営に共同参画することを目的とすべきではないか。※なお、利用者が学校を選択できる仕組みを作り、消費者主体のサービスを実現すべきとの意見があった。
  • 自己評価の義務化や第三者評価の実施が必要ではないか。

(3)学校に対する教育委員会の支援について

  • 指導主事の配置の拡大や学校訪問の実施の増加、指導主事以外の学校を支援する職員の配置などが必要ではないか。また、校長会や教頭会を通じて学校現場の意見を吸い上げ、施策に反映させるべきではないか。

(4)保護者、地域住民の学校運営への参画について

  • 学校評議員や学校運営協議会の制度を活用し、保護者、地域住民の学校運営への参画を進めるべきではないか。また、地域が学校を育てると同時に学校が地域を育てるという双方向の関係が必要ではないか。

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