資料6 「地方分権時代における教育委員会の在り方について」(日本私立中学高等学校連合会資料)

平成16年8月23日

中央教育審議会教育制度分科会
 地方教育行政部会長
 鳥居 泰彦 殿

日本私立中学高等学校連合会
会長 田村 哲夫

はじめに

 私立中学高等学校は、国・公立学校と共に公教育の一翼を担い、各々の建学の精神に基づき特色ある教育を実践してきた結果、社会全体からその存在と意義を広く認知されてきた。公教育の発展は、教育委員会と知事部局という二元的教育行政により時代の変化、地域性等に迅速且つ的確に対応を図ってきたことは言うまでもなく、特に私立学校は、各学校の自己責任のもとに、その学校の運営方針を決定し、保護者のニーズ、期待に応えており、このことは今日における保護者の私学志向にも表れていると言っても過言ではない。
 そのような観点から教育委員会のあり方について、以下の通りの意見を申し述べたい。

1.教育委員会制度の意義と役割について

 今日の日本の教育制度において、国民が等しく質の高い教育を受けていることは事実であり、公立学校に対して監督・指導・助言している教育委員会の意義と役割は広く理解されていると考える。
 しかしながら、現在の教育委員会は、制度上では首長を頂点とし地方行政から独立した形となっているが、教育委員によって構成される教育委員会自体は形骸化しているともいわれ、教育長が主導する教育行政の執行がその実態の大部分であることは否定し得ない。教育長の選任も地方行政内部の人事政策の一環に組み込まれていることなどから、教育委員会の独立性と在り方については更に今後検討が必要であろう。
 教育委員会はその役割として、責任の所在を明確にした上で、学校運営がよりスムーズに図られるような財政的、人事的支援をする機関である方が望ましいと考えられる。

2.首長と教育委員会の関係について

 生涯学習・文化・スポーツ振興事業については、教育委員会に委ねるよりも、首長側でリーダーシップを発揮して政策を決定し、その実行の際に、例えば学校施設の利用、地域住民の参加・協力の呼びかけに際して、教育委員会と連携すべきであると考える。
 それは、教育委員会が教育においての専門性の高い委員構成であるということもあるが、義務教育学校と、その進学率から準義務教育、即ち国民的教育機関とも言える高等学校においての教育については、地域の子どもたちがほぼ全員そのサービスを受けることになり、一方、生涯学習・文化・スポーツ振興事業は、住民が全員参加するというより、実態としては希望者が参加するということが多く、必ずしも広く一定水準のサービスを供給し続ける必要はなく、首長側の地域振興に取り組む姿勢と意識が反映される方が望ましいであろう。

3.市町村と都道府県との関係及び市町村委員会の在り方について

 両者の関係について、例えば、都道府県教育委員会は地域性等を考慮した学校の設置、予算の配分、市町村教育委員会は教育現場と住民のニーズに応える学校運営がなされるよう指導・助言を行う等、役割分担を明確にした方が望ましいと考える。基本的な教育目標はともかく、細かい教育方針の上意下達という関係にならない方が望ましい。
 また、人口が少ない地域については、市町村を越えて教育委員会を統合するなど、地域の実情に合わせた運営が図られるよう、弾力性のある法的整備をすべきであろう。

4.学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立について

 教育委員会は各公立学校が教育の成果を挙げられるべく、それぞれの特色ある教育目標に向けた教育活動において一定の水準が維持できるよう、支援を講じるべきである。
 公立学校としては、学校長のリーダーシップによる学校独自の教育目標を設定し、運営していくことが望ましく、そのためには学校は自己責任・説明責任が求められるので、その責任を負う仕組みも当然考慮する必要がある。

まとめ

 以上の点から、地方分権社会における教育行政の在り方としては、学校自体が独自の判断と自己責任のもとで学校運営を行い、教育委員会が学校に対して必要な財政的、人事的支援を行い、学校経営環境の整備を行うというあり方が望ましいのではないか。言うなれば、教育委員会は教育行政としてどうあるかということよりも、教育現場の支援と、納税しサービスを受ける住民のニーズに応じた迅速且つ柔軟な運営体制を確立するべきであろう。
 また、私立学校としては知事部局を通じて、教育委員会と緊密な連携をとり、公立学校と交流を図ることには異論はない。しかし、現行の機構のまま教育行政を財政事情・行政改革等、合理化の名の下に極めて機械的・事務的に教育委員会に一元化することは、画一的な指導が行われ、私立学校の自主性・独自性や教育内容の特質が失われる畏れがあり、また、経営に対する干渉・官僚統制の危険性も考えられる。地方分権と共に各種事業の官から民へという流れの中、私立学校の自主性・独自性が発揮できなくなるような事態は、時代の流れに逆行し、むしろ教育における地方分権を後退させることにつながりかねない。

以上

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