資料8 「地方分権時代における教育委員会の在り方」に対する意見(中核市教育長連絡会資料)

中核市教育長連絡会
会長 吉田 允昭

1 教育委員会の意義と役割

 中核市としては、現状の教育委員会制度の存続を希望する。

  1. 教育委員会の意義と役割について
    • 教育行政における中立性・安定性・継続性を確保するため、首長から独立した合議制の執行機関として、教育委員会制度は重要である。
    • 専門的に教育行政事務を管理執行する独立機関として、その権限と責任のもと、この制度に期待されている役割と機能を十分発揮し、対応すべきである。
  2. 教育委員会の検討点(会議の形骸化等)について
    • 会議の形骸化については、研修を充実させたり、会議の回数を増やしたり、課題の解決のために、日々更新される情報を共有化し、教育現場に密着した会議での議論を展開したりすることなどで、現行の教育委員会制度で対応可能と考えている。
    • 迅速な意思決定や責任の所在が曖昧になるという点では、教育長は、「教育委員会の指揮監督の下に教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる。」(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第17条)とされているので、教育長へ教育委員会の権限の一部移譲・委任・専決規程の整備等運用面について個々の自治体ではなく、全国的な制度として改善していくことが望ましい。
    • 議会の同意のうえ教育委員は首長に任命されるので、首長の行政市政に近い教育委員が任命されるという面はあるが、教育行政の中立性の確保という観点からは、住民代表の議会の同意を受けているので、現行の制度でよい。

2 首長と教育委員会との関係

 中核市では、首長と十分な連携をとりながら、生涯学習分野を含めて教育委員会が行うという意見が大半を示しているが、生涯学習分野については首長が行うべきという市もある。各市の状況もあり、意見をしぼるにはもう少し時間が必要である。現行の制度で首長とも相談しながら教育の振興に向けて創意工夫すべきである。

  1. 現行のまま、首長との役割を明確にし、十分な連携をとっていく。
     首長が直接教育行政を所管することには反対である。
    • 教育委員会は首長から独立した執行機関であるが、現代社会においては、「教育」がまちづくりの基本となることも多く,首長が教育に熱意と関心をもって予算や人事等で配慮する一方、教育委員会は教育行政の専門家たる教育長を中心に的確な住民のニーズに応えた教育施策を展開していくなど、現行制度においても双方が二人三脚で教育行政を積極的に推進していくことは十分可能である。
    • 地教行法第29条では、首長が教育委員会から意見聴取すべき事項について規定している。執行機関たる首長と教育委員会は、建設的な意見交換による緊密な連携が必要である。創造的で人間豊かな人材を育成するためには、教育委員会が生涯学習の推進をはじめ、教育、文化、スポーツの振興など幅広い分野にわたる教育行政を一体化に推進していくことが効果的であり、大切である。
  2. 生涯学習分野を首長部局へ
     教育委員会の職務権限を学校教育法や社会教育法が規定する教育活動等に限定し、教育の中立性・継続性・安定性の確保を厳格に求める必要のないような生涯学習分野の事務(例えば芸術・文化財等)は、首長部局で所管・奨励した方が市民のニーズに即した柔軟な取組がしやすい。また、迅速な意思決定ができ、市の独自性が出しやすい。

3 市町村と都道府県の関係・市町村教委の在り方

 市教委の在り方、県と市との連携について下記のとおりである。
 人事権・財源等の移譲を希望する。(中核市は全市希望。その他の市については規模に応じた権限移譲が必要)

  1. 市教委の在り方
     全国的な教育水準の維持向上、機会均等を図る観点から、県からの指導、助言、援助は欠かせないことである。今後ますます多様化、高度化する学習需要に応えるために、責任や権限の見直しを図りつつ、自主的かつ積極的に県や市との連携に努めていく中で市町村教育委員会は教育行政を主体的に企画・実行する力量をつけていくことが重要である。
  2. 県と市との連携
     文部科学省―都道府県教育委員会―市町村教育委員会との関係におけるそれぞれの役割を明確にする必要がある。地方分権や規制緩和の理念を実効あるものとするためには、特に都道府県教育委員会のあり方に依るところが大きい。
     市町村教育委員会が主体的に取り組める職務と都道府県教育委員会への内申や連携が必要な職務を法令上で整理する必要がある。
  3. 人事権等の移譲
     服務監督権は市町村教育委員会にありながら、任命権は県教育委員会にあるため、市教育委員会の位置づけが非常に中途半端になっている。規模に応じた権限移譲が必要であるが、市町村教育委員会は、合併や広域化の推進などにより人的にも予算的にも十分な体力を養いつつ、住民のニーズに的確に応える特色ある教育行政を展開していかなければならないと考える。そこで、中核市においても、任命権の移譲、予算の移譲が必要と考える。

4 学校と教育委員会の関係・学校の自主性・自律性の確立

 教育委員会は、学校の教育活動をハードとソフトの両面からサポートし、的確な指導助言を行ったり、最終的な責任を担うなど、力強くバックアップしていくことが重要である。学校には権限と責任を与え、校長の裁量権を拡大し、自主性・自律性を高めることにより、ニーズに迅速にかつきめ細かく対応してけるように支援していくことが必要である。また、学校管理規則の見直しや予算に関する学校裁量の拡大などの取組を進めるべきである。
 学校は、今後さらに各学校が教育活動に説明責任を果たし、自ら継続的に改善できる体制が必要である。危機管理等における支援体制の強化を図り、学校が教育機関として地域格差のない教育を推進する中で、一定の主体性をもって校長の権限と責任に基づく創意工夫を凝らした学校運営が行われるようにしていかなければならない。

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