資料2 教育委員会の在り方について(指定都市教育委員教育長協議会資料)

平成16年8月9日
指定都市教育委員・教育長協議会

 「教育委員会の在り方に関するアンケート」※の結果を踏まえ、政令指定都市の教育委員会制度に対する認識の傾向について、簡潔にとりまとめた。

※ 指定都市教育委員・教育長協議会が「教育委員会の在り方に関する論点の整理(教育制度分科会)」を踏まえながら、平成16年7月29日に政令指定都市13市を対象に実施したもの。

1 教育行政の在り方について

(1)全国的な教育水準の確保について

 地方分権の流れと全国的な教育水準(義務教育)の確保についての考え方を尋ねたところ、

  • 「地方分権を可能な限り進め、地方の責任において独自性のある教育を推進すべき」とするのが1市
  • 「国の責任において全国的な教育水準を確保するべき」とするのが0市
  • 「国と地方の適切な役割分担のもとで、全国的な教育水準の確保と地方の独自性のある教育の推進を両立するべき」とするのが12市

 であった。
義務教育は、国民としての必要な基礎的資質を培うために、憲法の要請に基づいて行われるもので、その教育水準の確保は国の責務である一方、地方の独自性ある教育の推進は、地方に課せられた重要な役割であると認識している市がほとんどである。
 また、地方の独自性をより発揮できるように、さらなる規制緩和や権限移譲、そして国・県の指導・助言・援助の見直しを求める声があった。

2 教育委員会制度の在り方について

(1)教育行政の首長からの独立について

 中立性・安定性・継続性の確保のため、自治体の長から独立した合議制の執行機関である教育委員会が地方の教育行政を担うという現行の手法について尋ねたところ、

  • 「どちらかというと時代の要請に応えられている」とするのが9市
  • 「どちらかというと時代の要請に応えられていない」とするのが1市
  • 「どちらともいえない・わからない」とするのが3市

 であった。
自治体の長から独立した合議制の執行機関としての教育委員会制度について、「政治的・経済的に不透明な時代であるからこそ、一層大きな意味がある」、「教育委員会制度の意義は普遍的である」など、教育行政の中立性・安定性・継続性を確保する観点から、積極的に評価する市が多かった。
 なお、時代の要請に応えていくためには、制度自体の見直しというよりも、運用面での工夫・改善で対応していくべきとの声があった。

(2)制度改革について

  1. 教育委員会の任意設置(地方が自己の組織について自由に決定できるようにすべきであり、教育委員会の設置も地方の判断に委ねるべき)について尋ねたところ、
    • 「どちらかというと賛成である」とするのが0市
    • 「どちらかというと反対である」とするのが9市
    • 「どちらともいえない・わからない」とするのが4市
    であった。
    教育委員会の任意設置については、全国的な教育水準や教育環境の不均衡化を招きかねないという懸念から、反対する市が多かった。
  2. 地方教育行政の執行機関の在り方として、国の文部科学大臣のように合議制ではない独任制の執行機関として教育長を位置づける考えについて尋ねたところ、
    • 「どちらかというと賛成である」とするのが0市
    • 「どちらかというと反対である」とするのが9市
    • 「どちらともいえない・わからない」とするのが4市
    であった。
    独任制の執行機関として教育長を位置づけることについては、意思決定の迅速さや責任の明確化などのメリットを評価しながらも、合議制やレイマンコントロールによるメリット(中立性・安定性・継続性の確保等)の方を優先すべきであるとの認識がされており、反対する市が多かった。
  3. 従来の教育委員会に替わり、首長が主体性をもって教育行政を所管するとともに、首長の諮問機関として教育行政の中立性等を担保する「教育審議会」を置く考えについて尋ねたところ、
    • 「どちらかというと賛成である」とするのが0市
    • 「どちらかというと反対である」とするのが9市
    • 「どちらともいえない・わからない」とするのが4市
    であった。
    首長が主体性をもって教育行政を所管し、首長の諮問機関として教育行政の中立性等を担保する「教育審議会」を置くことについては、中立性・安定性・継続性を確保する手法として現行の教育委員会制度より劣るとの認識がされており、反対する市が多かった。
    また、教育審議会が形骸化し、首長の意思を追認するだけの組織になってしまうことを懸念する指摘があった。

3 首長と教育委員会との関係について

(1)首長と教育委員会との連携方法について

 平成15年度における教育委員と首長との意見交換のための会合等の実施状況を尋ねたところ、2回が1市、1回が5市あり、7市が一度も実施していなかった。

(2)生涯学習、文化、スポーツ等における首長と教育委員会の役割分担について

 教育委員会が、学校教育、社会教育、文化、スポーツなど幅広い分野にわたる教育行政を一体的に推進する現行の手法について、今後も有効と思うか尋ねたところ、

  • 「どちらかというとそう思う」とするのが1市
  • 「どちらかというとそう思わない」とするのが8市
  • 「どちらともいえない・わからない」とするのが4市

 であった。
教育委員会が幅広い分野にわたり教育行政を一体的に推進する現行の手法に関して、「文化、スポーツなどはまちづくりの観点から首長サイドで推進した方がよい」、「分野によっては、事業の企画・実現、予算確保などの面で少なからずメリットがある」など、必ずしもすべての事務を教育委員会が行う必要はないとする市が比較的多かった。背景には、市長部局への事務委任や補助執行の制度が、多くの市において積極的に活用されている現状がある。
 一方、「教育は学校教育から生涯教育まで密接に関連していることから、教育委員会が一体的に推進していくべき」との意見もあった。

(3)教育委員会の権限と首長の権限について

  1. 教育委員会の権限のうち、市長部局等に委任している、または補助執行させている事務について尋ねたところ、
    • 就学事務に関すること(13市)
    • 区における社会教育に関すること(3市)
    • 社会教育施設の管理運営に関すること(5市)
    • 文化財保護に関すること(2市)
    • スポーツ振興に関すること(8市)
    などが多くなっている。
    教育委員会の権限のうち、市長の権限とした方が適当と考える事務として、「青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること」、「スポーツに関すること」を挙げた市があった。また、委任や補助執行等も活用しながら、各自治体の規模や行政需要に対応することができる柔軟な仕組みにすべきという意見もあった。
  2. 市長の権限のうち、教育委員会に委任されている、または補助執行している事務について尋ねたところ、
    • 私立学校に関すること(10市)
    • 教育財産の取得処分に関すること(9市)
    • 契約の締結に関すること(10市)
    • 予算の執行に関すること(9市)
    • 青少年対策に関すること(3市)
    などが多くなっている。
    市長の権限のうち、教育委員会の権限とした方が適当と考える事務として、「私立学校・幼稚園に関すること」を挙げた市があった。

4 道府県教育委員会と市町村教育委員会との関係について

(1)道府県教育委員会の在り方について

 義務教育に係る分野において、道府県教育委員会の役割は、条件整備等の機能に特化すべきとの意見について尋ねたところ、

  • 「どちらかというと賛成である」とするのが8市
  • 「どちらかというと反対である」とするのが0市
  • 「どちらともいえない・わからない」とするのが5市

 であった。
道府県教育委員会の役割については、必要最小限の条件整備等に特化すべきとする市が比較的多く、「指定都市については道府県と同等の権限が必要である」など一層の権限移譲を求める声も複数あった。また、「政令指定都市と道府県」の関係と「一般市町村と道府県」の関係を同列に論ずることは不可能であり、市町村の規模等の違いによって求められる道府県の役割は異なるとの指摘があった。

まとめ

 今回のアンケートの結果からは、政令指定都市としては、現行の教育委員会制度に関して、積極的に評価し、維持していくべきとする意見が大勢を占めていることがわかる。
 一方で、現行制度の大枠を維持しつつも、国・道府県からの権限移譲を一層推進するべき、あるいは、教育委員会の運用面において工夫・改善を行い、教育委員会の活性化を図るべきとの意見も多く、地方の教育行政を担うよりよい教育委員会制度の在り方について模索する必要性を強く認識していることがわかる。

(以上)

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