5.学校と教育委員会との関係

(1)学校の裁量拡大について(学校への権限移譲)

  • 授業以外のことを行うスタッフが必要。公務に関し広範にこなす教頭に相当するような人材の配置が必要。
  • 教師が授業、教材研究などに専念できるためには授業以外の校務を受け持つ人材として、管理職や事務職員では不十分。教職員の配置の見直しや学校組織の強化など条件整備が必要。
  • ガバナビリティの欠如を解決するには、学校長に予算などの権限を与え、また責任を負わせるべき。コーポレートガバナンスに近いものを学校に求め、その学校を支援する市町村(すくなくとも中核市以上)の教育委員会に、教員の任命、免許状等の基本的な教育行政の権限を与えるべき。
  • 民間でも本社が支社にあまり関わらないことで経営が改善されたように、教育委員会も学校への関与を減らし、現場の裁量を拡大するほうがよい。
  • リーダーシップをとれる人は多くないということを踏まえるべき。権限を下におろすほど、関わる者の人数が増え、人材を見つけることが難しくなる。
  • 自主性・自律性の向上は必要だが、ナショナルミニマムを保障するような仕組みが埋め込まれることが必要。
  • 何が最適かを個人の選択に委ねた場合、地域差や学校差が生まれ、学校の廃校にさえ至りうる。国として教育のスタンダードを全て取り払うことがよいのかどうかの検討が必要。

人事権

  • 基本的には校長に権限を委譲し、学校運営協議会が評価し、その評価に従って教育委員会が校長の人事を行うべき。
  • 教員の任免、勤務評価、給与などの人事権は校長が持つべき。ただし教員配置が固定化しかねないので、一定期間勤務したら異動を申請できるといった措置が必要。基本的に校長が人事権を持ち、教育委員会はそれを尊重し、問題になった場合に調整するという役目を負うべき。
  • 私立学校同様に、教職員の任免権を学校におろし、教員にも学校を選べる選択肢を与えることが望ましい。
  • 校長が一番求めているのは、校長裁量で活用できる人事枠の創設である。
  • 学校で教員採用を行うことについては、現在、アメリカにおいて、先生が年度途中により優れた学校へと移動してしまうスクール・ホッピングという大きな問題が起きている。学校単位で教員を採用することは、このような問題を起こし、課題を抱えた学校ほど困難な状況に追い込まれる恐れがある。
  • 県費負担教職員は県が配置しているが、講師や臨時の補助員、介助員の人選は学校で行っており、その事務が大変な負担となっている。
  • 人事権の委譲を考える際、市町村で配置している用務員や事務室の職員なども含めて考えるべき。
  • 良い校長は、どんな教員が来てもそれを改める力量がある。学校が良い、悪いではなく、管理責任ある校長がどう教員を指導し援助するかの問題であり、採用・任命よりも校長自ら教員の資質向上に励むべき。
  • 企業では、人事部が職員を採用し、職員の配置等は各部の部長が行う。この場合、部長が有能者を抱え込む事態にもなるが、その場合は人事部が調整することになる。

予算

  • 教育委員会が学校予算の総額を決め、その予算をどのように使うかは校長が決めるべき。
  • 学校運営上、100万円もあれば機動的な対応ができるのではないか。

組織体制

  • 校長の能力が不足しているという意見があるが、校長の責任を強くすれば、それに見合った人が選ばれる仕組みができてくる。
  • 校長に裁量を委ね学校に任せようとしても、学校だけには任せられない場合がある。公の教育として全体を統括する教育委員会と学校の相互の緊張関係が必要。
  • 権限の増加に伴い、教頭の複数配置や主幹制度、主任の活用など学校組織の強化が必要。
  • 教員が児童生徒の指導と授業改善に専念できる環境作りをすべき。例えば、スクールカウンセラーなど教育相談機能を充実させ、教員が授業に専念できる体制作りをすべき。
  • 校長の権限を拡大するには、そのための管理能力が必要であり、管理能力向上のための研修、外部からの校長登用などの対応が求められる。制度改革にあわせ、校長の意識改革も必要。

(2)学校評価について

  • 地域の教育を考える上で、学校の自己評価に加え、地域のことがわかる第三者による評価とその公表が必要。
  • 評価から説明責任、さらにその先の具体的な取組みへと好影響が循環するよう、評価システムの確立が重要。その際、画一的な評価システムを打ち出すのではなく評価基準はそれぞれの学校ごとにPTAなどと一緒に考えるべき。
  • 教育で一番大事なのは保護者・地域・学校の三者関係。学校評価は、三者が情報を共有し、学校運営に共同参画していくためのものであるべき。評価が学校の序列化につながってはいけない。
  • 学校評価と学校選択制が結びついた場合、学校の序列化につながる危険がある。
  • 評価によって改善を目指すものは何か(1.個々の学校の改善か、2.学校システム全体か等)、改善を生み出すインセンティブメカニズムと評価をどう結びつけるか(自己改善努力に対する資源配分など)、共通の尺度で評価するのか、などについて明確にすべき。
  • 評価自体は大変コストがかかるが、それを上回る改善をどのような形で生み出すかが重要である。
  • 学校評価には、学内の意識変革、議論の整理、教員の教育手法改善という効果がある。また評価結果を第三者に見てもらうとことで学校のPRになるという副次効果もある。
  • 行政評価における目的は、1.内部の自己啓発、2.内部のパフォーマンスの改善、3.外部から見た格付け、である。
  • 学校評価は学校のランク付けになるとの意見があるが、ランク付けが必ずしも悪いというわけではない。
  • 評価には、学校の教育内容そのものの評価と同時に、校長の学校運営改善取組みへの評価、すなわち校長の評価も必要。
  • 教育には、数値で表せるものと表せないものがあり、結果についてもその時点で求められるものと求められないもの、求めてはいけないものがある。教育改革の流れの中、目先の成果を性急に求めることがないよう、教育的な視点で方向性を考えるべき。
  • 利用者が学校を選択する仕組みをつくることにより、消費者主体のサービスが実現できる。
  • 学区制の撤廃を実際に行ったところ、1.学校の格差の拡大、2.過密化する学校と過疎化する学校の出現、3.問題のある生徒が特定の学校を選択し、誰も手の付けられない学校になるなどの問題が起こった。
  • 学校の良し悪しの半分は、そこに集まる子どもたち、保護者、地域の人々で決まるため、学校選択制の採用は学校を序列化してしまう。義務教育段階で進めることは適切でない。

(3)学校に対する教育委員会の支援について

  • 学校から教育委員会に求めるのは、1.指導主事の配置の拡大、学校訪問機会の増加、2.指導主事以外の学校をサポートするメンバーの配置、3.校長裁量予算枠の創設である。
  • 校長会、教頭会等との意見交換を行う教育委員会は、県レベルになると少ないが、もっと意見交換を行うなど、現場の状況や声をしっかりと把握すべき。
  • 学校の調査や報告業務が増加傾向にあるが、学校が授業に専念できるよう、調査等は精選すべき。

(4)地域住民の学校運営への参画について

  • 保護者は学校に不平を言うだけではなく、学校とよく話し合って同じ方向を向いて連携・協調すべき。
  • 地域ぐるみで学校を育て、同時に学校は子どもを育むような地域を育てるというような双方向の関係が必要。

※ その他

  • 教育委員会の機能強化の方策として、1.審議会・協議会を設置するなどによる企画・立案能力の向上、2.適切な学校視察や研修による監督・指導力の向上、3.調査委員会や公聴会の設置などによるオンブズマン的機能の向上、などが考えられる。
  • 教育行政において説明責任を果たすのが誰なのか不明確なことが、今の教育委員会制度の課題である。
  • 教育委員と社会教育委員の関係、教育委員会、生涯学習審議会・生涯学習推進会議、社会教育委員の会議の三者の関係の改善が必要。
  • 保護者にとっての最大の関心事は、教員の資質向上である。
  • 開かれた学校づくり、説明責任、参画によって地域から常に見られるという状況の中で教師が説明責任を果たし、その資質確保を図るべき。
  • 研修強化ではなく、授業改善に専念できる体制作りに取り組まなければ、教員の資質改善に寄与しない。
  • 校長や教頭、教員の資質向上のため、社会経験、教育以外の現場の経験を積むようにすべき。
  • かつて244日ほどあった年間授業時数が200日を切るような現状で、学校は、本来の教科への取組みはもちろん、O‐157や鳥インフルエンザ、不審者の侵入、校外学習への対応など、次々と出てくる新しい課題にも取組まなければならなくなっている。子どもを育てるのは学校であるという発想が強いが、学校だけでなく、家庭や地域の役割も明確化すべき。

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