4.都道府県と市町村との関係

(1)国、都道府県、市町村の関係について

  • 小中学校の現場が教育委員会を向いている。教育委員会は首長を見ないで都道府県に直結している。都道府県は文部科学省の方を見ている。このような点が批判や物足りなさを生んでいるのではないか。
  • 国、都道府県教育委員会、教育事務所、市町村教育委員会、学校という縦系列の長さの中で、実際に権限がないにもかかわらず国の意向が強く受け止められ、硬直化する仕組みとなっている。国の通知を都道府県や市町村が単に学校現場に流すだけではなく、都道府県や市町村それぞれが何をできるのかを考えるべき。
  • 教育について上意下達との批判があるが、国は各界の意見を反映し政策の内容を吟味できる一方、町村レベルではそれができないことが多い。また、権限と共に財源も一緒におろされるのであれば、逆に格差が広がる。地方の自由にすれば良い教育が実現できるのかどうか、よく検討すべき。
  • 国、都道府県、市町村の融合的自治を通してナショナルスタンダードを堅持すること、同時に地域の特性を活かすことが大事。現状では、ナショナルスタンダードを教育業界が決め、それに対し国民が不満を持っている。
  • 地教行法等の見直しにより、都道府県と市町村の関係がイコールパートナーの関係へと移行しているが、依然、分権が不十分と考える市町村と、逆に不安を抱く市町村がある。都道府県の指導性と市町村の自主性のバランスをどう図るかが重要。

(2)市町村教育委員会の在り方について

  • 政令指定都市については、原則、都道府県と同等の権限を与えるべき。
  • 子どもや住民に最も身近な市町村教育委員会や学校が、地域のニーズや学校の実情をきちんと把握し、責任ある教育行政を担う仕組みが大事。
  • 小規模市町村の広域化方策について、その困難さも含めさらに検討すべき。
  • 小規模の町村では、教育委員会を設けないという選択肢があってもよい。
  • 市町村レベルでは対応しきれない複雑な行政事務、人材確保という観点から、教育行政の単位は、政令市、中核市、特例市くらいまでとするのがよい。小規模市町村など特例市よりも小さな自治体では、共同処理方式の可能性を検討すべき。
  • 市町村は、地域の問題に自分たちで責任を持って対応するといった力量をつけるべき。そのために、制度の選択制・多様性の枠組を用意し、どれがふさわしいかを考える機会を与えるべき。
  • 政令市は、都道府県から独立して教育行政を進めることが可能。中核市は、人事権なども含めて都道府県教育委員会と共同で、その他の市町村は都道府県教育委員会との役割分担を明確にして、教育行政を推進すべき。

(3)都道府県教育委員会の在り方について

  • 県の教育委員会は、市町村や学校における情報開示を積極的に促して、評価機関としての役割に特化し、指導力不足教員の認定や分限免職の指針等、教育のインフラづくりをすべき。
  • 国や都道府県は、市町村の求めに応じ、専門家を教育委員や企画担当職員として派遣すべき。
  • 政令市を抱えている県では、政令市と県との関係が大きな課題である。

(4)教職員人事権の市町村への移譲について

  • 市町村教育委員会が主体的に校長の人事、教員の任免を行い、都道府県教育委員会が市町村教育委員会をチェックする仕組みをとるべき。
  • 人事権の市町村への移譲は、懲戒処分や採用も含めて考えると無理がある。ある程度広域で人事を行う方が良い。
  • 人事権を設置者に移した方が、組織に対するロイヤリティーも生まれ、地域に根付く。離島なども行政職員は独自に採用しているし、教員もその方が資質向上する。
  • 地方で採用すると地域に愛着をもったそれなりの教員を採用することも可能ではないか。
  • 都道府県の人事権を市町村に移譲したとしても、市町村には人事事務を行うスタッフとノウハウがない。それらを備えた大きな市があったとしても、優秀な教員が都市部に集中し、都市部と周辺部の格差が広がり、県全体の教育力が下がる恐れがある。
  • 離島・へき地を抱えている都道府県では広域人事が必要であり、制度は廃止すべきではないが、広域人事を基本としつつ市町村のイニシアチブが働くように工夫すべき。
  • 人事異動は教員の希望が前提となっている。これを自由にさせると、へき地や出身者が少ないところには教員が行かなくなってしまう。県全体の教育力アップという観点から、バランスよく広域人事することは県教育委員会しかできないのが実態。
  • へき地の教員確保の問題については、画一的な教員給与体系を改め、へき地では手厚く給与を支払うなど、弾力的な給与体系を市町村レベルで選択できるようにすれば、解決できる。
  • 辺地においては、給与を手厚くといっても財源が無く、実際に人材確保は難しい。
  • 中核市は研修の権限は移譲されているが、人事権は移譲されていない。異動の見通しが立たないため、市に研修権限を与えられても、実際の研修効果を得られるか課題である。
  • 教員の不祥事の説明責任は、任命権者である県が負うのか、市町村が負うのか曖昧であり問題。どちらが権限をもつのかという点ではなく、どちらが説明責任を果たすのかという点から検討すべき。
  • 市町村の歴史や風土、慣習といったものを研修に盛り込むなど、教員研修は市町村の教育委員会がしっかりと行うべき。
  • 義務教育費国庫負担制度、県費負担教職員制度、人確法のメリットは極めて大きい。これらを前提に、市町村や学校の裁量を拡大する方途を模索すべきである。
  • 市長たちは、指導力不足教員に対して教育委員会がほとんど対応していない状況や、民間経験者など有能な人材を採用できない状況などを問題視し、人事権を市におろすべきと主張している。
  • 教職員研修の内容と方法に加えて、都道府県で行う研修と市町村で行う研修との役割分担が不明確。
  • 教員の人事について、県は市町村の納得が得られるよう改善が必要。小規模な市町村で研修をするのは困難であり、県が事前に資質を担保してから送りこむべき。

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