3.首長と教育委員会との関係

(1)首長と教育委員会との連携方法について

  • 予算の編成・執行、事務局人事について、教育委員会の自主性に配慮すべき。
  • 予算は歳入・歳出がセットであり、教育委員会に予算権限を与えることは現実には難しい。人事についても自治体として一体的に行う側面がある。
  • 首長が学校を訪問したり、教育委員と定期的に協議したり、小中学校の校長の研修会に参加して直接議論したりすることで、学校教育に首長の意見を反映できる。
  • 教育委員会と首長の連携が良いところほど、教育行政がうまくいっている。
  • 教育委員会は、地域の慣行や制度の枠内で政策を執行しようとする傾向があるが、首長は、教育委員会よりも住民の要求をストレートに受けるので、制度の枠や慣行を度外視した発想で地域の教育問題を考え、教育委員会に問題提起する。そういう緊張関係が良い結果につながっている。
  • 首長と教育委員会の相互理解の上に教育が成り立つのであり、年に数回、首長と教育委員会の話し合いの場を設け、そこで首長の考えを教育委員会に理解してもらうことが重要。しかし実際には、首長の教育に対する理解に各自治体での温度差は大きい。
  • 学校教育(公教育)の振興については、中立性、安定性、継続性が大事であり、教育委員会が担うべきだが、より根本的な検討が必要な場合は、首長と懇談会、臨時審議会などを通して連携して検討すべき。
  • 首長にとってもその地域の特性を示す上で教育問題は大事であり、首長が責任を持って信頼できる人を教育長に任命し、教育にコミットすればよい。
  • 議会で議決する自治体全体の基本構想・長期計画と、地教行法上の教育委員会の権限をうまく調和させるべき。
  • 首長のリーダーシップを法律上明記すべき。
  • 教育委員会は財政自主権がないため、首長に見識がない場合、教育に関心も予算も振り向けられない。
  • 教育委員会に自主課税権・予算編成権・予算提案権を与えて、説明責任を全うさせる制度設計も考えられる。

(2)生涯学習、文化、スポーツ等における首長と教育委員会の役割分担について

  • 教育委員会が担うべき行政の核心は何か、焦点をあてて議論すべき。
  • 教育委員会の最も重要な役割は義務教育の徹底である。
  • 生涯学習、文化、スポーツについては、首長か教育委員会かという縦割りの議論ではなく、自治体全体としてどう取り組むのかを考え、首長のリーダーシップの下で両者が連携していくべき。
  • 私立の学校も知事部局から教育委員会の所管とすべき、又はより教育委員会との関係を密接にすることを検討すべき。公立と私立とが各々特色を出して切磋琢磨すべき。
  • 社会教育などについて、首長の意見が通らないから首長に事務委任するというのではなく、図書館や文化施設の管理運営を財団に委託するなど工夫すべき。
  • 生涯学習や青少年教育についての首長の意欲と認識に濃淡がある。生涯学習にしても、あれは教育委員会の仕事だということで済ませてしまう。急速な高齢化の中で、生涯学習、生涯スポーツの振興は公共事業よりも大事な問題であり、首長は真剣に取り組むべき。
  • 青少年の問題行動への対策には乳幼児期の対策が必要となる。青少年教育と家庭教育についても認識を持ち、首長と教育委員会が密接に連携していくことが必要。
  • 生涯学習振興行政、文化行政、スポーツ行政は、学校教育行政とあわせ教育委員会が所管すべき。
  • 社会教育・生涯教育、文化・スポーツ等の振興について、教育委員会が担う場合には学校教育との連携、事業の安定・継続という点でメリットがあり、他方、首長部局が担う場合は、新規事業の企画・実現、予算確保といった点でメリットがある。
  • 新規事業の企画や実現は、首長部局と教育委員会の双方でやるべきだが、制度的な普及・拡大が進む場合は、運営・監督・支援は、専門性と継続性を確保しうる教育委員会が担当すべき。
  • 学校教育・社会教育の共通点は、公平性、公共性、中立性にある。相違点は、学校教育が継続性、安定性が求められるのに対し、社会教育は変動する社会の課題、個人の問題の解決を目指す学習を支援するため、柔軟性・迅速性が必要という点にある。
  • 生涯学習支援システムの整備・充実など生涯学習振興行政固有の領域は、教育委員会が所掌すべき。
  • スポーツ、文化・生涯学習は、コミュニティーの力を全面的に活用して規制緩和し、首長のリーダーシップのもとで財団法人やNPO等が担うよう改革すべきで、この場合、教育委員会は企画管理、監督等を行うべき。
  • 生涯学習に係る分野には専門性が必要なものが多く、また、教育委員会に専門スタッフが揃っている点からも、生涯学習の教育にわたる分野は包括的・システム的に一貫性をもって教育委員会が担うべき。
  • 0~5歳まで、公が教育面で関わることがほとんどない現状。幼児教育は教育委員会が関与すべき。

(3)教育行政への議会の関わりについて

  • 首長や議会が、見識を持って教育について真剣に考え、人的にも財政的にも投資をするようにすべき。
  • 教育委員会のみを取り上げるのではなく、首長や議会が教育行政にどう関わっていくか教育委員会、首長、議会それぞれの役割分担や連携の在り方について議論が必要。
  • 教育を論ずる際には、それを取り巻く自治制度についても検討すべき。

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