資料2 第6回地方教育行政部会 意見発表者説明資料(大澤正子委員)

大澤 正子委員 説明資料
平成16年7月1日

2004年7月1日

学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立について

大澤 正子

1.学校の位置

1 文部科学省―都道府県教育委員会―教育事務所―区市町村教育委員会―学校

 これまで全国どこでも同じように一定水準の教育が行われるという安定と安心感縦の系列で伝達されてくる通知、報告をあげていく調査等の問題
 重層の問題

2 長年にわたる都道府県委員会の基準設定権と指導・助言・援助

 地教行法49条は廃止されたが、拠り所を県に求める傾向
 区市町村委員会の独自性の発揮が特色づくりとともに教育格差にも学校の設置者は区市町村だが、教職員の任命権等は都道府県教育員会という事情

2.教育委員会と学校

1 学校管理運営規則

 地教行法に基づき、教育委員会は所管する学校の管理運営の基本的事項について規則を定めている。
 第33条 「教育委員会は、法令又は条例に違反しない限度において、その所管に属する学校その他の教育機関の施設、設備、組織編制、教育課程、教材の取扱その他学校その他の教育機関の管理運営の基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする。」

2 「渋谷区立学校の管理運営に関する規則」で定められている事項

 学期、休業日、臨時休業
 校長・教頭・主幹・主任の職務、課長補佐等や必要な職員の配置
 事案の決定、職員会議、学校評議員
 教育課程の編成と届出、連携型中学校、宿泊を伴う学校行事、教材の使用、教材の選定、承認又は届出を要する教材
 指導要録及び抄本、出席簿、懲戒、原学年留め置き、出席停止
 卒業証書、表簿

3.校長の職務

1 管理運営規則に定められている校長の職務

  • 学校教育の管理、所属職員の管理、学校施設の管理及び学校事務の管理に関すること
  • 所属職員の職務上及び身分上の監督に関すること
  • その他職務上委任又は命令された事項

校長は、所属職員に校務を分掌させることができる。

2 管理・監督の実際

1.学校教育の管理
  • 教育課程の管理(教育課程の編成・実施、評価規準の作成、指導方法や教材・教具等)
  • 最近は児童生徒の安全確保に関することが急増(健康、衛生、けがの防止と処置、施設の瑕疵点検と修理・保全、校外学習時の安全、薬物等の管理、防火、地震等への対応、不審者侵入防止、児童生徒間の暴力等の問題)
2.所属職員の管理・監督

 管下の職員の監督(都費職員と区費職員、臨時職員が混在)

  • A 校の場合(18学級児童数620名、機械警備、給食民間委託)
     教頭、主幹、教諭、養護教諭、栄養士、事務職員、用務主事、初任研講師(約30名)
  • B 校の場合(17学級児童数510名、特殊学級設置)
     教頭、主幹、教諭、養護教諭、栄養士、事務職員、用務主事、学校警備員、学童擁護員、給食調理員、初任研講師、少人数指導講師、スクールカウンセラー、介助員(約50名)
     教職員の確保県費負担教職員は県が配置。(校長の人事構想に沿う人材配置を望む声)
     産育休代替や講師は教育委員会の作成する名簿をもとに学校で交渉。介助員や臨時の補助員等は学校が人選。(年度当初の負担大。教科担任制の中学校は更に深刻)
3.学校施設の管理

 安全点検と補修、台風等災害時の対応、社会教育等への施設開放、災害時の避難場所経営等

4.学校事務の管理

 予算編成、適正な執行、備品等購入物品の管理、文書管理、私費会計等

4.学校の自主性・自律性の確立に向けて

1 中教審答申「今後の地方教育行政の在り方について」(平成10年9月)

  1. 教育委員会と学校の関係の見直しと学校裁量権限の拡大
  2. 校長・教頭への適材の確保と教職員の資質向上
  3. 学校運営組織の見直し
  4. 学校の事務・業務の効率化
  5. 地域住民の学校運営への参画

 教育委員会の関与の見直しは進行中
 許可・承認から届出へ、人事に関する校長の意見の反映、学校裁量予算の設置、長期休業日の設定の弾力化等

2 校長権限の拡大と条件整備

 校長の権限拡大は責任も増すということ
 学校裁量の拡大は学校のすることが増えるということ
 学校の自主性・自律性の確立は透明性の確保や説明責任を伴うもの。外部評価の導入、学校公開や説明会の開催、関係機関や専門家等の教育資源の活用など、校長が負うことはますます増大する。そのための条件整備が必要である。

1.学校のスリム化
  • 学校・家庭・地域社会の役割を明確にし、地域で子どもを育てる環境づくりを目指した学校週五日制であったが・・・
  • 年間授業日数はかつての244日程度から200日を切る時代に。しかし学校への期待や要望はますます肥大化傾向(学校で扱えば全児童に指導できるとの考え、増える課題対応)
  • 届出や調査・報告等の簡素化や縮減などの見直し(多い調査もの、短期間での回答)
  • 子ども=学校の発想が強いが、家庭がすべきことの明確化と啓発、子どもが育つ社会環境(マスコミも含めて)の浄化
2.教員が児童生徒の指導と授業改善に専念できる環境づくり
  • 教材研究や教材準備、学年やTT担当教諭、外部指導者等との打合せ時間の確保
  • 基本的生活習慣や規範意識が不十分な児童、気持ちが不安定な児童、複雑な背景をもつ児童への対応や保護者等の相談の増加(教育相談機能の充実、スクールカウンセラーの効果)
  • 授業以外の事項についての人的支援(児童の安全確保のためには安全員等の配置、マニュアルによる管理の限界)
3.学校組織の強化
  • 教頭の複数配置(一向に減らない教頭の職務と健康面の心配、管理職の増配が必要)
  • 学校運営組織の機能強化(主幹制度や主任の活用、学級担任をしない教員の配置)
  • 校長の経営方針を実現できる、優れた資質・能力をもつ教職員の配置(校長の人事権の拡大、教員養成や初任者研修の見直し、人確法の趣旨の実現、意欲と資質のある学校職員の配置)
  • 校長裁量で活用できる人事枠の創設(予想される初任者の増加、多様化する児童、児童数と学級編制基準による学年による教育条件の差、指導力に不安のある教員の問題への対応)
4.教育委員会の支援機能
  • 指導主事が学校サポートに時間を費やすことのできる状況整備(配置の拡大や職務の縮減、力量のある人材の登用)
  • 学校を支援する専門員等の配置(臨時講師の仲介、教材や外部指導者の紹介、関係機関との調整、新規採用教員への指導、個別対応を要する児童への指導等)
  • 緊急・不測の予算需要に対応できる弾力性のある学校予算(予算総枠の中での調整、校長裁量で執行できる予算の確保等)
5.学校からのボトムアップ
  • 校長会・教頭会等との意見交換(生の声、現場からの具体的提案)
  • 魅力ある管理職に(長時間勤務、夜間・休日の行事、多様な課題への対応、処遇面でも魅力の薄い存在、管職職を志望する者の減少、降任希望者の増加)
  • 校長・教頭の資質・能力の向上(管理職候補者の養成、適材を確保する選考、教員以外からの人材登用)

以上

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生涯学習政策局政策課