資料8 教育委員会制度に関する最近の提言等

1.経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(平成16年6月4日閣議決定)

第1部 「重点強化期間」の主な改革

1.「官から民へ」、「国から地方へ」の徹底

(3)地域の真の自立

(地方の裁量権の拡大と地方行革の推進)

  • 地方分権改革推進会議等の成果を踏まえ、「地域主権」の推進を図るため、国の過度の関与が地方の主体的な決定や創意工夫ある行財政改革への取組の支障とならないよう、必置規制や義務付け等、国による地方公共団体への規制の廃止や大幅な緩和を図るとともに、条例で定めることができる範囲の大幅な拡大等を通じて、地方の裁量権を拡大する。

4.「人間力」の抜本的強化

(3)教育現場の活性化等

(教育現場の活性化)

  • 地域の創意工夫を活かし、学校の自由度を高めるため、平成16年度内を目途に、教育委員会の改革と合わせ、教育内容等に関する校長の権限強化と学校の外部評価の拡充に向けた方針を示す。

2.地方分権改革推進会議(平成16年5月12日)

「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見」-地方分権改革の一層の推進による自主・自立の地域社会をめざして-

1.事務・事業の見直しや様々な方策による地方の自由度の拡大

1.自由度の拡大のための事務・事業の見直し

(2)地方の自主的な行政運営の確立

 国は、地方公共団体の自主的な行政運営の確立を図るため、行政組織や職員の配置については基本的に地方公共団体の自主的な判断に委ねていくことが必要である。このため、国の地方公共団体に対する必置規制を見直し、その廃止又は大幅な緩和を図ることが必要である。

イ 教育委員会の必置規制の弾力化
 教育委員会制度については、制度創設後半世紀以上が経過し会議の形骸化等の指摘がなされていること等の状況の下、中央教育審議会で地方分権時代における教育委員会の在り方についての検討が開始され、制度の意義と役割、首長と教育委員会との関係、市町村教育委員会と都道府県教育委員会の関係、学校と教育委員会との関係等について具体的検討が行われることとなっている。この中央教育審議会での検討も踏まえつつ、教育委員会の必置規制及び権限について、以下のような見直しについての具体的検討を行うことが必要である。

(ア)必置規制の弾力化
 教育委員会制度については、地方公共団体の行政組織の弾力化を図る上で必置規制が支障になっている、あるいは、教員出身者が事務局組織の主な役職についており、また、合議制であるため機動性・弾力性に欠ける等の指摘がある。さらに、公立教育と私学教育の一体的推進、初等中等教育と高等教育の一体的推進、生涯学習・社会教育行政の一元化、幼保一元化を進めるべきとの意見もある。実際上も、制度創設時と比べて教育委員会の所管に属さない私立学校の割合が高まる等、経済・社会情勢は変化している。

地方公共団体の行政組織の弾力化、教育行政の総合化、教育の活性化、教育制度の迅速な改革、小規模教育委員会の活性化等の観点から、教育の政治的中立性を確保しつつ、各地域の実情に応じて地方公共団体の判断で教育委員会制度を採らないという選択肢を認めるべきである。
特に、生涯学習・社会教育行政の一元化、幼保担当部局の一元化の観点から、地方公共団体がこれらの担当部局を自由に選択・調整できるようにすることが必要である。

(イ)権限の見直し
 教育委員会制度は、本来教育の地方分権を促進する観点から戦後設けられた制度であるが、教育委員会制度創設の趣旨を徹底し、教育内容の地方分権を推進していく意味から、学習指導要領を超える多様なカリキュラム編成(英語による授業、英語教育早期開始、カリキュラムを先取りした数学・算数、中国語等の第二外国語授業、小中一貫教育実施等)、児童の習熟度に応じた就学年齢の弾力化、週間授業日数の弾力化等について、教育委員会(地方公共団体)等の権限で行えるようにする等、公立学校が各地域の実情・ニーズに応じて特色ある教育を実施できるようにすることを検討する必要がある。少なくとも、これらのうち現在構造改革特区において認められているものについては、全国化すべきである。

 都道府県教育委員会と市町村教育委員会との関係について、学級編制基準及び教職員定数設定、教科用図書採択地区設定の権限については、現在都道府県教育委員会が有しているが、学級編制基準及び教職員定数設定については、都道府県教育委員会との協議の上、各学校の設置・管理主体(小中学校については市町村教育委員会)が行えることとする等、きめ細かな教育を実施できるよう検討することが必要である。また、教科用図書については、現在、採択地区の小規模化に向けた取組みが進められているが、私立学校、国立学校、構造改革特区研究開発学校では学校ごとの採択等が行われており、将来的には、一般の公立学校についても各学校ごとの特色が発揮できるよう学校単位での教科書選択について検討することが必要である。

 教職員については都道府県負担教職員のみが認められているが(「県費負担教職員」、構造改革特区を除く。)、各地域の多様な教育ニーズに対応できるよう、市町村が県費負担教職員の費用を一部負担できるよう検討するほか、市町村の全額費用負担による市町村教育委員会が任命権を有する教職員の配置(「市町村費負担教職員任用事業」、構造改革特区において可。)を早急に全国化することが必要である。また、県費負担教職員の任命権については都道府県教育委員会と指定都市教育委員会のみが有することとされているが、その他の市町村についても県費負担教職員の任命権について、都道府県教育委員会との協議の上、当該市町村教育委員会へ移管できることとする等、市町村教育委員会が機動的・弾力的に対応できるよう検討することが必要である。
 特に、学級編制基準及び教職員定数設定の権限については、現在政令指定都市教育委員会への移管が具体的に検討されているが、更に中核市等についても県費負担教職員任命権と併せてこれら権限の移管を進めることが必要である。

エ 地方の自主的な判断による見直し
 国において必置規制の弾力化等が実施された場合には、地方公共団体においても、それまで置かれていた組織や配置されていた職員が、それぞれの地域の実情に照らして真に必要なものであるのかどうかについて、自主的な判断により不断に点検・見直しを徹底することが必要である。

3.中央教育審議会(※)(平成16年5月25日)

(※初等中等教育分科会・教育行財政部会・教育条件整備に関する作業部会)

「義務教育費に係る経費負担の在り方について(中間報告)」

第7章 市町村の権限と責任の拡大

 義務教育費に係る経費負担の在り方の問題は、国と地方の財政負担の在り方に関する議論の中では、主に国と都道府県の間の問題としてとり上げられているが、教育論の立場から見た場合には、むしろ都道府県と市町村の間の問題として検討すべき論点を多く含んでいる。それは、義務教育に関する国・都道府県・市町村の三重構造を見直し、小・中学校の管理・運営に関し、設置者であり保護者や住民に最も身近な自治体である市町村の権限と責任を拡大することについて検討することにほかならない。

1.県費負担教職員制度の見直し

 義務教育段階の学校は、憲法の要請に基づく教育の機会均等の実現を図るため、どのような地域に居住している子どもたちに対しても、極力通学可能な範囲に学校を設置していくことが求められている。このため、過疎地域を多く抱える地域などでは、人口が少なくても、地区ごとに学校を設置し、その運営のために多額の費用が必要になっているという現実がある。
 市町村立小・中学校の教職員の給与費については、現在は、都道府県が負担しているが、仮にこれを昭和15(1940)年以前の状態に戻して市町村に負担させることになれば、各市町村ごとの負担は相当多額なものになり、小規模校を多く抱える市町村の財政を極度に悪化させ、市町村間における給与水準の格差、ひいては教育水準の格差を生じることが懸念される。
 また、優秀な教職員を安定的に確保していくためには、年によって採用の有無が生じるのではなく、広域の範囲を対象に、毎年、一定数の人材を安定的に求めることが望ましい。採用後も、都道府県が広域的な人事を行うことにより、各市町村に教職員が適正に配置され、市町村間の格差をなくし教育の機会均等を図ることができる。
 このような理由により、市町村立小・中学校の教職員については、都道府県が給与を負担し、都道府県教育委員会がその任命権を持つという県費負担教職員制度が設けられてきた。
 しかし、この制度については、学校の設置者であり、保護者や住民の意向を直接反映できる立場にある市町村の権限と責任を拡大する方向で見直しを行っていく必要があると考える。
 この制度の見直しに当たっては、現在の公立小・中学校の現場とそれに対応している市町村の状況を十分視野に入れる必要がある。公立小・中学校には、県費負担の職員と市町村費負担の職員が置かれているが、それら両者の違いが身分格差として扱われがちであるという問題があり、また、それぞれの任命権者である都道府県教育委員会と市町村教育委員会が、場合によっては二重行政のような関係になりかねないという問題も指摘されている。また、学校現場では県費負担教職員だけでは対応しきれない状況も生じてきており、市町村単費でさまざまな学校職員が配置されてきているという実態がある。こうした実態を踏まえた検討が必要である。
 当作業部会では、当面、特に以下の課題について引き続き検討を行うこととしたい。

2.教職員給与費負担と学級編制・教職員定数に係る権限の政令指定都市への移譲

 政令指定都市は、財政的に見ても、児童生徒数や学校数などの面から見ても、都道府県と同等の規模を有しているが、現行制度上は、教職員の給与を道府県の負担としつつ、その任命権は政令指定都市が行うこととされており、給与を負担する者と任命権を行使する者が異なるという制度の「ねじれ」により弊害が生じているとの指摘がある。
 この問題について制度の見直しを行うため、当作業部会では、関係の道府県及び政令指定都市から意見を聴取した。(政令指定都市及び関係道府県の意見について、表3(48頁)及び表4(52頁)参照)
 その結果、多くの意見は、次のとおりであった。

  • 任命権者と給与負担者を一致させるべきであり、政令指定都市が給与負担を行うよう制度の見直しを行うべき。
  • ただし、税源移譲等により適切な財源措置がなされることが前提。
  • 制度の見直しにあわせて、学級編制基準の設定及び教職員定数の設定の権限についても政令指定都市に移譲していくべき。
  • 給与負担と権限の移譲を実施するためには、給与条例の整備や給与システムの構築等、移行のための一定の準備期間が必要。

 一方、域内に政令指定都市が存在する道府県の中には、道府県内の義務教育の機会均等や教育水準の確保に果たしている道府県の役割にかんがみ、給与負担と権限の移譲については慎重に対処すべきであるとの反対意見もあった。
 意見聴取の結果、方向性としては、給与を負担する者と任命権を行使する者を一致させる方向で見直すべきとの意見が大半であったが、この問題については関係者間でも必ずしも意見が一致していないところもあり、また、政令指定都市が負担する給与費の財源問題の解決なしに結論を得ることは困難な問題である。
 当作業部会としては、給与負担と権限をあわせて移譲する方向で取り組むべきものと考えるが、その円滑な移譲のためには政令指定都市に対する国庫負担が必要であると考える。財源問題について、関係省間で協議の上、方向性が示されることを期待するとともに、権限と負担の移譲に伴う政令指定都市の事務体制の整備に向けた具体的な検討が進められることを期待する
 なお、中核市など一定規模以上の市についても、政令指定都市と同様、任命権や給与負担などの移譲について、市町村の権限と責任を拡大する観点から、引き続き検討することとしたい。

3.市町村費負担教職員制度の全国化

 現在の県費負担教職員制度の下においては、市町村立の小・中学校の教職員の給与は、すべて都道府県が負担することとされている。このため、従来は、市町村が地域の実情に応じた特色ある教育を展開するため、独自に財源を手当てし、教職員を任用しようとする場合であっても、常勤の教職員を任用できないという制約があった。
 このため、平成14(2002)年に、構造改革特別区域法に基づく特例措置として、希望する市町村が特色ある教育を実施するため、独自に常勤の教職員を任用できる途が開かれたところであり、現在18市町村において、この特区事業が認定されている。
 市町村費負担教職員制度については、その全国化が課題とされている。これについては、今後、特区における実施状況についての評価なども勘案しつつ、仮に本制度を全国化するとした場合、教職員の配置等に係る都道府県と市町村との間の関係にどのような影響を与えるかなどについて、関係団体から意見を聴取していくとともに、県費負担教職員制度を前提としている現在の義務標準法の諸制度の見直しも含め、市町村の権限と責任を拡大する観点から、引き続き検討することとしたい。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課

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