資料2 第5回地方教育行政部会 意見表明者説明資料(千代忠央委員)

千代忠央委員 説明資料 平成16年6月15日

「市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方について」

 戦後間もなく60年、政治体制がここに来て大きく変革した。長い期間続いた中央集権制度が改められ、地方分権制度への移行が急速な勢いで国民の中に浸透している。教育の分野においても、地方自治の確立が進むことにより、教育の在り方を大幅に見直すべき時代に至ったと考えられる。少子高齢化社会への移行は、人の生活リズムを変化させ、教育についての考えも大きく転換しつつある。今や家庭教育から生涯学習に至るまで、大きな視野で教育をとらえ直す時代と認識する立場から、このリポートをまとめるに至った。

平成16年6月15日

埼玉県松伏町長 千代 忠央

1 市町村と都道府県との関係の変化

これからは市町村の力が増大する

 市町村合併が推進されることにより、市町村の規模が拡大し、行政の簡素化が図られ、財政事情が改善され、したがって、市町村主体の地方分権体制が確立される方向に動くことが予想される。

  • 合併により新たな、
    • 政令指定都市
    • 中核市(特例市)
    • 10万都市
    が誕生し、都市機能がより一層充実し、行政推進力がより一層拡充し、権限移譲を受け入れることがより一層容易になる。
  • 規模拡大による利点
    • 優秀な人材を幅広く活用でき、政策立案が容易になる。
    • 簡素な行政運営、効率のよい財政運営が容易になる。
    • 行政に対する住民の信頼性が高まる。
  • 市町村数の現状(平成15年9月)
    • 市 678
    • 町 1951
    • 村 552
    • 人口比率 市:町村 79:21
    • 面積比率 市:町村 30:70
    • 合計 3181 (平成16年4月現在3100に減少)
  • 今後、市町村合併が進むにつれて、さらに新市が増大する。

市町村でできることは市町村へ

  • 地方分権の推進による市町村間の活性化が顕著に現われる。
  • 特色ある地方行政の推進が奨励され、都市間競争と広域による連携が活発になる。
  • 都道府県と市町村の従来の従属的構造が改善され、都道府県と市町村の役割分担が明確化される結果、市町村独自の政策推進が容易になる。
  • 小規模単位の市町村については、別途対応を図らねばならない。

国の三位一体改革のうち、地方への税源移譲は特に急がねばならない

  • 国は地方へ、都道府県は市町村への権限移譲を速やかに行うことによって、地方分権の確立を目ざす必要がある。そのためには、現在著しく遅れている地方への税源移譲対策が急がれる。

2 市町村教育委員会の在り方(見直し)について

制度疲労による機能低下から脱却しなければならない

 教育制度は今日の地方分権時代においては、その制度の矛盾が顕著に見られるようになった。中でも教育委員会制度は責任・権限・機能・運営等の分野において大幅な改変が待たれるところである。
国は「教育委員会の在り方」のゆるやかな指針を示し、教育委員会の政治的中立性・安定性・継続性を担保としながら、都道府県・市町村自治体へそれぞれの教育委員会の見直しを求め、条例制定を義務づける。

  • 都道府県・市町村においては、国の指針に基づいて、住民の合意に基づいたそれぞれの条例を、それぞれの都道府県・市町村が制定する。
  • 市町村はその規模に応じて、都道府県教育委員会との連携を密にし、新たに定めた教育委員会条例に基づいて、それぞれの権限・機能・運営を明確化し、教育行政を推進する。
  • 政令指定都市は、都道府県教育委員会とは独立した教育行政を推進する。
  • 中核市(特例市)は、都道府県教育委員会と協働で教育行政を推進する。
  • その他の市町村は都道府県教育委員会との役割分担を明確化して、教育行政を推進する。

条例を新たに制定することで、教育に対する国民の関心を醸成する

  • 条例の制定により、住民は、県・市町村における教育委員会の位置づけを明確に認識することが可能になり、教育委員会への関心が高まる。
  • 教育委員会の重要性が増大し、責任ある教育行政が可能になる。
  • 条例の制定により、教育委員会の中立性・安定性・継続性が担保される。
  • 首長と教育委員会の関係を明確にすることができる。
  • 教育委員の任命についても、その権限と責任を明確化できる。

3 市町村教育委員会の在り方(見直し)の方向

教育委員会条例に盛り込まれるべき諸問題

  • 市町村教育委員会は教育行政の水準の維持・向上、教育行政の方針・事業を明確にし、都道府県教育委員会と連携を図り、その支援・指導・助言を求める必要がある。
  • 市町村教育委員会の所管する分野の中で、幼児教育(次世代支援、官民幼稚園、官民保育園)、社会教育、生涯学習の分野における対応が今日、著しく弱体であり、改善が必要である。
  • 市町村教育委員会は幼児教育において新しい視野に立った教育・福祉統合システムの確立を図る必要がある。
  • 市町村教育委員会は首長部局、議会、学校、地域、家庭との連携・協力が弱体であり、改善が必要である。
  • 市町村教育委員会は教育現場を的確に把握し、関係機関、関係施設、学校運営責任者(校長)と常に意見交換する機会を数多く取り入れるよう、改善が必要である。
  • 都道府県教育委員会と市町村教育委員会は連携・協力して、教員の資質・技量を維持するために、条件付採用期間中の教員の評価・採用を行い、また正式採用後も教員として不適格な者に対しては排除する必要がある。
  • 校長の予算執行・事業遂行・人事裁量における権限と責任を強化する必要がある。
  • 市町村教育委員会委員の待遇を定め、常勤委員の設置も視野に入れる必要がある。
  • 教員の評価制度を定め、勤勉手当、特別昇給等の処遇を明確にする必要がある。
  • 教育委員長と教育長の責任分担を明確にする必要がある。
  • 市町村教育委員会は首長部局との関連を密にし、横断的組織を常に構築する必要がある。
  • 市町村教育委員会は警察・市町村・地域住民との連携を密にし、青少年非行、生徒指導上の諸問題を解決する組織を構築する必要がある。
  • 市町村教育委員会は教育委員会において討議され決定した事項を速やかに住民に知らせる必要がある。
  • 市町村教育委員会は常に教育現場の状況を把握するとともに、保護者、地域住民との連携を密にする必要がある。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課