地方教育行政部会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成16年8月23日(月曜日) 13時30分~16時30分

2.場所

グランドアーク半蔵門 3階 華

3.議題

  1. 地方分権時代における教育委員会の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 鳥居部会長(会長)、田村委員、渡久山委員、山本委員、横山委員
臨時委員
 吾妻委員、池端委員、稲田委員、大澤委員、小川委員、門川委員、佐藤委員、千代委員、津田委員、土屋委員、森田委員

文部科学省

 結城文部科学審議官、近藤文部科学審議官、田中生涯学習政策局長、月岡生涯学習総括官、樋口初等中等教育局担当審議官、辰野文化財部長、久保生涯学習政策局政策課長、山田生涯学習企画官、前川初等中等教育企画課長、角田初等中等教育企画課長補佐(その他関係官)

5.議事要旨

午後1時31分 開会

○鳥居部会長
 それでは、定刻でございますので、中央教育審議会教育制度分科会地方教育行政部会第10回を開催いたします。皆様、大変お忙しいところを御参集賜りましてありがとうございます。
 今日は、前回に引き続きまして、関係団体からのヒアリングを行いたいと思います。本日は8団体にお願いをしてございます。資料1のとおり、校長会や、一番最初は全国国公立幼稚園長会でございますけれども、その他社会教育・文化施設団体等お越しをいただくことになっております。
 ヒアリングの進め方でございますが、3時間の審議時間内に8団体からお話を伺い、さらに議題を一つ最後にお願いをするということになっておりますので、1団体当たり15分程度で進めていかなければなりません。このため、各団体からの意見陳述を10分間ほどお願いいたしまして、続けて委員の皆様から、前回同様、各団体に質問を5分間切らせていただいてお願いをしたいと思います。
 それでは、早速でございますが、全国国公立幼稚園長会からお願いしたいと思います。今日は、同会の会長でいらっしゃいます酒井幸子文京区立小日向台町幼稚園園長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○酒井意見発表者
 ただいま御紹介いただきました、全国国公立幼稚園長会の会長で、酒井幸子と申します。副会長の齊藤美代子とともに同席をさせていただきました。本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。
 「論点の整理」を拝見いたしました。委員の皆々様の御熱意や御努力に心より感謝申し上げます。大いに賛同する内容でございました。
 その上で、就学前のすべての子どもたちと、それから幼児教育の視点から、そしてまた本会の全国の、とりわけ公立幼稚園の現状から幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。
 「論点の整理」に沿ってお話を申し上げますが、その前に一言申し上げたいと思います。
 教育行政における中立性、安定性、継続性を確保するという教育委員会制度の意義は、まず堅持されるべきであると考えています。今、地方分権化や市町村合併が進められております。改革に伴う変化や混乱も一部には予想されると思います。このようなときであるからこそ、教育委員会の中立性、安定性、継続性を確保するという役割は極めて重要であるかと思っております。
 では、いただきましたこの「論点の整理」に沿って考えを申し上げます。
 まず、総論の「(2)」の「全国的な教育水準の確保」についてですけれども、とりわけ義務教育についてはナショナルスタンダードを示してというところは大いに私どもも賛成をするところでございます。その際、私どものレジュメに少し書いてございますが、幼児教育は義務教育の土台をつくるものだと思っております。その土台をつくる幼児教育の充実を図ることも極めて大切なことであります。このことは本会として最も重要視していることですし、大いにお考えをいただきたい点でございます。
 それから、「(3)」、保護者、地域の方々の教育への参画についてですけれども、この後半の部分、「人間としての」というところからも、大いに私どもも賛成するところでございます。地域ぐるみでこういったことを行ってこそ、教育の成果が上がると考えております。そしてまた、このときに「参画」ということがキーワードになるかと思います。私どもも、既に様々な学校や園や地域で参画をし、成果を上げているところでございます。そういった成果を考えてみますと、参加の域を越えた、「参画」というところに意義があると思います。地域や保護者の方々は、今、力も熱意も十分にございます。そういった力を活用すべきである、そして地域ぐるみで行うことが成果を上げることであるというようにも考えております。ですけれども、その際、意向を十分に反映させるとともに、公平性、中立性等、そういった観点から、教育的見地からの配慮も一部に必要なこともあるということを申し添えておきたいと思います。
 それから、各論に行きますと、1番につきましては、「(7)」のところで、特に「○」の二つ目、「学校に対して専門的指導が行えるよう、指導主事の配置の充実など体制を整えるべき」というところをぜひ私どもも強調したいと思っているところです。レジュメの一番最後の行になりますが、教育委員会の活動は、実際には事務局の力に負うところが大きいと思います。レジュメの次のページに行きますけれども、教育ニーズが多様化して、今、増大しております。指導主事の配置及び専門性を充実させることは、学校や幼稚園の教育を支えるものとして、ぜひ実現させたいところでございます。とりわけ幼稚園教育に関しましては、専門の、あるいは専門性を有する指導主事の配置が十分ではございません。そういったことからも、切にそこのところが望まれるところでございます。
 2番目に移りまして、「首長と教育委員会との関係」というところですけれども、このことに関しましては、少し前の2ページ目の1番の「(1)」、「(2)」の、中立性の確保についてや、継続性、安定性の確保についてとも関連いたしますけれども、公立幼稚園の現状から意見を申し上げたいと思います。
 レジュメの2ページ目の2番でございます。少子化や経済事情等を背景にいたしまして、首長の交代が公立幼稚園の存亡を左右する事態が実際に起きております。こうした公立幼稚園でなくとも、教育への適正な評価がなされないままに、または教育的視点より経済性、効率性を優先したまま事態が進行することを、私どもは憂慮しております。首長と教育委員会が密接に連携を図る必要は大いにあるとは思いますが、教育の中立性、安定性、継続性を図る上からも、教育委員会の権限等を明確にしておくことが望まれます。
 それから、5ページ目の3番に参ります。一番上の2行です。幼児教育は教育委員会が関与していくべきではないか、また、市町村の役割は重要ではないかという、そこのところとも関連いたします。レジュメのほうに移りますと、レジュメの3番のところでございます。公立幼稚園の設置主体は、御承知のように市町村でございます。そのために、地域の実態に応じた教育を市町村教育委員会とともに進められる利点がございます。これは公立幼稚園の例でございますが、こういった例から見ましても、「論点の整理」にありますように、「3」の「(2)」の「○」の一つ目でございます、子どもや住民に身近な市町村の教育委員会が責任を持って教育行政を担う仕組みづくりは大切であると思います。しかしながら、一方で、都道府県の教育委員会が、広域的な視野からの課題解決ですとか、教員の研修体制や人事交流等に積極的に一定の役割を果たすことも必要ではないかと考えております。
 それから、6ページの4番の「(3)」でございます。「学校に対する教育委員会の支援について」というところです。これについてもレジュメを御覧ください。例えば公立の幼稚園は、いずれも小規模なところが多うございますので、正直な話、教育委員会の支援は欠かせません。しかしながら、一方で、幼児教育や幼児理解や指導内容・方法、園内研究体制など、これまで積み上げてきた教育財産は多くございます。これらのノウハウを教育の施策に反映することは大変有効であると考えております。これは私どもの例で大変恐縮なのですけれども、こういったように教育委員会と学校や幼稚園とが双方向の関係を築いて教育の水準の維持・向上を図ることは大切な視点ではないかと考えております。そのために、より双方向の関係が持てるよう、学校や園と教育委員会とが、もう少し互いに対して開かれた、協力する関係になることが望ましいと感じております。
 それから、これは「論点の整理」の最後になります。「保護者・地域住民の学校運営への参画」についてでございます。このことも大いに賛成でございます。しかしながら、幼児教育に関しましては、学校評議員制度等も実施率が高いとは言えない状況です。私ども国公立の幼稚園に関しましても、まだ十分な数値、実施率が上がってはおりません。もっともっとこの辺は私どもの努力が必要とされるところですけれども、こういったことにつきましても教育委員会からのなお一層の働きかけをお願いしたいと思っております。
 しかし、こういった制度は、実施率は低いのですけれども、学校や幼稚園運営等への保護者や地域住民の参画ということにつきましては、国公立の幼稚園はかなり進んでいる面もございます。レジュメの4番の「○」の二つ目でございますけれども、PTA活動ですとかサークル活動等を通しまして、母親、父親、地域の人の教育への参画を相当進めております。子育ち・親育ちの場として積極的に教育機能を提供してもおります。今後は、親、地域、学校や幼稚園、そして教育委員会が一体となって、地域ぐるみで子どもを教育するという環境づくりは極めて重要ではないかと考えております。
 最後ですけれども、四角で囲ったところに、幼児教育の視点からでございますが、重点意見として書かせていただきました。今までのところと多少ダブることもございますので、後ほどお読みいただくといたしまして、幼児教育の重要性はどなたも認識していらっしゃると思います。しかしながら、見えにくいですとか、わかりにくいということも一般には言われておりますので、そういったこともあって、適正な評価を得られずに、教育を離れて政治的争点となる傾向があることも私どもは心配しております。そしてまた、御承知のように、今後、総合施設制度の創設等に伴いまして、我が国の幼児教育は、これまで以上に多様で、そして複雑な方向に進む可能性が出てきたことを感じております。日本のすべての子どもたちが幼児期にふさわしい教育を受ける権利を保障する仕組みづくりが、「人間力」向上へとつながると確信しております。そういった幼児教育の重要性に鑑みまして、教育委員会の在り方に二つほど提案したいと思います。
 一つは、教育委員会事務局に各教育分野における専門家を配置し、体制の充実を図る。これは先ほども申し上げました。
 もう一つでございます。公立・私立等の設置主体や幼稚園・保育所等の別を問わず、すべての子ども、とりわけ3歳以上の子どもの教育に教育委員会が積極的に関与することを望んでおります。
 一応、意見は以上でございます。ありがとうございました。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたらお願いいたします。
 横山委員、どうぞお願いいたします。

○横山委員
 2ページの「教育委員会の在り方に対する重点意見」というのがございますね。この中の上のほうの「◎」に、「教育委員会事務局に各教育分野における専門家を配置し体制充実を図る」、この「専門家」というのはどういう方をおっしゃっているのか、何をもって専門家と言うのか、それが1点。その専門家を、属人的な専門家の素養で何か使う、活用しようとするのか、あるいはその専門家を事務局に配置することによって事務局自体が変わっていくことを考えておられるのか。その2点をちょっとお伺いしたいのです。

○酒井意見発表者
 ここで言います専門家というのは、例えば幼稚園教育で言いましたら、幼稚園教育の専門性を有する方、そういった指導主事というようなことをイメージしております。そしてまた、幼児教育だけでなく、わかりませんけれども、仮に都道府県でなく市町村の教育委員会等ですと、幼稚園の専門の指導主事というのはなかなか配置されておりませんし、幼稚園だけでなく、人のことを言うのはちょっとここでは何ですけれども、例えば身障の分野ですとか、そういったところでも十分な体制があるとはこちらで認識しておりませんので、専門家というのはそういった意味で言っております。
 もう一つは、このことで体制の充実を図るということですので、要するに教育委員会の事務局の体制が充実することで、学校や幼稚園への支援というものがもっときめ細かにできるのではないかと考えております。

○鳥居部会長
 横山さん、よろしいですか。

○横山委員
 ちょっとその専門家がよくわからないのですが、ある一定の資格を持つ方をおっしゃっているのか。少なくとも幼稚園の教員というのは専門家ですよね、幼児教育については。

○酒井意見発表者
 例えば資格を持っていれば十分だと思いますし、あるいはそういった勉強というのでしょうか、かかわりというのでしょうか、そういったものを積んできた方であればよろしいのではないか。
 本当に正直な話を言ってしまってよろしいでしょうか、横山先生まだ御納得でないようなので。例えば幼稚園担当ということで市町村に置かれている指導主事の中には、小・中・高等の専門分野で幼稚園担当というふうになっている方が多うございます。そういった方々ではなく、幼稚園教育にもっと資格を持っていれば、免許等があれば、そして現場での経験があれば十分ですけれども、そうでなかったとしても、そういった関係のお仕事、あるいはかかわりを持っていた、多少の経験があるというような方が来ればよろしいかなと思っております。

○横山委員
 わかりました。

○鳥居部会長
 それでは、千代委員、どうぞお願いします。

○千代委員
 今の2ページの囲みの中なのですが、「◎」の二つ目で、「とりわけ3歳以上の子どもの教育」というように、3歳以上と限定されておられますけれども、それ以下の子どもたちに対してはどういう御見解をお持ちでしょうか。

○酒井意見発表者
 ここに「とりわけ」と書かせていただきましたので、0、1、2歳につきましても、子どもの成長を生涯的な視野から教育委員会の関与のもとに行うのが望ましいというふうには考えております。ですけれども、0、1、2歳に関しましては、福祉の分野でのケアも大変重要であると思いますので、ここは「とりわけ3歳以上」という表現にさせていただきました。

○鳥居部会長
 まだ御質問おありかと思いますが、このあたりで質問を打ち切りとさせていただきます。
 それでは、どうもありがとうございました。お忙しいところ恐縮でございました。

〔全国国公立幼稚園長会退席〕

〔全日本中学校長会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、次に全日本中学校長会からお願いをしたいと思います。全日本中学校長会の総務部副部長でいらっしゃいます品川区立冨士見台中学校長菅谷正美先生においでいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。10分間でお願いしたいと思います。

○菅谷意見発表者
 本日は、この会にお招きいただきましてありがとうございます。全国の中学校校長会は本日ちょっと大きな会がございまして、会長、副会長、総務部長が出ておりますので、総務副部長の菅谷が御意見を申し上げたいと思います。総務部の高橋も随行しております。よろしくお願いいたします。
 資料4というところに私ども中学校長会の考え方をまとめさせていただきました。これに従いましてお話をしたいと思います。
 まず第1点でございますが、教育委員会制度の意義と役割について御論議が進んでいるかと思います。私どもは、公教育の使命ということから考えまして、現行のように首長部局から独立した教育委員会制度は、意義があり、かつ欠かせない制度であると思っております。教育の水準を維持し、向上を図る役割は中学校にもございます。その意義を現実に生かす、私ども学校の支えになっているのが教育委員会ではないかと思います。今後、地方分権に伴い、教育委員会の中身、特に市町村レベルの教育委員会にやはり格差が生じるのではないかと危惧をしております。そのことが、所属する中学校の教育の質の差にならないように考えていただければありがたいと思っております。
 御承知のように、中学校は全国で約1万弱ございます。地方の中学校は、隣の学校までの距離も大変遠い、また、村の教育委員会といいましても、そこの事務の方が、少ないところはお二人というところがあります。そのお一人の方が教育長をおやりになっている、こういう状況もあるわけですので、規模に差があります。それが教育の現状の差以上に広がらないように、教育委員会制度についての御検討をいただければありがたいなと思います。
 二つ目でございます。首長と教育委員会との関係でございます。やはり教育の使命を考えたときに、中立性、安定性、継続性を保証するということが最も大事なことだと思います。政治的に選ばれる首長さんによって教育が左右されてはならないのは当然のことだと思います。選挙によって決まる首長さんにより教育の中身がその都度変わるのでは、教育は使命を果たすことができません。私ども中学は3年間でございます。義務教育制度全体を御検討いただいている部分もあるかと思いますが、私どもの中学3年間は、新しい流れの中では中・高6年間、または小・中9年間という長いスパンでの試みが大変最近増えてきております。そのことを考えたときに、やはり安定した継続性を考えたときに、教育委員会が独立して、きちんとした考え方を持って行うのは当然ではないかと思います。並びに、地方の特色や特性を生かす、これは私ども中学校や義務教育の小学校においても当然生かすべきだと思います。そこで、どのようにしていくか、それぞれの地方の中で考えていく必要があるのではないかと考えています。
 三つ目でございます。都道府県単位と市町村単位の教育委員会、いろいろと御論議があるかなと思います。一つの流れとしましては、大きい流れでございますが、権限が地方に移譲されていく。都道府県から市町村へと行くと思います。仕事が行くわけですから、その仕事を完璧に行うための財源も当然必要ではないかと思います。それなくしては、市町村、特に小さいところの教育委員会は仕事ができないのではないかと思います。そこで、教育委員会制度の御論議の中に、小さな市町村で集まっているところは共同で処理する、いわゆる教育事務所単位とか、そのような視点での改革も必要ではないかと思っております。
 四つ目になります。学校と教育委員会及び学校の自主性・自律性の部分でございます。当然これからの学校は、地域のニーズに応じて特色ある教育活動を展開することが求められます。そのためにも、学校の裁量権がもっともっと必要ではないかと思います。資料に書いておきましたが、校長の権限で予算執行を行うとか、特色を出せるために学習指導要領の趣旨を生かした一定の枠の中でのカリキュラム編成とか、校長としての人事権を行使できる等、まだまだあると思いますが、少しずつ学校の裁量権をふやしていただければありがたいと思います。教育委員会が学校を支えるサポートシステムをつくっていただいて、その上で自主性・自律性の確立につながれば、学校としてはありがたいと思います。
 なお、義務教育ということで中学校教育を考えますと、今年は57年目でございます。歴史があります。これをどのような形に持っていくか。義務教育としての、57年間培ったものは大変大きいものだと思います。その一番大事なものが、国として地方分権が進んでも義務教育を堅持していくことではないかと思います。知事会において大きな流れがありました。義務教育費の国庫負担制度、やはり堅持して、国としての責任を明確にしていただければありがたいと思います。
 大変簡略でございますが、全国中学校校長会の意見として申し上げさせていただきます。以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、早速ですが、短い時間で恐縮ですが、御質問がありましたらどうぞお願いいたします。
 佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員
 レジュメの下から4行目、「教育委員会は学校を支える多様なサポートシステムの構築」と示されてありますが、これまで指導主事とか管理主事とか、いろいろな教育委員会事務局のスタッフで学校経営についてのそれぞれの御支援をしてまいっているわけですが、何かそのほかのことをイメージされてのお言葉でしょうか。ちょっとそこのところを。

○菅谷意見発表者
 多様なサポートシステムですから、様々なものがあると思います。今回のことにつきまして、学校として教育委員会に望むことは何だろうかと、全国的な調査もいたしました。その中で一番深刻な問題は、例えば教育行政の中には人事行政と指導行政、二つございます。ところが、例えば指導行政の指導主事が10年たっても一回も来られない。これでは学校のサポートをしていただけないのではないかということが大変切実な内容として出ております。いろいろなサポートがあるにしても、学校を自主的に、自律的にするためには、人事行政、指導行政、すべて効率的に両方ともバランスよくやっていただきたいということが私どもの願いでございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、渡久山委員、どうぞ。

○渡久山委員
 二つお願いしたいと思います。
 一つは、「2」にありますように、首長部局と教育委員会は独立する必要があると書かれているのですが、次に「在り方について吟味する必要がある」ということで、私たちもそれを吟味しているわけですが、具体的にどういうような事柄を改善するなり、あるいは直すなり、あるいはまた必要不可欠なところがあるのかどうか、これが一つです。
 もう一つは、校長を中心にした学校の裁量権を拡大する必要があるということですが、ここには人事権と学校予算というのがありますが、自由度について、先ほどはカリキュラムのこともありましたけれども、学校の管理規則との関係で、やはり教育委員会が具体的に学校の管理運営を委託している、あるいはまた管理運営を、権限を移譲している場合は、学校の管理規則というのが非常に大きくあるわけですね。この関係で、裁量権を拡大する場合に、学校管理規則についてどういうようなことを感じていらっしゃるか、ちょっと教えていただきたいと思います。

○菅谷意見発表者
 1点目の、首長部局との連携でございます。ここは、「吟味する」という言葉がありますが、都道府県の特色によってだいぶ違ってきているということを、私ども校長会の中で感じております。そこで、具体的にというのはありません。いろいろな考えがあってしかるべきではないか、このように思っております。
 それから、4点目の、学校裁量権の拡大です。管理運営規則に、例えば2学期制のことが具体的に今話題になっていると思います。管理運営規則を変えて2学期制にするという市町村がございます。ただ、都道府県単位の管理運営規則を市の単位に置き、それより下にという形で、右へ倣えの規則が大変多うございます。そのことがなかなか変わらないと言うのが実態でございますので、市町村単位、またはもうちょっと大きい、例えば政令指定都市ですと区単位の教育委員会で管理運営規則を変えていくことができて、そのことに意義があれば、裁量権がもっともっと変わるのではないか、このように感じているところでございます。

○鳥居部会長
 それでは、吾妻委員、どうぞ。

○吾妻委員
 直接今日の御発表と結びつかないかもしれないのですが、中学校を中心にしたいじめ、あるいは不登校、あるいは非行の低年齢化、そういったことの問題点を引き合いに出してといいますか、現行の教育委員会制度にも問題があるのではないかという御意見の方もいらっしゃるわけですけれども、今日の御発表で大体お考えはわかったわけですが、改めて現場からそのような一部の御意見に対してどのようなお考えがおありか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○菅谷意見発表者
 教育委員会制度と子どもの実態というのは即つながるものだとは思っておりません。ただ、最近の子どもの問題傾向を見ますと、中学という3年間の枠の中だけで物を考えるのではなくて、やはり小学校の高学年と中学校、そこの一体にした継続的な指導ということが最も大事ではないかと思います。そうしますと、義務教育制度根本に、やはり今の6・3・3・4制ではない、何かの大きな改革が必要ではないか、このように個人的には思っているところでございます。制度が現状に近づくのか、制度を変えることによってもっと新しく見ていくのか、いろいろなお立場がございましょうが、中学校から言えば、やはり小学校との関係をよりよくしていかなければ現実の問題が解決できないというように思っております。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 そのほかにもし御質問がありませんでしたら、ここで打ち切りにさせていただきます。
 ありがとうございました。お忙しいところ恐縮でございました。

〔全日本中学校長会退席〕

〔全日本私立幼稚園連合会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、続きまして全日本私立幼稚園連合会からお願いをいたします。本日は、連合会の副会長でいらっしゃいます光明幼稚園園長田中雅通先生にお越しをいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○田中意見発表者
 全日本私立幼稚園連合会副会長をしております田中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、説明資料に沿ってお話をさせていただきます。
 1番目、教育委員会の在り方、また首長部局等との中立性のことでございますけれども、現制度は基本的に行政からの中立性というものが確保されているという部分に関しましては有効に機能していると考えております。ただ、幼稚園の分野で言いますと、子育て支援でありますとか、子育てに悩むお母さん方、少子化の問題というようなものが教育から派生して、多岐にわたる問題が出てきております。こういうような問題の場合に、教育委員会の独自性というものがマイナスに作用して、首長部局との連携の不備があったり、また、国で行われておりますいろいろな制度、または補助の制度が、首長部局に、または知事部局に所属しております厚生系の補助金の流れが、教育委員会等を経由した学校教育としての幼稚園のところには流れてこないというような現状がございますので、あくまでも教育における中立性を担保するという本来の目的というものの重要性は認識しつつも、いわゆる首長部局との連携が図られていくということが、今子どもたちを取り巻く、いわゆる学校と子どもだけではなくて、家庭をどう支えていくのかという視点の中から非常に重要になってくると考えております。その意味での再検討というものをぜひ考えていただきたいと思っております。
 2番目に、まず市町村レベルでの教育委員会の規模と現状についてお話をさせていただきますと、幼稚園は、公立の場合には市町村立、そして私立幼稚園の場合には知事部局に所属しております私学行政の傘下に置かれております。その中で、教育的な内容につきましては、都道府県の教育委員会等が中心になった研修が組まれているというのが現状でございます。私立の幼稚園の立場といたしましては、多様な部門からの研修は言われるわけですけれども、そこが一元化されていないというところのマイナスが現状にございます。教員免許の問題等が浮上してきたときに、これからそこが一致していかない限り、非常な不整合が出てくるのではないかと考えております。
 また、現実の問題として、町村レベルの教育委員会が本当に幼稚園教育というものを担当し得る責任者としてそれだけの教育的な能力をどこまで持っているのかということについても疑問を持っております。私は京都市に所属しておりまして、今そこにおられます門川教育長と常に連携を図らせていただいてやらせていただいております。政令指定都市レベルですと、教育委員会というものの組織も一定しっかりしておりますので、連携を図っていけるわけですけれども、その規模というのがこれから問題になってくるのではないでしょうか。また、町村レベルの教育委員会が一定拡大をして、一つの権限を持つということが明確化されていけば、都道府県レベルでの教育委員会の在り方というものが再検討されていくという道筋にあるべきではないだろうかと考えております。
 また、教育委員会が一定規模拡大した場合においては、小学校入学前のすべての子どもの教育についてどうあるべきかといった視点が必要であろうと思います。現在幼稚園に通っている子どもたちは、教育という視点で一つの網がかかっておりますけれども、保育所に在籍している子どもたちにつきましては、所管の外ということで別の行政の立場になっております。世界の流れが、3歳からの教育を確立することによって、それぞれの国が21世紀も世界の中で活躍しようという大きな方向性を持っているときに、幼児期にきちっとした教育の網をすべての子どもにかぶせられていないという現状につきましては、憂えるべきものがあると思います。大きな視点で再構築していく時期に来ていると考えております。
 最後に、学校と教育委員会との関係につきまして、学校の自主性・自律性を確立する方向については賛成をいたします。ただ、私立幼稚園という立場で実際に保護者と向き合っておりますと、地域の声、保護者の声という形で出てくる声がどこまで対応していくべきものなのかということが、責任ある立場、私立幼稚園の園長または設置者として、人事もすべて含めて担っている責任ある立場だと回答しやすいわけですけれども、そういうものがない立場の中において、地域の声というものが、本当にそれが地域の声なのか、単に一部住民のエゴなのかということの判断については非常に難しいものがあると思います。現在の学校評議員制度が有効に機能しているところでは、その評議員の数が考えられていて、少人数にならない、一部の人の意見に左右されない、そして一部の意見が出てきても、それが多くの意見の中で民主的に議論をされていくという過程を踏んでいくということが非常に重要な手続であろうと思います。そのようなセーフティネットを考えながら、地域住民の意向を反映していくという制度を考えていかないと、学校現場が混乱するのではないかという危惧を持っております。
 最後に、「論点のまとめ」の「4」の「2」、学校評価についてのところで「消費者主体のサービス」という文言がございます。これは、たぶん委員の方々の意見という形でそういう言葉が出ていると思いますけれども、教育という分野が、消費者、サービスという流れの中で、不易と流行というものを間違った方向に持っていくということがあってはならないと考えております。私は、園にいる保護者の方々と接していて一番感じますのは、子育ての不安等を取り除くことが仕事ではないと思っています。不安と本当に向き合って、その不安を乗り越えたところに親としての充実感を味わっていらっしゃる多くの方々を見ております。サービスという名で不安を取り除くという方向に行った場合に、それは人間としての本当の幸せを感じられるのかということに関しては非常に大きな疑問を持っております。ぜひ、教育がサービスという形で流れるのではなくて、人生を支えていく、親と子どもが人生を乗り越えていくための共有する場というものとして位置づいていっていただきますよう、よろしくお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がありましたらどうぞお願いします。
 どうぞ、大澤委員。

○大澤委員
 今の後半の消費者サービスとはき違えないということ、育児不安を取り除く、ニーズに応じたというところをどうもはき違えて、本来の幼児教育を果たすべきところが今おろそかになっているのではないかという御意見がありまして、私も賛同するところです。
 私は今、現場の小学校におりまして、いろいろな学校で「小1プロブレム」という問題を抱えていることは御承知のとおりだと思います。100人くらいの児童を入学させているわけですけれども、実際にカウントいたしましたら、26の幼稚園、保育所から子どもを受け入れております。その幼稚園、保育所時代の就学前教育の様子を見ますと、本当に幅が広いという受けとめ方をしております。そこで、本来幼児のときに育てなければならないもの、あるいはたっぷり培ってこなければならなかったもの等を経験しないままに6歳という年齢を迎えてきているという子どもの実態を考えてみますと、やはり就学前教育はこれから特に人間教育という視点で力を入れていかなければいけないと思っております。
 ここにあります「小学校入学前のすべての子どもの教育について、当該教育委員会が責任を持つ」、このあたりについて、実際には公立幼稚園の数、私立幼稚園の数等、あるいは在籍の人数等をカウントしますと、地域によってかなり差があることは承知しておりますけれども、私立幼稚園は今、知事部局、首長部局等のほうに管轄があるわけですけれども、この、私立幼稚園についても当該教育委員会が責任を持つという、このあたりについてもう少し詳しくお話をしていただければと思います。

○田中意見発表者
 当然その中には保育所という他省の行政所管の部分も視野に入れていかなければならないと思っております。私の園の前が保育所で、保育所の場合に、登園時間は、ある意味では非常にまちまちです。いつの間にか、教育というのが一定の時間に始まる、幼稚園の場合には、教育が始まる時間というのがあって、そのときにおくれないように子どもが来るとみんなが思っているわけですけれども、保育所の場合には非常に厳密に考えますと、保育に欠けていない状態であれば親が責任を持つのであって、何時に登園しようと、保育に欠けた状態にその子どもがそこの施設に入るということについての制約はできないということが一つの現状なのです。
 そう見た場合に、集団で何を学ぶのかといった視点を明確化していって、それは施設にかかわらず、一定の時間、集団というものの中に置いて、その中で個と集団というものをきちっと学んでいくのだということの位置づけが必要だと思います。これは、私立幼稚園であろうと、公立の幼稚園であろうと、保育所であろうと同じだと思います。そういうようなことができる施設もあれば、できない施設もあるということが現状だと思うのです。そのときに、一つ一つの施設だけで完結するのではなくて、お互いが連携し合っていく。これが、今、別の部会でも議論されております総合ということの本来の意味だと思うのです。新たに施設をどんどんつくっていくということが役割ではなくて、今ある機能の中で、教育ということに視点を当てて、すべての子どもたちがどういうような形にすれば教育が受けられるのかということを考えていくべきだと思うのです。そのときの内容については、国がナショナルカリキュラムを示し、その実施について教育委員会が責任を持っていくというような関係を持っていけばいいのではないかと考えております。

○大澤委員
 そうしますと、現在は幼稚園教育要領にのっとって私立幼稚園も教育をしているわけですけれども、現実問題としては、教育委員会は私立幼稚園の教育内容には具体的には今タッチしていないということではありますけれども、教育内容についても教育委員会の指導といいますか、助言といいますか、そういったことも入ってくる、そういうイメージでしょうか。

○田中意見発表者
 お互いが連携を図っていくべきものだと思うのです。教育委員会が常に指導するというだけのものでは、私はないと思います。現場からの声が上がりながら、それぞれの地域の中で教育がどうあるべきなのかということについて、一定の幅を持った教育委員会であれば、その議論ができると考えております。

○大澤委員
 ありがとうございました。

○鳥居部会長
 そのほかに御質問ありましょうか。
 どうぞ、渡久山委員。

○渡久山委員
 「2」についてですけれども、今、私学については知事部局ですね、県の教育委員会ですから、幼児教育まで私立の場合そうなるわけですが、ここの文言によりますと、やはり私立の幼稚園を直接、あるいはいろいろな条件整備等も含めてですけれども、これは県の教育委員会よりは当該の市町村の教育委員会が管轄したほうがよりいいのではないか、こういう意見でございますか。

○田中意見発表者
 この場合、ここでそこまで言い切っているわけではございません。現在の私立幼稚園の流れからいきますと、運営については県レベルというのが一つの大きなバックでございますので、これからの地方の分権の流れがどこまで行くのかということに関連してくるとは思いますけれども、現在の運営についてはいわゆる首長部局と教育委員会との連携において運営がきちっと安定化される、教育の内容については、より現場に近いところの教育委員会との連携を図っていくというのが基本的な考えでございます。

○鳥居部会長
 どうぞ、田村委員。

○田村委員
 ありがとうございました。いいお話を聞かせていただきました。2番目のメモのところの「小学校入学前のすべての子どもの教育について、当該教育委員会が責任を持つ」ということについてちょっとお伺いしたかったのは、幼稚園というのは3~5歳というのを教育するというお考えなのですが、0~2歳の子どもはどう考えるとかということが一つございます。0~2歳で保育に欠ける子は保育所で面倒を見ているわけですが、実は、それは3人のうちの1人なのですね。ですから、3人のうちの2人は保育に欠けないで、家庭で子育てをしている。その子育て不安という問題があるわけですが、それについて、教育という観点で幼稚園としてはどういうふうに考えておられるのか。あるいは、3~5歳に限定しているのだというふうにお考えになっておられるのか。実は今、総合施設の議論をしているところで必ずその問題が出てきますので、お考えをお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。

○田中意見発表者
 集団で行う教育が何歳から可能なのかということが一つの視点だと思います。一人の大人が一人の赤ちゃんを産むということは、少なくとも1対1の関係が0歳においては絶対的に必要なのだということが前提であると私は思っております。そうでなければ、たぶん遺伝的に複数の赤ちゃんが生まれてくるというのが何万年かの人間の歴史だと思うのです。その1対1で情報が大人から子どもに入っていくという時期から、子ども同士が情報をやりとりして、その中に入ってきた情報を操作し始める年代は何歳なのか、そのときの規模が何人ぐらいの規模なのかというのが、一番の何歳から集団的な教育を行うべきかということの視点だとも考えております。これが、従来は地域という緩やかな空間、行ってもよかったし、また楽しい空間があって、そこで上下関係も学びながら、また、不都合が生じれば家庭に帰って1対1の関係に戻れるという緩やかな空間が地域にあったわけですが、その地域が崩壊していった後、学校教育という幼稚園がその役割を担わなければならない状況になってきた。
 ところが、入園式を境にして、今度は、幼稚園は行かなければならない空間になっていったということだと思うのです。そうすると、そのときには無理なく行かなければならないということを認識して、集団に所属していこうという意識が自分の中から働いてくるというのは、私は経験的に見て4歳ぐらいからではないかなと。現在の3年保育の3歳でも、実際にどこまでわかって最初のときに幼稚園に来ているのかなというのは、非常に疑問に感じます。ただ、それが悪いということでは決してないわけで、自分が思っていた幼稚園のイメージと、最初の集団のイメージが違う、その中で、家庭への思いを募らせていくということを経由しながら自己の葛藤を乗り越えていくという体験はやはり必要なことですので。そうしたときに、2歳の空間というのは非常に緩やかであるべきかな、従来の地域のような空間であってもいいのではないかなというものを考えております。学校の制度として、何歳になったら行かなければならないというのは、あくまでも義務教育の年代で私はいいのではないかというようには思っております。ただ、そこは先ほど申しました地域との兼ね合いの中で4歳と5歳というものも考えていかなければならないものだと思います。単に知的というもののレベルだけで、何を入れればいい、どういうようなものが入ればいいということで片づけられる問題ではないのではないかと考えております。

○鳥居部会長
 土屋委員、どうぞ。

○土屋委員
 お話を聞いていて非常に感銘を受けて、そういうお考えの方が幼稚園をなさっていることについて大変敬意を持っているわけですが、そこで、先ほどお話がありました3歳以上は3分の1が0、1、2歳の時には保育園に行って集団保育をしていて、3分の2がいわゆる家庭保育をしているわけですね。その場合に、今お話の出た緩やかな地域といったような中で、1対1の関係を重視しながら、さらに集団的なネットワークができるところは徐々にネットワークしていくというお考えについてですけれども、これは教育的な営みというふうにとらえて整備すべきなのか、それはそうではないという、厚生的なという言い方が当たっているかどうかわかりませんけれども、そういうふうにお考えなのか、現場ではどのようにお考えでしょうか。
 と申しますのは、実は私どもも同じような問題意識を持って、今から10数年前に「0123吉祥寺」という、保育園でもない、幼稚園でもない施設をつくりました。武蔵野でございます。ここのねらいは、今お話があったような緩やかな地域を空間的につくって、そこで母子、父子の関係を重視しながらも、自然につまり1対1の関係から離れていって少しやりとりする、しかし、不安になったらまた戻ってくる、こういうことを想定した、比較的伝統的な従来から考えられていた幼児の発達の段階を、地域社会が崩壊しつつあるだけにある程度つくろう、こういうことで始めたのですけれども、これに対して非常に関心を示したのは厚生省で、あまり文部科学省は関心を示しませんでした。NHKでも特集したり、「暮らしの手帖」でも特集したのですけれども。だから、私は、これは教育的営みではないのかなと。別に文部科学省の幹部の方に申し上げているわけではなくて、幼児教育の現場にいらっしゃるお立場としては、それは教育的営みなのか、あるいはそうではないのか、どんなふうに判断したらよろしいでしょうか。

○田中意見発表者
 玉虫色ではないですけれども、どちらも……。すべて子どもが成長していくというのは、ある意味では教育の営みというものの関与があって大きくなっていくわけですから、それを学校教育というような意味での教育の営みという定義をするのか、1対1の関係も、これは親子の中での教育だと思いますし、それを家庭教育という範疇の中におさめてしまうのかということの、一つは定義の問題だと思います。ただ、子どもが成長していくのに、まず最初に、特にやはり母親からの情報が入ってきて、その母親からの情報が入ってくるのが、今はそこだけに限定されていくということのマイナスもやはりだんだん出てくる可能性はあると思うのです。ただ、それが1対1の関係で母親から入ってくるということの役割が否定されるのでも減少されるのでも決してない。そこが十分に役割を担われていた場合に、初めてほかからの大人からの情報が入っていくということだと思うのです。1対1の関係が安定していた子どもほど、ほかの大人からの情報も素直に入っていきますし、そして緩やかな、幅の広い人格が形成されていくということだと思うのです。その道順というのを、いま一度社会の中がどれだけサポートするのかという視点で見直していくということが、これが、私たちが常に言っている、子どもの立場に立って考えていかなければならない。また、幼稚園という団体が、現在では唯一子どもの立場に立った発言ができる場所ではないかと考えているところでございます。

○土屋委員
 非常に今後考えていかなければならない問題ですけれども、私は比較的現場というほど専門ではなくて、市長ですからワンクッション置いた関係なのですけれども、それにしても現在の子育ての状況というのは二極分化している。一つは母子べったりで、母親だけの情報しか入らない。とりわけ0、1、2、3歳の場合にはですね。一方で、0歳から長時間保育をやっていますから、それまで24時間、母親の情報でもっておなかに10ヵ月間いたのが、突然その情報から切り離される、そして長時間保育で二極分化している、これが、なかなか検証できませんけれども、子どもの発達にとって非常な不安定要因になっているのではないか。この二つを少し融合させよう、こういうことを今考えているのですが、これはこの2番目の言うところの「すべての」というところの考え方として受けとめさせていただきたいと思っております。非常に今日はありがとうございました。

○鳥居部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、千代委員、どうぞ。

○千代委員
 私は埼玉県の松伏町というところの町長でございまして、ここで今、私立におきまして幼保連携の組織ができておりまして、全国津々浦々から今見学においでになっております。これは0歳児から3歳児まで、3歳から以上を幼稚園でやっているのですが、それを一つ屋根のもとでやるというようなシステムを行っておりまして、同じ屋根のもとで保育と教育とを同時に並行させるというようなことで大変評判が高まっているわけでございますけれども、この幼保連携については、私立幼稚園連合会のほうではどのように今後受けとめていかれるのか、聞かせていただきたいと思います。

○田中意見発表者
 幼稚園、保育所というのはあくまでも行政で分かれているわけで、子どもにとっては行っている施設、子どもにとっていい施設であり、いい教育が行われているかどうかということがまず基本だと思うのです。それが行われており、またそれに対して税というものが公平に使われていれば、どのような形であろうと問題はないのではないかと考えております。現在の場合には、子どもの立場に立って本当にそれが行われているのかということが一つ問題点がありますし、税の公平な使われ方ということで言えば、その点が本当に議論された上で行われているのかということが問題点であろうと考えております。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 だんだん本質的な話に入ってきまして、ずっと続けたい気持ちは山々なのですが、時間の関係で、大変申しわけありませんが、ここで打ち切りにさせていただきます。今日はどうもありがとうございました。

〔全日本私立幼稚園連合会退席〕

〔日本私立中学高等学校連合会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、続きまして日本私立中学校高等学校連合会にお願いいたします。実は日本私立中高連の会長は田村先生なのですけれども、今日は一歩引いて中教審の委員としてこちらにおられますので、かわりに日本私立中学高等学校連合会の常任理事でいらっしゃいます、穎明館中等・高等学校長久保田宏明先生にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

○久保田意見発表者
 久保田でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に資料としてお配りしてございますので、これをお読みいただければおわかりと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。ただ、私は若干、総論でなく各論的に申し上げたいと思っております。
 三位一体の趣旨というのが、民間の力の活用であるとか、中央から地方へという考え方、さらには競争原理・選択というようなことを通じて日本の社会改革を図ろうということだろうと思いますけれども、必ずしも性急にこれをやることがいいのか悪いのか。特に、今年の4月に実施されましたベネッセ未来教育グループですが、研究センターと朝日新聞の合同の調査がございましたけれども、あれなどを見ましても、特に教育内容については、どのような地域でも同じ教育を受けられるよう、教育内容は国がきちんとやるべきだというのが70%です。地方による違いがあっても、教育内容は都道府県、市町村が決めたほうがよいのではないかというのはわずか30%しかないわけです。教育の競争原理ということにつきましても、盛んに最近はいろいろな新たな教育改革で、高等学校にしても、小・中学校にしてもコミュニティ・スクールなどで何とか活性化を図ろうという御趣旨だろうと思いますけれども、学校間の競争についても、学校が競争すれば学校の中に活気が生まれて教育がよくなるというのは30%ぐらいです。そして、学校が競争すると、成果を上げるために無理して結果は悪くなるのではないかというのが、保護者の意見としては70%ぐらいあるわけです。こういうことを見ますと、保護者の多くは、急激な地方分権化や学校間の過度の競争についてはあまり望んでいないのではないかということがわかります。
 しかし、ともあれこういうことで三位一体の社会改革が行われつつあるわけですから、これは受け入れるとして、やはり分権の問題については、都道府県47のうち、最大と最小の間では人口が20倍ぐらいの差があるわけです。特に市町村であれば、最大と最小の格差が、4万倍ぐらいに格差があるわけですね。ですから、規模の違いがあまりに大きくて、これは一概に論ずることがいいのかどうかという問題はございます。この間から問題になっております公立義務教育の学校教職員給与費、これは都道府県が2分の1、残りの2分の1は国庫負担。この2分の1というのは非常に大きな意味があって、やはり国が義務教育に対しては責任を持つのだということが大きな柱だったろうと私は思うのです。今までは、それによって義務教育の円滑な運営と教育水準の全国的な維持が図られてきたと思っております。やはり義務教育は国が責任を持つということで、今回の問題なども少し問題が早く行き過ぎているのではないかと思っております。
 私は、何といっても、分権化されようがされまいが、学校がやはりきちんとやる、学校長のリーダーシップを十分発揮すべきだということだと思うのです。学習指導要領、小・中学校に例えれば、小・中学校の学習指導要領で国の基準がきちんとできているのですが、それが都道府県教育委員会に行きますと、さらにそれが地方基準としていろいろな基準がつくられています。それがまた今度は市町村に行きますと、市町村基準がつくられています。だんだんと国の基準が通りが悪くなっていくような気がするのです。国の基準があって、地方基準があって、またさらにとなってくると、学校に来たときには、学校は本当に自主的に、主体的に教育がやれるのかどうかという問題がございます。
 確かに、この4番目に書いてございますように、「教育委員会は各公立学校が教育の成果を上げられるべく、それぞれの特色ある教育目標に向けた教育活動において一定の水準が維持できるよう、支援を講じるべきである」、この「支援を講じる」ということであって、教育内容をあまりにも、特に都道府県教育委員会、市町村教育委員会、中には指導主事の増員ということを強く求めている市町村や都道府県がございますけれども、やはり指導主事の仕事というのは、こういう言い方は悪いのですけれども、学校の独創的、創造的な、そういう経営に対してサポートする、そういう指導・助言であればいいのですが、指導主事の大きな仕事の一つは、地方基準の作成であり、その基準を各学校で守らせるということが強いのではないか。
 私も経験としてわかるのですけれども、例えば私も北海道の教育委員会におりましたので、北海道などというのは、東北6県と新潟を含めたような大きな地域です。函館と稚内、釧路などとは全然違うわけです。そういう教育内容にしても、これを一定に縛り得るのかどうか。その点はやはり、農村についても、農村も北海道でも水稲農業がございますし、それから畑作もありますし、酪農もありますし、漁業も、沿海漁業もあるし、養殖漁業もありますし、高等学校などはそういう地域の特色を生かすといっても、なかなかそれが生かされない現状にある。それは、やはり基準をあまりに指導主事が強く主張しながら、それを強引に進めていくというやり方が、私はあったのではないかと思います。そういうことから、国が責任を持つといっても、やはり学校長のリーダーシップの問題です。ですから、4番目にございますように、学校長のリーダーシップによる学校独自の教育目標を設定して運営していくことが望ましく、そのためには学校は自己責任、説明責任が求められるので、その責任を負う仕組みも当然考慮する必要がある。これは、確かに今、公立では学校評議員であるとか学校運営協議会などが設置されているところもございますが、必ずしもこれが機能的に動いていないのではないかという報告も聞いておりますので、こういうものを活用するのか。それもいいのでしょうけれども、やはり学校が地域住民のニーズだとか、それから保護者のニーズ、期待に応ずる姿勢を持って、学校長自らが住民に対して、または保護者に対して説明、自己責任といいますか、その学校の説明責任をきちんとできることが必要と思うのです。学校評議員や学校運営協議会がないところでも、学校長がきちんとそれをやれば、できないことはないのではないか。やはり学校長のリーダーシップというのが、私は一番大きい問題かなと思っております。
 特に私学の場合には、知事部局の私学部であるとか、いろいろな私学に関する知事部局の部課がございますけれども、こういうものを通じて都道府県の教育委員会と密接な連携をとりながら公立学校と交流を図るということは特に異論はございません。特に小さい県では私立が少ないということもあって、むしろそういうところは県の教育委員会にいろいろなことをお願いしたり、または研究会で一緒にそこに出席させてもらったり、伝達講習会に出席したりということをやっているところがあるようですし、やはりそういう小さな県では確かにそこのところの連携は非常にうまくいっているところもございます。しかし、やはり私学の自主性、独立性、私学教育としての特質が失われるおそれも若干ございます。また、教育委員会による経営に対する交渉、官僚統制の危険性も考えられます。確かに地方分権とともに、各事業の官から民へという流れの中での、私立学校の自主性、独立性が発揮できなくなるような事態というものは、時代の流れに逆行して、むしろ教育における地方分権を後退させることになるのではないかと思いますので、今の現行の機構のままで一元化を図るということは非常に問題があるなと私は考えております。
 以上、簡単でございますけれども、中高連からの意見ということで御了解いただきたいと思います。ありがとうございました。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がありましたらどうぞ。
 これは難しいところなのですけれども、さっきの私立幼稚園のほうは、教育委員会が私立幼稚園も含めて全部目配りをしてくれるほうがいいというニュアンスがありましたね。それに対して、中高連のほうは必ずしもそうではない、こう聞いたことになるのですか。

○田村委員
 子どもといいますか、生徒の発達の状況に応じて、画一的にやれる時期と、ある時期からその子を見て対応する多様な教育を展開させていく時期というのは年代的にあると思います。アメリカのホームスクールの範例なんかを見ていても、大体4年間ぐらいは画一的な教育をしたほうがいいという範例になっているのですね。ああいう国でも、つまり個人の個性を尊重するということを建前にしている国でも、やはり一定期間はその組織とか地域のメンバーとして必要なものは身に付けさせる、これは強制的にやっていいのだ、こういう話でございますので、私は、それは正しいなと思って見ているのですけれども、そういう意味で言いますと、幼稚園段階での教育の部分を考えると、そう多様なものは最初は考える必要はない。むしろそれは混乱を起こすのではないかという気がするのですが、ある一定の時期になると、中学、高校ぐらいになってきたら、できるだけ多様にしてあげるということが基本的に必要なことになってくるのではないか。大学では全くそうですから、成長段階に合わせて教育のシステムを考えるということになると、教育委員会が影響を及ぼすということをできるだけ少なくしたいという中・高の私立の発想というのはその辺から出ているという、こういうふうに御理解いただければと思います。

○鳥居部会長
 今我々は教育委員会の問題として審議をしているわけですが、今日お話を承った私立の問題というのは、特に私立小学校は全国で179校しかありませんし、私立中学校が全国で600ちょっとしかありませんから、都道府県ごとにそれを分けていきますと、非常に少ない数の学校をどこがどういうふうに見ていくのかという問題になって、さらにそれは戦後の歴史の中で私立の小学校の設置認可等については、それぞれの都道府県の私学審議会があるわけで、そっちの問題と両方を見比べながら問題を考えていかないといけないと思いますので、また別の角度から一度審議をしなければいけないと思っております。
 よろしければ、時間の関係もありますので、この御報告はこのぐらいにさせていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

〔日本私立中学高等学校連合会退席〕

○鳥居部会長
 前回だいぶ長く皆さんに続けてやっていただいたのですが、今日は15分休憩を入れようという事務局の提案がございまして、いかがでございましょうか。15分ほど休憩したいと思います。私の時計で今10分前ですから、3時5分まで休憩させていただいて、3時5分に再開いたします。よろしくお願いたします。

午後2時50分 休憩
午後3時02分 再開

○鳥居部会長
 予定の時間より3分ほど早いのですが、皆様既に着席しておられますので、次の御意見を伺いたいと思います。
 社団法人全国高等学校PTA連合会にお願いをしてございまして、連合会の会長でいらっしゃいます藤井久丈さんにお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○藤井意見発表者
 ただいま御紹介に預かりました全国高等学校PTA連合会の会長の藤井と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、全国高等学校PTA連合会会長として意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、教育委員会制度の意義と役割についてということでございますが、そこに意見をまとめて書いてありますように、今まで行われてきた教育という行政においては、中立性、安定性、継続性ということを確保するということは非常に大切なことだということを十分熟知しております。また、地域住民あるいは保護者という立場に十分こたえられるような今回の方向性に関しては基本的に賛成するという意見でございます。
 ただ、私どもよく直面する中で、教育委員の方が、特に今回の会議は地方分権という話の中でもございますので地方のことを申し上げますが、どうしても名誉職的であったり、あるいは専門的立場や地域住民としての立場といささか違っている方々の場合もございます。できれば、積極的な意見を述べられる方を期待しております。特に現在、高校生の教育環境は非常に激動の最中でございますし、小・中と大学に挟まれた子どもの育成を考えますと、高校生の健全育成、そしてこれからの学力という面からも、PTAの願いを強く反映される教育委員会を強く希望しており、ここにも書きましたが、教育委員の一部公募制の一層の活用ということもお願いしたいと思っております。
 2番目になりますが、首長と教育委員会との関係ということでございますが、やはり教育というのは百年の計と申しますか、10年後、20年後の日本の社会を考えた場合に、これからを先取りするような教育は大切だと思うのです。やはり首長の思いつき的なものである改革であって、朝令暮改的なものになってしまうということがないように、しかし、積極的な首長の意見を取り入れると同時に、不易と流行といったもののバランスをとって、現場での教育をしっかり見据え、それから保護者、地域を考えた中長期的な面でのすり合わせて決定していただきたいと考えます。首長と教育委員会はもっと親密になっていただきたいと思うわけでございます。
 3番目でございますが、市町村と都道府県の関係、あるいは市町村の教育委員会の在り方ということでございますけれども、これに関して特に私どもが危惧しますのは、小さな市町村教育委員会ということになった場合に、いわゆるレイマンコントロールと言われる中で、専従の方がいなかったり、たまたま役に当たったという人がいらっしゃると非常に困ると思うわけです。学校評議員制が進む中、なお一層、特に小さな市町村の教育委員会に関しては機能を充実させていただきたいと思っております。
 最後でございますが、学校と教育委員会との関係、それから学校の自主性ということでございます。このことに関しては、より保護者、地域住民の意見を学校教育に反映するということの中で、ますます学校評議員制が広く取り入れられていくことは非常に大切であると思うと同時に、やはりこれからの高校というものを考えてみた場合に、独自性、ある意味での特徴をしっかり出していくという意味で、学校独自の予算、それから予算等に関する校長の裁量権を十分に見ていただくということが今後必要だと思っております。
 実際に、私たちPTAがよく感じることでもございますが、学校の自主性・自律性を支援するという意味では、PTAが一番学校に近い社会教育団体というふうに自負しているわけでございます。教育の現場である学校だけではなくて、幾つかの学校や県が一つの運動を行う場合、学校とPTAそして教育委員会がかなり弾力的なかかわり合いをもって、オブザーバー的に見る場合や、計画、支援をする場合がよくございます。そういった時は、教育委員会が教育現場である学校やPTAと連絡をとって、積極的な関係をつくり上げていただきたいと思っております。
 資料としてつけましたのは、富山県の教育委員会、そして学校、PTA、それから地域社会が一緒になって行っている一つの運動の一例でございます。その中で、「高校生さわやか運動」というのがございます。これは高校生ではなく、中学生の例ではございますけれども、「14歳の挑戦」というものを特に注目していただきたいと思います。
 「高校生さわやか運動」というのは平成12年から始まったものでございますが、今の高校生には規範意識がないという意味から、当初は駅とかいろいろな街頭でPTAと学校の先生が高校生にあいさつをするように指導しようという、そんな気運から始まったものでございます。しかし始まってみると、高校生、特に生徒会中心となり、それと地域社会とが一緒になって、社会全体に働きかけるマナーアップの活動に変わってきました。その活動の仕方も、単に声かけだけでなく、駅などの掃除をしたりいろいろな企画が見られ、一つのあいさつ運動以上に規範を重んじようという社会全体の運動として成り立っていたわけでございます。これも単に学校とPTAだけではできないもので、地域社会、そして教育委員会の中の高等学校生徒生活指導委員会というのがございますが、教育委員会の中の一部門というふうに私は理解しておりますが、教育委員会の細かな連携の中で成り立ってきた事業でございます。ですから、高所から教育委員会が下を見ているだけではなくて、一緒に取り組んでいこうという姿勢が何より大切ではないかと思っております。
 もう一つ、資料に書いてありますが、「14歳の挑戦」でございます。これは県内の中学校2年生が、5日間いろいろな職場を体験し、生きる力を考え、体験学習をするわけでございます。これはやはりPTA、学校、教育委員会の紹介があり、地域のいろいろな場所、例えばスーパー、病院、それから消防署、警察署、市役所などいろいろなところがございます。そういったところで子どもたちが5日間、ボランティアとして体験学習をするわけでございます。これも一つの事業として、学校・教育委員会、そしてPTA、地域社会が一緒になったものでございますので、こういったような取組は教育委員会が非常に弾力的にいろいろな場合に合わせて学校教育に入り込んだ例でございます。こういったことは、教育委員会がより現場を見て、連携をとりながらやっていただきたいという趣旨でこれを添付させていただきました。
 以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら。
 どうぞ。

○稲田委員
 私、むしろこっちのほうにちょっと関心を引かれたのですけれども、その一番最後のページに「おやじの会」というのがありますね。いわゆるPTA、これは高校でも中学でもですけれども、そういうPTAごとにこういうようなものがあって、父親が教育に積極的にかかわっていこうというふうになさっていらっしゃるのか。と申しますのは、私、佐賀県なのですけれども、よく高校のPTAあたりに話しに行くのです。そうしますと、会長は男性だけれども、ほかは、ほとんど聞きに来ているのは母親なのですね。しかも、母親の何割かぐらいです。だから、その中からいわゆる高校生という一番大事な年代の子どもを教育する保護者の意欲が感じ取れないのです。この「おやじの会」というのがちょっと目を引いたものですから。もう一つは、こういう「おやじの会」というような組織の中から、こういう人たちの中から教育委員になってもらうというか、教育委員に選ばれるというか、そういうことも必要でしょうし、そういうところでちょっと補足説明をしていただければと思うのですが。

○藤井意見発表者
 実はPTA、特に高校のPTAでは父親の参加ということを、これは小・中でもそうでしょうけれども、呼びかけております。どうしても子どものことは学校のほうに任せておけばいいという意識が父親には従来からございまして ―最近はそうでもないのですが、親自身が学校のことをあまり知らないということがあるわけですから、今おっしゃったように、教育委員会のことも当然知らないのが実情でございます。ですから、できればどんどん教育委員会の中にもPTA、特に「おやじの会」のように、男性の方も入っていただくことが必要ではないかなと思っておりまして、より開かれた教育委員会ということも考えると、そういったことも一つお願いしたいと思っております。

○鳥居部会長
 そのほかに御質問はございますか。
 渡久山委員、どうぞ。

○渡久山委員
 「1」の「教育委員会制度の意義と役割」のところですけれども、教育委員が現在名誉職的な存在である、そして中央の動向に追従している地域もあるというような書き方をされているわけですが、これはなぜだとお思いなのですか。それと同時に、下に教育委員の一部公募制の活用というところがございましたけれども、これと関連して、ひとつもう少し説明していただきたいなというのが一つです。
 二つ目は、2ページ目の「4」にありますように、学校の独自予算、あるいは学校予算の校長の裁量の大幅な拡大、これは私もそうだと思いますけれども、同時に、やはり学校の予算における教育費の保護者負担というのが高等学校の場合も授業料を初め、たくさんあると思いますが、PTAとしてこの保護者負担の軽減とか、あるいはそういうものについての要請、要望などについてはどういうふうに考えていらっしゃるのか、それをちょっと教えていただきたいと思います。

○藤井意見発表者
 まず1番目は、ここ数年、高校生を取り巻く環境に関しては非常に変わってきております。完全週5日制の問題も大きいですが、大学のレベルアップというのも大きな問題でございます。大学のほうではトップ30とか課題が出ている中、今までですと小・中は「ゆとり」ということを考えておりました。それがいつの間にか「生きる力」になり、「確かな学力」というふうに毎年毎年変わってきておるわけです。これは特に高校生にとっては非常にしわ寄せになっております。そういったことを高校生の親は非常に実感しているわけでございますが、実際に教育委員会の委員になられる方、そしてまたその中での中枢となられる方は、ほとんどの方は子どもが高校生というよりは孫であったり、年齢的に実感としてとらえにくい人ではないかと考えております。そういった意味で、少し後手後手に回るというところも地域によってはあるのではないかと心配しているわけでございます。
 それから、保護者負担の問題でございますが、現在、学校によっては授業料もなかなか払えないという子どももいるといった学校もございます。また、学校格差の問題もある戸私は思っています。子どもの教育のため、子どもの学力向上のためどれだけお金を払ってもいいというような親もおりますし、それから、そうでない方もいらっしゃるわけです。学校格差と言うとちょっと語弊がございますが、少なくとも学校の特徴があると思っておるわけでございます。そういった中で、ある程度の全体的なことに関してはどうしても予算としていただきたい。保護者負担にはやはり限界があって、足並みがそろわないということがやはり学校によってはあると考えておりまして、そういった意味での予算というものをぜひ考えていただきたいということでございます。

○鳥居部会長
 そのほか御質問はございましょうか。
 どうぞ、池端委員。

○池端委員
 私もPTAのほうの関係で参加させていただいております。今、高Pの書いていただいておる中にはちょっとないのですが、今ものすごく多くなっております高校生の中途退学に関して高等学校のPTAのほうではどういうふうに今お考えになっておられるとか、例えばそれに対する活動であったり何らかの動きというものがもしありましたら教えていただきたいのですが。

○藤井意見発表者
 全国高P連といたしましては、特にそれに関しての具体的な運動をしているわけではございません。ただ、それぞれのPTA活動あるいは県でのPTA活動の中では、特に不登校の問題だとか中途退学ということに関してのいろいろシンポジウム、あるいは中途退学をした高校生に対する新たな学校の新設等の中で少し意見を述べたり、そういう運動には参加しています。現在のところ、全国高P連全体としては、特にこれを運動としておりません。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 ほかに御質問ありましょうか。
 津田委員、どうぞ。

○津田委員
 今の教育委員会との兼ね合いもあるのですけれども、例えば非常に具体的な話をしますと、大阪の公立高校で5人に1人は授業料免除、ある公立高校は全校生徒の4割強が授業料免除を受けているというような状態なのです。そういったところで、今、ひところに比べると高校生が2分の1ぐらいになっている。当然、知事部局というのか、地方税の入ってくる率というのは決まっているから、相当学校の数を減らすとか、あるいは昔の大人数教室、例えば高校生であれば、50人なら40人にしてやるほうがいい授業ができるのは間違いないと思うのだけれども、そういったところで経費負担というPTAの負担というのはかなり出てくるわけですよね。そういうふうな財政上の事情から見れば、首長のほうからそういった合理化案というのが出てくるのはやむを得ないと思うのですけれども、そういった場合、私も府の教育委員をしていたのですが、教育委員会としても、やはりそういうものに対しては対応せざるを得ないと思っているのです。そういった場合のPTAの立場というのは、とにかく親の負担が増えることは抑えようというのか、あるいはそういったリーズナブルに対しては対応できるような、そういうふうな態勢というのはあるのですか。

○藤井意見発表者
 これも一概には言えないのですが、確かにしっかりとした説明のもとであれば、かなりそういったものには賛同するというふうには思います。ただ、先ほどちょっと説明はうまくできませんでしたが、これは私の私論でもございますが、昔はたくさんの高校生がいた、そうすると、たくさんの高校があっても、その一つ一つの高校を見た場合には大体方向性がありまして、その生徒、子ども、親というものも大体一定の感覚や価値観がありました。しかし、今は比較的人数が少なくなってくると、一つの高校をとっても非常にいろいろなことを考えている、かえって方向性が定まらないということがあります。ですから、その中で、説明をかなりした上でないと合理的なところには持っていけないという運営上の問題もあるのではないかと考えております。
 もう一つは、これは地方の、私も富山という地方のPTAの県の会長でもございますが、いろいろと合理的に統合する中で、PTAもある意味では高校の改編や統合する中ではネックになることもございます。もう一つは、高校自身が地方の文化の中心であるというメッセージがあり、同窓会等いろいろなものがございまして、その中では理論的にはそうせざるを得ないと理解されもののなかなか時間がかかる、あるいは反対するといったこともあるかと思います。やはり高校というのは地域社会の文化の中心でもあったと考えるわけでございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、時間の関係もございますので、ここまでにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。お忙しいところ恐縮でした。

〔全国高等学校PTA連合会退席〕

〔社団法人全国公民館連合会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、次は社団法人全国公民館連合会にお願いをいたします。連合会の事務局長でいらっしゃいます石川正夫様からお願いをいたします。恐縮ですが、10分ほどでよろしくお願いいたします。

○石川意見発表者
 本日は、このような席で意見を申し述べる機会をいただきましたこと、冒頭お礼を申し上げたいと思います。
 今御紹介いただきましたように、私は現在、全国公民館連合会の事務局長という職にございますが、以前に学校現場あるいは市行政で長く携わったことがございますので、その経験を踏まえて意見を申し上げたいと思います。
 結論を先に申し上げますと、現行の教育委員会制度はとてもよくできた制度であり、抜本的な改正の必要はないのではないかと私は考えております。この制度の見直し論とか廃止論が、教育関係サイドよりも、地方においては首長部局サイドから多く出されていることについて、私は教育に携わった者として残念に思っております。制度を変えれば、あるいは制度をなくせば教育委員会が、あるいは教育が活性化するという考え方は早計な気がします。
 教育委員会制度の見直し、廃止論の根拠を私なりに現場的発想で推測すると、次の三つのケースがございます。一つは、それぞれの市町村において教育委員会あるいは教育委員会事務局の力量が軽視されているというケースです。二つは、学校現場やPTAから教育委員会が本当に信頼されていないというケースです。三つは、教育、特に社会教育の部門は、首長にとってとてもおいしい部分なのですね。その辺から廃止論あるいは見直し論あるいは首長部局移管論が出てくるのではないかと思っております。
 それでは、御指示のあった事項について順次申し上げます。私は箇条書きで出しておりまして、一つずつ説明すると時間がなくなりますので、「(1)」から「(4)」までの項目の中で幾つかを取り上げて申し上げたいと思います。
 「(1)」、教育委員会制度の意義と役割につきましては、3番目の教育委員不要論、このことについて少し経験から申し上げてみたいと思います。
 教育委員会は合議制のため、意思決定がおくれるという批判がございます。しかし私は、そんなことは決してないと考えています。教育委員会の教育執行方針や大きな事業の推進などは、時間をかけて決定されて何ら支障はないものであります。むしろ時間をかけて合議すべきものであると考えています。教育委員会が日々の解決しなければならない課題は、教育長をトップとする事務局が分担処理しますので、即決あるいは庁内会議などで手順を踏んで速やかに処理できます。また、それ以上に緊急な課題は、教育長の専決がいつも適切に行われる制度と認識しております。ただし、その際には、首長や議会筋、学校長、PTA会長との連携や、事務局から教育委員への資料や情報提供がしっかりと行われていることが前提でございます。教育委員は月に1回程度の会議に出席しますが、特に教育関係者以外の委員の場合、事務局からの資料の提供や状況説明が十分になされないと、委員としての責任が果たせなくなります。わからない、意見が言えない教育委員と言われるのは、多くは事務局の力量に問題があると思います。あるいは事務局が資料等の情報提供に後ろ向きの傾向がありまして、教育委員に事前に十分な情報が伝わらないことが原因だと私は考えます。教育委員会を活性化するには、まず事務局は事前に資料等の情報を教育委員にしっかりと提供することから始めるべきだと思います。また、月1回、2時間程度の会議では十分に審議ができない事項もありますので、会議の時間あるいは会議の時期の検討も必要でございます。ただいまお話のありましたように、教育委員は名誉職というお話がございましたけれども、私は名誉職でなければならないと思っております。名誉職であるからこそ、自覚と責任が生じるのではないでしょうか。教育委員会が停滞している、教育委員さんが機能していない、それはひとえに事務局の姿勢の在り方、事務局の力量によって決まってくるのではないかと考えております。
 2番目、首長と教育委員会との関係でございますが、これについては2点申し上げます。
 首長との信頼関係には、最も大事なのは情報の共有ということです。これは首長と教育委員会の関係でございますので、特に教育長との信頼関係が大切だと考えます。信頼関係を深めるという言葉は、教育の現場や教育行政の中で好んで使われますが、本当に信頼関係が育ったというためしは少ないのであります。それは、お題目だけで、信頼関係を深めるための具体策を持たないからです。年に1回、首長と教育委員が会合を持てば、信頼関係が深まるのでしょうか。そんなことでは深まらないと思います。最も大切なことは、日常の小まめな情報交換だと思います。そのために教育長が首長にできるだけ顔を合わせるとか、あるいは教育委員会の問題や学校の状況を報告するとか、時には助言を求めるなどの教育長の日常の活動が極めて大事なのではないかと思います。
 次に、「管理担当部長に首長部局の人材を」という項目があります。多くの首長部局の職員は、職員として教育委員会事務局に出向することを名誉とは考えておりません。「ああ、教育委員会にやられちゃうのか」、そういうふうにみんな受け取るのですね。また、多くの首長さんは、教育委員会事務局へ首長部局の最高の人材を出向させることはまれでございます。ですから、教育委員会を活性化するための大事な施策の一つは、教育委員会へ出向し部長になる職員は首長部局の最高の人材を充てるということです。さらに、その部長が数年後に首長部局に戻る際には、首長部局の最も重要なポストにつく。このシステムをつくり上げない限り、教育委員会と首長部局の連携はできないと思います。そうすれば、教育委員会へ出向する一般の職員も、ああいう部長が行って、ああいう仕事をして、また戻ってきたときには大事な仕事をしているのだということを目の当たりに見ますので、職員のやる気も大いに高揚し、教育委員会や教育委員会事務局の力量が云々されるということは少なくなるのではないかと思います。
 次に、社会教育は首長にとって大きな魅力ということなのです。教育委員会事務局の組織を見ますと、どこでも生涯学習課が筆頭課になっております。筆頭課というのは、教育委員会事務局のリーダーシップをとる課なのですけれども、実際には職員の配置、予算、さらには教育長を初めとして学校教育偏重の傾向がありまして、社会教育に対しては手を抜いている、そういう状況もあります。社会教育部門を首長部局へ移管しようという提案も、このような教育委員会内部の社会教育軽視の結果であると思います。それが、そのような口実を与えているように思えてなりません。首長は公民館等の事業や催しなどに多くの市民が参集することをよく知っております。そうした行事や催しには積極的に出席してきます。そこから首長直轄を考えるのではないかと私は思います。したがって、教育委員会は教育委員会から社会教育を切り離すのではなくて、むしろこの状況を生かして社会教育を推進することを考えるべきだと思います。
 「(3)市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方について」の中では、一番最初の「教育の地方分権は夢物語」の項目について説明をいたします。
 現行の教育委員会制度は、国・県・市町村という流れを大切にしていますが、教育の役割ということを考えると極めて大事なシステムだと思います。市町村が教育の地方分権などという夢みたいな言葉に惑わされてその気になってしまったら、結果的には子どもたちが不幸になります。誰の力もかりずに自前で子どもたちの教育を計画し、実践できるだけの力を持つ市町村は、全国的に見てそう多くはないのではないでしょうか。財政の保障もない、指導主事も社会教育主事もいない、施設設備も十分でないという状況では、責任は果たせません。やはり国民の教育は国が責任を持ち、地方を指導・助言し、励まし、すべての地域で子どもたちの基礎・基本の徹底を図られるようにすべきではないかと思います。それがなされた上で、初めて地域に根差した、地域に即した特色ある教育が展開されるのだと思います。
 4番目の「学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立について」では、「校長の権限の拡大よりその行使を円滑に」というところを説明をさせていただきます。
 校長の権限を拡大すれば学校経営が充実すると考えるのは、学校現場の管理職の経験のない方ではないでしょうか。新聞、テレビで報じられましたように、民間の校長先生のあの痛ましい出来事、あれを考えれば誰でもわかることです。校長には、法及び規則によって今でも十分過ぎるほどの権限が付与されているのです。にもかかわらず、校長の権限が円滑に行使できないのが問題なのです。その理由はいろいろありますが、一つは、学校が組織体としては未成熟な組織であるということです。二つは、教職員に組織の一員としての自覚が希薄だということです。三つは、教職員が、自分が一人前だと錯覚をするような雰囲気が学校、教育という仕事にはあるわけです。新卒がすぐ一クラスを責任を持って1年間担当する、このシステムがそういう職員をつくってしまいます。したがって、上下関係、命令系統などに甘さのあるのが学校です。今私が言っている学校というのは、公立学校のことです。私立の学校ではございません。ですから、校長の人間性や教育の熱い思い、子どもをかわいいと思う気持ち、職員一人一人を伸ばそうとする毎日の姿勢などが経営の基本になっているのですけれども、そういうような職員組織では、校長の権限を、今ある権限さえ行使することはできません。ですから、学校の中の先生方の意識を変えていく、それが大事だと思います。時には毅然と対応する、学校の組織のおきてを確立することが一番大事だと思います。
 今、私は全国公民館連合会という立場で話をしなければならないのに、その立場とは離れてお話をしましたが、これからは、子どもたちの状況等を見ますと、学校教育と社会教育のもっともっと深い連携が必要になるのではないかと思います。学校教育を補完する社会教育の機能、特に私は公民館でございますので、公民館活動に注目をしてほしいと思います。
 それから、よい子どもはやはりよい地域から育ちます。公民館はコミュニティづくりの核になっております。よい子どもは、よい家庭、よい学校、よい地域で育ちます。そういうことから、教育委員会の姿勢が学校教育へ偏重し、社会教育が手薄になることのないようにお願いしたいと考えております。ですから、教育委員会から社会教育を首長部局へ移管してスリムになるということは、自らの使命の一つを放棄することにつながると思います。一定規模以上の市町村においては、現行の教育委員会制度を維持しながら、学校教育、社会教育、家庭教育の充実にさらに努めていくことが大事ではないかと考えております。 以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは早速、御質問がありましたらどうぞ。
 小川先生、どうぞ。

○小川委員
 単純な質問なのですけれども、最初の「規模の異なる市町村が同一制度を採っている矛盾」とありますけれども、これをもう少し具体的に説明いただきたいのですが。

○石川意見発表者
 教育委員会制度は、人口1,500人の村も人口50万の市も同じなのです。しかし、事務局体制を見ますと、教育長が1人、事務局職員が2人なんていう村もございます。それでは、教育委員会の機能、教育委員会の職務権限を、責任を持って遂行していくことはできないと思います。やはり冒頭申し上げましたように、教育委員会には頭脳が必要です。その頭脳は、指導主事であり社会教育主事であります。あるいは首長部局と交渉をして予算を獲得してくる総務の仕事もあるでしょうし、そういう面から、そういう小さなところで大きなところと同じ制度の中でやっていくというのは、現場的には非常に大きな御苦労があるのではないかと思います。教育長が事務をやっているような村もあるわけですから。そういう意味です。

○小川委員
 今のような問題を改善するためには、どういう方策というものが考えられるのでしょうか。

○石川意見発表者
 私は、その方策についてはよく知りません。しかし、今、合併が非常に盛んに行われております。合併が行われなくても、教育については目的は同じなのですから、地域が、あるいは広い地域が一つになって教育委員会をつくっていくということも必要になるのではないかと思います。とにかく現行の教育委員会制度を、人口規模が全く違う市町村で当てはめていくことに無理があるというふうには思います。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 そのほかに御質問はございましょうか。
 渡久山委員、どうぞ。

○渡久山委員
 「(4)」の下のほうに「「地域に開かれた学校」という発想の間違い」というのがありますね。今、私たちの委員会では、学校を地域にどういう形で開いて、説明責任を含めて責任をとるか、あるいはまた、地域の教育をいかに学校が取り込んでやっていくかということで、地域に開かれた学校というのについてはメインになっておりまして、地域運営学校ということを含めて、地域運営協議会というものをつくって開こうという考え方に立っているわけですけれども、「間違い」というのはどういうことを意味しているのですか。

○石川意見発表者
 私は、「地域に開かれた学校をつくる」と言う学校が地域に開かれた例はあまり聞いていない、見ていないのです。一番大事な地域の中に学校があるという発想が抜け落ちているのです。学校は、公民館や、あるいはお店や銀行や、人々が暮らす一つ一つの家等と同じようにその地域にあるのです。ですから、地域に開かれるというその発想がおかしいのではないか、そういう考え方です。それと、「地域に開かれた学校」という学校は開かれていないのです。学校へ行った人がすぐ授業をのぞけるでしょうか。あるいは、教室の入り口に素通しのガラスがあれば、そのガラスに紙を張って授業をしている学校も全国的に見ればあります。「地域に開かれた」と言う前に、学校の中が開かれなくてはおかしいのではないでしょうか。こういうことを言っていると幾らでも時間が必要になりますのでこのぐらいにしますけれども、そういう意味なのです。「地域に開かれた」というよりも、地域と一体となった、そういう考え方が必要なのではないかと思います。地域に開いてあげるのだ、そういう考えがあったらやはりいけないのではないか、そういう考え方でこのような表現にしました。不適切であれば変えていただいて結構です。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 まだいろいろ御意見あるいは御質問おありかと思いますが、時間の関係で。大変貴重な意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

〔社団法人全国公民館連合会退席〕

〔社団法人全国公立文化施設協会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、続きまして社団法人全国公立文化施設協会からお願いいたします。本日は、同協会の松野幹夫事務局長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○松野意見発表者
 松野でございます。よろしくお願いいたします。
 私どもの団体は社団法人全国公立文化施設協会と申しますが、この名前から見ますと、ほかの芸術文化も含むように思われると思いますが、私どもの協会は、文化会館と言われている、いわゆる舞台芸術の場を会員とする社団法人でございます。私どもの団体から見た文化芸術振興施策の推進にかかわる首長部局と教育委員会の関係について、公立文化会館の所管に関連して御報告したいと思います。
 まず、私どもの公立文化会館の所管部局の現状でございますが、当協会加盟に限定させていただきますが、所管部局としては、会員1,398館中、首長部局が46.3%、教育委員会所管が53.7%、こういうふうになっております。私どもの役員は両部局の代表が出ておりますが、特に協会運営等には支障は来しておりません。これにちょっと加えますと、県立レベルで申しますと、約88%は首長部局という状況でございます。したがいまして、県レベルでは非常に首長部局の芸術文化行政はそちらの所管が増えているということが言えると思います。
 次に、事業執行についてでございますが、私どもの協会は、文化庁から委嘱を受けて、子どもたちに本物の舞台芸術を見せるという事業を委嘱されております。全国津々浦々の文化会館に一流のアーチストの芸術をお届けするという事業でございます。オペラ、歌舞伎、コンサート、すべての芸術をお届けしますが、その事業を今年、114市町村、114事業を担当させていただいております。この担当の部局は、首長部局が18で15.8%、教育委員会は96の84.2%、こういう状況でございます。これはどういうことかと申しますと、やはり都道府県レベルにお届けするのではなく、市町村レベルの会館にお届けしますので、数字としてはこういう数字が出ております。この事業の周知の流れですが、私ども、文化庁から委嘱を受けまして、まず都道府県に周知いたします。都道府県は、所管部局は首長部局が多くて、一部教委になっておりますが、それから市町村へ流すということでございますが、市町村レベルではやはり教育委員会が多い。首長部局は一部です。そして公立文化会館に周知するということでございます。そして希望が上がってくるということです。多少ねじれはございますが、特に事業執行に際しては問題は起きていないという状況でございます。
 次に、それぞれの所管の主な理由でございます。これは代表的な意見でございますが、教育委員会の所管としては、文化芸術活動は人間の精神活動、教育活動の成果をベースにするものであるので、教育委員会が主体となり、首長部局と連携・協力しつつ、学校教育を含む生涯学習として一貫性を持って推進していくべきである。そのため、公立文化会館も教育委員会所管の教育機関としてとらえる、このような理由が主な理由であると思います。このようなところの事業は、公民館的な事業、社会教育的な事業とか、それから公民館の中に舞台を持つホールを併設している場合とか、それから学校教育との連携を密接にしているとか、そのような状況がございます。
 次に、首長部局所管の理由でございますが、文化振興行政及び地域の文化芸術振興の拠点としての公立文化会館の所管は、文化行政が非常にまちづくり施策と大きな関連があるので、首長の主導のもと、すべての行政が関連する総合的施策として推進することが望ましい、このような主な意見でございます。事例としましては、首長主導のもとに文化の地産地消、これは地域で文化をつくり上げ、また地域で消費といいますか、地域の皆さんに見ていただくというようなことでございますが、そのような形で文化立県という事業、全体施策を推進しているという事例。それから、観光、まちづくり、地場産業振興の施策として、特産品をテーマとしたような音楽祭を実施している事例。それから、町長以下町民が創作演劇に全員出るのだということで、文化会館を町民全体の楽しみの場にしているような事例、そのような事例がございます。
 それぞれに考え方はございますが、私ども協会としては、今後の在り方としましては、上述のとおり、文化行政には様々な視点や側面があり、そのうちの何を重視するか、教育的側面とかまちづくりの側面によって所管や事業内容はそれぞれに異なってくる。いずれにしろ、自治体が文化芸術施策を効果的に推進していくためには、所管の別にとらわれない緊密な連携・協力のもとで、地域住民を巻き込んだ事業展開が必要だろう、そのように私どもはとらえております。
 以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞお願いいたします。
 どうぞ。

○横山委員
 非常に貴重なデータをお示しいただいて感謝しているのですが、1番の「所管部局の現状」ですが、例えば首長部局46.3%、教育委員会53.7%。この割合はどういう経過をたどっているのか。たぶんこれらは、新しい施設の場合には最初から首長部局があると思うのですが、ただ、経過的には、たぶんこれは教育委員会所管が変わっていったと思うのです。何年前でもいいのですが、5年前、10年前、この数字がもしあったらお知らせ願いたいのですが。

○松野意見発表者
 本日は持ってきておりませんが、データは入っておりますので、5年前、10年前、たぶんデータは出ると思いますので、お示しできると思います。おっしゃるとおり、教育委員会所管が首長部局に移っているということで都道府県は非常に早い時期に行っておりますが、市町村はまだ首長部局まで行っていない、そのような状況だと思います。

○横山委員
 もう1点いいですか。ここに「一部、ねじれはあるが、事業の実施に際して、特に支障はおきていない」。たぶんこの館の運営について、当然これはそんな黒字になるということはあまりないですよね。予算上の問題がありますよね。あと、たぶんこれは自主事業も実施をするのでしょうから、そういった財政的な問題ですね。この「一部、ねじれ」というのはどういう意味かはちょっとわかりませんが、実際、毎年度の予算を確保する意味で、教育委員会セクションにあったほうがいいのか、あるいは首長セクションにあったほうがいいのかは当然あると思うのです。この辺のいろいろな協会のほうで話をされるとき、その辺の感触というのはございますか。

○松野意見発表者
 この事業といいますのは、本協会が文化庁から委嘱を受けた事業についてのねじれでございまして、首長で受けて、それを実施するのは教育委員会だ、そのねじれということでございます。事業全体の問題は、やはり非常にこういう財政の厳しい時期でございますから、今、文化行政というのは、特に私ども会館の自主事業は非常に厳しい状況にございます。それをやはりいかにするかということが大きな課題ですが、職員の減とか、それから民間と共催したような事業の実施とか、それから冠事業、それからいろいろな宝くじ収入とか、そういうものの補助金を活用するとか、そのようなことをいろいろ考えておりまして、しかし、一時期のバブルの時期のように、派手で大きな花火を上げるような事業は実施できていないというのが現状でございます。

○鳥居部会長
 どうぞ。

○土屋委員
 意見と質問なのですが、質問としては、この首長部局にカウントされている中には、首長が直轄しているのと、それから例えば他の財団などをつくっているのとあるのだろうと思うのです。直轄している場合にはどういうケースがあるのか、もしおわかりなら教えていただきたいのが質問です。
 実は私どもも20年前に文化会館をつくったのでちょうど20周年なのですけれども、そのときこの種の論争がありまして、教育委員会所管ではだめだというので、そのときに財団法人をつくりました。まだ一般市では財団法人をつくるというのは非常に珍しい時期でしたけれども、おかげさまで今自主事業を110本ぐらい毎年やっておりまして、チケットの売り上げが2億2,000万ぐらい、会員は8,500人、こういう状況でやっております。会場の使用率も70%から、高いところで80%ぐらい。1日3コマですから、1日2コマは必ず使われている、こういう状況になっています。20年前にその論議が出たときに、ともかく教育委員会サイドではサービスが悪い、首長の部局のほうがサービスがいいのだ、こういう話があったのですが、もう一つは、経営を、例えばいわゆる地方公務員の身分を持っていない職員でないと単価が高くてサービスが悪い、こういう議論がありまして、私たちは今やっています4館を26人の職員で管理をしております。1,350人収容と500人収容のクラシックホール、200人収容の和物、それから400人収容の多目的ホール、それからジャズなど、26名の職員で運営しています。そういう点では非常によかったのかなと思っていますが、全体として、今、横山教育長の話にもかかわりますが、財団とか、あるいは直轄するほうが増えていっているのでしょうか。傾向としてはどんなものなのでしょう。

○松野意見発表者
 現状では、今持っておりますデータは平成15年度のデータですが、約半々で、直営が少し多いという状況です。主に都道府県レベルではほとんどが財団運営、市町村ではまだまだ直営が多いという状況でして、全体をならすとやはり直営が多いということです。
 今大きな問題は、御存じのように、各自治体で指定管理者という問題が出ております。この問題が非常に大きな問題でございまして、財団運営の場合の職員、ほとんどが首長が理事長の財団が多いのですが、そこを指定管理者にした場合、いかに雇用問題を解決するか。今ほとんどの財団が、3年後、18年4月を目指して指定管理者の導入を図っておりますが、非常に問題が大きい。今現在、何館かは指定管理者制度を取り入れておりますが、既存の財団がそのまま指定管理者を受けた、そのような状況が多いわけで、今後非常に大きな問題になってくるようなことが予想されます。10年前の平成5年のデータを見ますと、その時期は3分の1が財団、3分の2が直営でした。それが現在、約半々になっているという状況ですから、やはり財団が増えてはいるというデータは出ております。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、このあたりでよろしゅうございましょうか。ありがとうございました。

〔全国公立文化施設協会退席〕

〔全国史跡整備市町村協議会、意見発表者席に着席〕

○鳥居部会長
 それでは、次は全国史跡整備市町村協議会からお願いをいたします。本日は、全国史跡整備市町村協議会の副会長でいらっしゃいます、宮城県多賀城市長の鈴木和夫さんにお願いしてございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○鈴木意見発表者
 御紹介をいただきました全国史跡整備市町村協議会の副会長の多賀城市長の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 4項目にわたっての関係を御説明申し上げたいと思うのですが、まず最初に、全国史跡整備市町村協議会の取組について申し上げたいと思います。
 略して全史協と言っておるのですが、この全史協は昭和41年に結成されまして、主として史跡等の所在する市町村をもって組織されておりまして、加盟市町村が協調いたしまして史跡等の文化財の整備の推進を図りながら、文化財の保存と活用に資することを目的とする全国的な組織でございます。具体的には、加盟市町村の首長と教育委員会が緊密に連携を図りながら、文化財関係予算の拡充、研究事業等に取り組んでいるほか、文化庁とも協調をしながら文化財の保護事業の推進に当たっているところでございます。現在683市町村が加盟をしており、会長は奈良市の市長、そして事務局は奈良市の教育委員会となっております。本来ですと会長が御説明をするわけでございますが、所用がございまして、副会長の私から意見を発表させていただきたいと思います。お許しを願いたいと思います。
 次に、この全史協に加盟をしておる市町村における取組ということでございますが、これはやはり私たちが取り組んでおります多賀城の例をお話し申し上げまして御理解をいただきたいと思います。
 多賀城市に所在する多賀城跡を初めといたしまして、それに関連する遺跡が「多賀城跡附寺跡」として特別史跡に指定されておりまして、市内の各所に史跡が点在をし、「史都多賀城」の言葉にあらわしますように、由緒ある、歴史の町となっております。将来都市像といたしまして、「活力とふれあいのあるまち史都多賀城」ということを掲げましてまちづくりを推進しているところでございます。特に、文化財を適切に保存、活用することは、「史都多賀城」にふさわしい歴史的風土を生かしたまちづくり、それから地域の活性化のために極めて重要でございます。
 このために、本市では、特別史跡多賀城跡の管理活用につきまして、地域住民の理解と協力を得る一方、関係機関と調整を図りながら、整備計画の推進と史跡地内の維持管理及び歴史学習支援や愛護団体の育成支援に努めているところでございます。現在、首長部局としましては、文化財行政の運営のために必要な財産の取得や予算の執行という財政面から教育委員会を最大限支援しておるほかに、文化財の保存、活用を含めまして、広くまちづくりとの関係において教育委員会と密接な連携に努めているところでございまして、大きな成果を上げていると認識しておるところでございます。
 次に、文化財行政の重要性について一言申し上げたいと思います。
 文化財は、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことのできないものでございますと同時に、将来の文化の向上・発展の基礎をなすものでございまして、その適切な保存活用を図るということは極めて重要なことでございます。特に史跡、名勝などの土地に関する文化財は、所在する地域の文化とも密接な関連を有しておりまして、当該地域の歴史や文化を象徴するものとして、地域文化の向上・発展にとって極めて重要な財産でございます。これらの貴重な文化財の保護を図るためには、住民がふるさとの文化財に愛着を持ち、大切に守っていくことが肝要であり、住民の理解と協力を得まして、それぞれの地方公共団体で自主的・主体的な取組が望まれておるところでございます。
 また、さきの通常国会における文化財保護法の一部の改正がございまして、今度新たに導入されることになりました文化的景観や民俗技術など、地域に密接に関係した文化財の保護に当たっては、地方公共団体の果たす役割というものがますます大きくなるものと考えております。これに伴いまして、地方公共団体において文化財行政を担当する教育委員会の果たすべき役割もますます重要なものになっていると認識をしておるところでございます。
 次に、文化財行政における首長と教育委員会との関係の在り方についてお話を申し上げたいと思います。
 まず、本協議会の活動や市政を通じまして、私といたしましては、次のような観点から、原則として首長と教育委員会というものは密接に連携を図りながら、教育委員会が文化財行政を担当していく必要があると認識をしております。
 一点目、文化財についての理解を深めながら、それを尊重する態度をはぐくむためには、学校教育や社会教育と一体となりまして、文化財保護の普及啓発、そして人材の育成に取り組んでいく必要がございまして、学校教育等とともに文化財行政を教育委員会で担当することが重要であると認識をしております。
 二点目、文化財は貴重な国民的財産であり、一たん滅失、毀損すれば原状復興が困難な性格のものであるだけに、教育、学術及び文化に関しまして識見を有する者で構成される教育委員会は、適切かつ慎重な行政を遂行する上で制度的担保となるということでございます。
 三点目、首長部局の行う開発行為との均衡を図る観点から、独立した行政委員会である教育委員会に担当させることが適当であること、また、首長部局が正当性を得て開発行為を円滑に推進する上においても、教育委員会において適正に審査をしておく意義があるということでございます。
 今後とも教育委員会にはしっかりとその機能を発揮してもらいながら、首長の側といたしまして、教育委員会への支援と密接な連携を図っていくことによりまして、貴重な国民的財産である文化財の保護という目的は相当程度達成されるものと認識をしておるわけでございます。
 以上で、首長と教育委員会の関係についてのお話を申し上げたわけでございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞお願いいたします。
 どうぞ、門川委員。

○門川委員
 京都市の場合は、全国の国宝の25%、重要文化財の15%が京都市内にあるのです。町全体が文化財みたいなところでして、文化市民局というのを市長部局に設けまして、文化財保護行政も含めて、市政の最重要課題の一つとしてやりながら教育委員会とも連携している。そのことについて何ら支障はないと私どもは思っておりますので、いろいろな形が都市によってあっていいのではないかと思うのですけれども、御意見があればおっしゃっていただきたいと思います。

○鈴木意見発表者
 多賀城、それだけの特別史跡を持っておるわけでございますけれども、財政的にはそう大きな自治体ではございません。そういう中で、市長部局の中にそういう課を設けるというぐらいのまだ余裕もございませんし、専門的なそういう知識を涵養するというような、それまでの範囲までもなかなか難しい課題があるのではないか。今、特に行財政の改革の中で、いろいろな面での問題を整理していかなくてはならないという課題がございますので、そういう意味におきまして、先ほど申し上げましたように、教育委員会という独立機関というものが果たす役割というものが非常に私は重要になってくるのではないかなという感じがしておるところでございます。

○門川委員
 市長部局において文化財保護審議会などが置かれ、局体制でやっていくということですので、この辺もやはり地方の事情に応じて柔軟にしておかないと。政治的な中立性とか継続性とか安定性とかということとは学校教育では重要ですが生涯学習と文化財行政はちょっと違う部分でございますので、地方の独自色があってもいいのではないかなということを意見として申し上げておきたいと思います。市長のおっしゃることはよくわかります。

○鳥居部会長
 多賀城の場合は、地図で見ると、仙台市に多賀城市と塩釜市がくっついて、隣り合っている。実は町村合併と今後の教育委員会の問題を考えるとき、これは切り離して考えられない問題なので、門川委員からも何か京都の御経験、また、市長からも多賀城についてはどんなふうに考えていったらいいのか、お話を聞かせていただければと思います。

○鈴木意見発表者
 今、宮城県の中でも合併協議会というものがつくられまして、5~6ヵ所で合併の話が進んでおります。ただ、多賀城を取り巻く環境の中では、研究会はつくっておりますけれども、まだ合併協議会をつくるまでの段階には至っておりません。ただ、私たちの関係で2市3町が一番緊密な関係を持っておるわけですが、私たちの隣が塩釜市、そしてそのお隣が松島町ということになっておりまして、いずれ合併の問題が出てきますと、これらの問題をどのように包括しながらどのような取組をしなければならないのかということは、今後、合併協が発足した時点での一つの大きな部門にならざるを得ないのではないかと思ってもおりますし、県がまたどのような支援策というのですか、取り組み方を出していただけるのか、今のところわからない問題がございまして、今後の課題として私たちもその問題はやはり取り組まなければならない重要課題の一つではないかなと認識をしております。

○門川委員
 広域化という意味ではよくわかりました。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 そのほかに何か御質問は。 ―よろしゅうございましょうか。
 よろしければ、この辺で終わりにさせていただきたいと思います。どうも今日はありがとうございました。

〔全国史跡整備市町村協議会退席〕

○鳥居部会長
 以上で関係団体からのヒアリングを終了いたしましたが、事務局から委員の皆様に報告をしてもらう事項がございますので、初等中等教育局の初等中等教育企画課長の前川課長から御説明をお願いいたします。

○前川初等中等教育企画課長 それでは、御説明申し上げます。
 資料1に即しまして、「義務教育の改革案」につきまして御説明申し上げたいと思います。これはタイトルに「義務教育の改革案 平成16年8月10日 文部科学大臣河村健夫」とございますように、8月10日、河村大臣としての私案という形で提示されたものでございます。
 現在、三位一体の改革が議論されておりまして、その一環として義務教育費国庫負担制度について様々な議論が行われているわけでございますが、この問題につきましては、河村大臣がかねてより、財政論ではなく教育論として、義務教育制度の在り方の一環として議論することが必要であると主張されてきたところでございます。しかし、一方、教育論として我が国の義務教育をどのように考え、今後どのような方向に持っていこうとするのか、文部科学大臣としての考え方がはっきりしていないではないかというような指摘もあったところでございまして、そのようなところから、去る8月10日、大臣として新しい時代の学校像について自らのお考えを表明したものがこの「義務教育の改革案」でございます。
 一方、義務教育の改革につきましては、平成15年3月の中央教育審議会の答申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」におきましてもその検討の必要性が提言されているところでございまして、その後、平成15年5月に「今後の初等中等教育改革の推進方策」について諮問が行われ、現在、初等中等教育分科会において審議が行われているところでございます。また、教育委員会制度についても、当部会で御審議いただいているところでございます。このほか、大臣の私的懇談会として設けられました「これからの教育を語る懇談会」におきましても様々な検討が進められているところでございまして、これらの議論の動向を見据え、かつ、これからの義務教育がこうあってほしいという視点から広く国民の皆様の間で議論していただくという趣旨で、一つのいわばたたき台として整理し提示された、そういうものとして御理解いただきたいと思います。
 この資料に即しまして、改革案の具体的な内容について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
 まず、大きな第1点が、「義務教育制度の弾力化」ということでございますが、その第1が、義務教育の役割を再確認し、その到達目標を明確に設定するということでございます。これは国民に共通に必要とされる確かな学力、豊かな心、健やかな体を養うという義務教育の役割を再確認し、義務教育の9年間で身に付けるべき資質・能力の最終の到達目標というものを明確に設定するという趣旨でございます。具体的には、学校教育法や学習指導要領の見直しということになってまいると思います。その上で、義務教育の具体的な在り方につきましては、地方が多様な教育を主体的に実施できるように制度を弾力化するということでございまして、6・3制の小・中学校の区分につきましても、その接続の在り方につきましては、地方の実情に応じて、6・3以外の区分あるいは中高一貫教育といったものを可能とするなど、柔軟な制度にしてはどうかということでございます。
 大きな2点目の「教員養成の大幅改革」でございますが、まず、専門職大学院などの設置ということでございまして、教員の資質の飛躍的な向上を図るために専門職大学院を設置し、大学院レベルで高度かつ実践的な教員養成を行うという体制をつくっていってはどうかということでございます。
 また、教員免許の更新制の導入でございますけれども、これにつきましては、教員免許に一定の有効期限を設け、更新時に教員としての適格性や専門性の向上を評価していく、こういう仕組みを導入してはどうかということでございます。御承知のとおり、教育改革国民会議で提言があり、その後、中教審においても御論議いただいたという経緯がございますけれども、改めてこの問題について考えていただきたいという趣旨でございます。
 3点目が「学校・教育委員会の改革」ということでございまして、既に制度化され、また、今後制度化される学校運営協議会、学校評議員、これらの仕組みを全国化していく、全国的な設置を促進していくということ、あるいはすべての学校が教育活動や学校運営の成果について評価を行い、その結果を保護者や住民に公表する取組。また、教員の評価を徹底し、それを処遇に反映させる。問題のある教員は教壇に立たせないような仕組みをさらに強化していく。さらに、教員の人事あるいは学級編制に関して、その権限をできる限り地方や学校へ移していくという観点で制度改正を考えていこうということ。また、この部会でも御議論いただいておりますような、教育委員会の在り方についての見直し。こういった論点がございます。
 4点目が「国による義務教育保障機能の明確化」ということでございまして、義務教育の根幹を教育の機会均等・水準確保・無償制という3点に集約した上で、これらにつきましては国が責任を持って担保するという考え方を打ち出しております。そのためには、まず国の義務教育に関する基準というものを必要最低限のものとなるように見直し、その上で地方が創意工夫を生かして義務教育を実施するというような仕組みに変えていこう。それと裏腹な関係のものとして、義務教育費国庫負担制度につきましては、義務教育の根幹を支える財源保障としての役割を明確にし、その上で、その財源の使い方については地方の自由度をさらに高める観点から改革を進める、このような内容のものでございます。
 2ページ目、3ページ目は、この柱のそれぞれの説明文になっております。
 今後、この案をたたき台といたしまして、当中央教育審議会などの場で御議論いただき、できるだけ速やかにその結果を踏まえて改革に着手してまいりたいと考えているところでございます。
 以上でございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 今御紹介いただきました河村文部科学大臣の改革私案につきましていろいろとお考えがございましょうが、これ自体が大臣の私案でありますし、また、今御説明の中にありましたように、大臣の私的諮問機関である「これからの教育を語る懇談会」のほうでも、この中の幾つかのテーマについては議論が行われているところです。それからまた、今御説明がありましたように、中教審に既に包括諮問の形で諮問を受けている事項が一部オーバーラップしております。さはさりながら、これだけのものが出ましたので、いずれの時期にか、スペシフィックな、特定のテーマに焦点を絞った諮問もあるいは中教審におりてくる可能性もあると思っています。そういうことを踏まえて、残った時間わずか数分でございますけれども、何か御意見がありましたら伺っておきたいと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ、土屋委員。

○土屋委員
 御専門の方にお聞きしたいのですが、小川先生などにぜひお聞きしたいのですが、学校評議員制度ということが今議論されているわけですが、昔、PTAというのはそういうことも視野に置いた組織ではなかったのでしょうか。歴史的にはどうなのでしょうか。どなたでも結構ですが。

○鳥居部会長
 PTAを代表して池端さんから。

○池端委員
 評議員というような形のものではないです。ただ、もともとはアメリカから来た、PTAという、子どものためにというようなことで、保護者が学校とうまく連携するなり連絡を保ちながら教育活動、社会教育のほうにもいろいろありますけれども、評議員というようなものとはまた異なります。

○鳥居部会長
 田村先生から解説を。

○田村委員
 学校評議員制度を立ち上げたときの議論を御紹介申し上げるのですけれども、これはペアになっているわけです。つまり、校長の自主性・自律性を高めるという、それをしてもらおう。それは校長だけが専権で何でもできるという形にするわけにはいかないだろう。そこで評議員制というものを組み合わせて、そして校長の自主性・自律性、学校の自主性・自律性を高めていこうという、制度としてはそういう考え方で議論されていたわけですね。ですから、評議員制だけが意味があるわけではなくて、自主性・自律性を高めるということがないと、評議員制度の意味がほとんどない。そこで、最初は強制的にやるような形はとっていないわけです。

○土屋委員
 私も子どもを3人育てまして、PTAの役員なんかをやったのですけれども、昔はペアレンツ・アンド・ティーチャーが様々な形で、今言われているまさに開かれた学校に対して、父母がいろいろな意味で意見を言ったり参画したりするということから出発して、何となく学校の下請機関で、学校から言われたことを伝達する伝達機関になったり、そういうふうな感じで受けとめていました。
 ただ、私が現場で見ていて、校長先生の自律性とか自主性を高めるということの試みは、言ってみれば一定の校長先生に経営者としての立場を自覚していただいて、様々な、人事も経営も含めて総合的な経営をやってもらおうという趣旨なのだろうと思いますけれども、そういうことはむしろ予算だとか人事権をより保障するという方向でやって、今、開かれた学校、地域の意見を聞くというふうなものと必ずしも ―ここでこれから議論でいいのですけれども ―どうも何か一致していないような、屋上屋を重ねているような気がしますね、評議員制度というのは。大体、教育委員にだって人を得ていないというのに、評議員にそんなに人が得られるのか、人材が得られるのかどうか。武蔵野なんていうのはかなり、自分で言うのもおかしいですけれども、そういう見識のある方が大勢いらっしゃると思うのですけれども。だから、PTAとは違った形で、何か民間の、いわゆる私学の理事会だとか、あるいは金も出すというような、そういうふうな立場でできるのかどうか。そういうふうなことを申し上げておきます。

○田村委員
 屋上屋を重ねるような結果にならないようにしなければいけないということだと思うのです。議論の中で出てきたのは、イギリスの公立学校の仕組みが理事会という制度で、いわゆる学校評議員制度に似た仕組みを工夫して、学校の自主性・自律性を高めているという実態があるわけですね。ですから、これは校長さんが評議員を選ぶということになっていますから、うまくいくかどうかはまさに校長にかかっているのですね。だから、それができないというのは、それだけの校長の力量がないという評価になってしまうということになりますから、またいろいろ考えなければいけないのだろうと思うのですけれども。実は、自主性・自律性を高めるというのは、校長の力量にかかわって学校を改善していかないと改善できないという、こういう発想がもとにあるのですよね。

○土屋委員
 その校長に金も人事権もなければ、何のために評議員会を開くのか、こういうことになりますね、普通の場合には。

○田村委員
 それを並行してやっていかないと成果が出てこないと思いますね。

○土屋委員
 なかなか難しい。試みですから、けちばかりつけてもしようがないのですけれども。

○鳥居部会長
 千代委員、どうぞ。

○千代委員
 私のほうも市町村の一つでございますけれども、学校評議員を選ぶときに、現在、私のところは3万人の町でありますけれども、校長が評議員を選択する場合においてやはり人事の問題が出てまいりますね。校長さんが2年、3年でかわってしまう。このときに校長に権限を与えても、その地域の中に評議員に適する人がいるかどうかの判断ができるような経験もなければ知識もない、こういうのが現実では実情なのです。これは永続性もあるのですけれども、継続性もあるのですけれども、校長の任期が2年、3年では、次の校長が来たときの問題もありますし、私どもは、学校評議員制については、先ほど武蔵野市長がおっしゃったように、かなり自律性・自主性という点だけで語られると問題ありというように受け取っているのですが。

○鳥居部会長
 どうぞ。

○池端委員
 実際、一つの公立の中学校の校区に、その下に地域の、小さな地域でしたら一つの中学校の子どもが全部地元の地域の小学校から、1園1校から1中学校へというケースもあるのですが、大きい中学校になりますと、10ぐらいの小学校、またその下に園があるというような形になるところもありますので、そうなると、それこそ評議員の取り合いといいますか、誰だって地域のしっかりした人を評議員で欲しい。そうなりますと、中学校も、各小学校も、幼稚園も欲しいということで、指名される方が複数の校園の評議員を兼ねなくてはならないとか、また、反対にその一人の人材をどうするかというので各校園長さんが調整をかけるということも実際は起こり得るという話は我々ちょっと聞くところではあります。

○鳥居部会長
 学校評議員の話が今出ましたが、この後、学校運営協議会が本格的にスタートしていくと、そこに一つの進化が見られるだろうと思うのですけれども、どうでしょうか。

○田村委員
 校長先生が学校評議員を選ぶときに、自分に都合のいい人ばかり選んだら意味がないのですよね。だから、まさにもしそういう問題があるとすれば、そこを何とかしていかないと、いつまでたっても自主性・自律性というのは学校に期待できないということが起きてくるのではないかと思うのです。ですから、制度としてはなかなかうまく機能しないというのは実態として認めなければならないのかもしれませんけれども、ではそのままにしておいたらどうなるのかという、各学校が自律性を高めて、自主性を高めて自分の学校のパフォーマンスを改革していくという、こういう努力がいつまでたっても生まれてこないのではないか。これはどこを起点にするかというと、やはり起点はその学校にしかないと思うのですよね。外から幾ら言ったってだめだと思うのですよ。そこのところはどうでしょうね。

○鳥居部会長
 では、門川委員、それから土屋委員、お願いします。

○門川委員
 地方行政視察、ぜひ京都に来ていただきたいなと思ったのですけれども、ちょっと距離が離れておりますので。京都は政治的な対立も、非常に難しいところですので、当初、土屋委員のおっしゃったとおり、学校評議員制度とか、あるいは学校運営協議会とかというのは非常に難しいなと本音で思いました。しかし、今、地域ぐるみで子どもに焦点を当てて、みんながその地域の子どもをどう育てていくのか。そのために学校はどういう役割を果たすのかということを真剣に考えていくために、学校評議員制度や外部評価を大胆に全校で一斉にやっていこうとしております。5年ほど前から先進的な学校ではやってきました。そして、すばらしい成果を上げつつあります。本当に学校運営にどんどん地域の人が参画していただいている。今日、田中雅道さんという方が幼稚園の園長さんとして意見表明されましたが、あの方も地域の小学校の学校評議員であられる。外部評価を含めた学校評価システムとして、保育園の園長さんも幼稚園の園長さんも保護司さんも、どちらかというと外野席で学校のことを外から批判しておられた人も、中で批判もしていただき、協力もしていただく、そんな関係が進みつつあります。紆余曲折があろうかと思いますけれども、今、公教育が地域、保護者と双方向の信頼関係を高めていき、地域ぐるみの子育てをしていく、あるいは真の開かれた学校運営をしていくというためには欠かせない制度ではないかと思います。学校運営協議会の設置も現在、京都市で進めております。したがって、このことについては大賛成で、この改革案は全部賛成なのですけれども、1点だけよろしいでしょうか。
 教員養成の大幅改革ということで、専門職大学院あるいは教員免許更新制の導入、この2点についても賛成でございます。1点だけですけれども、今、全国の教育委員会が教員採用試験の真っ最中なのですけれども、小学校の教員が取り合いなのです。京都市はおかげさまで、大学の町ですので5倍近い競争率を維持しておりますけれども、近隣府県は3倍を割っています。今、40代、50代の教員のいろいろな指導力の問題が言われていますけれども、全国的に、あの当時、教員免許を持っていたらほとんどが採用された、1.数倍であった京都で採用試験に落ちても他府県でほとんど採用されたという時代が再現されかねないということに、危機感を持っています。臨時的にも例えば教員養成大学の小学校教員養成をふやすとか、編入を大幅に認めるとかしなければ、本当に、言葉は悪いですけれども、一番大事な小学校教員に「でもしか層」がまざってこないとも限らない。これは、あと2~3年たてば大量退職時代が来る。それで、60歳済んだら65歳まで再任用で勤めていくという制度があるのですけれども、高校が一番希望者が多いのです。中学校は少ないのです。小学校は極端に少ないのです。小学校は大変なのです。そういうことですので、今本当に小学校の教員養成を緊急の課題として、例えば京都の立命館大学でしたら、小学校の教員養成課程はありません。ですから、大学の小学校教員養成のある通信課程と連携して、4回生のときにそこと連携してダブルスクール的な形で免許をとるというようなことをしていただいた、これも一つの前進ではありますけれども、これは大学審議会のほうの関係があると思うのですけれども、現場を預かっている者としましては、教員養成の最大の課題ではないかと思います。よろしくお願いしたいと思っています。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 土屋委員、先ほど手を挙げられましたけれども。

○土屋委員
 一つだけ、せっかくですから田村先生にお尋ねしたいのですが、私学では校長の任期というのはどのくらいですか、平均して。ざっと。

○田村委員
 統計をとったことはないですけれども、2~3年ということはあり得ないですね。5年か10年は普通だと思います。

○土屋委員
 そうですよね。私も手元に統計がないから確たることは言えないのですけれども、武蔵野市内にある私立の小・中学校と高等学校などの校長先生を見ますと、大体10年ぐらいやっている方が多いのですよね。また、理事会あり後援会ありで、校長が実際にかなり権限を持って、財源的なものも自分で理事会と交渉して調達するとか、そういうことをやっていらっしゃいますよね。私は、そういうことが果たして公立の学校でもそれだけの保障ができるのかということが、やはり評議員が成功するかしないかみたいなところの一つのポイントになるのではないかという気がします。評議員制度をつくっても、やることがなければしようがないわけですから。校長にとってお荷物になるだけですから。

○鳥居部会長
 今日は組織論の話がいろいろ出たのですけれども、森田先生、何か。

○森田委員 コメントするというよりも、素朴な質問をさせていただきたいのですけれども、そもそもPTAのファンクションとかミッションというのは一体どういうものだったのかということと、それが、先ほど土屋委員がおっしゃいましたけれども、評議員制度に屋上屋を重ねるという問題とも重なりますけれども、機能的に違うものなのかどうか、あるいは重なるところがあるとしたら、評議員制度を全国化するよりも、むしろPTAも活性化して同じような機能を担わせるようなことができないのかどうか。それができないとした場合には、今度はどういう役割分担なり関係になるのか。その辺が、この制度を考える上で一つポイントになるような気がするのですが、教えていただければと思います。

○鳥居部会長
 まず、池端さんと門川さんに。

○池端委員
 PTAにかかわっているもので、これは自分たちの問題だと思っておりますことが、随分長い間PTAというのは、それこそ動員団体に成り果てていたのではないかというところが反省点です。とにかく何人人数出してくださいというような形で、何かあればPTAに頼めば打ち出の小づちのように以前は、今はもうないですが、お金であったり、また、人を出せた。ということは、一般の保護者の方々にすれば、動員されてあるところへ行きました、行ってきましたということが、PTAの仕事で、行って帰ってきたというので、終わったとなる。そんなものは本来の我々の仕事ではないということで、今実際は、行けないものは行けない、動員はかけない、それより自分たちですることは何かあるであろうということを目下いろいろな単位PTAあたりでも考えていただいております。
 それと、評議員のことですが、それに関しましても、学校の校長先生の考え方の差で、ぜひともPTAの役員さんを評議員の中に入れたいという先生もいれば、反対にPTAは入ってほしくないというふうにはっきり申される先生もおられます。本当に校長先生の考え方一つとしか申しようがないということが現実です。
 それと、先ほど校長先生が2年、3年でおやめになる、また転勤されていくというお話もございましたけれども、これはPTAも同じでして、1年単位で会長がかわる。そうなりますと、校長先生が3年おられる間にPTAの会長が3人かわるということも現実にあるわけですから、では誰をPTAから選んでいいのかといったときに、校長先生といたしましても、毎年かわる会長をというのは、それこそ名誉職化になりますから、あえて避けたい、PTAはPTAでもともと中にあるものですからという考え方をとられるケースもございます。

○鳥居部会長
 だいぶ時間がなくなってきましたけれども、門川さん、ちょっと。

○門川委員
 よくよくおわかりの上でおっしゃっていると思うのですけれども、PTAというのはあくまでも親と教師の組織です。自主的な社会教育団体です。この学校評議員制度とか、学校運営協議会というのは校長や教育委員会が任命する学校運営のためのものです。PTAが教育のこと、いろいろ学校の校長の権限に属することを言ったら、場合によって教育介入ということで拒否しなければならない場合もあると思うのです。もう一つは、地域との関係です。地域、学識経験者、そして当然、私は親、PTAの代表も入るべきだと思うのですけれども、学校評議員や学校運営協議会とは枠組みの違う、また目標の違うものではないかと思います。

○鳥居部会長
 PTAの「A」が「アソシエーション」で、要するに親全部が集まるのがPTAの総会ですから、そのアソシエーションと、それからごく少数の人間が構成するカウンシルである評議員会か学校協議会かとの相互のファンクションの働き方をこれからどうするかというのは、日本人がこれから自ら学んでいくことなのではないかなという感じを今受けましたけれども。

○森田委員 今、門川委員がおっしゃったことは、ある程度は存じているつもりでございますけれども、ただ、可能性といたしましては、PTAがそもそも何だったのかという話と、親と先生だけにメンバーシップを限る必要があるのかどうかとか、そういう観点からの検討も可能性としてはあり得るのではないか。今お話を伺っていますと、評議員制度も必ずしもうまくいかないのではないかという、そうしたトーンのお話もございましたので、その意味で言いますと、教育委員会制度も含めて、私がここで申し上げていることですけれども、いろいろな制度の可能性というものを探ってみるという方向もあってもいいのではないか。それを全国化するというと、屋上屋ではありませんけれども、いろいろと問題をまた重ねるのではないかという気がしないでもない、そのことを申し上げたかったということでございます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 時間がまいりましたので、このあたりでよろしゅうございましょうか。だいぶ時間が過ぎましたので、ここで終わりにさせていただきたいと思います。

 最後に、今後の具体的な日程について事務局からアナウンスがございます。

○山田生涯学習企画官 今後の日程につきましては資料11でございます。次回は来月6日に、静岡県教育委員会、静岡市教育委員会、岡部町教育委員会と岡部町立岡部中学校を地方視察として予定しております。
 その次につきましては、来月の13日の2時から4時まで、当グランドアーク半蔵門「華」で開催の予定でございますので、よろしくお願い申し上げます。

○鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、次回は9月13日でございますので、よろしくお願いいたします。また、今アナウンスがありましたとおり、9月6日には静岡県の視察がございます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

午後4時44分 閉会

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生涯学習政策局政策課