地方教育行政部会(第9回) 議事録

1.日時

平成16年8月9日(月曜日) 13時30分~16時

2.場所

東京會舘 ロイヤルルーム(12階)

3.議題

  1. 地方分権時代における教育委員会の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 鳥居部会長(会長)、浅見委員、木村委員(副会長)、田村委員、渡久山委員、山本委員、横山委員
臨時委員
 吾妻委員、池端委員、大澤委員、小川委員、片山委員、門川委員、佐藤委員、千代委員、宮崎委員、森田委員、森脇委員

文部科学省

 結城文部科学審議官、田中生涯学習政策局長、銭谷初等中等教育局長、板東大臣官房担当審議官、藤田生涯学習政策局担当審議官、月岡生涯学習総括官、樋口初等中等教育局担当審議官、山中初等中等教育局担当審議官、久保生涯学習政策局政策課長、山田生涯学習企画官、前川初等中等教育企画課長、角田初等中等教育企画課長補佐(その他関係官)

5.議事録

午後1時30分 開会

○ 鳥居部会長
 それでは、定刻でございますので、ただいまから中央教育審議会教育制度分科会地方教育行政部会、第9回を開催いたします。
 皆様、御多忙のところを御出席賜りまして、誠にありがとうございます。
 本日は、関係団体からのヒアリングを予定しております。本日は9団体をお願いしてありまして、2時間30分の審議時間の中で9団体お願いいたしますと、1団体15分程度で進めていかなければなりません。このため、大変お忙しい中を、全国各地から意見陳述のためにおいでくださいました方々に、10分という大変失礼なお願いなのですが、意見陳述をお願いいたしまして、その後、委員の皆様から5分程度質問をお願いしたいと思います。
 また、質問等十分にしきれない場合もおありかと思いますが、後ほどいろいろと書面のやりとり等で補っていただきたいと思いまして、質問は5分でお願いしたいと思っております。
 早速でございますが、1番目は、指定都市教育委員・教育長協議会の副会長でいらっしゃいます仙台市教育委員会教育長の阿部芳吉様にお願いしてございます。どうぞひとつよろしくお願いいたします。早速で恐縮ですが、10分間でお願いしたいと思います。

○ 阿部意見発表者
 よろしくどうぞお願いいたします。仙台市の教育委員会教育長の阿部芳吉と申します。
 早速ですが、「1 教育行政の在り方について」、全国的な教育水準の確保についてでございますが、義務教育は国民としての必要な基礎的資質を培うために、憲法の要請に基づいて行われるもので、その教育水準の確保は国の責務である一方、地方の独自性ある教育の推進は、地方に課せられた重要な役割であると認識しているという市がほとんどでございました。
 また、地方の独自性をより発揮できるように、さらなる規制緩和や権限移譲、そして国・県の指導・助言・援助の見直しを求めるものがございました。
 次は「2」でございますが、教育委員会制度の在り方につきまして、大きく2点ございます。
 初めは、教育行政の首長からの独立についてでございます。自治体の長から独立した合議制の執行機関としての教育委員会制度について、政治的、経済的に不透明な時代であるからこそ、一層大きな意味がある、教育委員会制度の意義は普遍的であるなど、教育行政の中立性・安定性・継続性を確保する観点から、積極的に評価する市が多くございました。
 なお、時代の要請にこたえていくためには、制度自体の見直しというよりも、運用面での工夫・改善で対応していくべきとの声がございました。
 次に、制度改革についてでございますが、3点ございます。
 教育委員会の任意設置につきましては、全国的な教育水準や教育環境の不均衡化を招きかねないという懸念から、反対する市が多くございました。
 次に、独任制の執行機関として教育長を位置づけることにつきましては、意思決定の迅速さや責任の明確化などのメリットを評価しながらも、合議制やレイマンコントロールによるメリット ―中立性・安定性・継続性の確保等を優先すべであるとの認識がされておりまして、反対する市が多くございました。
 次は、首長が主体性をもって教育行政を所管し、首長の諮問機関として教育行政の中立性等を担保する教育審議会を置くことにつきましては、中立性・安定性・継続性を確保する手法として、現行の教育委員会制度より劣るとの認識がされておりまして、反対する市が多くございました。
 また、教育審議会が形骸化し、首長の意思を追認するだけの組織になってしまうことを懸念する指摘もございました。
 次は「3」ですが、「首長と教育委員会との関係」につきまして、初めに首長と教育委員会との連携方法について、平成15年度における教育委員と首長との意見交換のための会合等の実施状況を尋ねたところ、2回が1市、1回が5市あり、7市が一度も実施していませんでした。
 次に、生涯学習、文化、スポーツ等における首長と教育委員会の役割分担についてでございますが、教育委員会が幅広い分野にわたり教育行政を一体的に推進する現行の手法に関しまして、文化、スポーツなどはまちづくりの観点から、首長サイドで推進したほうがよい、分野によっては事業の企画・実現、予算確保などの面で少なからずメリットがあるなど、必ずしもすべての事務を教育委員会が行う必要はないとする市が比較的多くございました。背景には首長部局への事務委任や補助執行の制度が、多くの市において積極的に活用されている現状がございました。
 一方、教育は学校教育から生涯教育まで密接に関連していることから、教育委員会が一体的に推進していくべきとの意見もございました。
 次に、教育委員会の権限と首長の権限について、2点ございますが、教育委員会の権限のうち、首長の権限としたほうが適当と考える事務として、青少年教育、女性教育及び公民館の事業、その他社会教育に関すること、スポーツに関することを挙げた市が多くございました。また、委任や補助執行等も活用しながら、各自治体の規模や行政需要に対応することができる柔軟な仕組みにすべきという意見もございました。
 次は、首長の権限のうち、教育委員会の権限としたほうが適当と考える事務といたしまして、私立学校・幼稚園に関することを挙げた市がございました。
 「4 道府県教育委員会と市町村教育委員会との関係について」でございますが、道府県教育委員会の役割りについては、必要最小限の条件整備等に特化すべきとする市が比較的多く、指定都市については道府県と同等の権限が必要であるなど、一層の権限移譲を求める声も複数ございました。
 また、政令指定都市と道府県の関係と一般市町村と道府県の関係を同列に論ずることは不可能であり、市町村の規模等の違いによって求められる道府県の役割は異なるとの指摘がございました。
 これらをまとめますと、今回のアンケートの結果からは、政令指定都市といたしましては、現行の教育委員会制度に関して積極的に評価し、維持していくべきとする意見が大勢を占めていることがわかります。
 一方で、現行制度の大枠を維持しつつも、国・道府県からの権限移譲を一層推進するべき、あるいは教育委員会の運用面において工夫・改善を行い、教育委員会の活性化を図るべきとの意見も多く、地方の教育行政を担うよりよい教育委員会制度の在り方について模索する必要性を強く認識しているということがわかりました。
 以上、簡単でございますけれども、御説明をさせていただきました。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。ちょうど時間の範囲内でお話をいただきまして、大変ありがとうございました。
 早速でございますが、質問がございましたらどうぞ。
 どうぞ、宮崎委員。

○ 宮崎委員
 一般市町村と政令指定都市を同列に論ずるのは不可能であるというのはそのとおりだと思います。都道府県教委と政令指定都市の教育委員会が同列で、もっとより独立して、一層自己完結した行いができるような環境を整えることも、私は大変すばらしいことではないかと思います。そのときに、たとえば政令指定都市の運営する学校の教員の給料は、都道府県と国で半分持っているわけですね。そういうことについても、政令指定都市ですべて完結できるような形に変えていこうという意見が出て、そういう点についてはいかがお考えでしょうか、教えてください。

○ 阿部意見発表者
 現在、県費負担教職員制度が行われておりますけれども、これらも政令指定都市のほうに移譲していただきまして、教員の数あるいは特別支援に関しての割り当てとか、これを政令指定都市のほうにお任せいただければ、もっと地方独特の教育が展開できるのではないかと考えてございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 そのほかに御質問ありましょうか。
 それでは、渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 4ページの首長の権限のうち、教育委員会に委任されている、または補助執行している事務について尋ねたところ、私立学校に関すことが非常に多いわけですが、私立学校について教育行政の立場からどういう考え方をお持ちなのですか。

○ 阿部意見発表者
 これは私ども仙台市におきましても、例えば幼稚園関係の事務等を行っているところでございますけれども、やはり一体的に行ったほうが有効にできるといったような面もございますので、こういった状況になっているというふうに認識しております。

○ 鳥居部会長
 時間の関係もございますので、このあたりでよろしければ打ち切りますけれども、よろしいですか。
 ありがとうございました。お忙しいところをおいでを賜りましてありがとうございました。短時間で恐縮でございました。

〔指定都市教育委員・教育長協議会退席〕

〔全国市長会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、次に全国市長会からお願いしたいと思います。今日は、全国市長会の社会文教委員会委員長でいらっしゃいます香川県坂出市長、松浦稔明様にお越しをいただいております。大変短い時間で恐縮でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、資料はお手元にあります資料3が全国市長会からいただいているものでございます。よろしくお願いいたします。

○ 松浦意見発表者
 それでは、御説明を申し上げますが、市長というのは教育の専門家ではございませんので、今の仙台の教育長さんのように理論的にまとめられるかどうかは難しいことであります。
 「1」「2」「3」と三つ、こういうことではないかということが書いてございますが、それはその裏の、アンケートをとりました資料に基づいたものでありまして、「1」の教育委員会について、設置するかどうかについて、あるいはその事務を市長が行うかどうかについて、市町村で自主的に選択できる制度を検討する必要があるということであります。
 それから、「2」の都道府県教育委員会から市教育委員会へ、都市の規模等に応じて権限を移譲すべきである。こういうこともございますが、一つは学級編制、それから教職員の人事権。これもそれでは圧倒的多数がこうかというと、なかなかそうもいかないと思います。特に人事権は、小さな市ですと、そこだけで教職員を回していくということも非常に難しいわけですから、こういったことも一応検討材料だとお考えをいただきたいと思います。
 それから、市長と市教育委員会との連携を強化すべきである。これは大方の意見がこういうことではないかと思います。私どもも今、これは自分の坂出市の場合ですけれども、もう少し教育委員会の開催回数を増やして、オブザーバーとして、市長がそこへ出席をして意見を述べるというぐらいのことはやったらどうかということをいっております。あまり強く申し上げると、教育委員会の政治的中立性という問題がありますから、意見としてそろっと申し上げておくという程度でございますが、一応教育委員会に促しているということでございます。
 せっかくでございますから、以上が市長会としての意見なのですけれども、私、16年市長をやっておりますけれども、その市長をやってみて、やはりこういうところが一番問題点ではないのかなということをちょっとお話しさせていただこうかと思います。
 それは当然のことですけれども、我々の社会というのは競争世界と共生世界の両面持っております。人権問題というのは、各行政、教育にしても、行政すべての基本であると思っております。16年間だけでこういうことを申し上げるのはおこがましいかと思いますが、我が国の人権問題というのは、同和問題に関連して発展をしてまいりました。私、首長になってみて初めて、16年前ですけれども、率直に言って、行政の中でも、それから教育の中へ直接入ったわけではないのですが、大変戸惑いました。それは民間運動団体の活動が盛んだったのです。私なんかが傍目から見ておると、こういうことで本当に教育の中立性というのが保てるのだろうかという気がいたしたものであります。
 私の町は、現在、若干よくなっておるのですが、例えばどういうことが行われておったかといいますと、いろいろな民間運動団体等の共催になっておるのかどうかわかりませんが、大会がございます。そういうところで意見発表をやりますと、いろいろなところからとっちめられて、先生が壇上で立ち往生してしまう。それを防ぐために、どうするかといいますと、あらかじめ民間運動団体の招集に応じて、レクチャーですかね、チェックをされるわけです。それはどういう助けになるかといいますと、よその団体からいろいろな質問が出る。あるいは、団体とも限りません、いろいろな人から質問が出た場合に、立ち往生する、そういうところを助けてくださるんだそうです、賛成の意見を出して。そのようなことになりますと、先生が民間運動団体の影響を受けないで本当に授業をやっていけるのかどうか。教育現場で本当に勇気と正義感というものが持てるのかどうか。私はここを非常に心配をしております。
 幸いなことに、行政でもそのようなことがございまして、きっかけになりましたのは、いわゆる人権条例という条例の制定をめぐってでありますが、結果として、私のところの香川県でも条例を制定していないというのは、坂出市1市だけであります。理由は、ここで申し上げる時間はありませんが、もちろん政府見解も、条例はつくってはいけない、当時の地域改善対策室長の談話にもございますけれども、そういうものは地方にはなじまないという意見もありまして、我々もそれは正しいと思って条例はつくっておりませんが、結果として、坂出市以外は全部つくってしまった。
 このようなことがございますので、教育の場合でも、それから地方行政の場合でも、いわゆる制度を変えても、人間力の向上と書いてありますけれども、人間力の向上のために、どういう制度が一番いいのかということは、なかなか制度論だけでは難しいのではないか。やはりそこはきちんとした指針に沿った運用が必要だと思います。恐らく新しく入ってくる若い先生方は、それなりの情熱を持って入ってこられると思います。それがそのような事態になって、なかなか自分の理想が追求できない。どうしても遠慮せざるを得ない。また、それが上から下までずうっとそういう流れがしみ渡っているということになりますと、やはり教育の本当の中立性を保つのはなかなか難しい。
 私は一度、こういうところから、教育委員会の不要論を唱えたことがありますけれども、今、実際に私がいろいろな改革に取り組んでみて、教育委員会も次第にそういう方向に変わりつつありますので、これは制度論というよりも、むしろ運用の問題だとこのように考えております。
 もう一つ、あわせて、これは制度とはずれるかもわかりませんが、最近障害児やADHD児とか、LD児、こういった子どもたちを一般の子どもたちと一緒に授業をしていくということになってきておりまして、それで特別支援教育という仕組みをもってこれを当てて、それでカバーしていく。本当にそれでカバーしきれるのかどうかということも、あわせてよく検討しなければならん問題だろうという気がいたしております。学力向上というのは、競争世界でありますから、どうしても学級の中は集中力を高める、そういう雰囲気が必要だと思いますし、あわせてこういった児童たちとどのあたりでさびわけをしていきながら、学力の向上を図っていくか。こういうことは十分に議論をしていかなければなりません。恐らく相当のお金も必要だろうと思います。人材も必要だろうと思います。一遍に急にやりますと、現場がついていけるかどうか。こういうことは現場の教師の中でも相当大きな問題になっていると思います。
 以上が私が今まで経験したことでございまして、さきの市長会のペーパーとちょっと内容が違いますけれども、申し上げました。以上であります。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。10分という限られた短い時間でございましたが、非常に重要な内容の濃いお話を承りました。
 御質問がございましたら、どうぞ。
 小川委員、どうぞ。

○ 小川委員
 「2」番についてお聞きしますけれども、都市の規模に応じて権限を移譲すべきであるというところの、都市の規模の中身について、全国市長会でどのような意見分布になっているのか教えていただきたいのです。というのは、私も市長さんといろいろお仕事をする機会があって、いろいろな人口規模の市長さんとお話しするのですが、大体中核市ぐらいまではこうした権限の移譲については、ある種の合意みたいなところがあるような感じがします。それ以下のところについては、元気のいい市長さんについては、人口数万でも、おれたちはできるから、こうした権限は欲しいという市長もいれば、やはり厳しいということで、その辺は躊躇される市長さんも多いです。ですから、中核市以外の人口規模の市長さんのおおむねの御意向というのは、どのような意見というふうに理解していいのでしょうか。

○ 松浦意見発表者
 これはデータをとったことがありませんからわかりませんけれども、本当にいろいろな意見があると思います。財政が非常に豊かな町ですと、当然、教員の人的な手配もできるわけですから、おれに任せろということになるかと思いますが、財政が今こういう時期で、非常に厳しい場合は、財政的に豊かな町がやっているそのことを、市民から同じようにやれと言われた場合に、非常に困るという気持ちは、実は私も持っておりまして、大方の中小の市になってまいりますと、多かれ少なかれそういう問題は、市長さんはお考えになると思います。数字がどの程度になっているか、私もよくわかりません。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございます。
 そのほかの御質問がございまたら……。
 片山委員、どうぞ。

○ 片山委員
 松浦市長さん、どうもお久しぶりです。権限をなるべく地域におろしていく、子どもたちに近い現場におろしていくということで、都道府県の権限を市町村におろしていく、私も基本的に賛成なのですが、権限が強化されたところは、必ずチェックのシステムが作動しなければいけません。権限はたくさんたまったけれども、不透明になって、全く外部の意見が通らないということになると、これは困るわけです。
 私は身近なところの市町村を見ているのですけれども、なかなかチェックシステムというのがうまく作動しないのです。不透明なところも多いです。それから、当事者といいますか、保護者の皆さんがいろいろ言っても、全く聞く耳を持ってくれないとか、意見が通らないとか、議会は農業や公共事業の話ばかりしていて、教育はあまり関心がないとか、そういうところはやはりあるのです。市長さんのところは違うと思いますけれども。
 いかがですか、今の市町村をなべてみて、チェックシステムとか、透明化へのドライブがちゃんと働いているかどうか、その辺、御感想はいかがですか。

○ 松浦意見発表者
 教育の世界に関する限りは、チェックシステムは確かに働きにくい環境にあると思いますね。それは一般の我々行政の予算を執行していく、そのチェックシステムよりは、教育界のほうがなかなかチェックシステムが、いわゆる透明性、オープンにするという点でですね。
 私は思いますけれども、教育界というのは、やはりプロ集団でなくてはいけないと思っております。ただ、最近のことですから、いろいろ合理化は当然やっていきますし、そういう面で、学校の校長先生あたりの感覚の中に、経営感覚は持っていただかなきゃいかん。そういう面で、私、レイマンコントロールというのもある程度は要るのだろうと思いますけれども、やはり本筋の教育は、仙台の教育長さんがおっしゃっていましたのを私は聞いていまして、私がこれから意見発表するのは、なかなか理路整然とまとめきることができないです。そういう面では、子どもたちへの教え方、そのことについてやはり専門家、教育される人たちの持っている力というものは、これは十分に評価していくべきだろうと思います。その力が発揮できるような環境をつくってやらなきゃいかん。それをちょっと、私見としてさっき申し上げたのですが、そういうところも大切な部分だと思っております。一般的には、チェックシステムというのは教育界は効きにくいのではないかという感じを持っています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、千代委員、どうぞ。

○ 千代委員
 「2」に関連してちょっとお尋ねいたします。
 都市の規模等に応じて権限を移譲すべきであるというのが、全国市長会のお考えのようにお聞きしましたけれども、どの程度の規模を権限の限界に考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

○ 松浦意見発表者
 私はあまりよくこのあたりはわかりませんが、一つは政令指定都市とか、そのようなところになるのではないでしょうか。あまり小さな規模ですと、先ほども申し上げましたように、よほど財政的に豊かでないと、実際にやろうとしたら難しいことだろうと思っております。

○ 千代委員
 当部会では中核都市の問題が出てまいっておりますが、中核都市の関連では皆さんいかがおっしゃっておられますか。

○ 松浦意見発表者
 私の町は小さいものですから、中核都市の皆さんとそろって議論する場には入っておりませんので、ちょっとその辺がわかりにくいところもございますが。

○ 千代委員
 広域行政で、私どもは町でございますけれども、中核都市の市長ともよくお話はするのですが、なかなか自信をお持ちになれないですね。特に学級編制、人事権とも、首長の立場ではなかなか対応しかねるという程度のお話が多いようでございますけれども、そういうことはお話しになられたことはないのですね。

○ 松浦意見発表者
 はい。その辺は、さっき申し上げましたように、首長は教育のプロではないのです。そういうところが多分にあるのではないかと思います。教育について専門的に自分がずっと教育を受けて、そして現場も経験して、一つの考え方を持っている人というのは、首長にはそんなにいらっしゃらないと思いますから、その辺で本当に自信を持ってこうだということは難しいのだろうと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。ちょっと時間が押しておりますので、このあたりで質問を打ち切らせていただきます。
 どうも今日はありがとうございました。短い時間で大変失礼いたしました。恐縮でございました。ありがとうございます。

〔全国市長会退席〕

〔全国町村教育長会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、次に全国町村教育長会からお願いをしたいと思います。全国町村教育長会の会長でいらっしゃいます岡省吾愛媛県重信町の教育委員会教育長でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 岡意見発表者
 よろしくお願いします。言いたいことはいろいろありますけれども、時間の関係もありまして、一つに絞らせていただきました。
 全国的に温度差はあるものの、町村合併が進んでおります中で、小規模の町村から見た教育委員会制度を、意見として述べさせていただきます。合併が進む中で、スムーズにいくもの、あるいはその合併が進まないところといろいろありますが、特に小さな町村では、町長が助役、収入役を兼ねる、教育長は非常勤で済ますことがささやかれております。
 そういう中で、現在の教育委員会は、すべての地方公共団体に置かれているため、町村合併が進んではいるものの、まだ全体として小規模の教育委員会が多いのが現状であります。17年度の3月末、あるいは1年延びて18年度の終わりまでには合併が進むと思われますが、現在の状況は今申し上げたとおりでございます。
 また、町村の職員の定数は条例で定められており、その中で、教育委員会事務局職員の数が決められます。どうしても、重点的な配分になりがちでありまして、教育委員会では学校教育及び社会教育の充実強化に必要な、例えば指導主事、あるいは1万人以上の市町村で必置であります社会教育主事、図書館司書、博物館学芸員等々というのは、なかなか配置がされにくいのが現状です。
 また、特に学校の建築や改築等にかかわる専門の職員というのは、町村の教育委員会の中ではめったに配置されておりません。首長部局に頭を下げて、いろいろ援助を仰ぎますが、その担当課の仕事が主でありまして、連携がスムーズにいかない点もございます。
 町村によりますと、指導主事 ―私のところは人口2万2,000人でありますけれども、県のほうから、充て指導主事を置いてはどうかという話があり、町長に話しましたけれども、1,000万円必要ではどうしても無理という結論になりました。それならそれにかわる方法がないかと、全国の町村の実態を調べてみますと、退職した校長を学校教育指導員という名目で充て指導主事のかわりに置いている例がございます。ないよりはましということもありますけれども、これは制度的に保障されておりません。そういう面で、非常に現場の学校ではなかなか受け入れがたい面もございます。
 ところが、一方、消防のように、いわゆる町村の枠を越えた事務組合というものの設立によりまして、効果的な運営が図られているという例も見られます。
 したがいまして、教育事務を共同で処理する事務組合や、隣接町村による教育委員会の共同設置をさらに促進しまして、教育委員会事務局を一層充実強化する方策が、もっともっと検討されていいのではないかという考えに立ちます。そういうことは、とかく停滞しがちな人事、特に幼稚園とか、あるいは給食センターとか、数が少なく、どうしても人事が停滞しがちですが、打ち破るメリットもございます。
 このことについては、たしか平成10年9月の中教審答申で触れられたように覚えておりますが、その後の具体的な対策というのは聞き及んでおりません。しかしながら、本年度、文部科学省のほうから、小規模市町村教育委員会広域化モデル事業ということで打診をされておりますが、このことは教育委員会で論議するよりは、むしろ首長部局で論議されるほうが、より早急に進められるのではないか。私が、いろいろな町村の教育長さんにお話ししましたところ、そんなことを首長のところへ持っていけるかというようなこともありまして、町村長会の中で論議すれば、「教育長、こんな話もあるぞ」ということになるのではないかと思います。
 また、今後ますます逼迫する地方財政や合併市町村の増加によりまして、市町村格差というのが必ず出てくるのではないかと思います。規制緩和など。いろいろなことがいわゆる試みられていくと思います。しかし、財政の状況を考えますと、つまり、これから規制緩和や、教育改革によって、何でもやれる市町村、お金がないので何にもできない町村、このような二極化が心配されます。そうなりますと、義務教育の機会均等を保障するということ、あるいはナショナルスタンダードを確保するということは、大丈夫かなという気もいたします。
 なお、市町村が教員を採用することができるようになりますと、これはもちろん県費ではなくて、それぞれの市町村の負担となるはずです。そうなってまいりますと、今申し上げました点が危うくなってまいります。せめて義務教育費国庫負担制度は、私たち小さな町村のとりでであります。ぜひそのことをお考えいただきたい。
 以上でございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞ。
 宮崎委員、どうぞ。

○ 宮崎委員
 広域事務組合というのは、地域によってはかなり機能しているところもあると、今お話がございましたが、実際、教育という分野で、制度としてではなくて、現実問題として、実質的に広域事務組合が機能しているようなケースはまだないのか。
 もう一つは、今後、そういうことを考えた場合に、広域事務組合的な取り組みをしよう、広域化をしようというときに、何が障害になるのでしょうか。

○ 鳥居部会長
 いかがでしょうか。

○ 岡意見発表者
 広域の事務組合というのは、そんなに広くできているとは思っておりません。そういうことが考えられる段階ではないか。ただ、消防とは若干違った面がございます。しかし、そこに共通する点は、いわゆる消防組合を立ち上げている首長の考え方というのが非常にすっきりしております。つまり、消防という一つの緊急的な目的を達成するということであり、教育はどちらかといいますと、将来性の効果が考えられている点との、大きな違いは承知をしております。
 以上でお答えになりましたでしょうか。

○ 鳥居部会長
 片山委員、どうぞ。

○ 片山委員
 比較的小さい自治体で、教育をつかさどっておられて、壁とか感じられることが多いと思うのです。といいますのは、教育で志を持って子どもたちの教育環境を整えてあげようと思っていても、さっきの話で、1,000万ぐらいのお金でもなかなか自由にならない。町長の理解があればともかく、なければ教育環境の改善もできないということになるのだろうと思います。そういう意味で、もどかしさとか、壁なんかを感じられることが多いと思うのです。
 実は私の父親も教員をやっていまして、県の教育行政をやって、最後は役場の教育長を長年やったのですけれども、いつも言っていましたのは、とにかく町長の理解を得ることだと。幸い私の父親の場合には、町長が非常に教育に熱心だったので、思いどおりにやっていましたけれども、世の中全体がそうでもないと私は思います。
 教育長さんが、今、教育長を町でやられていて、例えば教育長とか、教育委員会にこんな権限があればもっといいのだがなと。もっとやりたいことがやれるのだけれどもなということが、もしあればお聞かせいただければと思うのですが。制度上の権限として。

○ 岡意見発表者
 財政的な面にもうちょっとタッチできたら……。例えば図書館費を要求しまして、文部科学省が交付税措置として、これこれの措置をしておりますといっても、それは首長が自由に使える金という感覚が非常に強い。ですから、図書館費をこれだけ文科省が配慮してくれたのだから、1校当たりに割ったらこれぐらいになるんですから、せめてといいましても、なかなかいかないのが町村の実態なんです。財政的な面の、何らかの手がかりがあると、もう少しよくなるはずです。

○ 鳥居部会長
 横山委員、どうぞ。

○ 横山委員
 今、何もできない市町村、あるいは何でもできる市町村という話がございました。かなりショックな話なんですが、そういう中で、義務教育費国庫負担制度が最後のとりでだという話をされましたね。ということは、例えば義務教育費国庫負担制度が廃止され、一般財源になった場合に、財政力の弱い ―これは県費負担教職員ですよね。財政力の弱い町村にどういう影響が危惧されると考えておられるのか。意外とこの話を聞く機会がないものですから、その辺をちょっとお聞かせ願いたいのですが。

○ 岡意見発表者
 今申し上げましたように、仮に交付税措置になりますと、それぞれの県でどのように教員採用、教員の定数が決まるかという心配があります。また、市町村で自由に採用できるとなると、あるミニマムな定数が決まっておりましたら、最低の定数だけは確保できるというような考えを持っております。教員定数をある程度は自由にということは十分理解できますけれども、やはり国が責任を持って、全国津々浦々までこれだけは責任を持ちますという、それがいわゆる義務教育費国庫負担制度の大切な点だろうと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 まだお話をいろいろ伺いたいのですが、時間がまいりましたので、これにて終わりにさせていただきます。頂戴いたしました御意見は、今後の審議に十分に参考にさせていただきます。本日はありがとうございました。

〔全国町村教育長会退席〕

○ 鳥居部会長
 事務局のほうのお願いなのですが、この後、全国知事会のお話を先に伺いたいのですが、御到着がちょっと遅れておりますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。

〔全国知事会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、次は全国知事会からお願いしたいと思います。本日は、全国知事会の社会文教調査委員会委員長でいらっしゃいます浅野史郎宮城県知事にお願いをしております。浅野知事の御都合もございまして、また、こちらの審議会のほうの都合もまさにそうなのですが、10分のお話をいただきまして、5分の質問ということで、大変短い時間で恐縮でございますが、お願いしたいと思います。
 なお、配付資料はございません。
 では、よろしくお願いいたします。

○ 浅野意見発表者
 ただいま御紹介いただきました全国知事会の社会文教調査委員会委員長をやっております宮城県知事の浅野史郎でございます。本日は、意見を述べさせていただく機会を設けていただきまして、誠にありがとうございました。
 まず、今回こういう意見を述べさせていただくということで、教育委員会制度について、アンケート調査をお願いいたしました。実はその回収状況があまりよくないということで資料の準備ができておりません。
 また、この件については、知事会の中で特に議論をしたということはございません。したがって、全国知事会として正式な意見として表明させていただくのは差し控えたいと思いますが、せっかくの機会でありますので、ふだん私が各県の知事さん方からお聞きしていることも含め、私自身、宮城県知事の立場として意見を述べさせていただきたいと思います。
 そういった形でまとめますと、幾つかあります。
 1点目、知事をはじめとした首長は、もっと教育委員会や学校関係者との連携を強化して、教育行政の課題解決に積極的に努めるべきであるという意見がございます。
 2点目、学校運営について、地域の実情に応じた特色ある学校づくりの必要性から、学校や学校長の裁量拡大を進めるべきである。
 3点目、学校評議員や学校運営協議会など、外部評価制度を生かしながら、保護者や地域住民の参加を積極的に促し、教育課題の解決を図るべきであり、そのためには教育行政にかかる情報は積極的に提供すべきである。
 4点目、教育行政における一層の地方分権を推進し、地方の自主性・自立性を高めていくべきである、こういった意見がございます。
 以下は、宮城県知事として、私の責任において、大したことではありませんけれども、御意見を申し上げさせていただきます。
 まず、御下問のありました教育委員会制度をどうするかということについていえば、決定的な問題点はないのではないかというふうに思います。では教育行政、教育の仕事で、知事、私自らなり、住民の方々が御不満なり問題点を感じていることがあるかといえば大いにあります。それはしかし、教育委員会制度があるからそうなのか。むしろそれが徹底していない部分もあるのかもしれない。ここはちょっと因果関係がわかりませんので、なかなか言うことは難しいのですが、多くは制度運営上の問題ではないかというふうには思っております。
 ただ、基本的なところで、実は私も現職の知事の立場から教育委員会制度という特別な行政委員会をつくって、首長と分けた行政執行になっていることについて率直に言うと、あまり快くはないということです。つまり、変な知事がきて、教育がめちゃめちゃにされたら困るということで、別の執行機関をつくっているということですから、それは「そうですか」と現職の知事としてうなずくのは、本当は抵抗があります。だったら、福祉はどうなんだ、環境行政もどうなんだ。これも変な知事が来たらめちゃくちゃにされるのだから、環境委員会をつくりましょう、福祉委員会をつくりましょうと言ったら、知事の仕事がなくなってしまうというか、そういうことにもなる。そういう意味では、教育だけがそうなのかというのは、程度の問題もあるのではないかという感じはします。
 ただ、教育委員会制度について、このように首長と分けてやっているということについて、国民の基本的な合意はたぶん得られているのではないかということなので、これ以上は申し上げません。
 今回、全体の地方教育行政部会の審議が、地方分権時代における教育委員会の在り方ということで検討されているということでありますので、むしろその点を意識しながら、この教育委員会制度について論じていきたいと思います。
 実態として、教育委員会というのはどうなっているか。今回申し上げるのは、実態が随分大きいと思いますけれども、月に1回ぐらいの割合で宮城県では教育委員会が開催されています。合議制の委員会です。何が議論されているかというと、ほぼ唯一の課題は教職員の処分です。教職員の処分をどうするか。原案は教育庁の事務方でつくります。これは停職とか、これは給与を何ヵ月分減給するかとか、そういった処分をします。これは結構頻度が多く、市町村教育委員会、市町村立の学校の分もありますので、たくさん出てきます。これを教育委員会にかけて、どうでしょうかと。有益な意見というのはそこで聞かれるわけですが、宮城県においてはそれがほぼ唯一の教育委員会の役割です。実態はそういうことです。
 ですから、これは多分この中でも御意見が出たと思いますけれども、教育委員自体は常勤ではなくて、ほかに命をかけてやる仕事がその一人一人の委員にあるわけですから、宮城県の教育に命をかけるかといえば、多少無理がありますよね。そういう人たちにやってもらうというのがいいのかどうか。これは固有名詞の誰がよくないというのではなくて、ここでも議論があったような、常勤制を考えるとかしなければ、教育委員会の唯一の任務は、処分についての御意見を申し述べることだけになってしまうということになると思います。また、圧倒的に事務局のほうが情報量を持っていますし、それなり以上に命をかけているということですので、なかなかそれは難しいと思います。
 私がむしろ問題にしたいのは ―これは宮城県教育委員会のことで言っていますけれども、教育委員会というのが誰を見て仕事をしているのかということが大きいと思います。「分権時代における」とあったときに、かなりの部分を文部科学省のほうを見て仕事をしている。仕事は上から降ってくるといったことに慣れ過ぎている部分があると思います。これはやはり問題であろうと思います。
 最近、私が感じた具体的なものとしては、「ゆとり教育」の問題です。これは別にゆとり教育がいいか悪いかではなくて、ゆとり教育で決められたいろいろな内容、総合的な学習をあるとき一斉に、全国の教育委員会、また、全国の学校がピタリと時を同じくしてやったということですね。多様性のある教育だというわけですが、多様性のある教育を一斉にやるというのは論理矛盾ではないでしょうか、ということです。
 つまり、ゆとり教育がうちの学校で、少なくとも教育委員会ごとにいいのかどうかということは、本当はそれにかかわる職員、責任のとれる職員が命をかけて考えて、決断すべきものであって、誰かほかの人に決断してもらって、それにならってやるべきものではないのではないか。これは実はほかの事務においては、かなりそうです。福祉の行政についていえば、宮城県らしい福祉の在り方を、命と自負と誇りをかけて、自分たちで考えてやっていく。厚生労働省の言うとおりにやるということは、これは程度の問題ですけれども、非常に少なくなってきています。その意味からいって、誰が何が悪いのかよくわかりませんけれども、実態のパフォーマンスはそのようになっている。
 これで考えるときの一つのポイントは、義務教育は国の責任だというのが強過ぎるのではないか。今、実は義務教育費国庫負担を廃止するかどうかという議論があります。そのときに、いや、義務教育は国の責任だと。だから法律があって、ちゃんと枠を決めているのです。金を半分持つのは国の責任のあらわれだというふうに言うのですが、そうではなくて、もっと基本に教育サービスというのは、一体どういうサービスなのかという基本で考えていくべきだと思っております。教育サービスは優れて地域サービスです。例えば、空港とか、高速道路は、地域サービスという面もありますけれども、これはまさに国としての施設であるという面が相当大きい。だから、これは国が直轄でやります。しかし、義務教育にしても、教育サービスの内容は優れて地域的なものです。宮城県民である子ども、また、宮城県民の子弟である子どもに対して教育サービスが行われるわけですから。
 だとすると、例えば教育行政も、誰にチェックしてもらうべきかということになれば、当然ながら住民、納税者また有権者にチェックしてもらうべきだ。これを制度的に担保していかなければならないと思います。それは国にチェックしてもらうというのではなくて、文部科学省にチェックしてもらうというよりは、まさにサービスは地域住民に対する直接サービスですから、これは住民、納税者、有権者にチェックしてもらうべきであろう。義務教育は国の責任だと言っても、我々は宮城県民一般というのは何となくイメージとして考えられるのですが、国民一般というのは非常にイメージしにくいですね。国民一般というのが義務教育ということに対して、どういう責任と義務と、また受容を感じるのかというのを調べるのは大変難しいのですが、宮城県民一般というのは考えやすい。
 約束の10分になりましたので、以上でございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 御質問がございましたら、どうぞ。
 千代委員、どうぞ。

○ 千代委員
 地方自治体の小さな町の長でございますけれども、今後、国が一般財源化して、都道府県に教育的な予算がおりてくるときに、住民、有権者に対して、教育に対して都道府県の首長はどのような担保をなさるか、こういうことがこれから重要になってくるのではないかと思うのですが、その点について、浅野知事の見解を聞かしていただきたいと思います。

○ 浅野意見発表者
 質問の趣旨を正しく理解したかどうか、私、わかりませんが、義務教育の実施に限らず、福祉についても、すべての県がお金を出してやっている行政に対して、知事としては為政者として、おまえのやっていることが十分なのかということについては、絶えず住民、有権者、納税者からのチェックを受ける立場にあります。しかし、義務教育については、そんな心配は要らないよというふうに言われているがごときに聞こえます。これは義務教育に限らず、私学助成もそうです。私学助成についても、国から助成金が出ています。これを我々は反対意見はそれほど多くないので、廃止リストに入れています。だけど、それは私学関係の人たちから言ったら、私学助成金をカットされたら、例えば宮城県で浅野知事は私学にあまり関心がないようだから、切られるということになったら、私学のレベルが下がる、だから私学助成(カット)反対と。これはすべての行政サービスのレベルについて、そう言えるわけです。
 そうすると、宮城県においても、ある行政サービスのレベルを一定に保っているというのは、そういう補助金が下支えをしているからだということになると、我々が今やっている ―我々というのは知事会、地方団体側が、「地方分権だ、地方財政自立改革だ、補助金・負担金の廃止、それとともに税源の移譲だ」と言っているのは、すべてむなしいことになってしまう、意味がないことになってしまいます。
 私は義務教育もほかの行政と同時に、その仕事のレベルをどうしているのかということを住民のチェックに直接的に任せるべきだと思っています。ただ、御心配なく、幸いに義務教育についてはまさに義務教育で、この義務は首長にも課しています。それは様々な法律またはそれに基づく規則等によって、かなりガチガチに最低のところは縛られていますから、それにお金を半分やるということの条件をつけなくても、そのチェックのところは住民にやらせれば、青臭く言えば、その地域の民主主義というのは機能せざるを得なくなるのだろうというのが、今回の地方分権、地方財政自立改革の全体の哲学でありますが、その中において義務教育費国庫負担金だけ特別扱いする必要はないのではないか。
 御質問の趣旨と違ったかもしれませんが、以上です。

○ 鳥居部会長
 田村委員、どうぞ。

○ 田村委員
 ありがとうございます。大変いいお話をお聞きしましたが、知事の現状認識についてのお考えを2点ほどお伺いしたいわけです。
 1点目は、私学助成についての御発言ございました。関係者として、反対がないというような御意見がございましたが、今、そうではない動きを一所懸命しているわけですが、基本的に、例えば高等学校でいえば私立の高校を出ようが、公立の高校を出ようが、高卒資格は同じなのです。しかし、かかる費用は違うわけです。病院とか、保育所を考えると、全く設置者の別にかかわりなく、料金は同じです。ですから、現状認識で、私は私学助成というのは、全くまだ解決していない問題を支える仕組みとして必要だと認識しております。
 2点目ですが、先ほどゆとり教育についての御発言ございましたが、教育の結果をあらわす学力、その他のチェックを、今、世界中でそういうことに関心を持って、国際比較をしております。一番新しいのがPISAと言われる、OECDが開発した試験でございます。知事は御存じだと思います。このPISAの結果でいいますと、我が国の教育の仕組みはかなりいいという評価なのです。今の仕組みでほかの国と比べると、日本の教育というのは、義務教育を含めて現場に任せている。結果、かなりいい結果が出るという評価なのです。
 決して文科省がガチガチの教育を一斉にやっているわけではなくて、その問題がもしあるとすれば、教育委員会、地域の運用の問題であるのかもしれません。文科省はむしろそういう形でいえば、現場に任せるという姿勢を徹底してとっていると思います。結果はPISAの結果で出ているわけです。この事実をきちんと受けとめておられると思うのですけれども、制度を変えるとそれが変わることになります。
 分権した例でうまくいかなかった例で、代表的なものがドイツなのです。ドイツはナチスドイツの反省で、教育の分野を徹底して分権しました。その結果、13の州の中央集権化された分権教育システムができ上がってしまったわけです。PISAの結果では、先進国の中では低い、最低に近い結果しか出していませんで、今、ドイツとフランスが大変な勢いで、何とか教育改革しようといって頑張っているわけです。そういう実態があるということを踏まえて、私どもは考えてきているのですけれども、知事会でも当然そういうことは御理解された上で、今の分権、現場にゆだねるという方向での教育改革をお考えになっておられるのか、この2点をお伺いしたいです。

○ 鳥居部会長
 お願いいたします。

○ 浅野意見発表者
 1点目は、誤解がないように。私学助成は続くのですよ。宮城県は宮城県の私学に対して助成はするのです。今、国からの助成が廃止となっても、たぶん同じレベルでやります。ただ、それを削ろうとする誘惑はあるかもしれません、宮城県として。今、国の私学助成があると、削らないということの、一定の下支えがありますよね。しかし、今度は宮城県は私学助成は続けるという判断は一応しますが、しかしそれは削るかもしれない、また、増やすかもしれない。それはある意味では自由なのです。それをチェックするのは、私学の田村さんのような方々が、宮城県にもいますから、そういう方々が「知事、削ったらただじゃおかんぞ」ということになるわけです。それはほかのいろいろな分野にもいるのです。それを調整するのが民主主義の仕組みだということで、裸で住民と対応するようにしましょうと。これは私学助成に限らず、すべてのそういった行政分野について共通です。
 2番目の問題は、ちょっとわかりません。私は今、委員のおっしゃったものが因果関係として、日本のパフォーマンスがいいのかというのは、これはわかりません。専門家ではないからわからないのかどうかはわかりません。私は、そういうふうに意味づけるのは、わからないのではないかと思うのです。先ほども申し上げましたけれども、日本の義務教育の中で、それは制度的な担保としても、かなりガチガチのというのは、実際にパフォーマンスとしてガチガチとしているかどうかわかりませんよ。宮城県だけが50人学級で、小学校を運用するというのは絶対だめだというふうに、学校教育法なりで決まっていますから、これはそれしも越えるということは、義務教育費国庫負担金を廃止しようが残そうが変わらないのです。どうしてそこの制度までガチガチにやっているのに、金でもそういう担保をしなくてはいけないのかというのがむしろわからないということです。決して日本の教育は、国家の責任が法制上も放棄されているわけではない。これは今後ともずっと続くし、続いていいと私は思っています。

○ 鳥居部会長
 挙手が大変多いのですけれども、あと横山委員と宮崎委員でおしまいにしたいと思います。

○ 横山委員
 端的に1点だけお聞きしたいのですが、義務教育行政というものを国家行政の中でどう位置づけるかというのは別ですが、実際に知事がおっしゃったように、最終的にはいかなる行政だろうが、住民が最終チェックするのだから、結果として義務教育の教育水準、これは内容あるいは環境も含めて、結果的に地域差が出てもやむを得ないのだ、あるいは義務教育にはナショナルスタンダードという概念はそもそもなじまないのだということなのか。

○ 浅野意見発表者
 いいえ、違います。

○ 横山委員
 そうじゃないのですか。結果的に義務教育に格差が出るのはまずいというお考えですね。

○ 浅野意見発表者
 はい。私が言っているのは、実態としては格差が出ていますが、今の日本では制度的には担保されています。それに義務教育費国庫負担金を半分出しますよということで、本当に担保するのでしょうかという方法論が、私はわからないというか、そこは大いに疑問があるということです。格差は少なくとも最低レベルはどこでやってもできるというふうに、制度的担保はできているし、これは続いていくべきだということで、そのような立場をとっています。

○ 鳥居部会長
 それでは、宮崎委員、どうぞ。

○ 宮崎委員
 お忙しいところをすみません。神奈川県の場合は、月1度か2度の定例委員会の中で、確かに教職員の処分もいたしますが、大半の議題は教育のビジョンであったり、個性的な学校づくりであったり、子どもたちの未来であったり、協議会があったり、学校訪問とか現場の先生方とディスカッションをしたりということで、だいぶ県によってやっていることが違うという前提の上でお伺いしたいと思うのですけれども、先ほど政令指定都市の教育委員・教育長協議会のほうからの御報告で、政令指定都市については都道府県と同格ないしは独立性をもっと高めるほうに、財源、人事も含めて進んでいくのが望ましいのではないかというお話がありました。宮城県の場合は、今、知事は宮城県のというアイデンティティが強いと思うのですが、政令指定都市の扱いについてはどのようにお考えでしょう。

○ 浅野意見発表者
 まず前段の教育委員会の在り方について、宮城県も神奈川県に学ばなくてはいけない。もうちょっと実質的な議論もしなくてはいけないということを思います。
 それから、政令都市の問題は、47都道府県でも限られたところだけですけれども、特に宮城県の場合は特異でありまして、237万県民のうち100万人以上が仙台市民です。42パーセント。この集積度は京都府に次いで2番目です。したがって、100万という絶対的な数からいっても、政令市一般と言われると難しいですが、宮城県における仙台市の役割ということからいえば、十分同等の役割を果たし得るだろうと思っておりまして、私の考えとしては政令都市である仙台市に、教育の分について、人事、財政、自由度を持たせるという方向は正しいのだろうと思っています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 時間の関係でここまでにさせていただきます。今日、知事からちょうだいいたしました御意見は、今後の審議に十分に役立たせていただきます。ありがとうございました。

〔全国知事会退席〕

〔全国都道府県教育委員会連合会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、続きまして、全国都道府県教育委員会連合会からお願いをしたいと思います。本日は、同連合会の理事でいらっしゃる愛知県教育委員会教育長、伊藤敏雄様にお願いいたします。
 先ほどと同じルールで、約10分、そして質問を5分ということで進めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 伊藤意見発表者
 ただいま御紹介いただきました愛知県教育委員会教育長の伊藤でございます。
 本日は、全国都道府県教育委員会連合会を代表いたしまして、意見を述べさせていただきます。ありがたく思っております。
 本日の意見を述べさせていただくに当たりまして、各都道府県と様々な協議を重ねてまいりました。その中で、必ずしも全都道府県が同意見ということばかりではございませんので、本日は総論としてまとめたものということで、御理解をいただきたいと思っております。今日、お手元に私どもの意見として資料をお配りさせていただいておりますので、ほぼこれに沿った形での御説明になりますことを、あらかじめお許しを頂戴したいと思います。
 まず、一つ目の教育委員会制度の意義と役割についてでございますが、まずもって私ども教育の中立性等の確保は、今日、地方分権という流れがございますが、その中にありましても、普遍的なものと考えておりまして、これが憲法、教育基本法の要請に基づく基本理念であるという認識をいたしております。しかしながら、教育委員会が教育行政全体の政策決定機関であるということ、また、今日の複雑多様化しております教育の課題に、委員会方式での対応が可能かといった疑問もあることも事実でございまして、昨今、教育委員会必置規制の廃止や首長自らの教育行政の執行等が、主として市町村の首長サイドから主張されていることも事実であります。
 確かに首長は、地域住民に選ばれました地方自治体の最高責任者でありまして、教育行政を含めた地方自治体の総括的な運用・調整権を有するものでありますが、その意向により大きく行政全般の方向性が変化する可能性も包含していると思っております。教育はいわゆる次代を担う子どもたちの人格形成を担うものでございまして、その中立性は極めて重要でありまして、いかなる首長のもとにありましても、教育行政が適正に執行される制度的保障が必要と考えております。
 こうした観点から、教育行政の執行体制としては、今後とも首長から独立した執行機関で対応していく必要があり、それらを制度的に保障している現行制度を維持していくべきものと考えております。
 そこで、少し具体的に触れさせていただきますが、多様な民意を教育行政に反映していくためには、合議制による十分な議論が必要なことは言うまでもありません。複雑・多様化する地域住民のニーズに適切に対応していくためにも、また、社会常識による監視・助言機能をあわせ持つ意味合いからも、今採用されております幅広い見識を持つレイマンの大所高所からの判断は必要と考えています。
 しかしながら、この制度は、意思決定の遅延とか、あるいは責任所在の不明確さ等を招くといった一部からの批判や会議の形骸化や委員の名誉職化といった指摘があるところも事実でございます。こうした批判や指摘につきましては、私ども教育行政に携わる者として真摯に受けとめ、教育委員会制度の本来の意義・役割を果たすための改善に積極的に取り組んでいく必要があると考えているところであります。
 幾つか事例を申し述べたいと思いますが、まず教育委員の人選の在り方でありますが、委員の人選は教育委員会の活性化のための重要な要素であります。その人格や知識・経験等を考慮した幅広い人材を登用すべきでありますし、また、教育委員会事務局との緊張関係を保つためにも、首長が人材登用に実質的に関与していくことは、当然かつ必要であると考えております。首長が任命した教育委員がその豊富な知識あるいは経験を生かして、民意を代表した立場で活発な教育活動を行って、それを施策にどう反映させていくかが要は大きな鍵でございまして、その仕組みをつくり上げるのは教育委員会事務局の仕事であろうと考えております。
 次に、教育委員会会議の活性化について申し述べさせていただきます。今、各都道府県におきましては、通常の定例会や臨時会とは別の協議会の開催でありますとか、教育委員と事務局職員との意見交換、課題への共通理解や情報の共有化に努めているところでありまして、教育委員が政策決定に積極的に参画している事例も多くなっております。
 また、知事や公安委員との定期的な意見交換、あるいは市町村教育委員会や学校訪問、保護者との交流など、様々な開かれた教育委員会づくりに積極的に取り組んでいる事例も多くございます。
 要は、教育委員会の運用上の問題と思っておりまして、現行制度の理念や趣旨を生かして、より効果的な運用を図ることが重要で、そのための不断の検証・見直しも必要であるという認識に至っております。
 なお、地方分権の流れの中で、現行の必置規制を見直すべきとの意見につきましては、教育は国の根幹にかかわるものでありまして、教育の機会均等や教育水準の確保といった点からも、制度の基準性や枠組みは、国の責務として国が明確にすべきものであって、地方に設置の判断をゆだねる性格のものではないと考えております。
 ただ、小規模市町村におきましては、一律に現教育委員会制度を存続させることが難しいといった指摘もありますことから、教育委員の委員数の弾力化でありますとか、あるいは委員の公募制の導入をはじめ、例えば一部事務組合等の教育行政の共同処理や広域化を進めることも方法の一つであると考えております。
 次に、2点目の首長と教育委員会との関係について述べさせていただきます。政策の大きな柱として、また、選挙公約の一つとして教育を掲げる首長が増えてきております。特に生涯学習でありますとか、青少年教育、文化・スポーツといった分野では、現実として首長部局と教育委員会の二元的管理となっているところが多くなっております。教育に関するニーズや課題等は非常に多岐にわたっておりまして、教育委員会だけで完結できるものではなく、地域住民と一体となった総合的な施策の展開が必要であると思っております。通常、首長は教育委員の任命を通じて、あるいは予算調整権・執行権の行使を通じて、間接的に教育行政に影響を及ぼしておりますが、より一層の両者の意思疎通を図り、地方公共団体としての調和ある運営を展開していくためにも、首長と教育委員または教育長との日常的意見交換が重要であると考えます。それにより、首長部局との緊密かつ円滑な、いわゆる隙間のない連携が可能になると考えております。
 所管部署についてでございますが、主にここでは公立学校について申し上げますが、学校教育分野につきましては、その中立性・安定性の確保と、より高度に法制度上の枠組みが確立されておりますことから、教育委員会が所管すべきと考えます。また、生涯学習や文化・スポーツの分野につきましては、教育的側面が強い一方で、昨今では首長のまちづくりの一環としてのかかわりが大変深く、各行政分野が一体となって、効率的に事業展開される面がありますことから、必ずしも一元化にこだわることなく、相互の連携を密にし、同一方向で展開していくことが適当であると考えます。
 次に、三つ目の市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方についてでありますが、地方分権や市町村合併が進む中で、地域住民に最も身近な市町村が主体性を持ち、地域の実情に応じた教育施策を展開していくことが重要であります。その上で、国・都道府県・市町村の役割分担の明確化と連携の在り方が現時点で課題であると考えております。
 特に、義務教育における全国的な教育水準の確保と地方分権の連携との整合性をどこでとるかといった問題につきましては、今、三位一体で御議論いただいているわけでございますが、国・都道府県・市町村が相互に連携を保ち、協力と援助を行うことにより、相補っていくことが重要であると考えます。そのためには、まず市町村教育委員会の体制強化が必要不可欠でありまして、その一つとして、例えば指導主事の配置を整備していく必要があると思っております。
 また、私ども都道府県教育委員会の役割としましては、そうした市町村教育委員会の体制強化に対する側面的支援として、指導助言を行いますとともに、広域的見地から市町村間の調整を行うべきでありますし、教員の資質の向上にかかわる条件整備を行うべきと考えております。
 次に、小・中学校の教職員の人事権を市町村へ移譲すべきであるといった指摘がございますが、移譲できるかどうかの一つの判断材料としては、採用と異動が円滑にできるかどうかという点にあると考えております。確かに市町村に教職員の人事権を移譲することは、市町村の独自性や課題に応じた教育行政が可能になるといったメリットが考えられます。しかし、教育水準の確保の点から、市町村単位での教員採用や管理職の任用、人事異動等は、長期的に見ると人事の停滞や硬直化を招くことが危惧され、優秀な人材確保が困難になることも予想されるところであります。
 同時に、市町村間での勤務条件等の格差が生じる可能性があり、教員の意欲に影響を及ぼす恐れもございますし、採用試験等の能力実証がどの程度可能かといった問題もあります。こうしたことを考慮いたしますと、現行制度が望ましい方法であると考えているところであります。
 ただし、中核市につきましては、その行政能力も高く、一定水準の規模もありますことから、政令市同様の移譲希望も出てきている事実もあり、前向きの検討が必要と考えておりますが、その場合におきましても、給与負担を含めた財源議論はもとより、都道府県との人事交流等、その連携の在り方について、さらなる調整は必要であると考えております。
 最後に、学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確保について述べさせていただきます。この諮問項目のうち、学校の自主性・自律性の確保につきましては、初等中等教育分科会のほうで別途審議されていると聞いておりますので、本日は学校と教育委員会との関係に限りまして意見を述べさせていただきます。
 学校につきましては、教育委員会の管理権と学校における自主的な運営との調整を図るため、これまでにも学校の自主性・自律性の確立に向けた裁量の拡大がなされてきているところであります。今後、保護者や地域住民の期待にこたえていくためには、各学校が自らの教育活動について評価し、その結果に基づく不断の見直しと、必要な教育情報の提供による、いわゆる保護者や地域住民への説明責任を果たしていくシステムを構築していく必要があります。
 その一つの方法といたしまして、学校評議員制度の積極的な活用を図っていくとともに、学校の教育活動に対する教職員による自己評価、それを補うものとしての外部評価制度を確立していくべきであると考えております。また、地域の実態に応じまして、新たに制度化されました学校運営協議会による地域住民の参画など、地域に根差した開かれた学校づくりを目指す必要もあると考えているところであります。
 このような学校運営体制を確立した上で、学校に対して何を権限移譲していくかを検討するべきですが、学校の裁量権拡大は、校長等管理職が学校経営能力を有し、リーダーシップを発揮できる環境にあって、初めてできるものでありまして、権限移譲につきましては、管理職に対する研修や、校内組織体制の充実とあわせて進めていくべきものと考えております。
 いずれにいたしましても、こうした権限の移譲は学校の自主性を高めていく上で重要でありますが、今後も引き続き検討していく必要があると思っております。
 あわせて、教育委員会の学校に対する支援体制の強化をどのように図っていくかが、これも重要な課題であると考えているところであります。
 以上、非常にはしょった説明となりましたが、全国都道府県教育委員会連合会の総論として、4点につきまして、意見を述べさせていただきました。
 なお、昨日、人事権等、義務教育に関する報道がされておりますが、まだ私ども十分な議論を踏まえておりませんので、その点については、本日の発表では触れさせていただいておりませんので、御理解をちょうだいしたいと思っております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞ。
 小川委員、どうぞ。

○ 小川委員
 1点だけ、単純な質問ですが、3ページの真ん中辺に、「今後の課題として、一定の条件の下に、教育委員会の任意設置の検討もあり得るが」と書かれているのですが、この「一定の条件の下に」というのは、どのような内容なのでしょうか。

○ 伊藤意見発表者
 ここのところは、いろいろ議論があったところでございまして、大方の御意見は、やはり現制度を存続するということでありますが、将来にわたって、地方分権という立場から、教育委員会の任意設置ということも検討すべきであるという御意見はありました。ただ、ほかの、たとえば審議会といったようなこととは性格が違うので、これは本来の教育委員会の教育行政の総合的な政策判断、あるいは審議ができるようなことを前提に考えないといけないということの御意見でございまして、必ずしも一定の条件というところが、具体的に私もなかなか御説明しきれないのですが、一つの将来方向としてはそういうこともあり得るのではないかということで、ここで付記させていただいたわけでございます。

○ 鳥居部会長
 千代委員、どうぞ。

○ 千代委員
 5ページに、人事権について、「中核市については、その行政能力も高く一定水準の規模もあることから、政令市同様の移譲希望も出てきている」とありますが、この点については、さらに突っ込んだ話し合いがあったのですか。

○ 伊藤意見発表者
 実は、ここも議論がいろいろあったところでございます。ただ、政令市が一つの方向を、今、打ち出されておりますが、今度の市町村合併等の動向いかんによりましては、中核市が、総合的な行政力 ―財政も含めてですが、そういう力を持つ地域も出てくるであろう。卑近な例ですが、愛知県でもそういう事例が実は出てくることが予想されております。そうした場合に、一律に中核市すべてということかどうかは別といたしましても、今後、それだけの実力を持った地域、地方自治体には、独立した権限を与えてもいいのではないかというのは、かなり多くの意見でございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、渡久山委員、それから森脇委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 3ページの一番下のほうに、首長と教育委員会の関係がございますが、特にここでも予算調整権、あるいは執行権の行使という形で、首長が教育に対する影響を及ぼしていくことだけではなくて、やはり教育予算の問題です。そこで、よく教育の独立性というけれども、予算の調整、あるいは予算の決定の場合に、どうしても首長の優位性というのがある。そういう形で何とか依存をしてといくという形に、教育委員会が必然的にだんだんなってきているのではないかということが言われるのですけれども、いかがですか。

○ 伊藤意見発表者
 まさに御指摘は当たっていると思います。私ども予算編成の時期には、どうしても全体の財政の枠組みの中で、教育予算というのが計上されるわけでございまして、それぞれの事業、プロジェクトによっては、知事判断もありますけれども、それをつけてもらえる場合もありますが、大体は全体のシェアの延長線上になりますので、どうしてもそうなると、県予算全体の中の配分的な色彩が出てこようというのは否定し得ない事実でございまして、現状は多分にそういうことかなと私どもは認識しております。これは全都道府県すべてかどうか、私の一存ではお答えしかねる部分がございますが。

○ 鳥居部会長
 それでは、森脇委員、どうぞ。

○ 森脇委員
 実態をお教えいただきたいという質問でございますが、まず4ページのところで、首長さんと教育委員会との日常的な意見交換というのは、これは首長さんのほうからもそういう御意見が出ていますし、また、調査によりましても、やっておられるところがそう多くないというのが実態のように、少なくとも数字上では受けとめたのでございます。今まで重要であるというようにお書きいただいているのは、今まであまり意見交換が十分にされていなかったということからお書きいただいているのではなかろうかと思いますので、その背景とか、理由を簡単で結構でございますので、お教えいただきたいことと、今後、全国的に御覧になりまして、これが大きく改善される可能性をとらえていらっしゃるのかどうかというところを、お教えいただきたいと思います。
 それともう1点は、5ページの学校と教育委員会のところでございますが、これにつきましても、校長の学校経営能力を御指摘されていることは、もっともなことでありますし、また、そういう基盤がないとなかなか制度も生きてこないということだと思います。一番最後のところですが、教育委員会が学校に対する支援体制を強化していく必要性を課題としてお書きいただいておりますが、私は専門外の委員ですが、これも非常に重要な点だと思っております。何か教育委員会のお集まりの中で、具体的に強化の方向でも結構ですし、方策でも結構ですが、お話し合いが出ていれば、ちょっとお教えいただきたいと思います。

○ 伊藤意見発表者
 1点目の教育委員と首長との意見交換でありますけれども、これはこの中でも触れさせていただきましたけれども、首長は、教育は今、行政の中で外せない分野の一つだと思っております。その意味でも、首長が教育行政に関心を持っておられます。少しでもその意向を反映するということです。これは首長サイドからでございますが。
 我々教育委員会サイドも、できるならばそういう意向も尊重しながら、教育行政を展開していきたいということもございます。
 そういうことで、教育委員と首長との直接の意見交換の場 ―恐らく教育長は、私もそうでございますが、いろいろな場合で直接首長とは接する機会はございますが、教育委員と直接というのはなかなか少なかったと思います。これは私どもの県を例にとれば、なかったわけです。本年からそれを試みに始めたわけでございます。そういう意味では、短時間でありますけれども、効果はあったと思っております。各都道府県とのいろいろな意見交換の場でも、そういう方向で取り組んでいきたいという多くの都道府県がございますので、今後、そういう分野は拡大していくだろうと思っております。
 それから、学校に対する支援でございますけれども、今、校長にはかなりの権限を与えております。与えておりますが、校長が地域との結びつき、あるいは学校運営を通じまして、より特色ある学校づくりを、教育内容を含めて推進していくためには、そのバックアップが必要でございます。そういう意味で、いろいろな総合的な意味を込めまして、今後、そういう支援がますます必要だということで書かせていただいているわけでございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 まだ御質問がおありかと思いますが、時間の関係でここまでにさせていただきます。本日はお忙しいところをありがとうございました。御意見を十分に参考にさせていただきます。ありがとうございました。

〔全国都道府県教育委員会連合会退席〕

〔全国市町村教育委員会連合会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、早速ですが、次に移らせていただきます。次は、全国市町村教育委員会連合会からお願いいたします。
 本日は、同連合会の会長でいらっしゃいます長野市教育委員会教育委員長でいらっしゃいます久保健様にお願いいたします。
 大変恐縮ですが、10分間ほどお願いいたします。よろしくどうぞ。

○ 久保意見発表者
 ただいま御紹介をいただきました久保でございます。よろしくお願いいたします。
 本連合会におきまして、常々考え、思っていることは、教育とは何か、そして、連合会が一つになっていくというその思いでございますけれども、一国の基となる人材の育成、とりわけ郷土に根差す、地域に根差す人材をどのようにして育成していくかということであります。もちろん国の方針に従っていくわけございますが、市町村教育委員会といたしましても、それぞれの地域にございます教育目標、そして、地域にございます風土的な考えのもとにおきます子どもをどう育てるかという目標と、その具現化のために、日夜努力しているわけでございます。実際には実効性のある施策をどのように講じていくか。そして、住民の意思をどのようにして反映させていったらいいかという教育行政を行っているところでございます。
 とりわけ重視していることは、教育行政の中立性でございます。また、安定性・継続性でございます。こういうことから、本教育委員会制度におきましては、堅持していく必要があろうかと考えているところでございます。市町村教育委員会は、住民にとって身近な存在であることは言うまでもないことでございますが、具体的にどういうことかということが、絶えず連合会でも検討されます。住民の皆様方の窓口を大きく開いて、率直に相談に来ていただいて、事務局は相談に乗ってもらう。そして、要望、要請にこたえていくというその姿勢でございます。
 学校教育に関する問題が非常に多い今日でございますけれども、生涯学習社会を構築していくための提言等も窓口には寄せられているのが現状でございます。少子化、そして高齢化、情報化等の多面的な視野のもとで、教育委員会としてはやはり地域の皆様方の声をお聞きしていくという中で、教育、文化、スポーツ等、内容面・施設面等においても非常に多い相談があるということから、これは教育委員会の組織の中に置いていく必要があろうかと考えているわけでございます。
 また、今日、地方分権の推進ということで、市町村合併が行われているわけでございますが、行政の広域化、とりわけ行財政規模の拡大が進行している中で、教育行政の広域化への対応でありますが、地域が広域化するだけに、地域の実情・要望等を受け止め充実を図っていく上で、教育委員はより一層の先見性のある企画立案の提言を行っていくことが求められていると考えられます。
 また、市町村教育委員会としての権限でございますけれども、合議制の執行機関ということで、定例会、臨時会等が公開という形で行われているのが現状でございます。ただし、御指摘いただいていますように、迅速に執行するための意思決定が遅れぎみです。それから、具体的な施策にどのように反映していくかということも、住民にとってやはりわかりにくいところがあるというのが現状でございます。そういう意味で、こういう点につきましても、より積極的にこれから取り組んでいく課題でございます。
 そして、委員でございますが、現在、市町村は5名で構成されているわけでございますが、多くの市町村では、教育関係者、経済界、保護者の代表、そして一般の方の教育に関心のある方ということであろうかと思いますが、レイマンコントロールということで実施されていることは、非常によいことだと受けとめております。広域化に伴うこれからの問題の中で、このレイマンコントロールがより積極的に働いていく、そのことを願っているわけでございます。ややもすると、地域によっては、教育委員が名誉職としての教育委員で終わってしまうというところも御指摘のとおりでございます。そういう意味で、委員としての使命感とか、あるいはどういう任務を背負うことが地域の教育委員としての役割になるのかという点を、これから詰めていく必要があろうかと思っているところでございます。
 続きまして、首長と教育委員会との関係でございます。教育はあくまでも中立性・安定性・継続性は確保されなければならないということは、言うまでもないことでございます。この意味からも教育委員会による教育行政は、とりわけ地域の教育振興は、将来を展望した上で、できるところから、可能なところから、住民の意思を反映しているのが実情でございます。一般行政とも密接に関連していることは言うまでもないことでございますが、現状のように独立した執行機関とすることが相当であると、そのように受けとめております。
 ただし、教育委員会には予算の編成権とか、あるいは人事権というものを持ち合わせておりません。そういうことで、どのように調和を図っていったらいいか、この配慮がこれからの大きな課題でございます。
 そういう意味で、首長と事務局の連携は十分にとらなければいけないかと思うわけでございますけれども、多くの教育委員会では、首長、あるいは市の三役と意見交換会の回数を多く持っている市町村が多うございます。そして、折々には懇談をしていく。それから、首長のほうから、こういう問題を首長の公約として掲げてあるのだけれども、これは教育問題として何とかしなければいけない、ついては教育委員会の考えを聞きたい、そして本市における、本町村における教育の理念としてどのように受けとめていったらいいのかということについて伺いたいということで、積極的に首長のほうから声をかけていただいているという状況もございます。
 それから、事務局内の組織の改善でございますが、これは予算、人事等に関しては、どうしても首長部局にございますので、縦割り行政ではなくて、特に横の連携を密にしていく必要があろうかと思っているところでございます。多くの市町村では、幼児教育の面で、教育委員会と福祉部の関係をどのように改善していったらいいかという、その一つの問いを持っているところがございます。あるいは、今日、非常に問題になっております子育ての問題、とりわけ子育て支援については、教育委員会にお願いしたらどうか、そして私立幼稚園についても、教育ということからして、公立の組織であります市町村の教育委員会で担当したらいかがかという声もありまして、このことについても、組織の改善という点では重要ではないかと受けとめているところであります。
 それから、教育委員の人材確保でございますけれども、本制度を充実していくという観点から、どういう人材を委員としてお願いしていくか。これは大きな課題であろうかと思います。とりわけ市町村においては、先ほども申し上げましたけれども、名誉職になりやすい。そして、教育委員に任命されたけれども、私は何をやったらいいかわからないという、そういう委員さんの声もございます。そういう意味で、人材の確保というのは、いろいろな市町村におきましては、規模の大小があるわけでございますけれども、人材をどのようにして確保していくかという一つの大きな課題になっているわけでございます。
 もう一つは、教育委員会事務局を代表する教育長の職でございます。これは教育に関する幅広い学識と教育の理念と、そして行政的な手腕が買われる、こういう人材が求められていかなければいけないのはいうまでもないことであります。そのように私ども連合会では受けとめているわけでございます。教育委員の役割を自覚する上で、教育行政に関する専門的な研修がやはり必要でございまして、明確な位置づけをこれからしていくことが必要ではないかということでございます。
 三つ目でございますが、市町村と都道府県との関係及び市町村教育委員会の在り方についてでございますが、市町村教育委員会の教育行政は、先ほども申し上げておりますけれども、地域の住民に最も密着していかなければいけない。そして、地域に根差すことが第一義でございます。具体的には、地域の実態、住民意識に即すというこの点について、これから十分に行っていくことが必要ではないかということでございます。結果的には、自律的独自性を発揮するということになろうかと思うわけでございます。
 一方におきましては、都道府県とは一体的な連携、とりわけ今日の状況からいたしますと、具体的には教職員の人事につきまして、これは県のほうに人事の任命権がございますし、あるいは指導行政についても県のほうに実際お願いする場面が多いわけでございますが、教育の水準維持向上のために、あるいは機会均等に資するという意味におきまして、一体的な連携が必要であるということでございます。しかしながら、あくまでも市町村の立場といたしましては、県とはパートナーとして対等・協力関係を維持していきたいということでございます。
 国全体で、教育水準を確保しつつ、都道府県からの人事権を含めた権限移譲という声もあるわけでございますけれども、教職員の採用、そのことに当たりましては、市町村において大きな問題になるかと思いますが、これからの大きな課題だというようにこれも受けとめているわけでございます。権限移譲、役割分担等、検討が求められるということでございます。
 四つ目でございますけれども、学校と教育委員会との関係でございます。また、学校の自主性・自律性の確立についてでございますが、公立学校の運営につきましては、市町村教育委員会が定める学校管理規則により、校長の判断と責任において行われているわけでございます。裁量権については、学校予算、あるいは教育課程の編成等、実際に校長の責任で行われているわけでございますが、今日、学校に大きな説明責任が求められているという状況、そして特色ある学校づくりをしていくということのためにも、学校長に対する大幅な権限移譲が必要ではないかということでございます。校長のリーダーシップの発揮のもとで、教育委員会がこうしろということではなくて、校長として一校を預かる責任者として、教育理念をどのように具現化していくかということでございますので、校長に思い切った学校運営をさせたいという思いから、私ども連合会でも時々話題になることでございます。
 それから、学校、とりわけ校長、教頭は保護者との連携をどのようにしていくか。教育委員は、ほとんどの市町村におきまして、学校訪問をして、学校の状態を熟知する努力をしております。そして、定期的な意見交換もしているところであります。そういう意味で、学校評議員制度、それから学校運営協議会の設置等があるわけでございますが、何らかの形で開かれた学校ということでございますので、保護者一般の方々と、ともどもに地域の学校運営にかかわっていただいて、よりよい人材の育成に資していきたいという思いでございます。
 もちろん、そのためには管理職の資質向上の研修は欠かすことができないということは言うまでもないことでございます。
 その他として申し上げてございますけれども、合併に伴う広域化・多様化ということでございまして、これは委員の定数の改善を先ほども申し上げましたので、割愛させていただきたいと思います。
 それと本連合会では、強く要望していることは、義務教育の国庫負担のことについてでございます。教育水準の格差につながるようなことがないようにということで、全国一律の教育水準の維持向上を確保する上での教育委員会制度の見直しであるように期待したいと思っているところでございます。
 以上、雑駁な説明でございますけれども、ありがとうございました。

○ 鳥居部会長
 大変ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞ。
 横山委員、どうぞお願いします。

○ 横山委員
 最後のほうに、義教国庫負担の問題に触れられたのですが、実は先ほど全国知事会の宮城の知事さんのほうからその問題がありまして、結局、突き詰めると、義教におけるナショナルスタンダードは必要です、そのナショナルスタンダードについて地域間格差が生じることは基本的に容認できませんと。ただ、問題は、そのための担保措置をどう考えるのですかという話になってくるわけです。一方で、義教国庫負担制度が教員配置等について、特に教育環境について、担保措置の機能を果たしていると私は考えているのですが、知事さんのほうはそれは考えていない。
 また、今おっしゃったように、義教国庫負担制度を堅持しろと ―先ほど町村のほうには話を聞いたのですが、市町村教育委員会連合会のほうで、国庫負担制度がなくなると、どういう影響を考えておられるのか。例えば格差が生じるとおっしゃいましたが、実際、都道府県知事さんに対する不信ですよね、その辺をどうお考えになっているのかお聞きしたいのですが。

○ 久保意見発表者
 義務教育の国庫負担制度を堅持したいということでございますけれども、もしそれが堅持されなければ、やはり市町村によっての格差が生じる。具体的には現在、教職員の給与につきましては、国が半額、県が半額負担。それが県に移譲されるということでありますと、財政の体力のある県では、どのようにそれを使っていくか。そういう点で非常に不安を抱かざるを得ない。そういうことで、教員の資質向上、それから意欲にかかわるという面での、一つ大きな課題があるとは受けとめているところでございます。

○ 横山委員
 実は先ほど宮城の浅野知事さんは、国庫負担制度がなくても、現実の問題として、例えば教員配置についていえば、教員の標準法でガチガチに縛られている。そんな恐れはないですよという論なのです。その点はいかがなのですか。

○ 久保意見発表者
 高校の教員については、県がどんどん進めているから、どうこうないのではないかということでございますけれども、実際に義務教育という、憲法で保障されているということからいたしますと、やはりいろいろな格差を生じさせないという思いが非常に強いわけです。実際には、先ほど申し上げましたように、教員の意欲、資質向上とは言いながら、意欲の問題、そして県によってそれぞれの財力のバランスがとれていれば、どうこうはない。その財力に応じた交付税があれば、どうこうはないということでございますが、そこの先が見えないという不安感から、やはり現在の義務教育費国庫負担は堅持していただきたいということでございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 渡久山委員、それでは最後にどうぞ。

○ 渡久山委員
 2ページですが、一つは、高等学校の場合、交付税になっていますけれども、やはり県の財政によって教職員の配置状況は全然違うのです。だから、これは率直に申し上げて、県の財政事情で配置が違っているということは、きちんと認識していただきたいというのが一つです。
 私が一番お聞きしたいのは、公立学校の運営です。例えば、学校の裁量権を拡大するためには、予算や人事だというわけですね。それと同時に、学校の管理規則がどうなっているかというのは問題だと思っています。昭和31年に地教行法ができたときに、管理規則は結局、都道府県は当時の文部省がある程度試案を示して、都道府県教育長協議会でつくって、実際には各県がそれをひな型にしてつくっているのです。今はそうでないような部分もあると聞いていますけれども、その辺の学校の裁量権と今の管理規則の関係ではどのような考えを持っていらっしゃいますか。

○ 久保意見発表者
 学校の管理規則と裁量権との関連ということで、あまり検討はなされていないのが、本連合会の実情でございます。そういう意味で、今までどのような経過で今日きているかということを、これから私どもも詰めてまいりたいと思います。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、時間の関係で、残念ですけれども、ここまでにさせていただきます。今日いただきました御意見は、また我々の審議に十分に生かさせていただきます。ありがとうございました。

〔全国市町村教育委員会連合会退席〕

〔全国都市教育長協議会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 次は全国都市教育長協議会からお願いします。全国都市教育長協議会会長でいらっしゃいます内藤泰夫宮崎市教育委員会教育長にお願いいたします。それでは、よろしくどうぞお願いいたします。10分間でお願いいたします。

○ 内藤意見発表者
 御紹介をいただきました宮崎市教育長、全国都市教育長協議会の会長をいたしております、内藤でございます。
 お手元に資料7というのがございまして、地方分権時代における教育委員会の在り方について、全国都市教育長協議会の発表をするに当たりまして、同じ全国都市教育長協議会と申し上げましても、人口規模が多種でございまして、アンケートをとってみようということにいたしたのですが、700市ぐらいある中で、その1割をとってみようということで、人口の区分でアンケートを集約してみました。3ページ、4ページに、アンケート結果をまとめてございますけれども、73市にお願いしたのですが、62市からの返答を得ておりまして、「A」の30万人以上の都市、それから「B」の10万人以上30万人未満、それから「C」として10万人未満と、こちらのほうで分類をして意見を集約してみました。
 まず第1番目に、教育委員会制度の意義と役割については、アンケート結果として、3ページの「1」にありますように、総合的に見ますと、現行の制度でよいというのが79パーセントでございまして、それをあえて「A」「B」「C」と分けてみると、「A」の30万人以上では現行の制度がいいというのが60パーセント、「B」で87パーセント、「C」の10万人以下が81パーセントと分かれておるわけでございます。
 1ページに戻りますけれども、現行の制度でよいというのが、79パーセントと多数を占めておるわけですが、私ども教育委員の皆さんには ―私も含めて教育委員ですけれども、民意を反映するために、今、首長さんのほうでも、専門性や地域性、性別、年齢等を考慮し、幅広い登用を行っていただこうという傾向が強うございます。こういったことから、名誉職化しないように、教育に情熱のある人の登用をお願いしておりますが、一番大事なことは会議の形骸化を、教育長 ―例えば教育長である私は、教育委員でもあり、事務局の代表もしておりますので、教育長として常に会議の形骸化を避けるような努力を自分自身がしていかなくてはならないという面も考えております。ただ1回の、事務局が提案して定例会を開いて、追認していただくだけの教育委員会では本当の意思決定はできないのだということを事務局職員にも訴えておりまして、毎月の定例会だけではなくて、事前に資料を早めに提供いたしまして、臨時教育委員会とか、あるいは教育委員の皆様に説明会を開いて、研修をして、積極的に意見を言っていただいて、最終的に意思決定ができるように努めておるところでございます。
 そういった場合に、委員の皆様は非常勤でございますので、大変努力が要ると思いますけれども、それを頭に置かれて、名誉職ではないのだということを自覚された上で、委員の登用していただいておるということを私どもは信頼いたしまして、そのようにお願いしております。
 次に、首長と教育委員会との関係でございますが、1ページを通して申し上げますと、アンケート結果「3」によりますと、おおむね半数の52パーセントが現行の制度でよいと回答しておるわけでございまして、教育委員会が主体となって、これからの教育に積極的に取り組み、首長部局とは部局を乗り越えて、横断的に、連携を積極的に図りながら、事務を進めていくことが望ましいと考えております。
 それから、首長部局に移管したほうが、市民サービスの向上につながるという意見も少なくないわけでございまして、それは生涯学習の中でも、生涯学習がまちづくりにつながるのだという立場に立てば、予算の獲得とか、そういった面におきましては移行してもいいのかなという意見もありました。しかし、学校教育に特化するのではなくて、今、生涯学習という分野におきまして、学校教育と社会教育、家庭教育の連携は非常に強いものがございますので、社会教育に関する家庭教育等の分野は、やはり教育委員会として強化していく方向であるという考え方が強いようでございます。
 次に、アンケート結果「4」でございますけれども、首長との連携の関係でございますが、76パーセントが今のままでも連携は十分とれると回答しております。このことから、教育委員会が積極的に首長と連携を図って、運用の面で円滑に努力していけば、教育行政を推進することができると考えている意見も多うございます。例えば、今、よく市長さんが、まちづくり懇談会とか行われますけれども、宮崎市の例でございますが、まちづくり教育懇談会というものも2年に1回開いていただきまして、予算面は市長が答えます、教育の面については教育長のほうで答えてくださいという、そういうありがたい連携プレーでやらせていただきまして、やりようによっては連携は図れていくのではないかと考えているわけでございます。
 次に、市町村と都道府県の関係及び市町村教育委員会の在り方でございますが、アンケート「5」によりますと、47パーセントが広域化の推進のための具体的方策を講じるべきと回答しておるわけで、地方分権の中での広域化を図る事務局体制を整える必要があるかと考えるわけですけれども、中には地域住民を熟知した教育委員会であるのだから、教育行政はやはり単独で推進することが一番であるという意見もございました。まちまちでございます。教育改革の流れが現在激しいわけでございますので、市町村、特に小さいところにおきましても、指導主事等の教育行政の専門家を配して、派遣指導主事とか、そういったものを適正にやっていただければ、事務局体制も充実してくるのではないかということでございます。
 次に、2ページにまいりますけれども、アンケート結果「6」の権限移譲のところでございますが、63パーセントが今後さらに権限を市町村に移譲すべきであると回答しておりまして、特に教職員の人事、任命権の段階におきましては、段階的でございますけれども、その方向が望ましいと答えておるところが多いようでございます。しかし、現段階において、教職員の人事任命権は教育の機会均等、人事の硬直化を防ぐ意味では、現行の都道府県全体での異動のほうがいいという意見もございますし、どちらかといえば人口規模の多いほうから、中核市あたりからの人事権の移譲が望ましいという考え方が多いようでございます。この点につきましては、人口規模によりまして、意見が違うということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、学校と教育委員会との関係及び学校の自主性・自律性の確立でございますが、アンケート結果「7」によりますと、66パーセントが今後も学校の裁量を拡大していくべきと回答しておりまして、このことにつきましては、学校評議員制度がほとんどの市町村でまだ未設置もありますけれども、設置されてくるようになりました。ここあたりに、学校に権限を移すかわりに、地域の目というものを受けて、校長は学校を運営すべきである。そういう段階にありまして、学校評議員の在り方がまだ確立していない中に、もっともっとここあたりに視点を置いて、本格的な学校評議員制度を有効に活用していくことがいいのではないかということでございます。
 現在、学校管理規則につきましては、既に多くの規則が学校のほうに移譲されておりまして、届出制に変わってきております。要するに、教育委員会は学校の自主性を損うことのないように留意しながら、的確な指導・助言を行って、学校に大きく任せますけれども、何かあった場合には、教育委員会が力強くバックアップしていくという支援体制を整えることが重要であると考えております。概して、都市教育長の中では、現行制度を運用面において工夫・改善して、教育委員会の活性化を図っていきたいということが多くありました。
 以上で、発表を終わります。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞ。 ―よろしいでしょうか。
 それでは、ここまでにさせていただきます。今日は、本当にありがとうございました。
 御意見を十分に参考にさせていただきます。ありがとうございます。

〔全国都市教育長協議会退席〕

〔中核市教育長連絡会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、続きまして、中核市教育長連絡会からお願いいたします。本日は、中核市連絡会会長でいらっしゃいます吉田允昭愛知県豊田市教育委員会教育長からお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。

〔森脇委員退席〕

○ 吉田意見発表者
 現在、御承知のように、中核市は35市ございます。その中で、アンケート調査によりまして、23市から御意見をいただきまして、資料8にございますような意見をまとめさせていただきました。先ほどから私も傍聴席のほうで、愛知県の伊藤教育長さんのところを聞かせていただきまして、「1」から「4」までにつきましては、この前の内藤教育長さんのお話も含めまして、私どもも一緒に歩いておりますので、お聞きしておりまして、あまり意見の大差がないということでございます。ただ、中核市ということで、いろいろ会議も進めておりますので、簡潔にお話をさせていただきたいと思います。
 まず、「1」の「教育委員会の意義と役割」につきましては、現状の教育委員会制度の存続を希望し、中でも先ほどから出されておりますような形骸化、名誉職化、そういった問題につきましては、教育委員そのものが意を新たにして取り組んでいるのが現実であります。私ども豊田市におきましても、月1回では足らないというところで、例えば午前中にあった場合には、午後、学校訪問とか、あるいは道徳の在り方、あるいは二学期制、そういった具体的な問題について、教育委員さん方とお話し合いをし、現地もまた見ているというような方向で、形骸化、名誉職化、あるいはいろいろな問題がありますけれども、そういった問題をことごとく解決していこうという気持ちで進んでおります。
 「2」の「首長と教育委員会との関係」でございますけれども、豊田市は自分のところを言っては失礼かもしれませんが、私、2代の市長に仕えておりますけれども、それまで生涯学習関係が首長部局にございました。4年前に現市長が当選をされまして、生涯学習分野、スポーツとか、文化の面を教育委員会に、もとどおりというか、そういう形にしていただきました。そして、現行、首長部局との連携を密にしながら、教育行政、あるいは首長サイドでいうまちづくりの観点を、両方で話し合いながら進めております。
 私自身は毎週1回、首長さんとの会、あるいは部長との会が、行政経営会議という形で行われておりますけれども、毎週、首長とのやりとり、それから教育委員さんとの会は年間3回、必要に応じては、2~3回また増えていくというような形で、首長と教育委員会の連携を密にしているのが現状でございます。
 そこで、全国の中核市の中でも、今、豊田がやっているような方向が、どこの中核市でもそういう方向が見られるというのが現状ではないかと思います。首長が直接教育行政を所有することには反対であるという意見もございましたけれども、多くは、先ほど発表しましたような方向で行われておると思います。
 中でも、次のページの生涯学習分野を首長部局へというところが数市ございました。このことは、前のほうにもございましたけれども、確かに首長部局が所管したほうが市民のニーズに合っているという面もございますけれども、私ども先ほど言いましたように、反対に教育委員会に移譲されまして、その中で話し合いが進められておりますので、前と変わらず、むしろ前よりも前進した形で進んでいるというふうに、私自身は本市では言えると思っております。
 「3」の「市町村と都道府県の関係」でございますけれども、この点につきましては、さきの内藤教育長のほうからお話ししたとおりですけれども、とりわけ中核市の中では、人事権、あるいは財源等の移譲を希望して、政令市並みの方向でやらせていただきたいということを思っております。もちろん市教委の在り方、あるいは県と市の連携の在り方については、従前どおり密にしていけば、うまくできるのではないかと思っております。
 「3」の人事権の移譲について、中核市では要望を切にお願いをしているところであります。
 「4」の「学校と教育委員会の関係」につきましては、学校サイドの活動ができやすいように、教育委員会としてはバックアップをしていく。そういう姿勢を強く押し出しているのが中核市の全体像であるかと思います。
 簡単ですけれども、以上で終わらせていただきます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がございましたら、どうぞお願いいたします。
 どうぞ、吾妻委員。

○ 吾妻委員 2点ほどお伺いしたいと思うのですが、今の御説明で大体わかったつもりですけれども、もう少し具体的にお願いしたいと思います。
 生涯学習分野、文化・スポーツ分野を、現在、教育委員会のほうで管轄しているのが普通でして、それを首長部局のほうにという現在の流れの中で、豊田市さんは反対の流れだと思うのです。その辺、以前どのような状況で、今回、逆にそういう流れになったのか、その背景とか、状況などをもう少しお聞かせいただければありがたいと思います。
 2点目ですが、現在、都道府県にあります人事権等について、都市教育長会等で人事権の移譲について話題になっているその中心は、中核市が中心だというように伺っているわけですけれども、中核市全市が人事権等の移譲を求めているこの辺については、単なる要望としてのレベルなのか、具体的に人事権が市に移った場合に、具体的な検討までされている状況なのか、その辺、中核市の様子などをちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。

○ 吉田意見発表者
 1点目の件につきましては、10数年前の2代前の市長が、豊田が発展途上であるということで、社会的な要請の中から、教育委員会が背負うよりも、生涯学習関係を首長部局が背負ったほうがいいというようなことで、教育委員会から外されたということを聞いております。そして、現市長はそういう状況ではなくて、発展もしているけれども、現状では生涯学習も教育委員会にやはりもとに戻すべきだろうということで、連携を密にという中で、今、進めております。
 それから、2番目の人事権の移譲についてでありますけれども、中核市では、これを政令市並みに全力で向けて、どうしても欲しいのだという要望はあるのですが、100パーセントそれに向かっているということではなくて、できるだけこういうふうにありたいという気持ちが全体であります。
 そして、その利点につきましては、現在、任命権は県が持っていて、そして中核市はそれを管理するという形でありますので、そういった中で、教員のトラブルであるとか、あるいは研修の問題であるとか ―中核市は研修権が与えられてはおりますけれども、そういった中で、県とのかかわりが複層化している。そういったものがうまくとれれば、雇うところから任免権まですべてあるほうが、政令市並みにいいのではないかということで、ぜひそれをねらっていきたいという動きを現在しております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 そのほかに御質問はございましょうか。
 はい。小川委員、どうぞ。

○ 小川委員
 1ページの「1」の「2」の二つ目の「.」のところに、「教育長へ教育委員会の権限の一部移譲・委任・専決規程の整備等運用面について個々の自治体ではなく、全国的な制度として改善していくことが望ましい」とありますが、こうした主張の意味みたいなことを教えてほしいのです。
 というのは、私、持論なのですが、基本的に教育委員会の仕事は、その地域のアジェンダ設定とか、大綱的な教育政策の方針を決定することに限定して、日常の細かな執行とか、管理については、教育長の権限だというふうに明確な区分をしたほうが、アジェンダ設定とか、何が重要な政策課題かということに教育委員会が十分時間を費やすことが可能だと思います。
 ただ、今の教育委員会の規程であれば、教育委員会はすべての決定機関ですので、例えば細かな日常の人事とか、処分等々についても、すべて教育委員会に報告して、了解を得なければなりません。そうした細かな事務の決定等々も、限られた時間の中で大半がそれに費やされて、実質的に本来、教育委員会がやるべきアジェンダ設定とか、大綱的な地域の政策の基本方針を深めて、議論するということが、なかなか時間としてとれないという実態もあると思うのです。それをただ委任とかそういうことではなくて、明確に教育委員会と教育長の任務規定をはっきり区別して、本来あるべき教育委員会の仕事に専念できるような法整備が私は必要ではないかと思っています。この点について、どのようなことでこのようなことが言われるのかということを聞きたいのですけれども。

○ 吉田意見発表者
 意図につきましては、今、小川先生がおっしゃったような方向であると思います。私どものほうとしては、教育長の事務がなかなか進んでいかない、教育委員会にかけなければならない。もちろん専決事項もできるわけですけれども、そのあたりで、月1回なり2回開いてもいいわけでありますが、そういう中でなかなかできていかないというところがございますので、それをスムーズにするためには、もう少し教育長への権限があったらいいではないかという前向きの意見で、こういう意見が出てきたわけです。よろしいでしょうか。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 大澤委員、どうぞ。

○ 大澤委員
 教員の人事権を市町村のほうにという権限移譲の声がだいぶ強くなってきているのですが、私も現在学校におりまして、教員として管理職にならずに学級担任としてやっていくということであれば、37~38年間、学級の子どもたちを教諭として指導していくわけです。そのときに、中核都市でも指定都市でもいいのですけれども、その中で任用されて、異動していくということで、幾つかの学校を渡り歩いて、地域をよく知った上で教育ができるという利点はあると思います。しかし、37~38年間同じところで教員をしていて、マンネリ化とか、停滞とか、そういったことが当然起きてくると思うのです。
 私たちは広域の人事の中で、「異動は最大の研修なり」という言葉があるのです。今までいた学校で当たり前だ、今までの子どもたちとやっていて当たり前だと思っていたことが、違う学校に行き、違う地域で、あるいは違う子どもたち、違う保護者たちと一緒で、改めてもう1回教員としての自覚を持ったり、もう1回研き直しの必要性を感じたりといったようなことがありまして、研修という、座ったまま、座学でやるような勉強もそうですけれども、異動によって研かれるところが大変多いと思っているのです。
 こういった教員のライフステージを考えたときに、果たして人事権が全部市に移って、その後はどうなのだろうかということが、一つ危惧されるのですけれども、そのあたりの人事の停滞とか、そういったところにつきましては、何かお考えを持っていらっしゃるのでしょうか。

○ 吉田意見発表者
 広域圏の中で人が研かれるということは、お説のとおりだと思います。私ども豊田市は72小・中学校ございますので、1年1年やっても72年間かかるわけで、それはだめですが、普通は一校に大体5年以上、10年未満という期限で異動が行われ、小学校から小学校へ、中学校から中学校へ、また小中学校間の交流がされることによって活性化ができております。今、先生がおっしゃったことは中核市くらいの学校数があれば停滞の問題は心配ないと考えています。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 このあたりで閉じさせていただきますが、お許しください。お忙しいところをどうもありがとうございました。

〔中核市教育長連絡会退席〕

〔財団法人日本体育協会、意見発表者席に着席〕

○ 鳥居部会長
 それでは、大変時間が遅くなってしまって恐縮でございますが、最後に、お待たせしてしまいましたけれども、財団法人日本体育協会からお願いいたします。本日は、体育協会の岡崎助一理事・事務局長にお越しをいただいております。
 それでは、10分間ほどで恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。

〔千代委員退席〕

○ 岡崎意見発表者
 御紹介いただきました日本体育協会の岡崎でございます。今日は、スポーツ団体の立場からスポーツと教育委員会の関係について意見を述べさせていただければと思います。
 日本体育協会をあまり御案内でない部分もあるかと思いますので、簡単ですが、設立、あるいは仕事の中身等について、簡単に御説明します。
 明治44年(1911年)に設立されました、スポーツを統括する団体でございます。現在、加盟団体が108団体ございます、準加盟も含めまして。中央競技団体、あるいは都道府県の体育協会等を加盟団体とする組織として、我が国のスポーツ振興に貢献している団体でございます。ちょうど今週からアテネでオリンピックが始まりますけれども、私ども日本体育協会の一委員会としてオリンピック委員会がございましたが、平成元年に分離・独立しまして、オリンピック委員会と日本体育協会という大きなスポーツ組織として、オリンピック委員会が今回のオリンピック競技大会等、国際競技力の向上を担当し、私どもは国民全般的なスポーツの振興を担当するという団体でございます。
 主な私どもの事業は、国民体育大会を開催しております。そのほか、スポーツ少年団の育成、あるいはスポーツ指導者の養成、あるいは生涯スポーツの振興事業としまして、今、大変重要視されております総合型地域スポーツクラブの育成等々に携わっている団体でございます。本日、教育委員会との関係では、そこのレジュメにもお示ししましたように、大きくは三つの観点で御説明を申し上げたいと思います。
 スポーツを住民の方々が実践する、あるいは競技者が競技力の向上に努めるなど、いわゆるスポーツの振興に関しましては、教育委員会と知事部局といいますか、首長部局とこれまでも十分な連携の中で進められておりまして、スポーツ団体といたしましても、こうした両組織の関係につきましては大変ありがたいと思っておりますし、今後とも十分な連携を図っていただければということを希望しております。
 ただ、その際に、子どもの体力とか、あるいはスポーツ習慣の形成、そういう時期から見まして、スポーツ振興のためには、スポーツ団体と学校の体育教育を中心とする学校教育、とりわけその中身は学校での教育内容とか、あるいは教員の方々との連携とか、あるいは学校の体育施設の有効的な活用、それらを含めますと、いわゆる学校教育との関係が、まさに密接不離の関係にあるということを認識した上での連携ということになるかと思います。
 もう一つの観点は、現段階で、都道府県体育協会のほうから私どものほうに、スポーツ分野を教育委員会から首長部局のほうに移行させる必要があるという意見については、全くお聞きしておらないというのが現状でございます。
 少し詳しく申し上げます。今、私どもは生涯スポーツ、あるいは競技スポーツ分野を担当し、団体の立場でその振興を図っているわけでございますが、当然、行政等のパックアップ、支援、フォローをいただきながら推進しております。したがいまして、先ほども申し上げましたように、教育委員会と首長部局との連携というのは、まさに不可欠なものということを念頭に置いていますし、また、今後ともその関係が維持されることが必要であると思っております。
 とりわけ、近年では長野の冬季オリンピックがありました。私どもは毎年、国民体育大会等を開催しておりますが、これらの大きなイベントは、教育委員会サイドだけではとても対応できない。したがって、知事部局サイド、首長部局サイドが中心になり、教育委員会との連携の中で、国体準備・運営のために国体の場合だったら国体局という新たな組織をつくります、。それらはまさに開催に当たる県を挙げての、あるいは市町村を挙げての取組が、不可欠なイベントであるという位置づけにあるからだと思っております。これは今後ともまさに連携していただかないと、こういう大きなイベントは開催できないのではないかと思っております。
 一方、今、スポーツは一部の競技者だけではなくて、子どもから高齢者、そして障害者の方々も含む、一つの文化としての位置づけがなされております。そういう意味では、ここに書きました高齢者、あるいは障害者、それらの方々は、固有の楽しみとしてのスポーツに携わっていただくことを推進しておりますが、一方では福利厚生、あるいはリハビリ、そういう観点での要素も非常に強うございます。したがいまして、厚生部局との連携は、この分野のスポーツの振興には欠かせないことだと思います。そういう意味からも連携は不可欠であるということでございます。
 一方、私どもスポーツ団体が、スポーツの振興を図っていく上で、どこが一番キーポイントになっているかといいますと、やはり子どものスポーツをどう振興させていくかという点と、それから中高齢者の方々、そして技能に優れた方々をどう一層伸ばしていくかというところが、これからのスポーツ振興を図る上で、重要なポイントだと認識しております。
 とりわけスポーツの役割が多様化してきている中で、青少年期の活動につきましては、一生涯自分の生活の中でスポーツに取り組んでいくという基礎・基盤を培う重要な時期だと思っております。これは文化面もそうかもしれませんが、私どもスポーツを担当するセクションの者としては、そういう力、基礎的な能力を子どもたちにつけていく。この教育の原点は、やはり学校の体育の授業、あるいは部活動等々で基本的には培われる必要があります。しかし、到底週2時間の体育の時間では十分な効果は上がらないですから、そこは地域における例えばスポーツ少年団等への加入で、一層学校で培った基礎を充実・発展さす場として、スポーツ少年団、いわゆる地域のスポーツクラブ等々が存在するのではないかと思っております。そういう意味では、学校との連携がどうしても中心的にならざるを得ない。したがって、学校教育と私どもが推進するスポーツ振興との関係は、まさに重要なパートナーといいますか、まさに密接不離の関係にあると考えておるところでございます。
 当然、学校の教員の方々 ―私ども、今、スポーツ指導者の養成を図っていると申しましたが、現在、私どもの公認スポーツ指導者として登録されている方々は9万人おります。9万人の中の約1万5,000人が小・中・高の先生方が新たに資格をお取りいただいて、子どもとか、あるいは中高齢者に対して、学校の教育以外でボランティアとしてスポーツ指導に地域で携わっていただいているわけです。そういう意味からも、学校の教員の方々のマンパワーは非常に重要で、我が国のスポーツ振興に果たす役割は大きいのではないかと思っております。
 また、一方、学校の施設は、諸外国に比べまして大変優れた施設の規模と内容であるということでございます。それらは、学校教育のほかで地域住民への開放という形で、今、事業が展開されておりますが、これらにつきましても、学校との関係は非常に重要になってくるということでございます。
 したがいまして、私どもがスポーツの振興を図る、実際展開していく団体としましては、学校との関係が非常に重要になってくるということでございます。
 もし今後、スポーツが学校教育と分離した場合ということでございますが、大きくは生涯スポーツの分野と競技スポーツの分野で、ここで課題を載せさせていただいておりますけれども、現在、県の体育協会、あるいは県の体育協会に加盟している各スポーツ団体は、教育委員会が所管しております。したがいまして、教育委員会との連携の中で、スポーツを振興しているという状況下にございます。したがいまして、教育委員会から首長部局のほうにスポーツ分野の所管が移行した場合、今まで培った関係、あるいは今まで培ったノウハウが必ずしも十分うまく生かされるかどうか、私どもスポーツ団体としては不安に思っているところでございます。
 一方、競技スポーツの分野を考えてみましても、今、体操の選手とか、あるいは水泳の選手が民間のスポーツクラブで育っていますけれども、まだまだ多くの競技スポーツ選手は、学校の運動部活動で育っているという状況でございます。したがいまして、各スポーツ団体が学校の運動部活動との関連を重視しながら、競技者を育成していくことが今後も必要ではないかと思っております。
 一番下の「○」は、都道府県体育協会からの意見は特にないということでございますので、先ほども申し上げたとおりでございます。
 以上のような観点から、私ども日本体育協会といたしましては、現行の連携の状態についてうまく連携していただく状態を保っていただければ、あえてスポーツ分野を教育委員会から首長部局のほうに移行させる必要性は特に見当たらないというのが現状の意見でございます。
 以上でございます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、御質問がありましたら、どうぞお願いいたします。
 どうぞ、佐藤委員。

○ 佐藤委員
 知・徳・体という言葉をよく聞きますけれども、そういう意味では、人格形成の重要な一つとして体育があるわけです。その実践を推奨する団体としての体協の役割は、今後、大きいと思います。特に生涯学習社会の今日ですので、生涯スポーツ、あるいは人間の命に対する強い執念というものは、やはり体育的感性が非常に重要だと思いますので、そういう点で、指導員、全国で登録が9万人と言っていますけれども、そのうちの教員が1万人、あとの8万人が一般社会人でしょうか。やはり心・技・体ということであれば、技だけではなくて、心も、健康そのものも、一体的に指導員がきちんと心得ていただきたいと思うのですが、その辺の指導者養成について、体協さんはどのようにお考えでしょうか。

○ 岡崎意見発表者
 御指摘の部分は非常に重要な、指導者を養成していく観点だというふうに認識しております。学校の教員は、資格を取られて、採用試験を受けて、そして学校現場に立つというシステムが構築されております。私どものいわゆる民間のスポーツ指導者につきましては、一定時間の講習と試験、それに合格された方に資格を与えるという資格制度でございます。残念ながら規制緩和の関係で、平成17年度末をもちまして、文部科学大臣認定事業ということにはならなくなっておりますけれども、そこは私ども統括団体として今までのノウハウを構築して、ぜひ今の御指摘の部分について十分留意したいと思っております。
 実は、文部科学大臣認定事業が終わるという段階を踏まえまして、今、新しい養成のカリキュラム構成、あるいはシステムの改善を図っているところでございます。今、御指摘の人間としての生き方に関するスポーツ分野からの教育は、非常に重要なことだと思っていまして、それはスポーツ文化と我々は使わせていただいていますが、スポーツ文化の中身を十分子どもたちに伝達する能力が必要だと思います。そのスポーツ文化の中身は、一つはスポーツをどのようなものとして考えるかというスポーツ観、もう一つはスポーツ規範。ルールを守るというのが重要ですけれども、ルールを守るというのは、法律を守るということと大体同等でございます。しかし、もっと人間的に生きていくためには、マナーとか、エチケットの部分が非常に重要です。ラグビーでいえば、ゲームが終わった後のノーサイド。そういう教育が非常に重要かと思っております。もちろん技術とか、技能を高めることも重要かと思います。
 したがいまして、今後、スポーツ観とか、スポーツ規範に類するマナーとか、エチケットの部分につきまして、指導者に講習会の中で十分教育をして、そして子どもたちとか、あるいは中高齢者の方々へのスポーツ指導に生かしていきたいと、このように考えております。

○ 佐藤委員
 もう一つ、お願いですけれども、地域のスポ少の活動を見ていますと、技は気合いがかかって、すごい技を持ちますけれども、心理面で極めて脆弱な子どもも入っているわけです。しかも、スポーツを奨励しているという教育委員会サイドの発想もあるわけです。そういう中で、指導者が、発達段階にある子どもの心理状態がわからずに、ただひたすら気合いをかけるというだけでは、スポーツの振興にはならぬだろうと日ごろ思っているものですから、その辺をよろしくお願いします。

○ 岡崎意見発表者
 御指摘のとおりだと思います。多くの指導者の認識は、子どもたちの発育発達、心理面も重視した指導を行っていると認識しておりますが、まだまだ十分ではないということは十分理解しております。

〔吾妻委員、田村委員、退席〕

○ 鳥居部会長
 では、池端委員、それから渡久山委員の順でお願いします。

○ 池端委員
 今おっしゃっていただきました、子どもたちに対しますスポーツの先生というか、講師の件ですが、我々よく耳にしますのが、いろいろスポーツがあるのですが、もう学校の先生の言うことは聞かんでいい、顧問の先生の言うことは聞かんでいいから、監督の言うことだけを聞いておけばいいのだということで、学校のクラブを担当されている先生方とうまく連携がとれないというお話が多々ございます。そのあたりの件いかがでしょうか。
 今、スポーツ観、ルール、いろいろスポーツに関係した部分でお話をいただいたのですが、その以前に生命観というか、命というものをもっと大切にではないのですが、そこからスポーツにいろいろつなげていける部分がございましたら、また御検討いただけたらと思っております。
 それと燃えつき症候群とよく言うのですが、子どもたちが小さいときから、スポーツ、スポーツと頑張り過ぎまして、高校へ入る前にやめた場合になるということがよく言われておりますので、そのあたりも、生涯、いい意味でスポーツを継続できるような形で御支援いただけたらと思います。

○ 岡崎意見発表者
 生きる命とスポーツとの関係というのは、これも重要な部分でありまして、命との関係をスポーツの分野だけで全部フォローできるかどうか、私、自信がございませんけれども、少なくともこの暑い時期、スポーツ活動による熱中症というような障害が起きます。私どもの子どものころは、水を飲ませていただけなかったのですけれども、今は適切な水分補給の仕方についての指導者の知識は、広めておるつもりでございますし、そのような形になっております。そういう活動等々を通じることと、やはりスポーツを通じて相手を思いやるという教育、あるいはそういう実践が、人間の命を大切にするという人格形成に寄与していくのではないかと考えており、御指摘のようにこれから強調していきたいと思っております。
 それから、燃えつき症候群は、これはまさに勝利至上主義で、子どもたちに技術を教え込むという指導の結果、そのようなことがもたらされるという状況は私ども認識しております。
 したがいまして、今の例えばスポーツ少年団の指導者の養成のカリキュラムにつきましては、先ほども御指摘がありましたが、子どもの心身の発育発達の状況に応じて、運動、スポーツの楽しさを十分体験させる。それが生涯のスポーツを楽しむという基礎、基盤を培うことになる。その考え方のもとに、指導者の方々にも、養成講習会でその中身を講習しますし、また、研修会等々を通じてそのようなことを啓発しているところでございまして、すべての指導者がそうかとおっしゃると、なかなか自信を持って言えませんが、方向性はそのような方向で今努力しております。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、最後に渡久山委員、どうぞ。

○ 渡久山委員
 学校体育との関係できちんとお話しいただいたのは非常によかったと思いますが、今のスポーツを楽しむ、あるいは健康増進のためのスポーツというスポーツ観を含めて、やはり学校体育はもっと生涯スポーツというものをきちんとしないといかん。しかし、実際に今、意見が出ましたように競技スポーツになって、勝利主義になってしまっている。だから、甲子園に行くために、100人もいて、何人かしか行けないで、ほとんどの人が結局は何のためにやってきたのだろうということが出ていますので、競技スポーツの関係は、例えば競技を具体的に指導する教員も、部活動の顧問は専門家でないのが多いわけです。そうなると、学校の中で指導者を別に持ってきて、きちんと競技スポーツをやっていく、青少年団に入れなくてもいいから。そのような感じのことが検討できないかどうかということについては、どうお考えですか。

○ 岡崎意見発表者
 今、文部科学省において、外部指導者を学校の部活動へ派遣するという制度があるというふうに伺っております。したがいまして、御指摘の分野は、すべての学校に行っているかどうかは別にしまして、各県の何校かの中学校、あるいは高等学校の部活動の指導に、専門的な外部指導者が入られて、その指導に携わられているという実績はあるのではないかと思います。これがもっと広がっていく必要はあるかと思っております。

○ 鳥居部会長
 どうもありがとうございました。
 まだまだいろいろと御質問あるいは御意見がおありかと思いますが、ここまでにさせていただきたいと思います。
 今日は、この後、自由討議を予定しておりましたが、既に30分ほど時間を超過しておりますので、ここまでにさせていただきまして、事務局、山田生涯学習企画官から次回の予定 ―もう一度ヒアリングを行いますが ―と、地方視察の予定がございますので、それについての御説明をお願いいたします。

○ 山田生涯学習企画官
 今後の日程につきましては、資料10のとおりでございまして、次回は8月23日、1時半から4時半までグランドアーク半蔵門の華で開催の予定でございますので、よろしくお願い申し上げます。
 また、9月6日に地方視察を予定しておりまして、現在、東京方面の方は日帰り可能な関東近県の自治体ということで、調整をしております。近々、御案内をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

○ 鳥居部会長
 ありがとうございました。
 それでは、今日はここまでにさせていただきます。時間を超過いたしましたことをおわび申し上げます。ありがとうございました。

午後4時25分 閉会

お問合せ先

生涯学習政策局政策課