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2. |
教育行政の独立性
(1) |
教育行政の独立性の背景
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米国では、上下水道や公園の管理、警察行政など分野に応じて特別区が設けられ、市や町が行う一般行政とは独立して特定の公共サービスを提供。公立学校を所管する学区も特別区のひとつであり、教育行政は伝統的に一般行政から高い独立性を維持。 |
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教育行政が独立性を維持してきた背景のひとつとして、教育が政策的及び財政的に極めて重要なものと見なされ、政党や首長などからの党派的影響を避ける必要があるという認識が共有されてきたことが指摘されている。 |
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また、当該地域最大の公的支出である教育(公立学校)に関する権限を市長など一極に権限を集中させないことが民主主義にとって重要と考えられてきたことも指摘されている。 |
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(2) |
教育委員会の独立性の維持
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一般行政から分離された教育行政を司る教育委員会の独立性は制度的に保障されている。例えば、州知事による任命制が採られているメリーランド州でも、一旦任命された教育委員は倫理的問題を起こさない限り解任されないことが、法律によって規定。 |
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公選制か任命制かを問わず、教育委員の入れ替えは一部の委員(通常2〜3名)について行われ、継続的、安定的な政策の立案、実施が行える仕組み。 |
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(3) |
教育委員の選任
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教育委員の選任方法は、州教育委員会の場合、約三分の二の州では州知事による任命、残りの三分の一では公選。学区教育委員会の場合、95%は公選で、残りの5%が任命。 |
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教育委員の選挙の投票率は、州及び学区の双方とも低く、5%から25%程度。ただし、地域で重要な争点がある場合には投票率が上がる。 |
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教育委員会の規模や任期は州によって多様。州教育委員会の場合は9名(表1参照)、任期は4年(表2参照)とするところが多い(ただし、任期については半数以上の州で5年以上)。学区教育委員会の場合は7〜8名(表3参照)、任期は4年(表4参照)とするところが多い。 |
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表1 州教育委員会の規模 |
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規模 |
州数 |
州名 |
7名 |
8 |
アラスカ、デラウェア、フロリダ、モンタナ、ニューハンプシャー、ノースダコタ、オクラホマ、オレゴン |
8名 |
5 |
コロラド、アイダホ、ミシガン、ミズーリ、ネブラスカ |
9名 |
13 |
アラバマ、アリゾナ、コネチカット、イリノイ、アイオワ、メイン、マサチューセッツ、ミシシッピ、サウスダコタ、バーモント、バージニア、ウェストヴァージニア、ワシントンDC |
10名 |
4 |
アーカンソー、カンザス、ネバダ、テネシー |
11名 |
7 |
カリフォルニア、インディアナ、ケンタッキー、ルイジアナ、ロードアイランド、ワシントン、ワイオミング |
12名 |
1 |
メリーランド |
13名 |
4 |
ジョージア、ハワイ、ニュージャージー、ノースカロライナ |
15名 |
2 |
テキサス、ユタ |
16名以上 |
4 |
ニューヨーク(16名)、オハイオ(19名)、サウスカロライナ(17名)、ペンシルバニア(21名) |
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[出典] |
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National Association of State Boards of Education (NASBE), State Education Governance At-a-Glance, Jan. 2004. |
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表2 州教育委員の任期 |
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任期 |
州数 |
州名 |
3年 |
1 |
ロードアイランド |
4年 |
22 |
アラバマ、アリゾナ、カリフォルニア、コネチカット、フロリダ、ハワイ、インディアナ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メリーランド、ネブラスカ、ネバダ、オハイオ、オレゴン、サウスカロライナ、サウスダコタ、テキサス、ユタ、バージニア、ワシントン、ワシントンDC |
5年 |
6 |
アラスカ、アイダホ、メイン、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニューヨーク |
6年 |
11 |
アーカンソー、コロラド、デラウェア、イリノイ、アイオワ、ニュージャージー、ノースダコタ、オクラホマ、ペンシルバニア、バーモント、ワイオミング |
7年 |
2 |
ジョージア、モンタナ |
8年 |
3 |
ミシガン、ミズーリ、ノースカロライナ |
9年 |
3 |
ミシシッピ、テネシー、ウェストヴァージニア |
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[出典] |
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National Association of State Boards of Education (NASBE), State Education Governance At-a-Glance, Jan. 2004. |
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表3 学区教育委員会の規模(サンプル調査) |
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表4 学区教育委員の任期(サンプル調査) |
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規模 |
比率 |
5名未満 |
0.9% |
5〜6名 |
36.9% |
7〜8名 |
44.7% |
9名 |
14.3% |
10名以上 |
3.2% |
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任期 |
比率 |
4年未満 |
30.4% |
4年 |
63.2% |
5〜6年 |
6.5% |
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[出典] |
|
National School Boards Association, School Boards at the Dawn of 21st Century: Conditions and Challenges of District Governance, 2002. |
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委員の経歴は多様であるが、PTAやその他の地域団体等で積極的な活動経験、あるいは組織の中での管理的な立場の経験のある者がなる場合が多い。また、州教育委員の場合は、学区の教育長、学区の教育委員の場合は校長や教員経験者が選出されることも少なくない。 |
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表5 教育委員会の組織構成等に関する日米比較 |
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学区、市町村レベル |
州、都道府県レベル |
米国(2000年度) |
日本(2003年度) |
米国 |
日本(2003年度) |
教育委員会数 |
14,859(学区数) |
3,365 |
48(ワシントンDCを含む) |
47 |
男女比 |
61.1:38.9 |
75.3:24.7 |
56:44 |
67.7:32.3 |
年齢構成 |
40歳未満 |
5.9% |
0.4% |
多くは45〜60歳 |
0.4% |
40-49歳 |
40.1% |
8.7% |
9.9% |
50-59歳 |
33.8% |
26.5% |
24.6% |
60歳以上 |
20.3% |
64.4% |
65.1% |
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[出典] |
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米国 |
: |
U.S. Department of Education, Digest of Education Statistics 2002
National School Boards Association, School Boards at the Dawn of 21st Century: Conditions and Challenges of District Governance, 2002.
州教育委員会の男女比及び年齢構成については州教育委員会協議会(NASBE)のインタビューによる。 |
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日本 |
: |
文部科学省『平成15年度地方教育行政調査 中間報告』、平成16年 |
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