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資料3


第6回地方教育行政部会


意見発表者説明資料




門川 大作委員 説明資料


平成16年7月1日



平成16年7月1日


(学校と教育委員会の関係及び学校の自主性・自律性の確立)
京都市における学校裁量の拡大と学校評価システム

京都市教育長 門川 大作


1.京都市の第3の教育改革は平成4年にスタ−ト
<全市的教育水準の向上>

  (1) 桝本教育長(現市長)による全市学校訪問(316校)
徹底した現場主義
教職員は一人一人の子どもを徹底的に大切に!
教育委員会は一つ一つの学校・幼稚園、一人一人の教職員を大切に!

  (2) 全市共通の「達成すべき課題」を明確にし、全校で取組推進
(例)
1  小学校での「週案」、中学校での「単元別学習指導計画」の全員作成と校長への提出
2  校長・教頭による授業への計画的な「入り込み指導」
3  「日曜参観」「日曜運動会」の実施
4  小中学校全校で野外宿泊体験活動を実施
 (「山の家」「みさきの家(奥志摩)」の建設と全校活用) など

  (3) 市立高校改革
市民代表も含めた「改革プロジェクト」を設置
保護者・市民に信頼される学校づくり(進路保障等)

2.学校分権による創造的・先進的取組の推進

  (1) 学校が独自の教育目標のもと、特色ある学校づくりや新たな課題にチャレンジできるよう、あらゆる分野で学校裁量権を拡大し、学校分権を推進

1 「みやこ学校創生事業」(平成16年)
平成13年から「21世紀の学校づくり事業」としてスタート。平成16年に拡充
校長が学校、地域の現状を踏まえた特色ある学校づくりのための企画書を教育委員会に提出し、審査のうえ指定(3年間)
予算額3億円 184校(1校100〜200万円)
2 「学校運営予算改革」(平成16年〜)
京都市の新予算編成手法(後掲)を活用。
従前、学校では細分化された予算費目別、事業項目別に予算執行していたが、原則として全面的に事業区分を取り払い「合算執行」を可能とし、校長が年間計画を立て執行できるように改革
予算費目ごとの執行についても、光熱水費の削減分を学校図書費等の増額に充てることなどができるよう改革
校長専決金額の拡大など
3 「2学期制」の実施(平成15年〜)
全市一律ではなく、校長方針のもとに選択方式で実施
平成16年小学校145校(約80%)、中学校13校(約20%。平成17年ほぼ全校実施見通し)、高校5校(約60%)
年間5日間を上限に校長判断で、休業期間の短縮も可能に
4 小学校高学年での「教科担任制」(平成15年〜)
平成15年 20校、平成16年 約70校で実施
専科教育(音楽・図工等)も実施形態を工夫し、全校実施
5 幼・小・中・高・養さらには大学も含めた校種間連携
「学校支援・学生ボランティア事業」
市内13大学と教育委員会が「包括協定」を締結


  (2) 構造改革特区制度等の活用と成果の全市拡大

1 「小中一貫教育特区」(平成16年1月認定、2地区)
小学校での英語科新設、算数・数学のカリキュラムの弾力化など
2 「不登校生徒学習支援特区」(平成15年10月認定)
平成16年10月「洛風中学校」開設
3 「京の人づくり推進特区」(平成15年5月認定)
京都市独自で35人学級(小学校1、2年)導入
4 「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究」(平成14年〜)
小2、中1校を指定(うち文科省指定:小1校)
「地域学校協議会」の設置、学校裁量権拡大など
5 全国初の「総合制・地域制養護学校」への新設・再編(平成16年〜)
研究開発学校として、障害種別の枠を超えた総合制の実施
6 「中高一貫教育」(併設型)の導入(平成16年〜)
「西京高校付属中学校」の開校


  (3) 人事における校長裁量権の拡大

1 「希望転任制度(教員版FA制度)」(平成15年度〜)
希望者178人の内110人成立
2 「教員公募制」(平成15年度〜)
小中高13校で試行実施
3 「常勤・非常勤講師の学校独自採用」(平成14年度〜)
小中3校で試行実施
校長権限により採用。面接に学校評議員・保護者代表も参画
4 「副教頭制」(平成15年〜)
小中養23校で実施(平成16年)、順次拡大

  (4) 教員の資質、指導力の向上

1 「自己研修・研究計画書」の全教員作成、校長への提出(平成16年〜)
2 「カリキュラム開発支援センター」の開設(平成15年7月開設)
教育図書・資料70,000点(うち学習指導案6,000点)
平日夜間9時まで、土曜日も開所
3 「教育実践功績表彰制度」の創設(14年度546名、15年度629名)
4 「指導力不足教員」への厳正・公正な対応(6年間で約80名勧奨退職)
学識者、保護者、校長会代表等をメンバーとする「指導力判定委員会」を設置
5 一般教職員の「自己評価制度」導入(平成16年〜)

3.市民とのパートナーシップの下に教育課題解決へ積極的に挑戦

  (1) 「20の市民参加プロジェクト」で市民とともに考え、行動

1 「教育改革推進会議」(平成11年〜)
PTA、校園長会代表参画のもとに設置
2 「道徳教育振興市民会議」(平成13年〜)
河合隼雄現文化庁長官を座長(当時)に発足
京都から「しなやかな道徳教育」の発信
3 「21世紀の理科を考える市民会議」(平成15年〜)
市長の諮問機関として設置「理科好きな子どもを育てる」
4 「子ども読書活動振興市民会議」
平成14年 設置、平成16年2月 提言
5 「21世紀型教育コンテンツ開発委員会」(平成14年〜)
産業界・大学と小中高の連携
起業家教育、情報教育(アラン・ケイ・プロジェクト)、知的所有権等
6 「校庭芝生化プロジェクト」(平成14年〜)
芝生スクール京都(NPO)との連携など

  (2) 地域に開かれた、地域とともに歩む学校づくり

京都の地域ぐるみで子どもを育む教育的風土を生かし、学校と地域・保護者を双方向の信頼関係で結ぶ。そのために、「学校評議員制度(平成13年全校設置)」「学校評価システム(平成14年〜)」(後述)を先駆的に導入

1 「知ってください(説明責任)」(学校便り地域版・地域回覧、全校HP)
2 「来てください」
 (自由参観日・週間、学校施設開放、学校ふれあいサロン)
3 「知恵・力を貸してください」(学校支援ボランティア、学校評議員)
4 「地域へでかけます、地域で学びます」
(中学生「生き方探究チャレンジ事業」)
 →11,000人が3,300の事業所で勤労・奉仕体験

  (3) 子どもたちを育む人・地域のきずなづくり

1 「みやこ子ども土曜塾」(平成16年度新規事業)
京都ならではの教育資源を生かし、「まち全体を学びと育ちの場」として、週末や休業期間中に幅広い団体、ボランティア、NPO等の協力を得ながら、伝統文化体験、野外活動、ボランティア活動、基礎学力向上など、様々な学びと体験の場を創設
2 「家庭の教育力向上サポートチーム」(平成13年〜)
「子育て語り合いサロン」の開催、子育てサポーター養成
3 「おやじの会」(平成14年〜)
平成15年10月「京都おやじの会連絡会」発足、100以上の学区で活動
「わが子の父から地域のおやじへ」(「おやじ宣言」)
4 「人づくり21世紀委員会」(平成10年2月発足)
代表:河合隼雄現文化庁長官、93団体が参画した市民組織
「子どもたちのために大人として何ができるか」を考え、行動

<参考>京都市における行政評価システムと新予算編成システム

(1)  行政評価システム(平成13年〜)
すべての事務事業について、3段階の行政評価を実施
1 「政策評価(26項目)」(平成15年試行、平成16年本格実施)
2 「施策評価(106項目)」(平成15年試行、平成16年本格実施)
3 「事務事業評価(1308項目)」(平成13年・14年試行、平成15年本格実施)
評価結果を公表(HPで閲覧可能)
公募委員、学識者、専門家等による外部機関として評価委員会を設置し、第三者評価を実施

京都市の行政評価制度は、民間シンクタンクが実施した全国10万人以上の都市(東京都特別区を含む)のランク付けで全国一の評価を得ている。

(2)  新予算編成システム(平成15年〜)
「選択と集中」の徹底による「戦略的予算編成」
1 行政評価結果を活用しての予算編成
2 各局長に予算編成権限を移譲




京都市の「学校評価システム」

 明治以来培われてきた「学校を核とした地域ぐるみの人づくり、まちづくり」の伝統
 学校・家庭・地域が担う役割を確認し、
双方向の強固な信頼関係の構築を目指す「開かれた学校づくり」の推進
 
 学校評議員制度の全校園での実施(平成13年度)
 「外部評価」を含む「学校評価システム」の全校園での導入(平成15年度)

1 見て、聞いて、知って、学校を育てよう(基本姿勢)

  (1)  学校・家庭・地域の三者が「育てたい子ども像」を共有し、共働してその実現を図るため、教育活動の成果と改善すべき課題を明らかにし、充実・改善を目指す。
  (2)  「自己評価」と保護者や地域の方などによる「外部評価」の二つを関連させながら組織的・計画的・継続的に行い、その結果や充実・改善策を広く保護者や地域に発信する。
  (3)  「自己評価」は、子どもたちの姿に現れた具体的成果・課題をもとに、学校自らが取組を継続的かつ迅速に点検・見直しを行い、学校教育を充実・改善していくために実施する。
  (4)  「外部評価」は、学校の「自己評価」に客観性を持たせると共に、保護者・地域の方の学校教育への関心を高め、熱意と責任ある「評価」により学校・家庭・地域それぞれの果たすべき役割を確認しあい、連携することで子どもたちにとってのより良い教育環境を作り上げるために行う。
  (5)  「学校評価」が安易な学校比較や序列化につながらないように留意する。

2 情報(課題や成果)を共有し組織的・計画的・継続的に(留意点)

  (1)  学校評価の前提として、学校が家庭・地域に対する説明責任を果たし、学校や子どもたちに関する情報や課題意識、さらには「育てたい子ども像」やその実現に向けた取組を推進すること。
  (2)  「育てたい子ども像」を具現化するための「学校教育目標」等の見直しと平行して、「いつ・誰が・何を・どのように」評価するかの具体的な検討を「学校評価委員会」等を活用し組織的に行うこと。
  (3)  「学校評価」のねらい、評価時期、評価項目、評価方法をはじめ、分析・改善策の検討を担当する組織、公表の時期と方法、情報発信までを位置づけた「年間評価計画」を作成すること。
  (4)  評価結果やその分析を受けた教育活動の充実・改善策を公表することで学校・家庭・地域のそれぞれの役割を明らかにしていくこと

3 学校の育ち、親の育ち、地域の育ち(本市の力点)

  (1)  「開かれた学校づくり」の取組と連動させた「学校評価システム」の実施。
1 学校ホームページによる情報発信
(全校園に導入した高速インターネット通信網−光京都ネット−上に開設)
2 学校だよりの地域への回覧や地域版の発行
3 いつでもどの授業でも参観できる「自由参観日(週間)」の設定
4 学校評議員制度との連動(「外部評価」者としての役割)など
  (2)  「学校評価」を目的化せず、「学校教育目標」とその実現に向けた「教育活動」、その成果や課題への「評価」と一体化して実施
  (3)  評価項目や方法等は全市で統一して教育委員会が示すのではなく、各校園の子どもの実態や課題をふまえ、地域事情に応じて全288校園が独自に設定。
  (4)  「外部評価」は学校への一方的評価でなく、家庭・地域の取組を振り返る視点を含め、それぞれの果たすべき役割が確認しあえる「評価」を行い、学校・家庭・地域それぞれの教育活動の充実を目指すことで親の育ち、地域の育ちにつなげる。

4 更なる充実のために(成果と課題)

  (1)  成果
1  教職員の意識改革が進み、「育てたい子ども像」を明らかにした教育活動の改善につながっている。(授業改善につながることが重要)
2  適切な評価のためには、説明責任・情報発信が重要との認識が深まり、自由参観日の設定、学校だより地域版の発行や地域回覧、学校ホームページの充実等につながっている。
3  保護者の声や地域の声が学校に届きやすく、そのことが良い意味での学校(教職員)の緊張感につながっている。
4  家庭で保護者が子どもと学校の事について話す場面が多くなり、保護者や地域の方が学校に足を運ぶ機会も増えている。

  (2)  課題
1  「学校評価」のねらいやその成果が子どもたちの教育にどう反映されているのかを保護者や地域に十分伝え切れていない面が見られる。(結果と充実・改善策を含め、より積極的な公表が今年度の最重要課題)
2  「外部評価」の評価者がPTAの役員、学校評議員に留まっている学校が一部見られる。全保護者の「評価」を反映する努力が求められている。




〈参考〉
〈本市の力点である、子どもに焦点をあて、
学校・家庭・地域が共に育つ「外部評価」の項目例〉

保護者に対して
家庭学習や読書の習慣が身に付くような環境づくりに努めている
PTA活動や地域での活動に進んで参加・協力している

地域に対して
地域での行事により多くの子どもや地域の方が参加できるよう工夫をしている
子どものいる家庭へ積極的に声かけをするなど地域全体で子育てを支えている

いずれも(4…できている 3…どちらかといえばできている 2…どちらかといえばできていない 1…できていない)で記入

…別添資料「外部評価」P9参照

取組経過

平成10年度… 「学校評議員制度」の試行を開始
平成13年度… 全校園に学校評議員を設置し本格実施
「学校評価」の取組を開始(実践研究協力校7校を指定)
平成14年度… 実践践研究協力校を全校種40校に拡大し、「外部評価」を含む「学校評価」の試行を開始。
全校園でも「自己評価」を試行実施
平成15年度… 全校園で「外部評価」を含む「学校評価システム」を完全実施
実施にあたり、「学校評価システム」リーフレット(別添(PDF:38KB))を11万5千部作成し全保護者に配布



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