第3章 幼稚園と保育所の連携の推進及び総合施設の在り方

  • 第1章では,子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた上で,今後の幼児教育の方向性について,第2章では,その方向性を受けて,今後の幼児教育の充実のための具体的な方策について提言した。一方,本章では,第2章の提言に加え,特に幼稚園と保育所の連携など幼稚園等施設どうしの連携の在り方や,平成18年度からの本格実施を目指している「就学前の教育・保育を一体として捉(とら)えた総合施設(仮称)」(以下「総合施設」と言う。)での教育・保育の在り方に関して提言する。

第1節 幼稚園と保育所の連携の推進

  • 学校である幼稚園と児童福祉施設である保育所には,その目的や機能において違いがある。
     従来から,幼稚園は,希望するすべての3歳以上の幼児を対象とした教育施設として,保育所は,保護者の就労等で「保育に欠ける」0~5歳児を対象とした児童福祉施設として,異なった目的・機能等を持つ施設として,それぞれの整備・充実を図ってきた。
  • 一方,両施設とも,小学校就学前の幼児を対象に教育・保育を行う施設であり,近年は少子化の進行,共働き世帯の一般化などに伴う保育ニーズの多様化を背景として,文部科学省と厚生労働省では,両施設の連携を進めてきた。
     具体的には,施設の共用化,教育内容・保育内容の整合性の確保,幼稚園教諭・保育士の資格の併有の促進,合同研修などを実施してきた。また,構造改革特別区域における幼稚園児と保育所児等の合同活動のための特例等の措置を行ってきた。
  • 第1章及び第2章で述べたとおり,今後の幼児教育の在り方として,幼稚園等施設が家庭や地域社会と連携して総合的に幼児教育を推進するため,また,幼児の生活の連続性及び発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実を図るためには,小学校就学前の子どもの育ちを,幼稚園と保育所とで区別することなく保障していく必要がある。この意味においても,今後とも,幼稚園と保育所の連携を進める必要がある。

第2節 総合施設の在り方

  • 幼児教育・保育のニーズが多様化していく中で,例えば少子化が急速に進行している過疎地域など,地域によっては幼稚園と保育所といった既存の制度の枠組みだけでは,必ずしも柔軟に対応できにくい状況がみられる。
     このため,少子化が進行する中で幼稚園と保育所の機能を一体化して効率的な施設運営を行いたい,保護者の就労の有無・形態等を問わず,子どもの視点に立った幼児教育・保育の提供をしてほしいなど,地域が自主性をもって地域の実情や親の幼児教育・保育のニーズに適切かつ柔軟に対応することができるような新しい枠組みを求める声も高まってきている。
  • こうした状況等を踏まえ,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(平成15年6月27日閣議決定)においては,「近年の社会構造・就業構造の著しい変化等を踏まえ,地域において児童を総合的に育み,児童の視点に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から,地域のニーズに応じ,就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする」こととされた。
     また,「規制改革・民間開放推進三か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)においては,総合施設の設置の実現に向けて,「平成16年度中に基本的な考えをとりまとめた上で,平成17年度に試行事業を先行実施するなど,必要な法整備を行うことも含め様々な準備を行い,平成18年度から本格実施を行う」こととされた。
  • 総合施設の在り方については,本審議会の幼児教育部会において,今後の幼児教育の方向性を踏まえつつ議論される一方,厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の児童部会においても,児童の福祉の観点等を踏まえた議論が行われてきた。そして平成16年5月からは,上記両部会の合同の検討会議において更に議論が進められ,同年12月には,別紙のとおり,「審議のまとめ」が取りまとめられたところである。
  • この「審議のまとめ」の内容や地方公共団体・保護者のニーズ等を幅広く踏まえ,今後,総合施設の具体的な制度設計に向けた関係省庁間の検討を進めることを期待する。

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初等中等教育局幼児教育課